JP2002526508A - フィブリル - Google Patents

フィブリル

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Abstract

(57)【要約】 実質的に他のタンパク質を含まないアミロイドフィブリル。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明はアミロイドフィブリル、それらの調製のための工程およびそれらの使
用に関する。本発明は特に、天然のアミロイドフィブリルおよびタンパク質を含
む非天然のアミロイドフィブリルの両方、それらの調製、ならびに、たとえばプ
ラスチック、製薬上活性なタンパク質の徐放性形態あるいは製造のための材料と
して、あるいは製薬上活性な化合物の送達、電子工学あるいは触媒作用における
それらの使用に関する。
【0002】 本文中で使用する「タンパク質」は、1又はそれ以上のタンパク質、タンパク
質断片、ポリペプチドあるいはペプチドを意味する。タンパク質はフィブリルを
形成することができるあらゆるタンパク質であり、製薬上活性なタンパク質であ
ってもよい。
【0003】 アミロイドーシスは、細胞内あるいは細胞外空隙での不溶性原線維タンパク質
物質の蓄積を特徴とするタンパク質のミスフォールディング(misfoldi
ng)疾患の群である。通常は可溶性のタンパク質あるいはそれらの前駆物質が
この不溶性形態で沈着すると、組織機能不全と細胞死を導くと考えられている。
現在までに多くの異なるタンパク質とペプチドがアミロイド沈着物中で同定され
ている。これらは、アルツハイマー病におけるAβペプチド、伝染性海綿状脳障
害におけるプリオンタンパク質、II型糖尿病における膵島関連ポリペプチド、
および全身性アミロイドーシスにおける他の変異体、トランケートされたあるい
はミスプロセシングされたタンパク質を含む(S.Y.TanとM.B.Pep
ys(1994)Histopathology 25,403−414および
J.W.Kelly(1996)Curr.Op.Struct.Biol.6
,11−17)。
【0004】 in vivoでアミロイドフィブリルを形成することが知られているタンパ
ク質は、明らかな配列上あるいは構造上の類似性を持たないと思われ、アミロイ
ド形成前駆物質の可溶性折りたたみが既知である場合、それらは二次、三次およ
び四次構造要素の範囲にわたっている。この多様性にもかかわらず、すべてのア
ミロイドフィブリルが長く、直線で、非分枝性であり、直径7から12nmであ
ることを示唆する一連の証拠があり、そしてそれらすべてが交差−β回折パター
ンを示す。タンパク質分子は、フィブリルの長軸と垂直の方向に個別あるいは複
数のβ鎖を構成し、互いにねじれ合ってフィブリルの方向に広がる長いβシート
を形成している。
【0005】 アミロイド形成タンパク質が可溶性球状形態から、疾患関連フィブリルが示す
交差βコンフォメーションへの変換を生じる機序はまだ詳細には解明されていな
い。それにもかかわらず、アミロイド形成に関連する立体配座再構築は詳しく記
述されている(J.W.Kelly(1997)Structure 5,59
5−600)。トランスサイレチン、リゾチームおよびIg軽鎖のアミロイド原
性変異体の一部に関する試験は、アミロイドの沈着を導く配座変化の過程を検討
している。少なくとも最後の3つのタンパク質についてのアミロイド形成は、タ
ンパク質の部分的に構造化された形態から始まると思われる。
【0006】 本発明は、これまで疾患に関連づけられてきた天然のアミロイドフィブリル、
ならびに種々の有用な適用を有すると考えられるタンパク質を含む、非天然のア
ミロイドフィブリルに関する。フィブリルは、たとえばプラスチックとしてある
いは製薬上活性なタンパク質の徐放性形態として、あるいは製薬上活性な化合物
の送達、電子工学あるいは触媒作用において使用しうる。 第1の態様では、本発明は、実質的に他のタンパク質を含まないアミロイドフ
ィブリルを提供する。
【0007】 ひとつの実施態様では、フィブリルは、pH2.0でウシホスファチジルイノ
シトール3−キナーゼのp85αサブユニットのSH3ドメインから形成される
アミロイドフィブリル以外の他のタンパク質を実質的に含まないアミロイドフィ
ブリルである。
【0008】 さらなる実施態様では、フィブリルは、ウシホスファチジルイノシトール3−
キナーゼのp85αサブユニットのSH3ドメインから形成されるアミロイドフ
ィブリル以外の他のタンパク質を実質的に含まないアミロイドフィブリルである
【0009】 アミロイドフィブリルは天然あるいは非天然でありうる。本発明の天然のアミ
ロイドフィブリルは、たとえばアルツハイマー病に関連するAβペプチド、伝染
性海綿状脳障害に関連するプリオンタンパク質、II型糖尿病に関連する膵島関
連ポリペプチド、老年性全身性アミロイドーシスに関連するトランスサイレチン
およびその断片、家族性アミロイド多発ニューロパシーに関連するトランスサイ
レチン変異体およびその断片、あるいは全身性アミロイドーシスに関連する他の
変異体又はトランケートされた又はミスプロセシングされたタンパク質のフィブ
リルを含む。
【0010】 第二の態様では、本発明は、タンパク質を含む非天然のアミロイドフィブリル
を提供する。
【0011】 ひとつの実施態様では、フィブリルは、pH2.0でウシホスファチジルイノ
シトール3−キナーゼのp85αサブユニットのSH3ドメインから形成される
アミロイドフィブリル以外の他のタンパク質を含む、非天然のアミロイドフィブ
リルである。
【0012】 さらなる実施態様では、フィブリルは、ウシホスファチジルイノシトール3−
キナーゼのp85αサブユニットのSH3ドメインから形成されるアミロイドフ
ィブリル以外のタンパク質を含む、非天然のアミロイドフィブリルである。
【0013】 もうひとつの実施態様では、フィブリルは、ウシホスファチジルイノシトール
3−キナーゼのp85αサブユニットのSH3ドメインと、ウシホスファチジル
イノシトール3−キナーゼのp85αサブユニットのSH3ドメインの誘導体又
はアミノ酸変異体、ヒト筋肉アシルホスファターゼ又はその誘導体又はアミノ酸
変異体、ウシインスリン又はその誘導体又はアミノ酸変異体、CspB(枯草菌
、Bacillus stubtilisの主要低温ショックタンパク質)の最
初の2本(CspB−1)、最初の3本(CspB−2)又は最後の2本(Cs
pB−3)のβ鎖に対応するタンパク質又はその誘導体又はアミノ酸変異体、な
らびに野生型ヒトカルボキシペプチダーゼA2(WT−ADA2h)の活性化ド
メイン又はその誘導体又はアミノ酸変異体から選択される少なくとも1個のタン
パク質を含む、非天然のアミロイドフィブリルである。
【0014】 さらなる実施態様では、フィブリルは、ウシホスファチジルイノシトール3−
キナーゼのp85αサブユニットのSH3ドメインの誘導体又はアミノ酸変異体
、ヒト筋肉アシルホスファターゼ又はその誘導体又はアミノ酸変異体、ウシイン
スリン又はその誘導体又はアミノ酸変異体、CspB(枯草菌、Bacillu
s stubtilisの主要低温ショックタンパク質)の最初の2本(Csp
B−1)、最初の3本(CspB−2)又は最後の2本(CspB−3)のβ鎖
に対応するタンパク質又はその誘導体又はアミノ酸変異体、あるいは野生型ヒト
カルボキシペプチダーゼA2(WT−ADA2h)の活性化ドメイン又はその誘
導体又はアミノ酸変異体を含む、非天然のフィブリルである。
【0015】 本発明のフィブリルは、非天然のタンパク質を含みうる。タンパク質は、たと
えばグリコシル化されたタンパク質あるいは修飾アミノ酸残基を含むタンパク質
のような化学修飾されたタンパク質、製薬上活性な化合物、金属、あるいは1又
はそれ以上の反応物に結合することができるチオール基のような官能基でありう
る。タンパク質は、たとえばウシホスファチジルイノシトール3−キナーゼのp
85αサブユニットのSH3ドメイン(PI3−SH3)の誘導体又はアミノ酸
変異体、ヒト筋肉アシルホスファターゼ、ウシインスリン、CspB(枯草菌、
Bacillus stubtilisの主要低温ショックタンパク質)の最初
の2本(CspB−1)、最初の3本(CspB−2)又は最後の2本(Csp
B−3)のβ鎖に対応するタンパク質、あるいは野生型ヒトカルボキシペプチダ
ーゼA2(WT−ADA2h)の活性化ドメインである。
【0016】 本発明のフィブリルは、典型的には長く、直線で非分枝性である。フィブリル
の直径は一般に1から20nm、好ましくは5から15nm、より好ましくは7
から12nmである。フィブリルの直径は適当なタンパク質を選択することによ
って変化させうる。
【0017】 本発明のフィブリルの一部は、様々な適用において有用と考えられる中空コア
を含むと思われる。
【0018】 本発明のフィブリルは、タンパク質、典型的には1又はそれ以上の一本鎖ポリ
ペプチドを含む溶液を調製することによって得られ、かかる溶液はタンパク質の
核形成とフィブリルの成長が許容される時間にわたって起こる状態にあって、核
形成とフィブリルの成長が生じることを可能にする。
【0019】 本文中で使用する「核形成」は、フィブリルの形成を導く工程の開始を意味す
る。溶液からのフィブリルの形成は、連続的に、タンパク質の自己結合、凝集物
の形成、そしてフィブリルの成長を含む。この様に、好ましくは、開始溶液は正
に不安定な状態にある。核形成と成長はゆっくりとした工程であり、条件は通常
、フィブリルの形成が数時間あるいは数日間にわたって起こるように選択される
。核形成が急速に起こりすぎる場合、しばしばフィブリル形成に有害な作用を及
ぼすと考えられる。
【0020】 核形成は、下記で論じるように溶媒、濃度、塩、リガンド、温度およびpHの
変化を含めた様々な手段によって生じさせることができる。たとえば、好ましく
は4から7Mの濃度での尿素の添加によって核形成を生じさせうる。振とう、撹
拌、およびある種の表面、たとえばガラス又はプラスチック容器の表面への暴露
は局所的な変性を生じさせることができ、それによってフィブリル形成を開始さ
せうる。
【0021】 タンパク質を含む溶液は、核形成が起こりうるいかなる溶媒あるいは溶媒の混
合物も含みうる。たとえば、溶液はDMSO、ジオキサンおよび/あるいは水を
含みうる。好ましくは溶液は水溶液である。
【0022】 核形成とフィブリルの成長を促進しうる1又はそれ以上の有機溶媒を溶液に組
み込むことができる。天然のタンパク質の場合、条件は、典型的には自己結合が
起こりうる条件を保持しながら、少なくとも部分的にタンパク質を変性させるよ
うに選択される。有機溶媒は一般に水混和性であり、好ましくはアルコールある
いはアセトニトリルのような脂肪族ニトリルである。アルコールは、典型的には
、たとえば1又はそれ以上のハロゲン原子、特にフッ素原子によって置換された
又は置換されていないC1−6アルカノールである。例としては、メタノール、
エタノール、プロパノールあるいはブタノール、あるいはトリフルオロエタノー
ル又はヘキサフルオロイソプロパノールのようなフッ素化アルコールを含む。好
ましくはアルコールはトリフルオロエタノールである。アルコールの濃度は、典
型的には5から40%v/v、好ましくは約25%v/vである。脂肪族ニトリ
ルの濃度は広い範囲内で変化しうるが、典型的には5から95%v/vである。
【0023】 溶液中のタンパク質の濃度はいかなる意味においても制限されないが、核形成
が起こりうることを絶対条件とする。一般には濃度は0.1mMから10mMで
ある。好ましくはタンパク質の濃度は約1mMである。
【0024】 溶液の温度は一般に0℃から100℃である。好ましくは温度は0℃から70
℃、より好ましくは0℃から40℃、最も好ましくは5℃から30℃である。
【0025】 溶液のpHは核形成に適したあらゆるpHである。好ましくは溶液は酸性であ
り、より好ましくは溶液のpHは0.5から6.5である。
【0026】 溶液に、たとえばあらかじめ形成したタンパク質の粒子を接種することができ
、これにより工程を大幅にスピードアップすることができる。
【0027】 本発明のフィブリルを、溶媒の遠心分離、濾過あるいは蒸発によって適切に単
離する。次にこのようにして得たフィブリルを洗浄し、乾燥することができる。
【0028】 本発明のフィブリルは、インスリン、カルシトニン、アンギオスタチンあるい
はフィブリノゲンのような製薬上活性なタンパク質から形成されうる。それ故当
該フィブリルは、in vivoでのフィブリルの溶解度が低いことにより、そ
のようなタンパク質の徐放性形態として使用できる。
【0029】 あるいは、本発明のフィブリルは、製薬上活性な化合物の送達において使用し
うる。それらは、たとえば製薬上活性な化合物を組み込むように化学修飾された
タンパク質を含むことができ、あるいは製薬上活性な化合物が、たとえば水素結
合によって中空コアを持つフィブリルの内部に保持されていてもよい。本発明の
フィブリルを用いて送達しうる製薬上活性な化合物は、たとえばシスPtのよう
な抗癌剤、抗生物質、抗炎症薬および鎮痛薬を含む。
【0030】 本発明のフィブリルは、1又はそれ以上の反応物に結合することができる1又
はそれ以上の官能基を含みうる。官能基はフィブリルのタンパク質中に天然に生
じるか、あるいは化学修飾によって組み込むことができる。反応物は、中空コア
を持つフィブリルの内部あるいはフィブリルの外部に集めることができる。
【0031】 本発明のフィブリルは、たとえば糖尿病、血液凝固疾患、癌および心臓病の治
療において使用しうる。
【0032】 本発明のフィブリルは、銅、銀あるいは金のような金属を含むことができ、電
子工学において有用と考えられるワイヤを形成することができる。
【0033】 本適用のフィブリルはまたプラスチックとしても使用でき、あるいは構造物に
することもできる。
【0034】 下記のような図を参照しながら、単なる例として、本発明をさらに例示する: 図1(a)−1(d)はSH3アミロイドの陰性染色電子顕微鏡画像を示した
ものであり、疾患関連フィブリルで認められるものと同様の一連の形態を示す。
図1(e)は低温EM画像を示し、(f)は3D再構築のために使用した、明ら
かならせんねじれを持つ(d)で見られた形態の回折パターンを示す。層状の線
の間隔はほぼ60nmであり、二重らせんの非対称ユニットである。様々なリボ
ンと平滑なフィブリルがpH2(a,b)とpH2.66(c)で形成された。
pH2で形成されるらせん線維は、(d)の陰性染色および(e)の低温EMに
よって認められる。
【0035】 図2は、それぞれ58および61nmのロングリピートについてのクラス平均
(a、e)、3D再構築の再投影(b、f)、ID投影(c、g)および再投影
の回折パターン(d,h)を示す。(この図においてのみ、線維軸は水平である
)。〜3nmの周期性を示す(a)の領域を拡大し、線で明示している。入力ク
ラス平均と3Dマップの間(aとb、eとfを比較する)、また単一フィブリル
と再投影マップの回折パターン(g、h)の間での良好な一致は、再構築手順の
有効性を裏付けている。線投影の比較(c、g)は、3Dマップが、線維を連続
らせんとして処理した場合よりも、2.7nmのサブユニットリピートを再構築
手順において使用したときにより良好な入力画像に適合することを示している。
【0036】 図3は、61nm(a、c)と58nm形態(b、d)の3D再構築と外形密
度断面図を示す。フィブリルは、aとcでは表面描写として、またcとdでは外
形密度横断面として示されている。2つの独立した再構築は非常に似通っており
、どちらも中空コアの周囲に巻きついた4つのプロトフィラメントと突出した縁
領域を示している。2.7nmのサブユニットリピートは縁構造で最も著明であ
る。
【0037】 図4はフィブリル中のポリペプチドの折りたたみのモデリングを示す。図4(
a)は線維の横断面を示し、図4(b)は1個のプロトフィラメントの側面図を
示す。PI3−キナーゼSH3構造から誘導したβシートを、βサンドイッチ折
りたたみを開き、鎖を方向づけて強化したあと、マップに適合させた。ポリペプ
チド配列の残りの領域は不連続の点として示されており、多くの残基が存在する
がコンフォメーションは存在しないことを示唆している。(a)の図面の角度で
は、右上方および左下方のプロトフィラメントは図の水平面より下で内向きに屈
曲しており、適合性の度合が低くなっている。(b)の側面図は、βシートが密
度に良好に適合することを示している。
【0038】 図5Aは、線維形成過程の間に得られた筋肉アシルホスファターゼの遠紫外線
円偏光二色性スペクトルを示す。図に示した最初と最後のスペクトルは、それぞ
れ反応開始から3分および600分後に得られた。スペクトルは、有意の量のα
らせんとβシート構造を含む2つのコンフォメーション間での緩慢な2つの状態
の遷移を示す。600分後、スペクトルはその形を変えなかったが、大きなサイ
ズのタンパク質凝集物の蓄積の結果として、シグナルの漸進的な低下と陰性ピー
クのより高い波長へのシフトを生じた。図5Bは、筋肉アシルホスファターゼの
赤外線スペクトルのアミドI領域を示す。1613と1685cm−1での2つ
のピークは交差β構造を示唆する。
【0039】 図6A−Cは、筋肉アシルホスファターゼ凝集物の形態発生を示す電子顕微鏡
写真である。図6Aは、反応の開始から72分後の顆粒状の様相の凝集物を示す
。図6Bは32時間後の短いフィブリルを示す。図6Cは2週間後のアミロイド
フィブリルを示す。縮尺バーは100nmの距離を表す。図6Dは、インキュベ
ーションの2週間後に得た筋肉アシルホスファターゼ誘導の凝集物を含むサンプ
ルの光学顕微鏡写真を示す。矢印はアミロイドフィブリルの領域から生じる緑色
複屈折のブロットを示す。
【0040】 図7は、枯草菌、Bacillus subtilisからの低温ショックタ
ンパク質CspBの配列と二次構造内容物を示す。数字は3個のペプチド:Cs
pB−1(1−22)、CspB−2(1−35)およびCspB−3(36−
67)の最初と最後のアミノ酸を示す。
【0041】 図8は、CD分光法によるCspBペプチドの希釈溶液の特性指摘を示す。ア
セトニトリル濃度を図に示したように変化させた。A−C:0.4mg/mLの
(a)CspB−1、(b)CspB−2および(c)CspB−3を含む、2
.5−97.5%の範囲のアセトニトリル濃度の溶液で記録したCDスペクトル
。D:アセトニトリル濃度に対してプロットした215nmでの楕円性。丸:C
spB−1、四角:CspB−2、三角:CspB−3。
【0042】 図9は、ランダムコイルモデルから推定されたものと、(a)CspB−1と
(b)CspB−3についてシミュレートした横断面に適合させることによりC
OSYスペクトルにおけるアンチフェーズスプリットから導いた残基特異的3−
NHα結合定数の差を示す。これらのランダムコイル値との正の差はψψ空隙
のβ領域の個体群の上昇を示唆し、負の差はα領域の個体群の上昇を示唆する。
【0043】 図10は、アセトニトリル濃度を低下したときにCspB−1によって形成さ
れるアミロイドフィブリルに関して得た証拠を示す。A:コンゴーレッドアッセ
イのVISスペクトルの例。破線は10%アセトニトリルにCspB−1のサン
プルを加える前、実線は添加の1時間後を表す。より高い波長へのシフトとより
大きな強度はフィブリルの形成を示唆する。B:陰性染色したフィブリルの電子
顕微鏡写真。縮尺バーは200nmの長さに相当する。C:50%アセトニトリ
ル中5mg/mL溶液から乾燥したサンプルから得たX線線維回折パターン。D
:βシート構造の典型的な距離に対応するピークを割り当てた、cの回折パター
ンの横断面。
【0044】 図11は、WT−ADA2h試料の電子顕微鏡分析を示す。aについては1時
間、b−dについては48時間、90℃でタンパク質サンプルをインキュベーシ
ョンすることによって調製したWT−ADA2hフィブリル。より後の試料ほど
より長く直線状のフィブリルが認められる。細い矢印は可能性のある交差部位を
示し、太い矢印はらせんリボン様のコンフォメーションを示す。
【0045】 下記の実施例は、図面を参照しながら本発明をさらに例示する。
【0046】 実施例 実施例1 顕微鏡検査および画像の分類 pH2で数ヵ月間インキュベーションしたあと形成されるPI3−キナーゼS
H3ドメインのねじれたフィブリルのサンプル(J.I.Guijarroら(
1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.95,4224−
4228)を穴のある炭素グリッドで確認し、低電子線量画像を30,000x
のOxford Instrumentsクリオトランスファーステージを備え
たJOEL 1200EX顕微鏡において120kV、1.3−1.5μmアン
ダーフォーカスで記録した。フィルムを10μmの間隔でLeafscan45
線形CCDスキャナー(Ilford Ltd.,Cheshire,UK)を
用いてデジタル化し、プロセシングのため0.67nm/ピクセルに補間した。
Phoelixソフトウエアで線維を直線化することにより算定回折パターン(
図1f)を得たが、軸方向分解能はピッチで大きく制限され、54.5−66n
mの範囲であった。非線形補間による分解能損失を避けるため、デジタル化した
線維を個々のリピートに切断し、単一粒子として処理した。890に切断したリ
ピートを交互作用的に整列し、ImagicあるいはSpiderのいずれかを
用いて多変量解析によってクラスに分類した。これにより、天然に直線性で同じ
長さを持つリピートのクラスを同定することができた。
【0047】 3D再構築 それぞれ58と61nmリピートに対応する、92および77画像(データセ
ットの〜20%)を含む画像間分散の低い2つのクラスの平均を3D再構築のた
めに選択した。切出した交差領域に関するクラス平均の相互相関によってリピー
トの長さを決定した。平方根増幅濾過後クラス平均の軸方向1D投影においてサ
ブユニットが明瞭に認められた(図2c、g)。両方の場合にリピートは約2.
7nmと測定され、使用した数値は58および61nmリピートにおいて整数の
サブユニットを生じるように選択した(それぞれ21および22サブユニット)
。3D再構築は、連続らせんあるいは27nmサブユニットリピートのいずれか
と仮定して、後方向投影によって算定した。プロトフィラメントの詰込みおよび
密度横断面の全体的特徴は、サブユニットリピートの負荷によって影響されなか
ったが、再投影画像の外形投影(図2c、g)と回折パターン(図2d、h)は
、27nmリピートを負荷したとき入力データとより良好に一致した。再投影し
たらせんの回折パターンは、線形化した線維からの最初のものと極めて良好な一
致を生じ、赤道(放射)方向の22nm分解能に対して強い強度を示した(図1
f)。フーリエ殻相関および2つのマップの横断面間の位相残余による分解能試
験(図3c、d)は2.5nmへの一致を示すが、各々のマップについて赤道方
向で2.2nmへの一致の信頼しうる情報がある。絶対的な利き手はこの方法に
よっては測定されず、恣意的である。相互相関および後方向投影に基づくらせん
障害の相関については他の手順を使用した。3DマップはAVS(Advanc
ed Visualisation System)で検討し、βシートの適合
は0で実施した。
【0048】 ウシPI3キナーゼのp85αサブユニットの84残基SH3ドメインの天然
の折りたたみは、βサンドイッチに配置された5本のβ鎖を含む。低いpHでは
、タンパク質は部分的に開いて、アミロイドフィブリルへと集合する。図1a−
1dにおける画像は、一連のねじれて扁平なリボンと平滑でねじれた管状線維を
示す。構造分析に関しては、著明ならせんねじれを有する形態を選択した。低温
EM画像(図1e)から算定した回折パターン(図1f)は、二重らせん構造に
おけるらせん交差間の距離、すなわちらせんリピートの長さである、54.5か
ら66nmの間隔の層を含む。
【0049】 回折データは、赤道方向(線維軸に直角)の2.2nm分解能への構造情報を
示すが、らせんピッチの変動(角度障害)により経線パターンは15nm付近で
次第に消失する。角度障害のために失われる構造情報を埋め合わせるために、フ
ィブリルのデジタル化画像を個々のらせんリピートに分割した。これらのリピー
トを整列し、それらの長さに従ってクラスに分類した。28および61nmのリ
ピートのクラス平均を、これら2つのリピートから算定した3Dマップの再投影
(2b、f)およびそれらの回折パターン(2d、h)と共に図2a、eに示し
ている。クラス平均において(図2a、拡大)、また時として生の画像において
(示していない)サブユニットリピートが見える。クラス平均の2.7±0.3
nm投影のサブユニット周期性を測定した(図2c、g)。
【0050】 58と61nmリピートから誘導した2つの独立した3Dマップは同じ特徴を
明らかにしている(図3)。表面図と横断面は、中空コアの周囲に巻きついた2
対の細いプロトフィラメントを示す。より低い密度の領域は、フィブリルに特徴
的なねじれた外観を与える拡大した縁を形成している。プロトフィラメントは約
4nmの部分で、厚さ2nmであり(図3c、d)、最小直径が3nmである天
然のSH3構造を収容するには薄すぎる。SH3アミロイドのX線線維回折は、
それぞれ線維間の距離とシート間の距離を規定する0.47nmの経線および0
.94nmの赤道リピートを有する交差β構造の配列されたコアを示唆する。2
nmの幅は2つのβシートにのみ適合することができ、それらは、すべての鎖を
線維軸に対して直角にするために天然の折りたたみにおけるものとは異なるよう
に方向づけられていなければならない。β鎖間のねじれはまた、プロトフィラメ
ントの狭い寸法とラインピッチによって大きく制限され、2°未満の鎖間角度を
有する扁平なシートを生じる。
【0051】 SH3がEM密度に適合するように再構成されたモデルが図4に示されている
。残りの短いループと長いループは正しいサイズ範囲であり、隣接するプロトフ
ィラメント間の結び付きを提供し、構造の突出した縁において散漫な密度を生じ
させる。線維がサブフィブリルに分割するのが見られるという所見と一致して、
個々のポリペプチド鎖は1対のプロトフィラメントの各成員にβ鎖を寄与するこ
とができる。軸方向のリピートはβ鎖に対応するので、これがドメイン交換機序
と同様の再配列によって天然の折りたたみの2本鎖および3本鎖シートに関連す
る可能性がある。その際には、非共有結合相互作用が隣接するサブフィブリルを
二重らせん構造に組み立てる結合を提供するであろう。
【0052】 プロトフィラメントが有効に連続するβシートである、ここで決定した構造は
、鎖の長さおよび成分タンパク質の天然のコンフォメーションにかかわりなく、
すべてのアミロイド線維についての基本的モデルを提供しうる。実際に、Aβ(
1−40)フィブリルの陰性染色EM、原子力顕微鏡および線維回折は、2つの
サブフィブリルと3−5プロトフィラメントに関して非常に類似した形態を示唆
する。ex vivoでのトランスサイレチンフィブリルのEM試験は、これら
が直径5から6nmの4つのプロトフィラメントから成ることを示唆している。
トランスサイレチンプロトフィラメントコアは、X線線維回折データに基づき、
隣接する鎖間で15°のねじれを有する4つのβシートとしてモデリングされた
。しかしながら、ここで示した2つのシートプロトフィラメントモデルは、より
厚いプロトフィラメントについてのより大きな数のシートに拡大することができ
るであろう。現在のところ、より大きなプロトフィラメント型においてねじれた
βシートと扁平なβシートを識別する証拠は存在しないが、マップはSH3プロ
トフィラメントについてのねじれたシート立体配置とは一致しない。それらは2
nmの厚さしかなく、非常に小さな全体的ねじれを有しているからである。扁平
なねじれのないβシートはタンパク質構造データベースでは異例であるが、アル
カリプロテアーゼのβらせんの一部はそのような構造を持つ。
【0053】 低温EM検査は、ポリペプチド鎖がどのようにしてアミロイドフィブリルへと
集合するかについての3D情報を提供する。フィブリルへの重合は、天然タンパ
ク質が少なくとも部分的にほぐれる必要があると思われ、天然の折りたたみがβ
シートを含むタンパク質に限定されないと思われる。実際に、タンパク質の天然
シートからのフィブリルの形成は、しばしばらせん構造からシート構造への変換
に結びついている。天然の折りたたみが主としてβ構造であるSH3ドメインの
場合であっても、フィブリルの構造は、これが天然タンパク質のものに比例して
実質的に再配列されなければならないことを示唆している。
【0054】 実施例2 実施例2(i) 筋肉アシルホスファターゼを、前述のように(A.モデスティ(Modest
i)ら(1995)Protein Express Purif.6,799
)精製し、25%v/vトリフルオロエタノール(TFE)酢酸緩衝液(pH5
.5)中0.375mg/ml(34μM)の濃度で一定速度で撹拌しながら2
5℃でインキュベートした。一定時間間隔で少量を取り出し、電子顕微鏡分析お
よび分光分析を行った。円偏光二色性スペクトルは、Jasco J−720分
光偏光計と光路長1mmのキュベットによって直接測定した。電子顕微鏡写真は
、JEM 1010透過型電子顕微鏡を励起電圧80kVで使用して撮影した。
3μlのタンパク質溶液試料をホルムバール(Formvar)と炭素をコーテ
ィングしたグリッド上に配置して5分間乾燥させた。次に試料を、1%リンタン
グステン酸溶液3μlで染色し、25〜100kの倍率で観察した。
【0055】 実施例2(ii) 赤外スペクトルを、光路長50μmのBaFウインドウを使用して測定した
【0056】 実施例2(iii) チオフラビンT分析およびコンゴレッド分析を、それぞれル・バイン(Le
Vine)III(H,Le Vine III(1995)Amyloid:
Int.J.Exp.Clin.Invest.2,1)およびクランク(Kl
unk)(W.E.Klunkら(1989)J.Histochem.Cyt
ochem,37,1293)に従って実施した。コンゴレッド複屈折実験では
、少量のタンパク質をスライドガラス上で風乾した。得られた薄膜を、1%水酸
化ナトリウムでpH10.0に調節したコンゴレッドと塩化ナトリウムの飽和溶
液で染色した。染色したスライドを交差する偏光子の間で光学顕微鏡によって調
べた。
【0057】 アミロイドがタンパク質の未変性で機能的な構造からアミロイドが直接生じる
のではなく、未変性タンパク質の構造とはあまり類似しておらず、ある量の残基
構造を含む変性した構造と同定することができるアミロイド形成的前駆物質から
生じるという証拠が増えてきている。この構造はアミロイド形成的中間体と呼ば
れることが多い。筋肉アシルホスファターゼは、生理学的条件下で非常にはっき
りと折り畳まれるタンパク質であり、その安定性はこの大きさのタンパク質の平
均的な値に近い。トリフルオロエタノール(TFE)を使用した試験から、筋肉
アシルホスファターゼは20〜22%v/vを超えるTFE濃度で変性すること
が分かった。筋肉アシルホスファターゼのTFEによる変性では、タンパク質の
未変性時のαらせん構造を維持することができ、同時に疎水性コアが実質的に破
壊され非天然αらせん構造が形成される。さらにTFEの添加によって、さらな
るαらせん構造が形成され、より低いアルコール濃度では存在すると推定される
疎水性相互作用が不安定化する。従って、未変性タンパク質が実質的に存在しな
い最低アルコール濃度である25%v/vのTFEを含有する水溶液を、フィブ
リル形成のために選択した。
【0058】 混合後に起こる一連の事象は、遠紫外円偏光二色性(CD)、トリプトファン
固有蛍光、コンゴレッドおよびチオフラビンT結合、電子顕微鏡、ならびにコン
ゴレッド複屈折などの種々の技術によって調べることができる。秒単位のタイム
スケールで起こるタンパク質の急速な変性の後で、遠紫外CD分析より2〜3時
間以内に完了する緩やかな転移が存在し、αらせん構造の多い構造からβシート
構造の含有率が高い別の構造に転移することが分かった(図5A)。遠紫外CD
スペクトルは、この期間の規則的な時間間隔で測定した。第1のCDスペクトル
は、αらせん構造の多い構造に典型的なもので、208nmと222nmが中心
となる2つの負のピークを有する。このスペクトルが、216nm付近の1つの
負のピークを有するβシートスペクトルへと徐々に変化する(図5A)。210
nmと225nmで円二色性が等しい2つの点が存在することは、このようなα
/β遷移が2段階過程からなることを示している。タンパク質凝集体内に形成さ
れる分子間水素結合によるこのようなβシート構造は、赤外スペクトルのアミド
領域の1685cm−1と1613cm−1の2つのバンド(図5A)と、凝集
過程のこの段階で回収した試料の粒子状外観のタンパク質凝集体が電子顕微鏡写
真で確認できる(図6A)ことによって示される。
【0059】 約32時間後、短いフィラメントの存在が電子顕微鏡写真から確認でき、これ
は線維状タンパク質凝集体量がかなり増加したことを示している。2週間後、線
維状物質はより明確になった。電子顕微鏡写真で観察されるフィブリルは長く分
岐がなく幅が8.5nmであるのに対し、非常に短いフィラメントまたは粒子状
外観の他のタンパク質凝集体はもはや存在しなかった。一連の光学的分析を行っ
て、この線維状物質のアミロイドの性質をさらに調べた。チオフラビンT染料の
482nmにおける蛍光強度(励起440nm)の3倍の増加が、アミロイドに
よるものと考えられるタンパク質凝集体の添加の結果観察された。さらに、タン
パク質凝集体によってコンゴレッド染料の最大吸光の赤方偏移が起こった。凝集
体とコンゴレッド染料の両方を含むスペクトルから、凝集体単独およびコンゴレ
ッド染料単独のスペクトルを引くと、540nmで最大強度となるスペクトルが
得られる。これら2つの知見も、アミロイドフィブリルの存在を示している。最
後に、筋肉アシルホスファターゼ由来フィブリルを含む試料へコンゴレッドを添
加することによって、交差偏光下で特徴的な緑色複屈折が得られる(図6D)。
緑色複屈折はアミロイドフィブリルの存在に対して非常に特徴的である。要約す
ると、筋肉アシルホスファターゼは、アミロイドフィブリルの存在を確認するた
めのすべての診断テストで陽性の応答を示した。
【0060】 最近、リン脂質などの両親媒性化合物が、フィブリルの伸長を促進することが
示唆されている。TFEなどのフルオロアルコール類によるアミロイドフィブリ
ルの形成は、生体系に通常存在するこのような両親媒性化合物がアミロイドフィ
ブリルのインビボにおける増殖の媒体として機能しうるというこの提言を支持し
ている。
【0061】 20%未満の濃度または35%を超える濃度のTFEではフィブリル形成が起
こらない。これは、低TFE濃度におけるタンパク質の未変性構造の存在、また
は高TFE濃度におけるαらせん構造が多すぎる変性状態の存在によって、フィ
ブリル形成が妨害されるためと考えられる。これらはアミロイド形成的前駆物質
の濃度を減少させることができ、そのためフィブリル形成過程の動力学的トラッ
プとして作用しうる。非常に高濃度の場合もフィブリル形成過程の障害となりう
る。3mg/mlを超える濃度でインキュベートすると、筋肉アシルホスファタ
ーゼによってゲル状沈殿物が急速かつ不可逆に形成され、これは非晶質タンパク
質凝集体として電子顕微鏡で確認された。結晶形成と同様にアミロイド形成は、
タンパク質分子が自己集合して規則的構造を形成する過程である。高タンパク質
濃度は、分子の集中に好都合となり、任意の凝集過程を促進しうる。しかし、こ
のような条件下では、規則的で反復性の構造を形成するためには時間が十分では
ない。
【0062】 実施例3 ペプチド合成 ペプチドは、α−アミノ基の保護のために塩基不安定性の9−フルオレニルメ
トキシカルボニル(Fmoc)を使用してアプライド・バイオシステムズ(Ap
plied Biosystems)(フォスターシティ(Foster Ci
ty)、カリフォルニア)430A自動ペプチド合成装置で合成した。側鎖の官
能基は、t−Bu基(Asp、Ser、Thr、Tyr)、トリチル基(Asn
、Gln)またはPmc基(Arg)によって保護した。合成および精製は公知
の方法によって行った。ペプチドの同定および純度はESI−MSによって確認
した。CspB−1、CspB−2、およびCspB−3の質量測定の結果は、
それぞれ2,531.1、3,976.6、および3,449.5g/molで
あった(配列から予測される質量は:2,531.9、3,976.6、3,4
48.7である)。
【0063】 試料調製 3種類のペプチドはいずれも、まず50%アセトニトリルpH4.0(ギ酸で
調整、緩衝液なし)に溶解し、続いて所望のペプチド濃度およびアセトニトリル
濃度まで希釈することによって最適の溶解性が得られることが分かった。
【0064】 光学分光法 CDスペクトルは、光路長1mmの石英キュベットを使用したJasco J
720分光偏光計で測定し、195〜250nmを1nm間隔で測定した。慣例
的にCD試料は、50%のアセトニトリルを含有するペプチドストック溶液を希
釈してから30分後に測定した。動力学的試験から、この時間の後、所与の比較
的低濃度(0.4mg/ml)のCD試料は、分単位のタイムスケールで時間に
依存する影響は認められないことが確認された。
【0065】 βシート含有率の計算は、1残基当りで規格化した215nmでの楕円率を使
用して行った(単位:deg・cm/dmol)。この実験において観察され
た最高値(−9,260deg・cm/dmol)は100%β構造に対応し
、他の研究者による値(216nmにおいて−9,210deg・cm/dm
ol)とよく合っている。
【0066】 フィブリル形成のコンゴレッド結合分析の場合、分析緩衝液(5mMリン酸緩
衝液pH7.4、0.15mMNaCl)中に染料を10μM含む溶液の吸収ス
ペクトルを、ペプチド溶液の添加前と後に、パーキン・エルマー(Perkin
Elmer)(フォスターシティ、カリフォルニア)Lambda16分光計
で400〜700nmの範囲で測定した。通常、ペプチド試料10μlを全体積
1.0mlに使用した。
【0067】 NMR分光分析 すべてのNMRスペクトルは、Oxford Centre for Mol
ecular Sciencesの自作のNMR分光計を使用して500MHz
または600MHzにおけるH周波数を測定した。1次元(1D)スペクトル
は、通常8Kの複合データ点(complex data point)を含む
。2次元(2D)測定では2Kの複合データ点が、tディメンションと、t における直交検出の時間比例相増分(TPPI)を使用する位相感受性モードで
得た。拡散定数は、8K複合点のパルスフィールドグラジエント測定から求めた
。すべての測定で、8,000Hzのスペクトル幅を使用した。共鳴の割り当て
のため、それぞれ32〜128スキャンの512〜800のt増分を含む、D
QF−COSY、TOSCY、ROESY、およびNOESYスペクトルを測定
した。水のシグナルは、1.2sの緩和遅延の間の先行飽和、またはグラジエン
ト二重エコーのいずれかを使用することによって抑制した。TOCSY測定の混
合時間は23〜60msを変動し、NOESYおよびROESY測定の場合は1
00〜260msを変動した。Sunワークステーション上のFelix2.3
(BIOSYM)を使用してデータを処理した。通常、データは一度0を入力し
、1Dの二重指数ウインドウ関数と、2Dスペクトルの各ディメンションで90
°を超えてシフトしたsinebell squared関数を使用して処理し
た。すべてのスペクトルは、3.743ppmにおけるジオキサン内部標準を基
準とした。
【0068】 HNα結合定数を求めるため、高解像度DQF−COSYスペクトルを、
4K複合点を8Kにゼロ充填して測定し、ウインドウ関数GM 3.75および
TM 16 4096 4096を適用した。次に、Felix2.3プログラ
ムで実施される手順を使用して、クロスピークをF2ディメンションに沿った模
擬逆位相断面と一致させた。
【0069】 一連の1Dスペクトル、溶液NMRによって観察されるペプチドの割合を評価
するために使用した。これらの1Dスペクトルはすべて、同種の500MHzN
MR分光計による連続した測定における7,000スキャンおよび256スキャ
ンのゲインから求めた。トリプトファン溶液の濃度は、280nmの吸光度から
計算した。トリプトファン溶液およびペプチド溶液のこれらの1Dスペクトルの
インドール共鳴の積分値を、ペプチド溶液の濃度の推定に使用した。
【0070】 電子顕微鏡検査 フィブリル形成およびその形態を透過型電子顕微鏡(EM)で観察した。ペプ
チド試料をホルムバールと炭素をコーティングしたグリッド上で乾燥させ、1%
リンタングステン酸(PTA)で陰性染色した。JEOL JEM−1010電
子顕微鏡を使用して励起電圧80kVでグリッドを観察した。
【0071】 光学顕微鏡検査 ペプチド試料中のアミロイドフィブリルの存在を確認するために、コンゴレッ
ド染色したフィブリルをスライドガラス上で乾燥させ、そのプレパラートを交差
偏光子を使用した双眼顕微鏡で観察した。黄緑色の複屈折が交差β構造の存在を
示す。
【0072】 X線線維回折 10μlのペプチド溶液の液滴を、蝋で封をした2本の毛細管の両端間に懸濁
させた。通常の手順では約1日のタイムスケールで溶媒を蒸発させることを含む
が、試料中にアセトニトリルが存在するため約1時間で液滴が蒸発した。毛細管
の両端に付着して2本の細い針の形態で残留する固体の回折パターンを、180
mm撮像板(MAR Research,ハンブルク(Hamburg)、ドイ
ツ)を取付けたCuKα回転陽極を使用して得た。得られた回折パターンをMa
r−Viewソフトフェア(MAR Research)を使用して解析した。
【0073】 結果 X線結晶学およびNMRによってCspBは、S1ドメインと相同の単純な全
βシート配置を有することが分かった。S1および相同Eschenchia
coil低温ショックタンパク質CspAと同様に、Bacillusタンパク
質は1本鎖RNAと結合することが示され、低温で不要な二次構造が形成される
ことでmRNAを停止させる点においてRMAシャペロンとして作用すると考え
られる。CspBは、非常に迅速に折り畳まれ、比較的接触順序が少ない(すな
わち、線状配列において互いに接近する残基間で接触する割合が高い)という点
で顕著である。すべてのβシート形成相互作用は配列で隣接する鎖の間で生じる
ため、二次構造形成はリボソーム上での合成の間、および本明細書で研究される
短いペプチドフラグメントの間の両方で行われる。
【0074】 このタンパク質は病的アミロイドフィブリルの少なくとも18の公知の真核性
成分のいずれとも関係がないが、3つすべてのCspBペプチドはフィブリルと
して沈着し、高度に構造が壊れたモノマーが溶液中で優勢な種となる種々の条件
の哺乳動物アミロイドと非常によく似た特性を有する。モノマー性ポリペプチド
の初期の二次構造内容がアミロイド形成の主決定要因とはならないこともあり得
る。最も重要な条件は、水素結合または疎水性接触などの相互作用がなお存在し
うる条件下で、規則的三次構造が失われることであろう。この条件は、無傷のタ
ンパク質の少なくとも部分的な変性を誘発する条件、または協同的球状構造を形
成することができないより短いペプチドにポリペプチド鎖を切断することによっ
て満たしうる。
【0075】 小さなβサンドイッチ構造内に配列する5つのβストランドからなるB.su
btilis低温ショックタンパク質CspBの既知の構造に基づくと、ペプチ
ドCspB−1(残基1〜22)、CspB−2(1〜35)、およびCspB
−3(36〜67)は、最初の2つ、最初の3つ、および最後の2つのCspB
タンパク質βストランドにそれぞれ対応するように意図されている(図7参照)
。CspB−1およびCspB−2はN−末端から成長する新生タンパク質を表
すが、CspB−2およびCspB−3はβサンドイッチの半分ずつを表し、元
のタンパク質の配列全体をカバーしている。
【0076】 低温ショックタンパク質BはpH値が6.0〜7.2の水性緩衝液に、タンパ
ク質濃度が最低1.3mM(10mg/ml)で溶解するが、このことはそのN
MR構造がこれらの条件で得られることで実証される。対照的に、3種類のペプ
チドのいずれも同様の条件下でほとんど溶解せず、例えばCspB−2は約0.
2mg/mlしか溶解しない。ペプチドを可溶化するため、アセトニトリルをp
H4.0(ギ酸、緩衝液なし)において共溶媒として使用した。3種類のペプチ
ドのすべてはこれらの条件下で10mg/ml以上溶解するが、アセトニトリル
濃度が50%から上下に大きく外れた値に変化した場合に、これらの溶解性は劇
的に低下する。例えば、50%アセトニトリル中に20mg/mlのペプチドを
含むストック溶液を4倍の体積の水またはアセトニトリルのいずれかで希釈して
NMR試料を調製しようとすると、ペプチドが急速に沈殿する結果となった。ペ
プチド濃度0.4、2、および10mg/ml、ならびにアセトニトリル濃度1
0、50、および90%を含むペプチド濃度および溶媒組成の組み合わせの標準
セットを使用した。
【0077】 3種類のペプチドのNMR分析は、最も溶解性の高い(50%アセトニトリル
pH4.0中に10mg/mlのペプチド)条件下で行った。CD測定はアセト
ニトリル濃度が5〜95%の範囲で行った。CD分光法ではより低いペプチド濃
度(0.4mg/ml)が必要なので、比較的溶解性の低い(すなわち、アセト
ニトリル濃度がより高いおよびより低い)条件下でもスペクトルを得ることがで
きた。溶媒の変化によって生成した不溶性物質は、アミロイドフィブリルの存在
を調べる特殊な試験などの種々の技術によって分析した。
【0078】 CD測定 CD分光法によって、特に比較的不溶性である条件およびフィブリル形成が開
始しうる条件で、3種類のペプチドは構造的性質が実質的に異なることが分かっ
た。溶解性状態(50%アセトニトリル)では、CspB−1は0.4mg/m
lで大きく非構造化されるが(図8Aおよび8D参照)、非常に高いペプチド濃
度でβシート構造が形成され、このことは0.1mm光路長セルを使用した別の
CD測定から分かる。アセトニトリル濃度を90%まで増加させると、残基当り
の楕円率は−1,730deg・cm/dmolから−6,480deg・c
/dmolまで増加し、最高アセトニトリル濃度においてβ構造が約70%
となることを示している。
【0079】 CspB−2(図8Bおよび8D)は、非常に高いおよび非常に低いアセトニ
トリル濃度でβシート構造が多く形成される(アセトニトリル2.5%でβシー
ト100%、アセトニトリル97.5%でβシート71.5%)。中間の溶媒条
件ではあまり形成されない(アセトニトリルが15〜70%の範囲で平均残留楕
円率が約−3,410deg・cm/dmolであり、これはβシート含有率
約20%を示している)。CspB−3(図8Cおよび8D)は、アセトニトリ
ル濃度に依存して、非構造化状態が支配的、部分的にらせん、またはβシートが
多いという状態になりうるという、特に興味深い挙動を示す。CDデータは、ア
セトニトリル濃度が5%から75%に増加するとらせん含有率が徐々に増加する
ことを示しているが、アセトニトリル濃度が75〜95%の間でペプチドはβシ
ートが支配的となる。この後者の濃度で、215nMにおけるこのペプチドの残
基当りの楕円率は−3,830deg・cm/dmolであり、βシート41
%に対応する。
【0080】 低アセトニトリル濃度(10%)では、CspB−2はβシート構造を取るが
、他の2つのペプチドは非構造化状態が支配的である。しかし高アセトニトリル
濃度(90%)では、すべてのペプチドである程度のβシート形成が見られ、2
つのN−末端ペプチドではランダムコイル特性も見られ、C−末端ペプチドでは
αらせん構造が見られる(図8)。アセトニトリルが5%から95%まで徐々に
変化すると、CspB−3は未構造化状態かららせん構造、さらにβシート構造
へと順次変化する。従って、一般により低い溶解性またはより高いアセトニトリ
ル濃度に向かって条件が変化すると、βシート含有率が増加する。このことは、
分子内ではなく分子間でβシートが形成されることを示している。モノマーの大
部分が非構造化状態(あるいはCspB−3の場合は部分的にらせん)であり、
すべての凝集体はβ構造を含むことをデータは示している。
【0081】 NMR実験 アセトニトリル50%中のペプチド濃度10mg/mlで行ったNMR拡散測
定は、各ペプチドの単純拡散定数が折り畳まれていないモノマーに関して予測さ
れる流体力学的半径に近い値に対応していることを示している(表1参照)。
【0082】
【表1】 これは、試料は大部分がモノマーからなることを示している。任意の小さなオ
リゴマー(この方法で解像可能なタイムスケールよりも短いタイムスケール、す
なわち約100ms未満で、配座の相互交換が起こる場合には、モノマーのシグ
ナルとともにこれらのオリゴマーのシグナルが現われる)は少数の集団としての
み存在しうる。しかし、スペクトル強度の較正は、スペクトル強度が含まれるペ
プチドの濃度で予測される値よりも低いことを意味する。このことはCspB−
1の場合に定量的に分析され、試料に存在する全ペプチド濃度の約20%のみが
NMRスペクトルで検出可能であることが分かった。従って、残りは大きな可溶
性凝集体として存在し、その全体の回転時間が長すぎて解像可能なNMR源とは
ならない。
【0083】 3種類すべてのペプチドの詳細な構造的NMR分析は、50%のアセトニトリ
ルを含む溶液中20℃および35℃で行った。すべてのペプチドについてのアミ
ド共鳴の完全な割当ては、35℃におけるCOSYおよびTOCSYスペクトル
の分析により行った。どのペプチドもあらゆる測定可能な広範囲のNOEまたは
ROEは示さなかった。これは任意の有意な持続的構造がないことを意味する。
従ってペプチドの構造的特徴は、化学シフトと結合定数をランダムコイルモデル
から予測される値と比較することによって推測した。ランダムコイルの化学シフ
トの値はよく報告されているが、アミドプロトンに関して得られた値は周知のよ
うに溶媒条件に依存する。従って、本発明者らはCαプロトンの化学シフトのみ
をこの分析に使用した。これらは典型的なランダムコイル値とわずかのずれしか
ない(ほとんどは±0.1ppmであり、−0.20〜+0.15ppmの間に
すべておさまる)。
【0084】 CspB−1について測定した結合定数のほとんどは、ランダムコイルに予測
される値よりもわずかに大きい(図9A)。これは、CspB−1がランダムコ
イルに予測されるよりもφψ空間のβ領域の占有率がわずかに高いことを示して
いる。このことは残基5〜9および17〜20の領域において最も明白である(
図9A)。これらの残基群の両方は、未変性タンパク質のβストランド領域内に
ある(2〜10、15〜20)。CspB−3の場合、結合定数測定の結果はラ
ンダムコイルの予測値よりも小さい値となり、CDスペクトルで観察される少量
のらせん構造が、残基38〜53の間で局在しているらしいことを示唆している
(図9B)。この結果は、使用した数種類の二次構造予測法で明らかとなったこ
の領域におけるわずかならせん形成の傾向とも適合している。従って、Gibr
at法、Levin法、DPM法、およびSOPMA法では、位置38〜47の
残基の大部分の構造がらせんであると予測している(データは示していない)。
カルボキシ末端付近に形成されると予測される別のらせんは、NMRでは観測さ
れなかった。
【0085】 アミロイドフィブリル形成の証拠 全3種のペプチドの濃縮溶液をアセトニトリル50%から10%または90%
まで希釈(10.0mg/mlを最終濃度2.0mg/mlに希釈)することに
よって作製した試料について、3つの異なる方法で分析を行い、アミロイドフィ
ブリルの存在を調べた。フィブリル形成のすべての他の研究にはCspB−を使
用した。ジアゾ染料コンゴレッドを使用する顕微鏡的結合分析(図10A)では
、アミロイドフィブリルに特徴的である波長の赤方偏移と強度増加が見られる。
透過型電子顕微鏡(図10B)では、直径約10nmで最大長さ300nmの直
鎖および分岐フィブリルの密集した網目構造がアセトニトリル10%まで希釈し
たCspB−1で観察された。他の実験条件および他のペプチドでは、より少な
いフィブリルが観察されたが、同様の形態が見られた。コンゴレッド染色したポ
リペプチドを交差偏光子を使用して光学顕微鏡観察を行うと(図示していない)
、アミロイドフィブリルに特徴的な緑色複屈折が観察された。
【0086】 アセトニトリル10%および90%で形成された3種類すべてのペプチドの凝
集状態を、これらの方法を使用して分析した。すべての種類の実験で、アセトニ
トリル10%中のCspB−1の場合にアミロイドの存在が強く認められたが、
他の条件の一部ではより変動した結果が得られた。にもかかわらず、すべての条
件でアミロイドフィブリル形成を示す肯定的証拠が得られた(表2参照)。
【0087】
【表2】 アセトニトリル10%中のCspB−1によって形成されるフィブリルについ
てさらなる検討を行った。フィブリル形成と共存可能な分子間βシート構造も、
ペプチドCspB−1のFTIRにより示された。X線線維回折でもアミロイド
フィブリルに特徴的な結果が得られた。後者の方法では、アセトニトリル50%
中のCspB−1の試料を2つの毛細管の間で懸濁させた後に乾燥させた。アセ
トニトリルの揮発性がより高いため、溶剤組成が蒸発の間に変化し、実際の沈殿
過程中にアセトニトリルが約10%になると予想される。この結果、細い針状の
沈殿物が得られ、アミロイドフィブリルに典型的である0.47nmおよび1.
04nmで最大回折が得られるX線回折パターンが示された(図10Cおよび1
0D)。
【0088】 従って、すべてβ構造を有する小型細菌タンパク質に由来する3種類のペプチ
ドはアミロイドフィブリルを形成しうる。これらのフィブリルの形成は、より高
濃度または低濃度のアセトニトリルへの溶媒の移行による全く異なる出発状況で
起こりうる。通常、溶液は、大部分が非構造化状態であるモノマーに加えて、オ
リゴマーとβシート構造を多量に含む可溶性凝集体を含む。このことは、アミロ
イド形成は、多数のあらかじめ形成された二次構造要素が溶液のモノマー種に存
在することには依存しないが、凝集体およびアミロイドフィブリル自体が多量の
βシート構造を含むことを示している。より一般的には、β構造は異なる形態の
広範囲の凝集体によく見られる。このようなβ構造を有する凝集体を形成する能
力は、規則的アミロイドフィブリルへ後に転化するための重要な因子であると思
われる。
【0089】 実施例4 WT−ADA2hの発現および精製 野生型ヒトカルボキシペプチダーゼA2の活性化部位(WT−ADA2h)を
前述のように発現させ精製した。この組み換えタンパク質をMALDI−TOF
−MSで分析すると、配列から予想される分子量を有することが分かった。
【0090】 円偏光二色性 50mMのリン酸ナトリウム(pH7.0)または25mMのグリシン(pH
3.0)中20μM、80μM、160μM、および200μMのタンパク質試
料のCDスペクトルを、JASCO−710分光偏光計を使用し、278K、2
98K、および368Kにおいて、2.0mmまたは0.2mm石英キュベット
中で測定した。測定値は50nm/分で測定して30スキャンにわたって平均化
した。222nmまたは214nmの楕円率を測定することによって、20μM
タンパク質試料の熱誘発変性を、50℃/時の加熱速度で278〜368Kの温
度範囲で調べた。
【0091】 沈降分析 25mMのグリシンを含むpH3.0の緩衝溶液中20μMおよび200μM
のタンパク質試料について、ベックマン(Beckman)XLA分析用超遠心
機を3000Gで使用して沈降実験を行った。50℃/時の速度で5℃から95
℃まで試料を加熱し、95℃で10分間維持してから沈降実験を行った。50m
Mのリン酸ナトリウム(pH7.0)中200μMのタンパク質試料を陰性対照
として使用した。
【0092】 チオフラビン−Tおよびコンゴレッド結合分析 WT−ADA2h試料(20〜500μMの範囲の濃度)を分析前に90℃で
30分間インキュベートした。10mMのリン酸カリウムおよび150mMのN
aCl(pH7.0)から2.5mMのチオフラビン−Tストック溶液を新しく
調製し、使用前に0.2μmフィルターに通した。通常は10μlの試料を、6
5μMのチオフラビン−Tを含む反応緩衝液(10mMのリン酸ナトリウム、1
50mMのNaCl、pH7.0)で希釈した(最終体積1ml)。フィブリル
の分散を促進し、大きな凝集体を分裂させるために試料をピペットに吸い込み押
出す操作を数回繰り返した。データは、パーキン−エルマー(Perkin−E
lmer)LS 50Bルミネセンス分光計を、励起波長440nm(スリット
幅5nm)および発光波長482nm(スリット幅10nm)で使用して収集し
た。熱平衡が達成されるようにするため、蛍光値は3〜5分後に測定した。大き
なフィブリル凝集体の存在による信号の振動を防止するため試料を連続的に撹拌
し、信号対雑音比を上昇させるために信号は60秒で平均化した。コンゴレッド
結合分析は、クランク(Klunk)らに従って行った。10μlの試料の一部
を、5μMのコンゴレッドを含む10mMのリン酸カリウムおよび150mMの
Nacl(pH7.0)で希釈した(最終体積1ml)。コンゴレッド溶液は使
用する直前に調製し、0.2μmフィルターに通した。染料の吸収に関する信号
と信号に寄与する散乱を差し引くために、反応溶液中の試料の吸収スペクトルを
陰性対照(タンパク質試料を含まない染料、および染料を含まないタンパク質試
料)と共に測定した。
【0093】 プロテイナーゼ抵抗性 25mMのグリシン(pH3.0)中にWT−ADA2hを20μM含む試料
を4M尿素中で4時間インキュベートした後、尿素濃度1Mまで希釈し、プロテ
イナーゼを加えてインキュベートする前に透析を行った。同じ緩衝液中の試料を
、タンパク質分解の前に95℃で10分間インキュベートした。これらの試料を
、同じタンパク質を含む未処理試料とともに、2つの異なるWT−ADA2h:
ペプシン比(100:1および400:1)のペプシンの存在下、それぞれ20
℃で2時間、または0℃で15分間消化させた。次に消化させた試料を、Vyd
ac C4カラム(214TP54、粒径5μm、空隙300Å、1.0×25
cm)を使用したRP−HPLCによってアセトニトリル10%から52%の直
線グラジエントで分析した。ウォーターズ(Waters)994モデルにより
214nmで検出を行った。
【0094】 フーリエ変換赤外分光法 赤外スペクトルは、液体Nで冷却されるMCT検出器を備えたバイオラド(
Bio−Rad)FTS 175C FT−IR分光計を使用し、Nガス連続
流をパージしながら測定した。500μMのWT−ADA2h試料をO、
グリシン25mMからpH3.0(電極の読取値を同位体効果に関して補正し
た)で調製し、90℃で30分間の試料のインキュベートの前後に、25℃でス
ペクトルを測定した。タンパク質溶液を、12μmのマイラー(Mylar)ス
ペ−サーで分離された1組のCaFウインドウの間に配置した。各試料につい
て、スペクトル解像度2cm−1で256のインターフェログラムを記録した。
タンパク質を含まない緩衝液について同一条件下でスペクトルを測定し、タンパ
ク質試料のスペクトルから差し引いた。アミドIバンドスペクトルの二次導関数
から異なるスペクトル成分の波数を求めた。
【0095】 電子顕微鏡検査 試料を、ホルムバールをコーティングしたニッケルグリッド(400メッシュ
)に適用し、2%酢酸ウラニル(w/v)で陰性染色し、JEOL JEM10
10透過型電子顕微鏡を80kVで操作して観察を行った。
【0096】 X線回折 フィブリル懸濁液をマイクロコン(Microcon)−100超遠心管(ア
ミコン(Amicon))を使用して洗浄し、X線測定に干渉しうる塩および緩
衝液を除去した。蝋を充填した2本の毛細管の間でADA2h−WTフィブリル
を風乾し塩を除去して試料を調製した。延伸軸に沿ってフィブリルが配向しやす
いようにするため、乾燥中に毛細管をゆっくりと分離した。毛細管の一端から突
出するフィブリルの小さな軸を得た。試料をX線ビームに配列させ、180また
は300MAR−Research撮像板(MAR Research、ハンブ
ルク、ドイツ)を備えたCuKα回転陽極を使用し20〜30分間で回折像を撮
影した。画像はIPDISPおよびMar View Softwareを使用
して分析した。
【0097】 結果 この実施例は、81残基タンパク質である、野生型ヒトカルボキシペプチダー
ゼA2の活性化領域、WT−ADA2hの研究に関する。この領域は、1つの4
本鎖βシートをはさむ2つのαらせんを有する。中性pHにおいて、ある程度の
二次構造と未発達な疎水性コアを有する密集転移状態を経由する2つの状態で折
り畳まれることを発見した。
【0098】 pH7.0におけるWT−ADA2hの熱変性は、可逆的であることが分かっ
ており、2段階で転移が起こる。pH3.0では、WT−ADA2hは非可逆の
変性転移(10μM〜3mMの範囲の濃度で)が起こる。95℃のCDスペクト
ルおよび25℃に冷却した後のCDスペクトルから、タンパク質が大規模なβシ
ート構造を有する構造に転化することが分かる。分析用遠心分析の結果は、試料
が高度に凝集していることを示している(試料の40%はSw,20が35Sで
あり、これはMが10Daを超えることを意味し、平均100分子を超える
タンパク質分子を含む凝集体に対応する)。WT−ADA2hタンパク質の熱変
性によるαらせん構造からβシートへの転化はFT−IR分光法によって確認さ
れる。加熱前では、アミドIバンドはそれぞれ1622cm−1と1649cm −1 の2つの主成分を示し、それぞれβシートとαらせん構造に起因するもので
あり、未変性状態のタンパク質と一致している。試料を90℃でインキュベート
した後では、元のバンドの代わりにそれぞれ1615−1および1685cm の2つの新しいバンドが現われる。このパターンは、βシート構造を有する凝
集体に通常関連するものである。1615cm−1のバンドはβシートを示して
いるのに対し、1685cm−1のバンドは逆平行分子鎖間の相互作用によるア
ミドIバンドの分裂と関連している。加熱後のタンパク質は、コンゴレッドの吸
収スペクトルが486nmから500nmにはっきりと移行し、同時に吸収率が
増加し、チオフラビン−T結合も示す(表3)。これらすべての性質は、アミロ
イド沈着物の形成の場合と一致している。
【0099】
【表3】 タンパク質の挙動は、ある範囲の濃度(4〜7M)の尿素の存在下でのインキ
ュベート後にも調べた。尿素7Mの場合、タンパク質のCDスペクトルは未変性
種が多いことを示している(222nmで楕円率が減少)。7Mの尿素中のWT
−ADA2h試料を尿素濃度1Mまで急速に希釈すると、タンパク質が未変性状
態に再度折り畳まれる。しかし、WT−ADA2hタンパク質を4M尿素中で1
時間インキュベートし、1M尿素まで希釈して1時間インキュベートした場合は
、広範囲のβシート構造を示す異なるCDスペクトルが得られる。WT−ADA
2hタンパク質は、凝集が検出された場合にはすべての試料についてペプシンに
よる消化に対する感受性が低下する(表4)。さらに、CDおよびFT−IRよ
り確認されるβ構造への転移と、タンパク質分解に対する抵抗性の増加との間に
明確な相関が存在する。
【0100】
【表4】 凝集したWTタンパク質を電子顕微鏡で分析すると、長く、未分岐で、細く(
直径30〜100Å)明らかに非常に可撓性であるフィブリルの形跡が明らかに
見られる。これらは通常相互にからみあう構造の密な網目構造を形成する(図1
1a)。90℃においてより長時間インキュベートした後に調製した試料は、よ
り長くより規則性の高いフィブリル(図11b〜d)が特徴であり、不規則な間
隔でねじれるリボン様パターンがよりはっきりと確認される(図11b〜d、矢
印参照)。高温においてインキュベートをより長く行うことによる構造の相違は
、フィブリルを形成するプロトフィラメントがさらにゆっくりと再組織化するた
めと説明することができる。経時によるこのようなフィブリル構造の発達は、い
くつかの他のタンパク質から生成したアミロイドフィブリルについては従来観察
されている。20μMの低濃度のタンパク質を含む溶液からは、フィブリルが凝
集体になるのが観察される。図11aと同様の性質を有するフィブリルは、化学
変性処理したWT−ADA2h試料でも認められ、タンパク質分解に対する抵抗
性の出現と一致している。
【0101】 WT−ADA2hの異なる熱変性から得たフィブリルについても、線維X線回
折で特性決定を行った。これらは、4.7Å(フィブリル軸方向の分子鎖間距離
に対応)および9.3Å(フィブリル軸と直交する方向のβシート間の距離に対
応)の反射を有するアミロイドフィブリルに特徴的である明確な交差βX線回折
パターンを示す。ある程度の異方性が鋭い9.3Å反射で観察することができる
。9.3Åの異方性で鋭い反射と共に、別の弱い反射が3.1Åで観察すること
ができるがこれは調和振動で発生するものと思われる。第4の弱い反射が3.8
Åで観察されるが明確な異方性は見られない。この種の反射は、種々の物質源か
らのアミロイドフィブリルの研究において以前から観察されている。
【0102】 従って、WT−ADA2hは未変性時の折り畳み構造が不安定化した場合にア
ミロイドフィブリルの形態で凝集しうる、あらゆる公知の疾患と関連性のないタ
ンパク質のさらなる例となる。
【図面の簡単な説明】
【図1a】 SH3アミロイドの陰性染色電子顕微鏡画像を示したものであり、疾患関連フ
ィブリルで認められるものと同様の一連の形態を示す。
【図1b】 SH3アミロイドの陰性染色電子顕微鏡画像を示したものであり、疾患関連フ
ィブリルで認められるものと同様の一連の形態を示す。
【図1c】 SH3アミロイドの陰性染色電子顕微鏡画像を示したものであり、疾患関連フ
ィブリルで認められるものと同様の一連の形態を示す。
【図1d】 SH3アミロイドの陰性染色電子顕微鏡画像を示したものであり、疾患関連フ
ィブリルで認められるものと同様の一連の形態を示す。
【図1e】 低温EM画像を示す。
【図1f】 3D再構築のために使用した、明らかならせんねじれを持つ図1dで見られた
形態の回折パターンを示す。
【図2a】 58および61nmのロングリピートについてのクラス平均を示す。
【図2b】 3D再構築の再投影を示す。
【図2c】 ID投影の回折パターンを示す。
【図2d】 再投影の回折パターンを示す。
【図2e】 58および61nmのロングリピートについてのクラス平均を示す。
【図2f】 3D再構築の再投影を示す。
【図2g】 ID投影の回折パターンを示す。
【図2h】 再投影の回折パターンを示す。
【図3a】 61nm形態の3D再構築と外形密度断面図を示す。
【図3b】 58nm形態の3D再構築と外形密度断面図を示す。
【図3c】 61nm形態の3D再構築と外形密度断面図を示す。
【図3d】 58nm形態の3D再構築と外形密度断面図を示す。
【図4a】 フィブリル中のポリペプチドひだのモデリングを示し、線維の横断面を示す。
【図4b】 フィブリル中のポリペプチドひだのモデリングを示し、1個のプロトフィラメ
ントの側面図を示す。
【図5a】 線維形成過程の間に得られた筋肉アシルホスファターゼの遠紫外線円偏光二色
性スペクトルを示す。
【図5b】 筋肉アシルホスファターゼの赤外線スペクトルのアミドI領域を示す。
【図6a】 筋肉アシルホスファターゼ凝集物の形態発生を示す電子顕微鏡写真であり、反
応の開始から72分後の顆粒状の様相の凝集物を示す。
【図6b】 筋肉アシルホスファターゼ凝集物の形態発生を示す電子顕微鏡写真であり、3
2時間後の短いフィブリルを示す。
【図6c】 筋肉アシルホスファターゼ凝集物の形態発生を示す電子顕微鏡写真であり、2
週間後のアミロイドフィブリルを示す。
【図6d】 筋肉アシルホスファターゼ凝集物の形態発生を示す電子顕微鏡写真であり、イ
ンキュベーションの2週間後に得た筋肉アシルホスファターゼ誘導の凝集物を含
むサンプルの光学顕微鏡写真を示す。
【図7】 枯草菌、Bacillus subtilisからの低温ショックタンパク質
CspBの配列と二次構造内容物を示す。数字は3個のペプチド:CspB−1
(1−22)、CspB−2(1−35)およびCspB−3(36−67)の
最初と最後のアミノ酸を示す。
【図8a】 CD分光法によるCspBペプチドの希釈溶液の特性指摘を示す。
【図8b】 CD分光法によるCspBペプチドの希釈溶液の特性指摘を示す。
【図8c】 CD分光法によるCspBペプチドの希釈溶液の特性指摘を示す。
【図8d】 CD分光法によるCspBペプチドの希釈溶液の特性指摘を示す。
【図9a】 ランダムコイルモデルから推定されたものと、CspB−1についてシミュレ
ートした横断面に適合させることによりCOSYスペクトルにおけるアンチフェ
ーズスプリットから導いた残基特異的3−JNHα結合定数の差を示す。
【図9b】 ランダムコイルモデルから推定されたものと、CspB−3についてシミュレ
ートした横断面に適合させることによりCOSYスペクトルにおけるアンチフェ
ーズスプリットから導いた残基特異的3−JNHα結合定数の差を示す。
【図10a】 アコンゴーレッドアッセイのVISスペクトルを例を示す。
【図10b】 陰性染色したフィブリルの電子顕微鏡写真を示す。
【図10c】 50%アセトニトリル中5mg/mL溶液から乾燥したサンプルから得たX線
線維回折パターンを示す。
【図10d】 βシート構造の典型的な距離に対応するピークを割り当てた、cの回折パター
ンの横断面を示す。
【図11a】 WT−ADA2h試料の電子顕微鏡分析を示す。
【図11b】 WT−ADA2h試料の電子顕微鏡分析を示す。
【図11c】 WT−ADA2h試料の電子顕微鏡分析を示す。
【図11d】 WT−ADA2h試料の電子顕微鏡分析を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 9/00 C12N 9/12 35/00 9/16 B C12N 9/12 9/48 9/16 A61K 37/12 9/48 37/14 (31)優先権主張番号 9909927.7 (32)優先日 平成11年4月29日(1999.4.29) (33)優先権主張国 イギリス(GB) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),JP,US (72)発明者 ドブスン,クリストフアー・マーチン イギリス国、オツクスフオード・オー・エ ツクス・1・3・キユー・テイー、サウ ス・パークス・ロード、ユニバーシテイ・ オブ・オツクスフオード、ニユー・ケミス トリー・ラボラトリー、オツクスフオー ド・センター・フオー・モレキユラー・サ イエンシイズ(番地なし) Fターム(参考) 4B050 CC02 DD11 GG01 GG02 LL01 4C084 AA02 AA03 AA07 BA33 BA44 CA18 DC10 DC50 NA14 ZA361 ZA531 ZB261 ZC351 4H045 AA10 AA30 CA11 CA40 DA37 DA89 EA23 EA24 EA27 EA28 FA34

Claims (32)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的に他のタンパク質を含まないアミロイドフィブリル。
  2. 【請求項2】 天然のアミロイドフィブリルである、請求項1に記載のフィ
    ブリル。
  3. 【請求項3】 アルツハイマー病に関連するAβペプチド、伝染性海綿状脳
    障害に関連するプリオンタンパク質、II型糖尿病に関連する膵島関連ポリペプ
    チド、老年性全身性アミロイドーシスに関連するトランスサイレチンおよびその
    断片、家族性アミロイド多発ニューロパシーに関連するトランスサイレチン変異
    体およびその断片、あるいは全身性アミロイドーシスに関連する他の変異体又は
    トランケートされた又はミスプロセシングされたタンパク質を含む、請求項2に
    記載のフィブリル。
  4. 【請求項4】 タンパク質を含む、非天然のアミロイドフィブリル。
  5. 【請求項5】 pH2.0でウシホスファチジルイノシトール3−キナーゼ
    のp85αサブユニットのSH3ドメイン(PI3−SH3)から形成されるア
    ミロイドフィブリルではない、上記請求項のいずれかに一項に記載のフィブリル
  6. 【請求項6】 ウシホスファチジルイノシトール3−キナーゼのp85αサ
    ブユニットのSH3ドメイン(PI3−SH3)から形成されるアミロイドフィ
    ブリルではない、請求項5に記載のフィブリル。
  7. 【請求項7】 タンパク質が非天然のタンパク質である、請求項4から6の
    いずれか一項に記載のフィブリル。
  8. 【請求項8】 タンパク質が、ウシホスファチジルイノシトール3−キナー
    ゼのp85αサブユニットのSH3ドメイン(PI3−H3)の誘導体又はアミ
    ノ酸変異体、ヒト筋肉アシルホスファターゼ、ウシインスリン、CspBの最初
    の2本(CspB−1)、最初の3本(CspB−2)又は最後の2本(Csp
    B−3)のβ鎖に対応するタンパク質、ならびに野生型ヒトカルボキシペプチダ
    ーゼA2(WT−ADA2h)およびその誘導体又はアミノ酸変異体から選択さ
    れる、請求項4から7のいずれか一項に記載のフィブリル。
  9. 【請求項9】 ウシホスファチジルイノシトール3−キナーゼのp85αサ
    ブユニットのSH3ドメイン(PI3−H3)と、請求項8で定義されたタンパ
    ク質から選択される少なくとも1つのタンパク質を含む、非天然のアミロイドフ
    ィブリル。
  10. 【請求項10】 製薬上活性な化合物をさらに含む、上記請求項のいずれか
    一項に記載のフィブリル。
  11. 【請求項11】 金属をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載
    のフィブリル。
  12. 【請求項12】 銅、銀あるいは金から選択される金属をさらに含む、請求
    項11に記載のフィブリル。
  13. 【請求項13】 1又はそれ以上の反応物に結合することができる1又はそ
    れ以上の官能基をさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のフィブ
    リル。
  14. 【請求項14】 フィブリルの直径が1から20nmである、請求項1から
    13のいずれか一項に記載のフィブリル。
  15. 【請求項15】 フィブリルの直径が5から15nmである、請求項14に
    記載のフィブリル。
  16. 【請求項16】 フィブリルの直径が7から12nmである、請求項15に
    記載のフィブリル。
  17. 【請求項17】 タンパク質を含む溶液を調製することを含み、かかる溶液
    が核形成とフィブリルの成長が許容される時間にわたって起こる状態にあって、
    核形成とフィブリルの成長が生じることを可能にするような、上記請求項のいず
    れか一項に記載のフィブリルを調製するための工程。
  18. 【請求項18】 溶液がアルコールをさらに含む、請求項17に記載の工程
  19. 【請求項19】 溶液が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノ
    ール、トリフルオロエタノールおよびヘキサフルオロイソプロパノールから選択
    されるアルコールをさらに含む、請求項18に記載の工程。
  20. 【請求項20】 溶液がアセトニトリルをさらに含む、請求項17に記載の
    工程。
  21. 【請求項21】 溶液が尿素をさらに含む、請求項17に記載の工程。
  22. 【請求項22】 溶液中のタンパク質の濃度が0.1mMから10mMであ
    る、請求項17から21のいずれか一項に記載の工程。
  23. 【請求項23】 溶液の温度が0℃から100℃である、請求項17から2
    2のいずれか一項に記載の工程。
  24. 【請求項24】 溶液が酸性である、請求項17から23のいずれか一項に
    記載の工程。
  25. 【請求項25】 溶液のpHが0.5から6.5である、請求項24に記載
    の工程。
  26. 【請求項26】 溶液にあらかじめ形成されたタンパク質の粒子が接種され
    ている、請求項17から25のいずれか一項に記載の工程。
  27. 【請求項27】 請求項17から26のいずれか一項に記載の工程によって
    調製される、請求項1から16のいずれか一項に記載のフィブリル。
  28. 【請求項28】 プラスチックとしての、あるいは電子工学又は触媒作用に
    おける、請求項1から16又は27のいずれか一項に記載のフィブリルの使用。
  29. 【請求項29】 ヒトあるいは動物の身体の治療において使用するための、
    請求項1から16又は27のいずれか一項に記載のフィブリル。
  30. 【請求項30】 糖尿病、血液凝固障害、癌および心臓病の治療において使
    用するための薬剤の製造における、請求項1から16又は27のいずれか一項に
    記載のフィブリルの使用。
  31. 【請求項31】 請求項1から16又は27のいずれか一項に記載のフィブ
    リルの無毒性で有効な量をヒトあるいは動物に投与することを含む、ヒトあるい
    は動物を治療する方法。
  32. 【請求項32】 ヒトあるいは動物が、糖尿病、血液凝固障害、癌および心
    臓病に罹患している、あるいは罹患する可能性が高い、請求項31に記載の方法
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