JP2010180217A - Hiv膜融合のインヒビター - Google Patents

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Abstract

【課題】HIV膜融合のインヒビターを提供すること。
【解決手段】少なくとも4個のアミノ酸残基を含んでなり、かつコンセンサス配列WXWL〔式中、WはD−トリプトファンを表し、LはD−ロイシンを表し、ならびにXは任意の残基(moiety)を表す〕を含んでなり、可溶性の非凝集性三量体ペプチドのポケットに結合するD−ペプチドであって、該可溶性の非凝集性三量体ペプチドは、可溶性の三量体型のコイルドコイルと、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基を含むのに充分なHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの部分とを含み、該可溶性の非凝集性三量体ペプチドが、疎水性ポケットが空であり、リガンドによる結合が可能となるように疎水性ポケットを提示する、D−ペプチド。
【選択図】なし

Description

本発明は、HIV膜融合のインヒビターに関する。
関連出願
本出願は、1997年4月17日に提出された、HIVエンベロープ糖タンパク質由来のgp41のコア構造と題するデービッド シー.チャン(David C.Chan)、デボラ ファス(Deborah Fass)、ミン ルー(Min Lu)、ジェイムス エム.バーガー(James M.Berger)およびペーター エス.キム(Peter S.Kim)による米国仮出願第60/043,280号および1998年4月17日に提出された、HIVエンベロープ糖タンパク質由来のgp41のコア構造と題するデービッド シー.チャン、デボラ ファス、ミン ルー、ジェイムス エム.バーガーおよびペーター エス.キムによる米国出願第09/062,241号に関する。本出願は、1998年7月30日に提出された、HIV膜融合のインヒビターと題するデービッド シー.チャン、デブラ エム.アーゴット(Debra M.Ehrgott)およびペーター エス.キムによる米国仮出願第60/094,676号;1998年9月14日に提出された、HIV膜融合のインヒビターと題するデービッド シー.チャン、デブラ エム.アーゴットおよびペーター エス.キムによる米国仮出願第60/100,265号および1998年9月18日に提出された、HIV膜融合のインヒビターと題するデービッド シー.チャン、デブラ エム.アーゴットおよびペーター エス.キムによる米国仮出願第60/101,058号;ならびに1999年5月3日に提出された、デブラ エム.アーゴット、デービッド シー.チャン、ブラジミール マラシュケヴィッチ(Vladimir Malashkevich)およびペーター エス.キムによる米国仮出願第60/132,295号の利益を主張するものである。これらの参照された出願の全ての教示は、参照により本明細書に取り込まれる。
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所交付番号P01 GM56552により、全部または一部支援された。米国政府は、本発明において、一定の権利を有する。
発明の背景
ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV−1)由来のタンパク質の構造研究は、抗レトロウイルス薬物の開発に必須であった。構造に基づく創薬は、臨床用途におけるHIV−1薬物の2つのクラスである逆転写酵素インヒビターとプロテアーゼインヒビターに関して、最も熱心であった。HIV侵入に対して、構造に基づく創薬を行ないうることも有用であろう。
本発明は、HIV膜融合のインヒビターを提供することを課題とする。
即ち、本発明の要旨は、
〔1〕少なくとも4個のアミノ酸残基を含んでなり、かつコンセンサス配列WXWL〔式中、WはD−トリプトファンを表し、LはD−ロイシンを表し、ならびにXは任意の残基(moiety)を表す〕を含んでなり、可溶性の非凝集性三量体ペプチドのポケットに結合するD−ペプチドであって、該可溶性の非凝集性三量体ペプチドは、可溶性の三量体型のコイルドコイルと、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基を含むのに充分なHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの部分とを含み、該可溶性の非凝集性三量体ペプチドが、疎水性ポケットが空であり、リガンドによる結合が可能となるように疎水性ポケットを提示する、D−ペプチド、
〔2〕XがD−アミノ酸残基または修飾D−アミノ酸残基である〔1〕記載のD−ペプチド、
〔3〕4〜21個のアミノ酸残基を含んでなる〔1〕または〔2〕記載のD−ペプチド、
〔4〕EWXWL(式中、EはD−グルタミン酸を表し、WはD−トリプトファンを表し、LはD−ロイシンを表し、ならびにXはアミノ酸残基または修飾アミノ酸残基を表す)である少なくとも5個のアミノ酸残基を含んでなり、該可溶性の非凝集性三量体ペプチドのポケットに結合する〔1〕記載のD−ペプチド、
〔5〕


からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含んでなる〔1〕または〔4〕記載のD−ペプチド、
〔6〕粘膜細胞へのHIVの侵入の妨害方法に使用される医薬の製造のための、〔1〕〜〔5〕いずれか1つに記載のD−ペプチドおよび担体または基剤を含んでなる薬物の使用、
〔7〕担体または基剤が、フォーム、ゲル、薬物を保持するのに充分に粘性のその他の物質、水および緩衝液からなる群より選ばれるものである〔6〕記載の使用、
〔8〕担体または基剤が膣坐剤または直腸坐剤である〔6〕または〔7〕記載の使用、
〔9〕ペプチドが膣、口または直腸に投与もしくは適用された直後または投与もしくは適用された後すぐに、該ペプチドが担体または基剤から放出される、〔6〕〜〔8〕いずれか1つに記載の使用、
〔10〕ペプチドが膣、口または直腸に投与もしくは適用された後に徐々に、または投与もしくは適用された後の所定の期間の後に、該ペプチドが担体または基剤から放出される、〔6〕〜〔8〕いずれか1つに記載の使用、
〔11〕薬物を、使用の条件下に該薬物の放出が可能となるような様式で避妊具の表面上に存在させるか、または避妊具内に組み込む、〔6〕記載の使用、
〔12〕薬物がgp41の立体配座変化を防ぎまたは減少させ、それにより、粘膜表面の細胞へのHIVの侵入を妨げる、〔6〕〜〔11〕いずれか1つに記載の使用
に関する。
本発明により、HIV膜融合のインヒビターが提供される。
図1は、4,3疎水性ヘプタドリピート(heptad repeats)(標識されたヘプタドリピート1およびヘプタドリピート2、それぞれN−ぺプチド領域およびC−ぺプチド領域ともいう)を含む2つの領域内に位置する、N36(SGIVQQQNNLLRAIEQQHLLQLTVWGIKQLQARIL)(配列番号:13)およびC34(WMEWDREINNYTSLIHSLIEESQNQQEKNEQELL)(配列番号:14)のぺプチドを示すHIV−1 gp41の概略図である。C34における下線部の残基は、本研究において変異させた。これらの残基のうち3個(W、WおよびI)は、N36くぼみ内に突出するが、これらの残基のうちの2個(MおよびR)は突出しない。FPは融合ぺプチド;S−Sはジスルフィド結合;TMは膜貫通領域;INTRAはウイルス内領域。 図2は、C34阻害能力とN36/C34安定性との相関を示すグラフである。Trp631 位における置換を有するC34ぺプチドバリアントを、ウイルス侵入(黒丸)および細胞−細胞融合(白丸)の阻害について試験した。対応するN36/C34複合体のTm(融解温度)に対してIC50値を対数スケールでプロットする。置換の態様(identity)と化学構造を、対応するデータ点の下に示す。疎水性のかさ高さが増加する順では、置換は:グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、L−α−アミノ酪酸(Abu)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、フェニルアラニン(Phe)、野生型残基トリプトファン(Trp)、およびL−β−(1−ナフチル)アラニン(Nal)であった。エラーバーは、3回の実験の標準誤差を示す。 図3は、D−ぺプチドのアミノ酸配列(配列番号:34、38、15、35、16、17、36、40、41、18および19)ならびにコンセンサス配列(配列番号:12)を示す。図示のように、各ぺプチドは、N−末端でGAにより、C−末端でAAによりフランキングされており、N−末端にブロッキング基:(アセチル−GA−C−十量体−C−AA−CONH2 ;これはac−GA−C−十量体−C−AA−amと表すこともできる)を有する。アミノ酸残基を表すために使用する1文字記号は、以下の通りである:G=グリシン;A=アラニン;C=システイン;D=アスパラギン酸;L=ロイシン;K=リジン;E=グルタミン酸;W=トリプトファン;F=フェニルアラニン;R=アルギニン;H=ヒスチジン;S=セリン;およびQ=グルタミン。 図4は、D−IQN17標的による鏡像ファージのディスプレイの概略図である。ここで、(1)ファージ選択のラウンドは、D−IQN17へのバインダー(binders)を同定するために行われる;(2)個々のクローンを配列決定する;(3)結合特異性を、ファージがD−IQN17のgp41領域に結合するか否かを調べることにより評価する;(4)結合するファージ配列であるD−ぺプチドを作製する;および(5)D−ぺプチドの抗HIV活性をアッセイする。 図5Aおよび5Bは、D10pep1に結合したIQN17の結晶構造を示す。IQN17は、連続的な三本鎖コイルであることを示し、D10pep1の保存アミノ酸残基の結合は、HIV gp41由来の17残基により形成される、IQN17の疎水性ポケットに対して存在することを示す。図5Aは、HIV−1 gp41残基に融合したGCN4−pIQ I残基からなるIQN17、およびIQN17の疎水性ポケット(囲まれた領域内)へのD10pep1の結合を示す。該ポケットに結合するD−ぺプチドは、枝分かれした伸長部により表わされる(すなわち、棒状に示した部分)。図5Bは、囲まれた領域の拡大であり、ポケット内に詰められた保存残基(Trp、Trp Leu)およびグルタミン酸(Glu)を示す。 図6Aおよび6Bは、本明細書に記載のD−ぺプチドを用いたシンシチウムアッセイの結果を示す。図6Aはシンシチウムアッセイの結果のグラフである。図6Bは、1回またはそれ以上の実験の結果を伴うD−ぺプチドのIC50データを表わす。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図7A〜7Nは、IQN17に結合したD10pep1の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、A鎖の0〜28残基はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A鎖の29〜45残基はHIV gp41配列に由来し、D鎖の0〜16残基はD−ぺプチドを表し、整列した(ordered)水分子をWで表し、結合した塩化物イオンはI鎖で表す。残基0はアセチル基を表す。PDBファイルは一量体を表わし;三量体は結晶学的対称により形成される。 図8Aおよび8Bは、D−ぺプチドによるHIV−1膜融合の阻害の評価の結果を示す。図8AはD−ぺプチドを用いないシンシチウムアッセイの結果を示す。図8BはD−ぺプチドを用いるシンシチウムアッセイの結果を示す。 図9A〜9Cは、IQN17/D−ぺプチド複合体の芳香族残基を特性付けする1 H NMR実験の結果を示す。図9Aは、D10pep1a(上)、IQN17(中央)およびD10pep1aとIQN17の1:1複合体(下)の1D−NMRスペクトルを示す。x軸は下の(C)と同じである。Trp−571の4個のスカラー結合(scalar−coupled)芳香環プロトンに割り当てられた高磁場側ピークを示す。下部痕跡のマークしていない(unmarked)高磁場側ピークは、割り当てられていないHα共鳴に対応する。図9Bは、IQN17と(標識された)各D−ぺプチドとの1:1複合体の1Dスペクトルを示す。同じ4個のプロトンがいくつかのスペクトルにより示されている。図9Cは、IQN17/D10pep1a複合体の2D−NMR TOCSYスペクトルを示す。これらの4個のトリプトファンプロトンに関連する交差ピーク(cross−peak)を、特定の割当(specific assignment)とともに示す。TOCSY混合時間は42msであった。 図10は、X線結晶学により測定した、IQN17との複合体における場合のD10pep1ぺプチドの立体配座を示す。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。 図11A〜11Vは、IQN17の結晶構造の原子座標を列挙するPDBファイルであり、ここで、IQN17三量体のA、BおよびC鎖の残基0〜28はGCN4−pIQ I配列(3個の変異を有する)に由来し、A、BおよびC鎖の残基29〜45はHIV gp41に由来し、整列した水分子をWで表わし、結合した塩化物イオンをI鎖で表す。PDBファイルは結晶学的に非対称な単位で三量体全体を表わす。
発明の要旨
本明細書に記載のように、HIVエンベロープタンパク質gp41サブユニット(例えば、HIV−1エンベロープタンパク質gp41−サブユニット)のN−ヘリックスコイルドコイルの表面のくぼみ(cavity)は、該コイルドコイル表面、とりわけ、くぼみを結合することにより、細胞へのHIV侵入を阻害する薬物または他の薬剤の標的である。これは、HIV(例えば、HIV−1、HIV−2など)の細胞への侵入を阻害する薬物または薬剤を同定およびデザインするための基礎として有用である。
本明細書に記載された結果は、gp41コアにおける前記コイルドコイルくぼみ(疎水性ポケットともいう)は、魅力的な薬物標的であり、かつ当該くぼみを結合する分子がHIV感染性(細胞へのHIV侵入)を妨害(阻害)することを示す。出願人は、まず、疎水性ポケットに突出する保存残基が、明らかにC34のHIV−1感染を阻害する能力において主要な役割を果たすことを示した。gp41機能に対するくぼみ接近(gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみとCペプチド領域の残基との間)の重要性は、明らかである。逆に、gp41機能の阻害において、かかるくぼみ接近を妨げ、したがって細胞へのHIV−1侵入を阻害することの重要性も、明らかである。また、gp41の中央−コイルドコイルの疎水性ポケットに対する薬物を指向することは、HIV−1エンベロープタンパク質の最も高く保存された領域の1つを標的とするものであり、このことは、コイルドコイル表面、および特にその疎水性ポケットを標的とする薬剤が多岐にわたるHIV単離物に対する広範な活性を有するであろうことならびに薬剤回避変異体が現れるのが困難であろうことを意味する。
鏡像ファージディスプレイ技術〔ティー.エヌ.シューマッハー(T.N.Schumacher)ら、Science,271:1854(1996)〕、コンビナトリアルケミストリー〔エー.ボーシャート(A.Borchardt),エス.ディー.リバールス(S.D.Liberles),エス・アール.ビッガー(S.R.Bigger),ジー.アール.クラブトゥリー(G.R.Crabtree),エス.エル.シュレイバー(S.L.Schreiber),Chem.Biol.,4:961(1997);ジェイ.シー.シャバラ(J.C.Chabala),Curr.Opin.Biotechnol.,6:632(1995)〕、合理的な薬物デザインおよび他の薬物スクリーニングならびに医薬化学法などの種々の方法を用いて、HIV−1感染を阻害するに十分な親和性によりコイルドコイルくぼみを結合するD−ペプチド、ペプチド擬似物および小分子を同定しうる。本明細書に記載のN36/C34安定性とC34の効力との間の近密な関係は、かかる化合物の有効性がそれらのくぼみ接近の強度に決定的に依存するであろうことを示唆する。本明細書に記載のように、候補化合物は、C34とN36との間の安定な複合体の形成を妨げるそれらの能力または2者の結合を破壊する(複合体を破壊する)能力について調べられ、それにより、HIV−1侵入の強力なインヒビターを同定および評価するための迅速な定量的スクリーニングを提供しうる。
一方、スクリーニングを行ない、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみの結合を妨げるかあるいは破壊する分子または化合物およびくぼみを結合するペプチドを同定することができ、そうして、「ポケット特異的」結合薬剤または薬物である分子を同定する方法を提供する。本明細書に記載された分子および化合物(薬物または薬剤ともいう)は、gp41を不活性化し、そうして細胞へのHIV−1侵入を防ぎまたは減少(阻害)するのに有用である。理論的に結合されることが期待されない場合、これらのインヒビターがgp41のプレ−ヘアピン中間体に結合し、かつgp41の融合活性化段階に対応するgp41コアの3量体ヘアピン構造へのその変換を防ぐことを提案するのが道理にあう。〔チャン,ディー.シー(Chan,D.C.)およびピー.エス.キム(P.S.Kim)、Cell,93:681(1998)、図1を参照のこと〕。したがって、本方法は、HIV−1 gp41エンベロープタンパク質の融合活性化状態の形成を(全体的にまたは部分的に)阻害する薬物または薬剤を同定するのに有用である。本方法において、小分子(例えば、小有機分子)、ペプチド(D−ペプチドまたはL−ペプチド)、ペプチド擬似物、タンパク質または抗体などのいかなるタイプの化合物または分子でありうる候補インヒビター(候補薬物ともいう)のgp41のN−ヘリックスコイルドコイルを結合し、安定な複合体を形成する能力を評価する。さらに、N−ヘリックスコイルドコイルに結合する化合物または分子を、代表的な方法が、本明細書に記載され、参照されるHIV−1感染(ウイルス侵入)およびシンシチウム(syncytium )アッセイを介するなど、gp41機能を阻害する(膜融合を阻害する)それらの能力について評価する。かかるアッセイを介してgp41機能を阻害することが示されるこれらの薬剤を、さらに付加的なイン・ビトロアッセイおよび適切な動物モデルにおいて、それらの活性を評価しうる〔例えば、レトビン,エヌ.エル.(Letvin,N.L.),Science,280,(5371):1875−1880(1998),ハーシュ,ブイ.エム.(Hirsch,V.M.)およびピー.アール.ジョンソン(P.R.Johnson),Virus Research,32(2):183−203(1994);レイマン,ケー.エー.(Reimann,K.A.)ら,J.Vivol.,70(10):6922−6928(1996)〕。いかなる適切なアプローチをも用いて、候補インヒビターのN−ヘリックスコイルドコイルへの結合と、本明細書に記載された研究の結果、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみへの結合とを評価することができる。1つの態様において、候補インヒビターの合成ペプチドN36〔ルー,エム(Lu,M.)ら,J.Biomol.Struct.Dyn.15:465(1997),チャン.ディー.シー.(Chan,D.C.)ら,Cell,89,263(1997)および1997年4月17日に提出されたデービッド シー チャン,デボラ ファス,ミン ルー,ジェイムス エム.バーガーおよびペーター エス.キムによる、HIVエンベロープ糖タンパク質由来のgp41のコア構造と題した米国仮出願第60/043,280号に記載〕を結合する能力を評価する。本明細書に記載の方法を用いて、得られた複合体の安定性を評価する。
N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する化合物または分子(薬物または薬剤)を同定する方法の具体的な態様において、gp41コイルドコイルくぼみを提示する可溶性モデルを用いる。HIV gp41の6つのヘリックスの束(bundle)は、3量体コイルドコイルの外側における保存された疎水性溝に適合する3つのC−ペプチドにより囲まれた3つの同じN−ペプチドから構成される内部3量体コイルドコイルからなる。3量体コイルドコイルのC末端は、C−ペプチド由来の巨大な疎水性基に包まれる大きなくぼみを含む。本疎水性ポケットは、抗HIV薬物の発見および/またはデザインの標的として用いられる。残念ながら、C−ペプチドの非存在下に、N−ペプチドは、凝集され、100%らせん状でない。したがって、N36、N51〔ルー,エム.(Lu,M.)ら、Nature Struct.Biology,1995〕またはDP−107(ワイルド(Wild)ら、PNAS 89:10537−10541(1992)などのHIV−1 gp41由来のNペプチドを単に用いることは、N−ヘリックスコイルドコイルの有効なモデルを提供する見込みがない。
本明細書に記載のように、出願人は、HIV gp41の疎水性ポケットの可溶性非凝集性3量体ペプチドモデルを製造することに成功し、したがって、初めて、(HIV gp41構造における対応残基に類似した構造を形成する様式または立体配置で)この疎水性ポケットまたはくぼみを適切に提示するモデルを提供した。(「ポケット」および「くぼみ」は互換的に用いられる)。記載されたように、可溶性3量体コイルドコイル部分と、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットまたはくぼみ(N−ペプチドの残基を含むポケット)を形成するアミノ酸残基を含むHIV gp41のN−ペプチド領域由来の部分とを含むペプチド(融合タンパク質ともいう)を製造し、HIV gp41機能、例えば、細胞へのHIV侵入を阻害する分子または化合物を同定するのに有用なかかる可溶性モデルであることを示した。ペプチドにおける、3量体状のコイルドコイル(融合タンパク質ともいう)は、HIVのタンパク質ではないタンパク質(GCN4−pIQ Iなどの非HIVタンパク質)またはHIV起源のタンパク質(HIV由来のタンパク質またはHIVタンパク質と同一または類似のアミノ酸配列を有するタンパク質)のコイルドコイル領域でありうる。特定の態様において、大きなくぼみを有する、IQN17という可溶性非凝集性3量体ペプチドモデルは、酵母転写活性化因子であるGCN4の、3量体状のコイルドコイル領域とgp41のNペプチドのC末端の部分とを含有する。IQN17は、安定性を増大させる3つの変異とHIVの17残基とを含む、(以前、米国仮出願第60/101,058号において、GCN4−pIQと称された)〔エッカート,ディー.エム.(Eckert,D.M.)ら,J.Mol.Biol.,284:859−865(1998)〕GCN4−pIQ Iの29残基を含む;45残基の融合タンパク質の全長をなす、2つのタンパク質間の1残基のオーバーラップが存在する。GCN4−pIQ Iの配列は:ac−RMKQIEDKIEEILSKQYHIENEIARIKKLIGER(配列番号:1)である。HIV配列は:LLQLTVWGIKQLQARIL(配列番号:20)である。IQN17の配列は:ac−RMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKKLLQLTVWGIKQLQARIL−am(配列番号:2)である。HIV部分を配列番号:2に下線を付す;ac−は、N末端アセチル基を示し、−amは、C末端アミドを示す。IQN17におけるGCN4の、可溶性3量体状のコイルドコイル領域(GCN4の可溶性3量体コイルドコイルという)の配列は:RMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKK(配列番号:25)である。GCN4−pIQ Iコイルドコイルのライズ(rise)およびピッチ(pitch)などのスーパーヘリックスパラメーター〔ハーバリー,ピー.ビー.(Harbury,P.B.)ら,Nature 371:80−83(1994);ハーバリーら、PNAS 92:8408−8412(1995)〕は、HIV gp41 Nヘリックスコイルドコイルとほぼ同一である。したがって、得られた融合タンパク質分子(IQN17)は、C末端のN−ペプチド疎水性くぼみを提示する長い3量体コイルドコイルを形成することが予想される。IQN17は、−36,000deg cm2 dmol−1 の222nmのモル楕円率で円二色性により決定されたように完全にらせん状である。沈降係数により決定されたように、IQN17は、20μMの濃度における単量体分子量の3.00〜3.16倍の範囲の算出分子量に対する観察された分子量の割合を有する別個の3量体種に近い。X線結晶学により決定されるように、IQN17は、HIV gp41 Nヘリックスコイルドコイルにおけるポケットとほぼ同一の様式でNペプチド疎水性ポケットを提示する。
(天然のL掌体またはエナンチオマーD掌体の)IQN17分子は、高処理量薬剤スクリーニングを含むスクリーニングに用いて、コイルドコイルポケットに結合する分子を同定することができる。D掌体のIQN17分子は、(天然L掌体の)gp41の疎水性ポケットに結合する小分子(D−ペプチド)を同定し、HIV膜融合を阻害するために、鏡像ファージディスプレイ〔シューマッハ(Schumacher)ら,Science,271:1854,1996〕における標的として用いられている。所望の標的(疎水性ポケットを含むHIV gp41のN−ヘリックス)は、天然由来標的の正しい鏡像である。天然由来のコイルドコイルポケットの鏡像を結合する能力の評価対象の化合物または分子のライブラリーまたはコレクションをスクリーニングするために用いられる。天然由来のgp41ポケットの鏡像を結合することが見出された化合物または分子の鏡像は、天然の掌体のgp41ポケットを結合するであろう。スクリーニングされたライブラリーまたはコレクションは、ファージディスプレイライブラリー、ペプチドライブラリー、DNAライブラリー、RNAライブラリー、コンビナトリアルライブラリー、化学薬剤もしくは薬物のコレクション、細胞溶解物、細胞培養培地または細胞により産生された産物を含む上清などのいかなる型でもありうる。ファージディスプレイライブラリーの場合、D−標的を用いてファージコートタンパク質をスクリーニングする。標的に結合する特異的なファージクローンを同定し、発現したタンパク質の鏡像を、D−アミノ酸を用いて化学合成する。鏡像ファージディスプレイにおいて、IQN17を用いることにより、gp41疎水性ポケットに結合するD−ペプチドを同定した。記載されているように、さらなる評価を行ない、D−ペプチドのHIV gp41機能阻害能を示した。gp41疎水性ポケットを結合し、HIV感染性を阻害するD−ペプチドを同定した。疎水性ポケットを結合するD−ペプチドは、(薬物がコイルドコイルポケットに結合し、HIV感染力を阻害するものである)創薬のためのリード分子および/または薬物発見のための試薬として有用であろう。天然L掌体のIQN17分子は、高処理量薬剤スクリーニングを含むスクリーニングに用いて、コイルドコイルポケットに結合する分子を同定することができる。IQN17を用いて、疎水性ポケットの結合能の評価対象である化合物または分子のコレクションまたはライブラリーをスクリーニングすることができる。スクリーニングされたライブラリーまたはコレクションは、ファージディスプレイライブラリー、RNAライブラリー、DNAライブラリー、ペプチドライブラリー、コンビナトリアルライブラリー、化学薬剤もしくは薬物のコレクション、細胞溶解物、細胞培養培地または細胞により産生された産物を含む上清などのいかなる型でもありうる。さらに、疎水性ポケットを結合する化合物または分子は創薬のためのリード分子および/または薬物発見のための試薬として役立つであろう。
IQN17のバリアントである融合タンパク質を生産し、gp41 N−ヘリックスコイルドコイルポケットを結合する薬物のスクリーニングに用いることができる。これらの変化は、コイルドコイルの3量体状態を変えないのであれば、広範なバリエーションのいずれもがIQN17のGCN4−pIQ I成分においてなされ得、本方法に用いられうる。コイルドコイルの3量体状態を維持するのであれば、例えば、GCN4成分のアミノ酸組成は、1以上のアミノ酸残基の付加、置換、修飾および/または欠失により変えられ得る。例えば、IQN17におけるAsp残基(コイルドコイルの「f−位」)は、天然アミノ酸のいずれによっても置換されうる。〔オニール(O’Neil)およびデグラード(DeGrado)、Science 250:646(1990)〕。一方、融合タンパク質でのこの成分は、モロニーマウス白血病ウイルス〔ファス,ディー(Fass,D)ら、Nature Struct.Biology,3:465(1996)〕、GCN4−pII〔ハーバリー(Harbury)ら、Nature,317:80、1994〕またはABCヘテロ3量体(ナウチャル(Nautiyal)およびアルバー(Alber)、Protein Science 8:84(1999)〕由来などの他のタンパク質の、3量体状のコイルドコイル領域でありうる。
また、HIV gp41 NペプチドのC末端部分である融合タンパク質成分のアミノ酸組成を変化させ、IQN17バリアントを生産することができる。C末端部分は、1以上のアミノ酸残基の付加、置換、修飾および/または欠失により変えられうる。コイルドコイルの3量体状態およびHIV gp41のNペプチドの疎水性ポケットが維持されるのであれば、融合タンパク質のいずれかの成分または両方の成分のアミノ酸組成が変えられ得、可能なアミノ酸残基変化の数または型に限定されない。IQN17、IQN17バリアントまたは大きなくぼみを有する任意の可溶性モデルは、N−ヘリックスコイルドコイル、特にポケットを結合する薬物またはリード薬物候補物またはワクチン標品に用いるための候補物をスクリーニングし、さらに、高処理量形式などの当業者に公知の方法を用いてさらにスクリーニングするために用いられうる。
本明細書に記載された結果は、以下に記載のように、C34のバリアントであるHIV gp41のインヒビターをスクリーニングするために有用である。N36を安定に結合するC34バリアントなどのC34のバリアントが同定されると、それを用い、さらに得られるように評価し、あるいは(例えば、安定性、可溶性、生体利用性を増強するために)所望もしくは必要であれば、それを(例えば、少なくとも1アミノ酸残基を改変、付加、欠失もしくは置換すること、または非アミノ酸置換物を付加することにより)改変しうる。一方、C34バリアントを評価して、より短い成分(より少ないアミノ酸残基の領域)もまたインヒビターとして活性であるかどうかを決定することができる。本明細書に記載のように、N36 3量体における深部の保存ポケットに包まれる3つのC34残基Trp628 、Trp631 およびIle635 は、阻害活性に重要である。N36コイルドコイルへのより高い親和性を有するC34バリアントは、HIV感染に対して、より強い阻害活性を有するという観察は、強いインヒビターを同定し評価するためのスクリーニングの基礎をなす。例えば、コンビナトリアルペプチドケミストリーの『分割(split)−合成』技術〔チェン,シー.エル.(Chen,C.L.)ら、Methods Enzymol.267:211−219(1996);ラム,ケイ.エス(Lam,K.S.)ら、Nature,354:82−84(1991)〕を用いて、疎水性性質を変える化学的置換により3つの重要な疎水性残基をランダムに置換されたC34バリアントのライブラリーを合成する。この合成技術は、単一のバリアントC34ペプチドの多くのコピーをそれぞれが含むビーズの巨大ライブラリー(すなわち、『1ビーズ、1化合物』型のライブラリー)の創出をもたらす。N−ヘリックスコイルドコイルを安定に結合するC34バリアントを同定するために、N36(または改変N−ペプチド)の標識体を、最も高い親和性を有するこれらのC34バリアントのみへの結合に限られる条件下(例えば、高温)にペプチドビーズと混合する。結合は、公知の方法を用いて、N−ヘリックスペプチドにおける標識の検出により測定される。分割−合成技術の簡単な改変は、質量分析により選別されたペプチド配列の迅速な同定を可能にする(ヤングクイスト,アール.エス.(Youngquist,R.S.)ら、J.Amer.Chem.Soc.117,3900−3906(1995)〕。選択されたC34バリアント、とりわけN36に対する最も高い結合親和性を有するものを、gp41阻害活性について、シンシチウムアッセイおよび感染アッセイで試験する。くぼみ−結合領域のみを含むこれらのC34バリアントの切形型も、阻害活性を試験されうる。一方、評価対象の他のペプチドのライブラリーを合成して、それぞれが評価対象のペプチドを含む(それに結合した)ビーズのライブラリーを作製することができる。このライブラリーは、C34バリアントについて上記のように解析され、得られたヒット(N36に対して適切な結合親和性を有するメンバー)が、gp41阻害活性についてさらに解析される。別の例として、N36ペプチドまたは前記に述べられた、IQN17、GCN4−N−ヘリックスペプチドなどの可溶性バリアントをファージディスプレイまたは鏡像ファージディスプレイ技術の標的として用い、くぼみに結合するペプチドを同定することができる。
さらに、IQN17を用いて、コイルドコイルくぼみに結合する抗体(モノクローナルおよび/またはポリクローナル)を生じさせうる。さらに、IQN17を単独または他の物質と組み合わせて、投与(ワクチン接種)される個体において、コイルドコイルに結合する抗体の生産を惹起し、それにより感染および/または疾患に対する防御を提示するワクチンに用いうる。
HIV−1エンベロープ糖タンパク質gp41の3量体N−ヘリックスコイルドコイルにおける深部の疎水性ポケットに適合するD−ペプチドおよびL−ペプチドの両方のペプチドも本発明の主題である。D−ペプチドは、gp41疎水性ポケットに排他的に結合することが示されている最初の分子である。これらのD−ペプチドがgp41−媒介膜融合過程(シンシチウム形成およびウイルス感染)を阻害するという観察は、HIV−1感染がポケットに特異的に結合する分子により阻害されうるという最初の直接的な説明を提供する。薬物標的としてのgp41疎水性ポケットの確認は、細胞へのウイルス侵入を阻害することにより働く経口的に生体利用可能な抗HIV薬物の新しいクラスの開発の段階を設定する。かかる薬物は、治療との組み合わせでHIV−1感染を治療するのに用いられる現行の養生法への有用な補助でありうる。本明細書に記載されたD−ペプチド、その部分、改変体およびバリアントならびに本明細書に記載のD−ペプチドの全部または一部を含有したより大きい分子(例えば、ポリペプチド)などのD−ペプチドは、HIV膜融合を阻害し、したがって、細胞へのHIV侵入を阻害するのに有用である。本明細書に記載されたように同定されたファージ配列のD−アミノ酸体に対応するD−ペプチドがHIV−1感染およびシンシチウム形成のインヒビターである。これらのD−ペプチドインヒビターにおけるC−末端残基は、配列パターン:CXXXXXEWXWLCAA−amを有する。(ファージディスプレイライブラリーにおいて、C残基に対応する位置はCまたはSのいずれかとしてコードされ、AA残基に対応する位置はそれらとしてコードされ、(Xで示された)他の10個の位置はランダムにコードされた。−amはC−末端アミドを表わし、ペプチド合成過程の一部として付加される)。D−ペプチドインヒビターにおけるN−末端残基は、例えば、ac−GA、ac−KKGAまたはac−KKKKGAである。ac−は、ペプチド合成過程の部分として付加されるN−末端アセチル基を表わす。C−末端アミドおよびN−末端アセチル基は、本発明のD−ペプチドの任意成分である。他のN−末端残基は、前記センテンスにおけるものの代わりまたはそれに加えて、所望のように(例えば、可溶性の増大のために)含みうる。例えば、下記の配列:

を有するD−ペプチドも本発明の主題である。
アミノ酸残基は1文字表記(convention)により表され、Xは任意のアミノ酸残基(天然由来もしくは非天然由来)、または修飾されたアミノ酸残基などの他の残基(moiety)を表す。
さらに、12アミノ酸残基ぺプチドの内の10アミノ酸残基「コア」(システイン残基により両端がフランキングされている十量体)、ならびに該十量体の部分、改変体(modification) およびバリアント(variants)も膜融合およびHIVの細胞への侵入を阻害するのに有用である。これらのぺプチドのバリアント、部分および改変体もインヒビターとして有用である。本発明にさらに詳細に記載しているように、コンセンサス配列(例えば、WXWL(配列番号:23)、EWXWL(配列番号:24)、CXXXXXEWXWLC(配列番号:12)またはそれらの部分)を含有するD−ぺプチドは、N−ヘリックス超らせんを結合することが示されており、膜融合およびHIVの細胞への侵入を阻害するのに有用である。鏡像異性ぺプチド(D−ぺプチド)は、プロテアーゼなどの酵素に対する効率的な基質として働かず、したがってL−ぺプチドよりもタンパク質分解に対して耐性があり;それらはL−ぺプチドより免疫原性が低い。本発明のD−ぺプチドの具体的態様は:


である。
本明細書に記載のD−ぺプチドは、N−ヘリックスポケットを結合することが示されたリガンドであり、N−ヘリックスポケットを結合することからHIVのインヒビターでもある化合物または分子(例えば、化合物ライブラリー、組換え的に製造された産物、天然に存在する物質、培養培地または上清み由来)を同定するための薬物スクリーニングにおいても有用である。例えば、N−ヘリックスくぼみを結合するD−ぺプチド(例えば、本明細書に記載のD−ぺプチド);IQN17(例えば、天然のL体の)、またはN−ヘリックスくぼみを提示する可溶性モデルである別の融合タンパク質;および候補インヒビター(N−ヘリックスくぼみを結合する能力の評価対象の化合物または分子)を組み合わせることにより、競合アッセイを行うことができる。例えば、D10pep5またはD10pep1、IQN17、および候補インヒビター(候補薬物)を、D10pep5またはD10pep1のIQN17への結合に適するバッファー条件およびぺプチド濃度を用いて組み合わせることができる。D−ぺプチドの結合が生じる程度を測定し、同一条件下であるが、HIVありgp41エンベロープタンパク質のN−ヘリックス超らせんくぼみを結合する能力の評価対象の化合物または分子(候補薬物または候補インヒビターという)の非存在下で結合が生じる程度(対照)と比較する。D10pep5またはD10pep1の結合が、候補インヒビターの存在下(被検試料)において非存在下(対照試料)よりも低い程度で生じる場合、候補インヒビターは、N−ヘリックス超らせんくぼみを結合するリガンドであり、したがってインヒビターである。このようにして同定されるインヒビターは、本明細書に記載のようなウイルス感染力アッセイおよびシンシチウム(synctia)形成アッセイにおいてその活性をさらに評価することができる。かかるアッセイにおいて活性を示すそのようなインヒビターは、適当な動物モデルまたはヒトにおいてさらに評価することができる。
N−ヘリックスくぼみを結合することが知られたD−ぺプチドの結合を検出することができる任意の方法を用い、候補インヒビターが結合を妨害するか否かを評価することができる。例えば、D−ぺプチドは検出可能に標識することができ、候補インヒビターの存在下および非存在下に、標識がN−ヘリックスくぼみ上に現れる(D−ぺプチドの結合の結果)程度を検出する。候補インヒビターの非存在下(対照試料)よりも候補インヒビターの存在下(被検試料)において、より少ない標識がIQN17(または他の適当な融合タンパク質)のN−ヘリックスくぼみ上に現れる場合、候補インヒビターは、N−ヘリックスくぼみを結合(およびD−ぺプチドの結合を妨害)するリガンドである。あるいはまた、近接したときに発蛍光団の蛍光シグナルを消光する適当な消光物質(例えば、DABCYL;4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸)とともに、発蛍光団(例えば、EDANS;5−(2’アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸)により、D−ぺプチド(例えば、D10pep5またはD10pep1)およびIQN17を標識することができる。候補インヒビターがIQN17のN−ヘリックスくぼみを結合する場合、候補インヒビターの結合の結果、D−ぺプチドが、レポーターシグナルが消光され得るには消光物質に十分に近接しないため、蛍光が観察される。あるいはまた、蛍光レポーター分子をIQN17上に、かつD−ぺプチド上に適当な消光物質を存在させ得る。どちらの場合も、IQN17上のレポーターまたは消光物質の位置は、D−ぺプチドがN−ヘリックスくぼみを結合すると、該レポーターおよび消光物質部分が、互いに消光を生じるよう十分に近接するようでなければならない(Tyagi,S.ら、Nature Biotechnology 16:49(1998))。
また、本発明の主題は、HIV gp41のN−ヘリックス超らせんポケットを結合し、細胞へのHIV侵入を(部分的または完全に)阻害する薬物(化合物および分子)である。一態様では、これらの薬物は、本明細書に記載のようにして、またはその他の方法によって同定することができる。HIV gp41のN−ヘリックス超らせんポケットを結合する薬物は、細胞へのHIV侵入を妨害または侵入が起こる程度を低減するための治療剤として、例えば、HIV gp41機能のメカニズムを研究するための研究ツールとして、および個体(例えば、動物モデルまたは感染したヒト)によるウイルスクリアランスの割合を調べるために有用である。
また、本発明の主題は、粘膜細胞へのHIVの侵入の妨害方法に有用な組成物であり、これらの組成物は、適当な担体または基剤ならびに:
(a)C34ぺプチド;
(b)DP178;
(c)T649;
(d)T1249;
(e)(a)〜(d)の誘導体;
(f)HIV gp41の疎水性ポケットに結合するD−ぺプチド;
(g)(f)の誘導体;
(h)(a)〜(g)の2種以上の組み合わせ;および
(i)N−ヘリックス超らせんへの結合によるHIV感染力を阻害する分子
からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分を含有する。該組成物は、かかある成分の1種または2種以上の成分を含有することができる。
本発明のさらなる主題は、HIV感染および/または疾患に対して(部分的または完全に)防御するであろう免疫応答(例えば、抗体産生)を顕現させるために使用しうる組成物(例えば、タンパク質またはタンパク質性物質)である。かかる組成物は、防御剤(例えば、ワクチン)として、および研究ツール、診断用ツール、薬物スクリーニング試薬として有用な(モノクローナルおよび/またはポリクローナル)抗体を得るため、ならびに動物モデルまたは感染したヒトにおけるウイルス動力学(ウイルスの生成およびクリアランスの速度)を評価するために有用である。
また、本発明の主題は、IQN17とD10pep1の複合体のX線結晶構造の原子座標のリストである。また、本発明の主題は、IQN17のX線結晶構造の座標のリストである。これらの座標は、D10pep1がどのようにN−ヘリックス超らせんくぼみおよびN−ヘリックス超らせんくぼみのモデルに結合するのかを示す複合体のモデルを作製するために使用(例えば、コンピューターグラフィックスのプログラムのための電子ファイルとして)することができる。かかるモデルは、コンピューターグラフィックスモデリングなどの当業者に知られた方法において、他のぺプチド、ぺプチド擬似物、小分子、薬物または他の化合物によるN−ヘリックス超らせんくぼみへの結合のしやすさを評価するための新しいモデルを構築するために使用することができる。かかるモデルを、N−ヘリックス超らせんくぼみを結合する分子(ぺプチド、ぺプチド擬似物、小有機分子、薬物または他の化合物)の構造の新しいモデルを構築するためにも使用することができる(例えば、H.クビニー(Kubinyi)、Curr.Op.Drug Discov.Develop.,1:16(1998);P.L.Wood,ibid,1:34(1998);J.R.Morphy,ibid,1:59(1998))。これらのモデルおよび原子座標の対応するリストを、当業者に知られた方法を用い、HIV感染を阻害する、より効果的および/または新しいD−ぺプチド、L−ぺプチド、ぺプチド擬似物、他の小分子または薬物を同定、評価、発見および設計するのに使用することができる。本発明のさらなる主題は、本明細書に記載のHIV gp41疎水性ポケットの可溶性四量体ぺプチドモデル(例えば、IQN17またはそのバリアント)の結晶、D−ぺプチドとの複合体であるようなモデル(例えば、D10pep1などの本明細書に記載のD−ぺプチドとの複合体としてのIQN17またはそのバリアント)の結晶、またはHIV gp41のN−ヘリックス超らせんのポケットを含むアミノ酸残基を含有するHIV gp41のN−ぺプチド領域の結晶などの、結晶の原子座標の使用によるHIV gp41のN−ヘリックス超らせんポケットに適合する(内部に詰まる、結合する)薬物の製造または同定方法である。該方法は、エンプティ(empty)可溶性モデル(D−ぺプチドとの複合体でない)などの可溶性モデルの結晶を得る工程、該結晶(例えば、IQN17などのエンプティ可溶性モデルの結晶)の原子座標を得る工程;得られた原子座標を使用してHIV gp41のN−ヘリックス超らせんポケットを明確化する工程;N−ヘリックス超らせんポケットに適合する分子または化合物を同定し、該分子または化合物を得る工程;該分子また化合物をN−ヘリックス超らせんポケットと〔例えば、該ポケット(例えば、IQN17もしくはそのバリアントまたはN−ぺプチド)を含むポリぺプチドと接触させることにより〕接触させ、該分子または化合物のHIV gp41のポケットに適合する能力を評価(測定)する工程を含み、ここで、該分子または化合物においてポケットに適合し、そしてN−ヘリックス超らせんポケットに適合する薬物であり、それによりポケットに適合する薬物を製造する。結晶の原子座標はX線回折試験により得ることができ、すなわち、IQN17のための本明細書に示されたPDB(図11A〜11V)などのコンピュータファイルもしくはプロテイン・データ・ベース(PDB)を形成し得る。
同様に、該方法は、D−ぺプチド(例えば、D10pep1などの本明細書に記載のD−ぺプチド)との複合体の状態の可溶性三量体モデルの結晶、またはN−ヘリックス超らせんのポケットを含有するHIV gp41のN−ぺプチド領域の結晶を用いて行うことができる。
このようにして製造される薬物は、ポケットに適合する能力をコンフォームするために(例えば、NMRにより)さらに評価することができ、細胞へのHIV侵入を阻害する能力を(例えば、シンシチウムアッセイまたは感染力アッセイにより)評価することができる。
本明細書において引用したすべての文献の教示および全内容は参照により特に本出願に取り込まれる。
発明の詳細な説明
HIV−1エンベロープタンパク質のgp41サブユニットは、ウイルス膜と細胞膜との融合を媒介する。gp41のエクトドメインコア結晶構造は、逆平行のC−ヘリックスと対形成するN−ヘリックスからそれぞれがなる3つのらせん状ヘアピンから構成される6回らせんの束である〔D.C.Chan、D.Fass、J.M.Berger、P.S.Kim、Cell、89:263(1997)、W.Weissenhorn、A.Dessen、S.C.Harrison、J.J.Skehel、D.C.Wiley、Nature、387:426(1997);K.Tan、J.Liu、J.Wang、S.Shen、M.Lu、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:12303(1997)〕。3つのN−ヘリックスにより、内部に位置する三量体の超らせんが形成され、そして3つのC−ヘリックスにより、保存された疎水性の溝に沿ったこのN−ヘリックス超らせんの外側が包まれている。この構造は、(D.C.Chan、D.Fass、J.M.Berger、P.S.Kim、Cell、89:263(1997)ならびにD.C.ChanおよびPeter S.Kim、Cell、93:681(1998)において議論されている)gp41の融合活性状態のコアに対応していることが考えられ、下記のウイルスに由来するエンベロープ融合タンパク質の提案された融合誘導(fusogenic)構造との類似性を示している:インフルエンザ(P.A.Bullough、F.M.Hughson、J.J.Skehel、D.C.Wiley、Nature、371:37(1994))、モロニーマウス白血病ウイルス(D.Fass、S.C.Harrison、P.S.Kim、Nat.Struct.Biol.、3:465(1996))、およびサル免疫不全症ウイルス(SIV)(V.N.Malashkevich、D.C.Chan、C.T.Chutkowski、P.S.Kim、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:9134(1998)、M.Caffrey他、EMBO J.、17:4572(1998))、ならびにエボラウイルス(W.Weissenhorn他、Mol.Cell、2:605(1998)、V.N.Malashkevich他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、96:2662(1992))。
DP178およびC34などの合成C−ペプチド(C−ヘリックスに対応するペプチド)は、HIV−1膜融合の強力なインヒビターであり、実験室で使用されている株および直接得られた単離体の両方に対して効果的である〔V.N.Malashkevich、D.C.Chan、C.T.Chutkowski、P.S.Kim、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:9134(1998)〕。DP178はHIV−1 gp41の残基638〜673に対応し、そのアミノ末端がアセチル化され、カルボキシ末端がアミド化されている(C.T.Wild、D.C.Shugars、T.K.Greenwell、C.B.McDanal、T.J.Matthews、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:9770(1994)、S.Jiang、K.Lin、N.Strick、A.R.Neurath、Nature、365:113(1993))。C−ペプチドのDP178(T−20とも呼ばれる)を用いた第I相臨床試験により、ウイルス量(load)の減少をもたらす抗ウイルス活性をインビボで有していることが示される(M.Saag他、アメリカ伝染病学会第35年会(San Francisco、CA、1997年9月16日)で発表された抄録#771;Kilby,J.M.他、Nature Med.、4:1302〜1307(1998))。gp41コアの構造的特徴に基づいて、これらのペプチドは、外因性のC−ペプチドがgp41の中心に位置する超らせんに結合して、その不活性化をもたらす優性ネガティブ機構によって作用していることが考えられている(D.C.ChanおよびP.S.Kim、Cell、93:681(1998);R.A.Furuta他、Nat.Struct.Biol.、5:276(1998);D.C.Chan、D.Fass、J.M.Berger、P.S.Kim.、Cell、89:263(1997)、W.Weissenhorn、A.Dessen、S.C.Harrison、J.J.Skehel、D.C.Wiley、Nature、387:426(1997);K.Tan、J.Liu、J.Wang、S.Shen、M.Lu、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:12303(1997)、M.Lu、S.C.Blacklow、P.S.Kim、Nat.Struct.Biol.、2:1075(1995)ならびにC.H.Chen、T.J.Matthews、C.B.McDanal、D.P.Bolognesi、M.L.Greenberg、J.Virol.、69:3771(1995))。これらのペプチドは、本来のgp41構造〔すなわち、遊離ビリオンの表面に存在する非融合誘導性(nonfusogenic)立体配座〕がgp120/CD4/コレセプターの相互作用によって乱されるときに形成されるgp41のプレヘアピン中間体に作用することが考えられている。このプレヘアピン中間体は、露出したN−超らせんを有し、それにより、融合活性なヘアピン構造が形成される前に、C−ペプチドに結合してgp41を不活性化し得ることが提案されている(D.C.Chan、P.S.Kim、Cell、93:681(1998))。このモデルは、C−ペプチドのDP178がgp41に結合することを示す免疫沈降実験によってさらに支持されている(R.A.Furuta、C.T.Wild、Y.Weng、C.D.Weiss、Nat.Struct.Biol.、5:276(1998))。さらに、DP178による阻害を逃れるウイルスには、gp41の中心に位置する超らせん領域における変異が明らかにされている(L.T.Rimsky、D.C.Shugars、T.J.Matthews、J.Virol.、72:986(1998))。
gp41の近年の結晶学的研究により、C−ペプチドと対照的に経口投与される可能性を有する小分子のペプチド模倣薬物の開発が容易になっている。超らせんのそれぞれの境界には、N−ヘリックスの超らせん内の残基のクラスターによって形成され、抗ウイルス化合物を開発するための興味深い標的である深いくぼみが存在する。C−ヘリックスの3つの残基(Trp628 、Trp631 およびIle635 )がこのくぼみに進入して、広範囲の疎水性接触が形成される。変異分析により、このくぼみを構成するN−ヘリックス残基の2つ(Leu568 およびTrp571 )が膜融合活性に極めて重要であることが示されている(J.Cao他、J.Virol.、67:2747(1993))。従って、このくぼみに対して大きな親和力で結合して、N−ヘリックスおよびC−ヘリックスの正常な対形成を妨げる化合物は効果的なHIV−1インヒビターになることが十分に考えられる。さらに、このくぼみ内の残基は様々なHIV−1単離体において高度に保存されている。構造が高度に保存されているために、この部位を標的とする薬物は、様々なHIV−1単離体に対して、そしておそらくはHIV−2単離体に対して広い活性を有する。
この仮説は注目されているが、現在まで、このようなくぼみの接触がC34インヒビターの効力に重要であることは明らかにされていない。実際、くぼみに結合する残基を有しないC−ペプチドのいくつか(DP178(C.T.Wild、D.C.Shugars、T.K.Greenwell、C.B.McDanal、T.J.Matthews、同上、91:9770(1994);Kilby,J.M.他、Nature Med.、4:1302(1998))など)は、HIV−1膜融合の非常に効果的なインヒビターである。このようなことにより、C−ペプチドの活性決定基を同定するために体系的な構造−機能分析が必要であることが強く唱えられている。
阻害活性におけるくぼみ接触の役割を明らかにするために、構造に基づく変異誘発をC34において行った。gp41エクトドメインのコア(図1)を、N36およびC34と呼ばれる2つの合成ペプチドを用いて再構成した〔M.Lu、P.S.Kim、J.Biomol.Struct.Dyn.、15:465(1997)、D.C.Chan、D.Fass、J.M.Berger、P.S.Kim、Cell、89:263(1997)〕。1個のアラニン置換を有するC34ペプチドのバリアント(variants)を合成して、変異型(mutant)N36/C34複合体のらせん含有量および熱安定性を円二色性により定量した。予想されるように、N36の超らせんと接触しないC34残基(Met629 、Arg633 )の変異は、222nmにおける平均残基楕円率(らせん含有量の大きさ)またはN36/C36複合体の安定性に対してほとんど影響しなかった(表1)。しかし、N36の超らせんくぼみに突き出る3残基の変異(Trp628 →Ala、Trp631 →AlaまたはIle635 →Ala)は、平均楕円率および安定性が実質的に低下したN36/C34複合体をもたらした(表1)。最も大きな不安定化が、野生型の66℃と比較して、37℃の見かけの融解温度(Tm )を有するN36/C34複合体が形成されたTrp631 →Alaのバリアントで認められた。これらの結果は、N36の超らせんくぼみとの疎水性接触を形成するC34の残基がgp41エクトドメインコアのらせん−ヘアピン構造の安定化に重要であることを示している。
膜融合を阻害するC34の能力におけるこれらの残基の重要性を明らかにするために、C34ペプチドの活性をHIV−1のウイルス侵入アッセイおよびシンシチウムアッセイで調べた(表1)。N36/C34複合体の安定性に対してほとんど影響しない変異(Met629 →AlaおよびArg633 →Ala)はまた、野生型C34の阻害活性に対してほとんど影響しなかった(ウイルス侵入およびシンシチウム形成に対するIC50は、それぞれ、約2.1nMおよび約0.55nMであった)。しかし、完全に保存されているTrp628 またはTrp631 のアラニンへの変異は、活性を、それぞれ、約5分の1および約30分の1に実質的に低下させた(表1)。あまりよく保存されていないIle635 の変異は、阻害活性を約2分の1に低下させただけであった。これらの結果により、gp41のポケットと接触するC34の残基がC34の阻害能にとって重要であることが初めて明らかにされた。
変異型C34ペプチドの効力と変異型N36/C34複合体の安定性との関係が、Trp631 変異の大きな不安定化作用を利用して、安定性が徐々に変化した一連のN36/C34複合体を構築することによって明らかにされた。Trp631 の位置を「ゲスト部位」として使用し、このトリプトファンを、広範囲の疎水性原子団(bulk)を示す天然アミノ酸および非天然アミノ酸で置換した。疎水性原子団が大きくなる順に、下記の置換体を使用した:グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、L−α−アミノ酪酸(Abu)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、フェニルアラニン(Phe)、野生型残基のトリプトファン(Trp)、およびL−β−(1−ナフチル)アラニン(Nal)。この方法により、Tm が37℃〜66℃の範囲にあるN36/C34複合体を形成する一組のC34ペプチドが得られた。N36/C34バリアントに対するTm および[θ]222 (103 degcm2 dmol-1)(ならびに、ウイルス侵入および細胞融合のIC50値(ナノモル濃度)をそれぞれ括弧内に示す)は下記の通りである:Trp631 →Gly、35℃、17.1(38±6.1、25±3.8);Trp631 →Ala、37℃、−24.9(40±4.3、15±0.8);Trp631 →Abu、43℃、−23.2(16±4.8、6.9±0.4);Trp631 →Val、43℃、−23.9(13±2.8、4.5±0.09);Trp631 →Leu、50℃、−26.7(5.3±1.0、3.2±0.1);Trp631 →Phe、59℃、−26.3(3.6±0.8、1.6±0.05);野生型、66℃、−31.7(1.5±0.2、0.55±0.03);Trp631 →Nal、62℃、−32.0(1.4±0.3、0.79±0.08)。Trp631 →Nalペプチドの濃度は、282nmでのε=6900の吸光係数を使用してNalの吸収によって求めた(J.Blake、C.H.Li、J.Med.Chem.、18:423〜426(1975))。HIV−1の感染アッセイおよびシンシチウムアッセイにおいて、この一連のペプチドは、対応するN36/C34複合体のTm と非常に相関する効力を示した(図2)。これらのバリアントの効力の大きさは、野生型〜Nal>Phe>Leu>Val〜Abu>Ala〜Glyであり、置換体の疎水性原子団およびN36/C34複合体の安定性とよく一致している。Tm の関数としてIC50を対数スケールでプロットした場合、驚くほどの一次の関係が存在する(図2)。ΔG=−RTlnK(ΔG、自由エネルギーの変化;R、気体定数;T、絶対温度;およびK、平衡定数)、およびΔTm (Tm 、 野生型複合体−Tm 、 変異型複合体)はΔ(ΔG)(ΔG野生型複合体−ΔG変異型複合体)に比例する(W.J.Becktel、J.A.Schellman、Biopolymers、26:1859(1987))ため、認められた一次の関係により、阻害の優性ネガティブモードによって推定されるように、C34バリアントの効力はN−ヘリックス超らせんに対するその親和力と直接関連していることが強く示唆される。これらの結果は、gp41コアにおける超らせんのくぼみが薬物の興味深い標的であるという考えを強く支持している。疎水性のくぼみに突き出ている保存された残基が、HIV−1感染を妨げるC34の能力における主要な役割を果たしていることは明らかである。このことは、このインヒビターが、N−ヘリックスの超らせんと大きな親和性複合体を形成することによって作用していることを示している。従来のペプチドを超えて、鏡像ファージディスプレー技術(T.N.Schumacher他、Science、271:1854(1996))、選択−反射アプタマー技術(K.P.Williams他、PNAS、94:11285(1997);S.Kluβmann他、Nat.Biotech.、4:1112(1996);A.Nolte他、Nat.Biotech.、14:1116(1996))、コンビナトリアルケミストリー(A.Borchardt、S.D.Liberles、S.R.Biggar、G.R.Crabtree、S.L.Schreiber、Chem.Biol.、4:961(1997);J.C.Chabala、Curr.Opin.Biotechnol.、6:632(1995))、および構造に基づく薬物設計におけるコンピューター法(H.Kubinyi、Curr.Opin.Drug Discov.Develop.、1:16(1998))を使用して、超らせんのくぼみに対して大きな親和力で結合するD−ペプチド、ペプチド擬似物および小分子を同定することができる。N36/C34安定性とC34阻害能との密接な相関により、そのような化合物の有効性がそれらのくぼみ接触の強さに極めて依存していることが示唆される。これらの結果は、候補化合物を、N36との安定な複合体を形成する能力について調べることができ、それによって、HIV−1侵入の潜在的なインヒビターを同定して評価するための迅速で定量的なスクリーニングに関する基礎が提供され得ることを示唆している。
中心に位置する超らせんのくぼみに対する小分子のインヒビターは、HIV−1エンベロープタンパク質の最も高度に保存された領域の1つを標的とする。SIV gp41コアにおける類似したくぼみは、側鎖の立体配座が保存されている本質的には同一の構造を有する(V.N.Malashkevich、D.C.Chan、C.T.Chutkowski、P.S.Kim、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:9134(1998))。この高い構造的保存の程度により、実験室で使用されている株ならびに一次単離体に対して効果的なC−ペプチドの広範囲の中和活性が説明される(C.T.Wild、D.C.Shugars、T.K.Greenwell、C.B.McDanal、T.J.Matthews、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:9770(1994);S.Jiang、K.Lin、N.Strick、A.R.Neurath、Nature、365:113(1993))。注目されることに、SIV C34ペプチドは、HIV−1感染の阻害においてHIV−1 C34とほぼ同じくらい効果的である(V.N.Malashkevich、D.C.Chan、C.T.Chutkowski、P.S.Kim、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、95:9134(1998))。さらに、くぼみに結合する領域を含有するC−ペプチド(T649)は、耐性ウイルスの進化に対して、この領域を有しないDP178(T−20とも呼ばれる)よりもはるかに低い感受性を有している(L.T.Rimsky、D.C.Shugars、T.J.Matthews、J.Virol.、72:986(1998)。これらの観察から、超らせんの表面、特に、そのくぼみを標的とする高親和性リガンドは、(HIV−2を含む)様々なHIV単離体に対する広範な活性を有し、かつ薬物から逃れるバリアントによって回避される可能性がほとんどないことが明らかである。
C−ペプチドの作用機構に関するこれらの研究はまた、gp41コアの三量体ヘアピン構造(Chan,D.C.他、Cell、89:263(1997);Weissenhorn,W.他、Nature、387:426(1997);Tan,K.他、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:12303(1997))がgp41の融合活性状態に対応しているという仮説を支持している。本明細書に記載されている研究により、C34の阻害能はgp41のN−超らせんに結合するその能力に依存することが明らかにされている。gp41のヘアピン構造は(90℃を超える融解温度を有して)極めて安定であるために(Lu,M.他、Nat.Struct.Biol.2:1075(1995))、特に、変化を受けていないgp41分子内において非常に効果的な濃度のN−ヘリックスおよびC−ヘリックスが提供されたときに、この構造が一旦形成されると、ナノモル濃度のC34によって、この構造が破壊され得ることは考えられない。むしろ、C−ペプチドは、中心に位置する超らせんが露出した一次的なプレ−ヘアピン中間体に結合することによって、gp41のヘアピンが形成される前に作用していることが考えられる。C−ペプチドがこのプレ−ヘアピン中間体に結合することによって、gp41は不活性化され、融合活性なヘアピン構造へのその変換が妨げられる(D.C.Chan、P.S.Kim、Cell、93:681(1998))。
本明細書中に記載されているように、HIV−1エンベロープタンパク質のgp41サブユニットのN−ヘリックス超らせんの表面にあるポケットは薬物の標的である。同様に、AIDSを引き起こし得る他の病原体(例えば、HIV−2)またはAIDS様状態を非ヒト哺乳動物において引き起こす病原体(例えば、SIV)におけるくぼみもまた薬物の標的である。本明細書中に記載されているように、利用可能な方法(例えば、鏡像ファージディスプレー法、コンビナトリアルケミストリー、コンピューター法、ならびに他の薬物スクリーニング法および医化学的方法)を使用して、ウイルスの細胞内侵入を妨げ、従って、ウイルス感染を妨げるのに十分な親和性で、HIV−1(および/またはHIV−2)の超らせんくぼみを結合するペプチド、D−ペプチド、ペプチド擬似物および小分子を同定することができる。本明細書中(実施例3)にさらに記載されているように、鏡像ファージディスプレイが、HIV−1 gp41のN−ヘリックス超らせんの表面におけるくぼみに結合するD−ペプチドを同定するために使用されている。
本明細書中に記載されいる研究の結果として、C34/N36複合体の形成を妨げ、かつ/または一旦形成された複合体を破壊する分子または化合物(薬剤または薬物)を同定するスクリーニングアッセイが行うことができ、それは、HIV gp41のN−ヘリックス超らせんのポケットを結合する分子または化合物(薬剤または薬物)を同定する方法である。そのような薬物または薬剤は、HIVの細胞内侵入、従って、HIVによる感染を(完全または部分的に)阻害するのに有用である。
C34とN36との安定な複合体の形成を妨げ、あるいはこの2つの分子における複合体を破壊する化合物または分子(薬物または薬剤とも呼ばれる)に関するスクリーニング法、およびHIVgp41のN−ヘリックス超らせんのポケットを結合する化合物または分子に関するスクリーニング法は本発明の主題である。
本発明のスクリーニング法の1つの実施形態において、C34ペプチドとN36ペプチドとの複合体の形成を妨げる薬物が、C34とN36との複合体を形成させるために適切な条件のもとで、候補薬物(C34とN36との複合体の形成を妨げるその能力のアッセイ対象の化合物または分子)をC34およびN36と合わせて、そうして、被検試料を形成し、その後、C34/N36複合体の形成が被検試料中で(部分的または完全に)阻害されているかどうかを測定することによって同定される。この評価の結果は、候補薬物が存在しないことを除いて被検試料と同じ組み合わせである適切な対照の結果と比較することができる;このとき、対照は、被検試料が供されるのと同じ条件に供される。C34/N36複合体が、(被検試料中において)候補薬物の存在下で形成されず、あるいはその非存在下でより小さい程度で形成される場合、その候補薬物は、C34とN36との安定な複合体の形成を妨げる薬物である。そのような薬物はまた、本明細書中ではC34/N36複合体形成のインヒビターとして示されている。複合体形成の阻害は、C34およびN36のそれぞれが一対のドナー−アクセプター分子のメンバー(menber)によって標識されているか、あるいは、一方のペプチドの一端(例えば、C34のN末端)がそのような対の一方の成分(EDANS)で標識され、N36ペプチドに存在する天然の蛍光性トリプトファンがそのようなドナー/アクセプター対のもう一方の成分である蛍光アッセイ(例えば、FRET)などの手段によって、複合体のこの2成分の結合が生じる程度を測定することによって評価することができる。C34およびN36の結合は、発光(FRET)がアクセプターモデルから生じる程度、および/または放出された光の波長スペクトルが変化する程度によって評価される。候補薬物が結合を妨げることによって、光を発する程度が変化し、かつ/またはC34とN36の結合が生じた場合に生じるであろう波長の変化が妨げられる。あるいは、C34は、(例えば、キナーゼおよび放射活性ATPを用いて標識され得るキナーゼ認識部位を有する変異型C34を合成することによって)放射性標識などの検出可能な標識で標識することができる。放射性標識されたC34および候補薬剤は、例えば、固体表面(例えば、ビーズまたはプラスチックウエル)に固定化されたN36と合わされ、そうして被検試料が作製される。標識されたC34と固定化N36との結合が生じる程度が測定され、そして候補薬物が(対照試料中に)存在しないことを除いて、被検試料が供されるのと同じ条件下において、固定化N36に対する標識されたC34の結合が生じる程度と比較される。典型的には、この評価は、試料が、C34/N36の結合が生じ、そしてその後、未結合のC34および候補薬物を除くために洗浄されるのに適切な条件下で十分な時間にわたって保持された後に行われる。被検試料において固定化N36に結合した放射性標識が対照試料の場合よりも少ないことによって明らかにされるように、結合が、被検試料において、対照試料の場合よりも小さい程度で生じた場合、その候補薬物はC34とN36の結合のインヒビターである。あるいは、C34における標識またはタグを結合形成対の一方の成分とすることができ、そのもう一方の成分が、N36に対する結合を検出するために使用される。例えば、C34は、(例えば、標準的な固相ペプチド合成によって)ビオチンで標識(tagged)することができ、そして溶液状態であり得るか、あるいはビーズ、ウエルまたは平坦/平面の表面などの固体表面に結合させることができるN36と、候補薬物とともに合わせることができ(被検試料)、あるいは候補薬物または非存在下で合わせることができる(対照試料)。N36に対するC34の結合は、C34におけるビオチンに結合し、その後、その標識によりそれ自体が検出される標識されたストレプトアビジン(例えば、ストレプトアビジン−HRP、ストレプトアビジン−AP、またはヨウ素化ストレプトアビジン)の使用などによってN36と結合したビオチンの存在を検出することによって評価される。被検試料においてN36で検出されるビオチンが対照試料の場合よりも少ないことによって明らかにされるように、結合が、候補薬物の存在下(被検試料の場合)において、候補薬物の非存在下(対照試料の場合)よりも小さい程度で生じる場合、その候補薬物はC34/N36の結合のインヒビターである。そのような候補薬物は、例えば、合成された有機化合物またはランダムなペプチド配列のライブラリーから得ることができる。そのようなライブラリーは、合成的あるいは組換え技術によって作製することができる。
類似する様式で、C34/N36の結合を破壊する候補薬物の能力を評価して、C34/N36のインヒビター、従って、HIV感染のインヒビターを同定することができる。この実施形態において、事前に形成されたC34/N36複合体が、該複合体を破壊するその能力の評価対象の候補薬物と合わされ、そうして被検試料が作製される。対照試料は、対照試料が候補薬物を含有しないことを除いて被検試料と同じである;対照試料は、被検試料と同じように処理される。C34/N36の結合が候補薬物の存在下で破壊され、対照試料中で破壊されない場合、あるいは複合体の破壊が、被検試料において、対照試料の場合よりも大きな程度で生じる場合、その候補薬物はC34/N36のインヒビター(破壊剤)である。結合破壊の検出は、(例えば、FRETまたは蛍光アッセイによって、あるいは放射性標識またはビオチンなどの他の検出可能な標識を検出することによって)C34/N36結合の防止の/妨害の検出に関して上記に記載されているように行うことができる。
本明細書中に記載されている結果は、ハイブリッド(すなわち、融合タンパク質)がタンパク質(GCN4など)の三量体状のコイルドコイル領域とHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルとの間で形成され得ること、およびそのようなハイブリッドが三量体であり(すなわち、凝集しておらず)、100%のらせん状であることを明らかにしている。本明細書中に記載されている結果はまた、そのような融合タンパク質はN−ペプチドの大きなくぼみ(すなわち、疎水性ポケット)の構造を破壊または変化しないことを明確に示している。これは、IQN17(リガンドを含まず、D10pep1との複合体状態;実施例5を参照のこと)において、本質的にはN36の場合(すなわち、C34との複合体状態;Chan D.C.他、Cell、89,263(1997))と同じである。
図5A、図5Bおよび図6は、本明細書中に記載されているペプチドの評価結果を示している。図5A〜5Bにおいて、IQN17の結晶構造が、3つの鎖からなる連続したコイルドコイルであることが明らかにされている;HIV gp41に由来する17残基により、gp41の結晶構造において見出された疎水性ポケットと非常に類似した疎水性ポケットが形成されている。示されているように、D10pep1はこのポケットに結合し、そして本明細書中に記載されているD−ペプチドインヒビターのすべてに見出されている保存された残基(ロイシン、トリプトファン、トリプトファン)に対応するD10pep1の残基がこのポケットに詰め込まれる。明らかに、このことは、これらの保存された残基を含む他のD−ペプチドインヒビターが同じようにIQN17に結合するであろうことを示している。図6には、Chan他(Chan,D.C.他、Proc.Natl.Acad.Sci.、95:15613〜15617(1998))によって記載された方法に従って行われたシンシチウムアッセイの結果が示されている。図6にその結果が示されている実験では、本明細書中の記載に従って同定されたD−ペプチドが使用された。それぞれの場合において、ブロック基(例えば、アセチル基)がそのN末端に存在し、CONH2 (アミド)がそのC末端に存在した。これらのアッセイの結果は様々なIC50濃度を示した。この場合、IC50は、ペプチドを含まない対照と比較して、半数のシンシチウムが認められる濃度である。例えば、N末端に2個のリジンを有するD10pep5は約6μMのIC50を有している。
別の実施形態において、本発明は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物を同定する方法に関する。この場合、さらに、そのアッセイは、上記に記載されているC34/N36複合体アッセイとは異なり、結合の喪失または低下を評価することに基づいている。これは、このアッセイが、HIV gp41のN−ヘリックス領域によって形成される溝の任意の部分との相互作用を含み、あるいはそのような相互作用を検出する点でより一般的なアッセイであり、この実施形態は、HIV gp41の疎水性ポケット(N−ヘリックスコイルドコイルくぼみ)に注目している。この実施形態において、この方法は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみに結合するその能力についての評価対象の候補薬物を、タンパク質のコイルドコイル領域の三量体型、およびHIV gp41のくぼみを含むのに充分な部分のHIV gp41のN−ペプチドを含む融合タンパク質と、ペプチドまたは他の分子による結合のためにHIV gp41が提示されるのに適切な条件のもとで合わせる工程、および、候補薬物がその融合タンパク質を結合するかどうかを(例えば、高処理能スクリーニングで)測定する工程を含む。結合が生じる場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合する薬物であり得る「当たり(hit)」である。結合が生じる場合、その候補薬物は、N−ヘリックスのコイルドコイルに結合しており、それがコイルドコイルのくぼみに結合しているかどうかを明らかにすることができる。その後、そのような「当たり」は、その候補薬物が薬物になるかどうかを決定するために、細胞/細胞融合アッセイおよびHIV感染力アッセイなどの二次アッセイでスクリーニングされ得る。あるいは、さらに、そのような「当たり」は、ポケット結合分子が結合しない他の融合タンパク質(またはペプチド)を用いた対抗スクリーニングの使用によってさらに評価することができる。例えば、(IQN17の場合と同じ3つの表面変異を有する)GCN4−pIQ I、または疎水性ポケットにおける点変異を有するIQN17の一形態であるIQN17(G39W)(これは、グリシン39が、ポケットへの大きな突出をもたらすトリプトファンに変異している)を対抗スクリーニングにおいて使用することができる。この例において、IQN17には結合するが、(IQN17の場合と同じ3つの表面変異を有する)GCN4−pIQ IまたはIQN17(G39W)には結合しない候補薬物が、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合する薬物である。
さらなる実施形態において、競合的アッセイが行われる。この実施形態において、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合するペプチドまたはタンパク質が、候補薬物および融合タンパク質と合わされ、その後、候補薬物がHIV gp41のくぼみを結合するかどうかが、HIV gp41のN−ヘリックスのらせん状くぼみを結合するペプチドの存在下で測定される。候補薬物が融合タンパク質を結合する場合、その候補薬物は、HIV gp41のくぼみを結合する薬物である。例えば、GCN4の、三量体状のコイルドコイル領域と、N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを含むHIV gp41のN−ペプチドのC末端とを含む融合タンパク質(IQN17)が、N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合する「参照」D−ペプチド(例えば、本明細書中に記載されているD−ペプチドのいずれかまたはその変異体)、およびHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合するその能力についての評価対象の候補薬物と合わされ、そうして被検試料が作製される。その後、被検試料は、くぼみに結合するD−ペプチドの結合に関して適切な条件のもとで維持される。候補薬物を除いて被検試料と同じ成分を含み、かつ被検試料と同じように扱われる対照試料もまた評価される。両方の試料において、参照D−ペプチドの結合が評価される。参照D−ペプチドの結合が、候補薬物の存在下(被検試料の場合)において、その非存在下の場合(対照試料の場合)よりも小さい程度で生じる場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合する薬物である。結合の検出は、例えば、本発明のC34/N36の実施形態に関して上記に記載されているような類似した方法で評価される。例えば、D−ペプチドは、放射性標識または結合形成対の一方の成分(例えば、ビオチン)などの検出可能な標識で標識され、その後、(参照D−ペプチドがくぼみに結合するのに適切な条件のもとで被検試料が保持された後において)N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみが有する標識の程度が測定される。放射性標識が使用される場合、融合タンパク質が放射性標識を有する程度が被検試料において評価され、そして対照試料において融合タンパク質が放射性標識を有する程度と比較される。検出可能な標識が結合形成対の一方の成分(例えば、ビオチン)である場合、融合タンパク質が結合する程度を参照D−ペプチドにより検出するために、その結合形成対の第2成分(結合パートナー)が試料に加えられる。これは、直接的に、あるいは(例えば、結合形成対の第2成分に結合する抗体または他の成分などの分子を加えることによって)間接的に行うことができる。候補薬物がくぼみに対するD−ペプチドの結合を(完全または部分的に)阻害する場合、標識は、融合タンパク質(N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみ)にはほとんど存在していない。結合が、被検試料の場合(候補薬物の存在下)において、対照試料の場合(候補薬物の非存在下の場合)よりも小さい程度で生じた場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合する薬物である。
D−エナンチオマーのIQN17またはその変異体は、ライブラリーまたはコレクションの成分であり、かつgp41のN−ヘリックスコイルドコイルを結合する分子または化合物を同定するために有用である。例えば、ファージディスプレイライブラリーなどの分子または化合物のライブラリーまたはコレクションは、ポケットを結合する成分を同定するために、D−エナンチオマーのIQN17を用いてスクリーニングすることができる。これは、本明細書中に記載されているように問題なく行われている。IQN17の鏡像体またはその変異体は、標的分子として使用される。本明細書中で使用されている用語である「ポリペプチドのD−エナンチオマー」および「D−ペプチド」は、天然の掌体にある分子の完全な鏡像体をいう。従って、第2のキラル中心を含有するアミノ酸残基(IleおよびThrなど)の場合、天然に存在するアミノ酸残基の完全な鏡像体が、ポリペプチドのD体を作製するために使用される。本明細書中で同様に使用されている用語の「D−アミノ酸」および「L−アミノ酸」はともに、非キラルなアミノ酸であるグリシンを含むことを意味する。D−IQN17は、結合形成対の一方の成分(例えば、ビオチン)をそれに付加し、そしてその結合形成対のもう一方の成分(例えば、ストレプトアビジン)を固体表面に付加することなどによって固体表面に固定化することができる。この2成分が結合することにより、ファージパンニングなどのためにD−IQN17が固体表面に固定化される。酵素の認識部位であるリンカー(例えば、L−リジン残基が使用されるGly−Lys−Glyなどのアミノ酸リンカー)を、酵素の認識部位(この場合、トリプシンの認識部位)を提供するためにD−IQN17配列と結合形成対成分との間(ビオチンとD−IQN17との間)に設置することができ、その結果、結合したファージを、酸の添加などの非特異的な溶出よりはむしろ、トリプシン消化によって溶出することができる。ファージディスプレイライブラリーは、適切なファージ遺伝子に融合させた任意の適切な長さのL−アミノ酸ペプチドのライブラリーであり得る。1つの実施形態において、そのようなライブラリーは、M13ファージのgIII遺伝子に融合させたL−アミノ酸ペプチドのファージディスプレイライブラリーである。ペプチドは、1つの実施形態において、両端にシステインまたはセリンのいずれかが隣接した10個のランダムにコードされたアミノ酸残基を含む。典型的には、数回のパンニングが行われる。D−IQN17に特異的に結合するファージが同定される。D−IQN17のgp41領域のみを結合するファージを、パンニング後の評価によって、例えば、抗原を有しないウエルに対してスクリーニングを行い、その後、一連の分子に対してさらに試験することによって同定することができる。例えば、特異的なポケット結合性ファージには、D−IQN17を結合するが、(IQN17の場合と同じ3つの表面変異を有する)D−GCN4−pIQ I、または疎水性ポケットにおける点変異を有するD−IQN17の形態であるD−IQN17(G39W)(これは、グリシン39が、ポケットへの大きな突出をもたらすトリプトファンに変異している)には結合しないファージが含まれる。このような方法で同定されたD−ペプチドは、細胞/細胞融合アッセイおよびHIV感染力アッセイなどの知られているアッセイを使用して、HIV gp41を阻害するその能力について評価することができる。本明細書中に記載されている鏡像ファージディスプレイ法により、IQN17およびIQN17(G39W)ならびにそれらのD−エナンチオマーの価値が、gp41ポケットを結合するHIV−1侵入のインヒビターを同定する際に明らかにされた。同定された9個の特異的なポケット結合性ファージ配列(D−IQN17(G39W)にではなく、D−IQN17に結合するファージ)のうち、8個はEWXWLのコンセンサス配列を含有し、D−ペプチドとして試験されたときにHIV−1 gp41により誘導されるシンシチウム形成を阻害する。9番目のペプチドは細胞に対して毒性を有していたために、それ以上は調べなかった。
D−IQN17およびD−IQN17(G39W)のD体は、天然酵素による酵素的分解を受けない他のポケット結合分子を発見するために、他の生物学的にコードされるライブラリーを用いた類似する方法において使用することができる。例えば、他のファージディスプレイライブラリーを使用して、(例えば、両側に位置するCys残基間に異なる数の残基を有し、かつ/またはシステイン残基が両側に位置する領域の外側にランダムにコードされたアミノ酸残基を有し、かつ/または3つ以上のシステイン残基を有する)新しいD−ペプチドインヒビターを同定することができる。ファージを用いることなくペプチドライブラリーをコードする方法(例えば、この場合、コードするmRNAがペプチドに結合する)を、D−ペプチドインヒビターを同定するために使用することができる。RNAライブラリーまたはDNAライブラリーを(例えば、SELEX法とともに)使用して、疎水性ポケットには結合するが、天然のヌクレアーゼに対する基質ではないL−リボースまたはL−デオキシリボースに基づくRNAアプタマーまたはDNAアプタマーをそれぞれ同定することができる(例えば、Williams他、PNAS、74:11285(1997))。
天然のL掌体にあるIQN17およびIQN17(G39W)の形態もまた、生物学的にコードされたライブラリーを用いた類似する方法において使用することはできるが、最も可能性のある適用は、他の非生物学的にコードされたライブラリーとの使用であろう。例えば、(1ビーズに1化合物の多様性を有する)ビーズにおける化学的なコンビナトリアルライブラリーを、(例えば、放射性または発色基により)標識されたIQN17を用いてスクリーニングして、IQN17に結合する分子を含有するビーズを同定することができる。この例において、IQN17(G39W)を、そのようなビーズにおける分子がIQN17のポケットに結合するかどうかを明らかにするための対抗スクリーニングとして使用することができる(分子がIQN17(G39W)に結合した場合、それらはポケット結合分子であるとは考えられない)。別の例として、IQN17が前もって結合しているビーズを、潜在的なポケット結合分子の混合物(例えば、化学物質または天然産物抽出物の混合物)とインキュベーションすることができる。その後、(ビーズに結合している)IQN17を混合物から分離し、洗浄し、次いで、ビーズ上のIQN17に結合している分子を溶出させる条件(例えば、有機溶媒、低いpH、高い温度)に供することができる。溶出された分子(すなわち、潜在的なポケット結合分子)を分析化学的方法(例えば、HPLC、質量分析法)によって同定することができよう。IQN17(G39W)を用いた対抗スクリーニングは、真のポケット結合分子を同定することを助けるために有用である。
上記に記載されている方法によって同定された薬物は、その後、HIV gp41の機能(膜融合)、従って、細胞内への侵入を(完全または部分的に)阻害するその能力についてさらに試験される。これは、本明細書中に記載されているシンシチウムアッセイおよび/または感染力アッセイあるいは当業者に知られている他のアッセイなどのインビトロアッセイ、および/または適切な動物モデルもしくはヒトにおけるインビボアッセイをさらに使用して行われる。
本発明の1つの実施形態は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルに結合する薬物、特に、N−ヘリックスコイルドコイルポケットを結合する薬物を同定する方法である。この方法は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットを結合するその能力についての評価対象の候補薬物と、可溶性三量体のコイルドコイル、およびHIV gp41ポケットを含むのに充分な部分のHIV gp41のN−ペプチドを含むペプチドとを、分子または化合物(例えば、薬物)による結合に関してHIV gp41ポケットが提示されるのに適切な条件のもとで合わせる工程、および、その候補薬物がHIV gp41ポケットを結合するかどうかを測定する工程を含む。候補薬物とHIV gp41ポケットとの結合が生じた場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合する薬物である。所望により、候補薬物の結合は、N−ヘリックスコイルドコイルポケットを結合するペプチド(ポケットを結合するペプチドとして以前に同定されたペプチド)が候補薬物およびそのペプチドが合わされることを除いて、上記に記載されているアッセイで評価することができる。このような競合的アッセイにおいて、N−ヘリックスコイルドコイルのポケットに対する候補薬物の結合が、既知の結合性成分(moiety)(ポケットを結合する分子または化合物)の存在下で評価される。候補薬物の結合がその既知の結合性成分の存在下で生じた場合、その候補薬物は、既知の結合性成分と充分に競合する充分な親和性でN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合する薬物である。この実施形態において使用される融合タンパク質は、可溶性三量体状のコイルドコイル、例えば、タンパク質の、可溶性三量体状のコイルドコイル領域(例えば、GCN4またはGCN4−pIQ Iのタンパク質などの非HIVタンパク質、しかし、HIVタンパク質を使用することができる)と、HIV gp41のくぼみを含むのに充分な部分のHIV gp41のN−ペプチドとを含む。例えば、この部分は、配列番号:20を含むことができ、あるいはくぼみを含むの充分な部分を含むことができ、そして適切な融合タンパク質または他の可溶性モデルにおいて存在する場合に、結合が得られるような方法でくぼみを提示し得る。あるいは、本明細書中に示されているHIV gp41の配列変異体、ヒトウイルスの別の株(例えば、HIV−2)に由来する配列、または別の種(例えば、SIV、ネコ免疫不全症ウイルス、Visnaウイルス(M.Singh他、J.Mol.Biol.、290:1031(1999))に由来する配列を融合タンパク質または可溶性モデルにおいて使用することができる。融合タンパク質は、それがHIV成分との融合タンパク質である場合、結合が得られるような方法でHIVのくぼみが提示されるときには、任意のタンパク質の、可溶性三量体状のコイルドコイルを含むことができる。例えば、GCN4−pIQ I、GCN4−pII、モロニーマウス白血病ウイルス(Mo−MLV)またはABCヘテロ三量体の融合タンパク質であり得る。1つの実施形態において、融合タンパク質はD型のIQN17である。別の実施形態において、融合タンパク質は天然のL掌体のIQN17である。
競合的アッセイ形式において、N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合することが知られているペプチドはどれも、知られている結合性成分として使用することができる。例えば、本明細書中に記載されているペプチド(配列番号:3〜12、15、17〜19、23、24)のいずれか、あるいはその変異体またはその一部を使用することができる。また、ペプチドでない任意のポケット結合分子を競合的アッセイ形式において使用することができる。競合的アッセイは、溶液中で、あるいはビーズ上で、あるいは固体表面で行うことができる。
1つの実施形態において、候補薬物は検出可能に標識され、そしてHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルに対する候補薬物の結合が、(標識された候補薬物がN−ヘリックスコイルドコイルに結合する結果として)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルにおける検出可能な標識の存在を検出することにより測定される。可溶性モデルのヘリックスコイルドコイルのポケットにおける標識の検出により、候補薬物がN−ヘリックスコイルドコイルのポケットに結合することが示され、そして候補薬物が、N−ヘリックスコイルドコイルのポケットに結合する薬物であることが明らかにされる。標識された候補薬物が融合タンパク質において検出される場合、候補薬物は、N−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合する薬物である。
HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合する薬物を同定する方法の別の実施形態において、薬物による結合が得られるような方法でポケットを提示する可溶性モデルが候補薬物と合わされ、そして候補薬物と可溶性モデルのN−ヘリックスコイルドコイルとの結合が生じているかどうかが測定される。結合が生ずる場合、その候補薬物は、ポケットを結合する薬物である。この場合もまた、競合的アッセイ形式を使用することができる。競合アッセイの成分(例えば、IQN17およびD−ペプチド)を、蛍光基/消光基の組み合わせを含む様々な検出可能な標識のいずれかで標識することができる。候補薬物を、上記に記載されているように、様々な検出可能な標識のいずれかで標識することができる。この実施形態において使用される可溶性モデル(融合タンパク質)の成分、および競合的アッセイ形式において使用される競合性成分もまた、上記のようでありうる。
本発明はまた、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合する薬物を製造する方法に関する。1つの実施形態において、この方法は下記のように行われる;HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを提示する可溶性モデル、あるいは(例えば、GCN4−pIQ I、GCN4−pII、Mo−MLV、ABCヘテロ三量体などの非HIVタンパク質またはHIVタンパク質などのタンパク質の)可溶性三量体のコイルドコイルを含む融合タンパク質が、薬物による結合のためにHIV gp41のポケットが提示されるのに適切な条件のもとで、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合して、細胞内への侵入を阻害するその能力についての評価対象の候補薬物と合わされる。候補薬物がHIV gp41のポケットを結合するかどうかが測定される。この場合、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットに対する候補薬物の結合が生ずる場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物である。この実施形態において、融合タンパク質は、(例えば、GCN4、GCN4−pIQI、GCN4−pII、Mo−MLV、ABCヘテロ三量体の可溶性三量体コイルドコイルなどの非HIVタンパク質またはHIVタンパク質などのタンパク質の)可溶性三量体コイルドコイルと、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを含むのに充分な部分のHIV gp41のN−ペプチド(例えば、配列番号:20のすべてまたは一部、あるいはその変異体または改変体、あるいは別の株または種から得られる配列)とを含む。本明細書中に記載されているIQN17をこの方法において使用することができる;IQN17のDエナンチオマーもまた、(例えば、鏡像ファージ適用において)使用することができる。HIVの細胞内侵入を阻害するために製造された薬物の能力は、本明細書中に記載されているように、例えば、シンシチウムアッセイおよび/または感染力アッセイにおいて評価される。そのような能力は、適切な動物モデルにおいて、あるいはヒトにおいてさらに評価することができる。
本発明はまた、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合する薬物を製造する方法に関する。この方法は:HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットの可溶性モデル(例えば、本明細書中に記載されている融合タンパク質、および特に、IQN17またはその変異体)を製造するか、またはそのようなモデルを得る工程;HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合するその能力についての評価対象の候補薬物(分子または化合物)と、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットの可溶性モデルとを合わせる工程、および、候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合するかどうかを測定する工程を含む。候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合する場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合する薬物である;結果として、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物が製造される。この実施形態において使用される融合タンパク質は、本明細書中に記載されており、例えば、IQN17、IQN17のDエナンチオマー、またはその変異体であり得る。あるいは、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合して、HIVの細胞内侵入を阻害する薬物は、下記に記載される工程を含む方法によって製造することができる:本明細書中に記載されているようにして、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットの可溶性モデルを製造するか、またはそのようなモデルを得る工程;そのような可溶性モデルと、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合するその能力についての評価対象の候補薬物とを合わせる工程;候補薬物が可溶性モデル(融合タンパク質)のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを結合するかどうかを測定する工程、この場合、結合が生ずる場合、その候補薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルを結合する薬物である;およびN−ヘリックスコイルドコイルを結合して、HIVの細胞内侵入を阻害する薬物の能力を評価する工程、この場合、薬物がHIVの細胞内侵入を阻害する場合、その薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットを結合して、HIVの細胞内侵入を阻害する薬物である。HIVの細胞内侵入を阻害するその能力は、(例えば、シンシチウムアッセイ、感染力アッセイにおいて)インビトロで、あるいは(例えば、適切な動物モデルまたはヒトにおいて)インビボで評価することができる。可溶性モデルは、タンパク質の可溶性三量体コイルドコイル(例えば、GCN4−pIQ I)などの可溶性三量体コイルドコイルと、HIV gp41のポケットを含むのに十分な部分のHIV gp41のN−ペプチドとを含むペプチドであり得る。
本明細書中に記載されている方法ならびに他の方法によって同定または製造される薬物であって、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルを結合して、HIVの細胞内侵入を阻害する薬物もまた本発明の主題である。
本明細書中に記載されている方法ならびに他の方法によって同定または製造される薬物であって、HIV gp41の2つ以上のN−ヘリックスコイルドコイルに結合して、HIVの細胞内侵入を阻害する薬物もまた本発明の主題である。そのような薬物は、阻害の有効性を増大させるために、例えば、適切なリンカー(例えば、アミノ酸残基または他の化学的成分のリンカー)を介して2つ以上のポケット結合分子(薬物)を連結することによって得ることができる。連結されるポケット結合分子は同じであってもよく、異なっていてもよい。本明細書中に記載されている方法または他の方法によって同定または製造される薬物であって、HIVgp120、CD4、CCR5、CXCR4、またはHIV gp41の非ポケット領域に結合することに加えて、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに結合する薬物もまた本発明の主題である。
HIV gp41を阻害する薬物はまた、IQN17と、IQN17によって提示されるN−ヘリックスコイルドコイルのくぼみを結合するD−ペプチドとの複合体のX線結晶構造を参照して、例えば、本明細書中に示されているIQN17とD10pep1との複合体のX線結晶構造を参照して設計または改善することができる。あるいは、さらに、HIV gp41を阻害する薬物はまた、本明細書中に示されている遊離のIQN17のX線結晶構造を参照して設計または改善することができる。
本明細書中に記載されているようにして同定された化合物および分子(薬物)は、HIVの細胞内侵入を(部分的または完全に)阻害し、従って、未感染個体(ヒト)および感染個体において、(例えば、未感染個体における感染を防止または低減させるために、感染個体におけるさらなる感染を低減または予防するために)治療的に有用であり、そして、gp41により誘導される膜融合の機構を研究するための研究用試薬、および個体によるウイルスクリアランス速度を評価するための研究用試薬の両方として有用であり、そしてHIVの細胞内侵入を阻害する他の化合物および分子(薬物)を発見または開発するための試薬として有用である。本明細書中に記載されているD−ペプチド(例えば、D10pep5、D10pep1)は、本明細書中に記載されている感染力アッセイを使用して、細胞の感染を阻害することが示されている。他のD−ペプチドは、感染力を阻害するその能力について同様に評価することができる。
上記薬剤は、経口投与、鼻腔投与、腹腔内投与、筋肉内投与、膣投与または直腸投与などの様々な経路で投与できる。各態様では、上記薬剤が、適当な担体または医薬組成物に入れて提供される。例えば、くぼみ結合薬は、適当な緩衝液、食塩水、水、ゲル、フォーム、クリームまたは他の適当な担体に含めて投与することができる。上記薬剤ならびに一般に適当な担体および随意の成分(例えば安定化剤、吸収もしくは取込み促進剤、着香料および/または乳化剤など)を含んでなる医薬組成物を製剤化し、それを個体(HIV未感染者またはHIV感染者)に治療有効量で投与することができる。一態様として、gp41のN−ヘリックスコイルドコイルを結合する薬剤(例えば本明細書に記載するもの、DP178(C.T.Wild,D.C.Shugars,T.K.Greenwell,C.B.McDanal,T.J.Matthews,同上 91:9770(1994))、HIV−1 gp41(HXB2株)の残基117−152に相当しアミノ末端がアセチル化されカルボキシ末端がアミド化されているT649)(L.T.Rimsky,D.C.Shugars,T.J.Matthews,J.Virol.,72:986(1998)などは、殺微生物薬として投与(または適用)され、細胞へのウイルス侵入を妨害する。例えば、HIVくぼみを結合する1または複数の薬剤を、膣、直腸または口腔粘膜などの粘膜表面に適用もしくは粘膜表面と接触させる組成物に組み込むことができる。上記組成物は、上記薬剤の他に、粘膜表面または避妊具(例:コンドーム、子宮頚部(cervical)キャップ、ペッサリー)の表面への適用に適した担体または基剤(例:クリーム、フォーム、ゲル、その他、上記薬剤、水、緩衝液を保持するのに十分な粘性を持つ物質)を含んでなる。上記薬剤は、上記薬剤を含有するフォーム、ゲル、クリーム、水または他の担体の適用などによって、粘膜表面に適用することができる。もう一つの選択肢として、使用条件(例えば膣または直腸の温度、pH、湿度条件)下に(例えば分解、溶解、その他の放出手段によって)薬剤を放出または送達する素材で作られた、1または複数の上記薬剤を含有する担体または基剤である膣坐剤または直腸坐剤を使って適用することもできる。これらの組成物を経口的に投与(例えばカプセル、丸剤、液体、その他の形態で嚥下)して、個体の血流中に移行させることもできる。いずれの態様でも、例えば薬剤を徐々に放出するまたは所定の期間後に放出する組成物に上記薬剤を組み込むことなどによって、薬剤の制御放出または持効性放出(time release)(徐放、投与または挿入後の特定の時点での放出)を達成することができる。もう一つの選択肢として、(例えば膣、口または直腸への)投与または適用後直ちにまたは速やかに薬剤を放出する組成物に、上記薬剤を組み込むこともできる。複合的放出(例えば薬剤の一部を挿入後直ちにまたは速やかに放出すると共に、薬剤の一部を挿入後経時的に、または特定の時点で放出すること)も効果的であり得る(例えば、2種類以上の素材から構成され、一つの素材からは放出または送達が挿入後直ちにまたは速やかに起こり、および/または、一つの素材からは放出または送達が徐々に起こり、および/または、一つの素材からは指定の期間後に放出が起こる組成物を製造することなどによる)。例えば、HIVくぼみを結合する1または複数の薬剤を、米国特許第4,707,362号に記載されているような徐放性組成物に組み込むことができる。それらのクリーム、フォーム、ゲルまたは坐剤は、産児制限にも使用されるもの(例えば殺精子剤または他の避妊剤)であってもよいが、そうである必要はない(例えば、抗HIV薬を単独で、または別の非避妊剤(抗菌薬、抗真菌薬または潤滑剤など)と組み合わせて送達するためだけに、それらを使用することもできる)。本発明の抗HIV薬は、HIV gp41 N−ヘリックスコイルドコイルを結合する1または複数の薬剤でコーティングされている、または使用条件下での放出が可能な形でそれらの薬剤が組み込まれている避妊具(例えばコンドーム、子宮頚部キャップ、ペッサリー)を使って、個体に投与することもできる。上述のように、薬剤の放出は直ちに、徐々に、または指定した時点で起こりうる。その結果、それらの薬剤は、HIVと接触しHIVを結合して、細胞へのウイルス侵入を減少させ、または防止する。
もう一つの態様では、gp41 N−ヘリックスコイルドコイルくぼみへの結合以外の機序によって細胞へのHIV侵入を妨害する薬剤(例えば、CD4段階でgp120結合を妨害することによって、ウイルス侵入を妨害する薬剤)が、gp41 N−ヘリックスコイルドコイルに結合する薬剤について上述したように、粘膜表面に投与または適用される。
本発明の融合タンパク質は、可溶性三量体型または可溶性三量体状のコイルドコイル、例えばある(非HIV由来またはHIV由来の)タンパク質の可溶性三量体型または可溶性三量体状のコイルドコイル領域などと、HIV gp41のNペプチドのC末端のうちHIVコイルドコイルくぼみまたは疎水性ポケットを包含する(構成する)のに十分な部分(N−ペプチドのポケット構成残基)とを含んでなる。HIV gp41のNペプチドは、HIV−1、HIV−2、別のHIV株、または他の種に由来する株(例えばサル免疫不全症ウイルス(SIV)、ネコ免疫不全症ウイルスまたはビスナウイルスなど)のものであってよい。例えばHIV−2配列LLRLTVWGTKNLQARVT(配列番号:26)、SIV配列LLRLTVWGTKNLQTRVT(配列番号:27)、またはHIV−1、HIV−2およびSIV中の不変残基からなる配列(LLXLTVWGXKXLQXRXX(配列番号:42)で表される;ここにアミノ酸残基L、T、V、W、G、K、QおよびRはアミノ酸残基に使用される一文字コードであり、Xは任意のアミノ酸残基を表す)。また本発明の主題はHIV gp41疎水性ポケットの可溶性三量体モデルであり、これはD−ペプチドであってもL−ペプチドであってもよく、可溶性三量体コイルドコイルと、HIV gp41のNペプチドのうちHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイル領域のポケットを形成するアミノ酸残基を含むのに十分な部分とを含んでなる。上記D−またはL−ペプチドは、GCN4−pIQ I、GCN4−pII、モロニーマウス白血病ウイルスまたはABCヘテロ三量体のコイルドコイルを、可溶性三量体コイルドコイルとして含んでなることができる。HIV gp41のNペプチドのうち該ポケットのアミノ酸残基を含むのに十分な部分である成分は、例えばHIV−1のLLQLTVWGIKQLQARIL(配列番号:20)、HIV−2のLLRLTVWGTKNLQARVT(配列番号:26)、SIVのLLRLTVWGTKNLQTRVT(配列番号:27)またはこれらの不変残基、すなわちLLXLTVWGXKXLQXRXX(配列番号:42)を含んでなることができる。
本発明の一態様は、あるタンパク質(GCN4−pIQ Iなど)の三量体状のコイルドコイル領域と、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルとの融合タンパク質であって、N−ヘリックスくぼみの全部または一部を含むか、N−ヘリックスくぼみを含まないものである。すなわち、本発明の融合タンパク質は、GCN4−pIQ Iの三量体型のコイルドコイル領域と、HIV−1 pg41のN−ペプチドの一部を含んでなることができ、そのgp41のN−ペプチドの一部は、HIV−1 gp41のN−ヘリックスくぼみの一部または全部を含むか、HIV−1 gp41のN−ヘリックスくぼみを含まない。例えば、GCN4−pIQ I由来の残基とN−36由来の残基を含有する融合タンパク質を作成することができる。IQN24nと表記される融合タンパク質は、溶解性を増すための3つの突然変異を含むGCN4−pIQ Iの29残基と、N36のN−末端に由来する24残基(SGIVQQQNNLLRAIEAQQHLLQLT)(配列番号:21)を含有し、大腸菌での組換え発現用に、余分のMet残基がN−末端に追加されている。例えば、融合タンパク質は、(配列番号:21)のアミノ酸配列を含んでなるHIV gp41のN−ペプチドの一部を含んでなることができる。IQN24nの配列は、MRMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKKLISGIVQQQNNLLRAIEAQQHLLQLT(配列番号:22)である。この融合タンパク質は、化学合成法または組換えDNA法などの様々な方法によって、もしくは大腸菌での組換え発現によって製造することができ、その場合はN−およびC−末端はブロックされない。GCN4−pIQ IコイルドコイルのコイルドコイルパラメーターはHIV gp41 N−ヘリックスコイルドコイルとほぼ同一であるので、得られる融合タンパク質分子(IQN24n)は、gp41 N−ヘリックスコイルドコイルの一部を(凝集していない)三量体として提示する長い三量体コイルドコイルを形成すると予想される。
本発明のもう一つの態様は、個体における免疫反応を誘発する方法を提供する。gp41 N−末端領域コイルドコイルの一部分に関する可溶性三量体モデルを作成するために使用した戦略は、HIVワクチン候補の開発にも役立つ。将来的なHIVワクチンの一つの目標は、HIV−1 gp120/gp41エンベロープタンパク質複合体の「プレヘアピン」中間体に結合する中和抗体反応を誘発することである。この過渡的な形態では、gp41のN−ヘリックス領域は露出しているが、C−ヘリックス領域は露出していない。gp41のN−ヘリックス領域に対する抗体反応を誘発するには、免疫原として、N−ペプチド(N36、N51またはDP−107など)を使用することが妥当であるように思われるが、単離されたN−ペプチドは凝集し、gp41 N−ヘリックスコイルドコイル三量体を正しく提示しない。したがって、一般に、gp41疎水性ポケットに関するこの問題を解決するために本明細書に記載する戦略と同じ戦略を、gp41 N−ヘリックスコイルドコイル領域の可溶性三量体モデルの開発にも適用することができる。このような三量体モデル(IQN17など、ただし例えばgp41のポケット残基を含まないペプチドも挙げられる)を免疫原として使用することにより、プレヘアピン中間体に対する抗体反応を誘発し、それによってHIV−1感染を阻害することができる。例えば、免疫化しようとする個体には、あるタンパク質の三量体型のコイルドコイル領域とHIV−1 gp41由来のN−ペプチドの一部とからなり、そのgp41由来の部分がN−ヘリックスコイルドコイルくぼみの一部または全部を含むか、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを含まない融合タンパク質を、医薬的に許容できる担体に入れて投与することができる。例えばIQN24nを単独で、または他の物質と組み合わせて、ワクチンに使用することができ、そのワクチンは、それが投与される個体(ワクチン接種者)中で上記コイルドコイルに結合する抗体の産生を誘発し、それによって感染および/または疾患からの保護を与えるだろう。IQN24nはN−ヘリックスコイルドコイルに結合する抗体(モノクローナルおよび/またはポリクローナル抗体)を(ヒト、その他の動物、または抗体ライブラリーから)同定するため、および/または、それらの抗体を産生させるためにも使用できる。これは、IQN24n(またはIQN17もしくは他の可溶性三量体モデル)を使って、生物学的試料(例えば血液)中のN−ヘリックスコイルドコイルを結合する抗体の存在/不在/レベルを評価する診断法の基礎になる。
本明細書に記載する融合タンパク質(例えばIQN17またはIQN24n)のGCN4−pIQ I成分には、それらの変化がコイルドコイルの三量体状態を変化させないという条件で、任意の多種多様な変異を施し、上記の方法に使用することができる。HIV gp41 N36ペプチドに由来する部分である融合タンパク質成分のアミノ酸組成を変化させて、変異体(例えばIQN17またはIQN24nの変異体)を作成することもできる。コイルドコイルの三量体状態およびHIV gp41のN−ペプチドコイルドコイルに相当する融合タンパク質の表面の構造が維持されるのであれば、可能なアミノ酸残基変化の数または種類に制限はない。HIV gp41 N−ペプチドの一部である融合タンパク質成分は、N−ヘリックスくぼみの全部または一部を含んでもよいし、N−ヘリックスくぼみを含まなくてもよい。例えば、N51、N36、DP−107の他の部分またはHIV gp41 N−ヘリックス領域の他の領域を、GCN4−pIQ I(または別の三量体状のタンパク質のコイルドコイル領域)に融合して、(凝集していない)三量体らせんコイルドコイル融合タンパク質を作成し、それを上記の方法に使用することができる。コイルドコイルの三量体状態およびHIV gp41のN−ペプチドコイルドコイルに相当する融合タンパク質の表面の構造が維持されるのであれば、設計し作成することができる融合タンパク質の数と種類に制限はない。そのような融合タンパク質は、例えばコイルドコイルのヘプタドリピート位置またはコイルドコイルパラメーターを評価するなどといった、当業者に知られている方法を使って、設計し作成できる。
本明細書には、HIVエンベロープ糖タンパク質gp41(例えばHIV−1、HIV−2)のN−ヘリックスコイルドコイルの表面にあるくぼみに結合するペプチド(D−ペプチドであってもL−ペプチドであってもよい)が記載される。そのようなペプチドは、それらが、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみとHIV gp41のC−ペプチド領域のアミノ酸残基の相互作用を妨害し細胞へのHIV侵入を防止するような形でくぼみを結合するのに足りる長さを持つのであれば、どのような長さであってもよい。例えば、D−またはL−ペプチドは少なくとも2つのアミノ酸残基からなり、一般的には約2〜約21アミノ酸残基になるだろう。すなわち、それらは約2〜約21個の範囲の任意のアミノ酸残基数からなりうる。アミノ酸残基は、後述するように、天然型または非天然型または修飾型のアミノ酸残基でありうる。ペプチドは直鎖状でも環状でもよい。
本明細書に記述するように同定されるD−ペプチドの例を図3に示す。ライブラリーの設計上、各ペプチドには、示したアミノ酸残基に加えて、N−末端にGAが、C−末端にAAが隣接している。N−末端のリジン残基は水溶性を向上させるために付加した。
一態様として、本発明は、HIV−1 gp41エンベロープタンパク質のC−ヘリックスに対するN−ヘリックスコイルドコイルの結合を阻害する化合物を提供する。このような化合物はHIVに感染した患者または潜在的にHIVに感染しやすい患者を治療する方法に役立つ。これらの化合物は、もう一つの化合物のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみへの結合能を評価する方法にも役立つ。
一態様として、HIV−1 gp41エンベロープタンパク質のC−ヘリックスに対するN−ヘリックスコイルドコイルの結合を阻害する化合物は、次の式Iの化合物である:

式中、A、B、DおよびEはそれぞれ独立して1つのD−アミノ酸残基、1つのL−アミノ酸残基、または1つのN−置換グリシル残基である。天然アミノ酸残基または非天然アミノ酸残基を使用できる。K、L、MおよびNはそれぞれ独立して1つのアミノ酸残基、または同一でも異なってもよい2〜約6アミノ酸残基のポリペプチド基であり、n、p、qおよびrはそれぞれ独立して0または1である。Fは直接結合または二官能性連結基であり、sは0または1である。
式Iの化合物の部分集合の一つでは、Aが次式のD−アミノ酸残基、L−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基である:

式中、RA1とRA2の一方は、置換されたまたは非置換のアリール、ヘテロアリール、アリールメチル、ヘテロアリールメチル、ベンゾ縮合アリール、ベンゾ縮合へテロアリール、ベンゾ縮合アリールメチル、ベンゾ縮合へテロアリールメチル、シクロアルキルまたはビシクロアルキルであり、他方は水素である。Wは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはハロゲン(例えばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素)である。
Bは、グリシル残基または次式のD−アミノ酸またはN−置換グリシル残基である:

式中、RB1とRB2の一方は、置換されたまたは非置換の直鎖状、分枝鎖状または環状アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールまたはヘテロアリールアルキル基であり、他方は水素である。Xは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など)である。
Dは、次式のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基である:

式中、RD1とRD2の一方は、置換されたまたは非置換のアリール、ヘテロアリール、アリールメチル、ヘテロアリールメチル、ベンゾ縮合アリール、ベンゾ縮合へテロアリール、ベンゾ縮合アリールメチル、ベンゾ縮合へテロアリールメチル、シクロアルキルまたはビシクロアルキルであり、他方は水素である。Yは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など)である。
Eは、次式のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基である:

式中、RE1とRE2の一方は、置換されたまたは非置換の直鎖状、分枝鎖状または環状アルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、他方は水素である。Zは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など)である。
K、L、MおよびNはそれぞれ独立して、1〜約6個の(同一でも異なってもよい)D−アミノ酸残基、L−アミノ酸残基、N−置換グリシル残基またはそれらの組み合せからなる。天然アミノ酸残基または非天然アミノ酸残基を使用できる。1つまたは複数のアミノ酸残基またはN−置換グリシル残基が、随意に、α−炭素がメチルまたはトリフルオロメチル基もしくはハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素原子など)で置換されていてもよい。
好ましい一態様として、RA1とRA2の一方およびRD1とRD2の一方は独立してフェニル、置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル、ナフチルメチル、置換ナフチルメチル、ベンジルまたは置換ベンジル基であるか、式:

[式中、JはO、SまたはNRであり、RはHまたは直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のC1 −C6 アルキル、好ましくはメチルである。R1、R2 、R3 、R4 およびR5 は、水素、ハロゲンおよびアルキル、好ましくは直鎖状、分枝鎖状、または環状のC1 −C4 アルキル(メチルなど)からなる群より独立して選択される]の基である。好適なフェニル、ナフチル、ナフチルメチルおよびベンジル置換基としては、アルキル、好ましくは直鎖状、分枝鎖状または環状のC1 −C4 アルキル(メチルなど)およびハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など)が挙げられる。より好ましくは、RA1とRD1は共に水素であり、RA2とRD2はそれぞれ独立して上述した基の一つである。
B1とRB2の一方は水素、置換されたまたは非置換の直鎖状、分枝鎖状または環状C1 −C4 アルキル、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはナフチルメチルであることが好ましい。好適な置換基としては、直鎖状、分枝鎖状または環状のC1 −C4 アルキル基およびハロゲン(フッ素、塩素、臭素またはヨウ素など)が挙げられる。より好ましくは、RB1は水素であり、RB2は上述した基の一つである。
E1とRE2の一方は、置換されたまたは非置換の直鎖状、分枝鎖状または環状C1 −C6 アルキル基であるか、置換されたまたは非置換のフェニルもしくはナフチル基であることが好ましい。好適な置換基としては、直鎖状、分枝鎖状または環状のC1 −C4 アルキル基(メチルなど)およびハロゲン(フッ素、塩素、臭素およびヨウ素など)が挙げられる。RE1は水素であり、RE2は上述した基の一つであることが、より好ましい。
式Iの化合物の好ましい部分集合では、AとDが、それぞれD−トリプトファン残基であり、EはD−ロイシン残基である。
Kは、アミノ−、カルボキシル−またはスルフヒドリル置換側鎖を含有するD−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基(システイン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはリジン残基など)であり、Lは2〜3個のD−アミノ酸残基、L−アミノ酸残基(それらD−またはL−アミノ酸残基は同一でも異なってもよい)またはN−置換グリシン残基からなるポリペプチドであることが好ましい。例えば一態様として、Lは、D−グリシン、D−アラニンまたはD−α−C1 −C4 −アルキルグリシンの中から選択される2〜3個の残基からなる。
Mは、2〜約8個のD−アミノ酸残基(そのうち少なくとも一つは、アミノ−、カルボキシ−またはスルフヒドリル−置換側鎖を含有するシステイン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはリジン残基などのアミノ酸残基)からなるポリペプチド基であることが好ましい。Nは、1〜約6個のアミノ酸残基(そのうち少なくとも一つはリジン残基である)からなるポリペプチド基であることが好ましい。
二価連結基Fの独自性は、それが、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみと相互作用する位置にA〜Eの残基を配置させるのに適した長さであるならば、重要ではない(J.R.Morphy,Curr.Op.Drug Discov.Develop.,1:59−65(1998))。例えばFは、約2〜約40原子の長さを持つことが好ましい。一態様として、Fは直接結合であるか、式:−Pn −のポリペプチド連結基である(式中、nは1〜約12であり、各Pは独立してL−またはD−アミノ酸もしくはN−置換グリシル残基またはグリシル残基もしくはN−置換グリシル誘導体である)。
もう一つの態様では、Fが、置換されたまたは非置換のC4 −C40−アルキレン基、例えば式:−(CH2m −のポリメチレン基(式中、mは約4〜約40である)などであるか、1または複数の位置が窒素、酸素またはイオウ原子などのヘテロ原子によって介在されているアルキレン基である。例えばFは、(CH2 CH2 O)q −の基(式中、qは1〜約20である)でありうる。またFは、1または複数の位置が、フェニレンまたはヘテロアリーレン基もしくは多糖基(例えばグリコシド基、もしくは1または複数のグリコシド基(例えば1〜約10個のグリコシド基)からなるポリ(グリコシド)基)で介在されているアルキレン基であってもよい。好適なグリコシドとしては、グルコシド、ラクトシド、マンノシド、ガラクトシド、フコシド、フルクトシド、グロシド、アロシド、アルトロシド、タロシド、イドシド、その他当該技術分野で知られれているもの(ピラノシド類およびフラノシド類など)が挙げられる。
C−末端アミノ酸残基を持つ式Iの化合物では、そのC末端残基は、当該技術分野で知られているように、例えばアミド、N−置換アミドまたはカルボン酸保護基の形であってもよい。N−末端残基の窒素原子は、当該技術分野で知られているように、アシル化(例えばアセチル化)されていてもよく、あるいはアミノ保護基で置換されていてもよい。
本明細書において「D−アミノ酸残基」という用語は、D−グリセルアルデヒドと同じ絶対配置を持つα−アミノ酸残基を指す。そのアミノ酸残基が、第1の非水素α置換基と、メチルおよびハロゲンから選択される第2のα置換基とを含む場合、その絶対配置は、グリセルアルデヒドα炭素上に水素原子の代わりに当該第2のα置換基を持つD−グリセルアルデヒドと同じである。
本明細書に記載のペプチド、当該ペプチドの一部、当該ペプチドの変異体/誘導体または当該変異体/誘導体の一部は、細胞へのHIV侵入のインヒビターとして使用できる。図3に記載のペプチド、またはコイルドコイルのC末端にある疎水性ポケットに収まり、gp41のC−ペプチド領域のN−ペプチド領域との相互作用を防ぐのに十分なペプチドの一部は、HIV感染を阻止するのに役立つ。記載した任意のペプチドまたはその誘導体の一部は、2〜20アミノ酸残基(2から20までの任意の残基数)の大きさをとりうる。本明細書に記載のコンセンサス配列トリプトファン−トリプトファン−ロイシンまたは配列トリプトファン−トリプトファン−ロイシン−グルタミン酸および追加の残基からなるD−ペプチドを使用することができる。そのようなD−ペプチド中に存在する他の残基とそのD−ペプチドの大きさは、本明細書に記載のペプチドを参照して選択することができ、あるいは、そのペプチドが疎水性ポケットに収まりインヒビターとして作用できるような形で上記の3または4残基が配置されるという条件で、本明細書に記載のペプチドとは無関係に設計することもできる。本明細書に記載のD−ペプチドのN−末端、C−末端または両方に追加のアミノ酸残基が存在して、より大きなペプチドになっていてもよい。あるいは、例えば結合親和性を高めるために、選択された他のアミノ酸残基が存在してもよい。あるいは、図3のD−ペプチドの保存されたアミノ酸残基を含んでなるペプチドを使用することもできる。例えばそのようなペプチドは16アミノ酸残基の大きさで、保存されたアミノ酸残基を含むことができ、それら保存されたアミノ酸残基は図3に示すペプチドにおけるそれらの位置と同じ位置にありうる。介在アミノ酸残基は図3に示すいずれかのペプチド中でそれらの位置にあるアミノ酸残基とは異なってもよく(例えばそれら介在アミノ酸残基はイソロイシンまたはアスパラギンまたは図3に記載のペプチドには認められない他のアミノ酸残基であってもよく)、あるいは、それら介在アミノ酸残基で図3に示す別のペプチドの特定の位置に示されるアミノ酸残基を置換するか、それら介在アミノ酸残基を当該別のペプチドの特定の位置に示されるアミノ酸残基で置換することができる(例えばD10pep1中のアスパラギン酸残基をセリン残基で置換することができる)。天然タンパク質中に見出される20種類のL−アミノ酸のD−状以外のアミノ酸残基も使用できる。そのような改変は、例えば、ペプチドの生物学的利用能、結合親和性または他の特性を向上させるために施すことができる。D−ペプチドは図3に示すペプチド中に存在する保存されたアミノ酸残基を含んでなりうるが、それらは図3に示す介在アミノ酸残基の数よりも少ない(または多い)アミノ酸残基で分離されていてもよい。例えば図3に示すコンセンサス配列中の最初のシステインとグルタミン酸との間には、5残基より少ないアミノ酸残基が存在してもよい(例:Tarrago−Litvak,L.ら,FASEB,J.,8:497(1994);Tucker,T.J.ら,Methods Enzymol.,275:440(1996)、Tarrago−Litvak,L.ら,FASEB,J.,8:497(1994);Tucker,T.J.ら,Methods Enzymol.,275:440(1996))。あるいは、これら2つの残基は、5残基より多いアミノ酸残基で分離されてもよい。内部修飾も(例えばペプチドの結合を増進したり、溶解度を増大させるために)施しうる。例えばD10pep5の最初のトリプトファンは、溶解度を増大させるためにアルギニンで置換することができる。D−ペプチドはそのN−末端に追加の成分またはアミノ酸を持つことができる。例えばN末端を保護する成分またはN末端に本来存在する電荷を除く成分を付加することができる。この成分は、例えば、グリシン(G)に直接結合したアセチル基などのブロック成分、またはGのN−末端に結合した1または複数の追加のアミノ酸残基に結合したアセチル基、例えばN末端のGに順番に結合している1または複数のリジン残基に結合しているアセチル基などでありうる。一態様として、例えばペプチドの溶解度を増大させるために2つのリジン残基をN−末端のGに結合し(KKGAC....)、その末端リジンにアセチル基などのブロック成分を結合することができる(アセチル基KKGAC....)。もう一つの態様として、4つのリジン残基をN−末端のGに結合する。これに加えて、D−ペプチドはそのC−末端にも、追加のおよび/または改変された成分もしくはアミノ酸を持ちうる。例えば、C末端にあるアラニン残基の1つまたは両方を改変し、および/または、1または複数の残基をC末端に追加して、例えば結合を増進させることができる。もう一つの選択肢として、アミノ酸残基以外の官能基(化学基)を組み込んで、本発明のインヒビターを作成することもできる。例えば、これら追加の化学基は、N末端、C末端、両末端、または内部に存在できる。また、阻害の有効性を増大させるために、2またはそれ以上のD−ペプチドを適当なリンカー(例えばアミノ酸残基または他の化学成分のリンカー)を介して連結することもできる。もう一つの選択肢として、阻害の有効性を増大させるために、1または複数のD−ペプチドを、HIV gp120、CD4、CCR5、CXCR4またはHIV gp41の非ポケット領域に結合する分子(薬剤)に、適当なリンカーを介して連結することもできる。
D−ペプチド(またはL−ペプチドもしくはD−アミノ酸とL−アミノ酸の両方を含むペプチド)は、化学法や組換え法などの既知の方法を使って製造できる。ポリペプチド主鎖は、そのペプチドの1または複数の位置で、改変(例えばN−メチル化)し、または代替骨格(例えばペプトイド)で置換することができる。ペプチドには、例えばそのペプチドのアミノ酸間またはアミノ酸部分間に配置されるリンカー(化学リンカー、アミノ酸リンカー)などの追加の成分を(例えば柔軟性を向上させるために、または剛性を高めるために)組み込んでもよい。本明細書に述べるように、D−ペプチドを同定する際に使用したライブラリーの設計上、本発明のD−ペプチドにはN−末端にGAが、またC−末端にAAが隣接している。例えば吸収、分布、代謝および/または排出性が異なるD−ペプチドを製造するために、これら4つのアミノ酸残基の一部または全部を、改変、置換または削除することができる。一態様として、C−末端アミドの直前にグリシン残基を付加することによってC−末端を修飾する。もう一つの態様として、最もC−末端側のAを改変/修飾するか、異なるアミノ酸残基で置換するか、削除する。
天然に存在するペプチドの対称性とは反対の対称性を持つD−ペプチドは、プロテアーゼなどの酵素にとって効率のよい基質にはならず、したがって、L−ペプチドほど容易には分解されない。また、D−ペプチドを標的とする効果的な免疫反応もないので、D−ペプチドはLアミノ酸ペプチドによって誘発される免疫反応に匹敵するような免疫反応は誘発しない。
以下、実施例によって本発明を説明するが、これらの実施例は決して限定を意図するものではない。
実施例1 C34ペプチドの変異体の合成
固相FMOCペプチド化学によって突然変異型ペプチドを合成した。これらの突然変異型ペプチドはアセチル化されたアミノ末端とアミド化されたカルボキシ末端を持つ。樹脂から切り離した後、ペプチドをセファデックスG−25カラム(ファルマシア社)で脱塩し、次に直線的水−アセトニトリル勾配および0.1%トリフルオロ酢酸を用いるVydac C18分取用カラムでの逆相高速液体クロマトグラフィー(ウォーターズ社)によって精製した。ペプチドの確認はMALDI質量分析(Voyager Elite、パーセプティブ・バイオシステムズ社)で行なった。ペプチド濃度は6M GuHCl中でのトリプトファンおよびチロシン吸収によって測定した[H.Edelhoch,Biochemistry,6:1948(1967)]。
実施例2 突然変異型N36/C34複合体のヘリックス含量と熱安定性の定量 先に記述されているように(M.Lu,S.C.Blacklow,P.S.Kim,Nat.Struct.Biol.,2:1075(1995))、アビブ(Aviv)製モデル62DS分光計を使って、リン酸緩衝食塩水(50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、pH7.0)中で、CD測定を行なった。各複合体の見かけ上の融点は、温度に関する[θ]222 の一次導関数の極大から見積もった。0℃における平均残基楕円率([θ]222 、103 deg・cm2 ・dmol-1)は次の通りだった:野生型、−31.7;Met629 →Ala、−32.0;Arg633 →Ala、−30.7;Ile635 →Ala、−25.9;Trp628 →Ala、−27.0;Trp631 →Ala、−24.9。Trp628 →AlaおよびTrp631 →Ala突然変異の場合、[θ]222 の減少はヘリックス含量の実際の減少を高く見積もりすぎているようである。モデルヘリックスからトリプトファン残基を除去すると、ヘリックス含量にほとんど変化がない場合でも[θ]222 の絶対値が有意に減少すると報告されている(A.Chakrabartty,T.Kortemme,S.Padmanabhan,R.L.Baldwin,Biochemistry,32:5560(1993))。
実施例3 HIV−1 gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの表面にあるポケットに結合するペプチドの同定
HIVエンベロープ糖タンパク質gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの表面にあるくぼみに結合するD−ペプチドを同定するのに役立つ方法がある。以下に詳述するように、HIV−1エンベロープ糖タンパク質gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの表面にあるくぼみに結合するD−ペプチドを、鏡像ファージディスプレイ法(mirror−image phage display)によって同定した。この方法では、ファージディスプレイライブラリーをスクリーニングすることによって、D−アミノ酸からなるリガンドを同定する。D−アミノ酸含有リガンドは、基質とインヒビターに対して、天然に存在するL−アミノ酸リガンドとは反対のキラル特異性を有する。ファージディスプレイライブラリーを使って、標的または所望のL−アミノ酸ペプチドを結合するD−アミノ酸ペプチドリガンドが同定されている(Schumacherら,Science,271:1854−1857(1996))。
gp41の疎水ポケットに結合するD−ペプチドは、N−末端にGCN4−pIQ Iの29残基を含有しC末端にgp41の17残基を含有するハイブリッド分子IQN17のエナンチオマーである標的を使って同定された。選択に使用したファージライブラリーは、米国特許第5,780,221号およびSchumacherら,Science,271:1854−1857(1996)に記載されている。ライブラリーの複雑度は108 種類の配列を超える。各配列は両端にシステインまたはセリンを持ち、中間に10個のランダムな残基がある。これらの配列は、ファージの外面に約5コピーとして発現されるコートタンパク質、ファージのpIII遺伝子中に配置されている。
ここに記載する例では以下の実験手順を使用した。
ファージディスプレイ
NeutrAvidin(ピアス社、100μLの100mM NaHCO3 中10μg)を96ウェル高吸着スチレン製プレート(コースター社)の各ウェルに入れ、振盪台上4℃で一晩インキュベートした。NeutrAvidinを除去し、ウェルをTBS/Tween溶液で4回洗浄した。ビオチン化D−IQN17(100mM NaHCO3 中の10μLペプチド溶液100μL)を各ウェルに加え、25℃で1時間インキュベートした。ビオチン化標的を除去し、ブロッキング溶液(100mM NaHCO3 中の30mg/ml脱脂粉乳)を各ウェルに加え、振とうしながら4℃で2時間インキュベートした。ブロッキング溶液を除去し、ウェルを再び上述のようにビオチン化標的でコーティングした。標的を除去し、5mMビオチンを含むブロッキング溶液を添加することにより、リガンドと結合していないNeutrAvidinをブロックした。ビオチンを除去した後、各ウェルをTBS/Tween溶液で6回洗浄した。次に、ファージストックを各ウェルに加えた(50μLのファージストック+50μLのファージ結合緩衝液:TBS、0.1%Tween−20、1mg/mlミルク、0.05%アジ化ナトリウム)。ウェルでのファージストックのインキュベーション時間は、選択ラウンド数が増すにつれて短くした。インキュベーション後に、ファージ溶液を除去し、結合していないファージを除去するために、ウェルをTBS/Tweenで12回洗浄した。奇数回目の洗浄はインキュベーション時間なしですばやく行ない、偶数回目の洗浄は、ファージ選択のラウンド数が増えるごとに時間を増やしてインキュベートした。100μLのファージ結合緩衝液および2.5mM CaCl2 中のトリプシン2μgを添加し、37℃で1時間インキュベートすることにより、ファージを溶出させた。回収率を決定するために、溶出したファージの希釈液を使って、K91 kan細胞を感染させた。1時間のインキュベーション後に、細胞100μLを取り出し、LBで1:10、1:100および1:100に希釈した液をLB/テトラサイクリンプレートに播種した。ファージ回収率は、回収された形質導入単位(溶出したファージの力価)の、投入した形質導入単位数(そのラウンドで使用したファージストックの力価)に対する割合として決定した。形質導入単位はLB/テトラサイクリンプレート上のテトラサイクリン耐性コロニーの数を数えることによって決定した。非特異的ファージ回収が一般に10-8〜10-9の桁の比率を持つのに対して、特異的に増幅されたファージは10-7以上の比率を持つ。個々のクローンを増幅し、配列決定した。それらを結合測定法で測定して、結合特異性を決定した。
5ラウンドのファージ選択後にD10pep7が同定された。7ラウンドのファージ選択後に、D10pep1、D10pep3、D10pep4、D10pep5およびD10pep6が同定された。インキュベーション時間を短く、また洗浄を長くしてファージ選択を再び行ない、3ラウンドの選択後にD10pep10およびD10pep12が同定された。(9番目のD−ペプチドが同定されたが、細胞に対して毒性であることが分かって、それ以上は調べなかった。)
同定されたファージクローンのD−IQN17のポケットに対する結合の特異性を調べるために、それらのファージクローンを、上述のようにD−INQ17、D−GCN4−pIQ I(3つの突然変異を持つもの)またはD−IQN17(G39W=グリシン36がトリプトファンで置換されているもの)でコーティングした96ウェルプレートのウェルもしくは標的を含まないウェルに加えた。ファージを、それらが同定された時のラウンドと同じ時間にわたって、プレート上でインキュベートし、洗浄した。溶出したファージを使ってK91 kan細胞を感染させ、回収される形質導入単位を上述のように決定した。これらの配列はD−IQN17を含むウェルに特異的に結合した。
ペプチド精製
IQN17と各D10ペプチドは、FMOCペプチド化学によって合成した。それらはアセチル化されたN−末端とC−末端アミドを持つ。IQN17はGCN4−pIQ Iに由来する29残基をN−末端に含有し、N36のC−末端に由来する17残基をC−末端に含有する。GCN4−pIQ IとN36領域には1残基の重複があるので、45残基長のペプチドになる。溶解度を改善するために、元のGCN4−pIQ I配列と比較して3つのアミノ酸置換を、IQN17のGCN4−pIQ I領域に施した(Eckert,D.M.ら,J.Mol.Biol.,284:859−865,1998)。それらの置換はL13E、Y17KおよびH18Kである。したがってIQN7の配列は、
ac−RMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKKLLQLTVWGIKQLQARlL−am
(ac−はN−末端アセチル基を表し、−amはC−末端アミドを表す)
であり、下線部はHIV部分である。鏡像ファージディスプレイのために、D−アミノ酸を使ってIQN17を合成した(IleやThrなどの2つ目のキラル中心を含むアミノ酸残基については、天然に存在するアミノ酸残基の正確な鏡像を使ってD型の標的を作成する)。また、ペプチドのN−末端をNHS−LC−ビオチンII(ピアス社、カタログ番号21336)を使ってビオチン化した。ビオチンとIQN17配列の間にはGKGの3アミノ酸リンカーがあり、そのリジンは天然に存在するL−型である。このリジンはトリプシン認識部位として挿入した。
D−ペプチドの配列は次の通りである(全てのアミノ酸はD−エナンチオマーであり、2つ目のキラル中心を含むIleとThrについては、天然に存在するアミノ酸残基の正確な鏡像を使用した):
樹脂から切り離した後、ペプチドをセファデックスG−25カラム(ファルマシア社)で脱塩し、凍結乾燥した。凍結乾燥ペプチドを、Vydac C18分取用カラムでの逆相高速液体クロマトグラフィー(ウォーターズ社)によって精製した。次に凍結乾燥粉末を20mM Tris(pH8.2)に溶解し、室温で数日撹拌することにより、それらD−ペプチドを空気酸化した。酸化されたペプチドを先と同様にHPLC精製した。予想されるペプチドの分子量をMALDI−TOF質量分析法で確認した(パーセプティブ・バイオシステムズ社)。ペプチド濃度は6M GuHCl中280nmでのチロシン、トリプトファンおよびシステイン吸収を使って決定した(Edelhoch,1967)。ペプチド原液はDMSO中に調製した。
D10pep3、D10pep5、D10pep7a、D10pep10およびD10pep12においてN−末端リジンを付加し、ペプチドの水溶性を増大させた。ペプチドの阻害活性に対する添加したリジンの効果を調査するために、D10pep1を、2つのN末端リジンを有するように合成し(D10pep1aと示す)、リジンを有さないD10pep1と比較した:D10pep1aが、シンシチウム形成の阻害に関してD10pep1(すなわち、リジンなし)よりも約2倍高いIC50を有することを見出した。さらに、DP10pep5を、2つのさらなるN末端リジン(D10pep5aを意味するペプチドを産生するために合計4つのリジン)を有するように合成した。D10pep5aのシンシチウム形成の阻害に関するIC50は、D10pep5よりも約2倍高かった。DペプチドへのN末端リジン残基の添加は、阻害活性の穏やかな減少を生じただけであった。
研究のために合成したN末端に付加した更なるD−Lys残基を有するD−ペプチドは、ペプチドの名称に「a」を付して示され、下記:

を含む。
これらの配列はまた、図3に示される。各D−ペプチドの12アミノ酸「コア」(次いで、10マーおよび本明細書中に記載されるコンセンサス配列を含む)は下記:
これらのペプチド間に高度に保存されたコンセンサス配列が存在することはただちに明らかである。図3に示される12アミノ酸ペプチドは、CXXXXXEWXWLC(配列番号:12)で表され得、ここで、複数のペプチドで共通するアミノ酸を示し、Xは、ペプチド間で保存されていないアミノ酸残基を示す。
実施例4 C34ペプチドおよびD−ペプチドの活性の評価
ウイルス感染を阻害することにおけるC34ペプチドの効力およびD−ペプチドのHIV−1感染阻害活性を、組換えルシフェラーゼ発現HIV−1(Chen,B.K.ら、J.Virol.、68:654(1994));Malashkevich、V.N.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,95:9134(1998))。ウイルスを、293T細胞へのエンベロープ欠損HIVゲノムNL43LucR−E−(Chen,B.Kら、J.Virol.、68:654(1994)およびHXB2 gp160発現ベクターpCMVHXB2gp160(Chan,D.C.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.、95:11513(1998))の同時トランスフェクトによって産生した。低速度遠心分離を用いて細胞細片のウイルス上清を清澄化した。上清を、0〜500μMの範囲の範囲の濃度のD−ペプチドの存在下でHOS−CD4/融合細胞(N,Landau、NIH AIDS Reagent Program)を感染させるために使用した。細胞を、感染の48時間後に回収し、ルシフェラーゼ活性をWallac AutoLumat LB953 ルミノメーター(Gaithersburg、MD)でモニターした。IC50は、ペプチドを欠失した対照試料と比較して50%の活性の減少を生じるペプチド濃度である。IC50を、ラングミュア式[y=k/(1+([ペプチド]/IC50)+x](式中、y=ルシフェラーゼ活性、kおよびxは換算定数(scaling constant)である)にデータを当てはめることにより計算した。
細胞/細胞融合アッセイ
細胞/細胞融合(すなわち、シンシチウム形成)の阻害を、HXB2エンベロープを発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞(K.Kozarskyら、J.Acquir.Immune.Defic.Syndr.、2:163(1989))およびHeLa−CD4−LTR−β−gal細胞(M.Emerman,NIH AIDS Reagent program)を、異なる濃度のペプチドの存在下で共培養することによってアッセイした。混合した場合、これらの細胞はシンシチウム、または多核細胞を形成するか、β−ガラクトシダーゼを発現する。細胞を共培養した約20時間後、シンシチウムを視覚化するために単層を5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−D−ガラクトシドで染色した。シンシチウムを顕微鏡で視覚化し、手作業で計数する(シンシチウムを、3またはそれ以上の核を含有する融合細胞として得点づけた)。IC50を、ラングミュア式[y=k/(1+[ペプチド]/IC50)+x](式中、y=シンシチウムの数、kおよびxは換算定数(scaling constant)である)にデータを当てはめることにより計算した。
変異体C34ペプチド(10μM)を、円偏光二色性測定のためにリン酸緩衝化生理食塩水(pH7.0)中のN36ペプチド(10μM)と複合体化させた。見かけ上の溶解温度(Tm)を、222nmでのCDシグナルの温度依存性から推定した。ウイルス侵入の阻害を、組換えルシフェラーゼ発現HIV−1を用いた細胞培養感染アッセイにおいて測定した。細胞−細胞融合の阻害を、シンシチウムアッセイにおいて測定した。平均および標準誤差は3連試行に由来する。
同様に、記載したD−ペプチドの活性を、上記の2つのアッセイを用いて評価した。図6A〜6Bおよび図8A〜8Bに結果を示す。
実施例5:IQ17/D10pep1複合体およびリガンド非含有IQN17の結晶化
ペプチド精製、結晶化
ペプチドIQN17およびD10pep1を、上記のようにFMOCペプチド化学によって合成した。
IQN17とD10pep1との混合物の10mg/mlストックを調製した。IQN17の最終濃度は約1.37nMであり、D10pep1の最終濃度は約1.51mMであった。最初の結晶化の条件を、Crystal Kit IおよびII(Hampton Research)を用いて見出し、次いで至適化した。最もよい回折用結晶を成長させるために、1μlの当該ストックを1μlの貯蔵緩衝液(10%PEG4000、0.1M NaCi pH5.6、20%2−プロパノール)に添加し、貯蔵緩衝液に対して平衡化させた。結晶は、空間群P321(a=b=41.83オングストローム;c=84.82オングストローム、α=β=90°、γ=120°)に属し、非対称単位において1つのIQN17/D10pep1モノマーを含有する。有用なオスミウム誘導体を、貯蔵溶液中のPEG4000の濃度を4%上昇させ、5mMの最終濃度で(NH42 OsCl6 を貯蔵溶液に添加し、得られた溶液の5μlを、タンパク質結晶を含有するドロップに添加することによって生産した。データ収集の前に、天然および重原子誘導体の結晶を、20%PEG4000、0.1M NaCi PH5.6、20%2−プロパノールを含有するクライオ溶液に移し、X−stream cryogenic crystal cooler(Molecular Structure Corporation)を用いて瞬間凍結させた。
リガンド非含有IQN17の最もよい回折用結晶を、上記と同様の技術で成長させた:1(on)μlのIQN17の10mg/ml水溶液を1μlの貯蔵緩衝液(1.0M 酒石酸K、Na、0.1M NaHEPES pH7.0)に添加し、貯蔵緩衝液に対して平衡化させた。瞬間凍結の前に、結晶を、23%グリセロールの最終濃度に増大した量のグリセロールを有する貯蔵溶液からなる緩衝液に移した。結晶は、空間群C2221 (a=57.94オングストローム、b=121.96オングストローム、C=73.67オングストローム;α=β=γ=90°)に属し、非対称単位において1つのIQN17トリマーを含む。
X線データ収集および処理
最初のデータを、R軸IVエリア検出器に据え付けたRigaku RU300回転陽極X線発生装置(Molecular Structure Corporation)で収集した。IQN17の回折データをQuantum−4CCD検出器を用いて100Kで、そしてAdvanced Light Source(Berkeley、USA)で5.0.2ビームライン(beamline)で収集した。IQN17/D10pep1に関する最終の天然の、および多波長変則回折(multiwavelength anomalous diffraction;MAD)データを、Raxis−IV detectorを用いてHoward Hughes Medical Institute Beamline X4Aで収集した。MADデータに関して、オスミウムL−III吸収端付近の4つの波長を、Os誘導体結晶の蛍光スペクトルに基づいて選択した(表2)。4つの波長は:1.1398オングストローム、1.1403オングストローム、1.1393オングストローム、1.1197オングストロームであった。データセット間の結晶崩壊を最小化するために、データセットを、20°バッチで収集し、次のバッチに移る前に各波長で同じバッチを収集することを可能にした。反射を、プログラムDENZOおよびSCALEPACKで積分し、計測した(Otwinowski,Z.、(1993)、Data Collection and Processing、Sawer,L.、Isaacs,N.およびBailey,S.編(SERC,Daresbury Laboratory,Warrington,England)、pp.55−62)。
さらなる回折データ処理、位相決定およびマップ計算を、CCP4一式(suite)のプログラム(CCP4、Acta Cryst.D50:760−763(1994))を用いて行った。強度をプログラムTRUNCATEで振幅に減少させ、Os L−III吸収端に最も近い波長(λ1、λ2、λ3)に関するデータセットを、離れた波長(λ4)データセットまでSCALEITで計測し除去した(表2)。
位相決定および結晶学的精密化
最初に、IQN17/D10pep1結晶に関する位相決定を、ポリセリン鎖に切断された側鎖を有する公開されたGCN4−pIQIおよびHIV gp41構造に由来する理論モデルのIQN17構造(build)(Eckert,D.Mら、(1998)J.Mol.Biol.284:859−865;Chan,D.C.ら、(1997)Cell 89,263−273)を用いて分子置換技術で試みた。得られた分子置換溶液は、あいまいであり、電子密度図は、D10pep1ペプチドのコンホメーションを示さなかった。しかし、分子置換位相は、差異および多義的なフーリエマップを用いて対応する誘導体中の単一のOs原子の座標を決定するのに充分に良好だった。重原子は、結晶学的3倍軸(cryallographic three−fold axis)(0.222、0.667、0.047)に結合する。次いで、MAD位相を、プログラムMLPHARE(表2)で産生し、プログラムDMでより高い分解能に拡大した。1.5オングストロームでのMAD電子密度図の質は、例外的であり、明快さを伴ってIQN17およびD10pep1ペプチドの構造的詳細を示した。電子密度図解釈およびモデル構築をプログラムO(Jones,T.A.ら、(1991)Acta Crystallogr.D47,110−119)で行った。IQN17−D10pep1複合体の構造を、プログラムCNS(Breunger,A.T.ら、Acta Crystallogr.D54,905−921(1998))を用いて精密化した。構造の正確さを、シミュレートしたアニーリング省略マップおよびプログラムWHAT CHECK(Hoff,R.WW.ら、Nature 381:272(1996))でチェックした。IQN17およびD10pep1ペプチド(その鏡像に変換されていない場合)の全ての残基は、ラマチャンドランプロットの最も好ましい領域を占める。IQN17の2つの最もN末端の残基ならびにD10pep1ペプチドのArg−6およびArg−8の側鎖以外については、残基の大部分のコンホメーションは充分に規定されている。
リガンド非含有IQN17の構造を、プログラムAMORE(Navaza,J.(1994)Acta Crystallogr.A50,157−163)および試験モデルとして精密化されたIQN17/D10pep1構造のIQN17部分を用いて解析した。3倍非結晶学的平均化、溶媒平坦化およびプログラムDMとのヒストグラムマッチングを位相改善のために使用した。電子密度図解釈およびモデル構築をプログラムO(Jonesら、Acta Crystallogr.D54,905−921(1991))で行った。IQN17/D10pep1複合体の構造をプログラムCNS(Brunger,A.T.ら、Acta Crystallogr.D54,905−921(1998))を用いて精密化した。
結晶構造は、HIV感染性を阻害するより有効なおよび/または新規のD−ペプチド、ペプチド擬似体または他の低分子を設計するために使用され得る。
実施例6 gp41のN−ヘリックス疎水性ポケットに結合する化合物を同定するための核磁気共鳴(NMR)法
A.IQN17疎水性ポケットとD−ペプチドとの特異的結合アッセイ
IQN17への各D−ペプチドの結合をアッセイするためにNMR実験を使用した。IQN17の単一のトリプトファン残基(Trp−571で示される)は、gp41の疎水性ポケットへの特異的結合の最良のプローブを提供する。酸化重水素(重水素水)緩衝液において、IQN17の単純な均一核一次元1 H NMRスペクトル(図9A、中段)は、この分子の他の全てのシグナルから特に充分に分離した、Trp−571インドール由来の5つのシグナルを示す。gp41ポケットへの結合に関して化合物を試験するために、2つの一次元1 H NMR測定を重水素化緩衝液中の試料で行った。最初に、IQN17の参照(対照)スペクトルを採取し、非結合形態のTrp571化学シフトを同定した。第2のスペクトルを、IQN17および目的の化合物を含有する試料で得た。選択任意の第3のD−ペプチド(もしくは他の低分子、または分子の混合物)もまた採取した。1 H NMR実験をBruker AMX500スペクトロメーターにおいて行った。データを、Silicon GraphicsコンピュータにおいてのFelix 98.0(MSI)で処理し、全てのスペクトルをDSSに対して照会した。全ての実験を、100mM NaCl、50mMリン酸ナトリウム(pH7.5)において25℃で行った。使用した全ての緩衝液は、交換可能な骨格および側鎖のプロトンに由来する重複する共鳴を除去するために>99.7%D2 Oであった。溶質濃度は、個々のペプチドに関して0.3〜1.0mMの範囲であり、IQN17と各Dペプチドとの1:1複合体に関しては0.8〜1.0mMの範囲であった。
2またはそれ以上の成分の単結合は、よりブロードなピーク(複合体の増大したサイズによる)および化学シフトにおける変化(遊離形態および結合形態の核により経験される異なる化学環境による)を生じることが予想される。疎水性ポケットへの特異的結合は、Trp−571化学シフトにおける変化、ならびにピークのブロード化によって示される。また、結合は、アッセイした分子(例えば、ペプチドおよび低有機分子)の化学シフトにおける類似した変化およびピーク幅により示されうる。図9Aは、これらの効果の例を示す:IQN17/D10pep1a複合体のNMRスペクトルは、よりブロードなピークおよび2つの分離した化合物のいずれのスペクトルとも劇的に異なる化学シフトを示す。研究した全てのIQN17/D−ペプチド複合体は、化学シフト分散の程度に違いはあるが、類似した結果を示した。従って、結合は全てのケースで示された。
D10pep1における2つの保存されたTrp残基、および保存されたLeu残基が、IQN17ポケットの結合に直接関与するというX線結晶学的知見は、他のD−ペプチドがポケットに結合する場合にこれらの保存された残基が同様の様式で関与することを強く示唆する。これらの保存されたトリプトファン残基、およびIQN17のTrp−571は、結合界面を大いにより詳細に研究する機会を提供する。IQN17/D10pep1結晶構造において、IQN17のTrp−571側鎖は、Trp−10インドール基の平面上のTrp−571のいつかのプロトン(Hζ2 ,Hη2 ,Hζ3 ,Hε3 ;芳香族環の4つのスカラー共役プロトン)によりD10pep1のTrp−10と密接に接触する。この位置において、芳香族環電流相互作用(current interaction)(F.A.Bovey,Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy(1988))は、それらのプロトンの内のいくつかの化学シフトを変化させ、理解されるような様式で高磁場にピークを移動させる(図9A、下段)。構造に基づく化学シフト予想プログラムSHIFTS(3.0b2版、K.Osapay,D.Sitkoff,D.Case)の使用はまた、Trp−571に由来するプロトンのみが、特にHζ3 プロトンが、大きな高磁場シフトを経験することを予想する。他のD−ペプチドがD10pep1と同じ様式でIQN17ポケットに結合する場合、Trp−571とTrp−10との同様の並列(juxtaposition)が生じ、高磁場シフトしたピークを生じるはずである。研究した全てのD−ペプチド/IQN17複合体は、シフトの程度に違いはあるが、このようなピークを示した(図9B)。D10pep1複合体は、最も極度の高磁場シフトを示し、D10pep7aが最も小さな高磁場シフトを示した。これらの変化の振幅は非常に大きく、最も高磁場シフトしたプロトン(割り当てられ得る全てのケースにおいて、Hζ3 )に関しておおよそ0.5〜2ppmの範囲である。比較すると、NMR実験よりSARにおける結合を検出するのにしばしば使用される化学シフトの差異(Shuker,S.B.、Hajduk,P.J.、Meadows,R.P.、Fesik,S.W.、Science 274:1531−1534(1996))は、頻繁に0.05〜0.2ppmの範囲である。広範囲の高磁場化学シフトが観察されたが、環電流効果は、距離および方向に高度に敏感でありうるので、小さな構造の差異が、化学シフトにおいてかなりの変化を生じるかもしれない。(観察された全ての高磁場シフトは、x線結晶構造から予測されたTrp側鎖のおおよその方向と一致する。)さらに、高磁場シフトしたピークは、これらのNMRスペクトルの他のものと比較して幾分ブロードである(交換プロセスのある型によるようである)、この効果は、D10pep5aとのおよびD10pep7aとの複合体について特に明白である。
強く高磁場シフトしたピークが全ての単一の側鎖(ほぼ間違いなくTrp−571)に対応することを確認するために、二次元NMR(TOCSY)実験を、各々のIQN17/D−ペプチド複合体で行った。予想したように、TOCSY実験は、各複合体において、強く高磁場シフトした共鳴は全て同一の芳香族側鎖に属し、4スカラー共役プロトンの基として同定される。1例のTOCSYスペクトルを図9Cに示す。研究したいくつかの複合体について、NOESY実験はまた、IQN17/D10pep1構造から予想したように、この側鎖と他の(割り当てられていない)芳香族基との接触を示している。6.8〜7.6ppm領域における激しいスペクトルの重複のために、潜在的なNOE交差ピークの全てを分離することはできなかった。J.Cavanaugh、W.J.Fairbrother、A.G.Palmer、N.J.Skelton、Protein NMR Spectroscopy:Principles and Practice (1996)に記載されるような2D NOESYおよびTOCSYの実験を、IQN17および各複合体の試料で30〜90ms(NOESY)および30〜70ms(TOCSY)の範囲のミックス時間により行った。11,111Hzおよび5555Hzのスペクトル幅を、獲得(acquisition)(t2 )および間接(incirect)(t1 )の次元の各々に使用した。TOCSY実験には、DIPSI−2rcミックス配列(J.Cavanaugh,M.Rance,J.Magn.Reson.Sery.A.,105:328(1993))を使用した。
我々は、アッセイした全てのD−ペプチドが、IQN17の疎水性ポケットに明白に結合すると結論付ける。さらに,これらのIQN17複合体の大多数(すなわち、D10pep1、D10pep3、D10pep4、D10pep6、D10pep10、およびD10pep12)において、D−ペプチドは、非常に類似した結合界面でポケットと接触し、Trp−571をTrp−10の芳香族環との近接した接触にもたらす。D10pep5aとの複合体およびD10pep7aとの複合体の場合には、より限られた化学シフト分散およびよりブロードなピークは、幾分他の様式の結合のわずかな可能性を生じさせるが、この結論はまた非常に妥当であるようである。
本明細書中で使用された結合アッセイはまた、gp41(例えば、IQN17中に見出されるような)の疎水性ポケットに他の分子の結合をアッセイするのに使用されうる。上記アッセイは、上記のD−ペプチドのセットに関するように、芳香族環がポケットに結合する場合に解釈することが特に容易である。しかし、いかなるポケット結合分子も、容易に注目すべき影響であるTrp−571の化学シフトを混乱させるはずである。さらに、結合において低分子自身によって産生された新規NMRシグナルもまた、結合の指標である。
一次元の同核1 H NMRの使用は、特異的結合を決定するための、多次元の異核を超える有意な利点を提供する:(1)感受性がより高く、より迅速に試料をアッセイすることができる;交互に、より高い感受性は、低濃度のIQN17と推定上の結合因子との使用は、より高い親和性の化合物を、それらの多くを同時にスクリーニングすることを可能にする。(2)非アイソトープ標識したタンパク質は生産することが容易であり、より経済的である。しかし、同核または異核(15Nおよび/または13Cアイソトープ標識による)の二次元NMR実験もまた使用されうる。
B.化学ライブラリースクリーニング
上記(A)に記載される結合アッセイは、化学ライブラリー中に存在する多数の化合物をスクリーニングするのに使用されうる。単純な一次元の同核1 H NMR実験は、アイソトープ標識を必要とすることなく結合を評価するのに充分である。同核または異核(15Nおよび/または13Cアイソトープ標識による)二次元NMR実験もまた使用されうる。単一化合物を、本プロセスの時にスクリーニングし得る。しかし、多数の化合物もまた、IQN17(またはgp41 N−ヘリックスコイルドコイルの任意の代表)と同一のアッセイで組み合わされ、同時にスクリーニングされうる。上記混合物の任意の成分によるポケットへの結合は、Trp−571化学シフトにおける変化によって示される。多数の化合物からのNMRシグナルは、共にTrp−571からのシグナルを不明瞭にする可能性を有する;非結合分子に由来するこれらのシグナルは、当該技術分野で充分知られているパルスフィールドグラジエント技術を用いて排除されうる。これらの技術および市販されているNMRチューブサンプルチェンジャーの使用により、多数の化合物の自動スクリーニングが容易になる。
C.多数の組み合わせ合成の産物の評価
上記(B)に記載されるスクリーニングプロセスは、組み合わせ有機合成法を利用することを意図しうる。かかる方法は、多数の化学的に関連する化合物を含む各ファミリーに関して、化合物の全ファミリーを作製するために使用されている。上記のシンプルなアッセイにより、全体の組み合わせ合成の産物が、同時にスクリーニングされうる。結合が示されない場合、その化合物のファミリーのいかなるメンバーにおいてもさらに注意を払う必要はない。単純な一次元の同核1 H NMR実験は、アイソトープ標識を必要とすることなく結合を評価するのに充分である。同核または異核(15Nおよび/または13Cアイソトープ標識による)の二次元NMR実験もまた使用されうる。
本発明を、特にその好ましい態様に関して示し、記載してきたが、形式および細部における種々の変化が、付随する特許請求の範囲に規定される本発明の意図および範囲を逸脱することなくなされ得ることが当業者に理解される。
本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]可溶性の三量体型のコイルドコイルと、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基を含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなるペプチド。
[2]D−ペプチドである[1]記載のペプチド。
[3]コイルドコイルが:
(a)GCN4−pIQ Iのコイルドコイル;
(b)GCN4−pIIのコイルドコイル;
(c)モロニーマウス白血病ウイルスのコイルドコイル;および
(d)ABCヘテロ三量体のコイルドコイル、
からなる群より選ばれるものである[2]記載のD−ペプチド。
[4]コイルドコイルのアミノ酸配列が:
RMKQIEDKIEEIESKQKKIENEIARIKK(配列番号:25)
である[3]記載のD−ペプチド。
[5]HIV gp41のNペプチド領域の充分な部分が、配列:LLQLTVWGIKQLQARIL(配列番号:20)
を含んでなるものである[2]記載のD−ペプチド。
[6]IQN17(配列番号:2)である[5]記載のD−ペプチド。
[7]配列番号:25および17個のアミノ酸残基を含んでなる配列を含んでなり、該17個のアミノ酸残基が、配列:LLXLTVWGXKXLQXRXX(配列番号:42)(式中、L、T、V、W、G、K、QおよびRは一文字アミノ酸コードにより表わされたアミノ酸残基であり、XはいずれかのD−アミノ酸残基である)を含んでなるものである、HIV gp41疎水性ポケットの可溶性の三量体ペプチドモデルであるD−ペプチド。
[8]17個のアミノ酸残基を含んでなる配列が、配列番号:20;配列番号:26;配列番号:27および配列番号:42からなる群より選ばれるものである[7]記載のD−ペプチド。
[9]


(y’) HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する(a)〜(x’)の配列の変異体、
(式中、C−末端のac−およびN−末端の−amは任意である)
からなる群より選ばれるD−ペプチド。
[10]L−ペプチドである[1]記載のペプチド。
[11]可溶性の三量体のコイルドコイルが:
(a)GCN4−pIQ Iのコイルドコイル;
(b)GCN4−pIIのコイルドコイル;
(c)モロニーマウス白血病ウイルスのコイルドコイル;および
(d)ABCヘテロ三量体のコイルドコイル、
からなる群より選ばれるものである[10]記載のL−ペプチド。
[12]HIV gp41のNペプチド領域の充分な部分が、配列:LLQLTVWGIKQLQARIL(配列番号:20)
を含んでなるものである[10]記載のL−ペプチド。
[13]IQN17(配列番号:2)である[12]記載のL−ペプチド。
[14]配列番号:25および17個のアミノ酸残基を含んでなる配列を含んでなり、該17個のアミノ酸残基が、配列:LLXLTVWGXKXLQXRXX(式中、L、T、V、W、G、K、QおよびRは一文字アミノ酸コードにより表わされたアミノ酸残基であり、XはいずれかのD−アミノ酸残基である)を含んでなるものである、HIV gp1疎水性ポケットの可溶性の三量体モデルであるL−ペプチド。
[15]17個のアミノ酸残基を含んでなる配列が、配列番号:20;配列番号:26;および配列番号:27からなる群より選ばれるものである[14]記載のL−ペプチド。
[16](a)C34ペプチドとN36ペプチドとの間での複合体の形成に適する条件下に、C34ペプチドおよびN36ペプチドと、C34ペプチドとN36ペプチドとの間での複合体の形成を妨げるその能力についての評価対象の候補薬物とを合わせ、それにより被検試料を形成する工程;ならびに
(b)C34ペプチドとN36ペプチドとの間での複合体の形成が阻害されるか否かを決定する工程、
を含み、複合体の形成が阻害される場合、候補薬物は複合体の形成を妨げる薬物であり、それにより、複合体の形成を妨げる薬物が同定される、C34ペプチドとN36ペプチドとの間での複合体の形成を妨げる薬物の同定方法。
[17](a)において被検試料が形成される条件下と同じ条件下に、C34ペプチドとN36ペプチドとを合せることにより対照試料を形成し;C34ペプチドとN36ペプチドとの間での複合体の形成を測定し、かつ被検試料において複合体が形成される程度を対照試料において複合体が形成される程度と比較し、複合体が対照試料におけるよりも被検試料においてより低い程度で形成される場合、候補薬物は複合体の形成を妨げる薬物であり、それにより、複合体の形成を妨げる薬物を同定する、[16]記載の方法。
[18]C34ペプチドとN36ペプチドを各々1組のドナー−アクセプター分子のメンバーにより標識し、かつC34とN36との間での複合体の形成が生ずる程度を、アクセプター分子から生ずる発光の程度を測定することにより評価し、発光が候補薬物の非存在下よりも候補薬物の存在下においてより低い程度で生ずる場合、候補薬物はC34ペプチドとN36ペプチドとの間での複合体の形成を妨げる薬物である、[16]記載の方法。
[19]C34ペプチドとN36ペプチドを各々1組またはドナー−アクセプター分子のメンバーにより標識し、かつ発光が生ずる程度を被検試料においておよび対照試料において評価し、発光が対照試料におけるよりも被検試料においてより少ない場合、候補薬物はC34プルプチド(prptide)とN36ペプチドとの間での複合体の形成を阻害する薬物である、[17]記載の方法。
[20]複合体の形成を妨げる薬物が細胞へのHIV侵入のインヒビターであるか否かを、細胞/細胞融合または細胞のHIV感染に対する薬物の影響が薬物の非存在下におけるよりも薬物の存在下においてより低いことを評価することにより評価する工程をさらに含み、該薬物は細胞へのHIV侵入のインヒビターである、[16]記載の方法。
[21]タンパク質の、三量体型のコイルドコイル領域と、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの一部または全部を形成するアミノ酸残基を含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなるペプチドを個体に導入する工程を含み、かつ該ペプチドは製薬学的に許容され得る担体中に存在するものである、個体における免疫応答の顕現方法。
[22]筋内、腹腔内、経口、経鼻および経皮からなる群より選択される投与経路により個体にペプチドを導入する[21]記載の方法。
[23]コイルドコイルが、GCN4−pIQ I;GCN4−pII;モロニーマウス白血病ウイルスおよびABCヘテロ三量体からなる群より選ばれるものである[21]記載の方法。
[24]ペプチドがIQN17である[21]記載の方法。
[25](1)HIVエンベロープタンパク質gp41サブユニットを結合し、かつ粘膜表面の細胞へのHIVの侵入を妨げる薬物、および(2)担体または基剤を含んでなる組成物を粘膜表面に投与または適用する工程を含む、粘膜細胞へのHIVの侵入の妨害方法。
[26]薬物がHIVエンベロープタンパク質gp41サブユニットのN−ヘリックスコイルドコイルの表面上のくぼみを結合する、[25]記載の方法。
[27]薬物がgp41の立体配座変化を防ぎまたは減少させ、それにより、粘膜表面の細胞へのHIVの侵入を妨げる、[26]記載の方法。
[28]組成物が:
(a)C34ペプチド;
(b)DP178;
(c)DP649;
(d)T1249;
(e)(a)〜(d)の誘導体;
(f)HIV gp41の疎水性ポケットに結合するD−ペプチド;
(g)(f)の誘導体;
(h)(a)〜(g)の2つまたはそれ以上の組み合わせ;および
(i)N−ヘリックスコイルドコイルに結合することによりHIV感染力を阻害する分子、
からなる群より選ばれる成分を含んでなるものである、[25]記載の方法。
[29]担体または基剤が、フォーム、ゲル、薬物を保持するのに充分に粘性のその他の物質、水および緩衝液からなる群より選ばれるものである[28]記載の方法。
[30]担体または基剤が膣座剤または直腸座剤である[28]記載の方法。
[31]薬物が膣、口または直腸に投与もしくは適用された直後または投与もしくは適用された後すぐに、該薬物が担体または基剤から放出される、[28]記載の方法。
[32]薬物が膣、口または直腸に投与もしくは適用された後に徐々に、または投与もしくは適用された後、特定の期間の後に、該薬物が担体または基剤から放出される、[28]記載の方法。
[33]薬物を、使用の条件下に該薬物の放出が可能となるような様式で避妊具の表面上に存在させるか、または避妊具内に組み込む、[28]記載の方法。
[34](e)のD−ペプチドが:


(y’) HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する(a)〜(x’)の配列の変異体、
(式中、C−末端のac−およびN−末端の−amは任意である)
からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含んでなるものである、[28]記載の方法。
[35]評価対象の化合物または分子を候補インヒビターといい、
(a)N−ヘリックスコイルドコイルくぼみへのD−ペプチドの結合に適する条件下に、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するD−ペプチド、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを提示する可溶性モデルである融合タンパク質および候補インヒビターを合わせ、それにより、被検試料を作製する工程;
(b)被検試料におけるN−ヘリックスコイルドコイルくぼみへのD−ペプチドの結合の程度を測定する工程;ならびに
(c)対照試料におけるN−ヘリックスコイルドコイルくぼみに対する場合と測定した結合の程度を比較する工程、ここで、対照試料は候補インヒビターを含んでいないことを除いて被検試料と同じであり、かつ該対照試料は、N−ヘリックスコイルドコイルくぼみへのD−ペプチドの結合に適する被検試料と同じ条件下に維持される、
を含み、被検試料における結合の程度が対照試料における結合の程度より低い場合、候補インヒビターはHIV−1 gp41エンベロープタンパク質のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する化合物または分子である、HIV−1 gp41エンベロープタンパク質のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する化合物または分子の同定方法。
[36]融合タンパク質がIQN17である[35]記載の方法。
[37]D−ペプチドを蛍光性レポーターで標識し、かつ融合タンパク質を、蛍光性レポーターに充分に近接した場合に該レポーターからのシグナルを消去する消光物質で標識し、かつ蛍光性レポーターからのシグナルの検出が、候補インヒビターがHIV−1 gp41エンベロープタンパク質のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する化合物または分子であることを示す、[35]記載の方法。
[38]GCN4の、三量体型のコイルドコイル領域と、HIV−1 gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなり、gp41のN−ペプチド領域の部分がHIV−1 gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットの一部または全部を含んでなるか、または含まないものである融合タンパク質。
[39]HIV gp41のN−ペプチド領域の部分が、HIVの以下の24個のアミノ酸残基:SGIVQQQNNLLRAIEAQQHLLQLTを含んでなるものである、[38]記載の融合タンパク質。
[40]可溶性の三量体型のコイルドコイルと、HIV−1 gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基を含むのに充分なHIV−1 gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなる融合タンパク質を個体に導入する工程を含み、該融合タンパク質が製薬学的に許容され得る担体中に存在するものである、個体における免疫応答の顕現方法。
[41]少なくとも4個のアミノ酸残基を含んでなり、かつコンセンサス配列WXWL(式中、WはD−トリプトファンを表し、LはD−ロイシンを表し、ならびにXはいずれかの残基(moiety)を表わす)を含んでなるD−ペプチド。
[42]XがD−アミノ酸残基または修飾D−アミノ酸残基である[41]記載のD−ペプチド。
[43]2〜21個のアミノ酸残基を含んでなる[41]記載のD−ペプチド。
[44]EWXWL(式中、EはD−グルタミン酸を表し、WはD−トリプトファンを表し、LはD−ロイシンを表し、ならびにXはアミノ酸残基、修飾アミノ酸残基またはアミノ酸残基以外の残基を表わす)である少なくとも5個のアミノ酸残基を含んでなるD−ペプチド。
[45]


(y’) HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する、(a)〜(x’)の配列の変異体、
(式中、C−末端のac−およびN−末端の−amは任意である)
からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含んでなるD−ペプチド。
[46](a)(1)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するその能力についての評価対象の候補薬物と;(2)タンパク質の、三量体状のコイルドコイル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチドの部分とを含んでなる融合タンパク質とを、薬物による結合についてHIV gp41くぼみの提示に適する条件下に合せる工程;ならびに
(b)候補薬物がHIV gp41くぼみを結合するか否かを決定する工程、ここで、結合が生ずる場合、候補薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物である、
を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物の同定方法。
[47](a)において、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するペプチドを候補薬物および融合タンパク質と合わせ、かつ(b)において、候補薬物がHIV gp41くぼみを結合するか否かをHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するペプチドの存在下に測定する、[46]記載の方法。
[48]HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するペプチドが、



(y’) HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する、(a)〜(x’)の配列の変異体、
(式中、C−末端のac−およびN−末端の−amは任意である)
からなる群より選ばれるものである、[42]記載の方法。
[49]候補薬物を検出可能に標識し、かつHIV gp41くぼみへの候補薬物の結合をHIV gp41くぼみ上の検出可能な標識の存在を検出することにより測定する、[46]記載の方法。
[50]融合タンパク質が、GCN4の可溶性の三量体状のコイルドコイル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチドの部分とを含んでなるものである、[46]記載の方法。
[51]融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、IQN17のアミノ酸配列が配列番号:2である[50]記載の方法。
[52](a)(1)薬物による結合が可能であるような様式でHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを提示する可溶性モデルと(2)N−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するその能力についての評価対象の候補薬物とを合せる工程;ならびに
(b)候補薬物が可溶性モデルのN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するか否かを測定する工程、
を含み、結合が生ずる場合、候補薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物である、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物の同定方法。
[53](a)(1)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合し、かつ細胞へのHIV侵入を阻害するその能力についての評価対象の候補薬物と、(2)タンパク質の、三量体状のコイルドコイル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチドの部分とを含んでなる融合タンパク質とを、薬物による結合についてHIV gp41くぼみの提示に適する条件下に合わせる工程;
(b)候補薬物がHIV gp41くぼみを結合するか否かを測定する工程、ここで、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみへの候補薬物の結合が生ずる場合、該候補薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物であり、それにより、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物を製造する;ならびに
(c)(b)において製造された薬物の細胞へのHIV侵入を阻害する能力を評価する工程、ここで、薬物が細胞へのHIV侵入を阻害する場合、該薬物は、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合し、かつ細胞へのHIV侵入を阻害する薬物である、
を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合し、かつ細胞へのHIV侵入を阻害する薬物の製造方法。
[54](a)(2)の融合タンパク質が、GCN4の、可溶性の三量体型のコイルドコイル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチドの部分とを含んでなり、かつ(b)において製造された薬物の細胞へのHIV侵入を阻害する能力をシンシチウムアッセイ、感染アッセイまたは両方で評価する、[53]記載の方法。
[55](c)において同定された薬物を、適切な動物モデルにおけるインビボ評価により細胞へのHIV侵入を阻害するその能力についてさらに評価する、[54]記載の方法。
[56]融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、IQN17のアミノ酸配列が配列番号:2である、[54]記載の方法。
[57](a)可溶性の三量体型のコイルドコイルと(b)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基を含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなる融合タンパク質を製造する工程を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみの可溶性モデルの製造方法。
[58](a)のタンパク質が、GCN4−pIQ I、GCN4−pII、モロニーマウス白血病ウイルスまたはABCヘテロ三量体であり、かつ(b)の充分な部分が、配列番号:20を含んでなる部分;配列番号:26を含んでなる部分;配列番号:27を含んでなる部分および配列番号:42を含んでなる部分からなる群より選ばれるものである、[57]記載の方法。
[59]融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、IQN17のアミノ酸配列が配列番号:2である、[57]記載の方法。
[60](a)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみの可溶性モデルを製造または得る工程;
(b)(1)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するその能力についての評価対象の候補薬物と(2)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみの可溶性モデルとを合わせる工程;ならびに
(c)候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するか否かを決定する工程、
を含み、候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する場合、候補薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物であり、それにより、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物を製造する、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物の製造方法。
[61]可溶性モデルが、タンパク質の、三量体状のコイルドコイル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチドの部分とを含んでなる融合タンパク質である、[60]記載の方法。
[62]融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、IQN17のアミノ酸配列が配列番号:2である、[61]記載の方法。
[63](a)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみの可溶性モデルを製造または得る工程;
(b)(1)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するその能力についての評価対象の候補薬物と(2)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみの可溶性モデルとを合わせる工程;
(c)候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するか否かを決定する工程、ここで、候補薬物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する場合、該候補薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物であり、それにより、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合する薬物を製造する、ならびに;
(d)(c)において製造した薬物の細胞へのHIV侵入を阻害する能力を評価する工程、
を含み、薬物が細胞へのHIV侵入を阻害する場合、薬物はHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合し、かつ細胞へのHIV侵入を阻害する薬物である、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合し、かつ細胞へのHIV侵入を阻害する薬物の製造方法。
[64]可溶性モデルが、タンパク質の、三量体状のコイルドコイル領域と、HIV gp41くぼみを含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチドの部分とを含んでなる融合タンパク質である、[63]記載の方法。
[65]融合タンパク質がIQN17またはその変異体であり、IQN17のアミノ酸配列が配列番号;2である、[64]記載の方法。
[66][60]記載の方法により製造された薬物。
[67][61]記載の方法により製造された薬物。
[68][62]記載の方法により製造された薬物。
[69][63]記載の方法により製造された薬物。
[70][64]記載の方法により製造された薬物。
[71][65]記載の方法により製造された薬物。
[72](a)D−掌体(handedness)のIQN17をL−アミノ酸ペプチドのファージディスプレイライブラリーと、D−掌体のIQN17への該ライブラリーのメンバーの結合に適する条件下に合わせる工程;ならびに
(b)D−掌体のIQN17とファージディスプレイライブラリーの1つまたは複数のメンバーとの間で結合が生ずるか否かを決定する工程、ここで、結合が生ずる場合、D−掌体のHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみに結合するペプチドが同定される、
を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみに結合するペプチドの同定方法。
[73]D−掌体のIQN17に結合するファージディスプレイライブラリーの1つまたは複数のメンバーのアミノ酸配列を決定する工程、ならびに決定されたアミノ酸配列を含んでなるD型のペプチドを製造する工程をさらに含み、D型のペプチドが天然のL−掌体のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみを結合するものである、[72]記載の方法。
[74]式I

〔式中、AはD−アミノ酸残基または式

(式中、RA1とRA2の一方は、置換もしくは非置換の、アリール、ヘテロアリール、アリールメチル、ヘテロアリールメチル、ベンゾ縮合アリール、ベンゾ縮合ヘテロアリール、ベンゾ縮合アリールメチル、ベンゾ縮合ヘテロアリールメチル、シクロアルキルまたはビシクロアルキルであり;かつ他方は水素であり;およびWは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはハロゲン、たとえば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である)
のN−置換グリシル残基である;
Bはグリシル残基または式

(式中、RB1とRB2の一方は、置換もしくは非置換の、直鎖、分岐もしくは環状の、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基、ヘテロアリール基またはヘテロアリールアルキル基であり;かつ他方は水素であり;およびXは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素等のハロゲンである)
のD−アミノ酸もしくはN−置換グリシル残基である;
Dは式

(式中、RD1とRD2の一方は、置換もしくは非置換の、アリール、ヘテロアリール、アリールメチル、ヘテロアリールメチル、ベンゾ縮合アリール、ベンゾ縮合ヘテロアリール、ベンゾ縮合アリールメチル;ベンゾ縮合ヘテロアリールメチル、シクロアルキルまたはビシクロアルキルであり;かつ他方は水素であり;およびYは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素等のハロゲンである)
のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基である;
Eは式

(式中、RE1とRE2の一方は、置換もしくは非置換の、直鎖、分岐もしくは環状の、アルキル基、アリール基またはアリールアルキル基であり;かつ他方は水素であり;およびZは水素、メチル、トリフルオロメチルまたはフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素等のハロゲンである)
のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシル残基である;
K、L、MおよびNは各々独立して、アミノ酸残基または2〜約8個のアミノ酸残基を含んでなるポリペプチド基である;
Fは直接結合または二官能性連結基である;ならびに
n、p、q、rおよびsは各々独立して、0または1である〕
の化合物。
[75]RA1とRA2の一方およびRD1とRD2の一方が独立して、フェニル基、置換フェニル基、ナフチル基、置換ナフチル基、ナフチルメチル基、置換ナフチルメチル基、ベンジル基もしくは置換ベンジル基、または式

(式中、JはO、SまたはNRであり、RはHまたは直鎖、分岐もしくは環状のC1 〜C6 −アルキルであり;ならびに
1 、R2 、R3 、R4 およびR5 は独立して、水素、ハロゲンおよびアルキルからなる群より選ばれるものである)
の基である、[74]記載の化合物。
[76]RA1とRD1が両方とも水素である[75]記載の化合物。
[77]RB1とRB2の一方が、水素、置換もしくは非置換の、直鎖、分岐もしくは環状のC1 〜C4 −アルキル、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはナフチルメチルである、[74]記載の化合物。
[78]RB1が水素である[77]記載の化合物。
[79]RE1とRE2の一方が、置換もしくは非置換の、直鎖、分岐もしくは環状のC1 〜C6 −アルキル基または置換もしくは非置換のフェニル基もしくはナフチル基であり、かつ他方が水素である、[74]記載の化合物。
[80]RE1が水素である[79]記載の化合物。
[81]AおよびDが各々D−トリプトファン残基であり、かつEがD−ロイシン残基である[74]記載の化合物。
[82]KがD−アミノ酸残基またはアミノ−、カルボキシル−もしくはスルフヒドリル置換側鎖を含んでなるN−置換グリシル残基であり、かつLが2もしくは3個のD−アミノ酸残基またはN−置換グリシン残基を含んでなるポリペプチドである[74]記載の化合物。
[83]Mが2〜約8個のD−アミノ酸残基を含んでなり、該アミノ酸残基の少なくとも1つがアミノ−、カルボキシ−もしくはスルフヒドリル置換側鎖を含んでなるポリペプチド基であり、かつNが1〜約6個のアミノ酸残基を含んでなり、該アミノ酸残基の少なくとも1つがリジン残基であるポリペプチド基である[74]記載の化合物。
[84]Fが約2〜約40原子の長さを有する二価の連結基である[74]記載の化合物。
[85]Fが式−Pn −(式中、nは1〜約12の整数であり、かつ各Pは独立して、L−もしくはD−アミノ酸もしくはN−置換グリシル残基、グリシル残基またはN−置換グリシル残基である)のポリペプチド連結基である[84]記載の化合物。
[86]Fは置換もしくは非置換のC4 〜C40−アルキレン基または1もしくはそれ以上の箇所においてヘテロ原子、フェニレン基もしくはヘテロアリーレン基により介在されているC4 〜C40−アルキレン基である[84]記載の化合物。
[87]Fが1〜約10個のグリコシド基を含んでなる多糖類基である[84]記載の化合物。
[88](a)HIV gp41疎水性ポケットの可溶性の三量体ペプチドモデルの結晶を得る工程;
(b)(a)において得られた結晶を用いてX線回折研究によりペプチドモデルの原子座標を得る工程;
(c)(b)において得られた原子座標を用いてHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットを明確化する工程;
(d)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに適合する分子または化合物を同定する工程;
(e)(d)において同定された分子または化合物を得る工程;ならびに
(f)(e)において得られた分子または化合物をHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットと接触させて、分子または化合物のHIV gp41のポケットに適合する能力を評価する工程、
を含み、分子または化合物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに適合する場合、該分子または化合物は該ポケットに適合する薬物であり、それにより、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに適合する薬物を製造する、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに適合する薬物の製造方法。
[89]可溶性の三量体ペプチド分子が、可溶性の三量体型のコイルドコイルと、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基を含むのに充分なHIV gp41のN−ペプチド領域の部分とを含んでなるものである、[88]記載の方法。
[90](f)において、分子または化合物をIQN17、HIV gp41のN−ヘリックスまたはHIVポケットを含んでなるポリペプチドと接触させることにより、該分子または化合物をHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットと接触させる、[89]記載の方法。
[91]可溶性モデルがIQN17である[89]記載の方法。
[92](a)において得られた結晶が空間群C222のIQN17の結晶である[88]記載の方法。
[93](a)IQN17の原子座標を得る工程;
(b)(a)において得られた原子座標を用いてHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットを明確化する工程;
(c)HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに適合する分子または化合物を同定する工程;
(d)(c)において同定された分子または化合物を得る工程;ならびに
(e)(d)において得られた分子または化合物をHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットと接触させて、分子または化合物のHIV gp41のポケットに適合する能力を評価する工程、
を含み、分子または化合物がHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに適合する場合、該分子または化合物は該ポケットに適合する薬物であり、それにより、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットに適合する薬物を製造する、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルポケットを結合する薬物の製造方法。
[94]原子座標が図11A〜11Vに表わされるPDBファイルにおける原子座標である[93]記載の方法。
[95](a)D−掌体のIQN17をリガンドの生物学的にコードされたライブラリーと、D−掌体のIQN17への該ライブラリーのメンバーの結合に適する条件下に合わせる工程;ならびに
(b)D−掌体のIQN17と生物学的にコードされたライブラリーの1つまたは複数のメンバーとの間で結合が生ずるか否かを測定する工程、ここで、結合が生ずる場合、D−掌体のHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみに結合するリガンドが同定される、
を含む、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルくぼみに結合する分子の同定方法。
[96]D−掌体のIQN17に結合する生物学的にコードされたライブラリーの1つまたは複数のメンバーの配列を決定する工程、ならびに決定された配列を含んでなる、生物学的にコードされたリガンドの鏡像掌体のリガンドを製造する工程をさらに含む[95]記載の方法。
[97]生物学的にコードされたライブラリーがファージディスプレイライブラリー、DNAライブラリー、RNAライブラリーおよび生物学的にコードされたペプチドライブラリーからなる群より選ばれるものである[95]記載の方法。

Claims (12)

  1. 少なくとも4個のアミノ酸残基を含んでなり、かつコンセンサス配列WXWL〔式中、WはD−トリプトファンを表し、LはD−ロイシンを表し、ならびにXは任意の残基(moiety)を表す〕を含んでなり、可溶性の非凝集性三量体ペプチドのポケットに結合するD−ペプチドであって、該可溶性の非凝集性三量体ペプチドは、可溶性の三量体型のコイルドコイルと、HIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルのポケットを形成するアミノ酸残基を含むのに充分なHIV gp41のN−ヘリックスコイルドコイルの部分とを含み、該可溶性の非凝集性三量体ペプチドが、疎水性ポケットが空であり、リガンドによる結合が可能となるように疎水性ポケットを提示する、D−ペプチド。
  2. XがD−アミノ酸残基または修飾D−アミノ酸残基である請求項1記載のD−ペプチド。
  3. 4〜21個のアミノ酸残基を含んでなる請求項1または2記載のD−ペプチド。
  4. EWXWL(式中、EはD−グルタミン酸を表し、WはD−トリプトファンを表し、LはD−ロイシンを表し、ならびにXはアミノ酸残基または修飾アミノ酸残基を表す)である少なくとも5個のアミノ酸残基を含んでなり、該可溶性の非凝集性三量体ペプチドのポケットに結合する請求項1記載のD−ペプチド。


  5. からなる群より選ばれるアミノ酸配列を含んでなる請求項1または請求項4記載のD−ペプチド。
  6. 粘膜細胞へのHIVの侵入の妨害方法に使用される医薬の製造のための、請求項1〜5いずれか1つに記載のD−ペプチドおよび担体または基剤を含んでなる薬物の使用。
  7. 担体または基剤が、フォーム、ゲル、薬物を保持するのに充分に粘性のその他の物質、水および緩衝液からなる群より選ばれるものである請求項6記載の使用。
  8. 担体または基剤が膣坐剤または直腸坐剤である請求項6または請求項7記載の使用。
  9. ペプチドが膣、口または直腸に投与もしくは適用された直後または投与もしくは適用された後すぐに、該ペプチドが担体または基剤から放出される、請求項6〜8いずれか1つに記載の使用。
  10. ペプチドが膣、口または直腸に投与もしくは適用された後に徐々に、または投与もしくは適用された後の所定の期間の後に、該ペプチドが担体または基剤から放出される、請求項6〜8いずれか1つに記載の使用。
  11. 薬物を、使用の条件下に該薬物の放出が可能となるような様式で避妊具の表面上に存在させるか、または避妊具内に組み込む、請求項6記載の使用。
  12. 薬物がgp41の立体配座変化を防ぎまたは減少させ、それにより、粘膜表面の細胞へのHIVの侵入を妨げる、請求項6〜11いずれか1つに記載の使用。
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