JP2002315467A - 海中構造物 - Google Patents

海中構造物

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JP2002315467A
JP2002315467A JP2001122501A JP2001122501A JP2002315467A JP 2002315467 A JP2002315467 A JP 2002315467A JP 2001122501 A JP2001122501 A JP 2001122501A JP 2001122501 A JP2001122501 A JP 2001122501A JP 2002315467 A JP2002315467 A JP 2002315467A
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algae
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Hiroaki Suzuki
裕明 鈴木
Taku Ono
卓 大野
Tadanori Eto
忠典 江藤
Akira Kino
明 城野
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Sumitomo Osaka Cement Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Osaka Cement Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】海底への投入当初は藻場増殖機能を発揮し、藻
場増殖礁としての役目が終わればその後は本来の魚礁と
しての機能を発揮することができるようにした新規な海
中構造物を提供する。 【解決手段】魚類の蝟集機能を有する海中構造物本体1
を主体とする海中構造物Aに、藻類Bの増殖機能をする
藻場増殖部2を具備させて、海中構造物Aに一般的な魚
礁としての機能に加えて藻場を増殖する機能を付与し
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、魚礁として機能す
るのみならず藻場増殖礁としても機能し得る海中構造物
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、魚礁とは、一般に魚類の蝟集
効果を高める機能を有するものであり、例えば柱や壁で
囲まれた内部空間内に魚類を集められるようにしたコン
クリート製品や鋼製製品としてよく知られている。一
方、藻場増殖礁とは、藻場の増殖を目的として藻類の新
たな着床基質を供給するものであり、例えば藻類を着床
させることができるコンクリート製等の塊(ブロック)
などとして知られている。そして、これら魚礁と藻場増
殖礁はそれぞれ独立した性格を持ち、それぞれ単体の
「魚礁」や「藻場増殖礁」として実施されているのが通
例である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、魚類を蝟集
させるだけでなく、魚類の数を増やすには、魚類の産卵
場所や幼稚魚の生育場所(隠れ家や餌料提供場所)を創
出することが重要であるが、そのためには藻類(海藻
類)が群生する「藻場」の存在が重要になってくる。し
かしながら、海水温の上昇など様々な自然環境の変化に
より、次第に藻場が減少する、いわゆる磯焼け現象が近
年拡大しつつあり、各地の海域において藻場の消失が認
められており、大きな問題となっている。そこで、上述
のようなコンクリートの塊からなる藻場増殖礁を海底に
投入することによって、失われつつある藻場の再生や新
規な藻場の創出が試みられているが、現実には生育した
藻類がウニ、アワビ、サザエ等の匍匐性動物や魚に代表
される植食生物による食害被害や環境の変化のために枯
死するなどして実効のある藻場造成には多くの困難が伴
っているのが現状である。また、例えばアラメやカジメ
等の多年藻の海藻が藻場増殖礁に着床して順調に育った
としても、やがて3年程度経てば枯死してしまい、枯死
するまでの間に着床した藻類の胞子が新たに順調に生育
しない限り、投入された藻場増殖礁は巨大なコンクリー
トの塊からなる廃棄物として海底に遺棄されてしまうこ
とになる。
【0004】そこで本発明は、以上のような問題に鑑み
て、本来は魚礁としての機能を有するが、海底への投入
当初は藻場増殖機能を発揮し、藻場増殖礁としての役目
が終わればその後は本来の魚礁としての機能を発揮する
ことができるようにした新規な海中構造物を提供するこ
とを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の海中
構造物は、魚類の蝟集機能を有する海中構造物本体を主
体としてなり、該海中構造物本体に配設され藻類の増殖
機能をする藻場増殖部を具備してなることを特徴として
いる。
【0006】このようなものであれば、海中構造物本体
に藻場増殖部を配設した状態で海底に沈設することで、
この海中構造物が藻場増殖礁としての機能を発揮するこ
とができるようになる。このように藻場増殖礁として機
能している海中構造物において生育している藻類から胞
子が放出されるようになると、この海中構造物が胞子の
供給源となって周囲の岩礁等に胞子が付着すれば、海底
に投入した海中構造物の周囲にも藻場を拡張できる可能
性が高まり、大きな藻場の形成にも寄与することができ
るようになる。そして、藻場増殖部において藻類が生育
を終え藻場増殖が終了したり藻場増殖が失敗した場合で
も、海中構造物本体には本来の魚礁としての機能が備わ
っているので、この海中構造物を海底に無用の廃棄物と
して遺棄することなく魚礁として有効に活用することが
できる。なお、藻場防護部は、藻場増殖部において藻類
が食害に遭わない程度まで生育するまでの間さえ機能し
ていれば十分であり、その後は人為的に撤去したり自然
に腐朽しても構わない。また、海中構造物本体として
は、基本的には魚類に対する蝟集効果を有するものであ
れば既存の魚礁等の海中構造物を利用することが可能で
あるため、特に新規な海中構造物本体を設計・製造する
必要がなく、本発明のために海中構造物製造のコストや
手間が増大することもない。なお、藻場増殖部を海中構
造物本体に配設するに際しては、海中構造物本体に藻場
増殖部を構成する部材を取り付けるようにしてもよい
し、藻場増殖部を構成する部材を例えば海中構造物本体
の内部に海中構造物本体に取り付けない状態で設置する
ようにしても構わない。このように海中構造物本体に藻
場増殖部を取り付けずに配設し得る構造としては、例え
ば海中構造物本体の内部にコンクリートブロックや鉄骨
からなる足場等の部材を設置し、その部材に藻場増殖機
能を有する部材を安定設置するようにしたものを挙げる
ことができる。
【0007】また、藻場増殖部において藻類を順調に生
育・増殖させるためには、本発明の海中構造物に、海中
構造物本体に配設され藻場増殖部への潮通りを許容しつ
つ食害動物の接近を阻害する藻場防護部を具備させるこ
とが有効である。すなわち、このような藻場防護部を通
じて藻場増殖部へ新鮮な海水が供給されるだけでなく、
藻場増殖部で生育する藻類がそれを餌料とする食害動物
(植食生物)に食べられてしまわないように藻場防護部
によって有効に保護することができる。なお、藻場防護
部を配設するか否かは、この海中構造物を沈設する海域
や時期、環境等の条件により適宜決定することができ
る。すなわち、例えば日本においては、九州地方など南
部の海域では主に魚による食害が特に夏期(4月〜11
月)に顕著であるので、その期間に限って藻場防護部を
配設し、魚による食害被害のおそれが小さい冬季には藻
場防護部を配設しないようにしてもよい。また、日本の
北部の海域ではウニ、アワビ、サザエ等の匍匐性動物に
よる食害被害が顕著であるが、これら匍匐性動物は十分
に生育していない(成体には至っていない)藻類を餌料
とする傾向があるため、藻類が十分に生育するまでの期
間だけ藻場防護部を配設するようにすればその機能を十
分に果たすことができる。さらにまた、藻場防護部を通
年に亘って配設しておくと、それにフジツボや貝等が付
着して潮通りが悪くなることもあるので、潮通りを良好
に維持し得るように藻場防護部の配設期間を設定するこ
とも有効である。
【0008】海中構造物本体に魚礁としての有効な基本
性能を付与するとともに、そのような海中構造物本体に
藻場増殖部と藻場防護部を好適に配設し得るようにする
ためには、海中構造物本体に、一部に開口部を形成した
骨構造体と、骨構造体によって包囲され前記開口部を通
じて外部に連通される内部空間とを設け、前記内部空間
内に藻場増殖部を配設するとともに、開口部に藻場防護
部を配設し得るように構成することが好ましい。
【0009】このように開口部に配設される好適な藻場
防護部としては、開口部を覆うように海中構造物本体に
取り付けられる網状部材からなるものが挙げられる。特
に、網状部材を、海中構造物本体に着脱可能に取り付け
得るようにしていると、不要になった網状部材を海中構
造物本体から取り外すことで、藻場増殖機能から魚礁機
能への機能の変換を迅速に行うことができる。特に、網
状部材を着脱し得る構成は、上述のように海域や時期、
環境などに応じて藻場防護部を選択的に使用する目的の
ためには極めて有用なものである。
【0010】また、好適な藻場増殖部の構成としては、
藻類を着床させて育成し得る育成部材と、該育成部材を
保持し且つ海中構造物本体に取り付けられるベースとか
ら構成したものが挙げられる。この場合、より多くの育
成部材をベースに取り付けられるようにし、育成部材に
付着する腐泥等の堆積物を少なくするためには、ベース
を、断面視V字形状をなす一対の傾斜面を有するものと
して、該ベースの長手方向に沿って各傾斜面にそれぞれ
複数の育成部材を取り付けるようにすることが有効とな
る。
【0011】さらに、藻場増殖部を海中構造物本体に配
設するための良好な他の構成としては、藻場増殖部を、
藻類を着床させて育成し得る育成部材から構成し、該育
成部材を取り付け得る取付部を海中構造物本体に形成し
たものを挙げることができる。
【0012】取り扱いが容易で藻類が着床しやすい育成
部材としては、表面に藻類が活着し得る凹凸形状を形成
した板状部材からなるものを好ましい一例として挙げる
ことができる。さらに、この育成部材に藻類をより確実
に着床させ、藻場増殖を確実なものとするためには、予
め生育させた藻類である中間育成藻を着床させた育成部
材を前記ベースに取り付けるようにすることが望まし
い。特に、このような中間育成藻であれば、匍匐性動物
が嫌うフロロタンニン等の苦み成分を分泌して食害から
自衛することができるので、食害被害が主として匍匐性
動物によるものである海域に本発明の海中構造物を沈設
する場合には、藻場防護部を配設しなくても食害被害の
恐れは少ないといえる。一方、食害被害が主として魚に
よる海域に本発明の海中構造物を沈設する場合には、藻
場防護部を配置した方が食害被害を有効に防止すること
ができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を、図
面を参照して説明する。
【0014】図1に示す本実施形態の海中構造物Aは、
海底において藻類Bの海中林(藻場)を形成すべき場所
に沈設されるものであって、藻類Bを増殖する藻場増殖
機能と、魚類を蝟集させる一般的な魚礁本来の機能の両
方を併せ持つものである。この海中構造物Aは、図1及
び図2に示すように、海中構造物本体1と、海中構造物
本体1に取り付けられる藻場増殖部2及び藻場防護部3
を備えている。。
【0015】具体的に、海中構造物本体1は、例えば横
幅3.4m、高さ2m、厚さ40cm程度の4枚の矩形
板状起立壁11を上下に開口させた箱状に構成してなる
骨構造体を主体とするコンクリート一体成型品である。
各起立壁11には矩形の窓部11aを厚み方向に貫通さ
せて形成しており、これら起立壁11によって包囲され
る内部空間1sをこれら窓部11a及び上下の開口11
bを通じて開放させている。すなわちこれら窓部11a
及び開口11bは、内部空間1sを外部に連通させる開
口部を構成するものである。しかしてこの海中構造物本
体1は、これら窓部11aや開口11bを通じて出入り
する魚を内部空間1sに蝟集させる魚礁としての基本的
機能を有している。なお、この海中構造物本体1は、通
常の魚礁と同様に海底で約30年程度風化せずに使用可
能な強度を備えている。
【0016】藻場増殖部2は、藻類B(本実施形態では
例えば多年藻であるアラメやカジメ、クロメ等の褐藻
類)を育成し増殖させるための機能を有するもので、前
記海中構造物本体1に取り付けられるベース21と、ベ
ース21に取り付けられる藻類の育成部材22とから構
成している。ベース21は、海中構造物本体1の対向す
る起立壁11の窓部11a間距離に対応する長手寸法を
有するベース本体211と、ベース本体211の両端部
に取り付けられ窓部11aに固定するための取付金具2
12とからなるものである。ベース本体211は、横断
面視V字形状をなし下方に開く姿勢で配置した一対の傾
斜面211aを有する鋼製の部材である。そして、これ
ら傾斜面211aにそれぞれ複数の育成部材22を取り
付けるようにしている。一方、取付金具212は側面視
L字形状をなすもので、その起立部212aをベース本
体211の端面に溶接などで固定するとともに、水平部
212bを前記窓部11aの上向き面に載置した位置で
ボルト等で固定するようにしている。
【0017】育成部材22は、図4に拡大して示すよう
に、10cmX25cm程度の平面視略長方形状をなし
2cm程度の厚みを有する板状のコンクリート一体成型
品を主体としてなるもので、その重量は約1.5Kg程
度である。このように育成部材22を人手で取り扱い得
る程度の大きさ及び重量を有するものとすることで、運
搬等の取り扱い、メンテナンスの便を向上するようにし
ている。しかして、育成部材22の表面の略中央部に厚
み方向に貫通する直径2cm程度の貫通孔221を形成
している。またこの表面には、長手方向両側端部からや
や内寄りの位置には上に凸の形状をなすように部分的に
盛り上げた一対の隆起部222をそれぞれ形成してい
る。この隆起部222の裾野部分には、一般的なボルト
の頭部及び軸部の一部を模した形状の第1の突起部22
4を複数(図示例ではそれぞれの隆起部222に対して
4個ずつ)形成しており、更にこの第1の突起部224
よりも高い位置となる隆起部222の表面には自然石の
形状を模した複数の凹凸形状からなる第2の突起部22
5を形成している。第1の突起部224は、上述のよう
にボルトの頭部及び軸部の一部を模した形状を有してい
るため、そのボルト頭部における下向面を表出した逆勾
配224aを有している。一方、第2の突起部225同
士の間の距離は、ウニ、アワビ、サザエ等の植食生物が
それら第2の突起部225同士の間に進入できない程度
に狭く設定している。また、第1の突起部224及び第
2の突起部225の表面を除いて、隆起部222の表面
を含む育成部材22の表面は、砂利の形状を模した浅い
凹凸形状を形成している。また、育成部材22の表面に
おける長手方向両側端部には、この育成部材22の幅寸
法よりも短い細長い木製小片からなる固定部材226を
埋め込んで固定している。この固定部材226には、育
成部材22の長手方向と略同一方向に延びて上方に開口
する切欠部226aを図示例ではそれぞれ2つ形成して
いる。そしてこのような固定部材226を育成部材22
のコンクリート素材が硬化する前に埋め込んでおき、硬
化後に育成部材22と共に一体の部材1を構成するよう
にしている。また、対をなす隆起部222同士の間にお
ける育成部材22の中央部を、平面的に形成した添接路
223としている。しかして、この育成部材22におい
ては添接路223上に前記貫通孔221が形成されてい
ることになる。また、この育成部材22の裏面は平面的
に形成してある。
【0018】藻場防護部3は、海中構造物本体1に取り
付けた前記藻場増殖部2において生育する藻類Bに対し
て新鮮な海水を供給しつつ魚の接近を阻害する機能を有
するもので、海中構造物本体1の窓部11aや開口11
bを覆うように取り付けられるフレーム枠31と、この
フレーム枠31に張設した金網32とから構成してい
る。各フレーム枠31の大きさは、対応する窓部11a
や開口11bよりも一回り大きい金属製の枠体であり、
ボルト等を用いて海中構造物本体1に固定するようにし
ている。一方、金網32の目の大きさ(いわゆる目合
い)は約5cm程度であり、潮通りを確保しつつ藻類B
を食べる魚等の植食生物が海中構造物本体1の内部空間
に進入できないようにしている。
【0019】次に、この海中構造物Aの取り扱い方法に
ついて説明する。まず、藻場増殖部2を海中構造物本体
1に取り付けるに先立って、育成部材22を用いて予め
藻類Bを次のようにして中間育成しておく。すなわち、
まず図4に示すように、育成部材22に藻類Bの胞子を
付着させた種糸23を取り付ける。この種糸23は、太
さ数mm程度のいわゆるクレモナ糸と称されるものであ
り、海底に自生している藻類Bを採取してきて所定の水
槽内に前記種糸23と共に入れ、その水槽内で種糸23
に藻類Bから放出された胞子を付着させるようにしたも
のである。しかる後、種糸23を水槽から引上げ、所定
の長さに切断した上で一端部23aを育成部材1の一固
定部材226における一切欠部226aに差し込んで固
定し、その固定部材226を設けた側の第1の突起部2
24の逆勾配224aと育成部材22の表面との間の空
間に掛け回すとともに、他端部23bを前記固定部材2
26の他の一切欠部226aに差し込んで固定する。そ
の過程で、種糸23を隆起部222の表面に沿わせると
ともに、第2の突起部225同士の間や第1の突起部2
24と第2の突起部225との間を通過させるようにし
ている。このようにして育成部材22の両側端部におい
てそれぞれ種糸23を取り付けている。以上のことによ
り、第1の突起部224は主として種糸23を掛け止め
る掛止機能を有することになり、その一方で、第2の突
起部225は種糸23上で藻類Bが胞子から生長した際
に主として植食生物の進入を阻害して食害被害を防止す
る食害防止ゾーンを構成することになる。また、第1の
突起部224と第2の突起部225との間が植食生物の
進入を阻み得る程度に狭い場合には、これらの間にも食
害防止機能が奏されることになる。そして、このような
育成部材22を、海面Rに浮かべた筏5に取り付けたロ
ープ4を介して水深約5m以内の海中Qに吊り下げ、藻
類Bの中間育成を行う。このロープ4は、多数の細い糸
を束ねて撚り合わせることによって形成した太い2本の
ロープ要素41を更に互いに撚り合わせて直径1〜2c
mの太さにした、いわゆる漁業用ロープである。このロ
ープ4を用いて育成部材1を吊り下げるには、ロープ要
素41同士の撚り合せを部分的に解いておき、中間育成
中に育成部材22の裏面にフジツボや貝等が付着して後
でそれらを剥がす作業を行わなくても済むように、一対
の育成部材22を相互に裏面同士を合わせた状態で長手
方向を水深方向と略直交させた姿勢にして、先に解いて
おいたロープ要素41同士の間に挟み込み、それらロー
プ要素41をそれぞれ育成部材22の表面に形成した添
接路223に添接させる。すると、解かれたロープ要素
41同士は元の捻られた状態に戻ろうとするため、その
力によってロープ要素41間に育成部材1を強く挟み込
むことになる。その上で更に育成部材22の脱落防止を
図るために、育成部材22の貫通孔221に結束バンド
6を挿通し、この結束バンド6によって両ロープ要素4
1を拘束する。この結束バンド6は、一端に孔部を有
し、他端をその孔部に挿入・係合することにより他の部
材を拘束できるようにした樹脂製の市販のものである。
このようにして一本のロープ4に高さを違えて複数の育
成部材22を取り付けて、ロープ4の下端部においては
ロープ要素41同士を固く結んで瘤42を作っておく。
このようにすることで、ロープ4は添接路223に沿っ
て育成部材22を保持しているため種糸3に接触するこ
とがなく、海流や波でロープ4が揺れてもそのために種
糸3が摩擦により切断されることはない。本実施形態で
は上述のように複数の育成部材1を多数用意して、合計
2000個程度の育成部材1を筏5から吊り下げられる
ようにしている。なお、ロープ要素41同士の撚りを解
いた箇所には二つの育成部材1を同時に挟み込むのでは
なく、一つだけの育成部材22を挟み込むようにしても
構わない。その場合は、育成部材22の裏面に食品ラッ
プフィルム等で保護しておくと、藻類Bの生育後に育成
部材22を海中Qから引き揚げた際に、育成部材22が
裏面にフジツボ等が付着していない状態で得られるの
で、その後の取り扱いが便利である。また、中間育成に
おいては、前記種糸23を用いずに、藻類Bが自生して
いる海域又はその近傍に育成部材22を吊り下げて、海
流に乗って流れてくる胞子が育成部材22に自然に付着
させるようにしても実施することができる。
【0020】このような中間育成によって数cm〜30
cm程度まで生長した藻類B(いわゆる中間育成藻)
は、育成部材22の隆起部222に根を張ってしっかり
と着床している。このように、藻類Bが活着した状態の
育成部材22を、図3に示すようにその貫通孔221に
挿入したボルト24をナット25で定着することでベー
ス21に取り付け、さらにそのベース21を海中構造物
本体1に取り付けた上で、窓部11aや開口11bに藻
場防護部3を取り付けた状態として、海中構造物Aを海
底に投入する。なお、この程度まで生長した藻類であれ
ば、植食生物が嫌うフロロタンニン等の渋み成分を分泌
できるためある程度の食害から自らを守ることができる
ようになっているが、本実施形態では藻場防護部3を取
り付けてさらなる食害防止を図っている。そして、この
海中構造物Aにおいて藻類Bが更に生育し増殖して胞子
を放出できるようになると、海中構造物Aが周囲の岩礁
等に対して胞子の供給源として機能するようになり、藻
場を大きく拡大できる可能性が高まる。また、やがて3
年が経過して藻類Bが寿命により枯死したり、3年を待
たずして環境変化等により藻場が形成されなかった場合
は、次の2通りの方法で海中構造物Aを取り扱うことが
できる。まず、再度この海中構造物Aにおいて藻場を形
成する場合には、図6に示すように、藻場防護部3を海
中構造物本体1から取り外すとともに、藻類Bが枯死し
た藻場増殖部2も海中構造物本体1から取り外し、新た
に藻類B(中間育成藻)を着床させた育成部材22を有
する藻場増殖部2と交換した上で、再び藻場防護部3を
海中構造物本体1に取り付けて、上述した藻場増殖を繰
り返して行う。その際、藻場防護部3や藻場増殖部2の
海中構造物本体1に対する着脱は、海底で行ってもよい
し海中構造物Aを一旦海上の作業船等に引き揚げて行っ
てもよい。一方、この海中構造物Aを用いた藻場増殖を
行わない場合は、図7に示すように、藻場増殖部2や藻
場防護部3を海中構造物本体1から取り外し、海中構造
物本体1のみを海底に沈設した状態で「魚礁」として機
能させる。その際、藻場増殖部2や藻場防護部3を海中
構造物本体1に取り付けたまま放置して、海中で腐朽す
るにまかせておいても構わない。いずれにしても、海中
構造物本体1には「魚礁」本来の蝟集機能が備わってい
るため、藻場増殖の機能を有さなくても好適な魚礁とし
て活用することができる。
【0021】以上のように、本実施形態の海中構造物A
は、海中構造物本体1において魚を蝟集させる魚礁とし
ての基本的機能を有する他に、藻場増殖機能を有する藻
場増殖部3を備えており、海底への投入当初に藻場を形
成するという目的を達した後はまた新たに藻場増殖のた
めに使用したり、本来の魚礁として利用するなど有効利
用を図ることができるため、従来の藻場増殖礁のように
そのまま海底に遺棄されることがなく、極めて有用なも
のである。また、藻場防護部2によって藻場増殖部2に
おいて生育・増殖する藻類Bを食害被害から保護するこ
とができるので、確実な藻場形成が可能である。そし
て、このような海中構造物Aを使用することで、いわゆ
る魚礁と藻場増殖礁の両方を利用しなくても済むためコ
ストダウンを図ることができる。
【0022】なお、本発明は上記実施形態に限られるも
のではなく、例えば藻場防護部として、海中構造物本体
をすっぽりと覆い隠し得るような籠状の部材を適用して
も、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0023】また、本発明では、上記実施形態のように
育成部材をベースを介して海中構造物本体に取り付ける
のではなく、海中構造物本体に育成部材の取付部を形成
し、その取付部に育成部材を取着するようにすることも
できる。そのための構成としては、例えば育成部材とし
て上記実施形態と同様に貫通孔を有するものを適用する
場合には、海中構造物本体にその内部空間に立設させた
アンカーボルト等を取り付けてそれを前記取付部とし、
育成部材の貫通孔にアンカーボルトを挿入することで、
育成部材を海中構造物本体に取り付けるようにしたもの
を挙げることができる。
【0024】その他、各部の形状や具体的構成について
も上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨
を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0025】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実
施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0026】すなわち、本発明の海中構造物は、海中構
造物本体に藻場増殖部を配設し得るようにすることで、
藻場増殖礁としての機能を発揮することができるため、
藻場増殖部において生育している藻類が胞子の供給源と
なって周囲の岩礁等に胞子が付着すれば、海底に投入し
た海中構造物の周囲にも藻場を拡張できる可能性が高ま
り、失われつつある藻場の回復や新規の藻場造成に寄与
することが可能である。さらに、この海中構造物におい
て藻場増殖の役割が終了した場合や藻場増殖が失敗した
場合には、海中構造物本体に本来の魚類を蝟集する魚礁
としての機能を発揮させることができるので、長期間に
亘って有効に海中構造物を利用することが可能である。
【0027】このような海中構造物において、海中構造
物本体に配設される藻場防護部によって、藻場増殖部へ
の潮通りを許容しつつ食害動物の接近を阻害するように
構成すれば、藻場増殖部で生育し増殖する藻類に常に新
鮮な海水を与えつつ、食害被害を有効に防止することが
可能である。
【0028】特に、海中構造物本体に、一部に開口部を
形成した骨構造体及びそれによって包囲され前記開口部
を通じて外部に連通される内部空間とを設けると、魚礁
としての有効な基本性能が得られる上に、海中構造物本
体の内部空間内に藻場増殖部を配設し、開口部に藻場防
護部を配設することで、藻場増殖部及び藻場防護部を好
適に配置してそれぞれの機能を有効に発揮させることが
できる。
【0029】具体的に、開口部を覆うように海中構造物
本体に取り付けられる網状部材を藻場防護部として適用
している場合には、海中構造物本体の内部空間に配置し
た藻場増殖部への潮通りの確保と魚類の接近の禁止とを
確実に行うことができる。さらにこのような網状部材
を、海中構造物本体に着脱可能に取り付け得るようにす
れば、必要網状部材を海中構造物本体に着脱すること
で、藻場増殖機能と魚礁機能との機能の変換を迅速に行
うことができるだけでなく、海中構造物が沈設される海
域や時期、環境、予想される食害動物の種類などの必要
に応じた藻場防護部の選択的な配設が可能である。
【0030】また、藻場増殖部を、藻類を着床させて育
成し得る育成部材と、その育成部材を保持し且つ海中構
造物本体に取り付けられるベースとから構成すること
で、それぞれ構造の簡素化を図ることができる。そし
て、ベースを、断面視V字形状をなす一対の傾斜面を有
するものとして、該ベースの長手方向に沿って各傾斜面
にそれぞれ複数の育成部材を取り付けるようにすれば、
より多くの育成部材をベースに取り付けることができ、
また育成部材への腐泥堆積を少なくできるので、藻場形
成の確実性を向上することができる。
【0031】一方、海中構造物本体に形成した取付部に
育成部材を取り付けるように構成しても、簡単な構造で
海中構造物に藻場増殖機能を付与することができる。
【0032】特に、育成部材が表面に藻類が活着し得る
凹凸形状を形成した板状部材からなるものであれば、取
り扱いが容易で藻類が着床しやすいものとすることがで
きる。さらに、予め生育させた藻類である中間育成藻を
着床させた育成部材を前記ベースに取り付けることで、
この育成部材に藻類をより確実に着床させ、藻場増殖を
確実なものとすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図2】同実施形態を分解して示す斜視図。
【図3】同一部を拡大して示す断面図。
【図4】同実施形態において使用される育成部材を拡大
して示す斜視図。
【図5】同育成部材を用いた中間育成方法を示す概略的
な斜視図。
【図6】同実施形態の一取り扱い方法を説明する図。
【図7】同、他の取り扱い方法を示す図。
【符号の説明】
A…海中構造物 B…藻類 1…海中構造物本体 2…藻場増殖部 3…藻場防護部 21…ベース 22…育成部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 江藤 忠典 福岡県田川郡香春町採銅所3271−9 (72)発明者 城野 明 福岡県田川市大字夏吉500 Fターム(参考) 2B003 AA01 BB01 DD01 EE04 2D018 EA11

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】魚類の蝟集機能を有する海中構造物本体を
    主体としてなり、該海中構造物本体に配設され藻類の増
    殖機能をする藻場増殖部を具備してなることを特徴とす
    る海中構造物。
  2. 【請求項2】前記海中構造物本体に配設され藻場増殖部
    への潮通りを許容しつつ食害動物の接近を阻害する藻場
    防護部を更に具備している請求項1記載の海中構造物。
  3. 【請求項3】海中構造物本体が、一部に開口部を形成し
    た骨構造体と、該骨構造体によって包囲され前記開口部
    を通じて外部に連通される内部空間とを備え、前記内部
    空間内に藻場増殖部を配設するとともに、開口部に藻場
    防護部を配設し得るようにしている請求項2記載の海中
    構造物。
  4. 【請求項4】藻場防護部が、開口部を覆うように海中構
    造物本体に取り付けられる網状部材からなるものである
    請求項3記載の海中構造物。
  5. 【請求項5】前記網状部材を、海中構造物本体に着脱可
    能に取り付け得るようにしている請求項4記載の海中構
    造物。
  6. 【請求項6】藻場増殖部を、藻類を着床させて育成し得
    る育成部材と、該育成部材を保持し且つ海中構造物本体
    に取り付けられるベースとから構成している請求項1、
    2、3、4又は5記載の海中構造物。
  7. 【請求項7】前記ベースが、断面視V字形状をなす一対
    の傾斜面を有するものであり、該ベースの長手方向に沿
    って各傾斜面にそれぞれ複数の育成部材を取り付けるよ
    うにしている請求6記載の海中構造物。
  8. 【請求項8】藻場増殖部を、藻類を着床させて育成し得
    る育成部材から構成し、該育成部材を取り付け得る取付
    部を海中構造物本体に形成している請求項1、2、3、
    4又は5記載の海中構造物。
  9. 【請求項9】育成部材が、表面に藻類が活着し得る凹凸
    形状を形成した板状部材からなるものである請求項6、
    7又は8記載の海中構造物。
  10. 【請求項10】予め生育させた藻類である中間育成藻を
    着床させた育成部材を前記ベースに取り付けるようにし
    ている請求項6、7、8又は9記載の海中構造物。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008072925A (ja) * 2006-09-20 2008-04-03 Sumitomo Osaka Cement Co Ltd 生育部材
JP2011135827A (ja) * 2009-12-28 2011-07-14 Litoncosmo Co Ltd 増殖礁
JP2016019467A (ja) * 2014-07-11 2016-02-04 住友大阪セメント株式会社 藻場の形成方法

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