JP2002534444A - 植物および動物を起源とするリン脂質の食事療法での新規な使用 - Google Patents

植物および動物を起源とするリン脂質の食事療法での新規な使用

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 植物および動物を起源とするリン脂質の食事療法での新規な使用。 【解決手段】 n-3系不飽和脂肪酸を豊富に含む動物を起源とするリン脂質の、気分の向上または回復または鬱状態、慢性疲労症候群および無力症治療用栄養剤および/または医薬の製造での使用。このリン脂質はn-3系不飽和脂肪酸を豊富に含む植物油および/または魚油および/またはビタミンと組合せることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】 本発明は生物学分野、特に治療および食事療法に関するものである。 本発明は特に、気分、神経疲労および攻撃性に作用する食事療法剤（preparat
ion dietetique、栄養剤）または医薬組成物での天然リン脂質の使用に関するも
のである。
【０００２】 本発明は特に、活性成分としてドコサヘキサエン酸（DHA）を豊富に含む動物
起源のリン脂質を含み、さらに、必要に応じてn-3系脂肪酸を豊富に含む植物油
または動物性油あるいは賦形剤または無毒の不活性担体を追加または混合して含
むことを特徴とするn-3系脂肪酸の不足を克服するための新規な栄養剤または医
薬組成物の使用に関するものである。
【０００３】 これまでの疫学的研究から、神経疲労、攻撃性および鬱状態がn-3系脂肪酸の
不足、すなわちその主成分であるDHAとその前駆体であるα-リノレン酸（18：3
n-3）の不足に関連することが明らかになっている(J.R HIBBELN、食餌性ポリ不
飽和脂肪酸と鬱状態、Am.J.臨床栄養学.第62号、1〜9頁、1995年)。
【０００４】 一方、西欧で大量に消費される植物油に存在するリノール酸（18.2 n-6）であ
るn-6系脂肪酸を過剰に摂取すると日々のストレスおよび鬱状態に対して非常に
弱くなると考えられる。逆に、DHAとn-3脂肪酸とを豊富に含む魚を大量に消費す
る社会では鬱状態のレベルが低いように思われる。日本の漁村にはうつ病が事実
上存在しない（K.ハセガワ、晩年のうつ病の疫学的研究、J. 情動障害S1、１〜
６頁、1985年）。別の研究では、欧米のうつ病の割合は台湾の10倍以上であるこ
とがわかっている。西欧人は魚の消費量が少なく、n-6脂肪酸を多量に含み、n-3
脂肪酸が不足している植物油（トウモロコシ油、ヒマワリ油および落花生油）を
大量に消費するのに対して、台湾人はn-3脂肪酸を豊富に含む魚およびダイズ油
を消費している（重いうつ病の変化率：国家間の比較、JAMA 268、1098〜3105頁
、1992年）。
【０００５】 これは産後の鬱状態がDHA血漿濃度の大幅な低下によって起こるという知見で
も裏付けられる（M.GITLIN、女性性機能に関連する精神医学的症候群、Am.J.精
神医学第46号、1413〜1422頁、1989年）。 同様に、うつ病患者の赤血球のn-3系脂肪酸含有率が低いことが複数の著者に
よって明らかにされている（M.PEET、うつ病患者の赤血球膜中のω３脂肪酸濃度
の不足、生物学精神医学第43号、315〜319頁、1998年）。
【０００６】 代謝の点では、n-3脂肪酸が不足すると動物のドーパミン作動性およびセロト
ニン作動性の神経伝達物質が種々攪乱れる結果、行動性に問題が生じることがわ
かっている（S.DELION、「慢性的食餌性αリノレン酸不足はラットのドーパミン
作動性およびセロトニン作動性の神経伝達物質を変化させる」、J.栄養学、2466
〜2476頁、1994年）。
【０００７】 従って、DHAを豊富に含む動物起源のリン脂質の形のn-3脂肪酸を食物として摂
ることはうつ病の生理学的治療の最良の方法の1つであるといえる（M.MAES、「
脂肪酸、サイトカインと重いうつ病」、生物学精神医学、第43号、313〜314頁、
1998年）。
【０００８】 フランス国特許第2,721,516号には、老化の兆候、特に痴呆、脳低酸素症、神
経性老化を補償または遅くするための、ブタの脳から抽出した脳リン脂質を基剤
とする複合体の食事療法および治療での新規な使用が記載されている。この特許
は特にエステル官能基（ホスホグリセリド）またはエーテル官能基（プラスマロ
ゲン）を介して脂肪酸の2つの鎖に結合されたホスホグリセリドの使用に関する
ものである。 この脳のリン脂質は他のリン脂質、特にダイズのリン脂質とは非常に異なる極
めて特異的な特性、脂肪酸分布を有するということががわかっている。
【０００９】
【発明が解決する課題】 本出願人は、行動性、気分および感情の分野での脳リン脂質の上記投与量より
もはるかに少ない量の新規な使用法を見出した。
【００１０】
【課題を解決する手段】
本発明は、n-3系不飽和脂肪酸を豊富に含む動物を起源とするリン脂質の、気
分の向上または回復または鬱状態、慢性疲労症候群および無力症治療用栄養剤お
よび/または医薬の製造での使用にある。 本発明の使用は高齢者たけではなく、気分の問題をかかえる中年の患者（30〜
60歳、特に40〜50歳）および機能亢進症候群に悩む若い患者にも関するものであ
る。本発明の脳リン脂質をべースにした新規組成物はこれらの症例で精神・神経
疲労の症候群には効果がないが、心理的なバランス平衡を回復させる上でなりの
効果がある。本発明組成物にはn-3系脂肪酸の他の供与源、例えばn-3系脂肪酸を
豊富に含む植物油または動物油、例えばアマニ油、堅果油、アブラナ油、ルリヂ
サ油、オオマツヨイグサの油または魚油、例えばマグロ油、イワシ油、オヒョウ
油、タラ油等を追加することができる。
【００１１】 本発明組成物にはビタミン、特にビタミンB群すなわちビタミンB1、ビタミンB
2、ビタミンB6、ビタミンF、葉酸、ニコチンアミド、パントテン酸、これらの誘
導体または塩を追加することができる。 本発明組成物は脳から抽出した特異なリン脂質を10〜300mg含み、消化系経路
で一日当たり１〜４回投与される。本発明組成物は無毒で不耐現象が現れない。
【００１２】 本発明組成物は未被覆の錠剤または被覆錠剤の形で消化管経路の投与に適した
賦形剤または希釈剤をさらに含み、タブレット、トローチ、ピル、粉末、ゼラチ
ン質カプセル、カプセルまたはこれらに類似の顆粒または香料付き粉末または未
香料粉末として用いられる。軟質カプセルの場合には、脳リン脂質を魚油中に分
散または懸濁させることができる。 これらの投与経路に適した賦形剤または希釈剤の例としては経口投与用には炭
酸カルシウム、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、アルミナ、コロイド
シリカ、カオリン、クレー、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウムまたは酸化鉄等
の不活性無機物が挙げられ、液状投与用には水、水溶液または水性油が挙げられ
る。
【００１３】 不活性担体は澱粉、デキシトリン、ラクトース、セルロース、合成セルロース
誘導体、アルギン酸塩、カラゲーナン、カゼイン、脂肪酸、蝋または樹脂等の有
機系のものにすることができる。 食事療法剤の担体は栄養価を有していてもよく、カゼイン、粉乳、ブドウ糖、
マルトデキストリン等のカロリー源にすることもできる。
【００１４】
【実施例】実施例Ｉ ブタの脳リン脂質のカプセル 脳起源のリン脂質 300g ラクトース 100g リン酸三カルシイウム 140g カゼイン酸カルシウム 25g ステアリン酸マグネシウム 5g （カプセル1000個当たり）
【００１５】実施例II ブタの脳リン脂質の糖衣ピル 脳起源のリン脂質 10g ビタミンB1 0.5g ビタミンB6 0.5g 炭酸マグネシウム 10g 炭酸カルシウム 100g ラクトース 100g コーンスターチ 50g ステアリン酸カルシウム 20g （糖衣ピル1000個当たり）
【００１６】実施例III ブタの脳リン脂質の軟質カプセル PLC（ブタの脳のリン脂質） 100g 魚油 100g （軟質カプセル1000個当たり）
【００１７】実施例IV 本発明組成物の臨床試験 慢性疲労および気分障害を伴う無力症を訴える患者を対象にして、予備的知見
後に偽薬対照二重盲検によって臨床試験を実施した。この試験は30〜60歳の成人
からなる２つの類似した群に対して多中心で行なった。実験期間は2ヶ月で、活
性成分として特異的な脳リン脂質を糖衣ピル1個当たり10mgしか含まない糖衣ピ
ルか、偽薬の糖衣ピルを毎日４個服用させた。
【００１８】 実験群 対照群 患者67名 患者65名 女性47名、男性20名 女性38名、男性27名 平均年齢：46.7歳 平均年齢：44.6歳 平均体重：65.08kg 平均体重：64.7kg 文化レベル：1.63 文化レベル：1.85 （1〜3） （1〜3）
【００１９】 2つの群の間には同じ行動性の分布（すなわち気分、情動性、精神的問題の強
度および性質の分布）が見られた。これらは主観的な判定基準なので、患者およ
び医者の答えた質問表を合わせて評価した。得られた結果の対症分析を下記に要
約した５つの項目で分類した。
【００２０】判定基準の向上率 実験群 対照群 （リン脂質） （偽薬） 精神的機能（知力） 77.2％ 32％ 行動（疲労、活力） 80.3％ 43.2％ 気分（鬱状態） 74.2％ 52.6％ 情動性（自閉、孤立） 75％ 41.9％ 神経性小疾患（疲れ、めまい） 76％ 29.7％
【００２１】 全ての結果は有意である。これら全ての結果からDHAを豊富に含む特定の脳リ
ン脂質を投与した群は偽薬を投与した群に比較して統計的に非常に向上があるこ
とがわかる。耐性は極めて良好であった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 ＦＩ テーマコート゛(参考） Ａ６１Ｋ 35/78 Ａ６１Ｐ 25/24 Ａ６１Ｐ 25/24 Ａ６１Ｋ 31/202 // Ａ６１Ｋ 31/202 37/22 Ｆターム(参考） 4C084 AA17 CA17 CA21 CA28 MA01 MA34 MA37 MA52 NA14 ZA122 4C086 AA01 AA02 DA41 MA01 MA04 MA05 MA35 MA37 MA52 NA14 ZA02 ZA11 ZA12 ZC54 4C087 AA01 BB28 BB45 MA02 MA35 MA37 MA41 MA43 MA52 NA14 ZA12 4C088 AB12 AB15 AB41 AB61 BA08 MA03 MA35 MA37 MA41 MA43 MA52 NA14 ZA12 4C206 AA01 AA02 DA05 MA01 MA55 MA57 MA72 NA14 ZA02 ZA11 ZA12 ZC54

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 n-3系不飽和脂肪酸を豊富に含む動物を起源とするリン脂質
    の、気分の向上または回復または鬱状態、慢性疲労症候群および無力症治療用栄
    養剤および/または医薬の製造での使用。
  2. 【請求項２】 n-3系不飽和脂肪酸を豊富に含む動物起源のリン脂質の、若
    年患者の機能亢進症候群を緩和するための栄養剤および/または医薬の製造での
    使用。
  3. 【請求項３】 動物起源のリン脂質としてブタの脳のリン脂質のみを含む請
    求項１または２に記載の使用。
  4. 【請求項４】 動物起源のリン脂質に堅果油、ダイズ油、アブラナ油、アマ
    ニ油、ルリヂサ油およびオオマツヨイグサ油の中から選択されるn-3系不飽和脂
    肪酸を豊富に含む植物油を追加する請求項１〜３のいずれか一項に記載の使用。
  5. 【請求項５】 動物起源のリン脂質にn-3系脂肪酸を豊富に含む魚油を追加
    する請求項１〜３のいずれか一項に記載の使用。
  6. 【請求項６】 栄養剤および/または医薬がビタミンをさらに含む請求項１
    〜５のいずれか一項に記載の使用。
  7. 【請求項７】 栄養剤および/または医薬がビタミンB群を含む請求項６に記
    載の使用。
  8. 【請求項８】 栄養剤および/または医薬が消化剤投与に適した希釈剤また
    は賦形剤またはキャリアをさらに含む請求項１〜７のいずれか一項に記載の使用
    。
  9. 【請求項９】 栄養剤および/または医薬が単位投与量当たり10〜300mgの脳
    のリン脂質を含む請求項１〜８のいずれか一項に記載の使用。
  10. 【請求項１０】 栄養剤が栄養価を有する担体またはカロリー源となる担体
    をさらに含む請求項１〜９のいずれか一項に記載の使用。
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