JP2002332590A - 2ピース型オイルリングの部分めっき方法 - Google Patents

2ピース型オイルリングの部分めっき方法

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JP2002332590A
JP2002332590A JP2001142198A JP2001142198A JP2002332590A JP 2002332590 A JP2002332590 A JP 2002332590A JP 2001142198 A JP2001142198 A JP 2001142198A JP 2001142198 A JP2001142198 A JP 2001142198A JP 2002332590 A JP2002332590 A JP 2002332590A
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oil ring
plating
coating
plating layer
sio
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JP2001142198A
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Fumio Kiyota
文夫 清田
Shigeo Inoue
茂夫 井上
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Riken Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 2ピース型オイルリングの外周摺動面にのみ
めっき層を形成する方法を提供する。 【解決手段】 オイルリング本体全体にSiO2被膜を形成
し、外周摺動面のSiO2被膜(I)を除去し、外周摺動面に
めっき層を形成し、残部SiO2被膜(II)を除去する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関用の2ピ
ース型オイルリングの部分めっき方法に関し、特に2ピ
ース型オイルリングの外周摺動面にのみめっき層を形成
する部分めっき方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】往復動
内燃機関のピストンには通常2〜3本の圧縮リングと1
本のオイルリングが装着される。このオイルリングとし
てコイルエキスパンダー付きの2ピース型オイルリング
が使用される場合がある(特公平3-29979号)。
【0003】この種の2ピース型オイルリングは、シリ
ンダの内周面と摺動する摺動面を外周にそれぞれ有して
いる上下一対のレールがウェブで連結されている断面略
I字形の鋼製オイルリング(オイルリング本体)と、オ
イルリング本体を半径方向外方に押圧付勢するコイルエ
キスパンダとからなる。オイルリング本体は、その内周
側にコイルエキスパンダーを装着するための凹部を有
し、余剰のオイルをピストン溝奥に設けられた穴を通し
てクランクケース側に戻すための窓を多数有している。
オイルリング本体の上記摺動面(外周摺動面)には耐焼
付性、耐摩耗性等を付与する必要があり、そのためオイ
ルリング本体は、クロム含有鋼材に窒化処理を施した
り、鋳鉄又は鋼材に硬質クロムめっきを施したりするこ
とにより製造される。
【0004】近年ディーゼルエンジンの排気ガス対策と
して、高温の燃焼ガスを燃焼室に戻す際、循環する燃焼
ガスを冷却することによりその充填効率を上げたエンジ
ンの実用化が検討されている(クールEGR方式)。しか
しクールEGR方式のエンジンでは、硫黄分が極めて少な
い燃料を使用してもオイル中に硫酸が混入・蓄積される
ため、窒化処理したリングでは硫酸腐食により短期間に
大きな摩耗が発生することが明らかになってきた。この
ため硫酸による腐食摩耗に優れる硬質クロムめっき層を
外周摺動面に設けるのが望ましい。
【0005】しかし硬質クロムめっき層にはクラックが
発生しやすく、しかもそれが下地にまで貫通するために
下地の鉄素地が腐食され、めっき層の剥離や欠けが発生
する。これに対し特開昭62-56600号、特開平10-103519
号及び特開2000-17482号は、硬質クロムめっき層を多層
化することによりクラックを各層毎に発生させ、下地へ
のクラックの貫通を防ぐ方法を提案している。
【0006】しかしコイルエキスパンダ付の2ピース型
オイルリング本体は上述のように窓を有し、この窓部は
硬いめっき層を設けた後に機械加工により形成するのは
困難なため、めっき前に形成しておく必要があり、さら
にめっきを施す際は一般にオイルリング本体をめっき治
具に縦方向に段積みした形で取り付けた後めっき浴に浸
漬するため、めっき液は窓を通じてオイルリング本体の
内周面にも回り込み、窓部近傍の内周面にもめっき層が
形成されてしまう。このため内周面のめっき層を除去す
るための研磨加工が必要となる。まためっき時に発生す
る水素ガスは、段積みされた2ピース型オイルリング本
体の外周面を伝わってめっき浴から大気中に抜けていく
が、水素ガスの発生量が窓部とその他の部分とでは異な
るため、窓部の上に位置する外周面や外周摺動面のめっ
き層厚み及びめっき形状が、窓の無い部分のそれらとは
異なったものとなる。このためレールの真円度が悪化
し、最終形状に仕上げた後もこの影響が残り、シリンダ
壁の追従性が悪く潤滑油の制御性が悪化する。また外周
摺動面の各角部では電流密度が高くなることから、その
部分のめっき層が厚くなり、外周摺動面の両側面をプロ
フィル研削する際の加工除去量が多くなる。電気めっき
は大量の電気エネルギーを必要とするが、上述のように
本来めっきが必要な外周摺動面だけでなく、不要な部分
にまでめっきを施していた。このため電気効率が悪く、
さらにめっき後の機械加工も必要とするためコストが高
いものとなっていた。
【0007】よってオイルリング本体の外周摺動面にの
みめっき層を形成することができれば、めっきにかかる
コストを削減することができる。このような部分めっき
方法として、例えば特開平07-022557号は部分めっき範
囲外の部分に予め電気絶縁性材料を塗布する方法を提案
している。しかし上記電気絶縁性材料として具体的に用
いられるのはポリイミド樹脂であり、このような樹脂被
膜を用いる場合、オイルリング本体との密着性が悪く、
まためっき後の樹脂被膜の除去が容易でないためホーニ
ング等により除去する必要があった。
【0008】従って、本発明の目的は、上記従来技術の
欠点を解消し、2ピース型オイルリングの外周摺動面に
のみめっき層を形成する方法であって、特に薄膜でも電
気絶縁性に優れ、オイルリング本体との密着性が良く、
塗布が容易であり、部分的な除去が容易な被膜を用いた
部分めっき方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題に鑑み鋭意研究
の結果、本発明者らは、シリンダの内周面と摺動する外
周摺動面をそれぞれ有している上下一対のレールがウェ
ブで連結されている断面略I字形のオイルリング本体
と、オイルリング本体を半径方向外方に押圧付勢するコ
イルエキスパンダとからなる2ピース型オイルリングの
部分めっき方法において、オイルリング本体全体にSiO2
被膜を形成し、外周摺動面のSiO2被膜(I)を除去し、外
周摺動面にめっき層を形成し、残部SiO2被膜(II)を除去
することにより、上記問題を解決できることを見出し、
本発明に想到した。
【0010】すなわち、本発明の2ピース型オイルリン
グの部分めっき方法は、(1) オイルリング本体全体にSi
O2被膜を形成し、(2) 外周摺動面のSiO2被膜(I)を除去
し、(3) 外周摺動面にめっき層を形成し、(4) 残部SiO2
被膜(II)を除去することを特徴とする。
【0011】SiO2は薄膜(1μm以下)で十分な電気絶
縁性があり、めっき浴中に溶出せず、オイルリング本体
との密着性が良く、塗布が容易であり、部分的な被膜の
除去が容易であり、被膜が残存しても2ピース型オイル
リングとしての性能に問題がないため、これを用いるこ
とにより効率的に部分めっきを行うことができる。SiO2
被膜は、特にペルヒドロポリシラザン含有溶液をディッ
プ法により塗布後、焼成することにより形成するのが好
ましい。これにより緻密なSiO2被膜が得られる。まため
っき層形成後の残部SiO2被膜(II)の除去は、フッ酸含有
溶液中への浸漬により行うのが好ましい。これにより効
率が向上し、低コスト化に寄与できる。
【0012】めっき層としては、多層化硬質クロムめっ
き層を形成するのが好ましい。これによりクラックを各
層ごとに発生させることができるため、クラックが下地
にまで貫通するのを防ぐことができ、クラックを伝播し
て下地の鉄素地が腐食されたり、めっき層の剥離や欠け
を防止することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の2ピース型オイル
リングの部分めっき方法を、図面を参照して詳細に説明
する。
【0014】図1及び図2は、本発明の部分めっき方法
を適用する2ピース型オイルリングを示す断面図及び部
分斜視図である。2ピース型オイルリングはオイルリン
グ本体1とコイルエキスパンダ2とからなる。オイルリ
ング本体1の基材は特に限定されないが、特にステンレ
ス鋼材(SUS)、耐熱鋼材(SUH)、高炭素―高クロム軸
受鋼材(SUJ)、ばね鋼材(SUP)、球状黒鉛鋳鉄、シリ
コンクロム鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、ピアノ
線(SWRS)等が好ましい。
【0015】オイルリング本体1は断面略I字形をな
し、上下のレール3及び4と、これらを連結する薄肉の
真っ直ぐなウェブ5とからなっている。ウェブ5には円
周方向に等間隔をおいて窓孔6が複数形成されている。
上側のレール3の外周側突起部7は、外周摺動面8とこ
れに連なる上下の傾斜面9及び10とからなる断面略台形
状をなし、外周側に向かって幅は狭くなっている。下側
のレール4は上側のレール3と構成は同一であり、11は
外周側突起部、12は外周摺動面、13及び14は上下の傾斜
面である。外周摺動面8及び12にめっき層19及び20を形
成する。オイルリング本体1はめっき層19及び20の表面
においてシリンダ内周面と接触することになる。
【0016】上下の外周側突起部7及び11の間に、外周
側突起部7及び11とウェブ5により油溝23が形成されて
いる。この油溝23は上下のレール3及び4で掻き取った
シリンダ内周面の潤滑油の受容溝である。掻き取った潤
滑油は直接下降してオイルパンに戻されるが、一部は窓
孔6を通じてオイル戻し孔25を経由し、やはりオイルパ
ンに戻される。
【0017】上下のレール3及び4の内周側突起部17及
び18とウェブ5とでコイルエキスパンダ収容溝24が形成
されている。この溝24内にコイルエキスパンダ2が、内
周側突起部17及び18の内側の対向する傾斜面21及び22に
接触するようにして配設され、オイルリング本体1を半
径方向外方に押圧付勢し、めっき層19及び20の表面をシ
リンダ内周面に押接する。コイルエキスパンダ2は線材
をコイル状に巻いたものを環状に形成したもので、図で
は円の一部を切り欠いた断面の線材を示しているが、線
材の断面形状は円やその他の形状でもよい。
【0018】本発明の部分めっき方法は(1) SiO2被膜を
形成する工程、(2) 外周摺動面のSiO2被膜(I)を除去す
る工程、(3) めっき層を形成する工程、(4) 残部SiO2
膜(II)を除去する工程からなる。以下各工程を図3に示
すスキームを参照して説明する。
【0019】(1) SiO2被膜の形成工程 図3(1)は部分めっきを施すオイルリング本体1の断面
を示す。まずシリカ(SiO2)被膜26をオイルリング本体
1全体に形成する(図3(2)参照)。SiO2被膜は絶縁性
が高く、緻密化も容易であることから、薄い膜厚(1μm
以下)で済む上、めっき浴中に溶出せず、オイルリング
本体との密着性に優れる。また部分的な除去及びめっき
後の除去が容易である上、めっき後に残存しても2ピー
ス型オイルリングの基本性能には問題がない。
【0020】SiO2被膜は、ペルヒドロポリシラザン、有
機ケイ素化合物及び/又はその加水分解物等を溶剤に溶
解又は分散した溶液をオイルリング本体に塗布した後、
乾燥又は加熱硬化することにより得られる。緻密な被膜
が得られる点からペルヒドロポリシラザンを用いるのが
好ましい。ペルヒドロポリシラザンとしては東燃(株)製
東燃ポリシラザンL110等の市販品を用いることができ
る。
【0021】ペルヒドロポリシラザンは−(SiH2NH)−を
基本ユニットとする有機溶剤に可溶な無機ポリマーであ
り、塗布後に大気中で低温度にて焼成することにより水
分や酸素と反応し、緻密且つ高純度のSiO2被膜が得られ
る。なおペルヒドロポリシラザンの分子量は特に限定さ
れず、数平均分子量100〜50000のものが使用可能であ
る。また別の溶媒を添加して用いることも可能である。
これらの溶媒としては、アルコール、エーテル、ケト
ン、エステル、芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0022】SiO2被膜は有機ケイ素化合物又はその加水
分解組成物により形成しても良い。有機ケイ素化合物は
一般式(1): R1 aSi(OR2)4-a ・・・(1) (R1及びR2はそれぞれ独立にアルキル基、アリル基、エ
ポキシ基、メタクリロキシ基、グリシドキシ基又はアミ
ノ基を表す。またaは0〜2の整数である。)により表
されるものが好ましい。R1は炭素数1〜7の置換基、R2
は炭素数1〜6の置換基であるのが好ましい。例えばメ
チルシリケート、エチルシリケート、n-プロピルシリケ
ート等が挙げられる。また有機ケイ素化合物は、硬化温
度を下げ、硬化をより進行させるために加水分解してか
ら使用するのが好ましい。また別の溶媒を添加して用い
ることも可能である。これらの溶媒としては、アルコー
ル、エーテル、ケトン、エステル、芳香族炭化水素等が
挙げられる。この場合硬化促進及び低温硬化を目的とし
て、有機ケイ素化合物を含む組成物に硬化剤を添加して
もよい。
【0023】ペルヒドロポリシラザン、有機ケイ素化合
物及び/又はその加水分解物等を含む組成物溶液(塗布
液)の塗布方法は、ディップ法、スプレー法等公知の方
法から適宜選択することができるが、操作が簡単で且つ
膜厚の制御性に優れているディップ法が好ましい。ディ
ップ法では、塗布液の中にオイルリング本体を浸漬し引
き上げることにより簡単に塗布液が付着し、膜厚の制御
は塗布液の濃度を変えることにより行うことができる。
ディップ法の操作は0〜40℃、20〜40%RHにおいてオイ
ルリング本体を塗布液に浸け、10〜500mm/minで引き上
げるのが好ましい。10mm/min未満だと膜厚分布が大きく
なるため好ましくない。また500mm/min超だと膜厚が薄
くなり過ぎるため好ましくない。また塗布液の粘度は0.
1〜500mPa・sに調製するのが好ましい。
【0024】材料樹脂としてペルヒドロポリシラザンを
用いた場合は、ディップ法によりハードコート組成物溶
液をオイルリング本体に塗布後、100〜1000℃で硬化さ
せるのが好ましく、200〜500℃で硬化させるのがより好
ましい。加熱温度は薄膜の硬化性能、オイルリング本体
の基材等を考慮して決めるのが好ましい。また硬化時間
は0.1〜3時間が好ましい。
【0025】上述の方法により平均膜厚0.01μm〜1μm
の均一なSiO2被膜が得られる。膜厚が0.01μm未満だと
電気絶縁性が低下し、1μmを超えると被膜にクラック
が入り易くなるので好ましくない。
【0026】以上塗布による方法を説明したが、必要に
応じて真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ
リング法、イオンビームアシスト法等により真空中でSi
O2被膜を蒸着してもよい。
【0027】(2) 外周摺動面のSiO2被膜(I)の除去工程 めっきの際、通常はめっき治具にオイルリング本体を段
積みした形で行うので、その際の導通を確保するために
オイルリング本体1の上面15及び/又は下面16のSiO2
膜を除去するのが好ましい。図3(3)は上面15及び下面1
6両方のSiO2被膜を除去する場合を示す。この時両頭研
磨機等により研磨除去するのが好ましい。次いでめっき
治具に複数のオイルリング本体を段積みした後、外周摺
動面のSiO2被膜(I)を除去する(図3(4)参照)。この時
研磨剤(SiC等)を塗布した研磨紙にて除去するのが好
ましい。
【0028】(3) めっき層の形成工程 次いで外周摺動面8及び12にめっき層19及び20を形成す
る(図3(5)参照)。めっき層としては多層の硬質クロ
ムめっき層が好ましい。多層化することによりクラック
を各層ごとに発生させることができ、その結果クラック
が下地にまで貫通するのを防ぐことができるため、クラ
ック伝播による下地の鉄素地の腐食、めっき層の剥離・
欠け等を防止することができる。
【0029】多層化硬質クロムめっき層の形成は公知の
方法に従って行えばよく、硬質めっき工程と逆電工程と
を繰返し行い、複数の硬質めっき層を積層化するのを基
本とする。逆電処理により硬質クロムめっき層が多孔化
されるため、めっき層摺動面に形成された微細な亀裂
(溝すなわち溝状に開口する空孔部)が潤滑油溜まりと
して機能し、使用初期において耐焼き付き性が高くな
る。また溝は多層化硬質クロムめっき層の表面に実質的
に網目状に分布するので、油だまり効果に異方性がな
い。めっき層摺動表面が摩耗すると、多層化硬質クロム
めっき層の内部に分布する空洞が新たに表面に露出して
溝となるため、常に適量の潤滑油をめっき層摺動面に保
持できる。従って摩耗が進行しても耐焼き付き性及び耐
摩耗性を良好に維持できる。ここで「溝」という用語を
使用するのは、多層化硬質クロムめっき層の空孔部が表
面に開口した形状が溝状であるためであり、溝状開口部
をチャンネルと呼ぶこともできる。また多層化硬質クロ
ムめっき層の内部に分布する空洞は厚さ方向に独立して
いるので、多層化硬質クロムめっき層の破壊脱落が抑制
される。
【0030】逆電処理により多孔化された多層化硬質ク
ロムめっき層中の溝は1〜10μmの幅で開口し、その溝
の表面分布密度が300〜1500本/cm2 であるのが好まし
い。溝幅が1μm未満であると油だまりの効果が期待で
きない。また10μm超であると運転時に溝が崩れてしま
い、やはり油だまりの効果を十分に発揮することができ
ない。溝幅は逆電処理の条件で調整することができる。
【0031】めっき層を形成する前に電解研磨等の処理
を施すのが好ましい。電解研磨工程ではオイルリング本
体をめっき槽に浸漬し、オイルリング本体を陽極とし、
対極を陰極として10〜60A/dm2の電流密度で10〜120秒間
電流を印加する。めっき槽中のめっき浴は、CrO3とSO4
2-からなる通常のクロムめっき浴に珪フッ化ナトリウム
等の添加剤を加えたケイフッ化浴が好ましい。これによ
りめっき層間に優れた密着性を得ることができる。
【0032】硬質めっき工程では電解研磨工程の後に極
性を急速反転する。即ちオイルリング本体を陰極とし、
対極を陽極として45〜60A/dm2の電流密度で2〜100分間
電流を印加する。
【0033】逆電工程では硬質めっき工程の後に極性を
急速反転する。即ちオイルリング本体を陽極とし、対極
を陰極として20〜60A/dm2の電流密度で2〜12分間電流
を印加する。即ち硬質めっき工程で析出した硬質めっき
層が、予め設定された厚さだけ残るように電流を印加
し、硬質クロムめっき層の表面部分を部分的に溶出させ
る。この工程により硬質クロムめっき層の表面に微細亀
裂(溝)が多数かつ均一に形成される(エッチング)。
このようにして所望のめっき層厚さになるまで必要に応
じて硬質めっき工程と逆電工程とを繰返し行う。電流密
度が20A/dm2 未満であると十分な溝が形成できず、また
60A/dm2 超であると溝のサイズ及び分布が不均一にな
る。また逆電処理時間が2分未満であると十分な溝が形
成できず、また12分超であると溝のサイズ及び分布が不
均一になる。
【0034】溝の分布密度(本数)が300本/cm2 未満
であると、潤滑油の油だまりとしての役割が弱く、初期
なじみ性向上の効果は少ない。また1500本/cm2 超であ
ると初期なじみが終了しない時点で被膜が崩れ、潤滑油
の油だまりができず、やはり効果がなくなる。
【0035】多層化硬質クロムめっき層は一層5〜30μ
mの層を5〜20層積層化し、80〜200μmの厚さにするの
が好ましい。多層化硬質クロムめっき層の厚さが80μm
未満であると耐磨耗性及び耐スカッフィング性の持続性
が不十分であり、また200μm超であるとそれに応じた
効果の向上は得られず、欠損やクラックが発生しやすく
なる。また多層化硬質クロムめっき層は、その硬度Hvを
700〜1100になるように形成するのが好ましい。
【0036】クロム酸を主体とした浴の温度は53〜58℃
が好ましい。浴温度が53℃未満であると溝を十分に効率
良く形成することができず、また58℃超であると溝のサ
イズ及び分布が不均一になる。
【0037】また多層化硬質クロムめっき層の上に、特
開2000-129492号が開示している窒化珪素粒子分散ニッ
ケル−コバルト−燐合金複合めっき層を形成することが
できる。これにより良好な初期なじみ性と耐スカッフィ
ング性を備え、かつ初期なじみ終了後も長期間耐スカッ
フィング性に優れているオイルリング本体が得られる。
【0038】本実施例は多層の硬質クロムめっき層を形
成する場合について説明したが、本発明はこれに限定さ
れず、セラミックスの硬質粒子や固体潤滑剤が分散した
ニッケルめっきにも適用できる。さらに電気めっきに限
定されず、各種の無電解めっきにも適用できる。
【0039】(4) 残部SiO2被膜(II)の除去工程 次いで残部SiO2被膜(II)を除去する(図3(6)参照)。
残部SiO2被膜(II)はフッ酸を主体とする液中に浸漬する
ことで容易に除去でき、効率的である。例えばフッ硝酸
液(フッ酸水溶液と硝酸水溶液の混合溶液)中に浸漬
し、溶解除去すればよい。この時窓孔部6に付着したSiO
2被膜も勿論除去される。残部SiO2被膜(II)の除去は必
要に応じてラッピング加工等により行ってもよい。この
ようにして外周摺動面にのみめっき層を有するオイルリ
ングが得られる(図3(6)参照)。図3(6)におけるA部
の拡大図を図4に示す。めっき層19は表面に溝を有し、
かつ内部に厚さ方向に独立した微細な空洞を有してい
る。
【0040】
【実施例】本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではな
い。
【0041】実施例1 幅 W1:4.0mm、厚さ T:2.5mm、 外周摺動面の幅 W2
0.3mmの断面形状を有し(図5参照)、窓部(寸法:3.0
×0.75mm、長方形状)が5mmピッチで設けられたバネ鋼
(JIS-SUP12材)を呼び径が122mmとなるように連続的に
コイリングし、その後合口部を切断した後、450℃で30
分保持して残留歪を除去し、酸洗い後に水洗乾燥してオ
イルリング本体とした。このオイルリング本体を、ペル
ヒドロポリシラザンのキシレン溶液(東燃(株)製 東燃
ポリシラザンL110)をキシレンでさらに希釈した溶液
(ペルヒドロポリシラザン濃度:10重量%)に浸漬し
(25℃、30%RH、塗布液の粘度0.7mPa・s)、100mm/mi
n.で引き上げて乾燥し、大気中400℃で1時間の焼成を
行い、約1μmの厚さのSiO2被膜を各オイルリング本体
全体に形成した。
【0042】次に両頭研磨機により、各オイルリング本
体の両上下面を約0.03mm研磨し、SiO2被膜を除去すると
ともに下素地面も一部研磨し、めっき治具に縦方向に段
積みした形でとりつけた(但し段積みされた状態におけ
る両端のリングは他のリングと接触する方の面のみ研磨
した)。その状態でめっき治具を回転させつつ外周摺動
面のSiO2被膜(I)を研磨剤(SiC)を塗布した研磨紙によ
り除去した。このめっき治具を、硬質クロムめっき浴
(水1Lに対して無水クロム酸250g、95%硫酸2.5gを添
加)に浸漬し、逆電(リングが陽極)状態において、外
周摺動面を電解除去(15A/dm2、1分間)して表面を清
浄化した後、正電(50A/dm2、15分間)と逆電(25A/d
m2、4分間)を繰り返し、1層の厚さが約10μmのポー
ラスなめっき層を12層形成した。
【0043】めっき後に各オイルリング本体をめっき治
具から取り外し、そのうち20本について角部の盛り上が
った多層化硬質クロムめっき層を平滑にするため、両面
機で当該めっき層の側面を研磨した後、めっき層摺動面
をラップ仕上げ(ラッピング加工)した。次いで砥石形
状が最終形状に成形してある砥石を用い、めっき層摺動
面の寸法を確保するためのプロフィール研磨を行い最終
形状とした(オイルリング本体(A))。
【0044】残る240本については、フッ硝酸液(49重
量%フッ酸水溶液:60重量%硝酸水溶液=1:100)中で1
0分浸漬し、残部SiO2被膜(II)を完全に溶解除去した
後、上記と同様の研磨方法により最終の形状に仕上げた
(オイルリング本体(B))。形成した多層化硬質クロム
めっき層の写真を図6に示す。表面に微細亀裂を有する
とともに厚さ方向に独立した微細な空洞が内部に分布し
ていた。
【0045】オイルリング本体(A)及び(B)にSUS304のコ
イルエキスパンダーをとりつけ、排気量10520cc、6気
筒のクールEGR付きディーゼルエンジンにて、回転数218
0rpm、4/4Load、水温(出口)95℃、油温110℃、EGR率1
9%及びEGR出口温度70℃の条件で100時間の耐久テスト
を行った結果、外周摺動面の摩耗はオイルリング本体
(A)及び(B)ともに平均0.5μmであり問題なかった。ま
たオイルリング本体(A)及び(B)のそれぞれとコイルエキ
スパンダー間の摩耗量も問題なかった。
【0046】以上の通り、図面を参照して本発明の2ピ
ース型オイルリングの部分めっき方法を説明したが、本
発明はそれに限定されず、その趣旨を変更しない限り種
々の変更を加えることができる。
【0047】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
2ピース型オイルリングの外周摺動面のみの部分めっき
が容易に行えるため、従来のように外周側全体にめっき
する場合に比べて約1割の表面積へめっきすればよく、
めっきに必要な薬品代及び電気代が大幅に節約できる。
まためっき液への鉄の溶出も少なく、めっき浴の管理が
容易となり、めっき浴が長寿命となる。めっき後は、め
っき層のみ均一な膜厚になるよう加工を施せばよいこと
から、加工代が少なく、研磨砥石の寿命が長く、短時間
での加工で済む上、高い形状精度が得られる。さらに内
周側にめっきがされないことから、内周面の加工が不要
となる。以上のことから大幅なコスト低減ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ピストンとシリンダ壁との間に置かれた、本
発明に係る2ピース型オイルリングを示す断面図であ
る。
【図2】 図1に示す2ピース型オイルリングの斜視図
である。
【図3】 本発明の部分めっき工程を示すフローチャー
トである。
【図4】 図3(6)中Aで示す部分の拡大図であり、め
っき層を示す断面図である。
【図5】 本発明の実施例におけるオイルリング本体の
寸法を示す図である。
【図6】 本発明の実施例におけるオイルリング本体の
めっき層部分の写真である。
【符号の説明】
1・・・オイルリング本体 2・・・コイルエキスパンダー 3、4・・・レール 5・・・ウェブ 6・・・窓孔部 8、12・・・外周摺動面 19、20・・・めっき層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F02F 5/00 F02F 5/00 N 301 301A Fターム(参考) 4K024 AA02 AB04 AB08 AB19 BA02 BB04 BC06 CA08 CB02 FA07 FA08 FA23 GA03

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリンダの内周面と摺動する外周摺動面
    をそれぞれ有している上下一対のレールがウェブで連結
    されている断面略I字形のオイルリング本体と、前記オ
    イルリング本体を半径方向外方に押圧付勢するコイルエ
    キスパンダとからなる2ピース型オイルリングの部分め
    っき方法において、(1) 前記オイルリング本体全体にSi
    O2被膜を形成し、(2) 前記外周摺動面のSiO2被膜(I)を
    除去し、(3)前記外周摺動面にめっき層を形成し、(4)
    残部SiO2被膜(II)を除去することを特徴とする2ピース
    型オイルリングの部分めっき方法。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の2ピース型オイルリン
    グの部分めっき方法において、ペルヒドロポリシラザン
    含有溶液を塗布後、焼成することにより前記SiO2被膜を
    形成することを特徴とする2ピース型オイルリングの部
    分めっき方法。
  3. 【請求項3】 請求項2に記載の2ピース型オイルリン
    グの部分めっき方法において、前記ペルヒドロポリシラ
    ザン含有溶液をディップ法により塗布することを特徴と
    する2ピース型オイルリングの部分めっき方法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の2ピー
    ス型オイルリングの部分めっき方法において、前記残部
    SiO2被膜(II)の除去を、フッ酸含有溶液中への浸漬によ
    り行うことを特徴とする2ピース型オイルリングの部分
    めっき方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載の2ピー
    ス型オイルリングの部分めっき方法において、前記めっ
    き層として多層化硬質クロムめっき層を形成することを
    特徴とする2ピース型オイルリングの部分めっき方法。
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