JP2002331554A - 結晶性樹脂成形品とその射出成形方法 - Google Patents

結晶性樹脂成形品とその射出成形方法

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JP2002331554A
JP2002331554A JP2001142154A JP2001142154A JP2002331554A JP 2002331554 A JP2002331554 A JP 2002331554A JP 2001142154 A JP2001142154 A JP 2001142154A JP 2001142154 A JP2001142154 A JP 2001142154A JP 2002331554 A JP2002331554 A JP 2002331554A
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resin
carbon dioxide
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pressure
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Norihiko Furuya
紀彦 古谷
Masato Kuramitsu
匡人 倉光
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 結晶性樹脂の分子量分布、樹脂組成を制限す
ることなく、製品デザインの自由度を損なわずに、結晶
性樹脂成形品に求められている寸法精度を向上させるこ
と、疲労破壊に至るまでの寿命を向上させること、流動
距離を確保することによってゲート点数を削減する。 【解決手段】 結晶性樹脂の融点より15℃高い温度、
かつ、せん断速度γaが1.0×103から1.0×1
6の範囲において、結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物
が有する粘度ηaが、ηa≦140000×γa-0.78
の範囲にあり、この結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物を
金型キャビティへ充填することにより得られることを特
徴とする結晶性樹脂成形品。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、結晶性樹脂成形品
とその射出成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリアセタール(以下「POM」
と略す)系樹脂、ポリアミド(以下「PA」と略す)系
樹脂など、結晶性樹脂による射出成形品は、非晶性樹脂
と比較して成形収縮率が大きい、結晶化による体積収縮
が大きい、溶融時の粘度が低い、融点を境に流動性が極
端に変わるなどといった特徴を持ち、また、成形後も結
晶化の進行に伴い、成形品の体積が徐々に小さくなる。
このため、製品設計、金型設計、成形条件に制約を受け
ることが多く、寸法精度を高いレベルで維持することが
困難である。
【0003】一方、結晶性樹脂は、その用途に適した流
動性を有する結晶性樹脂が使用されている。例えば、繰
り返し荷重による疲労特性、靭性、耐衝撃性が求められ
る成形品には、平均分子量の大きい結晶性樹脂が用いら
れる。しかし、平均分子量の大きい結晶性樹脂は、溶融
時の粘度が比較的高いことにより、金型キャビティの流
動末端部まで充填しにくい。逆に、平均分子量が小さい
結晶性樹脂は流動性が高いことにより、金型キャビティ
の流動末端部まで充填しやすい。また、金型キャビティ
内への圧力伝達も良好であるので、金型へ樹脂表面が密
着しやすく、寸法精度の高い成形品が得られやすいが、
繰り返し荷重による疲労特性、靭性、耐衝撃性は低下す
る傾向にある。
【0004】このため、高い寸法精度を有し、かつ、疲
労特性、靭性、耐衝撃性に優れた結晶性樹脂成形品を得
ることは困難であった。金型設計によって、高い寸法精
度を有する成形品を得る方法としては、ゲート点数を増
やし、流動末端部までの流動距離を短くする、樹脂温度
または金型温度を高くして金型キャビティ内で樹脂の粘
度が上昇する速度を遅くするなどの工夫により、金型内
に充填された樹脂全体に圧力がかかりやすい状態をつく
ることが多く見られる。
【0005】ゲート点数を増やすことは、スプルー、ラ
ンナー部分の容積を増加させることを意味し、その結
果、成形サイクル毎に製品にならない部分を増やすほ
か、金型構造が複雑になるなど、製造の観点からは好ま
しくないといえる。そのほか、樹脂温度を高くする方法
は樹脂の分解を促す、金型温度を高くする方法は成形サ
イクルが長くなるといった不具合を生じる。一方、結晶
性樹脂の射出成形において、成形後の寸法安定性を確保
する方法としては、金型温度を高くして成形直後の収縮
量を大きくしてその後の寸法変化量が小さくなるように
する、冷却時間を長く採り金型内で十分収縮させた後に
取り出す、成形後にアニール処理を行うことにより、短
時間で結晶化を促進させ体積を収縮させるなどの手法が
採用されている。
【0006】金型温度を高くする、冷却時間を長くする
手法は成形サイクルが長くなるといった不具合を生じ、
アニール処理は、成形後の後処理であるため成形工程の
増加を招くほか、アニール処理自体がばらつきを生じた
場合、成形品寸法のばらつきの原因となることが懸念さ
れる。一方、従来の射出成形法では、使用される樹脂の
溶融粘度によって、射出圧力、充填圧が変化する。溶融
粘度が高い樹脂は、樹脂射出時に高い射出圧力が必要で
あり、これは成形品に歪みを多く残留させる結果とな
る。この成形品に残留する成形歪は、「残留歪み」とも
いわれる。この残留歪は成形後、徐々に緩和するが、こ
れは、成形品の変形、収縮によることが多い。これは、
金型構造、成形条件などが適切ではない場合にも見られ
る。
【0007】また、金型キャビティ内に充填された樹脂
にかかる圧力は均一であることが好ましいが、ゲート付
近と流動末端部では圧力分布が不均一な場合がある。こ
れは、流動末端部分へ十分な圧力が伝達しにくいことを
意味し、流動末端部分の外観不良、ボイドの発生、ヒケ
の発生、成形収縮の拡大や不均一などの原因となる。従
って、樹脂を金型キャビティへ充填する際には、残留歪
が残りにくい適度な圧力が、キャビティ全体に均一に伝
達することが好ましいといえる。
【0008】成形品の歪みが少なく、寸法精度を向上さ
せる射出成形方法としては、射出成形時の樹脂温度設定
を高くして樹脂の溶融粘度を低下させることが考えられ
る。通常、結晶性樹脂を成形する際の樹脂温度の設定幅
は、結晶性樹脂のそれより狭い。通常は融点より5〜3
0℃高い範囲、多くは融点より10〜20℃高い範囲で
実施される。これは、融点より5℃程度高い温度領域ま
では樹脂の粘度が高いため、充填が困難であるほか、樹
脂の溶融が十分ではなく、溶融部分と未溶融部分が混在
しやすい温度領域といえる。成形品中に未溶融部分が混
入した場合には、強度低下などの不具合が懸念される。
【0009】一方、成形時の樹脂温度が融点より30℃
以上高い温度領域では、樹脂の分解を促し、成形品表面
にシルバー(または「銀条痕」)と呼ばれる外観不良、
成形品自体の変色が発生する恐れがあるほか、発生した
分解ガスにより金型の汚れが発生しやすくなる。これ
は、樹脂の劣化不具合の発生が心配されるほか、作業環
境の悪化、金型の分解掃除作業の発生など、作業性の低
下を招くため好ましくない。従って、粘度の高い結晶性
樹脂の流動性を向上させるために樹脂温度を高くする方
法には、限界があるといえる。
【0010】また、樹脂温度設定を高くすることによ
り、冷却固化する際に樹脂自体の容積変化量が大きくな
るため、ヒケ、ボイドなどの発生原因になりやすいほ
か、樹脂の冷却に時間を要するため、生産性の低下が懸
念される。一方、金型温度を高くすることにより、金型
キャビティ内での樹脂温度の低下、粘度の上昇を抑える
ことができる。しかし、金型温度を高くした場合には、
金型の温度調節に用いる媒体として水が使用できないた
め、水蒸気またはオイルが使用されることが多く、取り
扱いが煩雑になるほか、金型内に充填された樹脂の冷却
時間が長くなるため、必然的に成形サイクル時間が長く
なるほか、取り出し時の成形品寸法が小さくなるといっ
た問題が発生しやすい。
【0011】また、金型温度を高めた射出成形で、冷却
時間が十分でなく、樹脂の冷却が不十分である場合に
は、取り出し時の成形品温度が高い状態にある。このた
め、金型から成形品を取り出した後、成形品自体の温度
が雰囲気温度まで徐々に下がるまでの間に、体積収縮
や、自重による変形を発生する恐れがある。これは寸法
精度を悪化させる原因となり、好ましくない。樹脂を金
型キャビティへ充填時のみ、金型の表面温度を極端に高
くする射出成形方法としては、特開昭62−58287
号公報「ゴム強化ポリスチレン樹脂の射出成形方法」、
特開昭62−58288号公報「ABS樹脂の射出成形
方法」でそれぞれ公開されている。これらは、共に金型
を開いた状態で金型間にインダクターを挿入し、金型表
面を加熱することによって、表面が滑らかであり、金型
転写性良好な結晶性樹脂成形品を得る射出成形法であ
る。
【0012】これらの射出成形法では、成形サイクル中
に、金型間にインダクターまたは高周波誘導加熱コイル
を挿入し、金型表面を加熱し、金型間からインダクター
または高周波誘導加熱コイルを引き出す工程が必要であ
る。この射出成形法をポリアミド樹脂に応用する場合、
金型温度を1.82MPa荷重時の熱変形温度(ナイロ
ン66樹脂では概ね70℃)以上、好ましくは融点以上
(ナイロン66樹脂では概ね255〜265℃)まで加
熱する必要がある。
【0013】また、金型表面を加熱する工程を有するの
で成形サイクルが伸び、生産性に問題があるほか、金型
キャビティへ充填された樹脂が冷却されにくいため、バ
リが発生しやすく、保圧を十分かけることができないた
め、ヒケの発生が懸念される。また、上記インダクター
または高周波誘導加熱コイルの形状に制約があるため、
平坦な形状の成形品に限定される点も、成形品の製品デ
ザインの自由度が制約を受けるため好ましくない。
【0014】一方、高速射出成形法、ガスアシスト成形
法等の新たな成形方法が、寸法精度と寸法安定性を向上
させた結晶性樹脂の射出成形方法として提案されてい
る。高速射出成形法は、結晶性樹脂を高速で射出するこ
とにより、金型からの冷却による溶融粘度上昇を防ぐと
共に、高いせん断力で溶融粘度を低下させ、キャビティ
内の圧力差を小さくする効果がある。また、射出時間の
減少効果も得られ、生産性も向上する。しかし、せん断
発熱による樹脂の劣化、高速射出によるバリの発生、金
型キャビティ端部のガス溜まりでの断熱圧縮による樹脂
ヤケの発生などに留意する必要がある。
【0015】ガスアシスト成形法は、一般的には樹脂中
に圧縮されたガスを注入することにより、成形品内に中
空部を形成する。この圧縮ガスにより成形品内部から保
圧効果を持たせ、成形品のヒケの発生を抑える効果があ
る。圧縮ガスによる保圧効果は、通常の射出成形法にお
ける保圧と比較して低圧であるほか、流動末端部分まで
が保圧の効果が期待できる。このため、残留歪みが少な
く、反りなど成形品の変形も低減でき、寸法精度が向上
することが期待できる。しかし、成形品の形状によって
は、ガスの注入口の設置場所に制限を受ける場合があ
り、その効果を十分に発揮できない場合がある。
【0016】一方、J.Appl.Polym.Sc
i.,Vol.30,2633(1985)など、多く
の文献に示されるように、二酸化炭素を樹脂に吸収させ
ると、樹脂の可塑剤として働き、ガラス転移温度を低下
させることが知られているが、樹脂の成形加工に広く応
用されるには至っていない。特開平5−318541号
公報には、二酸化炭素や窒素などのガスを熱可塑性樹脂
中に含ませ、キャビティ内のガスを除去しながら該樹脂
をキャビティに充填することで、熱可塑性樹脂の流動性
を向上させ、強度や外観低下のない成形品を得る方法が
示されている。しかし、この方法は、ガスに二酸化炭素
を使用した場合、最大でも約0.18重量%と樹脂中に
含まれるガスの量が少なく、十分な流動性向上の効果を
得ることは難しく、高い寸法精度と寸法安定性を得るこ
とは難しいといえる。
【0017】また、WO98/52734号公報には、
熱可塑性樹脂の射出成形において、二酸化炭素を0.2
重量%以上溶解して粘度を低下させた溶融樹脂を、あら
かじめ溶融樹脂のフローフロントで発泡が起きない圧力
以上に二酸化炭素などのガスにより加圧状態に保った金
型キャビティに充填する方法が示され、型表面の再現
性、光沢度の向上、ウエルドラインが目立たなくなる、
型表面のシャープエッジの再現性、微細な型表面の凹凸
の再現性などに対して効果的であることが記載されてい
る。
【0018】しかし、該公報の実施例などに記載されて
いる、樹脂を金型キャビティへ充填した後、樹脂を加圧
保持する工程を有するが、この際の圧力(以下「保圧」
という)は、充填圧の89〜93%の範囲にある。しか
し、充填圧の89〜93%に相当する保圧は、バリが発
生する恐れがあるほか、成形品に内部に発泡部分が形成
されにくく、ヒケ、反りなど、主に成形後に発生する不
具合を解決することが困難である。また、熱可塑性樹脂
に二酸化炭素を効率的に溶解させる方法、溶解条件を開
示するには至っていない。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、結晶性樹脂
の分子量分布、樹脂組成を制限することなく、製品デザ
インの自由度を損なわずに、結晶性樹脂成形品に求めら
れている寸法精度を向上させること、疲労破壊に至るま
での寿命を向上させること、流動距離を確保することに
よってゲート点数を削減することを課題とする。具体的
には、結晶性樹脂成形品の精度向上、長寿命化、ゲート
点数の削減による金型構造の簡略化を成形方法の改良に
よって可能とすることにある。
【0020】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、結晶性樹
脂の分子量分布、樹脂組成を制限することなく、製品デ
ザインの自由度を損なわずに、結晶性樹脂に求められて
いる成形品の精度を向上させること、疲労破壊に至るま
での寿命を向上させること、流動距離を確保することに
よってゲート点数を削減することを成形方法の改良によ
って可能とすべく、検討した。
【0021】その結果、結晶性樹脂の融点より15℃高
い温度、かつ、せん断速度γaが1.0×103から
1.0×106の範囲において、結晶性樹脂と二酸化炭
素の混合物が有する粘度ηaが、ηa≦140000×
γa-0.78の範囲にあり、この結晶性樹脂と二酸化炭素
の混合物を金型キャビティへ充填することにより得られ
ることを特徴とする結晶性樹脂成形品が、結晶性樹脂の
分子量分布、樹脂組成を制限することなく、製品デザイ
ンの自由度を損なわずに、結晶性樹脂に求められている
成形品の高精度化、実用化、長寿命化を実現させること
を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0022】即ち、本発明は、1.結晶性樹脂の融点よ
り15℃高い温度、かつ、せん断速度γaが1.0×1
3から1.0×106の範囲において、結晶性樹脂と二
酸化炭素の混合物が有する粘度ηaが、ηa≦1400
00×γa-0.78の範囲にあり、この結晶性樹脂と二酸
化炭素の混合物を金型キャビティへ充填することにより
得られることを特徴とする結晶性樹脂成形品、 2.溶融状態にある結晶性樹脂と大気圧以上に加圧され
た二酸化炭素を混合させることによって得られた結晶性
樹脂と二酸化炭素の混合物を金型キャビティへ充填する
ことによって得られることを特徴とする上記1に記載の
結晶性樹脂成形品、
【0023】3.溶融状態にある結晶性樹脂と2MPa
以上に加圧された二酸化炭素を混合させることによって
得られた結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物を金型キャビ
ティへ充填することによって得られることを特徴とする
上記1に記載の結晶性樹脂成形品、 4.溶融状態にある結晶性樹脂と4MPa以上に加圧さ
れた二酸化炭素を混合させることによって得られた結晶
性樹脂と二酸化炭素の混合物を金型キャビティへ充填す
ることによって得られることを特徴とする上記1に記載
の結晶性樹脂成形品、
【0024】5.結晶性樹脂品が、少なくともポリアセ
タール成分を含むポリアセタール系樹脂であることを特
徴とする上記1から4のいずれかに記載の結晶性樹脂成
形品、 6.結晶性樹脂が、少なくともポリアミド成分を含む、
ポリアミド系樹脂であることを特徴とする上記1から4
のいずれかに記載の結晶性樹脂成形品。 7.結晶性樹脂樹脂成形品が、内部に発泡部分を有し、
かつ、該成形品の表層部には実質的に発泡していない非
発泡層を有することを特徴とする、上記1から6のいず
れかに記載の結晶性樹脂成形品、
【0025】8.結晶性樹脂樹脂成形品が、該成形品の
表層部に500μm以上の厚さである非発泡層を有する
ことを特徴とする、上記1から7のいずれかに記載の結
晶性樹脂成形品、 9.成形機の加熱筒内において、溶融状態にある結晶性
樹脂と大気圧以上に加圧された二酸化炭素を混合させた
後、金型キャビティへ充填することを特徴とする請求項
1に記載の結晶性樹脂成形品の射出成形方法、
【0026】10.成形機の加熱筒内において、溶融状
態にある結晶性樹脂と2MPa以上に加圧された二酸化
炭素を混合させた後、金型キャビティへ充填することを
特徴とする上記1に記載の結晶性樹脂成形品の射出成形
方法、 11.成形機の加熱筒内において、溶融状態にある結晶
性樹脂と4MPa以上に加圧された二酸化炭素を混合さ
せた後、金型キャビティへ充填することを特徴とする上
記1に記載の結晶性樹脂成形品の射出成形方法、
【0027】12.溶融状態にある結晶性樹脂と、大気
圧以上に加圧された二酸化炭素との混合物を、加圧され
たガスにより大気圧以上、15MPa以下に調節または
保持された金型キャビティへ充填することにより得られ
ることを特徴とする上記9から11のいずれかに記載の
結晶性樹脂成形品の射出成形方法、 13.充填圧の30%以上である圧力により、一定時
間、加圧保持する工程を有することを特徴とする上記9
から12のいずれかに記載の結晶性樹脂成形品の射出成
形方法、 14.充填圧の100%以下である圧力により、一定時
間、加圧保持する工程を有することを特徴とする上記9
から12のいずれかに記載の結晶性樹脂成形品の射出成
形方法、に関する。
【0028】
【発明の実施の形態】本発明について、以下具体的に説
明する。本発明に用いられる結晶性樹脂とは、分子鎖が
規則正しく配列して三次元構造を形成し、固有の融点を
有する熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂であり、融点以
下では規則正しい結晶構造を有するが、融点以上ではそ
の結晶性を失って、液体状態となる熱可塑性樹脂を主成
分とする結晶性樹脂による組成物を指す。
【0029】具体的には、ポリアセタールまたはポリオ
キシメチレン(以下「POM」と略す)樹脂、ポリアミ
ド(以下「PA」と略す)樹脂、ポリフェニレンサルフ
ァイド(以下「PPS」と略す)樹脂、ポリエチレンテ
レフタレート(以下「PET」と略す)樹脂、ポリブチ
レンテレフタレート(以下「PBT」と略す)樹脂、ポ
リエーテルエーテルケトン(以下「PEEK」と略す)
樹脂、ポリオレフィン(以下「PO」と略す)樹脂であ
る、ポリプロピレン(以下「PP」と略す)樹脂、高密
度ポリエチレン(以下「HDPE」と略す)樹脂、中密
度ポリエチレン(以下「MDPE」と略す)樹脂、低密
度ポリエチレン(以下「LDPE」と略す)樹脂、直鎖
状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」と略す)樹
脂、ポリブタジエン(以下「PBD」と略す)樹脂など
が考えられる。
【0030】本発明における結晶性樹脂は、機械的特性
に優れる点、耐油性に優れる点、対有機溶剤性に優れる
点、耐酸性・耐アルカリ性に優れる点を考慮すると、P
OM系樹脂、PA系樹脂を主成分とした結晶性樹脂によ
る組成物であることが好ましい。本発明に用いられるP
OM系樹脂の分子構造は限定されるものではないが、下
記化学式1に示したPOM・ホモポリマーと、下記化学
式2に示したPOM・ランダムコポリマーなどは好適に
用いられ、また、これらの混合物であっても実施が可能
である。また、POM分子の末端基は、潤滑性ポリマ
ー、シリコンなど、POM以外の成分・分子構造を化学
的に結合させたPOM・ブロックコポリマーであっても
よい。
【0031】
【化1】 ここで、nは任意の自然数である。
【0032】
【化2】
【0033】ここで、X=モノマー成分、n1、n2、
n3、n4はそれぞれ任意の自然数である。本発明に好
適に用いられるPA系樹脂は、ポリマー主鎖に、下記化
学式3に示したアミド結合を有するものであれば、いず
れも使用することができる。
【0034】
【化3】
【0035】一般にPA系樹脂は、ラクタム類の開環重
合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン
酸の重縮合などによって得られるが、これらに限定され
るものではない。特に本発明で好適に用いることのでき
るPA系樹脂としては、PA6、PA6−6、PA4−
6、PA11、PA12、PA6−10、PA6−1
2、PA6/6−6、PA6/6−12、PA6/MX
D(m−キシリレンジアミン)、PA6−T、PA6−
I、PA6/6−T、PA6/6−I、PA6−6/6
−T、PA6−6/6−I、PA6/6−T/6−I、
PA6−6/6−T/6−I、PA6/12/6−T、
PA6−6/12/6−T、PA6/12/6−I、P
A6−6/12/6−Iなどが挙げられる。
【0036】また、複数のPAを押出機等で共重合化し
たPA類も使用することができる。好ましいPA樹脂
は、PA6、PA6−6、およびそれらの混合物であ
る。また、これら結晶性樹脂による組成物は、同一の分
子構造を有する熱可塑性樹脂成分であって、分子量、分
子量分布が異なる熱可塑性樹脂成分によって構成されて
いてもよい。また本発明における結晶性樹脂は、上記に
示した結晶性樹脂成分を主成分とし、1種類以上の特性
の異なった熱可塑性樹脂成分を混合して得られるポリマ
ー・アロイであってもよい。
【0037】上記主成分となる結晶性樹脂と混合して用
いることのできる特性の異なった熱可塑性樹脂成分は、
該主成分となる結晶性樹脂と相溶可能であれば特に制限
はなく、例えば、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、
各種ポリエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ
プロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニ
ル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、
ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリアミドイ
ミド、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサル
フォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテ
ルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレ
ン、熱可塑性エラストマー、ポリ四フッ化エチレン、ポ
リビニルアルコールなどを挙げることができる。
【0038】本発明に用いられる結晶性樹脂には、比
重、強度を付与することなどを目的として、無機系また
は有機系の充填剤を添加することができる。比重付与剤
としては、硫酸バリウム、ベンガラ、タングステン粉な
ど、無機系である塩、酸化物、金属粉などが考えられ
る。また、強度付与剤としては、ガラス繊維、炭素繊
維、金属繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム、アス
ベスト、炭化ケイ素、セラミック、窒化ケイ素、硫酸バ
リウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、パイロフ
ィライト、ベントナイト、セリサイト、ゼオライト、マ
イカ、雲母、ネフェリンシナイト、タルク、アタルパル
ジャイト、ウオラストナイト、スラグ繊維、フェライ
ト、ケイ素、カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネ
シウム、ドロマイト、酸化亜鉛、石膏、ガラスビーズ、
ガラスパウダー、ガラスバルーン、石英、石英ガラス、
アルミナなどが考えられる。
【0039】これら無機系または有機系の充填剤の形状
は限定されるものではなく、繊維状、板状、球状などが
任意に選択できる。また、上記の無機系または有機系の
充填剤は、2種類以上を併用することも可能である。ま
た、必要に応じて、シラン系、チタン系などのカップリ
ング剤で、予備処理して使用することができる。本発明
に用いられる結晶性樹脂に添加される無機系または有機
系の充填剤の添加量は限定されるものではないが、該結
晶性樹脂の比重を調整する、剛性を向上させる、寸法精
度を確保する、反りなどの変形を抑制するなど、添加剤
を添加することによる効果を十分に得るためには、5重
量%以上の添加量が好ましく、10重量%以上の添加量
であることがさらに好ましい。5重量%未満の添加量で
ある場合には、上記に示した充填剤を添加することによ
る効果が少ない。
【0040】本発明において無機系または有機系充填剤
の添加量とは、添加される無機系または有機系充填剤が
1種類の場合にはその添加量を指し、2種類以上の場合
にはそれらの総加量を指す。また、無機系または有機系
充填剤の添加量は、樹脂成分、無機系または有機系充填
剤、その他の添加剤の総量を100重量%としたときの
割合を指すものである。本発明における結晶性樹脂に
は、通常使用する添加剤、例えば、酸化防止剤、難燃化
剤、離型剤、滑剤、耐熱安定剤、耐候性安定剤、防錆
剤、充填剤、着色剤、抗菌剤、防カビ剤などを必要に応
じて、1種類以上添加することができる。
【0041】また、その他の添加剤として、炭素繊維、
金属繊維、黒鉛のうちの1種類以上を選択することによ
り結晶性樹脂の電気抵抗値を下げることができる。これ
は、埃などの小さな粉体が、結晶性樹脂による成形品
に、静電気によって付着することを防止できるため、好
適である。また、PA系樹脂の耐熱安定性を向上させる
目的で、金属系安定剤を使用することもできる。
【0042】金属系安定剤の具体例としては、CuI、
CuCl2、酢酸銅、ヨウ化カリウム、ステアリン酸セ
リウム等が挙げられ、これらは、併用しても構わない。
金属系安定剤の好ましい配合量はPA系樹脂100重量
部に対して、0.001〜1重量部である。本発明にお
いて結晶性樹脂は、結晶性樹脂の融点より15℃高い温
度、かつ、せん断速度γaが1.0×103から1.0
×106の範囲において、結晶性樹脂と二酸化炭素の混
合物が有する粘度ηaが下記に示す式1に示す範囲であ
り、この結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物を金型キャビ
ティへ充填することにより得られることを特徴とする。 ηa≦140000×γa-0.78 (式1)
【0043】本発明において結晶性樹脂は、結晶性樹脂
の融点より15℃高い温度、かつ、せん断速度γaが
1.0×103から1.0×106の範囲において、結晶
性樹脂と二酸化炭素の混合物が有する粘度ηaが上記に
示した式1に示す範囲であることが好ましいが、さらに
好ましくは下記に示した式2の範囲にあることであり、
もっとも好ましくは下記に示した式3の範囲にあること
である。 ηa≦135000×γa-0.78 (式2) ηa≦58000×γa-0.72 (式3)
【0044】ここで、結晶性樹脂の融点とは、一定圧力
のもとで固相状態である結晶性樹脂が、液相と平衝を保
つときの温度であり、融解点ともいわれる。POM・ホ
モポリマーの融点は約175℃、POM・コポリマーの
融点は約165℃、PA6−6の融点は255〜265
℃、PA6の融点は215〜225℃、PA12の融点
は176〜180℃の範囲であることが一般的である。
結晶性樹脂の融点を詳しく測定する方法としては、例え
ば、示差走査熱量測定(DSC:Differenti
al Scanning Calorimetry)に
よることがあげられる。
【0045】下記に、示差走査熱量測定機(パーキンエ
ルマー社製「DSC−7型」)を用いたPOM系樹脂の
融点を測定する手順を示す。 (1) 試料約5mgを50℃で2分間保持する。 (2) 昇温速度200℃/minで200℃まで昇温
させた後、200℃で2分間保持する (3) 降温速度10℃/10minで50℃まで降温
させた後、50℃で2分間保持する。 (4) 昇温速度10℃/minで200℃まで昇温さ
せる。 (5) (4)の昇温時に現れる吸熱ピークのトップピ
ークの温度を融点とする。
【0046】さらに、同測定機を用いたPA6−6系樹
脂の融点を測定する手順を下記に示す。 (1) 試料約5mgを50℃で2分間保持する。 (2) 昇温速度200℃/minで300℃まで昇温
させた後、300℃で2分間保持する。 (3) 降温速度20℃/minで50℃まで降温させ
た後、50℃で2分間保持する。 (4) 昇温速度20℃/minで300℃まで昇温さ
せる。 (5) (4)の昇温時に現れる吸熱ピークのトップピ
ークの温度を融点とする。
【0047】本発明において、結晶性樹脂と二酸化炭素
による混合物の粘度ηaの測定は、図1に示す粘度測定
機を用いて、以下に示した手順に従って行った。 (1) 粘度測定機の加熱筒とプランジャー部の温度
を、測定する結晶性樹脂の融点より15℃高い温度に設
定し、保持する。 (2) 溶融状態にある結晶性樹脂と大気圧以上に加圧
された二酸化炭素の混合物をプランジャー部に計量し、
該結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物を適宜設定した射出
速度Sa(mm/sec)でオリフィスを通して射出す
る。この時、圧力センサーにて、樹脂圧Pa(Pa)を
測定する。用いるオリフィスの長さLaは10mm、オ
リフィスの穴径Daは1.0mmとする。
【0048】(3) 以下に示した式4、式5より、τ
a、γaを算出する。 せん断応力τa(Pa)=(Pa×Da)÷(4×La) (式4) せん断速度γa(/sec)=(4×Qa)÷(π×Da3÷8) (式5) ここで、Qa(mm3/sec)=(π×Da2)÷4×
Sa である。 (4) 下記に示した式6より、粘度ηaを算出する。 粘度ηa(Pa・sec)=せん断応力÷せん断速度=τa÷γa (式6)
【0049】(5) せん断速度γa(/sec)が、
1.0×103から1.0×106の範囲において任意点
数、好ましくは5点以上のτa値を測定する。各せん断
速度におけるηa値を算出することによって、各ηa値
の分布または、各ηa値から算出した検量線を引くこと
によって、下記に示した(式7)のA値、B値を決定
し、結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物が有する粘度ηa
のせん断速度依存特性を決定する。 ηa=A×γa-B (式7)
【0050】本発明における結晶性樹脂による成形品
は、該結晶性樹脂の融点より15℃高い温度、かつ、せ
ん断速度γa(/sec)が1.0×103から1.0×
106の範囲において、結晶性樹脂と二酸化炭素の混合
物の粘度ηa(Pa・s)が、ηa≦140000×γ
-0.78の範囲にあり、この結晶性樹脂と二酸化炭素の
混合物を、金型キャビティへ充填することにより得られ
ることを特徴とする。
【0051】一方、結晶性樹脂の融点より15℃高い温
度、せん断速度γa(/sec)が1.0×103から
1.0×106の範囲であるときの粘度ηa(Pa・
s)が、ηa>140000×γa-0.78の範囲である
結晶性樹脂、または、結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物
は、粘度が高いことを意味する。このため、射出成形時
には、金型キャビティ内へ結晶性樹脂を充填する際の流
動抵抗が高いため、これを解決し、流動性を確保する必
要がある。一般的には、樹脂温度を高くする、金型温度
を高くするなどの手段が選ばれることが多い。
【0052】一方、結晶背樹脂と二酸化炭素の混合物の
有する粘度は、該結晶性樹脂が本来有する粘度より低
い。このため、射出成形時における樹脂温度が同一であ
った場合には、金型キャビティへ充填する際の流動性が
向上する。従って、ゲート点数を必要以上に増やすこと
なく、薄肉成形品を射出成形できる。ゲート点数が少な
いことにより、金型構造が簡略化できる。これは金型の
製作工程の簡略化することを同時に達成できることを意
味する。また、射出成形時には、ランナー重量を低減さ
せることができるため、材料節約の観点から好ましいと
いえる。
【0053】また、流動性を確保するために、通常の射
出成形時の樹脂温度領域を越えるような温度設定をしな
くても、薄肉成形品への応用が可能となるので、熱履歴
による樹脂の分解、劣化、変質などの心配が少ない。ま
た、高い金型温度設定の必要がないことから、比較的短
時間で溶融樹脂が冷却固化する。このため、成形サイク
ルが長くなることはない。また、高温対応の金型温調機
を準備することや、金型を温度調節する際に用いる媒体
に、オイルなど取り扱いが煩雑なものを使用する必要が
ないため、好ましい。
【0054】結晶背樹脂と二酸化炭素の混合物の有する
粘度が、該結晶性樹脂が本来有する粘度より低いこと
は、溶融状態の結晶性樹脂に二酸化炭素を混合させるこ
とによって、二酸化炭素が可塑剤として効率よく分散す
るためと推測される。本発明において、結晶性樹脂と二
酸化炭素を混合させる方法は、限定されるものではない
が、二酸化炭素を溶融状態にある結晶性樹脂樹脂に均一
に分散させやすいこと、短時間で溶解または吸収させや
すいこと、混合量の調整が容易であること、成形前の段
取りが煩雑でないこと、混合物を金型キャビティへ充填
しやすいこと、成形機ホッパー部などの射出成形機を構
成する部品や周辺機器を耐圧構造とする必要がないこと
が好ましい。
【0055】これらの点を考慮すると、射出成形機の加
熱筒内、成形機のノズル部、成形機のノズル部と金型の
間のいずれかの位置に二酸化炭素供給のための設備を設
けることによって、溶融状態にある該結晶性樹脂に二酸
化炭素を混合させる方法が好ましい。ここで、射出成形
機の加熱筒内において、溶融状態にある結晶性樹脂と二
酸化炭素を混合させる方法としては、成形機のスクリュ
ーの中間部や先端部や、加熱筒から溶融状態にある結晶
性樹脂に二酸化炭素を供給させる方法が考えられる。
【0056】成形機のスクリューや加熱筒の中間部から
二酸化炭素を供給する場合には、ベントタイプ・スクリ
ューのベント部のように、二酸化炭素供給部付近のスク
リュー溝の深さを深くして、加熱筒内の樹脂圧が低くな
るようにし、樹脂移送を飢餓状態にすることが好まし
い。また、二酸化炭素を供給後、結晶性樹脂に均一に混
合させるために、スクリューにダルメージや、混練ピン
などミキシング機構を設けること、樹脂流路にスタティ
ック・ミキサーを設けることなどが考えられる。
【0057】金型キャビティへ充填される結晶性樹脂
は、二酸化炭素と混合されることにより、金型キャビテ
ィ内へ充填された際の流動支援効果が高まる。このた
め、結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物と、より低分子量
である結晶性樹脂がそれぞれ有する粘度がほぼ同一であ
っても、金型キャビティ内に未充填部分が残らないよう
に、結晶性樹脂を充填するために必要な射出速度、充填
圧力、充填時間を比較した場合、結晶性樹脂と二酸化炭
素の混合物の方が低速、低圧、短時間で未充填部分を残
さないように充填することが可能である。
【0058】通常の射出成形法と比較して低速で金型キ
ャビティに充填できるということは、高速射出が可能で
ある射出成形機を用意する必要がない利点がある。高速
射出が可能である射出成形機は、高速域での制御精度に
重点をおいた設計であるために、低速域での制御や、そ
の精度確保が比較的難しい。このため、多くの射出成形
品に対応することが難しい。低圧で金型キャビティ内に
充填できるということは、得られた射出成形品に歪みが
残しにくいことを意味する。このため、通常の射出成形
品と比較して、成形後に発生する反りなどの変形が少な
い効果が考えられる。
【0059】短時間で金型キャビティ内に充填できると
いうことは、成形品形状によって存在するウエルド部に
おいて、温度低下の少ない段階で樹脂の流れが合流する
ことを意味する。このため、通常の射出成形品と比較し
て、ウエルド部における強度低下率が小さいことが期待
できる。溶融状態にある結晶性樹脂樹脂に、二酸化炭素
を均一に混合させやすいことを考慮すると、二酸化炭素
は大気圧以上に加圧されていることが好ましく、さらに
好ましくは2MPa以上に加圧されていることであり、
もっとも好ましくは4MPa以上に加圧されていること
である。
【0060】一般的に、結晶性樹脂に混合する二酸化炭
素の圧力が高いほど、結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物
が、金型キャビティ内へ充填された際の粘度の低下効果
が著しい傾向にある。結晶性樹脂に大気圧以上に加圧さ
れた二酸化炭素を混合することによって、金型キャビテ
ィへに充填時に、より低分子量である結晶性樹脂と同等
の流動性を確保できる。このため、高分子量である結晶
性樹脂の特徴を活かしながら、低分子量である結晶性樹
脂と同等の成形加工性を確保できる。
【0061】本発明において、結晶性樹脂による成形品
は、内部に発泡部分を有することが好ましい。該発泡部
分は、成形品断面を光学顕微鏡などにより10〜20倍
に拡大、観察した際に、発泡によるボイドまたは、白化
現象が確認される部分を指すものである。本発明におけ
る結晶性樹脂による成形品は、内部に発泡部分を有する
ことによって、製品肉厚に対して樹脂部分の実質的な肉
厚が薄くなり、体積収縮量が減少するために、成形品の
長期寸法精度、寸法安定性が優れると考えられる。
【0062】また、該結晶性樹脂の体積収縮分が、該成
形品の内部に発泡部分が形成されることにより、成形品
の内部から補われるため、成形品表面にヒケが発生する
ことを抑えられていると思われる。本発明において結晶
性樹脂による成形品は、内部に発泡部分を有し、かつ、
成形品表層部には500μm以上の厚さである非発泡層
を有することが好ましい。これは、該非発泡層の厚さが
500μm未満である場合には、成形品表面に膨れ現象
が発生する恐れがあるほか、機械的強度の低下を招く恐
れがあるため好ましくない。
【0063】該非発泡層の厚さは、保圧力、保圧時間に
より調整できる。保圧力が高いほど、また、保圧時間が
長いほど、該非発泡層は厚くなる傾向にある。しかし、
保圧力が高すぎる場合、保圧時間が長すぎる場合には、
金型キャビティ内で結晶性樹脂が冷却、固化する際に、
該結晶性樹脂中に混合された二酸化炭素が、成形品内部
に発泡部分を形成しにくく、成形品表面にヒケを生じる
恐れがあるため好ましくない。
【0064】これは、結晶性樹脂と二酸化炭素を混合さ
せた後、金型キャビティへ充填することにより、金型キ
ャビティ内で該混合物が冷却、固化し体積収縮を起こす
際に、該混合物中に混合されていた二酸化炭素が、適度
に発泡することにより形成されるためであると想像され
る。結晶性樹脂による成形品が、その内部に発泡部分を
有することにより、より肉厚である成形品への結晶性樹
脂による成形品への応用が可能となり、製品デザインの
自由度が増すことが期待できる。
【0065】通常、射出成形法では、樹脂を金型キャビ
ティへ充填した後、さらにキャビティ内の樹脂を加圧保
持する工程を有する。この工程を「保圧工程」、その圧
力の程度を「保圧力」というが、本発明によるPA系樹
脂の射出成形方法においては、該PA系樹脂を金型キャ
ビティへ充填した後、充填圧の30%相当値より高い圧
力により、金型キャビティ内の樹脂を加圧保持すること
が好ましい。本発明において、保圧力が充填圧の30%
未満であると、成形品表層に形成される非発泡層の厚さ
が薄くなり、任意断面において発泡部分の占める割合が
大きくなるため、機械的強度の低下が懸念される。
【0066】結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物を金型キ
ャビティへ充填することにより得られる射出成形品が、
成形品表層部分に適度の厚さを持つ非発泡層を形成しつ
つ、成形品内部に適度な発泡部分を有するための、保圧
力の好ましい範囲は、充填圧に対して30%以上であ
り、さらに好ましくは40%以上であり、最も好ましく
は、50%以上であることである。ここで充填圧とは、
溶融状態の樹脂を金型キャビティへ充填する際に生じる
樹脂圧を指す。具体的には、インライン・スクリュー式
射出成形機ではスクリュー位置、プリプラ式射出成形機
ではプランジャー位置が、計量位置からV−P(保圧)
切り替え位置まで移動した際に生じる樹脂圧の最大値を
指す。
【0067】また、保圧時間は限定されるものではない
が、極端に保圧時間が短い場合には、金型キャビティへ
充填する以前に結晶性樹脂に混合させた二酸化炭素が膨
張することにより、成形品に膨れ現象が発生する恐れが
あるため好ましくない。具体的には、保圧時間は3秒以
上であることが好ましく、5秒以上であることがさらに
好ましく、7秒以上であることが最も好ましい。また、
結晶性樹脂に二酸化炭素を混合させる量は限定されるも
のではないが、結晶性樹脂に二酸化炭素を混合させるこ
とにより、該結晶性樹脂を金型キャビティへ充填する際
の金型キャビティ内での流動支援効果が向上し、充填圧
の上昇を抑えることが可能となるため、混合量は0.2
重量%以上であることが好ましく、0.4重量%以上で
あることがさらに好ましい。
【0068】二酸化炭素の混合量が0.2重量%未満で
ある場合には、二酸化炭素を混合させることによる流動
支援効果を得ることが難しく、十分な寸法精度と寸法安
定性を得ることは困難となるため好ましくない。本発明
において、二酸化炭素の混合量の測定は、以下の方法に
より行うものとする。 (1) 成形直後に成形品の重量を測定する(M1とす
る)。 (2) 成形品を80℃に保温された熱風乾燥機中(結
晶性樹脂がPA系樹脂である場合には、真空乾燥機中で
あることがより好ましい)に48時間以上放置し、二酸
化炭素を放散させた後、熱風乾燥機から取り出した成形
品の重量を測定する(M2とする)。 (3) 二酸化炭素混合量(重量%)を、(M1−M
2)÷M2×100から算出する。
【0069】一方、本発明における結晶性樹脂成形品の
見かけ比重は、該結晶性樹脂が有する比重の95〜9
9.5%の範囲であることが好ましく、96〜99.5
%の範囲であることがさらに好ましく、98〜99.5
%の範囲であることが最も好ましい。該成形品の見かけ
比重が、該結晶性樹脂の比重の95%以下であるという
ことは、成形品内部において発泡部分が占める割合が大
きすぎることを意味し、該成形品の強度低下が無視でき
ないため、好ましくない。
【0070】また、該見かけ比重が、該結晶性樹脂の比
重の99.5%を超える場合には、成形品内部に発泡部
分が十分に形成されていないことを意味し、成形品表面
にヒケが発生するなど、内部の発泡部分が効果的に存在
していないと思われる。本発明における該結晶性樹脂に
よる成形品の見かけ比重が、用いられる結晶性樹脂が有
する比重の95〜99.5%の範囲であることは、成形
品内部に適度に発泡部分が存在する、見かけ比重の範囲
であると考えられる。
【0071】結晶性樹脂による成形品内部に発泡部分を
有することにより、より肉厚である成形品への結晶性樹
脂による成形品への応用が可能となり、製品デザインの
自由度が増すことが期待できる。本発明の結晶性樹脂成
形品とは、該結晶性樹脂により構成されている最小単位
の成形品、部品、製品であり、自動車、電気・電子製
品、容器、日用雑貨、電機製品、一般機械、配管部品、
精密機械、工具、工業部品、輸送機器などに用いられる
結晶性樹脂による最小単位の成形品、部品、製品を指す
ほか、シート、板など、2次加工を必要とする成形品、
製品を含む。
【0072】本発明において結晶性樹脂の射出成形方法
とは、通常行われている熱可塑性樹脂の成形加工方法で
あって、最も一般的な射出成形法のほか、中空射出成形
法、ガスアシスト成形法、ブロー成形法、射出・圧縮成
形法などが含まれる。本発明の結晶性樹脂による成形品
の射出成形方法においては、結晶性樹脂と二酸化炭素の
混合物を金型キャビティへ充填する際、結晶性樹脂に混
合される二酸化炭素の圧力が一定圧以上である場合、成
形品表面に発泡模様が発生する恐れがある。
【0073】成形品表面に発泡模様が発生することを抑
えるためには、該結晶性樹脂のフローフロントで発泡が
発生しない圧力以上に、金型キャビティ内を加圧ガスに
よって調節または保持されていることが必要である。該
加圧ガスの圧力は、成形品表面の発泡模様が消える最低
圧力であればよく、成形サイクル中に使用するガスの量
を最小限に抑え、金型キャビティのシールやガス供給装
置の構造を簡略化するためにもガス圧は低い方が好まし
い。ガス圧が15MPaを超えると、ガス圧により金型
が開く恐れがあるほか、金型キャビティのシールが困難
になるなどの問題が生じやすい。従って、金型キャビテ
ィを加圧するガスの圧力は、大気圧以上、15MPa以
下であることが好ましいといえる。
【0074】この際、金型キャビティ内を一定圧力に調
節または保持するガスは、結晶性樹脂に対して不活性な
各種ガスの単体あるいは混合物が使用できる。結晶性樹
脂への溶解度が高い二酸化炭素、炭化水素およびその一
部水素をフッ素で置換したガスなどが好ましい。また、
結晶性樹脂への溶解度は低いものの、比較的安価に純度
の高いガスが得られやすい点を考慮すると、窒素ガスに
よる実施も可能である。金型キャビティ内を一定圧力に
調節または保持するガスは、結晶性樹脂と二酸化炭素の
混合物を金型キャビティへ充填した後、冷却工程が完了
するまでの間、好ましくは保圧工程が完了するまでの
間、もっとも好ましくは充填工程が完了するまでの間
に、ガス圧を大気圧程度まで低下させておくことが好ま
しい。
【0075】
【発明の実施の形態】以下、実施例によって本発明を具
体的に説明するが、本発明は以下に限定されるものでは
ない。射出成形に使用した樹脂は、POM系樹脂(旭化
成工業(株)社製「テナック2010、3010、40
10」)、PA6−6系樹脂(同社製「レオナ 130
0S、1300G、13G43、1700S」)であ
り、いずれも成形前はペレット状である。成形機は、住
友重機械工業(株)社製「SG125M−HP」、「S
G260M−S」成形機を使用した。
【0076】
【実施例1、2】POM系樹脂「テナック 2010」
の融点を示差走査熱量測定機(パーキンエルマー社製
「DSC−7型」)を用い、POM系樹脂の融点を測定
する手順に従って、測定した。次に、図1に示す粘度測
定機を用いて「テナック 2010」の粘度を測定し
た。
【0077】粘度測定機の加熱筒とプランジャー部は、
あらかじめ測定した「テナック 2010」の融点より
15℃高い温度、具体的には190℃に設定、保持し
た。「テナック 2010」を加熱筒内にて溶融させた
後、同加熱筒内において7.8、12.2(MPa)に
加圧された二酸化炭素と混合させ、この混合物をプラン
ジャー部に供給した。プランジャー部に計量された混合
物を、適宜設定した射出速度でオリフィスを通して射出
することにより、103〜106(/sec)の範囲にお
ける任意のせん断速度条件下における粘度を測定した。
粘度測定結果は、いずれもηa≦140000×γa
-0.78の範囲である。
【0078】一方、図2に示したISO規格に準じた構
造であり同規格による引張り試験用ダンベル形状である
成形品を成形できる金型と、図3に示した、ASTM
「D671 TYPE1」規格による片持ち曲げ疲労特
性試験片を成形できる金型を用意した。成形機は「SG
125M−HP」を用い、加熱筒の温度は195℃に設
定した。また、金型温度は80℃に設定した。「テナッ
ク 2010」を用い、7.8、12.2(MPa)に
調節した二酸化炭素を成形機加熱筒中央部に設けられた
ガス供給部から加熱筒内の溶融状態にある「テナック
2010」に供給し、溶解、吸収させた後、金型キャビ
ティへ充填し、それぞれ、図2、図3に示した成形品を
得た。
【0079】成形時の充填圧は、射出時の充填圧を成形
機のモニター画面で読み取った値とし、保圧はこの充填
圧の70%に相当する値とした。保圧時間は10秒、冷
却時間は25秒とした。得られた引張り試験用ダンベル
型成形品を用いて、ISO527−1(1993)に従
い、引張り試験を行った。また、得られたASTM「D
671」規格に準じた「片持ち曲げ疲労特性試験片」
を用いて、同規格「B法」に従って、曲げ疲労特性試験
を実施した。なお、繰り返し速度は1800回/min
であり、試験片が破断した繰り返し回数、もしくは試験
片破断前であって最大たわみ量が±8(mm)を越えた
時点の繰り返し回数を、疲労限界とした。また、荷重条
件は30(MPa)、40(MPa)の2水準である。
【0080】また、図4に示した、モジュール1、歯数
30、歯厚3(mm)である歯車が成形できる金型を用
意した。ゲートは直径0.8(mm)のピンゲートタイ
プのものを3点設けた。使用した成形機、二酸化炭素の
供給条件、供給方法は、上記試験片を射出成形した条件
と同様とし、保圧は、充填圧の80%に相当する値とし
て、保圧時間は7秒、冷却時間は15秒とした。
【0081】得られた歯車2個を用いて、破壊に至るま
での運転時間を測定した。耐久試験を実施の際には、
(株)東芝機械社製「動力吸収式歯車耐久試験機」を使
用し、負荷トルク70(N−cm)、318(rpm)
の運転条件下によるものとした。粘度、引張り試験用ダ
ンベル型試験片を射出成形する際の充填圧、引張り強
度、引っ張り伸び値、疲労特性、歯車の破壊に至るまで
の寿命の測定結果を表1に示す。
【0082】
【比較例1】実施例1、2と同様に「テナック 201
0」を加熱筒内にて溶融後、同加熱筒内において1.8
(MPa)に調節した二酸化炭素と混合させ、この混合
物の粘度を測定した。粘度測定の結果、ηa>1400
00×γa-0.78の範囲であった。その後、引張り試
験、曲げ疲労特性試験、歯車耐久試験を実施した。
【0083】粘度、引張り試験用ダンベル型試験片を射
出成形する際の充填圧、引張り強度、引っ張り伸び値、
疲労特性、歯車の破壊に至るまでの寿命の測定結果を表
1に示す。
【0084】
【比較例2】「テナック 4010」の融点を測定した
後、融点より15(℃)高い温度に設定された加熱筒内
にて溶融後、粘度を測定した。粘度測定の結果、ηa≦
140000×γa-0.78の範囲であった。その後、引
張り試験、曲げ疲労特性試験、歯車耐久試験を実施し
た。粘度、引張り試験用ダンベル型試験片を射出成形す
る際の充填圧、引張り強度、引っ張り伸び値、疲労特
性、歯車の破壊に至るまでの寿命の測定結果を表1に示
す。
【0085】
【表1】
【0086】
【実施例3〜7】実施例1、2と同様の方法によって
「テナック 2010、3010、4010」の融点を
測定した。次に、図1に示す粘度測定機を用いて、あら
かじめ測定した「テナック 2010、3010、40
10」の融点より15(℃)高い温度、具体的には19
0(℃)に設定、保持した。
【0087】「テナック 2010、3010、401
0」を加熱筒内にて溶融後、同加熱筒内において4.0
〜8.2(MPa)の範囲内における任意の圧力に加圧
された二酸化炭素と混合させ、この混合物をプランジャ
ー部に供給した。プランジャー部に計量された混合物
を、適宜設定した射出速度でオリフィスを通して射出す
ることにより、103〜106(/sec)の範囲におけ
る任意のせん断速度条件下における粘度を測定した。粘
度測定結果は、いずれもηa≦140000×γa
-0.78の範囲であった。
【0088】また、図5に示した円盤形状成形品が成形
できる金型を用意した。ゲートは、ウェブ部に直径1.
2(mm)のピンゲートタイプのものを3点設け、金型
キャビティは大気圧以上に加圧されたガスにより密閉で
きる構造とした。円盤形状成形品の具体的な寸法は、直
径60(mm)、ウェブ部以外の肉厚は5(mm)、ウ
ェブ部の肉厚が2(mm)である。使用した成形機、二
酸化炭素の供給条件、供給方法は、上記に示した実施例
1、2と同様である。また、樹脂の充填開始前には、金
型キャビティ内を5.5(MPa)に加圧調整した二酸
化炭素ガスにより保持し、樹脂充填後、この二酸化炭素
を開放した。また、保圧は、充填圧の80%に相当する
値として、保圧時間は7秒、冷却時間は15秒とした。
【0089】得られた円盤形状成形品を用いて、ウェブ
部の表面粗さ、外形の真円度を測定した。表面粗さを測
定の際には「表面粗さ形状測定機((株)東京精密社製
「サーフコム570A」)」を、また、真円度を測定の
際には、「真円度円筒形状測定機((株)ミツトヨ社
製)」を用いた。粘度、表面粗さ、真円度の測定結果を
表2に示す。
【0090】
【比較例3】実施例3〜7と同様に、図1に示す粘度測
定機を用いて、実施例3〜7において測定した「テナッ
ク 2010」の融点より15(℃)高い温度、具体的
には190(℃)に設定、保持した。「テナック 20
10」を加熱筒内にて溶融後、プランジャー部に供給し
た。プランジャー部に計量された溶融状態の樹脂混合物
を、適宜設定した射出速度でオリフィスを通して射出す
ることにより、103〜106(/sec)の範囲におけ
る任意のせん断速度条件下における粘度を測定した。粘
度測定結果は、ηa>140000×γa-0.78の範囲
であった。
【0091】実施例3〜7と同様、図5に示した円盤形
状成形品が成形できる金型を用意し、射出成形により、
円盤形状成形品を得た。得られた円盤形状成形品を用い
て、ウェブ部の表面粗さ、外形の真円度を測定した。粘
度、表面粗さ、真円度の測定結果を表2に示す。
【0092】
【比較例4】実施例3〜7と同様に、図1に示す粘度測
定機を用いて、実施例3〜7において測定した「テナッ
ク 2010」の融点より15(℃)高い温度、具体的
には190(℃)に設定、保持した。「テナック 20
10」を加熱筒内にて溶融後、同加熱筒内において1.
8(MPa)に加圧された二酸化炭素と混合させ、この
混合物をプランジャー部に供給した。プランジャー部に
計量された混合物を、適宜設定した射出速度でオリフィ
スを通して射出することにより、103〜106(/se
c)の範囲における任意のせん断速度条件下における粘
度を測定した。粘度測定結果は、ηa>140000×
γa-0.78の範囲であった。
【0093】実施例3〜7と同様、図5に示した円盤形
状成形品が成形できる金型を用意し、射出成形により、
円盤形状成形品を得た。得られた円盤形状成形品を用い
て、ウェブ部の表面粗さ、外形の真円度を測定した。粘
度、表面粗さ、真円度の測定結果を表2に示す。
【0094】
【比較例5】実施例3〜7と同様に、図1に示す粘度測
定機を用いて、実施例3〜7において測定した「テナッ
ク 4010」の融点より15(℃)高い温度、具体的
には190(℃)に設定、保持した。「テナック 40
10」を加熱筒内にて溶融後、プランジャー部に供給し
た。プランジャー部に計量された溶融状態の樹脂混合物
を、適宜設定した射出速度でオリフィスを通して射出す
ることにより、103〜106(/sec)の範囲におけ
る任意のせん断速度条件下における粘度を測定した。粘
度測定結果は、ηa≦140000×γa-0.78の範囲
であった。
【0095】実施例3〜7と同様、図5に示した円盤形
状成形品が成形できる金型を用意し、射出成形により、
円盤形状成形品を得た。得られた円盤形状成形品を用い
て、ウェブ部の表面粗さ、外形の真円度を測定した。粘
度、表面粗さ、真円度の測定結果を表2に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
【実施例8〜10】PA66系樹脂「レオナ 1300
S、1300G、13G43」の融点を示差走査熱量測
定機(パーキンエルマー社製「DSC−7型」)を用
い、PA66系樹脂の融点を測定する手順に従って、測
定した。次に、図1に示す粘度測定機を用いて「レオナ
1300S、1300G、13G43」の粘度を測定
した。粘度測定機の加熱筒とプランジャー部は、あらか
じめ測定した「レオナ 1300S、1300G、13
G43」の融点より15℃高い温度、具体的には278
℃に設定、保持した。
【0098】「レオナ 1300S、1300G、13
G43」を加熱筒内にて溶融させた後、同加熱筒内にお
いて3.8〜8.0(MPa)の範囲の任意の圧力に加
圧された二酸化炭素と混合させ、この混合物をプランジ
ャー部に供給した。プランジャー部に計量された混合物
を、適宜設定した射出速度でオリフィスを通して射出す
ることにより、103〜106(/sec)の範囲におけ
る任意のせん断速度条件下における粘度を測定した。粘
度測定結果は、いずれもηa≦140000×γa
-0.78の範囲である。
【0099】図6に示した形状である箱型モデル成形品
を成形できる金型を用意した。このとき、金型のゲート
点数は、図7に示した通り3点であるが、中央の1点を
閉鎖することにより2点として射出成形を実施した。成
形機は「SG260M−S」を用い、樹脂温度は285
℃に設定した。また、金型温度は80℃に設定した。成
形時の充填圧は、射出時の充填圧を成形機のモニター画
面で読み取った値とし、保圧はこの充填圧の70%に相
当する値とした。保圧時間は10秒、冷却時間は25秒
とした。
【0100】成形品の平面度は、三次元測定機「ミツト
ヨ(株)社製 AE122」と測定プログラム「同社製
Geopak 400」を用いて多点平面度測定法に
従い測定した。測定箇所は図8に示した通りである。成
形品のヒケ量は射出成形された箱型モデル成形品の上面
に発生した、リブが原因と思われるヒケ部分のヒケ量
を、接触式の表面粗さ計である「表面粗さ形状測定機
((株)東京精密社製「サーフコム570A」)」を用
いて測定した。測定箇所は図9に示した、任意の測定箇
所である。粘度、射出成形時の充填圧、成形品の平面
度、ヒケ量の測定結果を表3に示す。
【0101】
【比較例6、7】実施例8〜10と同様、図1に示す粘
度測定機を用いて「レオナ 13G43」の粘度を測定
した。粘度測定機の加熱筒とプランジャー部は、実施例
8〜10で測定した「レオナ 13G43」の融点より
15℃高い温度、具体的には278℃に設定、保持し
た。「レオナ 13G43」を加熱筒内にて溶融させた
後、プランジャー部に供給した。プランジャー部に計量
された溶融状態の樹脂を、適宜設定した射出速度でオリ
フィスを通して射出することにより、103〜106(/
sec)の範囲における任意のせん断速度条件下におけ
る粘度を測定した。粘度測定結果は、ηa≦14000
0×γa-0.78の範囲である。
【0102】図6に示した形状である箱型モデル成形品
を成形できる金型を用意した。このとき、金型のゲート
点数は、2点または3点として射出成形を実施した。成
形機は「SG260M−S」を用い、樹脂温度は285
℃に設定した。また、金型温度は80℃に設定した。成
形時の充填圧、成形品の平面度、成形品のヒケ量を測定
した。粘度、射出成形時の充填圧、成形品の平面度、ヒ
ケ量の測定結果を表3に示す。
【0103】
【比較例8】実施例8〜10と同様、PA66系樹脂
「レオナ 1700S」の融点を、示差走査熱量測定機
を用いて測定した。次に、図1に示す粘度測定機を用い
て「レオナ 1700S」の粘度を測定した。粘度測定
機の加熱筒とプランジャー部は、あらかじめ測定した
「レオナ 1700S」の融点より15℃高い温度、具
体的には278℃に設定、保持した。
【0104】「レオナ 1700S」と3.8(MP
a)に加圧された二酸化炭素の混合物を、適宜設定した
射出速度でオリフィスを通して射出することにより、1
3〜106(/sec)の範囲における任意のせん断速
度条件下における粘度を測定した。粘度測定結果は、い
ずれもηa>140000×γa-0.78の範囲である。
図6に示した形状である箱型モデル成形品を成形できる
金型を用意した。このとき、金型のゲート点数は、3点
として射出成形を実施した。成形機は「SG260M−
S」を用い、樹脂温度は285℃に設定した。また、金
型温度は80℃に設定した。成形時の充填圧、成形品の
平面度、成形品のヒケ量を測定した。粘度、射出成形時
の充填圧、成形品の平面度、ヒケ量の測定結果を表3に
示す。
【0105】
【表3】
【0106】
【発明の効果】本発明の成形品は、結晶性樹脂の分子量
分布、樹脂組成を制限することなく、製品デザインの自
由度を損なわずに、結晶性樹脂成形品に求められている
寸法精度を向上させること、疲労破壊に至るまでの寿命
を向上させること、流動距離を確保することによってゲ
ート点数を削減することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】 粘度測定機のモデル図を示す。
【図2】 引張り試験用ダンベル形状成形品を示す。
【図3】 片持ち曲げ疲労特性試験片成形品を示す。
【図4】 歯車成形品を示す。
【図5】 円盤形状成形品を示す。
【図6】 箱型モデル成形品の斜視図を示す。
【図7】 箱型モデル成形品の上面図を示す。
【図8】 箱型モデル成形品の底面図を示す。
【図9】 箱型モデル成形品の上面図を示す。
【符号の説明】
1 オリフィス 2 圧力センサー 3 プランジャー 4 引張り試験用ダンベル形状成形品 5 片持ち曲げ疲労特性試験片成形品 6 歯車成形品 7 ウェブ部 8 箱型モデル成形品 9 リブ 10 ゲート 11 平面度測定位置 12 ヒケ量測定位置

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶性樹脂の融点より15℃高い温度、
    かつ、せん断速度γaが1.0×103から1.0×1
    6の範囲において、結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物
    が有する粘度ηaが、ηa≦140000×γa-0.78
    の範囲にあり、この結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物を
    金型キャビティへ充填することにより得られることを特
    徴とする結晶性樹脂成形品。
  2. 【請求項2】 溶融状態にある結晶性樹脂と大気圧以上
    に加圧された二酸化炭素を混合させることによって得ら
    れた結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物を、金型キャビテ
    ィへ充填することによって得られることを特徴とする請
    求項1に記載の結晶性樹脂成形品。
  3. 【請求項3】 溶融状態にある結晶性樹脂と2MPa以
    上に加圧された二酸化炭素を混合させることによって得
    られた結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物を、金型キャビ
    ティへ充填することによって得られることを特徴とする
    請求項1に記載の結晶性樹脂成形品。
  4. 【請求項4】 溶融状態にある結晶性樹脂と4MPa以
    上に加圧された二酸化炭素を混合させることによって得
    られた結晶性樹脂と二酸化炭素の混合物を、金型キャビ
    ティへ充填することによって得られることを特徴とする
    請求項1に記載の結晶性樹脂成形品。
  5. 【請求項5】 結晶性樹脂が、少なくともポリアセター
    ル成分を含むポリアセタール系樹脂であることを特徴と
    する請求項1から4のいずれかに記載の結晶性樹脂成形
    品。
  6. 【請求項6】 結晶性樹脂が、少なくともポリアミド成
    分を含むポリアミド系樹脂であることを特徴とする請求
    項1から4のいずれかに記載の結晶性樹脂成形品。
  7. 【請求項7】 結晶性樹脂樹脂成形品が、内部に発泡部
    分を有し、かつ、該成形品の表層部には実質的に発泡し
    ていない非発泡層を有することを特徴とする、請求項1
    から6のいずれかに記載の結晶性樹脂成形品。
  8. 【請求項8】 結晶性樹脂樹脂成形品が、該成形品の表
    層部に500μm以上の厚さである非発泡層を有するこ
    とを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の結
    晶性樹脂成形品。
  9. 【請求項9】 成形機の加熱筒内において、溶融状態に
    ある結晶性樹脂と大気圧以上に加圧された二酸化炭素を
    混合させた後、金型キャビティへ充填することを特徴と
    する請求項1に記載の結晶性樹脂成形品の射出成形方
    法。
  10. 【請求項10】 成形機の加熱筒内において、溶融状態
    にある結晶性樹脂と2MPa以上に加圧された二酸化炭
    素を混合させた後、金型キャビティへ充填することを特
    徴とする請求項1に記載の結晶性樹脂成形品の射出成形
    方法。
  11. 【請求項11】 成形機の加熱筒内において、溶融状態
    にある結晶性樹脂と4MPa以上に加圧された二酸化炭
    素を混合させた後、金型キャビティへ充填することを特
    徴とする請求項1に記載の結晶性樹脂成形品の射出成形
    方法。
  12. 【請求項12】 溶融状態にある結晶性樹脂と、大気圧
    以上に加圧された二酸化炭素との混合物を、加圧された
    ガスにより大気圧以上、15MPa以下に調節または保
    持された金型キャビティへ充填することにより得られる
    ことを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の
    結晶性樹脂成形品の射出成形方法。
  13. 【請求項13】 充填圧の30%以上である圧力によ
    り、一定時間、加圧保持する工程を有することを特徴と
    する請求項9から12のいずれかに記載の結晶性樹脂成
    形品の射出成形方法。
  14. 【請求項14】 充填圧の100%以下である圧力によ
    り、一定時間、加圧保持する工程を有することを特徴と
    する請求項9から12のいずれかに記載の結晶性樹脂成
    形品の射出成形方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013014075A (ja) * 2011-07-04 2013-01-24 Canon Inc 射出成形による樹脂成形歯車の製造方法
CN112020416A (zh) * 2018-04-27 2020-12-01 宝理塑料株式会社 抗静电成型品的制造方法

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