JP2002512039A - イヌエリスロポエチン遺伝子および組換えタンパク質 - Google Patents

イヌエリスロポエチン遺伝子および組換えタンパク質

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JP2002512039A JP2000544815A JP2000544815A JP2002512039A JP 2002512039 A JP2002512039 A JP 2002512039A JP 2000544815 A JP2000544815 A JP 2000544815A JP 2000544815 A JP2000544815 A JP 2000544815A JP 2002512039 A JP2002512039 A JP 2002512039A
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erythropoietin
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ジェイムス エヌ. マクレオド
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コーネル リサーチ ファンデーション インク.
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    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides

Abstract

(57)【要約】 本発明の一つの局面は、イヌのエリスロポエチンをコードする単離された核酸分子である。本発明は、単離されたイヌのエリスロポエチンタンパク質またはポリペプチドにも関する。本発明の別の局面は、エリスロポエチン治療が必要なイヌまたはネコに、組換えイヌのエリスロポエチンを、該イヌまたはネコにおける網状赤血球および赤血球の産生を増加するのに十分な量投与することを含む、エリスロポエチン治療をイヌまたはネコに提供する方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本明細書は、1998年4月22日に出願された米国特許仮出願第60/082,669号の恩
典を主張するものである。
【0002】 発明の分野 本発明は、組換えイヌエリスロポエチン、およびイヌまたはネコへエリスロポ
エチン治療を提供する方法におけるその使用に関する。
【0003】 発明の背景 エリスロポエチンは、赤血球産生を刺激するグリコシル化されたタンパク質で
ある。これは、腎皮質の間質および尿細管の内皮細胞により産生され、かつ血液
により骨髄に輸送される。Kouryら、「インサイチューハイブリダイゼーション
によるマウス腎におけるエリスロポエチン合成細胞の局在(Localization of Ery
thropoietin Synthesizing Cells in Murine Kidneys by in situ Hybridizatio
n)」、Blood、71:524-527 (1988);Eschbach、「慢性腎不全の貧血:病態生理お
よび組換えエリスロポエチンの作用(The Anemia of Chronic Renal Failure:Pat
hophysiology and the Effects of Recombinant Erythropoietine)」、Kidney I nt .、35:134-148(1989)。ホルモンの対生物活性は、後期の赤血球前駆細胞、前
赤芽球、および赤芽球の成熟および複製の直接受容体が媒介した刺激に関係して
いる。Mufsonら、「マウスの赤血球前駆細胞における組換えヒトエリスロポエチ
ンの結合およびインターナリゼーション(Binding and Internalization of Reco
mbinant Human Erythropoietin in Murine Erythroid Precursor Cells)」、Blo od 、69:1485-1490(1987);Krantzら、「Friendウイルスの貧血株により感染した
脾細胞に対するエリスロポエチンの特異的結合(Specific Binding of Erythropo
ietin to Spleen Cells Infected with the Anemia Strain of Friend Virus)」
Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:7574-7578(1984)。エリスロポエチンの合成
は、細胞内好気的代謝によって媒介された組織の低酸素状態に反応して刺激され
る。Erslev、「赤血球産生における生理的コントロール(Physiologic Control o
f Red Cell Production)」、Blood、10:954-959(1955)。ヒトエリスロポエチン
のタンパク質一次構造は、27個のアミノ酸のシグナルペプチドおよび166個のア
ミノ酸の成熟タンパク質を含んでいる。Linら、「ヒトエリスロポエチン遺伝子
のクローニングおよび発現(Cloning and Expression of the Human Erythropoie
tin Gene)」、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、82:7580-7584(1985)。推定分子量1
8.4kDaは、エリスロポエチンが血液および尿から直接精製される場合に認められ
た32〜34kDaよりも実質的に小さい。この差異は、Asn 24、38および83での3個
のN-結合した糖鎖、およびSer 126の0-結合したムチン様部分のグリコシル化に
起因するものである。Laiら、「ヒトエリスロポエチンの構造特性(Structural C
haracterization of Human Eryrhropoietin)」、J. Biol. Chem.、261:3116-312
1(1986)。ヒトと比べて、マウスおよびサルのエリスロポエチンのアミノ酸配列
は、各々、80および92%の同一性がある。McDonaldら、「マウスエリスロポエチ
ン遺伝子のクローニング、配列決定および革新的分析(Cloning, Sequencing, an
d Evolutionary Analysis of the Mouse Erythropoietin Gene)」、Molecular a nd Cellular Biology 、6:842-848(1986):Shoemakerら、「マウスのエリスロポ
エチン遺伝子:クローニング、発現、およびヒト遺伝子との相同性(Murine Eryt
hropoietin Gene: Cloning, Expression, and Human Gene Homology)」、Molecu lar and Cellular Biology 、6:849-858(1986);Linら、「サルエリスロポエチン
遺伝子:クローニング;発現およびヒトエリスロポエチン遺伝子との比較(Monke
y Erythropoietin Gene: Cloning; Expression and Comparison with the Human
Erythropoietin Gene)」、Gene、44:201-209(1986)。基本的なエリスロポエチ
ン遺伝子構造である5個のエクソンおよび4個のイントロンは保存されている。
【0004】 チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において合成された組換えヒトエリス
ロポエチン(rhEPO)は、化学的に製造され(Epogen(登録商標)、Amgen社、サウ
ザンドオーク、CA)、かつ慢性腎疾患に続発した貧血に罹患した患者において赤
血球産生を支援するために広範に使用されている。Eschbach、「慢性腎不全の貧
血:病態生理および組換えエリスロポエチンの作用」、Kidney Int.、35:134-14
8(1989);Eschbachら、「進行性腎不全の貧血の組換えヒトエリスロポエチンに
よる治療(Treatment of the Anemia of Progressive Renal Failure with Recom
binant Human Erythropoietin)」、N. Engl. J. Med.、321:158-163(1989)。貧
血の病因は多要素性であるが、骨髄による赤血球置換の代償性不全(compensator
y failure)は、機能性腎組織の喪失および内因性エリスロポエチン産生の低下に
大きく関わっている。Eschbach、「慢性腎不全の貧血:病態生理および組換えエ
リスロポエチンの作用」、Kidney Int.、35:134-148(1989);Kingら、「イヌに
おける慢性腎不全の貧血(Anemia of Chronic Renal Failure in Dogs)」、J. Ve t. Int. Med. 、6:264-270(1992)。臨床使用のためのrhEPOの合成は、このホルモ
ンのインビボ安定性および生体活性に関する翻訳後グリコシル化の要件のために
、真核細胞に制限されている。Takeuchiら、「ヒトエリスロポエチン糖鎖の構造
および機能的役割(Structures and Functional Roles of the Sugar Chains of
Human Erythropoietins)」、Glycobiology、1:337-346(1991)。糖または末端の
シアル酸残基さえも欠いているので、エリスロポエチンは、肝臓において迅速に
切断され代謝される。Spivakら、「ラットにおける組換えヒトエリスロポエチン
のインビボ代謝(The in vivo Metabolism of Recombinant Human Erythropoieti
n in the Rat)」、Blood.、73:90-99(1989)。
【0005】 新たな赤血球の不適切な産生を特徴とする再生不良性貧血は、愛玩動物におけ
る、腎不全、ある種の癌および他の慢性疾患の頻発しかつ重篤な合併症である。
【0006】 慢性腎不全は、獣医学において良く見られかつ結果が思わしくない臨床上の問
題である腎機能の進行性かつ不可逆性の悪化である。慢性腎不全は、通常高齢動
物の疾患であると考えられているが、家族性腎疾患として先天性に遭遇すること
もあり(例えば、ノルウェジアンエルクハウンド、コッカスパニエル、サモエー
ド、ドーベルマンピンシェル、ラサアプソ、シーズー、ゴルデンレトリバーにお
いて)(Finco、「先天性、遺伝性および家族性腎疾患(Congenital, Inherited a
nd Familial Renal Diseases)」、Canine and Feline Nephrology and Urology
、Osborneら編集、ボルチモア:Williams & Wilkins.、471-483ページ(1995年))
、かつ他方で若年動物では、腎毒性または感染性の機序を介している。Polzinら
、「腎および子宮疾患(Diseases of the Kidneys and Ureters)」、Textbook of Veterinary Internal Medicine 、Ettinger編集、フィラデルフィア:WB Saunde
rs Company.、1962-2046ページ(l989年);Krawiec、「未熟イヌにおける腎不全(
Renal Failure in Immature Dogs)」、J. Amer. Anim. Hosp. Assoc.、23:101-1
07(1987)。良好でない長期にわたる予後にもかかわらず、多くの慢性腎不全のイ
ヌおよびネコが、特別な飼料、リン酸結合薬および制酸薬により何年も内科的に
管理されている。しかし、実際にはこの従来の治療法は、腎不全の臨床徴候を管
理することには失敗している。Cowgillら、「血液透析の獣医学用途(Veterinary
Applications of Hemodialysis)」、Kirk's Current Veterinary Therapy、第1
2版、Bonaguraら編集、フィラデルフィア:WB Saunders、975-977ページ(1995年
)。これらの動物に関して、間欠的血液透析は、腎不全時に蓄積する尿毒症性毒
素の減少により生存を改善する。操作できる透析ユニットは、国内のいくつかの
獣医学センターにおいて既に利用可能であり、かつ獣医学における腎不全管理に
おける血液透析の使用が拡大されることが期待されている。
【0007】 しかしながら、透析がイヌおよびネコ患者の尿毒症を軽減したとしても、慢性
腎不全の貧血によって生じる、嗜眠、衰弱、および食欲不振は持続する。実際に
、貧血は、透析装置内での血液喪失によって一層ひどくなることがある。Eschba
chら、「透析患者の鉄分バランス(Iron Balance in Hemodialysis Patients)」
Ann. Int. Med.、87:710-713(1977)。エリスロポエチン治療は、血液透析を受
けている動物にとっての治療の必須要素となっている。rhEPOは、赤血球系生成
不全の生命を脅かすようなリスクがあったとしても、現在利用可能な唯一のエリ
スロポエチン代償の選択肢であるので、これが使用される。
【0008】 リンパ肉腫(リンパ腫または悪性リンパ腫としても公知)は、イヌにおける一
般的な癌である。正確な原因は不明であるが、ボクサー、バセットハウンド、セ
ントバーナード、スコティッシュテリア、エアデールテリア、イングリッシュブ
ルドッグ、およびラブラドールレトリバーを含む特定の品種は、この癌を発症す
る素因がある。Nelsonら、Essentials of Small Animal Internal Medicine.、
セントルイス:Mosbv-Year Book. Inc.、861-870ページ(1992年)。リンパ肉腫の
治療は、高い寛解率をもたらしかつおよそ6〜12ヶ月の生存を可能にするような
、様々な化学療法プロトコールからなる(典型的にはビンクリスチン、シクロホ
スファミド、ドキソルビシン、およびプレドニソロンの使用)。
【0009】 再生不良性貧血は、リンパ肉腫のイヌにおける一般的血液学的所見である。Ne
lsonら、Essentials of Small Animal Internal Medicine.、セントルイス:Mos
bv-Year Book. Inc.、861-870ページ(1992年);Lucroyら、「イヌリンパ腫に関
連した貧血(Anaemia Associated with Canine Lymphoma)」、Comp. Haematol. I nt'l 、8:1-6(1998)。貧血は、初期の診断評価において認められるか、または化
学療法時に発症することがある。同様に、ヒト癌患者も貧血性であることが多い
。Millerら、「癌貧血患者におけるエリスロポエチン反応の低下(Decreased Ert
hropoietin Response in Patients with the Anemia of Cancer)」、N. Engl. J . Med. 、322:l689-1692(1990);Moliterrioら、「癌貧血(Anemia of Cancer)」
Hematol. Oncol. Clin. of N. Am.、10:345-363 (1996)。癌の貧血の病理は多
要素性であるが、3種の主な変種が確定されている:1)炎症性サイトカインおよ
び化学療法薬によるエリスロポエチン産生および生体活性の阻害;2)サイトカイ
ンによる赤血球前駆細胞の直接阻害;および3)鉄分代謝の障害。Molirerrioら、
「癌貧血」、Hematol. Oncol. Clin. of N. Am.、10:345-363(1996):Schapira
ら、「集中化学療法および放射線療法を受ける患者の血清エリスロポエチン濃度
(Serum Erythropoietin Levels in Patients Receiving Intensive Chemotherap
y and Radiotherapy)」、Blood、76:2354-2359(1990);Meansら、「慢性疾患の
貧血の病理の理解(Progress in Understanding the Pathogenesis of the Anemi
a of Chronic Disease)」、Blood、80:1639-1647(1992);Lacombe、「エリスロ
ポエチン抵抗性(Resistance to Erythropoietin)」、N. Engl. J. Med.、334:66
0-662(1996);Beguin、「エリスロポエチンおよび癌貧血(Erythropoietin and t
he Anemia of Cancer)」、Acta. Clinica. Belgica、51:36-52(1996);Mittelma
n、「癌貧血:病理および組換えエリスロポエチンによる治療(Anemia of Cancer
: Pathogenesis and Treatment with Recombinat Erythropoietin)」、Isr. J. Med. Sci. 、32:1201-1206(1996)。これらの疫学的変種と一致する臨床のデータ
から、ヒト患者の32〜85%の癌性貧血(癌型に応じた)は、rhEPOの薬学的用量
に反応することが明らかとなっている。Mittelman、「癌貧血:病理および組換
えエリスロポエチンによる治療」、Isr. J. Med. Sci.、32:1201-1206(1996);S
pivak、「Recombinant Human Erythropoietin and the Anemia of Cancer」、Bl ood 、84:997-1004(1994);Henry、「貧血性癌患者の組換えヒトエリスロポエチ
ン治療(Recombinant Human Erythropoietin Treatment of Anemic Cancer Patie
nts)」、Cancer Practice、4:180-184(1996)。更に、インビトロ試験から、エリ
スロポエチンのサイトカインに媒介される阻害がrhEP濃度の上昇により逆行され
ることが明らかとなった。Meansら、「組換えヒトエリスロポエチンにより補正
できる、ヒト赤血球コロニー形成単位のγインターフェロンによる阻害(Inhibit
ion of Human Erythroid Colony-Forming Units by Gamma Interferon can be C
orrected by Recombinant Human Ervthropoietin)」、Blood、78:2564-2567(199
1)。しかし、イヌおよびネコにおける癌および化学療法に随伴した貧血を軽減す
るための安全な「非免疫原性」外来性エリスロポエチン調製物による治療は可能
とはなっていない。
【0010】 前述のように、エリスロポエチン治療は、再生不良性貧血の管理にしばしば適
している。原発性エリスロポエチン欠損症の場合、慢性腎不全に続発する貧血と
同様に、エリスロポエチン治療が生存に必須となり得る。現在獣医師が利用でき
る唯一の選択肢は、免疫原性の固有のリスクのあるrhEPOである。Cowgill、「エ
リスロポエチン:イヌおよびネコにおける慢性腎不全の治療における使用(Eryth
ropoietin: Its Use in the Treatment of Chronic Renal Failure in Dogs and
Cats)」、Proceedings of the 15th Annual Waltham/OSU Symposium for the T
reatment of Small Animal Diseases、オハイオ州立大学、65-71ページ(1991年)
:Giger、「エリスロポエチンおよびその臨床使用(Erythropoietin and Its Cli
nical Use)」、Compend. Contin. Ed. Pract. Vet.、14:25-34(1992);Cowgill
、「慢性腎不全の貧血の医学的管理(Medical Management of the Anemia of Chr
onic Renal Failure)」、Canine and Feline Nephrology and Urology.、Osborn
eら編集、ボルチモア:Williams and Wilkins、539-554ページ(1995年);Cowgil
lら、「腎不全のイヌおよびネコにおける貧血の管理のための組換えヒトエリス
ロポエチンの使用(Use of Recombinant Human Erythropoietin for Management
of Anemia in Dogs and Cats with Renal Failure)」、J. Am. Vet. Med. Assoc .、212:521-528(1998);Stokolら、「正常なビーグル犬における組換えヒトエリ
スロポエチン治療後の赤芽球ろう(Pure Red Cell Aplasia After Recombinant H
uman Erythropoietin Treatment in Normal Beagle Dogs)」、Vet. Pathol.、34
:474(1997)。イヌがrhEPOに続発する赤血球生成不全を発症した場合、継続治療
は、二つの理由により禁忌である。第一には、骨髄において赤血球前駆標的細胞
に到達することさえもはや無い可能性が最も高いため、rhEPOのインビボ生体活
性は阻害される。第二に、rhEPO治療は、赤血球生成不全と因果関係がある。骨
髄の自然回復は、rhEPO治療の停止によって可能となる。残念ながら、多くの臨
床症例において、内因性エリスロポエチンの産生または生体活性のいずれかが患
者の原発性疾患により易発性である(compromised)場合、赤血球形成の自然回復
は決して生じず、かつ非常に不適当であるので赤血球生成不全は致命的となる。
【0011】 イヌおよびネコの場合、腎不全のような慢性疾患に随伴する進行性臨床症候群
も、再生不良性貧血の発症に関連している。ヒトの文献と一致するように、貧血
にもかかわらず、低い血清中エリスロポエチン濃度が研究で報告されている。Ki
ngら、「イヌの慢性腎不全の貧血」、J. Vet. Int. Med.、6:264-270(1992)。イ
ヌおよびネコにおける慢性腎不全に続発する貧血のrhEPOを使用する治療は、急
速かつ著しい赤血球反応を引き起こす。Cowgill、「エリスロポエチン:イヌお
よびネコにおける腎不全治療における使用」、Proceedings of the 15th Annual
Waltham/OSU Symposium for the Treatment of Small Animal Diseases、オハ
イオ州立大学、65-71ページ(1991年):Giger、「エリスロポエチンおよびその臨
床的使用」、Compend. Contin. Ed. Pract. Vet.、14:25-34(1992);Cowgill、
「慢性腎不全の医学的管理」、canine and Feline Nephrology and Urology、Os
borneらの編集、ボルチモア:Williams and Wilkins、539-554ページ(1995年);
Cowgillら、「腎不全のイヌおよびネコにおける貧血の管理のための組換えヒト
エリスロポエチンの使用(Use of Recombinant Human Erythropoietin for Manag
ement of Anemia in Dogs and Cats with Renal Failure)」、J. Am. Vet. Med. Assoc .、212:521-528(1998)。投与される用量に応じて、ヘマトクリット値およ
びヘモグロビン値を、数週間で正常な範囲へと回復し、かつ治療した動物は、よ
り増した警戒、身体強度、食欲および全般的行動(overall attitude)を示すこと
ができる。これらの知見は、持続性貧血が、慢性腎不全の一部の臨床症状発現に
顕著に寄与していることを強力に示唆している。残念ながら、イヌおよびネコの
両方の赤血球の状態は、継続したrhEPO治療にもかかわらず、1〜4ヶ月間減少す
ることが多い。愛玩動物における rhEPO治療の失敗は、20〜50%の発生率である
と推定され、これはエリスロポエチン構造の種間変動およびヒトタンパク質に対
する抗体出現の結果と思われる。赤血球前駆細胞上の標的受容体に結合するrhEP
Oの能力は保存されるが、ヒトタンパク質は、動物の免疫系によって頻繁に異物
と認識される。Cowgill、「エリスロポエチン:イヌおよびネコにおける慢性腎
不全の治療における使用」、Proceedings of the 15th Annual Waltham/OSU Sym
posium for the Treatment of Small Animal Diseases、オハイオ州立大学、65-
71ページ(1991年);Giger、「エリスロポエチンおよびその臨床的使用」、Compe nd. Contin. Ed. Pract. Vet. 、14:25-34(1992);Cowgill、「慢性腎不全の医学
的管理」、Canine and Feline Nephrology and Urology、Osborneらの編集、ボ
ルチモア:Williams and Wilkins、539-554ページ(1995年);Cowgillら、「慢性
腎不全のイヌおよびネコの貧血の組換えヒトエリスロポエチンの使用」、J. Am. Vet. Med. Assoc .、212:521-528(1998)。
【0012】 抗rhEPO抗体は、rhEPOの生体活性を効果的に阻害するのみではなく、残留する
内因性エリスロポエチンとの交差反応の可能性も有し、かつ赤芽球ろう(pure r
ed cell aplasia)につながると考えられる。免疫原性のこの問題点は、生命を
脅かすようなものであり、かつ獣医用途のためのrhEPOの治療可能性に大きく限
定されている。エリスロポエチン代償療法の概念は愛玩動物に適しており、その
問題点はrhEPOの免疫原性である。
【0013】 多くの哺乳類エリスロポエチン遺伝子のcDNA配列は、Wenらの論文(「エリス
ロポエチン構造−機能相関:哺乳類間の高度な配列相同性(Erythropoietin Stru
cture-Function Relationships: High Degree of Sequence Homology Among Mam
mals)」、Blood、82(5):1507-16(1993))に記載されている。イヌのヌクレオチ
ド配列は明らかにされているが、その配列は、このタンパク質の組換え体作出の
ためには重要である、イヌエリスロポエチンの最初の4個のコドンに関するコー
ド情報は失われている。
【0014】 本発明は、前述の先行技術の不足分を補うものである。
【0015】 発明の概要 本発明の一つの局面は、イヌエリスロポエチンをコードしている単離核酸分子
である。
【0016】 本発明は、単離されたイヌエリスロポエチンのタンパク質またはポリペプチド
にも関する。
【0017】 別の本発明の局面は、エリスロポエチン治療が必要なイヌに、組換えイヌエリ
スロポエチンを、イヌにおいて網状赤血球および赤血球の産生を増大させるのに
十分な量投与することを含む、イヌにエリスロポエチン治療を提供する方法であ
る。
【0018】 本発明は更に、エリスロポエチン治療が必要なネコに、組換えイヌエリスロポ
エチンを、ネコにおいて網状赤血球および赤血球の産生を増大させるのに十分な
量投与することを含む、ネコにエリスロポエチン治療を提供する方法に関する。
【0019】 組換えイヌエリスロポエチン(「rcEPO」)は、rhEPOと同等の対生物活性を示す
。更に、タンパク質構造において種間変動がない(イヌ)または顕著に少ない(
ネコ)にもかかわらず、rcEPOは、rhEPOで生じる免疫原性の問題点を避けながら
、 赤血球形成を刺激する。従って、rcEPOの利用可能性は、獣医師およびペット
の飼い主に、慢性腎不全の貧血に罹患したイヌおよびネコの生活の質を改善する
貴重な治療様式を提供する。
【0020】 詳細な説明 本発明の一つの局面は、イヌエリスロポエチンをコードしている単離された核
酸分子である。本発明は、イヌエリスロポエチン遺伝子の完全な長さのゲノム配
列を提供する。
【0021】 好ましい態様において、単離された核酸分子は、トランスフェクションされた
細胞において発現可能であり、かつこれは配列番号:1のヌクレオチド配列を有
する核酸分子にはストリンジェントな条件下でハイブリダイズするが、同一条件
下でヒトエリスロポエチンをコードしている核酸分子にはハイブリダイズしない
【0022】 rcEPOをコードしているDNA分子は、下記の配列番号:1に相当するヌクレオチ
ド配列を有する(コドンは、トリプレットヌクレオチドで示し、非コードのイン
トロンおよびフランキング領域は連続するヌクレオチドとして示した)。
【0023】 最も好ましい態様において、核酸分子は配列番号:1のヌクレオチド配列を含
む。
【0024】 イヌエリスロポエチンcDNA配列を、下記の配列番号:2に示す。
【0025】 好ましい態様において、この核酸分子は、下記の配列番号:3のアミノ酸配列
をコードしている(cDNAオープンリーディングフレーム配列で示す)。
【0026】 適当な核酸分子は、イヌエリスロポエチンの十分に複製できる(duplicative)
タンパク質またはポリペプチドのアミノ酸をコードし、かつイヌエリスロポエチ
ン(「EPO」)のヌクレオチド配列(配列番号:1に示す)と少なくとも95%相
同であり、好ましくは98%相同であるヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む
【0027】 ヌクレオチド配列は、TBLASTプログラム(Altschul, S.F.ら、「Basic Local
Alignment Search Tool」、J. Mol. Biol.、215:403-410(1990)、これは本明細
書に参照として組入れられている)でデフォルトのパラメータを用いて決定した
ところ、少なくとも95%相同であるが、ヌクレオチドの同一性は必要とされなか
った。当業者には容易に明らかであるように、サイレント突然変異(すなわち、
特定のコドンによりコードされるアミノ酸は変化しない)である様々なヌクレオ
チド置換が可能である。特定のコドンによりコードされたアミノ酸を変更するヌ
クレオチドの置換も可能であり、この場合の置換されたアミノ酸は、保存的置換
である(すなわち、アミノ酸の「相同性」が保存されている)。イヌEPOヌクレ
オチドおよび/またはアミノ酸配列において、得られるイヌEPOの機能を変更し
ないような、小さいヌクレオチドおよび/またはアミノ酸の付加、欠失、および
/または置換を有することも可能である。
【0028】 あるいは、適当なDNA配列は、ストリンジェントな条件下での配列番号:1と
のハイブリダイゼーションにより同定することができる。好ましくは、適当な配
列は、ヒトEPOをコードしている核酸はハイブリダイズしないような、高ストリ
ンジェント条件下で配列番号:1にハイブリダイズされると考えられる。例えば
、0.9Mクエン酸ナトリウム(「SSC」)緩衝液を含有し、対象を65℃のSSC緩衝液で
洗浄した場合に結合が残留する、温度65℃のハイブリダイゼーション緩衝液;お
よび、好ましくは、0.9M生理食塩水/0.09M SSC緩衝液中に20%ホルムアミドを
含有し、対象を75℃の0.2 x SSC緩衝液で42℃で洗浄した場合に結合が残留する
、温度75℃のハイブリダイゼーション緩衝液を特徴とするストリンジェント条件
下で、配列番号:1の連続する50塩基のヌクレオチド配列を含むDNA分子とハイ
ブリダイゼーションする配列を単離することができる。
【0029】 本発明のイヌEPOタンパク質またはポリペプチドをコードしているDNA分子は、
通常の組換えDNA技術を用いて細胞に組込むことができる。一般に、これは、DNA
分子が異種である(すなわち通常存在しない)ような発現システムへのそのDNA
分子の挿入に関連している。異種DNA分子は、発現システムまたはベクターに、
適当なセンス方向および正しい読み枠で挿入されている。このベクターは、挿入
されたタンパク質−コード配列の転写および翻訳に必要な要素を含む。
【0030】 CohenおよびBoyerの米国特許第4,237,224号は、制限酵素切断およびDNAリガー
ゼによるライゲーションを用いる組換えプラスミドの形成における発現システム
の製造について開示しており、これは本明細書に参照として組入れられている。
これらの組換えプラスミドは、次に、組織培養物中で増殖した真核細胞を含む単
細胞培養物中に、形質転換により導入され、かつ複製される。
【0031】 組換え遺伝子は、更に、ワクシニアウイルスのようなウイルスに導入すること
もできる。組換えウイルスは、プラスミドのウイルスに感染した細胞へのトラン
スフェクションにより製造することができる。
【0032】 適当なベクターは、pLEN、pCDNシリーズ(Invitrogen社)、pRc/CMV2(Invitroge
n社)、およびpNeoEGFP(Clontech社)、下記のウイルスベクター、例えばラムダベ
クターシステムgt11、gt WES.tB、Charon 4、並びにプラスミドベクター、例え
ばpBR322、pBR325、pACYC177、pACYC1O84、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19、pLG339
、pR290、pKC37、pKC1O1、SV40、pBluescript II SK +/-またはKS +/-(Stratag
ene社(ラホヤ、カリフォルニア)の本明細書に参照として組入れられている「S
trataueneクローニングシステム」カタログを参照のこと)、pQE、pIH821、pGEX
、pETシリーズ(Studierらの、本明細書に参照として組入れられている、「Use
of T7 RNA Polymerase to Direct Expression of Cloned Genes」、Gene Expres sion Technology 、185巻(1990年)を参照のこと)、並びにこれらのいずれかの誘
導体を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい態様において、ベク
ターは、真核性発現ベクターpLENである。組換え分子は、細胞へ、形質転換、形
質導入、接合、動員(mobilization)、または電気穿孔法により導入することがで
きる。DNA配列は、本明細書に参照として組入れられているManiatisらの論文(M olecular Cloning: A Laboratory Manual 、Cold Springs Laboratory、コールド
スプリングハーバー、NY (1982年))に記されているような、当技術分野におけ
る通常のクローニング手法を用いてベクターにクローニングされる。
【0033】 様々な宿主−ベクターシステムを利用して、タンパク質のコード配列(複数)
を発現することができる。第一には、ベクターシステムは、使用される宿主細胞
と共存できなければならない。宿主−ベクターシステムは以下を含むが、これら
に限定されるものではない:哺乳類細胞システムへの真核性発現ベクターのサブ
クローニング;酵母ベクターを含む酵母のような微生物;ウイルス(例えばワク
シニアウイルス、アデノウイルスなど)に感染された哺乳類細胞システム;並び
に、ウイルス(例えばバキュロウイルス)に感染した昆虫細胞システム。これら
のベクターの発現エレメントは、それらの強度および特異性により変動する。利
用した宿主−ベクターシステムに応じて、多くの適当な転写および翻訳エレメン
トの中のいずれか一つを使用することができる。
【0034】 様々な遺伝子シグナルおよびプロセシング事象が、遺伝子発現の多くのレベル
(例えば、DNA転写およびメッセンジャーRNA(「mRNA」)翻訳)を制御する。
【0035】 DNAの転写は、RNAポリメラーゼの結合を指示し、これによりmRNAの合成を促進
するDNA配列であるプロモーターの存在によって左右される。真核性プロモータ
ーのDNA配列は、原核性プロモーターのものとは異なる。更に、真核性プロモー
ターおよび随伴する遺伝子シグナルは、原核システムにおいては認識されないか
、または機能しないことがあり、かつ更に原核性プロモーターは、真核細胞にお
いて認識されずかつ機能しない。同様に、原核生物のmRNAの翻訳は、真核細胞の
ものとは異なる適当な原核性シグナルの存在により左右される。遺伝子発現の最
大化に関する検証については、本明細書に参照として組入れられている、Robert
sおよびLauerの論文(Methods in Enzvmology、68:473(1979))を参照のこと。
【0036】 プロモーターは、その「強度」(すなわち、それらの転写促進能)が変動する
。クローニングされた遺伝子を発現する目的では、高レベルの転写を得、その結
果遺伝子を発現するために、強力なプロモーターを使用することが望ましい。利
用した宿主細胞システムに応じて、多くの適当なプロモーターのいずれか一つを
使用することができる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞においてクロ
ーニングする場合、隣接DNAセグメントの高レベルの転写を指示するために、ヒ
トのメタロチオネインIIAプロモーター、CMV、RSVまたはSV4Oの調節配列などを
使用することができる。加えて、組換えDNAまたは他の合成DNA技法により作出さ
れたプロモーターを用いて、挿入遺伝子の転写をもたらすことができる。
【0037】 特異的開始シグナルも、原核細胞における効率的な遺伝子の転写および翻訳に
は必要である。これらの転写および翻訳の開始シグナルは、各々、遺伝子に特異
的なメッセンジャーRNAおよび合成されたタンパク質の量によって測定される「
強度」が変動し得る。プロモーターを含むDNA発現ベクターは、更に、様々な「
強度」の転写および/または翻訳開始シグナルのいずれかの組合せも含むことが
できる。
【0038】 前述のように、イヌEPOタンパク質またはポリペプチドをコードしている単離D
NA分子が一旦発現システムにクローニングされたならば、これらは宿主細胞に容
易に組込まれる。このような組込みは、ベクター/宿主細胞システムに応じて、
前述のような様々な形の形質転換で実行することができる。適当な宿主細胞は、
哺乳類細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣細胞など)、酵母細胞、および
昆虫細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0039】 本発明は更に、単離されたイヌエリスロポエチンタンパク質またはポリペプチ
ドにも関する。
【0040】 好ましい態様において、このタンパク質またはポリペプチドは、網状赤血球お
よび赤血球の産生の増大を骨髄細胞に引き起こす生物特性を有し、かつイヌにお
ける免疫応答を惹起しない免疫特性を有する、十分に同等なイヌエリスロポエチ
ンである。
【0041】 好ましくは、このタンパク質またはポリペプチドは配列番号:3のアミノ酸配
列を有する。
【0042】 前述のポリペプチドまたはタンパク質の断片も、本発明に包含されている。
【0043】 適当な断片は、いくつかの手段により作出することができる。第一に、本発明
のタンパク質をコードしている遺伝子のサブクローンが、遺伝子断片をサブクロ
ーニングすることによる通常の分子の遺伝子操作により作出される。その後この
サブクローンを、細菌細胞においてインビトロまたはインビボにおいて発現し、
比較的小さいタンパク質またはペプチドを得、これは以下に記した方法に従って
活性を試験することができる。
【0044】 別法として、複製タンパク質の断片を、完全な長さの複製タンパク質の、キモ
トリプシンまたはブドウ球菌(Staphylococcus)プロテイナーゼA、またはトリ
プシンのようなタンパク質分解酵素による消化により作出することができる。異
なるタンパク質分解酵素は、タンパク質のアミノ酸配列に基づき、異なる位置で
複製タンパク質を切断する可能性が高い。タンパク質分解から得られるこれらの
断片の一部は、活性がある。
【0045】 別の方法において、タンパク質の一次構造に関する知識を基に、複製タンパク
質遺伝子の断片は、PCR法を、そのタンパク質の特定の部分を表すように選択さ
れたプライマーの特異的セットと共に使用して合成することができる。その後こ
れらは、切断型ペプチドまたはタンパク質の発現を増大するために適当なベクタ
ーにクローニングされる。
【0046】 化学合成を使用して、適当な断片を形成することもできる。このような合成は
、作製される複製タンパク質の公知のアミノ酸配列を用いて行われる。あるいは
、完全な長さの複製タンパク質を高温および高圧に晒すことによって、断片が生
成する。その後これらの断片は、常法(例えばクロマトグラフィー、SDS-PAGE)
により分離される。
【0047】 更に(代わりに)変種を、例えばコードされたポリペプチドの特性、二次構造
および疎水親水性に最小の影響を及ぼすようなヌクレオチドの欠失または付加に
より修飾することもできる。例えば、ポリペプチドをコードしているヌクレオチ
ドは、翻訳と同時にまたは翻訳後にタンパク質の転移を指示するタンパク質のN
末端に位置するシグナル(またはリーダー)配列に連結することができる。ヌク
レオチド配列は、コードされたポリペプチドが、リンカー、またはポリペプチド
の合成、精製もしくは同定を容易にする他の配列と結合するように変更すること
ができる。
【0048】 本発明のタンパク質またはポリペプチドは、好ましくは、常法により精製され
た形状(好ましくは純度が少なくとも約80%、より好ましくは90%)で産生され
る。鎌状赤血球貧血患者の尿からのヒトエリスロポエチンの精製に使用される公
表された方法は、馴化された組織培養培地からのrcEPOの精製に適用されるはず
である(Miyakeら、「ヒトエリスロポエチンの精製(Purilication of Human Eryt
hropoietin)」、J. Biol. Chem.、252:5558-5564(1977):Krystalら、「迅速な
5工程法による相同性に対するヒトエリスロポエチンの精製(Purification of H
uman Erythropoietin to Homogeneity by a Rapid Five-Step Procedure)」、Bl ood. 67:71-79(1986)、これらは本明細書に参照として組入れられている)。
【0049】 好ましい態様において、本発明のタンパク質またはポリペプチドは、本発明の
タンパク質またはポリペプチドの有効量および下記に示す薬学的に許容できる希
釈剤、補助剤または担体を含有する薬学的組成物として投与される。
【0050】 最も好ましい態様において、薬学的組成物は、イヌまたはネコにエリスロポエ
チン治療を提供するのに有効な量で投与される。
【0051】 本発明の別の局面は、組換えイヌエリスロポエチンを、エリスロポエチン治療
が必要なイヌに、網状赤血球および赤血球のイヌにおける産生を増大するのに十
分な量を投与することを含む、イヌにエリスロポエチン治療を提供する方法であ
る。
【0052】 好ましい態様において、イヌは貧血、慢性または急性腎不全に罹患している。
最も好ましい態様において、イヌは慢性または急性腎不全に罹患し、かつイヌは
以下の品種の一つである:ノルウェジアンエルクハウンド、コッカスパニエル、
サモエード、ドーベルマンピンシェル、ラサアプソ、シーズー、またはゴールデ
ンレトリバー。
【0053】 別の好ましい態様において、イヌは癌に罹患している。より好ましい態様にお
いて、イヌはリンパ肉腫に罹患し、かつイヌは以下の品種の一つである:ボクサ
ー、バセットハウンド、セントバーナード、スコティッシュテリア、エアデール
テリア、イングリッシュブルドッグ、およびラブラドールレトリバー。
【0054】 別の態様において、イヌはrhEPOに誘発される赤血球生成不全に罹患している
【0055】 別の態様において、イヌは手術を受ける前に組換えイヌエリスロポエチンを投
与される。
【0056】 好ましくは、本発明の組換えイヌエリスロポエチン(「rcEPO」)は、配列番号
:1のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる。
【0057】 好ましくは、イヌにおいて網状赤血球および赤血球の産生を増大するために、
rcEPOの約50ユニット/kgから約500ユニット/kgがイヌに投与される。最も好ま
しくは、rcEPOの約100ユニット/kgから約200ユニット/kgがイヌに投与される
【0058】 本発明のrcEPOは、経口、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内により、鼻
腔内注入により、腔内または嚢内注入により、眼内、動脈内、病変内、または鼻
、喉、および気管支などの粘膜への適用により投与することができる。これは、
単体で、または薬学的もしくは生理学的に許容できる担体、賦形剤または安定剤
と共に投与することができ、かつ錠剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤または
乳剤のような、固形または液体の形状であることができる。
【0059】 固形単位剤形は通常の型のものでありうる。固形剤形は、本発明のrcEPOおよ
び担体、例えば乳糖、ショ糖、またはトウモロコシデンプンのような滑剤および
不活性充填剤を含有する通常ゼラチン型のカプセル剤であることができる。別の
態様において、これらの化合物は、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたは
ゼラチンのような結合剤、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはア
ルギン酸のような崩壊剤、ならびにステアリン酸またはステアリン酸マグネシウ
ムのような滑剤と一緒にした、乳糖、ショ糖、またはトウモロコシデンプンのよ
うな通常の錠剤基剤と共に、錠剤とされる。
【0060】 本発明のrcEPOは、更に薬学的担体と共に生理的に許容できる希釈剤を溶媒と
するこれらの材料の液剤または懸濁剤により注射可能な用量で投与することもで
きる。このような担体は、界面活性剤、ならびに補助剤、賦形剤または安定剤を
含む他の薬学的および生理的に許容できる担体の添加を伴うまたは伴わずに、水
および油のような滅菌液を含有することができる。具体的な油は、石油系、動物
性、植物性または合成を起源とするものであり、例えば、ピーナッツ油、ダイズ
油、または鉱油がある。一般に、好ましい液体担体は、水、生理食塩水、水性デ
キストロースおよび関連した糖液、ならびにプロピレングリコールまたはポリエ
チレングリコールのようなグリコール類であり、これらは特に注射用溶液に適し
ている。
【0061】 エアロゾルとしての使用については、液体または懸濁液中の本発明のrcEPOを
、加圧したエアロゾル容器に、適当な噴射剤、例えばプロパン、ブタンまたはイ
ソブタンのような炭化水素系噴射剤と、通常の補助剤と共に充填することができ
る。本発明の材料は、ネブライザーまたはアトマイザーのような、非加圧式の形
状においても投与することができる。
【0062】 本発明は、エリスロポエチン治療が必要なネコへ、組換えイヌエリスロポエチ
ンを、ネコにおける網状赤血球および赤血球の産生を増加するのに十分な量投与
することを含む、ネコにエリスロポエチン治療を提供する方法にも関する。
【0063】 好ましい態様において、ネコは、慢性または急性腎不全に続発する貧血、癌、
または赤血球生成不全に罹患している。最も好ましい態様において、ネコはリン
パ肉腫に罹患している。
【0064】 別の態様において、ネコは、手術を受ける前に、組換えイヌエリスロポエチン
を投与される。
【0065】 好ましくは、rcEPOは、先にイヌについて説明したものと同じ用量で、ネコに
投与される。
【0066】 実施例実施例1 −イヌエリスロポエチン(rcEPO)の単離およびクローニング イヌエリスロポエチン(cEPO)をコードしている遺伝子を、Sau3A 1(Stratagene
社、ラホヤ、CA)で部分切断したイヌDNAのラムダDASHゲノムライブラリーから単
離した。およそ100万個のバクテリオファージプラークを、cEPOのエクソン4由来
の180塩基対cDNA断片でスクリーニングした。このcDNA断片は、プライマーとし
て5'-GTTGGGCAGCAGGCCTTGGAAGT(センス)(配列番号:4)および5'-CTGGGCTCCCAGC
GCCCGAA(アンチセンス)(配列番号:5)を用いる、イヌのゲノムDNAのポリメラー
ゼ連鎖反応(PCR)増幅により作出した。これらのプライマーは、GenBank登録番号
第L13027号から入手でき、かつWenら(「エリスロポエチン構造−機能相関:哺
乳類間の高度な配列相同性」、Blood.、82:1507-1516 (1993)、これは、本明細
書に参照として組入れられている)によって公表された、部分的cEPO cDNAの塩
基232〜254位および392〜411位に相当している。その後エクソン4断片を、pGEM-
3Zf(+)(Promega社、マディソン、WI)にサブクローニングし、大腸菌株JM 109(Pr
omega社、マディソン、WI)において増幅し、分離用制限酵素消化およびアガロー
スゲル精製により多量を再度単離し、ランダムヘキサヌクレオチドプライマー(P
rime-a-Gene、Promega社、マディソン、WI)を用いて32P-dCTPで標識し、かつG-5
0 Sephadexスピンカラムクロマトグラフィー(Boehringer Mannheim、インディア
ナポリス、IN)により精製した。エクソン4プローブに特異的にハイブリダイズし
た合計9個のゲノムクローンが単離され、かつプラークを精製した。サザンブロ
ット分析は、これらのクローン中8個が、4.5kb Xba I 断片内に全cEPOコード領
域を含むことを明らかにした。
【0067】 発現プラスミドを、cEPO遺伝子(翻訳開始部位の40塩基上流に位置したSgr A1
部位から、停止コドンの2,060塩基下流に位置した3' Xba I部位まで伸びる )の
、真核性の発現ベクターpLENのBam H1部位へのサブクローニングにより構築した
。Friedmanら、「増幅しない哺乳類細胞の高度発現(High Expression in Mammal
ian Cells Without Amplification)」、Bio/Technology.、7:359-362(1989)、こ
れは本明細書に参照として組入れられている。公表されたマウス、サルおよびヒ
トのエリスロポエチン配列データを比較することで、cEPO遺伝子の開始コドンお
よび停止コドンの同一性が推定された。Linら、「ヒトエリスロポエチン遺伝子
のクローニングおよび発現」、Proc.Natl. Acad. Sci. USA、82:7580-7584(1985
):McDonaldら、「マウスのエリスロポエチン遺伝子のクローニング、配列決定
および革新的分析」、Molecular and Cellular Biology.、6:842-848(1986):Sh
oemakerら、「マウスエリスロポエチン遺伝子:クローニング、発現およびヒト
遺伝子相同性」、Molecular and Cellular Biology. 6:849-858(l986):Linら、
「サルエリスロポエチン遺伝子:クローニング、発現およびヒトエリスロポエチ
ン遺伝子との比較(Monkey Erythropoietin Gene: Cloning, Expression and Com
parison with the Human Erythropoietin Gene)」、Gene. 44:20 1-209(1986)、
これらは本明細書に参照として組入れられている。このcEPOアエノミック(aenom
ic)挿入物およびpLENベクターは両方とも、ライゲーション前に、S1ヌクレアー
ゼで平滑末端とした。組換えの方向は、直接DNA配列解析により決定した。この
構築物中のcEPOの構成的高レベル転写は、pLENのSV4Oエンハンサーおよびヒトメ
タロチオネインIIAプロモーター(図1)により起動した。
【0068】実施例2 −rcEPO発現およびRNAゲル分析 rcEPO産生のための細胞培養システムは、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CH
O-KI、ATCC、ロックビル、MD)へのリン酸カルシウム共沈殿法を用いる、pLEN-cE
PO構築物のpRSVneoとの分子比10:1での同時トランスフェクションにより確立し
た。Gormanら、「霊長類細胞の高効率のDNAが媒介した形質転換(High Efficienc
y DNA Mediated Transformation of Primate Cells)」、Science、22l:55l-553(
1983);Grahamら、「ヒトアデノウイルス5 DNA感染性のアッセイ法(A New Techn
ique for the Assay of Infectivity of Human Adenovirus 5 DNA)」、Virology 、52:456-467(1973)、これらは本明細書に参照として組入れられている。細胞は
、10容量%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコの変更イーグル培地(Gibco BRL、
グランドアイランド、NY、カタログ番号11965)において、5%C02/95%空気中37
℃で維持した。トランスフェクション後、G418 (400μg/ml)を、培養培地に添加
し、非形質転換体を取り除いた。合計122個の形質転換されたCHO細胞クローンを
、個別に単離しかつ増殖させた。各CHOクローンにおけるcEPOの相対発現を、ノ
ーザンブロット分析により転写レベルについて並行して比較した。(その後、CH
O-rcEPO細胞株を、血清非含有培地において増殖させ、rcEPOの生化学的精製手法
を大きく単純化した。この発現システムは、rcEPOが100U/mlを越えるような培地
濃度を通常達成した。回転ボトルを用いて、24時間毎に1個の培養容器中でrcEP
Oを20,000ユニット合成し、2ヶ月で10kgのイヌを治療するのに十分な量とした
。)総RNAを酸性グアニジンチオシアネート−フェノール−クロロホルム抽出に
より単離し、引き続きアルコール分画および塩沈殿し、かつ分光光度計により定
量した。Chomczynskiら、「酸性グアニジンチオシアネート−フェノール−クロ
ロホルム抽出によるRNA単離の一工程法(Single-Step Method of RNA Isolation
by Acid Guanidinium Thiocyanate-Phenol-Chloroform Extraction)」、Anal. B iochem. 、162:156-159(1987)、これは本明細書に参照として組入れられている。
各RNA試料(5μg)を、1.5%アガロース、6.5%ホルムアルデヒドの浸漬したスラ
ブゲル(stab gels)上を、40mM MOPS、10mM酢酸ナトリウムおよび1mM EDTAを含有
する緩衝液(pH7.0)中で、電気泳動することにより分離した。その後分離したRNA
を、常法のキャピラリーブロッティング法を用い、ナイロン膜(Magna Charge、M
icron Separations社、ウェストボロ、MA)に転移し、かつ32P標識したcEPOエク
ソン4のcDNA断片でプローブした。Sambrookら、「分子クローニング:実験マニ
ュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」、第2版、Cold Spring Har
bor Laboratory、コールドスプリングハーバー、NY (1989年)、これは本明細書
に参照として組入れられている。個々のCHO細胞クローン間での安定した状態のc
EPO mRNAの相対比較は、ハイブリダイゼーション膜から32P崩壊現象を直接定量
することにより決定した(Phosphor Imager、Fuji Bio-Imaging社、スタンフォー
ド、CT)。その後これらのデータを、試料間のRNA負荷または転移効率に関するあ
らゆる変動を補正するために、ハウスキーピング遺伝子伸張因子Tu (EFTu)の発
現に対し標準化した。Levineら、「Elongation Factor Tu as a Control Gene f
or mRNA Analysis of Lung Development and Other Differentiation and 15 Gr
owth Regulated Systems」、Nucl. Acids Res.、21:4426(1993)、これは本明細
書に参照として組入れられている。
【0069】実施例3 −免疫ブロット法によるタンパク質分析 高cEPOを発現しているCHO細胞クローンの馴化培地(30μl)を、還元条件(reduc
ing conditions)下のSDS-15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分解し、
並行して同量の対照CHO細胞およびrhEPOのt5ユニットの馴化培地についても行っ
た。Laemmli、「バクテリオファージT4のヘッド集成時の構造タンパク質の切断(
Cleavage of Structural Proteins During the Assembly of the Head of the B
acteriophage T4)」、Nature、27:680-685(1970)、これは本明細書に参照として
組入れられている。試料3種を、ペプチドN-グリコシダーゼF消化(PNGase F、Ne
w England Biolabs社、ビバリー、MA)の有る場合および無い場合の両方で分析し
た。PNGase F反応の緩衝液およびプロトコールは、製造業者から供給された。分
離後、タンパク質を、33Vおよび4℃で一晩の電気ブロットにより、ニトロセルロ
ース膜(Bio-Rad社、ハーキュレス、CA)に転移した。膜を、0.05容量%Tween-20
を加えた50mM Tris、150mM NaCl緩衝液(pH7.4)(TBS-T緩衝液)中の5%脱脂ミルク
で、室温で1時間ブロックした。TBS-T緩衝液を洗浄した後、膜を、ヒトエリスロ
ポエチンに対するモノクローナル抗体(Genzyme社、ケンブリッジ、MA)の1:1000
希釈と共に、室温で1.5時間インキュベーションした。その後膜を再度TBS-Tで洗
浄し、かつ一次抗体と結合し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ−結合した
ヤギ抗−マウスIgG(Sigma社、セントルイス、MO)の1:8000希釈により検出した。
二次抗体のインキュベーション工程は、室温で1.5時間であった。最終のTBS-T緩
衝液による洗浄後、ペルオキシダーゼ活性を、化学発光(ECL Westernブロット検
出システム、Amerdham社、アーリントンハイツ、IL)およびオートラジオグラフ
ィーにより検出した。
【0070】実施例4 −エリスロポエチンバイオアッセイ法 rcEPOの対生物活性を、フェニルヒドラジン処置したマウスから単離した脾臓
の赤血球前駆細胞を用いてインビトロで測定した。Krystal、「A Simple Microa
ssay for Erythropoietin Based on 3H-thymidine Incorporation into Spleen
Cells from Phenylhydrazine Treated Mice」、Exp. Hematol.、JI: 649-660(19
83)、これは本明細書に参照として組入れられている。各アッセイ法について、1
匹のマウスを、フェニルヒドラジン(60mg/kg体重)を、2日連続して腹腔内注
入処置し、静脈内溶血を惹起した。その結果生じた貧血は、脾臓における赤血球
造血を髄外で刺激した。マウスを、2回目のフェニルヒドラジン注入後3日目に
屠殺した。解剖し脾臓を摘出し、滅菌0.01Mリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)
の37℃ですすぎ、かつ10%ウシ胎仔血清を補充したダルベッコの変更イーグル培
地5ml(Gibco BRL、グランドアイランド、NY)が入ったペトリ皿に入れた。脾細胞
を、被膜から解離し、他の結合組織は、ワイヤメッシュを通して排出(extrusion
)し、かつ21-ゲージ針により吸引した。その後細胞浮遊液を、ポリプロピレンチ
ューブに移した。組織デブリの残留片を5分間沈降させ、浮遊細胞を含む上清を
新たなチューブに移した。その後これらの脾細胞を、1000gで遠心しペレットと
し、培養培地25mlに最懸濁し、計数し、かつトリパンブルー色素排除により生存
率を評価した。光学顕微鏡による分析は、少なくとも90%の細胞が、赤血球系で
あることを示した。4 x 106細胞のアリコートを、個別の遠心管に移し、ペレッ
ト化し、かつ11種の異なる濃度のrcEPOまたはrhEPOのいずれかを含有する培養培
地1ml中に再懸濁した。
【0071】 DNA合成における変更を用いて、rcEPOをrhEPOに対し、それらの脾臓の赤血球
前駆細胞の複製を刺激する能力に関して比較した。各エリスロポエチンの希釈を
、96穴微量滴定プレート(Corning Science Products社、コーニング、NY)におい
て3連で評価した。細胞は、培養培地0.2ml中に、8 x 105細胞の密度で播種した
。22時間培養した後、細胞を、0.2μCi 3H-チミジン(DuPont NEN社、ボストン、
MA)で2時間標識した。細胞を、Skatron細胞収集器(Flow Laboratories社、マク
レーン、VA) を用いて、ガラスフィルターマット上に収集し、かつ3H-チミジン
崩壊現象を、液体シンチレーションカウンター(Beckman社、パロアルト、CA)で
定量した。エリスロポエチンを補充しなかった培地およびトランスフェクション
しなかったCHO細胞で馴化した培地は、陰性対照として使用した。
【0072】 rcEPOの生体活性を、マウスの流血中の網状赤血球を直接定量することによっ
て、インビボで評価した。Kawamuraら、「エリスロポエチンのインビボバイオア
ッセイ簡便法(Simple in vivo Bioassay for Erythropoietin)」、Br. J. Haema tol .、77:424-430(1991)。健常な成体C57BL/6Jマウス(The Jackson Laboratory
、バーハーバー、ME)に、rcEPOまたはrhEPOのいずれかを用量0〜20ユニット/マ
ウスの範囲で、これをPBSで総容量200μlとしたものを、3日間連続して皮下注射
した。市販のrhEPO(Epogen(登録商標)、Amgen社、サウザンドオーク、CA)は、
所定の濃度の国際単位/mlで供給された(Storringら、「The International Sta
ndard for Recombinant DNA-derived Ervthropoietin: Collaborative Study of
Four Recombinant DNA-derived Erythropoietins and Two Highly Purified Hu
man Urinary Erythropoietin」、J. Endocrinol.、134:459-484(1992)、これは
本明細書に参照として組入れられている)。等しいユニットのrcEPOを含有する馴
化培地の量は、ウェスタンブロット解析およびインビトロ生体活性から推定した
。対照マウスは、トランスフェクションしていないCHO細胞で馴化した培養培地
の注射を受け取った。3回目の注射の1日後、末梢血アリコートを、EDTA-含有採
血管中に採取した。各血液検体中の網状赤血球の割合(%)を、蛍光色素チアゾ
ールオレンジを用いて10,000細胞をフローサイトメーター分析することにより決
定した(Retic-COUNT、Bectin-Dickinson社、サンノゼ、CA)。Leeら、「チアゾー
ルオレンジ:網状赤血球分析用新規色素(Thiazole Orange: A New Dye for Reti
culocyte Analysis)」、Cytometry、7:508-517 (1986):Nobesら、「フローサイ
トメトリーによる網状赤血球計測(Reticulocyte Counting Using Flow Cytometr
y)」、J. Clin. Pathol.、43:675-678(1990)、これらは本明細書に参照として組
入れられている。両方のマウスのバイオアッセイ法に関する実験プロトコールは
、大学の動物の飼育および使用に関する委員会(the University's Institutiona
l Animal Care and Use Committee)において検討され承認を受けている。
【0073】実施例5 −統計解析 インビボバイオアッセイ法に関して、分散の二元解析を用いて、組換えエリス
ロポエチン供給源(イヌまたはヒト)の影響、使用したエリスロポエチン用量、お
よび供給源および用量の間に相関関係があるかどうかを決定した。相関関係が有
意でない場合は、データは、主要作用について解釈した。最小有意差の事後検定
を用いて、どの用量が他のものや対照から異なるかを決定した。p<0.05値を有
意であると認めた。
【0074】実施例6 −結果および考察 イヌEPOの発現は、pLEN-cEPOおよびpRSVneoで同時トランスフェクションした
個々のG418-抵抗性CH0細胞クローン間で有意に変動した。図2は、100個の個々
のクローンにおいてcEPOおよびEFTu mRNAが同等の安定状態レベルであることを
示している。その後のrcEPO産生に使用したクローンは、高いcEPO/EFTu mRNA比
および優れた増殖特性を基に選択した。馴化した組織培養培地中でのrcEPOタン
パク質のウェスタン解析により、市販のrhEPO(Epogen(登録商標)、Amgen社、
サウザンオーク、CA、図3)サイズとおおまかに一致する、およそ30〜34kDaの広
域なバンドが同定された。エリスロポエチンはグリコシル化されたタンパク質で
あるので、rcEPOおよびrhEPOのN-グリコシダーゼによる酵素的消化(図3、レー
ン4および6)は、異物の炭水化物残基を除去し、かつ単一の18.5kDaバンドを示し
、このサイズは予想される一次元のcDNAヌクレオチド配列に一致した。
【0075】 2種のアッセイシステムを用いて、rcEPOおよびrhEPOの生体活性を比較した。
インビトロにおいて、脾臓の赤血球前駆細胞の複製は、rcEPO補充レベルの上昇
により、用量−依存的様式で刺激された(図4A)。対照CHO細胞で馴化した培養培
地においては、3H-チミジン取り込みの上昇は認められなかった。rcEPO刺激は、
市販のrhEPO (Epogen(登録商標)、Amgen社、サウザンオーク、CA、図4B)と広
く平行した活性の全般的パターンを示した。同様の生体活性の結果が、網状赤血
球増加症のエリスロポエチンが誘導した刺激を基にしたインビボマウスアッセイ
法においても認められた。未処置のマウスまたは対照CHO細胞からの馴化培地を
注射したマウスは、およそ3.5%の末梢網状赤血球数を有した。この数は、rhEPO
およびrcEPOの両方の用量に依存した様式で有意に増大した(図5)。
【0076】 エリスロポエチン欠損症は、慢性または急性腎不全に併発する再生不良性貧血
の最も重要な原因である。これは、腎疾患の進行に伴う腎臓におけるエリスロポ
エチン-産生細胞の喪失の結果生じる。これは、ヒトおよび愛玩動物の両方に該
当する。組換えhEPOは、1989年に市販が開始され、かつヒトにおいてこの問題を
管理する能力が劇的に向上した。外因性エリスロポエチン代償は、赤血球容積(m
ass)およびヘモグロビン濃度を正常レベルに迅速に回復し、かつ腎疾患の最終期
に関連した多くの臨床症状の寛解を助ける。発生率が20〜50%であると推定され
る愛玩動物におけるrhEPOでの治療失敗は、エリスロポエチン構造の種間変動の
結果であるように思われる。ヒトタンパク質は、rhEPOの生体活性は保持されて
いても、免疫系において異物として認識されることが多い。エリスロポエチン代
償法の概念は、愛玩動物にとって適しているが、問題点はrhEPOの免疫原性であ
る。イヌおよびネコにおける慢性または急性腎不全の貧血の病因および現在の治
療の選択肢は、Cowgillによって検証されている(「慢性腎不全の貧血の医学管
理」、Canine and Feline Nephrology and Urology、Osborneらの編集、ボルチ
モア:Williams & Wilkins、539-554ページ(1995年)、これは本明細書に参照と
して組入れられている)。
【0077】 本発明は、発症種に特異的な組換えエリスロポエチン調製物の実行可能性につ
いて明らかにしている。PCRを用いて、イヌのエリスロポエチンcDNA断片を増幅
し、その後これをプローブとして用いて、イヌのゲノムライブラリーから、エリ
スロポエチン遺伝子を含有するファージクローンを単離する。DNA配列解析は、
完全なコード領域にわたってヒトエリスロポエチンと85.8%のヌクレオチド同一
性を示し、かつアミノ酸レベルでは81.3%の同一性であると推定された。配列解
析は、デフォルトのパラメータによりMacVectorプログラムを用いて行った。一
次のアミノ酸配列における18.7%の差異は、イヌにおける免疫原性の可能性のあ
るrhEPOに一致した。pLEN-cEPO構築物によりトランスフェクションした個々のCH
O細胞クローンは、rcEPO発現レベルを1000倍以上変動した(図2)。これは、組込
み部位の差異および組込まれた導入遺伝子のコピー数の差異を反映している可能
性が高い。rcEPOのサイズおよび見かけの総グリコシル化は、市販のrhEPOと同等
である(図3)。重要なことは、rcEPOおよびrhEPOのインビトロ(図4)およびイン
ビボ(図5)の対生物活性プロファイルが、本試験で用いた2種のマウスを基にし
たアッセイ法において似ていることである。加えて、これらの結果は、rcEPOは
、内因性エリスロポエチンの絶対的または相対的欠損に続発した貧血に罹患した
イヌにおいて、赤血球形成を刺激するであろうと推定した。重要な治療の利点と
なる可能性のあるものは、相同のエリスロポエチン調製物の使用は、愛玩動物に
おけるrhEPOの免疫原性の重篤な問題を避けるであろうという予想を基にしてい
る。
【0078】実施例7 −組換えイヌエリスロポエチンの精製 rcEPO馴化した血清非含有組織培養培地を、臨床試験およびバイオアッセイ法
に用いた。馴化培地の異なるバッチのrcEPOの推定濃度は、図3に示したような
ウェスタンブロット解析により決定した。しかし、愛玩動物における商業的使用
のためには、rcEPOは精製されかつ濃縮されなければならない。鎌状赤血球貧血
患者の尿からのヒトエリスロポエチンの精製のために使用される公表された方法
は、馴化した組織培養培地からrcEPOを精製するために適用されるはずである。M
iyakeら、「ヒトエリスロポエチンの精製」、J. Bio. Chem.、252:5558-5564(19
77):Krystalら、「迅速5工程法によるヒトエリスロポエチンの相同性に対する
精製」、Blood、67:71-79(1986)、これらは本明細書に参照として組入れられて
いる。実際、この方法は、rcEPOの出発濃度が、ヒト尿中のEPOレベルよりも桁数
が数倍大きくかつCHO細胞は現在は完全に血清非含有条件で培養できるので、か
なり容易である。
【0079】 具体的には、尿を0.45gm膜で濾過し、細胞デブリおよび他の粒子を除去した。
濾液を、次に予め0.15M NaClおよび10mM NaPO4、pH7.2溶液で平衡化したイオン
交換樹脂(CM Affi-Gel Blue、Pharmacia Biotech社、ピスケートウェイ、NJ)に
流した。結合したタンパク質を、同じ緩衝液を溶媒とする0.15Mから1.15MのNaCl
の急な塩勾配の溶液で、カラムから溶出した(rcEPOは、約0.9M NaCl溶液で、広
いピークでカラムから溶出した)。その後溶出液を、限外濾過により濃縮し(Amic
on Model 402、レキシントン、MA)、かつ20mM Tris-HCl、0.1%PEG 4000、pH7.0
溶液に対して、一晩透析した。第二の精製工程は、pH勾配が7.0から3.8まで行き
7.0に戻るような等電点クロマトグラフィーに関係した(PBE94 カラム−ポリ緩衝
液交換装置、Pharmacia Biotech社)。エリスロポエチンのpIはおよそ3.5である
と報告されており、この時点ではタンパク質は依然カラムに結合している。その
後、溶出液のpHを、エリスロポエチンの等電点以下に下げるのではなく、むしろ
高塩(20mM Tris-HClを溶媒とする0.3M NaCl、pH7.0)で溶出する。公表された方
法の戦略とは、この点で異なる。Krystalらの方法(「迅速5工程法によるヒト
エリスロポエチンの相同性に対する精製」、Blood、67:71-79(1986)、これは本
明細書に参照として組入れられている。)は、コムギ胚芽レクチンクロマトグラ
フィーを使用する。Sepharose 6MBマクロビーズ支持体(Pharmacia Biotech社)に
結合したレクチンは、エリスロポエチンの糖側鎖のN-アセチル-β-D-グルコース
アミニルおよびシアル酸残基に結合する。グリコシル化されないタンパク質は、
カラムから洗浄する。その後結合したrcEPOを、0.02%Tween 20を含有するPBSを
溶媒とする10M N-アセチル-D-グルコサミンで溶出する。対照的に、初期の方法(
Miyakeら、「ヒトエリスロポエチン精製」、J. Biol. Chem.、252:5558-5564 (1
977)、これは本明細書に参照として組入れられている)は、Sephadex G-100 (Pha
rmacia Biotech社)ゲル濾過クロマトグラフィーを使用する。限外濾過により濃
縮した後、最終精製工程では、n-プロパノールまたはアセトニトリル勾配のいず
れかを用いた逆相HPLCを行った。
【0080】実施例8 −実施例9〜10の材料および方法 エリスロポエチンの調製: rcEPOの産生に使用した方法は、公表されている(Ma
cLeodら、「組換えイヌエリスロポエチンの発現および生体活性」、Am.J. Vet. Res. 、59:1144-1148(1998)、これは本明細書に参照として組入れられている。)
。簡単に述べると、cEPOをコードしている遺伝子を、ゲノムライブラリーから単
離し、真核性発現ベクターにサブクローニングし、その後チャイニーズハムスタ
ー卵巣(CHO)細胞(ATCC CRL-9618)にトランスフェクションした。単一の高rcEPO
を発現しているCHOクローンを、血清非含有規定培地(a)において増殖させた。馴
化培地中のrcEPO濃度は、免疫ブロット分析およびインビトロバイオアッセイ法
により推定した(MacLeodら、「組換えイヌエリスロポエチンの発現および生体活
性」、Am.J. Vet. Res.、59:1144-1148(1998)、これは本明細書に参照として組
入れられている。)。イヌの治療のためには、rcEPO濃度は、通常500U/mlとし、
希釈剤として、トランスフェクションされない対照CH0細胞により馴化した培地
を用い、かつ0.25重量/容量%のイヌアルブミンおよび0.025重量/容量%のヒ
トアルブミンを補充した(b)。rhEPOは、濃度10,000U/mlで購入し(c)、対照CH0細
胞により馴化した培地を用いて濃度500U/mlに希釈し、かつイヌおよびヒトアル
ブミンを、各々、最終濃度0.25および0.025%となるように補充した。対照CH0細
胞により馴化した培地からなりイヌおよびヒトアルブミンを補充した希釈物を、
イヌに、-4〜0週目投与した。これら3種の調製物は、0.22μmフィルターを通過
させて滅菌し、使用時まで滅菌容器中で-20℃で凍結保存した。
【0081】 イヌ: 13匹の性的に未成熟(sexually intact)で臨床上正常なビーグル犬(雌9
匹、雄4匹)を、28週間試験した。イヌの年齢は、1.2〜6.5歳の間(中央値1.3歳
)、体重10.9〜17.7kg(平均13.7kg)であった。試験開始前の2週間に、イヌは環
境条件および取扱い法に順応させた。全てのイヌは、2〜3匹毎雌雄別に飼育し、
市販の乾燥ドッグフードを飼料とし、水は自由に摂取させた。イヌは毎日観察し
、日常的方法で世話をし、試験開始時にはイヌジステンパーおよびアデノウイル
ス2型、コロナウイルス、パルボウイルスおよびレプトスピラ感染症のワクチン
接種(d)を行った。本試験は、コーネル大学の動物の飼育および使用に関する委
員会の承認を受けている。
【0082】 イヌは無作為に2群に割り当てた;I群(イヌ1〜6:雌5匹、雄1匹)はrhEPOを摂
取され、II群(イヌ7〜13;雌4匹、雄3匹)はrcEPOを摂取された(c)。両群とも、E
PO投与(100U/kg体重、SC、3回/週)を開始する前に、希釈液を、SCで、3回/週
で4週間(第-4〜0週)受けた。このrhEPO用量は、他の研究者によってイヌにおい
て赤血球形成を良好に刺激するために使用されている(Giger、「エリスロポエチ
ンおよびその臨床使用」、Compend. Contin. Educ. Pract. Vet.、14:25-34(199
2);Cowgill、「慢性腎不全の貧血の医学管理」、Osborne CA. Finco DR編集、C anine and Feline nephrology and urology 、ボルチモア:The Williams & Wilk
ins Co.、539-544ページ(1995年)、これは本明細書に参照として組入れられてい
る。)。全てのイヌは、EPO治療開始時から、補充の鉄分(硫酸鉄(e)、10mg/kg、
P0、毎日または1日おき)を摂取させた。
【0083】 試験期間は、イヌのHctが連続2週間65%を越えたならば、EPO用量を週1回の10
0U/kgに減量し、赤血球増加に関連した臨床上の問題が生じることを避けた。イ
ヌがEPOを用量100U/kgで週3回受けた場合に、EPO治療開始後に測定されたHctの
最高値から>10%の減少が連続2週間観測されたならば、赤血球系形成不全の疑
いがあるので、EPO投与は停止した。イヌがEPOを用量100U/kgで週1回受けた場合
に、EPO治療開始後に測定されたHctの最高値から>10%の減少が連続2週間観測
されたならば、EPO投与は、100U/kgで週3回に戻した。
【0084】 臨床検査値評価: 完全な血球数測定を毎月行った。血清の生化学的分析(ナト
リウム、カリウム、塩素、総タンパク質、アルブミン、グロブリン、BUN、クレ
アチニン、ブドウ糖、カルシウム、リン、総ビリルビン、コレステロール、およ
び鉄濃度、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アラ
ニントランスアミナーゼ、γ-グルタミルトランスフェラーゼ、クレアチンキナ
ーゼ、およびアミラーゼ活性、ならびに不飽和鉄結合能)を、EPO治療開始時以
前、および試験終了後に、自動化された方法(f)を用いて行った。総鉄結合能(TI
BC)は、血清鉄濃度および不飽和鉄結合能の和から決定した。トランスフェリン
飽和は、下記のように算出した: (血清鉄濃度/TIBC) x 100 ヘマトクリット(%)およびRBC数(106μl)は、自動化された方法(g)を用いて毎
週測定した。網状赤血球数(%)は、毎週、新たにメチレンブルーで染色した血液
塗沫標本から、2匹のイヌについてMillerディスク接眼鏡を用いる油浸光学顕微
鏡により(h)、イヌ11匹についてフローサイトメトリーにより(i)決定した。網状
赤血球絶対数は、網状赤血球数(%)にRBC数(106/μl)を掛けて算出した。
【0085】 骨髄の細胞学的検査: 骨髄吸引液を、検体をクエン酸−リン酸−デキストロー
ス溶液1mlを含有する注射筒に吸引した以外は、論文に記載されているように(Re
lford、「骨髄吸引およびコア生検の実行工程(The Steps in Performing a Bone
Marrow Aspiration and Core Biopsy)」、Vet. Med.、86:670-688 (1991)、こ
れは本明細書に参照として組入れられている)、腸骨翼または上腕骨近位部(the
wing of the ilium or proximal portion of the humerus)から採取した。骨髄
塗沫標本を、検体の針骨状部分から調製し、かつ変更したライト−ギムザ(j)染
色した。500個の細胞の分別数から、骨髄性-対-赤血球性の比(M:E)を決定した。
プルシアンブルー染色した骨髄塗沫について、鉄の蓄積を染色取込みの量および
強度を基に、無、低、正常または高として評価した。骨髄吸引は、EPO治療開始
前(0週目)ならびに4、8、16および24週目に行った。吸引方法のために、イヌは
、塩酸オキシモルホン(0.05〜0.10mg/kg、IM)およびミダゾラム(0.20mg/kg、IM)
により鎮静させた。
【0086】 統計解析: これら2群の赤血球系生成不全を発症しているイヌの割合を、フィ
ッシャーの直接法を用いて比較した(Dawson-Saundersら、「基礎および臨床の生
物統計学(Basic and Clinical Biostatistics)」、Norwalk. Conn: Appleton an
d Lange、109-100、114-116ページ(1994年)、これは本明細書に参照として組入
れられている)。血液学的および生化学的変数は、各群においてrcEPOまたはrhEP
O治療の前後で、対のあるt-検定を用いて比較した(Dawson-Saundersら、「基礎
および臨床の生物統計学」、Norwalk. Conn: Appleton and Lange、109-100、11
4-116ページ(1994年)、これは本明細書に参照として組入れられている)。rcEPO
治療したイヌ間の平均Hct、絶対網状赤血球数、血小板数、および平均赤血球容
積(MCV)の差異を、4週、8週、12週、16週、20週、および24週の時点で、スチュ
ーデントのT-検定を用いて評価した(Dawson-Saundersら、「基礎および臨床の生
物統計学」、Norwalk. Conn: Appleton and Lange、109-100、114-116ページ(19
94年)、これは本明細書に参照として組入れられている)。P値は、多重比較につ
いてボンフェロニ補正をしたものとしていないものとを報告した(Dawson-Saunde
rsら、「基礎および臨床の生物統計学」、Norwalk. Conn: Appleton and Lange
、109-100、114-116ページ(1994年)、これは本明細書に参照として組入れられて
いる)。
【0087】実施例9 −EPO治療時のイヌにおけるHctおよび網状赤血球絶対数 毎週の平均Hctおよび網状赤血球絶対数は、EPO治療の最初の2週間の間は、両
群のイヌにおいて上昇した(図6)。rcEPOを受けるイヌについては、平均Hctは連
続して上昇し、4週目以降、試験期間を通じて参照範囲(39〜57%)を越えた。対
照的に、rhEPOを受けるイヌの平均Hctは、2週目以降低下し、かつ13、14、15お
よび17週目には、参照範囲を下回った(図13A)。rhEPO-治療イヌおよびrcEPO-治
療イヌにおける平均Hctは、8週目から24週目にかけては有意差が認められた(p≦
0.05)。多重比較のために控えめな(conservative)P<0.008カットオフ値を使用
した場合は、2群のHctは、20週目から24週目に有意差があった。毎週の平均網状
赤血球絶対数は、rcEPO治療3週目にピークに達し、試験期間を通じて参照範囲(
≦60,000細胞/μl)を越えた(図13B)。rhEPO-治療イヌに関して、平均網状赤血球
絶対数は、2週目以降ピークに達し、4週目から14週目にかけては参照範囲内に納
まるよう減少した;その後、この群のほとんどのイヌにおいてrhEPO治療中断後
、15週目から19週目にかけて、>60,000細胞/μlの増加があった。平均網状赤血
球絶対数は、4週目から12週目にかけて、2群間で有意差があり(P≦0.008)、かつ
24週目にはP≦0.05であった。
【0088】実施例10 −rhEPOを受けるイヌにおける赤血球系形成不全 rhEPOを受けるイヌの全て(95%信頼区間、63〜100%)が、4週目(n= 4)、8週目
(1)、または16週目(1)までに、M:E>15:1(参照範囲、0.75:1〜2.5:1)である赤血
球系形成不全を発症した。実際これらのイヌのうちの5匹は、M:E≧49:1を示した
。赤血球系形成不全と診断された後のrhEPO治療の停止により、6匹のイヌのうち
の5匹(イヌ1〜5)において赤血球産生が、5〜11週間(中央値7週間)以降回復し
た。イヌ6は、おそらくアナフィラキシーのために、依然赤血球系形成不全が症
状発現している間に死亡した。残念ながら、イヌ1は、rhEPO治療を再開した(rei
nstituted)にもかかわらず、24週目に赤血球系形成不全を再発した。対照的に、
rcEPOを受けているイヌ7匹の中で、本試験期間中に赤血球系形成不全を発症した
ものはなかった(95%信頼区間、0〜37%)。実際、rcEPO治療の間に、全ての試験
した骨髄検体が、M:Eが<0.75:1であるような赤血球系の過形成を示し、ただ例
外は16週目のイヌ11で、これは細胞学的検査で正常な骨髄であった(M:E=0.96:1
)。しかしこのイヌのrcEPO用量は、6週目の最初に、Hct>65%であったので、10
0U/kg/wkに減量しており;週3回のrcEPO治療を再開したところ、赤血球系過形成
(M:E=0.61:1)が再発した。赤血球系過形成を発症したイヌの割合には、2群間で
有意差があった(P≦0.01)。
【0089】 月平均の白血球数は、rcEPOを受けるイヌの試験を通じて、参照範囲内であっ
た(7.5〜19.9 X 103細胞/μl)。しかし、rhEPO-治療したイヌは、8週目から16週
目に参照範囲以下の平均白血球数を有した(図2A)。rhEPO-治療したイヌの8週目
から16週目の分別白血球数は、好中球減少症を示した。8週目から24週目のrhEPO
-治療イヌの平均白血球数は、rcEPO-治療イヌのその数と有意差があった(P≦0.0
08)。rcEPO-治療イヌまたはrhEPO-治療イヌについての月平均血小板数は変動し
たが、試験期間を通じて参照範囲(179〜510 X 103細胞/μl)内であった(図2B)。
16週目に、2群の平均血小板数に有意差があった(P=0.05)。
【0090】 月平均MCVは、4週目から12週目の間、両群のイヌにおいて減少した(図2C)。rc
EPOを受けるイヌについて、平均MCVは、連続して減少し、かつ16週目から24週目
は、参照範囲(64〜73 fl)を下回った。対照的に、rhEPO-治療したイヌにおける
平均MCVは、rhEPO治療停止後、16週目から24週目は増大した。2群の平均赤血球
容積には、24週目に有意差があった(P−0.04)。両群のイヌの平均赤血球血色素
濃度(MCHC)は、参照範囲(31〜37 g/dl)内に留まった。
【0091】 骨髄の鉄蓄積は、全てのイヌにおいて最初は増加しており正常であった。しか
し、7匹のrcEPO-治療したイヌ中6匹および6匹のrhEPO-治療したイヌの中の2匹は
、赤血球系過形成の期間、骨髄の鉄蓄積が減少した。血清に関する生化学的変数
の平均は、rhEPO-治療イヌまたはrcEPO-治療イヌについて、0週目から24週目は
、参照範囲内であった(表1)。しかし、各群において、特異的有意差が認めら
れた。
【0092】
【表1】 組換えヒトエリスロポエチン(rhEPO)または組換えイヌエリスロポエ
チン(rcEPO)で治療された臨床的に正常なビーグル犬において、0週目および24週
目に、血清に関する生化学的変数について測定した平均±SEM値 * 0週目に開始し、rhEPOまたはrcEPOは、週3回、用量100U/kg体重でSC投与し
た。エリスロポエチン投与頻度は、4匹のrcEPO-治療イヌおよび1匹のrhEPO-治療
イヌにおいてHctが>65%に増加したため、減らした。全てのrhEPO-治療イヌに
おいて、赤血球系形成不全の発症のため、19週目以降は治療を中断した。1匹のr
hEPO-治療イヌは、15週目に死亡した;死因は確定されず。 a 多重比較のための調節をせずに、0週目と24週目の間に有意差(P<0.05)あり
。 b 22の多重比較のための調節をして、0週目と24週目の間に有意差(P<0.002)あ
り。 Cr=クレアチニン、TP=総タンパク質、ALT=アラニントランスアミナーゼ、AST
=アスパラギン酸トランスアミナーゼ、ALP=アルカリホスファターゼ、GGT=γ
−グルタミルトランスフェラーゼ、T Bili=総ビリルビン、Chol=コレステロー
ル、CK=クレアチンキナーゼ、TIBC=総鉄結合能、%SAT=トランスフェリン飽
和の割合
【0093】 血液学的変数の変化以外に、各ビーグル犬の臨床状態には、イヌ5、6、7およ
び10以外は、変化は無かった。希釈剤投与の期間に、イヌ5および10は嗜眠を発
症し、1日発熱した。イヌ5には、5日間抗生物質(アモキシリン20mg/kg、P0、q12
h)を投与したが、イヌ10には、疾患の臨床徴候の重症度が低かったので抗生物質
は投与しなかった。両方のイヌは、合併症を生じることなく回復した。rcEPOで
治療したイヌ7は、右目に治療を必要とする細菌性結膜炎を発症し、残りの試験
期間中は眼用抗生物質軟膏を局所的に塗布した。試験の15週目に(希釈剤を4週間
、rhEPOを7週間、およびrhEPO治療後4週間で中断)、イヌ6は死亡した。剖検所見
は、急性広汎性肺鬱血および浮腫を示したが、心病変の組織学的証拠はなく、ア
ナフィラキシーが示唆された。突然の死因は、確定されていない。
【0094】実施例11 −rhEPOで誘導された赤血球生成不全のイヌの組換えcEPOによる救済 慢性腎不全に続発した再生不良性貧血のイヌを、rhEPO(100ユニット/kg、週3
回)で治療した(図8参照)。治療の最初の6週間、rhEPOが赤血球形成を刺激した
ために、ヘマトクリット値が上昇した。治療のおよそ6週目に、イヌは、rhEPOに
対する抗体を産生し、対生物活性を阻害し、かつ赤血球生成不全が誘導された。
7週目から11週目の間、ヘマトクリット値は、rhEPO治療を継続したにも関わらず
、下降した。11週目に、ヘマトクリット値は15%以下に低下し、輸血を行った(
矢印)。12週目に、治療をrcEPOに変更して開始した。組換えcEPO(100ユニット/
kg、週3回)は、赤血球産生を回復し、最初に更なるヘマトクリット値の下降を阻
止し、その後ヘマトクリット値の上昇を刺激し正常レベルに戻した。
【0095】 この試験の結果は、rcEPOは、臨床的に正常なビーグル犬において、24週間の
治療の間に、rhEPOによるビーグル犬治療時に遭遇した赤血球系形成不全の有害
作用を伴うことなく、赤血球産生を刺激することを示した。rhEPO-治療イヌにお
ける赤血球系形成不全の発症は、rhEPOに対する抗体の出現と同時に報告された(
Cowgill、「エリスロポエチン:イヌおよびネコの慢性腎不全の治療における使
用」、Proceedings Annu. Waltham/OSU Symp Treat Small Anim. Dis.、15:65-7
1(1991)、これは本明細書に参照として組入れられている。)。見たところ、こ
れらの抗体は、rhEPOおよびcEPOの間の一次アミノ酸配列が18.7%異なるので誘
導され、イヌにrhEPOの免疫原性の可能性をもたらした(MacLeodら、「組換えイ
ヌエリスロポエチンの発現および生体活性」、Am. J. Vet. Res.、59:1144-1148
(1998)、これは本明細書に参照として組入れられている)。rhEPOの効力を阻害す
ることに加え、血清変換は、内因性cEPOの交差−中和によって生じ、赤血球系形
成不全をもたらす。Cowgill、「エリスロポエチン:イヌおよびネコの慢性腎不
全の治療における使用」、Proceedings Annu. Waltham/OSU Symp Treat Small A nim. Dis. 、15:65-71(1991);Giger、「エリスロポエチンおよびその臨床使用」
Compend. Ccntin. Educ. Pract. Vet.、14:25-34 (1992);Cowgillら、「慢
性腎不全のイヌおよびネコの貧血の管理における組換えヒトエリスロポエチンの
使用(Use of Recombinant Human Erythropoietin For Management of Anemia in
Dogs and Cats With Renal Failure)」、J. Am. Vet. Med. Assoc.、2l2:521-5
28(1998)、これらは本明細書に参照として組入れられている)。ラット、マウス
、およびウサギにおいて、rhEPOに対するモノクローナル抗体は、rhEPOおよび内
因性EPOの対生物活性を妨害する(Gotoら、「異なる抗原性15決定基を認識するヒ
トエリスロポエチンに対するモノクローナル抗体の特徴および使用(Characteriz
ation and Use of Monoclonal Antibody Directed Against Human Erythropoiet
in That Recognize Different Antigenic 15 Determinants)」、Blood、74:1415
-1423 (1989)、これは本明細書に参照として組入れられている)。赤血球系形成
不全および貧血は、ネコへのrhEPO投与後(Cowgill、「エリスロポエチン:イヌ
およびネコの慢性腎不全の治療における使用」、Proceedings Annu. Waltham/OS U Symp Treat Small Anim. Dis. 、15:65-71(1991);Cowgillら、「腎不全のイヌ
およびネコの管理のための組換えヒトエリスロポエチンの使用」、J. Am. Vet. Med. Assoc .、2l2:521-528(1998)、これらは本明細書に参照として組入れられて
いる)、およびウマへのrhEPO投与後(Woodsら、「Thoroughbred Racehorseへの
組換えヒトエリスロポエチンの投与に関係した再生不良性貧血(Nonregenerative
Anemia Associated With Administration of Recombinant Human Erythropoiet
in to a Thoroughbred Racehorse)」、Equine Vet. J.、29:326-328(1997);Pie
rcyら、「2ウマの赤血球形成不全および組換えヒトエリスロポエチン投与(Eryt
hroid Hypoplasia and Anemia Following Administration of Recombinant Huma
n Erythropoietin to Two Horse)」、J. Am. Vet. Med. Assoc.、212:244-247(1
997)、これらは本明細書に参照として組入れられている)にも報告されている。
イヌにおけるrhEPOが誘発した抗体および赤血球系形成不全の発生率に関するデ
ータは、入手できる。本試験と同等のrhEPO用量を使用した試験において、16匹
の臨床的に正常なイヌ中の3匹が、進行性貧血に関連したrhEPOに対する抗体を発
現した(k)。別の報告(Bader、「組換えヒトエリスロポエチンの過量投与による
骨髄刺激(Stimulation of Bone Marrow by Administration of Excessive Doses
of Recombinant Human Erythropoietin)」、Pathol. Res. Pract.、188:676-67
9(1992)、これは本明細書に参照として組入れられている)では、15匹のビーグル
犬にrhEPOが、非常に高用量で(100、500、または3,000 U/kg/dで3ヶ月間)IV投与
され、最高用量群のイヌを除いて、抗体産生は検出されなかった。本試験で使用
した用量よりも高い用量でrhEPOを受けた尿毒症性イヌにおいて、赤血球系形成
不全の発症頻度は、50%に達した(Cowgill、「エリスロポエチン:イヌおよびネ
コの慢性腎不全の治療における使用」、Proceedings Annu. Waltham/OSU Symp T reat Small Anim. Dis. 、15:65-71(1991)、これは本明細書に参照として組入れ
られている)。本発明者らの試験のrhEPO-治療した臨床的に正常なイヌにおいて
遭遇した赤血球系形成不全のより高い頻度(100%:95%信頼区間、63〜100%)は
、本発明者らのビーグルコロニーまたはチャンス観察(chance observation) に
おける免疫原性の問題点に品種または家族の疾病素質を反映し得る。
【0096】 rhEPO-治療した尿毒症イヌにおける赤血球系形成不全の発症時期は、初回治療
後4週間と早いが、典型的には、これは10〜13週間であることが報告されている(
Cowgill、「エリスロポエチン:イヌおよびネコの慢性腎不全の治療における使
用」、Proceedings Annu. Waltham/OSU Symp Treat Small Anim. Dis.、15:65-7
1(1991)、これは本明細書に参照として組入れられている)。本発明者らの試験
のrhEPO-治療した臨床的に正常なイヌにおいて、Hctおよび網状赤血球絶対数の
減少に随伴する骨髄の赤血球系形成不全は、4週間で、イヌ6匹中4匹において証
明され;残りのイヌ2匹は、各々、8および16週間で赤血球系形成不全を発症した
【0097】 薬物投与中断後のrhEPO-誘導した赤血球系形成不全からの回復は、慢性腎不全
のイヌにおいて説明されているが、迅速かつ広範な回復は、幾分病変した腎の適
量のEPOを産生する能力に応じて変動する(Cowgill、「エリスロポエチン:イヌ
およびネコの慢性腎不全の治療における使用」、Proceedings Annu. Waltham/OS U Symp Treat Small Anim. Dis. 、15:65-71(1991);Giger、「エリスロポエチン
および臨床使用」、Compend. Ccntin. Educ. Pract. Vet.、14:25-34(1992);C
owgillら、「尿毒症イヌおよびネコでの組換えヒトエリスロポエチンの臨床試験
および使用」、Proceedings ACVIM Forum、9:147-149(1991)、これらは本明細書
に参照として組入れられている)。本試験の臨床的に正常なイヌにおいて、赤血
球産生は、rhEPO治療停止後5〜11週目(中央値7週目)で回復した。しかし、回復
後、イヌ1は、rhEPO治療を再開しなくとも、赤血球系形成不全を再発した。内因
性EPOの増加によって刺激されるrhEPOに対する抗体の既往性形成は、赤血球系形
成不全を再燃し得るかどうかを推測することは興味深い。
【0098】 rhEPOおよびrcEPOの治療は、最初の2〜3週間の平均Hctおよび絶対網状赤血球
数の増加で示されるように、最初は赤血球産生を刺激した(図6)。しかし、rhEP
O-治療したイヌにおいて、rhEPOに対する抗体の推定される発現およびその結果
の赤血球系形成不全により、平均絶対網状赤血球数は急激に減少し、かつ平均Hc
tは徐々に減少した。およそ16週目の平均絶対網状赤血球数の増加のリバウンド
は、一旦rhEPO治療が中断されたイヌのほとんどにおいて、赤血球系形成不全か
らの回復のシグナルとなる(図6B)。対照的に、rcEPO-治療したイヌにおける平均
Hetは上昇し続け、かつ4週目以降は、参照範囲(39〜57%)を越えた。実際に、7
匹のrcEPO-治療したイヌ中の4匹は、Hctが65%を越えるので、EPO治療頻度の削
減が必要であった(週3回から週1回へ)。rcEPO治療時の平均絶対網状赤血球数が
>60,000細胞/μlおよび持続性赤血球系過形成の骨髄の細胞診所見は、連続して
刺激された赤血球形成を示している。
【0099】 結論として、本試験から収集されたデータは、24週間の治療期間中に、臨床的
に正常なビーグル犬において、rhEPO-治療したイヌで通常認められる赤血球系形
成不全の有害作用を伴うことなく、赤血球産生を刺激することを示している。組
換えcEPOは、イヌにおいて絶対または相対EPO欠損症の治療のために、rhEPOと比
べて改善された選択肢を明らかにしている。
【0100】 本発明は例証を目的として詳細に説明されているが、このような詳細は単にそ
の目的のためであり、当業者は、特許請求の範囲で定義された本発明の精神およ
び範囲を逸脱することなく変更を行うことができることが理解される。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、イヌEPO(「cEPO」)発現プラスミドの構築を示す。4.4kb
Xba I断片内に含まれるcEPO遺伝子は、制限酵素Sgr A1により消化され、翻訳開
始部位の上流のATGが位置した66塩基が除去される。公表されたマウス、サル、
およびヒトのエリスロポエチン配列データの比較により、cEPO翻訳開始および停
止コドンの同一性が推定された。その後、S1ヌクレアーゼで、Sgr A1-Xba I断片
を平滑末端とし、同様の平滑末端を有する真核性発現ベクターpLENのBam H1部位
にライゲーションした。この構築物において、cEPOの構成的転写は、SV4Oエンハ
ンサーおよびヒトメタロチオネインプロモーター配列により起動された。
【図2】 図2は、チャイニーズハムスター卵巣(「CHO」)細胞クローンに
おける安定した状態のcEPO mRNAの比較分析を示す。総RNAは、酸性グアニジンチ
オシアネート−フェノール−クロロホルム抽出により、100個の独立したCHO細胞
クローンから単離し、その後、アルコール分画および塩沈殿した。RNAは、電気
泳動(5μg/レーン)で分離し、ナイロン膜に転移し、かつ順次、イヌエリスロ
ポエチンの32Pで標識したcDNAプローブおよびハウスキーピング遺伝子EFTuによ
りハイブリダイゼーションした。高レベルのcEPO発現を伴うクローンは、EFTuの
発現に対して標準化した安定状態のcEPO mRNAレベルの蛍光体造影装置による定
量(Fujix Bio-imagingおよびMacBASソフトウェア、Fuji (スタンフォード、CT)
により同定した。
【図3】 図3は、rcEPOおよびrhEPO構造のウェスタンブロット解析を示す
。高rcEPOを発現しているCHO細胞クローンの馴化培地(30μl)を、N-グリコシダ
ーゼ(PNGase F、New England Biolabs社、ビバリー、MA)による前処置の無(-)ま
たは有(+)の両方でrhEPOの15ユニットと比較した。試料を、SDS-PAGEによる還元
条件下で電気泳動により分解し、かつニトロセルロース膜に転移した。その後こ
の膜を、エリスロポエチンに対する一次抗体と共にインキュベーションし、市販
の増強された化学発光法(ECLウェスタンブロット検出システム、Amersham社、ア
ーリントンハイツ、IL)を用いて現像した。対照試料は、pLEN-cEPO発現プラスミ
ドでトランスフェクションしていないCHO細胞で馴化した組織培養培地(30μl)
であった。
【図4】 図4Aおよび4Bは、rcEPOによる(図4A−対照またはrcEPO-発現して
いるCHO細胞のいずれかに由来する馴化培地)およびrhEPOによる(図4B−rhEPO(Ep
ogen(登録商標)、Amgen社、サウザンオーク、CA))、赤血球前駆細胞分化の刺
激を示している。髄外赤血球造血は、フェニルヒドラジンが誘導した静脈内溶血
によりマウスにおいて刺激された。その後赤血球前駆細胞は、脾臓から単離され
、かつ漸増する濃度のエリスロポエチンが存在する中で22時間培養した。赤血球
細胞培養物を、インキュベーションの最後の2時間に、0.2μCi 3H-チミジンでパ
ルスした。細胞複製を、新たに合成されたDNAへの3H-チミジン取込みにより評価
した。データ点は、3連で分析した各濃度での平均(±標準偏差)を示す。
【図5】 図5は、rcEPOおよびrhEPOによるマウスにおける網状赤血球増加
症の刺激を示している。正常なC57BL/6Jマウス(およそ8週齢)に、rcEPOまたはrh
EPO(Epogen(登録商標)、Amgen社、サウザンオーク、CA)をPBSを溶媒とし総容
量200μlで、連続3日間皮下注射した。rcEPOユニットの推定量は、インビトロ生
体活性およびウェスタンブロット解析を基にした。対照マウスは、トランスフェ
クションされていないCHO細胞により馴化された培養培地を注射した。3回目の注
射後1日目に、マウスを屠殺し、末梢血をEDTA-含有管に収集した。血液試料中の
網状赤血球の割合を、蛍光色素チアゾールオレンジ(Retic-COUNT、Bectin-Dicki
nson社)を用いて、10,000細胞のフローサイトメトリー分析により決定した。各
群は、4匹のマウスの平均網状赤血球数(±標準偏差)を示す。異なる文字は、治
療群間のp<O.O5を示している。
【図6】 図6Aおよび6Bは、正常なビーグル犬における、ヒトまたはイヌの
組換えエリスロポエチンに対するヘマトクリットおよび網状赤血球の反応を示し
ている。最初の4週間、両方のイヌは、希釈液で治療した。4週目に、rhEPO(図6A
)またはrcEPO(図6B)のいずれかの皮下投与を、用量100ユニット/kgの週3回で開
始した。ヘマトクリット値(黒四角)および網状赤血球値(白丸)の週毎の変化を図
示した。
【図7】 図7Aおよび7Bは、正常なビーグル犬における、ヒトまたはイヌの
組換えエリスロポエチンに対するヘマトクリット(図7A)および網状赤血球(図7B)
の反応のデータを示している。最初の4週間、両群のイヌは、希釈液で治療を受
けた。4週目に、rcEPO(黒四角、n=7)またはrhEPO(白丸、n=6)のいずれかの皮下
投与を、用量100ユニット/kgの週3回で開始した。ヘマトクリット値および網状
赤血球値の週毎の変化を図示している。赤血球系形成不全の発症のために、全て
のrhEPO-治療イヌにおいて実験期間中は、治療を停止した。rcEPOの投与頻度は
、ヘマトクリット値が65%以上上昇したために、一部のイヌにおいては減らした
【図8】 図8は、組換えcEPOが、イヌをrhEPO-誘発性赤血球系形成不全か
ら救済することを示している。ヘマトクリットを経時的にプロットした。およそ
12週間、rhEPOをイヌに週3回投与し、その後12週間は、rcEPOを再度週3回投与し
た。

Claims (33)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イヌのエリスロポエチンをコードしている単離核酸分子。
  2. 【請求項2】 ストリンジェントな条件下で配列番号:1のヌクレオチド配
    列を有する核酸分子にはハイブリダイズするが、同一条件下でヒトエリスロポエ
    チンをコードしている核酸分子にはハイブリダイズしない、トランスフェクショ
    ンされた細胞において発現可能である、請求項1記載の核酸分子。
  3. 【請求項3】 配列番号:3のアミノ酸をコードしている 、請求項1記載
    の核酸分子。
  4. 【請求項4】 配列番号:1のヌクレオチド配列を含む、請求項3記載の核
    酸分子。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の核酸分子を含む発現ベクターであって、該核
    酸が該発現ベクターに対して外来性である、ベクター。
  6. 【請求項6】 発現ベクターがpLENである、請求項5記載の発現ベクター。
  7. 【請求項7】 核酸分子が、適当なセンス方向でかつ正しい読み枠で発現ベ
    クターに挿入される、請求項5記載の発現ベクター。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の単離核酸分子を含む宿主細胞であって、該核
    酸分子が該宿主細胞に対して外来性である、宿主細胞。
  9. 【請求項9】 請求項5記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
  10. 【請求項10】 哺乳類宿主細胞である、請求項9記載の宿主細胞。
  11. 【請求項11】 哺乳類宿主細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞である、
    請求項10記載の宿主細胞。
  12. 【請求項12】 単離されたイヌのエリスロポエチンタンパク質またはポリペ
    プチド。
  13. 【請求項13】 骨髄細胞に網状赤血球および赤血球の産生の増大を惹起する
    生物学的特性を有し、かつイヌにおいて免疫応答を惹起しない免疫学的特性を有
    する、、十分に同等なイヌエリスロポエチンである、請求項12記載のタンパク質
    またはポリペプチド。
  14. 【請求項14】 配列番号:3のアミノ酸配列を有する、請求項12記載のタン
    パク質またはポリペプチド。
  15. 【請求項15】 請求項14記載のタンパク質またはポリペプチド、および薬学
    的に許容できる希釈剤、補助剤または担体を含有する、薬学的組成物。
  16. 【請求項16】 イヌに請求項15記載の薬学的組成物を有効量投与することを
    含む、イヌにエリスロポエチン治療を提供する方法。
  17. 【請求項17】 ネコに請求項15記載の薬学的組成物を有効量投与することを
    含む、ネコにエリスロポエチン治療を提供する方法。
  18. 【請求項18】 エリスロポエチン治療が必要なイヌに、組換えイヌエリスロ
    ポエチンを、該イヌにおいて網状赤血球および赤血球の産生を増大するのに十分
    な量投与することを含む、イヌにエリスロポエチン治療を提供する方法。
  19. 【請求項19】 イヌが貧血に罹患している、請求項18記載の方法。
  20. 【請求項20】 イヌが慢性または急性腎不全に罹患している、請求項18記載
    の方法。
  21. 【請求項21】 イヌが、ノルウェジアンエルクハウンド、コッカスパニエル
    、サモエード、ドーベルマンピンシェル、ラサアプソ、シーズー、およびゴール
    デンレトリバーからなる品種より選択される、請求項20記載の方法。
  22. 【請求項22】 イヌが癌を有する、請求項18記載の方法。
  23. 【請求項23】 癌がリンパ肉腫である、請求項22記載の方法。
  24. 【請求項24】 イヌが、ボクサー、バセットハウンド、セントバーナード、
    スコティッシュテリア、エアデールテリア、イングリッシュブルドッグ、および
    ラブラドールレトリバーからなる品種より選択される、請求項23記載の方法。
  25. 【請求項25】 イヌが赤血球生成不全に罹患している、請求項18記載の方法
  26. 【請求項26】 イヌが、手術を受ける前に、組換えイヌエリスロポエチンを
    投与される、請求項18記載の方法。
  27. 【請求項27】 エリスロポエチン治療が必要なネコに、組換えイヌエリスロ
    ポエチンを、該ネコにおいて網状赤血球および赤血球の産生を増大するのに十分
    な量投与することを含む、ネコにエリスロポエチン治療を提供する方法。
  28. 【請求項28】 ネコが貧血に罹患している、請求項27記載の方法。
  29. 【請求項29】 ネコが慢性または急性腎不全に罹患している、請求項27記載
    の方法。
  30. 【請求項30】 ネコが癌を有する、請求項27記載の方法。
  31. 【請求項31】 癌がリンパ肉腫である、請求項30記載の方法。
  32. 【請求項32】 ネコが、組換えヒトエリスロポエチンに誘発される赤血球生
    成不全に罹患している、請求項27記載の方法。
  33. 【請求項33】 ネコが、手術を受ける前に、組換えイヌエリスロポエチンを
    投与される、請求項27記載の方法。
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