【発明の詳細な説明】
磁気くさびで均一な磁界を生成する装置
著作権表示
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は、特許商標庁のファイルまたは記録にあることから、本特許開示の任意の者に
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る著作権も全て留保する。
関連する出願および特許
本願は、同時係属の米国出願第08/613,756号に関する。関連特許と
しては、米国特許第5,495,222号「Open Permanent M
agnet Structure for Generating Highl
y Uniform Field」、米国特許第5,475,355号「Met
hod and Apparatus for Compensation o
f Field Distortion in a Magnetic Str
ucture Using Spatial Filter」、米国特許第5,
428,333号「Method and Apparatus for Co
mpensation of Field Distortion in a
Magnetic Structure」、米国特許第5,278,534号「
Magnetic Structure Having a Mirror」、
米国特許第5,285,393号「Method for Determina
tion of Optimum Fields of Permanent
Magnet Structures with Linear Magnet
ic Characteristics」、米国特許第5,412,365号「
High Field Magnets for Medical Appli
cations」、米国特許第5,162,771号「Highly Effi
cient Yoked Permanent Magnet」、米国特許第5
,107,239号「Hybrid Permanent Magnets」、
米国特許第5,119,057号「Optimum Disign of Tw
o
−Dimensional Permanent Magnets」、および米
国特許第4,990,083号「Yorkeless Permanent M
agnet Structure and Method of Constr
uction」がある。上記の全ての特許は、これによって参照により本願に組
み込む。
発明の背景
本明細書に開示の発明は一般に、核磁気共鳴(NMR)撮像の医療応用分野で
使用される構造などの磁気構造に関する。より詳細には、本発明は、当該領域内
にほぼ均一な磁界を生成するように設計された構成および残留磁気を有する1対
または複数対の磁気くさびから形成された磁気構造に関する。この構造は、密閉
型にも、部分開放型にも、完全開放型にもすることができる。
NMR撮像用の磁石の望ましい特徴は、患者へのアクセスが開かれていること
である。開放型磁石設計は好ましくは平らであり、超伝導磁石または永久磁石に
することができる磁界源から撮像領域を分離することによって患者に対して最大
限のアクセスを提供するものとする。平らな磁気構造の設計者が直面する1つの
問題は、当該領域の磁界の閉込めである。もう1つの問題は、実際の適用分野の
要件を満たすのに十分に大きな領域内で必要な磁界を生成するには、通常は大き
くパワフルな磁気構造が必要となるので、撮像領域のサイズより適度に小さな寸
法の平らな表面を有する構造を設計することである。
開放型超伝導構造を開発する方法が提案されている。永久磁石が与える設計の
フレキシビリティが高いので、超伝導磁石に比べて磁界の強さは制限されるが、
永久磁化材料の使用に基づく開放型構造がしばしば好ましい。本明細書で確認し
たのと同じ発明者等に発行された米国特許第5495222号に記載のように、
永久磁石は、部分開放型磁石構成の設計でその中に記載されている最近開発され
た方法に従って使用することができる。本発明は、密閉型にも、部分開放型にも
、完全開放型にもすることができる、強く均一な磁界を当該領域内で生成するの
に必要な磁性材料の量を最小限に抑える構造をもたらす、磁石設計の新しい手法
を提供する。
磁気構造、および非常に均一な磁界を生成するために永久磁石構造を使用する
ことのさらなる背景情報は、上記に列挙した特許、およびこの記述によって参照
により本明細書に組み込まれる少なくとも以下の追加情報源に見られる。
発明の概要
本発明の一目的は、当該領域内でほぼ均一な磁界を生成するための改良した装
置を提供することである。
本発明の別の目的は、医療撮像で有効な完全開放型磁気構造を提供することで
ある。
本発明の別の目的は、完全開放型磁気構造によって生成された磁界の歪みを減
少させる、または補償することである。
本発明の別の目的は、当該領域内で強く均一な磁界を生成するのに必要な磁性
材料の量を最小限に抑えることである。
本発明の別の目的は、NMR撮像用の改良された磁気構造を提供することであ
る。
上記その他の目的は、第1軸について対称に配列され、共通縁部に沿って互い
に隣接するほぼ同じ形状を有する少なくとも1対の磁気くさびを含む、当該領域
内でほぼ均一な磁界を生成する磁気構造によって達成される。各磁気くさびは、
この共通縁部で、またはその近くで終端する第1側面および第2側面を有する。
各くさび対の第1くさびは、第1側面と第1軸との間で第1角度を画定し、第2
側面と第1軸との間で第2角度を画定するように位置決めされる。第1くさびは
、第1角度と第2角度の合計によって決まる第2軸に対する方向(第1軸に対し
て垂直)に、均一に磁化される。
各くさび対の第2くさびは、第1軸および第2軸に沿った磁化の成分の絶対値
がそれぞれ第1軸および第2軸に沿った第1くさびの磁化の成分と等しくなるよ
うに、また第2くさびの磁化成分の1つが第1くさびの磁化成分のそれぞれと反
対になるように磁化される。この構造では、ほぼ均一な磁界を含む当該領域は、
くさび対の第1側面の間、またはくさび対の第2側面の間、あるいはその両方と
なる。
各くさびの第3側面に沿った表面電荷密度を最小限に抑える、またはなくすた
めに、各くさびの第3側面は、くさびが磁化される方向と平行になることが好ま
しい。
磁化方向は、当該領域内で完全に横方向の磁界(一般に第2軸と平行)、また
は完全に縦方向の磁界(一般に第1軸と平行)を与えるように構成することがで
きる。横方向磁界では、第1くさびは、第1角度と第2角度の合計から90°を
引いた角度と等しい第2軸に対する角度で磁化される。第2くさびは、第2軸に
沿った磁化成分が第2軸に沿った第1くさびの磁化成分と等しくなり、第1軸に
沿った磁化成分が第1軸に沿った第1くさびの磁化成分と等しく、かつ反対にな
るように磁化される。
縦方向磁界では、第1くさびは、第1角度と第2角度の合計と等しい第2軸に
対する角度で磁化される。第2くさびは、第1軸に沿った磁化成分が第1軸に沿
った第1くさびの磁化成分と等しくなり、第2軸に沿った磁化成分が第2軸に沿
った第1くさびの磁化成分と等しく、かつ反対になるように磁化される。
磁界の束を閉じる助けとするために、磁気構造は、少なくとも1対のくさびの
第1側面または第2側面と外部領域との間に透磁率の高いヨークを含むことがで
き、それにより外部領域で磁束はほぼ0となる。ヨークは、この少なくとも1対
のくさびの第1または第2の側面に沿って延び、これと隣接することも、この少
なくとも1対のくさびの第1または第2の側面と隣接せず、側面とヨークとの間
に、本明細書に記載のフィルタ構造を位置決めすることができるスペースを残し
ておくこともできる。
第1および第2のくさびは、球形くさびや角柱くさびなど様々な形状をとるこ
とができるが、断面が3角形であることが好ましい。
磁界の強さの大きさを増大させるために、各対が第1軸について対称に配列さ
れた、複数対のくさびを設けることもできる。くさび対の共通縁部は互いに隣接
する関係であることが好ましく、複数のくさびの第1側面と第2側面の間の角度
幅はほぼ等しいことが好ましい。複数対のくさびのうち1対のくさびは、複数対
のくさびの別の対のくさびの形状とかなり異なる形状を有することも、同じ形状
を有することもできる。
複数対のくさびは、互いに隣接し、少なくとも1対のくさびの第1側面が別の
くさび対の第2側面と隣接するようになっていることが好ましい。別法として、
各くさび対の間にスペースをあけることもできる。当該領域として磁気構造の反
対側の外部領域中の束を閉じるために、くさび対の1つの対応する側面と外部領
域との間に、透磁率の高いヨークを位置決めすることができる。
磁気構造は、密閉型、部分開放型、または完全開放型にすることができる。密
閉型磁石では、磁気構造は、くさび対に接続された1つまたは複数の追加磁気エ
レメントを含むことになり、この1つまたは複数の追加磁気エレメントは、当該
領域が位置する空洞をくさびとともに画定する。部分開放型磁石では、この構造
は、くさびとともに空洞を部分的に囲む追加エレメントを含むことができるが、
この空洞はその少なくとも1つの側面で開いている。完全開放型磁石では、当該
領域はくさび以外のいかなる磁気エレメントによっても境界をつけられない。
磁気くさびが生成したほぼ均一な磁界中の歪みを補償する手段を提供すること
ができる。この手段は、1対のくさびの第1または第2の側面と隣接するように
位置決めされた少なくとも1つのフィルタ構造を含むことができる。このフィル
タ構造は、1つまたは複数のフィルタ・エレメントを含み、透磁率の高いヨーク
とそのくさび対との間に位置決めすることができる。
この手段は、1対のくさびの第1または第2の側面と隣接して位置決めされた
、モーメントの均一な1対の双極子分布(dipole distributi
on)も含むことができ、この双極子分布は、第1軸について対称に位置決めさ
れる。双極子分布は、第1軸に沿って反対向きに配向された場合には、第2軸に
沿った磁界の任意成分の歪みを補償する。双極子分布は、第1軸に沿って同じ向
きに配向された場合には、第1軸に沿った磁界の任意成分の歪みを補償する。2
組の双極子分布を利用して、磁界の両成分の歪みを補償することもできる。
この補償手段は、1対のくさびの第1または第2の側面の末端またはその近く
に位置決めされた、少なくとも1対のエレメントを含むことができる。このエレ
メントは、第1軸について対称に位置決めされた1対のほぼ同じ強磁性磁極片、
または第1軸について対称に位置決めされた少なくとも1対のほぼ同じ磁化エレ
メントを含むことができる。
図面の簡単な説明
限定ではなく例示を目的とした添付の図面の各図に、本発明を図示する。同じ
参照符は同じまたは対応する部分を指す。
第1図から第3図は、単一対のくさび磁石を有する本発明の磁気構造の実施形
態を示す概略断面図である。
第5図は、極限r→0のときの強さHiおよびHeの、配向αmに対するプロッ
トを示すグラフである。
第6図は、縦方向磁界を生成する本発明の磁気構造の1実施形態を示す概略断
面図である。
第7図は、透磁率の高いヨークを有する本発明の磁気構造の1実施形態を示す
概略断面図である。
第8図は、第7図の構造をフィルタ構造とともに示す概略図である。
第9図は、第7図および第8図のくさび構造の、方程式(2.2)で与える級
数としての磁界の展開式の係数を示す表である。
第10A図は、第7図の構造のくさび磁石の等電位線を示す概略図である。
第10B図は、第8図の構造のくさび磁石の等電位線を示す概略図である。
第11図は、フィルタ・エレメントの数の増加が磁界の強さに及ぼす影響を示
すグラフである。
第12図は、3つのアクティブなフィルタ・エレメント(n0=3)を有する
フィルタの構成要素の電位を示すグラフである。
第13図は、単一のアクティブなフィルタ・エレメント(n0=1)を有する
本発明の1実施形態のくさび磁石の等電位線を示す概略図である。
第14図は、本発明の異なる3つの構造のx軸上の距離に対する磁界の強さを
示すグラフである。
第15図は、本発明の1実施形態による混成くさび磁石の等電位線を示す概略
図である。
第16図は、長方形磁気ブロックを示す概略図である。
第17図は、第16図の長方形ブロックのx軸に沿った磁界の強さおよび勾配
を示すグラフである。
第18図は、長方形磁気ブロックが生成した等電位線を示す概略図である。
第19図は、くさびの内側に沿って延びる透磁率の高いヨークを有する本発明
の1実施形態のくさび磁石を示す概略図である。
第20図は、K=1の第19図のくさび磁石を示す概略図である。
第21図は、直線x=0に沿うくさびの外側に沿って延びる透磁率の高いヨー
クを有する本発明の実施形態のくさび磁石構造を示す概略図である。
第22図は、フィルタ構造を有するくさび磁気構造およびフィルタ構造のない
くさび磁気構造について、x軸に沿った磁界の強さを示すグラフである。
第23図および第24図は、フィルタ構造を有する第21図のくさび磁石、お
よびフィルタ構造のない第21図のくさび磁石の一部分の等電位線を示す概略図
である。
第25図は、単一のくさび磁石の等電位線を示す概略図である。
第26図は、単一のくさび磁石によって生成された、x軸に沿った磁界の強さ
の成分とその第1および第2の導関数とを示すグラフである。
第27A図は、単一のくさび磁石対を含む本発明の1実施形態の磁気構造付近
の2つの撮像領域の境界を示す概略図である。
第27B図は、磁気双極子をさらに含む第27B図の磁気構造付近の2つの撮
像領域の境界を示す概略図である。
第28図は、第27A図および第27B図の点Poiの近傍のx軸に沿った磁界
の強さの成分を示すグラフである。
第29図は、その外側に沿って配置された透磁率の高い媒体を有する本発明の
単一のくさび磁石の等電位線を示す概略図である。
第30図は、第29図のくさび磁石のx軸に沿った磁界の強さの成分を示すグ
ラフである。
第31図は、本発明の1実施形態の密閉型六角形磁気構造を示す概略図である
。
第32A図および第32B図は、部分終端として磁気エレメントを有する本発
明の実施形態の単一くさび対の磁気構造を示す概略図である。
第33図は、強磁性磁極片を有する実施形態の単一くさび対の磁気構造を示す
概略図である。
第34図、第35A図、および第35B図は、本発明の実施形態の2つのくさ
び対の磁気構造を示す概略図である。
第36図は、第35A図の構造の2つの磁気くさびの等電位線を示す概略図で
ある。
第37図は、第35A図の2重くさび磁石の磁界の強さを示すグラフである。
第38図は、2つのαfの値についての単一くさび磁石の磁界の強さを示すグ
ラフである。
第39図は、第35B図の構造の2つの磁気くさびの等電位線を示す概略図で
ある。
第40図は、等電位線が透磁率の高い材料との界面に変わった、本発明の1実
施形態の2重くさび対の磁気構造を示す概略図である。
第41図は、第40図の2重くさび構造の磁界成分を計算するためのベクトル
図である。
第42図は、第40図の2重くさび構造を組み込む、本発明の1実施形態の密
閉型磁気構造を示す概略図である。
第43図は、磁極片と、第42図の構造の幾何形状と同様の幾何形状を有する
長方形の磁気構成要素とを有する磁石を示す概略図である。
第44図は、第43図の磁気構造の、x軸(曲線(a))およびy軸(曲線(b
))に沿った磁界の分布を示すグラフである。
第45図は、本発明の実施形態の3重くさび対の磁気構造のy>0領域を示す
概略図である。
第46A図、第46B図、および第46C図は、第45図の3つの磁気くさび
中の磁界成分を計算するためのベクトル図である。
第47図は、第45図の3重くさび対の磁気構造を組み込む、本発明の実施形
態の密閉型磁気構造の一部分を示す概略図である。
第48図は、磁極片と、第47図の構造の幾何形状と同様の幾何形状を有する
長方形の磁気構成要素とを有する磁石を示す概略図である。
第49図は、第48図の磁気構造の、x軸(曲線(a))およびy軸(曲線(b
))に沿った磁界の分布を示すグラフである。
第50図は、本発明の1実施形態の単一くさび対の磁気構造を示す3次元斜視
図である。
好ましい実施形態の詳細な説明
以下の各セクションに、図面の各図に関連して、単一対または複数対のくさび
磁石を有する本発明の好ましい実施形態の磁気構造について記述する。セクショ
ン1は、2次元磁気構造の特性、とりわけ任意に指定された磁界の配向を当該領
域内で生成するのに必要な磁化の分布の分析を含む。セクション2は、磁界の歪
みの主な空間高調波(dominant spatial harmonics
)を打ち消すフィルタ構造の設計を含めた、当該領域内での均一な磁界の達成に
ついての記述を含む。セクション3は、くさびの相対的な配向が当該領域の特性
に及ぼす影響の分析と、密閉型および開放型の磁気構造に組み込まれた本発明の
単一くさび対の実施形態についての記述とを含む。セクション4および5は、複
数のくさび磁石を有する好ましい実施形態の磁気構造、およびこのようなくさび
磁石の終端についての記述を含む。セクション6では、その前のセクションの2
次元形式を、有限寸法の3次元くさび構造の実施形態に拡張する。
本明細書に記載の磁気構造は、当該領域が撮像領域であり、人体表面、例えば
人体の胸部または脊椎領域に近接している、専用スキャナで使用される可能性が
ある。例えば、第50図の磁気構造10は、x軸について対称に配列された1対
の同じ磁化くさび12および14を含む。くさび12および14は、z軸に沿っ
て延びる共通縁部16を有する。くさび12および14は、実際には構造10の
「内部」側面となる側面18および20をそれぞれ有し、また実際には構造10
の「外部」側面となる側面22および24をそれぞれ有する。くさび12および
14は磁化され、人体の一部の撮像領域となる内部側面18と20の間の当該領
域内で磁界を生成する。本明細書に詳細に記述するように、くさびの配向、サイ
ズ、および数を変え、フィルタ構造、双極子分布、およびその他の構造エレメン
トを追加することにより、所望の強さおよび均一さで磁界を生成することができ
る。透磁率の高い材料で作成したヨーク26は、外部側面22および24に沿っ
て延び、束を閉じる。特定の各適用分野が、撮像領域の幾何学的制限を決定し、
その結果として本明細書に記載の磁石構成および適当なフィルタ構造の設計情報
を提供する。
1.磁化くさびの分析
第50図の磁気構造は、z軸に沿ってとったこの構造の断面図を考慮すること
によって分析することができる。くさび磁石の基本的な構成要素は、第1図の2
次元構造である。この構造は、第1図に示す共通縁部16を有する、軸xについ
て対称に配列された磁気材料の2つの同じくさび12および14からなる。くさ
びは、非磁性媒体中に位置する。理想的な消磁特性は、
0は真空の透磁率である。くさび12および14の4つの表面18、22、24
、および20はそれぞれ、
つの界面それぞれの上で均一な表面電荷密度σhを誘導する。誘導された表面電
荷密度は、
ある。
点Pで、表面電荷密度σhは、
であり、r0hは、くさびと外部媒体との間の界面shの半径の寸法であり、ηhは
、第1図に示す単位ベクトルτh、ηhで規定される界面の基準系におけるPの座
標である。側面(P1P2)および(P3P4)は、2つのくさびの残留磁気と平行
になるものと仮定する。
r0h→∞と仮定する。電荷σhが条件を満たす場合に、2つのくさび12および14は均一な磁界を生成する。方程式
1.5は2つの特殊解、
および
を有する。
条件(1.6)が満たされたときには、領域y>0中(くさび12中)の残留
であり、
である。
方程式1.9は、第2図に示す磁化の分布に対応する(磁化を表す図中のくさ
び内の太い矢印)。条件(1.6)の下では、領域
であり、
である。
領域
配向される。その大きさは、
で与えられ、これはくさびの配向αmとは無関係である。
方程式(1.13)で与えられる定数Kはくさびの角度のみに依存し、
に達する。
極限
で、くさびはx=0の平面について対称となる。残留磁気はx軸と平行になり、
方程式(1.11)および(1.15)から
となる。
に対して角度θ2に配向され、
および
である。
方程式(1.20)は、第3図に示す磁化の分布に対応する。領域(1.10
)
である。
配向され、その大きさは、同じ方程式(1.15)で与えられる。
とを示す[1]。結果(1.11)および(1.21)により、条件(1.8)
、(1.9)および(1.19)、(1.20)を満たす残留磁気のいかなる組
合
せを使用しても、任意配向の均一な磁界を生成することができる。
くさび表面にわたる境界条件は、その他の源によって生成された磁界の追加に
と等しく反対向きの均一な磁界の強さを追加すると、それぞれ領域(1.10)
または領域(1.14)に磁界を閉じ込めることになる。
側面s2、s3(22および24)または側面s1、s4(18および24)がく
さび材料と透磁率が無限大の媒体26との間の界面であると仮定することにより
、する必要はないが、側面から間隔をあけながら、そのくさびが生成する磁界の束
に近接して位置決めすることができることは、当業者には分かるであろう。例え
ば第32A図を参照されたい。
(1.8)、(1.9)および(1.19)、(1.20)中の領域y>0中の
る。極限r0h→∞で解
を考慮する。2つの特定の場合が重要である。第1に、
となる、すなわち領域y>0内で、残留磁気はh=1の界面(側面18)に対し
の大きさで、x軸と平行に配列される。これを、場合(1.23)について第4
A図の図から得た第4C図のベクトル図に示す。
第2の場合は、
の場合であり、これは、第4A図のベクトル図から、となる。したがって、場合(1.26)では、くさびに磁気誘導の束はなく、く
さびの残留磁気はh=2、h=3の界面(側面20および22)に対して垂直と
なる。
寸法r0hが有限である場合には、くさびによって生成される磁界は均一ではな
くなる。第1図は、軸xについて対称に配列された線分(P1P2)および(P3
P4)に沿ったくさびの打切り部(truncation)を示している。くさ
誘導された電荷のみであり、各点で生成された磁界は方程式(1.4)の合計で
与えられる。
まず条件(1.6)について考慮する。極限r<<r0hで、方程式1.4は、
成分
から0に収束する、すなわちx>0)での強さの大きさであり、また
である。すなわち側面s1、s2の端点はx=0、y=y0/2を中心とする直径
y0の円上に位置する。x=0で、強さは方程式(1.15)によって与えられ
る不連続となる。しかし、Hiyのxについての導関数
は、x=0で連続であり、くさび12および14の配向αmとは無関係である。
長さy0はくさびの寸法の正規化係数(normalization fact
or)である。極限r→0でのHiおよびHeの値を、配向αmに対して第5図に
プロットする。第5図のプロットは、距離r/r0h=10-2の範囲内で計算した
ものである。
くさび構造の特殊な幾何形状は、α2=π/2、すなわちs2およびs3(側面
22および24)が平面x=0上に位置する場合である。方程式(1.18)に
どこでも軸yと平行になる。
次に条件(1.7)について考慮する。残留磁気と平行な線分(P1P2)およ
び(P3P4)に沿ったくさびの打切り部は、第6図に示す幾何形状を生じる。こ
の場合も極限r<<r0hで、方程式(1.4)は、成分
2つの半径の寸法r01、r02は、方程式
を満たし、ここでx0はくさびの寸法の新しい正規化係数である。この場合も強
さのxについての導関数はx=0で連続であり、その値は
で与えられる。
したがって、第2の場合(1.7)では、強さの導関数はくさびの配向の関数
となる。極限α2=π/2では、方程式(1.33)は、
となる。
α2=π/2では、残留磁気はs1と平行であり、方程式(1.7)により、無
限に大きくなる半径の寸法を有する界面s1、s4上で表面電荷は誘導されない。
その結果として、くさびが生成する磁界は、x=0平面中の、寸法2r02の平面
表面上の均一な電荷分布の磁界となる。
r>>r0hの距離では、くさびが生成する磁界は、単位長さあたりの双極子モ
ー
よって生成される磁界となる。条件(1.6)によって規定される場合では、双
極子モーメントは、
であり、ここでA1は各くさびの断面積である。条件(1.7)によって規定さ
である。
2.均一な磁界の生成
2.1 横磁界−y軸に平行な磁界
前節では、本発明のくさび構造の基本特性を示した。前述のように、高透磁率
材料を用いてくさび構造のどちらかの側面を短絡させることによって、他方の側
面に磁界を拘束することができる。一般的な場合α2≠π/2では、s2、s3が
くさびとμ=∞材料との間の界面であるものと仮定することによって領域α2<
α<2π−α2内の磁界をなくすことができる。特定の場合α2=π/2では、く
さび12、14によって生成される磁界が平面x=0に垂直であり、平面x=0
成される磁界は、s1、s4の半径方向次元を有限に維持するのに必要な、先端を
切り取られたくさび上で誘導される表面電荷によって生成される磁界に縮小され
る。
くさび構造が共通エッジから所与の距離r1内に均一な磁界を生成する構造で
ある場合、数式(1.30)および(1.33)は、このような距離内で割り当
てられた均一性を実現するのに必要なオーダーの大きさのくさびの次元を与える
。
高透磁率ヨーク26のない特定の場合α2=π/2を仮定する。距離r1内で許容
できる電磁界ひずみの最大値がδHiである場合、数式(1.30)は、y0のオー
ダーの大きさが以下の条件を満たさなければならないことを示す。
したがって、10-4以上のオーダーの非常に均一なδH/(Hi)0を実現する
には、y0が、割り当てられた次元r1よりも数オーダー大きくなければならない
。実際的なくさび次元を用いてこのような非常に均一な磁界を実現することは従
来のシミングの範囲外であり、このような磁界を実現するには構造の幾何形状お
よび磁化を修正する必要がある。本明細書で説明する技法は、均一な磁界を生成
するように構成された磁石内の電磁界ひずみの空間高調波をなくすことに基づく
、本発明者によって開発された磁界補正理論に基づく技法である。
磁界補正技法について論じるために、s2およびs3(側面22および24)が
μ=∞材料26の平面表面に一致するα2=π/2の場合に対応する第7図の2
次元断面形状を考え、条件(1.6)によって定義される残留磁気の分布を仮定
されたい。μ=∞表面26のy次元(第7図では太い線によって概略的に表わさ
れている)は、くさび構造の2y0次元よりも大きいものと仮定される。第7図
に示すように、軸zと同軸の半径r0の円柱表面を考え、r0<y0を仮定された
い。半径r0の円柱内の幾何形状および磁化の対称性のために、くさび12、1
4の有限次元y0によって生成される電磁界ひずみの電位Φ(r,α)を以下の
級数に展開することができる。上式で、gnは円柱表面r=r0上の電磁界ひずみの高調波の振幅である。このよ
うな高調波は、平面x=0に垂直に配向されたこの平面上の双極子モーメント密
よって生成される電位Φs(r,α)は、数式(2.2)のような級数に展開す
ることができ、半径r=y0の円柱上のこの電位の値は次式で表わされる。
電磁界ひずみの高調波は次式の場合に補償される。
下位高調波は電磁界ひずみの主成分である。したがって、数式(2.5)の系
をnのより低い値に制限することができ、ps(y)の分布を、y0に含まれる有
限間隔ye−yiに拘束することができる。最も簡単な例は、基本高調波n=1を
池の高調波を導入せずに補償することであり、この場合、ps(y)は、以下の
条件の数式(2.6)を満たさなければならない。
したがって、ps(y)は、間隔ye−yi内の正の値と負の値との間で振動し
なければならない。数式(2.6)の解は、間隔ye−yiを、それぞれが均一な
双極子モーメント密度pshを有するn0個の間隔に分割することによって得られ
る。数式(2.6)は次式に変形される。上式で、各間隔は外側境界y=yeから順に番号付けされる。ye−yiの分割を
最適化すると、次式で表わされる次元が得られる。
したがって、総間隔ye−yiは次式を満たす。
n0→∞の場合、半径方向積分ye−yiは発散する。したがって、有限次元ye
−yiは、有限数の高調波の補償にのみ使用することができる。数式(2.8)
および数式(2.9)によって定義される構造は能動フィルタ28であり、平面
x=0上に位置するμ=∞平面26と、第8図に示すように数式2.9によって
与えられる次元の、磁気的に絶縁された2n0個のμ=∞ストリップ28a、2
8b、28cとの間に磁性材料を挿入することによって実現することができる。
絶縁ストリップは、次式で表わされる電位を得る。
従来型の磁石設計では、すべての双極子を囲む等電位面をμ=∞本体の表面に
変換することによって、双極子モーメントpsの表面分布からなる能動フィルタ
を受動フィルタに変換することができる。これは、磁性材料と磁石キャビティと
の間の界面上に能動フィルタが位置する従来型の磁石の磁極片の設計原則である
。これに対して、数式(2.5)によって示されるフィルタ構造28はくさび磁
石のヨーク26上に位置する。
フィルタ(h=1)の最外ストリップは、点Oからの距離rが増加するにつれ
はΦの負の値の領域であり、h=1の場合、最外ストリップの電位Φslは以下の
条件を満たさなければならない。
したがって、Φs2の正の符号が予想され、Φshは、ストリップの番号が奇数と
偶数の間で切り換わる際に正と負の間で交互に切り換わる。ヨーク26および偶
数番号のストリップを囲む、くさび12、14およびフィルタ構成要素28によ
って生成される磁界のゼロ等電位面がある。奇数番号のストリップはΦ=0表面
の外側にある。したがって、修正されたプロファイルのヨーク26で置き換える
ことのできるフィルタ28の構成要素は、偶数番号のストリップだけである。
奇数番号のストリップ、特にh=1の最外ストリップは、能動構成要素として実
現するか、あるいは能動磁性材料と受動強磁性材料の組合せのどちらかとして実
現しなければならない。この特性のために、ヨーク26に付与されるフィルタ構
造28と従来型の磁石の磁極片に付与されるフィルタ構造との間の違いが明確に
なり、この場合、電磁界ひずみの基本高調波は、磁極片の修正された幾何形状で
常に置き換えることのできるフィルタ構成要素によって打ち消される。
第8図に示す幾何形状は、以下のくさび角度を生成する値K=0.3に対応す
る。
図に示すように、最初の3つの高調波を打ち消すように設計されたn0=3フ
ィルタを仮定し、半径r0=0.3y0の円柱内に含まれる領域を考えられたい。
y0と比べて大きな寸法のヨーク26を有するくさび12、14によって生成さ
れる磁界の膨張率gn(2.2)を第9図の表に示し、(K=0.3を有する)
y>0領域内の等電位線を、フィルタ構造28を含まない第10A図と、フィル
タ構造28を含む第10B図に示す。ストリップの次元は数式(2.9)に従っ
て選択される。
くさびおよびフィルタによって生成される総磁界の膨張率を第9図に示す。第
9図で、部分または欄1の下方に示された値はフィルタを含まない場合の係数を
表わし、部分または欄2の下方の値は、n0=3フィルタ構造を含む場合の係数
を表わす。上位高調波の振幅が数オーダー増加することを犠牲にして最初の3つ
の高調波はなくなる。第9図の表には、半径yi=0.35r0の基準円柱に関し
て算出された値gn(yi/r0)2nもリストされている。
上位高調波の振幅を増大することの、当該領域内の磁界に対する影響は、撮像
領域の次元としてyiよりも十分に小さな次元が選択された場合にnに応じて急
速に減少する係数(r/r0)2nによって補償される。第8図に示すn0=3フィ
ルタ構造28を用いた場合、半径方向距離r1≒0.2y0内で以下の場の均一性
が実現される。
半径r1の円柱表面を第7図の概略図に示す。したがって、最初の3つの高調波
を補償した場合、所与の次元r1内で均一な磁界を実現するのに必要なくさび構
造の次元は、数式(2.1)によって与えられる未補正構造の寸法と比べて数桁
減少する。
フィルタ構成要素の数n0を増加させることの、原点Oの近傍の強さに対する
効果を第11図に示す。第11図には、n0=1、2、3の場合の強さとxとの
関係がプロットされ、フィルタを含まない場合に生成される強さとの比較が示さ
れている。
3つのフィルタ構成要素の電位を第12図に示す。Φslを生成するのに必要な
サンドイッチの大きさを縮小するには、フィルタの能動最外ストリップを、幾何
形状がくさび12とフィルタ28の結合磁界の等電位線によって決定されるμ−
∞構成要素を有する混成構造で置き換えることができる。この手順を例示するた
めに、能動フィルタを、x=0での磁界の勾配を打ち消すように構成された単一
の要素に縮小した場合を考えられたい。等電位線は第13図に示されており、y
=0での磁界の強さとxとの関係は第14図にプロットされている。第15図に
は、ヨーク26内に構築された能動フィルタ要素を、ヨーク26と、外部プロフ
ァイルがくさび12の外側の第14図の磁界の等電位線を近似するμ=∞構成要
素との間の磁性材料のサンドイッチに変換することが示されている。混成フィル
タのμ=∞構成要素と磁性材料との間の界面はx=0平面に平行な平面表面であ
り、
きさは次式で表わされる。
数式(2.15)は、強磁性くさび磁石の希土混成フィルタ要素の残留磁気にな
り得るものに対応する。第14図は、能動フィルタを第15図の混成構造に変換
することによって得られる軸x上の強さを示す。
2.2 縦磁界−x軸に平行な均一な磁界
条件(1.7)を満たすくさび構造を考え、次式で表わされる2次元幾何形状
を仮定されたい。
上式で、2つのくさびの残留磁気は側面s1およびs4(18および20)に平行
である。有限次元r02の側面s2、s3(22および24)を仮定されたい。数式
1.32によってr01=r04=∞が成立する。強磁性材料がない場合、距離|x
|<<r02内の軸x上の強さHxは次式で表わされる。
前述の横磁界と同様に、理想的な場合r02=∞では、α1、α4またはα2、α3が
くさびとμ=∞材料との間の界面であるものと仮定することによってHixまたは
Hexがなくなり、磁石のどちらかの側面上の強さが、次式で表わされるようにな
る。
条件(2.17)を満たすくさび構造2と、やはり軸xの方向に配向された磁
界を生成する第16図の概略図を比較されたい。磁性材料の矩形ブロック2は軸
xの方向に磁化され、平面x=0はμ=∞材料の表面4であるものと仮定される
。y方向上のブロック2の次元は2y0であり、x軸上のブロックの外側の、ブ
ロック2の表面に極めて近い磁界が、ブロックの長さx0の関数として算出され
る。第17図に示すように、ブロックの外側の磁界の強さはx0=0の場合に消
失し、x0→∞の場合の磁界の強さの漸近値は次式で表わされる。
第17図には次式の関数もプロットされており、
(1.31)によってGの漸近値は次式で表わされる。
磁性材料のブロック2によって生成される磁界の等電位線を第18図に示す。
数式2.18は、Kの値が大きい場合、くさびが、単一のブロックで実現され
る最大値(2.19)よりも大きな強さを生成することを示す。側面α=α1、
α=α4がμ=∞材料との界面である第19図の概略図を仮定されたい。限界r0 2
=r03=∞およびK=1において、第19図の幾何形状は第20図の概略図に
変換される。第20図では、磁性材料は軸xの方向に磁化され、μ=∞材料26
は領域x>0内の軸に拘束される。無限次元の磁性材料26を用いた場合、強さ
行である。
第19図の概略図の有限次元の側面s2、s3(22、24)は磁性材料内に非
ゼロ磁界を生成する。したがって、くさびの先端が切り取られているので、μ=
∞材料が存在すると、0から所与の距離の外側に位置するフィルタ構造によって
補償できない特異な強さがx=y=0で生成される。
平面x=0がμ=∞材料の表面である第21図の概略図を考えられたい。この
図に示すように、くさびは平面x=x0上で明り取られており、したがって、切
れる。第21図の構造内の等電位線を第23図に示す。軸x上の磁界の強さを低
常に明確に示されている。この磁界は均一な磁界ではなく、平面x=0上にフィ
ルタ構造を構成することにより、第21図の概略図で、前述の空間高調波をなく
す手法を使用することができる。
軸zと同軸の半径r0の円柱表面を考え、r0がx0/(tanα1)よりも小さ
いものと仮定されたい。くさびの先端を切り取ることによって生成される電磁界
ひずみの電位は次式の条件を満たす。
および
条件(2.22)、(2.23)のために、領域|α|<α1で生成される電
位を以下の級数に展開することができる。
フィルタ構造が平面x=0上で|y|>r0を越えた有限間隔にわたって広が
るものと仮定されたい。この場合、前述の横磁界と同様に、フィルタ構造の計算
は下位の主高調波の打消しに限られる。表面r=r0内で、x=0平面上の双極
上式で、ps(y)は次式の系の解である。 この場合も、ps(g)の連続分布を、各間隔が均一な双極子モーメント密度
を保持するいくつかの間隔上の段階的な分布で置き換えることによって、数式(
2.26)を解くことができる。数式(2.26)は次式に変換される。
一例を挙げると、第22図は、n=1高調波を打ち消すように設計された単一
のストリップ・フィルタを含む場合と含まない場合のx軸上のHxの分布を示す
(K=0.5、x0/y0=0.55735)。フィルタを含まない場合の等電位
線とフィルタを含む場合の等電位線をそれぞれ、第23図〜第24図に示す。
第21図の概略図では、磁界の摂動はKのみの関数であり、x0は磁気構造の
幾何学的正規化係数である。第21図の電磁界ひずみは、μ=∞平面からの距離
x0で次元2x0/tanαの均一な電荷密度+KJ0のストリップによって生成
される磁界と一致する。
前述のフィルタ構造は、有限次元のくさび12、14によって生成される電磁
界ひずみを補償する。電磁界ひずみの他の原因は磁化公差および製造公差であり
、これによって、通常は磁石の幾何形状のために高調波よりも小さな追加の高調
波が生成される。当業者には、フィルタ構造の個々の要素の強さを補正すること
に
よって、公差または磁石のシミングによる追加の高調波を補償できることが認識
されよう。外部から磁石のヨークを通して調整を実行できることは、本発明のく
さび構造のもう1つの特徴である。
3.撮像領域の画定
3.1 当該領域の特性
磁気構造の撮像領域は当該領域にあり、ここでは、くさびによって生成される
磁界が最大値を実現する。当該領域は、くさび系の凹側または凸側上の磁気構造
の原点Oの近傍である。第25図の等電位線のプロットは、凹側が、磁界の強さ
および均一性がより高い領域を形成することを示す。
第25図の磁界構成の基本特性は、x軸上に位置する鞍点Sを通過する閉じた
Φ=0等電位線である。点Sでは磁界の強さがゼロであり、Φ=0線は、くさび
によって生成される磁界が基本的に、数式(1.35)によって与えられる線形
双極子分布の磁界である外部領域から当該領域を分離する。y=0でのHyとx
の関係と、xに対するHyの第1および第2の導関数とを示すプロットを、次式
に対応する第26図に示す。
数式(1.13)によってくさびの角度(角幅)は次式で表わされる。
第26図は、先端を切り取られたくさび12によって生成される磁界が、原点
での符号反転を示すことを示す(第26図では、K=0.3、αi=50°、r0 h
=4であり、プロットは、範囲±10r0h内のx軸と、J0/μ0に正規化され
た垂直軸に制限されている)。x=0での磁界の不連続は、無限くさびの不連続
性の数式(1.15)での理想値KJ0/μ0をうまく近似している。Hyの導関
数はx=0で連続しており、したがって、Hyはくさび系の両側で0からの距離
に応じて同じ率で減少する。
くさび12、14によって生成される磁界の均一性は、点P0を撮像中心とし
とによって測定することができる。撮像領域は、次式が成立する領域として定義
される。
上式で、Cは任意の定数である。
たとえば、それぞれ、軸x上で0から距離±1に位置する点P0i、P0eを仮定
し、以下の半径方向次元を有する第25図のくさび幾何形状を考えられたい。
第27A図(くさびの半径方向次元r1=4)は、次式の定数Cの値に対応す
るP0i、P0eを囲む2つの領域の境界を示す。
第27A図に示すように、撮像領域は、くさび境界の輸郭に概略的に従う幅の狭
いストリップである。第27A図に示す領域の幾何形状が、くさび12、14の
結果であることは自明である。
形双極子分布30の系によって補償することができ、
第27B図に示すように軸xに沿って互いに反対の方向に配向することができる
。双極子モーメントは、等しい大きさpを有する場合、次式で表わされる成分か
らなるある強さの磁界を軸x上で生成する。
第27B図は、補償双極子30を有するくさび磁石の場合の撮像領域の境界を
示す。P0iの周りの撮像領域の幾何形状に対する影響は極めて顕著であるが、点
P0eの周りの領域では無視することができる。点P0iでは、Hyが消失し、した
がって、双極子30は、点P0iでくさびによって生成される磁界の強さの値には
影響を与えない。双極子30は、次式で表わされる勾配を生成する。数式(3.8)は、点P0iでくさび12、14によって生成される磁界の勾配を
補償するのに必要な単位長さ当たり双極子モーメントpの値を与える。
点P0iでの勾配を補正することの、x軸に沿った磁界の分布に対する効果を第
28図に示す。第28図で、座標yhは以下の値を有する座標として選択される
。
前述のように、界面h=2、h=3(側面22、24)または界面h=1、h
=4(側面18、20)に有限透磁率の媒体を配置することにより2つの領域の
うち一方を「短絡」させることによって、どちらかの領域(1.10)または(1
.14)内の磁界を実際上なくすことができる。第29図は、界面h=2、h=
3が短絡したことによって得られる等電位線を示し、軸xに沿った磁界の分布を
第30図に示す。限界|x|→0では、くさびの両側の磁界の強さは、数式(1
.15)による以下の条件を満たす。
界面h=2、h=3が短絡すると、第25図の鞍点Sがなくなる。軸x上の強さ
は、くさび系の有限半径方向次元によって得られる残留フリンジ磁界である。
3.2 閉鎖磁気構造および開放磁気構造
前述の各くさび系を、閉鎖キャビティ内に磁界を拘束する磁気構造として一体
化することができ、あるいはこのようなくさび系は、当該の領域がくさび磁石に
よってしか拘束されない完全に開放された磁石の設計の基礎を与えることができ
る。
一対の磁石くさび12、14を閉鎖磁石構造として一体化する一実施形態を、
六角断面キャビティを有する2次元磁石として第31図に示す。太い線は、くさ
び12、14の外部界面を短絡させる外部ヨークの一部である。したがって、第
0の均一な磁界がキャビティ31内で生成される。くさび12、14と磁気構造
の矩形構成要素34との間に残留磁気Jiの三角遷移成分32が挿入されている
。遷移成分32は、領域2(x0−x1)のキャビティ31内を流れる磁気誘導磁
束を伝達する。
遷移成分32内の誘導Biの値は次式で表わされる。
上式で、K0は次式によって他の構成要素の残留磁気J0に関係付けされる。
したがって、残留磁気Jiは次式によって与えられる。
次式の限界では、
次式が成立する。
すなわち、遷移成分32は構造の矩形構成要素34の延長部に過ぎない。
前述のように、一対のくさび12,14の1組の側面に沿って高透磁率のヨー
ク26または層を使用すると、完全に開放された磁石としての構造の1つの側面
に磁界を拘束することができる。前述のように、大きな磁石を使用することによ
って高度な磁界の均一性を実現することができる。2つの手法を使用して平坦な
開放磁石性能を向上させ、同時にその寸法を最小限に抑えることができる。まず
、第32A図および第32B図の概略図に示すように、くさびの部分終端を磁化
要素36の形で含めることができる。第32A図の部分終端は、特定の場合α2
=π/2での第27A図および第27B図の構造で定義した論理に従う。第32
B
図のB部分終端では、数式(2.23)によって示されるように、この外部境界
前述のように、撮像領域の反対側のくさびの側面を短絡させる場合、くさび12
、14の界面にヨーク26を取り付ける必要はない。したがって、くさび12、
14とヨーク26の間の空間を形成することができ、本明細書に記載のフィルタ
構造28を挿入して磁界の所与の数の空間高調波をなくすことができる。
第32A図および第32B図は、磁化材料を使用してくさび12、14の終端
効果を低減する能動部分終端の実施形態である。受動部分終端の一例を第33図
に示す。この図で、強磁性構成要素40は第32A図および第32B図の構造と
同じ機能を実行する。2つの強磁性構成要素40はくさび12、14に取り付け
られ、これらの強磁性構成要素とくさび12,14との間の界面は、部分終端の
限界内でくさび内部の理想的な磁界の等電位面に従う。
4.多重くさび構造
前節では、1対の磁気くさびを含む磁器構造について説明した。後述のように
、この構造によって生成される磁界の強さは、構造内のくさび対の数を増加する
ことによって増大することができる。
ヨークレス磁石とは、強磁性ヨークを必要とせずに磁界が磁石内に拘束される
磁化材料の構造である。キャビティ内で所与の磁界を生成するように設計された
磁石を、同じ大きさおよび配向の磁界を生成するように設計された他のヨークレ
ス磁石内に密閉する場合、磁性材料がゼロ磁化率をもつ理想的な線形特性を有す
るかぎり、キャビティ内の全体的な磁界の強さは2倍になる。したがって、多数
の同心ヨークレス磁石を使用して、材料の残留磁気よりも強力な磁界を生成する
ことができる。
同じ手法を、軸zを共通エッジとして有する多数のくさびに拡張することがで
きる。第34図は、角度2αfによって画定されるμ=∞強磁気くさび26が存
在するときに横磁界(Hix=0)を生成するように構成された2つのくさび磁石
対12、14および42、44の構造の概略図を示す。くさび対12、14およ
び42、44は、同じ位置にあるか、あるいは互いに近傍に位置する共通エッジ
16を有する。領域y>0を見るとわかるように、くさび12、42は、次式に
示すように同一の角幅を有する。
上式では、次式が成立する。
対応するくさび14、44も同一の角幅を有する。強磁性ヨーク26が存在する
ので、各くさび磁石によって生成される磁界の強さは領域α>α2,2内ではゼロ
であり、領域|α|<α1,1内の磁界の全体的な強さは次式で表わされる。
角幅α2,2−α1,1の単一のくさびが、次式で表わされる磁界を生成することは自
明である。
同一の角幅αf/mのm個のくさびに分割された、次式で表わされる総角を仮定
されたい。
多重くさび構造は、合計値Ktを有する磁界を生成する。上式で、Ksは角幅αtの単一くさび構造によって生成される値である。限界m=
∞では、数式(4.6)は次式に変形される。
数式(4.7)は、多重くさび構造が、αtの大きな値、すなわち、残留磁気の
値に近いか、あるいは場合によってはそれを超える強力な磁界を生成するように
構成された磁石で有効であることを示す。
同一の角幅および同一の正規化係数y0を有するm個のくさびからなる構造を
仮定する。(1.30)により、全体的な強さと、r=0でのxに対する全体的
な強さの導関数とは、mに比例して増加する。したがって、限界r/y0<<1
では、m個のくさびによって生成される磁界の全体的な強さは以下の条件を満た
す。
μ=∞くさびが存在してもx=0でのHiyの値は変化しないが、このくさびが
存在すると、x=0でのHiyの導関数が影響を受ける。μ=∞くさびの角度2αf
内で、x=y=0の近傍で多重くさび磁石によって生成される電位を以下の級
数に展開することができる。
上式で、r0は任意の距離であり、r/r0<<1である。係数cnは、多重くさ
び磁石の幾何形状に依存する。強さのy成分は次式で表わされ、
すなわち、y=0でのxに対する導関数Hiyは次式で表わされる。 (4.11)の高調波n≧2は、αfの値とは独立に、x=0で打ち消される
。(4.11)の基本高調波(n=1)は、αf>π/2の場合にx=0で特異
性を有し、次式の場合に打ち消される。
したがって、μ=∞くさびがない場合に数式(4.8)によって与えられるx=
0での磁界の勾配は、第38図に示すように条件(4.12)を満たす凸状強磁
気くさびが存在する場合にはなくなる。
一例として、第35A図および第35B図に示す2つのくさび磁石の構造を考
えられたい。各くさび磁石は、π/6くさび角度に対応するK=0.5が得られ
るように構成される。角度π/3の単一くさび磁石は、以下に示す値Ksを生成
する。
第35A図および第35B図の構造によって生成される磁界は合計値Kt=1に
対応し、この値は単一のπ/3くさび磁石に対する15%の利得を表わす。第3
6図は、μ=∞くさび26の各度αfがπ/2(およびy0=1.0)である第3
5A図の構造によって生成される磁界の等電位線を示す。軸x上のHiyの対応す
る分布を第37図に示す。第37図は、強磁性ヨークが存在するときに第35A
図の構造の個々のくさび磁石によって軸x上で生成される強度も示す。数式4.
11により、2つのくさび構造は共に、x=0でのxに対する強さの導関数が同
じ値を示し、この値は、数式(3.8)によって与えられる値と一致する。
第39図は、μ=∞くさびの角度αfが2π/3である第35B図の構造によ
って生成される等電位線を示す。2つのくさび磁石が平面x=0に対して対称的
であるため、第36図に示すように、くさび同士の間の界面上で誘導される表面
電荷が消失し、界面上に強さの不連続部分が形成されることはない。
多重くさび手法は、縦磁界(Hiy=0)を生成するように構成された構造に拡
張することができる。しかし、有限次元r0hの場合、μ=∞ヨークが存在すると
、2種類の磁石の磁界特性に顕著な違いが生じる。第40図の構造では、くさび
12、14を軸xに対して対称的に切り取った場合、切り取ることによって生成
される電位は、y=0でΦ=0という条件を満たす。したがって、r=0では強
さの特異点は発生しない。
μ=∞くさび26の角度αfがπ/2よりも大きい場合に縦磁界を生成するよ
うに構成された構造には異なる状況が存在する。この場合、くさびの先端を切り
取ることにより生成される磁界によってr=0で特異な磁界が誘導され、多重く
さび手法の効果を低減するという犠牲を払わないかぎり、この特異性を補償する
ことはできない。
したがって、くさび磁石の設計で条件(1.6)と条件(1.7)を共に使用
することができるが、以下の節では横磁界用の多重くさび構造の実施態様につい
てのみ説明する。
5.多重くさび構造の終端
前節で示した多重くさび構造の特性として、くさびの共通エッジの近傍にある
当該の領域の次元よりも大きなくさび次元を有する理想的な幾何形状を仮定した
。実際的な応用例でこれらの特性を実現するには、理想的な幾何形状で生じる磁
界の等電位面に沿って構造を切り取り、この表面がくさびと高透磁性材料の間の
界面になると仮定する。強磁性材料を導入すると、特定の応用例の要件を満たす
ように構成された構造に複数のくさびが効率的に組み込まれる。
一例として、第40図は、任意の等電位線Φ=Φ0が、μ=∞材料を含むくさ
びの界面になったために得られた第35B図の2くさび構造の基本的概略の変換
を示す。等電位界面が無限大に広がるものと仮定されたい。磁石のy>0領域内
よって与えられる。第41図は、角幅30°のくさび12、42を用いて得られ
る以下の合計値Kt に対応する。
る磁気誘導である。第41図のベクトル図に示すように、以下の条件を満たす残
件に依存する。たとえば、第42図は、六角断面の柱状キャビティ52の周りに
54は以下の条件を満たし、
特性の最適な動作点に応じて選択され、すなわち、次式が成立する。
の等電位線から得られる2つの強磁性構成要素60は、キャビティからの磁束を
界を磁石キャビティのより小さな領域に集束するように構成された従来型の磁石形状を有するこのような従来型の磁石の概略図を第43図に示す。第43図内の
磁界の等電位線は、二重くさび構造から得られる第42図の磁石と従来型の磁石
との間の違いを示す。第44図に示す軸x(曲線(a))およびy(曲線(b)
)に沿った磁界のプロットは、従来型の磁石の磁極片同士の間のギャップ内の磁
界の非均一性を示す。第44図の磁界の強さは、第42図の磁石の二重くさび構
造
ギャップの中心の磁界の値Hy/H0<1と、磁界の非均一性は、従来型の磁石設
計を特徴付ける当該領域の外部のフリンジ磁界の結果である。
くさびによって生成される磁界の等電位面によって拘束される強磁性構成要素
によるくさび構造の終端は、m>2の多重くさび構造に拡張することができる。
一例を第45図に示す。この図は、次式の合計値Ktを生成するように構成され
た3重くさび構造の終端を示す。
くさび12、42、62は同一の角幅30°を有する。3つのくさび12、42
、
成される磁気誘導である。第46A図および第46B図のベクトル図に示すよう
の境界に変換された等電位線は、次式によって与えられる軸yに対する角度αe1
、
配向αe3は外部ヨークに平行であり、すなわちαe3=60°である。
Ktの値が数式5.5によって与えられる場合に第42図と同じ柱状キャビテ
ィの周りに設計された磁石への3重くさび構造の組込みは、すべての構成要素の
残留磁気が同じ大きさJ0を有する第47図の構造に示されている。
る。三角領域68では、軸yの負方向に配向された強さは次式で表わされ、
て伝達された誘導の磁束全体を導く外部ヨーク58に囲まれる。
第48図は、磁極片の幾何形状が第44図の構造の強磁性構成要素の幾何形状
料の同じ矩形構成要素によって生成される磁界の第48図中の等電位線は、従来
型の磁石内のフリンジ磁界のために磁極片の集束効果が失われることを示す。第
48図の磁石のx軸(曲線(a))およびy軸(曲線(b))に沿った磁界のプ
ロットを第49図に示す。この図では、強度は、第45図の3重くさび構造によ
って生成される値H0−3J4/2μ0に正規化される。
高磁界の生成への多重くさび構造の応用例は、閉鎖永久磁石から、第35A図
および第35B図に示す概略図のような完全に開放された磁石までの範囲である
。前述のように、μ=∞プレートが存在する単一のくさび磁石は、磁性材料の残
留
磁気に等しい磁界の強さの生成に限られる。この上限(K=1)は磁石くさびの
角幅π/2を用いて実現される。磁性材料の単一くさびによって生成される磁界
にゼロ磁化率を直線的に重ね合わせる機能によって、K=1限界を削除し残留磁
気を超える磁界の生成を可能にする本明細書に記載の多重くさび構造が得られる
。前述の磁石のこの興味深い特性は、従来型の永久磁石設計の限界をはるかに超
える1〜2テスラ範囲の磁界を生成することのできる希土材料の実際的な構造で
実現することができる。
強さの大きさは、くさびの角度および選択される磁性材料によって制御される
。本明細書で示すいくつかの数値計算はK=0.3で行われており、この値は、
Nd.Fe.B合金を用いた場合の約0.35テスラの磁界に対応する。当該の
領域内の磁界の配向は、前述のように、くさびの残留磁気の配向によって制御さ
れる。基本的に、くさび磁石は任意の配向を生成するように構成することができ
るが、ヨークの表面に平行な配向が好ましい解決策であり、これによって、磁界
の特異性がなくなり、材料の残留磁気の程度の磁界の強さを実現することが可能
になる。
これらの構造によって生成される高い磁界は、永久磁石の用途を、超伝導磁石
を用いて通常実現される磁界レベルに拡張する。前述の種類の構造で希上材料を
使用すれば、永久磁石技術を、1テスラを超える磁界レベルに適用することがで
きる。逆に、フェライト材料を用いて構築された同じ構造を高価な希上磁石と置
き換え、0.4T範囲の磁界を生成することを特徴とする。
本明細書に記載の開放構造での均一な磁界の生成は、磁界拘束が失われること
を犠牲にして行われる。前述のように、強磁性構成要素が存在しない単一くさび
磁石によって生成された磁界は、磁化の配向にかかわらず、双極子の磁界のよう
に動作する。くさびを支持するμ=∞平板が存在する場合、前述のように、いく
つかの実施形態の構造の双極子モーメントがなくなる。同様に、x=0平面に平
行な磁界を生成するように構成された構造がx=0平面に対して対称的であるか
ぎり、μ=∞プレートのない単一くさび構造または多重くさび構造でも双極子モ
ーメントが打ち消される。この特性は、後述の3次元構造で実施されるときに特
に重要であり、この場合、遠い磁界は4極子の磁界になる。4極子の磁界の大
きさは磁石の中心からの距離の4乗に応じて減少し、磁界拘束が大幅に改善され
る。
6.3次元くさび構造
条件(1.6)によって定義される残留磁気分布を有する2つの平面z=±z0
の間の領域に制限されたくさび構造を仮定されたい。角度α2={π/2}とし
て第50図のくさび幾何形状用の角度が選択され、平面x=0はμ=∞材料26
の表面であるものと仮定される。参照符号ρ、θ、Ψの球形フレームで算出され
る電磁界ひずみの球面調和関数を補償するフィルタを設計することによって、前
述のフィルタ構造の2次元構成を第50図の構造に拡張することができる。この
場合、原点Oは軸z上の間隔2z0の中心として選択され、ρはOから点Pまで
の距離であり、θはρと軸xの間の角度であり、Ψは平面y=0と、ρと軸xと
で形成される平面との間の角度である。半径ρ0および中心Oの球上で、くさび
12、14によって生成される電位を次式の級数に展開することができる。
係数gijは電磁界ひずみの高調波の振幅である。Φ(θ,Ψ)は以下の条件を満
たす。
数式(6.3)および(1.6)のために、第50図の構造の対称性条件はl、
jの値を次式に制限する。表面ρ=ρ0上で電位Φsを生成する。
Ps(r,Ψ)は半径ρ0の円内ではゼロである。電磁界ひずみの高調波は、ps
(r,Ψ)が以下の積分方程式を満たす場合に打ち消される。
この場合も、電磁界ひずみの補償は下位高調波に制限され、ps(r,Ψ)の
半径方向分布は半径ρ0の円の外部の有限間隔re−riに拘束することができる
。数式6.7の解は、半径r1の円と半径r2の円の間の領域をn0個の同心リン
グに分割し、これらのリングを、各セクタが均一な双極子モーメント密度ph,k
を有するm0個のセクタに分割することによって得られる。前述の2次元フィル
タの場合と同様に、p(r,Ψ)の分布を最適化すると、このリング次元に関す
る同じ数式(3.9)が生成される。リングは角幅の等しいセクタに分割され、
セクタの数m0としては、追加の上位高調波を導入せずにp(r,Ψ)の角分布の
必要な近似を形成するのに十分な大きさの数が選択される。
一例として、半径ρ0の球内の電位が次式で表わされる、単一の高調波l=2
、j=1を打ち消すように構成された1つのリング・フィルタを考えられたい。 電位Φ2,1によって画定される磁界は、xに応じて線形に増加する強さのy成
分を有する。
したがって、基本高調波(6.8)は、上記で分析した2次元くさび構造の場
合と同様に、y=0平面内のHyの勾配によって生じる。
単一のフィルタ・リングが半径ri、reの同心円同士の間に拘束されるものと
仮定されたい。高調波(6.8)のためにHyの勾配を打ち消すリング上の双極
子モーメントpsの分布は、半径方向座標とは独立に次式で表わされる。
数式(6.7)、(6.8)により、数式6.10中の振幅p0は次式によって
与えられる。
一般に、前述の2次元フィルタの基本特性、特に、能動フィルタ要素の受動構
成要素または混成構成要素への変換は、第50図の3次元構造をサポートするμ
=∞平面内に構築された多重リング・フィルタに適用される。
本発明を好ましい実施形態に関して説明し図示したが、本発明の趣旨および範
囲から逸脱せずに、当業者に明白な多数の変形および修正を加えることができ、
したがって、このような変形および修正は本発明の範囲に含まれるものなので、
本発明を前述の方法や構成の厳密な詳細に制限すべきではない。
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フロントページの続き
(72)発明者 ジェンセン、ジェンズ
アメリカ合衆国 10528 ニューヨーク、
ハリソン、ハリソン・アベニュ 25
【要約の続き】
ましい。