JP2002537897A - 人工器官用移植片を挿入する方法、システムおよび器具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 差し込み具（１０）にはフレーム（１２）が含まれており、このフレームには、雄ねじ付きロッド（２４）の挿入された中央繰り穴がある。差し込み具（１０）を移植片（４０）に固定するために、雄ねじ付きロッド（２４）が移植片（４０）の中へ挿入されている。蝶ねじ（１４）が、ロッド（２４）の長さに沿って配置されているとともに、ロッド（２４）を移植片（４０）の中へねじ合わすために操作者によって使われている。一組のばね座金（３０）からなるのが好ましい偏倚用部材が、蝶ねじ（１４）とスライダー（１８）との間に配置されている。この差し込み具におけるレバー（１６）には、このレバー（１６）が閉じられたときにスライダー（１８）を蝶ねじ（１４）の方へ至らせるカム付き面がある。スライダー（１８）が蝶ねじ（１４）のいっそう近くへ動くと、ばね座金（３０）が圧縮されて、蝶ねじ（１４）およびスライダー（１８）へ加えられる対抗力が生じる。この対抗力は、差し込み具（１０）のロッドおよびフレーム（１２）へ伝えられて、差し込み具（１０）と移植片（４０）との間に及ぼされる圧縮力を引き起こす合成力が作り出される。この合成力は、差し込み具（１０）を移植片（４０）の上へしっかりと納めるようにするためのものであり、また、差し込み具（１０）へ加えられたどのような打撃もロッド（２４）へは方向を変えて伝わり、ロッド（２４）が緩んだり外れたりするおそれが減る。従って、手術の際に、外科医あるいは助手は、雄ねじ付きロッド（２４）を移植片（４０）の内部に配置して、それを蝶ねじ（１４）でしっかり締めることができる。ロッド（２４）が手で締められた後に、レバー（１６）は、差し込み具（１０）を移植片（４０）の上へ圧縮する合成力が生じるように、引き上げられる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】 関連出願の資料 この出願は、１９９９年３月３日に出願され、引用によってこの明細書に組み
入れられた米国出願番号第６０，１２２，６３１号出願の優先権を主張するもの
である。

【０００２】 発明の分野 この発明は一般に、人工器官用の移植片、器具および他の装置を挿入する方法
、システムおよび器具に関するものであり、さらに詳しくは、移植片および他の
器具を骨の髄腔の中へ挿入する方法、システムおよび器具に関するものである。

【０００３】 発明の背景 関節形成術では、人工器官用移植片を骨の髄腔へ挿入することがよくある。こ
のような移植片自体に加えて、他の器具あるいは装置もまた、挿入する必要があ
る。これらの器具の例には、ブローチ、リーマ、心出し工具、深さガイドおよび
ゲージが含まれている。骨の内部には骨髄組織および皮質組織があるので、移植
片あるいは器具を骨内部の所望位置へ至らせるためには、移植片あるいは器具へ
力を加えることが普通、必要である。移植片あるいは器具を骨内部の所望位置で
配置するのに役立てるために、さまざまな方法、システムおよび器具が考案され
てきた。

【０００４】 例えば、差し込み具あるいは押し込み具が、移植片を骨の髄腔の中へ至らせる
ために普通に使われた装置である。この差し込み具には、何らかの方法でフレー
ムに接続されてこのフレームを通るロッドであって、移植片の一方端部における
雌ねじ付き繰り穴にねじ込まれた同ロッドにおける雄ねじ付き端部によるように
、移植片の一方端部へ接続されるロッドが備わっていることを特徴とする。加え
て、この差し込み具には、同ロッドの端部の近傍で前記フレームに一体にされて
おり、移植片の同端部で押し込み面に結合する荷重伝達面が備わっていることを
特徴とする。このロッドは、差し込み具と移植片との間に圧縮力を加えるために
、そして、より詳しくは、差し込み具の押し込み面を移植片の押し込み面へ押し
付けるために、移植片にしっかりと接続されている。差し込み具が移植片にしっ
かりと取り付けられた後に、外科医は、槌で差し込み具へ力を加え、また、これ
らの力が差し込み具のフレームを通して移植片へ伝達され、移植片が所望位置へ
動くことができるようにする。移植片がその所望位置へ押し込められた後に、外
科医は、ロッドを切り離して、差し込み具を移植片から取り外す。

【０００５】 移植片の押し込みの間には、槌の衝撃によって差し込み具の内部に振動が生じ
、これらの振動によってロッドが移植片の内部から後退してしまうという厄介な
問題が起きる。ロッドが後退すると、差し込み具のフレームにおける押し込み面
と移植片の押し込み面との間における圧縮力が逃げるため、差し込み具は移植片
から分離するようになる。このように、次々に起る差し込み具からの振動によっ
て、差し込み具が移植片から外れてしまうことになる。差し込み具が移植片から
分離するようになると、差し込み具による槌の打撃からの力がもはや、移植片へ
有効に伝達されなくなる。代わりに、槌の打撃は、差し込み具へあるいは差し込
み具と移植片との間へ加えられて、差し込み具、移植片あるいは外科的処置の完
全性に悪影響を及ぼす、好ましくない力になってしまうおそれがある。

【０００６】 例えば、ロッドが移植片の内部から後退するとそのロッド自体がいたむおそれ
がある。差し込み具が移植片に納まっていないときには、槌の打撃による何らか
の力がロッドに方向を変えて伝わる。しかしながら、ロッドは、圧縮力を差し込
み具と移植片との間に伝えるように設計されており、衝撃荷重を受けてその衝撃
荷重を移植片へ伝達するようには一般に設計されていない。ロッドがこのような
荷重に耐えるように設計されていないので、衝撃力によって、ねじ山の磨り減り
、剥がれ落ちあるいは平坦化のような、ねじ山への傷付きが引き起こされる。ロ
ッドによるこのようなねじ山への傷付きが起きると、移植片を取り外して別の移
植片で置き換えなければならない場合に、ロッドが移植片から完全に後退するの
が妨げられる。ねじ山への傷付きに加えて、差し込み具により加えられた槌の打
撃によって、ロッドを破壊するような大きい応力が発生するおそれがある。

【０００７】 ロッドが移植片の内部から後退すると、差し込み具および移植片もまた、傷付
くようになる。例えば、ロッドが後退すると、差し込み具における荷重伝達面が
移植片から離れるおそれがある。このように離れることによって、差し込み具の
荷重伝達面が移植片における荷重伝達面と適切に整合するのが妨げられるおそれ
がある。荷重伝達面どうしのずれにより、それらの面の内部での不均一な荷重伝
達が引き起こされて、これらの面が応力を受け、欠け落ちあるいは変形すること
になる。移植片と差し込み具とが離れるために、その衝撃力によって差し込み具
が移植片に対して動くようになるおそれが生じ、また、これら２つの構成要素の
間に衝突が発生するおそれが生じる。差し込み具へ伝えられた動きによって、差
し込み具あるいは移植片が傷付くおそれが増大する。

【０００８】 移植片および差し込み具への傷付きが引き起こされるのに加えて、打撃過程の
間において移植片の内部からロッドが後退すると、外科的処置が複雑になる。ロ
ッド、差し込み具の他の部分、あるいは移植片に何らかの傷付きが発生すると、
移植片の挿入を停止しなければならず、また、外科医は、傷付きの程度を調べな
ければならない。移植片を取り外さなければならないおそれと、外科医が同処置
におけるあるステップを繰り返さなければならないおそれとがある。最低に見積
もっても、ロッド、差し込み具のフレーム、あるいは移植片への傷付きには、手
術室の中での必要な時間が増えるとともにその手術に含まれたコストが必然的に
増えるような遅れが存在する。

【０００９】 もっと重要なことには、ロッド、差し込み具のフレーム、あるいは移植片への
傷付きがあれば、その処置における別の煩雑さが生じ、また、患者への危険性が
生じる。例えば、移植片の挿入の際にロッドが破損すると、そのロッドの破損部
分の付いた移植片を取り外さなければならない。しかしながら、普通は移植片を
取り外すために使われる後退機構にも、移植片の繰り穴の内部に挿入のためのロ
ッドが備わっている。このため、この後退機構は、その移植片を取り外すために
簡単に使うことができない。その結果、その移植片は患者から簡単に取り外すこ
とができないのである。

【００１０】 差し込み具へ向けられた槌の打撃によって、何の予告もなく、急速にかつ気付
かないうちに傷付きが発生する。移植片の内部からのロッドの後退は、直線的な
パターンによるものではない。そうではなくて、ロッドのゆるみによってさらに
ゆるみが進み、それ自体の上にある複合体は、構成要素の破損の、起り得る、あ
りそうな、あるいは増大した蓋然性が急速に上昇する。このため、外科医が先ほ
ど差し込み具を患者へ適切に締め付けたとしても、ロッドは、槌による２〜３回
の打撃を受けただけで後退し、次いで傷が付いてしまうことがある。

【００１１】 それゆえ、差し込み具へ加えられた力は、移植片へ有効に送られるとともに、
ロッド自体へは方向を変えて伝わるかさもなければ伝わらないことが、ぜひ必要
である。差し込み具を移植片へ適切に納めることを保証するために提案された処
理法には、移植片の内部でロッドを定期的に締め付けることが含まれている。こ
の処理法の目標は、生じるおそれのある傷付きをすべて防止するという要望に対
して、ロッドがゆるみ過ぎてしまう前にそのロッドを締め付けることである。提
案されたこの処理法には、槌による４〜５回の打撃のような、あるセット数の槌
による打撃が終わるたびにロッドを締め付けることが含まれている。

【００１２】 提案されたこの処理法では、外科医が作業を中断して、定期的に差し込み具を
調節するが、このことは最適ではない。一例としては、移植片の内部からロッド
が後退することは予測できないことが多く、それによって１つを選ぶことは、有
用であるかもしれないが、ロッド、移植片あるいは差し込み具への傷付きを防止
することができないものと思われる。さらにまた、そのような処理法は、移植片
を所望位置へすばやく配置する外科医の能力に左右される。たいていの外科医は
、移植片を挿入することに精神を集中させがちであり、槌による４〜５回の打撃
が終わるたびに作業を中断して差し込み具を締め付けることは煩わしくて気が散
るものであると考えている。従って、ロッド、差し込み具のフレーム、あるいは
移植片への傷付きのおそれを減らし、移植片にしっかりといっそう良好に納める
ことのできる差し込み具についての必要性が存在している。

【００１３】 発明の開示 この発明によれば、前記のいくつかの問題点が検討され、人工器官用の移植片
あるいは器具のような対象物を動かす方法、器具および装置が提供される。この
発明の好ましい実施態様に係る挿入装置には、対象物の中へ挿入される、ロッド
のような係合部材が含まれている。この係合部材は、対象物に係合するとともに
その対象物の上に載置される脚部のような荷重伝達面のあるフレームのような、
力を対象物へ伝えるための部材の内部に納められている。一般に、対象物に差し
込み具を適切に納めることを保証するために、あらかじめ荷重の掛けられた圧縮
力が差し込み具と対象物との間に加えられる。この圧縮力によって、衝撃力が、
対象物へ加わる一方で、前記係合部材あるいは差し込み具の他の部分へは方向を
変えて伝わる、ことが保証される。

【００１４】 好ましいこの実施態様では、差し込み具には、移植片あるいは器具の中へ挿入
されて張力が加えられる雄ねじ付きロッドが含まれている。この発明における１
つの観点によれば、差し込み具には、閉じたときにロッドと差し込み具のフレー
ムとの間に合成力を生じさせることになるレバーが備わっている。この合成力は
移植片の上における差し込み具のフレームへ導かれて、差し込み具が移植片にし
っかりと納まる。レバーには、これが閉じたときにロッドの長さ方向に沿ってス
ライダーが移動するカム付き面が備わっている。このスライダーとロッドに係合
した蝶ねじとの間には、少なくとも１つの偏倚用部材（ｂｉａｓｉｎｇ ｍｅｍ
ｂｅｒ）が配置されている。レバーが閉じられると、スライダーが蝶ねじのいっ
そう近くまで動くとともに、偏倚用部材に圧縮力が加わることになる。偏倚用部
材は、次いでその圧縮力に抗して、差し込み具のフレームを移植片へ向けるよう
な力を生じさせる。この偏倚用部材には、ばね座金が備わっているのが好ましい
が、衝撃力が差し込み具へ加わるように、差し込み具と移植片との間に圧縮力を
加える任意の構成要素、装置あるいはシステムが備わっていてもよい。

【００１５】 差し込み具と移植片との間に常に圧縮力が加わり、かつロッドに張力が加わる
ので、ロッドは、ゆるむようになるのが実質的に防止され、それによって、移植
片の内部からのロッドのどのような後退も最小限になる。さらに、ロッドが後退
するとしても、ロッドが後退する距離が偏倚用部材における圧縮距離の範囲内に
維持される限り、それにもかかわらず、差し込み具は移植片に納まった状態に維
持される。差し込み具と移植片との間に加えられた圧縮力によれば、ロッド、差
し込み具の他の部品、あるいは移植片への傷付きのおそれが減り、従って、この
手術に関係した煩雑さと費用とが減ることになる。他方で、このような偏倚用部
材のない差し込み具は、使用の際に外れることが知られている。

【００１６】 従って、この発明の特徴は、人工器官用の移植片あるいは器具のような対象物
へ力を有効に伝える方法、システムおよび器具を提供することにある。

【００１７】 この発明の別の特徴は、人工器官用の移植片あるいは器具にしっかりと納めら
れる方法、システムおよび器具を提供することにある。

【００１８】 この発明のさらに別の特徴は、差し込み具、移植片、あるいは他の器具への傷
付きを減らす方法、システムおよび器具を提供することにある。

【００１９】 この発明のもっと別の特徴は、容易に操作される方法、システムおよび器具を
提供することにある。

【００２０】 この発明のなおまた別の特徴は、移植片あるいは器具を所望位置で使うための
方法、システムおよび器具を提供することにある。

【００２１】 この発明のもっと別の特徴は、移植片あるいは器具へ力を集中させるための方
法、システムおよび器具を提供することにある。

【００２２】 この発明の別の特徴は、使用の際に不注意によって簡単にねじ外れるようにな
ることのない雄ねじ付きロッドの備わっている方法、システムおよび器具を提供
することにある。

【００２３】 この発明の別の特徴は、簡単に外れるようになることのない方法、システムお
よび器具を提供することにある。

【００２４】 この発明の他の目的、特徴、および利点は、この文書の残り部分に関して明ら
かになる。

【００２５】 この明細書の一部に組み入れられるとともにその一部を形成している添付図面
によって、この発明の好ましい実施態様が、この発明の原理の説明、開示ととも
に示されている。

【００２６】 詳細な説明 さて、添付図面に示された非限定的な実施例である、この発明の好ましいいく
つかの実施態様に、詳しく言及することにする。さて、図１に示された、この発
明の好ましい１つの実施態様に係る差し込み具１０が、大腿骨の髄腔の中へ挿入
される大腿骨用移植片４０に関して、説明される。一般に、この発明の好ましい
１つの実施態様に係る差し込み具１０にはフレーム１２が含まれており、このフ
レームには、外部エネルギー源からの力を受けるための面１２Ａと、この力を移
植片４０のような別の対象物へ伝えるための、好ましくは構成部分１２Ｄが備わ
っている荷重伝達面とがある。この力は、面１２Ａへ加えられた槌の打撃を受け
てできるものであり、また、差し込み具１０によって、そのフレーム１２を介し
て構成部分１２Ｄへ送られる。

【００２７】 差し込み具１０は、対象物と差し込み具１０との間における任意の適切な接触
面を介して、対象物へ取り付けることができる。挿入される対象物が移植片４０
であるような好ましい実施態様では、差し込み具１０は、ロッド２４を差し込み
具１０の中へねじ込むために、蝶ねじ１４を回すことで、移植片４０へ取り付け
られる。ロッド２４が移植片４０の中へ手で締め付けられた後に、以下でいっそ
う詳しく説明されるように、レバー１６が上げられる。このレバーによって、差
し込み具１０のフレーム１２が移植片４０へ向けられる合成力が生じる。この合
成力は、差し込み具１０が使用中にゆるむようになることがなく、代わって、脚
部１２Ｄが移植片４０へしっかりと納まることが保証されるように働く。差し込
み具１０によって生じたこの合成力は、その結果、挿入されるロッド２４、フレ
ーム１２、移植片４０、あるいは他の器具のいずれかへのどのような傷付きも防
止されるように働く。さらにまた、このような合成力によって、外科医は、差し
込み具１０を定期的に調節する必要がなくなり、どちらかと言えば、移植片４０
を所望位置へ挿入するのに集中することが可能になる。

【００２８】 図１には、差し込み具１０のフレーム１２と移植片４０との接触面についての
ちょうどよい１つの実施例が示されている。図２（Ａ）にいっそう詳しく示され
るように、移植片４０には、フレーム１２の脚部１２Ｄが納められる長穴状凹所
４２が含まれている。ロッド２４には雄ねじ付き端部２４Ｄが含まれており、こ
の端部２４Ｄには、移植片４０の雌ねじ付き凹所４４の中へ挿入される先端２４
Ｅが備わっている。図２（Ａ）に示された接触面では、槌の打撃から差し込み具
１０のフレーム１２を介して加えられかつ伝えられた押し込み力は、脚部１２に
集中し、次いで、この箇所で移植片４０へ伝えられる。このような構成によれば
、押し込み力は、ロッド２４の雄ねじ付き端部２４Ｄから、また、移植片４０の
雌ねじ付き凹所４４から離れることになる。

【００２９】 図１および図２（Ａ）に示された接触面は、適切な接触面のちょうどよい１つ
の実施例である。別の実施例として、この接触面には、移植片４０に形成された
円形凹所４６と、対応円形端部の備わっている脚部とが含まれていてもよい。さ
らに別の実施例として、移植片４０には、図２（Ｃ）に示されたように、楕円形
凹所４８が備わっていてもよく、また、脚部には、凹所４８の内部に配置される
対応楕円形が備わっていてもよい。図２（Ｃ）に示された楕円形は、円形でない
他の形状と同様、好ましいことに円形よりも優れている。なぜかというと、差し
込み具は使うときにねじる必要のあるときもあるが、楕円形では、移植片に対し
て差し込み具が回転することを防止することができるからである。図２（Ａ）〜
図２（Ｃ）に示された凹所の実施例には、凹所の設けられた面にほぼ垂直である
壁部が備わっている。これに代えて、これらの壁部は他の角度で形成されていて
もよく、また、このような凹所の設けられた面は不規則な形状であってもよい。
例えば、図２（Ａ）に関して、凹所４２はＶ字状であってもよく、脚部１２Ｄは
対応するＶ字状であってもよい。さらにまた、雄ねじ付きロッドと移植片の内部
の雌ねじ付き凹所とに代えて、差し込み具が、他の公知の接触面あるいは後に開
発された接触面を介して、移植片あるいは他の器具へ連結されてもよい。

【００３０】 差し込み具の脚部１２Ｄを移植片４０へ向かけて導く合成力を発生させる方法
は、図３に関して、ここで説明される。差し込み具１０には、レバー１６、スラ
イダー１８、および少なくとも１つの偏倚用部材３０が含まれている。レバー１
６には、このレバー１６が開放位置から閉鎖位置へ枢動するときにスライダー１
８を蝶ねじ１４へ向けて動かすカム付き面１６Ｄが備わっている。少なくとも１
つの偏倚用部材３０は、移動用スライダー１８とスライダー１８の動きを阻む蝶
ねじ１４との間に配置されて、圧縮力を受け止める。この抗力には、移植片４０
から遠ざかる方向へ向けて蝶ねじ１４に加えられる１つの成分と、移植片４０へ
近づく方向へ向けてスライダー１８およびフレーム１２へ加えられる第２成分と
が含まれている。それゆえ、この合成力によって、フレーム１２の脚部１２がこ
の移植片の上にしっかりと納まるようになる。

【００３１】 好ましいこの実施態様では、偏倚用部材３０は、ニューヨーク、ブルックリン
にあるリー・スプリング・カンパニー（Ｌｅｅ Ｓｐｒｉｎｇ Ｃｏｍｐａｎｙ
）によって製造された皿ばね座金のような一組のばね座金からなる。この皿ばね
座金３０は、限られたスペースに高い荷重を掛けることのできるものであり、ま
た、所望の荷重をこの座金の形状構成に従って算出することができるものである
。例えば、すべてが同じ方向へ向けられているいくつかの座金は互いに平行であ
るとみなされ、一方、対向する形状構成に配置されたいくつかの座金は直列状態
にあるとみなされる。例えば、好ましいこの実施態様では、この皿ばね座金は、
部品番号３１２−０３０−６２５からなり、厚さが０．０３０インチであって、
この座金を平坦にするためには１７８ポンドの荷重が必要とする。これらの座金
３０のばね定数を用いることで、この分野の当業者は、これらの座金３０を平行
にあるいは直列に配置して、これらの座金３０が所望距離だけ圧縮されたときに
所望の力を引き出すことができる。ここでいう所望の距離とは、レバー１６が閉
じられてこのばねが係合した後にスライダー１８が蝶ねじ１４へ向かって移動す
る距離である。この合成力は、脚部１２が移植片４０の上へ適切に納まるのを保
証するように充分に大きく、また、ロッド２４の雄ねじ部に傷付きが起きないよ
うに充分に小さく、さらに、平均的なあるいは普通の人力で加えることのできる
力でレバー１６が完全に閉じることができるように充分に小さく、選ぶべきであ
る。この実施例では、この合成力は３２０ポンドであり、ばね座金３０が圧縮さ
れる際にスライダー１８が移動する距離は、０．０６５インチである。

【００３２】 偏倚用部材３０は、ばね座金に限定されるものではなく、他の要素に置き換え
ることができる。一例としては、図４に示されたように、差し込み具１０’には
、スライダー１８と蝶ねじ１４との間に配置された圧縮ばね３２が含まれていて
もよい。レバー１６を閉じると、ばね３２が圧縮されて、差し込み具１０’のフ
レーム１２が移植片４０に抗して圧縮されたままになる力が発生する。また、板
ばねあるいは波形ばねを使って、フレーム１２と移植片４０との間に圧縮力をも
たらすようにすることもできる。さらにまた、ロッド２４およびフレーム１２へ
力をもたらして、差し込み具と移植片あるいは他の器具との間に圧縮力を確保す
るために、ねじりコイルばねもまた使うことができ、または、ゴムあるいは弾性
プラスチックのような固体材料を使うことができる。さらに別の例としては、偏
倚用部材は、ロッド２４自体と、あるいはスライダー１８自体と一体であっても
よい。ロッドは、弾性材料から作られてもよく、付加的な張力をロッドへもたら
す弾性部材を含んでいてもよい。スライダーもまた、ロッドと同じような方法で
偏倚動作をもたらすように作られてもよい。

【００３３】 図５によれば、差し込み具のフレーム１２には、槌からの打撃のような外部エ
ネルギー源からの力を受け止めるような寸法および形状に作られた面１２Ａが備
わっている。この面１２Ａに加えられた力は、この面１２Ａから区域１２Ｂを通
り、区域１２Ｃに沿って脚部１２へ伝わる。フレーム１２には、ロッド２４が納
められる中央開口１２Ｅが設けられている。脚部１２Ｄは、力が移植片４０へ一
様に配分されるように、開口１２Ｅのそれぞれの側に配置されている。区域１２
Ｂは、外科医によって握られてもよく、溝１２Ｆ、棚１２Ｇ、および開口１２Ｈ
が含まれている。棚１２Ｇは、図１、図３および図４にいっそう判りやすく示さ
れているように、フレーム１２の両側から内方へ突き出ており、蝶ねじ１４がフ
レーム１２の脚部１２Ｄの方へ移動するのを制限する。

【００３４】 蝶ねじ１４の好ましい１つの実施態様が図６に示されている。蝶ねじ１４には
、くぼみ部分１４Ａ、隆起部分１４Ｂ、および中央開口１４Ｄが備わっており、
開口１４Ｄは、ロッド２４の上部区域が納まるような寸法および形状に作られて
いる。開口１４Ｄには、ロッド２４の拡大区域１２Ａが移植片４０の方へ移動し
ないような小径部分が含まれている。このため、蝶ねじ１４は、ロッド２４の長
手に沿って上方へ移動することができず、また、先に説明されたように、棚１Ｇ
によって、脚部１２Ｄへ向かって下方へ移動することもできない。蝶ねじ１４に
は開口１４Ｃも含まれており、この開口１４Ｃには、蝶ねじ１４をロッド２４に
固定する圧入ピンのようなピンが納められる。この圧入ピンは、蝶ねじ１４の回
転によってロッド２４が回転するように、蝶ねじ１４を固定する。好ましい別の
実施態様では、蝶ねじ１４には、蝶ねじ１４をロッド２４に固定する止めねじを
入れるための雌ねじ付き開口が含まれている。この止めねじは、蝶ねじ１４の回
転によってロッド２４が回転するように、蝶ねじ１４を固定する。

【００３５】 レバー１６の好ましい１つの実施態様が図７に示されている。このレバー１６
には、レバー１６の枢動する開口１６Ａが含まれている。このレバー１６は、図
３に示すように、差し込み具１０のレバー１６とフレーム１２との間にスペース
をもたらす湾曲部１６Ｃで終わっている。このスペースは、使用者が同開口の中
に指を入れてレバー１６を引き下げ、レバー１６をフレーム１２から遠ざけるこ
とができるように、充分に大きいものであるのが好ましい。レバー１６には、フ
レーム１２の内部における対応長穴の内部に納められるリブ付き部１６Ｂも含ま
れている。レバー１６には、次にレバー１６がフレーム１２の方へ枢動するとき
にスライダー１８を蝶ねじ１４の方へ移動させるカム付き部１６Ｄも含まれてい
る。

【００３６】 レバー１６のカム付き部１６Ｄは、フレーム１２に対して配置されたときに、
中心を越えるように、また、枢動して閉じるように、形成されている。レバー１
６は、レバー１６を引き下げるためにカム付き部１６Ｄの頂上部分を越えて押し
込まなければならないので、槌の打撃がフレーム１２へ加わる際に、不注意によ
って下がり開くことがないように、しなければならない。レバー１６が閉じられ
て、カム付き部１６Ｄの頂上部分がローラー２０に当接すると、ばね座金３０に
は最大締付力が加わる。レバー１６が完全に閉じられた位置まで移動すると、ば
ね座金３０に加えられた締付力は、その最大締付力よりも低い水準まで低下する
。偏倚用部材３０へ加えられた圧縮力がこの最大締付力よりも低下した後であっ
ても、ばね座金３０あるいは他の型の偏倚用部材によって、ロッド２４へうっか
りと張力がもたらされ、また、差し込み具１０と移植片４０との間に圧縮力がも
たらされる。

【００３７】 スライダー１８の好ましい１つの実施態様が図８に示されている。このスライ
ダー１８には、ロッド２４の通される開口１８Ａが設けられている。スライダー
１８には構成部分１８Ｂも含まれており、構成部分１８Ｂには開口１８Ｄがある
。図９に示されたようなローラー２０が、２つの構成部分１８Ｂどうしの間に挿
入されて、スライダー１８とレバー１６との間に比較的低い摩擦の接触面がもた
らされる。ローラー２０には、ローラーピン２２の通される中央開口２０Ａがあ
る。このローラーピン２２は、図１０にいっそう詳しく示されており、ローラー
２０の中へ挿入されるのに加えて，スライダー１８の開口１８Ｄにも挿入される
。ローラーピン２２は、構成部分１８Ｂの開口１８Ｄどうしの中に納められ、そ
の結果、ローラー２０が構成部分１８Ｂどうしの中に良好に支持される。ローラ
ーピン２２は、フレーム１２の内部の溝１２Ｆの内部で移動する。

【００３８】 ロッド２４の好ましい１つの実施態様が図１１に示されている。このロッド２
４には、大径部分２４Ａが含まれており。この部分２４Ａは部分２４Ｂに比べて
直径が大きくされている。先に説明されたように、ロッド２４の区域２４Ａは蝶
ねじ１４の内部に挿入されているが、蝶ねじ１４の内部における中央開口１４Ｄ
の形状のために、蝶ねじ１４を完全に通過することはできない。図３および図４
に示されたように、ロッド２４には、スライダー１８の内部に一部納められた区
域２４Ｂおよび、フレーム１２の区域１２Ｃを通り抜ける区域２４Ｃも含まれて
いる。ロッド２４の雄ねじ付き端部２４Ｄには、移植片４０の中へ挿入される先
端２４Ｅが備わっている。開口２４Ｆは、圧入ピンを納めて蝶ねじ１４をロッド
２４に固定するように適合されている。

【００３９】 レバー１６をフレーム１２に固定するためのピンの好ましい１つの実施態様が
図１２および図１３に示されている。この実施例におけるピンは、雌ピン２６と
、対応する雄ピン２８とからなり、雌ピン２６には、雄ピン２８における雄ねじ
部２８Ｂを納める雌ねじ付き区域２６Ｂが備わっている。雌ピン２６および雄ピ
ン２８の双方にはそれぞれ、ねじ回しの端部が入る長穴２６Ａ・２８Ａが設けら
れている。雌ピン２６は、フレーム１２における開口１２Ｈに通されるとともに
、レバー１６における開口１６Ａに通され、雄ピン２８は、フレーム１２の他の
開口１２Ｈに通されるとともに、雌ピン２６の中へ入れられる。これらのピン２
６・２８が、レバー１６を枢動方式でフレーム１２に固定する方法のちょうどよ
い１つの実施例である、ことはもちろんである。

【００４０】 先に論じたように、この発明は、差し込み具と移植片あるいは他の器具との間
における特定の接触面に限定されるものではない。可能性のある他のいくつかの
非限定的実施例が図１４〜図２１に示されている。図１４（Ａ）〜図１４（Ｃ）
には、差し込み具に納められたときに切欠の中へ圧入されるボールのような部材
が含まれる拘束ボールロック型接触面が示されている。図１５には、移植片ある
いは器具にＴ字状長穴が含まれており、差し込み具にその長穴の中へ滑り込むＴ
字状部材が含まれている、Ｔ字状長穴接触面が示されている。図１６（Ａ）〜図
１６（Ｅ）には、差し込み具に収縮アームおよび外側スリーブが含まれている収
縮コレットロックが示されている。差し込み具を移植片の上に配置すると、収縮
アームが移植片におけるコレットを越えるとともに、外側スリーブが移植片の方
へ移動して、しっかりした取り付けがもたらされる。図１７には、移植片にテー
パー状長穴が含まれ、差し込み具にその長穴の中へ挿入するための対応形状に形
成された部材が含まれている接触面が示されている。

【００４１】 接触面についての別の変形例が図１８（Ａ）および図１８（Ｂ）に示されてい
る。図１８（Ａ）には、栓のある柱状ピンの備わっている移植片が示され、また
、図１８（Ｂ）には、その栓が納められる長穴の備わっている差し込み具につい
ての留め具が示されている。この差し込み具は、その長穴の中に配置された栓の
備わっている移植片の上に配置されており、また、この差し込み具は、２つの構
成要素を互いに固定するために回転される。

【００４２】 拡張コレットロック型の接触面が図１９（Ａ）〜図１９（Ｄ）に示されている
。この差し込み具には、移植片の内部におけるＴ字状凹所の内部に配置されたコ
レットアームが含まれている。この差し込み具には、移植片の方へ移動してその
コレットアームをＴ字状凹所に係合させる中央ピンもまた含まれている。緒図１
９（Ｂこの発明の代わりの観点に係る）明らかなことに、上記の運動は、エルボ
ーヒンジ５の調節については前もって動作を行うことでその上腕をいっぱいに伸
ばした状態に維持している間に、プログラムすることができる。

【００４３】 接触面の別の実施例が図２０（Ａ）および図２０（Ｂ）に示されている。この
接触面には、移植片の上面における長穴と同様に、移植片における側方長穴が含
まれている。上部長穴には、雄ねじ付きロッドが納められる雌ねじ付き凹所のよ
うな、任意の型の接触面が備わっているとともに、差し込み具には、移植片の側
方長穴の中ヘロックするための構成要素が含まれている。差し込み具におけるこ
れらの付加的構成要素は、収縮コレットあるいはフックロックであってもよい。

【００４４】 接触面のさらに別の実施例が図２１（Ａ）〜図２１（Ｅ）に示されている。こ
の実施例では、差し込み具に、移植片の内部におけるロックの中へ挿入されるキ
ーが含まれている。図２１（Ｂ）〜図２１（Ｄ）に順を追って示されたように、
キーは、ロックの中へ挿入され、次いで４分の１回転されることで、差し込み具
が移植片にロックされる。

【００４５】 この発明は、大腿骨用移植片とともに使うための差し込み具に限定されるもの
ではなく、他の型の人工器官用移植片に使うための差し込み具、他の骨の中へ挿
入された人工器官用移植片にも、また、人工器官用移植片以外の装置、部材ある
いは構造体にさえも、関係するものである。例えば、差し込み具とともに所望位
置へ押し込まれる他の器具および装置には、ブローチ、リーマ、心出し工具、深
さガイドおよびゲージが含まれている。さらにまた、これらの差し込み具を適切
な用途に使うと、骨の髄腔に打撃が加わるようになるが、これらの差し込み具は
、骨に打撃のまったく加わらない用途に使うことができる。差し込み具を通して
力を伝える必要があるとともに、移植片を患者の体内の所望位置へ至らせるため
以外のさまざまな理由のために、その力を別の対象物へ加える必要がある。

【００４６】 この発明における代わりの実施態様では、寛骨臼莢を挿入するために差し込み
具が使われる。図２２（Ａ）には、差し込み具と寛骨臼莢５０との間における面
取り摩擦ロック型接触面が示されている。寛骨臼莢５０には雌ねじ付き開口５２
が含まれており、この開口５２にロッド５６の雄ねじ付き端部５４が挿入されて
いる。寛骨臼莢５０には面取り面５８が含まれている。この面取り面５８とフレ
ーム６２の端部６０とは、これらが接合関係に接続されるように、補完し合う形
状に形成されている。図２２（Ｂ）は寛骨臼莢５０の平面図である。先に記載さ
れたいくつかの実施態様について論じたように、この差し込み具にも、端部６０
を莢５０に当接させるようにするための偏倚用部材が含まれている。現されてい
ないが、図２２（Ａ）に示された差し込み具によれば、端部６０を莢５０の方へ
指し向ける圧縮力を発生させることができる。

【００４７】 図２３（Ａ）には、寛骨臼カップ７０との間の面取り肩ロック型接触面が示さ
れている。先に記載された摩擦ロック型接触面と同様に、寛骨臼莢７０には、雌
ねじ付き開口７２が含まれており、この開口７２には、ロッド７６の雄ねじ付き
端部７４が挿入されている。寛骨臼莢７０には肩７８が含まれており、この肩７
８にフレーム８２の脚部８０が納められている。図２３（Ｂ）は、図２３（Ａ）
の寛骨臼莢における１つの実施態様の平面図であって、肩７８、開口７２および
面取り面８４を示すものである。図２３（Ｃ）は、肩７８および開口７２が備わ
っているが面取り面が備わっていない、代わりの寛骨臼莢の平面図である。現さ
れていないが、図２３（Ａ）に示された差し込み具によれば、端部８０を莢７０
の方へ指し向ける圧縮力を発生させることができる。

【００４８】 この発明は、ロッド２４へ張力を、かつ／または、差し込み具と移植片あるい
は器具との間へ圧縮力を加えるための少なくとも１つの偏倚用部材が備わってい
る差し込み具に関して説明されてきた。開示されたいくつかの実施態様では、偏
倚用部材は皿ばね座金あるいは圧縮ばねからなるが、この偏倚用部材はこれらの
実施例に限定されるものではない。先に論じたように、他の部材についてのいく
つかの実施例には、引張ばね、板ばね、波形ばね、ねじりコイルばね、ゴム部材
および弾性プラスチック部材が含まれる。

【００４９】 この発明はまた、前記の偏倚用部材、蝶ねじ、およびスライダーの構成に限定
されるものでもない。例えば、図２４に示されたように、差し込み具と移植片あ
るいは器具との間の圧縮力は、ラッチ装置を通して供給することができる。レバ
ーを閉じることで、そのレバーによってスライダー１８が引っ張られて偏倚用部
材が圧縮され、その結果、ロッドには張力が加えられ、差し込み具と移植片ある
いは器具との間には圧縮力が加えられるようになる。別の実施例としては、図２
５に示されたように、レバーおよびスライダーによれば、レバーを閉じることで
偏倚用部材を圧縮させるようにするラック・ピニオン装置が形成される。また、
図２６に示されたように、レバーおよびスライダーによれば、スライダーにおけ
る溝の内部で摺動するピンが備わっているスコッチ・ヨーク装置が形成される。
レバーを閉じることでそのピンが溝に沿って移動し、スライダーが動いて偏倚用
部材が圧縮されるようになる。加えて、図２７に示されたように、レバーおよび
スライダーによれば、レバーを閉じることでスライダーが押されて偏倚用部材を
圧縮させるトグル締付装置が形成される。

【００５０】 差し込み具と移植片あるいは器具との間における圧縮力、あるいは張力をロッ
ドへ伝えるために、他の機構、装置、部材を使うことができる。

【００５１】 この発明は、偏倚用部材の圧縮を引き起こすためのレバーに限定されるもので
はない。先に列挙したいくつかの実施例では、スライダーによって偏倚用部材を
圧縮するようにさせるためのレバーの含まれたさまざまな装置が説明されている
。レバーに代えて、レバーを動かして偏倚用部材を圧縮させるために、他の部材
あるいは装置を使うことができる。例えば、図２８に示されたように、偏倚用部
材に対向するスライダーの一方の側に第２の蝶ねじを設けることができる。蝶ね
じ１４のような主たる蝶ねじの締め付けによって張力がロッドへ加えられた後に
、第２の蝶ねじは、スライダーが蝶ねじ１４へいっそう近づくように、回される
。

【００５２】 さらにまた、差し込み具には、レバー１６を所望位置にロックするための付加
的な装置あるいは構造体が含まれていてもよい。例えば、レバー１６が、閉じら
れて、差し込み具のフレーム１２の近傍に配置されると、この差し込み具１０に
は、レバー１６が不注意で開くのを防止するための構造体あるいは装置が含まれ
ていてもよい。そのうえ、偏倚用部材と組み合わされるカム付きレバーが、差し
込み具と移植片との間に圧縮力を発生するのに使われた好ましい構造体であるが
、この発明には、圧縮力を発生するのに使うことができるように存在している他
の構造体あるいは装置が含まれる。

【００５３】 この発明のさらに別の実施態様が図２９に示されている。この実施例では、ば
ね座金であるのが好ましい偏倚用部材３０が、差し込み具の蝶ねじ１４とフレー
ム１２との間に挿入されている。蝶ねじ１４は、それが移植片あるいは器具の内
部で完全にねじ込まれるまで、回された後に、ばね座金３０を圧縮するために付
加的な量だけ回される。１以上のばね座金３０によって張力がロッド２４へもた
らされ、その結果、差し込み具のフレーム１２を移植片あるいは器具の上へ圧縮
する力が発生する。

【００５４】 この発明は、差し込み具と移植片あるいは器具との間に圧縮力をもたらすため
に、１以上の偏倚用部材に関して説明されてきた。好ましいこの実施態様では、
たとえロッドが移植片あるいは器具の内部から後退しても、この偏倚用部材によ
って適切な圧縮力が保証される。ここにおける１以上の偏倚用部材によれば他の
いくつかの事象に応じて適切な圧縮力が保証される、ということを理解すべきで
ある。例えば、公差あるいは物理的変形による駆動用歯車からのバックラッシお
よび機械システムのゆるみは、ここにおける１以上の偏倚用部材によって補正す
ることもできる。

【００５５】 この発明に係る差し込み具には、現存する差し込み具あるいは移植片よりも優
れた利点が備わっている。その１つについては、差し込み具と移植片との間に一
定の圧縮力が加えられ、この圧縮力によって、ロッドが移植片の内部から後退す
ることが少なくなる。この圧縮力によれば、たとえロッドがねじ外れるようにな
っても、差し込み具が移植片の上に適切に納まることもまた、保証される。この
発明に係る差し込み具には、移植片への傷付きがほとんどないのと同様に、使用
の際にロッドへの傷付きがほとんど現れることがない。差し込み具と移植片との
間に圧縮が加えられることによって、打撃力は、差し込み具の荷重伝達面へ導か
れるが、ロッドのような他の部材へは導かれることがない。その結果、この打撃
力によって、ねじ山が傷付くことがなく、あるいは、ロッドの破損も起きること
がない。

【００５６】 このような圧縮によれば、差し込み具が移植片の上へ適切に納まることを保証
することで、差し込み具および移植片への傷付きが防止される。例えば、差し込
み具と移植片との間の圧縮によれば、これら２つの部材の間における誤差は、ど
んなものでも防止される。従って、ずれによる傷付きのおそれ、あるいは差し込
み具と移植片との間の開きによる傷付きのおそれは、極力、小さくなる。また、
打撃力がロッドへ導かれることがないので、ロッドが破損することにより移植片
が外れるというおそれは実質的に減る。

【００５７】 さらにまた、この発明に係る差し込み具によれば、手術の際の煩雑さおよび荷
重への危険性が減る。先に論じたように、これらの差し込み具によれば、ロッド
、差し込み具の他の部分、および移植片への傷付きがほとんどなくなるようにな
る。それゆえ、これらの差し込み具によれば、傷付いた移植片を取り外して新し
い移植片に置き換えなければならないというおそれが減る。これらの差し込み具
によれば、外科医によりロッドの張力を繰り返し監視する必要性が省かれる。外
科医は、代わりに、移植片あるいは器具を所望位置へ挿入するような外科的処置
に集中することができる。従って、これらの差し込み具によれば、使用の際の監
督がほとんど要らなくなり、また、外科医は移植片を所望箇所へ効率的にかつ容
易に至らせることができる。

【００５８】 この発明の好ましい実施態様の前記説明は、例示および説明のためだけの目的
で示されてきており、開示されたとおりの形態ですべてを尽くすことを意図する
ものではなく、あるいは、この発明を開示されたとおりの形態に限定することを
意図するものでもない。前記教示に照らせば、多くの修正および変形が可能であ
る。これらの実施態様は、他の当業者が、この発明およびさまざまな実施態様を
さまざまな修正とともに、意図した特定の用途に合わせるように利用することが
できるよう、この発明の諸原理およびそれらの実際的な応用を説明するために、
選ばれかつ説明されてきたのである。

【図面の簡単な説明】

【図１】 図１は、この発明の好ましい１つの実施態様に係る差し込み具の斜視図である
。

【図２】 図２（Ａ）は、長穴状凹所の備わっている移植片との接触面での差し込み具の
部分図である。 図２（Ｂ）は、円形凹所の備わっている、この発明の第２実施態様に係る移植
片の接触面の斜視図である。 図２（Ｃ）は、楕円形凹所の備わっている、この発明の第３実施態様に係る移
植片の接触面の斜視図である。

【図３】 図３は、図１の差し込み具と大腿骨用移植片へのその関係状態との平面図であ
る。

【図４】 図４は、この発明の第２実施態様に係る差し込み具と大腿骨用移植片へのその
関係状態との側面図である。

【図５】 図５は、この発明の好ましい実施態様に係るステム状差し込み具のフレームの
側面図である。

【図６】 図６は、この発明の好ましい１つの実施態様に係る差し込み具の蝶ねじの斜視
図である。

【図７】 図７は、この発明の好ましい１つの実施態様に係るステム状差し込み具のレバ
ーの斜視図である。

【図８】 図８は、この発明の好ましい１つの実施態様に係るステム状差し込み具のスラ
イダーの斜視図である。

【図９】 図９は、この発明の好ましい１つの実施態様に係るステム状差し込み具のロー
ラーの平面図である。

【図１０】 図１０は、この発明の好ましい１つの実施態様に係るステム状差し込み具のロ
ーラーピンの平面図である。

【図１１】 図１１は、この発明の好ましい１つの実施態様に係るステム状差し込み具のロ
ッドの側面図である。

【図１２】 図１２は、この発明の好ましい１つの実施態様に係るステム状差し込み具の雌
ピンの側面図である。

【図１３】 図１３は、この発明の好ましい１つの実施態様に係るステム状差し込み具の雄
ピンの側面図である。

【図１４】 図１４（Ａ）は、この発明の代わりの観点に係る拘束ボールロック型接触面の
斜視図である。 図１４（Ｂ）は、図１４（Ａ）の接触面の部分断面図である。 図１４（Ｃ）は、図１４（Ａ）の接触面の部分断面図である。

【図１５】 図１５は、この発明の代わりの観点に係るＴ字状長穴の備わっている接触面の
斜視図である。

【図１６】 図１６（Ａ）は、この発明の代わりの観点に係る収縮コレットロック型接触面
の斜視図である。 図１６（Ｂ）〜図１６（Ｅ）は、図１６（Ａ）の接触面の部分側面断面図であ
り、その収縮コレットロック型接触面の移植片への取り付けを示している。

【図１７】 図１７は、この発明の代わりの観点に係るテーパー状長穴の備わっている接触
面の斜視図である。

【図１８】 図１８（Ａ）は、栓および長穴が含まれている、この発明の代わりの観点に係
る接触面の斜視図である。 図１８（Ｂ）は、図１８（Ａ）の柱状ピンの斜視図である。

【図１９】 図１９（Ａ）は、この発明の代わりの観点に係る拡張コレットロック型接触面
の斜視図である。 図１９（Ｂ）〜図１９（Ｄ）は、図１９（Ａ）の接触面の部分断面図であり、
その拡張コレットロック型接触面の移植片への取り付けを示している。

【図２０】 図２０（Ａ）は、コレットあるいはフックのロックを収容するための側方長穴
が備わっている、この発明の代わりの観点に係る接触面の斜視図である。 図２０（Ｂ）は、図２０（Ａ）の接触面の部分断面図である。

【図２１】 図２１（Ａ）は、この発明の代わりの観点に係るキーロック型接触面の斜視図
である。 図２１（Ｂ）〜図２１（Ｄ）は、図２１（Ａ）の接触面の部分断面図であり、
そのキーロック型接触面の移植片への取り付けを示している。 図２１（Ｅ）は、図２１（Ａ）のキーの斜視図である。

【図２２】 図２２（Ａ）は、この発明の代わりの実施態様に係る、寛骨臼莢の備わってい
る面取り摩擦ロック型接触面の側面断面図である。 図２２（Ｂ）は、図２２（Ａ）の寛骨臼莢の平面図である。

【図２３】 図２３（Ａ）は、この発明の代わりの実施態様に係る、寛骨臼莢の備わってい
る面取り肩ロック型接触面の側面断面図である。 図２３（Ｂ）は、図２３（Ａ）の寛骨臼莢の平面図である。 図２３（Ｃ）は、面取りのない肩ロック型接触面の備わっている寛骨臼莢の平
面図である。

【図２４】 図２４は、この発明の代わりの実施態様に係るロック用ラッチ装置の線図式側
面図である。

【図２５】 図２５は、この発明の代わりの実施態様に係るラック・ピニオン装置の線図式
側面図である。

【図２６】 図２６は、この発明の代わりの実施態様に係るスコッチ・ヨーク装置の線図式
側面図である。

【図２７】 図２７は、この発明の代わりの実施態様に係るトグル締付装置の線図式側面図
である。

【図２８】 図２８は、この発明の代わりの実施態様に係る第２蝶ねじの線図式側面図であ
る。

【図２９】 図２９は、差し込み具の蝶ねじとフレームとの間に偏倚用部材が備わっている
差し込み具のさらに別の実施態様の線図式側面図である。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 4C060 LL13 LL16 4C097 AA01 BB01 CC12 DD09 【要約の続き】 起こす合成力が作り出される。この合成力は、差し込み 具（１０）を移植片（４０）の上へしっかりと納めるよ うにするためのものであり、また、差し込み具（１０） へ加えられたどのような打撃もロッド（２４）へは方向 を変えて伝わり、ロッド（２４）が緩んだり外れたりす るおそれが減る。従って、手術の際に、外科医あるいは 助手は、雄ねじ付きロッド（２４）を移植片（４０）の 内部に配置して、それを蝶ねじ（１４）でしっかり締め ることができる。ロッド（２４）が手で締められた後 に、レバー（１６）は、差し込み具（１０）を移植片 （４０）の上へ圧縮する合成力が生じるように、引き上 げられる。

Claims (20)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 力を受け止める受け止め面と対象物に当接するための荷重伝
   達面とが備わっており、受け止め面からの力を荷重伝達面へ次いで対象物へ伝達
   するためのフレーム部材、 このフレーム部材を対象物に固定するとともにフレーム部材の荷重伝達面を対
   象物に対して定置するための係合部材、および 荷重伝達面と対象物との間に圧縮力を作り出すのに使うための偏倚用部材 を備えてなり、 偏倚用部材で作り出された圧縮力が、フレーム部材の受け止め面へ加えられて
   いる間、荷重伝達面と対象物との間の当接を維持する、対象物の所望位置への移
   動装置。
2. 【請求項２】 偏倚用部材には、圧縮力が作り出されない第１位置と圧縮力
   が作り出される第２位置とがあり、この装置が、偏倚用部材を第２位置にロック
   するためのロック部材をさらに備えている請求項１に記載の装置。
3. 【請求項３】 対象物をさらに備えている請求項１に記載の装置。
4. 【請求項４】 対象物が、人工器官用移植片からなる請求項３に記載の装置
   。
5. 【請求項５】 移植片が、大腿骨移植片からなる請求項４に記載の装置。
6. 【請求項６】 移植片が、寛骨臼カップからなる請求項４に記載の装置。
7. 【請求項７】 対象物が、ブローチからなる請求項３に記載の装置。
8. 【請求項８】 対象物が、リーマからなる請求項３に記載の装置。
9. 【請求項９】 対象物が、心出し工具からなる請求項３に記載の装置。
10. 【請求項１０】 対象物が、深さガイドからなる請求項３に記載の装置。
11. 【請求項１１】 対象物が、ゲージからなる請求項３に記載の装置。
12. 【請求項１２】 荷重伝達面が、対象物に当接する脚部からなる請求項１に
    記載の装置。
13. 【請求項１３】 偏倚用部材が、圧縮ばねからなる請求項１に記載の装置。
14. 【請求項１４】 係合部材が、雄ねじ付きロッドからなる請求項１に記載の
    装置。
15. 【請求項１５】 フレーム部材と係合部材とが、対象物へ当接する接触面を
    形成する請求項１に記載の装置。
16. 【請求項１６】 ロック部材が、レバーからなる請求項２に記載の装置。
17. 【請求項１７】 ロック部材が、蝶ねじからなる請求項２に記載の装置。
18. 【請求項１８】 挿入装置をそれが挿入される対象物へ取り付けること、 挿入装置の荷重伝達面を対象物に定置すること、 挿入装置の荷重伝達面を対象物に押し付けること、および 対象物を所望位置へ指し向けるために、挿入装置を通して力を対象物へ伝達する
    ことを備えてなる、対象物の所望位置への移動方法。
19. 【請求項１９】 取り付けが、係合部材を対象物の中へねじ込みである請求
    項１８に記載の方法。
20. 【請求項２０】 挿入装置を第１位置および第２位置の備わっている偏倚用
    部材で定位置に保持することをさらに備えている請求項１８に記載の方法。