JP2002508328A - 粘液溶解及び炎症治療の製薬組成物 - Google Patents

粘液溶解及び炎症治療の製薬組成物

Info

Publication number
JP2002508328A
JP2002508328A JP2000538704A JP2000538704A JP2002508328A JP 2002508328 A JP2002508328 A JP 2002508328A JP 2000538704 A JP2000538704 A JP 2000538704A JP 2000538704 A JP2000538704 A JP 2000538704A JP 2002508328 A JP2002508328 A JP 2002508328A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mucus
inflammation
branched
dppc
formula
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000538704A
Other languages
English (en)
Inventor
プラス,サディアス,ピー
Original Assignee
クラリオン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by クラリオン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド filed Critical クラリオン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド
Priority claimed from PCT/US1997/022959 external-priority patent/WO1999030722A1/en
Publication of JP2002508328A publication Critical patent/JP2002508328A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • A61K31/66Phosphorus compounds
    • A61K31/683Diesters of a phosphorus acid with two hydroxy compounds, e.g. phosphatidylinositols
    • A61K31/685Diesters of a phosphorus acid with two hydroxy compounds, e.g. phosphatidylinositols one of the hydroxy compounds having nitrogen atoms, e.g. phosphatidylserine, lecithin

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)

Abstract

(57)【要約】 患者の炎症及び粘液粘度を減少させる式(I)のリン脂質の使用を開示し、X、Y又はZの一つは(a)を表わし、各Rは水素又はメチルを表わし、X、Y又はZの夫々他の二つは‐CO‐Rを表わし、ここでRは無置換の直鎖又は分岐のC12−21アルキル又はC11‐21アルケニル又は、ハロ、C1−6直鎖又は分岐アルコキシ若しくはシアノからなる群から選択された一つ又はそれ以上の置換基で置換された直鎖又は分岐のC12−21アルキル又はC11‐21アルケニルである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の分野 本発明は粘液溶解及び炎症の局所治療の分野に係り、より詳細には、粘着性粘
液、粘膜の粘着性分泌物の粘度を低粘ちゅう化又は低下させる際の特定の粘液溶
解薬の使用に関する。粘液分泌物の粘度を減少させる、並びに炎症を軽減させる
ことにより、かかる溶解薬は、肺気道からの蓄積された粘液分泌物を除去する際
、カゼリフレックス(cough reflex)及び繊毛作用の効率を増大させる。
【0002】 先行技術の説明 粘液の気道クリアランスに有益な効果を及ぼすことを示すことが分かっている
薬は数多報告されており、例えば、繊毛に及ぼす、又は粘液分泌物の物理的性質
を改質させることにより、上記効果を及ぼす。例えば、ヨウ化カリウムの飽和溶
液又はヨウ化グリセリンのようなヨウ化物類で表わされるあるクラスは、浄化を
容易にする「シンナー」分泌物の分泌を刺激すると考えられている。別のクラス
はN‐アセチルシステインである。肺粘液分泌物の粘度は、ムコタンパク質の濃
度にかなり依存し、N‐アセチルシステインのフリーのスルフヒドリル基は、ム
コタンパク質のジスルフィド結合を開裂させ、よって、粘液の粘度を減少させる
と考えられている。粘液溶解薬の概観のためには、P.C. Braga: Drugs in Bronc
hial Mucology, Raven Press, New York, 1989の刊行物を参照するとよい。
【0003】 増大した粘液分泌物と関係する疾患をしばしば伴う炎症は、トラウマ、多くの
バクテリア及びウイルス感染、アレルギー性及び免疫原性反応、自己免疫疾患な
どのような幅広い範囲の病気をも伴う勢力のある症候である。炎症の迅速でしか
も効果的な治療が望まれており、患者の不安と、炎症自体に起因する患者の二次
損傷を最小限に押さえる。
【0004】 肺道だけでなく、皮膚、目、粘膜(頬及び鼻)及び肛門/直腸/会陰領域を含む
体の他の表面の炎症は、適当な坑炎症剤の投与により、局所的に治療可能である
。本発明はリン脂質化合物であり、局所的に投与される粘液溶解性及び坑炎症性
の双方を有する剤の使用に関する。 1983年12月20日に発行されたTragerとChylinskiの米国特許第4,42
1,748号には、レシチンの無菌の水溶性低張性溶液を含有する人工の目薬(t
earing agent)の局所的投与と、粘度変化剤とが記載されている。レシチンはリ
ン酸のコリンエステル部に結合した、ステアリン酸、パルチミン酸及びオレイン
酸のジグリセリドの混合物であるホスファチジルコリンである。それは生きてい
る生物にて発見され、神経組織の重要な構成要素である。
【0005】 Glonekらによる米国特許第4,914,088号には、乾燥した目の治療方法を
開示しており、電荷を有するリン脂質が目に投与される。
【0006】 Thomassenらによる1994年の研究(Am. Respir. Cell Mol. Biol., 10: 39
9-404)には、ジパルミトイル‐ホスファチジルコリン(DPPC)が肺胞マク ロファージ分泌物に全く効果がなかったことを示すデータを提示している。
【0007】 発明の要約 本発明の目的は、肺粘液の粘度を減少させる方法を提供することと、肺道内で
の炎症を軽減させることである。
【0008】 本発明の別の目的は、過剰の粘液分泌物を有する患者の蓄積された粘液の除去
を改善させることである。
【0009】 本発明のさらに別の目的は、炎症と関連した蓄積粘液分泌物に起因する気道閉
塞に関係するさまざまな肺疾患を改善させる方法を提供することである。
【0010】 本発明のさらに別の目的は、皮膚、目、鼻および肺通路、肛門、直腸などを含
む哺乳類の炎症の局所的治療用の組成物を提供することである。
【0011】 作用の特定モードに拘束されることなく、式(I)の以下のリン脂質は、顕著
な局所坑炎症性及び粘液溶解活性を示すことが判明した。
【0012】
【化6】 ここでX、Y又はZの一つは以下の化学式で表わされ、
【0013】
【化7】 さらに、各R基は独立に水素又はメチルを表わし(3つの全てのR基がメチルで
ある化合物が好ましい)、X、Y又はZの夫々の他の2つは独立に‐CO‐R を表わし、Rは無置換の直鎖若しくは分岐のC11−21アルキル又はC11 −21 アルケニルであり、あるいは、ハロ(つまり、フルオロ、ブロモ、クロロ
又はヨード)、C1−6の直鎖又は分岐アルコキシ若しくはシアノからなる群か
ら選択された(好ましくは)一つ又はそれ以上の置換基で置換された直鎖又は分
岐のC11−21アルキル又はC11−21アルケニルである。2つの‐CO‐
基が同じであることが好ましい。
【0014】 式(I)の本発明のリン脂質は、グリセリン骨格の2の位置に光学活性炭素を
含有する。側鎖Rに存在する光学中心を有するものを含む全ての光学異性体は
、本発明の範囲内にあると考える。さらに、Rがアルケニルであることから生
じる幾何異性体も本発明に含まれる。
【0015】 式(I)の好ましいリン脂質は、式(II)で表わされる。
【0016】
【化8】 ここで、R及びRは前述に定義した通りであり、それらの全ての異性体を含む
【0017】 式(I)の最も好ましいリン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(
DPPC)であり、1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコ リン及びジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)として同定され、さ
らに、1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリンとして同 定される。DPPCの天然の異性体は、ジパルミトイル‐L‐α‐ホスファチジ
ルコリンである。
【0018】 式(I)の他の代表的なリン脂質には、 1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォエタノールアミン; 1,3‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐2‐ホスフォコリン; 1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォ‐(N‐メチル)エタ ノールアミン; 1‐パルミトイル‐2‐オレオリル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリン; 1,3‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐2‐ホスフォ‐(N、N‐ジメチル )エタノールアミン; 1,2‐ジラウリル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリン; 1,2‐ジエイコサノイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリン; 1‐オレオイル‐3‐ミリストイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォ‐(N‐メ
チル)エタノールアミン; 1,2‐ジ‐(9‐クロロ‐オクタデカノイル)‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフ ォコリン; 1,2‐ジ‐(9‐オクタデセノイル)‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリン ; 1,2‐ジ‐(8‐シアノ‐ヘキサデカノイル)‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフ ォコリン; 1,3‐ジ‐(9‐ヘキサデセノイル)‐sn‐グリセロ‐2‐ホスフォコリン と 1,2‐ジ‐(8‐メトキシ‐ヘキサデカノイル)‐sn‐グリセロ‐2‐ホス フォコリンがある。
【0019】 発明の詳細な説明 式(I)のリン脂質及びその合成方法は文献に公知であり、そのうちの最も好
ましいDPPC及びDSPCを含む数多は市販されている。例えば、米国特許第
4,814,112号及び第4,622,180号や、HansenらによるLipids (1982
), 17, 453-459や、MurariらによるJ. Org. Chem., (1982), 47, 2158-2163や、
LammersらによるChem. Phys. Lipids (1978), 22, 293-305や、EiblらによるLei
bigs Ann. Chem. (1967), 709, 226-230や、OkazakiらによるBull. Chem. Soc.
Jpn. (1981), 54, 2399-2407を参照するとよい。
【0020】 ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)は、ヒトの自然の肺の表面
活性物質の主要な成分(約80%)である。肺の表面活性物質は、肺胞の表面で
通常分泌される物質である。肺の表面活性物質の欠乏が未熟児及び幼児の呼吸窮
迫症候群(RDS)の原因であると認められる。かかる欠乏は大人の呼吸窮迫症
候群(ARDS)の成長では主な要因ではないが、その疾患の病態生理学に重要
な寄与をしている。
【0021】 RDSは未熟児の間では、死及び能力障害を引き起こす原因である。加えて、
年間ARDSの約150,000件では、60乃至80%の死亡率をもたらすと 報告されている。RDS及びARDSを治療するために、多くの天然の表面活性
物質(ヒト及びウシ)及び全合成された表面活性物質が、例えば、エアロゾル調
合の吸入により、ヒト被験者の肺に投与されている。
【0022】 一般に、多くの合成吸入表面活性物質調合にはDPPCが含まれている。なぜ
なら、DPPCはRDS及びARDSを患っている患者の呼吸機能を改善させる
ということが周知であるからである。肺胞の表面張力を減少させ、よって、酸素
と二酸化炭素との交換をより容易にする。例えば、米国特許第5,299,566
号には、DPPCを含有する表面活性物質の分散液の調製方法が開示されており
、米国特許第5,110,806号には、DPPC、長鎖アルコール及び非イオン
性界面活性剤とを含有する合成表面活性物質が開示されており、米国特許第4, 765,987号には、DPPC、DSPC及びソヤレシチン(Soya lecithin)
を含有する合成表面活性物質が開示されており、米国特許第4,571,334号
には、肺表面活性物質と組み合わせたさまざなま薬が開示されており、米国特許
第4,312,860号には、DPPC及び脂肪酸を含有する合成表面活性物質が
開示されている。各前記文献は参考文献として、本願にて引用される。
【0023】 しかしながら、出願人はDPPC又は式(I)のリン脂質の他の何れの実施例
も、本発明の基礎である、粘液溶解性若しくは坑炎症活性を有するものとして報
告されていなかったことは、知らなかった。本発明のリン脂質Iは粘着性粘液の
粘度を減少させ、よって、肺道からの粘度のある濃縮された粘液の除去を容易に
し、炎症を軽減させることが判明した。結果として、粘液の気管支及び気管ドレ
ナージが改善され、肺及び上部呼吸道での粘液の蓄積に起因する急性若しくは慢
性肺疾患のうっ血が緩和される。
【0024】 よって、本発明は粘着性肺粘液分泌物及び炎症に起因する呼吸窮迫を軽減させ
る方法、より詳細には、患者が患っている非肺胞タイプ、つまり気管、気管支及
び細気管支での窮迫を軽減させる方法を提供する。その方法は、エアロゾルの断
続的な吸入により、肺道に式(I)のリン脂質を粘液溶解に有効な量を運搬させ
ることにより、うまく達成される。
【0025】 さらに、式(I)の化合物は、以下に限定されないが、気管支喘息、気管支炎
、膵嚢胞性繊維症、リウマチ様関節炎、乾癬、即座及び遅延タイプ過敏症反応、
結膜炎、鼻炎、痔などを含む炎症に寄与する若しくは主因である病気状態の局所
治療にて有用である。 「局所適用」とは、肺膜に局所的に接触するように吸入されて、若しくは直腸膜
に接触するように浣腸又は坐薬により、皮膚、結膜、粘膜、周口膜に局所的であ
る。
【0026】 投与及び製薬組成物 効果的である必要性のある式(I)の化合物の量は、もちろん、処置すべき個体
哺乳類や、炎症を生じさせる状態により変化し、最終的には、医者及び獣医の裁
量である。考慮すべき要因としては、処置すべき状態、投与経路、調合の性質、
哺乳類の体重、年齢、一般的な状態及び投与すべき特定化合物がある。
【0027】 一般には、化合物は、任意に影響を及ぼす領域に利用される。しかしながら、
個別に測定した投薬量は本発明の範囲内であり、投薬の公知な投与量に応じて炎
症の鎮静を監視したいのなら、個々の患者に投与される。
【0028】 一般には、式(I)の化合物を含有する製薬組成物には、活性成分として、薬
1.0%から100%の一つ又はそれ以上の式(I)の化合物を包含する。活性
成分が全体の組成物以下ならば、残りは局所投与用の薬剤学的に適当なキャリア
又は、乳化剤、乾燥剤、色剤、香気剤、安定剤、流動促進剤などのような、局所
製薬技術に周知である他の副成分を含む。
【0029】 式(I)の化合物を含有する好ましい製薬組成物は、溶液、懸濁液、エマルジ
ョン、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、坐薬などのような液体若しくは半液
体の形態であり、従来の局所キャリアを利用する。吸入治療では、従来のエアロ
ゾル調合及び方法を利用する。
【0030】 粘液溶解活性 本発明のリン脂質の粘液溶解活性は、それぞれウシ気管粘液と動物モデルを利用
して、標準的インビトロ及びインビボアッセイにて調べた。インビトロアッセイ
に関して、ウシ気管粘液をDPPC、DSPC又は他の式(I)のリン脂質と混
合させたときに、粘液は液化され、ビヒクル単独(生理食塩水)を利用したとき
よりも自由な流動性を有する。インビボ粘液溶解アッセイは、本願の参考文献と
して引用されるChandらによるAgents and Actions, 38: 165-170に説明されたア
ッセイと同様である。特に、166頁以下にあるマウスの粘液溶解活性の評価を
参照するとよい。前記のインビトロ及びインビボアッセイの詳細な説明は、後述
の例に記載されている。試験化合物であるDPPCから典型的に得られた結果か
ら、既知の粘液溶解活性のあるN‐アセチルシステインと同等な粘液溶解活性を
示す。
【0031】 肺気道への薬のエアロゾル運搬は長い年数、臨床実務で利用されている。さま
ざまな医療薬剤が、例えば、N‐アセチルシステインや、RDS及びARDSを
患っている患者を治療する際に、DPPC及びDSPCを含有する合成表面活性
物質調合を含み、エアロゾル治療に利用されている。エアロゾル運搬システムの
利点は、延長した期間にわたり、断続的に全肺領域へ幅広く行渡る薬剤運搬にあ
る。
【0032】 式(I)のリン脂質は、例えば、噴霧器若しくは測定投与した吸入器(metere
d-dose inhaler)による投与の使用するために準備したエアロゾル化液体調合の
分散液として利用することを意図している。本発明のリン脂質は、直接吸入用の
適当な平均径の無菌親液性粉末、あるいはその粉末は水或いは分散液としての約
0.4から約0.9%の生理食塩水とともに再構成され、適当な噴霧器若しくは
吸入システムを介して運搬される。何れかの軸に沿った微粒子分散粉末の好まし
い平均径は、約1から約10ミクロン(μm)であり、より好ましくは約5から
10μmである。一般には、リン脂質は、例えば、測定投与量エアロゾル単位と
して存在するジクロロジフルオロメタンのような本技術分野で認められる噴射剤
とともに、約0.1から10%重量/正常若しくは僅かに低張性生理食塩水に分 散させた体積の量を含む。各衝撃作用により、0.1乃至100mgのリン脂質
Iが放出される。
【0033】 エアロゾルによる薬運搬システムを製造する技術は、よく文献に記載されてい
る。式(I)のリン脂質は本願で繰返し詳細に説明するまでもなく、本技術分野
で認められる方法により、かかるシステムに導入される。実際に、前述したよう
に、DPPC及びDPSCを含有するエアロゾル調合及びそれらの調製は、RD
S及びARDS治療に対して以前に説明されており、同様なエアロゾル方法論が
本発明に利用される。
【0034】 本発明によれば、本発明のリン脂質Iは、炎症及び粘液粘度又は蓄積粘液が大
きな問題である呼吸病気の治療における吸入剤として有用である。かかる病気に
は、慢性気管支炎、膵嚢胞繊維炎及び喘息(American Thoracic Society, Sympo
sia Excerpts, 1994 International Conferenceを参照)がある。さらに、閉鎖 性肺疾患は増大した粘液分泌物と関連している(Ferguson and Chermiack (1993
) Management of COPD, New Eng. J. Med., pp. 1017-1021)。本発明はRDS やARDSの治療には応用できない。なぜならば、上記呼吸疾患は現存している
肺胞であり、粘液性分泌物を濃縮する若しくは過剰の粘液性分泌物により、特徴
付けられない。
【0035】 本発明のリン脂質Iは単独で、又は他の粘液溶解性成分及び/又は気道及び肺 の肺胞へのエアロゾル運搬に適する他の活性成分、例えば、抗生物質や気管支拡
張薬などと組合わせて利用される。
【0036】 坑炎症性活性 炎症は、マクロファージを含み、さまざまなタイプの細胞タイプが関係する複雑
な過程である。例えば、S. L. Kunkel, “Inflammatory Cytokines”, pp. 1-15
, in Manual of Vascular Mediators, P. A. Ward, Editor, produced by the p
ublishers of Hospital Practiceを参照するとよい。Ralph and Nakoinz, J. Im
munology (1977) 119: 950-954及びRaschkeらによるCell (1978)15: 261-267を 含み、マクロファージに関する参考文献は数多くある。
【0037】 マクロファージは感染により、並びにさまざまな非感染刺激物及びプロ炎症(p
ro-inflammatory)剤により活性化される。活性化されると、マクロファージはさ
まざまな反応に関与する。マクロファージはバクテリアを食菌し、酸素依存若し
くは酸素に独立な経路の何れかにより殺す。酸素依存経路に関して、マクロファ
ージの活性化により、酸素消費が増加し、反応性酸素種(例えば、スーパーオキ
サイドのようなラジカル)が発生する。活性化マクロファージによる反応性酸素
種の発生は、炎症応答と関連している。加えて、活性化されると、マクロファー
ジは、数多のインターロイキン及び腫瘍壊死因子α(TNF‐α)を含むさまざ
まな炎症サイトカインを放出する。上記活性化関連過程の何れかの阻害により、
炎症を軽減させることができる。
【0038】 上記理由のため、マクロファージ活性化は炎症過程の研究では非常に重要であ
る。マクロファージ活性化を低減させる剤は、坑炎症剤として有用である傾向に
ある。
【0039】 式(I)化合物の坑炎症活性は、従来技術の多くの方法によりアッセイされた
。炎症、マクロファージ活性化及びマウス耳水腫の二つのモデルを例で利用し、
本発明の化合物の坑炎症性の効果を例証する。
【0040】 説明の目的でDPPCを利用した以下の例は説明の目的であり、本発明の範囲
を限定することを意図したものではない。
【0041】 例1 ウシ気管粘液の粘液溶解活性 気管粘液は、ローカル屠場から入手した屠殺直後のウシから優しくスクレープし
た。固定させた等温条件下で、その粘液は、5mlの粘液と1mlの生理食塩水
との割合で混合し、1分間音波処理した。1mlの試験化合物又はコントロール
生理食塩水に1mlの上記混合物を添加し、さらに1分間音波処理した。音波処
理5分後、1mlのサンプルを18gx1.5インチ針を有する3mlのシリン
ジのバレルへピペットで移し、リングスタンドに垂直に取付けた。時間ゼロで、
針のキャップを外し、シリンジ/針組合わせを介して循環させた粘液の循環時間 を記録した。結果を以下に示す。
【0042】 化合物 最終濃度 循環時間 コントロール生理食塩水 コントロール 3分32秒 DPPC 5mg/ml 2分20秒 結果から、DPPCはウシ気管粘液への直接の粘液溶解効果を有することがわ
かる。同様な結果はDSPCでも得られる。
【0043】 例2 マウス気管粘液の粘液溶解活性 エアロゾルとして、マウスへ試験化合物を運搬する手順は、前述に引用したChan
dらにより説明された、マウスに粘液溶解活性の評価に利用したアッセイを変更 させたものである。 1. 試験動物はHsd:1CR(CD−1)マウスであり、その重量は夫々約
25gである。 2. 試験化合物は通常の生理食塩水で希釈して25mg/mlの濃度にし、約 100mg/kgでヒトDe Vilbiss atomizer Model No. 15を利用して投与した 。コントロールグループは生理食塩水を与える。ノズルはマウスの口に置かれ、
2回スプレーの投与量を与える。 3. 30分後、生理食塩水中の5%溶液として、溶解させたフェノールレッド
を10g体重当たり0.1mlの供給量でIPを与えた。 4. フェノールレッド投与後、動物は100%のCOに晒して殺す。 5. 全体の気管を除去し、外部ブロットドライ及び気管を1.0ml生理食塩
水で洗浄した。30分後、0.1mlの1M水酸化ナトリウムを気管洗浄液に添
加して、洗浄液体のpHを安定化させる。 6. 気管へ分泌されたフェノールレッドの量を、546nmで光化学的に定量
化する。 7. 運搬された供給量の補正は、5回の別々の管で、管ごとに5回のスプレイ
の体積を測定して行う。平均量は58乃至63μlの範囲で、60.4μl/ス プレイである。
【0044】 試験結果から、N‐アセチルシステインでは約62%であり、生理食塩水のコ
ントロールではゼロ%であったのと比べて、DPPCでは粘液溶解活性の測定さ
れた変化の割合は約58%である。
【0045】 例3 吸入カートリジ 成分 カートリッジ当たりの量 DPPC 5.0mg ラクトース、q.s. 25.0mg 活性成分であるDPPCは、平均径で10乃至50ミクロンの粒子サイズに予
めマイクロサイズ化され、高エネルギーミキサーで通常の錠剤グレードのラクト
ースとブレンドされる。粉末ブレンドがマイクロサイズ化され、1乃至10ミク
ロンの微粒子サイズになり、適当な大きさの硬質ゼラチンカプセル、又は適当な
カプセル化機械のカートリッジに充填される。カプセル若しくはカートリッジの
呼吸用含有量は、粉末吸入器を利用して投与される。
【0046】 例4 測定液体投与量 成分 カートリジ当たりの量 DPPC 5.0重量% 等張性生理食塩水 q. s. 活性成分であるDPPCを十分な量の無菌等張性生理食塩水に溶解させて、5
重量%の溶液を作る。溶液は、適当な噴霧器装置を介してエアロゾル測定投与量
の形態で投与される。
【0047】 例5 マクロファージ活性化阻害による坑炎症活性のインビトロアッセイ 肺胞マクロファージの活性化は肺炎症の重要な要素である。その活性化状態で
は、肺胞マクロファージはさまざまな炎症媒介物質及び反応性酸素種を分泌する
。炎症の本発明のインビトロモデルでは、マウスマクロファージはフォルボール
‐12‐ミリステート‐13‐アセテート(PMA)により活性化される。DP
PC存在下、若しくは不存在下でのマクロファージ活性化の強度は、マクロファ
ージの呼吸バーストを測定することにより求める(反応性酸素種の放出)。
【0048】 RAW264.7細胞系統(American Type Culture Collection, Rockville,
Maryland, USA, Accesion No. TIB 71)はマウス単核細胞/マクロファージ系統
であり、その細胞は多くのマクロファージの識別可能な機能を示す。マクロファ
ージ同様、その細胞は食菌可能であり、適当な信号に応じて、酸化的バースト(
増大した酸素消費)を受け、酸素ラジカル(例えば、スーパーオキサイド)が発
生する。インビトロで上記細胞の活性化を阻害する剤は、呼吸バーストを阻害し
、活性化と関連する酸素ラジカルの対応する生産により、炎症過程の重要な工程
を阻止する。
【0049】 呼吸バースト及びマクロファージ活性化に伴う対応する酸素ラジカルの生産は
、培地に添加したルミノールと酸素ラジカルの反応を基礎とする化学発光を含む
多くの方法で測定することが可能である(M. A. Trushらによる1978, “The Gen
eration of Chemiluminescence by Phagocyte Cells”, Methods in Enzymology
57: 462-494)。マクロファージ細胞系統の培地のルミノールから生じる化学発
光は、マクロファージ活性化のマーカとして、本技術分野では認識されている。
【0050】 材料 細胞系統:RAW 264.7(ATCC TIB‐71、装置依存(attach
ment dependent)) 培地:10%のウシ胎児血清(FBS)のあるダルベッコ改質イ−グル培地(
DEME、シグマケミカル(株)Cat. No. D-7777) 細胞系統を培養させる標準的プロトコール:T‐75又はT‐150フラスコ
;37℃;95%空気、5%CO;100%湿度 細胞系統は、トリプシン(1mg/mL)及びエチレンジアミン四酢酸(ED TA)(Ca‐Mgフリーのハンク平衡塩溶液の1μM)を1:4乃至1:5の
分割比で約80%の融合性で培養させる 全ての手順はスタンダードバイオアッセイレベル2(BL−2)汚染手順を利
用して、クラスII生物学的安全性キャビネットにて、無菌で実行される。スト
ック細胞系統での遺伝的浮動を排除するために、約1ヶ月間隔で、液体窒素保存
から解凍させて、フレッシュな培養を調製する。
【0051】 方法論 細胞培養後、血球計算番盤で細胞を数える。細胞濃度をmL当たり約1,000,
000細胞の細胞濃度に調整する。
【0052】 フェノールレド及びFBSなしで、DMEM中細胞を懸濁させる。
【0053】 1mLの細胞懸濁液をピペットで、米国カルフォルニア州サンディエゴにある
アナリティカルルミネッセンスラボラトリから市販されている標準ルミノメータ
キュベット(12x75mm)へ入れる。
【0054】 ルミノールを添加して0.2μMの最終濃度にする。
【0055】 リン酸緩衝液生理食塩水(PBS)、あるいはジメチルスルホキシドに溶解さ
せた試験化合物を添加し、最終濃度のレベルを0乃至30μMの範囲にする。
【0056】 100ナノグラムのPMAを添加する。
【0057】 1分間待ち、サンディエゴにあるアナリティカルルミネッセンスラボラトリか
ら市販されているモノライト2010ルミノメータで光カウント(つまり、発光
)を読む。 データ解析 バックグラウンド:試験化合物及びPMAを添加せず。 コントロール:試験化合物を添加せず。 計算: 阻害% = 1−L(試験化合物)−L(バックグラウンド) x 100 L(コントロール)−L(バックグラウンド) ここでLは発光(呼吸バースト)である。
【0058】 結果 図1に示すように、1ナノMのPMA存在下でのDPPCの投与量‐応答曲線で
ある。DPPCはPMA及びその結果生じる呼吸バーストにより、マクロファー
ジの活性化を効果的に阻害する。同様な結果はDSPCでも得られる。上記結果
により、式(I)の化合物は気道にて坑炎症剤として作用することを示している
【0059】 例6 マウス耳水腫モデルによる坑炎症活性のインビトロアッセイ 坑炎症剤の評価の共通インビトロモデルは、マウスの耳でのフォルボールミリ
ステートアセテート(PMA)誘発炎症である。この方法は、Joseph Y. Chang とAlan J. Lewis(編集), Alan R. Liss, Inc New York, pp.221-223 (1989)の
゛Pharmacological Methods in the Control of Inflammation”に説明されてい
る。このアッセイでは、炎症に特徴である水腫を、耳にPMAを適用した後、約
6時間後の耳の厚さ若しくは耳十両を求めることにより定量化している。
【0060】 材料 マウス:米国インディアナポリスにあるハーランスプラギュドーレイから入手
した雄CD‐1、21乃至24g(製造番号3002)。
【0061】 方法論 0(ビヒクル)、1%、2.5%、5%(w/v)の試験化合物を含有する、 アセトン及びエタノールの同体積の混合物中に0.01%(w/v)のPMAを 調製する。
【0062】 同体積のアセトン及びエタノールのビヒクルコントロール溶液を調製する。
【0063】 1%のデキサメタジンを含有する、同体積のアセトンとエタノールの混合物に
0.01%(w/v)のPMAのコントロール溶液を調製する。
【0064】 マウスを3つのグループに分ける。
【0065】 20μLの上記溶液の一つをマイクロピペッタを利用して、右耳に適用して、
マウスの各グループを処置する。
【0066】 6時間待ち、COチャンバーにてマウスを安楽死させる。
【0067】 耳を切除して、6mm径の円形に打抜く。
【0068】 同じグループで打ち抜かれた3つの適当な耳の重量をまとめて測定する。
【0069】 未処置の全ての耳サンプルの平均重量を求める(コントロール耳の平均重量)
【0070】 試験耳サンプルの各グループの平均重量を求める(試験耳の平均重量)。
【0071】 以下のように耳重量の平均増加率%を計算する: 耳重量の平均増加率% = 試験耳の平均重量 − コントロール耳の平均重量 x 100 コントロール耳の平均重量 結果 図2及び図3は、DPPCの坑炎症性質の一連の研究結果を示す。5%での上
記化合物の単一の適用により、図2に示すように耳水腫には効果はなかった。1
0%では、DPPCの単一の適用により34%まで耳水腫が阻害された。5%の
DPPCを2回投与した場合、PMA適用の1回目と20分後の適用では、耳水
腫は54%まで減少した。しかしながら、2回治療、PMA治療20分前に1回
と、PMA治療の際にもう1回では、耳水腫には実質的に効果はなかった。
【0072】 図3は、炎症応答の最初の2時間中に繰返しDPPCを適用すると、72%ま
で耳水腫が阻害されることが分かる。DPPCは天然に存在する分子であるので
、公知の毒性はなく、肺炎症の治療に頻繁なスケジュールで、安全に吸入させる
ことができる。
【0073】 前記のアッセイで得られた正の結果は、式(I)化合物の坑炎症活性を有して
いることを示している。
【図面の簡単な説明】
【図1】 DPPC存在下での、PMA誘発Raw264.7細胞の呼吸バーストを示す
グラフである。
【図2】 マウスでのPMA誘発耳水腫の炎症への、DPPCのさまざまな濃度の効果を
示すグラフである。
【図3】 DPPCで処置したマウスのPMA誘発耳水腫の阻害の経過時間での結果を示
すグラフである。
【手続補正書】
【提出日】平成12年7月3日(2000.7.3)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【発明の名称】 粘液溶解及び炎症治療の製薬組成物
【特許請求の範囲】
【化1】 ここでX、Y又はZの一つが、
【化2】 で表わされ、各Rは水素又はメチルであり、他の二つのX、Y又はZは‐CO‐
で表わされ、Rは無置換の直鎖若しくは分岐したC11‐21アルキル又
はC11‐21アルケニル、又はシアノ、ハロ、C1‐6の直鎖若しくは分岐し
たアルコキシからなる群から選択された一つ又はそれ以上の置換基で置換された
直鎖若しくは分岐したC11‐21アルキル又はC11‐21アルケニルであり
、並びに前記のすべての異性体である式Iで表わされる化合物の使用。
【化3】 ここで各Rは水素又はメチルを表わし、Rは無置換の直鎖若しくは分岐したC 11−21 アルキル又はC11−21アルケニル、あるいはハロ、C1−6の直
鎖又は分岐したアルコキシ又はシアノからなる群から選択された一つ又はそれ以
上の置換基で置換された直鎖若しくは分岐したC11−21アルキル又はC11 −21 アルケニルであり、並びに前記の全ての異性体である式IIのリン脂質を
利用する請求項1記載の使用。
【化4】 ここでX、Y又はZの一つが、
【化5】 で表わされ、各Rは水素又はメチルであり、他の二つのX、Y又はZは‐CO‐
で表わされ、Rは無置換の直鎖若しくは分岐したC11‐21アルキル又
はC11‐21アルケニル、又はシアノ、ハロ、C1‐6の直鎖若しくは分岐し
たアルコキシからなる群から選択された一つ又はそれ以上の置換基で置換された
直鎖若しくは分岐したC11‐21アルキル又はC11‐21アルケニルであり
、並びに前記のすべての異性体である式Iで表わされる化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の分野 本発明は粘液溶解及び炎症の局所治療の分野に係り、より詳細には、粘着性粘
液、粘膜の粘着性分泌物の粘度を低粘ちゅう化又は低下させる際の特定の粘液溶
解薬の使用に関する。粘液分泌物の粘度を減少させる、並びに炎症を軽減させる
ことにより、かかる溶解薬は、肺気道からの蓄積された粘液分泌物を除去する際
、カゼリフレックス(cough reflex)及び繊毛作用の効率を増大させる。
【0002】 先行技術の説明 粘液の気道クリアランスに有益な効果を及ぼすことを示すことが分かっている
薬は数多報告されており、例えば、繊毛に及ぼす、又は粘液分泌物の物理的性質
を改質させることにより、上記効果を及ぼす。例えば、ヨウ化カリウムの飽和溶
液又はヨウ化グリセリンのようなヨウ化物類で表わされるあるクラスは、浄化を
容易にする「シンナー」分泌物の分泌を刺激すると考えられている。別のクラス
はN‐アセチルシステインである。肺粘液分泌物の粘度は、ムコタンパク質の濃
度にかなり依存し、N‐アセチルシステインのフリーのスルフヒドリル基は、ム
コタンパク質のジスルフィド結合を開裂させ、よって、粘液の粘度を減少させる
と考えられている。粘液溶解薬の概観のためには、P.C. Braga: Drugs in Bronc
hial Mucology, Raven Press, New York, 1989の刊行物を参照するとよい。
【0003】 増大した粘液分泌物と関係する疾患をしばしば伴う炎症は、トラウマ、多くの
バクテリア及びウイルス感染、アレルギー性及び免疫原性反応、自己免疫疾患な
どのような幅広い範囲の病気をも伴う勢力のある症候である。炎症の迅速でしか
も効果的な治療が望まれており、患者の不安と、炎症自体に起因する患者の二次
損傷を最小限に押さえる。
【0004】 肺道だけでなく、皮膚、目、粘膜(頬及び鼻)及び肛門/直腸/会陰領域を含む
体の他の表面の炎症は、適当な坑炎症剤の投与により、局所的に治療可能である
。本発明はリン脂質化合物であり、局所的に投与される粘液溶解性及び坑炎症性
の双方を有する剤の使用に関する。 1983年12月20日に発行されたTragerとChylinskiの米国特許第4,42
1,748号には、レシチンの無菌の水溶性低張性溶液を含有する人工の目薬(t
earing agent)の局所的投与と、粘度変化剤とが記載されている。レシチンはリ
ン酸のコリンエステル部に結合した、ステアリン酸、パルチミン酸及びオレイン
酸のジグリセリドの混合物であるホスファチジルコリンである。それは生きてい
る生物にて発見され、神経組織の重要な構成要素である。
【0005】 Glonekらによる米国特許第4,914,088号には、乾燥した目の治療方法を
開示しており、電荷を有するリン脂質が目に投与される。
【0006】 Thomassenらによる1994年の研究(Am. Respir. Cell Mol. Biol., 10: 39
9-404)には、ジパルミトイル‐ホスファチジルコリン(DPPC)が肺胞マク ロファージ分泌物に全く効果がなかったことを示すデータを提示している。
【0007】 Girod-Vaquezらによる米国特許第5,262,405号では、閉塞気道の治療に
利用されるリン脂質を含有する組成物が開示されている。その特許では、ジパル
ミトイルホスファチジルグリセリンにような化合物の表面活性について議論して
いる。上記特許では、粘膜組織に亘る粘液に移動は、全体として、流動的界面現
象であることを保留せずに開示している。Girod-Vaquezらは、粘液の移動性を変
化させるのに鍵を握る特性として、粘液の「濡れ性」が特徴であるとしている。
Girod-Vaquezらによれば、粘液自体の濡れ性のみを変化させることにより、粘液
とその下にある粘膜との間の界面力を変化させ、粘着性のある粘膜が気道を通し
て移動することができるようになる。
【0008】 欧州特許第EP‐A‐528034号では、喘息の治療を開示しており、40
%までのリン脂質を含有する材料を含む肺の表面活性材料が患者に投与される。
【0009】 KaiらによるJapan J. Pharmacol. 49: 375-380の”Protective Effect of Sur
face-Active Phospholipids against the Acid-Including Inhibition of the T
racheal Mucociliary Transport”では、中枢呼吸道にある表面活性リン脂質の 生理学的役割の研究を報告している。その研究により、肺表面活性物質からなる
組成物を基礎とするリン脂質は粘膜繊毛運搬の酸誘発阻害を減少させることが判
明した。
【0010】 BrownとPattishall(1993)によるClin. Perinatol. 20(4): 761-789の”Othe
r Uses of Surfactants”は、新生児の肺窮迫症候群の治療適用での肺性表面活 性物質の潜在的可能性を説明する概観論文である。
【0011】 発明の要約 本発明の目的は、肺粘液の粘度を減少させる方法を提供することと、肺道内で
の炎症を軽減させることである。
【0012】 本発明の別の目的は、過剰の粘液分泌物を有する患者の蓄積された粘液の除去
を改善させることである。
【0013】 本発明のさらに別の目的は、炎症と関連した蓄積粘液分泌物に起因する気道閉
塞に関係するさまざまな肺疾患を改善させる方法を提供することである。
【0014】 本発明のさらに別の目的は、皮膚、目、鼻および肺通路、肛門、直腸などを含
む哺乳類の炎症の局所的治療用の組成物を提供することである。
【0015】 作用の特定モードに拘束されることなく、式(I)の以下のリン脂質は、顕著
な局所坑炎症性及び粘液溶解活性を示すことが判明した。
【0016】
【化6】 ここでX、Y又はZの一つは以下の化学式で表わされ、
【0017】
【化7】 さらに、各R基は独立に水素又はメチルを表わし(3つの全てのR基がメチルで
ある化合物が好ましい)、X、Y又はZの夫々の他の2つは独立に‐CO‐R を表わし、Rは無置換の直鎖若しくは分岐のC11−21アルキル又はC11 −21 アルケニルであり、あるいは、ハロ(つまり、フルオロ、ブロモ、クロロ
又はヨード)、C1−6の直鎖又は分岐アルコキシ若しくはシアノからなる群か
ら選択された(好ましくは)一つ又はそれ以上の置換基で置換された直鎖又は分
岐のC11−21アルキル又はC11−21アルケニルである。2つの‐CO‐
基が同じであることが好ましい。
【0018】 式(I)の本発明のリン脂質は、グリセリン骨格の2の位置に光学活性炭素を
含有する。側鎖Rに存在する光学中心を有するものを含む全ての光学異性体は
、本発明の範囲内にあると考える。さらに、Rがアルケニルであることから生
じる幾何異性体も本発明に含まれる。
【0019】 式(I)の好ましいリン脂質は、式(II)で表わされる。
【0020】
【化8】 ここで、R及びRは前述に定義した通りであり、それらの全ての異性体を含む
【0021】 式(I)の最も好ましいリン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(
DPPC)であり、1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコ リン及びジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)として同定され、さ
らに、1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリンとして同 定される。DPPCの天然の異性体は、ジパルミトイル‐L‐α‐ホスファチジ
ルコリンである。
【0022】 式(I)の他の代表的なリン脂質には、 1,2‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォエタノールアミン; 1,3‐ジパルミトイル‐sn‐グリセロ‐2‐ホスフォコリン; 1,2‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォ‐(N‐メチル)エタ ノールアミン; 1‐パルミトイル‐2‐オレオリル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリン; 1,3‐ジステアロイル‐sn‐グリセロ‐2‐ホスフォ‐(N、N‐ジメチル )エタノールアミン; 1,2‐ジラウリル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリン; 1,2‐ジエイコサノイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリン; 1‐オレオイル‐3‐ミリストイル‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォ‐(N‐メ
チル)エタノールアミン; 1,2‐ジ‐(9‐クロロ‐オクタデカノイル)‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフ ォコリン; 1,2‐ジ‐(9‐オクタデセノイル)‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフォコリン ; 1,2‐ジ‐(8‐シアノ‐ヘキサデカノイル)‐sn‐グリセロ‐3‐ホスフ ォコリン; 1,3‐ジ‐(9‐ヘキサデセノイル)‐sn‐グリセロ‐2‐ホスフォコリン と 1,2‐ジ‐(8‐メトキシ‐ヘキサデカノイル)‐sn‐グリセロ‐2‐ホス フォコリンがある。
【0023】 発明の詳細な説明 式(I)のリン脂質及びその合成方法は文献に公知であり、そのうちの最も好
ましいDPPC及びDSPCを含む数多は市販されている。例えば、米国特許第
4,814,112号及び第4,622,180号や、HansenらによるLipids (1982
), 17, 453-459や、MurariらによるJ. Org. Chem., (1982), 47, 2158-2163や、
LammersらによるChem. Phys. Lipids (1978), 22, 293-305や、EiblらによるLei
bigs Ann. Chem. (1967), 709, 226-230や、OkazakiらによるBull. Chem. Soc.
Jpn. (1981), 54, 2399-2407を参照するとよい。
【0024】 ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)は、ヒトの自然の肺の表面
活性物質の主要な成分(約80%)である。肺の表面活性物質は、肺胞の表面で
通常分泌される物質である。肺の表面活性物質の欠乏が未熟児及び幼児の呼吸窮
迫症候群(RDS)の原因であると認められる。かかる欠乏は大人の呼吸窮迫症
候群(ARDS)の成長では主な要因ではないが、その疾患の病態生理学に重要
な寄与をしている。
【0025】 RDSは未熟児の間では、死及び能力障害を引き起こす原因である。加えて、
年間ARDSの約150,000件では、60乃至80%の死亡率をもたらすと 報告されている。RDS及びARDSを治療するために、多くの天然の表面活性
物質(ヒト及びウシ)及び全合成された表面活性物質が、例えば、エアロゾル調
合の吸入により、ヒト被験者の肺に投与されている。
【0026】 一般に、多くの合成吸入表面活性物質調合にはDPPCが含まれている。なぜ
なら、DPPCはRDS及びARDSを患っている患者の呼吸機能を改善させる
ということが周知であるからである。肺胞の表面張力を減少させ、よって、酸素
と二酸化炭素との交換をより容易にする。例えば、米国特許第5,299,566
号には、DPPCを含有する表面活性物質の分散液の調製方法が開示されており
、米国特許第5,110,806号には、DPPC、長鎖アルコール及び非イオン
性界面活性剤とを含有する合成表面活性物質が開示されており、米国特許第4, 765,987号には、DPPC、DSPC及びソヤレシチン(Soya lecithin)
を含有する合成表面活性物質が開示されており、米国特許第4,571,334号
には、肺表面活性物質と組み合わせたさまざなま薬が開示されており、米国特許
第4,312,860号には、DPPC及び脂肪酸を含有する合成表面活性物質が
開示されている。各前記文献は参考文献として、本願にて引用される。
【0027】 しかしながら、出願人はDPPC又は式(I)のリン脂質の他の何れの実施例
も、本発明の基礎である、粘液溶解性若しくは坑炎症活性を有するものとして報
告されていなかったことは、知らなかった。本発明のリン脂質Iは粘着性粘液の
粘度を減少させ、よって、肺道からの粘度のある濃縮された粘液の除去を容易に
し、炎症を軽減させることが判明した。結果として、粘液の気管支及び気管ドレ
ナージが改善され、肺及び上部呼吸道での粘液の蓄積に起因する急性若しくは慢
性肺疾患のうっ血が緩和される。
【0028】 よって、本発明は粘着性肺粘液分泌物及び炎症に起因する呼吸窮迫を軽減させ
る方法、より詳細には、患者が患っている非肺胞タイプ、つまり気管、気管支及
び細気管支での窮迫を軽減させる方法を提供する。その方法は、エアロゾルの断
続的な吸入により、肺道に式(I)のリン脂質を粘液溶解に有効な量を運搬させ
ることにより、うまく達成される。
【0029】 さらに、式(I)の化合物は、以下に限定されないが、気管支喘息、気管支炎
、膵嚢胞性繊維症、リウマチ様関節炎、乾癬、即座及び遅延タイプ過敏症反応、
結膜炎、鼻炎、痔などを含む炎症に寄与する若しくは主因である病気状態の局所
治療にて有用である。 「局所適用」とは、肺膜に局所的に接触するように吸入されて、若しくは直腸膜
に接触するように浣腸又は坐薬により、皮膚、結膜、粘膜、周口膜に局所的であ
る。
【0030】 投与及び製薬組成物 効果的である必要性のある式(I)の化合物の量は、もちろん、処置すべき個体
哺乳類や、炎症を生じさせる状態により変化し、最終的には、医者及び獣医の裁
量である。考慮すべき要因としては、処置すべき状態、投与経路、調合の性質、
哺乳類の体重、年齢、一般的な状態及び投与すべき特定化合物がある。
【0031】 一般には、化合物は、任意に影響を及ぼす領域に利用される。しかしながら、
個別に測定した投薬量は本発明の範囲内であり、投薬の公知な投与量に応じて炎
症の鎮静を監視したいのなら、個々の患者に投与される。
【0032】 一般には、式(I)の化合物を含有する製薬組成物には、活性成分として、薬
1.0%から100%の一つ又はそれ以上の式(I)の化合物を包含する。活性
成分が全体の組成物以下ならば、残りは局所投与用の薬剤学的に適当なキャリア
又は、乳化剤、乾燥剤、色剤、香気剤、安定剤、流動促進剤などのような、局所
製薬技術に周知である他の副成分を含む。
【0033】 式(I)の化合物を含有する好ましい製薬組成物は、溶液、懸濁液、エマルジ
ョン、ゲル、ローション、クリーム、軟膏、坐薬などのような液体若しくは半液
体の形態であり、従来の局所キャリアを利用する。吸入治療では、従来のエアロ
ゾル調合及び方法を利用する。
【0034】 粘液溶解活性 本発明のリン脂質の粘液溶解活性は、それぞれウシ気管粘液と動物モデルを利用
して、標準的インビトロ及びインビボアッセイにて調べた。インビトロアッセイ
に関して、ウシ気管粘液をDPPC、DSPC又は他の式(I)のリン脂質と混
合させたときに、粘液は液化され、ビヒクル単独(生理食塩水)を利用したとき
よりも自由な流動性を有する。インビボ粘液溶解アッセイは、本願の参考文献と
して引用されるChandらによるAgents and Actions, 38: 165-170に説明されたア
ッセイと同様である。特に、166頁以下にあるマウスの粘液溶解活性の評価を
参照するとよい。前記のインビトロ及びインビボアッセイの詳細な説明は、後述
の例に記載されている。試験化合物であるDPPCから典型的に得られた結果か
ら、既知の粘液溶解活性のあるN‐アセチルシステインと同等な粘液溶解活性を
示す。
【0035】 肺気道への薬のエアロゾル運搬は長い年数、臨床実務で利用されている。さま
ざまな医療薬剤が、例えば、N‐アセチルシステインや、RDS及びARDSを
患っている患者を治療する際に、DPPC及びDSPCを含有する合成表面活性
物質調合を含み、エアロゾル治療に利用されている。エアロゾル運搬システムの
利点は、延長した期間にわたり、断続的に全肺領域へ幅広く行渡る薬剤運搬にあ
る。
【0036】 式(I)のリン脂質は、例えば、噴霧器若しくは測定投与した吸入器(metere
d-dose inhaler)による投与の使用するために準備したエアロゾル化液体調合の
分散液として利用することを意図している。本発明のリン脂質は、直接吸入用の
適当な平均径の無菌親液性粉末、あるいはその粉末は水或いは分散液としての約
0.4から約0.9%の生理食塩水とともに再構成され、適当な噴霧器若しくは
吸入システムを介して運搬される。何れかの軸に沿った微粒子分散粉末の好まし
い平均径は、約1から約10ミクロン(μm)であり、より好ましくは約5から
10μmである。一般には、リン脂質は、例えば、測定投与量エアロゾル単位と
して存在するジクロロジフルオロメタンのような本技術分野で認められる噴射剤
とともに、約0.1から10%重量/正常若しくは僅かに低張性生理食塩水に分 散させた体積の量を含む。各衝撃作用により、0.1乃至100mgのリン脂質
Iが放出される。
【0037】 エアロゾルによる薬運搬システムを製造する技術は、よく文献に記載されてい
る。式(I)のリン脂質は本願で繰返し詳細に説明するまでもなく、本技術分野
で認められる方法により、かかるシステムに導入される。実際に、前述したよう
に、DPPC及びDPSCを含有するエアロゾル調合及びそれらの調製は、RD
S及びARDS治療に対して以前に説明されており、同様なエアロゾル方法論が
本発明に利用される。
【0038】 本発明によれば、本発明のリン脂質Iは、炎症及び粘液粘度又は蓄積粘液が大
きな問題である呼吸病気の治療における吸入剤として有用である。かかる病気に
は、慢性気管支炎、膵嚢胞繊維炎及び喘息(American Thoracic Society, Sympo
sia Excerpts, 1994 International Conferenceを参照)がある。さらに、閉鎖 性肺疾患は増大した粘液分泌物と関連している(Ferguson and Chermiack (1993
) Management of COPD, New Eng. J. Med., pp. 1017-1021)。本発明はRDS やARDSの治療には応用できない。なぜならば、上記呼吸疾患は現存している
肺胞であり、粘液性分泌物を濃縮する若しくは過剰の粘液性分泌物により、特徴
付けられない。
【0039】 本発明のリン脂質Iは単独で、又は他の粘液溶解性成分及び/又は気道及び肺 の肺胞へのエアロゾル運搬に適する他の活性成分、例えば、抗生物質や気管支拡
張薬などと組合わせて利用される。
【0040】 坑炎症性活性 炎症は、マクロファージを含み、さまざまなタイプの細胞タイプが関係する複雑
な過程である。例えば、S. L. Kunkel, “Inflammatory Cytokines”, pp. 1-15
, in Manual of Vascular Mediators, P. A. Ward, Editor, produced by the p
ublishers of Hospital Practiceを参照するとよい。Ralph and Nakoinz, J. Im
munology (1977) 119: 950-954及びRaschkeらによるCell (1978)15: 261-267を 含み、マクロファージに関する参考文献は数多くある。
【0041】 マクロファージは感染により、並びにさまざまな非感染刺激物及びプロ炎症(p
ro-inflammatory)剤により活性化される。活性化されると、マクロファージはさ
まざまな反応に関与する。マクロファージはバクテリアを食菌し、酸素依存若し
くは酸素に独立な経路の何れかにより殺す。酸素依存経路に関して、マクロファ
ージの活性化により、酸素消費が増加し、反応性酸素種(例えば、スーパーオキ
サイドのようなラジカル)が発生する。活性化マクロファージによる反応性酸素
種の発生は、炎症応答と関連している。加えて、活性化されると、マクロファー
ジは、数多のインターロイキン及び腫瘍壊死因子α(TNF‐α)を含むさまざ
まな炎症サイトカインを放出する。上記活性化関連過程の何れかの阻害により、
炎症を軽減させることができる。
【0042】 上記理由のため、マクロファージ活性化は炎症過程の研究では非常に重要であ
る。マクロファージ活性化を低減させる剤は、坑炎症剤として有用である傾向に
ある。
【0043】 式(I)化合物の坑炎症活性は、従来技術の多くの方法によりアッセイされた
。炎症、マクロファージ活性化及びマウス耳水腫の二つのモデルを例で利用し、
本発明の化合物の坑炎症性の効果を例証する。
【0044】 説明の目的でDPPCを利用した以下の例は説明の目的であり、本発明の範囲
を限定することを意図したものではない。
【0045】 例1 ウシ気管粘液の粘液溶解活性 気管粘液は、ローカル屠場から入手した屠殺直後のウシから優しくスクレープし
た。固定させた等温条件下で、その粘液は、5mlの粘液と1mlの生理食塩水
との割合で混合し、1分間音波処理した。1mlの試験化合物又はコントロール
生理食塩水に1mlの上記混合物を添加し、さらに1分間音波処理した。音波処
理5分後、1mlのサンプルを18gx1.5インチ針を有する3mlのシリン
ジのバレルへピペットで移し、リングスタンドに垂直に取付けた。時間ゼロで、
針のキャップを外し、シリンジ/針組合わせを介して循環させた粘液の循環時間 を記録した。結果を以下に示す。
【0046】 化合物 最終濃度 循環時間 コントロール生理食塩水 コントロール 3分32秒 DPPC 5mg/ml 2分20秒 結果から、DPPCはウシ気管粘液への直接の粘液溶解効果を有することがわ
かる。同様な結果はDSPCでも得られる。
【0047】 例2 マウス気管粘液の粘液溶解活性 エアロゾルとして、マウスへ試験化合物を運搬する手順は、前述に引用したChan
dらにより説明された、マウスに粘液溶解活性の評価に利用したアッセイを変更 させたものである。 1. 試験動物はHsd:1CR(CD−1)マウスであり、その重量は夫々約
25gである。 2. 試験化合物は通常の生理食塩水で希釈して25mg/mlの濃度にし、約 100mg/kgでヒトDe Vilbiss atomizer Model No. 15を利用して投与した 。コントロールグループは生理食塩水を与える。ノズルはマウスの口に置かれ、
2回スプレーの投与量を与える。 3. 30分後、生理食塩水中の5%溶液として、溶解させたフェノールレッド
を10g体重当たり0.1mlの供給量でIPを与えた。 4. フェノールレッド投与後、動物は100%のCOに晒して殺す。 5. 全体の気管を除去し、外部ブロットドライ及び気管を1.0ml生理食塩
水で洗浄した。30分後、0.1mlの1M水酸化ナトリウムを気管洗浄液に添
加して、洗浄液体のpHを安定化させる。 6. 気管へ分泌されたフェノールレッドの量を、546nmで光化学的に定量
化する。 7. 運搬された供給量の補正は、5回の別々の管で、管ごとに5回のスプレイ
の体積を測定して行う。平均量は58乃至63μlの範囲で、60.4μl/ス プレイである。
【0048】 試験結果から、N‐アセチルシステインでは約62%であり、生理食塩水のコ
ントロールではゼロ%であったのと比べて、DPPCでは粘液溶解活性の測定さ
れた変化の割合は約58%である。
【0049】 例3 吸入カートリジ 成分 カートリッジ当たりの量 DPPC 5.0mg ラクトース、q.s. 25.0mg 活性成分であるDPPCは、平均径で10乃至50ミクロンの粒子サイズに予
めマイクロサイズ化され、高エネルギーミキサーで通常の錠剤グレードのラクト
ースとブレンドされる。粉末ブレンドがマイクロサイズ化され、1乃至10ミク
ロンの微粒子サイズになり、適当な大きさの硬質ゼラチンカプセル、又は適当な
カプセル化機械のカートリッジに充填される。カプセル若しくはカートリッジの
呼吸用含有量は、粉末吸入器を利用して投与される。
【0050】 例4 測定液体投与量 成分 カートリジ当たりの量 DPPC 5.0重量% 等張性生理食塩水 q. s. 活性成分であるDPPCを十分な量の無菌等張性生理食塩水に溶解させて、5
重量%の溶液を作る。溶液は、適当な噴霧器装置を介してエアロゾル測定投与量
の形態で投与される。
【0051】 例5 マクロファージ活性化阻害による坑炎症活性のインビトロアッセイ 肺胞マクロファージの活性化は肺炎症の重要な要素である。その活性化状態で
は、肺胞マクロファージはさまざまな炎症媒介物質及び反応性酸素種を分泌する
。炎症の本発明のインビトロモデルでは、マウスマクロファージはフォルボール
‐12‐ミリステート‐13‐アセテート(PMA)により活性化される。DP
PC存在下、若しくは不存在下でのマクロファージ活性化の強度は、マクロファ
ージの呼吸バーストを測定することにより求める(反応性酸素種の放出)。
【0052】 RAW264.7細胞系統(American Type Culture Collection, Rockville,
Maryland, USA, Accesion No. TIB 71)はマウス単核細胞/マクロファージ系統
であり、その細胞は多くのマクロファージの識別可能な機能を示す。マクロファ
ージ同様、その細胞は食菌可能であり、適当な信号に応じて、酸化的バースト(
増大した酸素消費)を受け、酸素ラジカル(例えば、スーパーオキサイド)が発
生する。インビトロで上記細胞の活性化を阻害する剤は、呼吸バーストを阻害し
、活性化と関連する酸素ラジカルの対応する生産により、炎症過程の重要な工程
を阻止する。
【0053】 呼吸バースト及びマクロファージ活性化に伴う対応する酸素ラジカルの生産は
、培地に添加したルミノールと酸素ラジカルの反応を基礎とする化学発光を含む
多くの方法で測定することが可能である(M. A. Trushらによる1978, “The Gen
eration of Chemiluminescence by Phagocyte Cells”, Methods in Enzymology
57: 462-494)。マクロファージ細胞系統の培地のルミノールから生じる化学発
光は、マクロファージ活性化のマーカとして、本技術分野では認識されている。
【0054】 材料 細胞系統:RAW 264.7(ATCC TIB‐71、装置依存(attach
ment dependent)) 培地:10%のウシ胎児血清(FBS)のあるダルベッコ改質イ−グル培地(
DEME、シグマケミカル(株)Cat. No. D-7777) 細胞系統を培養させる標準的プロトコール:T‐75又はT‐150フラスコ
;37℃;95%空気、5%CO;100%湿度 細胞系統は、トリプシン(1mg/mL)及びエチレンジアミン四酢酸(ED TA)(Ca‐Mgフリーのハンク平衡塩溶液の1μM)を1:4乃至1:5の
分割比で約80%の融合性で培養させる 全ての手順はスタンダードバイオアッセイレベル2(BL−2)汚染手順を利
用して、クラスII生物学的安全性キャビネットにて、無菌で実行される。スト
ック細胞系統での遺伝的浮動を排除するために、約1ヶ月間隔で、液体窒素保存
から解凍させて、フレッシュな培養を調製する。
【0055】 方法論 細胞培養後、血球計算番盤で細胞を数える。細胞濃度をmL当たり約1,000,
000細胞の細胞濃度に調整する。
【0056】 フェノールレド及びFBSなしで、DMEM中細胞を懸濁させる。
【0057】 1mLの細胞懸濁液をピペットで、米国カルフォルニア州サンディエゴにある
アナリティカルルミネッセンスラボラトリから市販されている標準ルミノメータ
キュベット(12x75mm)へ入れる。
【0058】 ルミノールを添加して0.2μMの最終濃度にする。
【0059】 リン酸緩衝液生理食塩水(PBS)、あるいはジメチルスルホキシドに溶解さ
せた試験化合物を添加し、最終濃度のレベルを0乃至30μMの範囲にする。
【0060】 100ナノグラムのPMAを添加する。
【0061】 1分間待ち、サンディエゴにあるアナリティカルルミネッセンスラボラトリか
ら市販されているモノライト2010ルミノメータで光カウント(つまり、発光
)を読む。 データ解析 バックグラウンド:試験化合物及びPMAを添加せず。 コントロール:試験化合物を添加せず。 計算: 阻害% = 1−L(試験化合物)−L(バックグラウンド) x 100 L(コントロール)−L(バックグラウンド) ここでLは発光(呼吸バースト)である。
【0062】 結果 図1に示すように、1ナノMのPMA存在下でのDPPCの投与量‐応答曲線で
ある。DPPCはPMA及びその結果生じる呼吸バーストにより、マクロファー
ジの活性化を効果的に阻害する。同様な結果はDSPCでも得られる。上記結果
により、式(I)の化合物は気道にて坑炎症剤として作用することを示している
【0063】 例6 マウス耳水腫モデルによる坑炎症活性のインビトロアッセイ 坑炎症剤の評価の共通インビトロモデルは、マウスの耳でのフォルボールミリ
ステートアセテート(PMA)誘発炎症である。この方法は、Joseph Y. Chang とAlan J. Lewis(編集), Alan R. Liss, Inc New York, pp.221-223 (1989)の
゛Pharmacological Methods in the Control of Inflammation”に説明されてい
る。このアッセイでは、炎症に特徴である水腫を、耳にPMAを適用した後、約
6時間後の耳の厚さ若しくは耳十両を求めることにより定量化している。
【0064】 材料 マウス:米国インディアナポリスにあるハーランスプラギュドーレイから入手
した雄CD‐1、21乃至24g(製造番号3002)。
【0065】 方法論 0(ビヒクル)、1%、2.5%、5%(w/v)の試験化合物を含有する、 アセトン及びエタノールの同体積の混合物中に0.01%(w/v)のPMAを 調製する。
【0066】 同体積のアセトン及びエタノールのビヒクルコントロール溶液を調製する。
【0067】 1%のデキサメタジンを含有する、同体積のアセトンとエタノールの混合物に
0.01%(w/v)のPMAのコントロール溶液を調製する。
【0068】 マウスを3つのグループに分ける。
【0069】 20μLの上記溶液の一つをマイクロピペッタを利用して、右耳に適用して、
マウスの各グループを処置する。
【0070】 6時間待ち、COチャンバーにてマウスを安楽死させる。
【0071】 耳を切除して、6mm径の円形に打抜く。
【0072】 同じグループで打ち抜かれた3つの適当な耳の重量をまとめて測定する。
【0073】 未処置の全ての耳サンプルの平均重量を求める(コントロール耳の平均重量)
【0074】 試験耳サンプルの各グループの平均重量を求める(試験耳の平均重量)。
【0075】 以下のように耳重量の平均増加率%を計算する: 耳重量の平均増加率% = 試験耳の平均重量 − コントロール耳の平均重量 x 100 コントロール耳の平均重量 結果 図2及び図3は、DPPCの坑炎症性質の一連の研究結果を示す。5%での上
記化合物の単一の適用により、図2に示すように耳水腫には効果はなかった。1
0%では、DPPCの単一の適用により34%まで耳水腫が阻害された。5%の
DPPCを2回投与した場合、PMA適用の1回目と20分後の適用では、耳水
腫は54%まで減少した。しかしながら、2回治療、PMA治療20分前に1回
と、PMA治療の際にもう1回では、耳水腫には実質的に効果はなかった。
【0076】 図3は、炎症応答の最初の2時間中に繰返しDPPCを適用すると、72%ま
で耳水腫が阻害されることが分かる。DPPCは天然に存在する分子であるので
、公知の毒性はなく、肺炎症の治療に頻繁なスケジュールで、安全に吸入させる
ことができる。
【0077】 前記のアッセイで得られた正の結果は、式(I)化合物の坑炎症活性を有して
いることを示している。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炎症を患っている哺乳類の炎症を局所的に減少させ、濃縮さ
    れた又は蓄積された粘液分泌物と関係する肺疾患に苦しんでいる患者の粘液の粘
    度を減少させる薬剤の製造において、 【化1】 ここでX、Y又はZの一つが、 【化2】 で表わされ、各Rは水素又はメチルであり、他の二つのX、Y又はZは‐CO‐
    で表わされ、Rは無置換の直鎖若しくは分岐したC11‐21アルキル又
    はC11‐21アルケニル、又はシアノ、ハロ、C1‐6の直鎖若しくは分岐し
    たアルコキシからなる群から選択された一つ又はそれ以上の置換基で置換された
    直鎖若しくは分岐したC11‐21アルキル又はC11‐21アルケニルであり
    、並びに前記のすべての異性体である式Iで表わされる化合物の使用。
  2. 【請求項2】 【化3】 ここで各Rは水素又はメチルを表わし、Rは無置換の直鎖若しくは分岐したC 11−21 アルキル又はC11−21アルケニル、あるいはハロ、C1−6の直
    鎖又は分岐したアルコキシ又はシアノからなる群から選択された一つ又はそれ以
    上の置換基で置換された直鎖若しくは分岐したC11−21アルキル又はC11 −21 アルケニルであり、並びに前記の全ての異性体である式IIのリン脂質を
    利用する請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 ジパルミトイル又はジステアロイルホスファチジルコリンを
    利用する請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】 ジパルミトイルホスファチジルコリンを利用する請求項1乃
    至3のうち何れか1項記載の方法。
  5. 【請求項5】 一つ又はそれ以上の前記化合物は、喘息、気管支炎、膵嚢胞
    繊維炎、結膜炎、皮膚炎、痔及び鼻炎からなる群から選択された病気の治療の局
    所薬剤の製造に利用される請求項1乃至4のうち何れか1項記載の方法。
  6. 【請求項6】 濃縮された若しくは蓄積された粘液分泌物が関係する肺疾患
    を患っている患者での粘液の粘度を低下させるエアロゾル粉末又は液体薬剤の製
    造において、 【化4】 ここでX、Y又はZの一つが、 【化5】 で表わされ、各Rは水素又はメチルであり、他の二つのX、Y又はZは‐CO‐
    で表わされ、Rは無置換の直鎖若しくは分岐したC11‐21アルキル又
    はC11‐21アルケニル、又はシアノ、ハロ、C1‐6の直鎖若しくは分岐し
    たアルコキシからなる群から選択された一つ又はそれ以上の置換基で置換された
    直鎖若しくは分岐したC11‐21アルキル又はC11‐21アルケニルであり
    、並びに前記のすべての異性体である式Iで表わされる化合物の使用。
JP2000538704A 1997-12-12 1997-12-12 粘液溶解及び炎症治療の製薬組成物 Pending JP2002508328A (ja)

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
PCT/US1997/022959 WO1999030722A1 (en) 1996-06-18 1997-12-12 Pharmaceutical compositions for mucolysis and treatment of inflammation

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002508328A true JP2002508328A (ja) 2002-03-19

Family

ID=22262277

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000538704A Pending JP2002508328A (ja) 1997-12-12 1997-12-12 粘液溶解及び炎症治療の製薬組成物

Country Status (5)

Country Link
EP (1) EP1049476A1 (ja)
JP (1) JP2002508328A (ja)
KR (1) KR20010033040A (ja)
AU (1) AU5602898A (ja)
CA (1) CA2314885A1 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
CA2314885A1 (en) 1999-06-24
KR20010033040A (ko) 2001-04-25
AU5602898A (en) 1999-07-05
EP1049476A1 (en) 2000-11-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10556017B2 (en) Lipid-based drug carriers for rapid penetration through mucus linings
EP0055041B2 (en) Composition for curing respiratory diseases
US5299566A (en) Method of administering phospholipid dispersions
US6451784B1 (en) Formulation and method for treating neoplasms by inhalation
US5770585A (en) Homogeneous water-in-perfluorochemical stable liquid dispersion for administration of a drug to the lung of an animal
US5698537A (en) Method of lowering the viscosity of mucus
US20050220859A1 (en) Methods for treating illnesses of the tracheo-bronchial tract, especially chronic obstructive pulmonary disease (COPD)
JP2001513078A (ja) 吸入により新生物を治療する製剤とその方法
JP2004535454A (ja) エーロゾル化用に至適化されたトブラマイシン製剤
JPH05501263A (ja) グルタチオンのエーロゾル製剤
CA2483917A1 (en) Formulations limiting spread of pulmonary infections
US20180243213A1 (en) Aerosolized dapsone as a therapy for inflammation of the airway and abnormal mucociliary transport
JP2002508328A (ja) 粘液溶解及び炎症治療の製薬組成物
US20050220720A1 (en) Formulations limiting spread of pulmonary infections
US6022560A (en) Pharmaceutical compositions, novel uses, and novel form of α-tocopherylphosphocholine
EP1379306A1 (de) Vorrichtung zur künstlichen beatmung
US5763423A (en) Pharmaceutical compositions, novel uses, and novel form of tocopherylphosphocholine
US11413297B2 (en) Therapies for treating and preventing chronic rhinosinusitis
EP1263420B1 (en) Retinoid formulations for aerosolization and inhalation
US20030216471A1 (en) Retinoid formulations for aerosolization and inhalation
JP2002544228A (ja) 炎症反応により生ずる哺乳動物の鼻および副鼻洞の病気を処置する方法および組成物
CA2334313A1 (en) Pharmaceutical compositions containing alpha-tocopherylphosphocholine
DE10118146A1 (de) Vorrichtung zur künstlichen Beatmung
WO2003037309A2 (en) USE OF 4α PHORBOL
DE10133247A1 (de) Vorrichtung zur künstlichen Beatmung