JP2002543774A - ワクチン - Google Patents

ワクチン

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JP2002543774A JP2000612331A JP2000612331A JP2002543774A JP 2002543774 A JP2002543774 A JP 2002543774A JP 2000612331 A JP2000612331 A JP 2000612331A JP 2000612331 A JP2000612331 A JP 2000612331A JP 2002543774 A JP2002543774 A JP 2002543774A
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Abstract

(57)【要約】 プラスモディウム(Plasmodium)メロゾイト表面タンパク質-1(MSP-1)のC末端断片の天然に存在しない変異体であって、(i) プラスモディウム MSP-142のタンパク質分解開裂を阻害する第2の抗体の結合をブロックしうる少なくとも1種の第1の抗体に対する親和性が、天然に存在するプラスモディウム MSP-119と比較して小さく、かつ(ii) プラスモディウム MSP-142のタンパク質分解開裂を阻害する少なくとも1種の第3の抗体に対する親和性が、天然に存在する該プラスモディウム MSP-119と比較して実質的に同等である、変異体が、抗マラリアワクチンに使用するために提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の分野 本発明は、改変されたプラスモディウム MSP-1タンパク質変異体およびマラリ
アに対するワクチンの産生におけるそれらの使用に関する。本発明はまた、好適
な変異体を合理的にデザインするための方法に関する。
【0002】発明の背景 マラリアは、ハマダラカにより伝播される地域で広範にわたり罹患および死亡
を引き起こす破壊的な疾患である。伝搬性の高い地域では、小さな子供や免疫さ
れていない訪問者はプラスモディウム属の原虫により惹起されるこの疾患にかか
る危険性が最も大きい。伝搬性の低いまたは不安定な地域では、この疾患が流行
してすべての年齢の人々が罹患する可能性がある。多くの罹患原因およびほとん
どの死亡原因になっている最も危険な形態のマラリアは、プラスモディウム・フ
ァルシパルム(Plasmodium falciparu)種によって惹起される。20億人がマラリ
アにかかる危険性があり、臨床患者は毎年2〜3億人、死亡者は毎年100〜200万人
であると推定されている。
【0003】 この寄生虫は、そのヒト宿主および蚊宿主において複雑な生活環を有している
。ヒトでは、疾患の臨床的症状の原因となる生活環の段階は血流中で生じる。こ
の段階では、寄生虫は主に宿主の赤血球内に潜んでいる。ここで寄生虫は増殖お
よび分裂を行う。例えば、赤血球内において、P.ファルシパルム(P.falciparum
)寄生虫はそれぞれ、48時間周期で数回分裂して約20個の新しい個体を生成する
。この時点で、赤血球が破裂して寄生虫(この段階ではメロゾイトと呼ばれる)が
血流中に放出される。メロゾイトが生き延びて血液中で複製サイクルを持続する
ためには、新しい赤血球に進入しなければならない。寄生虫が赤血球に進入しそ
こなった場合、長期間にわたり生き延びることはできず、急速に破壊される。発
熱のようなマラリアの症状は、この周期的なメロゾイトの放出および赤血球への
再侵入と関係付けられる。
【0004】 マラリアに対するワクチンが緊急に必要である。現在入手可能なワクチンの中
に有効なものは存在しない。更に、残留性殺虫剤の噴霧による蚊の防除は、無効
になりつつあるかまたは許容しえないと考えられており、寄生虫内に薬剤耐性が
広まるという非常に悩ましい状態を生じている。安価でかつては有効であったク
ロロキンのような化合物が世界の多くの地域でもはや有用ではなく、しかも安価
でかつ有効である利用可能な新しい薬剤はたとえあるにしてもごく僅かであるた
め、薬剤耐性が急速に広まるということは悩ましいことである。微生物に対抗す
るワクチンは、人々を感染症から守るための非常に費用効果の大きい効率的な方
法であると思われる。
【0005】 寄生虫の生活環が複雑であるため、人体内における寄生虫の発生において防護
免疫応答の標的になりうる時点は多数存在する。年齢および暴露が増大するにつ
れて個人はマラリアに対して免疫性をもつようになることが知られており、この
ことから防御応答は時が経つにつれて出現することが示唆される。大ざっぱに言
えば、三つのタイプのワクチンストラテジー、すなわち、赤血球前期段階、無性
段階および有性段階を標的にするストラテジーが存在する。赤血球前期段階は、
感染している蚊が血液を摂取したときに注入されて肝臓内で寄生虫の初期発生を
起こすスポロゾイトである。無性血液段階は、周期的に起こる赤血球からのメロ
ゾイトの感染および放出であり、臨床的症状の現れる段階である。有性段階は、
蚊が摂取血液中の配偶子母細胞を取り込んだ後、蚊の腸内で起こり、これにより
虫への感染が開始されて生活環を終える。有性段階に対抗するワクチンは個人を
保護するものではないであろうが、伝播を低減させることは可能であるため、所
定のヒト集団におけるマラリアの出現率は低下する可能性がある。
【0006】 血液中の無性周期の間、寄生虫は宿主の免疫系に直接暴露される。特に、一方
の細胞の破壊によりメロゾイトが放出されて他方の細胞にそれらが進入する前に
、過渡的にすぎないが、血流内を循環する抗体に暴露される。寄生虫の表面に結
合できる特異的抗体が存在すれば、これらの抗体は、新たな赤血球に侵入する寄
生虫の能力を阻害する可能性がある。実際に、寄生虫の表面タンパク質上の単一
エピトープを認識するいくつかのモノクロナール抗体は寄生虫を無力化し赤血球
内での増殖周期を妨害できることが実証されている。
【0007】 メロゾイトの表面上のタンパク質のうち最もうまく特性付けのなされたものの
一つは、メロゾイト表面タンパク質1(MSP-1)である。MSP-1は、寄生虫の系統が
異なるとサイズやアミノ酸配列が変化する大型のタンパク質である。このタンパ
ク質は、細胞内の寄生虫により約200kDaの前駆体分子として合成され、寄生虫の
表面上に位置する。赤血球からメロゾイトが放出されて新たな赤血球に再侵入す
るまでの間、このタンパク質は少なくとも2回のタンパク質分解改変を受ける。1
回目の改変では、一次プロセシングと呼ばれる過程の結果として、前駆体は、メ
ロゾイトの表面上に複合体として一緒に残存する約83、30、38および42kDaの4種
の断片に開裂される。この複合体にはまた、異なる遺伝子に由来する22kDaおよ
び36kDaの2種の他のタンパク質も含まれる。複合体は、異なるサブユニット間の
非共有結合性相互作用により保持され、グリコシルホスファチジルイノシトール
アンカーによりメロゾイト表面上に固定されている。このアンカーは、42kDa断
片のC末端に結合され、メロゾイトの原形質膜中に挿入されている。メロゾイト
が赤血球に侵入するときに、二次プロセシングと呼ばれる過程で2回目のタンパ
ク質分解開裂によりC末端42kDa断片が開裂を受ける。二次プロセシングの結果と
して、100個弱のアミノ酸からなるC末端サブ断片を除く全複合体がメロゾイトの
表面から切り離され、メロゾイトの表面上の新たに侵入される赤血球中に運ばれ
る。
【0008】 配列類似性に基づいて、この小型のC末端断片(MSP-119と呼ばれる)の構造は2
つの上皮増殖因子(EGF)様ドメインからなることが示唆された(図1の配列を参照
されたい)(Blackman et al., 1991)。EGF様モチーフは、特徴的なジスルフィド
結合パターンを有する45〜50アミノ酸配列からなり、そのようなドメインは、動
物の細胞外モジュラータンパク質中に頻繁に生じる。MSP-1 C末端断片では、モ
チーフのそれぞれに、3個のジスルフィド結合を形成するとの提案がなされた6個
のCys残基が含まれ、そして各モチーフは、EGFコンセンサスに対して部分的な一
致を示す(図1を参照されたい)。しかしながら、類似度が制限されているため、
更にはそのジスルフィド結合のパターンが知られていないため、MSP-1 C末端断
片がEGF様構造を含むという指摘は暫定的なものとみなされてきた。他の比較的
異なった潜在的EGF様配列がプラスモディウム(Plasmodium)タンパク質中に見
いだされるが、これまでの構造決定は、後生動物に由来するものに限られていた
【0009】 多くの研究により、MSP-1が防御免疫応答の標的になることが示唆された。こ
の研究の目標はヒトに使用するためのマラリアワクチンを開発することであるに
もかかわらず、やむをえず、この実験的研究のほとんどは、モデル動物系または
in vitroで行われてきた。こうした例としては、in vitroにおける赤血球への寄
生虫の侵入に及ぼす特異的抗体の影響に関する研究、実験マウスにおける齧歯類
マラリアモデルでの受動免疫化研究、ならびに天然のタンパク質(寄生虫に由来
するタンパク質)または異種生物中でMSP-1遺伝子の一部分から発現された組換え
タンパク質のいずれかを用いる齧歯類モデルおよび霊長類モデルの両モデルでの
直接的免疫化研究が挙げられる。また、血清疫学的研究により、MSP-1分子の一
部分に対するヒト抗体応答と臨床的疾患の防御との関係が示された。すべてとい
うわけではないが、こうした研究の大部分は、C末端MSP-119に対する免疫応答に
重点が置かれていた。例えば、MSP-119を認識するいくつかのモノクロナール抗
体は、in vitro培養において赤血球への侵入を防止する(Blackman et al., 1990
)。興味深いことに、侵入を阻害するこれらの抗体はまた、42kDa断片の二次プロ
セシングをも阻害することから、二次プロセシングを担うプロテアーゼに対する
立体障害により機能する機構が示唆される(Blackman et al., 1994)。二次プロ
セシングは侵入がうまく行われている間に終了するので、それが起こらなければ
、侵入は中断される。
【0010】 以上に記載のいずれの研究からも、MSP-1、特に、42kDa領域またはMSP-119
域を形成するC末端配列をベースとするポリペプチドは、マラリアワクチンを開
発するための非常に良好な候補化合物であることが示唆される。しかしながら、
いくつかの研究では、MSP-119上のエピトープまたは抗体結合部位には正確なポ
リペプチド三次元構造が必要であり、この構造は、MSP-119中に存在するシステ
イン残基間に存在すると考えられるジスルフィド結合を減少させる処理により破
壊されることが示された。この制限は、天然の寄生虫MSP-1を認識する抗体を結
合させるように組換えタンパク質を発現させることによって克服されたように思
われる。他の研究者によると、MSP-1の他の部分もまたワクチンへの組み込みの
可能性を有しているが、現在のところMSP-1 C末端断片がマラリア原虫の血液段
階に対抗するワクチンを開発するためのリード候補化合物であることが示唆され
る(Diggs et al., 1993; Stoute et al., 1998)。
【0011】 以上に述べたように、約48時間ごとに、P.ファルシパルム(P. falciparum)
メロゾイトが、感染した赤血球から放出されて新たな赤血球に再侵入し、この間
、宿主の免疫系に暴露される。従って、中和抗体などの致死作用の可能性を回避
すべく寄生虫はいかに進化するかという疑問が生じる。他の感染性微生物の場合
、免疫系と微生物との間で絶え間ない争いが起こり、微生物は巧妙な機構を進化
させて免疫系を攻略することが明白である。例えば、抗原の変異および抗原の多
様性は、微生物の1種の変異体に対する免疫応答によりその変異体が死滅する可
能性がある場合でさえもその免疫応答に対して少なくとも部分的な耐性または完
全な耐性をもつ新しい変異体が産生されるように「移動性標的」に免疫系が提示
されることに関与した2つの機構である。マラリアメロゾイトの場合、特に、MSP
-1の場合、ある種の抗体(「ブロック抗体」)の結合により中和抗体の結合を防止
し、中和抗体の存在下でさえも寄生虫は赤血球にうまく侵入することができると
いう他の機構が提案された(Guevara Patino et al., 1997)。これらのブロック
抗体には、2つのタイプ、すなわち、中和抗体の標的であるエピトープから直鎖
状一次配列上離れているアミノ酸から形成されるエピトープを対象とするタイプ
および中和抗体のエピトープとオーバーラップするエピトープを対象とするタイ
プが存在する可能性がある。このことは、寄生虫が有効な免疫応答を攻略するこ
とのできる新しい機構を提示する。この機構は、抗原の多形性または多様性に基
づく機構とは異なり、アミノ酸配列の多様性に依存しない。
【0012】 MSP-119に結合するいくつかのモノクロナール抗体(mAbs)がタンパク質分解開
裂および赤血球侵入を阻害することから、開裂は侵入の前提条件であることが示
唆される(Blackman et al., 1994)。MSP-1 C末端断片に結合する他のmAbsはプロ
セシングまたは侵入を阻害しないが、阻害中和抗体の結合をブロックする。MSP-
119に結合する他の抗体は、阻害抗体(inhibitory antibody)の結合を阻害するこ
ともブロックすることもない。ブロック抗体(blocking antibody)の存在下では
、阻害抗体は効力がなく侵入が進行する。免疫化により誘発される阻害抗体とブ
ロック抗体とのバランスは、免疫応答が侵入を防止するうえで有効であるかを決
定する重要な因子である(Guevara Patino et al., 1997)。
【0013】発明の概要 従って、本発明の目的は、プラスモディウムMSP-1タンパク質の変異体に基づ
いてマラリア原虫に対する有効なワクチンを提供することである。そのようなワ
クチンを設計する場合、以下の判定基準を満たさなければならない。
【0014】 1: ワクチンに使用されるポリペプチドのアミノ酸配列には、中和抗体の標的
でありかつ中和抗体を誘導できるエピトープが含まれていなければならない。
【0015】 2: ポリペプチドには、理想的には、ブロック抗体に対するエピトープを形成
するのみであるアミノ酸配列は含まれていてはならない。
【0016】 3: ポリペプチドに中和抗体とブロック抗体の両方に対するエピトープが含ま
れている場合、中和エピトープに影響を及ぼすことなくブロック抗体エピトープ
を除去するようにポリペプチドを改変しなければならない。
【0017】 これら3つの判定基準を満たす候補ワクチンポリペプチドの設計を支援するう
えで、MSP-1 C末端断片の三次元構造を決定することが重要である。なぜなら、
これは、この断片との抗体相互作用部位をマッピングするのに役立つからである
。従って、本発明者らは、NNR法を用いて、ジスルフィド結合のパターンを含め
てMSP-1 C末端の溶液構造を決定した。
【0018】 本発明者らは、中和抗体の結合に影響を及ぼすことなくそれぞれのブロックモ
ノクロナール抗体の結合を防止するアミノ酸置換をMSP-119の配列中で行った。M
SP-119の三次元構造を決定することにより、本発明者らは、これらの抗体結合部
位が三次元構造中のどこに位置するかを同定した。これにより、類似の性質を有
する他のアミノ酸置換を行うことが可能になった。本発明者らは、それぞれが1
種以上のブロック抗体の結合に影響を及ぼす数種の置換を組み合わせて単一分子
に導入できることおよびこれらの改変分子が中和抗体との結合を持続するがいず
れのブロック抗体とも結合しないことを明らかにした。そのような改変分子は、
各個体を免疫すべくマラリアワクチンとして使用した場合、防御中和抗体応答を
誘発するうえで天然または野生型のタンパク質構造よりもかなり有効であること
が期待される。更に、本発明者らは、中和抗体の結合に影響を及ぼさないが分子
の免疫原性の増大に寄与しうる他の改変を分子の一次構造中で行った。免疫原性
の向上(例えば、残りのMSP-142kDa断片と改変MSP-119との組み合わせ)および追
加のT細胞エピトープの提供を行うためにMSP-1の他の部分を含有してしても含有
していなくてもよい改変MSP-119構造体は、単独のときも他の担体に結合したと
きも、こうした改変の施されていない等価な構造体よりも有効なワクチンであろ
う。
【0019】 従って、本発明は、プラスモディウムのメロゾイト表面タンパク質-1(MSP-1)
のC末端断片の天然に存在しない変異体であって、(i) プラスモディウムMSP-142 のタンパク質分解開裂を阻害する第2の抗体の結合をブロックしうる少なくとも
1種の第1の抗体に対する親和性が、天然に存在するプラスモディウムMSP-119
比較して小さく、かつ(ii) 該第2の抗体に対する親和性が、天然に存在する該プ
ラスモディウムMSP-119と比較して実質的に同等である変異体を提供する。
【0020】 好ましくは、プラスモディウムMSP-119およびMSP-142は、プラスモディウム
ファルシパルムMSP-119およびMSP-142である。
【0021】 第1の抗体は、好ましくは、mAbs 1E1、2.2、7.5、9C8および111.4から選択さ
れる。第2の抗体は、好ましくは、mAbs 12.8、12.10および5B1から選択される。
【0022】 本発明は更に、プラスモディウムメロゾイト表面タンパク質-1(MSP-1)のC末端
断片の天然に存在しない変異体であって、配列番号1として示されているプラス
モディウム ファルシパルム MSP-119アミノ酸配列中のアミノ酸残基14、15、27
、31、34、43、48および53のいずれか、または他のプラスモディウムMSP-119
リペプチド中のそれらと等価な位置にアミノ酸改変を含んでなる変異体を提供す
る。
【0023】 好ましくは、上記改変は、Gln14→Arg、Gln14→Gly、Asn15→Arg、Glu27→Tyr
、Leu31→Arg、Tyr34→Ser、Tyr34→Ile、Glu43→Leu、Thr48→LysおよびAsn53
→Arg、ならびに他のプラスモディウムMSP-119ポリペプチド中のそれらに相当す
るものから選択される置換である。より好ましくは、該置換は、[Glu27→Tyr、L
eu31→ArgおよびGlu43→Leu]、[Glu27→Tyr、Leu31→Arg、Tyr34→SerおよびGlu
43→Leu]、[Asn15→Arg、Glu27→Tyr、Leu31→ArgおよびGlu43→Leu]ならびに他
のプラスモディウムMSP-119ポリペプチド中のそれらに相当するものから選択さ
れる置換の組み合わせである。
【0024】 好ましい実施形態では、本発明の変異体MSP-1ポリペプチドには更に、配列番
号1として示されているプラスモディウム ファルシパルムMSP-119アミノ酸配列
中のCys12および/またはCys28に突然変異が含まれている。好ましくは、そのよ
うな改変は、Cys12→IleとCys28→Trp、およびCys12→AlaとCys28→Pheから選択
される置換である。
【0025】 最も好ましくは、置換は、[Cys12→Ile、Asn15→Arg、Glu27→Tyr、Cys28→Tr
p、Leu31→Arg、Glu43→Leu]、[Cys12→Ile、Asn15→Arg、Glu27→Tyr、Cys28→
Trp、Leu31→Arg、Glu43→Leu、Asn53→Arg]、[Cys12→Ile、Asn15→Arg、Glu27
→Tyr、Cys28→Trp、Leu31→Arg、Tyr34→Ser、Glu43→Leu、Asn53→Arg]ならび
に他のプラスモディウムMSP-119ポリペプチド中のそれらに相当するものから選
択される組み合わせである。
【0026】 本発明はまた、ワクチン組成物の調製に使用するためのプラスモディウムMSP-
1変異体を産生する方法であって、(i) プラスモディウムMSP-142のタンパク質分
解開裂を阻害する第2の抗体の結合をブロックしうる少なくとも1種の第1の抗体
に対する親和性が、天然に存在するプラスモディウムMSP-119と比較して小さく
、かつ(ii) 該第2の抗体に対する親和性が、天然に存在する該プラスモディウム
MSP-119と比較して実質的に同等である誘導体が得られるように、プラスモディ
ウムMSP-1 C末端断片中の1個以上のアミノ酸残基を改変することを含んでなる方
法を提供する。特に、本発明の方法には、好ましくは表2に示されている三次元N
MRモデル構造を参照することにより候補アミノ酸残基を選択することが予備的ス
テップとして含まれていることが好ましい。より具体的には、3Dモデル構造を使
用して表面露出アミノ酸残基を選択する。有利には、正しく折り畳まれないポリ
ペプチドを除外するために変異体の三次元構造をコンピュータモデリングする更
なるステップが含まれる。
【0027】 本発明はまた、本発明の方法によって得られる天然に存在しないプラスモディ
ウムMSP-1変異体を提供する。
【0028】 更なる態様において、本発明は、本発明の変異体をコードするポリヌクレオチ
ドであって、宿主細胞中で該ヌクレオチドの発現を指令しうる調節配列に機能し
うる形で連結されたポリヌクレオチドを提供する。宿主細胞はピヒア・パストリ
ス細胞であってよい。また本発明のポリヌクレオチドを含んでなる、ウイルスベ
クターなどの核酸ベクター、および本発明のヌクレオチドまたはベクターを含ん
でなる宿主細胞も提供される。
【0029】 他の態様において、本発明は、本発明の変異体、本発明のポリヌクレオチドま
たは本発明のベクターを製薬上許容される担体または希釈剤と一緒に含んでなる
医薬組成物を提供する。
【0030】 好ましくは、組成物には更に、天然に存在しないMSP-119に共有結合しうる、M
SP-133またはその断片またはそれらの誘導体などの免疫原性プラスモディウムポ
リペプチドまたはその断片またはそれらの誘導体が含まれている。野生型MSP-11 9 配列を使用しない方が好ましい。更なる免疫原性ペプチドは、MSP-119に対して
上述した方法と同じような方法でそれ自体を誘導体化することが可能である。こ
の場合、中和抗体の結合に影響を及ぼすことなくブロック抗体の結合を防止する
ために、ペプチド中に存在するエピトープを同定し、改変してもよい。これらの
エピトープは、先に記載の第1の抗体と類似した性質、例えば、結合親和性を有
する抗体に結合しうる。更なる免疫原性ペプチドには、そのアミノ酸配列中にそ
のような改変が数箇所含まれていてもよい。
【0031】 本発明はまた、抗MSP-1抗体を産生する方法であって、本発明のポリペプチド
変異体、または本発明のポリヌクレオチドまたは本発明のベクターを哺乳動物、
典型的には、非ヒト哺乳動物に投与することを含んでなる方法を提供する。
【0032】 好ましい実施形態において、本発明は、ポリクロナール抗MSP-1抗体を産生す
る方法であって、本発明のポリペプチド変異体、または本発明のポリヌクレオチ
ドまたは本発明のベクターを哺乳動物、典型的には、非ヒト哺乳動物に投与して
該哺乳動物から血清を抽出することを含んでなる方法を提供する。また、該方法
により産生される抗体も提供される。
【0033】 本発明のポリペプチド、ヌクレオチドおよびベクターは、プラスモディウム種
、特に、プラスモディウム ファルシパルムに起因するマラリアを治療および/
または予防する方法に使用できる。従って、本発明は、プラスモディウム ファ
ルシパルムに起因するマラリアに対する免疫性を誘発する方法であって、そのよ
うな免疫性を必要とする個人に、本発明の変異体、ポリヌクレオチドまたはベク
ターを有効量で投与することを含んでなる方法を提供する。
【0034】 また、哺乳動物を免疫する方法であって、本発明の変異体、ポリヌクレオチド
またはベクターを有効量で投与することを含んでなる方法も提供される。特に、
該哺乳動物はマラリアに対して免疫される。好ましくは、哺乳動物はヒトである
【0035】 本発明はまた、ヒト患者のマラリア感染症を治療する方法であって、本発明の
医薬組成物を有効量で該患者に投与することを含んでなる方法を提供する。
【0036】 本発明者らは更に、本発明に従って、プラスモディウムMSP-1ポリペプチドを
コードする核酸であって、異種宿主細胞中での発現に対して最適化された核酸を
提供する。好ましくは、異種宿主はピヒア・パストリス細胞である。MSP-1ポリ
ペプチドは、図2Cおよび2Eに示されている配列を含むMSP-142ポリペプチド、図2
Cに示されている配列を含むMSP-119ポリペプチド、および図2Eに示されている配
列を含むMSP-133ポリペプチドからなる群より選択することが可能である。最適
化された核酸には、図2A、図2Bおよび図2Dの配列から選択される配列が含まれて
いてもよい。本発明者らは更に、そのような核酸を含んでなるベクター、そのよ
うなベクターを含んでなる宿主細胞、および製薬上許容される担体または希釈剤
と一緒にそのような核酸またはベクターを含んでなる医薬組成物を提供する。医
薬組成物には更に、免疫原性プラスモディウムポリペプチドまたはその断片また
はそれらの誘導体が含まれていてもよい。
【0037】発明の説明 一般的には本明細書に記載の技法は周知であるが、特に、Sambrookら「分子ク
ローニング・実験室マニュアル」(Molecular Cloning, A Laboratorv Manual) (
1989)およびAusubelら「分子生物学における最近のプロトコル」(Current Proto
cols in Molecular Biology) (1995), John Wiley & Sons, Inc.を参照されたい
【0038】A. MSP-1変異体ポリペプチド 本発明の変異体MSP-1ポリペプチドについてプラスモディウム ファルシパルム MSP-1アミノ酸配列を参照しながら説明する。しかしながら、特に記載のない限
り、MSP-1ポリペプチドを参照するいかなる場合においても、ヒトに感染するP.
ビバックス(P. vivax)、P.マラリアエ(P. malariae)およびP.オバール(P. ovale
)、およびマウスに感染するP.ヨエリ(P. yoelii)のような他のプラスモディウム
種に見いだされるMSP-1の相同体が包含される。
【0039】 本発明の変異体MSP-1ポリペプチドは、配列番号2または3に示されているプラ
スモディウム ファルシパルム MSP-142ポリペプチドのC末端断片をベースとして
いる。そのようなポリペプチドには、MSP-119領域(配列番号1)の一部分または全
部、好ましくはMSP-119に見いだされるドメイン1および/またはドメイン2 EGF
様配列(それぞれ配列番号1のアミノ酸1〜47およびアミノ酸48〜96の付近)の少な
くとも実質的に全部が含まれるであろう。広範な株に対するワクチンとして変異
体の有効性を増大させるために、単一種のほとんどの寄生虫、好ましくはすべて
の寄生虫で保存されている領域を使用することが特に好ましい。
【0040】 本発明の変異体MSP-1ポリペプチドには、MSP-1ポリペプチドに結合するブロッ
ク抗体の能力を低減する、それらの一次アミノ酸配列に対する改変体が含まれる
。更に、作製される改変体はいずれも、MSP-1変異体に対する中和抗体の親和性
が、天然に存在するMSP-1ポリペプチド(例えば、配列番号2または3に示されてい
る配列を有するMSP-142ポリペプチド)に対する中和抗体の親和性と実質的に同じ
となるように、中和抗体により認識されるエピトープを保持していなければなら
ない。ブロック抗体の結合を阻害することが最重要の目的であるので、中和抗体
の結合が若干低減しても許容されよう。また、ブロック抗体の結合が効果的に低
減すれば、全体としてのワクチン効力の見地からは、中和抗体の結合のわずかな
低減は補償されるであろう。
【0041】 本発明に関して、中和抗体とは、マラリア原虫の複製を阻害する抗体である。
実施例で参照されているmAbs 12.8、12.10および5B1を含めてポリクロナール抗
体およびモノクロナール抗体である様々な中和抗体が当技術分野で知られている
。中和抗体の活性は当技術分野で公表された種々の方法で測定できる。例えば、
Blackmanら、1994に記載の便利なアッセイ方法には、メロゾイトの調製物(Black
manら、1993; Mremaら、1982)を使用してMSP-142からMSP-133およびMSP-119への
開裂を測定することが含まれる。簡潔に述べると、新たに単離されたメロゾイト
を氷冷緩衝液中で洗浄し、約2×109個のメロゾイトのアリコートに分割する。各
アリコートに試験抗体を添加し、サンプルを37℃で1時間インキュベートする。
次いで、非還元条件下で12.5%ポリアクリルアミドゲルを用いてサンプルをSDS-P
AGEに付し、ウェスタンブロットし、MSP-133に対する抗血清を用いてブロットを
プローブする。対照サンプルでは、2つの主要なバンド、すなわち、MSP-142に対
応するバンドとMSP-133に対応するより低分子量のバンドが観測される。中和抗
体によりMSP-142の二次タンパク質分解プロセシングが阻害された結果として、
より低分子量のバンドの量は低減されるであろう。
【0042】 この方法は、ブロック抗体として機能すると考えられる抗体の存在下で中和抗
体の効力を評価するのに特に好ましい方法である。候補となる競合的ブロック抗
体を試験する場合、インキュベーション前にブロック抗体と共にメロゾイトサン
プルを氷上で15分間プレインキュベートした後、先に述べたように中和抗体と共
に37℃で1時間インキュベートする。このように、かかるアッセイ方法を用いて
ブロック抗体を容易に同定および/または特性付けすることができる。
【0043】 他のアッセイ方法としては、Blackmanら、1990に記載のメロゾイト侵入阻害試
験が挙げられる。
【0044】 以上に述べたように、ブロック抗体は、本発明に関して、MSP-1への中和抗体
の結合を阻害するがそれ自体は赤血球へのマラリア原虫の侵入を阻害しない抗体
として定義される。このようにブロック抗体は、中和抗体の中和機能を「ブロッ
ク」する。実施例で参照されているmAb 1E1、2.2、7.5および111.4を含めて様々
なブロック抗体が当技術分野で特性付けされている。先に説明したように、中和
抗体の機能に及ぼす影響を試験するアッセイを用いてブロック抗体を便利に同定
および/または特性付けすることができる。
【0045】 本発明のMSP-1変異体を産生するために行いうる改変としては、置換、欠失お
よび挿入が挙げられる。ポリペプチドの二次/三次構造の破壊を最小限に抑える
ために、置換を使用することが特に好ましい。更に、特に好ましい置換は、脂肪
族非極性残基を帯電極性残基と交換する場合のように一方のクラスのアミノ酸を
他方のクラスのアミノ酸と交換する置換である。例えば、20種の天然に存在する
アミノ酸は4つの主要グループ(脂肪族非極性グループ[G、A、P、I、LおよびV]、
極性非帯電グループ[C、S、T、M、NおよびQ]、極性帯電グループ[D、E、Kおよび
R]ならびに芳香族グループ[H、F、WおよびY])に分けることが可能であり、一方
のグループに属するアミノ酸を他方のグループに属するアミノ酸と交換すること
が好ましい。
【0046】 他の可能性としては、正に帯電した側鎖を負に帯電した側鎖と交換すること、
大きな側鎖を有するアミノ酸をより小さな側鎖を有するアミノ酸または側鎖のな
いアミノ酸(グリシン)と交換すること、極性アミノ酸を帯電した極性アミノ酸と
交換すること、大きな芳香族アミノ酸を小さな側鎖を有するアミノ酸と交換する
こと、ならびにジスルフィド結合に関与するシステイン残基を交換することが挙
げられる。
【0047】 特に好ましい改変は、配列番号1として示されているプラスモディウム ファル
シパルム MSP-119のアミノ酸配列中のアミノ酸残基14、15、27、31、34、43、48
および53のいずれか1つあるいは他のプラスモディウムMSP-119ポリペプチド中
のそれらと等価な位置のいずれか1つにおけるアミノ酸改変である。これらの残
基はいずれもほとんどEGF様ドメイン1内に存在する。いくつかの抗体のエピトー
プにはEGF様ドメイン2内に存在するアミノ酸配列が含まれていることが知られて
いる。従って、EGF様ドメイン2中で同等な改変を行うことも可能である。改変の
好ましい例としては、次の置換Gln14→Arg、Gln14→Gly、Asn15→Arg、Glu27→T
yr、Leu31→Arg、Tyr34→Ser、Tyr34→Ile、Glu43→Leu、Thr48→Lysおよび/ま
たはAsn53→Arg、および他のプラスモディウムMSP-119ポリペプチド中の、それ
らに相当するものが挙げられる。
【0048】 1個よりも多くの改変を行うこと、すなわち、2個以上の改変または3個以上の
改変のように改変の組み合わせを用いることが特に好ましい。好ましい実施形態
において、本発明のMSP-1改変体には、[Glu27→Tyr、Leu31→ArgおよびGlu43→L
eu]、[Glu27→Tyr、Leu31→Arg、Tyr34→SerおよびGlu43→Leu]、[Asn15→Arg、
Glu27→Tyr、Leu31→ArgおよびGlu43→Leu]、および他のプラスモディウムMSP-1 19 ポリペプチド中のそれらに相当するものから選択されるアミノ酸置換の組み合
わせが含まれる。
【0049】 特に好ましい組み合わせには更に、ジスルフィド結合を分断するCys12および
/またはCys28 (および/またはEGF様ドメイン2中のそれらと等価な残基)に対す
る改変が含まれる。好ましくは、そのような改変は、Cys12→IleとCys28→Trp、
およびCys12→AlaとCys28→Pheから選択される置換である。
【0050】 最も好ましくは、[Cys12→Ile、Asn15→Arg、Glu27→Tyr、Cys28→Trp、Leu31
→Arg、Glu43→Leu]、[Cys12→Ile、Asn15→Arg、Glu27→Tyr、Cys28→Trp、Leu
31→Arg、Glu43→Leu、Asn53→Arg]、[Cys12→Ile、Asn15→Arg、Glu27→Tyr、C
ys28→Trp、Leu31→Arg、Tyr34→Ser、Glu43→Leu、Asn53→Arg]、および他のプ
ラスモディウムMSP-119ポリペプチド中のそれらに相当するものから選択される
組み合わせである。
【0051】 置換は、天然に存在するアミノ酸を使用することに限定されるものではなく、
特に、組換え技術ではなく固相合成を使用して変異体を化学的に合成する場合、
天然に存在しないアミノ酸類似体を使用することも可能である。
【0052】 MSP-1アミノ酸配列に対する改変は、ポリメラーゼ連鎖反応を用いる部位特異
的突然変異誘発のような標準的方法を使用して行うことが可能である。このほか
、固相合成法により変異体を取得することも可能である。
【0053】 一次アミノ酸配列の改変により産生された変異体MSP-1ポリペプチドが先に規
定した判定基準に適合しているかを調べるために、少なくとも1種の中和抗体お
よび少なくとも1種のブロック抗体の、変異体ポリペプチドに対する親和性を天
然に存在するMSP-1配列に対する親和性と比較して試験することが可能である。
理想的には、各タイプの抗体を2種以上、例えば、2種または3種使用しなければ
ならない。
【0054】 変異体および野生型のポリペプチドに結合する抗体の能力は、抗体-エピトー
プ結合を測定するための当技術分野で利用可能な様々な方法のうちのいずれかを
用いて測定することが可能である。そのような方法の1つが実施例に記載されて
いる。この方法には、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)のようなタンパ
ク質タグを有する融合タンパク質として発現されるMSP-1配列の使用が含まれる
。これらのGST-融合タンパク質は、典型的には、グルタチオンセファロースビー
ズやBIAcoreセンサーチップのような固相に固定される。融合タンパク質へのモ
ノクロナール抗体などの抗体の結合は、ウェスタンブロットのような標準的な方
法および/または125Iのような放射線標識で抗体を標識する方法により測定する
ことが可能である。BIAcore技術を使用すると結果の定量化が容易になる。
【0055】 好ましくは、試験されるブロック抗体のうちの少なくとも1種の結合の低減は
、一般にBIAcoreセンサーチップに固定された組換え発現MSP-1を用いて評価した
場合、野生型MSP-1と比較して少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、8
0%または90%である。これとは対照的に、試験される中和抗体のうちの少なくと
も1種、例えば、少なくとも2種または3種の中和抗体、より好ましくは試験され
る中和抗体のうちの少なくとも半分の中和抗体、より好ましくは試験される中和
抗体のうちの実質的にすべての中和抗体の結合は、50%未満、より好ましくは25%
未満低減する。試験判定基準に適合するかを確認するために試験する必要のある
中和抗体の数は、典型的には、異なる抗体3種〜5種を超えることはないであろ
う(実施例では3種の抗体が使用されている)。特に好ましい実施形態では、少な
くとも1種の抗体の結合が少なくとも10%増大する。
【0056】 実施例の表2に与えられている結果は、当業者にとって、本発明の変異体MSP-1
を産生するためにどの残基が改変可能であるかを決めるある程度の指針になる。
しかしながら、本明細書で初めて提供されたMSP-119の三次元溶液構造は、当業
者にとって、どの残基が変更可能であるかを決める更に詳細な指針となる。特に
、エピトープは、MSP-119断片の外側の水系環境に露出されることが期待される
。従って、表面露出アミノ酸の位置を教示する正確な構造情報を提供することに
より、当業者は、これらの残基を改変の標的にすることができる。このデータは
表A/Bに与えられており、またProtein Data Bankにも寄託した(PDB受託番号1CEJ
)。これにより、当業者は、三次元構造中の個々のアミノ酸の正確な位置を同定
することができる。典型的には、Insight II、MOLSCRIPT GRAS PおよびRASMOLの
ような当技術分野で周知の好適なソフトウェアでデータを処理する。
【0057】 更に、中和抗体の結合に影響を及ぼすことなくブロック抗体の結合に影響を及
ぼす3次元構造中の改変位置を知ることにより、表面上かつ元の改変部の近傍に
存在し、改変タンパク質の性質を更に改良すべく容易に改変しうる他の残基を同
定することが可能である。これらの残基は、第1もしくは第2のEGF様モチーフ中
またはそれらの間の配列中のいずれに存在していてもよい。抗体結合部位は、ほ
ぼ5〜8アミノ酸の範囲に相当する体積を包含しうることが知られているので、こ
れらの隣接残基の改変によってもブロック抗体に対するタンパク質の親和性に影
響を及ぼしうることは明らかである。隣接アミノ酸を同定した後、上に概説した
原理に従ってそれを改変することができ、そしてタンパク質の全体的な抗原性お
よび免疫原性に対する改変の寄与を、単独の改変の場合または他の改変と組み合
わせた場合について評価することができる。中和抗体の結合に実質的な影響を及
ぼすことなくブロック抗体に対する親和性の低減に寄与するこうした変化を、改
良タンパク質に組み込むことができる。これは反復プロセスであってよい。
【0058】 更に、3D NMR構造を用いると、当業者は、例えば適切に折り畳むことのできな
い変異体を除外しうるように、特異的改変を有するMSP-119変異体の予備的コン
ピュータモデリング研究を行うことができるであろう。これは、試験する必要の
ある候補MSP-119変異体の数を最小限に抑えるのに役立つであろう。
【0059】 従って、本発明はまた、MSP-119 NMR構造のモデルを保存してなるコンピュー
タ読み取り可能な媒体を提供する。好ましい実施形態において、上記のモデルは
、表AおよびBに示されているNMRデータの全部または一部分から組み立てられる
【0060】 本発明の変異体には、場合により、変異体に更なる免疫原性を付与するために
、追加のMSP-1配列、特に、MSP-142のMSP-133領域中の一部分が含まれていても
よい。更に、有利には、T細胞応答を抑制および促進することが知られている追
加の配列が含まれる(すなわち、T細胞エピトープ)。抗原のプロセシングおよび
提示の経路を変更する改変等の、免疫原性を増大させる他の改変を行うことも可
能である。
【0061】 本発明のポリペプチド変異体は、典型的には、例えば以下に記載されているよ
うな組換え手段により作製される。しかしながら、固相合成のような当業者に周
知の方法を用いる合成手段により作製することも可能である。本発明のタンパク
質は、例えば、抽出および精製を助長するために、融合タンパク質として産生す
ることも可能である。融合タンパク質パートナーとしては、例えば、グルタチオ
ン-S−トランスフェラーゼ(GST)、6×His、GAL4 (DNA結合および/または転写
活性化ドメイン)およびβ-ガラクトシダーゼが挙げられる。融合タンパク質配列
を除去できるように、融合タンパク質パートナーと目的のタンパク質配列との間
にタンパク質分解開裂部位を導入すると便利なこともある。好ましくは、融合タ
ンパク質は、MSP-1変異体の免疫原性を阻害しないであろう。
【0062】 本発明のポリペプチドは、実質的に単離された形態であってもよい。ポリペプ
チドは、ポリペプチドの所期の目的を損なうことのない担体または希釈剤と混合
可能であり、そして依然として実質的に単離された状態であるとみなしうること
は理解されるであろう。本発明のポリペプチドは、実質的に精製された形態であ
ってもよく、この場合、一般的には、調製物中のポリペプチドのうちの90%より
多く、例えば、95%、98%または99%が本発明のポリペプチドであるように調製物
中にポリペプチドが含まれるであろう。
【0063】B. ポリヌクレオチドおよびベクター 以上に説明したように、本発明の変異体は、標準的な方法を用いて組換えによ
り産生することが可能である。従って、本発明はまた、本発明のポリペプチドMS
P-1変異体をコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリヌクレオチ
ドにはDNAまたはRNAが含まれていてもよい。それらはまた、合成または改変され
たヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチ
ドに対する多種多様な改変が当技術分野で知られている。これらには、メチルホ
スホネートバックボーンおよびホスホロチオエートバックボーン、分子の3’お
よび/または5’末端におけるアクリジンまたはポリリシン鎖の付加が含まれる
。本発明の目的に対して、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、当技術分野で
利用可能な方法のいずれかにより改変できることは理解されよう。いくつかの改
変は、本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性または寿命を増大させるために
行うことが可能である。遺伝暗号の縮重の結果として、異なるポリヌクレオチド
が同じポリペプチドをコードし得ることは当業者には理解されよう。
【0064】 本発明のポリヌクレオチドは、複製可能な組換えベクター中に組み込むことが
できる。ベクターは、適合宿主細胞中で核酸を複製するために使用することが可
能である。従って、更なる実施形態において、本発明は、本発明のポリヌクレオ
チドを複製可能なベクターに導入し、ベクターを適合宿主細胞に導入し、そして
ベクターの複製を引き起こす条件下で宿主細胞を増殖させることによって、本発
明のポリヌクレオチドを作製する方法を提供する。ベクターは宿主細胞から回収
することが可能である。好適な宿主細胞としては、大腸菌(E. coli)のような細
菌、酵母、哺乳動物細胞系および他の真核細胞系、例えば、昆虫Sf9細胞が挙げ
られる。宿主細胞は、ピヒア・パストリスのようなメチロトローフ酵母であって
もよい。
【0065】 天然または変異体のMSPポリペプチド(本発明のポリペプチドを含む)のコード
配列は、宿主細胞中で最適な発現が行われるように改変することが可能である。
例えば、N-グリコシル化のような二次修飾は、そのような修飾に必要な配列を除
去することによって防止することが可能である。この代わりにまたはこれに加え
て、宿主細胞中で最適な発現が行われるようにコドン使用についてポリペプチド
の配列を改変することが可能である。配列を突然変異させる方法は、当技術分野
で公知である。このほか、オーバーラップした合成オリゴヌクレオチドを用いて
PCR遺伝子アセンブリーの手段により改変コード配列を作製することが可能であ
る(Stemmerら、1995; Withers-Martinezら、1999)。
【0066】 好ましくは、ベクター中の本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコー
ド配列の発現を可能にする調節配列に機能しうる形で連結されている。すなわち
、このベクターは発現ベクターである。「機能しうる形で連結された」という用
語は、記載の成分が、所期の方法で機能しうるような関係で近接して配置されて
いることを意味する。コード配列に「機能しうる形で連結された」調節配列は、
対照配列に適合した条件下でコード配列の発現が行われるように連結されている
【0067】 そのようなベクターは、本発明のポリペプチドの発現が行われるように、上記
の標準的な方法を用いて好適な宿主細胞に形質転換またはトランスフェクトする
ことが可能である。このプロセスには、ポリペプチドをコードするコード配列の
ベクターによる発現が行われる条件下で、上記の発現ベクターで形質転換された
宿主細胞を培養すること、および場合により発現されたポリペプチドを回収する
ことが含まれていてもよい。
【0068】 ベクターは、例えば、複製起点、場合により該ポリヌクレオチドの発現に対す
るプロモーターおよび場合によりプロモーターのレギュレーターを有するプラス
ミドベクターまたはウイルスベクターであってもよい。ベクターには、1個以上
の選択可能なマーカー遺伝子、例えば、細菌プラスミドの場合にはアンピシリン
耐性遺伝子または哺乳動物ベクターの場合にはネオマイシン耐性遺伝子が含まれ
ていてもよい。ベクターは、例えば、RNA産生のために、または宿主細胞をトラ
ンスフェクトまたは形質転換するためにin vitroで使用することが可能である。
ベクターはまた、例えば、遺伝子療法の場合のようにin vivoでの使用に適合さ
せることも可能である。
【0069】 プロモーター/エンハンサーならびに他の発現調節シグナルは、発現ベクター
の設計の対象となる宿主細胞に適合させるように選択するこが可能である。例え
ば、原核プロモーターを使用することが可能であり、特に、E. coli株(例えば、
E. coli HB101またはDH5α)に使用するのに好適な原核プロモーターを使用する
ことが可能である。
【0070】 本発明のポリペプチドの発現を哺乳動物細胞中で行う場合、in vitroまたはin
vivoのいずれにおいても、哺乳動物プロモーターを使用することが可能である
。組織特異的プロモーターを使用することも可能である。モロニーマウス白血病
ウイルス長末端リピート(MMLV LTR)、ラウス肉腫ウイルス(RSV) LTRプロモータ
ーのプロモーター、SV40プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV) IEプロ
モーター、単純ヘルペスウイルスプロモーターまたはアデノウイルスプロモータ
ーなどのウイルスプロモーターを使用することも可能である。これらのプロモー
ターはいずれも、当技術分野において容易に入手可能である。
【0071】 C. 投与 本発明の変異体MSP-1ポリペプチドおよび核酸分子は、動物、特に、ヒトのマ
ラリアを治療または予防するために使用することが可能である。
【0072】 本発明のポリペプチドは、直接的な注射により投与することが可能である。好
ましくは、ポリペプチドを製薬上許容される担体または希釈剤と組み合わせて医
薬組成物を作製する。好適な担体および希釈剤としては、リン酸緩衝生理食塩水
などの等張生理食塩水が挙げられる。組成物は、非経口投与、筋肉内投与、静脈
内投与、皮下投与、眼内投与または経皮投与のために製剤化することが可能であ
る。典型的には、各ポリペプチドは、0.01〜30μg/kg体重、好ましくは0.1〜10
μg/kg、より好ましくは0.1〜1μg/kg体重の用量で投与される。プラスモディウ
ム感染症を治療または予防する場合、以下に記載されているように、本発明のポ
リペプチドを用いて調製された抗体を使用することもできる。中和抗体、または
プラスモディウム抗原に対する特異性を保持しているそれらの断片は、本発明の
ポリペプチドと同様な方法で投与することができる。
【0073】 本発明のポリヌクレオチドは、裸の核酸構築物として直接投与することが可能
である。発現カセットを裸の核酸として投与する場合、核酸の投与量は、典型的
には、1μg〜10mg、好ましくは100μg〜1mgの範囲である。
【0074】 哺乳動物細胞による裸の核酸構築物の摂取は、数種の公知のトランスフェクシ
ョン法、例えば、トランスフェクション剤の使用を含む方法によって促進するこ
とが可能である。これらの薬剤の例としては、カチオン性薬剤(例えば、リン酸
カルシウムおよびDEAE-デキストラン)およびリポフェクション剤(例えば、lipof
ectam(商標)およびtranfectam(商標))が挙げられる。典型的には、組成物を生成
すべく、核酸構築物はトランスフェクション剤と混合される。
【0075】 このほか、プラスミドベクターまたはウイルスベクター、例えば、ワクシニア
ウイルスベクターなどを含めて核酸ベクターの一部分としてポリヌクレオチドを
投与することが可能である。本発明のウイルスベクターにより本発明のポリヌク
レオチドを細胞に送達する場合、ウイルスの投与量は、103〜1010pfu、好ましく
は105〜108pfu、より好ましくは106〜107pfuの範囲である。注射する場合、典型
的には、1〜10μlのウイルスを製薬上許容される好適な担体または希釈剤中に加
えて投与する。
【0076】 好ましくは、送達ビヒクル(すなわち、例えば、裸の核酸構築物またはポリヌ
クレオチドを含むウイルスベクター)を製薬上許容される担体または希釈剤と組
み合わせて医薬組成物を生成する。好適な担体および希釈剤としては、リン酸緩
衝生理食塩水などの等張生理食塩水が挙げられる。組成物は、非経口投与、筋肉
内投与、静脈内投与、皮下投与、眼内投与または経皮投与のために製剤化するこ
とが可能である。
【0077】 特定の患者および条件のいずれに対しても当業者は最適な投与経路および用量
を容易に決定することができるであろうから、記載されている投与経路および用
量は、単に指針として示されているにすぎない。
【0078】D. ワクチンの調製 ワクチンは、本発明の1種以上のポリペプチドから調製することが可能である
。それらにはまた、当技術分野で公知の1種以上の免疫原性プラスモディウムポ
リペプチドが含まれていてもよい。従って、本発明のワクチンには、本発明の1
種以上のポリペプチドと、場合により、例えば、無性血液段階タンパク質: 頂端
メロゾイト抗原-1、赤血球結合抗原175、赤血球膜タンパク質-1; 肝臓段階タン
パク質: 肝臓段階抗原-1および3; スポロゾイト段階タンパク質: サーカムスポ
ロゾイトタンパク質、トロンボスポンジン関連接着性タンパク質; および有性段
階タンパク質Pfs25およびPfs28ポリペプチドならびにそれらの免疫原性断片から
選択される1種以上のポリペプチドとが含まれていてもよい。好ましくは、当技
術分野で公知の他の免疫原性プラスモディウムポリペプチドは、野生型MSP-119
配列は含まない。
【0079】 有効成分として免疫原性ポリペプチドを含有するワクチンの調製については、
当業者には公知である。典型的には、そのようなワクチンは、液状の溶液または
懸濁液のいずれかの注射可能な形態で調製されるが、注射前に液体に溶解または
懸濁させるのに好適な固体の形態で調製することも可能である。また、調製物を
乳化したりタンパク質をリボソーム中に封入したりすることも可能である。有効
免疫原性成分は、多くの場合、製薬上許容されかつ有効成分と共存し得る賦形剤
と混合される。好適な賦形剤としては、例えば、水、生理食塩水、デキストロー
ス、グリセロール、エタノールなどおよびそれらの組み合わせが挙げられる。更
に、所望により、ワクチンには、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および/また
はワクチンの有効性を増大させるアジュバントのような補助物質が少量含まれて
いてもよい。有効と思われるアジュバントとしては、例えば、水酸化アルミニウ
ム、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-MDP)、N-アセチ
ル-ノル-ムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP 11637、nor-MDPと呼ばれ
る)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’-
2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミ
ン(CGP 19835A、MTP-PEと呼ばれる)、および細菌から抽出された3種の成分が含
まれるRIBI、モノホスホリルリピドA、トレハロースジミコレートならびに2%ス
クアレン/Tween 80エマルジョン中の細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)が挙げられるが、
これらに限定されるものではない。アジュバントの有効性は、種々のアジュバン
トをも含有するワクチン中に目的のポリペプチドを加えて投与した結果として生
じる、MSP-1抗原配列を含有する免疫原性ポリペプチドを指向する抗体の量を測
定することによって決定することが可能である。
【0080】 ワクチンは通常、注射により、例えば皮下注射または筋肉内注射のいずれかに
より、非経口的に投与される。他の投与形式のために好適な別の製剤としては、
座剤およびある場合には経口製剤が挙げられる。座剤の場合、伝統的結合剤およ
び担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含むもの
であってもよい。そのような座剤は、有効成分を0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%
の範囲で含有する混合物から形成することが可能である。経口製剤は、例えば、
医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、
ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムなどのような一般に利用
される賦形剤を含んでいる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、錠剤、ピル剤、
カプセル剤、徐放性製剤、または散剤の形態をとり、有効成分を10%〜95%、好ま
しくは25%〜70%含有している。ワクチン組成物が凍結乾燥されている場合、凍結
乾燥された分物質を投与前に再構成してから、例えば、懸濁液として投与しても
よい。再構成は、好ましくは緩衝液中で行われる。
【0081】 患者に経口投与するためのカプセル剤、錠剤およびピル剤は、例えば、Eudrag
it “S”、 Eudragit “L”、セルロースアセテート、セルロースアセテートフ
タレートまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有する腸溶剤コーティ
ングが施されたものであってもよい。
【0082】 本発明のポリペプチドは、中性形態または塩形態としてワクチン中に製剤化す
ることが可能である。製薬上許容される塩としては、酸付加塩(ペプチドの遊離
アミノ基ととともに形成される)が挙げられ、これらは、無機酸、例えば、塩酸
またはリン酸、あるいは有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸およびマレイ
ン酸ととともに形成される。また、遊離カルボキシル基と一緒になって形成され
る塩は、無機塩基、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモ
ニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄、ならびに有機塩基、例えば、
イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジ
ンおよびプロカインから誘導することが可能である。
【0083】E . ワクチンの用量および投与 ワクチンは、投与製剤に適合した方法でかつ予防および/または治療に有効な
量で投与される。投与量は、通常、1回の投与につき抗原5μg〜250μgの範囲で
あり、この量は、治療を受ける被験者、抗体を合成する被験者の免疫系の能力、
および所望の防御の度合いに依存する。投与する必要のある有効成分の正確な量
は、当業者の判断による場合もあり、また各被験者に特有な場合もある。
【0084】 ワクチンは、単回投与スケジュールで与えてもよいが、好ましくは多数回投与
スケジュールで与えられる。多数回投与スケジュールとは、ワクチン接種の初め
の段階では1〜10の別々の投与を行い、続いて、免疫応答を保持および強化する
のに必要な時間間隔で別の投与を行うスケジュールである。例えば、二度目の投
与を1〜4ヶ月後に行い、必要な場合には数ヵ月後に更なる投与を行う。また、投
与計画は、少なくとも部分的には、個人の必要により決定され、そして当業者の
判断に依存するであろう。
【0085】 更に、免疫原性MSP-1抗原を含有するワクチンは、免疫グロブリンなどの他の
免疫調節剤と組み合わせて投与してもよい。
【0086】 F. 本発明のポリペプチドに対する抗体の調製 以上の記載内容に従って調製された変異体MSP-1ポリペプチドは、ポリクロナ
ール抗体およびモノクロナール抗体の両方を含めて抗体を産生するために使用す
ることができる。ポリクロナール抗体が望まれる場合、MSP-1エピトープを有す
る免疫原性ポリペプチドで所定の哺乳動物(例えば、マウス、ウサギ、ヤギ、ウ
シなど)を免疫する。免疫した動物に由来する血清を回収し、既知の手法に従っ
て処理する。MSP-1エピトープに対するポリクロナール抗体を含有する血清が他
の抗原に対する抗体を含有している場合、イムノアフィニティクロマトグラフィ
ーによりポリクロナール抗体を精製することができる。ポリクロナール抗血清の
産生および処理の方法は、当技術分野で公知である。
【0087】 また、本発明のポリペプチド中のMSP-1エピトープを指向するモノクロナール
抗体は、当業者であれば容易に生成することができる。ハイブリドーマによりモ
ノクロナール抗体を作製する一般的手順は周知である。不死抗体産生細胞系は、
細胞融合によって、更には、腫瘍原性DNAによるBリンパ球の直接的形質転換また
はエプスタイン-バーウイルスによるトランスフェクションのような他の方法に
よって形成することができる。MSP-1エピトープに対して生成されたモノクロナ
ール抗体のパネルは、種々の性質に関して、例えば、イソタイプ親和性およびエ
ピトープ親和性に関してスクリーニングすることができる。
【0088】 本発明のポリペプチドはまた、好ましくは天然マラリア感染症に既に罹患して
いる個体からファージディスプレイライブラリーの形態でクローン化された免疫
グロブリン重鎖および軽鎖の様々な領域を用いてヒトモノクロナール抗体を選択
するために使用することもできる。
【0089】 MSP-1エピトープを指向する抗体は、モノクロナール抗体およびポリクロナー
ル抗体のいずれについても、診断に特に有用であり、その中和抗体は、受動免疫
療法に有用である。モノクロナール抗体は、特に、抗イディオタイプ抗体を生成
するために使用することが可能である。抗イディオタイプ抗体とは、防御が望ま
れる感染因子の抗原の「内部イメージ」を有する免疫グロブリンである。
【0090】 抗イディオタイプ抗体を生成する方法は、当技術分野で公知である。また、こ
れらの抗イディオタイプ抗体は、プラスモディウム感染症の治療だけでなくMSP-
1抗原の免疫原性領域の解明にも有用であると思われる。上記の抗体フラグメン
ト、例えば、F(ab’)2、Fab、FacbおよびscFv断片を使用することも可能である
【0091】 以上に記載の本発明の種々の要素、態様および実施形態から得られる特徴は、
一般的には、必要な変更を加えて他の要素、態様および実施形態にも同じように
当てはまると解釈すべきである。
【0092】 次に、実施例により本発明について更に説明する。これらの実施例は、当業者
が本発明を実施する際に役立つように提示されたものであり、本発明の範囲をな
んら限定するものではない。実施例では図を参照する。図は以下の通りである。
【0093】実施例 材料および方法 タンパク質の発現およびNMR用の安定な同位体標識 6残基N末端Hisタグ(CACCATCATCATCATCAC)のコドンを含有するプライマーを用
いて、プラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)T9/94株断
片を含有するプラスミド(Blackman et al., 1991)から、Ventポリメラーゼ(New
England Biolabs)を用いるポリメラーゼ連鎖反応により、MSP-1 C末端断片のコ
ード配列をクローン化し、pPIC9Kベクター(Invitrogen)のSnaBI制限部位に挿
入した。この配列は、SWISS-PROT登録MSP1 PLAFW(受託番号P04933)の残基1526〜
1621に相当する。これは、配列...KR/EA/EA/YHHHHHHNISQ....SSSN〔ここで、ス
ラッシュはkex2およびSTE13プロセシング部位を表わしている〕を有するα因子
融合タンパク質を産生した。メチル栄養酵母であるコマガテラ(ピヒア)パスト
リス(Komagataella (Pichia) pastoris)プロテアーゼ欠失株SMD1168 (his4 pe
p4)の高コピー数形質転換体を、高G418耐性に関してスクリーニングすることに
より単離した(Clare et al., 1995)。
【0094】 緩衝化最少培地(100mM リン酸カリウム、pH6.0、酵母窒素原基礎培地(0.34 %
w/vol)(DIFCO: YNB、アミノ酸なし、(NH4)2SO4なし)、ビオチン(4×10-5 % w/vo
l)、Sigma消泡剤289(0.01% vol/vol)、ならびに以下に記載の炭素源および窒素
源)を用いて振盪式インキュベーター中で29.4℃でMut形質転換体を増殖させた
。非標識サンプルは、最初に、1 % w/vol (NH4)2SO4および1 % w/volグリセロー
ルを含有する培地中で増殖させ、そして炭素源として0.5 % CH3OHを含有する培
地に移すことにより誘導した。標識サンプルは、最初に、0.2 % w/vol [15N] (N
H4)2SO4 (Isotech)および0.5 % w/volグルコースまたは[13C6]-グルコース(Isot
ech)を含有する培地中で増殖させ、そして炭素源として0.5 % w/vol CH3OHまた
は[13C]-CH3OH (Isotech)を含有する培地に移すことにより誘導した。最初の培
養物は、150mlで約10 OD600の濃度になるまで増殖させ、次いで回収し、1.5 Lの
体積で1 OD600になるようにメタノール培地に再懸濁させた。7.5mlのCH3OHまた
は[13C]-CH3OHを毎日添加して4日間にわたりメタノール誘導培養物を増殖させ、
約18 OD600の最終濃度にした。このプロトコルにより、最終段階で最大収率の24
mg/Lの精製された13C/15N均一標識タンパク質が産生された(以下参照)。YNB
ベースの培地では、MSP-1 C末端断片の安定な同位体標識に関してFM22倍地(Laro
che et al., 1994)の約3倍の収量が得られた。
【0095】 低速遠心分離により細胞を取り出し、プロテアーゼ阻害剤を添加し(COMPLETE(
商標)錠剤、Boehringer-Mannheim; 1錠剤/500 ml上清)、そして上清を濾過滅菌
した。4℃の攪拌槽(Amicon, YM3膜)中で限外濾過により上清を約20倍に濃縮した
。KOHでpHを7.25に調節し、部分的N-グリコシル化MSP-1断片を、37℃で72時間か
けて5000 U PNGaseF (New England Biolabs)により脱グリコシル化した。炭水化
物を完全に除去した(電気泳動および質量スペクトルにより実証される)。このプ
ロセスで、恐らく、Asn 1残基がAspに変換された。低速遠心分離により上清を清
澄化し、最終濃度が0.3Mになるように5M NaClを添加し、サンプルを2ml Ni-NTA
アフィニティカラム(QIAGEN)にアプライし、洗浄し、製造業者の説明書に従って
250mMイミダゾールで溶出させた。50mMリン酸ナトリウム(pH 6.5)、50mM NaClに
対して溶出液を透析し、次いで、1ml Hi-Trap Qアニオン交換樹脂(Pharmacia)に
通してカラムに結合した折り畳み誤りのあるMSP-1を除去した。ウェスタンブロ
ットおよびエレクトロスプレー質量分析法によりMSP-1断片の特性決定を行った(
データは示さない)。予期された断片に相当する質量11607および11807Daの2つの
主要な種が観測されたほか、α因子分泌シグナルの不完全なSTE13プロセシング
から生じる追加のN末端Glu-Alaジペプチドを有する断片が観測された。
【0096】 0.01 % w/vol NaN3を含む90 % H2O/10 % D20または100 % D20のいずれか、50
mMリン酸ナトリウム、100 mM NaCl、pH 6.5 (ジュウテリウム同位体効果に対す
るpH補正なし)において、2.1〜2.6mMの濃度、0.6mlの量でNMR実験用のサンプル
を調製した。モル吸光係数の計算値5220リットル mol-1 cm-1を用いて280nmに
おけるUV吸光度からタンパク質の濃度を求めた。293Kにおいて上記の緩衝液中0.
12 mMのサンプルを平衡超遠心分離にかけることにより、タンパク質がモノマー
であることを実証した。
【0097】NMR実験およびデータ処理 ほとんどの実験は、それぞれ600MHzおよび500MHzで動作するVarian Unity分光
計およびUnity-Plus分光計を用いて298Kで行った。多次元実験(Clore & Gronen
born, 1998)ならびに共鳴帰属および構造決定のために使用した取得パラメータ
の詳細は表A/Bに与えられている。またそれらをProtein Data Bankデータベース
に寄託した(PDB受託番号1CEJ)。
【0098】 90度または72度シフトサインベル二乗(sinebell-squared)窓関数を用いてFeli
x 95.0または97.0 (Biosym/MSI)によりすべてのスペクトルを処理した。次元、
ゼロフィリング、および線形予測の詳細について表A/Bにまとめる。これらはBio
MagResBankに寄託した。四次元スペクトルおよびインターリーブスペクトルは、
内部で作成したマクロを用いてFelixで処理した。
【0099】 シグナルの帰属: 均一に13C/15N標識されたタンパク質に対して、主にCBCA(CO
)NHおよびCBCANHの実験により確立された結合度に基づいて逐次的帰属を行った
。側鎖スピン系の帰属は、13C/1H-HCCH-TOCSY実験から得られたデータを15N/1H-
TOCSY-HSQCおよび15N/1H-NOESY-HSQCならびにHNHAおよびHNHBの実験から得られ
た情報と関係付けることにより行った。側鎖の98%および主鎖アミド基の96%に対
して、1H、15Nおよび脂肪族13Cのシグナルの帰属が得られた。帰属のリストは表
A/Bに与えられている。またProtein Data Bankデータベースにも寄託した(PDB受
託番号1CEJ)。15N{1H}異核NOE実験は、先に記載されているように行った(Kay et
al., 1989; Polshakov et al., 1997)。
【0100】 距離の制限: NOEおよびROEから得られる主鎖プロトンと側鎖アミドプロトンと
の距離の制限は、主に、3D 15N-NOESY-HSQC、15N-ROESY-HSQC、および4D 13C-HM
QC-NOESY-15N-HSQCの実験から取得した。脂肪族プロトン間の距離の制限は、4D 13 C-HMQC-NOESY-13C-HSQC実験から取得した。D2O中での3D 13C-HMQC-NOESY実験
を用いて脂肪族プロトン/芳香族プロトン間NOEを同定し、2D NOESY実験を用いて
芳香族プロトン間NOEを測定した。2Dおよび3D実験、4D 13C-HMQC-NOESY-15N-HSQ
C実験、ならびに4D 13C-HMQC-NOESY-13C-HMQCスペクトルのピーク高さ測定に関
して、Felixを用いて体積積分によりクロスピークを定量化した。クロスピーク
を強、中および弱に分類し、それぞれ距離の制限を0〜2.8、0〜3.6、および0〜5
.5Åに設定した。主鎖アミドシグナルから得られる制限を最初はこのように処理
し、次に3D 15N-NOESY-HSQCデータを用いてより詳細に再調整することにより、2
.6、3.1、3.6、および4.1Åの最大距離をもつ4つのクラスに分類した。等価なプ
ロトンまたは立体帰属のなされていないプロトンのグループに対する制限は、r- 6 総和により処理した。ほとんどの残基内距離(HN-HβおよびHα-Hβ)を以下に記
載のχ1角度制限に変換し、これらの距離制限を最終リストに含めなかった。
【0101】 二面角の制限: β-メチレンプロトンのχ1角度および立体特異的帰属は、結合
定数および残基内ROE距離の情報を用いてグリッド検索プログラムAngleSearchに
より取得した(Polshakov et al., 1995)。結合定数の情報は、3J(HN-Hβ)および 3 J (CO-Hβ)に対するHNHBおよびHN(CO)HBスペクトル強度から取得し、残基内距
離(HN-HβおよびHα-Hβ)は、3D 15N-ROESY-HSQCおよび2D ROESY (D2O)実験から
取得した。3J(HN-Hα)結合定数は、HNHA実験から取得した。正のφ角(約-60度)
を有する残基は、HN(CO)HB実験での大きな残基内Hαクロスピーク強度と、HNHB
実験での強力なHα(i-1)クロスピークから得られる約-60°のy角とにより同定し
た。IleおよびLeu χ2角度ならびにLeu δ立体帰属は、LRCH実験から求めた。結
合定数に対する誤差および局所動的効果を説明するために、40度(χ12)およ
び50度(φ,ψ)の最小範囲を使用した。
【0102】 ジスルフィド架橋のパターン: NOEから得られた約550の明確な距離制限と36の
χ1およびφ二面角制限とを用いて、水素結合制限またはジスルフィド結合制限
を加えずに、シミュレーテッドアニーリングにより20構造の初期セットを計算し
た。可能性のある結合パターンを確定するために、これらの構造中のCys-Cys S
γ距離を調べた。4個のCys残基のジスルフィド架橋の形成(Cys12-Cys28、Cys78-
Cys92)については、これらのCys残基対のHβ-Hβ NOEの観察結果により、計算す
る前から既に高い確率で確定済みであった。初期構造を調べたところ、これらの
ジスルフィド架橋が確認されるとともに、残基Cys30とCys41の間のジスルフィド
架橋も示唆された。この際、N末端の構造はNMRデータから明確に規定することは
できなかったが、ドメイン-1内の第3のジスルフィド架橋(Cys7-Cys18)をデフォ
ルトで規定することが可能であった。合計X-PLORエネルギーおよび制限違反に関
して最良の6構造では各ドメイン内のジスルフィド結合パターンが[1-3, 2-4, 5-
6]のときに平均Cys-Cys Sγ距離が最小であり、この組み合わせのときだけすべ
てのCys残基がパートナーと3.5Å未満の距離で接触できることが示された。従っ
て、このジスルフィド結合パターンは両方のドメインに対する実験データと最も
良く一致した。また、後続の計算では、このパターンを制限として課した(最初
に、NOE形の距離の制限として)。[1-3, 2-4, 5-6]パターンは、EGF様ドメインに
対して期待されるパターンである。
【0103】 水素結合: 安定な水素結合に関与する非交換アミド基を、100% D2O中で観測し
たサンプルのスペクトルで同定した。Insight IIおよびHBPlus (McDonald et al
., 1994)プログラムを用いて最初の構造アンサンブルを調べることにより、対応
する水素結合受容体を決定し、後続の計算では水素結合距離の制限を課した。反
復計算により、同じようにして更なる水素結合を同定した。逆平行βシート中で
は10個の主鎖水素結合だけを制限として使用した。各水素結合に対して2つの結
合距離制限を使用した。すなわち、プロトンから受容体までの距離を1.7〜2.3Å
、供与体窒素原子から受容体までの距離を3.0〜3.6Åに設定した。
【0104】構造計算 Silicon Graphics Origin 200コンピュータでX-PLORバージョン3.843を使用し
、伸長鎖からab initioシミュレーテッドアニーリングを行う標準的なプロトコ
ルに従って、すべての構造計算を行った。最初の計算では、1000Kの初期温度を
使用し、制限付き分子動力学段階の5fsを9000ステップで行った。距離を制限す
るためにソフト正方ポテンシャルを使用した。分子動力学処理の間、正しい結合
長さを保持するために、SHAKE (Ryckaert et al., 1977)アルゴリズムを利用し
た。リファインメント処理では、正方井戸型ポテンシャルを制限に使用し、最終
低速冷却の4fsをそれぞれ2000Kから始めて30000ステップで行った。ArgおよびPr
o残基ならびに水素結合に対するパラメーターに改良を加えた改良型「parallhdg
.pro」力場パラメーターセットを使用した(Polshakov et al., 1997)。力の定数
は、水素結合を含めてすべての距離制限に対して50 kcal mol-1 A-2、二面角制
限に対して200 kcal mol-1 rad-2であった。ベクターにコードされた残基および
(His)6タグを含めてN末端配列は、構造計算の対象外とした。ペプチド結合はい
ずれもトランス形に制限した。5個のPro残基のいずれについてもそのNOEデータ
は強いHα(i-1)-ProHαクロスピークを示し、トランス形ペプチド配座と一致し
た。
【0105】 初期構造を上述したように計算し、ジスルフィド結合パターンを決定した。次
に、NOEから得られた距離および二面角の制限をそのまま使用し、ジスルフィド
架橋に相当する6つの距離制限(1.92〜3.12Å)を追加して、計算を繰り返した。5
0構造の新しいセットが得られた。この中から最良の20構造を選択した。合計X-P
LORエネルギーおよびrms NOE差がいずれも中央値未満でありかつ二面角制限に違
反しないことを構造の選択の判定基準として使用した。得られた構造は良好な幾
何学構造を有しており、0.5Åを超えるNOE制限違反の数は0〜2個であった。これ
らの構造を用いて、今まで不明瞭であったNOEを帰属し、上述したように水素結
合を確定した。
【0106】 最終構造計算およびリファインメントでは、水素結合、追加の二面角制限、β
-メチレンおよびLeuδシグナルの立体帰属、ならびにより正確に校正されたROE
データを含む拡張制限リストを使用した(表1を参照されたい)。このリストを用
いて100構造のセットを得た。そして0.5Åを超えるNOE制限違反の数が0〜2個で
ありかつ5°を超える二面角制限違反がない38構造を合格とした。これらの38構
造を上記の低速冷却手順によりリファインメントし、0.5Åを超えるNOE制限違反
がなくかつ5°を超える二面角制限違反がない32合格構造の最終アンサンブルを
得た。これらの選択基準を用いることにより、大規模相関運動(Abseher et al.,
1998)を有する構造が含まれるように全ポテンシャルエネルギーの連続体の末端
まで延在する構造のアンサンブルを得た。最終アンサンブルに対する統計値を表
1に示す。32リファインメント構造の座標は、Brookhaven Protein Data Bankに
寄託済みである(座標IDコード lcej; NMR制限IDコード rlcejmr)。
【0107】 計算処理の間、実験データとの一致度、精度、幾何学構造、およびエネルギー
の質を向上させるために、X-PLOR 3.8 (Nilges et al., 1991)、PROCHECK NMR/A
QUA (Laskowski et al., 1996)、およびInsight IIを用いて構造を解析した。モ
デルのアライメントはInsight IIおよびfitpdbを用いて行い、その表示はInsigh
t II、MOLSCRIPT(Kraulis, 1991)、およびGRASP(Nicholls et al., 1991)を用い
て行った。
【0108】
【表1】 表1. A: 制限のまとめ 計算した配座異性体の数: 100 合格した配座異性体の数: 32 合格判定基準: 0.5Åを超える距離制限違反がないこと 5°を超える二面角制限違反がないこと NOE/ROE距離制限: 残基内: 73 シーケンシャル: 222 中距離(2〜4): 90 長距離(>4): 185 合計: 570 二面角制限: φ: 25 ψ: 33 χ1: 22 χ2: 5 合計: 85 水素結合: 10 ジスルフィド結合: 6 B: 構造の質 平均 +/- s.d. 合計X-PLORエネルギー(kcal mol-1) 168 20 NOE X-PLORエネルギー(kcal mol-1) 21 8 NOEのrmsd 0.026 0.005 二面角のrmsd 0.236 0.095 結合長のrmsd 0.0029 0.0002 結合角のrmsd 0.357 0.023 非固有部分(improper)のrmsd 0.266 0.018 構造化領域の主鎖のrmsd: (69残基) 全体: 1.05 0.28 ドメイン-1: 0.81 0.32 ドメイン-2: 0.83 0.35 ラマチャンドランプロットの質(φ角/ψ角) 最良 49.5 % 良好 42.1 % やや良好 5.6 % 不良 2.7 %モノクローナル抗体(mAbs) 本研究で使用した抗MSP-119モノクロナール抗体は、マウスIgG mAbs 1E1、1E8
、2F10、111.2、111.4、2.2、5.2、7.5、9C8、12.8、12.10、12D11、117.2、8A1
2 (Holder et al., 1985; McBride & Heidrich, 1987; Blackman et al., 1987;
Guevara Patino et al.. 1997)、およびマウスIgM mAb 5B1 (Pirson & Perkins
, 1985)であった。これらのうち、mAbs 12.8、12.10および5B1は、中和性阻害抗
体であり、1E1、2.2、7.5、9C8および111.4は、ブロック抗体である。
【0109】改変MSP-1 19 クローンの構築 プラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)(T9-94/Wellco
me株) MSP-1の野生型MSP-119ドメインをコードするDNAを発現ベクターpGEX-3X中
にクローン化し、大腸菌中においてシストソーマ・ジャポニカ(Schistosoma ja
ponicum)グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)のカルボキシ末端に融合した
MSP-119を生成した(Burghaus & Holder, 1994)。MSP-119DNA配列の部位特異的突
然変異誘発法は2通りの方法で行った。
【0110】 第1の方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を媒介させて部位特異的突然変異誘
発を行うPerrin & Gilliland (1990)の方法の変法であった。点突然変異を導入
するオリゴヌクレオチド1種およびMSP-119配列の外側に由来する5’プライマー
と一緒に鋳型としてのプラスミドを用いてDNAを増幅した。増幅された産物をア
ガロースゲル上で電気泳動にかけて精製し、MSP-119配列の他方の端の外側に由
来する3’プライマーおよび鋳型としてのプラスミドと共に第2の増幅ステップで
使用した。この第2のPCR産物を制限酵素EcoR1およびBamH1で消化させ、改変MSP-
119コード配列からなる産物を再びpGEX-3X中に挿入し、この産物を用いてDH5α
細胞を形質転換した。
【0111】 第2の方法では、Stratagene製のQuikChange(商標)部位特異的突然変異誘発キ
ットを使用した。簡潔に述べると、鋳型としてプラスミドpGEX-MSP-119を用いて
所望の点突然変異を含有する2種の相補的合成オリゴヌクレオチドプライマーを
設計し、酵素Pfu DNAポリメラーゼを用いて温度サイクルにより鋳型上で伸長さ
せた。このようにオリゴヌクレオチドプライマーを組み込むと、DNA配列中にス
タガーニックを含有する突然変異プラスミドが産生される。温度サイクルの後、
メチル化親DNA鋳型を消化してDNAを含有する新たに合成された突然変異体を無傷
のまま残存させるDpnIエンドヌクレアーゼで産物を処理した。次に、所望の突然
変異を取り込んだDNAを、ニックが修復される大腸菌DH5α株(Life technologies
)コンピテント細胞に形質転換した。
【0112】 制限酵素消化物の分析およびインサート遺伝子のPCRスクリーニングによって
、クローンをスクリーニングした。選択された突然変異クローンのDNA配列は、P
erkinElmer Applied Biosystems ABI 377自動配列決定装置を製造業者の取扱説
明書に従って使用することにより確認した。
【0113】GST-MSP-1 19 融合タンパク質の発現 大腸菌TOPP1株(Stratagene)中で1 mMイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノ
シド(IPTG; Melford Laboratories)を用いて1時間にわたりGST-MSP-119の発現を
誘発した。次に、遠心分離により細胞を回収し、そして細胞溶解緩衝液(0.2%(v/
v) Nonidet P40 (NP40; BDH)を含有する50mM Tris-HCl/1mM EDTA pH8.0)中に細
胞ペレットを再懸濁させた。フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF; Sigma
)をイソプロパノール中に加えて最終濃度が1mMになるように添加した。50%デュ
ーティーサイクルでVibraCellソニケーター(Sonics & Materials)を用いて3分間
かけて氷上で細胞懸濁液を音波処理した(30秒間パルス6回、時間間隔30秒間)。6
5000×gで1時間かけて細胞溶解物を遠心分離した。可溶性GST融合タンパク質を
含有する上清をグルタチオン-アガロースカラム(Sigma)にアプライし、5mM還元
型グルタチオンで溶出させた。4℃においてリン酸緩衝化食塩水(PBS)に対して溶
出GST融合タンパク質を大量に透析した。
【0114】SDS-PAGEおよびウェスタンブロット ドデシル硫酸ナトリウムの存在下でポリアクリルアミドゲル電気泳動を行うこ
とによりタンパク質を分析した(SDS-PAGE)。還元剤を用いずにSDS-PAGE緩衝液に
サンプルを溶解させ、次に、均一な12.5%ポリアクリルアミドゲルで分別した。B
io-Rad製の染色済み低レンジ分子質量マーカー(24〜102kDa)をマーカーとして使
用した。必要な場合には、SDS-PAGEで分別されたポリペプチドをクーマシーブリ
リアントブルーR-250 (CBB; Sigma)で染色するかまたは電気泳動によりOptitran
BA-S 83強化ニトロセルロース(Schleicher & Schull, 細孔サイズ0.2μm)上に
移してウェスタンブロット法により分析した。5% BSA、0.5% Tween 20を含有す
るPBS (PBS-T)を用いて室温で1時間かけてブロットをブロッキングし、次いでP
BS-Tで洗浄した。第1抗体を用いて室温で2時間かけてブロットを精査し、PBS-T
で3回洗浄し、次いで西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)でコンジュゲートされた
ヒツジ抗マウスIgG (H+L) (ICN Immunobiologicals)またはヤギ抗マウスIgM (
μ鎖) (Sigma)の1/1000希釈液中において室温で1時間インキュベートした。次
に、ブロットをPBS-Tで3回洗浄し、HRP基質としてSuper Signal Substrate (Pie
rce)を用いて1分間呈色した。その後、ブロットをプラスチックラップに入れ、X
線フィルム(XB-200、X-ograph Imaging Systmes)に暴露した。フィルムは、Agfa
Gevamatic60フィルムプロセッサ(Agfa)で処理した。
【0115】BIAcore機を用いる抗体-抗原相互作用の分析 野生型配列または種々の改変配列のいずれかを含有するGST-MSP-119を使用し
、以下の方法によりカルボキシメチルデキストラン水素センサーチップを被覆し
た。GST-MSP-119の結合は、EDC/NHS化学を用いるアミノ基を介したものであった
。アミンカップリングキット(Pharmacia BIAcore)を用いて固定化を行った。200
mM 1エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および5mM N-ヒ
ドロキシスクシンアミド(NHS)の溶液50μlを用いてCMデキストラン表面を10分間
かけて賦活した。次に、コーティング緩衝液(0.01M酢酸ナトリウム緩衝液、pH3.
5)中に100μg ml-1の量で含まれる溶液50μlを用いて10分間かけてGST-MSP-119
をBIAcoreセンサー表面に結合させた。10分間かけて50μl 1Mエタノールアミン
、pH8.5を添加することにより未反応カルボキシル基をブロックした。20μl 10m
Mグリシン-HCl、pH2.8の2パルスを合計8分間作用させて細胞を洗浄し、共有結合
されていないタンパク質を完全に除去した。固定化処理は、5μl min-1の流速で
行った。測定はBIAcore 2000装置を用いて行った。
【0116】結果 実施例1: 共鳴帰属、NMR制限および構造決定 材料および方法のところで説明したように、13C/15N均一標識タンパク質を用
いる一連の多次元異核実験により帰属および制限を取得した。Lys35主鎖アミドN
HプロトンへのNOE結合を示す3Dおよび4D実験から得られたサンプルスペクトルを
図2に示す。これらは、13C化学シフト情報により解明および明確な帰属が行われ
たものである。構造計算の最終セットで使用した距離、二面角および水素結合の
制限は、表1にまとめられている。合計で570個の明確に規定された距離制限、85
個の二面角制限、および10個の水素結合を最終セットで使用した。表Aに示され
ている帰属および制限のリストは、BioMagResBandデータベースに寄託済みであ
る。材料および方法のところで説明したように、各ドメインに対して(1-3、2-4
、5-6)パターンを呈する3個のジスルフィド結合が、予備計算においてNMRデータ
から実験的に決定された。また、これらのジスルフィド結合を最終リファインメ
ントにも組み入れた。これらの制限を用いて32モデルの最終セットを計算および
リファインメントにかけた。これらの構造は、代表構造Srepの主鎖上に重ね合わ
せた形で図3に示されている。表1から分かるように、32個のモデルはいずれも良
好な幾何学構造を有し、実験データとよく一致する。0.5Åを超えるNOE制限違反
はなくかつ5°を超える二面角制限違反もない。うまく構造化された領域(残基15
〜64、74〜92)の主鎖原子に対する原子のrmsd値は、1.05Åである(表1を参照さ
れたい)。局所主鎖のrmsdは、N末端(Cys12まで)、ループGlu65〜Lys73、および
それに続くC末端のCys92で最大である。ラマチャンドランプロットの質は、他の
EGF構造で見いだされるものに特有なものである(Doreleijers et al., 1998)。
【0117】構造についての説明 EGFドメイン PROCHECK-NMRにより最終アンサンブルを解析したところ、各ドメインには、EG
F様の折り畳みに対して予測されるように各ドメインの第3および第4 Cys残基を
含有する主要ストレッチの逆平行βシートが含まれるだけでなく、いくつかの(
全部ではない)EGFファミリーメンバーと同じようにドメイン-1のC末端に追加の
副次的な逆平行βシートが含まれることが示された。これらの二次構造の特徴は
、ジスルフィド結合パターンと一緒に図4中に見いだすことができる。また、ド
メイン-1には、明確に規定されたタイプIIの強固なターンが存在し、Tyr34 NHプ
ロトンからLeu31カルボニル酸素への水素結合が含まれる。この強固なターン中
の通常保存されるEGFコンセンサスGly残基は、ドメインにおいて正のφ角を有す
る残基(Asn33)で置換されるが、保存される芳香族残基が存在する(Tyr34)。Leu3
1 NHプロトンからAsn15カルボニル酸素への水素結合が恐らく存在する。ドメイ
ン-2には、主要βシートよりも先行する2個のターンと、恐らくAsp57 NHプロト
ンからIle90またはGly89のカルボニル酸素への水素結合を有するLeu86〜Phe91の
最終屈曲構造とが含まれる。Pro81〜Pro85の表面露出ループ(Glu65〜Lys73)は
強固なターンと置き換わり、芳香族残基は保存されない。主要b-シートの端部の
大きなループは、比較的変形し、セグメントGly68〜Gly71の大きな易動性は、主
鎖アミド15N{1H}異核NOE測定により確認された(Barbato et al., 1992)。この領
域の残基に対する異核NOE値は劇的に低下する。N末端の低いNOE強度は、タンパ
ク質の残りの部分と比較して易動性が大きいことを意味する。Pro45〜Pro47のド
メイン間リンカー領域は、他のEGF様モジュール対から離れている。ドメイン-1
のCys30-Cys41間のジスルフィド架橋およびドメイン-2中の3つのCys-Cys結合の
配座はいずれも、左巻き螺旋である(Richardsn, 1981)。Cys30-Cys41間、Cys56-
Cys76間、およびCys78-Cys92間の架橋は、血液凝固因子Xaの構造(lhcg)中のそれ
らに対応する架橋と特に類似している。ドメイン-1の比較的変形したN末端セグ
メント中の最初の2つのジスルフィド結合の配座は決定しなかった。
【0118】 図5は、数種のタンパク質に由来するEGF様ドメインの典型的な例を用いてfitp
dbプログラムにより作製した2つのMSP-1 C末端断片ドメインの主鎖C,N,Cα原子
アライメントを示している。ペアワイズアライメントから分かるように、MSP-1
の2つのドメインは、お互い同士よりもまたは試験した他の構造よりも、Xa因子
の構造およびClr由来のその近縁物に類似している。Xa因子と比較したときのMSP
-1ドメインのrmsd値は、より相関の小さい構造であるフィブリリン-1およびトラ
ンスフォーミング増殖因子αの値と同等である。
【0119】 従って、αがPheまたはTyr残基であるEGFコンセンサス(C(5)xxGα)と相違があ
るにもかかわらず、各MSP-1ドメインの全体的な折り畳みは、第5のCys残基に続
くターンがほぼ等価である典型的なEGFファミリーメンバーと類似している。外
側ループのいくつかは無秩序であるが、非交換主鎖アミドから示唆されるように
足場は極めて安定である(詳細については、先の記述内容およびタンパク質デー
タバンク/BioMagResBankへの寄託内容を参照されたい)。
【0120】 フィブリリン-1のような多くのEGF様ドメインとは異なり、MSP-1 C末端断片に
は、保存EGF Ca2+結合配列が欠如しており、MSP-1 C末端断片へのCa2+の結合の
証拠は見られなかった。2D 1H-NOESYスペクトルが20 mM CaCl2の不在下または存
在下において実質的に同一であったことから、生成する可能性があるいかなる結
合も、全体的な構造に及ぼす影響があったとしてもその度合いは小さいと考えら
れる。
【0121】ドメインのインターフェースおよび表面 MSP-1 C末端断片構造の最も目立った特徴は、疎水性相互作用に関与する数個
の非極性アミノ酸(Phe19、Leu31、Leu32、Leu86、Phe87、Ile90およびPhe91)か
らなるドメイン間インターフェースである。これらの残基は、ドメイン-1中の主
要βシートおよび強固なターンの塩基を、ドメイン-2中の残基86〜91の最終屈曲
構造に結合させる。このドメイン間相互作用が起こると、これらのドメインは、
EGFドメインの他のペアで観測される構造とは対照的なU形構造を形成する(Downi
ng et al., 1996; Brandstetter et al., 1995)。例えば、フィブリリン-1では
、EGFドメイン32と33の間のインターフェースは、主に、共有Ca2+連結部位によ
り形成されており(Downing et al., 1996)、全体的な構造は、N末端とC末端が離
間した硬質なロッドに類似している。これは、EGF様ドメインが互いに折り畳ま
れてそれらの末端が比較的近接しているMSP-1とは対照的である。フィブリリン-
1とEGFモジュールペアとMSP-1 EGFモジュールペアとの比較は、図6に示されてい
る。MSP-1 C末端断片の両端はいくらか無秩序であるが、2つの末端の核間にNOE
接触が観測された。C末端位置とN末端位置との近接度は重要である可能性がある
。なぜなら、C末端の96アミノ酸断片を産生するタンパク質分解プロセシング部
位は、残基96位置またはその近傍位置のGPI膜付着部位と非常に近接しているか
らである。この近接度は、膜に結合したプラスモディウム(Plasmodium)プロテ
イナーゼが二次プロセシングを担っているという考えと一致する。
【0122】 MSP-1 C末端断片の静電ポテンシャル表面を2つの観点で図7に示す。図7aの表
面は、特に、突出ループ領域23〜27、35〜40および64〜66はかなり帯電している
。図7bの表面には、中性の親水性残基が多く含まれるとともに、表面中央付近の
Pro85〜Phe87に小さな疎水性パッチが含まれる。将来、そのような情報は、これ
らの様々な表面が、MSP-1前駆体の残りの部分、プロセシングプロテイナーゼ、
メロゾイト表面上の他のタンパク質、または赤血球表面上もしくは寄生虫空胞膜
表面上の未知の標的との相互作用にどのように関与しうるかを理解するうえで役
立つであろう。
【0123】一次配列の保存 プラスモディウム・ファルシパルム(P. falciparum)の疎水性ドメインイン
ターフェースに含まれる残基についても、より病原性の低いヒトマラリア原虫P.
vivaxのMSP-1中の対応する残基と一緒に図1に示す(Del Portillo et al., 1991
; Gibson et al., 1992)。インターフェース残基の拡張的保存(保存的置換を含
む)から示唆されるように、P.ビバックス(P. vivax)は、恐らく他のプラスモ
ディウム(Plasmodium)種も同様に、類似のU形EGFモジュールペア配置をとる可
能性がある。P.ビバックス(P. vivax)配列の他の特徴は、他のプラスモディウ
ム(Plasmodium)種にも見られるように、P.ファルシパルム(P. falciparum)
のCys12およびCys28に相当するシステイン残基が存在しないために第1のEGF様ド
メインにジスルフィド結合の欠失が1つ存在することである。
【0124】P.ファルシパルム(P. falciparum)の二形性部位 様々な単離体から得られたP.ファルシパラム(P. falciparum) MSP-119 C末
端断片中に5つの二形性部位が観測された(Qari et al., 1998)。MSP-1構造上の
これらの部位の位置近傍で、いくつかの観察を行った。Gln14/Glu14およびLys61
/Thr61の2つの部位には、表面に露出した親水性または帯電性の側鎖を有する残
基が、比較的よく構造化された主鎖部位に含まれている。配列変異体を有する隣
接部位のペアAsn70-Gly71/Ser70-Arg71は、かなり易動性であることが分かって
いるセグメント(残基68〜71)内のドメイン-2の無秩序ループ中に生じる。Glu65
〜Lys73の領域もまた、様々なプラスモディウム(Plasmodium)種の間で最も変
動の多い領域であると思われる(Daly et al., 1992; Holder et al., 1992)。最
後に、第5の部位は、疎水性残基間の置換(Leu86/Phe86)を有する。この部分的に
露出した側鎖は、疎水性ドメインインターフェースに位置し、保存的置換は、こ
の相互作用の役割と一致する。
【0125】実施例2: 突然変異およびモノクロナール抗体結合の研究 MSP-1 C末端断片との抗体相互作用を理解する手段として、抗体結合に及ぼす
遺伝子工学的点突然変異(ドメイン-1内)の影響を調べた。根本的な変化を伴う
アミノ酸置換を行った。こうした根本的な変化としては、例えば、脂肪族残基を
帯電極性残基と置換すること、正帯電側鎖を負帯電側鎖と置換すること、大きな
側鎖を有するアミノ酸をより小さな側鎖を有するアミノ酸または側鎖のないアミ
ノ酸(グリシン)と置換すること、極性アミノ酸を帯電極性アミノ酸と置換するこ
と、極性アミノ酸を芳香族アミノ酸と置換すること、大きな芳香族アミノ酸を小
さな側鎖を有するアミノ酸と置換すること、およびジスルフィド結合に関与する
システイン残基を置換することが挙げられる。
【0126】 図8に示されている4つの各アミノ酸置換はいずれも、ウェスタンブロットで検
出されるように、突然変異断片への1種以上のmAbsの結合を完全に排除する。シ
アンで表わされたGlu26突然変異は、Asn1にあるN末端タンパク質分解プロセシン
グ部位(マゼンタ)に最も近く、プロセシング阻害抗体の結合に影響を及ぼす唯一
のこのグループの突然変異である。すなわち、Glu26突然変異は、MSP-1前駆体の
タンパク質分解プロセシングとin vitroでの赤血球への浸潤の両方を防止するこ
とができる。他の3つの突然変異は、天然のC末端断片に結合するブロック抗体の
結合を排除し、プロセシング阻害抗体の結合を妨害する。
【0127】 免疫化学的分析および分子の三次構造に基づいて更なる突然変異を生じさせ、
ウェスタンブロットおよびBIAcore分析によりmAbsの結合を評価した。結果を表2
にまとめる。改変タンパク質への選択されたmAbsの結合の結果は、ウェスタンブ
ロットで検出した場合を図9に、BIAcore分析による場合を図10に示す。各アミノ
酸変化のいくつかは、試験したいずれのmAbsの結合にも影響を及ぼさない(例え
ば、Leu22→Arg)。他の置換は、1個以上のmAbsの結合に影響を及ぼす。
【0128】 特に興味深いものとしては、ブロック抗体の結合を防止するが阻害抗体の結合
に影響を及ぼさない変化が挙げられる。例えば、ArgによるAsn15の置換はmAbs 7
.5の結合を防止し、TyrによるGlu27の置換はmAbs 2.2の結合を防止し、Argによ
るLeu31の置換はmAbs 1E1の結合を防止し、SerによるTyr34の置換はmAb 7.5の結
合を防止し、そしてLeuによるGlu43の置換はmAb 111.4の結合を防止する。
【0129】 ブロック抗体の結合を防止するが阻害抗体の結合に影響を及ぼさない置換の数
種の組み合わせを、単一のタンパク質中に生じさせた(表2および図11)。第1に、
Glu27→Tyr、Leu31→ArgおよびGlu43→Leuを組み合わせ、第2に、Glu27→Tyr、L
eu31→Arg、Tyr34→Ser、およびGlu43→Leuを組み合わせ、第3に、Asn15→Arg、
Glu27→Tyr、Leu31→ArgおよびGlu43→Leuを組み合わせた。これらの改変タンパ
ク質は、いずれのブロック抗体にも結合しなかったが、阻害抗体には結合した状
態を保持した。これらの突然変異タンパク質は、野生型タンパク質により誘発さ
れるポリクロナール応答よりもより抑制的であるポリクロナール応答を誘発する
であろうと本発明者は考えている。
【0130】 また、マラリアに罹患した個体に由来するプールされた血清から抗体をアフィ
ニティ選択するためにも、改変された組換えタンパク質が使用されるであろう。
改変タンパク質の方が野生型タンパク質よりもブロック抗体を選択する可能性が
少ないので、こうして選択された抗体は、in vitroでの寄生虫の侵入および二次
プロセシングを阻害するのにより有効であろうと本発明者は推測している。
【0131】 齧歯類、霊長類およびP.ビバックス(P. vivaxマラリア原虫に由来するMSP-1
の第1のEGF様ドメインには、システイン2および4が存在しない。本発明は、P.フ
ァルシパルム(P. falciparum)タンパク質中のこのシステインペアを置換した(
Cys12およびCys28)。いずれの阻害抗体の結合にも、これによる影響はなんら現
れないが、ブロック抗体mAb 2.2の結合は排除される。これらの他のマラリア原
虫に由来するタンパク質の方が免疫原性が大きい理由の1つは、T細胞認識がより
効果的であるためか、または抗原プロセシング細胞によるプロセシングが、抗体
応答の優れた特異性をより生産的な方向に駆動する異なる分解経路で進行するた
めであると本発明者は考えている(例えば、Egan et al., 1997を参照されたい)
。システインペアを除去すると改変タンパク質の免疫原性が改良されると考えら
れ、このことは、野生型タンパク質により誘導される抗体のレベルと一緒に、2
つのシステインをもたないP.ファルシパルム(P. falciparum)タンパク質によ
り誘導される抗体のレベルを測定することによって、評価されるであろう。
【0132】
【表2】 実施例3: 競合結合アッセイおよび固定化野生型GST-MSP-1 19 を用いるブロック抗 体の同定 これまでの研究では、中和抗体12.8および12.10の作用をブロックする抗体は
、MSP-142プロセシングアッセイ(Blackman et al.. 1994)、赤血球侵入-MSP-142 プロセシング組み合わせアッセイ(Guevara et al., 1997)、または抗原としてメ
ロゾイトタンパク質を用いる競合ラジオイムノアッセイ(Guevara et al., 1997)
のいずれかにより直接規定されてきた。組換えMSP-1およびBIAcore分析を用いて
これらの研究を拡張した。
【0133】 GSTに融合された野生型MSP-119を含む組換え融合タンパク質をセンサーチップ
に結合し、最初に、競合抗体を抗原に結合させた。次に、モノクローナル抗体12
.8または12.10のいずれかの溶液をチップ上に通して、この第2の抗体の結合量を
定量した。第1の抗体が第2の抗体の結合を妨害する場合、これは第2の抗体の結
合量の減少となって現れる。
【0134】方法 野生型GST-MSP-119をCM5センサーチップに結合した。25℃において5μl min-1 の一定流量で結合アッセイを行った。結合のために、精製済みのモノクローナル
抗体1E1、8A12および2F10を100 μg ml-1の量で含有するHBS-EP緩衝液(150mM Na
Cl、3mM EDTAおよび0.005% v/v ポリソルベート20を含有する10mM HEPES pH7.4)
、モノクローナル抗体1E8、9C8、12D11、111.2および111.4を含有する細胞培養
培地上清、モノクローナル抗体2.2、7.5および89.1を含有する腹水を1:10希釈し
てなるHBS-EP緩衝液、ならびにマウスα-GST抗体を含有する血清を1:10希釈して
なるHBS-EP緩衝液を、固定化野生型GST-MSP-119と10分間相互作用させた。低親
和性相互作用部分を5分間かけて解離させた後、モノクローナル抗体12.8または1
2.10のいずれかを100 μg ml-1の量で含有するHBS-EP緩衝液を添加して10分間か
けて結合させた。チップを5分間洗浄した後、12.8または12.10の結合を測定した
。10 mM グリシン-HCl, pH 2.4を用いて、または必要な場合には100 mM グリシ
ン-HCl, pH 1.8を用いて、結合した抗体を3分間洗浄除去することによって、チ
ップを再生した。
【0135】結果 結果を図12に示す。陰性対照であるモノクローナル抗体89.1を除くと、競合抗
体はいずれも、GST-MSP-119に結合する。予想通り、モノクローナル抗体12.8お
よび12.10は互いに競合した(Guevara et al., 1997)。プロセシングを阻害しな
い他の抗体は、多かれ少なかれ、12.8および12.10の結合を妨害可能であった。
これまでの研究から予想されるように、モノクローナル抗体1E1および7.5は、12
.8および12.10の両方をブロックし、一方、2.2および111.4は、12.8をブロック
した。この研究で同定された他の特に有効なブロック抗体は、モノクローナル抗
体9C8であった。
【0136】実施例4: GST-MSP-119による小動物の免疫化および誘導される抗体の分析 改変タンパク質が免疫原性であるか否かを調べるために、組換えGST-MSP-119
融合タンパク質を用いて免疫化により抗体を増加させた。
【0137】方法 それぞれ3[27+31+43]または4[15+27+31+43]アミノ酸置換のいずれかを含有す
る2種の改変タンパク質を用いて、ウサギおよびマウスを免疫した。MSP-119タン
パク質を含むフロイント完全アジュバントを皮下投与してウサギを免疫し、次い
で、21、42および63日後、このタンパク質200μgを含むフロイント不完全アジュ
バントで3回追加免疫し、血清サンプルを回収した。
【0138】 寄生虫が感染した赤血球のアセトン固定スミアを用いて、間接的な免疫蛍光法
により、寄生虫の天然MSP-1タンパク質に結合する抗体の存在およびレベルを評
価した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で血清を段階的に希釈し、室温においてス
ライド上で30分間インキュベートした。洗浄後、FITCにコンジュゲートしたヤギ
抗ウサギIgGまたはヤギ抗マウスIgGと共にスライドをインキュベートし、洗浄し
、次いで蛍光顕微鏡法により調べた。
【0139】 MSP-1二次プロセシングアッセイによっても血清を分析した。メロゾイト調製
物中でのMSP-1の二次プロセシングの分析および定量は、既に報告されているア
ッセイ(Blackman et al., 1994)に変更を加えたものであった。10 mM CaCl2およ
び2mM MgCl2を含有する氷冷された50 mM Tris-HCl pH 7.5(反応緩衝液)に、洗浄
済みP. ファルシパルム(P. falciparum) 3D7のメロゾイトを再懸濁させた。約1
×109メロゾイトのアリコートを氷上の1.5 ml遠心分離管に分配し、4℃において
2分間かけて13,000×gで寄生虫をマイクロ遠心分離管中にペレット化した。上清
を除去し、次いで、それぞれのメロゾイトペレットを氷上で、適切な場合にはプ
ロテアーゼ阻害剤または抗体で更に補充された反応緩衝液25μl中に再懸濁させ
た。メロゾイトを氷上で20分間保持して抗体を結合させ、次いで、37℃の水浴に
移してプロセシングを1時間進行させた。アッセイには常に次の対照が含まれて
いた。すなわち、反応緩衝液のみに再懸濁させたメロゾイトの「正のプロセシン
グ」対照サンプル、反応緩衝液+ 1mM PMSFに再懸濁させたメロゾイトの「負のプ
ロセシング」対照サンプル、および37℃インキュベーションステップの前にプロ
セシングを停止させた時間ゼロ(0h)の対照。ウェスタンブロットをベースとす
る方法および改変プロセシングアッセイ法により、プロセシングをアッセイした
。不溶物を除去するために4℃において30分間かけて13,000×gで遠心分離した後
、該アッセイからの上清を取得した。上清中のMSP-133の量は、ELISA法を用いて
測定した。ヒトモノクローナル抗体X509を4μg ml-1の量で含有するPBS100μlで
各ウェルがコーティングされているELISAプレート(NUNC F96 Cert. Maxisorp)の
ウェルに50 μlの希釈サンプル上清を添加した。37℃でプレートを4時間インキ
ュベートし、次いで、0.01 % PBS-Tween (PBS-T)で3回洗浄した。マウスモノク
ローナル抗体G13の1:4000希釈液100μlを37℃で1時間にわたり添加し、続いて
洗浄し、更に、ヒツジ抗マウスIgG (H+L) HRPコンジュゲート抗体の1:1000希釈
液100μlを添加した。37℃で1時間インキュベートした後、プレートを再び洗浄
し、新たに調製した基質溶液(400 mg l-1 o-フェニレンジアミン二塩酸塩を含有
する0.05 Mリン酸緩衝液、0.024 Mクエン酸、および0.012% H2O2) 100μlを室温
で20分間にわたり添加することにより、HRPを検出した。10μlの1M硫酸を添加す
ることにより反応を停止させ、各サンプルの吸光度を492nmで測定した。
【0140】結果 結果を図13に示す。2種の改変タンパク質は、寄生虫が感染した赤血球中でMSP
-1と反応する抗体を産生し、血清の力価は1:10,000であった。この値は、野生型
MSP-1配列を含有する組換えタンパク質で免疫することにより同様に産生した血
清の力価と同等な力価であった。このことから、本改変タンパク質は天然のタン
パク質と反応する抗体を産生できることが示唆される。免疫化により誘導された
抗体は、予備実験で使用した濃度においてプロセシングを部分的に阻害すること
が可能であったが、対照の血清では、プロセシングを阻害する抗体は存在しなか
った。
【0141】実施例5: ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)異種発現に対して最適化された プラズモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)メロゾイト表面タ
ンパク質-1遺伝子断片のデザインおよび合成 酵母ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)中で最適な異種発現が行われるよ
うに、プラズモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)メロゾイト
表面タンパク質-1 (MSP-1) 41.1 kDaプロセシング断片(MSP-142)のコード配列を
再デザインした。PCR遺伝子アセンブリーにより、最適化DNA配列を2種の断片MSP
-133およびMSP-119の形態で合成した。最適化MSP-119構築物を含有する発現ベク
ターでP. パストリス(P. pastoris)を形質転換した。組換え株は、グリコシル化
されていない適切に折り畳まれたMSP-119タンパク質を高レベルで発現すること
が示された。
【0142】 ヒトマラリア寄生虫プラズモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falcipar
um)の高ATゲノムによりコードされたタンパク質は、一般に、異種系ではそれほ
ど発現されない(Withers-Martinez et al., 1999)。メチロトローフ酵母ピヒア(
コマガテラ)・パストリス(Pichia (Komagataella) pastoris)は、P. ファルシ
パルム(P. falciparum)メロゾイト表面タンパク質-1 (MSP-1)のC末端断片のよう
なジスルフィド架橋タンパク質の発現に適した系である(White et al., 1994; M
organ et al., 1999)。P. パストリス(P. pastoris)発現系では、高ATストレッ
チによる未熟転写終止を回避することが重要である(Romanos et al., 1991)。P.
パストリス(P. pastoris)における高発現遺伝子のコドン選択性が同定された(S
treekrishna et al., EP 0 586 892 A1)。従って、P. パストリス(P. pastoris)
発現に対して最適化されたコドン使用頻度を有する合成MSP-142遺伝子断片を新
規なコンピュータソフトウェアによりデザインした(Withers-Martinez et al.,
1999)。P. パストリス(P. pastoris)中で発現させた場合、MSP-119断片は部分的
にグリコシル化されるので、精製時、炭水化物を酵素的に除去しなければならな
いことが既に実証されている(Morgan et al., 1999)。従って、NxS/T部位でのN
連結グリコシル化を防止するために、2種の特異的点突然変異を合成MSP-142タン
パク質配列に導入した(MSP-133配列内の可能性のある部位およびMSP-119配列内
の既知のAsn1部位)。
【0143】 遺伝子アセンブリーポリメラーゼ連鎖反応により、最適化MSP-142配列を、独
立したMSP-133断片およびMSP-119断片の形態で合成した(Stemmer et al., 1995;
Withers-Martinez et al., 1999)。最適化MSP-119断片を新規な改変ピヒア(Pic
hia)発現ベクター中にサブクローン化し、P. パストリス(P. pastoris)宿主株SM
D1168に形質転換し、そしていくつかの異なる形質転換体を単離した。形質転換
体は、グリコシル化されていない適切に折り畳まれたMSP-119を効率的に発現す
ることが示された。低コピー数形質転換体において最適化遺伝子の強い発現が観
測された。中間レベルのG418耐性を有するマルチコピー形質転換体は、元のP.
ファルシパルム(P. falciparum) DNAを含有する既に報告されている高発現株(Mo
rgan et al., 1999)と同じレベルで精製MSP-119の発現を示した。従って、合成
最適化遺伝子の高レベルG418耐性形質転換体から更に高い収量が得られるはずで
ある。
【0144】方法: 遺伝子アセンブリー 最初に、2アミノ酸置換によりN連結グリコシル化シグナルを除去するように、
P. ファルシパルム(P. falciparum) MSP-142 (41.1 kDa) 断片タンパク質配列(S
WISS-PROT受託番号P04933: 位置1264〜1621)を改変した。配列NYT (N末端部分、
位置1445)およびNIS (C末端断片の開始点: 位置1526)をそれぞれQYTおよびNIAに
変更した。次に、S. セレビシエ(S. cerevisiae)コドン選択性を利用して、タン
パク質配列をDNA-STARで逆翻訳した。この配列をCODOPプログラムへの入力とし
て使用した(Withers-Martinez et al., 1999)。高発現P. パストリス(P. pastor
is)遺伝子におけるコドン使用頻度から誘導されたコドン加重表を用いて、この
プログラムにより10種のランダム配列を発生させた(Streekrishna et al., EP 0
586 892 A1)。従って、コドン表は、平均的な使用頻度ではなく高発現遺伝子に
おける使用頻度を反映したものになっているはずである。最少数(6)の不要コド
ンを含有するランダム配列を選択し、これらのコドンを手作業でより好ましい他
のコドンに変更した。次に、この配列をDNA-STARで解析し、転写終止を引き起こ
す可能性のある高AT配列であるか、ならびに、直列反復配列および逆方向反復配
列であるかをチェックした。その後、最終配列をコードする50種のオーバーラッ
プオリゴヌクレオチドのセットを発生させた。これには、長さ42ntの49種のオリ
ゴヌクレオチドと、長さ48ntの1種のオリゴヌクレオチドとが含まれていた。各
オリゴヌクレオチドは、隣接オリゴヌクレオチドと21bpのオーバーラップを有し
ており、ギャップはなかった。推定Tmsは、60℃〜77℃の範囲であった。オリゴ
ヌクレオチドは、Oswel (Southampton, UK)により40 nmolスケールで合成され、
精製せずに脱イオン水に添加された状態で供給された。増幅ステップ用に種々の
長さを有する62℃〜64℃のTmの外側プライマーを合成した。このプライマーには
、増幅ステップに続く連結ステップに使用するための5’末端リン酸基が含まれ
ていた。また、逆方向プライマーには、翻訳終止コドンが含まれていた(相補鎖
中のUAA)。使用前、すべてのオリゴヌクレオチドをddH2Oで10μMに希釈した。
【0145】 下記の条件下でBiometraサイクラーを使用して200μL薄壁管中で既報(Stemmer
et al., 1995; Withers-Martinez et al., 1999)に従ってPCR媒介遺伝子アセン
ブリーおよび増幅を行った。
【0146】遺伝子アセンブリー反応(反応1) 体積50μL 2単位 Ventポリメラーゼ(New England Biolabs) 0.4 mM dNTPs 1× Ventポリメラーゼ緩衝液 各オリゴヌクレオチドを200nM含有するオリゴヌクレオチドミックス サイクル: 32サイクル(2時間33分) 変性 94℃ 30秒 アニーリング 52℃ 30秒 伸長 72℃ 3分 様々な外側プライマーおよび50オリゴヌクレオチドセットのサブセットを用い
て、MSP-142 (41.1 kDa)の3種の断片を別々に合成した。
【0147】 N末端断片(bp 1〜423) 21オリゴヌクレオチド 中間断片(bp 337〜786) 22オリゴヌクレオチド C末端断片(bp 787〜1074) 14オリゴヌクレオチド 該C末端断片は10.6kDaの断片(MSP-119)を産生する。N末端断片および中間断片
は337〜423の範囲がオーバーラップしており、引き続いてBglII部位(371〜376)
でともにスプライシングされ、30.5kDaのMSP-133タンパク質をコードする786bp
の断片を得る。
【0148】増幅反応(反応2) 体積100μL 10μL 遺伝子アセンブリー反応のアリコート 4単位 Ventポリメラーゼ 0.4 mM dNTPs 1× Ventポリメラーゼ緩衝液 1μM 外側プライマー サイクル: 32サイクル(2時間55分) 変性 94℃ 45秒 アニーリング 52℃ 45秒 伸長 72℃ 3分 最終伸長 72℃ 5分 次に、Centricon-100ユニット(Amicon)を用いて濾過することにより、PCR産物
を精製し、T4 DNAリガーゼを用いて16℃で一晩かけて平滑末端連結によりベクタ
ー中に直接クローン化した。
【0149】 合成MSP-119遺伝子をP. パストリス(P. pastoris)発現ベクター中に直接クロ
ーン化した。pPIC9K SnaBI部位に挿入されたHis6タグおよびXa因子開裂部位を含
有する改変pPIC9KHXaベクター(図15を参照されたい)をPmIIで消化し、子ウシア
ルカリ性ホスファターゼで処理した。His6タグ、Xa因子開裂部位、およびPmII制
限部位を含有する36bp合成オリゴヌクレオチドをpPIC9KベクターのSnaBI部位に
挿入することにより、HXaベクターを前もって作製しておいた。
【0150】 N末端断片および中間断片のPCR産物を脱リン酸化pUC118ベクターのSmaI部位に
クローン化した。インサートを含有するプラスミドクローンの配列を決定した。
次に、正しい合成配列を有するクローンを消化し、2種の断片をゲル精製にかけ
た。N末端断片クローンはEcoRIおよびBglIIで消化させ、中間断片クローンはHin
dIIIおよびBglIIで消化させた。アガロースゲルで組換え断片を精製し、QIAGEN
抽出キットで溶出させた。次に、HindIIIおよびEcoRIで消化されて子ウシアルカ
リ性ホスファターゼで処理されたpUC118ベクター中に連結することにより、精製
済みのN末端断片および中間断片を一緒にスプライシングした。これにより、完
全な合成MSP-133コード配列を得た。N末端断片および中間断片のPCR産物を脱リ
ン酸化pUC118ベクターのSmaI部位にクローン化した。インサートを含有するプラ
スミドクローンの配列を決定した。次に、正しい合成配列を有するクローンを消
化し、2種の断片をゲル精製にかけた。N末端断片クローンはEcoRIおよびBglIIで
消化させ、中間断片クローンはHindIIIおよびBglIIで消化させた。アガロースゲ
ルで組換え断片を精製し、QIAGEN抽出キットで溶出させた。次に、HindIIIおよ
びEcoRIで消化されて子ウシアルカリ性ホスファターゼで処理されたpUC118ベク
ター中に連結することにより、精製済みのN末端断片および中間断片を一緒にス
プライシングした。これにより、完全な合成MSP-133コード配列を得た。
【0151】方法: 発現および精製 既報(Morgan et al., 1999)に従ってエレクトロポレーションによりメチロト
ローフ酵母ピヒア(コマガテラ)・パストリス(Pichia (Komagataella) pastoris
)株SMD1168を形質転換した。更に、Hybond-N+膜を用いて、いくつかのG418耐性
クローンを単離した(Fairlie et al., 1999)。
【0152】 緩衝最少グルコース培地中で10ml培養物を増殖させることにより、形質転換体
の発現スクリーニングを行った。細胞を採取し、10ml緩衝最少メタノール培地中
に1.0 OD600の濃度で再懸濁し、最終OD600が2.5〜3.0になるように一晩増殖させ
た。遠心分離により細胞を除去し、15%トリクロロ酢酸を用いて30分間かけて1.2
mlの上清培地を氷上で沈澱させた。サンプルをマイクロ遠心分離管に入れて4℃
において14000rpmで30分間遠心分離し、冷却アセトンでタンパク質ペレットを2
回洗浄した。12μlのddH2O中にサンプルを再懸濁させ、DTTで還元した後、製造
業者の使用説明書に従ってNOVEX注入済みアクリルアミドゲル上で5μlを電気泳
動させた。MES緩衝液中で、NOVEX 4〜12%アクリルアミドグラジエントゲル、ま
たは10%アクリルアミドゲル、Bis/Trisゲルを使用した。Coomassie colloidal B
rilliant Blue stain (Sigma)を用いてタンパク質ゲルを染色した。
【0153】 合成遺伝子産物に対して酵素的脱グルコシル化を省略したこと以外は既報(Mor
gan et al., 1999)と同じようにして、均一に精製されたMSP-119を取得した。
【0154】方法: NMR 1.1〜2.5 mMのサンプル濃度において25℃で既報(Morgan et al., 1999)に従っ
て一次元1H-および二次元{1H/15N}-HSQCスペクトルを得た。
【0155】結果 合成DNA断片の配列および得られた推定タンパク質産物を図15に示す。配列に
関して得られた改良点のまとめを表3に示す。
【0156】
【表3】 全コドン数 P. pastoris 非選択 AT含有率% 選択コドン コドン P. falciparum MSP1 358 140 28 74 41.1kDa断片 合成41.1kDa断片 358 276 0 58 表3. コドン使用頻度 アガロースゲル上におけるMSP-133(2セクション)およびMSP-119合成断片に対
するPCR遺伝子アセンブリー反応を図16に示す。これから分かるように、いずれ
の場合についても、正しいサイズを有する単一の主要産物が観測された。PCR産
物をサブクローン化し、スクリーニングし、そして方法の節に記載したように配
列決定した。
【0157】 改変pPIC9K発現ベクター(pPIC9K-HXa:図15)中の合成MSP-119構築物を用いてP
. パストリス(P. pastoris)を形質転換した。3種の独立した形質転換体における
合成MSP-119産物の発現が、図17において、タンパク質ゲル上に示されている。
方法の節に記載したように、培地上清からトリクロロ酢酸で沈澱させることによ
り、タンパク質サンプルを調製した。これにより、合成MSP-119タンパク質の予
想される泳動に対応した単一の主要産物が各サンプル中に存在することが示され
た。この産物は、既報(Morgan et al., 1999)に示されているようにより短いN末
端タグ配列を有する対照サンプルよりも僅かに遅い速度で泳動した。グリコシル
化の結果として生じる可能性のある不均一な低速泳動組換えタンパク質の痕跡は
見られなかった。従って、グリコシル化されていない合成MSP-119が、形質転換
された酵母により効率的に発現される。精製MSP-119の収量(UV吸光度により測
定)は、低コピー数形質転換体(0.25 mg/ml G418に耐性を示す)では16 mg/Lであ
り、中間のG418耐性の形質転換体(1.0 mg/ml G418に耐性を示す)では24 mg/Lま
で増加した。これは、高G418耐性株の単離前、元のプラズモディウム・ファルシ
パルム(Plasmodium falciparum)コード配列を有するP. パストリス(P. pastoris
)の低コピー数形質転換体で得られる1〜2 mg/Lの収量と対比することができる(M
organ et al., 1999)。このことから示唆されるように、合成MSP-119構築物は、
組換えタンパク質発現に有利であり、コピー数のより多い形質転換体を単離すれ
ば更なる改良がなされるであろう。
【0158】 合成MSP-119タンパク質のスペクトルは、既報(Morgan et al., 1999)のタンパ
ク質のスペクトルと非常に類似しており、正しく折り畳まれたタンパク質(デー
タ示さず)を表していることが、一次元プロトンNMR実験から示唆された。この
ことは、更に、2D-{1H/15N}-HSQCスペクトルによって確認された(図18)。このス
ペクトルにおいても、識別可能なN末端タグ配列およびグリコシル化部位のS3→A
突然変異の存在と一致するN末端の僅かな差異を除けば、合成産物の構造は既報
のタンパク質のものと同等であることが示される。元のP. ファルシパルム(P. f
alciparum)配列産物に対するバックボーンNHプロトンおよび15Nの化学シフトは
、既に報告されている(Morgan et al., 1999)。N末端領域の外側に関して2つの
スペクトルが類似していることは、両方のタンパク質の形態が、構造的に類似し
て正しく折り畳まれた状態をとっていることを示す強力な証拠である。
【0159】参考文献 Abseher, R., Horstink, L., Hilbers, C. W. & Nilges, M. (1998). 「NMR構造
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【図面の簡単な説明】
【図1】 EGF様モチーフコンセンサスに従ってアライメントをとったMSP-1配列。一番上
の配列: P.ファルシパルム(P. falciparum) (SWISS-PROT MSP1 PLAFW)。二番
目の配列: P.ビバックス(P. vivax) Belem株(PIR A45604)。三番目の配列: ヒ
トEGF (PDB legf)。四番目の配列: EGF様ドメインコンセンサス(Prosite EGF1)
。一番下の配列: 図6の構造アライメントに使用した14残基のEGFコア配列。黒色
強調表示は、EGF様ドメインの保存残基を表わしている。暗色陰影表示は、P.フ
ァルシパルム(P. falciparum)中のEGFモジュールペアインターフェースにある
疎水性残基およびP.ビバックス(P. vivax)配列中の対応する保存残基を表わし
ている。
【図2】 MSP-1 C末端断片Lys35 NHプロトンに対するNOE結合を含む面を示す多次元異核
NOESY実験のサンプル。上段: 15N(D2)および1H (D1)におけるLys35 NHの化学シ
フトの値を用いて4D-[13C]-HMQC-NOESY-[15N]-HSQC実験から得られた13C(D4)お
よび1H(D3)面。下段: Lys35 NHの1H化学シフトの値(垂直軸、D1)においてその15 N(D3)値の面を用いて3D[15N]-NOESY-HSQCから得られたストリップ。水平1H軸は
、上段のスペクトルの水平1H軸とアライメントされている。3Dスペクトル中の2.
72および3.01ppmの弱いクロスピークは、4Dスペクトル中に対応するクロスピー
クを示さない。なぜなら、後者の方がS/N比が小さいからである。これらのピー
クは、Lys35 NHと、Asn44 Hβ2(2.72ppm)ならびにCys30 Hβ3および/またはCys
41 Hβ2(3.01ppm)との間のクロスピークとして帰属された。
【図3】 最終アンサンブル中の32個のリファインメント構造の主鎖C、N、Ca原子を示す
立体写真図。ドメイン-1は左側に存在し(赤色)、ドメイン-2は右側に存在し(緑
色)、そしてNおよびC末端はいずれも下側近傍に存在する。
【図4】 アンサンブルの最も代表的なモデルのMOLSCRIPT図。主鎖Caトレース、逆平行
βシートエレメント、およびジスルフィド架橋(Sγ原子は黄色で表わされている
)が示されている。ドメイン-1、赤色; ドメイン-2、緑色。
【図5】 14アミノ酸「縮小コア」コンセンサスを用いるfitpdbプログラムによる典型的
なEGF様ファミリーメンバーのアライメント (Bersch et al., 1998) (図1を参照
されたい)。各構造中のアライメントした主鎖セグメントは白色である。構造の
アライメントは、グループ内の最も代表的な構造(Xa因子)に対して行う。左から
右に行くに従って相違が大きくなる。数値は、アライメントしたC、N、Cα原子
のrmsd値を表わしている。PDB識別コード: Xa因子(結晶構造), 1hcg; 補体C1r成
分, lapq (14回目のモデル); ヒトEGF, legf (11回目のモデル); フィブリリン-
1, ドメイン-32およびドメイン-33, lemn (最小化平均構造); トランスフォーミ
ング増殖因子-α, 2tgf (最小化平均構造); 本研究のMSP-1ドメイン-1およびド
メイン-2。
【図6】 フィブリリン-1 vs MSP-1 EGFモジュールペアの配置を示す主鎖リボン状図。
フィブリリン-1 (lemn)シアン色(ドメイン-32)およびマゼンタ色(ドメイン-33)(
Downing et al., 1996); MSP-1ドメイン-1(黄色)およびドメイン-2(緑色)。構造
のアライメントは、図6の場合と同様に、各ペアのN末端ドメインのコアコンセン
サスにより行う。フィブリリン-1構造中の結合Ca2+イオンは、マゼンタ色の球で
示されている。
【図7】 GRASPを用いて計算されたMSP-1 EGFモジュールペアの静電ポテンシャル表面の
2つの図aおよびb(y軸のまわりに180°回転)。赤色は負電荷を示し、青色は正電
荷を示し、そして白色は中性である。図の向きは、隣の虫状図により示されてい
る。
【図8】 モノクロナール抗体の結合に影響を及ぼすいくつかの突然変異の位置を示すMS
P-1 C末端断片のCPKモデル。ドメイン1は右側上方に伸び、ドメイン2は左側下方
に伸びている。
【図9】 ウェスタンブロットにより検出された、GST- MSP-119へのモノクロナール抗体
の結合の例。野生型配列をベースとするタンパク質および改変配列を含有するタ
ンパク質への各モノクロナール抗体の結合が示されている。上部にはモノクロー
ナル抗体が示されている。左側にはタンパク質が示されている: WT,野生型配列;
22, Leu22→Arg; 26, Glu26→Ile; 15, Asn15→Arg; 27, Glu27→Tyr; 31,Leu3
1→Arg; 43, Glu43→Leu; 27+31+43, Glu27→Tyr + Leu31→Arg + Glu43→Leu;
15+27+31+43, Asnl5→Arg + Glu27→Tyr + Leu31→Arg + Glu43→Leu。
【図10】 BIAcore分析により検出された、GST-MSP-119へのモノクロナール抗体の結合。
野生型配列をベースとするタンパク質への結合を100%として各モノクロナール抗
体の結合を正規化し、改変配列を含有するタンパク質の結合をこれに対するパー
セントとして表わす。WT,野生型配列; 15, Asn 15→Arg; 26, Glu26→Ile; 27,
Glu27→Tyr; 31, Leu31→Arg; 34, Tyr34→Ser; 43 Glu43→Leu。
【図11】 BIAcore分析により検出された、複数の改変を含有するGST-MSP-119へのモノク
ロナール抗体の結合。野生型配列をベースとするタンパク質への結合を100%とし
て各モノクロナール抗体の結合を正規化し、改変配列を含有するタンパク質の結
合をこれに対するパーセントとして表わす。WT,野生型配列; 組み合わせには、3
つの突然変異[27+31+43]または4つの突然変異([27+31+34+43]および[15+27+31+4
3])が含まれ、それぞれの部位における変化は、図10に定義されている通りであ
る。
【図12】 競合的結合アッセイおよび固定化された野生型GST-MSP-119を用いるブロック
抗体の同定。GST-MSP-119へのmAbs 12.8および12.10の結合と競合する抗体の能
力を、BIAcore分析により測定した。それぞれの抗体(x軸)を抗原に結合させ、そ
の後、逐次的に結合できる12.8または12.10 (阻害mAb)のいずれかの量を定量し
た。結合の量は、他の抗体とのプレインキュベーションを行わなずに結合させた
12.8または12.10のいずれかの総量に対するパーセントとして表わす。
【図13】 改変組換えMSP-119で免疫することにより誘発された抗体の二次プロセシング
阻害能力のアッセイ。洗浄した3D7メロゾイトを、インキュベーションなし(0時
間)で直接分析するか、あるいは血清の不在下(血清なし)、完全阻害に対する対
照としての1mM PMSFの存在下、正常ウサギ血清の存在下(正常血清)、15+27+31+4
3改変タンパク質で免疫されたウサギ由来の血清の存在下(免疫血清)において、
総て反応バッファー中1:10の希釈で、37℃で1時間にわたりインキュベートした
。いずれも反応緩衝液で1:10に希釈した。二次プロセシングの結果として上清中
に放出されたMSP-133のレベルをELISA法により測定し、492nmにおける吸光度に
より表わした。
【図14】 CODOPプログラムにインプットするために使用したぴひあ・パストリス(Pichi
a pastoris)コドン優先度表。
【図15】 最適化合成MSP-142遺伝子に対するDNA配列およびタンパク質配列。A: P.パス
トリス(P. pastoris)中で最適なコドン使用および発現が得られるように設計
された完全配列。B: 発現ベクターpPIC9K-HXa中の合成MSP-119構築物の配列。大
文字: His6タグおよびXa因子開裂部位(IEGR)を含むベクター配列。小文字: 合成
MSP-119コード配列。クローン化配列は、pPIC9K配列のSnaBI制限部位に位置する
。C: 合成MSP-119構築物の発現タンパク質配列。記載の配列は、kex2/STE13プロ
セシング部位に続くpPIC9K α因子分泌シグナルへの融合体として産生される。
合成MSP-119は太字で記されている。D: MSP-133構築物の配列。クローン化配列
は、pUC118ベクターのSmaI部位に位置する。E: 合成MSP-133構築物翻訳産物の推
定タンパク質配列。
【図16】 MSP-133およびMSP-119配列に対する遺伝子アセンブリーPCR反応。反応1: アセ
ンブリー反応の10μLアリコート。反応2: 増幅反応の20μLアリコート。続いて
、N末端断片および中間断片を一緒にスプライシングしてMSP-133合成構築物を生
成した。C末端断片合成反応により、最適化MSP-119構築物を生成した。
【図17】 P.パストリス(P. pastoris)中における合成MSP-119タンパク質の発現。レー
ン1〜6: 培養上清に由来する分泌組換えタンパク質のトリクロロ酢酸沈澱物で、
更なる精製は行われていない(それぞれ5μL)。3種の独立した形質転換体の二重
反復培養から得られたサンプル。レーン8、9: 元のP.ファルシパルム(P. falci
parum)配列から産生された精製済み脱グリコシル化MSP-119。レーン7、10: NOV
EX分子量マーカー。
【図18】 A: 最適化合成MSP-119遺伝子から発現されたタンパク質(25mM)の{1H/15N}-HSQ
Cスペクトル。B: 元のP.ファルシパルム(P. falciparum)配列から発現された
脱グリコシル化タンパク質(2.2mM)の対照{1H/15N}-HSQC (Morgan et al., 1999)
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成13年6月15日(2001.6.15)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 14/445 C07K 16/20 4C086 16/20 C12N 1/19 4H045 C12N 1/19 C12P 21/08 C12P 21/08 C12R 1:84 //(C12N 1/19 1:91 C12R 1:84) C12N 15/00 ZNAA (C12N 1/19 C12R 1:91) (31)優先権主張番号 2,271,451 (32)優先日 平成11年5月25日(1999.5.25) (33)優先権主張国 カナダ(CA) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AG,AL,AM,AT,AU, AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,C N,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EE ,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR, HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,K P,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU ,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX, NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,S G,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ ,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 バードサル,ベリー イギリス国 エヌダブリュ7 1エーエー ロンドン,ミル ヒル,ザ リッジウェ イ,エムアールシー ナショナル インス ティチュート フォー メディカル リサ ーチ (72)発明者 フィーネイ,ジェームス イギリス国 エヌダブリュ7 1エーエー ロンドン,ミル ヒル,ザ リッジウェ イ,エムアールシー ナショナル インス ティチュート フォー メディカル リサ ーチ (72)発明者 モーガン,ウィリアム イギリス国 エヌダブリュ7 1エーエー ロンドン,ミル ヒル,ザ リッジウェ イ,エムアールシー ナショナル インス ティチュート フォー メディカル リサ ーチ (72)発明者 サイド,シャビー イギリス国 エヌダブリュ7 1エーエー ロンドン,ミル ヒル,ザ リッジウェ イ,エムアールシー ナショナル インス ティチュート フォー メディカル リサ ーチ (72)発明者 ユサイピブル,チャイラット タイ国 エヌシージーイービー,モレキュ ラー バイオロジー アンド プロテイン エンジニアリング ラボラトリー Fターム(参考) 4B024 AA01 BA31 CA06 DA12 EA04 GA11 4B064 AG26 CA10 CC24 CE08 DA02 4B065 AA77X AA86Y AB01 BA02 CA24 CA45 4C084 AA13 NA10 ZB092 ZB382 4C085 AA03 BA06 DD62 4C086 AA01 EA16 MA01 MA04 NA10 ZB09 ZB38 4H045 AA10 AA20 AA30 BA10 CA22 DA75 DA86 EA29 EA31 FA71 FA73

Claims (36)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 プラスモディウム(Plasmodium)のメロゾイト表面タンパク
    質-1(MSP-1)のC末端断片の天然に存在しない変異体であって、(i) プラスモディ
    ウムMSP-142のタンパク質分解開裂を阻害する第2の抗体の結合をブロックしうる
    少なくとも1種の第1の抗体に対する親和性が、天然に存在するプラスモディウ
    ム MSP-119と比較して小さく、かつ(ii) プラスモディウム MSP-142のタンパク
    質分解開裂を阻害する少なくとも1種の第3の抗体に対する親和性が、天然に存
    在する該プラスモディウム MSP-119と比較して実質的に同等である、変異体。
  2. 【請求項2】 前記プラスモディウム MSP-119および前記プラスモディウム MSP-142が、プラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum) MS
    P-119およびプラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum) MSP
    -142である、請求項1に記載の変異体。
  3. 【請求項3】 前記第1の抗体が、モノクローナル抗体1E1、2.2、7.5、9C8
    および111.4から選択される、請求項1または2に記載の変異体。
  4. 【請求項4】 前記第2の抗体および/または前記第3の抗体が、モノクロー
    ナル抗体12.8、12.10および5B1から選択される、請求項1または2に記載の変異
    体。
  5. 【請求項5】 プラスモディウムのメロゾイト表面タンパク質-1(MSP-1)のC
    末端断片の天然に存在しない変異体であって、配列番号1として示されているプ
    ラスモディウム・ファルシパルム(Plasmodium falciparum)MSP-119アミノ酸配
    列中のアミノ酸残基14、15、27、31、34、43、48および53のいずれか1つあるい
    は他のプラスモディウム MSP-119ポリペプチド中のそれらに相当する位置のいず
    れか1つにアミノ酸改変を含んでなる、変異体。
  6. 【請求項6】 前記改変が、Gln14→Arg、Gln14→Gly、Asn15→Arg、Glu27
    →Tyr、Leu31→Arg、Tyr34→Ser、Tyr34→Ile、Glu43→Leu、Thr48→LysおよびA
    sn53→Argならびに他のプラスモディウム MSP-119ポリペプチド中のそれらに相
    当する改変から選択される、請求項5に記載の変異体。
  7. 【請求項7】 前記置換が、[Glu27→Tyr、Leu31→ArgおよびGlu43→Leu]、
    [Glu27→Tyr、Leu31→Arg、Tyr34→SerおよびGlu43→Leu]、[Asn15→Arg、Glu27
    →Tyr、Leu31→ArgおよびGlu43→Leu]ならびに他のプラスモディウム MSP-119
    リペプチド中のそれらに相当する改変から選択される、請求項6に記載の変異体
  8. 【請求項8】 配列番号1として示されているプラスモディウム・ファルシ
    パルム(Plasmodium falciparum)MSP-119アミノ酸配列中のCys12および/また
    はCys28に突然変異を含んでなる、請求項5〜7のいずれか1項に記載の変異体
  9. 【請求項9】 前記突然変異が、Cys12→IleとCys28→Trp、およびCys12→A
    laとCys28→Pheから選択される置換である、請求項8に記載の変異体。
  10. 【請求項10】 前記置換が、[Cys12→Ile、Asn15→Arg、Glu27→Tyr、Cys
    28→Trp、Leu31→Arg、Glu43→Leu]、[Cys12→Ile、Asn15→Arg、Glu27→Tyr、C
    ys28→Trp、Leu31→Arg、Glu43→Leu、Asn53→Arg]、[Cys12→Ile、Asn15→Arg
    、Glu27→Tyr、Cys28→Trp、Leu31→Arg、Tyr34→Ser、Glu43→Leu、Asn53→Arg
    ]ならびに他のプラスモディウム MSP-119ポリペプチド中のそれらに相当する置
    換から選択される、請求項9に記載の変異体。
  11. 【請求項11】 ワクチン組成物の調製に使用するためのプラスモディウム
    MSP-1変異体を産生する方法であって、(i) プラスモディウム MSP-142のタンパ
    ク質分解開裂を阻害する第2の抗体の結合をブロックしうる少なくとも1種の第1
    の抗体に対する親和性が、天然に存在するプラスモディウム MSP-119と比較して
    小さく、かつ(ii) プラスモディウム MSP-142のタンパク質分解開裂を阻害する
    少なくとも1種の第3の抗体に対する親和性が、天然に存在する該プラスモディ
    ウム MSP-119と比較して実質的に同等である誘導体が得られるように、プラスモ
    ディウム MSP-1 C末端断片中の1個以上のアミノ酸残基を改変することを含んで
    なる、方法。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載の方法によって得られる天然に存在しな
    いプラスモディウム MSP-1変異体。
  13. 【請求項13】 請求項1〜10または12のいずれか1項に記載の変異体
    をコードするポリヌクレオチドであって、宿主細胞中で該ヌクレオチドの発現を
    指令しうる調節配列に機能しうる形で連結されてなる、ポリヌクレオチド。
  14. 【請求項14】 前記宿主細胞中での発現に対して最適化された配列を有し
    てなる、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
  15. 【請求項15】 前記宿主細胞がピヒア・パストリス(Pichia pastoris)
    細胞である、請求項13または14に記載のポリヌクレオチド。
  16. 【請求項16】 請求項13、14または15に記載のポリヌクレオチドを
    含んでなる核酸ベクター。
  17. 【請求項17】 請求項16に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
  18. 【請求項18】 請求項1〜10または12のいずれか1項に記載の変異体
    、請求項13〜15のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項16
    に記載のベクターを製薬上許容される担体または希釈剤と一緒に含んでなる医薬
    組成物。
  19. 【請求項19】 免疫原性プラスモディウムポリペプチドまたはその断片も
    しくは誘導体を更に含んでなる、請求項18に記載の組成物。
  20. 【請求項20】 抗MSP-1抗体を産生する方法であって、請求項1〜10ま
    たは12のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項13〜15のいずれか1
    項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項16に記載のベクターを哺乳動物に投
    与することを含んでなる、方法。
  21. 【請求項21】 ポリクロナール抗MSP-1抗体を産生する方法であって、請
    求項1〜10または12のいずれか1項に記載のポリペプチド、請求項13〜1
    5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項16に記載のベクター
    を哺乳動物に投与して該哺乳動物から血清を抽出することを含んでなる、方法。
  22. 【請求項22】 請求項20または21に記載の方法により産生される抗体
  23. 【請求項23】 プラスモディウム・ファルシパルム(Plasomodium falcip
    arum)により惹起されるマラリアに対する免疫性を誘発する方法であって、その
    ような免疫性を必要とする個人に、請求項1に記載の変異体、請求項13に記載
    のポリヌクレオチドまたは請求項16に記載のベクターを有効量で投与すること
    を含んでなる、方法。
  24. 【請求項24】 哺乳動物を免疫する方法であって、請求項1に記載のポリ
    ペプチド、請求項13に記載のポリヌクレオチドまたは請求項16に記載のベク
    ターを有効量で投与することを含んでなる、方法。
  25. 【請求項25】 前記哺乳動物がマラリアに対して免疫される、請求項24
    に記載の方法。
  26. 【請求項26】 ヒト患者のマラリア感染症を治療する方法であって、請求
    項18または19に記載の医薬組成物を有効量で該患者に投与することを含んで
    なる、方法。
  27. 【請求項27】 治療に使用するための、請求項1〜10または12のいず
    れか1項に記載の変異体、請求項13〜15のいずれか1項に記載のポリヌクレ
    オチドまたは請求項16に記載のベクター。
  28. 【請求項28】 MSP-119 NMR構造のモデルを保存してなるコンピュータ読
    取り可能な媒体。
  29. 【請求項29】 プラスモディウム MSP-1ポリペプチドをコードする核酸で
    あって、異種宿主細胞中での発現に対して最適化されている、核酸。
  30. 【請求項30】 前記異種宿主がピヒア・パストリス(Pichia pastoris)
    細胞である、請求項29に記載の核酸。
  31. 【請求項31】 前記ポリペプチドが、図2Cおよび2Eに示されている配列を
    含むMSP-142ポリペプチド、図2Cに示されている配列を含むMSP-119ポリペプチド
    、および図2Eに示されている配列を含むMSP-133ポリペプチドから選択される、
    請求項29または30に記載の核酸。
  32. 【請求項32】 図2A、図2Bおよび図2Dの配列から選択される配列を含んで
    なる、請求項29〜31のいずれかに記載の核酸。
  33. 【請求項33】 請求項29〜32のいずれかに記載の核酸を含んでなる核
    酸ベクター。
  34. 【請求項34】 請求項33に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
  35. 【請求項35】 請求項29〜31のいずれかに記載の核酸または請求項3
    3に記載のベクターを製薬上許容される担体または希釈剤と一緒に含んでなる医
    薬組成物。
  36. 【請求項36】 免疫原性プラスモディウムポリペプチドまたはその断片も
    しくは誘導体を更に含んでなる、請求項35に記載の組成物。
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