【発明の詳細な説明】
イオンチャンネルモジュレーターである
4-アリール-3-ヒドロキシキノリン-2-オン誘導体
発明の技術分野
本発明は、高コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(BK)チヤンネルのモジ
ュレーターであり、従ってニューロン細胞の保護及び細胞性膜分極化及びコンダ
クタンスの機能不全により生じる疾病に有効である新規な4-アリール-3-ヒドロ
キシキノリン-2-オン誘導体に関する。
発明の背景
カリウムチャンネルは細胞膜電位の制御及び細胞興奮性の調節において重要な
役割を果たしている。カリウムチャンネルは電圧、細胞代謝、カルシウム及び受
容体媒介プロセスにより主として制御される(Cook,N.S.,Trends in Pharmacol .Sciences
(1988)9,p21;及びQuast,U.,Trends in Pharmacol.Sciences(1989
),10,p.431)。カルシウム活性化カリウム(KCa)チャンネルは活性に関して細胞
内カルシウムイオン依存性を共有する別種のグループのイオンチャンネルである
。KCaチャンネルの活性は細胞内[Ca2+]、膜電位及びリン酸化により調節される
。対称K+溶液(symmetrical K+solutions)におけるこれらの単一チャンネルコン
ダクタンスに基づいて、KCaチャンネルは三つのサブクラスに分けられる:高コン
ダクタンス(BK)>150pS;中間コンダクタンス50-150pS;低コンダクタンス<50pS。
高コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(Maxi-K又はBK)チャンネルは、ニュ
ーロン、心細胞及び様々な型の平滑筋細胞を含む多数の興奮性細胞内に存在する
[Singcr,J.
(Suppl.1),S168;and Ahmed,F.et al.,Br.J.Pharmacol.(1984)83,p.227]
カリウムイオンは、最も興奮性の細胞における静止膜電位の調節及び約90mVの
K+平衡電位(Ek)付近の膜貫通電位の保持において主要な役割を果たす。カリウ
ムチャンネルの開口により、細胞膜電位が平衡カリウム膜電位(Ek)へシフトし、
細胞の過分極を起こすことが明らかになっている[Cook,N.S.,Trends in Pharma col. Sciences
(1988),9,p21]。過分極した細胞は、有害である可能性のある脱分極刺
激に対して減少した応答を示す。電位及び細胞内Ca2+により調節されたBKチャン
ネルは脱分極及びカルシウムの流入を制限するように作用し、有害な刺激を遮断
するのに特に有効であろう。そのため、BKチャンネルの開口を介した細胞過分極
は虚血状態において神経細胞を保護すると考えられる。
一連のBK開口活性を有する合成及び天然産生化合物が報告されている。カラス
ムギ-通常のオート麦から抽出されたアビナピロン(avena pyrone)が、脂質二層
法を用いてBKチャンネルオープナーとして同定された[International Patentapp
lication WO93/08800,公開日1993年5月13日]。6-ブロモ-8-(メチルアミノ)イミ
ダゾ[1,2-a]ピラジン-2-カルボニトリル(SCA-40)は、特定の電気生理学的実験に
基づいてBKチャンネルオープナーとして記載されている[Laurent,F.et al.,B r.J.Pharmacol
.(1993)108,p.622-626]。フラボノイドであるフロレチンは、アウ
トサイド-アウト(outside-out)パッチを使用して、Xenopus laevis(ツメガエル
の一種)の髄鞘を有する神経繊維におけるCa2+-活性化カリウムチャンネルの開確
率に影響を与えることが見いだされた[Koh,D-S.,et al.,Neuroscience Lett.
(1994)165,p.167-170]
1992年1月4日に公開された欧州特許出願EP-477819及び1993年4月6日に特許さ
れた対応米国特許第5,200,422号(Olesen et al)には、多数のベンズイミダゾー
ル誘導体が単一チャンネル及び大動脈平滑筋細胞における全細胞パッチクランプ
実験を用いたBKチャンネルのオープナーとして開示されている。OlesenらによりEuropean J.Pharmacol
.,251,53-59(1994)にさらなる研究が報告されている。
1996年10月15日に特許された米国特許第5,565,483号(P.Hewawasam et al)には
BKチャンネルのオープナーである多数の置換オキシインドール類が記載されてい
る。
A.Walserらは、J.Org,Chem.,38,449-456(1973)にエポキサイド中間体の開環
の際に形成された複生成物である限定された数の3-ヒドロキシキノリノンを開示
している。
Y.S.MohammedらはPharmazie,40,312-314(1985)に一連の4-置換-3-ヒドロキ
シ-2-キノロン類を天然物ビリジカチン(viridicatin)の類似体として記載してい
る。メ
ルクインデックス(11thEdition),1575(1989)にはこの抗生物質であるビリジカ
チンについて簡単な要約が記載されている。
M.S.MasoudらはSpectroscoppy Letters, 21(6),369-383(1988)に、いくつか
の液体の2-キノロン類のスペクトルについて記載しており、またSynth.React.In org.Met.-Org.Chem.
,17,(8&9),881-899(1987)には、この2-キノロン類の金属
複合体の平衡及び安定性について述べている。
本発明の目的は、カリウムチャンネル、特に神経細胞の障害を減少させるのに
有効な高コンダクタンスカルシウム活性化カリウム(BK)チャンネルを調節する新
規な化合物を提供することである。
本発明の要約
本発明は、Maxi-K又はBKチャンネルとしても既知である高コンダクタンスカル
シウム活性化K+チャンネルのオープナーである、以下の一般式を有する新規な4-
アリール-3-ヒドロキシキノリン-2-オン誘導体又はその非毒性の薬学的に許容さ
れる塩を提供する。
(式中、R、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は以下に定義する通りである。)
本発明はまた上記キノリン-2-オン誘導体を含む医薬組成物、及び虚血、痙攣、
喘息、刺激性腸症候群、偏頭痛、外傷性脳障害及び失禁のようなカリウムチャン
ネル開口活性感受性疾患の治療方法を提供する。
本発明の詳細な説明
本発明は、高コンダクタンス、カルシウム活性化K+チャンネル(BKチャンネル)
の強力なオープナーであり、かつ以下の式(又はその非毒性で薬学的に許容され
る塩)で表わされる、新規な4-アリール-3-ヒドロキシキノリン-2-オン誘導体を
提供する。
式中、
Rは、水素又はメチルであり;
R1、R2、R3及びR4は各々独立に、水素、ブロモ、クロロ又はトリフルオロメチル
であり、かつR1、R3及びR4が水素である場合には、R2はニトロであり;
R5は水素又はメチルであり;及び
R6はブロモ又はクロロである。
本発明はまたBKチャンネルに関連する疾患、特に虚血、痙攣、喘息、刺激性腸
症候群、偏頭痛、外傷性脳障害及び失禁の治療又は軽減方法を提供し、この方法
は、治療学的に有効量の式Iの化合物又はその非毒性で薬学的に許容される塩を
慣用される補助剤、担体又は希釈剤と共に投与することを含む。
用語“非毒性で薬学的に許容される塩”は詳細な説明及び請求の範囲におい
て、非毒性な、無機塩基を含む塩基付加塩を含むことを意味する。アルカリ及び
アルカリ土類金属塩基のような適する無機塩基としては、ナトリウム、カリウム
、マグネシウム、カルシウム等の金属性カチオンが挙げられる。
本発明の特定の化合物は非溶媒和形態であってもよく、また一水和物、二水和
物、半水和物、三水和物、四水和物等のような水和物形態を含む溶媒和形態でと
しても存在することができる。生成物は真正な溶媒和物であってもよく、他のケ
ースにおいて、生成物は単に付随的に溶媒を含むものであってもよく、又は溶
媒和と溶媒の付随物との混合物であってもよい。溶媒和形態が非溶媒和形態と等
価であり、両者とも本発明の観点に包含されるものであることは当業者らにより
理解されるべきである。
本発明の方法において、用語“治療学的有効量”とは、有効に患者の益となる
のに十分な、すなわち、高コンダクタンスカルシウム活性化K+チャンネルのオー
プナーにより特徴付けられる急性症状の治療又はそのような症状の治癒率の上昇
に十分な、組成物の各活性成分の合計量を意味する。単独投与された個々の活性
な成分について言う場合には、用語は成分単独の量を意味する。コンビネーショ
ンについて言う場合には、コンビネーション、連続又は同時投与に関わらず、治
療効果を得ることができる活性成分を組み合わせた量を意味する。用語“治療(
する)、処置(する)”は詳細な説明及び請求の範囲において、細胞性膜分極化
及びコンダクタンスの機能障害に伴う疾病、組織障害及び/又は症状を防ぐこと
又は改善することを意味する。
式Iの化合物は実施例、スキーム及び当業者らに明らかなこれらの変法に示さ
れるような様々な方法により製造されてもよい。様々な式Iのキノリン-2-オン
誘導体は一般によく知られているイサチン中間体から有利に製造されてもよい。
また一般的製造方法は反応スキーム1に示されている。
式IIIのイサチン中間体の製造方法においては、一般に知られ、十分に確立さ
れた多数の方法を用いてもよく、例えばそのような例としてSandmeyer,T.,Hel v.Chim.Acta
,2,234(1919);Stolle,R.,J.Prakt.Chem.,105,137(1922);及び
Gassman,P.,et al.,J.Org.Chem.,42,1344(1977)に記載されたものが挙げられる
。しかし、適宜置換された式IVのアニリンから出発した式IIIのイサチンのより
好ましい製造方法は、Hewawasam,P.,et al.,Tetrahedron Lett.,35,7303(1994)
に概ね記載されており、反応スキーム1に示されている。この方法は芳香環に結
合した置換基の電子的性質には非感受性であり、かつ予想可能な位置化学的(reg
iochemical)制御に特徴を有する。
反応スキーム1 式Vのアニリン化合物のアミノ基がN-ピバロイル及びN-(tert-ブトキシカルボ
ニル)保護基等により適当に保護されている場合には、オルト位が直接メタレー
シヨン(金属置換)を受けることは当業者らに理解されるところである。ジアニ
オンが一度形成されたならば、-78℃のような低温下での約1.2当量のジエチルオ
キサレートとの反応により、アニリン誘導体の保護アミノ基のオルト位にα-ケ
トエステル基を導入して式VIの化合物を製造してもよい。保護基の除去とその後
の自然発生的な閉環により式IIIのイサチンが有利に得られる。反応スキーム1の
プロセスをさらに詳細に述べると、N-ピバロイルアニリン又はN-(tert-ブトキシ
カルボニル)アニリンのジアニオンは、約2.2〜2.4倍過剰の様々なブチルリチウ
ム試薬(例えばn-ブチル、s-ブチル及びt-ブチルリチウム試薬)を用いてTHF中で
約0〜-40℃で2〜7時間反応させることにより有利に発生される。
典型的な手順では、ニートな乾燥ジエチルオキサレート(1.2当量)を-78℃にて
窒素雰囲気下で攪拌するジアニオン溶液に添加した。30〜45分間攪拌後、反応を
1N HClでクエンチし、ジエチルエーテルで希釈して式VIの化合物を得た。中間体
である式VIのα-ケトエステルを、キャラクタリゼーションの目的で精製しても
よいが、この工程は必須ではなく、粗生成物を有利に脱保護してイサチンを良好
な全収率で得ることができる。N-(tcrt-ブトキシカルボニル)又はピバロイル基
の脱保護を3N HCl/THF又は12N HCl/DMEを用いて還流温度でそれぞれ行ってもよ
い。揮発性溶媒を蒸発させると、イサチンが一般に水溶性残さから沈殿し、濾過
により単離される。
上記反応スキーム1の記載又は周知の文献記載の方法により製造した、式IIIの
イサチンを、反応スキーム2に示されるように式Ia及びIbの4-アリール-3-ヒド
ロキシキノリン-2-オンに変換した。
式Iaの化合物の製造方法において、式IVのヒドラゾンを式IIIの相当するイサ
チンと縮合して式Ia及びIIのキノリンの位置異性体混合物を得る。式IVのヒド
ラゾンを相当する容易に得られる置換ベンズアルデヒドから有利に製造した。縮
合反応はメタノール、エタノール及び2-プロパノールのようなC1-4アルコール溶
媒中でナトリウムメトキシドのような低級アルキノールの土類金属塩から誘導さ
れた塩基存在下において行われる。反応は室温より高い温度で有利に行われ、約
65-100℃で約3〜12時間行うことが好ましい。得られた式Ia及びIIの異性体混合
物を酢酸エチル中に懸濁し、加熱し、及び濾過する。通常、より溶解性が低く、
かつ多くの場合において不必要な式IIのキノリノン位置異性体を濾過により除去
する。不必要な異性体の分離及び連続除去は、1H NMRにより確認した。多くのケ
ースにおいて不必要な異性体の分離及び除去は完全に行える。しかし、分離が完
全ではない場合、酢酸中に固体混合物を再懸濁させて不溶物を除去することが好
ましい。このプロセスは必要な場合には、単一異性体が得られるまで数回繰り返
すことができる。
又は、式Iaのキノリノンの製造を、相当する式III(Raは-CH2OCH3又はCH3)の
イサチン及び式IVのヒドラゾンから行ってもよい。反応スキーム2に示される縮
合反応プロセスにおいてRaの保護(ブロッキング)基としてメトキシメチル基を使
用すると、目的の式Iaの位置異性体をより多く得ることができ、有利である。
式Iaのメチルエーテル基を、CH2Cl2中で-78〜0℃において注意深く制御した
条件下でBBr3によりデメチル化を行い、式Ibの目的のフェノールを得た。反応
は0℃より高い温度に上昇させないことが好ましい。デメチル化が終了した後、
反応をクエンチして式Ibの4-アリール-3-ヒドロキシキノリン-2-オンを得た。
反応スキーム2 式Ia及びIIの位置異性体のプロトンNMRスペクトルにおいて観測される差異の
他、目的の式Ia及びIbの位置異性体化合物の絶対構造を、単結晶X線解析によ
り証明及び確認を行った。一般に、式Ia及びIbの化合物のDMSO-d6中における1
H NMRスペクトルはプロトンスペクトルにおける特定の特徴的な化学シフト
ピークを示し、これは式IIの不必要な位置異性体からこれらの生成物を識別させ
た。3-OHピークの化学シフトは約9.5〜9.8ppmに観測され、またNHピークは約12.
2〜12.6ppmに観測された。一方、式IIの位置異性体において、一般に4-OHピーク
の化学シフトは約10-10.5ppmに、またNHピークは約11.5〜11.8ppmに示された。
本発明の好ましい実施態様において、式Iの化合物は以下の式又はその非毒性
な薬学的に許容される塩を有する。
式中、Rは水素であり、R1、R2、R3及びR4は各々独立に水素、ブロモ、クロロ又
はトリフルオロメチルであり、かつR1、R3及びR4が水素である場合には、R2はニ
トロである。
他の態様において、本発明は高コンダクタンスカルシウム活性化K+チャンネル
(BKチャンネル)の開口により仲介される疾患のその治療が必要な哺乳類における
治療方法又は予防方法を提供し、前記方法は式Iの化合物又はその非毒性な薬学
的に許容される塩の治療学的に有効量を前記哺乳類に投与することを含む。好ま
しくは式Iの化合物は、虚血、痙攣、喘息、刺激性腸症候群、偏頭痛、外傷性脳
障害及び失禁並びに他のBKチャンネル活性化活性に感受性の疾患の治療に有用で
ある。
さらに他の態様において、本発明は少なくとも一つの式Iの化合物を、医薬的
な補助剤、担体又は希釈剤と共に含む医薬組成物を提供する。生物学的活性
カリウム(K+)チャンネルは構造的及び機能的に、細胞に偏在するK+-選択的チ
ャンネルタンパク質の異なるファミリーであり、多数の鍵細胞機能の制御におけ
る重要性を示している[Rudy,B.,Neuroscience,25:729-749(1988)]。一つのク
ラスとして広範囲に分布しているが、K+チャンネルはこのクラスの個々のメンバ
ーとして又はファミリーとして差動的に(differentially)分布している[Gehlert
,D.R.,et al.,Neuroscience,52:191-205(1993)]。一般に、細胞内、特にニ
ューロンや筋細胞のような興奮性細胞のK+チャンネルの活性化は、細胞膜の過分
極を導くか、又は脱分極した細胞の場合には再分極を起こす。内在性膜電位固定
として作用する他に、K+チャンネルはATPの細胞内濃度又はカルシウム(Ca2+)濃
度の変化のような重要な細胞性現象に対して応答することができる。多数の細胞
機能調節におけるK+チャンネルの主要な役割は、これらを特に治療学的開発にお
いて重要なものに位置づけている(Cook,N.S.,Potassium Channels:Structure
,classification,function and therapeutic potential,Ellis Horwood
,Chinchester(1990))。K+チャンネルの一クラスである、高コンダクタンスCa2+
-活性化K+チャンネル(Maxi-K又はBKチャンネル)は膜貫通電位、細胞内Ca2+及び
チャンネルタンパク質のホスホリル化状態のような様々な他の因子により調節さ
れている。(Latorre,R.,et al.,Ann .Rev.Physiol.,51:385-399(1989))。
大きく、単一なチャンネルコンダクタンス(一般に>150pS)及びBKチャンネルのK+
に対する高い特異性は、少数のチャンネルが膜コンダクタンス及び細胞興奮性に
深く影響し得ることを示している。さらに、細胞内Ca2+の増加に伴う開確率の増
加は分泌及び筋肉収縮のようなCa2+依存性の現象の調節におけるBKチャンネルの
関係を示している[Asano,M.,et al.,J .Pharmacol.Exp.Ther.,267:1277-1
285(1993)]。
BKチャンネルのオープナーはこれらのチャンネルの開確率を増加させることに
より細胞性効果を発揮する[Mckay,M.C.,et al.,J.Neurophysiol.,71:1873-1
882(1994);及びOlesen,S.-P.,Exp.Opin.Invest.Drugs,3:1181-1188(1994)]。
この個々のBKチャンネルの開口における増加は集約的に全細胞BK仲介コンダクタ
ンスにおける顕著な増加により起こる細胞膜(特に脱分極化細胞において)の過分
極という結果を生じる。
本発明において記載される化合物の、BKチャンネルを開口し、かつ全細胞外部
(K+)BK-仲介電流を増加させる能力は、電位固定条件下に、ツメガエルの卵母
細胞において非相同的に発現されたクローン化哺乳類(mSlo又はhSlo)BK-仲介外
部電流を増加させる能力を測定することにより評価した[Butler,A.,et al.,S cience
,261:221-224(1993);及びDworetzky,S.I.,et al.,Mol .Brain Res.,
27:189-193(1994)]。使用した二種のBK構築物は、構造的にほぼ同じ相同性タン
パク質に相当し、かつ我々の試験において薬理学的に同等であることが判明した
。天然の電流(バックグラウンド、非-BK)からBK電流を単離するには、特異的か
つ強力なBKチャンネル-遮断毒素イベリオトキシン(IBTX)[Galvez,A.,et al.,J.Biol.Chem
,265:11083-11090(1990)]を過最大濃度(50nM)において用いた。全
外部電流に対するBKチャンネル電流の相対的寄与は、IBTX(非-BK電流)の存在下
において残留する電流を他の全ての実験条件(コントロール、ドラッグ及びウオ
ッシュ(wash))において得られる電流特性から減ずることにより決定された。試
験濃度において、特性決定された(profiled)化合物は、卵母細胞における非-BK
天然電流に影響を与えないことが測定された。全ての化合物を少なくとも5卵母
細胞において試験を行い、かつ20μMの単一濃度について報告されている;選択さ
れた式1の化合物のBK電流に対する効果をコントロールIBTX-感受性電流のパー
セントとして表現し、表1に示した。記録は、標準二電極電位固定技術[Stuhmer
,W.,et al.,Methods in Enzymology,Vol.207:319-339(1992)];20mVステッ
プにおける-60mV〜+140mVの保持電位からの500-750ms持続期間ステップ脱分極か
らなる電位固定プロトコールを用いて行った。実験媒体(改良Barth溶液)は(mM)
、NaCl(88)、NaHCO3(2.4)、KCl(1.0)、HEPES(10)、MgSO4(0.82)、Ca(NO3)2(0.33
)、CaCl2(0.41);PH7.5から構成されるものであった。
表1
BK チャンネルに対する選択化合物の効果 *コントロールのパーセントとして表わされている、20μMにおける値
+=100-150%
++=>150%
上記生物学的試験の結果は、本発明の化合物は高コンダクタンスカルシウム活
性化K+チャンネル(Maxi-K又はBKチャンネル)の活性なオープナーであることを示
している。従って、本発明の化合物は細胞膜分極及びコンダクタンスの機能障害
から生じるヒトの疾患の治療に有効であり、好ましくは虚血、痙攣、喘息、刺激
性腸症候群、偏頭痛、外傷性脳障害及び失禁並びに他のBKチャンネル活性化活性
に感受性の疾患の治療に有効である。
他の態様において、本発明は少なくとも一つの式Iの化合物を、薬学的な補助
剤、担体又は希釈剤と共に含む医薬組成物が挙げられる。
さらに他の態様として、本発明は治療が必要な哺乳類におけるカリウムチャン
ネルの開口応答性疾患の治療及び予防方法に関し、この方法は前記哺乳類に治療
学的に有効量の式Iの化合物又はその非毒性な薬学的に許容される塩を投与する
ことを含む。抗菌活性
本発明の代表的な番号の化合物のインビトロ抗菌活性を二倍寒天希釈法により
測定した。次の試験微生物に対する活性を評価した。
Staphylococcus aureus/Pen.- A9537
Staphylococcus aureus/Pen.+ A9606
Staphylococcus epidermidis A24548
Micrococcus luteus A9852
Micrococcus luteus A21349
Bacillus subtilis A9506A
実施例2、3、4、6、8、9、10、11及び12の代表的な化合物を使用した結果は、
MIC値が0.5〜32μg/mlの範囲で非常に良好な阻害活性を示し、またグラム陰性試
験生物に対しては主として1〜2μg/mlレベルを示した。
一般式Iの新規キノリノン又はその薬学的に許容される塩は様々なグラム陰性
細菌に対して活性であり、また例えば、生育促進のための動物の飼料添加物、食
物の保存剤、工業的適用における殺菌剤(例えば水性ペイント及び製紙工場の白
濁水(white water)において有害な細菌の生育を抑制する)、並びに医科及び歯科
用器具上の有害な細菌の生育を阻害又は破壊するための消毒剤として使用しても
よい。しかし、これらはグラム陽性細菌による動物の感染性疾患の治療において
も有効である。
抗生剤を含む医薬組成物に関して、担体及び他の成分はその抗生剤の治療学的
効果を減じないようなものであるべきである。適する投与形態は感染症を起こす
細菌の生育を阻害するための有効量を含み、また治療される哺乳類の年齢及び体
重、投与経路及び治療される感染症状の型及び重度並びに手当てをする医師又は
獣医師により容易に評価される他の因子に依存する。
治療的使用では、薬学的に活性な式Iの化合物は通常、必須活性成分として少
なくとも一種のそのような化合物を、固体又は液体の薬学的に許容される担体と
共に含み、及び任意に標準的でありかつ従来の技術を用いた薬学的に許容される
補助剤及び賦形剤を含む。
医薬組成物としては、経口、非経口(皮下、筋内、皮内、及び静脈内を含む)、
気管支又は鼻腔投与に適する投与形態を含む。従って、もし固形キャリアーを使
用した場合には、製剤はタブレット、粉末又はペレット形態の硬カプセル、又は
トローチ又はロゼンジ(トローチ剤)の形態であってもよい。固形キャリアーは結
合剤、充填剤、タブレット滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤等を含んでもよい。タブレッ
トは、必要な場合には、従来の方法によりフィルムコーティングを行ってもよい
。もし、液体キャリアーを使用する場合には、製剤はシロップ、懸濁剤、軟カプ
セル、注射用滅菌ビヒクル、水性又は非水性液体懸濁剤、又は使用前に水又は他
の適するビヒクルにより再構築する乾燥生成物が挙げられる。液体製剤は、懸濁
剤、乳化剤、湿潤剤、非水性ビヒクル(食用油を含む)、保存剤及びフレーバー及
び/又は着色剤のような従来の添加剤を含んでもよい。非経口投与では、ビヒク
ルは食塩水、グルコース溶液等を用いてもよいが、通常少なくとも大部分は滅菌
水を含む。また注射可能な懸濁液を用いてもよく、その場合には従来の懸濁剤を
用いてもよい。従来の保存剤、バッファー剤等を非経口投与形態に添加してもよ
い。特に有用なのは、非経口投与形態の式1の化合物の直接投与である。活性成
分(すなわち本発明の式1の化合物)の適量を含む目的の製剤に適する従来の技術
により、医薬組成物が調製される。例えば、Remington's Pharmaceutical Scien ces
,Mark Publishing Company,Easton,PA,17th edition,1985.
治療効果を達成するための式1の化合物の投与量は、患者の年齢、体重及び性
別及び投与形式のような因子のみではなく、目的のカリウムチャンネル活性化活
性度及び関連する疾病の特定の障害に使用される個々の化合物の効力に依存する
。また、個々の化合物の治療及び投与は、単位投与形態で投与されてもよく、及
びこの単位投与形態は活性の相対レベルを反映して当業者により調節される。
使用する個々の投与量の決定(及び一日の投与回数)は、医者の判断において行わ
れ、目的の治療効果を得るために本発明の個々の条件での投与量の滴定により変
化してもよい。
本明細書に述べた疾病に罹患した、又は罹患可能性のあるヒトを含む哺乳類に
対する式1の化合物又はその医薬組成物の適する投与量は、活性成分の量として
体重当り約0.1μg/kg〜100mg/kgである。非経口投与の場合、静脈注射投与にお
いて投与量は体重当り1μg/kg〜10mg/kgの範囲内であってもよい。好ましくは、
活性成分を等量づつ1日に1〜4回投与する。しかし、通常は少量を投与し、治療
を受ける患者の最適投与量が決定されるまで投与量を徐々に増加させる。ヒトの
感染症の治療のための適する投与量は好ましくは70kgの成人に対して活性成分が
約100mg〜約1000mgの範囲であり、感染症の症状及び特に投与回数及び経路に依
存する。
しかし、実際に投与される化合物量は、治療を受ける状態、投与される化合物
の選択、投与ルートの選択、個々の患者の年齢、体重及び応答及び患者の症状の
重度を含む関連した状況に基づいて医者により決定されることを理解すべきであ
る。
以下の実施例は、例示のために挙げられているものであって、本発明を制限す
るものとして用いられるものではなく、本発明の精神の範囲内において多数の本
発明のバリエーションが可能である。
実施態様の記載
以下の実施例において、全ての温度はセ氏で表わされている。融点はGallenka
mpキャピラリー融点装置で測定した(温度は補正していない)。プロトン磁気共鳴
(1H NMR)及びカーボン磁気共鳴(13C NMR)をブルーカーAC30Oにて測定した。全て
のスペクトルを示した溶媒中で測定し、ケミカルシフトを内部標準テトラメチル
シラン(TMS)からのダウンフィールドをδ単位で表わし、プロトン間のカップリ
ングコンスタントをヘルツ(Hz)で示した。開裂パターンは以下のように表わされ
ている;一重線(s)、二重線(d)、三重線(t)、四重線(q)、多重線(m)、ブロード(
br)、ダブルダブレット(dd)、ブロード二重線(bd)、ダブルトリプレット(dt)、
ブロード
一重線(bs)、ダブルカルテット(dq)。臭化カリウム(KBr)を用いた赤外(IR)スペ
クトルはPerkin Elmer 781スペクトルメーターにより、4000cm-1〜400cm-1につ
いて測定し、ポリスチレンフィルムの1601cm-1の吸収に較正を行った(cm-1)。紫
外線スペクトルをRobertson Microlit Laboratories,Inc.により、示した溶媒
中で測定した。低分解能マススペクトル(MS)及び見かけの分子(MW+)をFinncgan
TSQ7000により測定した。元素分析は重量%で報告されている。
以下の実施例1〜3は中間体の製造方法及び本発明の生成物の製造方法を示す。
物質及び方法の変形を行うことにより、ここに記載される他の化合物の製造を行
えることは当業者に明らかであり、これらは本発明の範囲内である。
製造方法1 式IIIの化合物(Ra=CH2OCH3)の一般的製造方法
水素化ナトリウム(850mg,60%ミネラルオイル中,22mmol)をヘキサン(2×5ml)で
洗浄し、次にDMF(25ml)を添加して懸濁液の温度を0〜5℃に維持した。式IIIのイ
サチン試薬(Ra=H)(20mmol)をNaH/DMF懸濁液に少量づつ添加し、得られた暗色の
溶液を20分間攪拌した。ブロモメチルメチルエーテル(22mmol,1.1当量)をプラス
チックシリンジを用いて一度に添加し、反応混合物を室温で16時間攪拌した。粗
生混合物を水(250ml)中にあけ、沈殿した生成物を濾過により集め、洗浄及び乾
燥を行って式IIIの化合物(Ra=CH2OCH3)を得た。
製造方法2 式Iaの化合物(Ra=H,CH3,又は-CH2OCH3)の一般的製造方法
式IIIのイサチン(309mmol)、式IVの化合物(30mmol)及びNaOMe(1.0M MeOH溶液9
0ml、3当量)のMeOH(150ml)溶液混合物を3〜12時間加熱還流した。TLCが完全な変
換を示した時、反応混合物を室温に冷却し、攪拌下0.5N HCl溶液(500ml)に添加
した。酸性化した混合物から沈殿した生成物を濾過により集め、水(3×50ml)で
洗浄し、減圧下乾燥して式Ia及びIIの化合物の混合物を得た。固体混合物を酢
酸エチル(100ml)に懸濁し、約20分間加熱還流した。室温に冷却後、混合物を濾
過して目的ではない式IIの生成物を除去した。濾液を留去して乾燥し、残さを酢
酸エチル及びヘキサン(1:4)の混合溶媒(100ml)中に懸濁して、約10分間攪拌
した後、濾過及び乾燥を行って式Iaの化合物を得た。混合物において目的のIa
の化合物の比が高い場合には、酢酸エチル懸濁液の濾過により目的式Iaの生成
物が得られる。その他の場合には、式Iaの化合物は混合物のフラッシュカラム
クロマトグラフィーにより得ることができる(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン
:10-30%)。
製造方法3 式Ibの一般的製造方法
式Iaのメチルエーテル(6mmol)のメチレンクロリド懸濁液へ、30mlのBBr3溶液
(1.0M,CH2Cl2,5.0当量)を-78℃にて添加すると反応が均一になった。この溶液を
-78℃にて約3時間攪拌し、浴を除去し、攪拌をさらに20時間室温で継続した。
水(0.5ml)を添加し、反応液を10分間攪拌した。溶媒を減圧下濃縮し、固体残さ
を得て、これを100mlの水に懸濁し、5〜10分間超音波をかけ、次に10分間攪拌、
濾過、水による洗浄(3×30ml)及び乾燥を行って式Ibの化合物をほぼ定量的に得
た。
実施例1 5,7 −ジクロロ-4-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2(1H)-キノリ ノン、及びその位置異性体、5,7-ジクロロ-3-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-4 -ヒドロキシ-2(1H)-キノリノン
4,6−ジクロロ-IH−インドール-2,3−ジオン(6.48g,0.03mol)、5-クロロ-2-
メトキシ-[N-(4-メチルフェニル)ヒドラゾノメチル]フェニル(10.65g,0.0315mo
l,1.05当量)及びNa0Me(90mlの1.0M MeOH溶液)のMeOH(150ml)溶液混合物を3時
間加熱還流した。反応混合物を室温に冷却し、固体を濾過により集めメタノール
(3×10ml)により洗浄した。固体を0.5N HCl溶液(500ml)に添加し、20分間攪拌し
、次に濾過し、水(3×50ml)で洗浄し、乾燥して2.76gの目的の異性体5,7-ジクロ
ロ-4-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2(1H)-キノリノンを得た。
元素分析 計算値 C16H10Cl3NO3:C,51.85;H,2.72;N,3.78
測定値 :C,51.89;H,2.81;N,3.74
上記の反応混合物からの濾液を、攪拌下0.5N HCl溶液(1500ml)に添加した。酸
性化した混合物から沈殿した生成物を濾過により集め、乾燥した8.11gの位置異
性体5,7-ジクロロ-3-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-4-ヒドロキシ-2(1H)-キノ
リノン及び若干の目的生成物の混合物(6:1)を得た。精製した位置異性体サンプ
ルは以下の特性を有する。
元素分析 計算値for C16H10Cl3NO3:C,51.85;H,2.72;N,3.78
測定値 :C,52.01;H,2.76;N,3.80
実施例2 5.7- ジクロロ-4-(5-クロロ-2-ヒドロキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2(1H)-キノリ ノン
5,7−ジクロロ-4-(5-クロロ-2-メトキシフェニル)-3-ヒドロキシ-2(1H)-キノ
リ
ノン[実施例1で製造したもの](2.22g,6.0mmol)のメチレンクロリド懸濁液へ、
30mlのBBr3溶液(1.0M,CH2Cl2,5.0当量)を-78℃にて添加し、懸濁液は透明になっ
た。この溶液をアルゴン下で、-78℃にて3時間攪拌し、攪拌をさらに20時間室
温で継続した。蒸留水(0.5ml)を滴下し、攪拌を10分間続けた。反応混合物を減
圧下濃縮し、固体残さを100mlの水に懸濁し、5分間超音波をかけ、次に10分間
攪拌、濾過、水による洗浄(3×30ml)及び乾燥を行って目的の化合物を2.15g(≒7
100%)を白色固体として得た。
mp=297-299℃
元素分析 計算値for C15H8Cl3NO3:C,48.56;H,2.61;N,3.78
測定値 :C,48.64;H,2.52;N,3.74
目的の化合物を酢酸エチル/H2Oから結晶化し、無色の棒状(rod)結晶体を得た
。目的の化合物の構造及び固体状態の配座は単結晶X線解析により確認した。キ
ノリン及びフェニル置換基の平面の間の二面角は100.23(6)°である。
実施例3-18
一般的製造方法2及び3及び代表実施例1及び2に従って、次の4-アリール-3
-ヒドロキシキノリン-2-オン生成物を、式III及びIVの相当する中間体を用いて
作成し、表IIの実施例3〜18に示される式Ia及びIbの化合物を製造した。
一般に、目的物のDMSO-d6中の1H NMRスペクトルにおいて、3-OHの化学シフト
は約9.5-9.8δであり、NHピークは約12.2-12.6δであった。 実施例19-21
RaがCH2OCH3である一般的製造方法1、2及び3、並びに代表的実施例1及び2に従
い、以下の4-アリール-3-ヒドロキシキノリン-2-オン生成物を、式III及びIVの
相当する中間体を用いて、実施例19〜21について示した表IIIに従い式Ibの化合
物を製造した。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
A61P 21/02 A61P 21/02
25/00 25/00
25/06 25/06
43/00 111 43/00 111
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG
,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT
,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,
CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F
I,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE
,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,
LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,M
X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE
,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,
UA,UG,UZ,VN,YU,ZW