JP2002521682A5 - - Google Patents

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【書類名】 明細書
【発明の名称】 細胞のインサイチュ分析方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生物試料のインサイチュ分析方法であって、
(a)生物試料を、第一染色剤が第一免疫組織化学染色剤と、第一組織染色剤と、第一DNA倍数性染色剤とからなる群から選択されたものであり、第二染色剤が第二免疫組織化学染色剤と、第二組織染色剤と、第二DNA倍数性染色剤とからなる群から選択されたものであるN種の染色剤で染色する工程であって、但しNは3を超える整数であり、さらに、
(i)前記第一染色剤が前記第一免疫組織化学染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二組織染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり、
(ii)前記第一染色剤が前記第一組織染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり、一方、
(iii)前記第一染色剤が前記第一DNA倍数性染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二組織染色剤である、工程と、
(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記N種の染色剤を、前記N種の染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、
を含む方法。
【請求項2】 前記スペクトルデータ採取装置が、干渉計系スペクトルデータ採取装置と、フィルター系スペクトルデータ採取装置と、分散要素系スペクトルデータ採取装置とからなる群から選択されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記第一免疫組織化学染色剤及び前記第二免疫組織化学染色剤が、各々独立的に一次抗体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】 前記一次抗体が、抗エストロゲンレセプター抗体、抗プロゲステロンレセプター抗体、抗p53抗体、抗Her−2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl−2抗体、抗Eカドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15−3抗体、抗CA19−9抗体、抗c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗ras腫瘍タンパク質抗体、抗ルイスX抗体、抗Ki−67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c−myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパL鎖抗体、抗ラムダL鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異的抗原抗体、抗S−100抗体、抗タウ抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体及び抗Tn抗原抗体からなる群から選択されたものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】 前記一次抗体が、検出可能成分で標識したものである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】 前記検出可能成分が、蛍光染料である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】 前記蛍光染料が、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、Cy2、Cy3、Cy5、VECTORレッド、ELF(商標)(酵素標識フルオレセンス)、Cy0、Cy0.5、Cy1、Cy1.5、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、FluorX、カルセイン、カルセイン−AM、CRYPTOFLUOR(商標)(オレンジ(42kDa)、タンジェリン(35kDa)、ゴールド(31kDa)、レッド(42kDa)、クリムソン(40kDa))、BHMP、BHDMAP、Br−オレゴン、ルシフェルイエロー、アレクサ染料類、N−[6−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY(商標)、ボロンジピロメテンジフルオリド、オレゴングリーン、MITOTRACKER(商標)レッド、DiOC(3)、DiIC18、フィコエリトリン、フィコビリタンパク質BPE(240kDa)RPE(240kDa)CPC(264kDa)APC(104kDa)、スペクトルブルー、スペクトルアクア、スペクトルグリーン、スペクトルゴールド、スペクトルオレンジ、スペクトルレッド、NADH、NADPH、FAD、赤外(IR)染料、環状GDPリボース(cGDPR)、カルコフルオルホワイト、チロシン及びトリプトファンからなる群から選択されたものである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】 前記検出可能成分が、非蛍光染料である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】 前記非蛍光染料が、重金属を含むものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】 前記検出可能成分が、実質的に不溶性の呈色反応生成物を有する基質の比色反応を触媒する酵素である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】 前記酵素が、アルカリ性ホスファターゼと、ホースラディッシュペルオキシダーゼと、β−ガラクトシダーゼと、グルコースオキシダーゼとからなる群から選択されたものである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】 前記基質が、アルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】 前記検出可能成分が、発光できるか、少なくとも一種の追加の基質との第二反応であり且つ発光生成物を有する第二反応と化学的に関わり合うことができる、実質的に不溶性の反応生成物を有する基質の発光反応を触媒する酵素である、請求項5に記載の方法。
【請求項14】 前記酵素が、アルカリ性ホスファターゼと、ホースラディッシュペルオキシダーゼと、β−ガラクトシダーゼと、グルコースオキシダーゼとからなる群から選択されたものである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】 前記第一基質及び前記少なくとも一種の追加の基質が、各々独立的にアルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】 前記第一免疫組織化学染色剤及び前記第二免疫組織化学染色剤が、各々独立的に一次抗体及びシグナル増幅機構を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】 前記シグナル増幅機構が、前記一次抗体の定常部を結合できる二次抗体と、前記一次抗体に結合されているビオチンを結合できるアビジン又はストレプトアビジンと、前記一次抗体に結合されているアビジン又はストレプトアビジンを結合できるビオチンとからなる群から選択されたものである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】 前記二次抗体、アビジン、ストレプトアビジン及びビオチンが、各々独立的に検出可能成分で標識したものである、請求項14に記載の方法。
【請求項19】 前記検出可能成分が、蛍光染料である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】 前記蛍光染料が、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、Cy2、Cy3、Cy5、VECTORレッド、ELF(商標)(酵素標識フルオレセンス)、Cy0、Cy0.5、Cy1、Cy1.5、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、FluorX、カルセイン、カルセイン−AM、CRYPTOFLUOR(商標)(オレンジ(42kDa)、タンジェリン(35kDa)、ゴールド(31kDa)、レッド(42kDa)、クリムソン(40kDa))、BHMP、BHDMAP、Br−オレゴン、ルシフェルイエロー、アレクサ染料類、N−[6−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY(商標)、ボロンジピロメテンジフルオリド、オレゴングリーン、MITOTRACKER(商標)レッド、DiOC(3)、DiIC18、フィコエリトリン、フィコビリタンパク質BPE(240kDa)RPE(240kDa)CPC(264kDa)APC(104kDa)、スペクトルブルー、スペクトルアクア、スペクトルグリーン、スペクトルゴールド、スペクトルオレンジ、スペクトルレッド、NADH、NADPH、FAD、赤外(IR)染料、環状GDPリボース(cGDPR)、カルコフルオルホワイト、チロシン及びトリプトファンからなる群から選択されたものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】 前記検出可能成分が、非蛍光染料である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】 前記非蛍光染料が、アルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】 前記検出可能成分が、実質的に不溶性の呈色反応生成物を有する基質の比色反応を触媒する酵素である、請求項18に記載の方法。
【請求項24】 前記酵素が、アルカリ性ホスファターゼと、ホースラディッシュペルオキシダーゼと、β−ガラクトシダーゼと、グルコースオキシダーゼとからなる群から選択されたものである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】 前記基質が、アルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】 前記検出可能成分が、発光できるか、発光生成物を有する第二基質の第二反応を導くことができる、実質的に不溶性の反応生成物を有する基質の発光反応を触媒する酵素である、請求項18に記載の方法。
【請求項27】 前記酵素が、ルシフェラーゼとエクオリンとからなる群から選択されたものである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】 前記第一基質及び前記第二基質が、各々独立的にルシフェリンと、ATPと、コエレンテラジンと、Ca++とからなる群から選択されたものである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】 前記第一組織染色剤及び前記第二組織染色剤が、各々独立的に4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、エオシン、フルオレセインイソチオシアネート、ヘキスト33258、ヘキスト33342、プロピジウムヨーダイド、キナクリン、フルオレセインファロイジン、レゾルフィン、ヘマトキシリン、オレンジG、ライトグリーンSF、ロマノフスキー−ギームザ、メイ−グリュンワルド、ブルー対比染色剤、エチルグリーン、フォイルゲンナフトールイエローS、ギームザ、メチレンブルー、メチルグリーン、ピロニン、ナフトールイエロー、ニュートラルレッド、パパニコラウ染色剤、レッド対比染色剤C及びシリウスレッドからなる群から選択されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項30】 前記第一DNA倍数性染色剤及び前記第二DNA倍数性染色剤が、各々独立的にクロモマイシンA3、DAPI、アクリフラビン−フォイルゲン反応、オーラミンO−フォイルゲン反応、エチジウムブロミド、プロピジウムヨーダイド、高アフィニティDNA蛍光体、DNA結合タンパク質に融合したグリーン蛍光タンパク質、ACMA、キナクリンオレンジ及びアクリジンオレンジ、フォイルゲン試薬、ガロシアニンクロムミョウバン、ガロシアニンクロムミョウバン及びナフトールイエローS、メチルグリーンピロニンY並びにチオニン−フォイルゲン試薬からなる群から選択されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項31】 生物試料のインサイチュ分析方法であって、
(a)生物試料を、第一染色剤が第一免疫組織化学染色剤と、第一組織染色剤と、第一DNA倍数性染色剤とからなる群から選択されたものであり、第二染色剤が第二免疫組織化学染色剤と、第二組織染色剤と、第二DNA倍数性染色剤とからなる群から選択されたものである、複数の染色剤で染色する工程であって、但し、
(i)前記第一染色剤が前記第一免疫組織化学染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二組織染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり、
(ii)前記第一染色剤が前記第一組織染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり、一方、
(iii)前記第一染色剤が前記第一DNA倍数性染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二組織染色剤である、工程と、
(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記複数種の染色剤を、前記複数種の染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、
を含む方法。
【請求項32】 前記スペクトルデータ採取装置が、干渉計系スペクトルデータ採取装置と、フィルター系スペクトルデータ採取装置と、分散要素系スペクトルデータ採取装置とからなる群から選択されたものである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】 前記第一免疫組織化学染色剤及び前記第二免疫組織化学染色剤が、各々独立的に一次抗体を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】 前記一次抗体が、抗エストロゲンレセプター抗体、抗プロゲステロンレセプター抗体、抗p53抗体、抗Her−2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl−2抗体、抗Eカドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15−3抗体、抗CA19−9抗体、抗c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗ras腫瘍タンパク質抗体、抗ルイスX抗体、抗Ki−67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c−myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパL鎖抗体、抗ラムダL鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異的抗原抗体、抗S−100抗体、抗タウ抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体及び抗Tn抗原抗体からなる群から選択されたものである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】 前記一次抗体が、検出可能成分で標識したものである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】 前記検出可能成分が、蛍光染料である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】 前記蛍光染料が、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、Cy2、Cy3、Cy5、VECTORレッド、ELF(商標)(酵素標識フルオレセンス)、Cy0、Cy0.5、Cy1、Cy1.5、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、FluorX、カルセイン、カルセイン−AM、CRYPTOFLUOR(商標)(オレンジ(42kDa)、タンジェリン(35kDa)、ゴールド(31kDa)、レッド(42kDa)、クリムソン(40kDa))、BHMP、BHDMAP、Br−オレゴン、ルシフェルイエロー、アレクサ染料類、N−[6−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY(商標)、ボロンジピロメテンジフルオリド、オレゴングリーン、MITOTRACKER(商標)レッド、DiOC(3)、DiIC18、フィコエリトリン、フィコビリタンパク質BPE(240kDa)RPE(240kDa)CPC(264kDa)APC(104kDa)、スペクトルブルー、スペクトルアクア、スペクトルグリーン、スペクトルゴールド、スペクトルオレンジ、スペクトルレッド、NADH、NADPH、FAD、赤外(IR)染料、環状GDPリボース(cGDPR)、カルコフルオルホワイト、チロシン及びトリプトファンからなる群から選択されたものである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】 前記検出可能成分が、非蛍光染料である、請求項35に記載の方法。
【請求項39】 前記非蛍光染料が、重金属を含むものである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】 前記検出可能成分が、実質的に不溶性の呈色反応生成物を有する基質の比色反応を触媒する酵素である、請求項35に記載の方法。
【請求項41】 前記酵素が、アルカリ性ホスファターゼと、ホースラディッシュペルオキシダーゼと、β−ガラクトシダーゼと、グルコースオキシダーゼとからなる群から選択されたものである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】 前記基質が、アルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】 前記検出可能成分が、発光できるか、少なくとも一種の追加の基質との第二反応であり且つ発光生成物を有する第二反応と化学的に関わり合うことができる、実質的に不溶性の反応生成物を有する基質の発光反応を触媒する酵素である、請求項35に記載の方法。
【請求項44】 前記酵素が、アルカリ性ホスファターゼと、ホースラディッシュペルオキシダーゼと、β−ガラクトシダーゼと、グルコースオキシダーゼとからなる群から選択されたものである、請求項43に記載の方法。
【請求項45】 前記第一基質及び前記少なくとも一種の追加の基質が、各々独立的にアルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである、請求項43に記載の方法。
【請求項46】 前記第一免疫組織化学染色剤及び前記第二免疫組織化学染色剤が、各々独立的に一次抗体及びシグナル増幅機構を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項47】 前記シグナル増幅機構が、前記一次抗体の定常部を結合できる二次抗体と、前記一次抗体に結合されているビオチンを結合できるアビジン又はストレプトアビジンと、前記一次抗体に結合されているアビジン又はストレプトアビジンを結合できるビオチンとからなる群から選択されたものである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】 前記二次抗体、アビジン、ストレプトアビジン及びビオチンが、各々独立的に検出可能成分で標識したものである、請求項44に記載の方法。
【請求項49】 前記検出可能成分が、蛍光染料である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】 前記蛍光染料が、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、Cy2、Cy3、Cy5、VECTORレッド、ELF(商標)(酵素標識フルオレセンス)、Cy0、Cy0.5、Cy1、Cy1.5、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、FluorX、カルセイン、カルセイン−AM、CRYPTOFLUOR(商標)(オレンジ(42kDa)、タンジェリン(35kDa)、ゴールド(31kDa)、レッド(42kDa)、クリムソン(40kDa))、BHMP、BHDMAP、Br−オレゴン、ルシフェルイエロー、アレクサ染料類、N−[6−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY(商標)、ボロンジピロメテンジフルオリド、オレゴングリーン、MITOTRACKER(商標)レッド、DiOC(3)、DiIC18、フィコエリトリン、フィコビリタンパク質BPE(240kDa)RPE(240kDa)CPC(264kDa)APC(104kDa)、スペクトルブルー、スペクトルアクア、スペクトルグリーン、スペクトルゴールド、スペクトルオレンジ、スペクトルレッド、NADH、NADPH、FAD、赤外(IR)染料、環状GDPリボース(cGDPR)、カルコフルオルホワイト、チロシン及びトリプトファンからなる群から選択されたものである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】 前記検出可能成分が、非蛍光染料である、請求項48に記載の方法。
【請求項52】 前記非蛍光染料が、アルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】 前記検出可能成分が、実質的に不溶性の呈色反応生成物を有する基質の比色反応を触媒する酵素である、請求項48に記載の方法。
【請求項54】 前記酵素が、アルカリ性ホスファターゼと、ホースラディッシュペルオキシダーゼと、β−ガラクトシダーゼと、グルコースオキシダーゼとからなる群から選択されたものである、請求項53に記載の方法。
【請求項55】 前記基質が、アルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである、請求項53に記載の方法。
【請求項56】 前記検出可能成分が、発光できるか、発光生成物を有する第二基質の第二反応を導くことができる、実質的に不溶性の反応生成物を有する基質の発光反応を触媒する酵素である、請求項48に記載の方法。
【請求項57】 前記酵素が、ルシフェラーゼとエクオリンとからなる群から選択されたものである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】 前記第一基質及び前記第二基質が、各々独立的にルシフェリンと、ATPと、コエレンテラジンと、Ca++とからなる群から選択されたものである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】 前記第一組織染色剤及び前記第二組織染色剤が、各々独立的に4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、エオシン、フルオレセインイソチオシアネート、ヘキスト33258、ヘキスト33342、プロピジウムヨーダイド、キナクリン、フルオレセインファロイジン、レゾルフィン、ヘマトキシリン、オレンジG、ライトグリーンSF、ロマノフスキー−ギームザ、メイ−グリュンワルド、ブルー対比染色剤、エチルグリーン、フォイルゲンナフトールイエローS、ギームザ、メチレンブルー、メチルグリーン、ピロニン、ナフトールイエロー、ニュートラルレッド、パパニコラウ染色剤、レッド対比染色剤C及びシリウスレッドからなる群から選択されたものである、請求項31に記載の方法。
【請求項60】 生物試料のインサイチュ分析方法であって、
(a)生物試料を、少なくとも4種の異なる免疫組織化学染色剤で染色する工程と、
(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記少なくとも4種の免疫組織化学染色剤を、前記少なくとも4種の免疫組織化学染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、
を含む方法。
【請求項61】 生物試料のインサイチュ分析方法であって、
(a)生物試料を、少なくとも一種の染色剤が免疫組織化学染色剤であり、少なくとも一種のさらなる染色剤が組織染色剤又はDNA倍数性染色剤である、少なくとも3種の染色剤で染色する工程と、
(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記少なくとも3種の染色剤を、前記少なくとも3種の染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、
を含む方法。
【請求項62】 生物試料のインサイチュ分析方法であって、
(a)生物試料を、第一染色剤が免疫組織化学染色剤であり、第二染色剤が組織染色剤であり、第三染色剤がDNA倍数性染色剤である、少なくとも3種の染色剤で染色する工程と、
(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記少なくとも3種の染色剤を、前記少なくとも3種の染色剤の各々に特異的に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、
を含む方法。
【請求項63】 少なくとも4種の異なる免疫組織化学染色剤を含み、各免疫組織化学染色剤がそれぞれの細胞学的マーカーを染色するためのものであり、且つ各免疫組織化学染色剤がスペクトルデータ採取装置を用いて全ての他の免疫組織化学染色剤の存在下で個々に検出されることができるものである、免疫組織化学組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の技術分野及び背景
本発明は、細胞のインサイチュ分析に関し、より詳細には、高空間分解だけでなくスペクトル分解を可能とする、スペクトルイメージング法を用いた複数の免疫組織化学染色剤、組織染色剤及び/又はDNA倍数性染色剤の同時インサイチュ分析に関する。
【0002】
過去10〜15年にわたって、免疫組織化学(IHC)(これは、細胞に適用されたときには免疫細胞化学(ICC)としても知られている)は、診断病理学において欠くことのできない手段となり、外科病理学のプラクティスに実質的な大変革をもたらした。用語「免疫組織化学」と用語「免疫細胞化学」は、ここでは、同意語として使用する。モノクローナル抗体のパネルは、未分化新生物の鑑別診断(例えば、リンパ腫と、カルチノーマと、サルコーマとを識別する)に使用して、一定の腫瘍型に特異的なマーカーを明らかにしたり、悪性リンパ腫を診断するとともに、表現型を決めたり、ウイルス性抗原、腫瘍タンパク質、ホルモンレセプター及び増殖関連核タンパク質の存在を実証することができる。このようなマーカーは、診断に重要であるだけでなく、ある種の腫瘍マーカーが予後に重要であることが明確となってきており、このことは、乳癌において最も広範に示された。これらのマーカーの検討は、細胞学的試料、パラフィン埋め込み組織及び凍結切片を含む、多種多様な被験物についてIHCにより実施できる。ほとんどの臨床的アッセイでは、各スライドについて単一の抗体を用いるが、異なる色のクロモーゲンを使用することにより、同時に二種以上のマーカーを観察/明示することができる。しかしながら、適当なスペクトル分解を処理するための装置を使用しないと、吸収係数がスペクトル的に重なるために、これらのクロモーゲンを定性的又は定量的に検出することが困難である。
【0003】
IHCのほとんどの用途では、染色パターンは、診断情報を与える、意図する組織及び細胞の総染色パターンであるので、染色パターンの定性的評価で十分である。人間の視覚系は、このようなパターン認識のタスクには熟練しており、主観的ではあるけれども非常に迅速におこなうことができる。しかしながら、人間の眼又はCCDカメラは、高スペクトル分解には全く適合しない。しかしながら、イメージ解析が重要な役割を果たすことができる一定のマーカーがある。これらには、ホルモンレセプター、腫瘍増殖マーカー、腫瘍タンパク質、腫瘍サプレッサー遺伝子産生物(例えば、p53)、化学療法耐性因子、腫瘍血管形成、リンパ球サブセット分析等の検出などがある。
【0004】
定量的IHC(QIHC)の一般的な目的は、免疫染色反応の目的とする測定ができるようにすることである。これらの測定は、実験の目的のデータ採取には有用なことがあるが、このような測定の最大の可能性は、ヒトの疾病、とりわけ癌の診断、予後、又は治療を決定するための補助としてのそれらの用途を調べることにある。このような測定をすることのメカニクス(以下で考察する)は別として、多数の問題が、どのように測定をすべきかに影響を及ぼす可能性があるIHCの特殊性に関連している。
【0005】
IHCにより検出される数多くの生物マーカーは、単純な「オール オア ナン」のような発現をせず、検討されている細胞集団は、陽性及び染色度に関してかなりの不均一であることがある。また、一部の抗原が形質膜上、細胞質中又は細胞核中において発現されることができることから、染色反応の局在化が重要なことがある。したがって、細胞集団中のマーカーの分布と細胞内での局在化の両方とも、考慮する必要がある。
【0006】
染色度が直線的にリガンド濃度に関係している直接的にフルオレセイン化した抗体を用いた免疫染色とは異なり、IHCは、以下の2つの理由から理論的に非線型的である:(i)沈殿反応生成物を形成する酵素反応は非線型的であり、(ii)架橋試薬又は錯化試薬を用いた多種多様な増幅法が典型的に用いられるが、これらの目的は、染色感度を増加することである。その結果、抗原の量は、免疫組織化学染色の強度から直接には算出できない。さらに、染色操作の自動化により、通常手動法を用いて得られるよりもコンシステンシーが高まるが、免疫染色の質が実質的に日間でばらつくことがある。
【0007】
しかしながら、一部の研究では、一定条件下では、リガンド濃度と免疫組織化学染色度との間の直線関係が得られることがあることが示されている(ほとんどがモデル系を用いて示された)[van der Ploeg M及びDuijndam WAL、Matrix models:Essential tools for microscopic histochemical research(マトリックスモデル:顕微鏡的組織化学研究に必須の手段)、Histochemistry 1986;84:283]。染色のビオチン−アビジン法が、ペルオキシダーゼ−抗ペルオキシダーゼ法よりもこの目的には適さないことがあることが示唆された。これは、前者が、低濃度の抗原に対して高感度であることと、抗原濃度がより高いと立体障害が生じるためにダイナミックレンジが悪いという欠点によるものである。ラットの膵島細胞中のインスリン濃度を検討しているRahier等[Rahier J、Stevens M、de Menten Y及びHenquin J−C、Determination of antigen concentration in tissue sections by immunodensitometry(イムノデンシトメトリーによる組織切片における抗原濃度の測定)、Lab Invest 1989;61:357−363]は、イメージ解析を用いて、ラジオイムノアッセイとQIHCとの間に優れた相関があることを示すことができた。Rahier等は、より低濃度の抗体を用いるのがこの方法の成功のかぎであり、高濃度の抗体ではインスリン含量との直線関係を示さないとの重要な考察をしている。また、測定の目的が、レベルとは無関係に意図する抗原を含有する全ての細胞を検出することであるときには、より高濃度の抗体を使用しなければならないことも指摘している。しかしながら、より低レベルの抗体を使用するとき、とりわけ複数の抗体を同時に用いようとする場合には、さらに高いスペクトル感度が必要とされる。
【0008】
免疫染色の強度を定量化する試みには、校正標準、公知のレベルの抗原を発現するおそらく細胞系又はある種の内部標準を使用する必要があることが明らかである。これらの問題は、QIHCの各用途においても同様である。
【0009】
QIHCにおいて最も一般的に使用されてきた方法は、標的分子の絶対生化学的濃度ではなく、陽性に染色された細胞の百分率等の集団統計の測定による。この方法は、臨床的フローサイトメトリーに使用される方法に類似しており、一定の表面マーカーを発現する細胞集団の割合(そのマーカーの発現レベルではなく)が、最も一般的に測定される。
【0010】
意図する数多くのマーカーについては、このような方法は、生物学的に非常に意味がある。例えば、細胞サイクル関連マーカーの発現に関心がある場合には、発現の絶対レベルではなくマーカーを発現する細胞の割合を求めて、増殖画分についての情報を得る。
【0011】
乳癌におけるホルモンレセプター測定等のある種のマーカーの場合、標準法により、濃度で表される生化学的定量がなされた。しかしながら、腫瘍は、これらの分子の発現に関して著しい不均一性を示すことがあり、この不均一性を反映した測定値により、より生物学的に関連した情報を得ることができる。結局、2種の腫瘍は、一定の分子の同一の生化学的レベルを示し、しかも、実際には、ともかくいずれのレベルでも発現する腫瘍細胞を極めて異なる割合で有する。この問題は、乳癌におけるエストロゲンレセプター測定について最もよく示されると思われる。
【0012】
組織切片又は細胞学的試料における免疫組織化学反応測定能は、染色法及びイメージング法の選択に大きく依存する。免疫染色(シグナル)レベルは、バックグラウンド(ノイズ)より大きく検出できなければならず、他の細胞又は組織の特徴から区別できなければならない。IHCにおいては、これは、標準的には抗体(一次及び二次)を慎重に滴定して特異的染色を最大化し且つバックグラウンド染色を最小化することによりなされている。組織は、クロモーゲンとは異なる色の組織染色(対比染色としても知られている)を用いて可視化されることにより、染色反応を容易に可視化できる。例えば、褐色反応生成物を生じる免疫ペルオキシダーゼ反応を、典型的には、メチルグリーン又はトルイジンブルー組織染色(対比染色)と組み合わせて視覚コントラストを得る。しかしながら、異なる標識の複数の免疫組織化学染色剤を組織染色剤及び/又はDNA倍数性染色剤と組み合わせて用いるとき、各スペクトル成分が他のスペクトル成分とは無関係に同定できるように、マーカー染色剤自体の間で識別し、さらに対比染色又はDNA倍数性の試験に使用される異なる染色剤間の識別ができることが有利である。これは、従来公知の方法いずれによっても達成できない。
【0013】
あるイメージ解析装置では真の色解析を用いて色スペクトルの特異的領域を測定しているけれども、ほとんどのイメージングシステムは、グレースケール(白黒)光測定に基づいており、測定用光の特定波長を選択する光学フィルターに依存している。最小のスペクトルオーバーラップを示す染色剤の組み合わせが、現在QIHCに最も有用である。しかしながら、スペクトル分解能の増加した装置を用いると、高度にオーバラップしている染料を使用できるようになる。
【0014】
CAS200システム(イリノイ州Lombardに所在するCell Analysis Systems社)は、一台を500nmバンドパスフィルターと結合させ、他の一台を650nmフィルターと結合させた、2台のビデオカメラを用いている。組織を、免疫ペルオキシダーゼ法を用いて、クロモーゲン(褐色反応生成物)としてのジアミノベンジジン(DAB)及び組織(核)対比染色剤としてのメチルグリーンで免疫染色する。視野内の細胞の全ての核のイメージを650nmフィルターを用いて一台のカメラによりとらえ、一方、他のカメラでは、褐色反応生成物のイメージを500nm(DABが最大透過し、メチルグリーンが吸収される波長)でとらえる。反応生成物の光学濃度は光透過率(グレーレベル)を校正されたルックアップテーブルを用いて光学濃度に換算することにより求めることができ、染色反応の相対面積(メチルグリーンにより染色された面積率で表される)を算出できる。単純なしきい値法を使用して、対照抗体で染色したスライドに基づいて、細胞核をとらえ且つより低いDABの検出限界を設定するためのグレーレベルを確定する。試薬のスペクトルのオーバーラップと好適なフィルターの組み合わせの有用性によってのみ制限される、メチルグリーン−DAB以外の組み合わせを用いてもよい。しかしながら、このシステムは、固有の限界がある。すなわち、2つのスペクトルがオーバーラップしないスペクトル成分しか検出できない。より高いスペクトル分解能を有する装置では、成分間のスペクトルオーバーラップがより大きい、複数のスペクトル成分を同時に検出できるであろう。
【0015】
計測、コンピュータアルゴリズム、染色法、又は性能特性(精度、再現性)に関して、QIHCの分野ではまだ標準が確立されていない[Wells WA、Rainer RO、Memoli VA、Equipment,standardization, and applications of image processing(イメージ処理の装置、標準化及び用途)、Am J Clin Pathol 1993;99:48−56]。このような標準化は、進歩はしているが、別の技術的に関連した領域、フローサイトメトリーにおいては達成することが困難であった[Muirhead KA.、Establishment of quality control procedures in clinical flow cytometry(臨床フローサイトメトリーにおける品質管理法の確立)、Ann N Y Acad Sci 1993;677:1−20;及びNational Committee for Clinical Laboratory Standards、Clinical applications of flow cytometry;Quality assurance and immunophenotyping of peripheral blood lymphocytes;tentative guideline(フローサイトメトリーの臨床的用途;末梢血リンパ球の品質保証及び免疫表現型の決定;仮指針)、Villanova:NCCLS;1992;NCCLS document H42−T(ISBN1−56238−15.5−5)]。使用すべき正確な抗体及びクロモーゲン、被測定視野数及び組織切片数、結果の報告に使用される単位、品質管理物質、及び機器の校正を含む、臨床的実験室試験に重要な標準化の問題は、QIHCについてはいまだ解決されていない。本明細書から明らかなように、本発明により、このような標準化が極めて大きく進展する。
【0016】
腫瘍細胞増殖が、リンパ腫[Braylan RC、Diamond LW、Powell ML及びHarty−Golder B、Percentage of cells in the S phase of the cell cycle in human lymphoma determined by flow cytometry:Correlation with labeling index and patient survival(フローサイトメトリーにより測定されるヒトリンパ腫における細胞サイクルのSフェーズにおける細胞百分率:標識インデックス及び患者の生存との相関)、Cytometry 1980;1:171−174;並びにBauer KD、Merkel DE、Winter JN等、Prognostic implications of ploidy and proliferative activity in diffuse large cell lymphomas(拡散大細胞リンパ腫における倍数性及び増殖活性の予後の意味)、Cancer Res 1986;46:3173−3178]、乳癌[Clark GM、Dressler LG、Owens MA、Pounds G、Oldaker T及びMcGuire WL、Prediction of relapse or survival in patients with node−negative breast cancer by DNA flow cytometry(DNAフローサイトメトリーによるノードネガティブ乳癌患者の回帰又は生存率の予測)、N Engl J Med 1989;320:627−633;Silvestrini R、Daidone MG及びGasparini G、Cell kinetics as a prognostic marker in node−negative breast cancer(ノードネガティブ乳癌における予後マーカーとしての細胞運動学)、Cancer 1985;56:1982−1987;並びにSigurdsson H、Baldetorp B、Borg A等、Indicators of prognosis in node−negative breast cancer(ノードネガティブ乳癌における予後の指標)、N Engl J Med 1990;322:1045−1053]及び結腸癌[Bauer KD、Lincoln ST、Vera−Roman JM等、Prognostic implications of proliferative activity and DNA aneuploidy in colonic adenocarcinomas(結腸アデノカルチノーマにおける増殖活性及びDNA異数性の予後の意味)、Lab Invest 1987;57:329−335]を含む多種多様な一般的に生じる悪性腫瘍について予後の重要性を有していることがはっきりと実証されるようになってきている。ある研究では、たとえ総DNA含量分析(「倍数性」)がそうでなくても、腫瘍細胞増殖が独立した予後有意性を有する[Visscher DW、Zarbo RJ、Greenawald KA及びCrissman JD、Prognostic significance of morphological parameters and flow cytometric DNA analysis in carcinoma of the breast(胸部のカルチノーマにおける形態的パラメータ及びフローサイトメトリーDNA分析の予後有意性)、Pathol Ann 1990;25(その1):171−210]。
【0017】
有糸分裂カウントは、一般的に増殖についての貧弱で信頼のおけない尺度であるとみなされているが、これらは、何ら特別な準備法を必要としない。
【0018】
放射標識チミジンの取り込み、すなわち、「チミジン標識指数」(TLI)は、十分に確立された方法であり、大多数により、腫瘍細胞運動学を測定するための「黄金標準」とされている。TLIによりSフェーズ活性の正確な評価が得られ、組織学的相関があるが、この方法は、面倒であり、臨床実験には容易に適合できない。
【0019】
フローサイトメトリー(FCM)は、主にDNA含量分析(「倍数性」)のSフェーズ部分の定量化による細胞サイクル活性の測定に広範に使用されてきた。しかしながら、この方法には、多数の重大な技術上の制限がある。第一に、固形腫瘍から単細胞懸濁液を得るのが困難なことがあり、様々な数の腫瘍細胞が調製中に失われることがある。第二に、腫瘍細胞は、良性正常及び炎症細胞により種々に希釈され、これにより、特にDNA2倍体腫瘍についてのSフェーズ画分の過小評価を生じる恐れがある。第三に、一連のオーバーラップ曲線からなるDNA含量分析(「倍数性」)が複雑なために、曲線フィットアルゴリズムを正確に使用してヒストグラムのSフェーズ部分を測定することが不可能となる。マルチセンターの研究により、フローサイトメトリーSフェーズ画分についての再現性が悪く、測定の実用的な臨床的有用性が多少疑わしいものであることが示された。フローサイトメトリーによる細胞運動学測定に関連した別の問題は、Sフェーズ画分のみが典型的に求められ、一方、有意な割合の腫瘍細胞集団が、サイクルには入っているがまだDNAを合成していない細胞からなる細胞サイクルのG1フェーズにあると思われる。おそらく、2種の腫瘍が、同一のSフェーズ画分を有するが、非休止段階での総細胞の画分において顕著に異なり、したがって、異なる成長運動学を示し、サイクル依存性化学治療剤に応答することがある。
【0020】
これらの理由の全てにより、腫瘍細胞サイクル分析のインサイチュ法により、離解した腫瘍細胞を用いて得ることができるものよりも生物学的に意味のある情報を得ることができる[Weinberg I.S.、Relative applicability of image analysis and flow cytometry in clinical medicine(臨床医薬におけるイメージ解析及びフローサイトメトリーの相対的適合性)、Bauer KD及びDuque RE編、Flow cytometry:Principles and applications(フローサイトメトリー:原理及び用途)、Baltimore:Williams及びWllkins;1992:359−372;Weinberg DS、Proliferation indices in solid tumors(固形腫瘍における増殖指数)、Adv Pathol Lab Med 1992;5:163−191]。得られた測定値が確実に腫瘍細胞について特異的になされることに加えて、インサイチュ法により、腫瘍のより広範囲に及ぶサンプリング及び腫瘍細胞不均一性の測定が可能である。
【0021】
核DNAの定量化が、研究用途及び臨床用途の両方においてますます実用化がなされている。
【0022】
フローサイトメトリー又はイメージサイトメトリーによるDNA含量の測定は、染色剤の量がDNAの量を表すこと、及びこの染色剤の量が機器により正確に測定されることを前提としている。これらの前提は、(i)DNA標識法(蛍光染料、色素反応又は染色)が特異的であり(全てのDNAが標識されており、且つDNAのみ)、化学量論的であり(染色強度は、DNA含量に比例して変化する)、且つ安定である(染色強度は、時間の経過及び測定の反復によっては変化しない)こと;(ii)蛍光染料により放出される光、又は染色剤により吸収される光を測定するのに使用される機器が正確であり(真の染色剤量に近い結果が得られる)、そしてたとえ真の染色剤量に近似していなくても、再現性があり(同じ核について反復したときの測定値が極めて類似している結果が得られる)、且つ直線的である(染色剤量に完全に比例する結果が得られる)ことを意味する。
【0023】
残念ながら、染色法と従来技術の機器の両方には、最終的な測定値が核に実際に存在するDNAの絶対量を表していないという周知の限界がある。
【0024】
化学量論が、通常の対照により容易に確認できるのに対して、特異性は、個々の細胞レベルでのDNA含量のサイトメトリー測定の代替法がないので測定できない。
【0025】
例えば、(i)極めて特異的な蛍光染料がG−C(例えば、ミトラマイシン、クロマイシンA3)又はA−T(例えば、ヘキスト社、DAPI)DNA塩基対に結合し、したがって、部分的にしかDNAを検出せず、塩基対配列に依存する測定値が得られる;(ii)フォイルゲンのような色素反応は、酸加水分解を伴い、DNA断片の一部が、脱縮合クロマチンから放出されるのと同じ速度で除去される。したがって、これらの反応では、DNAを部分的にしか検出せず、真性クロマチンとヘテロクロマチンとのバランスに応じた測定値が得られる;(iii)固定培地は、ヒストンとの相互作用の方法に応じて、さらなる加水分解を阻害するか、又は容易にすると思われる。
【0026】
フォイルゲン染色核のイメージサイトメトリーに関する限り、ベール−ランベルトの法則は完全には当てはまらない。これは、以下の理由による:(i)染色剤の光学濃度(OD)に対する直線性が、ODが1単位を超えて増加するにつれて漸次失われていく(これは高度に染色されたヘテロクロマチンの場合にしばしば見られる);(ii)染料の分布が、空間的に均一ではなく、したがって、ピクセルサイズが、光学素子の分解能から超えて増加するにつれて増加する分布誤差が生じる;(iii)染料の吸収係数が光の波長とともに変化して、濃度計での算出が、単色光にしか適用されない。これらは、目視観察に十分な程度の強度を放出しないので(非常に大きなアークランプと組み合わせない限り)、通常のイメージサイトメトリーではモノクロメーターを使用せず、最大吸収の中央が±10nm(通常装置ごとに異なる)であるフィルターを使用する。
【0027】
上記のことを考慮することに加えて、試料と用いられる従来技術の機器は、光学的に妥協したものであるので、ガラススライド、取り付け媒体、レンズ及びプリズムによる反射、屈折及び回折の原因となる。予測される幾何学的経路に従わない光は、Schwarzchild−Villiger効果とも称されるグレアを生じて、核に入射する光線強度と、被験物から出る光線強度との比をゆがめることとなる。したがって、全てのピクセルOD計算値は、わずかに誤っている。この誤差は、光学的視野サイズが増加するにつれて増加する。したがって、高性能顕微鏡を使用することが、イメージサイトメトリー測定のばらつきに影響する最も重要な因子である、濃度計による測定のこの系統誤差を減少させるのに欠くことができない。
【0028】
また、ビデオカメラは、振動や電磁場、イメージアフターグロー及び飽和に影響されやすく、これらの全ての因子が、ディジタル化前の信号のゆがみに影響する。現在のところ、電荷結合素子(CCD)カメラにより、濃度測定に関する限り、最も再現性のある結果が得られることは疑いのないところである。
【0029】
上記の制限は、全て広範に調査された負の誤差の一因となる。したがって、真の細胞DNA含量が、サイトメトリー測定では得ることができないことは明白である。したがって、一部の市販されているイメージサイトメトリー装置により、一核当たりのピコグラムDNAで表される測定値が得られることは、極めて驚くべきことであり、一般に混乱を招き、さらには、このような装置を使用する臨床医を故意にミスリードすることとなる。
【0030】
染色法と測定法が正しく実施され且つ制御されることを条件として、DNA特異的染色剤の定量化は、総増殖活性及び総細胞遺伝異常の観点で解釈することができ、したがって、鑑別診断及び予後について意図する腫瘍特性をさらにどのように調査を進めるかについて明確な目安となる。
【0031】
DNAの定量的染色のための種々の染色剤及び色素試薬は、文献において推奨されてきたが(表1参照)、最終的には、それらのうちの一つだけが、DNA細胞光度測定法に世界的に受け入れられた。これは、フォイルゲンとロッセンベックにちなんで命名された反応であり、しばしば単にフォイルゲン反応とも呼ばれる。厳密に言えば、フォイルゲン反応は、染色ではなく色素反応である。フォイルゲン染色及びフォイルゲン反応のような用語は、現在、DNAについて化学量論的である唯一の染色法である。これは、DNAの染色が、定量的且つ特異的であることを意味している。表1に述べられている全ての他の方法は、定量的ではあるが、DNAには特異的でない。定量的DNA染色についてのフォイルゲン反応がうまくいったのは、この独自性によるものであることは間違いない。
【0032】
フォイルゲン反応は、種々の準備工程からなる複雑な細胞組織化学法である。主として、反応は、酸加水分解と称される方法から始まる:細胞物質を固定したスライドを、塩酸(HCl)に浸漬して、DNA分子からプリン塩基であるアデニンとグアニンを分裂させることにより、プリン不含DNA分子にアルデヒド基を発生させる(これは、アプリン酸(APA)と称される)。第二工程で、スライドを、アルデヒド基に共有結合する染料を含有するシッフ試薬に浸漬する。過剰の染料を除去した後、スライドを脱水し、通常通り取り付ける。正しく染色された物質では、細胞核が赤紫色に染色され、細胞質とバックグラウンドは染色されない。フォイルゲン反応の種々の工程は、これらを標準化して染色性能の再現性を良好にしなければならない場合には、決定的に重要となる。したがって、関連する準備工程を検討する際、可能性のある誤差源を考慮しなければならない。
【0033】
【表1】
Figure 2002521682
【0034】
通常通り、酸加水分解にHClを使用するが、原則として、いずれの酸も好適に使用できる。酸は、DNA分子に2つの影響を及ぼす:(i)プリン塩基を除去してDNA分子中にアルデヒド基を生成する;(ii)大きなAPA分子をより小さい断片に解重合させる。これらの断片は、細胞核から部分的に除去されて酸溶液に拡散する。アルデヒド基の生成により核染色強度が増加するのに対して、APA断片の損失により細胞核から染色可能物質が失われ、したがって、染色強度が減少する。このようにして、本発明者等は、2種の反対方向の化学反応を用いた。各反応は、特異的且つ複雑な運動力学に従い、得られた反応曲線は、加水分解プロファイル又は加水分解曲線と称する。
【0035】
この加水分解プロファイルは、さらに4つのフェーズに分割できる:(i)染色強度の増加;(ii)染色強度が最大であるピークフェーズ;(iii)染色強度が一定であるプラトーフェーズ;及び(iv)染色強度の減少。
【0036】
フェーズ(i)は、アルデヒド基の連続的な生成により特徴付けられる。APA断片の損失は最初は最小であり、細胞核における染色可能物質の量は、フェーズ(ii)に到達するまで一定に増加する。ピークは、非常に短いので、加水分解プロファイルでは目視ができないことがある。プラトーフェーズ(iii)中、アルデヒド基の連続的生成とAPA断片の損失との間のバランスを見て、その結果、染色強度が一定期間にわたって一定のままであることが分かる。フェーズ(iv)では、APA断片の損失が、新しいアルデヒド基の生成を上回り、染色強度が減少する。長時間の加水分解後、生成アルデヒド基数が最大であるが、全てのAPA断片が細胞核から除去されており、染色強度はゼロである。
【0037】
実際には、加水分解時間の変動が小さいほど染色強度に及ぼす影響がほとんどなくなるフェーズ(iii)中は、酸加水分解を停止することが重要である。
【0038】
加水分解曲線の形状は、いくつかの要因によって影響されるが、そのうちの一部しか標準化できない。
【0039】
高度に縮合されたDNAは、脱縮合DNAよりも酸加水分解に影響されにくい:フェーズ(i)及びフェーズ(iv)は、急峻度がより小さく、プラトーフェーズが遅延される。細胞の生物学的特性としてのDNAの緻密度は、細胞の種類によって異なり、同じ細胞では細胞サイクル中で異なる。被験物サンプリング等の細胞調製法及びとりわけ物質の固定は、人工的にDNAの緻密度、したがって、酸感度に影響することがある。
【0040】
酸浴が高温であると、4フェーズの全てが短縮される。フェーズ(iii)は、数秒の短時間でよく、顕著なプラトーは検出できないことがある。加水分解が、極めて急峻なフェーズ(i)又は(iv)で頂点となる場合、処理時間が極短時間でも変動しても、染色の変動がかなりのものとなる。極めて短いピークフェーズを有する短い加水分解プロファイルは、通常、酸浴を用いて60℃でのいわゆる熱加水分解法で見られ、正しい時点、すなわち、フェーズ(iii)において加水分解を停止することが不可能なことがしばしばある。より頻繁には、4〜5モル/リットルHClでの常温加水分解を、約22℃で実施する。この場合、通常の条件下では、プラトーフェーズの長さは数分である。次に、スライドを水道水でさっとすすいで酸加水分解を停止する。
【0041】
酸浴への種々の添加剤が文献において推奨されてきたが、これらは、細胞核からのAPA断片の損失を最小限に抑えなければならない。しかしながら、これらの添加剤は、実用上重要な役割を果たさない。
【0042】
シッフ試薬は、塩基性フクシンと称される染料混合物を含有する無色水性試薬である。塩基性フクシンは、通常4種のカチオントリアリールメチン染料(パラローザニリン並びにそのメチル化同族体であるローザニリン、マゼンタII及びニューフクシン)から構成されている。高品質の塩基性フクシンは、パラローザニリンを高割合で含有する。シッフ試薬は、関連染料がスルファイトが染料分子に結合したロイコ型で存在するので、無色である。シッフ試薬の着色(塩基性フクシンに基づく)は、スルファイトの損失と溶液の劣化を示しているので、そのときには捨てなければならない。種々の塩基性フクシンの代替物が推奨されたが、それらのうちには、チアジン染料チオニンがある。チオニンの利点は、細胞核を、細胞学者及び病理学者が目でスライドをチェックしようとするときに使用する色である青色に染色することであり、エオシンY又はコンゴレッドによる細胞質の対比染色が容易に実現できる。チオニン系シッフ試薬は、通常完全には無色でない。
【0043】
シッフ試薬での染色後、物質を、染料不含スルファイト水ですすぐ。スルファイトにより、過剰の染料が細胞核及び細胞質から除去され、共有結合した染料分子だけが細胞核内のAPA分子に固定されたままとなる。スライドのバックグラウンドは、フォイルゲン反応が正しく実施されたときには完全に未染色状態でなければならない。
【0044】
酸加水分解は、フォイルゲン反応の最も重要な工程である。正しく実施された加水分解は、プラトーフェーズで停止しなければならない。正しい温度で好適なモル濃度のHClを用いることが重要である(例えば、22℃で5モル/リットルHCl又は27.5℃で4.0モル/リットルHCl)。好適なモル濃度の酸は、市販品でもよいし、濃HClから容易に調製できる。4℃の冷蔵庫に保存されたHClを酸が暖まるのを待たずに直ちに使用することがしばしばあるが、これは、加水分解反応を妨害して、プラトーフェーズに到達する前に反応が停止することがよくある。温度制御水浴を使用することが推奨される。これが可能でない場合には、酸溶液の温度を慎重に測定して誤った光度測定結果を回避しやすいようにする。
【0045】
固定剤を変更すると、加水分解プロファイルに著しく影響を及ぼすことがある(クロマチンの緻密度、したがって、DNAの酸感受性を変化させることにより)ことを認識することが極めて重要である。固定剤を変更することは、加水分解曲線を再評価しなければならないことを意味する。したがって、関連実験で確立され且つ信頼性のある一貫した染色結果が得られることが判明した一つの染色プロトコルに固定するのがよいと思われる。
【0046】
染色法自体は重要ではない。染色は、少なくとも45分間実施して、反応が完了するのに十分な時間を与えなければならない。高品質且つ一貫した品質のシッフ試薬が、市販されている。
【0047】
ガロシアニンクロムミョウバン(GCA)は、金属と錯体を形成するカチオンオキサジン染料である。GCAは、DNAとRNAを定量的に染色するので、DNA特異的ではない。DNAの光度測定には、染色したRNA又はRNAの酵素的若しくは加水分解的除去についての光度補正が必要である。EinarsonGCA染色プロトコルでは、高温で最大48時間の染色時間を規定しており、通常の細胞学について使用することは不可能である。Husain及びWattsにより、染色時間が約15分間である変更GCAが提案された。
【0048】
フォイルゲンと比較して、Husain及びWattsによるGCAは、以下の利点を有する:(i)酸浴を使用せず;(ii)染色時間が15分間という短時間;(iii)グレー−ブルーの細胞核。一方、欠点は、(i)DNA特異的でない;(ii)バックグラウンド染色(RNAによる)がある;(iii)染色液の保存寿命が短い(約6週間)ことである。染色の特異性は、RNAを除去するがDNAは除去されない穏やかな加水分解(1モル/リットルHCl、22℃、10分間)により向上させることができる。染色させたDNAからのGCAの損失なしにアニオン対比染色をおこなうことができる。
【0049】
GCAは、湿式固定物質と乾式固定物質の両方を染色する。乾式固定スライドは、染色強度が顕著に低い。湿式固定物質については99%(v/v)エタノールで10分間、又は乾式固定物質については3.7%(v/v)中性緩衝ホルムアルデヒドが好適な固定剤である。ポリエチレングリコール(PEG)を含有する市販のスプレー式固定剤を使用する場合には、スライド上のPEGフィルムを除去してから、スライドを99%(v/v)エタノールで5分間洗浄することにより染色する必要がある。
【0050】
両方の方法(フォイルゲン反応及びGCA)は、等しくDNAの細胞光度測定に好適である。しかしながら、核クロマチンの組織を高光学分解で測定すると、これらの方法での結果が完全に異なったものとなる:酸加水分解によりクロマチン構造が著しく変化し、フォイルゲン染色細胞核のクロマチン組織が、GCA染色物質の組織とは完全に異なったものとなる。
【0051】
GCAは、全般的に、フォイルゲン反応よりも決定的ではなく且つ実施するのが容易である。それにもかかわらず、本発明者等は、基質特異性と染色液の安定性の面からフォイルゲン反応を好ましいと考えている。しかしながら、一定の染色品質には、プロトコルを慎重に標準化することが必要である。
【0052】
細胞サイクル関連核抗原に対する多種多様なモノクローナル抗体が、市販されており、組織及び細胞の免疫組織化学染色に使用できる。これらの抗体を用いたヒト腫瘍についての研究からの刊行物数は、指数的に増加している。
【0053】
最も一般的に用いられている抗体は、Ki−67であり、この抗体は、全ての系列のヒト細胞における増殖関連核抗原を染色する[Gerdes J、Schwab U、Lemke H及びStein H、Production of a mouse monoclonal antibody reactive with a human nuclear antigen associated with cell proliferation(細胞増殖と関連したヒト核抗原と反応性のあるマウスモノクローナル抗体の産生)、Int J Cancer 1983;31:13−20;Gerdes J、Lemke H、Baisch H、Wacker H−H、Schwab U及びStein H、Cell cycle analysis of a cell proliferation−associated human nuclear antigen defined by the monoclonal anKi−67(モノクローナルKi−67により定義される細胞増殖関連ヒト核抗原の細胞サイクル分析)、J Immunol 1984;133:1710−1715;並びにGerdes J、Li L、Schlueter C等、Immunobiochemical and molecular biologic characterization of the cell proliferation−associated nuclear antigen that is defined by monoclonal antibody Ki−67(モノクローナル抗体Ki−67により定義される細胞増殖関連核抗原の免疫生化学的及び分子生物的特性付け)、Am J Pathol 1991;138:867−873]。この抗体は、細胞サイクルのG、S、G及びMフェーズにおける細胞の核を染色するが、休止(Gフェーズ)細胞の核を染色しないという、有用な特性を有する。いくつかの研究により、Ki−67抗体により染色された腫瘍細胞核の割合は、胸部カルチノーマ、リンパ腫、髄膜腫、グリア細胞及び星状細胞脳腫瘍、悪性黒色腫及びサルコーマを含む、多種多様な腫瘍型についての腫瘍グレード及び他の予後特徴と相関関係があることが明らかにされた。非ホジキンリンパ腫では、Ki−67染色は、作用分類グレードと関連しており、Ki−67染色により測定したときの増殖画分の増加は、誤った予後と関連している。乳癌においては、Ki−67染色が、核グレード及びリンパ節の状態と相関され、いくつかの研究により、この種の癌におけるKi−67染色の予後有意性が示された。Ki−67抗体の臨床的有用性は、抗原が凍結組織で保存され、標準固定で失われることにより、多少限定された。しかしながら、Ki−67により染色されたのと同じ抗原を染色すると思われるモノクローナル抗体(MIB1)が産生し、しかもこれはパラフィン切片で使用できるものである。したがって、保存パラフィン埋め込み組織について広範な追想研究を実施してこの抗体による染色の予後有意性を測定することができると思われる。最近記載された抗体Ki−S1は、Ki−67と類似の染色特性を有すると思われ、パラフィン切片で使用できる。Ki−S1染色について陽性の腫瘍細胞核の相対画分は、乳癌において予後有意性を有すると思われる。
【0054】
他の増殖関連核マーカーは、臨床的有用性を有することを示すことができる。PCNA/サイクリンは、増殖細胞に存在する36kDa核タンパク質であり、DNAポリメラーゼ−デルタの補助タンパク質である。フローサイトメトリーの研究により、PCNA/サイクリンの2つの画分が、細胞核に存在することが明らかとなった。このうち、非イオン洗浄剤に不溶である画分は、より細胞サイクルのSフェーズに限定される。このタンパク質の免疫組織化学染色は、アルコール又はホルマリンに固定された凍結し且つパラフィンに埋め込んだ組織で示された。したがって、保存組織の研究が可能である。しかしながら、組織切片の染色は、組織調製法及び固定法だけでなく、使用される抗体のクローンによって異なり、抗原検出度は、固定持続時間に影響されやすく、固定時間が長いほど抗原損失が大きくなると思われる。パラフィン埋め込み組織におけるPCNAの検出は、マイクロ波法を用いて向上できることが示され、それにより、フローサイトメトリーSフェーズ画分との優れた相関が得られた。PCNA/サイクリンについて染色された核は、異なる陽性度を示し、研究により、より多くの強く染色された核がSフェーズ細胞に相当することが分かった。このことは、勿論、使用される方法とは無関係に、抗原の発現を正確に定量化するのに重要である。
【0055】
アルファDNAポリメラーゼに対する抗体を、正常組織と悪性組織の組織切片に適用し、臨床的有用性があることが分かった。P105は、最初G/Gフェーズ遷移で発現され、Mフェーズを介して発現が増加した核抗原である。しかしながら、組織切片にこの抗体を使用する試みは、多様な形で成功し、抗体は、組織切片における手段よりもフローサイトメトリーの検討において有用な手段であることが分かった。細胞サイクル中に多数の腫瘍タンパク質のレベル発現に変化があるが、固形腫瘍における細胞サイクル活性を分析する際にこれらのマーカーを使用することは、過発現が完全に関連してはいないので、疑問の余地がある。さらなるマーカーを以下にまとめて示す。
【0056】
増殖関連核抗原に対する抗体を用いたほとんどの免疫組織化学の研究において、染色は、推定により測定するか、時間のかかる手動カウントにより測定している。このような手動分析を実施するのに必要とする追加の時間によって、多忙な病理プラクティスの時間的制限が所与のものとすれば、通常の臨床的用途には使用できなくなる。
【0057】
イメージ解析による核抗原用染色の定量化により、このような測定の速度、精度及び再現性を得る手段が提供される。上記で述べたCAS200システムでは、2台のビデオカメラを使用して、顕微鏡イメージを光学フィルターを介して別個に見ている。この場合、視野(650nm)内でエチルグリーン染色核の全てをとらえるか、同じ視野において、免疫ペルオキシダーゼ反応(500nm)の褐色反応生成物をとらえている。緑色染色領域と褐色染色領域のマップを重畳することにより、免疫組織化学反応により占められる核面積%から迅速に計算ができる。ポジティブ染色のしきい値は、対照抗体を用いて染色されたスライドを用いて得られる。この測定は、個々の核をカウントし且つ染色反応と相関させることを必要とする“ポジティブ核%”とは同一ではない。このような測定は、接しているか、重なり合っていることがよくある個々の核を区別することが困難又は不可能なことのある組織切片よりも細胞学的試料によってより容易におこなうことができる。核面積測定は迅速になされ、結果を、測定した全ての顕微鏡視野の累積平均として表す。染色反応の強度は、この測定では考慮されない。但し、ポジティブ染色のしきい値を調整して、例えば、全ての陽性核ではなく最も強く染色された核のみを測定できる。しかしながら、このシステムは、スペクトル分解の面で非常に限定され、したがって、用途が限られる。同様の空間分解とより高いスペクトル分解との組み合わせを可能としたシステムを用いればQIHCの分野に大変革をもたらすことが分かるであろう。
【0058】
QIHCを実施する一方で、視野の選択は重要である。これは、腫瘍は、増殖活性について全く不均一なことがあり、平均又は最大増殖活性が最も臨床的に重要であるかどうかははっきりしないからである。悪性リンパ腫を検討する際、例えば、Ki−67染色を、ランダム視野選択(コンピュータが生成)又は最大増殖画分を有するとして判断される視野の選択的測定を用いて測定した。ランダム視野選択による測定は、リンパ腫のグレードだけでなくフローサイトメトリーSフェーズ画分とよく相関することが分かったのに対して、最大増殖領域のみを選択したものはこれらの相関が失われ、グレード間での差異はなかった。したがって、悪性リンパ腫においては、多数の視野にわたって平均的増殖活性の測定をおこなうのが、最も情報量が多い傾向がある。多様な量のストローマを有する固形腫瘍では、測定からストローマ細胞と炎症細胞を排除するのが理にかなっている。乳癌におけるKi−67発現の測定についての研究では、フローサイトメトリーSフェーズ画分との比較的弱い相関が見られたが、これは、フローサイトメトリーにより占められていない腫瘍細胞の種々の希釈を所与のものとすれば予想のできるものである。
【0059】
平均的Ki−67染色の統計的に信頼のおける測定値を得ようとする場合、累積染色%の変化が平均の5%を超えて異ならないように十分な視野を測定する必要がある。ある研究者等は、全てのこのような測定値は、%値+/−誤差限界(試料サイズに基づいて算出できる)として表さなければならない。視野数は、腫瘍内の不均一性によって異なるが、統計分析だけでなく経験によっても、視野数が約10〜20あればほとんどの場合95%の信頼区間を得るのに十分であることが示された。しかしながら、この平均測定値は、必ずしも生物学的に最も関連があるとは限らない。
【0060】
乳癌におけるPCNA/サイクリン染色の測定用イメージ解析を用いて、腫瘍の中央部と周辺部において腫瘍細胞増殖の度合いに有意の差があることが示された。乳癌の個々の症例におけるインサイチュ及び浸潤成分の増殖を比較したところ、これらの成分は通常同程度のKi−67染色を示すが、低増殖画分又は高増殖画分を有する腫瘍の分類に影響を及ぼす不一致が生じることあることが分かった。浸潤成分が臨床の過程についてより生物学的に関連していると仮定すると、測定視野を選択するのに組織病理の面に慎重に注意を払うことが重要であると思われる。さらに、細胞サイクルを介した進行中の核発現のレベル及びパターンの変化が、Ki−67及びPCNA/サイクリンについて認められた。イメージ解析を用いると、組織分析だけでなく、限定された強度範囲内のレイニングを測定することにより、Sフェーズ等の細胞サイクルの特異的フェーズにより密接に関連した測定値を得ることができる。しかしながら、いずれの場合においても、優れた空間分解を伴ったイメージ分析は、スペクトル分解の面で極めて限定されており、この限定は、本発明により解決される。
【0061】
乳癌の数多くの症例は、ホルモン療法に反応し、腫瘍細胞に関連したエストロゲンレセプターの存在が、予後重要性を有するとともに、抗エストロゲン療法の患者を選択する際の予測値を示すことが分かった。最も一般的に生化学的方法により腫瘍エストロゲンレセプターを測定することは、乳癌の診断及び治療における標準となった。一般的に、エストロゲンレセプター陽性腫瘍を患った患者の60%〜70%は、ホルモン療法に反応を示すのに対して、レセプター陰性症例の5%しか反応しない。
【0062】
米国では、エストロゲンレセプター及びプロゲステロンレセプターの生化学的アッセイは、主に乳癌、特にデキストラン塗布チャコール(DCC)法に使用される。しかしながら、生化学的アッセイに付随する多数の技術的問題により、その有用性が制限される。第一に、マンモグラフィが広範に使用されることにより、増加した割合の切除された腫瘍が小さすぎて生化学的分析(300〜500mgの組織が必要)ができず、細針吸引試料も、同様に通常の方法によっては評価できない。Brigham and Women’s Hospitalでは、切除された胸部腫瘍の約半分は、小さすぎてDCC分析ができない。第二に、形態学的相関の欠如は、生化学的アッセイにおいてかなりの誤差を生じることがある。これは、混合された良性胸部構造が偽陽性の結果を生じることがあり、正常細胞及び炎症細胞による過度の腫瘍希釈は、偽陰性の結果を生じることがある。処理前に組織について凍結切片調製(ほとんどの実験では通常実施されない工程)を実施しない限り、サンプリング誤差は、検出することが困難なことがある。第三に、DCC法は、極めて労働集約的である。したがって、これらの問題を回避し、且つ腫瘍ホルモンレセプター測定の予後及び治療上の有用性を向上させるアッセイ法を開発することに大きな関心が寄せられた。
【0063】
エストロゲンレセプター(ER)及びプロゲステロンレセプター(PR)に対するモノクローナル抗体の市販品が入手できることにより、標準的免疫組織化学法を用いたホルモンレセプターの目視検出が可能となった[Greene GL及びJensen EV、Monoclonal antibodies as probes for estrogen redetection and characterization(エストロゲン再検出及び特性付け用プローブとしてのモノクローナル抗体)、J Steroid Biochem 1982;16:353−359]。数多くの研究において、ER/PRの免疫組織化学測定と標準生化学的方法との間に良好な相関があることが報告された。これらの研究のほとんどにおいて、組織切片における免疫組織化学染色を分析する半定量法、腫瘍において一般的に見られる不均一発現を考慮に入れた方法を用いている。例えば、McCarty等により使用されたHSCORE[McCarty KS、Szabo E、Flowers JL等、Use of a monoclonal anti−estrogen receptor antibody in the immunohistochemical evaluation of human tumors(ヒト腫瘍の免疫組織化学的評価におけるモノクローナル抗エストロゲンレセプター抗体の使用)、Cancer Res 1986;46:(Suppl.):4244s−4248s]は、染色強度の重量平均と陽性腫瘍核%から得たものであり、染色強度の主観的評価を必要とする。このような方法を用いた場合、生化学的アッセイと比較した抗体法の感度及び特異性は、それぞれ88%及び94%であった(85)。他の研究では、同様の結果が得られた。
【0064】
ほとんどの研究では、凍結組織のクリオスタット切片を用いた最適感度を報告しているが、細胞遠心分離試料、針吸引物及びパラフィン切片の試験では、全て良好な結果が得られている。ある研究では、ERの免疫組織化学アッセイが、生化学的アッセイよりもホルモン療法に対してより予測に役立つ臨床反応であることを示している[Pertschuk LP、Kim DS及びNayer K等、Immunohistochemical estrogen and progesterone receptor assays in breast cancer with monoclonal antibodies:Histopathologic,demographic,and biochemical correlations and relationship to endocrine response and survival(モノクローナル抗体を用いた乳癌における免疫組織化学エストロゲン及びプロゲステロンレセプターアッセイ:内分泌応答及び生存率に対する組織病理学的、人工学的及び生化学的相関及び関係)、Cancer 1990:66:1663−1670]。これは、より新しい方法を支持する最強の主張である。より最近では、米国における大きな癌研究グループの一部が、この方法がより広範に受け入れられることとなるであろう臨床トライアルにおけるERの免疫組織化学測定の使用を許可した。
【0065】
免疫組織化学ERの結果の使用に伴う重大な技術上の問題は、染色反応を客観的に分析及び定量することが困難であることにあった。HSCORE等の半定量法は、実験で必要とされる再現性が得られず、染色反応を測定及び報告するための標準が、いまだ確立されていない。イメージ解析を使用することにより、乳癌におけるホルモンレセプターの定量化のプラクティスの標準を得る機会が提供され、核染色パターンは、Ki−67抗原について上記したようなQIHCに容易に適合できるが、スペクトル分解が非常に限定されるので、複数のマーカー/対比染色剤には適用できない。
【0066】
測定すべき意図する主要な特徴は、ER/PRについて染色された腫瘍細胞核の百分率だけでなく、染色強度にある。陽性%(総核面積を用いた)と強度の両方とも、定量的免疫組織化学(QIHC)スコアに組み入れ、QIHCスコアとERの生化学的測定との間の優れた相関が報告された。しかしながら、染色強度は、標準化するのが困難であり、実験の日間変動を受ける。使用されたより単純な手法は、200fmol/mgタンパク質未満の生化学的ER測定値と直線的相関があると思われる染色核面積%のみを測定することである。10%陽性核面積カットオフを用いると、DCC法と比較して、感度92%、ER特異性100%となる。Sklarew等[Sklarew RJ、Bodmer SC及びPertschuk LP、Comparison of microscopic imaging strategies for evaluating immunohistochemical (PAP) steroid receptor heterogeneity(免疫組織化学(PAP)ステロイドレセプター不均一性を評価するための顕微鏡イメージング法の比較)、Cytometry 1991;12:207−220]は、核多形性及び組織切片形成により生じる核面積の変化を考慮した組織切片におけるERの不均一性を測定するためのイメージング法を記載している。Sklarew等は、この方法により乳癌におけるエンドクリン療法に対する反応について優れた予測値が得られるとしている。ここでも、イメージング自体に基づいて、この方法は、スペクトル分解の面で限定され、したがって、複数の免疫組織化学マーカー染色剤/組織染色剤/DNA倍数性染色剤の検出に適用できない。
【0067】
治療の決定は、腫瘍が陽性であるか陰性であるかに基づいており、絶対値に基づいてはいないので、QIHCにより測定されるホルモンレセプターを生化学値に変換する必要があるかどうかはまだはっきりしていない。実際に、ホルモンレセプターについて陰性である顕著な腫瘍画分が存在することが、療法に対して反応しないことを予測することがあるので、QIHCにより報告されている腫瘍不均一性は、生化学レベルよりも大きな臨床的関連性を有すると思われる。また、経験から、症例の大部分は、ERについて陽性(50%を超える細胞が陽性)である腫瘍細胞を示さず、10%陽性カットオフ付近で生じる症例がほとんどないことが分かっている。従って、生化学アッセイにおいて見られる値の連続が、真の生物範囲のレセプター発現よりも、良性組織成分による腫瘍細胞の多様な希釈を反映すると思われる。療法に対する臨床反応を異なるイメージ分析の特徴と比較してホルモンレセプターのQIHCを報告するための標準法を提供することについて検討が必要とされている。
【0068】
腫瘍サンプリングが、乳癌において検討する必要がある別の重要な問題である。腫瘍の凍結部分が腫瘍全体を完全には表さないことが少なからずある。例えば、凍結組織は、導管内腫瘍のみを含むことがあるのに対して、侵入性癌の病巣は永久切片で見つけられる。侵入性腫瘍の生物学的特徴は最も臨床的に関連していると考えられ、インサイチュ及び侵入性腫瘍成分は同一の特徴を示すとは考えられない。イメージ解析を用いてホルモンレセプター発現に関する個々の乳癌の症例の侵入性成分及び非侵入性成分を比較する検討をおこなった。ERの絶対値表現(陽性、陰性)とERの表現レベル(核面積%)の両方に関するこれらの成分の間で良好な一致が見られた。しかしながら、PR表現について不一致が見られ、したがって、サンプリングはERについて重要な問題ではないが、PRについては当てはまらないと思われる。同様に、他の研究者により報告されているように、腫瘍遺伝子発現に関して乳癌のインサイチュ成分と侵入性成分との間で差異が見られた。したがって、マーカーごとの発現の不均一性を確定して臨床測定の指針を作成する必要がある。
【0069】
理論的には、細胞核、細胞質又は組織に局在する免疫組織化学反応は、イメージ解析を用いて定量化できる。しかしながら、複数のマーカーの分析では、同時にイメージング系で本来得られるよりもスペクトル分解能がはるかに高くなければならない。
【0070】
細胞表面及び細胞質抗原、特に腫瘍遺伝子の産生物は、臨床的に非常に重要である。例えば、Slamon等[Slamon DJ、Godolphin W、Jones LA等、Studies of the HER−2/neu proto−oncogene in human breast and ovarian cancer(ヒト乳癌及び卵巣癌におけるHER−2/neuプロト腫瘍遺伝子の研究)、Science 1989;235:177−182]は、乳癌及び卵巣癌におけるHER−2/neu腫瘍遺伝子の増幅及び過発現の両方とも、誤った予後と相関することを示した。この研究では、免疫染色の強度は、遺伝子発現の他尺度とよく相関し、卵巣癌における発現レベルは生存率と相関した。これらの研究の著者等は、免疫組織化学法を用いた腫瘍遺伝子産生物の測定が生化学法に対して明瞭な利点があり、臨床の結果と最もよく相関すると思われることを述べている。
【0071】
種々の研究から、腫瘍遺伝子発現のQIHCの可能性があることが分かった。Czerniak等[Czerniak B、Herz F、Wersto RP等。Quantitation of oncogene products by computer−assisted image analysis and flow cytometry(コンピュータ補助イメージ解析及びフローサイトメトリーによる腫瘍遺伝子産生物の定量化)、J Histochem Cytochem 1990;38:463−466]は、イメージ解析を使用して核、細胞質又は細胞膜において発現したいくつかの腫瘍遺伝子産生物の細胞発現の測定をおこない、得られる結果がフローサイトメトリーを用いて得られるのと類似していることを見いだした。後にCzerniak等は、イメージングを使用して膀胱癌におけるHa−ras発現の測定をおこない[Czerniak B、Cohen GL、Etkind P等、Concurrent mutations of coding and regulatory sequences of the Ha−ras gene in urinary bladder carcinomas(膀胱カルチノーマにおけるHa−ras遺伝子のコード配列及び調節配列の同時変異)、J Histochem Cytochem 1992;23:1199−1204]、p21発現の増加と特異的遺伝子変異との相関を示すことができた。核腫瘍タンパク質は、ホルモンレセプター及びKi−67抗原について説明した方法と同様の方法によるイメージ解析を用いて測定でき、陽性核面積%又は染色強度と陽性度との組み合わせた値として表すことができる。この方法は、Figge等[Figge J、Bakst G、Weisheit K、Solis O及びRoss JS、Image analysis quantitation of immuno−reactive retinoblastoma protein in human thyroid neoplasms with a streptavidin−biotin−peroxidase staining technique(ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ染色法による、ヒトチロイド新生物における免疫反応性網膜芽細胞腫タンパク質のイメージ解析定量化)、Am J Pathol 1991;139:1213−1219]が使用して、チロイド腫瘍における網膜芽細胞腫タンパク質を測定した。しかしながら、ここでも、イメージング解析では、このようなことができることは、QIHCを臨床用途にさらに好適なものとするが、複数のマーカーを検出することができない。
【0072】
染色強度における日間変動の制御の問題のために、QIHCでは、内部対照と校正標準の使用が必要であると思われる。Bacus等[Bacus SS、Ruby SG、Weinberg DS、Chin D、Oriz R及びBacus JW。HER−2/neu one expression and proliferation in breast cancers(乳癌におけるHER−2/neuの一発現及び増殖)、Am J Pathol 1990;137:103−111]は、HER−2/neuについて、フォイルゲン染色剤(DNA含量を測定するため)と免疫組織化学染色とを組み合わせて使用してDNA含量に対して腫瘍タンパク質測定を正規化した。染色強度の日間変動を考慮して、公知の発現レベルの腫瘍遺伝子を用いた腫瘍細胞系を校正に使用した。したがって、腫瘍タンパク質の平均濃度を、細胞一個当たりで計算でき、高レベルの過発現を示すことが知られている細胞系で測定されたレベル%で表された。HER−2/neuの過発現についてのしきい値が、正常組織に存在する低発現レベルに基づいて確定された。この方法を用いて、著者等は、乳癌における腫瘍遺伝子発現を増殖画分成長因子発現及びDNA含量(「倍数性」)と相関させることができた[Bacus SS、Chin D、Stern RK、Ortiz R、Ruby SG及びWeinberg DS、HER−2/neu one expression,DNA ploidy and proliferation index in breast cancers(乳癌におけるHER−2/neuの一発現、DNA倍数性及び増殖指数)、Anal Quant Histol 1992;14:433−445]。
【0073】
治療にとって重要であると思われる細胞タンパク質の別の例は、多薬物耐性(mdr)遺伝子、P−糖タンパク質、非特異的化学療法耐性の一機構に関与していると思われる細胞表面関連ATPaseの産生物である。Grogan等[Grogan T、Dalton W、Rybski J等、Optimization of immunohistochemical P−glycoprotein assessment in multidrug−resistant plasma cell myeloma using three antibodies(三種の抗体を用いた多薬物耐性形質細胞ミエローマにおける免疫組織化学P−糖タンパク質評価の最適化)、Lab Invest 1991;63:815−824]は、複数のミエローマにおけるP−糖タンパク質の発現と回帰との相関を明らかにし、IHCにより検出されたこのタンパク質を測定するためのイメージ解析を使用した。また、QIHCが、P−糖タンパク質発現を検出するためのWesternブロットよりも感受性があることを見いだした。グルタチオントランスフェラーゼ及びトポイソメラーゼII等の治療耐性の他のマーカーも、同様に検討できると思われる。
【0074】
予後有意性及び治療有意性を有する腫瘍マーカーを測定することが、診断外科病理学及び細胞学の重要な一部分となってきている。腫瘍試料(バイオプシー及び針吸引物)の多くのサイズが小さいことを所与のものとすれば、IHC等のインサイチュ法を使用して、定量化が必要な場合には測定値の解析と組み合わせて、これらの腫瘍マーカーを検出することが必要であろう。全ての実験室試験に関して、実施及び性能の標準をイメージ解析について開発してこれらの測定値の精度及び再現性を確保しなければならない。
【0075】
免疫組織化学染色剤と同様に、組織染色剤を通常の方法で組織病理に使用したところ、癌の評価に有用であることが判明した。
【0076】
疾病についての我々の理解の基礎をなす組織病理学は、クロマチン−染色剤複合体の形成が細胞及び非細胞成分の形状及び構造を高める染色された組織試料を用いた非定量形態的評価である。核構造は、単離状態において、核の代謝状態の動的反射として及び生化学成分のその総含量の物理的対件として見えると思われる。主要な核成分は、DNA、RNA、ヒストン及び非ヒストンタンパク質、無機物質並びに水である。これらは、細胞質及び機能の脱分化とともに悪性転換中に変化し、核/細胞質比が増加する。研究の結果、核構造、クロマチンパターン及び核小体サイズ並びに数の変化が、癌診断の形態的特質であることが判明した。細針吸引バイオプシーにより得た個々のヒト乳癌細胞のコンピュータによる核形態測定(CNM)により、通常の組織学的試料を用いた主観的観察よりも分類の再現性が高いことが分かった。核における平均クロマチン面積の2次元推定値等の種々のパラメータの定量的推定及び中央クロマチン領域数が、乳癌における予後及び識別と相関があることが示された。平均核小体プロファイル面積及び最大核小体の顕微鏡的寸法は、眼メラノーマにおける予後値を示すことが判明した。星状グリオームにおいて、光学濃度と核プロファイル面積との間の関係は、患者の生存率と相関することが判明した。
【0077】
組織病理学的分類では、異なる染色プロトコルを使用して組織及び細胞の細胞構造を目立たせている。使用される最も一般的な染色法は、ヘマトキシリン染色及びエオシン(H&E)染色である。他の方法として、炭化水素成分の分画用PAS染色、コラーゲンの細胞外染色用マッソントリクローム染色及び血液病理学におけるロマノフスキー−ギームザ染色がある。
【0078】
従来のH&E染色剤では、核のヘマトキシリン染色後に、エオシンにより細胞質及び種々の細胞外物質の対比染色をおこなう。核染色のこのプロセスでは、ヘマトキシリンが、酸化されて紫色の染料であるヘマテインとなるとともに、この金属塩により正味正の電荷を有する。H&E染色法は、工程の一部が自動化されたことを除いて半世紀にわたってほとんど変化しないままであった。これは、この方法は、比較的迅速であり、安価であり、ほとんどの状況に好適であり、マスターするのが比較的容易であり、そして最も重要なことであるが、被験物のほとんどを正確に顕微鏡診断できることによると思われる。
【0079】
特定の問題を解決するために、PAS染色及びマッソントリクローム染色等のさらなる方法が使用されている。PAS染色では、隣接グリコール基を含む物質又はそれらのアミノ若しくはアルキルアミノ誘導体は、過ヨウ素酸により酸化されてジアルデヒドとなる。このジアルデヒドは、シッフ試薬と結合して不溶性マゼンタ化合物を形成する。マッソントリクローム染色では、ホスホタングステン酸又はホスホモリブデン酸を、塩基性フクシン、ライトグリーン及びヘマトキシリン等の数種のアニオン染料と組み合わせて使用する。
【0080】
ロマノフスキー−ギームザ染色が、血液病学のプラクティスにおいて日常的に使用され、種々の造血細胞(正常状態のもの及び病気にかかったものの両方)を明らかにしている。ロマノフスキー−ギームザ染色のプロセスでは、酸性エオシンはヘモグロビン(赤色細胞における)及びエオシン好性顆粒(顆粒細胞における)と結合し、一方、塩基性アズールはクロマチン及びリボソームリッチ細胞質に結合する。このフェーズに続いて、エオシンとアズールBが結合して複合体を形成することにより、ロマノフスキー−ギームザ効果として知られている紫色の要素を生じる。この効果を示す構造は、約550nmで特徴的な吸収バンド、すなわち、いわゆるロマノフスキーバンドを示す。また、ロマノフスキー−ギームザ法は、パラフィン埋め込み物質中の種々のリンパ細網要素(マスト細胞を含む)及び微生物を明らかにするのにも使用されている。
【0081】
浸潤性胸カルチノーマの評価において、腺管カルチノーマ及び小葉カルチノーマが、類似の組織学的外観を示すと思われる[Azzopardi JG、Chepick OF、Hartmann WH、Jafarey NA、Lombart−Bosch A及びOzello L(1982)、The World Health Organization histological typing of breast tumors(世界保健機構による胸腫瘍の組織学的タイピング)、第2版、Am J Clin Pathol 78:806−816]。ある定量的組織病理学的変数が、腺管カルチノーマと小葉カルチノーマとの間の識別の一助として形態学的方法により同定された[Ladekarl M及びSorensen FB(1993)、Quantitative histopathological variables in in situ and invasive ductal carcinoma of the breast(胸部のインサイチュ及び侵入性腺管カルチノーマにおける定量的組織病理学的変数)、AMPIS101(12):895−903]。腫瘍を格付け及び識別、すなわち、換言すれば、腫瘍を分類する試みは、主に核の形態及びクロマチン構造に基づいている[Ladekarl M及びSorensen FB(1993)、Quantitative histopathological variables in in situ and invasive ductal carcinoma of the breast(胸部のインサイチュ及び侵入性腺管カルチノーマにおける定量的組織病理学的変数)、AMPIS101(12):895−903;Cornelisse CJ、de Konig HR及びMoolenaar AJ(1984)、Image and flow cytometric analysis of DNA content in breast cancer;relation to estrogen receptor content and lymph node involvement(乳癌におけるDNA含量のイメージ解析及びフローサイトメトリー分析;エストロゲンレセプター含量及びリンパ節の関与との関係)、Anal Quant Cytol Histol 4:9−18;Stenkvist B、Westman−Naeser S及びHolmquist J(1978)、Computerized nuclear morphology as an objective method for characterizing human cancer cell populations(ヒト癌細胞集団を特性付けするための客観的方法としてのコンピュータにより求めた核の形態)、Cancer Res 38:4688−4977;Dawson AE、Austin RE及びWeinberg DS(1991)、Nuclear grading of breast carcinoma by image analysis(イメージ解析による胸部カルチノーマの核格付け)、Classification by multivariate and neural network analysis(多変量及び神経ネットワーク解析による分類)、Am J Clin Pathol 95:S29−S37]。白血病、リンパ腫、サルコーマ及び他のカルチノーマを含むがこれらには限定されない他の腫瘍型の形態分類[例えば、Clarke AM、Reid WA及びJack AS(1993)、Combined proliferating cell nuclear antigen and morphometric analysis in the diagnosis of cancerous lymphoid infiltrates(癌性リンパ系浸潤物の診断における増殖細胞核抗原と体型分析との組み合わせ)、J.Clin.Pathol.46:129−134参照]も、研究及び医療のプラクティスの両方において非常に広範に実施されている。
【0082】
それにもかかわらず、癌診断の分野で最優秀な病理学者により組織病理学的診断の信頼性を評価したNIH研究会後に最近公表されたように、新生物の診断では専門の病理学者の間でも一致していない。この研究会に基づいて、組織病理学的意思決定が、被験物の起源とは無関係に100%主観的であること、及び組織病理学的診断におけるこの状態の事柄は、特定の腫瘍には限らず、全ての臓器における鑑別診断に適用できることが、結論として言える。これらの結論は、Human pathology 27:1115−1116の論説において、A Bernard Ackerman(1996)により、「Discordance among expert pathologists in diagnosis of melanocytic neoplasm(メラノサイト新生物の診断における専門家の病理学者の間での不一致)」と題して発表された。
【0083】
胸部カルチノーマの80%近くが、腺管型である[Aaltomaa S及びLipponen P:Prognostic factors in breast cancer(reviews)(乳癌における予後因子(報告))、Int J Oncol 1:153,1992;Toikkanen S及びJensuu H(1990)、Prognostic factors and long−term survival in breast cancer in a defined urban population(区画都市人口における乳癌の予後因子及び長期生存率)、APMIS 98:1005−1014]。腺管と小葉カルチノーマとの間の識別が、患者の予後及び治療の決定の評価に有用であることが分かった[Ellis IO、Galea M、Broughton N、Locker A、Blaney RW及びElston CW(1992)、Pathological prognostic factors in breast cancer:II Histological type;relationship with survival in a large study with long term follow−up(乳癌における病理学的予後因子:II 組織型;長期追跡による大規模研究における生存率との関係)、Histopathology 20:479−489;Eskelinen M、Lipponen P、Papinaho S、Aaltomaa S、Kosma VM及びKlemi P(1992)、DNA flow cytometry, nuclear morphometry, mitotic indices and steroid receptors as independent prognostic factors in female breast cancer(女性の乳癌における、独立した予後因子としての、DNAフローサイトメトリー、核形態測定、有糸分裂指数及びステロイドレセプター)、Int J Cancer 51:555−561;並びにToikkanen S及びJensuu H(1990)、Prognostic factors and long−term survival in breast cancer in a defined urban population(区画都市人口における乳癌の予後因子及び長期生存率)、APMIS 98:1005−1014]。腫瘍同士は、臨床上の挙動及び転移パターンにおいてある種の差異がある;小葉カルチノーマは、腺管カルチノーマよりも多病巣性及び両側性であり[Azzopardi JG、Chepick OF、Hartmann WH、Jafarey NA、Lombart−Bosch A及びOzello L(1982)、The World Health Organization histological typing of breast tumors(世界保健機構による胸腫瘍の組織学的タイピング)、第2版、Am J Clin Pathol 78:806−816]、患者生存期待度が、通常よりよい[DiConstanzo D、Rosen PP、Gareen I、Franklin S及びLesser M(1990)、Prognosis in infiltrating lobular carcinoma;an analysis of “classical” and variant tumors(浸潤小葉カルチノーマの予後;「古典的」及び変異腫瘍の分析)、Am J Surg Pathol 14:12−23;du Toit RS、Locker AP、Ellis IO、Elston CW、Nicholson RI及びRobertson JFR(1991)、An evaluation of differences in prognosis, recurrence patterns and receptor status between invasive lobular and other invasive carcinomas of the breast(胸部の侵入性小葉カルチノーマと他の侵入性カルチノーマとの間の予後、再発パターン及びレセプター状態の差の評価)、Eur J Surg Oncol 17:251−257]。2種の腫瘍型は、形態が異なり、浸潤小葉カルチノーマの細胞は、通常、腺管カルチノーマより小さく、多形性が少なく、有糸分裂像が少ない。浸潤腺管カルチノーマ細胞は、より多くの隆起核を有する[Azzopardi JG、Chepick OF、Hartmann WH、Jafarey NA、Lombart−Bosch A及びOzello L(1982)、The World Health Organization histological typing of breast tumors(世界保健機構による胸腫瘍の組織学的タイピング)、第2版、Am J Clin Pathol 78:806−816]。
【0084】
腺管内カルチノーマのある種の組織学的型が認められた:コメド、篩状、ミクロパピラリー及び固形。これらの全てが認識され、特定の基準で分類され、主に構築パターン、細胞多形性及び核の過度色素沈着によりさらに分けられる[Page DL及びAnderson TG(1987)。Diagnostic histopathology of the breast(胸部の診断病理学)。スコットランド国エジンバラ:Churchill Livingstone、120−157;Lagios MD(1990)、Duct carcinoma in situ pathology and treatment(腺管カルチノーマのインサイチュ病理学及び治療)、Surg Clin North Am 70:853−871;並びにLennington WJ、Jensen RA、Dalton LW及びPage DL:Ductal carcinoma in situ of the breast:Heterogeneity of individual lesions(胸部のインサイチュ腺管カルチノーマ:個々の病巣の不均一性)、Cancer 73:118−124、1994]。小葉カルチノーマの生存期待度は、通常腺管カルチノーマの生存期待度よりもよい[DiConstanzo D、Rosen PP、Gareen I、Franklin S及びLesser M(1990)、Prognosis in infiltrating lobular carcinoma:an analysis of “classical” and variant tumors(浸潤性小葉カルチノーマの予後:「古典的」及び変異腫瘍の分析)、Am J Surg Pathol 14:12−23;du Toit RS、Locker AP、Ellis IO、Elston CW、Nicholson RI及びRobertson JFR(1991)、An evaluation of differences in prognosis, recurrence patterns and receptor status between invasive lobular and other invasive carcinomas of the breast(胸部の侵入性小葉カルチノーマと他の侵入性カルチノーマとの間の予後、再発パターン及びレセプター状態の差の評価)、Eur J Surg Oncol 17:251−257]。小葉カルチノーマは、より両側性且つ多病巣性のことがよくあり[Ladekarl M及びSorensen FB:Prognostic,quantitative histopathologic variables in lobular carcinoma of the breast(胸部の小葉カルチノーマにおける予後、定量的組織病理学的変数)、Cancer 72:2602、1993]、腫瘍からの転移のパターンが、異なることが判明した。残念なことに、胸部カルチノーマの組織学的分類は、再現性が低く、したがって、異なる予後の小葉カルチノーマの形態学的亜型を分類する試みは、役に立たないと思われる[Ladekarl M及びSorensen FB:Prognostic,quantitative histopathologic variables in lobular carcinoma of the breast(胸部の小葉カルチノーマにおける予後、定量的組織病理学的変数)、Cancer 72:2602、1993]。小葉型と腺管型の両方とも、現在では末端腺管−小葉ユニットから生じると考えられている。
【0085】
異なる手法による核の特徴の特性付けが、診断、治療、予後の決定に使用されている。核プロファイル面積、核プロファイル濃度及び有糸分裂プロファイル数の二次元推定値等の種々の組織病理学的パラメータの定量的推定が、識別及び予後と相関があることが判明した。核構造の変化は、癌診断の形態学的特質である。核サイズ、形状、クロマチンパターンは、全て乳癌において変化することが報告されている[Pienta KJ及びCoffey DS:Correlation of nuclear morphometry with progression of breast cancer(核の形態と、乳癌の進行との相関)、Nuclear Morphometry of breast cancer 2012、1991]。しかしながら、同じ分類群に属している腫瘍の形態及び生態の不均一性は、乳癌の最も目立った特徴であることが分かった[Komitowski DD及びJanson CP(1990)、Quantitative features of chromatin structure in the prognosis of breast cancer(乳癌の予後におけるクロマチン構造の定量的特徴)、Cancer 65:2725−2730]。
【0086】
細胞学的被験物、染色パターン、核サイズ及び総細胞サイズについて、自動化形態測定装置を用いて、de−las−Morenas等[de−las−Morenas A、Crespo P、Moroz K及びDonnely MM(1995)、Cytological diagnosis of ductal versus lobular carcinoma of the breast(胸部の腺管カルチノーマ対小葉カルチノーマの細胞学的診断)、Acta Cytol 39(5):865−869]により試験された11種の細胞学的パラメータは、浸潤性小葉カルチノーマ細胞核と浸潤性腺管カルチノーマ細胞核との間で統計的に異なることが分かった。したがって、粗顆粒クロマチン(核サイズ:44μm超、細胞サイズ:82μm超)の存在は、腺管カルチノーマに関係していることが分かった。
【0087】
Ladekarl及びSorensenは、主要三次元核サイズ、主要核プロファイル面積及び有糸分裂指数は、全て、腺管において、小葉カルチノーマにおけるよりも有意に大きいのに対して、主要核濃度指数は、腺管カルチノーマでは小さいことを見いだした[Ladekarl M及びSorensen FB:Prognostic,quantitative histopathologic variables in lobular carcinoma of the breast(胸部の小葉カルチノーマにおける予後、定量的組織病理学的変数)、Cancer 72:2602、1993]。Yu等も、浸潤腺管カルチノーマ及び小葉カルチノーマの識別に有用ないくつかの明瞭な核の特徴を同定した[Yu GH、Sneige N、Kidd LD、Johnston及びKatz RL(1995)、Image analysis derived morphometric differences in fine needle aspirated of ductal and lobular breast carcinoma(細針吸引腺管胸カルチノーマ及び小葉胸カルチノーマのイメージ解析に由来する形態測定の差異)、Anal Quant Cytol Histol 17(2):88−92]。
【0088】
固形腫瘍に使用する他に、組織学的染色剤及び免疫組織化学マーカーは、種々の血液学的悪性疾患の診断、予後及び治療にも適用でき、その一例として、慢性リンパ性白血病(CLL)がある。末梢血における小さい成熟外観Bリンパ球の過剰蓄積は、慢性リンパ性白血病(CLL)診断の基本となる特質である。持続細胞カウントが5x10個/リットル超の成熟外観リンパ球であることは、正常状態から白血病に形質転換したことを示唆していると思われる。大多数の正常リンパ球と支配的なCLLの細胞集団は、両方とも、通常の光顕微鏡によるこれらのリンパ性集団間の識別を困難にする、高密度、凝集核クロマチンを有する小細胞から構成されている。ある場合には、形態学的特徴が、典型的な成熟、小細胞B−CLLとは異なる:(i)CLL/PLと称される、小リンパ球とプロリンパ球との混合物(>10%及び<55%)、又は(ii)大リンパ球と混合したCLL。
【0089】
French−American−Britishのグループ(FAB)は、明瞭な診断を確立するために、細胞化学的方法及び免疫学的方法に基づいた基準を提案した。免疫表現型分析により、B−CLL細胞上で弱くしか発現しないか、検出できない、正常B細胞中に多量の表面免疫グロブリン(sIg)が存在することが分かる。CLL細胞は、pan−B抗原CD19及びCD20並びに活性化抗原CD5及びCD23を発現するが、形質細胞により示される末端B細胞分化抗原を発現しない。B−CLL細胞は、カッパ又はラムダL鎖を発現し、単クローン性は、診断を確定するのに必須である。マウス赤血球ロゼット(MRBC−R)のレセプターは、B−CLL細胞と正常B細胞の両方について検出できるが、2つの集団は、補体レセプターの異なるパターンを発現し、これが両者を識別するのに役立てることができる。
【0090】
米国特許第5,086,476号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、細胞を、増殖物質用クロモーゲン及び細胞核用対比染色剤で染色することにより、細胞試料の増殖指数を測定するためのイメージ処理方法及び装置を教示している。クロモーゲンは、抗体−酵素複合体により活性化され、この抗体−酵素複合体が増殖物質に結合して染色細胞試料を生成する。染色された細胞試料を、装置の一部分を構成している光学顕微鏡で試験して拡大細胞試料イメージを生成する。この装置は、細胞試料イメージを光学的に濾過し、一対の光学的エンハンスト増殖物質イメージと細胞核イメージを生成する。エンハンストイメージを、電子的に解析して、それぞれイメージに現れている細胞核の量と増殖物質の量を求める。次に、量を比較して、細胞試料イメージに現れている細胞試料の部分についての増殖指数を得る。
【0091】
米国特許第5,109,429号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、細胞核中の成分の定量化用キットを教示している。このキットは、染色剤及び顕微鏡スライドを含む。各スライドは、参照細胞対象と、参照細胞対象と同時に染色される被験物細胞を収容するための被験物細胞領域を有する。
【0092】
米国特許第5,202,931号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、細胞集団中の核タンパク質の定量化用イメージ解析装置を教示している。特に、ヒト胸カルチノーマの細針吸引物のホルモン性レセプター含量を、評価している。エストロゲンレセプター又はプロゲステロンレセプターを増幅し、被験物において、免疫ペルオキシダーゼ型の染色法により可視化している。レセプターに対して特異的なモノクローナル抗体を、レセプター部位に結合させた後、モノクローナル抗体及びペルオキシダーゼ−抗ペルオキシダーゼ複合体に結合する架橋抗体により増幅させる。クロモーゲン(ジアミノベンジジン)を上記複合体と混ぜ、過酸化水素で処理して上記ペルオキシダーゼと反応させることにより、光学的同定用のレセプター部位をマークする不溶性褐色沈殿物を形成する。次に、被験物を、各細胞の核に特異的である別のクロモーゲン(メチルグリーン)で対比染色させる。2種の単色光濾過で、レセプター部位光学エンハンサーにより染色された領域と、核領域光学エンハンサーにより染色された領域が光学的に分離される。染色されたレセプター領域の光学濃度値を測定することにより、被験物中のホルモン性レセプターの量と直接関連する強度値を得る。ホルモン性レセプターを含有する核の面積を、総核面積と比較することにより、レセプターを含有する被験物全体を通した細胞の分布を示す値(%)が得られる。次に、強度及び分布についての2つの値を組み合わせてアッセイの予測スコアを得る。測定スコアを、実験的に得た基準スコアと比較することにより、内分泌療法の予後が可能となる。
【0093】
米国特許第5,281,517号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、イメージ解析手段を用いてDNA等の一定のパラメータについての細胞又は細胞対象のサブ集団を選択及び分析するための方法及び装置を教示している。細胞を、まず、細胞の細胞質の少なくとも一つにおけるタンパク質又は細胞膜上のタンパク質に特異的なモノクローナル抗体を含むアルカリ性ホスファターゼ法で染色することにより、型に関してタンパク質を含む細胞をマークする。核におけるDNAの第二の染色を、細胞の細胞質を破壊するフォイルゲン法によりおこなう。染色及びマーキング後、細胞を、着色DNA又は着色抗原等の視覚パラメータについてのイメージ解析手段を用いて、被測定サブ集団にゲーティングしてもよい。次に、選択された細胞を、ディジタルイメージ処理することにより調べ、DNAの真の実測値(単位:ピコグラム)等のパラメータについて測定する。パラメータの実測量値が生成され、得られる。
【0094】
米国特許第5,428,690号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、顕微鏡スライド上に配置させた生物被験物の自動アッセイのための装置及び方法を教示している。この装置は、スライド上の生物学的試料を見るため、及び目視したイメージに相当するインタラクティブビデオ信号を生成するための、インタラクティブ光学サブシステムを備えている。自動光学サブシステムは、一ラックのスライド(これらの一部分は、インタラクティブ光学手段におけるアッセイついて予め確認してあるものである)を走査するための単一の高出力顕微鏡対物レンズを含む。このシステムも、2つの光学サブシステム用のインタラクティブ及び自動ビデオ信号を処理するプロセッサを含む。このプロセッサは、自動ビデオ信号を受け、受信したら生物学的アッセイ機能を実行する。また、顕微鏡スライド上でのその後の分析のための点をマークするため、及び分析機能を各マークした点と関連させるための、方法及び装置も開示されている。
【0095】
米国特許第5,252,487号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、細胞中の腫瘍遺伝子タンパク質産生物コピーの量を測定するための装置及び方法を教示している。この装置は、細胞試料中の光学的にエンハンストされたDNAの量を測定するための光学変換モジュールを含む。光学的にエンハンストされた腫瘍遺伝子タンパク質産生物の量を測定するためのサブシステムを、DNA測定手段に結合させる。DNA量の測定値と腫瘍遺伝子タンパク質産生物量の測定値とを比較するためのサブシステムにより、腫瘍遺伝子タンパク質産生物コピー測定値が得られ、これを出力装置に供給して、細胞試料の細胞中の腫瘍遺伝子タンパク質産生物の量を表す出力を生じる。
【0096】
米国特許第5,288,477号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、モノクローナル抗体とリガンド分子とを用いた化学療法の有効性の予測方法を教示している。推定抗癌剤は、HER−2/neu等の癌細胞の膜上の腫瘍遺伝子レセプター分子に対して結合特異性を有する。推定薬剤が腫瘍遺伝子レセプターに結合するときには、レセプターは、膜から、癌細胞の細胞質又は核周囲に移行し、それにともない、レセプターの総細胞含量が過渡的に増加し、末端細胞の細胞分化を生じる。生体内での薬剤の効力は、生体組織検査した癌細胞をこの薬剤で処理後、細胞を末端細胞分化について検査することにより生体外で測定できる。このような確証としては、形態の変化、細胞成長の減少、又は成熟表現型に関連した化学物質の産生などがある。さらに、処理細胞を腫瘍遺伝子レセプターに特異的な免疫組織化学物質で検査して、レセプターの膜から細胞質又は核周囲への移行について測定してもよい。染色後に光学濃度を測定することによる処理細胞中レセプターレベルの定量化を使用して、移行についてだけでなく、レセプターの総細胞含量の過渡的増加を測定できる。
【0097】
米国特許第5,134,662号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、細胞及び他の顕微鏡被験物の自動分類を実施するのに使用される方法及び装置を教示している。この装置により、細胞分析用オペレータ−装置インタラクティブ分類システム、異なる細胞、細胞質及び細胞集団用の代替手法、及びエンハンストイメージ又は色分離及び解析が得られるように操作できるコンパクトな調整可能なアセンブリが提供される。
【0098】
米国特許第5,473,706号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、顕微鏡のスライド上に配置させた生物被験物の自動アッセイ用装置及び方法を教示している。この装置は、スライド上の生物学的試料を視検するため、及び視検したイメージに相当するインタラクティブビデオ信号を生成するための、インタラクティブ光学サブシステムを備えている。自動光学サブシステムは、一ラックのスライド(これらの一部分は、インタラクティブ光学サブシステムにおけるアッセイついて予め確認してあるものである)を走査するための単一の高出力顕微鏡対物レンズを含む。また、このシステムは、2つの光学サブシステムからのインタラクティブ及び自動ビデオ信号を処理するプロセッサを含む。このプロセッサは、自動ビデオ信号を受け、受信したら生物学的アッセイ機能を実行する。
【0099】
米国特許第5,526,258号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、細胞試料の細胞対象を分析して実際の癌又はその疑いのある癌を診断及び治療するための装置及び方法を教示している。細胞試料のイメージを、まずディジタル化し、細胞対象の面積及びDNA質量を含む形態的属性を、ディジタル化したイメージから自動測定する。測定した属性を、癌分析における値を有する特定の細胞対象を選択するために予め確定した属性値範囲と比較する。細胞対象を選択した後、オペレータに対してイメージを表示し、選択のしるしを各選択された細胞対象について表示する。次に、オペレータは、測定細胞対象属性値の利点を考慮して自動的に選択された細胞対象を検討し、細胞対象の自動選択を受け入れるか、又は変更する。好ましい実施態様では、各選択された細胞対象を、6種類のうちの一つに割り当てる。選択のしるしは、関連細胞対象を配置した種類のしるしからなる。また、組織切片試料中の同定細胞対象断片の測定DNA質量を増加して全細胞対象のDNA質量を表し、そこから断片を切断する。
【0100】
米国特許第5,546,323号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、好ましくは多倍数体核DNA含量を用いて、自動イメージ解析システムにより組織切片の厚みを測定するための装置及び方法を教示している。測定された厚みは、続いて被験物細胞試料の細胞対象の解析に使用して実際の癌又は疑いのある癌の診断及び治療、又はミクロトーム設定における公称厚さの変動を監視している。公知の細胞対象属性を有するラット肝臓組織切片等の測定物質のイメージを、まずディジタル化し、細胞対象の面積及びDNA質量を含む形態属性を、ディジタルイメージから自動的に測定する。測定された属性を、特定の細胞対象を選択するために予め確定しておいた属性値範囲と比較する。細胞対象を選択後、オペレータは、自動的に選択された細胞対象を検討し、測定された細胞対象属性値を受け入れるか、変更する。好ましい実施態様では、各選択された細胞対象を、2倍体、4倍体及び8倍体細胞形態に相当する3種類のうちの一つに割り当て、ラット肝臓組織切片試料中の同定された細胞対象断片の測定されたDNA質量を、修正してもよい。次に、測定物質の選択された細胞対象、例えば、DNA質量を、ヒストグラムでグラフ表示し、ラット肝臓組織切片の厚さを、分布に基づいて測定できる。
【0101】
米国特許第5,018,209号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、DNA、エストロゲン等の一定のパラメータについての細胞又は細胞対象のサブ集団を選択及び分析した後、選択された細胞を測定するための方法及び装置を教示している。観察者は、リアルタイムで細胞の視野を見た後、着色DNA又は着色抗原等の目視パラメータを有する細胞を形態基準に基づいて選択して被測定サブ集団にゲーティングする。選択された細胞を、ディジタルイメージ処理することにより検査して、DNAの真の実測値(単位:ピコグラム)等のパラメータについて測定する。測定されたパラメータの量を生成して得る。
【0102】
米国特許第4,998,284号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、細胞及び他の顕微鏡被験物を自動分類するための方法及び装置を教示している。この装置により、細胞分析用オペレータ−装置インタラクティブ分類システム、異なる細胞、細胞質及び細胞集団用の代替手法、及びエンハンストイメージ又は色分離及び解析が得られるように操作できるコンパクトな調整可能なアセンブリが提供される。
【0103】
米国特許第4,741,043号(Bacus等)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、人体から採取した種々の細胞、抗原又は他の物質を動的に試験し且つ評価するためのユーザインタラクティブシステムを教示している。より詳細には、被験物細胞中のDNAを、パターン認識法を用いたイメージ解析により解析及び定量化する。ユーザは、分析時に同時に染色又はさもなければイメージエンハンストされる被験物及び基準物質又は対象が上にある独自のスライド又は支持体を準備する。
【0104】
以下の結論は、上記検討事項から得ることができる。
【0105】
第一に、新生物のインサイチュ分析は、臨床用途に有用であり、よりよい診断、予後及び治療法を可能にすると思われる。
【0106】
第二に、組織染色剤である独自の免疫組織化学マーカー及びDNA倍数性染色剤(両方とも通常且つ免疫染色剤)は、全てこの目的に有用である。
【0107】
第三に、いままで、複数の特異的免疫組織化学染色剤をいくつかの組織学的染色剤及びDNA倍数性染色剤と組み合わせて細胞を標識後、そこから病理学的データを抽出することは、試みられたり、示唆されたりしなかった。これは、適当な空間分解が得られるシステム(イメージングシステム)が広く使用されているが、適当な空間分解と適当なスペクトル分解とを併せて得られるシステムははるかに少ないことによるものである。
【0108】
しかしながら、このようなシステムが、開発され、以下でさらに詳細に説明するように最近種々の用途に用いられるようになってきた。
【0109】
分光計は、受光し、それをその成分波長に分離(分散)し、光の強度がその波長の関数である光スペクトルを測定するように設計された装置である。イメージング分光計は、シーンからの入射光を集め、その各ピクセル(すなわち、画素)のスペクトルを測定する分光計である。
【0110】
分光分析法は、化学成分のスペクトルサインに基づいて物質及びプロセスを特性付けするのに科学及び工業で数十年間使用されてきた周知の分析手段である。分光分析法の物理的基礎は、光と物質との相互作用である。伝統的に、分光分析法は、試料から放出、散乱又は反射したか、試料を透過した光の強度を、高スペクトル分解で、しかし空間情報なしに波長の関数として測定することである。
【0111】
一方、スペクトルイメージングは、高分解分光分析と高分解イメージング(すなわち、空間情報)との組み合わせである。いままで説明した作業のほとんどは、生物試料から高空間分解情報を得るとともに、例えば、高空間分解イメージングを一つ又はいくつかの別個のバンドパスフィルターで実施するときには限定されたスペクトル情報しか提供しないことに関するか[Andersson−Engels等(1990)Proceedings of SPIE−Bioimaging and Two−Dimensional Spectroscopy(SPIE−バイオイメージング及び二次元分光分析法の手順)、1205、第179−189頁参照]、又は高スペクトル分解(例えば、全スペクトル)を得るとともに、空間分解が、試料の小数の点に限定されるか、試料全体にわたって平均化されている[例えば、米国特許第4,930,516号(Alfano等)参照]。
【0112】
概念的に、スペクトルイメージングシステムは、(i)測定システムと、(ii)分析ソフトウエアとから構成されている。測定システムは、光学素子、エレクトロニクス、及び試料を照明する方法(例えば、光源選択)、測定モード(例えば、蛍光又は透過)、並びに測定から所望の結果を抽出するのに最適な校正を全て含む。分析ソフトウエアは、意味のある方法で重要な結果を解析及び表示するのに必要なソフトウエア及び数学的アルゴリズムの全てを含む。
【0113】
スペクトルイメージングは、地球及び他の惑星の研究において、そこに由来する特徴的なスペクトル吸収フィーチャを同定することにより重要な情報を提供するリモートセンシングの領域で数十年間使用されてきた。しかしながら、リモートセンシングスペクトルイメージングシステム(例えば、Landsat、AVIRIS)の高コスト、サイズ及び構成により、それらの用途が、飛行機及び衛星用に限られている[Maymon及びNeeck(1988)Proceedings of SPIE−Recent Advances in Sensors,Radiometry and Data Processing for Remote Sensing(SPIEの手順−リモートセンシング用センサー、ラジオメトリー及びデータ処理における最近の進歩)、924、第10−22頁;Dozier(1988)Proceedings of SPIE−Recent Advances in Sensors,Radiometry and Data Processing for Remote Sensing(SPIEの手順−リモートセンシング用センサー、ラジオメトリー及びデータ処理における最近の進歩)、924、第23−30頁参照]。
【0114】
スペクトルバイオイメージングシステムに使用できると考えられる3つの基本的な種類のスペクトル分散法がある:(i)スペクトルグレーティング又はプリズム、(ii)スペクトルフィルター及び(iii)干渉分光分析法。以下で説明するように、最後のものが、本発明の方法を実施するのに最適である。当業者には理解できるであろうが、グレーティング、プリズム及びフィルター系スペクトルバイオイメージングシステムは、ある種の用途には有用であると思われる。
【0115】
スリット型イメージング分光計(例えば、DILORシステム)としても知られているグレーティング又はプリズム(すなわち、モノクロメーター)系システム[スペイン国バルセロナで開かれた、SPIE Conference European Medical Optics Week、BiOS Europe 1995での発表、Valisa等(1995年9月)を参照]では、CCD(電荷結合素子)アレイ検出器の一つの軸(空間軸)のみで真のイメージデータを形成し、一方、第二(分光)軸を、グレーティング又はプリズムにより分散された光の強度を波長との関係でサンプリングするのに使用する。また、このシステムは、第一焦点面にスリットを備えて、一定の時間での視野をピクセルのラインに限定している。したがって、フルイメージは、文献においてラインスキャニングとして知られている方法におけるCCDのスペクトル軸に平行な方向にグレーティング(又はプリズム)又は入射光線を走査した後にのみ得ることができる。測定全体が完了する前に二次元像を可視化できないので、測定前に、視野内から意図する所望の領域を選択及び/又はシステム焦点、露光時間等を最適化することができない。グレーティング及びプリズム系スペクトルイメージ形成器が、リモートセンシング用途に使用されている。これは、地球の表面を飛行する飛行機(又は衛星)は、自然ラインスキャニング機構を備えたシステムを与えるからである。
【0116】
さらに、スリット型イメージング分光計は、機器の前に位置している光学素子がそれらの全てから入射光を実際に同時に集めるとしても、一つのフレームのピクセルのほとんどが一定時間に測定されないので大きな欠点がある。その結果、一定のS/N比を有する必要情報を得るのに必要とする測定時間が比較的長くなるか、S/N比(感度)が、一定の測定時間について実質的に減少する。さらに、スリット型スペクトルイメージ形成器では、シーン全体についての必要情報を集めるのにラインスキャニングを必要とする。このため、得られた結果が不正確なことがある。
【0117】
フィルター系スペクトル分散法は、さらにディスクリートフィルターとチューナブルフィルターとに分類できる。これらの種類のイメージング分光計では、スペクトルイメージが、狭バンドフィルターを光路に連続して挿入することによるか、又はこれらのバンドを音響光学チューナブルフィルター(AOTF)又は液晶チューナブルフィルター(LCTF)を用いて電子スキャニングすることにより、シーンの全てのピクセル用放射線を異なる波長で一度に同時に濾過することにより形成される(以下の説明を参照)。フィルター系スペクトル分散法を用いながら、上記したようなグレーティング又はプリズムを備えたスリット型イメージング分光計と同様にして、放射線のほとんどが、一定時間で排除される。事実、測定されている瞬間波長外の全ての光子が排除され、CCDには到達しないので、特定波長でのイメージ全体を測定することが可能である。
【0118】
AOTF及びLCTF等のチューナブルフィルターは、移動部がなく、実行される装置のスペクトル範囲内のいずれかの特定の波長にチューニングできる。スペクトルイメージング用分散法としてチューナブルフィルターを使用する一つの利点は、ランダム波長アクセスが可能(すなわち、フィルターホイールを使用することなく所望のシーケンスにおいて多数の波長でイメージの強度を測定する能力)なことである。しかしながら、AOTF及びLCTFには、(i)スペクトル範囲が限定(典型的には、λmax=2λmin)されるとともに、このスペクトル範囲外の全ての他の放射線はブロックされなければならない、(ii)温度に敏感である、(iii)透過率が悪い、(iv)偏光に敏感である、(v)AOTFの場合において、波長スキャニング中にイメージがシフトする効果が生じ、その後に慎重且つ複雑な位置合わせが必要である、といった欠点がある。
【0119】
これらの種類のフィルター及びチューナブルフィルター系システムの全ては、いずれの用途においてもスペクトルイメージングにおいて長年うまく且つ広範には使用されてこなかった。これは、スペクトル分解能が制限されること、感度が低いこと、容易に使用できないこと、及びデータの解釈及び表示に用いられるソフトウエアアルゴリズムが複雑であることによる。
【0120】
上記の面で利点を有するイメージのスペクトル解析に用いられる方法及び装置が、米国特許出願第08/392,019号(Cabib等;1995年2月21日出願)(現在は、1996年7月23日発行の米国特許第5,539,517号)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)に開示されている。この目的は、通常のスリット型又はフィルター型イメージング分光計と比較して、イメージの集光入射光から得られる全ての情報をよりよく利用して、必要とするフレーム時間を実質的に減少させ、及び/又はS/N比を実質的に増加する、イメージのスペクトル解析に用いられる方法及び装置を提供することであり、ラインスキャニングを含まない。本発明によれば、シーンの光学イメージを解析して、そのシーンからの入射光を集めることによりその各ピクセルのスペクトル強度を測定する方法であって、以下の工程を含む方法が提供される:前記光を、各ピクセルから放出される光のスペクトル強度の所定の直線状組み合わせセットに対応する変調光を出力する干渉計を通過させること;前記干渉計から出力された光を検出器アレイ上に焦点を合わせること;全てのピクセルについて干渉計において生じる光路差(OPD)を、独立的且つ同時にスキャニングすること;及び検出器アレイの出力を処理(全てのピクセルのインターフェログラムを別個に処理)して、その各ピクセルのスペクトル強度を求めること。この方法は、種々の種類の干渉計を利用することにより実施できる。これらの干渉計では、OPDを変更して、干渉計全体、干渉計内の要素、又は入射放射線の入射角を移動させることにより、インターフェログラムを作製する。これらの全ての場合において、スキャナーが干渉計の一スキャンを完了すると、そのシーンの全てのピクセルについてのインターフェログラムが完成することとなる。
【0121】
上記特徴を有する装置は、上記したような干渉計を使用する点で、通常のスリット型及びフィルター型イメージング分光計とは異なる。したがって、集めたエネルギーをアパーチュア又はスリットで制限しないか、入射波長を狭帯干渉又はチューナブルフィルターで制限することにより、システムの総スループットを実質的に増加する。したがって、干渉計系装置は、被解析シーンの入射光から得られる全ての情報をよりよく利用することにより、測定時間を実質的に減少させ、及び/又はS/N比(すなわち、感度)を実質的に増加させる。フィルター法及びグレーティング法又はプリズム法に対する干渉計分光分析の感度上の利点は、当該技術分野ではマルチプレックス又はFellgettアドバンテージとして知られている[Chamberlain(1979)The principles of interferometric spectroscopy(干渉計分光分析法の原理)、John Wiley and Sons、第16−18頁及び263頁参照]。
【0122】
例えば、John B.Wellman(1987)、Imaging Spectrometers for Terrestrial and Planetary Remote Sensing(地球及び惑星リモートセンシング用イメージング分光計)、SPIE Proceedings、第750巻、第140頁に記載されている「ホイスクブルーム」設計について考えてみる。nを直線状アレイにおける検出器数とし、mxmをフレームにおけるピクセル数とし、Tをフレーム時間とする。アレイの全ての検出器について合計した一フレームにおける各ピクセルについてかかった合計時間は、nT/mである。米国特許第5,539,517号に記載されている本発明による方法と同じサイズのアレイ及び同じフレームレートを用いることにより、特定のピクセルに関して全ての検出器についてかかった合計時間は、同じ、すなわち、nT/mである。しかしながら、通常のグレーティング法又はプリズム法において、いずれの時間での全ての検出器により分かるエネルギーは、総エネルギーの1/nのオーダである。これは、変調関数が発振関数(例えば、シヌソイド(Michelson))又は同様な周期関数(例えば、Fabry−Perotを有する低微細度Airy関数(大OPD範囲にわたる平均が50%である))であるので、波長分解能が、エネルギーが一単位順序である米国特許出願第08/392,019号に記載されている発明に係る方法における範囲の1/nであることによる。干渉法に関する教科書[例えば、Chamberlain(1979)The principles of interferometric spectroscopy、John Wiley and Sons、第16−18頁及び第263頁参照]に記載されているFellgettアドバンテージ(又はマルチプレックスアドバンテージ)の標準処理に基づいて、本発明の装置が、ノイズレベルが信号とは無関係であるノイズ制限の場合(システム又はバックグラウンドノイズが制限されている場合)には測定S/N比がn0.5倍向上し、制限が信号光子ノイズによるものである場合には狭ピークの波長でのスペクトル範囲における、特定波長での信号の平均信号に対する比の平方根だけ向上することを示すことができる。したがって、米国特許第5,539,517号に記載されている発明によれば、全ての必要とされるOPDは、スペクトルを再構成するのに必要とされる全ての情報を得るためにシーンの全てのピクセルについて同時にスキャニングし、その結果、イメージング情報を有するスペクトル情報が同時に採取される。本発明では、数多くの異なる光学的構成、例えば、リモートセンシング用光学器械、実験分析用顕微鏡、網膜イメージング用眼底カメラ、工業的モニタリング並びに医療用イメージング、診断、治療等のための光ファイバ及び内視鏡を用いることができる。
【0123】
継続出願(米国特許出願第08/571,047号(Cabib等;1995年12月12日出願))(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)の目的は、生物学的研究、医療診断及び治療用のスペクトルイメージング法を提供することである。これらの方法は、高空間分解能及び高スペクトル分解能の光透過、反射、散乱及び蛍光放出法により、空間組織(すなわち、分布)を検出すること、並びに細胞及び組織の天然成分、構造、オルガネラ並びに標識プローブ(すなわち、蛍光プローブ)及び薬剤等の投与成分を定量することに使用できる。米国特許出願第08/571,047号では、6座(各座は異なる染色体上に位置している)という多数の座に特異的なプローブの間期蛍光インサイチュハイブリダイゼーションに米国特許第5,539,517号に記載されているスペクトルイメージング装置を使用することや、さらなる生物学的用途及び医療用途が示されている。
【0124】
スペクトルバイオイメージングシステムが、化学成分(イメージ内のそれらの空間分布及び組織が意図するものである)間に微妙なスペクトルの差が存在する全ての用途に有用である可能性がある。この測定は、米国特許第5,539,517号に記載のシステムに取り付けられた実質的にいずれの光学システム、例えば、縦型又は倒立顕微鏡、蛍光顕微鏡、マクロレンズ、内視鏡及び眼底カメラ、を用いても実施できる。さらに、光透過(明視野及び暗視野)、自己蛍光及び投与プローブの蛍光を含む、いずれの標準的な実験法を用いてもよい。
【0125】
蛍光測定は、放出スペクトルがシステム感度のスペクトル範囲内にあることを前提として、いずれかの標準的なフィルターキューブ(バリアフィルター、励起フィルター及び二色ミラーから構成されている)や、特殊用途用のいずれかのカスタマイズされたフィルターキューブを用いて実施することができる。また、スペクトルバイオイメージングは、いずれかの標準的な空間濾過法(例えば、暗視野及びフェーズコントラスト)や、さらには偏光顕微鏡と関連させて使用することもできる。このような方法を用いたときのスペクトル情報への影響を、測定されたスペクトルイメージを正しく解釈するために理解しておかなければならないことは勿論のことである。
【0126】
米国特許出願第08/824,234号(1997年3月25日出願)(引用することにより、本明細書に全て記載されたものとする)は、細胞(例えば、癌細胞)を主観的ではなく、客観的に分類するように構成された、新生物の自動及び/又は半自動スペクトル分解による形態測定分類(例えば、検出、格付け)方法を教示している。ここに開示されている方法によれば、(a)スペクトルイメージングに附するべき少なくとも一つの細胞の少なくとも一部分を含む試料を準備する;(b)イメージング分光計に光学的に接続した光学装置を介して試料を視検して、試料の各ピクセルのスペクトルを得る;(c)上記ピクセルの各々を、ピクセルのスペクトルに応じて分類グループに分類する;(d)ピクセルの分類グループを解析することにより、試料の細胞を、細胞の種類ごとに分類する。この方法は、例えば、対比染色胸カルチノーマに適用できる。
【0127】
スペクトルイメージング、インサイチュ対比染色及びインサイチュ免疫染色の組み合わせは、ここではじめて示唆され且つ試みられたものである。このような組み合わせにより、従来技術のイメージング法ではできなかった複数の免疫組織化学染色剤、組織染色剤及びDNA倍数性染色剤の同時検出が可能となる。したがって、このような組み合わせは、種々の組織染色剤、DNA倍数性染色剤及び特異的免疫組織化学染色剤から同時に抽出されたデータを組み合わせることにより、細胞病理学の分野の大変革をもたらすと思われる。
【0128】
このようなことから、高空間分解能及び高スペクトル分解能を有するスペクトルイメージング法を用いて、複数の免疫組織化学染色剤、組織染色剤及びDNA倍数性染色剤を同時インサイチュ分析する方法の必要性が広く認識されており、且つこのような方法を有することは非常に有利であろう。
【0129】
発明の開示
本発明によれば、生物試料のインサイチュ分析方法であって、(a)生物試料を、第一染色剤が第一免疫組織化学染色剤と、第一組織染色剤と、第一DNA倍数性染色剤とからなる群から選択されたものであり、第二染色剤が第二免疫組織化学染色剤と、第二組織染色剤と、第二DNA倍数性染色剤とからなる群から選択されたものであるN種の染色剤で染色する工程であって、但しNは3を超える整数であり、さらに、(i)前記第一染色剤が前記第一免疫組織化学染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二組織染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり、(ii)前記第一染色剤が前記第一組織染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり、一方、(iii)前記第一染色剤が前記第一DNA倍数性染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二組織染色剤である、工程と、(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記N種の染色剤を、前記N種の染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、
を含む方法が提供される。
【0130】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、生物試料のインサイチュ分析方法であって、(a)生物試料を、第一染色剤が第一免疫組織化学染色剤と、第一組織染色剤と、第一DNA倍数性染色剤とからなる群から選択されたものであり、第二染色剤が第二免疫組織化学染色剤と、第二組織染色剤と、第二DNA倍数性染色剤とからなる群から選択されたものである、複数の染色剤で染色する工程であって、但し、(i)前記第一染色剤が前記第一免疫組織化学染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二組織染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり、(ii)前記第一染色剤が前記第一組織染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり、一方、(iii)前記第一染色剤が前記第一DNA倍数性染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二組織染色剤である、工程と、(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記複数種の染色剤を、前記複数種の染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、を含む方法が提供される。
【0131】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、生物試料のインサイチュ分析方法であって、(a)生物試料を、少なくとも4種の異なる免疫組織化学染色剤で染色する工程と、(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記少なくとも4種の免疫組織化学染色剤を、前記少なくとも4種の免疫組織化学染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、を含む方法が提供される。
【0132】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、生物試料のインサイチュ分析方法であって、(a)生物試料を、少なくとも一種の染色剤が免疫組織化学染色剤であり、少なくとも一種のさらなる染色剤が組織染色剤又はDNA倍数性染色剤である、少なくとも3種の染色剤で染色する工程と、(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記少なくとも3種の染色剤を、前記少なくとも3種の染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、を含む方法が提供される。
【0133】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、生物試料のインサイチュ分析方法であって、(a)生物試料を、第一染色剤が免疫組織化学染色剤であり、第二染色剤が組織染色剤であり、第三染色剤がDNA倍数性染色剤である、少なくとも3種の染色剤で染色する工程と、(b)スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する工程であって、前記スペクトルデータ採取装置と前記少なくとも3種の染色剤を、前記少なくとも3種の染色剤の各々に特異的に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する工程と、を含む方法が提供される。
【0134】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、少なくとも4種の異なる免疫組織化学染色剤を含み、各免疫組織化学染色剤がそれぞれの細胞学的マーカーを染色するためのものであり、且つ各免疫組織化学染色剤がスペクトルデータ採取装置を用いて全ての他の免疫組織化学染色剤の存在下で個々に検出されることができるものである、免疫組織化学組成物が提供される。
【0135】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記第一免疫組織化学染色剤及び前記第二免疫組織化学染色剤が、各々独立的に一次抗体及びシグナル増幅機構を含む。
【0136】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記シグナル増幅機構が、前記一次抗体の定常部を結合できる二次抗体と、前記一次抗体に結合されているビオチンを結合できるアビジン又はストレプトアビジンと、前記一次抗体に結合されているアビジン又はストレプトアビジンを結合できるビオチンとからなる群から選択されたものである。
【0137】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記二次抗体、アビジン、ストレプトアビジン及びビオチンが、各々独立的に検出可能成分で標識されたものである。
【0138】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記検出可能成分が、蛍光染料である。
【0139】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記蛍光染料が、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、Cy2、Cy3、Cy5、Cy0、Cy0.5、Cy1、Cy1.5、Cy3.5、Cy7、VECTORレッド、ELF(商標)(酵素標識フルオレセンス)、FluorX、カルセイン、カルセイン−AM、CRYPTOFLUOR(商標)(オレンジ(42kDa)、タンジェリン(35kDa)、ゴールド(31kDa)、レッド(42kDa)、クリムソン(40kDa))、BHMP、BHDMAP、Br−オレゴン、ルシフェルイエロー、アレクサ染料類、N−[6−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY(商標)、ボロンジピロメテンジフルオリド、オレゴングリーン、MITOTRACKER(商標)レッド、DiOC(3)、DiIC18、フィコエリトリン、フィコビリタンパク質BPE(240kDa)RPE(240kDa)CPC(264kDa)APC(104kDa)、スペクトルブルー、スペクトルアクア、スペクトルグリーン、スペクトルゴールド、スペクトルオレンジ、スペクトルレッド、NADH、NADPH、FAD、赤外(IR)染料、環状GDPリボース(cGDPR)、カルコフルオルホワイト、チロシン及びトリプトファンからなる群から選択されたものである。
【0140】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記検出可能成分が、非蛍光染料である。
【0141】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記非蛍光染料が、アルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである。
【0142】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記検出可能成分が、実質的に不溶性の呈色反応生成物を有する基質の比色反応を触媒する酵素である。
【0143】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記酵素が、アルカリ性ホスファターゼと、ホースラディッシュペルオキシダーゼと、β−ガラクトシダーゼと、グルコースオキシダーゼとからなる群から選択されたものである。
【0144】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記基質が、アルカリ性ホスファターゼ基質と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質と、β−ガラクトシダーゼ基質と、グルコースオキシダーゼ基質とからなる群から選択されたものである。
【0145】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記検出可能成分が、発光できるか、発光生成物を有する第二基質の第二反応を導くことができる、実質的に不溶性の反応生成物を有する基質の発光反応を触媒する酵素である。
【0146】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記酵素が、ルシフェラーゼとエクオリンとからなる群から選択されたものである。
【0147】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記第一基質及び前記第二基質が、各々独立的にルシフェリンと、ATPと、Ca++と、コエレンテラジンとからなる群から選択されたものである。
【0148】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記第一組織染色剤及び前記第二組織染色剤が、各々独立的に4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、エオシン、フルオレセインイソチオシアネート、ヘキスト33258、ヘキスト33342、プロピジウムヨーダイド、キナクリン、フルオレセインファロイジン、レゾルフィン、ヘマトキシリン、オレンジG、ライトグリーンSF、ロマノフスキー−ギームザ、メイ−グリュンワルド、ブルー対比染色剤、エチルグリーン、フォイルゲンナフトールイエローS、ギームザ、メチレンブルー、メチルグリーン、ピロニン、ナフトールイエロー、ニュートラルレッド、パパニコラウ染色剤、レッド対比染色剤C及びシリウスレッドからなる群から選択されたものである。
【0149】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記第一DNA倍数性染色剤及び前記第二DNA倍数性染色剤が、各々独立的にクロモマイシンA3、DAPI、アクリフラビン−フォイルゲン反応、オーラミンO−フォイルゲン反応、エチジウムブロミド、プロピジウムヨーダイド、高アフィニティDNA蛍光体、DNA結合タンパク質に融合したグリーン蛍光タンパク質、ACMA、キナクリンオレンジ及びアクリジンオレンジ、フォイルゲン試薬、ガロシアニンクロムミョウバン、ガロシアニンクロムミョウバン及びナフトールイエローS、メチルグリーンピロニンY並びにチオニン−フォイルゲン試薬からなる群から選択されたものである。
【0150】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば前記スペクトルデータ採取装置が、干渉計系スペクトルデータ採取装置と、フィルター系スペクトルデータ採取装置と、分散要素系スペクトルデータ採取装置とからなる群から選択されたものである。
【0151】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記第一免疫組織化学染色剤及び前記第二免疫組織化学染色剤が、各々独立的に一次抗体を含む。
【0152】
以下に記載の本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、前記一次抗体が、抗エストロゲンレセプター抗体、抗プロゲステロンレセプター抗体、抗p53抗体、抗Her−2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl−2抗体、抗Eカドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15−3抗体、抗CA19−9抗体、抗c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗ras腫瘍タンパク質抗体、抗ルイスX抗体、抗Ki−67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c−myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパL鎖抗体、抗ラムダL鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異的抗原抗体、抗S−100抗体、抗タウ抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体及び抗Tn抗原抗体からなる群から選択されたものである。
【0153】
本発明によれば、高空間・スペクトル分解のスペクトルイメージング法を用いて、複数の免疫組織化学染色剤、組織染色剤及びDNA倍数性染色剤の同時インサイチュ分析方法を提供することにより現在公知の構成の欠点を克服できる。
【0154】
図面の簡単な説明
本発明は以下、添付の図面を参考して例示のためだけに説明される。図中:
図1は米国特許出願第08/392,019号(従来技術)に準じた構成したイメージング分光計の主要構成要素を示すブロック図である。
図2は米国特許出願第08/392,019号(従来技術)に準じたイメージング分光計に使用される非移動型干渉計、すなわち、Sagnac干渉計を示す。
図3A〜Cはテキサスレッド及びローダミンに結合させた2種の異なるプローブを用いて実施した中間相FISHを示し、図3Aは、顕微鏡を通して見えるオリジナルイメージであり、図3Bは、図3Aと同じ試料について、SPECTRACUBE(商標)システムによる測定及び処理後のイメージを示し、図3Cは、テキサスレッド蛍光体及びローダミン蛍光体の蛍光スペクトルである。
図4A〜Cは各々異なる蛍光体で標識した6種の異なるプローブについてSPECTRACUBE(商標)システムを用いて実施した中間相FISHであり、図4Aは、顕微鏡を通して見えるオリジナルイメージであり、この場合は、細胞をDAPIで対比染色したものであり、図4Bは、図4Aと同じ試料について、SPECTRACUBE(商標)システムによる測定及び処理後のイメージを示し、図4Cは、分類に用いられた6種の蛍光体の蛍光スペクトルである。
図5A〜CはSPECTRACUBE(商標)システムを用いて得られた、24種の染色体ペイントと正常雄染色体スプレッドとのハイブリダイゼーションの結果を示したものであり、図5Aは、RGBアルゴリズムを用いて得られたRGBイメージであり、図5B及び図5Cは、分類アルゴリズムを用いて得られた分類イメージであり、また、図5A及び図5Bは、オリジナルのスプレッドを示し、図5Cは、核型として配置した染色体スプレッドを示す。
図6は選択されたスペクトル範囲を強調するための擬似RGB(赤、緑及び青)色の定義を示す。各擬似色の強度は、曲線下の面積に曲線の一つを乗じた後これを積分することにより算出する。
図7は6種の単一染色剤で染色した乳癌試料から、SPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定した、2種の組織染色剤(ヘマトキシリン及びエオシン)及び4種の免疫組織化学染色剤(DAB、ファストレッド、AEC及びBCIP/NBT)の非正規化スペクトルを示す。ピーク波長は、右に示してある。
図8A〜Eは組織染色剤ヘマトキシリン及び免疫組織化学染色剤抗ER−DABで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図であり、図8Aは、試料のRGBイメージを表し、図8B〜8Dは、それぞれヘマトキシリンスペクトル成分、DABスペクトル成分及びAECスペクトル成分の二値化イメージを表し、一方、図8Eは、上記スペクトル成分をそれぞれ赤色、緑色及び青色で強調した分類オーバーレイイメージを表し、これらは、全てSPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定したものである。
図9A〜Eは組織染色剤ヘマトキシリン及び免疫組織化学染色剤抗PR−AECで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図であり、図9Aは、試料のRGBイメージを表し、図9B〜9Dは、それぞれヘマトキシリンスペクトル成分、DABスペクトル成分及びAECスペクトル成分の二値化イメージを表し、一方、図9Eは、上記スペクトル成分をそれぞれ赤色、緑色及び青色で強調した分類オーバーレイイメージを表し、これらは、全てSPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定したものである。
図10A〜Eは組織染色剤ヘマトキシリン及び免疫組織化学染色剤抗PRファストレッドで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図であり、図10Aは、試料のRGBイメージを表し、図10B〜10Dは、それぞれヘマトキシリンスペクトル成分、DABスペクトル成分及びファストレッドスペクトル成分の二値化イメージを表し、一方、図10Eは、上記スペクトル成分をそれぞれ赤色、緑色及び青色で強調した分類オーバーレイイメージを表し、これらは、全てSPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定したものである。
図11A〜Eは組織染色剤ヘマトキシリン及び免疫組織化学染色剤抗ER−DAB及び抗PR−ファストレッドで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図であり、図11Aは、試料のRGBイメージを表し、図11B〜11Dは、それぞれヘマトキシリンスペクトル成分、DABスペクトル成分及びファストレッドスペクトル成分の二値化イメージを表し、一方、図11Eは、上記スペクトル成分をそれぞれ赤色、緑色及び青色で強調した分類オーバーレイイメージを表し、抗ER−DAB及び抗PR−ファストレッドで共染色した領域は黄色で示されている。上記イメージは、全てSPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定したものである。
図12A〜Fは組織染色剤ヘマトキシリン及びエオシン並びに免疫組織化学染色剤抗ER−DAB及び抗PR−ファストレッドで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図であり、図12Aは、試料のRGBイメージを表し、図12B〜12Eは、それぞれヘマトキシリンスペクトル成分、エオシンスペクトル成分、DABスペクトル成分及びファストレッドスペクトル成分の二値化イメージを表し、一方、図12Fは、上記スペクトル成分をそれぞれ青色、紫色、緑色及び赤色で強調した分類オーバーレイイメージを表す。上記イメージは、全てSPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定したものである。
図13は5種の単一染色剤で染色した子宮頸癌試料から、SPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定した、5種の組織染色剤(ハリスヘマトキシリン、エオシン、オレンジG、ライトグリーンSF及びビスマルクブラウンY)の非正規化スペクトルである。ピーク波長は、右に示してある。
図14A〜Gは組織染色剤であって、いっしょになってパパニコラウ染色剤として当該技術分野で知られているものを形成するハリスヘマトキシリン、エオシン、オレンジG、ライトグリーンSF及びビスマルクブラウンYで共染色した子宮頸癌試料のイメージを示し、図14Aは、試料のRGBイメージを表し、図14B〜14Fは、それぞれハリスヘマトキシリンスペクトル成分、エオシンスペクトル成分、オレンジGスペクトル成分、ライトグリーンSFスペクトル成分及びビスマルクブラウンYスペクトル成分の二値化イメージを表し、一方、図14Eは、分類オーバーレイイメージを表し、これは、上記スペクトル成分をそれぞれ青色、桃色、橙色、緑色及び灰色で強調し、それらの組み合わせにより極彩色の分類オーバーレイイメージを形成したものである。上記イメージは、全てSPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定した。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、細胞の病理検査に使用できる、複数の免疫組織化学染色剤、組織染色剤及び/又はDNA倍数性染色剤の同時インサイチュ分析方法に関する。特に、本発明は、検査した生物試料に関する累積情報を病理学者に提供して意思決定を補助するために用いることができる。
【0155】
本発明による方法の原理及び操作は、図面及びそれに付随する説明を参照することにより、よりよく理解できる。
【0156】
本発明の少なくとも一つの実施態様を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明又は図面に示されている構成の詳細及び構成要素の配列には限定されないことを理解しておかなければならない。本発明は、他の実施態様が可能であり、また、種々の方法で実施できる。また、ここで使用する語法及び専門用語は、説明の目的で用いるものであり、本発明を限定するものではない。
【0157】
最近の研究によれば、数種の吸収染色剤の光学混合物は、一定の場合において分析できることが分かった。個々の染色剤の吸収帯が重ならない場合には、分析は単純且つ容易である。各成分が順次測定に好適な吸収を示し、その他の成分が無視できる程度の吸収を示すような波長を選択する。すなわち、各選択された波長で一回の減衰測定をおこなうことで、混合物中の各々の染色剤を測定できる。この方法は、Bacus等[同書]が病理検体に使用することに成功した。この方法には、(i)細胞又は組織の生化学的組成が分かる;(ii)狭帯フィルターを使用することにより、イメージングを簡単におこなうことができる、といった利点がある。残念ながら、現在の細胞化学及び組織化学では、このようなスペクトルの重ならない染料の数は、極めて限られている。
【0158】
したがって、本発明の一態様によれば、生物試料のインサイチュ分析方法が提供される。この方法は、以下の工程を実施することによりおこなうことができる。第一工程では、生物試料を、第一染色剤が第一免疫組織化学染色剤、第一組織染色剤又は第一DNA倍数性染色剤であり、第二染色剤が第二免疫組織化学染色剤、第二組織染色剤又は第二DNA倍数性染色剤である、N種(すなわち、複数)の染色剤で染色する。
【0159】
但し、Nは、3より大きな整数(例えば、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の数、例えば、11〜50(11及び50を含む)の整数)であり、さらに、(i)前記第一染色剤が前記第一免疫組織化学染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二組織染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり;(ii)前記第一染色剤が前記第一組織染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二DNA倍数性染色剤であり;一方、(iii)前記第一染色剤が前記第一DNA倍数性染色剤である場合には、前記第二染色剤は、前記第二免疫組織化学染色剤又は前記第二組織染色剤である。
【0160】
本発明の方法の第二工程では、スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する。この際、前記スペクトルデータ採取装置と前記N種の染色剤を、前記N種の染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する。
【0161】
本発明の別の態様によれば、生物試料のインサイチュ分析の別の方法が提供される。この方法は、以下の工程を実施することによりおこなう。すなわち、第一工程では、生物試料を、少なくとも4種の異なる免疫組織化学染色剤で染色する。本方法の第二工程では、スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する。この際、前記スペクトルデータ採取装置と前記少なくとも4種の免疫組織化学染色剤を、前記少なくとも4種の免疫組織化学染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する。
【0162】
本発明のさらに別の態様によれば、生物試料のインサイチュ分析のさらに別の方法が提供される。この方法は、以下の工程を実施することによりおこなう。すなわち、第一工程では、生物試料を、少なくとも一種の染色剤が免疫組織化学染色剤であり、少なくとも一種のさらなる染色剤が組織染色剤又はDNA倍数性染色剤である、少なくとも3種の染色剤で染色する。本方法の第二工程では、スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する。この際、前記スペクトルデータ採取装置と前記少なくとも3種の染色剤を、前記少なくとも3種の染色剤の各々に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する。
【0163】
本発明のさらに別の態様によれば、生物試料のインサイチュ分析のさらに別の方法が提供される。この方法は、以下の工程を実施することによりおこなう。すなわち、第一工程では、生物試料を、第一染色剤が免疫組織化学染色剤であり、第二染色剤が組織染色剤であり、第三染色剤がDNA倍数性染色剤である、少なくとも3種の染色剤で染色する。本方法の第二工程では、スペクトルデータ採取装置を用いて前記生物試料からスペクトルデータを採取する。この際、前記スペクトルデータ採取装置と前記少なくとも3種の染色剤を、前記少なくとも3種の染色剤の各々に特異的に関連したスペクトル成分を採取できるように選択する。
【0164】
本発明のさらなる態様によれば、少なくとも4種の異なる免疫組織化学染色剤を混合物中に含み、各免疫組織化学染色剤が生物試料中のそれぞれの細胞学的マーカーを染色するためのものであり、且つ各免疫組織化学染色剤がスペクトルデータ採取装置を用いて全ての他の免疫組織化学染色剤の存在下で個々に検出されることができるものである、免疫組織化学組成物が提供される。
【0165】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「インサイチュ」又は「インサイチュ分析」は、細胞又は組織内の自然の場所又は位置に位置及び好ましくは固定されている細胞又は組織成分の分析を意味する。
【0166】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「生物試料」は、動物(哺乳類、特に人間)から取り出した試料を意味する。この試料は、健康な組織、疾病組織、又は疾病組織である疑いのある組織であることができる。試料は、例えば、外科的処置中に採取したバイオプシーであることができる。試料は、細針による吸引、削りとり、又は腔を洗浄してそこから細胞や組織を採取することにより採取できる。試料は、固形腫瘍及び造血腫瘍の両方の腫瘍だけでなく、隣接する健康組織であってもよい。試料は、個々の細胞のスミア又は組織片であることができる。
【0167】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「染色」は、生物試料に浸透及び/又は生物試料と相互作用した異物により着色が生じるプロセスを意味する。
【0168】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「染色剤」は、蛍光、発光及び/又は非蛍光着色剤を意味し、さらには着色をおこなうのに使用される試薬又は物質を意味する。
【0169】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「免疫組織化学染色剤」は、細胞学的マーカーを結合する一次抗体を使用して被検査生物試料を直接的か、間接的(「サンドイッチ」試薬及び/又は酵素反応)に染色する着色剤、反応及び関連試薬を意味する。免疫組織化学染色剤は、多くの場合、科学文献において、免疫染色剤、免疫細胞染色剤、免疫組織病理学的染色剤等と称する。
【0170】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「抗体」は、モノクローナル若しくはポリクローナル免疫グロブリン、又はsFv(単鎖抗原結合タンパク質)、Fab1又はFab2等の免疫グロブリンの断片を意味する。
【0171】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「組織染色剤」は、タンパク質の種類(酸性、塩基性)、DNA、RNA、脂質、細胞質成分、核成分、膜成分等の細胞成分と関連して細胞及び組織を染色するのに使用される着色剤、反応及び/又は関連試薬を意味する。組織染色剤は、多くの場合、対比染色剤、細胞学的染色剤、組織病理学的染色剤等と称する。
【0172】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「DNA倍数性染色剤」は、DNA又はヒストンを含むがこれらには限定されない染色体成分を化学量論的に結合する染色剤を意味する。抗ヒストン抗体等の抗体が関与するとき、このような染色剤は、DNA免疫倍数性染色剤等としても知られている。
【0173】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「スペクトルデータ採集装置」は、被検査試料の各空間要素(ピクセル)において複数(典型的に4種以上)の別個のスペクトルバンドと関連した光強度を検出できる装置を意味する。例えば、顕微鏡に光学的に接続されたSPECTRACUBE(商標)システムは、好ましくは本発明に係るスペクトルデータ採取装置としての役割を果たす。しかしながら、いずれのスペクトルイメージャー、すなわち、フィルター(例えば、通常の音響光学的チューニング可能フィルター(AOTF)又は液晶チューニング可能フィルター(LCTF))及び分散型要素(例えば、格子又はプリズム)系スペクトルイメージャー、又は他のスペクトルデータ又はマルチバンド光採取装置をはじめとする視野内に配置された対象物の全ての点で放出される光のスペクトルを測定し且つ後の検索及び分析用に記憶装置に記憶する機器(例えば、Speicher R.M.、Ballard S.G.及びWard C.D.(1996)Karyotyping human chromosomes by combinatorial multi−fluor FISH、Nature Genetics、12:368−375における開示に準じた装置)を使用して、必要とするスペクトルデータを得ることができる。また、米国特許出願第08/917,213(1997年8月25日出願)(引用することにより本明細書に全て記載されているものとする)に記載されているような複数の広帯域フィルター(固定又はチューニング可能)を含む装置も、本発明に係るスペクトルデータ採取装置として使用できる。したがって、本発明の範囲は、いずれかの特定の種類のスペクトルデータ採取装置の使用やいずれかの特定の種類のスペクトルイメージャーによって限定されるものではない。
【0174】
すなわち、スペクトルデータ採取装置は、干渉計系スペクトルデータ採取装置、フィルター(単一又は複数)系スペクトルデータ採取装置及び分散要素系スペクトルデータ採取装置であることができる。
【0175】
本明細書及び請求の範囲において使用されている用語「スペクトル成分」は、特定の物質に固有であり且つ、したがって、その物質のスペクトルサインとして使用してその物質を他の物質から識別するのに使用できる、スペクトルの一部分を意味する。
【0176】
本発明の一実施態様によれば、前記免疫組織化学染色剤は、各々独立的に一次抗体及びシグナル増幅機構を含む。前記シグナル増幅機構は、例えば、一次抗体の定常部を結合できる二次抗体、前記一次抗体に結合されているビオチンを結合できるアビジン又はストレプトアビジン、及び前記一次抗体に結合されているアビジン又はストレプトアビジンを結合できるビオチンを用いることができる。
【0177】
本発明の好ましい実施態様によれば、前記二次抗体、アビジン、ストレプトアビジン又はビオチンは、各々独立的に、実質的に非溶性の呈色反応生成物、蛍光染料(染色剤)、発光染料又は非蛍光染料を有する基質の比色反応を誘導する酵素であることができる、検出可能成分で標識したものである。これらの選択例は、以下に記載されている。
【0178】
酵素は、例えば、アルカリ性ホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ及び/又はグルコースオキシダーゼを用いることができ、基質は、それぞれアルカリ性ホスファターゼ基質、ホースラディッシュペルオキシダーゼ基質、β−ガラクトシダーゼ基質又はグルコースオキシダーゼ基質であることができる。
【0179】
また、酵素は、発光できるか、発光生成物を有する第二基質(ルシフェリン及びATP又はコエレンテラジン及びCa++を含むがこれらには限定されない)の第二反応を導くことができる、実質的に不溶性の反応生成物を有する基質の発光反応を触媒する酵素(ルシフェラーゼ及びエクオリンを含むがこれらには限定されない)であることができる。
【0180】
本発明の方法の実施にあたって用いることができる任意の組織及びDNA倍数性染色剤が、以下に例示されている。
【0181】
本発明の最も好ましい実施態様によれば、用いられる免疫組織化学染色剤の各々は、一次抗体を含む。
【0182】
本発明のさらに別の実施態様によれば、外部校正を用いて、染色を試みるときに見られる日間ばらつきを明らかにする。すなわち、各染色バッチについて少なくとも一回の校正を試みるのが好ましい。このためには、校正物質を用いて生物試料と校正物質とを同じ染色溶液で同時に染色する。まず、スペクトルデータ採取装置を使用して、スペクトルデータ採取装置の調整、又はアルゴリズム的測定後校正のための校正データの抽出ができるように、染色された校正物質を分析する。それからでしか、生物試料は、校正に基づいた修正を考慮して、より意味のある分析ができない。当業者には、染色を試みるときに見られる日間ばらつきを補償する校正アルゴリズムをどのようにして考案するかが分かるであろう。
【0183】
校正物質は、光学濃度参照物質であることができる。また、校正物質は、検査生物試料といっしょに同時に共染色される対照細胞を含むことができる。
【0184】
以下に、本発明の方法を実施するのに使用できる種々の染料又は染色剤を一覧にして示す。さらに、本発明の方法を用いて染色剤で共検出できる検出可能スペクトルサインを有する天然細胞成分も一覧で示す。
【0185】
ある種の染色方法が他のある種の染色方法を妨害することがあることは、当業者には明らかであろう。したがって、用いられる染色剤の種類及びそれらの適用順序を、十分に考慮しなければならない。これらの考慮事項は、染色法を知っている当業者により適用できる。
【0186】
透過型顕微鏡用免疫組織化学染色剤:原則として、(i)一次抗体と結合又は間接的に結合(例えば、結合アビジン、ストレプトアビジン、ビオチン、二次抗体を介して)でき、(ii)可溶性基質を使用して不溶性生成物(沈殿物)を得る、酵素ならいかなる酵素でも使用できる。このような酵素には、例えば、HRP、AP、LacZ及びグルコースオキシダーゼなどがある。
【0187】
アルカリ性ホスファターゼ(AP)基質には、AP−ブルー基質(青色析出物、Zymed社カタログ第61頁)、AP−オレンジ基質(橙色析出物、Zymed社)、AP−レッド基質(赤色析出物、Zymed社)、5−ブロモ,4−クロロ,3−インドリルホスフェート(BCIP基質、青緑色析出物)、5−ブロモ,4−クロロ,3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム/ヨードニトロテトラゾリウム(BCIP/INT基質、黄褐色析出物、Biomeda社)、5−ブロモ,4−クロロ,3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(BCIP/NBT基質、青色/紫色)、5−ブロモ,4−クロロ,3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム/ヨードニトロテトラゾリウム(BCIP/NBT/INT、褐色析出物、DAKO社)、ファストレッド(赤色)、マゼンタ−ホス(マゼンタ色)、ナフトールAS−BIホスフェート(NABP)/ファストレッドTR(赤色)、ナフトールAS−BIホスフェート(NABP)/ニューフクシン(赤色)、ナフトールAS−MXホスフェート(NAMP)/ニューフクシン(赤色)、ニューフクシンAP基質(赤色)、p−ニトロフェニルホスフェート(PNPP、黄色、水溶性)、VECTOR(商標)ブラック(黒色)、VECTOR(商標)ブルー(青色)、VECTOR(商標)レッド(赤色)、ベガレッド(ラズベリー赤色)などがあるが、これらには限定されない。
【0188】
ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP;「PO」と略されることがある)基質には、2,2’−アジノ−ジ−3−エチルベンズ−チアゾリンスルホネート(ABTS、緑色、水溶性)、アミノエチルカルバゾール、3−アミノ,9−エチルカルバゾールAEC(3A9EC、赤色)、α−ナフトールピロニン(赤色)、4−クロロ−1−ナフトール(4C1N、青色、青色−黒色)、3,3’−ジアミノベンジジンテトラヒドロクロリド(DAB、褐色)、o−ジアニシジン(緑色)、o−フェニレンジアミン(OPD、褐色、水溶性)、TACSブルー(青色)、TACSレッド(赤色)、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB、緑色又は緑色/青色)、TRUE BLUE(商標)(青色)、VECTOR(商標)VIP(紫色)、VECTOR(商標)SG(スモーキーブルーグレー)及びザイメッドブルーHRP基質(鮮やかな青色)を含むが、これらには限定されない。
【0189】
グルコースオキシダーゼ(GO)基質には、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT、紫色析出物)、テトラニトロブルーテトラゾリウム(TNBT、黒色析出物)、2−(4−ヨードフェニル)−5−(4−ニトロフェニル)−3−フェニルテトラゾリウムクロリド(INT、赤色又は橙色析出物)、テトラゾリウムブルー(青色)、ニトロテトラゾリウムバイオレット(バイオレット)及び3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT、パープル)などがあるが、これらには限定されない。全てのテトラゾリウム基質は、共基質としてグルコースを必要とする。グルコースは酸化され、テトラゾリウム塩は還元されて、不溶性ホルマザンを形成して着色沈殿物を形成する。
【0190】
β−ガラクトシダーゼ基質には、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイル−β−D−ガラクトピラノシド(X−gal、青色析出物)などがあるが、これらには限定されない。
【0191】
上記で挙げた基質の各々に関連した沈殿物は、特有の検出可能スペクトルサイン(成分)を有する。
【0192】
重金属を結合する抗体を、反射コントラスト、明視野若しくは暗視野イメージング又は電子顕微鏡を用いた免疫染色に使用できる。このような重金属には、金及び銀(典型的には、コロイド状)が含まれるが、これらには限定されない。
【0193】
本明細書に組み込まれるものとする以下の文献に、さらなる例が挙げられている。J.M.Elias(1990)Immunohistopathology:A practical approach to diagnosis(診断への実用的手法)、ASCP Press(American Society of Clinical Pathologists)、シカゴ;J.F.McGinty及びF.E.Bloom(1983)Double immunostaining reveals distinctions among opioid peptidergic neurons in the medial basal hypothalamus(二重免疫染色により、内側基底視床下部のオピオイドペプチド作用性ニューロン間の差異が判明)、Brain Res.278:145−153;及びT.Jowett(1997)Tissue In situ Hybridization(組織インサイチュハイブリダイゼーション):Methods in Animal Development、John Wiley&Sons社、ニューヨーク;J Histochem Cytochem 1997年12月、45(12):1629−1641。
【0194】
透過型顕微鏡用組織染色剤:以下に、透過型光顕微鏡に使用される組織染色剤の一部を示す:エオシン、ヘマトキシリン、オレンジG、ライトグリーンSF、ロマノフスキー−ギームザ、メイ−グリュンワルド、ブルー対比染色剤(Trevigen)、エチルグリーン(CAS)、フォイルゲンナフトールイエローS、ギームザ、メチレンブルー、メチルグリーン、ピロニン、ナフトールイエロー、ニュートラルレッド、パパニコラウ染色剤(典型的には、ヘマトキシリン、エオシンY、ライトグリーンSF、オレンジG及びビスマルクブラウンの混合物を含む)、レッド対比染色剤B(Trevigen)、レッド対比染色剤C(Trevigen)及びシリウスレッド。
【0195】
透過型顕微鏡用DNA倍数性染色剤:以下に、透過型光顕微鏡に使用されるDNA倍数性染色剤の一部を示す:フォイルゲン試薬(パラロサニリン)、ガロシアニンクロムミョウバン、ガロシアニンクロムミョウバン及びナフトールイエローS、メチルグリーンピロニンY並びにチオニン−フォイルゲン試薬。
【0196】
蛍光顕微鏡用免疫組織化学染色剤:、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、Cy2、Cy3、Cy5、VECTORレッド、ELF(商標)(酵素標識フルオレセンス)、Cy0、Cy0.5、Cy1、Cy1.5、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy7、FluorX、カルセイン、カルセイン−AM、CRYPTOFLUOR(商標)(オレンジ(42kDa)、タンジェリン(35kDa)、ゴールド(31kDa)、レッド(42kDa)、クリムソン(40kDa))、BHMP、BHDMAP、Br−オレゴン、ルシフェルイエロー、アレクサ染料類、N−[6−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−4−イル)アミノ]カプロイル](NBD)、BODIPY(商標)、ボロンジピロメテンジフルオリド、オレゴングリーン、MITOTRACKER(商標)レッド、DiOC(3)、DiIC18、フィコエリトリン、フィコビリタンパク質BPE(240kDa)RPE(240kDa)CPC(264kDa)APC(104kDa)、スペクトルブルー、スペクトルアクア、スペクトルグリーン、スペクトルゴールド、スペクトルオレンジ、スペクトルレッド、NADH、NADPH、FAD、赤外(IR)染料、環状GDPリボース(cGDPR)、カルコフルオルホワイト、チロシン及びトリプトファン。
【0197】
蛍光顕微鏡用組織染色剤:4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、エオシン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ヘキスト33258及びヘキスト33342(2種類のビスベンゾイミド)、プロピジウムヨーダイド、キナクリン、フルオレセイン−ファロイジン及びレゾルフィン。
【0198】
蛍光顕微鏡用DNA倍数性染色剤:クロモマイシンA3、DAPI、アクリフラビン−フォイルゲン反応、オーラミンO−フォイルゲン反応、エチジウムブロミド、プロピジウムヨーダイド、高アフィニティDNA蛍光体(POPO、BOBO、YOYO及びTOTO等)、DNA結合タンパク質に融合したグリーン蛍光タンパク質(ヒストン等)、ACMA、キナクリンオレンジ及びアクリジンオレンジ。
【0199】
内生色素:ヘモグロビン、ミオグロビン、ポルフィリン、ヘモシデリン及び他の第一鉄色素、リポフスチン、メラニン、神経メラニン、セロイド、脂質/タンパク質の蛍光酸化生成物、カロチノイド、ピリジン、フラビンヌクレオチド。
【0200】
以下に、関連細胞学的マーカーを特異的に結合することが知られており、且つ現在研究用に使用されている免疫組織化学染色剤における成分として用いられており、且つ限られているが、種々の疾病の診断に用いられている一次抗体のいくつかをまとめて示す。抗エストロゲンレセプター抗体(乳癌)、抗プロゲステロンレセプター抗体(乳癌)、抗p53抗体(多発性癌)、抗Her−2/neu抗体(多発性癌)、抗EGFR抗体(表皮細胞成長因子、多発性癌)、抗カテプシンD抗体(乳癌等の癌)、抗Bcl−2抗体(アポプトーシス細胞)、抗Eカドヘリン抗体、抗CA125抗体(卵巣癌等の癌)、抗CA15−3抗体(乳癌)、抗CA19−9抗体(結腸癌)、抗c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体(MDR、多薬物耐性)、抗CEA抗体(癌胎児抗原)、抗網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)抗体、抗ras腫瘍タンパク質(p21)抗体、抗ルイスX抗体(CD15とも称される)、抗Ki−67抗体(細胞増殖)、抗PCNA抗体(多発性癌)、抗CD3抗体(T細胞)、抗CD4抗体(ヘルパーT細胞)、抗CD5抗体(T細胞)、抗CD7抗体(胸腺細胞、未成熟T細胞、NKキラー細胞)、抗CD8抗体(サプレッサーT細胞)、抗CD9/p24抗体(ALL)、抗CD10(CALLAとも称される)抗体(普通の急性リンパ芽球性白血病)、抗CD11c抗体(単核細胞、顆粒球、AML)、抗CD13抗体(骨髄単球性細胞、AML)、抗CD14抗体(成熟単核細胞、顆粒球)、抗CD15抗体(ホジキン病)、抗CD19抗体(B細胞)、抗CD20抗体(B細胞)、抗CD22抗体(B細胞)、抗CD23抗体(活性化B細胞、CLL)、抗CD30抗体(活性化T細胞及び活性化B細胞、ホジキン病)、抗CD31抗体(血管形成マーカー)、抗CD33抗体(骨髄性細胞、AML)、抗CD34抗体(内皮幹細胞、間質腫瘍)、抗CD35抗体(樹状細胞)、抗CD38抗体(形質細胞、活性化T、B及び骨髄性細胞)、抗CD41抗体(血小板、巨核球)、抗LCA/CD45抗体(白血球共通抗原)、抗CD45RO抗体(ヘルパー、インデューサーT細胞)、抗CD45RA抗体(B細胞)、抗CD39、CD100抗体、抗CD95/Fas抗体(アポプトシス)、抗CD99抗体(ユーイングサルコーママーカー、MIC2遺伝子産生物)、抗CD106抗体(VCAM−1;活性化内皮細胞)、抗ユビキチン抗体(アルツハイマー病)、抗CD71(トランスフェリンレセプター)抗体、抗c−myc(腫瘍タンパク質及びハプテン)抗体、抗サイトケラチン(トランスフェリンレセプター)抗体、抗ビメンチン(内皮細胞)抗体(B細胞及びT細胞)、抗HPVタンパク質(ヒト乳頭腫ウィルス)抗体、抗カッパL鎖抗体(B細胞)、抗ラムダL鎖抗体(B細胞)、抗メラノソーム(HMB45)抗体(メラノーマ)、抗前立腺特異的抗原(PSA)抗体(前立腺癌)、抗S−100抗体(メラノーマ、サルベアリ、グリア細胞)、抗タウ抗原抗体(アルツハイマー病)、抗フィブリン抗体(上皮細胞)、抗ケラチン抗体及び抗Tn抗原抗体(結腸癌、アデノカルチノーマ及び膵癌)。
【0201】
以下に示す表2に、種々の癌における予後及び/又は治療有意性を有するマーカーセットを数例示す:
【0202】
【表2】
Figure 2002521682
【0203】
したがって、乳癌パネルには、抗ER、抗PR、抗Her2/neu、抗p53、抗Ki−67及び抗CD31免疫組織化学マーカー染色剤、DNA倍数性染色剤及びH&E対比染色剤を含めることができる。
【0204】
卵巣癌パネル及び/又は子宮内膜癌パネルには、したがって、抗Her2/neu、抗p53、抗Ki−67及び抗CD31免疫組織化学染色剤、DNA倍数性染色剤及びH&E対比染色剤を含めることができる。
【0205】
前立腺癌パネル及び/又は膀胱癌パネルには、したがって、抗Ki−67、抗p53、抗CD31及び抗網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)マーカー染色剤、DNA倍数性染色剤及びH&E対比染色剤を含めることができる。
【0206】
したがって、結腸直腸癌パネルには、抗Ki−67、抗p53、抗CD31及び抗p21(ras腫瘍タンパク質)マーカー染色剤、DNA倍数性染色剤及びH&E対比染色剤を含めることができる。
【0207】
ここに記載の本発明は、従来方法に対していくつかの利点がある。すなわち、高分解イメージングと極めて低く且つ不十分なスペクトル分解(典型的には、2つの別個のスペクトルバンド)とを組み合わせて2種の染色剤を共検出できる。これは、高空間分解且つ高スペクトル分解を特徴とするここに記載のスペクトル採取装置の使用により、用いる染色剤がスペクトル的に極めて類似している場合であっても、所望の数の染色剤の共検出が可能になるからである。
【0208】
したがって、本発明によれば、臨床医は、予後/治療有意性を有する複数の細胞学的マーカー(例えば、ER、PR、p53、her−2/neu、Ki−67及びCD31)及びDNA倍数性における有意な変化を、従来の組織染色剤を用いて染色された試料において同時に検出できる。したがって、臨床医は、患者の治療を、向上した精度(例えば、適当な治療プログラムの選択)で管理及び監視、より正確な診断を介して患者の管理コストを削減、及びより効率的なサンプリングを介して病院コストを削減できる。
【0209】
本発明に係る染色生物試料のスキャニングは、例えば、スライドローディング及びスキャニング装置を用いて、当該技術分野において周知のようにして手動、半自動又は自動でおこなうことができる。完全なDNA倍数性分析では、典型的には200個の細胞、好ましくはそれ以上の細胞を分析しなければならない。パターン認識及びスペクトル分解パターン認識法を用いて、分析及び診断精度を高めることができる。
【0210】
本発明により提供される、高空間分解及び高スペクトル分解のスペクトルイメージング法を用いた複数の免疫組織化学染色剤、組織染色剤及びDNA倍数性染色剤の同時インサイチュ分析方法は、従来技術に対して極めて数多くの利点がある。まず、複数の染色剤を同時検出でき、したがって、効率的且つ経済的である。第二に、従来技術では、同じ細胞又は組織についての2種又は3種以上の染色剤には適用できないのに対して、本発明の方法では同じ細胞又は組織についての複数の染色剤を同時に検出できる。第三に、従来技術では極めて明確に区別される染色剤を使用する必要があるのに対して、本発明の方法では極めて類似したスペクトル間を分離できる。
【0211】
実施例
参考文献はここで以上での記述とともに、非限定的な形で本発明を例示する以下の実施例からなる。
【0212】
実施例1
測定装置とその性能
図1は、本明細書で完全に列記したように、参考文献によって組み込まれる、1995年2月21日にCabib等に付与された米国特許明細書第08/392,019号で、現在1996年7月23日に発行された米国特許第5,539,517号において開示された先行技術の、イメージング分光計の主要構成物のブロック線図である。
【0213】
このイメージング分光計は、高スペクトル的(波長に依存してCa.4−14 nm)および空間的(Ca.30/M μm、式中Mは有効顕微鏡または光学素子前倍率である)分解能を持つので、本発明の方法の履行に極めて適切に構築されている。
【0214】
したがって、図1の先行技術イメージング分光計は、一般的に20で示した採取光学系、ブロック22によって示したような一次元スキャナー、ブロック24によって示したような、光路差(OPD)発生器または干渉計、ブロック26で示したような一次元または二次元検出器アレイ、ブロック28で示したようなシグナル処理機およびディスプレイを含む。
【0215】
系20での不可欠な成分はOPD発生器または干渉計24であり、解析すべきシーンのそれぞれのピクセルから放出された光のスペクトル強度の線型組み合わせの、あらかじめ決められた組に対応している変調光を出力する。干渉計の出力は検出器アレイ26上に焦点合わせされる。したがって、スペクトルを再構築するために必要な情報のすべてを得るために、必要な光学位相差のすべてが、視野領域のピクセルすべてに対して同時にスキャンされる。シーン中のピクセルすべてのスペクトルはしたがって、イメージング情報と同時に採取され、したがってリアルタイム様式でのイメージの解析が可能になる。
【0216】
米国特許第5,539,517号による装置は多種類の構成で実施してよい。とりわけ、使用した干渉計は米国特許第5,539,517号の関連する図で記述されたような他の鏡と組み合わせてよい。
【0217】
したがって、米国特許第5,539,517号にしたがって、他の型の干渉計を使用してもよい。これらには、(i)OPDが光を変調するために変化するような移動型干渉計、すなわち走査厚を持つファブリ−ペロー干渉計、(ii)光学採取系およびスキャナからの光線を受け取り、光線を2つの通路へ分割するビームスプリッターを含むマイケルソン型干渉計、(iii)その干渉計内で、引用した米国特許にてさらに記述されたような4鏡とビームスプリッター干渉計のような、OPDが入射してくる光線の入射角で変化する他の光学的手段と所望により組み合わせたサグナック干渉計(その明細書の図14を参照のこと)が含まれる。
【0218】
図2は、米国特許第5,539,517号によって構築したイメージング分光計を図解し、これはOPDが入射光線の入射角とともに変化するような干渉計を使用している。光学軸に対して小さな角度で干渉系に入った光線は、実質的に直線的にこの角度とともに変化するOPDを受ける。
【0219】
図2の干渉計において、光学採取系31によって平衡化された後、すべてのピクセルでの供給源30からの放射のすべては機械的スキャナー32によってスキャンされる。ついで光はビームスプリッター33を通して第一反射器34へ、ついで第二反射器35へ進行し、これは光を反射してまずビームスプリッター33を、ついでフォーカシングレンズ36を通して検出器のアレイ37(たとえばCCD)へと光を進行させる。この光線は、33、ついで第二反射器35、そして最終的に第一反射器34によって反射された光線で干渉される。
【0220】
1つのスキャンの最後に、すべてのOPDを介して、すべてのピクセルが測定され、したがってそのシーンのすべてのピクセルのスペクトルがフーリエ変換によって再構築されうる。光軸に平行な光線は補正され、光軸に対して角度(θ)での光線は、ビームスプレッター33の厚み、その反射指数および角度θの関数であるOPDを受ける。OPDは小さな角度に対してはθと比例する。適切な変換を行うことにより、そして慎重に記録することにより、すべてのピクセルのスペクトルを計算する。
【0221】
図2の構成において、角度β(図2ではβ=45°)にてビームスプリッター上に入射する光線はOPD=0の干渉計を通って進み、一方一般的な角度β−θで入射する光線は式1で与えられるOPDを受ける。
【数1】
Figure 2002521682
式中θは中心部位に関して光軸または干渉計回転軸からの光線の角距離であり、tはビームスプレッターの厚さであり、nはビームスプレッターの屈折率である。
【0222】
中心部分に関して、正角および負角両方をスキャンすることによって、あらゆるピクセルについての二面インターフェログラムを得、これは位相差の除去を助けてフーリエ変換計算でのより正確な結果を与えることが式1より理解される。スキャンの幅は到達する最大OPDを決定し、これは測定のスペクトル分解能に関連する。角工程の大きさは、システムが感受性であるようなもっとも短い波長によって規定されるOPD工程を決定する。事実、サンプリング定理[Chamberlain(1979) The principles of interferometric spectroscopy, John Wiley and Sons,pp.53−55を参照のこと]によれば、このOPD工程はシステムが感受性であるようなもっとも短い波長の半分よりも小さくなければならない。
【0223】
考慮に入れるべき他のパラメータはマトリックス中の検出器要素の有限の大きさである。焦点合わせ光学素子を通して、この要素は、直交関数を持つインターフェログラムを巻き込む効果を持つ干渉計中の有限なOPDの範囲を定める。このことは、結果として短い波長でのシステムの感度の減少を引き起こし、この要素により範囲を定められたOPDと等しいかそれ以下の波長に対してゼロにまで落ちる。このことから、変調転移機能(MTF)条件が履行されること、すなわち干渉計内での検出器要素によって範囲を決定されたOPDは装置が感受性であるもっとも短い波長よりも小さくなければならないことを確実にしなければならない。
【0224】
したがって、米国特許第5,539,517号に開示された発明にしたがって構築されたイメージング分光計は、ただ単に視野領域内のあらゆるピクセルからきている光の強度を測定するだけでなく、あらかじめ定義した波長範囲でのそれぞれのピクセルのスペクトルも測定する。これらはまた、任意の与えられた時間における視野領域内のそれぞれのピクセルにより放たれた放射すべてをよりよく使用し、したがって上で説明したように、フレーム時間での明らかな減少および/または分光計の感度の明らかな増加を可能にする。そのようなイメージング分光計はさまざまな型の干渉計および光学採取ならびに焦点合わせシステムを含んでよく、したがって医学診断および治療および生物学的調査利用、さらに地質学的および農学的調査のための遠隔検出、およびそれに類似するものを含むさまざまな種類の適用で使用することができる。
【0225】
上で言及したように、米国特許第5,539,517号で開示された発明によるイメージング分光計はApplied Spectral Imaging Ltd., Industrial Park,Migdal Haemek,Israelによって開発され、本明細書ではSPECTRACUBE(商標)と表す。
【0226】
SPECTRACUBE(商標)システムは以下の、またはよりよい特徴を持っており、本明細書以下表3に列記する。
【表3】
Figure 2002521682
【0227】
光学的に顕微鏡に連結したSPECTRACUBE(商標)システムは、好ましくは本発明の方法による生物試料を解析するために使用する。しかしながら、任意のスペクトルイメージャー、すなわちフィルター(たとえば、音響光学的チューニング可能フィルター(AOTF)または液晶チューニング可能フィルター(LCTF))および分散型要素(たとえば、格子またはプリズム)系スペクトルイメージャー、または他のスペクトルデータまたはマルチバンド光採取装置(たとえばSpeicher R.M.,Ballard S.G.及びWard C.D.(1996) Karyotyping human chromosomes by combinatorial multi−flour FISH. Nature Genetics,12:368−375での開示にしたがった装置)を含む、その視野領域内に位置する対象のあらゆる点によって放出された光のスペクトルを測定し、その後の修正および解析のためにメモリーに記憶する機器を、必要であるスペクトルデータを得るために使用できる。また、1997年8月25日に出願され、本明細書で完全に列記したように参考文献によって組み込まれる米国特許明細書第08/917,213号で記述されたように、複数の広帯域フィルター(固定またはチューニング可能)を含む装置を本明細書によるスペクトルデータ採取装置として使用できる。したがって、いかなる特定の型のスペクトルイメージャーやいかなる特定な型のスペクトルデータ採取装置の使用に関して本発明の範囲を制限しないことが意図される。
【0228】
極めて類似したスペクトルの間を分離し、区別するためのSPECTRACUBE(商標)システムの力を図3−5に表示する。
【0229】
この能力を例示するために、まず蛍光スペクトルが非常に似ている、蛍光発色団テキサス−レッドおよびローダミンでそれぞれ標識化した第1染色体および第17染色体特異的DNAプローブで行った分裂間期FISH測定の例を含む、図3A−Cを注目のこと。第1染色体プローブは染色体のサブテロメア領域に対するミッドサテライトプローブであり、ハイブリダイゼーション後ビオチンを介してDNAプローブへ連結するテキサス−レッドで標識化した。第17染色体プローブは染色体の動原体領域に対するαサテライトプローブであり、ハイブリダイゼーション後ジゴキシゲニンを介して第二DNAプローブに連結したローダミンで標識化した。図3Aはオリジナルのイメージであり、顕微鏡を通して目に見えたものである。図3BはSPECTRACUBE(商標)システムによって測定し、処理した後の同じ試料を示している。一方、図3Cはテキサス−レッド(Tと記した)およびローダミン(Rと記した)蛍光発色団の蛍光スペクトルを示す。
【0230】
図3Cでみるように、テキサス−レッドとローダミンのスペクトルピークは15nmしか異ならず、したがって、フィルターに基づいた装置を用いてそれらの間を区別することは極めて難しい。
【0231】
図3Aで示したように、顕微鏡を通したカラーFISHイメージをみると、イメージ中に現れているドットの(1−4と記した)およびプローブ型の正確な数を認識する信頼レベルは特に高くはない。一方、図3Bで示すように、それぞれのピクセルについて測定したスペクトルの利点を持つ、SPECTRACUBE(商標)システムは、ドットの存在を実証すること、それらを正確に計数すること、およびそれらの間の小さなスペクトルの差によって高い信頼レベルで異なる組を区別することが可能である。図3Cに示すように、テキサス−レッドおよびローダミン蛍光の人工的着色によって、プローブ特異的蛍光の局在が高い精度で決定され、そこではドット1および2はテキサス−レッドのものであり、ドット3および4はローダミンのものである。
【0232】
図4A−Bは、核分裂間期DNAの6つの異なるプローブでのハイブリダイゼーション後のFISH測定の例を提供する。図4Aは顕微鏡を通して見られたようなオリジナルのイメージを表す。図4Bは、すべての検出した組のSPECTRACUBE(商標)システム測定、スペクトル処理および人工的着色表示をされた同じイメージを表す。図4CはSPECTRACUBE(商標)システムを用いた3重二色性フィルターを通して検出したような、ハイブリダイゼーション後の6蛍光発色団のスペクトルを表す(それぞれ標識された染色体にしたがって1、8、10、11、17およびXと記した)。蛍光発色団、プローブおよび染色体に関する詳細については、以下の記述、表3以下およびChroma Corp.カタログ番号61502を参照のこと。
【0233】
肉眼によってまたは単純なRGB着色測定を使用してでさえもお互いの色からの識別が難しいことが、分裂間期細胞核のオリジナルのRGBイメージを示している図4Aから明らかである。
【0234】
熟練した観察者は、もっともよい場合、6つの異なる色のうち3つを検出することができる。しかしながら、図4Bは分類アルゴリズムでスペクトルデータを処理した後の図4Aで示した同じ試料を表し、得られたドットを人工的な色:オレンジ色、シアン、青色、黄色、緑色および赤色で強調し、一方背景は黒色、人工色を与えたものを示す。観察したように、すべての6つの組の蛍光発色団を見、組間の違いを簡単に区別することが可能である。
【0235】
1つの組、青色で強調した1つは肉眼で、またはカラーカメラの使用によってはほとんど気づくことができないが、しかしスペクトルキューブ上の背景控除アルゴリズムにかけた後には検出されることにさらに注意すべきである(図4Aおよび4Bを比較のこと)。
【0236】
使用したプローブは第8、10、11、17およびX染色体の動原体領域に対する5つのαサテライトプローブ及び第1染色体のサブテロメア領域に対するミッドサテライトプローブであった。それぞれの上記染色体を標識するために使用した蛍光発色団およびDAPI対比染色(背景)、それらの放出ピークおよび人工表示した色分類を以下表4で要約する。
【0237】
図4Cで示したそれぞれの6つの蛍光発色団の標準化スペクトル特性より、それらのスペクトル間の広い重なりのために、2、3の比較的広いスペクトル範囲で測定するフィルターに基づいた装置が異なるプローブ種間を確かに区別できないことがはっきりする。このようなシステムはそれぞれのプローブの強度の絶対測定に依存し、したがって背景シグナルおよびノイズによって影響を受ける。スペクトルの重なりはまた細胞それ自身から発生している自発蛍光と一緒に起こることにさらに注意すべきである。この場合においても、それぞれのピクセルについてのスペクトル情報を利用することができるので自発蛍光寄与の排除が可能であり、より正確な結果を産出する。
【表4】
Figure 2002521682
Vysis,Downers Grove,IL,U.S.から標識化デオキシヌクレオチドとして得た。プローブを含んだプレハイブリダイズしたジゴキシゲニンへ抗ジゴキシゲニン抗体を介して結合した。プローブを含んだプレハイブリダイズしたビオチンへ抗ビオチン抗体を介して結合させたフルオロセイン−5−イソ−チオシオネート。対比染色のために使用した4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール。
【0238】
図5A−Cは、本明細書に完全に記載されているかのように参照として組み込まれた、1998年2月17日に出願された米国特許明細書第09/025,131号にて開示された概要にしたがった組み合わせハイブリダイゼーションアプローチを用いた正常男性染色体のハイブリダイゼーション結果を示す。
【0239】
図5AはRGBアルゴリズムを使用して得られた染色体スプレッドのRGBイメージである。RGBアルゴリズムは、染色体のRGBイメージを得るためにCCDアレイのスペクトル幅(たとえば400nmから760nm)上で光学シグナルを統合し、そこではそれぞれのピクセルが、赤色(R)、緑色(G)および青色(B)に対する三刺激応答関数に相当する3つの比重関数、{w(λ)、w(λ)、w(λ)}にしたがった赤色、緑色および青色強度の組み合わせによる。
【0240】
図5Aにおいて、使用した比重化関数w、w、wは単純平方比重関数であり、w(赤色)についてはλ=640nmおよびλ=750nm;w(緑色)についてはλ=555nmおよびλ=640nm;w(青色)についてはλ=450nmおよびλ=555nmであった。単純比重化関数w、w、wを統合し、染色体のRGBイメージを生成した。
【0241】
図5Bは図5Aの染色体スプレッドの分類イメージである。図5Cは図5Bの染色体スプレッドに由来する核型である。分類イメージを、それぞれのピクセルがそのスペクトルにしたがって分類される分類アルゴリズムによって計算する。最も重要な解析アルゴリズムの1つは、イメージ中の多数の異なるスペクトルを同定し分類色で強調できる、スペクトルに基づいた分類アルゴリズムである。これはそのスペクトルに基づいたすべてのヒト染色体への特異的な分類色の割り当てを可能にする。このアルゴリズムは、それぞれの染色体の対照スペクトルを、測定し、コンピュータでの対照ライブラリーに記憶してきたことを仮定している。識別分類色は、上で定義したように、たとえば最小二乗誤差アルゴリズムによって、与えられたピクセルにおけるスペクトルともっとも類似した対照スペクトルに割り当てられた分類色にしたがって、イメージ中のそれぞれのピクセルに割り当てる。
【0242】
実施例2
解析および結果の表示
一般:スペクトルイメージはデータの三次元配列、I(x,y,λ)であり、スペクトル情報をイメージの空間的構成と連結する。そのように、その次元のために、スペクトルイメージはスペクトルキューブと呼ばれるデータの組であり、別な方法で得ることが難しく、いくつかの場合不可能ですらある特徴の抽出および定量的な評価を可能にする。分光計およびデジタルイメージ解析の両方が、多量の文献によってカバーされた周知の領域であるので[たとえば、Jain(1989) Fundamentals of Digital Image Processing,Prentice−Hall Internationalを参照のこと]、以下の議論は第一に単一データ組、すなわち1つのスペクトルキューブでの分光的およびイメージング情報を連結することの利益に主に焦点を定めよう。
【0243】
1つの可能性のあるスペクトルキューブの解析の型は、スペクトルデータ、および空間的データを別々に使用すること、すなわちスペクトルアルゴリズムをスペクトルデータに適用し、二次元イメージ処理アルゴリズムを空間的データに適用することである。
【0244】
スペクトルアルゴリズムの例として、対照スペクトルとすべてのピクセルのスペクトル間の相同性をコンピュータで計算して(すなわち相同性マッピング)、それぞれのピクセルでの強度が「相同性」の程度と比例するようなグレー(または他の色)スケールイメージ(すなわち相同マップ)を生ずるアルゴリズムを考える。このグレースケールイメージはついで、さらにイメージ処理およびコンピュータ映像技術(たとえばイメージ増強、パターン認識など)を用いて解析し、望ましい特徴およびパラメータを抽出することができる。言い換えれば、相同性マッピングは参照スペクトル(これはすでにライブラリーに記憶されているか、または同じか異なるスペクトルイメージのピクセルに属する)に関して、スペクトルイメージのそれぞれのピクセルのスペクトル間の差の絶対的な値の積分を計算すること、およびグレーレベルまたは疑似色(黒白または色)イメージを表示することを含み、そこで明るいピクセルは小さなスペクトルの差に相当し、暗いピクセルは大きなスペクトルの差に相当し、又は逆である。
【0245】
同様に、分類マッピングを相同性マッピングについて記述したのと同じ計算で行い、また対照スペクトルとしていくつかのスペクトルをとり、いくつかの対照スペクトルの1つにもっとも類似しているとしてその分離にしたがって、表示されたイメージのそれぞれのピクセルを異なる先に決めた疑似色で染める。
【0246】
分離不能操作に基づいたスペクトルイメージアルゴリズム、すなわち局所スペクトル情報および近接したピクセル間の空間相関両方を含むアルゴリズム(これらのアルゴリズムの1つは以下に示すように、主要成分解析である)を利用することも可能である。
【0247】
スペクトルキューブ(すなわちI(x,y,λ))のような任意の三次元(3D)データ構造を扱う場合に普通に起こる基本的な必要性の1つが、データ構造を意味のある方法で視覚化することである。一般的にそれぞれの点が三次元空間内での異なる位置(x,y,z)での強度を表しているコンフォーカル顕微鏡によって得られた、形態的データ、D(x,y,z)のような他の型の3Dデータと違い、スペクトルイメージは異なる波長での同一の二次元平面(すなわち試料)の強度を表している一連のイメージである。このことから、データのスペクトルキューブを見るための2つのもっとも直感的な方法は、イメージ平面(空間的データ)かまたは三次元的山−谷表示での波長の関数として1つのピクセルまたはピクセルの組の強度のいずれかを見ることである。一般的に、イメージ平面は任意の単一波長で測定した強度かまたはあらゆるイメージピクセルにおいて望ましいスペクトル領域上でスペクトル解析アルゴリズムを適用した後の結果であるグレースケールイメージのいずれかを表示するために使用できる。一般的に、スペクトル軸は、望ましいピクセルの付近で行ったいくつかの空間的操作(たとえばスペクトルを平均すること)の結果得られたスペクトルを表すのに使用できる。
【0248】
たとえば、スペクトルイメージを、簡単なモノクロームカメラから得ることが可能であるイメージと類似のグレースケールイメージとして、または強調するための1つまたはいくつかの人工色、およびマップ重要特徴を使用した多色イメージとして表示することが可能である。そのようなカメラはCCDアレイのスペクトル幅(たとえば400nmから760nm)上で光学シグナルを単純に積分するので、以下のように「等価の」モノクロームCCDカメライメージは、スペクトル軸に沿って積分することによる3Dスペクトルイメージデータベースから計算することができる。
【数2】
Figure 2002521682
【0249】
式2において、w(λ)はさまざまなグレースケールイメージを計算することにおける最大順応性を提供する一般的な比重化応答関数であり、すべてはいくつかのスペクトル幅上の適切に比重化されたスペクトルイメージの積分に基づく。たとえば、式2をそれぞれ赤色(R)、緑色(G)および青色(B)に対する三刺激応答関数に相当する3つの異なる比重化関数、{w(λ)、w(λ)、w(λ)}で評価すると、従来のRGB色イメージを表示することができる。有意に従来のものとは異なる(疑似)色イメージを表示することも可能である。図6はこの単純なアルゴリズムの能力の例を表している。関心のあるスペクトルの「内側」に分配するガウス関数であるように{w,w,w}を選択することを考慮すると、この場合に表示される得られた疑似色イメージは比重化関数に相当するスペクトル領域でのデータのみを強調し、これらの3つの領域でのスペクトルの差をより明瞭に検出することが可能である。
【0250】
点操作:点操作は単一ピクセル上で行なわれる(すなわち一時に1つ以上のピクセルを含まない)ものとして定義される。たとえば、グレースケールイメージにおいて、点操作はすでに決められた変換関数にしたがって、それぞれのピクセルの強度(強度関数)を他の強度中に写像するものであり得る。この型の変換の特別な場合は、定数によるそれぞれのピクセルの強度のかけ算である。さらなる例には上述のような相同性および分類マッピングが含まれる。
【0251】
点操作の概念はまた空間イメージにも広げることが可能である。ここでそれぞれのピクセルはそれぞれ固有の強度関数(スペクトル)、すなわちn次元ベクトルV(λ);λ∈[λ,λ]をもつ。空間イメージに対して適用した点操作は、変換関数
【数3】
Figure 2002521682
にしたがって、それぞれのピクセルのスペクトルをスカラー(すなわち強度値)へ写像するものとして定義できる。
【0252】
式3にしたがってグレースケールイメージを組み立てることがこの型の点操作の例である。より一般的な場合において、点操作はそれぞれのピクセルのスペクトル(ベクトル)を、変換関数
【数4】
Figure 2002521682
式中N≦n
にしたがって、他のベクトルへ写像する。
【0253】
この場合において、スペクトルイメージは他のスペクトルイメージに変換される。
【0254】
ここで、点操作の定義を、異なるスペクトルイメージの相当するピクセル間の操作を含むように拡張できる。この型のアルゴリズムの重要な例は光学濃度解析である。光学濃度は、透過スペクトルよりもより高い動的範囲で分光的に研究されている対象の領域を強調し、図的に表現するために使用される。光学濃度は対数的操作による透過に関連し、したがって常に正関数である。光学濃度と測定したスペクトル間の関連はランバート ベール法則
【数5】
Figure 2002521682
によって与えられ、式中OD(λ)は波長の関数としての光学濃度、I(λ)は測定したスペクトル、I(λ)は測定した対照スペクトル、τ(λ)は試料のスペクトル透過率である。式5は、I(λ)を(1)ODを計算した同一のスペクトルキューブ内のピクセル、(2)第二キューブ内の相当するピクセル、(3)ライブラリーからのスペクトルから選択するあらゆる波長に対するあらゆるピクセルについて計算される。
【0255】
光学濃度が、測定している系のスペクトル応答またはCCD検出器の非均一性のどちらにも依存しないことに注意すべきである。このアルゴリズムは相対濃度を写像するのに、及び試料の吸光係数および試料の厚さが公知の場合、試料中の吸収剤の絶対濃度を写像するのに有用である。
【0256】
さらなる例には、(i)与えられたスペクトルを、足し算、引き算、かけ算、わり算およびそれらの組み合わせのような算術関数によってスペクトルイメージ中のそれぞれのピクセルのスペクトルに適用し、それぞれのピクセルの得られたスペクトルが第一キューブのそれぞれのスペクトルと選択したスペクトル間の合計、差、積比または組み合わせである新規スペクトルキューブを産出すること、(ii)与えられたスカラーを上述したような算術関数によってスペクトルイメージのそれぞれのピクセルのスペクトルに適用することのような、さまざまな線型組み合わせ解析が含まれるが、しかし限定はしない。
【0257】
このような線型組み合わせは、たとえば背景領域に局在しているピクセルのスペクトルをそれぞれのピクセルのスペクトルから控除するような背景控除のために、および試料解析前に測定したスペクトルがスペクトルイメージ内でのそれぞれのピクセルのスペクトルを分割するために使用されるような校正手順のために使用することができる。
【0258】
他の例には、比イメージ計算およびグレーレベルイメージとしての表示を含む。このアルゴリズムは、スペクトルイメージのあらゆるピクセルに対する2つの異なる波長での強度間の比を計算し、それに応じてより明るいまたはより暗い人工色でそれぞれのピクセルを彩色する。たとえば、これはより高い比に対して明るくピクセルを彩色し、低い比に対しては暗く彩色し(またはその逆であり)、スペクトル的に感受性の物質の分布を表示する。
【0259】
空間−スペクトル組み合わせ操作:上述したすべてのスペクトルイメージ解析方法において、アルゴリズムをスペクトルデータに適用する。スペクトル的に処理したデータをイメージとして表示する重要性はほとんど定性的なものであり、使用者に有用なイメージを提供する。しかしながら、適用に依存しながら、空間イメージに内在する空間−スペクトル相関を使用したアルゴリズムを適用することにより、より有意なやり方で利用できるイメージングデータを使用することも可能である。空間−スペクトル操作はもっとも強力な型のスペクトルイメージ解析アルゴリズムである。例として、以下の条件を考えよう。
【0260】
試料はk個の異なる染色剤によって染色されたk個の細胞型を含む(本明細書での語句「細胞」は、生物学的細胞について、およびまた「器具の視野内での領域」としての両方で使用する)。それぞれの染色剤は異なるスペクトルを持ち、k個の細胞型のうちただ1つにのみ結合する。k個の細胞型のそれぞれ1つに対する細胞あたりの平均強度を見いだすことが重要である。このタスクを行うために、以下の手順を使用できる。(1)そのスペクトルにしたがって1つのk+1クラス(k個の細胞型プラス背景)に属しているとしてイメージ中のそれぞれのピクセルを分類する、(2)さまざまな細胞型へイメージを区分けし、それぞれの型からの細胞数を計数する、(3)それぞれのクラスにより寄与されるスペクトルエネルギーを合計し、それを相当するクラスからの細胞の総数により割る。
【0261】
この手順はスペクトルおよび空間データの両方を使用する。関連するスペクトルデータは特徴的な細胞スペクトルの形(すなわちスペクトル「サイン」)を取り、一方空間データは、その多くが目へ同様に現れてくるさまざまな型の細胞(すなわち細胞塊)についてのデータからなる。上記の状況において、細胞は特徴的なスペクトルサインによって区別できる。それ故、好ましい点操作が行われて、それぞれのピクセルがk+l個の値の1つに割り当てられる合成イメージを生成するであろう。異なる細胞型のスペクトルが、s(λ);i=1,2,……,k、λ∈[λ,λ]であると知られており、それぞれのピクセル(x,y)における測定したスペクトルがsx,v(λ)、λ∈[λ,λ]であると仮定すると、以下のアルゴリズムが可能な分類方法である(上記工程1)。
【0262】
を細胞型iに接着している染色剤の公知のスペクトルからの測定したスペクトルの偏差であるとする。次いで最小二乗法「隔たり」定義を採用し、
【数6】
Figure 2002521682
と書くことができ、式中Rλは関心のあるスペクトル領域である。イメージ中のそれぞれの点[ピクセル(x,y)]はここで以下の定義を用いてk+lのクラスの1つへ分類することができる。
【数7】
Figure 2002521682
【0263】
上の工程2および3(イメージ区分および平均強度の計算)はここで式6および7で記述したアルゴリズムにしたがって作製した合成イメージ上で標準コンピュータ視覚操作を用いた簡単なものである。
【0264】
他のアプローチはそれぞれのピクセルにおいて測定したスペクトルsx,y(λ)をk個の公知蛍光スペクトルの線型組み合わせ、s(λ);i=1,2,……,kとして表すことである。この場合、
【数8】
Figure 2002521682
を解く係数ベクトルC=[c,c,……,c]を見いだすであろう。
i=1,2,……,kについてのdF/dc=0を解くこと(すなわちFを最小化するcの値を探すこと)は行列式
【数9】
Figure 2002521682
を導き、式中Aは要素
【数10】
Figure 2002521682
を持つ次元kの正方行列であり、Bは
【数11】
Figure 2002521682
として定義されたベクトルである。
【0265】
算術操作は2つ以上のスペクトルキューブおよび/または与えられたピクセルの、またはライブラリーからのスペクトルに同じように適用することができる。たとえば、データの第一スペクトルキューブおよびデータの第二スペクトルキューブに属しているピクセルの相当する組の相当する波長間に算術操作を適用し、たとえばデータの2つのスペクトルキューブの平均化、時間変化追跡、スペクトル標準化などの目的のために生じたデータの第三スペクトルキューブを得ることを考えよう。
【0266】
多くの場合、スペクトルイメージ内に存在する対象物(たとえば細胞)は、特に染色したときに、ある程度まで化学成分および/または構造において互いに異なる。共分散または相関行列を産出することにより、主要成分解析のような非相関解析を用いて、これらの差を強調する。非相関統計的解析はより多量のデータからおよびそれらの相関部分中の平均から非相関したデータを抽出することに指向される。多くの関連した統計学的非相関方法が存在する。例には、主要成分解析(PCA)、規範的変数解析および特異的値分解などが限定はしないが含まれ、これらの方法のうちでもPCAがおそらくより一般的なものであり、本語句を上で定義したように、スペクトルデータの非相関のために本発明にしたがって使用する。しかしながら、上に列記したようなものを含むすべての非相関統計的方法は互いに関連しているという事実を考慮すると、任意の特定の非相関方法の使用に本発明の範囲を限定する意図はない。特に、他の非相関統計的方法も使用することができるので、本発明の範囲を主要成分解析の使用に限定する意図はない。上で列記した非相関統計的方法の使用と操作に関する情報は、両方とも本明細書で完全に列記したように参考文献に組み込まれた、R.A.Johnson 及びD.W.Wichen, “Applied Multivariance Statistical Analysis”, third edition, Prentice Hall(1992)およびT.W.Anderson, An Introduction to Multivariance Statistical Analysis, second edition,Wiley and Sons(1984)で見られる。
【0267】
さらに、以下の記述から明らかになるであろうように、非相関統計的方法の手段はさまざまな改良を用いて行ってよい。本発明の概念は任意の特定の改良に依存しないので、本発明の範囲は以下に記述するような任意の特定の改良に限定されると言う意図はない。
【0268】
共分散行列を用いた主要成分解析の簡単な記述を以下に与える。主要成分解析に関するさらなる詳細については、Martens and Naes (1989) Multivariate Calibration,John Wiley & Sons,Great Britain; およびEsbensen等,Eds,(1994) Multi variance analysis−実際にはCAMOとしてのコンピュータ補助モデリングおよびUnscrambler’s User’sガイド、Trondheim,Norwayを参照のこと。
【0269】
したがって、波長λ(i=1,…,N)でのイメージのピクセルの強度をここで、長さがピクセル数qと等しいベクトルと見なす。測定のあらゆる波長に対して1つ、つまり計N個のこれらのベクトルが存在するので、これらのベクトルがq列およびN段で行列B’に配列できる。
【数12】
Figure 2002521682
【0270】
行列B’のそれぞれの段について平均は以下のように定義される:
【数13】
Figure 2002521682
そして第二の標準化行列Bは
【数14】
Figure 2002521682
のように定義される。
【0271】
共分散行列Cは次元N×Nの行列B:C=B・Bとして定義する。Cは対角化され、C・V=μ(式中VおよびNは直交単位ベクトルであり、μは第i単位ベクトルVの方向への分散を表している固有値である)によって関連する固有ベクトルおよび固有値である。一般的に、最も少ない成分はピクセルの関数として最も高い可変性を表す。
【0272】
積BV(i=1,…,N)は直交主成分の要素上でのスペクトルイメージの投影である。これらはq個の要素(q=ピクセルの数)を持つベクトルであり、黒色および白色イメージとして別々に表示できる。これらのイメージは、特定の波長または波長範囲において濾光された通常の黒色および白色イメージから明らかではない特徴を示している可能性がある。
【0273】
実施例3
材料と方法
乳癌
試料:すべての試料は適度に分化した浸潤している腺管癌である79人の女性より入手した。試料を横切断し、従来のプロトコールにしたがった染色のために調製した。
【0274】
染色プロトコール:染色を標準VantanaまたはDAKO自動化免疫染色プロトコールにしたがって行った。
【0275】
測定:SPECTRACUBE(商標)システムに連結した顕微鏡(Nikon Eclipse E−800)を、もっとも安定な照明のために伝達光ランプを持つKoehler照明に対して最大電圧(12V)にあわせた。中性濃度および色フィルター(FG3および抗反射フィルター)を光路内に導入し、強度とスペクトル色バランスを調節した。SPECTRACUBE捕捉パラメータは300フレーム、512仮想フレーム、波長幅440から760nm、176ms/フレームであった。
【0276】
まず、「純粋色素」、すなわちヘマトキシリン、DAB、AECおよびファストレッド(それぞれの染色剤のみ)スペクトルキューブを捕捉し、そこからの代表的なスペクトルを純粋色素スペクトルライブラリーを形成するために使用した。
【0277】
ついでそれぞれの試料のスペクトルキューブを捕捉した。そしてSPECTRACUBE(商標)取扱説明書内で記述したようなSPECTRACUBE(商標)アルゴリズム、SpyViewを、RGBイメージ、それぞれのスペクトル成分のグレーレベルイメージ、閾値二値化イメージおよびそれらの複合分類イメージを得るために使用した。
【0278】
子宮頸癌
試料:中年女性のパップスミア(pap smear)を従来の手順で収集した。
【0279】
染色プロトコール:染色を本質的に、本明細書で完全に列記されたように参考文献にて組み込まれている、G.Papanicolaou(1942) A new procedure for staining vaginal smears. Science 95:438−439に記載の通りに行った。
【0280】
測定:SPECTRACUBE(商標)システムに連結した顕微鏡(Nikon Eclipse E−800)を、もっとも安定な照明のために伝達光ランプを持つKoehler照明に対して最大電圧(12V)にあわせた。中性濃度および色フィルター(FG3および抗反射フィルター)を光路内に導入し、強度とスペクトル色バランスを調節した。SPECTRACUBE捕捉パラメータは300フレーム、512仮想フレーム、波長幅440から760nm、176ms/フレームであった。
【0281】
まず、「純粋色素」、すなわちハリスヘマトキシリン、エオシン、オレンジGおよびライトグリーンSF、ビスマルクブラウンY(それぞれの染色剤のみ)スペクトルキューブを捕捉し、そこからの代表的なスペクトルを純粋色素スペクトルライブラリーを形成するために使用した。
【0282】
ついで子宮頸癌試料のスペクトルキューブを捕捉した。そしてSPECTRACUBE(商標)取扱説明書で記述したようなSPECTRACUBE(商標)アルゴリズム、SpyViewを、RGBイメージ、それぞれのスペクトル成分のグレーレベルイメージ、閾値二値化イメージおよびそれらの複合分類イメージを得るために使用した。
【0283】
実施例4
実験結果
2つのよく特性化された実験モデル、つまり乳癌および子宮頸癌試料が本方法による方法の実行可能性および実用性を明らかにするのに役立った。
【0284】
図7は、6つの単一染色剤で染色された乳癌試料からSPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定した2つの組織染色剤(ヘマトキシリンおよびエオシン)および4つの免疫組織化学染色剤(DAB、ファストレッド、AECおよびBCIP/NBT)の非正規化スペクトルを表す。ピーク波長を右側に示す。それぞれの染色剤が特徴的なスペクトルを持ち、それは以下にさらに例示しているように、それらそれぞれに関連したスペクトル成分の同時の共検出を可能にすることに注意されたい。
【0285】
図8−11はそのような実験を表す。すべてのイメージは、上述したように、SPECTRACUBE(商標)システムおよびそのさまざまな測定法および解析アルゴリズムを用いて測定した。
【0286】
図8A−Eは、すでに独立してER(+)/PR(+)であると決定された乳癌試料のイメージを表す。試料を組織染色剤ヘマトキシリンおよび免疫組織化学染色剤抗ER−DABで共染色した。図8Aは図6に関連して上述したRGBアルゴリズムを使用した試料のRGBイメージを表す。図8B−Dはそれぞれヘマトキシリン、DABおよびAECスペクトル成分の二値化イメージを示す。これらの二値化イメージはそれぞれのピクセルでのそれぞれの成分の強度を示しているグレースケールイメージを閾値化処理することによって得られた。図8DはPR(−)腫瘍に対する模擬として役立つ。図8Eは分類オーバーレイイメージを表し、そこでは上記スペクトル成分はそれぞれ赤色、緑色および青色に強調される。予測したように、AECスペクトル成分は検出できず、またヘマトキシリンおよびDABのスペクトル成分は容易に検出可能であることに注意すべきである。分類イメージは、調査した癌細胞または組織の存在/不在/攻撃レベル/診断および/または診断を評価することにおいて病理学者を補助する。
【0287】
図9A−Eはすでに独立してER(+)/PR(+)であると決定された乳癌試料のイメージを表す。この試料はまた組織染色剤ヘマトキシリンおよび免疫組織化学染色剤抗PR−AECで共染色した。図9Aは試料のRGBイメージを表す。図9B−Dはそれぞれヘマトキシリン、DABおよびAECスペクトル成分の二値化イメージを表し、一方図9Eは分類オーバーレイイメージを表し、そこでは上記スペクトル成分はそれぞれ、赤色、緑色、青色で強調される。予測したように、DABスペクトル成分は検出できず、またヘマトキシリンおよびAEC両方のスペクトル成分は容易に検出可能であることに注意すべきである。
【0288】
図10A−Eは、先の試料と同様に、すでに独立してER(+)/PR(+)であると決定された乳癌試料のイメージを表す。しかしながら、この場合試料は、組織染色剤ヘマトキシリンおよびすでに使用したAECにかわって、免疫組織化学染色剤抗PR−ファストレッドで共染色した。図10Aは試料のRGBイメージを表す。図10B−Dはそれぞれヘマトキシリン、DABおよびファストレッドスペクトル成分の二値化イメージを示す。図10Eは分類オーバーレイイメージを表し、そこでは上記スペクトル成分はそれぞれ、赤色、緑色、青色で強調される。予測したように、特に視野の下方部分で形成された人工物結晶を除き、DABスペクトル成分は本試料では検出できず、またヘマトキシリンおよびファストレッド両方のスペクトル成分は容易に検出可能であることに注意すべきである。
【0289】
図11A−Eはすでに独立してER(+)/PR(+)であると決定された乳癌試料のイメージを表す。この試料はまた組織染色剤ヘマトキシリンおよび免疫組織化学染色剤抗ER−DABおよび抗PR−ファストレッドで共染色した。図11Aは試料のRGBイメージを表す。図11B−Dはそれぞれヘマトキシリン、DABおよびファストレッドスペクトル成分の二値化イメージを表す。図11Eは分類オーバーレイイメージを表し、そこでは上記スペクトル成分はそれぞれ、赤色、緑色、青色で強調される。抗ER−DABおよび抗PR−ファストレッドで共染色した領域を黄色で示す。予測したように、ヘマトキシリン、DABおよびファストレッドスペクトル成分は容易に検出可能であることに注意すべきである。
【0290】
図12A−Fはすでに独立してER(+)/PR(+)であると決定された乳癌試料のイメージを表す。この試料は組織染色剤ヘマトキシリンおよびエオシンと免疫組織化学染色剤抗ER−DABおよび抗PR−ファストレッドで共染色した。図12Aは試料のRGBイメージを表す。図12B−Eはそれぞれヘマトキシリン、エオシン、DABおよびファストレッドスペクトル成分の二値化イメージを表す。図12Fは分類オーバーレイイメージを表し、そこでは上記スペクトル成分はそれぞれ、青色、紫色、緑色、赤色で強調され、SPECTRACUBE(商標)システムの4つの異なるスペクトル成分を分離する能力を示している。したがって、この実施例は、核(ヘマトキシリン)、細胞質(エオシン)、エストロゲンレセプター(ER、抗ER/HRP/DABで検出)およびプロゲステロンレセプター(PR、抗PR/HRP/DABで検出)の染色を同時に示している染色した乳癌組織切片を示す。イメージにおいて、いくつかのER(+)細胞と、より少ないPR(+)細胞が示された。スライド全体の異なる領域では、腺管間(ER(+)/PR(+))および腺管内(ER(+)/PR(−))癌を示した。このイメージは脈管を示し、したがって主としてER(+)/PR(−)癌細胞が予想された。
【0291】
図13は、5つの単一染色剤で染色した子宮頸癌試料からSPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定した5つの組織染色剤(ハリスヘマトキシリン、エオシン、オレンジG、ライトグリーンSF、ビスマルクブラウンY)の非正規化スペクトルを表す。ピーク波長を右に示す。
【0292】
図14A−Gは パパニコラウ(Pap)染色剤として本技術分野で公知であるものを集合的に形成する、組織染色剤、ハリスヘマトキシリン、エオシン、オレンジG、ライトグリーンSF、ビスマルクブラウンYで共染色した子宮頸癌試料のイメージを表す。図14Aは試料のRGBイメージを示す。図14B−Fはそれぞれハリスヘマトキシリン、エオシン、オレンジG、ライトグリーンSFおよびビスマルクブラウンYスペクトル成分の二値化イメージを示す。図14Eは分類オーバーレイイメージを示し、そこでは上記スペクトル成分はそれぞれ青色、桃色、オレンジ色、緑色、灰色で強調され、それらの組合せによって示した多彩な分類オーバーレイイメージを形成する。使用したそれぞれの染色剤が、使用したSPECTRACUBE(商標)システムの高いスペクトルおよび空間的分解度のみのために分解できた固有の染色パターンを持つことに注意すべきである。
【0293】
本明細書で示したデータは、多数の染色剤で共染色した生物学的試料の解析において高スペクトルおよび空間分解度を持っている装置の有用性を示している。
【0294】
本実施例で使用したアルゴリズムおよび表示が数々の他のアルゴリズムおよび表示に置き換えることが可能であり、ひとつの例が、本明細書で完全に列記されたように参考文献に組み込まれた米国特許第08/984,990号に記載の線型分解アルゴリズムであることが、当業者によって理解されるであろう。このアルゴリズムを使用することで、研究者はさもなくば極めて類似していたであろう結果を得ることができるであろう。
【0295】
本発明はその特定の実施様態に関連して記述されてきたが、多くの改変、変更および変化が当業者によって評価されるであろうことが明らかである。したがって、付随する請求項の意図および広い範囲内であるそのような改変、変更、変化のすべてが含まれるつもりである。
【図面の簡単な説明】
【図1】
米国特許出願第08/392,019号(従来技術)に準じて構成したイメージング分光計の主要構成要素を示すブロック図である。
【図2】
米国特許出願第08/392,019号(従来技術)に準じたイメージング分光計に使用される非移動型干渉計、すなわち、Sagnac干渉計を示す。
【図3A】
テキサスレッド及びローダミンに結合させた2種の異なるプローブを用いて実施した中間相FISHを示す。
【図3B】
テキサスレッド及びローダミンに結合させた2種の異なるプローブを用いて実施した中間相FISHを示す。
【図3C】
テキサスレッド及びローダミンに結合させた2種の異なるプローブを用いて実施した中間相FISHを示す。
【図4A】
各々異なる蛍光体で標識した6種の異なるプローブについてSPECTRACUBE(商標)システムを用いて実施した中間相FISHである。
【図4B】
各々異なる蛍光体で標識した6種の異なるプローブについてSPECTRACUBE(商標)システムを用いて実施した中間相FISHである。
【図4C】
各々異なる蛍光体で標識した6種の異なるプローブについてSPECTRACUBE(商標)システムを用いて実施した中間相FISHである。
【図5A】
SPECTRACUBE(商標)システムを用いて得られた、24種の染色体ペイントと正常雄染色体スプレッドとのハイブリダイゼーションの結果を示す。
【図5B】
SPECTRACUBE(商標)システムを用いて得られた、24種の染色体ペイントと正常雄染色体スプレッドとのハイブリダイゼーションの結果を示す。
【図5C】
SPECTRACUBE(商標)システムを用いて得られた、24種の染色体ペイントと正常雄染色体スプレッドとのハイブリダイゼーションの結果を示す。
【図6】
選択されたスペクトル範囲を強調するための擬似RGB(赤、緑及び青)色の定義を示す。
【図7】
6種の単一染色剤で染色した乳癌試料から、SPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定した、2種の組織染色剤(ヘマトキシリン及びエオシン)及び4種の免疫組織化学染色剤(DAB、ファストレッド、AEC及びBCIP/NBT)の非正規化スペクトルを示す。
【図8】
組織染色剤ヘマトキシリン及び免疫組織化学染色剤抗ER−DABで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図である。
【図9】
組織染色剤ヘマトキシリン及び免疫組織化学染色剤抗PR−AECで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図である。
【図10】
組織染色剤ヘマトキシリン及び免疫組織化学染色剤抗PRファストレッドで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図である。
【図11】
組織染色剤ヘマトキシリン及び免疫組織化学染色剤抗ER−DAB及び抗PR−ファストレッドで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図である。
【図12】
組織染色剤ヘマトキシリン及びエオシン並びに免疫組織化学染色剤抗ER−DAB及び抗PR−ファストレッドで共染色した、予めER(+)/PR(+)であると分かっている乳癌試料のイメージを示す図である。
【図13】
5種の単一染色剤で染色した子宮頸癌試料から、SPECTRACUBE(商標)システムを用いて測定した、5種の組織染色剤(ハリスヘマトキシリン、エオシン、オレンジG、ライトグリーンSF及びビスマルクブラウンY)の非正規化スペクトルである。
【図14】
組織染色剤であって、いっしょになってパパニコラウ染色剤として当該技術分野で知られているものを形成するハリスヘマトキシリン、エオシン、オレンジG、ライトグリーンSF及びビスマルクブラウンYで共染色した子宮頸癌試料のイメージを示す。
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