JP2002537802A - 細胞表面マーカー発現に基づく無培養組織からの神経幹細胞の単離および富化 - Google Patents

細胞表面マーカー発現に基づく無培養組織からの神経幹細胞の単離および富化

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JP2002537802A JP2000602755A JP2000602755A JP2002537802A JP 2002537802 A JP2002537802 A JP 2002537802A JP 2000602755 A JP2000602755 A JP 2000602755A JP 2000602755 A JP2000602755 A JP 2000602755A JP 2002537802 A JP2002537802 A JP 2002537802A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、哺乳動物末梢神経系からの神経幹細胞の見込みのある同定、単離、および自己複製の方法、ならびに無培養組織に由来する神経幹細胞の組成物を提供する。フローサイトメトリーを使用して、胚の末梢神経の神経堤由来細胞を、細胞表面マーカーに基づいて分画した。胚の坐骨神経から単離されたp75+0細胞は、神経管外植片培養物から以前に単離された神経堤幹細胞(NCSC)と表現型的および機能的に区別不可能であった。さらに、新たに単離されたp75 +0細胞は、インビボで移植された場合に、ニューロンおよびグリアの両方を生じた。細胞周期分析およびBrdU標識により、p75+0NCSCは、神経堤移動の終了後、自己複製分裂を経験することによって、末梢神経に残存することが示された。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の技術分野) 本発明は、一般に、神経幹細胞の培養方法、そして特に神経幹細胞の単離また
は富化に関する。
【0002】 (発明の背景) 幹細胞は、所定の時期の所定の組織において最も広範な発生能を有する、自己
複製(self−renewing)する多能性前駆細胞(progenito
r)である(Morrisonら、88 Cell 287−298(1997
)を参照)。神経発生を理解することの重要性だけでなく、神経変性疾患の処置
におけるその治療潜在能力の重要性からも、神経系における幹細胞の研究が近年
大きな関心を呼んでいる。
【0003】 神経幹細胞の研究における制限は、インビボで神経幹細胞を見込みをもって同
定できないことであった(Gage、8 Current Opinion i
n Neurobiology 671−676(1998)を参照)。これま
では、インビボで、限られた神経前駆細胞から神経幹細胞を単離するかまたは神
経幹細胞を区別するために利用可能なマーカーはなかった。これまでは、神経幹
細胞は、培養でのある期間の増殖後にのみ単離されてきたが、この増殖はその細
胞の性質を変化させ得る。したがって、インビトロで多能性および自己複製を示
す細胞の集団が、インビボで同様な性質を有する対応する細胞に由来するかどう
か未だ明らかでない。さらに、これらの細胞が、インビトロでの培養の間に、イ
ンビボに移植された場合に植え付き、そして分化するその細胞の能力を減少させ
るように性質を変化させるかどうか明かでない。
【0004】 神経堤は、哺乳動物の神経幹細胞の生物学を研究するためのモデル系である(
Andersonら、米国特許第5,589,376号、第5,824,489
号、第5,654,183号、第5,693,482号、第5,672,499
号、および第5,849,553号(すべて参考として援用する)を参照)。神
経堤幹細胞は、妊娠中期ラットの神経管外植片を培養中で24時間インキュベー
トすることによって単離され得る。神経堤細胞は、培養神経管から外へ移動し、
培養皿中に単層を形成する。これらの培養物において、低アフィニティーニュー
ロトロフィンレセプターp75を発現する細胞は、神経堤幹細胞(NCSC)の
ほぼ純粋な集団である。したがって、NCSCは、インビトロにおいて、自己複
製し得、そしてニューロン、グリア、および平滑筋を生じ得る細胞と規定される
。NCSCは、指令系統決定因子(instructive lineage
determination factor)である骨形成因子(BMP2)、
グリア増殖因子(GGF)、およびトランスフォーミング増殖因子β(TGF−
β)に対して、それぞれニューロン、グリア、および平滑筋に分化することによ
って応答する(それぞれ、Shahら、77 Cell 349−360(19
94);Shahら、85 Cell 331−343(1996);Shah
およびAnderson、94 Proc.Natl.Acad.Sci.US
A 11369−11374(1997)を参照)。
【0005】 インビボにおいて、神経堤細胞は、背側神経管から離層し、そして広範囲に移
動した後、凝集して末梢神経系(PNS)の神経節および神経内分泌組織を形成
する。末梢神経は神経堤に由来するグリア(シュワン)細胞を含む。ラットにお
いて、E14.5(体幹神経管からの神経堤移動が終了した2〜4日後)までは
、坐骨神経はシュワン細胞前駆体を含む。次の2〜3日の発生期にわたって、こ
れらのシュワン細胞前駆体は明白にシュワン細胞に分化する。現在まで、これら
のシュワン細胞前駆体が、既にグリアとなる運命に方向付られているのか、また
は他の発生能もなお保持しているのかは知られていない。これら前駆細胞が真に
方向付けられた系統であるかどうかの知識は、増殖因子および転写因子が末梢神
経発生をどのように調節するかを理解するうえで重要である。
【0006】 (発明の要旨) 本発明は、幹細胞を他の細胞から分離するために細胞表面マーカーおよびフロ
ーサイトメトリーを使用する、無培養組織(uncultured tissu
e)からの幹細胞の見込みのある同定、単離、富化、および自己複製の方法を提
供する。本発明はまた、無培養神経組織に由来する神経幹細胞の組成物を提供す
る。
【0007】 1つの実施形態において、本発明は、インビボにおいて、移動後の神経堤細胞
の集団の中から、自己複製する多能性神経堤幹細胞(NCSC)を見込みをもっ
て同定、単離、または富化する方法を提供する。以前には、このような見込みの
ある単離方法はなかったので、末梢神経系(PNS)におけるNCSCについて
だけではなく、中枢神経系(CNS)における神経幹細胞についてもまた、イン
ビボにおける神経幹細胞自己複製の証明が妨げられていた。
【0008】 本発明の神経幹細胞は、神経細胞の分化および成熟に関連する因子の単離およ
び評価におけるスクリーニングアッセイに有用である。神経幹細胞、細胞の分化
および成熟に関連する因子の単離および評価はまた、被験体への移植に有用であ
る。1つの実施形態において、移植されたNCSCは、新たなニューロン、グリ
アまたは平滑筋へ分化し得る。したがって、NCSCは、損傷を修復するため、
神経変性疾患を寛解するため、または遺伝子治療用に遺伝的に改変した細胞を植
え付けるために有用である。NCSCの残存(本明細書において証明される)は
治療上重要である可能性があり、そしてヒトにおけるいくつかのPNS腫瘍の起
源を説明し得る。
【0009】 (発明の詳細な説明) (序論)本発明は、従来の幹細胞技術を拡張し、そして神経系幹細胞の生物学
の分野全体にとって重要な新たな基本的進歩を提供する。
【0010】 細胞表面マーカーに対する抗体を使用して、当業者は、フローサイトメトリー
により、胚の末梢神経の神経堤由来細胞を分画し得る。これら分画された神経堤
由来細胞は、神経堤幹細胞(NCSC)と表現型的および機能的に区別不可能で
ある。本方法は、インビトロで大規模な培養を行わず、無培養組織から直接のN
CSCの単離または富化を提供する。以前は、NCSCは、妊娠中期神経管の外
植片培養物から外へ移動する神経堤細胞から単離された。
【0011】 1つの実施形態において、これらp75+0 -細胞は、NCSCに富む細胞の
集団を提供するために、胚の末梢神経(例えば、坐骨神経)の他の細胞から分画
される。単離後、これら多能性で自己複製する移動後の神経堤細胞はインビトロ
で培養されても良いし、あるいは培養することなくインビボに直接移植されても
良い。インビボで、これらの細胞は幹細胞の性質(自己複製および多系統分化を
含む)を示す。新たに単離されたp75+0 -細胞は、ニワトリ(chick)
胚への直接移植後、ニューロンおよびグリアの両方を生じた。このことは、これ
らの細胞のニューロン能が培養による人為的結果でないことを証明する。最後に
、インビボ細胞周期分析およびブロモデオキシウリジン(BrdU)標識により
、p75+0 -NCSCは、神経堤移動の終了後、自己複製分裂を経験すること
によって、末梢神経に残存することが示される。したがって、幹細胞は、表面マ
ーカー発現により、PNS中の他の細胞型と区別可能である。まとめると、これ
らのデータは、多能性神経堤細胞がインビボで自己複製し、そして妊娠後期(ラ
ットにおいて神経堤移動開始の少なくとも1週間後)(および他の動物およびヒ
トにおける等価な妊娠時期)にも残存することを示す。
【0012】 本発明は、任意の神経系幹細胞を、細胞表面マーカー発現に基づいて無培養組
織から単離し得る方法を初めて提供する。したがって、本発明は、細胞表面マー
カーに対するモノクローナル抗体を使用して、幹細胞について富化し、無培養細
胞から幹細胞を単離し、そして幹細胞を同定するという、重要な方法論的革新で
あって他の神経幹細胞の集団にも拡張可能な方法を提供する。したがって、造血
幹細胞に使用される適用の多く(移植および遺伝子治療を含む)は、神経幹細胞
に適用可能である。より具体的には、本発明は、NCSCが単離され得る供給源
を大きく拡げることによって、NCSCの単離を容易にする。ここでは、妊娠中
期の神経管から細胞を単離する必要はない。なぜなら、NCSCは妊娠後期の坐
骨神経から入手し得るからである。本発明は、造血幹細胞と同じ容易さで神経幹
細胞の操作を初めて可能にする。
【0013】 当業者は、無培養組織(例えば、分離された神経)から幹細胞を単離または富
化し得る。神経組織は酵素により分離され得る。例えば、E14の坐骨神経は酵
素の組合せ(例えば、ヒアルロニダーゼおよびコラゲナーゼ)を使用して分離さ
れ得る(実施例1を参照)。酵素の他の組合せもまた使用され得る(例えば、ト
リプシン)。E14坐骨神経はまた、酵素によらず、粉砕または他の機械的分離
技術により分離され得る。胚発生の後期段階(例えば、E17以上の坐骨神経)
では、酵素分離がおそらく必要である。単離に使用する表面マーカーの選択およ
びフローサイトメトリーによる幹細胞富化の可能性は、組織分離法に依存する。
なぜなら、プロテアーゼを含む方法はいくつかのタンパク質およびタンパク質関
連細胞表面抗原の喪失を引き起こし得るからである。
【0014】 (幹細胞)用語「幹細胞」は、(1)細胞が1種類以上の分化誘導体を発生さ
せ得る未分化細胞であること;(2)細胞が非常な増殖能を有すること;および
(3)細胞が自己複製可能であるか自己維持可能であること(Pottenら、
110 Development 1001(1990)を参照)を意味する。
用語「神経堤幹細胞」(NCSC)は、(1)自己複製および(2)非対称分裂
(すなわち、1つの細胞が分裂して、2つの異なる娘細胞を生じる。一方は自己
であり(複製)、他方は、親の神経堤幹細胞と比較して、より制限された発生能
を有する細胞である)の性質を有することにより特徴付けられる、神経堤由来の
細胞をいう(Andersonら、米国特許第5,589,376号、第5,8
24,489号、第5,654,183号、第5,693,482号、第5,6
72,499号、および第5,849,553号(すべて参考として援用する)
を参照)。しかし、このことは、神経堤幹細胞のすべての細胞分裂が非対称分裂
を生じるという意味ではない(下記の実施例2を参照)。神経堤幹細胞の分裂は
また、自己複製のみを生じ得るか、発生学的により制限された子孫のみの産生を
生じ得るか、または自己複製した幹細胞および制限された発生能を有する細胞の
産生を生じ得る。
【0015】 用語「多能性神経幹細胞」は、神経堤幹細胞の性質と同様な性質を有するが、
必ずしも神経堤に由来しない細胞をいう。より適切には、そのような多能性神経
幹細胞は、種々の他の組織(成体もしくは胚の中枢神経系(CNS)の脳または
脊髄からの神経上皮組織あるいはPNSを包含する組織に存在し得る神経上皮組
織を含む)に由来し得る。さらに、多能性神経幹細胞は、本明細書に開示された
方法を利用して、肺、骨などのような他の組織から誘導され得る。このような細
胞は、再生し得、そして神経幹細胞がNCSCである場合、異なる型のニューロ
ンまたはグリア(例えば、PNSおよびCNSニューロンおよびグリア)かまた
は平滑筋細胞へ、あるいはニューロンまたはグリアの前駆細胞へ分化し得る。し
たがって、上記の神経堤幹細胞(NCSC)は、インビトロでの自己再生ならび
にニューロン、グリアおよび平滑筋への分化が記載の条件下にて可能である点で
、少なくとも多能性である。したがって、NCSCは、特定の組織(すなわち、
胚の神経管)に由来する多能性神経幹細胞である。
【0016】 神経幹細胞(NCSCを含む)は、操作上、細胞表面マーカーによって特徴付
けられ得る。これらの細胞表面マーカーは、この細胞表面マーカーに特異的に結
合する試薬により結合され得る。例えば、神経幹細胞の表面のタンパク質または
炭水化物は、その特定のタンパク質または炭水化物に特異的な抗体によって免疫
学的に認識され得る。神経幹細胞の細胞表面に存在するマーカーのセットは、神
経幹細胞に特徴的である。したがって、神経幹細胞は、細胞表面マーカーのポジ
ティブ選択およびネガティブ選択により選択され得る。神経幹細胞の「ポジティ
ブマーカー」(すなわち、神経幹細胞の細胞表面に存在するマーカー)に結合す
る試薬は、神経幹細胞のポジティブ選択に使用され得る。神経幹細胞の「ネガテ
ィブマーカー」(すなわち、神経幹細胞の細胞表面に存在しないマーカー)に結
合する試薬は、集団中の神経幹細胞でない細胞のネガティブ選択のため(すなわ
ち、神経幹細胞でない細胞の排除のため)に使用され得る。「試薬の組合せ」は
、神経幹細胞の表面に存在する細胞表面マーカー(ポジティブマーカー)または
存在しない細胞表面マーカー(ネガティブマーカー)のいずれかに結合するか、
あるいはポジティブマーカーおよびネガティブマーカーの組合せ(例えば、p7
5およびP0)に結合する、少なくとも2つの試薬である。
【0017】 神経幹細胞のポジティブマーカーもまた、神経幹細胞において見出されること
に加えて、神経幹細胞由来の他の細胞(例えば、PNSおよびCNSのグリア前
駆細胞およびニューロン前駆細胞)において見出され得る。1つの例は、p75
(ラット、ヒトおよびサルの神経堤幹細胞において見出される低アフィニティー
神経増殖因子レセプター(LNGFR))の細胞表面発現である。p75は、神
経堤細胞およびシュワン細胞(PNSのグリア細胞)を含むいくつかの哺乳動物
細胞型上および鳥類細胞型上、ならびに胚性CNS中の細胞の表面において見出
される(例えば、Yanら、8J.Neurosci.3481〜3496(1
988)(ラット);Heuerら、5 Neuron 283〜296(19
80)(ニワトリ)を参照のこと)。p75に特異的な抗体が、ラット由来のp
75(217c;Pengら、215 Science 1102〜1104(
1982)を参照のこと;192−Ig;Brockesら、266 Natu
re 364〜366(1977)を参照のこと)、およびヒト由来のp75(
Rossら、81 Proc.Natl.Acad.Sci.USA、 668
1〜6685(1984))について同定されている。ヒトp75に対するモノ
クローナル抗体は、サル由来のp75と交差反応する。当業者に公知の技術を使
用して、任意の記載された種由来のp75に特異的なモノクローナル抗体を生成
し得る(Harlowら、Antibodies: A Laboratory
Manual(Cold Spring Harbor Laborator
y Press、1988)を参照のこと)。種特異的であるポリクローナル抗
体またはモノクローナル抗体を生成することは、常に必要なわけではない。1つ
の種由来の抗原決定基に対するモノクローナル抗体は、1つより多くの種由来の
その抗原に対して反応し得る。例えば、上述のように、ヒトp75に対する抗体
は、サル細胞上のp75もまた、認識する。
【0018】 ネガティブ選択のために、成熟PNSニューロン細胞または成熟PNSグリア
細胞に関連する細胞表面マーカーの不存在によって、NCSCを単離または富化
し得る。これらのマーカーとしては、PNSグリア細胞中のミエリンタンパク質
0が挙げられる。P0は、方向付けられたシュワン細胞(committed
Schwann cell)によって発現される末梢ミエリンタンパク質である
。P0はまた、鳥類および哺乳動物の両方における移動している神経堤細胞のサ
ブセット(subset)において、比較的低レベルで発現する。初期の坐骨神
経に移動する間または移動したすぐ後のP0発現は、神経堤細胞のグリアの運命
への初期の拘束の反映として解釈されている(Leeら、8 Molecula
r and Cellular Neuroscience 336〜350(
1997)を参照のこと)。しかし、いくつかのNCSC(ならびにMのみの(
M−only)前駆体)は、p75+0 +画分に存在し(表3を参照のこと)、
そしてp75-/low0 +細胞の99%は、Mのみのコロニーを生じる(表3を参
照のこと)。これらの結果は、P0の発現がグリアの運命に対する拘束を必ずし
も示すわけではないことを示す。さらに、NCSCを含む神経幹細胞は、P0
ンパク質マーカーを発現するとして検出可能に同定されることなく、かつフロー
サイトメトリーによってP0 +として選択されることなく、検出可能なレベルのP 0 のmRNAを発現し得、そして可能性として低レベルのP0タンパク質を発現し
得る。
【0019】 1つの実施形態において、「試薬の組合せ」は、p75に対する抗体とP0
対する抗体である。
【0020】 神経幹細胞表面マーカーに対して特異的な抗体の使用は、胚性神経管以外の組
織に由来する多能性神経幹細胞の単離または富化のために有用である、本発明の
方法をもたらす。例えば、p75は、ラットおよびニワトリの胚性CNSの細胞
中で発現する。他の哺乳動物種および鳥類種は、類似のp75発現パターンを有
する;ヒトp75に対するモノクローナル抗体を用いるLoyら(27 J.N
eurosci.Res.651〜654(1990))によるヒトにおける研
究は、この予測と一致する。従って、本発明の方法は、ヒト神経幹細胞の富化ま
たは単離のために有用である。また、NCSCが胎児発生の間において予測され
るよりも後にまで残存するという知見は、NCSCが、出生後に末梢神経中に残
存することを示す。小数のニューロンが、出生後の坐骨神経の体外移植組織から
出現することが、報告されている(Barakat−Walter、161 D
evelopmental Biology 263〜273(1994))。
さらに、神経幹細胞はまた、CNSにおいて見出されるので(Weissら、米
国特許第5,750,376号および同5,851,832号、Johe、米国
特許第5,753,506号を参照のこと。これらの全てを参考として援用する
)、神経細胞特異的表面マーカーに対する抗体は、CNS、PNSおよび他の組
織供給源由来の多能性神経幹細胞の単離において有用である。神経細胞特異的表
面マーカーに対する抗体を使用する方法は、神経組織供給源由来の多能性神経上
皮幹細胞の単離において有用である(Raoら、PCT/US98/09363
0;Raoら、95(7)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 3
996〜4001(1998)を参照のこと、この両方を参考として援用する)
【0021】 用語「ニューロン前駆細胞」とは、完全に分化したニューロン細胞と、その完
全に分化したニューロン細胞が発生する前駆体の多能性神経幹細胞との間の中間
体である細胞をいう。用語「PNSニューロン前駆細胞」とは、哺乳動物の神経
堤幹細胞から分化した細胞を意味する。この哺乳動物の神経堤幹細胞は、1つ以
上のPNSニューロン系列に拘束され、そして分裂している細胞であるが、より
分化した分裂していないPNSニューロン細胞において見出される表面マーカー
または細胞内マーカーをまだ発現していない。そのような前駆細胞は、好ましく
は、さらなる分化をした胚性神経堤より単離された神経堤幹細胞より得られる。
しかし、等価な細胞を、他の組織から誘導し得る。PNSニューロン前駆細胞が
、適切な培養条件下に配置される場合、その細胞は、適切な分化マーカー(例え
ば、ぺリフェリン(peripherin)、神経フィラメントおよび高ポリシ
アル酸神経細胞接着分子(高PSA−NCAM))を発現する成熟したPNSニ
ューロンに分化する。
【0022】 (培養) 本発明はまた多能性神経幹細胞培養の組成物を提供する。これらの細胞培養物
は、本発明の単離方法の開発なしには、提供され得なかった。本発明は、NCS
C組成物を提供する。この組成物は、神経堤細胞誘導物(例えば、PNSのニュ
ーロン前駆体およびPNSのグリア前駆体)の供給源として作用し得る。次に、
PNSのニューロン前駆体およびPNSのグリア前駆体は、PNSニューロンお
よびPNSグリアの供給源である。本発明はまた、幹細胞を無培養の組織から調
製するCNS神経幹細胞組成物を提供する(Weissら、米国特許第5,75
0,376号および同5,851,832号を比較のこと。この両方を参考とし
て援用する)。本発明はまた、神経末梢幹細胞が無培養の組織から調製される、
神経末梢幹細胞組成物を提供する(Raoら、PCT/US98/093630
;Raoら、95(7)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 39
96〜4001、1998を比較のこと、この両方を参考として援用する)。
【0023】 培養培地は、化学的に規定された培地であり得る。この培地は、ラット神経堤
幹細胞の増殖および自己複製を可能にするマイトジェンおよび生存因子(sur
vival factor)の供給源としてニワトリ胚抽出物(CEE)で補充
される(以下の実施例1を参照のこと)。当業者に公知の、多能性神経幹細胞増
殖を誘導するために有効な、1つ以上の予め決定された増殖因子を含む、血清を
含有しない他の培養培地を使用して、他の鳥類種および哺乳動物種(例えば、ヒ
ト(Weissら、米国特許第5,750,376号および同5,851,83
2号、Johe、米国特許第5,753,506号;Atlasら、Handb
ook of Microbiological Media(CRC Pre
ss、Boca、Raton、Louisiana、1993); Freshney、Culture on Animal Cells、A M
anual of Basic Technique、第3版(Wiley−L
iss、New York、1994)を参照のこと。これらの全てを参考とし
て援用する))から、神経堤幹細胞を単離して増殖させ得る。
【0024】 従って、神経幹細胞の増殖のための培養培地は、神経幹細胞および増殖した子
孫の増殖を支持する。「増殖した子孫」は、未分化の神経細胞であり、神経幹細
胞を含む。なぜなら、神経幹細胞は、培養中での自己複製能力を有するからであ
る(実施例2を参照のこと)。本発明のインビトロ細胞培養組成物は、高いパー
セント(好ましくは少なくとも50%、より好ましくは60%)の自己複製する
多能性神経幹細胞を含む(表3に記載される)。本発明のインビトロ細胞培養組
成物はまた、神経幹細胞に特徴的な細胞表面マーカーを有する高いパーセントの
細胞を含み得る。1つの実施形態において、細胞培養物は、少なくとも80%の
p75+細胞を含む。
【0025】 NCSC組成物について、培養培地は、指令因子(instructive
factor)(例えば、TGF−βスーパーファミリー由来の増殖因子)を含
み得る。用語「指令因子」とは、主に単一の系列(例えば、グリア細胞、ニュー
ロン細胞または平滑筋細胞)にまで神経幹細胞の分化を生じ得る1つ以上の因子
をいう。従って、平滑筋細胞の分化に指令因子は、神経幹細胞のグリア細胞また
はニューロン細胞のような他の系列への分化を犠牲にして、そのような神経幹細
胞の平滑筋細胞への分化を生じる因子である。哺乳動物の血清が、平滑筋細胞分
裂についての1つ以上の指令因子を含むことを同定する、すなわち、そのような
指令因子を、哺乳動物血清を分画して、そのような画分の1つ以上を神経幹細胞
培地に戻して添加して、平滑筋細胞分化についての指令因子を含む1つ以上の画
分を同定することによって同定し得る。次に、平滑筋細胞に対する指令的分化に
必要な1つ以上の成分を同定するまで、ポジティブ因子をさらに分画して、そし
て再アッセイし得る。
【0026】 用語「TGF−βスーパーファミリー由来の増殖因子」とは、トランスフォー
ミング増殖因子β1(「TGF−β1」)に関連する増殖因子を意味する。その
ようなTGF−βスーパーファミリー増殖因子は、TGF−β1(TGF−βス
ーパーファミリーのプロトタイプなメンバー)と類似の生物学的効果を発揮して
もしなくてもよい。例として、増殖因子のTGF−βスーパーファミリーのメン
バーは、天然に生じるアナログ(例えば、TGF−β2、TGF−β3、TGF
−β4)、ならびに、骨形成因子2および4(「BMP−2」および「BMP−
4」)によって例示される関連する増殖因子に加え、TGF−β1の任意の公知
の合成アナログまたは天然のアナログを含むが、これらに限定されない。これら
の化合物を、天然の供給源から精製し得るか、または組換えDNA技術によって
産生し得る。そしてこれらの化合物は、実質的に純粋であっても、そうでなくて
もよい。分化を生じる性質を保持する改変体およびフラグメントも、このスーパ
ーファミリーのメンバーの定義に含まれる。さらに、用語骨形態形成タンパク質
(「BMP」)とは、TGF−βスーパーファミリーのメンバーである増殖因子
の群をいう。本明細書において記載される増殖因子を、個別に、またはお互いに
組合せて、投与し得る。
【0027】 指令因子は、追加的に、または代替的にNRG−1であり得る。NRG−1は
、神経の運動軸索において発現し、そして適切なシュワン細胞発生にとって遺伝
的に必須である。NRG−1(グリア増殖因子としても公知)は、指令的な様式
において、NCSCによるグリア分化を促進し(Shahら、77 Cell、
349〜360(1994))、そして細胞死を生じずに、NCSCによる神経
原性能力の迅速な損失を生じ得る(ShahおよびAnderson、94 P
roc.Natl.Acad.Sci.USA 11369〜11374(19
97))。ニューレグリン(neuregulin)もまた、シュワン細胞およ
びその子孫の生存および増殖を促進する。
【0028】 以下の実施例3において実証されるように、NRG−1は、坐骨神経から単離
されたNCSCに対して指令的に作用する。NRG−1はまた、全ての神経前駆
体の生存(プレーティング効率について表3および5を参照のこと)、ならびに
坐骨神経内のシュワン(Sのみの(S−only))前駆体および筋線維芽細胞
(Mのみの(M−only))前駆体の増殖を促進する。これらの効果は、独立
しており、そしてお互いに明確に区別され得る;生存の促進は、指令効果を説明
し得ず、指令効果は、生存の促進を説明し得ない。従って、これらの異なるニュ
ーレグリン機能の間の矛盾はない。ともに考慮すると、これらのデータは、末梢
神経中のNRG−1が、シュワン細胞発生の複数の役割(NCSCの神経原性で
ない運命への制限を含む)を担うという考えと一致する。
【0029】 (神経幹細胞の富化およびプレーティング効率) p75+0 -細胞のプレーティング効率は、標準的条件(表1)およびBMP
2を補充した培養中の両方の下で、約25%である。この計算は、多能性神経前
駆体の以前のクローン分析と、有望に匹敵するが(Reynoldsら、12
J.Neurosci.4565〜4574(1992);Kilpatric
kおよびBartlett、10 Neuron 255〜265(1993)
;Grittiら、16 J.Neurosci.1091〜1100(199
6);Joheら、10 Genes & Dev.3129〜3140(19
96))、これらの培養条件下でコロニーを形成しない他の前駆体のタイプが、
p75+0 -集団中に潜伏し得るか否かという質問を生じる。坐骨神経内の全て
の他の前駆体のタイプが本発明者らの培養条件下でコロニーを形成すると仮定す
ると、この可能性は、ありそうにもない。実際、これらの他の前駆体集団は、p
75+0 -細胞よりも高いプレーティング効率(plating effici
ency)を有した(表3)。
【0030】 (末梢神経中の系列拘束は、以前に予測されたよりも複雑かつ動的である) 本明細書に記載する結果は、PNSの発生が、驚くべきことに、以前に考えれ
られていたよりも動的かつ可塑性であることを示す。
【0031】 PNSは、妊娠初期から中期の間に比較的迅速に形成され、神経堤前駆体の移
動後の迅速な分化をともなうと考えられた。多能性前駆体(例えば、胚性神経管
細胞内の前駆体、および初期の移動している神経堤細胞内の前駆体)は、移動の
間に非常に迅速に拘束されるようになると考えられ、そして移動後の神経堤細胞
中では、非常に長期間残存はしない。鳥類において使用される研究的アプローチ
は、NCSCが比較的迅速に分化して、その結果、移動後の数日間内に、全ての
細胞の運命がPNS内で決定されることを示唆した。
【0032】 E14坐骨神経内の神経堤由来細胞は、以前には、シュワン細胞前駆体であり
、シュワン細胞に分化する運命であると考えられていた。これらシュワン前駆体
の発生の可能性は、神経堤前駆体とは異なると考えられていた。なぜなら、坐骨
神経由来のp75+細胞は、抗GAP−43抗体で染色されるが、神経堤の成長
物は染色されないことが観察されたからである。本発明者らは、抗GAP−43
モノクローナル抗体および抗GAP−43ポリクローナル抗体を、種々の固定条
件および培養条件下で試験したが、NCSCコロニーに分化するニューロン内以
外の染色は観察されなかった。
【0033】 坐骨神経がGAP−43を発現してもしなくても、E14.5坐骨神経細胞は
、マーカー発現および発生の可能性に関して、前駆体の不均一な集合を含み、有
意な割合は、表現型および機能的にNCSCと区別できないが、比較的小さな割
合は、シュワン細胞の運命に拘束されているようである。E14.5坐骨神経よ
り培養された前駆体のタイプは、NCSCが末梢神経中で筋線維芽細胞誘導体と
シュワン細胞の両方を生成し得ることを示す。筋線維芽細胞誘導体は、神経周膜
、神経上膜、および血管平滑筋を含み得る。
【0034】 同様の方法において、Mac−1(成熟骨髄細胞のマーカー)が、胎児造血性
幹細胞において発現されることが示されている(Morrisonら、Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 92、10302〜10306(19
95))。そのような現象は、幹細胞の多能性が、その産物が最終的に異なる幹
細胞誘導体を規定する遺伝子の低レベル転写において分子レベルを反映し得ると
いう考えと一致する。
【0035】 (神経幹細胞の移植)本発明の神経幹細胞培養物は、産生され得、そして宿主
中に移植され得る(実施例6を参照のこと)。従って、移殖の方法は、種々の宿
主(好ましくは、ヒト患者)への移植に使用され得る。ヒト患者に移植された神
経幹細胞は、PNSにおける、CNSにおける、および全身性の種々の障害の処
置に有用である。末梢神経の生検から神経幹細胞を単離する能力は、重要な治療
適用を有し得る。なぜなら、NCSCは、特に生体の神経の環境がNCSC生存
、自己複製、および分化に依然として許容される場合、神経損傷部位に移殖され
得るからである。
【0036】 細胞は、当該分野において公知の任意の適切な手段によって被験体に送達され
る。CNSに送達される場合、細胞は、脳の周囲の領域の統合性を維持する任意
の方法を使用して(好ましくは、注入カニューレによって)特定の領域に投与さ
れる。Ducanら,17J,Neurocytology 351〜361(
1988)によって使用される方法によって例示され、ヒトでの使用にスケール
アップされかつ改変される注入方法が、好ましい。CNSへの細胞懸濁液(例え
ば、線維芽細胞)の注入のための方法もまた、神経前駆細胞の注入に用いられる
。さらなるアプローチおよび方法が、Neural Grafting in
the Mammalian CNS,Bjorklund&Stenevi編
(1985)に見出され得る。
【0037】 本発明の神経幹細胞培養物は、種々の神経変性障害を処置するために、上記の
手順を使用して産生され、そして移殖され得る。このようなCNS障害としては
、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病およびパーキンソン病)、急性脳傷
害(例えば、発作、頭部傷害、大脳麻痺)および多数のCNS機能不全(例えば
、うつ病、てんかん、精神分裂病)のような多くの病気が挙げられる。近年、神
経変性疾患が、これらの障害について最大の危険性がある増えている高齢者の集
団に起因して重要な関心事になっている。アルツハイマー病、多発性硬化症(M
S)、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、およびパーキンソン病を含むこれ
らの疾患が、CNSの特定の位置における神経細胞の変性と関連している。この
ことは、これらの細胞または脳領域がそれらの意図された機能を遂行し得ないこ
とにつながる。特定の異なる増殖因子を通じて1以上の選択された系列への成熟
、増殖および分化について提供することによって、前駆細胞は、方向付けられた
細胞の供給源として使用され得る。1つのシリーズの実施形態において、コラゲ
ナーゼ処理した神経幹細胞培養物は、脱髄疾患の処置のための上記の手順を使用
して産生され、そして移殖され得る。脱髄標的の近傍に細胞を移植するための任
意の適切な方法は、細胞が脱髄軸索と関連し得るように使用され得る。
【0038】 本発明に従って作製された神経幹細胞培養物はまた、種々の血液細胞型(骨髄
細胞またはリンパ細胞、および初期造血細胞を含む)を産生するために使用され
得る(Bjornsonら、283 Science 534(1999)(本
明細書中に参考として援用される)を参照のこと)。
【0039】 (神経幹細胞に対する因子の効果をスクリーニングするための方法)インビト
ロで培養された、本発明の神経幹細胞培養物は、細胞の分化および成熟と関連す
る組成物中の因子の単離および評価のために、潜在的な神経学的治療組成物をス
クリーニングするために使用され得る。これらの組成物は、種々の投薬量で培養
中の細胞に適用され得、そして細胞の応答が、種々の時間でモニターされ得る。
細胞の物理的特徴は、細胞および軸索の成長を顕微鏡で観察することによって分
析され得る。新規のタンパク質もしくは増加したレベルのタンパク質(例えば、
酵素、レセプターおよび他の細胞表面分子)、あるいは神経伝達物質、アミノ酸
、ニューロペプチド、および生体アミンの発現の誘導は、当該分野で公知の任意
の技術(この技術によってこのような分子のレベルの変化が同定され得る)を用
いて分析され得る。これらの技術としては、このような分子に対する抗体を使用
する免疫組織化学、または生化学分析が挙げられる。このよな生化学分析として
は、タンパク質アッセイ、酵素アッセイ、レセプター結合アッセイ、酵素結合免
疫吸着アッセイ(ELISA)、電気泳動分析、高速液体クロマトグラフィー(
HPLC)による分析、ウエスタンブロット、および放射免疫アッセイ(RIA
)が挙げられる。ノーザンブロットのような核酸分析が、これらの分子、または
これらの分子を合成する酵素をコードするmRNAレベルを試験するために使用
され得る。あるいは、これらの薬学的組成物で処理された細胞が、動物に移植さ
れ、そしてそれらの生存、神経接続を形成する能力、ならびに生化学特徴および
免疫学的特徴が、上記のように試験される。
【0040】 本発明の神経幹細胞培養物は、神経細胞に対する生物学的因子の効果を決定す
る方法において使用され得る。用語「生物学的因子」とは、任意の因子(例えば
、ウイルス、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、糖質、核酸、ヌクレオチ
ド、薬物、プロドラッグ、またはこのような効果が有害であるか、有益であるか
、もしくはそれ以外であるかにかかわらず神経細胞に対する効果を有し得る他の
物質)をいう。神経細胞に有益である生物学的因子は、本明細書中で、「神経学
的因子」といわれる。この用語は、CNS細胞の増殖、分化または機能に、ある
いは神経学的疾患もしくは障害の処置についての潜在的な有用性を証明し得る、
任意の生物学的または薬学的に活性な物質を含む。神経細胞に対する潜在的な生
物学的因子の効果を決定するために、コラゲナーゼ処理した神経幹細胞培養物を
入手し、そして増殖を誘導する増殖因子の存在下でインビトロで増殖させる。一
般的に、生物学的因子は可溶化され、そして各用量での因子の効果を決定するた
めに種々の濃度で培養培地に添加される。培養培地は、ある程度一定に因子の濃
度を保つように、隔日で生物学的因子を量的に補充され得る。
【0041】 従って、移殖の目的のために多数の細胞を生成するに有用である前駆細胞の増
殖能を増大させる生物学的因子についてスクリーニングすることが可能である。
コラゲナーゼ処理した神経幹細胞培養物を使用して、前駆細胞の増殖を阻害する
生物学的因子についてスクリーニングすることもまた可能である。また、種々の
生物学的因子が分化した神経細胞の数および性質をいくつかの他の様式で増大、
減少または改変する能力が、分化を誘導した、コラゲナーゼ処理した神経幹細胞
培養物に対してスクリーニングされ得る。次いで、分化および分化した神経細胞
の生存に対する生物学的因子または生物学的因子の組合せの効果が、決定され得
る。分化前に生物学的因子を神経幹細胞培養物に適用することによって、分化プ
ロセスに対する生物学的因子の効果を決定することもまた、可能である。
【0042】 (坐骨神経幹細胞およびPNS腫瘍の起源)NCSC残存の本発明の発見は、
特定のPNS癌の病因における重要な洞察を提供する。末梢性神経外胚葉腫瘍お
よびユーイング肉腫は、しばしば、いくつかの異なるニューロン系列および中外
胚葉系列に分化する能力を有する始原細胞を含む。これらの腫瘍は神経堤前駆体
の形質転換と関連し得るが、この関連は、神経堤前駆体が胎児の発生において初
期に最終分化するという見込みを考慮すると神秘的であった。NCSCが残存す
るという本発明の発見は、ユーイング肉腫(これは、子供の骨に主に生じる)が
骨膜を神経支配する末梢神経線維に存在するNCSCの不死化から駆動し得ると
いうことを示す。同様に、シュワンおよび筋原線維特性を有する細胞を含む神経
線維腫は、子供の末梢神経において生じ、そしてまた、胎児後期または生後の発
達の間に、NCSC(またはS+M前駆体)の形質転換から駆動し得る。NCS
Cがげっ歯類の末梢神経で残存するという知見は、従って、PNS疾患の診断お
よび処置に重要であり得る。
【0043】 以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態をより十分に例示するために提示
される。これらの実施例は、添付の特許請求の範囲に規定される、本発明の範囲
を制限するものとしていかなる様式にも解釈されるべきではない。
【0044】 (実施例1) (胎児坐骨神経は、多能性および方向付けられた神経前駆細胞を含む) (序論)坐骨神経が方向付けられていない神経前駆細胞を含むことを示すため
に、本発明者らは、E14.5〜E17.5ラット坐骨神経を分離させ、そして
クローン(clonal)密度で培養物中に単一の細胞をプレーティングした。
個々の単離された細胞を自己複製させ、そしてニューロン、グリア、および平滑
筋様筋線維芽細胞を含むクローンを生じた。
【0045】 (坐骨神経細胞培養物の調製)受胎したSprague−Dawleyラット
を、Simonsen(Gilroy,CA)から入手した。受胎期に関して、
動物を午後および午前にひとまとめにして、その時にプラグ(plug)を観察
して、E0.5と命名した。坐骨神経を、10mM HEPES(pH7.4)
(Gibco)を含む氷冷Ca++、Mg++を含まないハンクス平衡化塩溶液(H
BSS)(Gibco,Grand Island,New York)中に切
開した。神経を、室温で3(分間)450×gで遠心分離することによってペレ
ットにした。E14〜E17神経を、一般的に、0.025%トリプシン(Gi
bco product 25300−054、Ca++、Mg++を含まないHB
SSで1:1に希釈した)および1mg/mLの3型コラゲナーゼ(Worth
ington,New Jersey)中で、37℃で4分間(分)インキュベ
ートすることによって分離させた。いくつかの試験において、神経を、1.2m
g/mLのヒアルロニダーゼ(Sigma,St.Louis、product
H−3884)および2mg/mLの3型コラゲナーゼ中で、37℃で10分
間インキュベートすることによって分離した。インキュベーション期間の後に、
消化を、2容量の染色培地:1mg/mL BSA(Gibco produc
t 11019−023)、10mM HEPES(pH7.4)、ペニシリン
/ストレプトマイシン(BioWhittaker,Maryland)および
25Ug/mLデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)1型(Sigma,D
−4527)を含むL15培地を用いて停止した。遠心分離の後に、神経細胞を
トリチウム化し、そして染色培地中に再懸濁した。分離された細胞を、常に、染
色培地中で、時折、DNaseなしで維持した。
【0046】 (坐骨神経細胞の培養)高いプレーティング効率を促進し、かつニューロン分
化、グリア分化および中外胚葉分化が生じ得る条件に到達するために、分離およ
び培養条件を最適化した。標準条件下で、クローン培養物を14日間発達させ、
次いで固定し、そして免疫細胞化学マーカーで分析した。
【0047】 坐骨神経前駆細胞を、代表的には、クローン密度(14日間の培養については
30クローン/ウェル未満、または1〜4日の培養については60クローン/ウ
ェル)で6ウェルプレート(Corning,Corning New Yor
k)中で培養した。プレートを、50:g/mLポリ−d−リジン(PDL)(
Biomedical Technologies,Stoughton MA
)水をプレート上にピペットして次いで、2分以内にピペットして吸い取ること
によって、PDLでコーティングした。乾燥後に、プレートを滅菌蒸留水(Bi
oWhittaker)で洗浄し、そして再度乾燥させる。次いで、プレートを
、D−PBS(BioWhittaker)中に一晩溶解した0.15mg/m
Lのヒトフィブロネクチン(Biomedical Technologies
)でコーティングした。一連の試験を行い、培養培地の組成を最適化した。高い
プレーティング効率および良好なコロニー増殖を、以下の培地中でラット細胞で
一貫して得た:Stemple&Anderson,71 Cell 973〜
985(1992)(また、Andersonら、米国特許第5,589,37
6号、同第5,824,489号、同第5,654,183号、同第5,693
,482号、同第5,672,499号および同第5,849,553号(全て
が参考として援用される)を参照のこと)によって記載される15%ニワトリ胚
抽出物、20ng/mL組換えヒトbFGF(R&D Systems,Min
neapolis)、N2補充物(Gibco),B27補充物(Gibco)、
50:M2−メルカプトエタノール、35mg/mL(110nM)レチノイン
酸(Sigma)、およびペニシリン/ストレプトマイシン(BioWhitt
aker)を含む、DMEM−low(Gibco product 1188
5−085)。この培地の組成は、標準的な培地として記載される。標準的な条
件下では、細胞を、標準培地で6日間培養し、次いでコロニー組成物の免疫組織
化学分析前にさらに8日間分化をもたらす同様の培地(1%ニワトリ胚抽出物(
CEE)および10ng/mL bFGFを含む)に切り換えた。培養物を6〜
8%CO2の加湿したインキュベーター中で維持した。
【0048】 (免疫組織化学)BrdU染色に関して、細胞を、Raffら、333 Na
ture 562〜565(1988)に記載されるように固定化し、PGN(
4%ヤギ血清、0.5%BSA、0.1%NP−40[Igepal、Sigm
a]、0.05%アジ化ナトリウムのD−PBS)中で室温にて15分間ブロッ
クし、次いでPGN中で1/100希釈した抗BrdU抗体(IU−4、Cal
tag)で45分間インキュベートした。PGNでの洗浄後に、細胞を、ウマ西
洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Chemicon,Temecula
CA)に結合体化した抗マウスIgG抗体とともに25分間インキュベートした
。HRPを検出する組織化学反応を、ジアミノベンジジンおよび硫酸ニッケルを
基質として使用して行った。BrdU染色は、常に、核であり、従って、ネガテ
ィブコントロール細胞では一次抗体または二次抗体からのバックグランドは存在
しなかった。
【0049】 コロニーの細胞組成が評価されたほとんどの試験では、培養物を、酸エタノー
ル(100%エタノール中の5%氷酢酸)で−20℃にて20分間固定化した。
プレートを、PBSでリンスして、続いてPGNで2回リンスした。培養物を、
PGN中で15分間インキュベートすることによってブロックした。ペリフェリ
ンを、PGN中1/1000の抗ペリフェリン抗体(Chemicon)で30
分間インキュベートすることによって最初に染色した。PGNでの3回の洗浄後
に、ペリフェリン染色を、HRP(Vector,Burlingame CA
)に結合体化した抗ウサギ抗体中でインキュベートして、続いてニッケル−DA
B染色によって発色させた。次いで、培養物を、室温にて45分間、PGN中1
/200希釈の抗GFAP(Sigma,G−3893)および1/200抗S
MA(Sigma,A−2S47)の混合物中でインキュベートした。洗浄後に
、培養物を、PGM中1/200希釈の抗マウスIgG1−フィコエリトリン(p
hycoerythrin)および抗マウスIgG2a−FITC(Southe
rn Biotechnology Associates)中で、室温にて2
5分間インキュベートした。洗浄後に、核を、時折、PGN中の10:g/mL
DAPI中でインキュベートすることによって染色した。
【0050】 培養物を、抗GFAPまたは抗BrdUを含まない抗体の組合せで染色したと
きに、この培養物を、一般的に、4%パラホルムアルデヒド中で室温で10分間
固定化した。MASH−1染色を、Shahら、77 Cell 349〜36
0(1994)により記載されるように行った。
【0051】 (PNS細胞の発生能についてのアッセイ)発生能をアッセイするために、培
養物に分化を誘導する増殖因子を添加することによって、細胞をチャレンジした
。ニューロン能についてアッセイするために、細胞を、50ng/mL(1.6
nM)の組換えヒトBMP2(Genetics Institute)を標準
的な培養物中に添加することによってチャレンジした。これは、NCSCにおけ
るニューロン分化を指令することに関しての飽和用量である(Shahら、85
Cell 331−343(1996)を参照のこと)。BMP2によってチ
ャレンジされた細胞を、免疫組織化学的分析の前に、1〜4日間インキュベート
した。グリア能をアッセイするために、培養物を、50ng/mL(1nM)の
組換えヒトNRG−1(Cambridge Neurosciences)を
添加することによって、チャレンジした。これは、NCSCにおいてグリア分化
を指令することに関するNRG−1の飽和用量である(Shah&Anders
on,94 Proc.Natl.Acad.Sci.USA 11369−1
1374(1997))。細胞を、分析の前に14日間、NRG−1の存在下で
培養した。
【0052】 (結果)3つの細胞型が、これらの培養物中に存在する:(1)ニューロン;
(2)シュワン細胞、(3)および平滑筋様筋線維芽細胞。ニューロンを、ペリ
フェリンの発現によって同定した。グリア細胞を、GFAP、p75、および細
胞質S100βの発現によって同定した。グリア細胞は、ペリフェリンまたはα
平滑筋アクチン(SMA)を発現しなかった。
【0053】 筋線維芽細胞を、SMAおよびカルポニンの同時発現によって同定した。類似
のNCSC由来の細胞が、以前に平滑筋細胞としてShahら、85 Cell
331−343(1996)によって言及されたが、坐骨神経由来細胞は、平
滑筋マーカーデスミンまたはミオシン軽鎖キナーゼを発現しなかった。従って、
それらの全体的なマーカープロフィールは、Sappinoら、63 Labo
ratory Investigation 144−161(1990)によ
って筋線維芽細胞として記載されている関連する細胞型と、より一致した。筋線
維芽細胞は、神経マーカーGFAP、ペリフェリン、およびp75を発現しなか
ったが、ビメンチンおよびS100βを発現した。S100βは、シュワン細胞
分化のマーカーとして使用されてきたが、本発明者らのグリアおよび筋線維芽細
胞の両方におけるS100βの観察は、非神経細胞型(平滑筋細胞および筋上皮
細胞を含む)におけるその広汎な発現(Haimotoら、57 Labora
tory Investigation 489−498(1987))と一致
する。
【0054】 ペリフェリン、GFAP、およびSMAに対する抗体の三重標識により、本発
明者らは、異なる年齢からの坐骨神経のクローン培養物におけるコロニーの5つ
の型を同定した(表1)。
【0055】
【表1】
【0056】 実質的数のコロニーが、ニューロン、シュワン細胞、および筋線維芽細胞(N
+S+M)を含有していた。培養の14日後(約16〜17の二倍化に対応する
)において、観察されコロニーの数が最も大きく、それらは、平均で1.07±
0.33×105細胞(平均±標準偏差)を有していた。これらの多能性前駆細
胞は、E14.5でコロニーのほぼ16%を表すが、それらの頻度は、発生の日
毎に有意に減少し、その結果、多能性前駆細胞は、E17.5坐骨神経からの前
駆細胞の2%未満を表した(表1)。少数の試験において、いくつかの頻度コロ
ニーは、ニューロンおよびシュワン細胞(N+S)のみを含有し、これらのN+
Sコロニーは、非常に大きかった。
【0057】 より頻度の高いものは、ニューロンを含有するが、シュワン細胞および筋線維
芽細胞(S+M)を含有しないコロニーであった。これらは、E14.5とE1
7.5との間の発達の段階にかかわらず、コロニーの10%までを表す(表1)
。これらのS+Mコロニーは、サイズが中程度であり、代表的には、数千の細胞
を含有する。
【0058】 坐骨神経はまた、単一の細胞型のみを生じる前駆細胞を含有していた。予想通
り、統計学的な数のコロニーが、シュワン細胞のみを含有していた(Sのみ)。
ニューロンを含有するコロニー中のシュワン細胞は、常に、GFAPを発現した
が、ニューロンを含有しないコロニーは、ときどき、検出可能なGFAPを発現
しなかったが、GFAP発現細胞から形態学的に区別不可能であり、そして常に
p75および細胞質S100βを発現したが、ペリフェリンまたはSMAを発現
しなかった。Sのみの前駆体の頻度は、E14.5のコロニーの20%からE1
7.5の全てのコロニーの42%までの発達をともなって有意に増加した(表1
)。標準的な培養条件において、これらのコロニーは、代表的には、数百から数
千の細胞を含有していた。発達の全ての段階において、約50%のコロニーが筋
線維芽細胞のみ(Mのみ)を含有していた。筋線維芽細胞のみのコロニーは、と
きどき、10個より少ない細胞を含有していたが、その他の場合には、数百より
多い細胞を含有していた。
【0059】 (実施例2) (坐骨神経多能性前駆細胞の培養中での自己複製) (インビトロ自己複製アッセイ)自己複製を、多能性前駆細胞をサブクローニ
ングすることによってインビトロでアッセイした。E14.5坐骨神経由来の単
一のp75+細胞を、FACSによって96ウェルプレートの個々のウェルに選
別し、7〜11日間標準的な培地中で再給餌なしに培養した。7日と11日との
後に、そのウェルを試験し、そして多能性コロニーをそれらの外見によって同定
した。神経前駆細胞は、小さな細胞の密なコロニーを生じたが、筋線維芽細胞の
前駆細胞は、大きな平べったい筋線維芽細胞の分散したコロニーを生じた。多能
性前駆細胞は、他の神経前駆細胞から区別され得る。なぜなら、それらは、培養
の7日後においてさえ、SのみまたはS+M前駆細胞よりも大きなコロニーを生
じるからである。コロニーは、培養培地を吸引し、そしてトリプシン−EDTA
溶液(Gibco)をそのウェルに添加することによりサブクローン化された。
2分後および穏やかに粉砕した後、個々のウェルからの細胞を15mLのチュー
ブに移し、そこでそのトリプシンを、培地をニワトリ胚抽出物を添加して染色す
ることによってクエンチした。その細胞を遠心して落とし、染色培地中で再懸濁
し、クローン密度で複数の6ウェルプレートウェルに再びプレーティングし、そ
して標準的条件下で培養した。14日後、二次コロニーの組成物を、免疫組織化
学的に分析した。
【0060】 (結果)坐骨神経由来の多能性前駆細胞によって形成されたコロニーは、NC
SCを移動することによって形成したものを連想させた(Andersonら、
米国特許第5,589,376号、同第5,824,489号、同第5,654
,183号、同第5,693,482号、同第5,672,499号、および同
第5,849,553号(全て参考として援用する);StempleおよびA
nderson、71 Cell 973−985(1992);Shahら、
77 Cell 349−360(1994);Shahら、85 Cell
331−343(1996)を参照のこと)。サブクローニング試験における坐
骨神経多能性前駆細胞の自己複製能を、表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】 20の症例のうちの18で、各多能性コロニーは、S+Mサブクローンおよび
Sのみのサブクローンと同様に、多数の多能性(N+S+M)サブクローンを生
じた(表2)。大部分の場合において、多能性コロニーはまた、MのみおよびN
+Sサブクローンを同様に生じた。平均して、各多能性創始細胞は、クローニン
グの日に関係なく100より多くの二次的な多能性クローンを生じた。これは、
最小限6〜7の対称的な自己複製分裂に相当する。E16.5坐骨神経からのク
ローン密度でプレーティングされた多能性コロニーもまた、クローニング輪(c
loning ring)を有するコロニーを単離することによってサブクロー
ニングされた。これらのコロニーもまた、培養中で自己複製した。従って、多能
性前駆細胞は、培養中で自己複製するのみならず、胎児の坐骨神経において観察
されたすべての他のクラスの前駆細胞(Mのみの筋線維芽細胞の前駆細胞を含む
)を生じた。多能性前駆細胞由来の筋線維芽細胞のみの二次的なコロニー(表2
)は、新鮮に分離された坐骨神経細胞の培養物において観察されるコロニー(表
1)と表現型的に区別できなかった。
【0063】 (分析)従って、単一のp75+0 -細胞は、培養において示される自己複製
能を有する。
【0064】 (実施例3) (フローサイトメトリーによる、機能的に区別できる坐骨神経前駆細胞の分離
) (序論)ラットE14.5坐骨神経の細胞を、細胞表面抗原に対する抗体を使
用して、フローサイトメトリーによって分画した。坐骨神経から分離された細胞
を、それらのp75(これは、低アフィニティーニューロトロフィンレセプター
であり、神経堤幹細胞(NCSC)のマーカーである(StempleおよびA
nderson、71 Cell 973−985(1992)))、およびP 0 (グリア分化と関連する末梢ミエリンタンパク質)の発現における差違に基づ
いて、5つの別個の亜集団に分画した。驚くべきことに、E14.5坐骨神経細
胞の15%より多くが、インビトロでNCSCから機能的に区別できなかった。
【0065】 単離された個々の細胞は、自己複製しそしてニューロン、グリア、および平滑
筋様筋線維芽細胞を含むクローンを生じた。これらの自己複製多能性細胞は、p
75+0 -サブフラクションにおいて高度に富化された。これらの自己複製する
多能性細胞は、NCSCから区別できない様式で指令系統決定因子(例えば、B
MP2およびニューレグリン−1(NRG−1、グリア増殖因子としてもまた公
知))に応答した(Shahら、77 Cell 349−360(1994)
;Shahら、85 Cell 331−343(1996)を参照のこと)。
従って、p75+0 -表面マーカー表現型は、E14.5坐骨神経からの移動後
のそれぞれの同定および単離を可能にした。
【0066】 (フローサイトメトリー手順)すべての選別および分析を、FACSVant
agデュアルレーザーフローサイトメーター(Becton−Dickinso
n,San Jose)で行った。NCSCを単離するために、E14.5坐骨
神経細胞を、p75およびP0に対する抗体を用いて染色した。分離された坐骨
神経細胞を、最初に、1/2000希釈の、P0に対するP07モノクローナル
抗体(J.J.Archelos,Munich)中に懸濁した。より高濃度に
おいては、P07は非特異的に結合する傾向があるが、この希釈においては、P
07は、胎児肝臓および分離された終脳細胞を染色しなかった。すべての抗体の
インキュベーションは、氷上で20〜25分間行った。インキュベーション時間
の最後に、細胞を、10〜40容量の染色媒体中で希釈すること、450×gで
3分間遠心分離することによって細胞をペレット化すること、および次いで染色
媒体を吸引すること、によって洗浄した。P07染色は、フィコエリトリンに結
合体化した抗マウスIgG1二次抗体(Southern Biotechno
logy Associates,Birmingham AL)中でインキュ
ベートすることによって発色させる。坐骨神経細胞、胎児肝臓細胞、または終脳
細胞ではこの二次抗体に由来するバックグラウンド染色は存在しなかった。洗浄
後、細胞を、フルオレセインと直接結合体化した192 IgG抗体(p75に
対する)中に再懸濁した。0.1mg/mL マウスIgG1(Sigma)を
、192I IgGとともに含めて、細胞表面上の二次抗体に対する結合をブロ
ックした。洗浄後、細胞を2:mg/mL 7−アミノアクチノマイシンD(7
−MD、Molecular Probes,Eugene)、生存可能色素、
を含む染色媒体中に再懸濁した。死滅した細胞を、前方および側方の散乱でゲー
トを開閉すること、ならびに7−MDポジティブ事象を削除することによって除
外した。Clone−Cyte機能を使用して、培養プレートの個々のウェルに
直接に既知の細胞数を入れることによって行った。プレーティングの効率を計算
するために、Clone−Cyte選別計数の正確さは、ガラススライド上の細
胞を選別すること、および実際に選別された細胞の数を計数することによって、
定期的にチェックされた。選別の前および後に、組織培養プレートを、5%CO 2 を満たした、シールされたプラスチックバッグ中に保って、空気と平衡するこ
とによって培養培地のpHが塩基性になるのを防いだ。
【0067】 NCSCの細胞周期分析を、Hoechst 33342(Sigma)を用
いて染色してDNA含量を測定すること、およびピロニンY(Sigma)を用
いて染色してRNA含量を測定することによって行った。E14.5坐骨神経か
ら少なくとも5500のp75+0 -細胞を染色培地中に選別し、次いで氷冷7
0%エタノール中にピペットで移す。その細胞を、4℃で一晩、エタノール中に
放置し、次いで、フローサイトメトリー再分析の前に、20分間、1:g/mL
のHoechst 33342および2:g/mLピロニンY中に再懸濁した。
少なくとも1500のp75+0 -細胞を、複製あたり再分析した。DNA含量
およびRNA含量を分析するための機器パラメーターは、休止コントロール細胞
(成体ラット脾臓細胞)および活発に分裂しているコントロール細胞(ラット終
脳)に基づいて設定された。
【0068】 (結果)図1は、p75およびP0を用いて染色していないか、またはこれら
を用いて染色したかのいずれかでの、分離されたE14.5坐骨神経細胞のプロ
ットを示す。表現型分析について、本発明者らは、以下の2つの異なる分離条件
を使用した:(1)ヒアルロニダーゼ+コラゲナーゼ、これは、プロテアーゼ活
性を最小化し、従って、細胞表面マーカーの保持に有利である、または(2)ト
リプシン+コラゲナーゼ、これは、細胞生存および高いプレーティング効率に有
利である。抗p75および抗P0で二重標識したヒアルロニダーゼ+コラゲナー
ゼ分離細胞を、染色していない細胞と比較することによって、それらの表現型的
に別個の4つの坐骨神経細胞の集団を、p75およびP0の発現に従って規定し
た:(1)p75+0 -、(2)p75+0 +、(3)p75-/low0 +、および
(4)p75-/low0 -(図1A、B)。予想されたように、大部分の(65%
)E14.5坐骨神経細胞はP0を発現し、そして多くの(47%)細胞は、ヒ
アルロニダーゼ+コラゲナーゼ消化後にp75を発現した。これらの抗体のいず
れもが、終脳または胎児肝臓のコントロール細胞でのFACSによって試験され
た場合に、坐骨神経細胞を染色するために使用される濃度において、非特異的染
色を示さなかった。
【0069】 不運にも、ヒアルロニダーゼ+コラゲナーゼ分離細胞の相対的に低い割合が、
培養中にコロニーを形成し、このことは、これらの集団の発生の可能性を比較す
る本発明者らの能力を妨害する。しかし、短い(4分間)トリプシン+コラゲナ
ーゼ処理によって分離された細胞は、効率的にコロニーを形成した;従って、す
べての機能的な分析を、このようなトリプシン+コラゲナーゼ分離細胞で行った
。FACSプロットは、わずかなP0エピトープの損失を示したが、この分離手
順によっては、p75エピトープの損失はなかった(図1Bと1Cを比較のこと
)。P0染色のこの不明瞭さによって、本発明者らは、トリプシン+コラゲナー
ゼ分離細胞を5つのサブセットに分けた(図1C)。p75+0 -細胞は坐骨神
経細胞の12±2%を示し、p75+0 -細胞は坐骨神経細胞の12±2%を示
し、p75+0 -/low細胞は坐骨神経細胞の18±5%を示し、p75+0 +細胞
は坐骨神経細胞の11±7%を示し、p75-/low0 -細胞は坐骨神経細胞の2
0±9%を示し、そしてp75-/low0 -/low細胞は坐骨神経細胞の39±10
%を示した。
【0070】 トリプシン+コラゲナーゼ分離坐骨神経由来の5集団のそれぞれを、標準的な
条件下で培養した。その集団は、表3に示すように、発生能の顕著な差違を示し
た。
【0071】
【表3】
【0072】 大部分のp75+0 -細胞は、多能性コロニーを形成し(60%)、類似の数
の細胞が、他のクラスのコロニーを生じた。p75+0 -細胞は、多能性コロニ
ー(50%)とシュワンのみのコロニー(37%)との混合物を生じた。これら
の画分の両方は、低い割合のMのみのコロニー(<10%)を生じた。p75+
0 -集団は、多能性前駆細胞(28%)、シュワンのみの前駆細胞(34%)、
および筋線維芽細胞のみの前駆細胞(22%)の混合物を含んだ。従って、P0
を発現するものを含む全てのp75+0 -集団は、有意な数の多能性前駆細胞を
含んだが、P0発現が増加するにつれて形成されたコロニーがいかに減少したか
という細胞間の多能性前駆細胞の見かけの頻度を除く。両方のp75流動集団(
0 +およびP0)は、純粋であったか、または筋線維芽細胞のみを生じる前駆細
胞のほぼ純粋な集団であった。
【0073】 (p75+0 -E14.5坐骨神経細胞はNCSCを富化される)p75+0 - 集団をNCSCに関して富化したが、これは純粋ではなかった。標準的な培養物
における細胞の60%が、自己複製多能性コロニーを形成した。細胞の80%よ
り多くが、BMP2の存在下でニューロンを生成し得た。方向付けられたニュー
ロン前駆細胞は、坐骨神経の本研究または以前の研究において検出されず、そし
てBMP2の非存在下では、ニューロン前駆細胞活性は常に、多能性前駆細胞と
関連した(表1および3);従って、BMP2の存在下での結果は、標準的な条
件下で形成される非神経原性コロニー型のいくつかが、アッセイした時点でそれ
らのニューロン能を「読み出さ」なかったNCSCであったかもしれないことを
示唆する。従って、本発明者らの培養条件下でコロニーを形成したp75+0 -
細胞の80%までは、NCSCであり得る。分画されなかった坐骨神経細胞の1
5〜16%のみがNCSCとして挙動したので(表1)、p75+0 -画分は、
幹細胞に関して約4〜5倍富化される。
【0074】 (実施例4) (BMP2チャレンジにより決定されるニューロン能) BMP2は、NCSCに、ニューロンに分化するよう指令する。従って、1.
6nM BMP2を、分離していない坐骨神経細胞またはフローサイトメトリー
により単離した各部分集合由来の細胞の、標準的な培養物に添加した。BMP2
を用いて24時間後に、いくらかの培養物を固定し、そしてMASH−1(自律
性神経発生の初期の転写因子マーカー)に関して染色した。BMP2を用いて4
日後に、姉妹培養物を固定し、そしてペリフェリン(成熟PNSニューロンのマ
ーカー)に関して染色した。平均すると、分離されない坐骨神経細胞の18〜2
0%は、MASH−1またはペリフェリン発現のいずれかにより判断されるよう
に(表4)、ニューロン分化し得た。
【0075】
【表4】
【0076】 これらの結果は、分離されていない坐骨神経細胞の16%が、標準的な培養物
にニューロンを含むコロニーを形成したという本発明者らの観察(表1)に一致
する。
【0077】 60%の細胞が標準的な培養物において多能性前駆細胞を生じたp75+0 -
集団(表3)において、これらの細胞の80%より多くが、BMP2の存在下で
ニューロンに分化した(表4)。従って、BMP2の存在下では、より高い割合
の細胞が、神経原性能を示した。p75+0 -集団およびp75+0 +集団におい
て、有意であるがより少数の細胞(それぞれ68%および52%)が、BMP2
の影響下でニューロンに分化した。このことは、これらの集団における多くの細
胞が多能性前駆細胞であり、ニューロン分化し得たという観察に一致する(表3
)。対照的に、両方のp75集団(P0 +およびP0 -)において、BMP2によっ
てチャレンジされた場合でさえも、ほとんどの細胞がニューロン分化し得なかっ
た(表3および4)。このことは、これらの集団における大部分の細胞がニュー
ロン能を欠くことを実証し、そしてこれらの集団におけるほとんど全ての細胞が
筋線維芽細胞発生運命に関して制限される可能性に一致する。
【0078】 BMP2は、細胞の殺傷も、細胞の部分集団の生存の促進も、いずれも行わな
いようであった。なぜなら、いずれの場合においても、24時間後または4日後
のいずれにおいても、BMP2ありおよびなしの並列培養物を比較して、プレー
ティング効率に差異が存在しなかったからである。BMP2の非存在下において
、ペリフェリン染色は、標準的な培養条件下で13日目まで明らかではなかった
が、BMP2の存在下では、ニューロン分化が4日以内に起こった。BMP2の
非存在下において、p75+0 -コロニーの細胞のほんの少数のみが、ニューロ
ンであった。BMP2の存在下では、大部分のp75+0コロニーの全ての細胞
が、ニューロンであった。BMP2はニューロン分化を加速し、そしてクローン
におけるニューロンの割合を劇的に増加させたが、細胞生存には影響を与えない
ようであったので、データは、BMP2がニューロン能を有する細胞に対して有
益に作用したことを示唆する。
【0079】 BMP2が有益に作用していたことを確認するために、E14.5坐骨神経由
来のp75+0 -細胞を培養物に選別した。4時間後、この培養物を微視的に試
験し、そしてプレートに付着した生存細胞を、培養プレートの下側を円形にエッ
チングすることによって、マークした。細胞を円形にした後に、BMP2をいく
つかの培養物に添加した。BMP2の添加の24時間後、培養物を固定し、そし
てMASH−1に関して染色した。BMP2を含まない培養物において、平均8
8.9%の細胞が生存し、そしていずれの細胞もMASH−1を発現しなかった
(2つの試験において45の創始細胞を研究した)。BMP2細胞を添加した培
養物において、平均87.5%の細胞が生存し、そしてこれらの細胞のうちの6
2.7%がMASH−1を発現した(2つの試験において40の創始細胞を研究
した)。従って、BMP2は、選択的には作用せず、坐骨神経多能性前駆細胞を
、ニューロン系列に分化するよう指令した。これは、Shahら、85 Cel
l 331−343(1996)により示されるように、E10.5神経管体外
移植片から得られるNCSCに対するその効果に類似する。
【0080】 (実施例5) (NRG−1チャレンジにより決定されるグリア能) NRG−1は、移動するNCSCがグリアに分化するように指令する。各集団
の培養物(E14.5坐骨神経由来のFACSによって単離される)を、1nM
のNRG−1を加えることによってチャレンジした。14日後、培養物を固定し
、ペリフェリン、GFAP、およびSMAについて染色した。結果を表5に示す
【0081】
【表5】
【0082】 標準条件下でのp75+0 -細胞の培養物(表3)において見られたニューロ
ン分化と対照的に、NRG−1の存在下では、ニューロン含有コロニーは観測さ
れず(表5、N+S+M)、そして95%のコロニーがシュワン細胞のみを含ん
だ。実際、ニューロン分化は、分離されていない細胞とp75+集団の両方の培
養物においてNRG−1の存在下で抑制されたが、一方、シュワン細胞のみを含
むコロニーの頻度が劇的に増加した(表1、3、および5におけるSのみの値と
比較して−これらの表におけるデータが同じ試験の並んだ培養物において得られ
たことに注意すること)。プレーティング効率もまた、NRG−1の存在下でp
75+集団について有意に高かった(表3および5におけるプレーティング効率
と比較して)。このように、NRG−1はまた、以前に報告された(Dongら
、1995)ように、ニューロン前駆細胞の生存因子として作用した。プレーテ
ィング効率もp75前駆細胞の分化も、NRG−1チャレンジによって影響しな
かった。p75前駆細胞由来のコロニーの100%が、NRG−1の存在下でさ
え、筋線維芽細胞発現SMAのみを含んだ(表5)。このように、これらの筋線
維芽細胞前駆細胞は、グリア能もニューロン能も有しないようである。しかし、
NRG−1は、p75前駆細胞から誘導されるコロニーの細胞の増殖を促進する
【0083】 NRG−1もまた指令的に作用し、E14.5坐骨神経由来の多能性前駆細胞
によるグリア分化を促進したことを確かめるために、本発明者は、NRG−1の
非存在下で、p75+0 -細胞をプレーティングした。プレーティング4時間後
、生きたp75+0細胞を取り囲み、次いで、NRG−1を培養物に加えた。1
4日後、培養物を固定し染色した。NRG−1の存在下で、平均95.2%のコ
ロニーが生き残り、これらの細胞の全てが、形態学、およびp75またはS10
0β染色(60のコロニーを3つの試験で試験した)によって判断されるように
、グリア含有コロニーを生じた。このように、NRG−1は、多能性前駆細胞を
殺傷することなくグリアの分化を促進し、これは、NRG−1が指令的に作用し
たことを示す。この指令効果に加えて、上記プレーティング効率の増加は、NR
G−1がまたp75+前駆細胞の生き残りを促進し得ることを示唆する。
【0084】 前記のデータは、E14.5坐骨神経の多能性前駆細胞が、E10.5神経管
外植片から単離された移動するNCSCと、以下の基準で、表現型的にそして機
能的に識別不可能であったことを示唆した:(1)両方がp75を発現する(S
templeおよびAnderson、71 Cell 973−985(19
92));(2)両方が、ニューロン、グリア、およびSMA+筋線維芽細胞を
含む多能性コロニーを生成し、培養物中で自己複製する(Stempleおよび
Anderson、71 Cell 973−985(1992));Shah
ら、85 Cell 331−341(1996));(3)両方が、24時間
以内のMASH−1の発現および4日以内のペリフェリンの発現によって証明さ
れるように、BMP2によって指令されてニューロンに分化する;そして(4)
両方が、NRG−1によって指令されてグリアに分化する。移動するNCSCの
唯一の他の公開された機能的特徴は、TGF−βが、それらをSMA+カルポニ
+細胞(Sharら、85 Cell 331−343(1996)による平
滑筋細胞として記載された)に分化させることであるが、これは、筋線維芽細胞
として本明細書中に記載される細胞とは形態学的にそして抗原的に識別不可能で
ある。NCSCは、神経管外植片から再プレートされ、E14.5坐骨神経由来
のp75+0 -細胞が、標準培養条件下でTGF−βチャレンジに対して識別不
能に応答した。明らかではない理由のために、本試験において、高い割合の細胞
が、TGF−βにおいて、Shahら、85 Cell 331−343(19
96)によって観測されたよりも、生き残らなかったが、生き残った細胞は、S
MA+筋線維芽細胞について富化し、TGF−βについての指令の役割と一致し
た。このように、胎児坐骨神経において観測された多能性前駆細胞が、NCSC
である。
【0085】 (実施例6) (E14.5坐骨神経由来のp75+0 -NCSCは、インビボでの移植時に
ニューロンおよびグリアを生じる) (序論)新たに単離された坐骨神経p75+0 -細胞がインビボで多能性であ
るか否かを決定するため、およびそれらのニューロン能がインビトロでの脱分化
によって獲得されないことを確実にするために、本発明者は、ラット神経堤細胞
のニワトリ胚への移植のためのシステムを使用した。新鮮に分離された坐骨神経
由来のp75+0細胞をFACSによって単離し、そしてステージ18ニワトリ
胚の前肢または仙骨レベルのいずれかで体節に注射した。このように、ドナー細
胞を、腹部神経堤経路に、宿主堤移動が十分起きた発達段階で配置した。
【0086】 (坐骨神経前駆細胞のインビボ移植)受精した白色レグホンの卵をHambu
rgerおよびHamiltonステージ18にインキュベーションした。E1
4.5坐骨神経由来の20,000〜90,000のp75+0 -細胞をFAC
Sによって単離し、引張られた(drawn)ガラスキャピラリーチューブに加
え、4℃で30分間、先端に向かって重力によって沈澱させた。注射プロセスを
、Bronner−Fraserら、77 Developmental Bi
ology 130−141(1980)によって記載されるように実施した。
カルシウムおよびマグネシウムを含まないTyrode塩溶液中の10%Ind
iaインクの少量ボーラスを胞胚葉下で注射し、胚を視覚化した。細胞を、MM
33マイクロマニピュレーター(Fine Science Tools)およ
び非常に穏やかな空気圧を使用して、各胚の1つまたは2つの体腔の前方、中間
端に注射した。多くの胚を各細胞調製物とともに注射した。ラット神経堤増殖物
を用いてなされた類似のコントロール試験において、多くの注射された胚をすぐ
に固定し、そして注射された細胞の数をカウントした。改変体がこの方法におい
て固有であるが、200〜600の細胞が、胚内で局在化して、一貫して観測さ
れた。注射された胚をさらに3日間、ステージ29までインキュベーションした
。胚を、新鮮な氷冷4%パラホルムアルデヒド(リン酸緩衝液中)に少なくとも
16時間浸すことによって固定し、15%ショ糖に沈め、OCTに埋め込み、そ
して−80℃で凍結保存した。選択された部分または胚の15μmの区分を切断
した。正常なラットおよびニワトリの胚をインサイチュハイブリダイゼーション
のためにポジティブおよびネガティブコントロールとして並行処理した。
【0087】 (インサイチュハイブリダイゼーション手順)注射3日後に、ニワトリ胚を収
穫し、切り出し、そしてニューロンおよびグリアのマーカーに対するラットおよ
びニワトリ特異的プローブとのインサイチュハイブリダイゼーションによって染
色した。本発明者は、3日のインキュベーションが、ラットドナー細胞が正常な
堤位置に移動し、そして分化のプロセスを開始するのに十分であることを決定し
た。
【0088】 ラット特異的遺伝子に対するアンチセンスプローブを、ジゴキシゲニン結合ヌ
クレオチドを用いて合成し、そしてニワトリ特異的遺伝子に対するアンチセンス
プローブを、フルオレセイン結合ヌクレオチドを用いて合成した。詳細なプロト
コールは、必要に応じて利用可能である。簡単には、断片を、予め固定し、プロ
テイナーゼKで消化し、そしてアセチル化する。次いで、このサンプルを、65
℃で1〜3時間プレハイブリダイズし、そして65℃で一晩1mg/mlのプロ
ーブでハイブリダイズした。0.2×SSCを用いた3回の高ストリンジェンシ
ー洗浄を、65℃で実施した。ブロック化を室温で1時間、20%のヒツジ血清
を用いて実施し、そしてスライドを、ブロッキング溶液中の予め吸着させたアル
カリホスファターゼ結合抗ジゴキシゲニン抗体を用いて室温で1時間インキュベ
ートした。スライドを、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)および5−ブロ
モ−4−クロロ−3インドリルホスフェート(BCIP)を用いて展開した。N
BT/BCI Pで展開後、このジゴシゲニン結合アルカリホスファターゼを、
85℃まで加熱することによりインキュベートし;このスライドを、アルカリホ
スファターゼ結合抗フルオレセイン抗体中で不活化し、そして2−[4−ヨード
フェニル]−3−[4−ニトロフェニル]−5−フェニルテトラゾリウムクロリ
ド(INT)およびBCIPで展開し、これにより橙色の生成物を得る。この組
合せにより、移植片を宿主と正確に識別した。なぜならば、ニワトリのプローブ
は、ネガティブコントロールのニワトリの胚および注入された胚のCNSモータ
ーニューロンプールにおいて、ラットのプローブとの交差ハイブリダイゼーショ
ンを効果的に妨げるからである。ラットの細胞のみが、各胚の一方の側に注入さ
れるので、同じ胚の反対側は、染色特異性のさらなる内部コントロールとして役
立つ。
【0089】 (移植結果) E14.5p75+0 -ドナー細胞が効率的に移植され、そし
て多様なPNS位置にニューロンおよびグリアを生じさせる。2つの試験で、こ
のような細胞を全部で22のニワトリの胚に注入した。ラットの細胞の移植を、
18の前肢に注入したニワトリの胚中16でおよび4の仙骨に注入したニワトリ
の胚中4で実施し、全部で20のキメラを得た。ドナーに誘導されたニューロン
(ラット特異的プローブ(ニューロンマーカーSCG10)でインサイチュハイ
ブリダイゼーションすることで同定)を、ニワトリ特異的SCG10プローブ(
橙色染色)で宿主ニューロンカウンター染色される近い関係の、4キメラの交感
神経節(3つの前肢および1つの仙骨注入)で検出した。交感神経節で移植され
たラットの細胞はまた、Phox2bを発現する。このPhox2bは、交感神
経節に適切な自律神経の分化のマーカーである。仙骨レベルで注入されたニワト
リの中で、ラットのニューロンは、以前にRemak神経節(トリの腸管神経シ
ステムの成分)で検出された。
【0090】 ニューロンの移植に加えて、P0およびNRG−1レセプターerbB3を発
現する細胞が、全キメラの末梢神経において検出され、しばしば数百を数える。
これらの細胞は、隣接断片でSCG10を発現しなかった。
【0091】 (分析) 従って、いくつかの移植したラット細胞は、シュワン細胞(ニュー
ロンではない)を形成することによって末梢神経で適切に分化した。総合すると
、これらの結果は、培養増殖の任意の干渉期間なしでフローサイトメトリーでの
単離の後、直接移植した場合、坐骨神経p75+0 -細胞が、インビボにおいて
ニューロンおよびグリアを生じ得ることを実証する。
【0092】 (実施例7) (坐骨神経での自己複製によるNCSC残存) (序論) 胎児坐骨神経中のNCSCの残存は、神経堤からの移動の前に有糸
分裂休止状態における生存に影響を与え得る。あるいは、細胞は、自己複製分裂
を受けることによって残存し得る。
【0093】 これらの可能性を識別するために、本発明者は、第1にE14.5坐骨神経か
らのp75+0 -細胞の細胞周期状態を試験した。p75+0 -細胞をFACSに
よって単離し、次いでHoechst 33342およびピロニンYで染色し、
そしてFACSによって再分析し、それらのDNAおよびRNA含量を決定した
。このアプローチを使用して、細胞を、細胞周期のG0、G1、またはS/G2
Mフェーズに当てはめ得る。分画されていないE14.5坐骨神経細胞(図2C
,2D)およびp75+0 -細胞(図2E,2F)の両方は、S/G2/M中の多
くの細胞およびG1中の少しの細胞または細胞なしで迅速な周期集団であると思
われる。分画されていない坐骨神経細胞の約10%は、S/G2/Mであり、一
方、同じ神経のp75+0 -細胞の約15%が、S/G2/M中である。
【0094】 ほとんどのNCSCが、インビボで自己複製するかどうかを直接アッセイする
ために、妊娠中のラットに、チミジンアナログBrdUを、E14.5(すなわ
ち、E13.75)の胎児坐骨神経の収穫18時間前に投与した。
【0095】 (自己複製アッセイ) 自己複製を、パップ(pup)のE14.5から坐骨
神経を収集する18時間前に、妊娠中のラットに5’−ブロモ−2’−デオキシ
ウリジン(BrdU,Sigma)を投与することによってインビボでアッセイ
した。50pg/g(体重)に等価なBrdU用量を、0.007MのNaOH
を含む1mLのD−PBSに溶解し、そして腹腔内に注射して、18時間、16
時間、14時間、4時間、および2時間で収穫した。さらに、14時間で収穫し
、ラットの正常な水を、2mg/mLのBrdUを含む水によって置換した。坐
骨神経を解剖した後、この細胞を上記のように染色し、そしてp75+0 -細胞
を培養中に保存した。標準的な培養条件下で3〜4時間洗浄した培養に細胞を接
着させた後に、この細胞を、BrdUに対する抗体で染色した。
【0096】 (結果) 分画されていない坐骨細胞およびFACSによって単離されたp7
+0 -細胞を、プレーティングし、固定し、そしてBrdUの取り込みのため
に染色した。80%の坐骨細胞およびp75+P0-細胞のほぼ90%を、インビ
ボで18時間パルスをかけてBrdUを取り込ませた(表6)。
【0097】
【表6】
【0098】 本発明者は、BrdU投与により、坐骨神経内の正常の展開を崩壊させない数
種の方法を確認した。BrdUからの未分化の坐骨神経細胞を投与し、そして正
常のラットは、FACSプロフィールおよびp75およびP0の発現の期間、識
別不可能であった。正常の坐骨神経由来の未分化細胞およびp75+0 -細胞(
図2D、2F)ならびにBrdUを投与されたラット(図2E)はまた、細胞周
期状態の期間とは異なった。BrdU投与されたラット由来の未分化細胞は、2
4時間のBMP2の負荷試験後にMASH−1を発現した細胞の数、または2週
間の培養後に形成されたN+S+Mコロニーの数という観点で、正常のラットと
は有意には異ならなかった。
【0099】 (分析) 胎児CNSおよび網膜中での発現を標識する早期レトロウイルス直
系により、ニューロンおよびグリアを含むクローン内での増殖ついての証拠を提
供した。しかし、幹細胞と方向付けられた前駆細胞とを識別するためのマーカー
の欠如は、このような増殖が、多能性前駆細胞の自己複製または拘束された前駆
細胞の拡大を反映したか否かを試験することを不可能としていた。特にレトロウ
イルス標識が展開能力を示さず、従って、最終的に血清細胞を同定し得ないこと
に注目すべきである(Tunerら、4 Neuron 833−845(19
90))。
【0100】 E14.5〜E17.5坐骨神経において本発明者らが同定したNCSCは、
数日前に神経堤を移動した神経堤細胞に由来する。これらの多能性細胞の残存は
、神経におけるそれらの自己複製を反映し得る。あるいは、これらの細胞は、イ
ンビボで休止状態で残存し得、それからこれらの細胞は、インビトロでの培養に
際して細胞周期に再び入るように誘導され得る。90%のp75+0 -細胞を、
E13.75からE14.5に投与されたBrdUの18時間(hr)パルスに
よって、インビボで標識化した。したがって、これらの細胞は、E14.5での
単離の前に、活性な分裂を受けていた。さらに、これらは、神経管からの移動の
前ではなく、神経へのそれらの到着の後にBrdUを取り込んだに相違ない。な
ぜなら、ラットにおける腹側外側経路に沿った体幹神経堤細胞の移動は、E11
.5〜E12.0までわたるようであるからである。ニワトリにおける脊柱脊髄
(dorsal spinal cord)からの後期移動(late−emi
grating)細胞は、脊髄神経節においてニューロンおよび衛星細胞に分化
するが、個々の細胞が多能性であること、またはそれが末梢神経に寄与したこと
の証拠は見られなかった。従って、E13.75でのBrdU投与の時点までに
、神経堤由来の細胞は、数日間、末梢神経において既に残存していたようである
。インビボでBrdUを取り込んだ細胞は、その後に単離された場合に、ニュー
ロン、シュワン細胞および筋線維芽細胞を生成するその能力を保持していた;さ
らに、これらの細胞は、E10.5神経管の24hr外植片から単離されたNC
SCと機能的に同一であった。
【0101】 したがって、これらの細胞がインビボで受けた分裂は、自己複製であったに相
違ない。
【0102】 これらのデータは、p75+0 -細胞が急速に分裂したことを実証するにおい
て、細胞周期分析と一致する。本発明者らは、このような細胞の86%がBMP
2チャレンジの24時間後にMASH−1を発現していたこと、そして標準的な
培養条件において、このような細胞によって形成された平均50%のコロニーが
ニューロン、シュワン細胞、および筋線維芽細胞を含んでいたこと(N+S+M
)を観察することによって、BrdU投与されたラット由来のp75+0 -集団
がNCSCについて富化されたまま持続したことを確認した。90%のp75+
0 -細胞がBrdU+であったので、これらのデータにより、単離後に多系統分
化活性を保持していた大半または全ての細胞が、インビボで予めBrdUを取り
込んでいたことが示される。これらのデータにより、NCSCがインビボで自己
複製分裂を受けることが示される。
【0103】 p75+0 -集団内のNCSCの頻度は、むしろ過小評価され得る。なぜなら
、NCSCは、p75+0 -集団においてまた観察された制限された前駆細胞よ
りも低い効率でコロニーを形成し得るからである。p75+0 -集団は、わずか
に60〜80%の純度であり得るが、この純度のレベルは、BrdU標識化によ
って自己複製を実証するに十分な量よりも多かった。なぜなら、ほぼ90%のp
75+0 -がBrdUを取り込んだからである(表6)。さらに、この90%の
BrdU細胞の算出は、標準的培養条件下でプレーティングされた細胞に基づく
。したがって、標準的培養において生存し得ない細胞は、BrdU分析を歪め得
ることは特に可能性が低い。
【0104】 本発明の1つ以上の実施形態の詳細が上記に付随して示されるが、本明細書中
に記載されるものと類似または等価な任意の方法および材料が、本発明の実施ま
たは試験において使用され得、好ましい方法および材料が記載されている。本発
明の他の特徴、目的、および利点が、この記載および特許請求の範囲から明らか
である。明細書および添付の特許請求の範囲では、その内容が明らかに他を示さ
ない限り、単一の形態が複数の参照を含む。他に規定されない限り、本明細書中
に使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者
によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中において引用される
すべての特許および刊行物を参考として援用する。
【0105】 前述の記載は、例示の目的のためのみに提示され、そして開示される厳密な形
態に本発明を制限することを意図せず、ここに添付された特許請求の範囲によっ
て制限されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 E14.5ラット坐骨神経細胞の一連の蛍光活性化細胞選別(FACS)プロ
フィールである。坐骨神経をトリプシンおよびコラゲナーゼ(図1Aおよび1C
)、またはヒアルロニダーゼおよびコラゲナーゼ(図1B)のいずれかで処理す
ることにより分離した。細胞は染色されていない(図1A)か、またはp75お
よびP0に対する抗体で染色されている(図1B、1C)かのいずれかである。
使用した濃度では、いずれの抗体も、終脳または胎仔肝臓細胞についてFACS
により試験した場合、非特異的染色を示さなかった。表現型で規定した細胞サブ
セットを図1Bおよび1Cに示す。
【図2】 FACSによる、分離されていないp75+0 -坐骨神経細胞の細胞周期分析
の結果である。各細胞の集団を、DNA含量を示すためにHoechst333
40で、そしてRNA含量を示すためにピロニンYで染色した。各パネルにおい
て、左下の象現は細胞周期のG0期の細胞(2n DNA、低RAN含量)を含
み、左上の象現はG1期の細胞(2n DNA、より高いRNA含量)を含み、
そして右上の象現はS期,G2期、およびM期の細胞(>2n DNA、高RN
A含量)を含む。S/G2/M期の生存細胞の割合が示されている。図2Aは成
体ラット脾臓細胞(休止コントロール)を示す。図2BはE14.5ラット終脳
細胞(急速に細胞周期を進行しつつあるコントロール集団)を示す。図2Cおよ
び2Dは、2匹の異なるラットからの分離されていないE14.5ラット坐骨神
経細胞を示す。図2Eおよび2Fは、同じ2匹のラットからのp75+0 -坐骨
神経細胞を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZW ),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU, TJ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ, BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,C R,CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI ,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID, IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,K Z,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA ,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ, PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,S K,SL,TJ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG ,US,UZ,VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 モリソン, シーン アメリカ合衆国 カリフォルニア 91106, パサデナ, アーデン ロード 1196 Fターム(参考) 4B065 AA90X AA93X BA25 BB23 BB32 BB34 BD14 BD45 CA44

Claims (35)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 神経幹細胞について無培養細胞の集団を富化する方法であっ
    て、以下: (a)インタクトな組織を分離することによって、神経幹細胞を含む無培養細
    胞の集団を得る工程、 (b)該集団と試薬の組合せとを接触させる工程であって、ここで該組合せに
    おける各試薬は、神経幹細胞ポジティブマーカーまたは神経幹細胞ネガティブマ
    ーカーのいずれかに対して選択的に結合する、工程;および (c)ポジティブマーカーに選択的に結合する試薬に結合する細胞、もしくは
    ネガティブマーカーに選択的に結合する試薬に結合しない細胞、またはその組合
    せを選択する工程であって、ここで該選択された細胞が、前記無培養細胞の集団
    と比較して神経幹細胞において少なくとも50%まで富化される、工程、 を包含する、方法。
  2. 【請求項2】 前記神経幹細胞が、神経堤幹細胞(NCSC)である、請求
    項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記神経幹細胞が、中枢神経系(CNS)神経幹細胞である
    、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記選択された細胞が、少なくとも50%が神経幹細胞であ
    る、請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 工程(b)における前記試薬が抗体である、請求項1に記載
    の方法。
  6. 【請求項6】 ポジティブマーカーに選択的に結合する前記試薬が、抗p7
    5(低アフィニティーニューロトロフィンレセプター)抗体である、請求項1に
    記載の方法。
  7. 【請求項7】 ネガティブマーカーに選択的に結合する前記試薬が、抗P0
    抗体である、請求項1に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記無培養細胞の集団が神経堤から得られる、請求項1に記
    載の方法。
  9. 【請求項9】 前記無培養細胞の集団が、分離された神経組織である、請求
    項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記無培養細胞の集団が、分離された末梢神経である、請
    求項1に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記選択する工程がフローサイトメトリーによる、請求項
    1に記載の方法。
  12. 【請求項12】 以下: (d)前記選択された細胞を宿主に移植する工程 をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  13. 【請求項13】 神経幹細胞について無培養細胞の集団を富化する方法であ
    って、以下: (a)神経幹細胞の画分を含む細胞の集団とp75(低アフィニティーニュー
    ロトロフィンレセプター)に特異的に結合する試薬とを接触させる工程;および (b)p75+細胞を選択する工程であって、ここで該選択されたp75+細胞
    が、選択されていない細胞の集団と比較して、少なくとも50%が神経幹細胞で
    あるように富化される、工程、 を包含する、方法。
  14. 【請求項14】 以下: (c)前記選択されたp75+細胞とP0抗原に特異的に結合する試薬とを接触
    させる工程;および (d)P0 -細胞を選択する工程であって、ここで該選択されたp75+0 -
    胞は、神経細胞の集団と比較して、神経幹細胞の画分において富化される、工程
    、 をさらに包含する、請求項13に記載の方法。
  15. 【請求項15】 神経幹細胞を単離する方法であって、以下: (a)神経幹細胞を含む無培養細胞の集団と試薬の組合せとを接触させる工程
    であって、ここで該組合せにおける各試薬は、神経幹細胞ポジティブマーカーま
    たは神経幹細胞ネガティブマーカーのいずれかに対して選択的に結合する、工程
    ; (b)ポジティブマーカーに選択的に結合する試薬に結合する細胞、もしくは
    ネガティブマーカーに選択的に結合する試薬に結合しない細胞、またはその組合
    せを選択する工程; (c)少なくとも1つの選択された細胞を、神経幹細胞の増殖を支持する培養
    培地に導入する工程;および (d)該培養培地において該選択された細胞を増殖させる工程であって、ここ
    で増殖した子孫細胞は、単離された神経幹細胞から得られる、工程、 を包含する、方法。
  16. 【請求項16】 神経幹細胞の増殖を支持する前記培養培地が、ニワトリ胚
    抽出物を含む無血清培地を含む、請求項15に記載の方法。
  17. 【請求項17】 以下: (e)ニューロン、グリア、筋線維芽細胞およびそれらの組合せからなる群か
    ら選択される分化した細胞を含む細胞培養物を生成するために、前記増殖した子
    孫細胞を分化させる工程、 をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
  18. 【請求項18】 以下: (e)前記増殖した子孫細胞を宿主に移植する工程 をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
  19. 【請求項19】 以下: (e)前記増殖した子孫細胞と生物学的因子とを接触させる工程;および (f)該増殖した子孫細胞に対する該生物学的因子の効果を決定する工程、 をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
  20. 【請求項20】 以下: (e)前記増殖した子孫細胞を、生物学的因子を含む第2培養培地において分
    化するように誘導する工程;および (f)該分化した細胞に対する該生物学的因子の効果を決定する工程、 をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
  21. 【請求項21】 以下: (e)前記増殖した子孫細胞を、生物学的因子を含む第2培養において分化す
    るように誘導する工程; (f)該分化した細胞と該生物学的因子とを接触させる工程;および (g)分化した前記神経細胞に対する該生物学的因子の効果を決定する工程、 をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
  22. 【請求項22】 インビトロ細胞培養組成物であって、以下: (a)請求項1に記載の方法に従って神経幹細胞を富化した無培養細胞の集団
    ;および (b)神経幹細胞の増殖を支持する培養培地 を含む、インビトロ細胞培養組成物。
  23. 【請求項23】 前記無培養細胞の集団が分離された神経に由来する、請求
    項22に記載の組成物。
  24. 【請求項24】 前記無培養細胞の集団が一次末梢神経系組織に由来する、
    請求項22に記載の組成物。
  25. 【請求項25】 前記無培養細胞の集団が一次中枢神経系組織に由来する、
    請求項22に記載の組成物。
  26. 【請求項26】 前記無培養細胞の集団が抗p75(低アフィニティーニュ
    ーロトロフィンレセプター)抗体を使用する免疫選択によって誘導される、請求
    項22に記載の組成物。
  27. 【請求項27】 前記無培養細胞の集団が抗P0抗体を使用する免疫選択に
    よって誘導される、請求項22に記載の組成物。
  28. 【請求項28】 前記無培養細胞の集団が少なくとも80%のp75+細胞
    を有する、請求項22に記載の組成物。
  29. 【請求項29】 前記神経幹細胞がラット由来である、請求項22に記載の
    組成物。
  30. 【請求項30】 前記神経幹細胞がニワトリ由来である、請求項22に記載
    の組成物。
  31. 【請求項31】 前記神経幹細胞がヒト由来である、請求項22に記載の組
    成物。
  32. 【請求項32】 前記培養培地がニワトリ胚抽出物を含む無血清培地を含む
    、請求項22に記載の組成物。
  33. 【請求項33】 前記培養培地が指令因子を含む、請求項22に記載の組成
    物。
  34. 【請求項34】 前記指令因子がTGF−βスーパーファミリーの増殖因子
    である、請求項33に記載の組成物。
  35. 【請求項35】 前記指令因子がニューレグリン(NRG−1)である、請
    求項33に記載の組成物。
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