JP2002521490A - Hiv膜融合のインヒビター - Google Patents

Hiv膜融合のインヒビター

Info

Publication number
JP2002521490A
JP2002521490A JP2000562395A JP2000562395A JP2002521490A JP 2002521490 A JP2002521490 A JP 2002521490A JP 2000562395 A JP2000562395 A JP 2000562395A JP 2000562395 A JP2000562395 A JP 2000562395A JP 2002521490 A JP2002521490 A JP 2002521490A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hiv
peptide
drug
coil
coiled
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2000562395A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5101764B2 (ja
JP2002521490A5 (ja
Inventor
エッカート,デブラ,エム.
チャン,デイビッド,シー.
マラシュケビッチ,ウラジミール
カー,ピーター,エイ.
キム,ピーター,エス.
Original Assignee
ホワイトヘッド インスチチュート フォアー バイオメディカル リサーチ
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ホワイトヘッド インスチチュート フォアー バイオメディカル リサーチ filed Critical ホワイトヘッド インスチチュート フォアー バイオメディカル リサーチ
Publication of JP2002521490A publication Critical patent/JP2002521490A/ja
Publication of JP2002521490A5 publication Critical patent/JP2002521490A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5101764B2 publication Critical patent/JP5101764B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/005Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from viruses
    • C07K14/08RNA viruses
    • C07K14/15Retroviridae, e.g. bovine leukaemia virus, feline leukaemia virus human T-cell leukaemia-lymphoma virus
    • C07K14/155Lentiviridae, e.g. human immunodeficiency virus [HIV], visna-maedi virus or equine infectious anaemia virus
    • C07K14/16HIV-1 ; HIV-2
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/005Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from viruses
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P15/00Drugs for genital or sexual disorders; Contraceptives
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P31/00Antiinfectives, i.e. antibiotics, antiseptics, chemotherapeutics
    • A61P31/12Antivirals
    • A61P31/14Antivirals for RNA viruses
    • A61P31/18Antivirals for RNA viruses for HIV
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K39/00Medicinal preparations containing antigens or antibodies
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2740/00Reverse transcribing RNA viruses
    • C12N2740/00011Details
    • C12N2740/10011Retroviridae
    • C12N2740/16011Human Immunodeficiency Virus, HIV
    • C12N2740/16111Human Immunodeficiency Virus, HIV concerning HIV env
    • C12N2740/16122New viral proteins or individual genes, new structural or functional aspects of known viral proteins or genes

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Oncology (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Communicable Diseases (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • AIDS & HIV (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
  • Hematology (AREA)
  • Reproductive Health (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Orthopedics, Nursing, And Contraception (AREA)

Abstract

(57)【要約】 HIV膜融合のインヒビターならびにN−ヘリックスコイルドコイルおよびHIV gp41エンベロープタンパク質のCヘリックスの結合を阻害する薬物または薬剤を同定する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 関連出願 本出願は、1997年4月17日に提出された、HIVエンベロープ糖タンパ
ク質由来のgp41のコア構造と題するデービッド シー.チャン(David
C.Chan)、デボラ ファス(Deborah Fass)、ミン ルー
(Min Lu)、ジェイムス エム.バーガー(James M.Berge
r)およびペーター エス.キム(Peter S.Kim)による米国仮出願
第60/043,280号および1998年4月17日に提出された、HIVエ
ンベロープ糖タンパク質由来のgp41のコア構造と題するデービッド シー.
チャン、デボラ ファス、ミン ルー、ジェイムス エム.バーガーおよびペー
ター エス.キムによる米国出願第09/062,241号に関する。本出願は
、1998年7月30日に提出された、HIV膜融合のインヒビターと題するデ
ービッド シー.チャン、デブラ エム.アーゴット(Debra M.Ehr
gott)およびペーター エス.キムによる米国仮出願第60/094,67
6号;1998年9月14日に提出された、HIV膜融合のインヒビターと題す
るデービッド シー.チャン、デブラ エム.アーゴットおよびペーター エス
.キムによる米国仮出願第60/100,265号および1998年9月18日
に提出された、HIV膜融合のインヒビターと題するデービッド シー.チャン
、デブラ エム.アーゴットおよびペーター エス.キムによる米国仮出願第6
0/101,058号;ならびに1999年5月3日に提出された、デブラ エ
ム.アーゴット、デービッド シー.チャン、ブラジミール マラシュケヴィッ
チ(Vladimir Malashkevich)およびペーター エス.キ
ムによる米国仮出願第60/132,295号の利益を主張するものである。こ
れらの参照された出願の全ての教示は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0002】 政府の支援 本発明は、国立衛生研究所交付番号P01 GM56552により、全部また
は一部支援された。米国政府は、本発明において、一定の権利を有する。
【0003】 発明の背景 ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)由来のタンパク質の構造研究は、抗
レトロウイルス薬物の開発に必須であった。構造に基づく創薬は、臨床用途にお
けるHIV−1薬物の2つのクラスである逆転写酵素インヒビターとプロテアー
ゼインヒビターに関して、最も熱心であった。HIV侵入に対して、構造に基づ
く創薬を行ないうることも有用であろう。
【0004】 発明の要旨 本明細書に記載のように、HIVエンベロープタンパク質gp41サブユニッ
ト(例えば、HIV−1エンベロープタンパク質gp41−サブユニット)のN
−ヘリックスコイルドコイルの表面のくぼみ(cavity)は、該コイルドコ
イル表面、とりわけ、くぼみを結合することにより、細胞へのHIV侵入を阻害
する薬物または他の薬剤の標的である。これは、HIV(例えば、HIV−1、
HIV−2など)の細胞への侵入を阻害する薬物または薬剤を同定およびデザイ
ンするための基礎として有用である。
【0005】 本明細書に記載された結果は、gp41コアにおける前記コイルドコイルくぼ
み(疎水性ポケットともいう)は、魅力的な薬物標的であり、かつ当該くぼみを
結合する分子がHIV感染性(細胞へのHIV侵入)を妨害(阻害)することを
示す。出願人は、まず、疎水性ポケットに突出する保存残基が、明らかにC34
のHIV−1感染を阻害する能力において主要な役割を果たすことを示した。g
p41機能に対するくぼみ接近(gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼ
みとCペプチド領域の残基との間)の重要性は、明らかである。逆に、gp41
機能の阻害において、かかるくぼみ接近を妨げ、したがって細胞へのHIV−1
侵入を阻害することの重要性も、明らかである。また、gp41の中央−コイル
ドコイルの疎水性ポケットに対する薬物を指向することは、HIV−1エンベロ
ープタンパク質の最も高く保存された領域の1つを標的とするものであり、この
ことは、コイルドコイル表面、および特にその疎水性ポケットを標的とする薬剤
が多岐にわたるHIV単離物に対する広範な活性を有するであろうことならびに
薬剤回避変異体が現れるのが困難であろうことを意味する。
【0006】 鏡像ファージディスプレイ技術〔ティー.エヌ.シューマッハー(T.N.S
chumacher)ら、Science,271:1854(1996)〕、
コンビナトリアルケミストリー〔エー.ボーシャート(A.Borchardt
),エス.ディー.リバールス(S.D.Liberles),エス・アール.
ビッガー(S.R.Bigger),ジー.アール.クラブトゥリー(G.R.
Crabtree),エス.エル.シュレイバー(S.L.Schreiber
),Chem.Biol.,4:961(1997);ジェイ.シー.シャバラ
(J.C.Chabala),Curr.Opin.Biotechnol.,
6:632(1995)〕、合理的な薬物デザインおよび他の薬物スクリーニン
グならびに医薬化学法などの種々の方法を用いて、HIV−1感染を阻害するに
十分な親和性によりコイルドコイルくぼみを結合するD−ペプチド、ペプチド擬
似物および小分子を同定しうる。本明細書に記載のN36/C34安定性とC3
4の効力との間の近密な関係は、かかる化合物の有効性がそれらのくぼみ接近の
強度に決定的に依存するであろうことを示唆する。本明細書に記載のように、候
補化合物は、C34とN36との間の安定な複合体の形成を妨げるそれらの能力
または2者の結合を破壊する(複合体を破壊する)能力について調べられ、それ
により、HIV−1侵入の強力なインヒビターを同定および評価するための迅速
な定量的スクリーニングを提供しうる。
【0007】 一方、スクリーニングを行ない、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみの結合
を妨げるかあるいは破壊する分子または化合物およびくぼみを結合するペプチド
を同定することができ、そうして、「ポケット特異的」結合薬剤または薬物であ
る分子を同定する方法を提供する。本明細書に記載された分子および化合物(薬
物または薬剤ともいう)は、gp41を不活性化し、そうして細胞へのHIV−
1侵入を防ぎまたは減少(阻害)するのに有用である。理論的に結合されること
が期待されない場合、これらのインヒビターがgp41のプレ−ヘアピン中間体
に結合し、かつgp41の融合活性化段階に対応するgp41コアの3量体ヘア
ピン構造へのその変換を防ぐことを提案するのが道理にあう。〔チャン,ディー
.シー(Chan,D.C.)およびピー.エス.キム(P.S.Kim)、C
ell,93:681(1998)、図1を参照のこと〕。したがって、本方法
は、HIV−1 gp41エンベロープタンパク質の融合活性化状態の形成を(
全体的にまたは部分的に)阻害する薬物または薬剤を同定するのに有用である。
本方法において、小分子(例えば、小有機分子)、ペプチド(D−ペプチドまた
はL−ペプチド)、ペプチド擬似物、タンパク質または抗体などのいかなるタイ
プの化合物または分子でありうる候補インヒビター(候補薬物ともいう)のgp
41のN−ヘリックスコイルドコイルを結合し、安定な複合体を形成する能力を
評価する。さらに、N−ヘリックスコイルドコイルに結合する化合物または分子
を、代表的な方法が、本明細書に記載され、参照されるHIV−1感染(ウイル
ス侵入)およびシンシチウム(syncytium )アッセイを介するなど、gp41機
能を阻害する(膜融合を阻害する)それらの能力について評価する。かかるアッ
セイを介してgp41機能を阻害することが示されるこれらの薬剤を、さらに付
加的なイン・ビトロアッセイおよび適切な動物モデルにおいて、それらの活性を
評価しうる〔例えば、レトビン,エヌ.エル.(Letvin,N.L.),S
cience,280,(5371):1875−1880(1998),ハー
シュ,ブイ.エム.(Hirsch,V.M.)およびピー.アール.ジョンソ
ン(P.R.Johnson),Virus Research,32(2):
183−203(1994);レイマン,ケー.エー.(Reimann,K.
A.)ら,J.Vivol.,70(10):6922−6928(1996)
〕。いかなる適切なアプローチをも用いて、候補インヒビターのN−ヘリックス
コイルドコイルへの結合と、本明細書に記載された研究の結果、N−ヘリックス
コイルドコイルくぼみへの結合とを評価することができる。1つの態様において
、候補インヒビターの合成ペプチドN36〔ルー,エム(Lu,M.)ら,J.
Biomol.Struct.Dyn.15:465(1997),チャン.デ
ィー.シー.(Chan,D.C.)ら,Cell,89,263(1997)
および1997年4月17日に提出されたデービッド シー チャン,デボラ
ファス,ミン ルー,ジェイムス エム.バーガーおよびペーター エス.キム
による、HIVエンベロープ糖タンパク質由来のgp41のコア構造と題した米
国仮出願第60/043,280号に記載〕を結合する能力を評価する。本明細
書に記載の方法を用いて、得られた複合体の安定性を評価する。
【0008】 N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する化合物または分子(薬物また
は薬剤)を同定する方法の具体的な態様において、gp41コイルドコイルくぼ
みを提示する可溶性モデルを用いる。HIV gp41の6つのヘリックスの束
(bundle)は、3量体コイルドコイルの外側における保存された疎水性溝に適合
する3つのC−ペプチドにより囲まれた3つの同じN−ペプチドから構成される
内部3量体コイルドコイルからなる。3量体コイルドコイルのC末端は、C−ペ
プチド由来の巨大な疎水性基に包まれる大きなくぼみを含む。本疎水性ポケット
は、抗HIV薬物の発見および/またはデザインの標的として用いられる。残念
ながら、C−ペプチドの非存在下に、N−ペプチドは、凝集され、100%らせ
ん状でない。したがって、N36、N51〔ルー,エム.(Lu,M.)ら、N
ature Struct.Biology,1995〕またはDP−107(
ワイルド(Wild)ら、PNAS 89:10537−10541(1992
)などのHIV−1 gp41由来のNペプチドを単に用いることは、N−ヘリ
ックスコイルドコイルの有効なモデルを提供する見込みがない。
【0009】 本明細書に記載のように、出願人は、HIV gp41の疎水性ポケットの可
溶性非凝集性3量体ペプチドモデルを製造することに成功し、したがって、初め
て、(HIV gp41構造における対応残基に類似した構造を形成する様式ま
たは立体配置で)この疎水性ポケットまたはくぼみを適切に提示するモデルを提
供した。(「ポケット」および「くぼみ」は互換的に用いられる)。記載された
ように、可溶性3量体コイルドコイル部分と、HIV gp41のN−ヘリック
スコイルドコイルのポケットまたはくぼみ(N−ペプチドの残基を含むポケット
)を形成するアミノ酸残基を含むHIV gp41のN−ペプチド領域由来の部
分とを含むペプチド(融合タンパク質ともいう)を製造し、HIV gp41機
能、例えば、細胞へのHIV侵入を阻害する分子または化合物を同定するのに有
用なかかる可溶性モデルであることを示した。ペプチドにおける、3量体状のコ
イルドコイル(融合タンパク質ともいう)は、HIVのタンパク質ではないタン
パク質(GCN4−pIQ Iなどの非HIVタンパク質)またはHIV起源のタ
ンパク質(HIV由来のタンパク質またはHIVタンパク質と同一または類似の
アミノ酸配列を有するタンパク質)のコイルドコイル領域でありうる。特定の態
様において、大きなくぼみを有する、IQN17という可溶性非凝集性3量体ペ
プチドモデルは、酵母転写活性化因子であるGCN4の、3量体状のコイルドコ
イル領域とgp41のNペプチドのC末端の部分とを含有する。IQN17は、
安定性を増大させる3つの変異とHIVの17残基とを含む、(以前、米国仮出
願第60/101,058号において、GCN4−pIQと称された)〔エッカ
ート,ディー.エム.(Eckert,D.M.)ら,J.Mol.Biol.
,284:859−865(1998)〕GCN4−pIQ Iの29残基を含む
;45残基の融合タンパク質の全長をなす、2つのタンパク質間の1残基のオー
バーラップが存在する。GCN4−pIQ Iの配列は:ac−RMKQIEDK
IEEILSKQYHIENEIARIKKLIGER(配列番号:1)である
。HIV配列は:LLQLTVWGIKQLQARIL(配列番号:20)であ
る。IQN17の配列は:ac−RMKQIEDKIEEIESKQKKIEN
EIARIKKLLQLTVWGIKQLQARIL−am(配列番号:2)で
ある。HIV部分を配列番号:2に下線を付す;ac−は、N末端アセチル基を
示し、−amは、C末端アミドを示す。IQN17におけるGCN4の、可溶性
3量体状のコイルドコイル領域(GCN4の可溶性3量体コイルドコイルという
)の配列は:RMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKK(配
列番号:25)である。GCN4−pIQ Iコイルドコイルのライズ(rise
)およびピッチ(pitch)などのスーパーヘリックスパラメーター〔ハーバ
リー,ピー.ビー.(Harbury,P.B.)ら,Nature 371:
80−83(1994);ハーバリーら、PNAS 92:8408−8412
(1995)〕は、HIV gp41 Nヘリックスコイルドコイルとほぼ同一
である。したがって、得られた融合タンパク質分子(IQN17)は、C末端の
N−ペプチド疎水性くぼみを提示する長い3量体コイルドコイルを形成すること
が予想される。IQN17は、−36,000deg cm2 dmol−1 の2
22nmのモル楕円率で円二色性により決定されたように完全にらせん状である
。沈降係数により決定されたように、IQN17は、20μMの濃度における単
量体分子量の3.00〜3.16倍の範囲の算出分子量に対する観察された分子
量の割合を有する別個の3量体種に近い。X線結晶学により決定されるように、
IQN17は、HIV gp41 Nヘリックスコイルドコイルにおけるポケッ
トとほぼ同一の様式でNペプチド疎水性ポケットを提示する。
【0010】 (天然のL掌体またはエナンチオマーD掌体の)IQN17分子は、高処理量
薬剤スクリーニングを含むスクリーニングに用いて、コイルドコイルポケットに
結合する分子を同定することができる。D掌体のIQN17分子は、(天然L掌
体の)gp41の疎水性ポケットに結合する小分子(D−ペプチド)を同定し、
HIV膜融合を阻害するために、鏡像ファージディスプレイ〔シューマッハ(S
chumacher)ら,Science,271:1854,1996〕にお
ける標的として用いられている。所望の標的(疎水性ポケットを含むHIV g
p41のN−ヘリックス)は、天然由来標的の正しい鏡像である。天然由来のコ
イルドコイルポケットの鏡像を結合する能力の評価対象の化合物または分子のラ
イブラリーまたはコレクションをスクリーニングするために用いられる。天然由
来のgp41ポケットの鏡像を結合することが見出された化合物または分子の鏡
像は、天然の掌体のgp41ポケットを結合するであろう。スクリーニングされ
たライブラリーまたはコレクションは、ファージディスプレイライブラリー、ペ
プチドライブラリー、DNAライブラリー、RNAライブラリー、コンビナトリ
アルライブラリー、化学薬剤もしくは薬物のコレクション、細胞溶解物、細胞培
養培地または細胞により産生された産物を含む上清などのいかなる型でもありう
る。ファージディスプレイライブラリーの場合、D−標的を用いてファージコー
トタンパク質をスクリーニングする。標的に結合する特異的なファージクローン
を同定し、発現したタンパク質の鏡像を、D−アミノ酸を用いて化学合成する。
鏡像ファージディスプレイにおいて、IQN17を用いることにより、gp41
疎水性ポケットに結合するD−ペプチドを同定した。記載されているように、さ
らなる評価を行ない、D−ペプチドのHIV gp41機能阻害能を示した。g
p41疎水性ポケットを結合し、HIV感染性を阻害するD−ペプチドを同定し
た。疎水性ポケットを結合するD−ペプチドは、(薬物がコイルドコイルポケッ
トに結合し、HIV感染力を阻害するものである)創薬のためのリード分子およ
び/または薬物発見のための試薬として有用であろう。天然L掌体のIQN17
分子は、高処理量薬剤スクリーニングを含むスクリーニングに用いて、コイルド
コイルポケットに結合する分子を同定することができる。IQN17を用いて、
疎水性ポケットの結合能の評価対象である化合物または分子のコレクションまた
はライブラリーをスクリーニングすることができる。スクリーニングされたライ
ブラリーまたはコレクションは、ファージディスプレイライブラリー、RNAラ
イブラリー、DNAライブラリー、ペプチドライブラリー、コンビナトリアルラ
イブラリー、化学薬剤もしくは薬物のコレクション、細胞溶解物、細胞培養培地
または細胞により産生された産物を含む上清などのいかなる型でもありうる。さ
らに、疎水性ポケットを結合する化合物または分子は創薬のためのリード分子お
よび/または薬物発見のための試薬として役立つであろう。
【0011】 IQN17のバリアントである融合タンパク質を生産し、gp41 N−ヘリ
ックスコイルドコイルポケットを結合する薬物のスクリーニングに用いることが
できる。これらの変化は、コイルドコイルの3量体状態を変えないのであれば、
広範なバリエーションのいずれもがIQN17のGCN4−pIQ I成分におい
てなされ得、本方法に用いられうる。コイルドコイルの3量体状態を維持するの
であれば、例えば、GCN4成分のアミノ酸組成は、1以上のアミノ酸残基の付
加、置換、修飾および/または欠失により変えられ得る。例えば、IQN17に
おけるAsp残基(コイルドコイルの「f−位」)は、天然アミノ酸のいずれに
よっても置換されうる。〔オニール(O’Neil)およびデグラード(DeG
rado)、Science 250:646(1990)〕。一方、融合タン
パク質でのこの成分は、モロニーマウス白血病ウイルス〔ファス,ディー(Fa
ss,D)ら、Nature Struct.Biology,3:465(1
996)〕、GCN4−pII〔ハーバリー(Harbury)ら、Natur
e,317:80、1994〕またはABCヘテロ3量体(ナウチャル(Nau
tiyal)およびアルバー(Alber)、Protein Science
8:84(1999)〕由来などの他のタンパク質の、3量体状のコイルドコ
イル領域でありうる。
【0012】 また、HIV gp41 NペプチドのC末端部分である融合タンパク質成分
のアミノ酸組成を変化させ、IQN17バリアントを生産することができる。C
末端部分は、1以上のアミノ酸残基の付加、置換、修飾および/または欠失によ
り変えられうる。コイルドコイルの3量体状態およびHIV gp41のNペプ
チドの疎水性ポケットが維持されるのであれば、融合タンパク質のいずれかの成
分または両方の成分のアミノ酸組成が変えられ得、可能なアミノ酸残基変化の数
または型に限定されない。IQN17、IQN17バリアントまたは大きなくぼ
みを有する任意の可溶性モデルは、N−ヘリックスコイルドコイル、特にポケッ
トを結合する薬物またはリード薬物候補物またはワクチン標品に用いるための候
補物をスクリーニングし、さらに、高処理量形式などの当業者に公知の方法を用
いてさらにスクリーニングするために用いられうる。
【0013】 本明細書に記載された結果は、以下に記載のように、C34のバリアントであ
るHIV gp41のインヒビターをスクリーニングするために有用である。N
36を安定に結合するC34バリアントなどのC34のバリアントが同定される
と、それを用い、さらに得られるように評価し、あるいは(例えば、安定性、可
溶性、生体利用性を増強するために)所望もしくは必要であれば、それを(例え
ば、少なくとも1アミノ酸残基を改変、付加、欠失もしくは置換すること、また
は非アミノ酸置換物を付加することにより)改変しうる。一方、C34バリアン
トを評価して、より短い成分(より少ないアミノ酸残基の領域)もまたインヒビ
ターとして活性であるかどうかを決定することができる。本明細書に記載のよう
に、N36 3量体における深部の保存ポケットに包まれる3つのC34残基T
rp628 、Trp631 およびIle635 は、阻害活性に重要である。N36コイ
ルドコイルへのより高い親和性を有するC34バリアントは、HIV感染に対し
て、より強い阻害活性を有するという観察は、強いインヒビターを同定し評価す
るためのスクリーニングの基礎をなす。例えば、コンビナトリアルペプチドケミ
ストリーの『分割(split)−合成』技術〔チェン,シー.エル.(Che
n,C.L.)ら、Methods Enzymol.267:211−219
(1996);ラム,ケイ.エス(Lam,K.S.)ら、Nature,35
4:82−84(1991)〕を用いて、疎水性性質を変える化学的置換により
3つの重要な疎水性残基をランダムに置換されたC34バリアントのライブラリ
ーを合成する。この合成技術は、単一のバリアントC34ペプチドの多くのコピ
ーをそれぞれが含むビーズの巨大ライブラリー(すなわち、『1ビーズ、1化合
物』型のライブラリー)の創出をもたらす。N−ヘリックスコイルドコイルを安
定に結合するC34バリアントを同定するために、N36(または改変N−ペプ
チド)の標識体を、最も高い親和性を有するこれらのC34バリアントのみへの
結合に限られる条件下(例えば、高温)にペプチドビーズと混合する。結合は、
公知の方法を用いて、N−ヘリックスペプチドにおける標識の検出により測定さ
れる。分割−合成技術の簡単な改変は、質量分析により選別されたペプチド配列
の迅速な同定を可能にする(ヤングクイスト,アール.エス.(Youngqu
ist,R.S.)ら、J.Amer.Chem.Soc.117,3900−
3906(1995)〕。選択されたC34バリアント、とりわけN36に対す
る最も高い結合親和性を有するものを、gp41阻害活性について、シンシチウ
ムアッセイおよび感染アッセイで試験する。くぼみ−結合領域のみを含むこれら
のC34バリアントの切形型も、阻害活性を試験されうる。一方、評価対象の他
のペプチドのライブラリーを合成して、それぞれが評価対象のペプチドを含む(
それに結合した)ビーズのライブラリーを作製することができる。このライブラ
リーは、C34バリアントについて上記のように解析され、得られたヒット(N
36に対して適切な結合親和性を有するメンバー)が、gp41阻害活性につい
てさらに解析される。別の例として、N36ペプチドまたは前記に述べられた、
IQN17、GCN4−N−ヘリックスペプチドなどの可溶性バリアントをファ
ージディスプレイまたは鏡像ファージディスプレイ技術の標的として用い、くぼ
みに結合するペプチドを同定することができる。
【0014】 さらに、IQN17を用いて、コイルドコイルくぼみに結合する抗体(モノク
ローナルおよび/またはポリクローナル)を生じさせうる。さらに、IQN17
を単独または他の物質と組み合わせて、投与(ワクチン接種)される個体におい
て、コイルドコイルに結合する抗体の生産を惹起し、それにより感染および/ま
たは疾患に対する防御を提示するワクチンに用いうる。
【0015】 HIV−1エンベロープ糖タンパク質gp41の3量体N−ヘリックスコイル
ドコイルにおける深部の疎水性ポケットに適合するD−ペプチドおよびL−ペプ
チドの両方のペプチドも本発明の主題である。D−ペプチドは、gp41疎水性
ポケットに排他的に結合することが示されている最初の分子である。これらのD
−ペプチドがgp41−媒介膜融合過程(シンシチウム形成およびウイルス感染
)を阻害するという観察は、HIV−1感染がポケットに特異的に結合する分子
により阻害されうるという最初の直接的な説明を提供する。薬物標的としてのg
p41疎水性ポケットの確認は、細胞へのウイルス侵入を阻害することにより働
く経口的に生体利用可能な抗HIV薬物の新しいクラスの開発の段階を設定する
。かかる薬物は、治療との組み合わせでHIV−1感染を治療するのに用いられ
る現行の養生法への有用な補助でありうる。本明細書に記載されたD−ペプチド
、その部分、改変体およびバリアントならびに本明細書に記載のD−ペプチドの
全部または一部を含有したより大きい分子(例えば、ポリペプチド)などのD−
ペプチドは、HIV膜融合を阻害し、したがって、細胞へのHIV侵入を阻害す
るのに有用である。本明細書に記載されたように同定されたファージ配列のD−
アミノ酸体に対応するD−ペプチドがHIV−1感染およびシンシチウム形成の
インヒビターである。これらのD−ペプチドインヒビターにおけるC−末端残基
は、配列パターン:CXXXXXEWXWLCAA−amを有する。(ファージ
ディスプレイライブラリーにおいて、C残基に対応する位置はCまたはSのいず
れかとしてコードされ、AA残基に対応する位置はそれらとしてコードされ、(
Xで示された)他の10個の位置はランダムにコードされた。−amはC−末端
アミドを表わし、ペプチド合成過程の一部として付加される)。D−ペプチドイ
ンヒビターにおけるN−末端残基は、例えば、ac−GA、ac−KKGAまた
はac−KKKKGAである。ac−は、ペプチド合成過程の部分として付加さ
れるN−末端アセチル基を表わす。C−末端アミドおよびN−末端アセチル基は
、本発明のD−ペプチドの任意成分である。他のN−末端残基は、前記センテン
スにおけるものの代わりまたはそれに加えて、所望のように(例えば、可溶性の
増大のために)含みうる。例えば、下記の配列: を有するD−ペプチドも本発明の主題である。
【0016】 アミノ酸残基は1文字表記(convention)により表され、Xは任意
のアミノ酸残基(天然由来もしくは非天然由来)、または修飾されたアミノ酸残
基などの他の残基(moiety)を表す。
【0017】 さらに、12アミノ酸残基ぺプチドの内の10アミノ酸残基「コア」(システ
イン残基により両端がフランキングされている十量体)、ならびに該十量体の部
分、改変体(modification) およびバリアント(variants)も膜融合お
よびHIVの細胞への侵入を阻害するのに有用である。これらのぺプチドのバリ
アント、部分および改変体もインヒビターとして有用である。本発明にさらに詳
細に記載しているように、コンセンサス配列(例えば、WXWL(配列番号:2
3)、EWXWL(配列番号:24)、CXXXXXEWXWLC(配列番号:
12)またはそれらの部分)を含有するD−ぺプチドは、N−ヘリックス超らせ
んを結合することが示されており、膜融合およびHIVの細胞への侵入を阻害す
るのに有用である。鏡像異性ぺプチド(D−ぺプチド)は、プロテアーゼなどの
酵素に対する効率的な基質として働かず、したがってL−ぺプチドよりもタンパ
ク質分解に対して耐性があり;それらはL−ぺプチドより免疫原性が低い。本発
明のD−ぺプチドの具体的態様は: である。
【0018】 本明細書に記載のD−ぺプチドは、N−ヘリックスポケットを結合することが
示されたリガンドであり、N−ヘリックスポケットを結合することからHIVの
インヒビターでもある化合物または分子(例えば、化合物ライブラリー、組換え
的に製造された産物、天然に存在する物質、培養培地または上清み由来)を同定
するための薬物スクリーニングにおいても有用である。例えば、N−ヘリックス
くぼみを結合するD−ぺプチド(例えば、本明細書に記載のD−ぺプチド);I
QN17(例えば、天然のL体の)、またはN−ヘリックスくぼみを提示する可
溶性モデルである別の融合タンパク質;および候補インヒビター(N−ヘリック
スくぼみを結合する能力の評価対象の化合物または分子)を組み合わせることに
より、競合アッセイを行うことができる。例えば、D10pep5またはD10
pep1、IQN17、および候補インヒビター(候補薬物)を、D10pep
5またはD10pep1のIQN17への結合に適するバッファー条件およびぺ
プチド濃度を用いて組み合わせることができる。D−ぺプチドの結合が生じる程
度を測定し、同一条件下であるが、HIVありgp41エンベロープタンパク質
のN−ヘリックス超らせんくぼみを結合する能力の評価対象の化合物または分子
(候補薬物または候補インヒビターという)の非存在下で結合が生じる程度(対
照)と比較する。D10pep5またはD10pep1の結合が、候補インヒビ
ターの存在下(被検試料)において非存在下(対照試料)よりも低い程度で生じ
る場合、候補インヒビターは、N−ヘリックス超らせんくぼみを結合するリガン
ドであり、したがってインヒビターである。このようにして同定されるインヒビ
ターは、本明細書に記載のようなウイルス感染力アッセイおよびシンシチウム(
synctia)形成アッセイにおいてその活性をさらに評価することができる
。かかるアッセイにおいて活性を示すそのようなインヒビターは、適当な動物モ
デルまたはヒトにおいてさらに評価することができる。
【0019】 N−ヘリックスくぼみを結合することが知られたD−ぺプチドの結合を検出す
ることができる任意の方法を用い、候補インヒビターが結合を妨害するか否かを
評価することができる。例えば、D−ぺプチドは検出可能に標識することができ
、候補インヒビターの存在下および非存在下に、標識がN−ヘリックスくぼみ上
に現れる(D−ぺプチドの結合の結果)程度を検出する。候補インヒビターの非
存在下(対照試料)よりも候補インヒビターの存在下(被検試料)において、よ
り少ない標識がIQN17(または他の適当な融合タンパク質)のN−ヘリック
スくぼみ上に現れる場合、候補インヒビターは、N−ヘリックスくぼみを結合(
およびD−ぺプチドの結合を妨害)するリガンドである。あるいはまた、近接し
たときに発蛍光団の蛍光シグナルを消光する適当な消光物質(例えば、DABC
YL;4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸)とともに、発蛍光
団(例えば、EDANS;5−(2’アミノエチル)アミノナフタレン−1−ス
ルホン酸)により、D−ぺプチド(例えば、D10pep5またはD10pep
1)およびIQN17を標識することができる。候補インヒビターがIQN17
のN−ヘリックスくぼみを結合する場合、候補インヒビターの結合の結果、D−
ぺプチドが、レポーターシグナルが消光され得るには消光物質に十分に近接しな
いため、蛍光が観察される。あるいはまた、蛍光レポーター分子をIQN17上
に、かつD−ぺプチド上に適当な消光物質を存在させ得る。どちらの場合も、I
QN17上のレポーターまたは消光物質の位置は、D−ぺプチドがN−ヘリック
スくぼみを結合すると、該レポーターおよび消光物質部分が、互いに消光を生じ
るよう十分に近接するようでなければならない(Tyagi,S.ら、Natu
re Biotechnology 16:49(1998))。
【0020】 また、本発明の主題は、HIV gp41のN−ヘリックス超らせんポケット
を結合し、細胞へのHIV侵入を(部分的または完全に)阻害する薬物(化合物
および分子)である。一態様では、これらの薬物は、本明細書に記載のようにし
て、またはその他の方法によって同定することができる。HIV gp41のN
−ヘリックス超らせんポケットを結合する薬物は、細胞へのHIV侵入を妨害ま
たは侵入が起こる程度を低減するための治療剤として、例えば、HIV gp4
1機能のメカニズムを研究するための研究ツールとして、および個体(例えば、
動物モデルまたは感染したヒト)によるウイルスクリアランスの割合を調べるた
めに有用である。
【0021】 また、本発明の主題は、粘膜細胞へのHIVの侵入の妨害方法に有用な組成物
であり、これらの組成物は、適当な担体または基剤ならびに: (a)C34ぺプチド; (b)DP178; (c)T649; (d)T1249; (e)(a)〜(d)の誘導体; (f)HIV gp41の疎水性ポケットに結合するD−ぺプチド; (g)(f)の誘導体; (h)(a)〜(g)の2種以上の組み合わせ;および (i)N−ヘリックス超らせんへの結合によるHIV感染力を阻害する分子 からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含有する。該組成物は、かかあ
る成分の1種または2種以上の成分を含有することができる。
【0022】 本発明のさらなる主題は、HIV感染および/または疾患に対して(部分的ま
たは完全に)防御するであろう免疫応答(例えば、抗体産生)を顕現させるため
に使用しうる組成物(例えば、タンパク質またはタンパク質性物質)である。か
かる組成物は、防御剤(例えば、ワクチン)として、および研究ツール、診断用
ツール、薬物スクリーニング試薬として有用な(モノクローナルおよび/または
ポリクローナル)抗体を得るため、ならびに動物モデルまたは感染したヒトにお
けるウイルス動力学(ウイルスの生成およびクリアランスの速度)を評価するた
めに有用である。
【0023】 また、本発明の主題は、IQN17とD10pep1の複合体のX線結晶構造
の原子座標のリストである。また、本発明の主題は、IQN17のX線結晶構造
の座標のリストである。これらの座標は、D10pep1がどのようにN−ヘリ
ックス超らせんくぼみおよびN−ヘリックス超らせんくぼみのモデルに結合する
のかを示す複合体のモデルを作製するために使用(例えば、コンピューターグラ
フィックスのプログラムのための電子ファイルとして)することができる。かか
るモデルは、コンピューターグラフィックスモデリングなどの当業者に知られた
方法において、他のぺプチド、ぺプチド擬似物、小分子、薬物または他の化合物
によるN−ヘリックス超らせんくぼみへの結合のしやすさを評価するための新し
いモデルを構築するために使用することができる。かかるモデルを、N−ヘリッ
クス超らせんくぼみを結合する分子(ぺプチド、ぺプチド擬似物、小有機分子、
薬物または他の化合物)の構造の新しいモデルを構築するためにも使用すること
ができる(例えば、H.クビニー(Kubinyi)、Curr.Op.Dru
g Discov.Develop.,1:16(1998);P.L.Woo
d,ibid,1:34(1998);J.R.Morphy,ibid,1:
59(1998))。これらのモデルおよび原子座標の対応するリストを、当業
者に知られた方法を用い、HIV感染を阻害する、より効果的および/または新
しいD−ぺプチド、L−ぺプチド、ぺプチド擬似物、他の小分子または薬物を同
定、評価、発見および設計するのに使用することができる。本発明のさらなる主
題は、本明細書に記載のHIV gp41疎水性ポケットの可溶性四量体ぺプチ
ドモデル(例えば、IQN17またはそのバリアント)の結晶、D−ぺプチドと
の複合体であるようなモデル(例えば、D10pep1などの本明細書に記載の
D−ぺプチドとの複合体としてのIQN17またはそのバリアント)の結晶、ま
たはHIV gp41のN−ヘリックス超らせんのポケットを含むアミノ酸残基
を含有するHIV gp41のN−ぺプチド領域の結晶などの、結晶の原子座標
の使用によるHIV gp41のN−ヘリックス超らせんポケットに適合する(
内部に詰まる、結合する)薬物の製造または同定方法である。該方法は、エンプ
ティ(empty)可溶性モデル(D−ぺプチドとの複合体でない)などの可溶
性モデルの結晶を得る工程、該結晶(例えば、IQN17などのエンプティ可溶
性モデルの結晶)の原子座標を得る工程;得られた原子座標を使用してHIV
gp41のN−ヘリックス超らせんポケットを明確化する工程;N−ヘリックス
超らせんポケットに適合する分子または化合物を同定し、該分子または化合物を
得る工程;該分子また化合物をN−ヘリックス超らせんポケットと〔例えば、該
ポケット(例えば、IQN17もしくはそのバリアントまたはN−ぺプチド)を
含むポリぺプチドと接触させることにより〕接触させ、該分子または化合物のH
IV gp41のポケットに適合する能力を評価(測定)する工程を含み、ここ
で、該分子または化合物においてポケットに適合し、そしてN−ヘリックス超ら
せんポケットに適合する薬物であり、それによりポケットに適合する薬物を製造
する。結晶の原子座標はX線回折試験により得ることができ、すなわち、IQN
17のための本明細書に示されたPDB(図11A〜11V)などのコンピュー
タファイルもしくはプロテイン・データ・ベース(PDB)を形成し得る。
【0024】 同様に、該方法は、D−ぺプチド(例えば、D10pep1などの本明細書に
記載のD−ぺプチド)との複合体の状態の可溶性三量体モデルの結晶、またはN
−ヘリックス超らせんのポケットを含有するHIV gp41のN−ぺプチド領
域の結晶を用いて行うことができる。
【0025】 このようにして製造される薬物は、ポケットに適合する能力をコンフォームす
るために(例えば、NMRにより)さらに評価することができ、細胞へのHIV
侵入を阻害する能力を(例えば、シンシチウムアッセイまたは感染力アッセイに
より)評価することができる。
【0026】 本明細書において引用したすべての文献の教示および全内容は参照により特に
本出願に取り込まれる。
【0027】 発明の詳細な説明 HIV−1エンベロープタンパク質のgp41サブユニットは、ウイルス膜と
細胞膜との融合を媒介する。gp41のエクトドメインコア結晶構造は、逆平行
のC−ヘリックスと対形成するN−ヘリックスからそれぞれがなる3つのらせん
状ヘアピンから構成される6回らせんの束である〔D.C.Chan、D.Fa
ss、J.M.Berger、P.S.Kim、Cell、89:263(19
97)、W.Weissenhorn、A.Dessen、S.C.Harri
son、J.J.Skehel、D.C.Wiley、Nature、387:
426(1997);K.Tan、J.Liu、J.Wang、S.Shen、
M.Lu、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:12303
(1997)〕。3つのN−ヘリックスにより、内部に位置する三量体の超らせ
んが形成され、そして3つのC−ヘリックスにより、保存された疎水性の溝に沿
ったこのN−ヘリックス超らせんの外側が包まれている。この構造は、(D.C
.Chan、D.Fass、J.M.Berger、P.S.Kim、Cell
、89:263(1997)ならびにD.C.ChanおよびPeter S.
Kim、Cell、93:681(1998)において議論されている)gp4
1の融合活性状態のコアに対応していることが考えられ、下記のウイルスに由来
するエンベロープ融合タンパク質の提案された融合誘導(fusogenic)構造との
類似性を示している:インフルエンザ(P.A.Bullough、F.M.H
ughson、J.J.Skehel、D.C.Wiley、Nature、3
71:37(1994))、モロニーマウス白血病ウイルス(D.Fass、S
.C.Harrison、P.S.Kim、Nat.Struct.Biol.
、3:465(1996))、およびサル免疫不全症ウイルス(SIV)(V.
N.Malashkevich、D.C.Chan、C.T.Chutkows
ki、P.S.Kim、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95
:9134(1998)、M.Caffrey他、EMBO J.、17:45
72(1998))、ならびにエボラウイルス(W.Weissenhorn他
、Mol.Cell、2:605(1998)、V.N.Malashkevi
ch他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:2662(1
992))。
【0028】 DP178およびC34などの合成C−ペプチド(C−ヘリックスに対応する
ペプチド)は、HIV−1膜融合の強力なインヒビターであり、実験室で使用さ
れている株および直接得られた単離体の両方に対して効果的である〔V.N.M
alashkevich、D.C.Chan、C.T.Chutkowski、
P.S.Kim、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:91
34(1998)〕。DP178はHIV−1 gp41の残基638〜673
に対応し、そのアミノ末端がアセチル化され、カルボキシ末端がアミド化されて
いる(C.T.Wild、D.C.Shugars、T.K.Greenwel
l、C.B.McDanal、T.J.Matthews、Proc.Natl
.Acad.Sci.USA、91:9770(1994)、S.Jiang、
K.Lin、N.Strick、A.R.Neurath、Nature、36
5:113(1993))。C−ペプチドのDP178(T−20とも呼ばれる
)を用いた第I相臨床試験により、ウイルス量(load)の減少をもたらす抗ウイ
ルス活性をインビボで有していることが示される(M.Saag他、アメリカ伝
染病学会第35年会(San Francisco、CA、1997年9月16
日)で発表された抄録#771;Kilby,J.M.他、Nature Me
d.、4:1302〜1307(1998))。gp41コアの構造的特徴に基
づいて、これらのペプチドは、外因性のC−ペプチドがgp41の中心に位置す
る超らせんに結合して、その不活性化をもたらす優性ネガティブ機構によって作
用していることが考えられている(D.C.ChanおよびP.S.Kim、C
ell、93:681(1998);R.A.Furuta他、Nat.Str
uct.Biol.、5:276(1998);D.C.Chan、D.Fas
s、J.M.Berger、P.S.Kim.、Cell、89:263(19
97)、W.Weissenhorn、A.Dessen、S.C.Harri
son、J.J.Skehel、D.C.Wiley、Nature、387:
426(1997);K.Tan、J.Liu、J.Wang、S.Shen、
M.Lu、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:12303
(1997)、M.Lu、S.C.Blacklow、P.S.Kim、Nat
.Struct.Biol.、2:1075(1995)ならびにC.H.Ch
en、T.J.Matthews、C.B.McDanal、D.P.Bolo
gnesi、M.L.Greenberg、J.Virol.、69:3771
(1995))。これらのペプチドは、本来のgp41構造〔すなわち、遊離ビ
リオンの表面に存在する非融合誘導性(nonfusogenic)立体配座〕がgp120
/CD4/コレセプターの相互作用によって乱されるときに形成されるgp41
のプレヘアピン中間体に作用することが考えられている。このプレヘアピン中間
体は、露出したN−超らせんを有し、それにより、融合活性なヘアピン構造が形
成される前に、C−ペプチドに結合してgp41を不活性化し得ることが提案さ
れている(D.C.Chan、P.S.Kim、Cell、93:681(19
98))。このモデルは、C−ペプチドのDP178がgp41に結合すること
を示す免疫沈降実験によってさらに支持されている(R.A.Furuta、C
.T.Wild、Y.Weng、C.D.Weiss、Nat.Struct.
Biol.、5:276(1998))。さらに、DP178による阻害を逃れ
るウイルスには、gp41の中心に位置する超らせん領域における変異が明らか
にされている(L.T.Rimsky、D.C.Shugars、T.J.Ma
tthews、J.Virol.、72:986(1998))。
【0029】 gp41の近年の結晶学的研究により、C−ペプチドと対照的に経口投与され
る可能性を有する小分子のペプチド模倣薬物の開発が容易になっている。超らせ
んのそれぞれの境界には、N−ヘリックスの超らせん内の残基のクラスターによ
って形成され、抗ウイルス化合物を開発するための興味深い標的である深いくぼ
みが存在する。C−ヘリックスの3つの残基(Trp628 、Trp631 およびI
le635 )がこのくぼみに進入して、広範囲の疎水性接触が形成される。変異分
析により、このくぼみを構成するN−ヘリックス残基の2つ(Leu568 および
Trp571 )が膜融合活性に極めて重要であることが示されている(J.Cao
他、J.Virol.、67:2747(1993))。従って、このくぼみに
対して大きな親和力で結合して、N−ヘリックスおよびC−ヘリックスの正常な
対形成を妨げる化合物は効果的なHIV−1インヒビターになることが十分に考
えられる。さらに、このくぼみ内の残基は様々なHIV−1単離体において高度
に保存されている。構造が高度に保存されているために、この部位を標的とする
薬物は、様々なHIV−1単離体に対して、そしておそらくはHIV−2単離体
に対して広い活性を有する。
【0030】 この仮説は注目されているが、現在まで、このようなくぼみの接触がC34イ
ンヒビターの効力に重要であることは明らかにされていない。実際、くぼみに結
合する残基を有しないC−ペプチドのいくつか(DP178(C.T.Wild
、D.C.Shugars、T.K.Greenwell、C.B.McDan
al、T.J.Matthews、同上、91:9770(1994);Kil
by,J.M.他、Nature Med.、4:1302(1998))など
)は、HIV−1膜融合の非常に効果的なインヒビターである。このようなこと
により、C−ペプチドの活性決定基を同定するために体系的な構造−機能分析が
必要であることが強く唱えられている。
【0031】 阻害活性におけるくぼみ接触の役割を明らかにするために、構造に基づく変異
誘発をC34において行った。gp41エクトドメインのコア(図1)を、N3
6およびC34と呼ばれる2つの合成ペプチドを用いて再構成した〔M.Lu、
P.S.Kim、J.Biomol.Struct.Dyn.、15:465(
1997)、D.C.Chan、D.Fass、J.M.Berger、P.S
.Kim、Cell、89:263(1997)〕。1個のアラニン置換を有す
るC34ペプチドのバリアント(variants)を合成して、変異型(mutant)N3
6/C34複合体のらせん含有量および熱安定性を円二色性により定量した。予
想されるように、N36の超らせんと接触しないC34残基(Met629 、Ar
633 )の変異は、222nmにおける平均残基楕円率(らせん含有量の大きさ
)またはN36/C36複合体の安定性に対してほとんど影響しなかった(表1
)。しかし、N36の超らせんくぼみに突き出る3残基の変異(Trp628 →A
la、Trp631 →AlaまたはIle635 →Ala)は、平均楕円率および安
定性が実質的に低下したN36/C34複合体をもたらした(表1)。最も大き
な不安定化が、野生型の66℃と比較して、37℃の見かけの融解温度(Tm
を有するN36/C34複合体が形成されたTrp631 →Alaのバリアントで
認められた。これらの結果は、N36の超らせんくぼみとの疎水性接触を形成す
るC34の残基がgp41エクトドメインコアのらせん−ヘアピン構造の安定化
に重要であることを示している。
【0032】 膜融合を阻害するC34の能力におけるこれらの残基の重要性を明らかにする
ために、C34ペプチドの活性をHIV−1のウイルス侵入アッセイおよびシン
シチウムアッセイで調べた(表1)。N36/C34複合体の安定性に対してほ
とんど影響しない変異(Met629 →AlaおよびArg633 →Ala)はまた
、野生型C34の阻害活性に対してほとんど影響しなかった(ウイルス侵入およ
びシンシチウム形成に対するIC50は、それぞれ、約2.1nMおよび約0.5
5nMであった)。しかし、完全に保存されているTrp628 またはTrp631 のアラニンへの変異は、活性を、それぞれ、約5分の1および約30分の1に実
質的に低下させた(表1)。あまりよく保存されていないIle635 の変異は、
阻害活性を約2分の1に低下させただけであった。これらの結果により、gp4
1のポケットと接触するC34の残基がC34の阻害能にとって重要であること
が初めて明らかにされた。
【0033】 変異型C34ペプチドの効力と変異型N36/C34複合体の安定性との関係
が、Trp631 変異の大きな不安定化作用を利用して、安定性が徐々に変化した
一連のN36/C34複合体を構築することによって明らかにされた。Trp63 1 の位置を「ゲスト部位」として使用し、このトリプトファンを、広範囲の疎水
性原子団(bulk)を示す天然アミノ酸および非天然アミノ酸で置換した。疎水性
原子団が大きくなる順に、下記の置換体を使用した:グリシン(Gly)、アラ
ニン(Ala)、L−α−アミノ酪酸(Abu)、バリン(Val)、ロイシン
(Leu)、フェニルアラニン(Phe)、野生型残基のトリプトファン(Tr
p)、およびL−β−(1−ナフチル)アラニン(Nal)。この方法により、
m が37℃〜66℃の範囲にあるN36/C34複合体を形成する一組のC3
4ペプチドが得られた。N36/C34バリアントに対するTm および[θ]22 2 (103 degcm2 dmol-1)(ならびに、ウイルス侵入および細胞融合
のIC50値(ナノモル濃度)をそれぞれ括弧内に示す)は下記の通りである:T
rp631 →Gly、35℃、17.1(38±6.1、25±3.8);Trp 631 →Ala、37℃、−24.9(40±4.3、15±0.8);Trp63 1 →Abu、43℃、−23.2(16±4.8、6.9±0.4);Trp63 1 →Val、43℃、−23.9(13±2.8、4.5±0.09);Trp 631 →Leu、50℃、−26.7(5.3±1.0、3.2±0.1);Tr
631 →Phe、59℃、−26.3(3.6±0.8、1.6±0.05);
野生型、66℃、−31.7(1.5±0.2、0.55±0.03);Trp 631 →Nal、62℃、−32.0(1.4±0.3、0.79±0.08)。
Trp631 →Nalペプチドの濃度は、282nmでのε=6900の吸光係数
を使用してNalの吸収によって求めた(J.Blake、C.H.Li、J.
Med.Chem.、18:423〜426(1975))。HIV−1の感染
アッセイおよびシンシチウムアッセイにおいて、この一連のペプチドは、対応す
るN36/C34複合体のTm と非常に相関する効力を示した(図2)。これら
のバリアントの効力の大きさは、野生型〜Nal>Phe>Leu>Val〜A
bu>Ala〜Glyであり、置換体の疎水性原子団およびN36/C34複合
体の安定性とよく一致している。Tm の関数としてIC50を対数スケールでプロ
ットした場合、驚くほどの一次の関係が存在する(図2)。ΔG=−RTlnK
(ΔG、自由エネルギーの変化;R、気体定数;T、絶対温度;およびK、平衡
定数)、およびΔTm (Tm 、野生型複合体−Tm 、変異型複合体)はΔ(ΔG)
(ΔG野生型複合体−ΔG変異型複合体)に比例する(W.J.Becktel
、J.A.Schellman、Biopolymers、26:1859(1
987))ため、認められた一次の関係により、阻害の優性ネガティブモードに
よって推定されるように、C34バリアントの効力はN−ヘリックス超らせんに
対するその親和力と直接関連していることが強く示唆される。これらの結果は、
gp41コアにおける超らせんのくぼみが薬物の興味深い標的であるという考え
を強く支持している。疎水性のくぼみに突き出ている保存された残基が、HIV
−1感染を妨げるC34の能力における主要な役割を果たしていることは明らか
である。このことは、このインヒビターが、N−ヘリックスの超らせんと大きな
親和性複合体を形成することによって作用していることを示している。従来のペ
プチドを超えて、鏡像ファージディスプレー技術(T.N.Schumache
r他、Science、271:1854(1996))、選択−反射アプタマ
ー技術(K.P.Williams他、PNAS、94:11285(1997
);S.Kluβmann他、Nat.Biotech.、4:1112(19
96);A.Nolte他、Nat.Biotech.、14:1116(19
96))、コンビナトリアルケミストリー(A.Borchardt、S.D.
Liberles、S.R.Biggar、G.R.Crabtree、S.L
.Schreiber、Chem.Biol.、4:961(1997);J.
C.Chabala、Curr.Opin.Biotechnol.、6:63
2(1995))、および構造に基づく薬物設計におけるコンピューター法(H
.Kubinyi、Curr.Opin.Drug Discov.Devel
op.、1:16(1998))を使用して、超らせんのくぼみに対して大きな
親和力で結合するD−ペプチド、ペプチド擬似物および小分子を同定することが
できる。N36/C34安定性とC34阻害能との密接な相関により、そのよう
な化合物の有効性がそれらのくぼみ接触の強さに極めて依存していることが示唆
される。これらの結果は、候補化合物を、N36との安定な複合体を形成する能
力について調べることができ、それによって、HIV−1侵入の潜在的なインヒ
ビターを同定して評価するための迅速で定量的なスクリーニングに関する基礎が
提供され得ることを示唆している。
【0034】 中心に位置する超らせんのくぼみに対する小分子のインヒビターは、HIV−
1エンベロープタンパク質の最も高度に保存された領域の1つを標的とする。S
IV gp41コアにおける類似したくぼみは、側鎖の立体配座が保存されてい
る本質的には同一の構造を有する(V.N.Malashkevich、D.C
.Chan、C.T.Chutkowski、P.S.Kim、Proc.Na
tl.Acad.Sci.USA、95:9134(1998))。この高い構
造的保存の程度により、実験室で使用されている株ならびに一次単離体に対して
効果的なC−ペプチドの広範囲の中和活性が説明される(C.T.Wild、D
.C.Shugars、T.K.Greenwell、C.B.McDanal
、T.J.Matthews、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
、91:9770(1994);S.Jiang、K.Lin、N.Stric
k、A.R.Neurath、Nature、365:113(1993))。
注目されることに、SIV C34ペプチドは、HIV−1感染の阻害において
HIV−1 C34とほぼ同じくらい効果的である(V.N.Malashke
vich、D.C.Chan、C.T.Chutkowski、P.S.Kim
、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:9134(1998
))。さらに、くぼみに結合する領域を含有するC−ペプチド(T649)は、
耐性ウイルスの進化に対して、この領域を有しないDP178(T−20とも呼
ばれる)よりもはるかに低い感受性を有している(L.T.Rimsky、D.
C.Shugars、T.J.Matthews、J.Virol.、72:9
86(1998)。これらの観察から、超らせんの表面、特に、そのくぼみを標
的とする高親和性リガンドは、(HIV−2を含む)様々なHIV単離体に対す
る広範な活性を有し、かつ薬物から逃れるバリアントによって回避される可能性
がほとんどないことが明らかである。
【0035】 C−ペプチドの作用機構に関するこれらの研究はまた、gp41コアの三量体
ヘアピン構造(Chan,D.C.他、Cell、89:263(1997);
Weissenhorn,W.他、Nature、387:426(1997)
;Tan,K.他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:1
2303(1997))がgp41の融合活性状態に対応しているという仮説を
支持している。本明細書に記載されている研究により、C34の阻害能はgp4
1のN−超らせんに結合するその能力に依存することが明らかにされている。g
p41のヘアピン構造は(90℃を超える融解温度を有して)極めて安定である
ために(Lu,M.他、Nat.Struct.Biol.2:1075(19
95))、特に、変化を受けていないgp41分子内において非常に効果的な濃
度のN−ヘリックスおよびC−ヘリックスが提供されたときに、この構造が一旦
形成されると、ナノモル濃度のC34によって、この構造が破壊され得ることは
考えられない。むしろ、C−ペプチドは、中心に位置する超らせんが露出した一
次的なプレ−ヘアピン中間体に結合することによって、gp41のヘアピンが形
成される前に作用していることが考えられる。C−ペプチドがこのプレ−ヘアピ
ン中間体に結合することによって、gp41は不活性化され、融合活性なヘアピ
ン構造へのその変換が妨げられる(D.C.Chan、P.S.Kim、Cel
l、93:681(1998))。
【0036】 本明細書中に記載されているように、HIV−1エンベロープタンパク質のg
p41サブユニットのN−ヘリックス超らせんの表面にあるポケットは薬物の標
的である。同様に、AIDSを引き起こし得る他の病原体(例えば、HIV−2
)またはAIDS様状態を非ヒト哺乳動物において引き起こす病原体(例えば、
SIV)におけるくぼみもまた薬物の標的である。本明細書中に記載されている
ように、利用可能な方法(例えば、鏡像ファージディスプレー法、コンビナトリ
アルケミストリー、コンピューター法、ならびに他の薬物スクリーニング法およ
び医化学的方法)を使用して、ウイルスの細胞内侵入を妨げ、従って、ウイルス
感染を妨げるのに十分な親和性で、HIV−1(および/またはHIV−2)の
超らせんくぼみを結合するペプチド、D−ペプチド、ペプチド擬似物および小分
子を同定することができる。本明細書中(実施例3)にさらに記載されているよ
うに、鏡像ファージディスプレイが、HIV−1 gp41のN−ヘリックス超
らせんの表面におけるくぼみに結合するD−ペプチドを同定するために使用され
ている。
【0037】 本明細書中に記載されいる研究の結果として、C34/N36複合体の形成を
妨げ、かつ/または一旦形成された複合体を破壊する分子または化合物(薬剤ま
たは薬物)を同定するスクリーニングアッセイが行うことができ、それは、HI
V gp41のN−ヘリックス超らせんのポケットを結合する分子または化合物
(薬剤または薬物)を同定する方法である。そのような薬物または薬剤は、HI
Vの細胞内侵入、従って、HIVによる感染を(完全または部分的に)阻害する
のに有用である。
【0038】 C34とN36との安定な複合体の形成を妨げ、あるいはこの2つの分子にお
ける複合体を破壊する化合物または分子(薬物または薬剤とも呼ばれる)に関す
るスクリーニング法、およびHIVgp41のN−ヘリックス超らせんのポケッ
トを結合する化合物または分子に関するスクリーニング法は本発明の主題である
【0039】 本発明のスクリーニング法の1つの実施形態において、C34ペプチドとN3
6ペプチドとの複合体の形成を妨げる薬物が、C34とN36との複合体を形成
させるために適切な条件のもとで、候補薬物(C34とN36との複合体の形成
を妨げるその能力のアッセイ対象の化合物または分子)をC34およびN36と
合わせて、そうして、被検試料を形成し、その後、C34/N36複合体の形成
が被検試料中で(部分的または完全に)阻害されているかどうかを測定すること
によって同定される。この評価の結果は、候補薬物が存在しないことを除いて被
検試料と同じ組み合わせである適切な対照の結果と比較することができる;この
とき、対照は、被検試料が供されるのと同じ条件に供される。C34/N36複
合体が、(被検試料中において)候補薬物の存在下で形成されず、あるいはその
非存在下でより小さい程度で形成される場合、その候補薬物は、C34とN36
との安定な複合体の形成を妨げる薬物である。そのような薬物はまた、本明細書
中ではC34/N36複合体形成のインヒビターとして示されている。複合体形
成の阻害は、C34およびN36のそれぞれが一対のドナー−アクセプター分子
のメンバー(menber)によって標識されているか、あるいは、一方のペプチドの
一端(例えば、C34のN末端)がそのような対の一方の成分(EDANS)で
標識され、N36ペプチドに存在する天然の蛍光性トリプトファンがそのような
ドナー/アクセプター対のもう一方の成分である蛍光アッセイ(例えば、FRE
T)などの手段によって、複合体のこの2成分の結合が生じる程度を測定するこ
とによって評価することができる。C34およびN36の結合は、発光(FRE
T)がアクセプターモデルから生じる程度、および/または放出された光の波長
スペクトルが変化する程度によって評価される。候補薬物が結合を妨げることに
よって、光を発する程度が変化し、かつ/またはC34とN36の結合が生じた
場合に生じるであろう波長の変化が妨げられる。あるいは、C34は、(例えば
、キナーゼおよび放射活性ATPを用いて標識され得るキナーゼ認識部位を有す
る変異型C34を合成することによって)放射性標識などの検出可能な標識で標
識することができる。放射性標識されたC34および候補薬剤は、例えば、固体
表面(例えば、ビーズまたはプラスチックウエル)に固定化されたN36と合わ
され、そうして被検試料が作製される。標識されたC34と固定化N36との結
合が生じる程度が測定され、そして候補薬物が(対照試料中に)存在しないこと
を除いて、被検試料が供されるのと同じ条件下において、固定化N36に対する
標識されたC34の結合が生じる程度と比較される。典型的には、この評価は、
試料が、C34/N36の結合が生じ、そしてその後、未結合のC34および候
補薬物を除くために洗浄されるのに適切な条件下で十分な時間にわたって保持さ
れた後に行われる。被検試料において固定化N36に結合した放射性標識が対照
試料の場合よりも少ないことによって明らかにされるように、結合が、被検試料
において、対照試料の場合よりも小さい程度で生じた場合、その候補薬物はC3
4とN36の結合のインヒビターである。あるいは、C34における標識または
タグを結合形成対の一方の成分とすることができ、そのもう一方の成分が、N3
6に対する結合を検出するために使用される。例えば、C34は、(例えば、標
準的な固相ペプチド合成によって)ビオチンで標識(tagged)することができ、
そして溶液状態であり得るか、あるいはビーズ、ウエルまたは平坦/平面の表面
などの固体表面に結合させることができるN36と、候補薬物とともに合わせる
ことができ(被検試料)、あるいは候補薬物または非存在下で合わせることがで
きる(対照試料)。N36に対するC34の結合は、C34におけるビオチンに
結合し、その後、その標識によりそれ自体が検出される標識されたストレプトア
ビジン(例えば、ストレプトアビジン−HRP、ストレプトアビジン−AP、ま
たはヨウ素化ストレプトアビジン)の使用などによってN36と結合したビオチ
ンの存在を検出することによって評価される。被検試料においてN36で検出さ
れるビオチンが対照試料の場合よりも少ないことによって明らかにされるように
、結合が、候補薬物の存在下(被検試料の場合)において、候補薬物の非存在下
(対照試料の場合)よりも小さい程度で生じる場合、その候補薬物はC34/N
36の結合のインヒビターである。そのような候補薬物は、例えば、合成された
有機化合物またはランダムなペプチド配列のライブラリーから得ることができる
。そのようなライブラリーは、合成的あるいは組換え技術によって作製すること
ができる。
【0040】 類似する様式で、C34/N36の結合を破壊する候補薬物の能力を評価して
、C34/N36のインヒビター、従って、HIV感染のインヒビターを同定す
ることができる。この実施形態において、事前に形成されたC34/N36複合
体が、該複合体を破壊するその能力の評価対象の候補薬物と合わされ、そうして
被検試料が作製される。対照試料は、対照試料が候補薬物を含有しないことを除
いて被検試料と同じである;対照試料は、被検試料と同じように処理される。C
34/N36の結合が候補薬物の存在下で破壊され、対照試料中で破壊されない
場合、あるいは複合体の破壊が、被検試料において、対照試料の場合よりも大き
な程度で生じる場合、その候補薬物はC34/N36のインヒビター(破壊剤)
である。結合破壊の検出は、(例えば、FRETまたは蛍光アッセイによって、
あるいは放射性標識またはビオチンなどの他の検出可能な標識を検出することに
よって)C34/N36結合の防止の/妨害の検出に関して上記に記載されてい
るように行うことができる。
【0041】 本明細書中に記載されている結果は、ハイブリッド(すなわち、融合タンパク
質)がタンパク質(GCN4など)の三量体状のコイルドコイル領域とHIV
gp41のN−ヘリックスコイルドコイルとの間で形成され得ること、およびそ
のようなハイブリッドが三量体であり(すなわち、凝集しておらず)、100%
のらせん状であることを明らかにしている。本明細書中に記載されている結果は
また、そのような融合タンパク質はN−ペプチドの大きなくぼみ(すなわち、疎
水性ポケット)の構造を破壊または変化しないことを明確に示している。これは
、IQN17(リガンドを含まず、D10pep1との複合体状態;実施例5を
参照のこと)において、本質的にはN36の場合(すなわち、C34との複合体
状態;Chan D.C.他、Cell、89,263(1997))と同じで
ある。
【0042】 図5A、図5Bおよび図6は、本明細書中に記載されているペプチドの評価結
果を示している。図5A〜5Bにおいて、IQN17の結晶構造が、3つの鎖か
らなる連続したコイルドコイルであることが明らかにされている;HIV gp
41に由来する17残基により、gp41の結晶構造において見出された疎水性
ポケットと非常に類似した疎水性ポケットが形成されている。示されているよう
に、D10pep1はこのポケットに結合し、そして本明細書中に記載されてい
るD−ペプチドインヒビターのすべてに見出されている保存された残基(ロイシ
ン、トリプトファン、トリプトファン)に対応するD10pep1の残基がこの
ポケットに詰め込まれる。明らかに、このことは、これらの保存された残基を含
む他のD−ペプチドインヒビターが同じようにIQN17に結合するであろうこ
とを示している。図6には、Chan他(Chan,D.C.他、Proc.N
atl.Acad.Sci.、95:15613〜15617(1998))に
よって記載された方法に従って行われたシンシチウムアッセイの結果が示されて
いる。図6にその結果が示されている実験では、本明細書中の記載に従って同定
されたD−ペプチドが使用された。それぞれの場合において、ブロック基(例え
ば、アセチル基)がそのN末端に存在し、CONH2 (アミド)がそのC末端に
存在した。これらのアッセイの結果は様々なIC50濃度を示した。この場合、I
50は、ペプチドを含まない対照と比較して、半数のシンシチウムが認められる
濃度である。例えば、N末端に2個のリジンを有するD10pep5は約6μM
のIC50を有している。
【0043】 別の実施形態において、本発明は、HIV gp41のN−ヘリックスコイル
ドコイルくぼみを結合する薬物を同定する方法に関する。この場合、さらに、そ
のアッセイは、上記に記載されているC34/N36複合体アッセイとは異なり
、結合の喪失または低下を評価することに基づいている。これは、このアッセイ
が、HIV gp41のN−ヘリックス領域によって形成される溝の任意の部分
との相互作用を含み、あるいはそのような相互作用を検出する点でより一般的な
アッセイであり、この実施形態は、HIV gp41の疎水性ポケット(N−ヘ
リックスコイルドコイルくぼみ)に注目している。この実施形態において、この
方法は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみに結合する
その能力についての評価対象の候補薬物を、タンパク質のコイルドコイル領域の
三量体型、およびHIV gp41のくぼみを含むのに充分な部分のHIV g
p41のN−ペプチドを含む融合タンパク質と、ペプチドまたは他の分子による
結合のためにHIV gp41が提示されるのに適切な条件のもとで合わせる工
程、および、候補薬物がその融合タンパク質を結合するかどうかを(例えば、高
処理能スクリーニングで)測定する工程を含む。結合が生じる場合、その候補薬
物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合する薬
物であり得る「当たり(hit)」である。結合が生じる場合、その候補薬物は、
N−ヘリックスのコイルドコイルに結合しており、それがコイルドコイルのくぼ
みに結合しているかどうかを明らかにすることができる。その後、そのような「
当たり」は、その候補薬物が薬物になるかどうかを決定するために、細胞/細胞
融合アッセイおよびHIV感染力アッセイなどの二次アッセイでスクリーニング
され得る。あるいは、さらに、そのような「当たり」は、ポケット結合分子が結
合しない他の融合タンパク質(またはペプチド)を用いた対抗スクリーニングの
使用によってさらに評価することができる。例えば、(IQN17の場合と同じ
3つの表面変異を有する)GCN4−pIQ I、または疎水性ポケットにおける
点変異を有するIQN17の一形態であるIQN17(G39W)(これは、グ
リシン39が、ポケットへの大きな突出をもたらすトリプトファンに変異してい
る)を対抗スクリーニングにおいて使用することができる。この例において、I
QN17には結合するが、(IQN17の場合と同じ3つの表面変異を有する)
GCN4−pIQ IまたはIQN17(G39W)には結合しない候補薬物が、
HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合する薬物であ
る。
【0044】 さらなる実施形態において、競合的アッセイが行われる。この実施形態におい
て、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合するペプ
チドまたはタンパク質が、候補薬物および融合タンパク質と合わされ、その後、
候補薬物がHIV gp41のくぼみを結合するかどうかが、HIV gp41
のN−ヘリックスのらせん状くぼみを結合するペプチドの存在下で測定される。
候補薬物が融合タンパク質を結合する場合、その候補薬物は、HIV gp41
のくぼみを結合する薬物である。例えば、GCN4の、三量体状のコイルドコイ
ル領域と、N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを含むHIV gp41のN
−ペプチドのC末端とを含む融合タンパク質(IQN17)が、N−ヘリックス
コイルドコイルのくぼみを結合する「参照」D−ペプチド(例えば、本明細書中
に記載されているD−ペプチドのいずれかまたはその変異体)、およびHIV
gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合するその能力について
の評価対象の候補薬物と合わされ、そうして被検試料が作製される。その後、被
検試料は、くぼみに結合するD−ペプチドの結合に関して適切な条件のもとで維
持される。候補薬物を除いて被検試料と同じ成分を含み、かつ被検試料と同じよ
うに扱われる対照試料もまた評価される。両方の試料において、参照D−ペプチ
ドの結合が評価される。参照D−ペプチドの結合が、候補薬物の存在下(被検試
料の場合)において、その非存在下の場合(対照試料の場合)よりも小さい程度
で生じる場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコ
イルのくぼみを結合する薬物である。結合の検出は、例えば、本発明のC34/
N36の実施形態に関して上記に記載されているような類似した方法で評価され
る。例えば、D−ペプチドは、放射性標識または結合形成対の一方の成分(例え
ば、ビオチン)などの検出可能な標識で標識され、その後、(参照D−ペプチド
がくぼみに結合するのに適切な条件のもとで被検試料が保持された後において)
N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみが有する標識の程度が測定される。放射
性標識が使用される場合、融合タンパク質が放射性標識を有する程度が被検試料
において評価され、そして対照試料において融合タンパク質が放射性標識を有す
る程度と比較される。検出可能な標識が結合形成対の一方の成分(例えば、ビオ
チン)である場合、融合タンパク質が結合する程度を参照D−ペプチドにより検
出するために、その結合形成対の第2成分(結合パートナー)が試料に加えられ
る。これは、直接的に、あるいは(例えば、結合形成対の第2成分に結合する抗
体または他の成分などの分子を加えることによって)間接的に行うことができる
。候補薬物がくぼみに対するD−ペプチドの結合を(完全または部分的に)阻害
する場合、標識は、融合タンパク質(N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみ)
にはほとんど存在していない。結合が、被検試料の場合(候補薬物の存在下)に
おいて、対照試料の場合(候補薬物の非存在下の場合)よりも小さい程度で生じ
た場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの
くぼみを結合する薬物である。
【0045】 D−エナンチオマーのIQN17またはその変異体は、ライブラリーまたはコ
レクションの成分であり、かつgp41のN−ヘリックスコイルドコイルを結合
する分子または化合物を同定するために有用である。例えば、ファージディスプ
レイライブラリーなどの分子または化合物のライブラリーまたはコレクションは
、ポケットを結合する成分を同定するために、D−エナンチオマーのIQN17
を用いてスクリーニングすることができる。これは、本明細書中に記載されてい
るように問題なく行われている。IQN17の鏡像体またはその変異体は、標的
分子として使用される。本明細書中で使用されている用語である「ポリペプチド
のD−エナンチオマー」および「D−ペプチド」は、天然の掌体にある分子の完
全な鏡像体をいう。従って、第2のキラル中心を含有するアミノ酸残基(Ile
およびThrなど)の場合、天然に存在するアミノ酸残基の完全な鏡像体が、ポ
リペプチドのD体を作製するために使用される。本明細書中で同様に使用されて
いる用語の「D−アミノ酸」および「L−アミノ酸」はともに、非キラルなアミ
ノ酸であるグリシンを含むことを意味する。D−IQN17は、結合形成対の一
方の成分(例えば、ビオチン)をそれに付加し、そしてその結合形成対のもう一
方の成分(例えば、ストレプトアビジン)を固体表面に付加することなどによっ
て固体表面に固定化することができる。この2成分が結合することにより、ファ
ージパンニングなどのためにD−IQN17が固体表面に固定化される。酵素の
認識部位であるリンカー(例えば、L−リジン残基が使用されるGly−Lys
−Glyなどのアミノ酸リンカー)を、酵素の認識部位(この場合、トリプシン
の認識部位)を提供するためにD−IQN17配列と結合形成対成分との間(ビ
オチンとD−IQN17との間)に設置することができ、その結果、結合したフ
ァージを、酸の添加などの非特異的な溶出よりはむしろ、トリプシン消化によっ
て溶出することができる。ファージディスプレイライブラリーは、適切なファー
ジ遺伝子に融合させた任意の適切な長さのL−アミノ酸ペプチドのライブラリー
であり得る。1つの実施形態において、そのようなライブラリーは、M13ファ
ージのgIII遺伝子に融合させたL−アミノ酸ペプチドのファージディスプレ
イライブラリーである。ペプチドは、1つの実施形態において、両端にシステイ
ンまたはセリンのいずれかが隣接した10個のランダムにコードされたアミノ酸
残基を含む。典型的には、数回のパンニングが行われる。D−IQN17に特異
的に結合するファージが同定される。D−IQN17のgp41領域のみを結合
するファージを、パンニング後の評価によって、例えば、抗原を有しないウエル
に対してスクリーニングを行い、その後、一連の分子に対してさらに試験するこ
とによって同定することができる。例えば、特異的なポケット結合性ファージに
は、D−IQN17を結合するが、(IQN17の場合と同じ3つの表面変異を
有する)D−GCN4−pIQ I、または疎水性ポケットにおける点変異を有す
るD−IQN17の形態であるD−IQN17(G39W)(これは、グリシン
39が、ポケットへの大きな突出をもたらすトリプトファンに変異している)に
は結合しないファージが含まれる。このような方法で同定されたD−ペプチドは
、細胞/細胞融合アッセイおよびHIV感染力アッセイなどの知られているアッ
セイを使用して、HIV gp41を阻害するその能力について評価することが
できる。本明細書中に記載されている鏡像ファージディスプレイ法により、IQ
N17およびIQN17(G39W)ならびにそれらのD−エナンチオマーの価
値が、gp41ポケットを結合するHIV−1侵入のインヒビターを同定する際
に明らかにされた。同定された9個の特異的なポケット結合性ファージ配列(D
−IQN17(G39W)にではなく、D−IQN17に結合するファージ)の
うち、8個はEWXWLのコンセンサス配列を含有し、D−ペプチドとして試験
されたときにHIV−1 gp41により誘導されるシンシチウム形成を阻害す
る。9番目のペプチドは細胞に対して毒性を有していたために、それ以上は調べ
なかった。
【0046】 D−IQN17およびD−IQN17(G39W)のD体は、天然酵素による
酵素的分解を受けない他のポケット結合分子を発見するために、他の生物学的に
コードされるライブラリーを用いた類似する方法において使用することができる
。例えば、他のファージディスプレイライブラリーを使用して、(例えば、両側
に位置するCys残基間に異なる数の残基を有し、かつ/またはシステイン残基
が両側に位置する領域の外側にランダムにコードされたアミノ酸残基を有し、か
つ/または3つ以上のシステイン残基を有する)新しいD−ペプチドインヒビタ
ーを同定することができる。ファージを用いることなくペプチドライブラリーを
コードする方法(例えば、この場合、コードするmRNAがペプチドに結合する
)を、D−ペプチドインヒビターを同定するために使用することができる。RN
AライブラリーまたはDNAライブラリーを(例えば、SELEX法とともに)
使用して、疎水性ポケットには結合するが、天然のヌクレアーゼに対する基質で
はないL−リボースまたはL−デオキシリボースに基づくRNAアプタマーまた
はDNAアプタマーをそれぞれ同定することができる(例えば、William
s他、PNAS、74:11285(1997))。
【0047】 天然のL掌体にあるIQN17およびIQN17(G39W)の形態もまた、
生物学的にコードされたライブラリーを用いた類似する方法において使用するこ
とはできるが、最も可能性のある適用は、他の非生物学的にコードされたライブ
ラリーとの使用であろう。例えば、(1ビーズに1化合物の多様性を有する)ビ
ーズにおける化学的なコンビナトリアルライブラリーを、(例えば、放射性また
は発色基により)標識されたIQN17を用いてスクリーニングして、IQN1
7に結合する分子を含有するビーズを同定することができる。この例において、
IQN17(G39W)を、そのようなビーズにおける分子がIQN17のポケ
ットに結合するかどうかを明らかにするための対抗スクリーニングとして使用す
ることができる(分子がIQN17(G39W)に結合した場合、それらはポケ
ット結合分子であるとは考えられない)。別の例として、IQN17が前もって
結合しているビーズを、潜在的なポケット結合分子の混合物(例えば、化学物質
または天然産物抽出物の混合物)とインキュベーションすることができる。その
後、(ビーズに結合している)IQN17を混合物から分離し、洗浄し、次いで
、ビーズ上のIQN17に結合している分子を溶出させる条件(例えば、有機溶
媒、低いpH、高い温度)に供することができる。溶出された分子(すなわち、
潜在的なポケット結合分子)を分析化学的方法(例えば、HPLC、質量分析法
)によって同定することができよう。IQN17(G39W)を用いた対抗スク
リーニングは、真のポケット結合分子を同定することを助けるために有用である
【0048】 上記に記載されている方法によって同定された薬物は、その後、HIV gp
41の機能(膜融合)、従って、細胞内への侵入を(完全または部分的に)阻害
するその能力についてさらに試験される。これは、本明細書中に記載されている
シンシチウムアッセイおよび/または感染力アッセイあるいは当業者に知られて
いる他のアッセイなどのインビトロアッセイ、および/または適切な動物モデル
もしくはヒトにおけるインビボアッセイをさらに使用して行われる。
【0049】 本発明の1つの実施形態は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイ
ルに結合する薬物、特に、N−ヘリックスコイルドコイルポケットを結合する薬
物を同定する方法である。この方法は、HIV gp41のN−ヘリックスコイ
ルドコイルポケットを結合するその能力についての評価対象の候補薬物と、可溶
性三量体のコイルドコイル、およびHIV gp41ポケットを含むのに充分な
部分のHIV gp41のN−ペプチドを含むペプチドとを、分子または化合物
(例えば、薬物)による結合に関してHIV gp41ポケットが提示されるの
に適切な条件のもとで合わせる工程、および、その候補薬物がHIV gp41
ポケットを結合するかどうかを測定する工程を含む。候補薬物とHIV gp4
1ポケットとの結合が生じた場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘ
リックスコイルドコイルのポケットを結合する薬物である。所望により、候補薬
物の結合は、N−ヘリックスコイルドコイルポケットを結合するペプチド(ポケ
ットを結合するペプチドとして以前に同定されたペプチド)が候補薬物およびそ
のペプチドが合わされることを除いて、上記に記載されているアッセイで評価す
ることができる。このような競合的アッセイにおいて、N−ヘリックスコイルド
コイルのポケットに対する候補薬物の結合が、既知の結合性成分(moiety)(ポ
ケットを結合する分子または化合物)の存在下で評価される。候補薬物の結合が
その既知の結合性成分の存在下で生じた場合、その候補薬物は、既知の結合性成
分と充分に競合する充分な親和性でN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを
結合する薬物である。この実施形態において使用される融合タンパク質は、可溶
性三量体状のコイルドコイル、例えば、タンパク質の、可溶性三量体状のコイル
ドコイル領域(例えば、GCN4またはGCN4−pIQ Iのタンパク質などの
非HIVタンパク質、しかし、HIVタンパク質を使用することができる)と、
HIV gp41のくぼみを含むのに充分な部分のHIV gp41のN−ペプ
チドとを含む。例えば、この部分は、配列番号:20を含むことができ、あるい
はくぼみを含むの充分な部分を含むことができ、そして適切な融合タンパク質ま
たは他の可溶性モデルにおいて存在する場合に、結合が得られるような方法でく
ぼみを提示し得る。あるいは、本明細書中に示されているHIV gp41の配
列変異体、ヒトウイルスの別の株(例えば、HIV−2)に由来する配列、また
は別の種(例えば、SIV、ネコ免疫不全症ウイルス、Visnaウイルス(M
.Singh他、J.Mol.Biol.、290:1031(1999))に
由来する配列を融合タンパク質または可溶性モデルにおいて使用することができ
る。融合タンパク質は、それがHIV成分との融合タンパク質である場合、結合
が得られるような方法でHIVのくぼみが提示されるときには、任意のタンパク
質の、可溶性三量体状のコイルドコイルを含むことができる。例えば、GCN4
−pIQ I、GCN4−pII、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo−MLV
)またはABCヘテロ三量体の融合タンパク質であり得る。1つの実施形態にお
いて、融合タンパク質はD型のIQN17である。別の実施形態において、融合
タンパク質は天然のL掌体のIQN17である。
【0050】 競合的アッセイ形式において、N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合
することが知られているペプチドはどれも、知られている結合性成分として使用
することができる。例えば、本明細書中に記載されているペプチド(配列番号:
3〜12、15、17〜19、23、24)のいずれか、あるいはその変異体ま
たはその一部を使用することができる。また、ペプチドでない任意のポケット結
合分子を競合的アッセイ形式において使用することができる。競合的アッセイは
、溶液中で、あるいはビーズ上で、あるいは固体表面で行うことができる。
【0051】 1つの実施形態において、候補薬物は検出可能に標識され、そしてHIV g
p41のN−ヘリックスコイルドコイルに対する候補薬物の結合が、(標識され
た候補薬物がN−ヘリックスコイルドコイルに結合する結果として)HIV g
p41のN−ヘリックスコイルドコイルにおける検出可能な標識の存在を検出す
ることにより測定される。可溶性モデルのヘリックスコイルドコイルのポケット
における標識の検出により、候補薬物がN−ヘリックスコイルドコイルのポケッ
トに結合することが示され、そして候補薬物が、N−ヘリックスコイルドコイル
のポケットに結合する薬物であることが明らかにされる。標識された候補薬物が
融合タンパク質において検出される場合、候補薬物は、N−ヘリックスコイルド
コイルのくぼみを結合する薬物である。
【0052】 HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合する薬物
を同定する方法の別の実施形態において、薬物による結合が得られるような方法
でポケットを提示する可溶性モデルが候補薬物と合わされ、そして候補薬物と可
溶性モデルのN−ヘリックスコイルドコイルとの結合が生じているかどうかが測
定される。結合が生ずる場合、その候補薬物は、ポケットを結合する薬物である
。この場合もまた、競合的アッセイ形式を使用することができる。競合アッセイ
の成分(例えば、IQN17およびD−ペプチド)を、蛍光基/消光基の組み合
わせを含む様々な検出可能な標識のいずれかで標識することができる。候補薬物
を、上記に記載されているように、様々な検出可能な標識のいずれかで標識する
ことができる。この実施形態において使用される可溶性モデル(融合タンパク質
)の成分、および競合的アッセイ形式において使用される競合性成分もまた、上
記のようでありうる。
【0053】 本発明はまた、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケット
を結合する薬物を製造する方法に関する。1つの実施形態において、この方法は
下記のように行われる;HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポ
ケットを提示する可溶性モデル、あるいは(例えば、GCN4−pIQ I、GC
N4−pII、Mo−MLV、ABCヘテロ三量体などの非HIVタンパク質ま
たはHIVタンパク質などのタンパク質の)可溶性三量体のコイルドコイルを含
む融合タンパク質が、薬物による結合のためにHIV gp41のポケットが提
示されるのに適切な条件のもとで、HIV gp41のN−ヘリックスコイルド
コイルのポケットを結合して、細胞内への侵入を阻害するその能力についての評
価対象の候補薬物と合わされる。候補薬物がHIV gp41のポケットを結合
するかどうかが測定される。この場合、HIV gp41のN−ヘリックスコイ
ルドコイルのポケットに対する候補薬物の結合が生ずる場合、その候補薬物は、
HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物である
。この実施形態において、融合タンパク質は、(例えば、GCN4、GCN4−
pIQI、GCN4−pII、Mo−MLV、ABCヘテロ三量体の可溶性三量
体コイルドコイルなどの非HIVタンパク質またはHIVタンパク質などのタン
パク質の)可溶性三量体コイルドコイルと、HIV gp41のN−ヘリックス
コイルドコイルのポケットを含むのに充分な部分のHIV gp41のN−ペプ
チド(例えば、配列番号:20のすべてまたは一部、あるいはその変異体または
改変体、あるいは別の株または種から得られる配列)とを含む。本明細書中に記
載されているIQN17をこの方法において使用することができる;IQN17
のDエナンチオマーもまた、(例えば、鏡像ファージ適用において)使用するこ
とができる。HIVの細胞内侵入を阻害するために製造された薬物の能力は、本
明細書中に記載されているように、例えば、シンシチウムアッセイおよび/また
は感染力アッセイにおいて評価される。そのような能力は、適切な動物モデルに
おいて、あるいはヒトにおいてさらに評価することができる。
【0054】 本発明はまた、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケット
を結合する薬物を製造する方法に関する。この方法は:HIV gp41のN−
ヘリックスコイルドコイルポケットの可溶性モデル(例えば、本明細書中に記載
されている融合タンパク質、および特に、IQN17またはその変異体)を製造
するか、またはそのようなモデルを得る工程;HIV gp41のN−ヘリック
スコイルドコイルのポケットを結合するその能力についての評価対象の候補薬物
(分子または化合物)と、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポ
ケットの可溶性モデルとを合わせる工程、および、候補薬物がHIV gp41
のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合するかどうかを測定する工程
を含む。候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケッ
トを結合する場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイル
ドコイルのポケットを結合する薬物である;結果として、HIV gp41のN
−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物が製造される。この実施形態
において使用される融合タンパク質は、本明細書中に記載されており、例えば、
IQN17、IQN17のDエナンチオマー、またはその変異体であり得る。あ
るいは、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合し
て、HIVの細胞内侵入を阻害する薬物は、下記に記載される工程を含む方法に
よって製造することができる:本明細書中に記載されているようにして、HIV
gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットの可溶性モデルを製造する
か、またはそのようなモデルを得る工程;そのような可溶性モデルと、HIV
gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合するその能力につい
ての評価対象の候補薬物とを合わせる工程;候補薬物が可溶性モデル(融合タン
パク質)のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合するかどうかを測定
する工程、この場合、結合が生ずる場合、その候補薬物は、HIV gp41の
N−ヘリックスコイルドコイルを結合する薬物である;およびN−ヘリックスコ
イルドコイルを結合して、HIVの細胞内侵入を阻害する薬物の能力を評価する
工程、この場合、薬物がHIVの細胞内侵入を阻害する場合、その薬物は、HI
V gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットを結合して、HIVの細
胞内侵入を阻害する薬物である。HIVの細胞内侵入を阻害するその能力は、(
例えば、シンシチウムアッセイ、感染力アッセイにおいて)インビトロで、ある
いは(例えば、適切な動物モデルまたはヒトにおいて)インビボで評価すること
ができる。可溶性モデルは、タンパク質の可溶性三量体コイルドコイル(例えば
、GCN4−pIQ I)などの可溶性三量体コイルドコイルと、HIV gp4
1のポケットを含むのに十分な部分のHIV gp41のN−ペプチドとを含む
ペプチドであり得る。
【0055】 本明細書中に記載されている方法ならびに他の方法によって同定または製造さ
れる薬物であって、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルを結合し
て、HIVの細胞内侵入を阻害する薬物もまた本発明の主題である。
【0056】 本明細書中に記載されている方法ならびに他の方法によって同定または製造さ
れる薬物であって、HIV gp41の2つ以上のN−ヘリックスコイルドコイ
ルに結合して、HIVの細胞内侵入を阻害する薬物もまた本発明の主題である。
そのような薬物は、阻害の有効性を増大させるために、例えば、適切なリンカー
(例えば、アミノ酸残基または他の化学的成分のリンカー)を介して2つ以上の
ポケット結合分子(薬物)を連結することによって得ることができる。連結され
るポケット結合分子は同じであってもよく、異なっていてもよい。本明細書中に
記載されている方法または他の方法によって同定または製造される薬物であって
、HIVgp120、CD4、CCR5、CXCR4、またはHIV gp41
の非ポケット領域に結合することに加えて、HIV gp41のN−ヘリックス
コイルドコイルポケットに結合する薬物もまた本発明の主題である。
【0057】 HIV gp41を阻害する薬物はまた、IQN17と、IQN17によって
提示されるN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合するD−ペプチドとの
複合体のX線結晶構造を参照して、例えば、本明細書中に示されているIQN1
7とD10pep1との複合体のX線結晶構造を参照して設計または改善するこ
とができる。あるいは、さらに、HIV gp41を阻害する薬物はまた、本明
細書中に示されている遊離のIQN17のX線結晶構造を参照して設計または改
善することができる。
【0058】 本明細書中に記載されているようにして同定された化合物および分子(薬物)
は、HIVの細胞内侵入を(部分的または完全に)阻害し、従って、未感染個体
(ヒト)および感染個体において、(例えば、未感染個体における感染を防止ま
たは低減させるために、感染個体におけるさらなる感染を低減または予防するた
めに)治療的に有用であり、そして、gp41により誘導される膜融合の機構を
研究するための研究用試薬、および個体によるウイルスクリアランス速度を評価
するための研究用試薬の両方として有用であり、そしてHIVの細胞内侵入を阻
害する他の化合物および分子(薬物)を発見または開発するための試薬として有
用である。本明細書中に記載されているD−ペプチド(例えば、D10pep5
、D10pep1)は、本明細書中に記載されている感染力アッセイを使用して
、細胞の感染を阻害することが示されている。他のD−ペプチドは、感染力を阻
害するその能力について同様に評価することができる。
【0059】 上記薬剤は、経口投与、鼻腔投与、腹腔内投与、筋肉内投与、膣投与または直
腸投与などの様々な経路で投与できる。各態様では、上記薬剤が、適当な担体ま
たは医薬組成物に入れて提供される。例えば、くぼみ結合薬は、適当な緩衝液、
食塩水、水、ゲル、フォーム、クリームまたは他の適当な担体に含めて投与する
ことができる。上記薬剤ならびに一般に適当な担体および随意の成分(例えば安
定化剤、吸収もしくは取込み促進剤、着香料および/または乳化剤など)を含ん
でなる医薬組成物を製剤化し、それを個体(HIV未感染者またはHIV感染者
)に治療有効量で投与することができる。一態様として、gp41のN−ヘリッ
クスコイルドコイルを結合する薬剤(例えば本明細書に記載するもの、DP17
8(C.T.Wild,D.C.Shugars,T.K.Greenwell
,C.B.McDanal,T.J.Matthews,同上 91:9770
(1994))、HIV−1 gp41(HXB2株)の残基117−152に
相当しアミノ末端がアセチル化されカルボキシ末端がアミド化されているT64
9)(L.T.Rimsky,D.C.Shugars,T.J.Matthe
ws,J.Virol.,72:986(1998)などは、殺微生物薬として
投与(または適用)され、細胞へのウイルス侵入を妨害する。例えば、HIVく
ぼみを結合する1または複数の薬剤を、膣、直腸または口腔粘膜などの粘膜表面
に適用もしくは粘膜表面と接触させる組成物に組み込むことができる。上記組成
物は、上記薬剤の他に、粘膜表面または避妊具(例:コンドーム、子宮頚部(c
ervical)キャップ、ペッサリー)の表面への適用に適した担体または基
剤(例:クリーム、フォーム、ゲル、その他、上記薬剤、水、緩衝液を保持する
のに十分な粘性を持つ物質)を含んでなる。上記薬剤は、上記薬剤を含有するフ
ォーム、ゲル、クリーム、水または他の担体の適用などによって、粘膜表面に適
用することができる。もう一つの選択肢として、使用条件(例えば膣または直腸
の温度、pH、湿度条件)下に(例えば分解、溶解、その他の放出手段によって
)薬剤を放出または送達する素材で作られた、1または複数の上記薬剤を含有す
る担体または基剤である膣坐剤または直腸坐剤を使って適用することもできる。
これらの組成物を経口的に投与(例えばカプセル、丸剤、液体、その他の形態で
嚥下)して、個体の血流中に移行させることもできる。いずれの態様でも、例え
ば薬剤を徐々に放出するまたは所定の期間後に放出する組成物に上記薬剤を組み
込むことなどによって、薬剤の制御放出または持効性放出(time rele
ase)(徐放、投与または挿入後の特定の時点での放出)を達成することがで
きる。もう一つの選択肢として、(例えば膣、口または直腸への)投与または適
用後直ちにまたは速やかに薬剤を放出する組成物に、上記薬剤を組み込むことも
できる。複合的放出(例えば薬剤の一部を挿入後直ちにまたは速やかに放出する
と共に、薬剤の一部を挿入後経時的に、または特定の時点で放出すること)も効
果的であり得る(例えば、2種類以上の素材から構成され、一つの素材からは放
出または送達が挿入後直ちにまたは速やかに起こり、および/または、一つの素
材からは放出または送達が徐々に起こり、および/または、一つの素材からは指
定の期間後に放出が起こる組成物を製造することなどによる)。例えば、HIV
くぼみを結合する1または複数の薬剤を、米国特許第4,707,362号に記
載されているような徐放性組成物に組み込むことができる。それらのクリーム、
フォーム、ゲルまたは坐剤は、産児制限にも使用されるもの(例えば殺精子剤ま
たは他の避妊剤)であってもよいが、そうである必要はない(例えば、抗HIV
薬を単独で、または別の非避妊剤(抗菌薬、抗真菌薬または潤滑剤など)と組み
合わせて送達するためだけに、それらを使用することもできる)。本発明の抗H
IV薬は、HIV gp41 N−ヘリックスコイルドコイルを結合する1また
は複数の薬剤でコーティングされている、または使用条件下での放出が可能な形
でそれらの薬剤が組み込まれている避妊具(例えばコンドーム、子宮頚部キャッ
プ、ペッサリー)を使って、個体に投与することもできる。上述のように、薬剤
の放出は直ちに、徐々に、または指定した時点で起こりうる。その結果、それら
の薬剤は、HIVと接触しHIVを結合して、細胞へのウイルス侵入を減少させ
、または防止する。
【0060】 もう一つの態様では、gp41 N−ヘリックスコイルドコイルくぼみへの結
合以外の機序によって細胞へのHIV侵入を妨害する薬剤(例えば、CD4段階
でgp120結合を妨害することによって、ウイルス侵入を妨害する薬剤)が、
gp41 N−ヘリックスコイルドコイルに結合する薬剤について上述したよう
に、粘膜表面に投与または適用される。
【0061】 本発明の融合タンパク質は、可溶性三量体型または可溶性三量体状のコイルド
コイル、例えばある(非HIV由来またはHIV由来の)タンパク質の可溶性三
量体型または可溶性三量体状のコイルドコイル領域などと、HIV gp41の
NペプチドのC末端のうちHIVコイルドコイルくぼみまたは疎水性ポケットを
包含する(構成する)のに十分な部分(N−ペプチドのポケット構成残基)とを
含んでなる。HIV gp41のNペプチドは、HIV−1、HIV−2、別の
HIV株、または他の種に由来する株(例えばサル免疫不全症ウイルス(SIV
)、ネコ免疫不全症ウイルスまたはビスナウイルスなど)のものであってよい。
例えばHIV−2配列LLRLTVWGTKNLQARVT(配列番号:26)
、SIV配列LLRLTVWGTKNLQTRVT(配列番号:27)、または
HIV−1、HIV−2およびSIV中の不変残基からなる配列(LLXLTV
WGXKXLQXRXX(配列番号:42)で表される;ここにアミノ酸残基L
、T、V、W、G、K、QおよびRはアミノ酸残基に使用される一文字コードで
あり、Xは任意のアミノ酸残基を表す)。また本発明の主題はHIV gp41
疎水性ポケットの可溶性三量体モデルであり、これはD−ペプチドであってもL
−ペプチドであってもよく、可溶性三量体コイルドコイルと、HIV gp41
のNペプチドのうちHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイル領域のポ
ケットを形成するアミノ酸残基を含むのに十分な部分とを含んでなる。上記D−
またはL−ペプチドは、GCN4−pIQ I、GCN4−pII、モロニーマウ
ス白血病ウイルスまたはABCヘテロ三量体のコイルドコイルを、可溶性三量体
コイルドコイルとして含んでなることができる。HIV gp41のNペプチド
のうち該ポケットのアミノ酸残基を含むのに十分な部分である成分は、例えばH
IV−1のLLQLTVWGIKQLQARIL(配列番号:20)、HIV−
2のLLRLTVWGTKNLQARVT(配列番号:26)、SIVのLLR
LTVWGTKNLQTRVT(配列番号:27)またはこれらの不変残基、す
なわちLLXLTVWGXKXLQXRXX(配列番号:42)を含んでなるこ
とができる。
【0062】 本発明の一態様は、あるタンパク質(GCN4−pIQ Iなど)の三量体状の
コイルドコイル領域と、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルとの
融合タンパク質であって、N−ヘリックスくぼみの全部または一部を含むか、N
−ヘリックスくぼみを含まないものである。すなわち、本発明の融合タンパク質
は、GCN4−pIQ Iの三量体型のコイルドコイル領域と、HIV−1 pg
41のN−ペプチドの一部を含んでなることができ、そのgp41のN−ペプチ
ドの一部は、HIV−1 gp41のN−ヘリックスくぼみの一部または全部を
含むか、HIV−1 gp41のN−ヘリックスくぼみを含まない。例えば、G
CN4−pIQ I由来の残基とN−36由来の残基を含有する融合タンパク質を
作成することができる。IQN24nと表記される融合タンパク質は、溶解性を
増すための3つの突然変異を含むGCN4−pIQ Iの29残基と、N36のN
−末端に由来する24残基(SGIVQQQNNLLRAIEAQQHLLQL
T)(配列番号:21)を含有し、大腸菌での組換え発現用に、余分のMet残
基がN−末端に追加されている。例えば、融合タンパク質は、(配列番号:21
)のアミノ酸配列を含んでなるHIV gp41のN−ペプチドの一部を含んで
なることができる。IQN24nの配列は、MRMKQIEDKIEEIESK
QKKIENEIARIKKLISGIVQQQNNLLRAIEAQQHLL
QLT(配列番号:22)である。この融合タンパク質は、化学合成法または組
換えDNA法などの様々な方法によって、もしくは大腸菌での組換え発現によっ
て製造することができ、その場合はN−およびC−末端はブロックされない。G
CN4−pIQ IコイルドコイルのコイルドコイルパラメーターはHIV gp
41 N−ヘリックスコイルドコイルとほぼ同一であるので、得られる融合タン
パク質分子(IQN24n)は、gp41 N−ヘリックスコイルドコイルの一
部を(凝集していない)三量体として提示する長い三量体コイルドコイルを形成
すると予想される。
【0063】 本発明のもう一つの態様は、個体における免疫反応を誘発する方法を提供する
。gp41 N−末端領域コイルドコイルの一部分に関する可溶性三量体モデル
を作成するために使用した戦略は、HIVワクチン候補の開発にも役立つ。将来
的なHIVワクチンの一つの目標は、HIV−1 gp120/gp41エンベ
ロープタンパク質複合体の「プレヘアピン」中間体に結合する中和抗体反応を誘
発することである。この過渡的な形態では、gp41のN−ヘリックス領域は露
出しているが、C−ヘリックス領域は露出していない。gp41のN−ヘリック
ス領域に対する抗体反応を誘発するには、免疫原として、N−ペプチド(N36
、N51またはDP−107など)を使用することが妥当であるように思われる
が、単離されたN−ペプチドは凝集し、gp41 N−ヘリックスコイルドコイ
ル三量体を正しく提示しない。したがって、一般に、gp41疎水性ポケットに
関するこの問題を解決するために本明細書に記載する戦略と同じ戦略を、gp4
1 N−ヘリックスコイルドコイル領域の可溶性三量体モデルの開発にも適用す
ることができる。このような三量体モデル(IQN17など、ただし例えばgp
41のポケット残基を含まないペプチドも挙げられる)を免疫原として使用する
ことにより、プレヘアピン中間体に対する抗体反応を誘発し、それによってHI
V−1感染を阻害することができる。例えば、免疫化しようとする個体には、あ
るタンパク質の三量体型のコイルドコイル領域とHIV−1 gp41由来のN
−ペプチドの一部とからなり、そのgp41由来の部分がN−ヘリックスコイル
ドコイルくぼみの一部または全部を含むか、N−ヘリックスコイルドコイルくぼ
みを含まない融合タンパク質を、医薬的に許容できる担体に入れて投与すること
ができる。例えばIQN24nを単独で、または他の物質と組み合わせて、ワク
チンに使用することができ、そのワクチンは、それが投与される個体(ワクチン
接種者)中で上記コイルドコイルに結合する抗体の産生を誘発し、それによって
感染および/または疾患からの保護を与えるだろう。IQN24nはN−ヘリッ
クスコイルドコイルに結合する抗体(モノクローナルおよび/またはポリクロー
ナル抗体)を(ヒト、その他の動物、または抗体ライブラリーから)同定するた
め、および/または、それらの抗体を産生させるためにも使用できる。これは、
IQN24n(またはIQN17もしくは他の可溶性三量体モデル)を使って、
生物学的試料(例えば血液)中のN−ヘリックスコイルドコイルを結合する抗体
の存在/不在/レベルを評価する診断法の基礎になる。
【0064】 本明細書に記載する融合タンパク質(例えばIQN17またはIQN24n)
のGCN4−pIQ I成分には、それらの変化がコイルドコイルの三量体状態を
変化させないという条件で、任意の多種多様な変異を施し、上記の方法に使用す
ることができる。HIV gp41 N36ペプチドに由来する部分である融合
タンパク質成分のアミノ酸組成を変化させて、変異体(例えばIQN17または
IQN24nの変異体)を作成することもできる。コイルドコイルの三量体状態
およびHIV gp41のN−ペプチドコイルドコイルに相当する融合タンパク
質の表面の構造が維持されるのであれば、可能なアミノ酸残基変化の数または種
類に制限はない。HIV gp41 N−ペプチドの一部である融合タンパク質
成分は、N−ヘリックスくぼみの全部または一部を含んでもよいし、N−ヘリッ
クスくぼみを含まなくてもよい。例えば、N51、N36、DP−107の他の
部分またはHIV gp41 N−ヘリックス領域の他の領域を、GCN4−p
Q I(または別の三量体状のタンパク質のコイルドコイル領域)に融合して、
(凝集していない)三量体らせんコイルドコイル融合タンパク質を作成し、それ
を上記の方法に使用することができる。コイルドコイルの三量体状態およびHI
V gp41のN−ペプチドコイルドコイルに相当する融合タンパク質の表面の
構造が維持されるのであれば、設計し作成することができる融合タンパク質の数
と種類に制限はない。そのような融合タンパク質は、例えばコイルドコイルのヘ
プタドリピート位置またはコイルドコイルパラメーターを評価するなどといった
、当業者に知られている方法を使って、設計し作成できる。
【0065】 本明細書には、HIVエンベロープ糖タンパク質gp41(例えばHIV−1
、HIV−2)のN−ヘリックスコイルドコイルの表面にあるくぼみに結合する
ペプチド(D−ペプチドであってもL−ペプチドであってもよい)が記載される
。そのようなペプチドは、それらが、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみとH
IV gp41のC−ペプチド領域のアミノ酸残基の相互作用を妨害し細胞への
HIV侵入を防止するような形でくぼみを結合するのに足りる長さを持つのであ
れば、どのような長さであってもよい。例えば、D−またはL−ペプチドは少な
くとも2つのアミノ酸残基からなり、一般的には約2〜約21アミノ酸残基にな
るだろう。すなわち、それらは約2〜約21個の範囲の任意のアミノ酸残基数か
らなりうる。アミノ酸残基は、後述するように、天然型または非天然型または修
飾型のアミノ酸残基でありうる。ペプチドは直鎖状でも環状でもよい。
【0066】 本明細書に記述するように同定されるD−ペプチドの例を図3に示す。ライブ
ラリーの設計上、各ペプチドには、示したアミノ酸残基に加えて、N−末端にG
Aが、C−末端にAAが隣接している。N−末端のリジン残基は水溶性を向上さ
せるために付加した。
【0067】 一態様として、本発明は、HIV−1 gp41エンベロープタンパク質のC
−ヘリックスに対するN−ヘリックスコイルドコイルの結合を阻害する化合物を
提供する。このような化合物はHIVに感染した患者または潜在的にHIVに感
染しやすい患者を治療する方法に役立つ。これらの化合物は、もう一つの化合物
のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみへの結合能を評価する方法にも役立つ。
【0068】 一態様として、HIV−1 gp41エンベロープタンパク質のC−ヘリック
スに対するN−ヘリックスコイルドコイルの結合を阻害する化合物は、次の式I
の化合物である: 式中、A、B、DおよびEはそれぞれ独立して1つのD−アミノ酸残基、1つの
L−アミノ酸残基、または1つのN−置換グリシル残基である。天然アミノ酸残
基または非天然アミノ酸残基を使用できる。K、L、MおよびNはそれぞれ独立
して1つのアミノ酸残基、または同一でも異なってもよい2〜約6アミノ酸残基
のポリペプチド基であり、n、p、qおよびrはそれぞれ独立して0または1で
ある。Fは直接結合または二官能性連結基であり、sは0または1である。
【0069】 式Iの化合物の部分集合の一つでは、Aが次式のD−アミノ酸残基、L−アミ
ノ酸残基またはN−置換グリシル残基である: 式中、RA1とRA2の一方は、置換されたまたは非置換のアリール、ヘテロアリー
ル、アリールメチル、ヘテロアリールメチル、ベンゾ縮合アリール、ベンゾ縮合
へテロアリール、ベンゾ縮合アリールメチル、ベンゾ縮合へテロアリールメチル
、シクロアルキルまたはビシクロアルキルであり、他方は水素である。Wは水素
、メチル、トリフルオロメチルまたはハロゲン(例えばフッ素、塩素、臭素また
はヨウ素)である。
【0070】 Bは、グリシル残基または次式のD−アミノ酸またはN−置換グリシル残基で
ある: 式中、RB1とRB2の一方は、置換されたまたは非置換の直鎖状、分枝鎖状または
環状アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリ
ールアルキル基であり、他方は水素である。Xは水素、メチル、トリフルオロメ
チルまたはハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など)である。
【0071】 Dは、次式のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基である: 式中、RD1とRD2の一方は、置換されたまたは非置換のアリール、ヘテロアリー
ル、アリールメチル、ヘテロアリールメチル、ベンゾ縮合アリール、ベンゾ縮合
へテロアリール、ベンゾ縮合アリールメチル、ベンゾ縮合へテロアリールメチル
、シクロアルキルまたはビシクロアルキルであり、他方は水素である。Yは水素
、メチル、トリフルオロメチルまたはハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ
素など)である。
【0072】 Eは、次式のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基である: 式中、RE1とRE2の一方は、置換されたまたは非置換の直鎖状、分枝鎖状または
環状アルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、他方は水素である。
Zは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはハロゲン(フッ素、塩素、臭素ま
たはヨウ素など)である。
【0073】 K、L、MおよびNはそれぞれ独立して、1〜約6個の(同一でも異なっても
よい)D−アミノ酸残基、L−アミノ酸残基、N−置換グリシル残基またはそれ
らの組み合せからなる。天然アミノ酸残基または非天然アミノ酸残基を使用でき
る。1つまたは複数のアミノ酸残基またはN−置換グリシル残基が、随意に、α
−炭素がメチルまたはトリフルオロメチル基もしくはハロゲン(フッ素、塩素、
臭素またはヨウ素原子など)で置換されていてもよい。
【0074】 好ましい一態様として、RA1とRA2の一方およびRD1とRD2の一方は独立して
フェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル、ナフチルメチル、置換ナフ
チルメチル、ベンジルまたは置換ベンジル基であるか、式: [式中、JはO、SまたはNRであり、RはHまたは直鎖状、分枝鎖状もしくは
環状のC1 −C6 アルキル、好ましくはメチルである。R1、R2 、R3 、R4
よびR5 は、水素、ハロゲンおよびアルキル、好ましくは直鎖状、分枝鎖状、ま
たは環状のC1 −C4 アルキル(メチルなど)からなる群より独立して選択され
る]の基である。好適なフェニル、ナフチル、ナフチルメチルおよびベンジル置
換基としては、アルキル、好ましくは直鎖状、分枝鎖状または環状のC1 −C4 アルキル(メチルなど)およびハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など
)が挙げられる。より好ましくは、RA1とRD1は共に水素であり、RA2とRD2
それぞれ独立して上述した基の一つである。
【0075】 RB1とRB2の一方は水素、置換されたまたは非置換の直鎖状、分枝鎖状または
環状C1 −C4 アルキル、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはナフチルメチル
であることが好ましい。好適な置換基としては、直鎖状、分枝鎖状または環状の
1 −C4 アルキル基およびハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など)
が挙げられる。より好ましくは、RB1は水素であり、RB2は上述した基の一つで
ある。
【0076】 RE1とRE2の一方は、置換されたまたは非置換の直鎖状、分枝鎖状または環状
1 −C6 アルキル基であるか、置換されたまたは非置換のフェニルもしくはナ
フチル基であることが好ましい。好適な置換基としては、直鎖状、分枝鎖状また
は環状のC1 −C4 アルキル基(メチルなど)およびハロゲン(フッ素、塩素、
臭素およびヨウ素など)が挙げられる。RE1は水素であり、RE2は上述した基の
一つであることが、より好ましい。
【0077】 式Iの化合物の好ましい部分集合では、AとDが、それぞれD−トリプトファ
ン残基であり、EはD−ロイシン残基である。
【0078】 Kは、アミノ−、カルボキシル−またはスルフヒドリル置換側鎖を含有するD
−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基(システイン、グルタミン酸、アス
パラギン酸またはリジン残基など)であり、Lは2〜3個のD−アミノ酸残基、
L−アミノ酸残基(それらD−またはL−アミノ酸残基は同一でも異なってもよ
い)またはN−置換グリシン残基からなるポリペプチドであることが好ましい。
例えば一態様として、Lは、D−グリシン、D−アラニンまたはD−α−C1
4 −アルキルグリシンの中から選択される2〜3個の残基からなる。
【0079】 Mは、2〜約8個のD−アミノ酸残基(そのうち少なくとも一つは、アミノ−
、カルボキシ−またはスルフヒドリル−置換側鎖を含有するシステイン、グルタ
ミン酸、アスパラギン酸またはリジン残基などのアミノ酸残基)からなるポリペ
プチド基であることが好ましい。Nは、1〜約6個のアミノ酸残基(そのうち少
なくとも一つはリジン残基である)からなるポリペプチド基であることが好まし
い。
【0080】 二価連結基Fの独自性は、それが、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみと相
互作用する位置にA〜Eの残基を配置させるのに適した長さであるならば、重要
ではない(J.R.Morphy,Curr.Op.Drug Discov.
Develop.,1:59−65(1998))。例えばFは、約2〜約40
原子の長さを持つことが好ましい。一態様として、Fは直接結合であるか、式:
−Pn −のポリペプチド連結基である(式中、nは1〜約12であり、各Pは独
立してL−またはD−アミノ酸もしくはN−置換グリシル残基またはグリシル残
基もしくはN−置換グリシル誘導体である)。
【0081】 もう一つの態様では、Fが、置換されたまたは非置換のC4 −C40−アルキレ
ン基、例えば式:−(CH2 m −のポリメチレン基(式中、mは約4〜約40
である)などであるか、1または複数の位置が窒素、酸素またはイオウ原子など
のヘテロ原子によって介在されているアルキレン基である。例えばFは、(CH 2 CH2 O)q −の基(式中、qは1〜約20である)でありうる。またFは、
1または複数の位置が、フェニレンまたはヘテロアリーレン基もしくは多糖基(
例えばグリコシド基、もしくは1または複数のグリコシド基(例えば1〜約10
個のグリコシド基)からなるポリ(グリコシド)基)で介在されているアルキレ
ン基であってもよい。好適なグリコシドとしては、グルコシド、ラクトシド、マ
ンノシド、ガラクトシド、フコシド、フルクトシド、グロシド、アロシド、アル
トロシド、タロシド、イドシド、その他当該技術分野で知られれているもの(ピ
ラノシド類およびフラノシド類など)が挙げられる。
【0082】 C−末端アミノ酸残基を持つ式Iの化合物では、そのC末端残基は、当該技術
分野で知られているように、例えばアミド、N−置換アミドまたはカルボン酸保
護基の形であってもよい。N−末端残基の窒素原子は、当該技術分野で知られて
いるように、アシル化(例えばアセチル化)されていてもよく、あるいはアミノ
保護基で置換されていてもよい。
【0083】 本明細書において「D−アミノ酸残基」という用語は、D−グリセルアルデヒ
ドと同じ絶対配置を持つα−アミノ酸残基を指す。そのアミノ酸残基が、第1の
非水素α置換基と、メチルおよびハロゲンから選択される第2のα置換基とを含
む場合、その絶対配置は、グリセルアルデヒドα炭素上に水素原子の代わりに当
該第2のα置換基を持つD−グリセルアルデヒドと同じである。
【0084】 本明細書に記載のペプチド、当該ペプチドの一部、当該ペプチドの変異体/誘
導体または当該変異体/誘導体の一部は、細胞へのHIV侵入のインヒビターと
して使用できる。図3に記載のペプチド、またはコイルドコイルのC末端にある
疎水性ポケットに収まり、gp41のC−ペプチド領域のN−ペプチド領域との
相互作用を防ぐのに十分なペプチドの一部は、HIV感染を阻止するのに役立つ
。記載した任意のペプチドまたはその誘導体の一部は、2〜20アミノ酸残基(
2から20までの任意の残基数)の大きさをとりうる。本明細書に記載のコンセ
ンサス配列トリプトファン−トリプトファン−ロイシンまたは配列トリプトファ
ン−トリプトファン−ロイシン−グルタミン酸および追加の残基からなるD−ペ
プチドを使用することができる。そのようなD−ペプチド中に存在する他の残基
とそのD−ペプチドの大きさは、本明細書に記載のペプチドを参照して選択する
ことができ、あるいは、そのペプチドが疎水性ポケットに収まりインヒビターと
して作用できるような形で上記の3または4残基が配置されるという条件で、本
明細書に記載のペプチドとは無関係に設計することもできる。本明細書に記載の
D−ペプチドのN−末端、C−末端または両方に追加のアミノ酸残基が存在して
、より大きなペプチドになっていてもよい。あるいは、例えば結合親和性を高め
るために、選択された他のアミノ酸残基が存在してもよい。あるいは、図3のD
−ペプチドの保存されたアミノ酸残基を含んでなるペプチドを使用することもで
きる。例えばそのようなペプチドは16アミノ酸残基の大きさで、保存されたア
ミノ酸残基を含むことができ、それら保存されたアミノ酸残基は図3に示すペプ
チドにおけるそれらの位置と同じ位置にありうる。介在アミノ酸残基は図3に示
すいずれかのペプチド中でそれらの位置にあるアミノ酸残基とは異なってもよく
(例えばそれら介在アミノ酸残基はイソロイシンまたはアスパラギンまたは図3
に記載のペプチドには認められない他のアミノ酸残基であってもよく)、あるい
は、それら介在アミノ酸残基で図3に示す別のペプチドの特定の位置に示される
アミノ酸残基を置換するか、それら介在アミノ酸残基を当該別のペプチドの特定
の位置に示されるアミノ酸残基で置換することができる(例えばD10pep1
中のアスパラギン酸残基をセリン残基で置換することができる)。天然タンパク
質中に見出される20種類のL−アミノ酸のD−状以外のアミノ酸残基も使用で
きる。そのような改変は、例えば、ペプチドの生物学的利用能、結合親和性また
は他の特性を向上させるために施すことができる。D−ペプチドは図3に示すペ
プチド中に存在する保存されたアミノ酸残基を含んでなりうるが、それらは図3
に示す介在アミノ酸残基の数よりも少ない(または多い)アミノ酸残基で分離さ
れていてもよい。例えば図3に示すコンセンサス配列中の最初のシステインとグ
ルタミン酸との間には、5残基より少ないアミノ酸残基が存在してもよい(例:
Tarrago−Litvak,L.ら,FASEB,J.,8:497(19
94);Tucker,T.J.ら,Methods Enzymol.,27
5:440(1996)、Tarrago−Litvak,L.ら,FASEB
,J.,8:497(1994);Tucker,T.J.ら,Methods
Enzymol.,275:440(1996))。あるいは、これら2つの
残基は、5残基より多いアミノ酸残基で分離されてもよい。内部修飾も(例えば
ペプチドの結合を増進したり、溶解度を増大させるために)施しうる。例えばD
10pep5の最初のトリプトファンは、溶解度を増大させるためにアルギニン
で置換することができる。D−ペプチドはそのN−末端に追加の成分またはアミ
ノ酸を持つことができる。例えばN末端を保護する成分またはN末端に本来存在
する電荷を除く成分を付加することができる。この成分は、例えば、グリシン(
G)に直接結合したアセチル基などのブロック成分、またはGのN−末端に結合
した1または複数の追加のアミノ酸残基に結合したアセチル基、例えばN末端の
Gに順番に結合している1または複数のリジン残基に結合しているアセチル基な
どでありうる。一態様として、例えばペプチドの溶解度を増大させるために2つ
のリジン残基をN−末端のGに結合し(KKGAC....)、その末端リジン
にアセチル基などのブロック成分を結合することができる(アセチル基KKGA
C....)。もう一つの態様として、4つのリジン残基をN−末端のGに結合
する。これに加えて、D−ペプチドはそのC−末端にも、追加のおよび/または
改変された成分もしくはアミノ酸を持ちうる。例えば、C末端にあるアラニン残
基の1つまたは両方を改変し、および/または、1または複数の残基をC末端に
追加して、例えば結合を増進させることができる。もう一つの選択肢として、ア
ミノ酸残基以外の官能基(化学基)を組み込んで、本発明のインヒビターを作成
することもできる。例えば、これら追加の化学基は、N末端、C末端、両末端、
または内部に存在できる。また、阻害の有効性を増大させるために、2またはそ
れ以上のD−ペプチドを適当なリンカー(例えばアミノ酸残基または他の化学成
分のリンカー)を介して連結することもできる。もう一つの選択肢として、阻害
の有効性を増大させるために、1または複数のD−ペプチドを、HIV gp1
20、CD4、CCR5、CXCR4またはHIV gp41の非ポケット領域
に結合する分子(薬剤)に、適当なリンカーを介して連結することもできる。
【0085】 D−ペプチド(またはL−ペプチドもしくはD−アミノ酸とL−アミノ酸の両
方を含むペプチド)は、化学法や組換え法などの既知の方法を使って製造できる
。ポリペプチド主鎖は、そのペプチドの1または複数の位置で、改変(例えばN
−メチル化)し、または代替骨格(例えばペプトイド)で置換することができる
。ペプチドには、例えばそのペプチドのアミノ酸間またはアミノ酸部分間に配置
されるリンカー(化学リンカー、アミノ酸リンカー)などの追加の成分を(例え
ば柔軟性を向上させるために、または剛性を高めるために)組み込んでもよい。
本明細書に述べるように、D−ペプチドを同定する際に使用したライブラリーの
設計上、本発明のD−ペプチドにはN−末端にGAが、またC−末端にAAが隣
接している。例えば吸収、分布、代謝および/または排出性が異なるD−ペプチ
ドを製造するために、これら4つのアミノ酸残基の一部または全部を、改変、置
換または削除することができる。一態様として、C−末端アミドの直前にグリシ
ン残基を付加することによってC−末端を修飾する。もう一つの態様として、最
もC−末端側のAを改変/修飾するか、異なるアミノ酸残基で置換するか、削除
する。
【0086】 天然に存在するペプチドの対称性とは反対の対称性を持つD−ペプチドは、プ
ロテアーゼなどの酵素にとって効率のよい基質にはならず、したがって、L−ペ
プチドほど容易には分解されない。また、D−ペプチドを標的とする効果的な免
疫反応もないので、D−ペプチドはLアミノ酸ペプチドによって誘発される免疫
反応に匹敵するような免疫反応は誘発しない。
【0087】 以下、実施例によって本発明を説明するが、これらの実施例は決して限定を意
図するものではない。
【0088】 実施例1 C34ペプチドの変異体の合成 固相FMOCペプチド化学によって突然変異型ペプチドを合成した。これらの
突然変異型ペプチドはアセチル化されたアミノ末端とアミド化されたカルボキシ
末端を持つ。樹脂から切り離した後、ペプチドをセファデックスG−25カラム
(ファルマシア社)で脱塩し、次に直線的水−アセトニトリル勾配および0.1
%トリフルオロ酢酸を用いるVydac C18分取用カラムでの逆相高速液体
クロマトグラフィー(ウォーターズ社)によって精製した。ペプチドの確認はM
ALDI質量分析(Voyager Elite、パーセプティブ・バイオシス
テムズ社)で行なった。ペプチド濃度は6M GuHCl中でのトリプトファン
およびチロシン吸収によって測定した[H.Edelhoch,Biochem
istry,6:1948(1967)]。
【0089】 実施例2 突然変異型N36/C34複合体のヘリックス含量と熱安定性の定量 先に記述されているように(M.Lu,S.C.Blacklow,P.S.
Kim,Nat.Struct.Biol.,2:1075(1995))、ア
ビブ(Aviv)製モデル62DS分光計を使って、リン酸緩衝食塩水(50m
Mリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.0)中で、CD測定を行
なった。各複合体の見かけ上の融点は、温度に関する[θ]222 の一次導関数の
極大から見積もった。0℃における平均残基楕円率([θ]222 、103 deg
・cm2 ・dmol-1)は次の通りだった:野生型、−31.7;Met629
Ala、−32.0;Arg633 →Ala、−30.7;Ile635 →Ala、
−25.9;Trp628 →Ala、−27.0;Trp631 →Ala、−24.
9。Trp628 →AlaおよびTrp631 →Ala突然変異の場合、[θ]222 の減少はヘリックス含量の実際の減少を高く見積もりすぎているようである。モ
デルヘリックスからトリプトファン残基を除去すると、ヘリックス含量にほとん
ど変化がない場合でも[θ]222 の絶対値が有意に減少すると報告されている(
A.Chakrabartty,T.Kortemme,S.Padmanab
han,R.L.Baldwin,Biochemistry,32:5560
(1993))。
【0090】 実施例3 HIV−1 gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの表面にある
ポケットに結合するペプチドの同定 HIVエンベロープ糖タンパク質gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの
表面にあるくぼみに結合するD−ペプチドを同定するのに役立つ方法がある。以
下に詳述するように、HIV−1エンベロープ糖タンパク質gp41のN−ヘリ
ックスコイルドコイルの表面にあるくぼみに結合するD−ペプチドを、鏡像ファ
ージディスプレイ法(mirror−image phage display
)によって同定した。この方法では、ファージディスプレイライブラリーをスク
リーニングすることによって、D−アミノ酸からなるリガンドを同定する。D−
アミノ酸含有リガンドは、基質とインヒビターに対して、天然に存在するL−ア
ミノ酸リガンドとは反対のキラル特異性を有する。ファージディスプレイライブ
ラリーを使って、標的または所望のL−アミノ酸ペプチドを結合するD−アミノ
酸ペプチドリガンドが同定されている(Schumacherら,Scienc
e,271:1854−1857(1996))。
【0091】 gp41の疎水ポケットに結合するD−ペプチドは、N−末端にGCN4−p
Q Iの29残基を含有しC末端にgp41の17残基を含有するハイブリッド
分子IQN17のエナンチオマーである標的を使って同定された。選択に使用し
たファージライブラリーは、米国特許第5,780,221号およびSchum
acherら,Science,271:1854−1857(1996)に記
載されている。ライブラリーの複雑度は108 種類の配列を超える。各配列は両
端にシステインまたはセリンを持ち、中間に10個のランダムな残基がある。こ
れらの配列は、ファージの外面に約5コピーとして発現されるコートタンパク質
、ファージのpIII遺伝子中に配置されている。
【0092】 ここに記載する例では以下の実験手順を使用した。
【0093】 ファージディスプレイ NeutrAvidin(ピアス社、100μLの100mM NaHCO3 中10μg)を96ウェル高吸着スチレン製プレート(コースター社)の各ウェ
ルに入れ、振盪台上4℃で一晩インキュベートした。NeutrAvidinを
除去し、ウェルをTBS/Tween溶液で4回洗浄した。ビオチン化D−IQ
N17(100mM NaHCO3 中の10μLペプチド溶液100μL)を各
ウェルに加え、25℃で1時間インキュベートした。ビオチン化標的を除去し、
ブロッキング溶液(100mM NaHCO3 中の30mg/ml脱脂粉乳)を
各ウェルに加え、振とうしながら4℃で2時間インキュベートした。ブロッキン
グ溶液を除去し、ウェルを再び上述のようにビオチン化標的でコーティングした
。標的を除去し、5mMビオチンを含むブロッキング溶液を添加することにより
、リガンドと結合していないNeutrAvidinをブロックした。ビオチン
を除去した後、各ウェルをTBS/Tween溶液で6回洗浄した。次に、ファ
ージストックを各ウェルに加えた(50μLのファージストック+50μLのフ
ァージ結合緩衝液:TBS、0.1%Tween−20、1mg/mlミルク、
0.05%アジ化ナトリウム)。ウェルでのファージストックのインキュベーシ
ョン時間は、選択ラウンド数が増すにつれて短くした。インキュベーション後に
、ファージ溶液を除去し、結合していないファージを除去するために、ウェルを
TBS/Tweenで12回洗浄した。奇数回目の洗浄はインキュベーション時
間なしですばやく行ない、偶数回目の洗浄は、ファージ選択のラウンド数が増え
るごとに時間を増やしてインキュベートした。100μLのファージ結合緩衝液
および2.5mM CaCl2 中のトリプシン2μgを添加し、37℃で1時間
インキュベートすることにより、ファージを溶出させた。回収率を決定するため
に、溶出したファージの希釈液を使って、K91 kan細胞を感染させた。1
時間のインキュベーション後に、細胞100μLを取り出し、LBで1:10、
1:100および1:100に希釈した液をLB/テトラサイクリンプレートに
播種した。ファージ回収率は、回収された形質導入単位(溶出したファージの力
価)の、投入した形質導入単位数(そのラウンドで使用したファージストックの
力価)に対する割合として決定した。形質導入単位はLB/テトラサイクリンプ
レート上のテトラサイクリン耐性コロニーの数を数えることによって決定した。
非特異的ファージ回収が一般に10-8〜10-9の桁の比率を持つのに対して、特
異的に増幅されたファージは10-7以上の比率を持つ。個々のクローンを増幅し
、配列決定した。それらを結合測定法で測定して、結合特異性を決定した。
【0094】 5ラウンドのファージ選択後にD10pep7が同定された。7ラウンドのフ
ァージ選択後に、D10pep1、D10pep3、D10pep4、D10p
ep5およびD10pep6が同定された。インキュベーション時間を短く、ま
た洗浄を長くしてファージ選択を再び行ない、3ラウンドの選択後にD10pe
p10およびD10pep12が同定された。(9番目のD−ペプチドが同定さ
れたが、細胞に対して毒性であることが分かって、それ以上は調べなかった。)
【0095】 同定されたファージクローンのD−IQN17のポケットに対する結合の特異
性を調べるために、それらのファージクローンを、上述のようにD−INQ17
、D−GCN4−pIQ I(3つの突然変異を持つもの)またはD−IQN17
(G39W=グリシン36がトリプトファンで置換されているもの)でコーティ
ングした96ウェルプレートのウェルもしくは標的を含まないウェルに加えた。
ファージを、それらが同定された時のラウンドと同じ時間にわたって、プレート
上でインキュベートし、洗浄した。溶出したファージを使ってK91 kan細
胞を感染させ、回収される形質導入単位を上述のように決定した。これらの配列
はD−IQN17を含むウェルに特異的に結合した。
【0096】 ペプチド精製 IQN17と各D10ペプチドは、FMOCペプチド化学によって合成した。
それらはアセチル化されたN−末端とC−末端アミドを持つ。IQN17はGC
N4−pIQ Iに由来する29残基をN−末端に含有し、N36のC−末端に由
来する17残基をC−末端に含有する。GCN4−pIQ IとN36領域には1
残基の重複があるので、45残基長のペプチドになる。溶解度を改善するために
、元のGCN4−pIQ I配列と比較して3つのアミノ酸置換を、IQN17の
GCN4−pIQ I領域に施した(Eckert,D.M.ら,J.Mol.B
iol.,284:859−865,1998)。それらの置換はL13E、Y
17KおよびH18Kである。したがってIQN7の配列は、 ac−RMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKKLLQLT VWGIKQLQARlL −am (ac−はN−末端アセチル基を表し、−amはC−末端アミドを表す) であり、下線部はHIV部分である。鏡像ファージディスプレイのために、D−
アミノ酸を使ってIQN17を合成した(IleやThrなどの2つ目のキラル
中心を含むアミノ酸残基については、天然に存在するアミノ酸残基の正確な鏡像
を使ってD型の標的を作成する)。また、ペプチドのN−末端をNHS−LC−
ビオチンII(ピアス社、カタログ番号21336)を使ってビオチン化した。
ビオチンとIQN17配列の間にはGKGの3アミノ酸リンカーがあり、そのリ
ジンは天然に存在するL−型である。このリジンはトリプシン認識部位として挿
入した。
【0097】 D−ペプチドの配列は次の通りである(全てのアミノ酸はD−エナンチオマー
であり、2つ目のキラル中心を含むIleとThrについては、天然に存在する
アミノ酸残基の正確な鏡像を使用した):
【0098】 樹脂から切り離した後、ペプチドをセファデックスG−25カラム(ファルマ
シア社)で脱塩し、凍結乾燥した。凍結乾燥ペプチドを、Vydac C18分
取用カラムでの逆相高速液体クロマトグラフィー(ウォーターズ社)によって精
製した。次に凍結乾燥粉末を20mM Tris(pH8.2)に溶解し、室温
で数日撹拌することにより、それらD−ペプチドを空気酸化した。酸化されたペ
プチドを先と同様にHPLC精製した。予想されるペプチドの分子量をMALD
I−TOF質量分析法で確認した(パーセプティブ・バイオシステムズ社)。ペ
プチド濃度は6M GuHCl中280nmでのチロシン、トリプトファンおよ
びシステイン吸収を使って決定した(Edelhoch,1967)。ペプチド
原液はDMSO中に調製した。
【0099】 D10pep3、D10pep5、D10pep7a、D10pep10およ
びD10pep12においてN−末端リジンを付加し、ペプチドの水溶性を増大
させた。ペプチドの阻害活性に対する添加したリジンの効果を調査するために、
D10pep1を、2つのN末端リジンを有するように合成し(D10pep1
aと示す)、リジンを有さないD10pep1と比較した:D10pep1aが
、シンシチウム形成の阻害に関してD10pep1(すなわち、リジンなし)よ
りも約2倍高いIC50を有することを見出した。さらに、DP10pep5を、
2つのさらなるN末端リジン(D10pep5aを意味するペプチドを産生する
ために合計4つのリジン)を有するように合成した。D10pep5aのシンシ
チウム形成の阻害に関するIC50は、D10pep5よりも約2倍高かった。D
ペプチドへのN末端リジン残基の添加は、阻害活性の穏やかな減少を生じただけ
であった。
【0100】 研究のために合成したN末端に付加した更なるD−Lys残基を有するD−ペ
プチドは、ペプチドの名称に「a」を付して示され、下記: を含む。
【0101】 これらの配列はまた、図3に示される。各D−ペプチドの12アミノ酸「コア
」(次いで、10マーおよび本明細書中に記載されるコンセンサス配列を含む)
は下記:
【0102】 これらのペプチド間に高度に保存されたコンセンサス配列が存在することはた
だちに明らかである。図3に示される12アミノ酸ペプチドは、CXXXXXE
WXWLC(配列番号:12)で表され得、ここで、複数のペプチドで共通する
アミノ酸を示し、Xは、ペプチド間で保存されていないアミノ酸残基を示す。
【0103】 実施例4 C34ペプチドおよびD−ペプチドの活性の評価 ウイルス感染を阻害することにおけるC34ペプチドの効力およびD−ペプチ
ドのHIV−1感染阻害活性を、組換えルシフェラーゼ発現HIV−1(Che
n,B.K.ら、J.Virol.、68:654(1994));Malas
hkevich、V.N.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,US
A,95:9134(1998))。ウイルスを、293T細胞へのエンベロー
プ欠損HIVゲノムNL43LucR−E−(Chen,B.Kら、J.Vir
ol.、68:654(1994)およびHXB2 gp160発現ベクターp
CMVHXB2gp160(Chan,D.C.ら、Proc.Natl.Ac
ad.Sci.、95:11513(1998))の同時トランスフェクトによ
って産生した。低速度遠心分離を用いて細胞細片のウイルス上清を清澄化した。
上清を、0〜500μMの範囲の範囲の濃度のD−ペプチドの存在下でHOS−
CD4/融合細胞(N,Landau、NIH AIDS Reagent P
rogram)を感染させるために使用した。細胞を、感染の48時間後に回収
し、ルシフェラーゼ活性をWallac AutoLumat LB953 ル
ミノメーター(Gaithersburg、MD)でモニターした。IC50は、
ペプチドを欠失した対照試料と比較して50%の活性の減少を生じるペプチド濃
度である。IC50を、ラングミュア式[y=k/(1+([ペプチド]/IC50 )+x](式中、y=ルシフェラーゼ活性、kおよびxは換算定数(scali
ng constant)である)にデータを当てはめることにより計算した。
【0104】 細胞/細胞融合アッセイ 細胞/細胞融合(すなわち、シンシチウム形成)の阻害を、HXB2エンベロ
ープを発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(K.Kozarskyら、J
.Acquir.Immune.Defic.Syndr.、2:163(19
89))およびHeLa−CD4−LTR−β−gal細胞(M.Emerma
n,NIH AIDS Reagent program)を、異なる濃度のペ
プチドの存在下で共培養することによってアッセイした。混合した場合、これら
の細胞はシンシチウム、または多核細胞を形成するか、β−ガラクトシダーゼを
発現する。細胞を共培養した約20時間後、シンシチウムを視覚化するために単
層を5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシドで染色し
た。シンシチウムを顕微鏡で視覚化し、手作業で計数する(シンシチウムを、3
またはそれ以上の核を含有する融合細胞として得点づけた)。IC50を、ラング
ミュア式[y=k/(1+[ペプチド]/IC50)+x](式中、y=シンシチ
ウムの数、kおよびxは換算定数(scaling constant)である
)にデータを当てはめることにより計算した。
【0105】
【表1】
【0106】 変異体C34ペプチド(10μM)を、円偏光二色性測定のためにリン酸緩衝
化生理食塩水(pH7.0)中のN36ペプチド(10μM)と複合体化させた
。見かけ上の溶解温度(Tm)を、222nmでのCDシグナルの温度依存性か
ら推定した。ウイルス侵入の阻害を、組換えルシフェラーゼ発現HIV−1を用
いた細胞培養感染アッセイにおいて測定した。細胞−細胞融合の阻害を、シンシ
チウムアッセイにおいて測定した。平均および標準誤差は3連試行に由来する。
【0107】 同様に、記載したD−ペプチドの活性を、上記の2つのアッセイを用いて評価
した。図6A〜6Bおよび図8A〜8Bに結果を示す。
【0108】 実施例5:IQ17/D10pep1複合体およびリガンド非含有IQN17の
結晶化 ペプチド精製、結晶化 ペプチドIQN17およびD10pep1を、上記のようにFMOCペプチド
化学によって合成した。
【0109】 IQN17とD10pep1との混合物の10mg/mlストックを調製した
。IQN17の最終濃度は約1.37nMであり、D10pep1の最終濃度は
約1.51mMであった。最初の結晶化の条件を、Crystal Kit I
およびII(Hampton Research)を用いて見出し、次いで至適
化した。最もよい回折用結晶を成長させるために、1μlの当該ストックを1μ
lの貯蔵緩衝液(10%PEG4000、0.1M NaCi pH5.6、2
0%2−プロパノール)に添加し、貯蔵緩衝液に対して平衡化させた。結晶は、
空間群P321(a=b=41.83オングストローム;c=84.82オング
ストローム、α=β=90°、γ=120°)に属し、非対称単位において1つ
のIQN17/D10pep1モノマーを含有する。有用なオスミウム誘導体を
、貯蔵溶液中のPEG4000の濃度を4%上昇させ、5mMの最終濃度で(N
4 2 OsCl6 を貯蔵溶液に添加し、得られた溶液の5μlを、タンパク質
結晶を含有するドロップに添加することによって生産した。データ収集の前に、
天然および重原子誘導体の結晶を、20%PEG4000、0.1M NaCi
PH5.6、20%2−プロパノールを含有するクライオ溶液に移し、X−s
tream cryogenic crystal cooler(Molec
ular Structure Corporation)を用いて瞬間凍結さ
せた。
【0110】 リガンド非含有IQN17の最もよい回折用結晶を、上記と同様の技術で成長
させた:1(on)μlのIQN17の10mg/ml水溶液を1μlの貯蔵緩衝
液(1.0M 酒石酸K、Na、0.1M NaHEPES pH7.0)に添
加し、貯蔵緩衝液に対して平衡化させた。瞬間凍結の前に、結晶を、23%グリ
セロールの最終濃度に増大した量のグリセロールを有する貯蔵溶液からなる緩衝
液に移した。結晶は、空間群C2221 (a=57.94オングストローム、b
=121.96オングストローム、C=73.67オングストローム;α=β=
γ=90°)に属し、非対称単位において1つのIQN17トリマーを含む。
【0111】 X線データ収集および処理 最初のデータを、R軸IVエリア検出器に据え付けたRigaku RU30
0回転陽極X線発生装置(Molecular Structure Corp
oration)で収集した。IQN17の回折データをQuantum−4C
CD検出器を用いて100Kで、そしてAdvanced Light Sou
rce(Berkeley、USA)で5.0.2ビームライン(beamli
ne)で収集した。IQN17/D10pep1に関する最終の天然の、および
多波長変則回折(multiwavelength anomalous di
ffraction;MAD)データを、Raxis−IV detector
を用いてHoward Hughes Medical Institute
Beamline X4Aで収集した。MADデータに関して、オスミウムL−
III吸収端付近の4つの波長を、Os誘導体結晶の蛍光スペクトルに基づいて
選択した(表2)。4つの波長は:1.1398オングストローム、1.140
3オングストローム、1.1393オングストローム、1.1197オングスト
ロームであった。データセット間の結晶崩壊を最小化するために、データセット
を、20°バッチで収集し、次のバッチに移る前に各波長で同じバッチを収集す
ることを可能にした。反射を、プログラムDENZOおよびSCALEPACK
で積分し、計測した(Otwinowski,Z.、(1993)、Data
Collection and Processing、Sawer,L.、I
saacs,N.およびBailey,S.編(SERC,Daresbury
Laboratory,Warrington,England)、pp.5
5−62)。
【0112】 さらなる回折データ処理、位相決定およびマップ計算を、CCP4一式(su
ite)のプログラム(CCP4、Acta Cryst.D50:760−7
63(1994))を用いて行った。強度をプログラムTRUNCATEで振幅
に減少させ、Os L−III吸収端に最も近い波長(λ1、λ2、λ3)に関
するデータセットを、離れた波長(λ4)データセットまでSCALEITで計
測し除去した(表2)。
【0113】 位相決定および結晶学的精密化 最初に、IQN17/D10pep1結晶に関する位相決定を、ポリセリン鎖
に切断された側鎖を有する公開されたGCN4−pIQIおよびHIV gp4
1構造に由来する理論モデルのIQN17構造(build)(Eckert,
D.Mら、(1998)J.Mol.Biol.284:859−865;Ch
an,D.C.ら、(1997)Cell 89,263−273)を用いて分
子置換技術で試みた。得られた分子置換溶液は、あいまいであり、電子密度図は
、D10pep1ペプチドのコンホメーションを示さなかった。しかし、分子置
換位相は、差異および多義的なフーリエマップを用いて対応する誘導体中の単一
のOs原子の座標を決定するのに充分に良好だった。重原子は、結晶学的3倍軸
(cryallographic three−fold axis)(0.2
22、0.667、0.047)に結合する。次いで、MAD位相を、プログラ
ムMLPHARE(表2)で産生し、プログラムDMでより高い分解能に拡大し
た。1.5オングストロームでのMAD電子密度図の質は、例外的であり、明快
さを伴ってIQN17およびD10pep1ペプチドの構造的詳細を示した。電
子密度図解釈およびモデル構築をプログラムO(Jones,T.A.ら、(1
991)Acta Crystallogr.D47,110−119)で行っ
た。IQN17−D10pep1複合体の構造を、プログラムCNS(Breu
nger,A.T.ら、Acta Crystallogr.D54,905−
921(1998))を用いて精密化した。構造の正確さを、シミュレートした
アニーリング省略マップおよびプログラムWHAT CHECK(Hoff,R
.WW.ら、Nature 381:272(1996))でチェックした。I
QN17およびD10pep1ペプチド(その鏡像に変換されていない場合)の
全ての残基は、ラマチャンドランプロットの最も好ましい領域を占める。IQN
17の2つの最もN末端の残基ならびにD10pep1ペプチドのArg−6お
よびArg−8の側鎖以外については、残基の大部分のコンホメーションは充分
に規定されている。
【0114】 リガンド非含有IQN17の構造を、プログラムAMORE(Navaza,
J.(1994)Acta Crystallogr.A50,157−163
)および試験モデルとして精密化されたIQN17/D10pep1構造のIQ
N17部分を用いて解析した。3倍非結晶学的平均化、溶媒平坦化およびプログ
ラムDMとのヒストグラムマッチングを位相改善のために使用した。電子密度図
解釈およびモデル構築をプログラムO(Jonesら、Acta Crysta
llogr.D54,905−921(1991))で行った。IQN17/D
10pep1複合体の構造をプログラムCNS(Brunger,A.T.ら、
Acta Crystallogr.D54,905−921(1998))を
用いて精密化した。
【0115】 結晶構造は、HIV感染性を阻害するより有効なおよび/または新規のD−ペ
プチド、ペプチド擬似体または他の低分子を設計するために使用され得る。
【0116】 実施例6 gp41のN−ヘリックス疎水性ポケットに結合する化合物を同定す
るための核磁気共鳴(NMR)法 A.IQN17疎水性ポケットとD−ペプチドとの特異的結合アッセイ IQN17への各D−ペプチドの結合をアッセイするためにNMR実験を使用
した。IQN17の単一のトリプトファン残基(Trp−571で示される)は
、gp41の疎水性ポケットへの特異的結合の最良のプローブを提供する。酸化
重水素(重水素水)緩衝液において、IQN17の単純な均一核一次元1 H N
MRスペクトル(図9A、中段)は、この分子の他の全てのシグナルから特に充
分に分離した、Trp−571インドール由来の5つのシグナルを示す。gp4
1ポケットへの結合に関して化合物を試験するために、2つの一次元1 H NM
R測定を重水素化緩衝液中の試料で行った。最初に、IQN17の参照(対照)
スペクトルを採取し、非結合形態のTrp571化学シフトを同定した。第2の
スペクトルを、IQN17および目的の化合物を含有する試料で得た。選択任意
の第3のD−ペプチド(もしくは他の低分子、または分子の混合物)もまた採取
した。1 H NMR実験をBruker AMX500スペクトロメーターにお
いて行った。データを、Silicon Graphicsコンピュータにおい
てのFelix 98.0(MSI)で処理し、全てのスペクトルをDSSに対
して照会した。全ての実験を、100mM NaCl、50mMリン酸ナトリウ
ム(pH7.5)において25℃で行った。使用した全ての緩衝液は、交換可能
な骨格および側鎖のプロトンに由来する重複する共鳴を除去するために>99.
7%D2 Oであった。溶質濃度は、個々のペプチドに関して0.3〜1.0mM
の範囲であり、IQN17と各Dペプチドとの1:1複合体に関しては0.8〜
1.0mMの範囲であった。
【0117】 2またはそれ以上の成分の単結合は、よりブロードなピーク(複合体の増大し
たサイズによる)および化学シフトにおける変化(遊離形態および結合形態の核
により経験される異なる化学環境による)を生じることが予想される。疎水性ポ
ケットへの特異的結合は、Trp−571化学シフトにおける変化、ならびにピ
ークのブロード化によって示される。また、結合は、アッセイした分子(例えば
、ペプチドおよび低有機分子)の化学シフトにおける類似した変化およびピーク
幅により示されうる。図9Aは、これらの効果の例を示す:IQN17/D10
pep1a複合体のNMRスペクトルは、よりブロードなピークおよび2つの分
離した化合物のいずれのスペクトルとも劇的に異なる化学シフトを示す。研究し
た全てのIQN17/D−ペプチド複合体は、化学シフト分散の程度に違いはあ
るが、類似した結果を示した。従って、結合は全てのケースで示された。
【0118】 D10pep1における2つの保存されたTrp残基、および保存されたLe
u残基が、IQN17ポケットの結合に直接関与するというX線結晶学的知見は
、他のD−ペプチドがポケットに結合する場合にこれらの保存された残基が同様
の様式で関与することを強く示唆する。これらの保存されたトリプトファン残基
、およびIQN17のTrp−571は、結合界面を大いにより詳細に研究する
機会を提供する。IQN17/D10pep1結晶構造において、IQN17の
Trp−571側鎖は、Trp−10インドール基の平面上のTrp−571の
いつかのプロトン(Hζ2 ,Hη2 ,Hζ3 ,Hε3 ;芳香族環の4つのスカラ
ー共役プロトン)によりD10pep1のTrp−10と密接に接触する。この
位置において、芳香族環電流相互作用(current interactio
n)(F.A.Bovey,Nuclear Magnetic Resona
nce Spectroscopy(1988))は、それらのプロトンの内の
いくつかの化学シフトを変化させ、理解されるような様式で高磁場にピークを移
動させる(図9A、下段)。構造に基づく化学シフト予想プログラムSHIFT
S(3.0b2版、K.Osapay,D.Sitkoff,D.Case)の
使用はまた、Trp−571に由来するプロトンのみが、特にHζ3 プロトンが
、大きな高磁場シフトを経験することを予想する。他のD−ペプチドがD10p
ep1と同じ様式でIQN17ポケットに結合する場合、Trp−571とTr
p−10との同様の並列(juxtaposition)が生じ、高磁場シフト
したピークを生じるはずである。研究した全てのD−ペプチド/IQN17複合
体は、シフトの程度に違いはあるが、このようなピークを示した(図9B)。D
10pep1複合体は、最も極度の高磁場シフトを示し、D10pep7aが最
も小さな高磁場シフトを示した。これらの変化の振幅は非常に大きく、最も高磁
場シフトしたプロトン(割り当てられ得る全てのケースにおいて、Hζ3 )に関
しておおよそ0.5〜2ppmの範囲である。比較すると、NMR実験よりSA
Rにおける結合を検出するのにしばしば使用される化学シフトの差異(Shuk
er,S.B.、Hajduk,P.J.、Meadows,R.P.、Fes
ik,S.W.、Science 274:1531−1534(1996))
は、頻繁に0.05〜0.2ppmの範囲である。広範囲の高磁場化学シフトが
観察されたが、環電流効果は、距離および方向に高度に敏感でありうるので、小
さな構造の差異が、化学シフトにおいてかなりの変化を生じるかもしれない。(
観察された全ての高磁場シフトは、x線結晶構造から予測されたTrp側鎖のお
およその方向と一致する。)さらに、高磁場シフトしたピークは、これらのNM
Rスペクトルの他のものと比較して幾分ブロードである(交換プロセスのある型
によるようである)、この効果は、D10pep5aとのおよびD10pep7
aとの複合体について特に明白である。
【0119】 強く高磁場シフトしたピークが全ての単一の側鎖(ほぼ間違いなくTrp−5
71)に対応することを確認するために、二次元NMR(TOCSY)実験を、
各々のIQN17/D−ペプチド複合体で行った。予想したように、TOCSY
実験は、各複合体において、強く高磁場シフトした共鳴は全て同一の芳香族側鎖
に属し、4スカラー共役プロトンの基として同定される。1例のTOCSYスペ
クトルを図9Cに示す。研究したいくつかの複合体について、NOESY実験は
また、IQN17/D10pep1構造から予想したように、この側鎖と他の(
割り当てられていない)芳香族基との接触を示している。6.8〜7.6ppm
領域における激しいスペクトルの重複のために、潜在的なNOE交差ピークの全
てを分離することはできなかった。J.Cavanaugh、W.J.Fair
brother、A.G.Palmer、N.J.Skelton、Prote
in NMR Spectroscopy:Principles and P
ractice (1996)に記載されるような2D NOESYおよびTO
CSYの実験を、IQN17および各複合体の試料で30〜90ms(NOES
Y)および30〜70ms(TOCSY)の範囲のミックス時間により行った。
11,111Hzおよび5555Hzのスペクトル幅を、獲得(acquisi
tion)(t2 )および間接(incirect)(t1 )の次元の各々に使
用した。TOCSY実験には、DIPSI−2rcミックス配列(J.Cava
naugh,M.Rance,J.Magn.Reson.Sery.A.,1
05:328(1993))を使用した。
【0120】 我々は、アッセイした全てのD−ペプチドが、IQN17の疎水性ポケットに
明白に結合すると結論付ける。さらに,これらのIQN17複合体の大多数(す
なわち、D10pep1、D10pep3、D10pep4、D10pep6、
D10pep10、およびD10pep12)において、D−ペプチドは、非常
に類似した結合界面でポケットと接触し、Trp−571をTrp−10の芳香
族環との近接した接触にもたらす。D10pep5aとの複合体およびD10p
ep7aとの複合体の場合には、より限られた化学シフト分散およびよりブロー
ドなピークは、幾分他の様式の結合のわずかな可能性を生じさせるが、この結論
はまた非常に妥当であるようである。
【0121】 本明細書中で使用された結合アッセイはまた、gp41(例えば、IQN17
中に見出されるような)の疎水性ポケットに他の分子の結合をアッセイするのに
使用されうる。上記アッセイは、上記のD−ペプチドのセットに関するように、
芳香族環がポケットに結合する場合に解釈することが特に容易である。しかし、
いかなるポケット結合分子も、容易に注目すべき影響であるTrp−571の化
学シフトを混乱させるはずである。さらに、結合において低分子自身によって産
生された新規NMRシグナルもまた、結合の指標である。
【0122】 一次元の同核1 H NMRの使用は、特異的結合を決定するための、多次元の
異核を超える有意な利点を提供する:(1)感受性がより高く、より迅速に試料
をアッセイすることができる;交互に、より高い感受性は、低濃度のIQN17
と推定上の結合因子との使用は、より高い親和性の化合物を、それらの多くを同
時にスクリーニングすることを可能にする。(2)非アイソトープ標識したタン
パク質は生産することが容易であり、より経済的である。しかし、同核または異
核(15Nおよび/または13Cアイソトープ標識による)の二次元NMR実験もま
た使用されうる。
【0123】 B.化学ライブラリースクリーニング 上記(A)に記載される結合アッセイは、化学ライブラリー中に存在する多数
の化合物をスクリーニングするのに使用されうる。単純な一次元の同核1 H N
MR実験は、アイソトープ標識を必要とすることなく結合を評価するのに充分で
ある。同核または異核(15Nおよび/または13Cアイソトープ標識による)二次
元NMR実験もまた使用されうる。単一化合物を、本プロセスの時にスクリーニ
ングし得る。しかし、多数の化合物もまた、IQN17(またはgp41 N−
ヘリックスコイルドコイルの任意の代表)と同一のアッセイで組み合わされ、同
時にスクリーニングされうる。上記混合物の任意の成分によるポケットへの結合
は、Trp−571化学シフトにおける変化によって示される。多数の化合物か
らのNMRシグナルは、共にTrp−571からのシグナルを不明瞭にする可能
性を有する;非結合分子に由来するこれらのシグナルは、当該技術分野で充分知
られているパルスフィールドグラジエント技術を用いて排除されうる。これらの
技術および市販されているNMRチューブサンプルチェンジャーの使用により、
多数の化合物の自動スクリーニングが容易になる。
【0124】 C.多数の組み合わせ合成の産物の評価 上記(B)に記載されるスクリーニングプロセスは、組み合わせ有機合成法を
利用することを意図しうる。かかる方法は、多数の化学的に関連する化合物を含
む各ファミリーに関して、化合物の全ファミリーを作製するために使用されてい
る。上記のシンプルなアッセイにより、全体の組み合わせ合成の産物が、同時に
スクリーニングされうる。結合が示されない場合、その化合物のファミリーのい
かなるメンバーにおいてもさらに注意を払う必要はない。単純な一次元の同核1 H NMR実験は、アイソトープ標識を必要とすることなく結合を評価するのに
充分である。同核または異核(15Nおよび/または13Cアイソトープ標識による
)の二次元NMR実験もまた使用されうる。
【0125】
【表2】
【0126】 本発明を、特にその好ましい態様に関して示し、記載してきたが、形式および
細部における種々の変化が、付随する特許請求の範囲に規定される本発明の意図
および範囲を逸脱することなくなされ得ることが当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、4,3疎水性ヘプタドリピート(heptad repeats)(
標識されたヘプタドリピート1およびヘプタドリピート2、それぞれN−ぺプチ
ド領域およびC−ぺプチド領域ともいう)を含む2つの領域内に位置する、N3
6(SGIVQQQNNLLRAIEQQHLLQLTVWGIKQLQARI
L)(配列番号:13)およびC34(WMEWDREINNYTSLIHSL
IEESQNQQEKNEQELL)(配列番号:14)のぺプチドを示すHI
V−1 gp41の概略図である。C34における下線部の残基は、本研究にお
いて変異させた。これらの残基のうち3個(W、WおよびI)は、N36くぼみ
内に突出するが、これらの残基のうちの2個(MおよびR)は突出しない。FP
は融合ぺプチド;S−Sはジスルフィド結合;TMは膜貫通領域;INTRAは
ウイルス内領域。
【図2】 図2は、C34阻害能力とN36/C34安定性との相関を示すグラフである
。Trp631 位における置換を有するC34ぺプチドバリアントを、ウイルス侵
入(黒丸)および細胞−細胞融合(白丸)の阻害について試験した。対応するN
36/C34複合体のTm(融解温度)に対してIC50値を対数スケールでプロッ
トする。置換の態様(identity)と化学構造を、対応するデータ点の下
に示す。疎水性のかさ高さが増加する順では、置換は:グリシン(Gly)、ア
ラニン(Ala)、L−α−アミノ酪酸(Abu)、バリン(Val)、ロイシ
ン(Leu)、フェニルアラニン(Phe)、野生型残基トリプトファン(Tr
p)、およびL−β−(1−ナフチル)アラニン(Nal)であった。エラーバ
ーは、3回の実験の標準誤差を示す。
【図3】 図3は、D−ぺプチドのアミノ酸配列(配列番号:34、38、15、35、
16、17、36、40、41、18および19)ならびにコンセンサス配列(
配列番号:12)を示す。図示のように、各ぺプチドは、N−末端でGAにより
、C−末端でAAによりフランキングされており、N−末端にブロッキング基:
(アセチル−GA−C−十量体−C−AA−CONH2 ;これはac−GA−C
−十量体−C−AA−amと表すこともできる)を有する。アミノ酸残基を表す
ために使用する1文字記号は、以下の通りである:G=グリシン;A=アラニン
;C=システイン;D=アスパラギン酸;L=ロイシン;K=リジン;E=グル
タミン酸;W=トリプトファン;F=フェニルアラニン;R=アルギニン;H=
ヒスチジン;S=セリン;およびQ=グルタミン。
【図4】 図4は、D−IQN17標的による鏡像ファージのディスプレイの概略図であ
る。ここで、(1)ファージ選択のラウンドは、D−IQN17へのバインダー
(binders)を同定するために行われる;(2)個々のクローンを配列決
定する;(3)結合特異性を、ファージがD−IQN17のgp41領域に結合
するか否かを調べることにより評価する;(4)結合するファージ配列であるD
−ぺプチドを作製する;および(5)D−ぺプチドの抗HIV活性をアッセイす
る。
【図5】 図5Aおよび5Bは、D10pep1に結合したIQN17の結晶構造を示す
。IQN17は、連続的な三本鎖コイルであることを示し、D10pep1の保
存アミノ酸残基の結合は、HIV gp41由来の17残基により形成される、
IQN17の疎水性ポケットに対して存在することを示す。図5Aは、HIV−
1 gp41残基に融合したGCN4−pIQ I残基からなるIQN17、およ
びIQN17の疎水性ポケット(囲まれた領域内)へのD10pep1の結合を
示す。該ポケットに結合するD−ぺプチドは、枝分かれした伸長部により表わさ
れる(すなわち、棒状に示した部分)。図5Bは、囲まれた領域の拡大であり、
ポケット内に詰められた保存残基(Trp、Trp Leu)およびグルタミン
酸(Glu)を示す。
【図6】 図6Aおよび6Bは、本明細書に記載のD−ぺプチドを用いたシンシチウムア
ッセイの結果を示す。図6Aはシンシチウムアッセイの結果のグラフである。図
6Bは、1回またはそれ以上の実験の結果を伴うD−ぺプチドのIC50データを
表わす。
【図7】 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標
を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−p
Q I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV
gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(
ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基
0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対
称により形成される。
【図8】 図8Aおよび8Bは、D−ぺプチドによるHIV−1膜融合の阻害の評価の結
果を示す。図8AはD−ぺプチドを用いないシンシチウムアッセイの結果を示す
。図8BはD−ぺプチドを用いるシンシチウムアッセイの結果を示す。
【図9】 図9A〜9Cは、IQN17/D−ぺプチド複合体の芳香族残基を特性付けす
1 H NMR実験の結果を示す。図9Aは、D10pep1a(上)、IQN
17(中央)およびD10pep1aとIQN17の1:1複合体(下)の1D
−NMRスペクトルを示す。x軸は下の(C)と同じである。Trp−571の
4個のスカラー結合(scalar−coupled)芳香環プロトンに割り当
てられた高磁場側ピークを示す。下部痕跡のマークしていない(unmarke
d)高磁場側ピークは、割り当てられていないHα共鳴に対応する。図9Bは、
IQN17と(標識された)各D−ぺプチドとの1:1複合体の1Dスペクトル
を示す。同じ4個のプロトンがいくつかのスペクトルにより示されている。図9
Cは、IQN17/D10pep1a複合体の2D−NMR TOCSYスペク
トルを示す。これらの4個のトリプトファンプロトンに関連する交差ピーク(c
ross−peak)を、特定の割当(specific assignmen
t)とともに示す。TOCSY混合時間は42msであった。
【図10】 図10は、X線結晶学により測定した、IQN17との複合体における場合の
D10pep1ぺプチドの立体配座を示す。
【図11】 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファ
イルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はG
CN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残
基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合
した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三
量体全体を表わす。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年1月24日(2000.1.24)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正内容】
【0017】 さらに、12アミノ酸残基ぺプチドの内の10アミノ酸残基「コア」(システ
イン残基により両端がフランキングされている十量体)、ならびに該十量体の部
分、改変体(modification) およびバリアント(variants)も膜融合お
よびHIVの細胞への侵入を阻害するのに有用である。これらのぺプチドのバリ
アント、部分および改変体もインヒビターとして有用である。本発明にさらに詳
細に記載しているように、コンセンサス配列(例えば、WXWL(配列番号:2
3)、EWXWL(配列番号:24)、CXXXXXEWXWLC(配列番号:
63)またはそれらの部分)を含有するD−ぺプチドは、N−ヘリックス超らせ
んを結合することが示されており、膜融合およびHIVの細胞への侵入を阻害す
るのに有用である。鏡像異性ぺプチド(D−ぺプチド)は、プロテアーゼなどの
酵素に対する効率的な基質として働かず、したがってL−ぺプチドよりもタンパ
ク質分解に対して耐性があり;それらはL−ぺプチドより免疫原性が低い。本発
明のD−ぺプチドの具体的態様は: である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0097
【補正方法】変更
【補正内容】
【0097】 D−ペプチドの配列は次の通りである(全てのアミノ酸はD−エナンチオマー
であり、2つ目のキラル中心を含むIleとThrについては、天然に存在する
アミノ酸残基の正確な鏡像を使用した):
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0100
【補正方法】変更
【補正内容】
【0100】 研究のために合成したN末端に付加した更なるD−Lys残基を有するD−ペ
プチドは、ペプチドの名称に「a」を付して示され、下記: を含む。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0102
【補正方法】変更
【補正内容】
【0102】 これらのペプチド間に高度に保存されたコンセンサス配列が存在することはた
だちに明らかである。図3に示される12アミノ酸ペプチドは、CXXXXXE
WXWLC(配列番号:63)で表され得、ここで、複数のペプチドで共通する
アミノ酸を示し、Xは、ペプチド間で保存されていないアミノ酸残基を示す。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年9月12日(2000.9.12)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12Q 1/02 G01N 33/15 Z G01N 33/15 33/50 Z 33/50 A61K 37/02 (31)優先権主張番号 60/101,058 (32)優先日 平成10年9月18日(1998.9.18) (33)優先権主張国 米国(US) (31)優先権主張番号 60/132,295 (32)優先日 平成11年5月3日(1999.5.3) (33)優先権主張国 米国(US) (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),CA,JP,U S (72)発明者 チャン,デイビッド,シー. アメリカ合衆国 マサチューセッツ 02146 ブルックリン,ケント ストリー ト 205,アパートメント 38 (72)発明者 マラシュケビッチ,ウラジミール アメリカ合衆国 マサチューセッツ 02144 サマビル,ハンコック ストリー ト 17 (72)発明者 カー,ピーター,エイ. アメリカ合衆国 マサチューセッツ 02139 ケンブリッジ,プットナム アベ ニュー 463,アパートメント 1 (72)発明者 キム,ピーター,エス. アメリカ合衆国 マサチューセッツ 02420 レキシントン,バスキン ロード 48 Fターム(参考) 2G045 AA40 DA36 GC15 4B063 QA01 QA20 QQ08 QQ79 QR48 QR66 QS33 QX02 4C076 AA01 BB29 BB30 CC35 FF68 4C084 AA02 AA06 BA18 CA59 MA31 MA56 MA60 NA10 NA14 ZB33 ZC78 4H045 AA10 AA30 BA17 CA01 EA29 EA50 EA53 FA41

Claims (97)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可溶性の三量体型のコイルドコイルと、HIV gp41の
    N−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基を含むのに充
    分なHIV gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなるペプチド。
  2. 【請求項2】 D−ペプチドである請求項1記載のペプチド。
  3. 【請求項3】 コイルドコイルが: (a)GCN4−pIQ Iのコイルドコイル; (b)GCN4−pIIのコイルドコイル; (c)モロニーマウス白血病ウイルスのコイルドコイル;および (d)ABCヘテロ三量体のコイルドコイル、 からなる群より選ばれるものである請求項2記載のD−ペプチド。
  4. 【請求項4】 コイルドコイルのアミノ酸配列が: RMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKK(配列番号:25
    ) である請求項3記載のD−ペプチド。
  5. 【請求項5】 HIV gp41のNペプチド領域の充分な部分が、配列:
    LLQLTVWGIKQLQARIL(配列番号:20) を含んでなるものである請求項2記載のD−ペプチド。
  6. 【請求項6】 IQN17(配列番号:2)である請求項5記載のD−ペプ
    チド。
  7. 【請求項7】 配列番号:25および17個のアミノ酸残基を含んでなる配
    列を含んでなり、該17個のアミノ酸残基が、配列:LLXLTVWGXKXL
    QXRXX(配列番号:42)(式中、L、T、V、W、G、K、QおよびRは
    一文字アミノ酸コードにより表わされたアミノ酸残基であり、XはいずれかのD
    −アミノ酸残基である)を含んでなるものである、HIV gp41疎水性ポケ
    ットの可溶性の三量体ペプチドモデルであるD−ペプチド。
  8. 【請求項8】 17個のアミノ酸残基を含んでなる配列が、配列番号:20
    ;配列番号:26;配列番号:27および配列番号:42からなる群より選ばれ
    るものである請求項7記載のD−ペプチド。
  9. 【請求項9】 (y’) HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合す
    る(a)〜(x’)の配列の変異体、 (式中、C−末端のac−およびN−末端の−amは任意である) からなる群より選ばれるD−ペプチド。
  10. 【請求項10】 L−ペプチドである請求項1記載のペプチド。
  11. 【請求項11】 可溶性の三量体のコイルドコイルが: (a)GCN4−pIQ Iのコイルドコイル; (b)GCN4−pIIのコイルドコイル; (c)モロニーマウス白血病ウイルスのコイルドコイル;および (d)ABCヘテロ三量体のコイルドコイル、 からなる群より選ばれるものである請求項10記載のL−ペプチド。
  12. 【請求項12】 HIV gp41のNペプチド領域の充分な部分が、配列
    :LLQLTVWGIKQLQARIL(配列番号:20) を含んでなるものである請求項10記載のL−ペプチド。
  13. 【請求項13】 IQN17(配列番号:2)である請求項12記載のL−
    ペプチド。
  14. 【請求項14】 配列番号:25および17個のアミノ酸残基を含んでなる
    配列を含んでなり、該17個のアミノ酸残基が、配列:LLXLTVWGXKX
    LQXRXX(式中、L、T、V、W、G、K、QおよびRは一文字アミノ酸コ
    ードにより表わされたアミノ酸残基であり、XはいずれかのD−アミノ酸残基で
    ある)を含んでなるものである、HIV gp1疎水性ポケットの可溶性の三量
    体モデルであるL−ペプチド。
  15. 【請求項15】 17個のアミノ酸残基を含んでなる配列が、配列番号:2
    0;配列番号:26;および配列番号:27からなる群より選ばれるものである
    請求項14記載のL−ペプチド。
  16. 【請求項16】 (a)C34ペプチドとN36ペプチドとの間での複合体
    の形成に適する条件下に、C34ペプチドおよびN36ペプチドと、C34ペプ
    チドとN36ペプチドとの間での複合体の形成を妨げるその能力についての評価
    対象の候補薬物とを合わせ、それにより被検試料を形成する工程;ならびに (b)C34ペプチドとN36ペプチドとの間での複合体の形成が阻害されるか
    否かを決定する工程、 を含み、複合体の形成が阻害される場合、候補薬物は複合体の形成を妨げる薬物
    であり、それにより、複合体の形成を妨げる薬物が同定される、C34ペプチド
    とN36ペプチドとの間での複合体の形成を妨げる薬物の同定方法。
  17. 【請求項17】 (a)において被検試料が形成される条件下と同じ条件下
    に、C34ペプチドとN36ペプチドとを合せることにより対照試料を形成し;
    C34ペプチドとN36ペプチドとの間での複合体の形成を測定し、かつ被検試
    料において複合体が形成される程度を対照試料において複合体が形成される程度
    と比較し、複合体が対照試料におけるよりも被検試料においてより低い程度で形
    成される場合、候補薬物は複合体の形成を妨げる薬物であり、それにより、複合
    体の形成を妨げる薬物を同定する、請求項16記載の方法。
  18. 【請求項18】 C34ペプチドとN36ペプチドを各々1組のドナー−ア
    クセプター分子のメンバーにより標識し、かつC34とN36との間での複合体
    の形成が生ずる程度を、アクセプター分子から生ずる発光の程度を測定すること
    により評価し、発光が候補薬物の非存在下よりも候補薬物の存在下においてより
    低い程度で生ずる場合、候補薬物はC34ペプチドとN36ペプチドとの間での
    複合体の形成を妨げる薬物である、請求項16記載の方法。
  19. 【請求項19】 C34ペプチドとN36ペプチドを各々1組またはドナー
    −アクセプター分子のメンバーにより標識し、かつ発光が生ずる程度を被検試料
    においておよび対照試料において評価し、発光が対照試料におけるよりも被検試
    料においてより少ない場合、候補薬物はC34プルプチド(prptide)と
    N36ペプチドとの間での複合体の形成を阻害する薬物である、請求項17記載
    の方法。
  20. 【請求項20】 複合体の形成を妨げる薬物が細胞へのHIV侵入のインヒ
    ビターであるか否かを、細胞/細胞融合または細胞のHIV感染に対する薬物の
    影響が薬物の非存在下におけるよりも薬物の存在下においてより低いことを評価
    することにより評価する工程をさらに含み、該薬物は細胞へのHIV侵入のイン
    ヒビターである、請求項16記載の方法。
  21. 【請求項21】 タンパク質の、三量体型のコイルドコイル領域と、HIV
    gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの一部または全部を形成するアミノ
    酸残基を含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んで
    なるペプチドを個体に導入する工程を含み、かつ該ペプチドは製薬学的に許容さ
    れ得る担体中に存在するものである、個体における免疫応答の顕現方法。
  22. 【請求項22】 筋内、腹腔内、経口、経鼻および経皮からなる群より選択
    される投与経路により個体にペプチドを導入する請求項21記載の方法。
  23. 【請求項23】 コイルドコイルが、GCN4−pIQ I;GCN4−pI
    I;モロニーマウス白血病ウイルスおよびABCヘテロ三量体からなる群より選
    ばれるものである請求項21記載の方法。
  24. 【請求項24】 ペプチドがIQN17である請求項21記載の方法。
  25. 【請求項25】 (1)HIVエンベロープタンパク質gp41サブユニッ
    トを結合し、かつ粘膜表面の細胞へのHIVの侵入を妨げる薬物、および(2)
    担体または基剤を含んでなる組成物を粘膜表面に投与または適用する工程を含む
    、粘膜細胞へのHIVの侵入の妨害方法。
  26. 【請求項26】 薬物がHIVエンベロープタンパク質gp41サブユニッ
    トのN−ヘリックスコイルドコイルの表面上のくぼみを結合する、請求項25記
    載の方法。
  27. 【請求項27】 薬物がgp41の立体配座変化を防ぎまたは減少させ、そ
    れにより、粘膜表面の細胞へのHIVの侵入を妨げる、請求項26記載の方法。
  28. 【請求項28】 組成物が: (a)C34ペプチド; (b)DP178; (c)DP649; (d)T1249; (e)(a)〜(d)の誘導体; (f)HIV gp41の疎水性ポケットに結合するD−ペプチド; (g)(f)の誘導体; (h)(a)〜(g)の2つまたはそれ以上の組み合わせ;および (i)N−ヘリックスコイルドコイルに結合することによりHIV感染力を阻害
    する分子、 からなる群より選ばれる成分を含んでなるものである、請求項25記載の方法。
  29. 【請求項29】 担体または基剤が、フォーム、ゲル、薬物を保持するのに
    充分に粘性のその他の物質、水および緩衝液からなる群より選ばれるものである
    請求項28記載の方法。
  30. 【請求項30】 担体または基剤が膣座剤または直腸座剤である請求項28
    記載の方法。
  31. 【請求項31】 薬物が膣、口または直腸に投与もしくは適用された直後ま
    たは投与もしくは適用された後すぐに、該薬物が担体または基剤から放出される
    、請求項28記載の方法。
  32. 【請求項32】 薬物が膣、口または直腸に投与もしくは適用された後に徐
    々に、または投与もしくは適用された後、特定の期間の後に、該薬物が担体また
    は基剤から放出される、請求項28記載の方法。
  33. 【請求項33】 薬物を、使用の条件下に該薬物の放出が可能となるような
    様式で避妊具の表面上に存在させるか、または避妊具内に組み込む、請求項28
    記載の方法。
  34. 【請求項34】 (e)のD−ペプチドが: (y’) HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合す
    る(a)〜(x’)の配列の変異体、 (式中、C−末端のac−およびN−末端の−amは任意である) からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含んでなるものである、請求項28記載
    の方法。
  35. 【請求項35】 評価対象の化合物または分子を候補インヒビターといい、 (a)N−ヘリックスコイルドコイルくぼみへのD−ペプチドの結合に適する条
    件下に、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するD−ペプチド、N−ヘ
    リックスコイルドコイルくぼみを提示する可溶性モデルである融合タンパク質お
    よび候補インヒビターを合わせ、それにより、被検試料を作製する工程; (b)被検試料におけるN−ヘリックスコイルドコイルくぼみへのD−ペプチド
    の結合の程度を測定する工程;ならびに (c)対照試料におけるN−ヘリックスコイルドコイルくぼみに対する場合と測
    定した結合の程度を比較する工程、ここで、対照試料は候補インヒビターを含ん
    でいないことを除いて被検試料と同じであり、かつ該対照試料は、N−ヘリック
    スコイルドコイルくぼみへのD−ペプチドの結合に適する被検試料と同じ条件下
    に維持される、 を含み、被検試料における結合の程度が対照試料における結合の程度より低い場
    合、候補インヒビターはHIV−1 gp41エンベロープタンパク質のN−ヘ
    リックスコイルドコイルくぼみを結合する化合物または分子である、HIV−1
    gp41エンベロープタンパク質のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結
    合する化合物または分子の同定方法。
  36. 【請求項36】 融合タンパク質がIQN17である請求項35記載の方法
  37. 【請求項37】 D−ペプチドを蛍光性レポーターで標識し、かつ融合タン
    パク質を、蛍光性レポーターに充分に近接した場合に該レポーターからのシグナ
    ルを消去する消光物質で標識し、かつ蛍光性レポーターからのシグナルの検出が
    、候補インヒビターがHIV−1 gp41エンベロープタンパク質のN−ヘリ
    ックスコイルドコイルくぼみを結合する化合物または分子であることを示す、請
    求項35記載の方法。
  38. 【請求項38】 GCN4の、三量体型のコイルドコイル領域と、HIV−
    1 gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなり、gp41のN−ペプチ
    ド領域の部分がHIV−1 gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケット
    の一部または全部を含んでなるか、または含まないものである融合タンパク質。
  39. 【請求項39】 HIV gp41のN−ペプチド領域の部分が、HIVの
    以下の24個のアミノ酸残基:SGIVQQQNNLLRAIEAQQHLLQ
    LTを含んでなるものである、請求項38記載の融合タンパク質。
  40. 【請求項40】 可溶性の三量体型のコイルドコイルと、HIV−1 gp
    41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基を含む
    のに充分なHIV−1 gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなる融合
    タンパク質を個体に導入する工程を含み、該融合タンパク質が製薬学的に許容さ
    れ得る担体中に存在するものである、個体における免疫応答の顕現方法。
  41. 【請求項41】 少なくとも4個のアミノ酸残基を含んでなり、かつコンセ
    ンサス配列WXWL(式中、WはD−トリプトファンを表し、LはD−ロイシン
    を表し、ならびにXはいずれかの残基(moiety)を表わす)を含んでなるD−ペ
    プチド。
  42. 【請求項42】 XがD−アミノ酸残基または修飾D−アミノ酸残基である
    レーム(laim)41記載のD−ペプチド。
  43. 【請求項43】 2〜21個のアミノ酸残基を含んでなる請求項41記載の
    D−ペプチド。
  44. 【請求項44】 EWXWL(式中、EはD−グルタミン酸を表し、WはD
    −トリプトファンを表し、LはD−ロイシンを表し、ならびにXはアミノ酸残基
    、修飾アミノ酸残基またはアミノ酸残基以外の残基を表わす)である少なくとも
    5個のアミノ酸残基を含んでなるD−ペプチド。
  45. 【請求項45】 (y’) HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合す
    る、(a)〜(x’)の配列の変異体、 (式中、C−末端のac−およびN−末端の−amは任意である) からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含んでなるD−ペプチド。
  46. 【請求項46】 (a)(1)HIV gp41のN−ヘリックスコイルド
    コイルくぼみを結合するその能力についての評価対象の候補薬物と;(2)タン
    パク質の、三量体状のコイルドコイル領域と、HIV gp41くぼみを含むの
    に充分なHIV gp41のN−ペプチドの部分とを含んでなる融合タンパク質
    とを、薬物による結合についてHIV gp41くぼみの提示に適する条件下に
    合せる工程;ならびに (b)候補薬物がHIV gp41くぼみを結合するか否かを決定する工程、こ
    こで、結合が生ずる場合、候補薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイル
    ドコイルくぼみを結合する薬物である、 を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬
    物の同定方法。
  47. 【請求項47】 (a)において、HIV gp41のN−ヘリックスコイ
    ルドコイルくぼみを結合するペプチドを候補薬物および融合タンパク質と合わせ
    、かつ(b)において、候補薬物がHIV gp41くぼみを結合するか否かを
    HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するペプチドの
    存在下に測定する、請求項46記載の方法。
  48. 【請求項48】 HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみ
    を結合するペプチドが、 (y’) HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合す
    る、(a)〜(x’)の配列の変異体、 (式中、C−末端のac−およびN−末端の−amは任意である) からなる群より選ばれるものである、請求項42記載の方法。
  49. 【請求項49】 候補薬物を検出可能に標識し、かつHIV gp41くぼ
    みへの候補薬物の結合をHIV gp41くぼみ上の検出可能な標識の存在を検
    出することにより測定する、請求項46記載の方法。
  50. 【請求項50】 融合タンパク質が、GCN4の可溶性の三量体状のコイル
    ドコイル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41の
    N−ペプチドの部分とを含んでなるものである、請求項46記載の方法。
  51. 【請求項51】 融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、I
    QN17のアミノ酸配列が配列番号:2である請求項50記載の方法。
  52. 【請求項52】 (a)(1)薬物による結合が可能であるような様式でH
    IV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを提示する可溶性モデル
    と(2)N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するその能力についての評
    価対象の候補薬物とを合せる工程;ならびに (b)候補薬物が可溶性モデルのN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合す
    るか否かを測定する工程、 を含み、結合が生ずる場合、候補薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイ
    ルドコイルくぼみを結合する薬物である、HIV gp41のN−ヘリックスコ
    イルドコイルくぼみを結合する薬物の同定方法。
  53. 【請求項53】 (a)(1)HIV gp41のN−ヘリックスコイルド
    コイルくぼみを結合し、かつ細胞へのHIV侵入を阻害するその能力についての
    評価対象の候補薬物と、(2)タンパク質の、三量体状のコイルドコイル領域と
    、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチドの
    部分とを含んでなる融合タンパク質とを、薬物による結合についてHIV gp
    41くぼみの提示に適する条件下に合わせる工程; (b)候補薬物がHIV gp41くぼみを結合するか否かを測定する工程、こ
    こで、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみへの候補薬物の
    結合が生ずる場合、該候補薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコ
    イルくぼみを結合する薬物であり、それにより、HIV gp41のN−ヘリッ
    クスコイルドコイルくぼみを結合する薬物を製造する;ならびに (c)(b)において製造された薬物の細胞へのHIV侵入を阻害する能力を評
    価する工程、ここで、薬物が細胞へのHIV侵入を阻害する場合、該薬物は、H
    IV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合し、かつ細胞への
    HIV侵入を阻害する薬物である、 を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合し、か
    つ細胞へのHIV侵入を阻害する薬物の製造方法。
  54. 【請求項54】 (a)(2)の融合タンパク質が、GCN4の、可溶性の
    三量体型のコイルドコイル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なH
    IV gp41のN−ペプチドの部分とを含んでなり、かつ(b)において製造
    された薬物の細胞へのHIV侵入を阻害する能力をシンシチウムアッセイ、感染
    アッセイまたは両方で評価する、請求項53記載の方法。
  55. 【請求項55】 (c)において同定された薬物を、適切な動物モデルにお
    けるインビボ評価により細胞へのHIV侵入を阻害するその能力についてさらに
    評価する、請求項54記載の方法。
  56. 【請求項56】 融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、I
    QN17のアミノ酸配列が配列番号:2である、請求項54記載の方法。
  57. 【請求項57】 (a)可溶性の三量体型のコイルドコイルと(b)HIV
    gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基
    を含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなる融
    合タンパク質を製造する工程を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイル
    ドコイルくぼみの可溶性モデルの製造方法。
  58. 【請求項58】 (a)のタンパク質が、GCN4−pIQ I、GCN4−
    pII、モロニーマウス白血病ウイルスまたはABCヘテロ三量体であり、かつ
    (b)の充分な部分が、配列番号:20を含んでなる部分;配列番号:26を含
    んでなる部分;配列番号:27を含んでなる部分および配列番号:42を含んで
    なる部分からなる群より選ばれるものである、請求項57記載の方法。
  59. 【請求項59】 融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、I
    QN17のアミノ酸配列が配列番号:2である、請求項57記載の方法。
  60. 【請求項60】 (a)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイル
    くぼみの可溶性モデルを製造または得る工程; (b)(1)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合す
    るその能力についての評価対象の候補薬物と(2)HIV gp41のN−ヘリ
    ックスコイルドコイルくぼみの可溶性モデルとを合わせる工程;ならびに (c)候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結
    合するか否かを決定する工程、 を含み、候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを
    結合する場合、候補薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルく
    ぼみを結合する薬物であり、それにより、HIV gp41のN−ヘリックスコ
    イルドコイルくぼみを結合する薬物を製造する、HIV gp41のN−ヘリッ
    クスコイルドコイルくぼみを結合する薬物の製造方法。
  61. 【請求項61】 可溶性モデルが、タンパク質の、三量体状のコイルドコイ
    ル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41のN−ペ
    プチドの部分とを含んでなる融合タンパク質である、請求項60記載の方法。
  62. 【請求項62】 融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、I
    QN17のアミノ酸配列が配列番号:2である、請求項61記載の方法。
  63. 【請求項63】 (a)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイル
    くぼみの可溶性モデルを製造または得る工程; (b)(1)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合す
    るその能力についての評価対象の候補薬物と(2)HIV gp41のN−ヘリ
    ックスコイルドコイルくぼみの可溶性モデルとを合わせる工程; (c)候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結
    合するか否かを決定する工程、ここで、候補薬物がHIV gp41のN−ヘリ
    ックスコイルドコイルくぼみを結合する場合、該候補薬物はHIV gp41の
    N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物であり、それにより、HI
    V gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物を製造する
    、ならびに; (d)(c)において製造した薬物の細胞へのHIV侵入を阻害する能力を評価
    する工程、 を含み、薬物が細胞へのHIV侵入を阻害する場合、薬物はHIV gp41の
    N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合し、かつ細胞へのHIV侵入を阻害
    する薬物である、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結
    合し、かつ細胞へのHIV侵入を阻害する薬物の製造方法。
  64. 【請求項64】 可溶性モデルが、タンパク質の、三量体状のコイルドコイ
    ル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41のN−ペ
    プチドの部分とを含んでなる融合タンパク質である、請求項63記載の方法。
  65. 【請求項65】 融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、I
    QN17のアミノ酸配列が配列番号;2である、請求項64記載の方法。
  66. 【請求項66】 請求項60記載の方法により製造された薬物。
  67. 【請求項67】 請求項61記載の方法により製造された薬物。
  68. 【請求項68】 請求項62記載の方法により製造された薬物。
  69. 【請求項69】 請求項63記載の方法により製造された薬物。
  70. 【請求項70】 請求項64記載の方法により製造された薬物。
  71. 【請求項71】 請求項65記載の方法により製造された薬物。
  72. 【請求項72】 (a)D−掌体(handedness)のIQN17をL−アミノ
    酸ペプチドのファージディスプレイライブラリーと、D−掌体のIQN17への
    該ライブラリーのメンバーの結合に適する条件下に合わせる工程;ならびに (b)D−掌体のIQN17とファージディスプレイライブラリーの1つまたは
    複数のメンバーとの間で結合が生ずるか否かを決定する工程、ここで、結合が生
    ずる場合、D−掌体のHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみ
    に結合するペプチドが同定される、 を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみに結合するペ
    プチドの同定方法。
  73. 【請求項73】 D−掌体のIQN17に結合するファージディスプレイラ
    イブラリーの1つまたは複数のメンバーのアミノ酸配列を決定する工程、ならび
    に決定されたアミノ酸配列を含んでなるD型のペプチドを製造する工程をさらに
    含み、D型のペプチドが天然のL−掌体のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみ
    を結合するものである、請求項72記載の方法。
  74. 【請求項74】 式I 〔式中、AはD−アミノ酸残基または式 (式中、RA1とRA2の一方は、置換もしくは非置換の、アリール、ヘテロアリー
    ル、アリールメチル、ヘテロアリールメチル、ベンゾ縮合アリール、ベンゾ縮合
    ヘテロアリール、ベンゾ縮合アリールメチル、ベンゾ縮合ヘテロアリールメチル
    、シクロアルキルまたはビシクロアルキルであり;かつ他方は水素であり;およ
    びWは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはハロゲン、たとえば、フッ素、
    塩素、臭素またはヨウ素である) のN−置換グリシル残基である; Bはグリシル残基または式 (式中、RB1とRB2の一方は、置換もしくは非置換の、直鎖、分岐もしくは環状
    の、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基またはヘ
    テロアリールアルキル基であり;かつ他方は水素であり;およびXは水素、メチ
    ル、トリフルオロメチルまたはフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素等のハロゲン
    である) のD−アミノ酸もしくはN−置換グリシル残基である; Dは式 (式中、RD1とRD2の一方は、置換もしくは非置換の、アリール、ヘテロアリー
    ル、アリールメチル、ヘテロアリールメチル、ベンゾ縮合アリール、ベンゾ縮合
    ヘテロアリール、ベンゾ縮合アリールメチル;ベンゾ縮合ヘテロアリールメチル
    、シクロアルキルまたはビシクロアルキルであり;かつ他方は水素であり;およ
    びYは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはフッ素、塩素、臭素もしくはヨ
    ウ素等のハロゲンである) のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基である; Eは式 (式中、RE1とRE2の一方は、置換もしくは非置換の、直鎖、分岐もしくは環状
    の、アルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり;かつ他方は水素
    であり;およびZは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはフッ素、塩素、臭
    素もしくはヨウ素等のハロゲンである) のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基である; K、L、MおよびNは各々独立して、アミノ酸残基または2〜約8個のアミノ
    酸残基を含んでなるポリペプチド基である; Fは直接結合または二官能性連結基である;ならびに n、p、q、rおよびsは各々独立して、0または1である〕 の化合物。
  75. 【請求項75】 RA1とRA2の一方およびRD1とRD2の一方が独立して、フ
    ェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基、ナフチルメチル基、
    置換ナフチルメチル基、ベンジル基もしくは置換ベンジル基、または式 (式中、JはO、SまたはNRであり、RはHまたは直鎖、分岐もしくは環状の
    1 〜C6 −アルキルであり;ならびに R1 、R2 、R3 、R4 およびR5 は独立して、水素、ハロゲンおよびアルキル
    からなる群より選ばれるものである) の基である、請求項74記載の化合物。
  76. 【請求項76】 RA1とRD1が両方とも水素である請求項75記載の化合物
  77. 【請求項77】 RB1とRB2の一方が、水素、置換もしくは非置換の、直鎖
    、分岐もしくは環状のC1 〜C4 −アルキル、フェニル、ベンジル、ナフチルま
    たはナフチルメチルである、請求項74記載の化合物。
  78. 【請求項78】 RB1が水素である請求項77記載の化合物。
  79. 【請求項79】 RE1とRE2の一方が、置換もしくは非置換の、直鎖、分岐
    もしくは環状のC1 〜C6 −アルキル基または置換もしくは非置換のフェニル基
    もしくはナフチル基であり、かつ他方が水素である、請求項74記載の化合物。
  80. 【請求項80】 RE1が水素である請求項79記載の化合物。
  81. 【請求項81】 AおよびDが各々D−トリプトファン残基であり、かつE
    がD−ロイシン残基である請求項74記載の化合物。
  82. 【請求項82】 KがD−アミノ酸残基またはアミノ−、カルボキシル−も
    しくはスルフヒドリル置換側鎖を含んでなるN−置換グリシル残基であり、かつ
    Lが2もしくは3個のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシン残基を含んでな
    るポリペプチドである請求項74記載の化合物。
  83. 【請求項83】 Mが2〜約8個のD−アミノ酸残基を含んでなり、該アミ
    ノ酸残基の少なくとも1つがアミノ−、カルボキシ−もしくはスルフヒドリル置
    換側鎖を含んでなるポリペプチド基であり、かつNが1〜約6個のアミノ酸残基
    を含んでなり、該アミノ酸残基の少なくとも1つがリジン残基であるポリペプチ
    ド基である請求項74記載の化合物。
  84. 【請求項84】 Fが約2〜約40原子の長さを有する二価の連結基である
    請求項74記載の化合物。
  85. 【請求項85】 Fが式−Pn −(式中、nは1〜約12の整数であり、か
    つ各Pは独立して、L−もしくはD−アミノ酸もしくはN−置換グリシル残基、
    グリシル残基またはN−置換グリシル残基である)のポリペプチド連結基である
    請求項84記載の化合物。
  86. 【請求項86】 Fは置換もしくは非置換のC4 〜C40−アルキレン基また
    は1もしくはそれ以上の箇所においてヘテロ原子、フェニレン基もしくはヘテロ
    アリーレン基により介在されているC4 〜C40−アルキレン基である請求項84
    記載の化合物。
  87. 【請求項87】 Fが1〜約10個のグリコシド基を含んでなる多糖類基で
    ある請求項84記載の化合物。
  88. 【請求項88】 (a)HIV gp41疎水性ポケットの可溶性の三量体
    ペプチドモデルの結晶を得る工程; (b)(a)において得られた結晶を用いてX線回折研究によりペプチドモデル
    の原子座標を得る工程; (c)(b)において得られた原子座標を用いてHIV gp41のN−ヘリッ
    クスコイルドコイルポケットを明確化する工程; (d)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに適合する分
    子または化合物を同定する工程; (e)(d)において同定された分子または化合物を得る工程;ならびに (f)(e)において得られた分子または化合物をHIV gp41のN−ヘリ
    ックスコイルドコイルポケットと接触させて、分子または化合物のHIV gp
    41のポケットに適合する能力を評価する工程、 を含み、分子または化合物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイル
    ポケットに適合する場合、該分子または化合物は該ポケットに適合する薬物であ
    り、それにより、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに
    適合する薬物を製造する、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポ
    ケットに適合する薬物の製造方法。
  89. 【請求項89】 可溶性の三量体ペプチド分子が、可溶性の三量体型のコイ
    ルドコイルと、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを
    形成するアミノ酸残基を含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチド領域の
    部分とを含んでなるものである、請求項88記載の方法。
  90. 【請求項90】 (f)において、分子または化合物をIQN17、HIV
    gp41のN−ヘリックスまたはHIVポケットを含んでなるポリペプチドと
    接触させることにより、該分子または化合物をHIV gp41のN−ヘリック
    スコイルドコイルポケットと接触させる、請求項89記載の方法。
  91. 【請求項91】 可溶性モデルがIQN17である請求項89記載の方法。
  92. 【請求項92】 (a)において得られた結晶が空間群C222のIQN1
    7の結晶である請求項88記載の方法。
  93. 【請求項93】 (a)IQN17の原子座標を得る工程; (b)(a)において得られた原子座標を用いてHIV gp41のN−ヘリッ
    クスコイルドコイルポケットを明確化する工程; (c)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに適合する分
    子または化合物を同定する工程; (d)(c)において同定された分子または化合物を得る工程;ならびに (e)(d)において得られた分子または化合物をHIV gp41のN−ヘリ
    ックスコイルドコイルポケットと接触させて、分子または化合物のHIV gp
    41のポケットに適合する能力を評価する工程、 を含み、分子または化合物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイル
    ポケットに適合する場合、該分子または化合物は該ポケットに適合する薬物であ
    り、それにより、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに
    適合する薬物を製造する、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポ
    ケットを結合する薬物の製造方法。
  94. 【請求項94】 原子座標が図11A〜11Vに表わされるPDBファイル
    における原子座標である請求項93記載の方法。
  95. 【請求項95】 (a)D−掌体のIQN17をリガンドの生物学的にコー
    ドされたライブラリーと、D−掌体のIQN17への該ライブラリーのメンバー
    の結合に適する条件下に合わせる工程;ならびに (b)D−掌体のIQN17と生物学的にコードされたライブラリーの1つまた
    は複数のメンバーとの間で結合が生ずるか否かを測定する工程、ここで、結合が
    生ずる場合、D−掌体のHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼ
    みに結合するリガンドが同定される、 を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみに結合する分
    子の同定方法。
  96. 【請求項96】 D−掌体のIQN17に結合する生物学的にコードされた
    ライブラリーの1つまたは複数のメンバーの配列を決定する工程、ならびに決定
    された配列を含んでなる、生物学的にコードされたリガンドの鏡像掌体のリガン
    ドを製造する工程をさらに含む請求項95記載の方法。
  97. 【請求項97】 生物学的にコードされたライブラリーがファージディスプ
    レイライブラリー、DNAライブラリー、RNAライブラリーおよび生物学的に
    コードされたペプチドライブラリーからなる群より選ばれるものである請求項9
    5記載の方法。
JP2000562395A 1998-07-30 1999-07-30 Hiv膜融合のインヒビター Expired - Fee Related JP5101764B2 (ja)

Applications Claiming Priority (9)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US9467698P 1998-07-30 1998-07-30
US10026598P 1998-09-14 1998-09-14
US10105898P 1998-09-18 1998-09-18
US13229599P 1999-05-03 1999-05-03
US60/101,058 1999-05-03
US60/100,265 1999-05-03
US60/094,676 1999-05-03
US60/132,295 1999-05-03
PCT/US1999/017351 WO2000006599A1 (en) 1998-07-30 1999-07-30 Inhibitors of hiv membrane fusion

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010045882A Division JP2010180217A (ja) 1998-07-30 2010-03-02 Hiv膜融合のインヒビター

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2002521490A true JP2002521490A (ja) 2002-07-16
JP2002521490A5 JP2002521490A5 (ja) 2006-09-14
JP5101764B2 JP5101764B2 (ja) 2012-12-19

Family

ID=27492743

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000562395A Expired - Fee Related JP5101764B2 (ja) 1998-07-30 1999-07-30 Hiv膜融合のインヒビター
JP2010045882A Pending JP2010180217A (ja) 1998-07-30 2010-03-02 Hiv膜融合のインヒビター

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010045882A Pending JP2010180217A (ja) 1998-07-30 2010-03-02 Hiv膜融合のインヒビター

Country Status (6)

Country Link
EP (1) EP1100818B1 (ja)
JP (2) JP5101764B2 (ja)
KR (1) KR20010099605A (ja)
AU (1) AU770482B2 (ja)
CA (1) CA2338022C (ja)
WO (1) WO2000006599A1 (ja)

Families Citing this family (17)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6150088A (en) 1997-04-17 2000-11-21 Whitehead Institute For Biomedical Research Core structure of gp41 from the HIV envelope glycoprotein
US6818740B1 (en) 1997-04-17 2004-11-16 Whitehead Institute For Biomedical Research Inhibitors of HIV membrane fusion
US6841657B2 (en) 1997-04-17 2005-01-11 Whitehead Institute For Biomedical Research Inhibitors of HIV membrane fusion
US6747126B1 (en) 1998-07-30 2004-06-08 Whitehead Institute For Biomedical Research Peptide inhibitors of HIV entry
US7960504B2 (en) 1998-07-30 2011-06-14 Whitehead Institute For Biomedical Research Inhibitors of HIV membrane fusion
JP4925540B2 (ja) 1999-12-16 2012-04-25 ホワイトヘッド インスチチュート フォアー バイオメディカル リサーチ 5−ヘリックスタンパク質
NZ520754A (en) 2000-02-10 2004-02-27 Panacos Pharmaceuticals Inc Identifying compounds that disrupt formation of critical gp41 six-helix bundle and conformations necessary for HIV entry thereby blocking virus entry to the cell
US6664230B1 (en) * 2000-08-24 2003-12-16 The Regents Of The University Of California Orally administered peptides to ameliorate atherosclerosis
CA2423004C (en) * 2000-09-22 2012-09-11 Whitehead Institute For Biomedical Research Peptide inhibitors of hiv entry
KR100447943B1 (ko) * 2000-11-06 2004-09-08 한국과학기술연구원 Hiv의 감염 억제 펩타이드
CN1100564C (zh) * 2001-08-29 2003-02-05 周根发 用于治疗hiv感染的药物、其组合物及其用途
WO2003027255A2 (en) * 2001-09-27 2003-04-03 Tibotec Pharmaceuticals Ltd. Anti-fusion assay
WO2003029284A1 (fr) * 2001-09-27 2003-04-10 Nobutaka Fujii Agent anti-vih
AU2002360673A1 (en) * 2001-12-17 2003-06-30 The Government Of The Usa As Represented By The Secretary Of The Dept. Of Health And Human Services Gp41 inhibitor
US7811577B2 (en) 2004-06-01 2010-10-12 Merck Sharp & Dohme Corp. Covalently stabilized chimeric coiled-coil HIV gp41 N-peptides with improved antiviral activity
US20100280268A1 (en) * 2006-04-06 2010-11-04 Dams Gery Karel Julia Homogeneous time resolved fluorescence based test system
CN104203276A (zh) * 2012-03-20 2014-12-10 默沙东公司 Hiv-1 gp41前发夹中间物的稳定肽模拟物

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
DE69326069T2 (de) * 1992-07-20 2000-03-23 Univ Durham Zusammensetzungen die die hiv replikation inhibieren

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6009045931, Cell, 19991001, Vol.99, p.103−115 *
JPN6009045932, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 1997, Vol.94, p.13426−13430 *
JPN6009045933, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 1997, Vol.94, p.6065−6069 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP5101764B2 (ja) 2012-12-19
CA2338022A1 (en) 2000-02-10
AU770482B2 (en) 2004-02-19
AU5788601A (en) 2001-07-09
EP1100818B1 (en) 2013-01-02
KR20010099605A (ko) 2001-11-09
CA2338022C (en) 2013-05-28
WO2000006599A8 (en) 2001-12-06
WO2000006599A1 (en) 2000-02-10
EP1100818A1 (en) 2001-05-23
JP2010180217A (ja) 2010-08-19

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6841657B2 (en) Inhibitors of HIV membrane fusion
JP2010180217A (ja) Hiv膜融合のインヒビター
Kieffer et al. Two distinct modes of ESCRT-III recognition are required for VPS4 functions in lysosomal protein targeting and HIV-1 budding
Geyer et al. Structure of the anchor-domain of myristoylated and non-myristoylated HIV-1 Nef protein
Eckert et al. Inhibiting HIV-1 entry: discovery of D-peptide inhibitors that target the gp41 coiled-coil pocket
RU2745572C2 (ru) Модуляция специфичности структурированных белков
US6506554B1 (en) Core structure of gp41 from the HIV envelope glycoprotein
JP6265583B2 (ja) 生理活性アルファベータペプチドを作製する方法
US6818740B1 (en) Inhibitors of HIV membrane fusion
WO1991018980A1 (en) Compositions and methods for identifying biologically active molecules
US20100278853A1 (en) Constrained hiv v3 loop peptides as novel immunogens and receptor antagonists
US7960504B2 (en) Inhibitors of HIV membrane fusion
Du et al. Structural and immunological characterisation of heteroclitic peptide analogues corresponding to the 600–612 region of the HIV envelope gp41 glycoprotein
AU6052800A (en) Novel pyrrhocoricin-derived peptides, and methods of use thereof
US11186614B2 (en) Anti-HIV peptides
Meeuwsen et al. Cutting Edge: Unconventional CD8+ T Cell Recognition of a Naturally Occurring HLA-A* 02: 01–Restricted 20mer Epitope
AU2004200037B2 (en) Inhibitors of HIV membrane fusion
US20010043931A1 (en) Human respiratory syncytial virus
US11692010B2 (en) Compounds that bind to human immunodeficiency virus rev response element
Cai et al. Peptides and peptidomimetics as tools to probe protein-protein interactions–disruption of HIV-1 gp41 fusion core and fusion inhibitor design
EP1758924B1 (en) Peptides antagonists for inhibiting heat shock protein (hsp 16.3) of mycobacterium tuberculosis
JP2001525335A (ja) 骨格環状化ペプチド類似体による核への輸送の阻害
JP2004528011A (ja) タンパク質フラグメントの工作キメラ体およびその使用方法
Hajduczki Engineering Soluble Membrane Proteins and Improved-Affinity Ligands by Phage Display
JP2000157268A (ja) Hiv―1o群の検出用のペプチド

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060724

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060724

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090903

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20091202

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20091209

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20091221

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20100104

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20100202

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20100209

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100302

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100413

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20100708

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20100715

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20100812

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20100819

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20100910

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20100917

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20101013

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110125

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20110422

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20110502

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20110524

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20110531

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20110623

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20110630

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110725

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20120321

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120720

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20120723

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20120814

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120903

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120927

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151005

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees