JP2002338602A - キトサン−りん酸カルシウム−有機酸複合体及びその製造方法 - Google Patents

キトサン−りん酸カルシウム−有機酸複合体及びその製造方法

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Junzo Tanaka
順三 田中
Hironobu Fukuzaki
裕延 福崎
Yoichi Oka
洋一 岡
Isamu Yamaguchi
勇 山口
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Taki Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体材料、とりわけ人工骨材料として金属材
料、セラミック、ヒドロキシアパタイト等の材料が使用
されているが、柔軟性、生体親和性等種々の問題があ
り、新しい生体材料が望まれている。そこで本発明は柔
軟性を有し、高強度で生体親和性の大きな材料を提供す
ることを目的とする。 【解決手段】 キトサン上にりん酸カルシウム結晶及び
多価カルボン酸が結着してなるキトサン−りん酸カルシ
ウム−有機酸複合体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はキトサン−りん酸カ
ルシウム−有機酸複合体及びその製造方法に関し、特に
人工骨材料として有用な複合体に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、人工骨材料としては一般にステン
レスやチタンなどの金属材料、アルミナやジルコニアな
どのセラミック材料が用いられている。しかしながら、
金属材料は生体骨より強度が高すぎるため、そこに荷重
がかかった場合、再生生体骨に生体骨摩耗現象が生ず
る。また、場合によっては手術により金属材料を摘出す
る必要がある。一方、セラミックについても、生体骨と
弾性率が異なるため材料の破損が起こることが懸念され
る。また、これらの材料は材料の表面でしか生体骨と結
合しないため、剥離などを引き起こすことがある。これ
らの問題を解決すべく、金属表面をヒドロキシアパタイ
ト(以下HApと略記する)でコーティングしたり、セラ
ミックを多孔化するなど様々な改良が行われているが、
セラミックだけでは限界があった。そこで、有機高分子
材料とセラミックあるいは無機材料を複合化させること
により、柔軟性などセラミックあるいは無機材料だけで
は望めなかった特性を付加した材料を作製する試みがな
されている。
【0003】例えば、HAp焼結粉体とキトサンゲルの
混練物を成形、乾燥することにより人工骨を作製する方
法である。この方法によるときは、HApの粒子をキト
サンが取り巻く状態にあり、微細領域での構造は骨と異
なる。また、HApとキトサンの相互作用も粒子表面に
限られ、構造上混合物に近く均一性を欠く。更にこの人
工骨はキトサンの物性を強く示すため、炎症反応などを
引起こす可能性がある。上記人工骨よりも更に生体骨に
近い性質を有するHApとコラ−ゲンを混合成形した人
工骨も研究されている。しかしながら、この人工骨はコ
ラ−ゲンを使用するため非常に硬く、また、成形性も悪
い。特に膜などに成形することは極めて困難である。ま
た、コラーゲン自体の抗原性を押さえるためアテロ処理
などの処理を施す必要があり、柔軟性が得られないばか
りか、これらの原料を用いて作製した人工骨は高価とな
る。更にまた、特許第2775386号には、人工骨と
して有用なアパタイト・有機物複合体が開示され、有機
物としては多糖類、硬蛋白質が例示されている。一般的
に多糖類とは広義には加水分解によって1分子から2分
子以上の単糖類を生ずる炭水化合物を言い、セルロー
ス、デンプン、グリコーゲン、デキストラン、グアラ
ン、マンナン、カロニン、ゴム質など自然界、生物体内
を問わず無数の多糖類が知られ、また、多くの多糖類が
合成されている。本発明者らは、先にこれら多糖類の内
キトサンがりん酸イオン、カルシウムイオンと特異的に
反応し、生成するりん酸カルシウム結晶がキトサン上に
結着配向し、高い強度と柔軟性を有する複合体が得られ
ることを発見し、かかる知見に基づきキトサン−りん酸
カルシウム複合体を提案した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこの複合
体も、使用箇所によっては実用上未だ強度不足であるこ
とが判明し、更に研究を重ねた結果、特定の有機酸を使
用すれば複合体強度が更に向上することを発見し、かか
る知見に基づき本発明を完成したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、キトサ
ン上にりん酸カルシウム結晶及び多価カルボン酸、とり
わけ酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸から選ばれ
た多価カルボン酸が結着してなるキトサン−りん酸カル
シウム−有機酸複合体及びその製造方法に関する。
【0006】
【発明の実施の態様】本発明のキトサン−りん酸カルシ
ウム−有機酸複合体(以下、単に複合体と言う)は、例
えば次のようにして製造することができる。キトサンを
酢酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、塩酸等の酸に溶
解してキトサン溶液を製造する。キトサン濃度としては
0.01〜30質量%がよい。0.01質量%を下廻る
と反応溶液量が多くなり経済的でない。また、30質量
%を上廻ると粘度が高くなるため、作業操作性が悪くな
り、キトサン溶解性も悪くなる。またカルシウム溶液と
混合時の拡散性も悪くなる。本発明で使用するキトサン
の分子量についていえば、質量平均分子量約1〜100
万、更に望ましくは3〜30万である。即ち1万未満の
場合、成形体強度が弱くなり、100万を超えると酸へ
の溶解が困難となる。また脱アセチル度について言え
ば、特に限定されないが50〜100%のものが良い。
【0007】次いで、このキトサン溶液に濃度0.1〜
65質量%(P換算)のりん酸溶液をキトサンに
対し0.1〜420質量%(P換算)添加し良く
撹拌する。りん酸溶液の濃度が下限を下廻るとキトサン
上に生成するりん酸カルシウムの量が不十分であり、上
限を上廻るとキトサンの分子鎖が切断され、劣化が起こ
る。本発明に使用するりん酸溶液としては、りん酸の
他、第一、第二りん酸水素ナトリウム、りん酸水素カリ
ウムが好例として挙げられるが、要はりん酸の水溶性塩
であれば良くこれらに限定されるものではない。次いで
このキトサン−りん酸溶液を濃度約0.05〜30質量
%(CaO)のカルシウム溶液または水酸化カルシウム
懸濁液に添加混合する。0.05質量%未満の場合、溶
液濃度が薄く反応溶液量が多くなり経済的でない。一
方、30質量%を超えると生成物によって粘度が高くな
り撹拌による均一化が困難になる。
【0008】両者の混合割合はりん酸(P)に対
してカルシウム(CaO)として80〜140質量%の
範囲である。この範囲を逸脱すると、過剰のりん酸ある
いはカルシウムが存在することとなり人工骨として使用
する場合望ましくない。また、キトサンとりん酸カルシ
ウム(CaO+P)の割合について言えば、99
/1〜1/99(質量)、更に好ましくは、15/85
〜85/15(質量)である。即ちこの範囲にあるとき
は大略キトサンがりん酸カルシウムで被覆され、優れた
生体適合性を有するものとなる。一般にキトサン上に生
成結着するりん酸カルシウム結晶に対しキトサン量が多
い程成形体は柔軟であり、一方キトサン量が少ない程成
形体は硬くなる。従って用途により配合割合を調整する
ことが望ましい。次いで混合熟成時間について言えば、
一般に1〜72時間である。熟成時間が長くなる程りん
酸カルシウム結晶の生成反応が進行し結晶性は高くな
る。
【0009】さて、このようにしてキトサン上にりん酸
カルシウム結晶を生成結着させた後、遠心分離機、フィ
ルタープレス、ベルトプレス等任意の濾過機により濾過
し、この濾過物を濃度0.01〜3質量%(多価カルボ
ン酸換算)の多価カルボン酸またはその水溶性塩の水溶
液に浸漬する。濃度がこれ以下になると多価カルボン酸
添加効果がみられなくなり、濃度がこれ以上になるとキ
トサンが溶解し組成比を保持できなくなる。本発明に使
用する多価カルボン酸またはその水溶性塩としては特に
酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸またはそのアル
カリ金属塩が好例として挙げられるが、これらに限定さ
れるものではない。次に、浸漬温度に関して言えば、0
〜100℃、更に好ましくは5〜80℃である。0℃未
満ではりん酸カルシウムが溶解し組成が保持できなくな
り、100℃を超えるとりん酸カルシウムの結晶粒子が
大きくなり、不均一な複合体になるため強度が低下す
る。また、りん酸カルシウムの結晶性の向上は、りん酸
カルシウムの生体内での分解性の低下を引き起こすた
め、望ましくない。
【0010】更にこの多価カルボン酸またはその水溶性
塩に浸漬する濾過物量(濃度)について言えば、濾過物
の組成、即ち、キトサンとりん酸カルシウムの量比、り
ん酸カルシウムの結晶化度、また使用する多価カルボン
酸の種類、濃度などにより異なり、一概に規制すること
はできないが、概ね0.01〜20質量%、更に好まし
くは、0.1〜5質量%である。0.01質量%未満で
は、溶媒が多くなりすぎるため経済的でなく、20質量
%を上廻ると粘度が高くなりすぎるため撹拌効率が悪く
なり均一に反応を進めることができない。
【0011】さて、このようにして、キトサン上にりん
酸カルシウム結晶を生成結着した濾過物を多価カルボン
酸またはその水溶性塩の水溶液に浸漬することにより、
高強度を有する複合体を製造することができる。このと
き複合体中に含まれる多価カルボン酸の量は、浸漬時
間、多価カルボン酸の種類等により異なるが、浸漬時間
が長い程、多価カルボン酸の複合体中含有量は多くな
る。一般的には複合体中に含有される多価カルボン酸量
が多い程複合体強度は大きくなる。通常、複合体中の多
価カルボン酸の量は0.1〜20質量%であり、これ未
満では強度向上が充分でなく、これを超えると、生体材
料として好ましくないだけでなく、キトサンの溶解をと
もない逆に強度が低下する。
【0012】このようにして、キトサン−りん酸カルシ
ウム結晶に多価カルボン酸を反応させた後、この本発明
複合体即ち、キトサン−りん酸カルシウム−有機酸複合
体は多価カルボン酸またはその水溶性塩の溶液から分離
される。分離方法としては任意の手段を利用することが
でき、例えば前記の遠心分離機、フィルタープレス、ベ
ルトプレス等を利用することができる。望ましい方法
は、多価カルボン酸またはその水溶性塩の溶液から複合
体を分離する場合の分離機を所望する任意の形状にして
おくことである。この場合、濾過圧力が強い程複合体の
含水率は低下して、その強度は大きくなる。
【0013】このようにして製造した複合体はキトサン
上にりん酸カルシウム結晶及び多価カルボン酸が結着
し、キトサンをりん酸カルシウム結晶が良く被覆してお
り、且つ、多価カルボン酸がこれに反応している。多価
カルボン酸の反応状態に関しては必ずしも定かではない
が、多価カルボン酸未使用に比べて、多価カルボン酸使
用により複合体の粒子径が大きくなっていることから、
恐らく多価カルボン酸のカルボキシル基がキトサンのア
ミノ基に反応しているものと推定される。このようにし
て製造された本発明の複合体は前記の通りキトサンをり
ん酸カルシウム結晶が良く被覆しており、優れた生体適
合性を有する。
【0014】また、りん酸カルシウム結晶のC軸は配
向、即ち同一方向に向いている。本発明りん酸カルシウ
ム結晶のC軸が同一方向に向いている理由については定
かではないが、キトサン分子のOH基あるいはNH
とりん酸イオンあるいはカルシウムイオンが順次反応
し、りん酸カルシウム結晶のC軸が配向性を有するもの
と推定される。ここで、りん酸カルシウムがC軸方向に
配向しているとは、透過型電子顕微鏡で確認されるりん
酸カルシウム結晶の集合体の電子線回折において、りん
酸カルシウム結晶がC軸方向に配向していることを言
う。本発明における望ましい配向度は50゜以内に配向
していることである。ここで配向度50゜以内とは先の
電子線回折においてデバイ−シェラー環が中心角50゜
以内の弧になっていることを言う。特に50゜以内の場
合りん酸カルシウムの結晶が良く発達しており、成形体
にした場合高強度の成形体が得られる。
【0015】また本発明のりん酸カルシウムとは、HA
p、りん酸三カルシウム、りん酸八カルシウム等りん酸
カルシウム化合物を言う。本発明に於いて最も望ましい
りん酸カルシウム結晶はHApである。更に言えば、り
ん酸カルシウム結晶としてHApが70質量%以上含ま
れていることが望ましい。本発明複合体の集合体の大き
さは製造方法により異なるが、概ね長径5〜35μmで
ある。
【0016】本発明複合体の更に望ましい製造方法は上
記のようにして製造した複合体を水熱処理することであ
る。水熱温度としては50〜200℃が良い。熱処理温
度に関して言えば、50℃未満では長時間の熱処理時間
を要する上にその効果も小さい。200℃を超えるとキ
トサン鎖の切断や分解が起こり望ましくない。また、水
熱処理時間に関して言えば、1〜120分が良い。1分
未満では本発明の効果を期待することができず、120
分を超えてもそれ以上の効果は得られない。即ち、水熱
処理を行うことにより最大点応力、最大点変位は著しく
大きくなる。更にまた、水熱処理を行うことの利点は、
120℃以上、20分以上の熱処理条件の場合、殺菌剤
等の薬剤を使用することなく複合体の殺菌を行うことが
できることである。
【0017】本発明の複合体は上記の方法により製造す
ることができるがこれらに限定されるものではない。ま
た、本発明複合体の用途については主に人工骨について
述べたが、本発明複合体はキトサンとりん酸カルシウム
と多価カルボン酸との割合を調整することによりその硬
度、柔軟性を自由に調整することができ人工靱帯、人工
腱、人工腱や人工軟骨のアンカー充填材、人工軟骨、骨
欠損部充填材、人工血管、人工食道、人工皮膚等にも使
用することができる。また本発明複合体は、用途に応じ
て糸状、メッシュ状、スクリュ−状、円筒状等任意の形
状にすることができる。
【0018】
【実施例】以下に本発明の実施例を掲げて更に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、%
は特に断らない限り全て質量%を示す。
【0019】[実施例1]炭酸カルシウム96.7gを電
気炉中で1200℃で3時間焼成し、酸化カルシウムを
得た。得られた酸化カルシウム54.2gを振とうさせ
ながら蒸留水50gを徐々に加え、発熱がおさまるまで
待った。これに更に930gの蒸留水を加え、1時間撹
拌することにより水酸化カルシウム懸濁液を得た。
【0020】一方、キトサン20g(質量平均分子量約
10万、脱アセチル度約80%)を1%酢酸水溶液192
0gに溶解しキトサン水溶液を得た。
【0021】上記キトサン水溶液と3.4%(P
算)りん酸水溶液1000gを混合し、キトサン−りん
酸混合水溶液を得た。
【0022】こうして得られたキトサン−りん酸混合水
溶液を25℃で撹拌中の水酸化カルシウム懸濁液中に1
0ml/minの速度で滴下した。滴下終了後、微量の
水酸化カルシウムもしくはりん酸を添加してpHを8〜
9に調整し、一昼夜撹拌下に保持(懸濁溶液)した。こ
のようにして得られた懸濁溶液を、ヌッチェで吸引ろ過
後、水洗を2回繰り返すことにより、酢酸カルシウムな
どの水溶性物質を除去した後、キトサン−りん酸カルシ
ウム複合体(キトサン20.6%、りん酸カルシウム
(CaO+P)79.4%)を得た。
【0023】この複合体を再び水に懸濁し、その一部を
取り80℃で乾燥し、固形分濃度を測定した。上記懸濁
液中の固形分量に対し、3%のクエン酸を添加した。
尚、クエン酸は濃度5%クエン酸水溶液として使用し
た。ここで、さらに一昼夜撹拌下に保持した。このとき
の懸濁溶液中の固形分の平均粒子径は23μmであっ
た。これを吸引ろ過し、このろ過物を容器に移し蒸留水
5000gで撹拌洗浄した後、再度吸引ろ過を行った。
【0024】次いで更に、30MPaの静水圧下で圧縮
脱水することによりキトサン−りん酸カルシウム−クエ
ン酸複合体(キトサン19.8%、りん酸カルシウム
(CaO+P)79.1%、クエン酸1.1%)
を得た。このようにして得られた複合体は、水溶液中に
長時間放置しても再分散することなく、その形状を維持
していた。この複合体(3×5×6mm、以下同じ)の
圧縮強度は、サンプル長6mm、試験速度1mm/mi
nの測定条件(以下同じ)において10MPa、弾性率
は130MPaであった。強度試験機は、万能材料試験
機(AGS−H、島津製作所製)を用いた。
【0025】[実施例2]実施例1と同様の方法により表
1記載の原料割合でキトサン−りん酸カルシウム−クエ
ン酸複合体を製造した。その結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】[実施例3]実施例1と同様の方法により、
クエン酸の代わりに表2記載の有機酸を使用しキトサン
−りん酸カルシウム−有機酸複合体を製造した。その結
果を表2に示す。
【0028】
【表2】
【0029】[比較例1]クエン酸を添加しない以外、実
施例1と同様の方法により、キトサン−りん酸カルシウ
ム複合体を製造した。懸濁液中の固形分の平均粒子径は
17.8μmであった。この複合体の圧縮成形体の圧縮
強度は5.5MPa、弾性率は70MPaであった。
【0030】[比較例2]クエン酸に代えて乳酸を使用す
る以外、実施例1と同様の方法により、キトサン−りん
酸カルシウム−乳酸複合体を製造した。このときの懸濁
溶液中の固形分の平均粒子径は16.1μmであった。
【0031】次いで更に、30MPaの静水圧下で圧縮
脱水することによりキトサン−りん酸カルシウム−乳酸
複合体(キトサン19.7%、りん酸カルシウム(Ca
O+P)79.2%、乳酸1.1%)を得た。こ
の複合体の圧縮強度は、4.7MPa、弾性率は65M
Paであった。
【0032】[比較例3]実施例1と同様の方法で水酸化
カルシウム懸濁液を得た。この懸濁液1034.2gに
3.0gのクエン酸カルシウムを加え、水酸化カルシウ
ム−クエン酸カルシウム混合懸濁液を得た。また、実施
例1と同様の方法で、キトサン−りん酸混合水溶液を得
た。
【0033】このキトサン−りん酸混合水溶液を、25
℃で撹拌中の水酸化カルシウム−クエン酸カルシウム混
合懸濁液に10m1/minの速度で滴下した。滴下終
了後、微量の水酸化カルシウムもしくはりん酸を添加し
てpHを8〜9に調整し、一昼夜撹拌下に保持(懸濁溶
液)した。こうして、キトサン−りん酸カルシウム系複
合体を得た。
【0034】これを吸引ろ過し、このろ過物を容器に移
し蒸留水5000gで撹拌洗浄した後、再度吸引ろ過を
行った。次いで更に、30MPaの静水圧下で圧縮脱水
した。このとき、この複合体の圧縮強度は、4.4MP
a、弾性率は67MPaであった。
【0035】このように、カルシウムとりん酸が反応す
る段階で多価カルボン酸が存在しても本発明の複合体は
得られない。即ち、一度キトサン−りん酸カルシウム沈
殿物を製造した後、これを多価カルボン酸の水溶液に浸
漬することが重要である。
【0036】
【発明の効果】本発明のキトサン−りん酸カルシウム−
有機酸複合体は、有機酸を含まないものに比べ高い強度
を有する。また本複合体は、医用材料として利用可能な
材料から構成されており、骨充填材、人工骨材料などの
医用材料として有用である。そしてりん酸カルシウムが
ヒドロキシアパタイトであるときは更に優れた生体適合
性を有する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡 洋一 茨城県つくば市稲荷前25−10 メルベー ユ・フレア101号室 (72)発明者 山口 勇 茨城県つくば市千現2丁目8−7 ヴェル ジェ301号室 Fターム(参考) 4C081 AB02 AC03 BB08 CD09 CF01 EA05 EA11 4C090 AA02 AA04 AA05 BA47 BB17 BB53 BB64 BB65 BB99 BD11 CA46 DA10 DA24

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 キトサン上にりん酸カルシウム結晶及び
    多価カルボン酸が結着してなるキトサン−りん酸カルシ
    ウム−有機酸複合体。
  2. 【請求項2】 キトサン上にりん酸カルシウム結晶及び
    多価カルボン酸が結着し、且つ当該結晶のC軸が配向し
    てなる請求項1記載のキトサン−りん酸カルシウム−有
    機酸複合体。
  3. 【請求項3】 りん酸カルシウム結晶のC軸の配向度が
    50゜以内である請求項2記載のキトサン−りん酸カル
    シウム−有機酸複合体。
  4. 【請求項4】 キトサンとりん酸カルシウム結晶(Ca
    O+P)の割合が99/1〜1/99(質量比)
    であり、且つキトサンとりん酸カルシウム結晶の合量と
    多価カルボン酸の割合が99.9/0.1〜80/20
    (質量比)である請求項1〜3のいずれか1項記載のキ
    トサン−りん酸カルシウム−有機酸複合体。
  5. 【請求項5】 りん酸カルシウム結晶がヒドロキシアパ
    タイトである請求項1〜4のいずれか1項記載のキトサ
    ン−りん酸カルシウム−有機酸複合体。
  6. 【請求項6】 多価カルボン酸が酒石酸、クエン酸、リ
    ンゴ酸、コハク酸から選ばれた多価カルボン酸である請
    求項1〜5のいずれか1項記載のキトサン−りん酸カル
    シウム−有機酸複合体。
  7. 【請求項7】 キトサン液にりん酸又は水溶性りん酸塩
    を加え、これを水溶性カルシウム塩又は水酸化カルシウ
    ム懸濁液に添加して沈殿物を生成させ、次いでこの沈殿
    物を多価カルボン酸またはその水溶性塩の水溶液に浸漬
    することからなるキトサン−りん酸カルシウム−有機酸
    複合体の製造方法。
  8. 【請求項8】 浸漬する多価カルボン酸またはその水溶
    性塩の水溶液の多価カルボン酸の濃度が0.01〜3質
    量%である請求項7記載のキトサン−りん酸カルシウム
    −有機酸複合体の製造方法。
  9. 【請求項9】 多価カルボン酸またはその水溶性塩が酒
    石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸またはこれらの水
    溶性塩から選ばれた多価カルボン酸またはその水溶性塩
    である請求項7又は8記載のキトサン−りん酸カルシウ
    ム−有機酸複合体の製造方法。
  10. 【請求項10】 多価カルボン酸またはその水溶性塩の
    水溶液に浸漬後の沈殿物を水熱処理することからなる請
    求項7〜9のいずれか1項記載のキトサン−りん酸カル
    シウム−有機酸複合体の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009254547A (ja) * 2008-04-16 2009-11-05 Tohoku Univ 骨再生材料およびその製造方法
CN101856515A (zh) * 2010-06-04 2010-10-13 西南大学 以壳聚糖和贝壳粉末为原料制备人工骨的方法
US7943597B2 (en) 2008-04-08 2011-05-17 Cypress Pharmaceutical, Inc. Phosphate-binding chitosan and uses thereof
JP2012210346A (ja) * 2011-03-31 2012-11-01 Kanagawa Acad Of Sci & Technol 組成物及びそれを用いた骨又は歯充填材の製造方法

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