JP2002302138A - 薬液保管容器の中栓およびそれを用いた薬液排出方法 - Google Patents

薬液保管容器の中栓およびそれを用いた薬液排出方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】毒性や腐食性のある薬液が入っている保管容器
の薬液入出開口に取付けて使用され、保存時や移送時に
容器から薬液を遺漏させず、また簡便かつ安全に薬液を
容器から排出させることができる薬液保管容器の中栓を
提供することを目的とする。 【解決手段】薬液保管容器の中栓2は、薬液33の充填
された保管容器3に設けられている薬液出入開口31を
塞ぐ中栓であって、薬液出入開口31へ挿入される中栓
2の底面23には、その周囲の厚さの1〜50%の厚さ
であり薬液排出管で突破られる脆弱部24が設けられて
いる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、毒性または腐食性
の薬液の充填された保管容器の薬液入出開口に、取付け
て使用される薬液保管容器の中栓、およびそれを用いた
薬液保管容器からの薬液排出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸、酢酸等の酸
性溶液、アンモニア水等のアルカリ性溶液、高濃度の過
酸化水素水のような腐食性や毒性のある薬液を保存した
り移送したりするために、薬液保管容器が用いられる。
【0003】薬液保管容器へ薬液を注入したり排出した
りするために設けられている薬液出入開口は、薬液の保
存や移送の際に薬液がこぼれないように、内側にパッキ
ンが設けられて容器と螺合する外蓋で塞がれる。または
薬液出入開口は、中栓を開口へ押込み、さらに中栓を包
み込んで容器に螺合している外蓋で塞がれる。
【0004】薬液の排出の際、外蓋や中栓を取り外し、
薬液出入開口から挿入した薬液排出管を介して、薬液は
吸出されて外界へ排出される。中栓等を取り外す際に薬
液が飛び散って作業者にかかったり、中栓等を取り外し
てから薬液排出管を挿入するまでの間に誤まって容器を
転倒させると薬液がこぼれ出たりして、危険である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、毒性や腐食
性のある薬液が入っている保管容器の薬液入出開口に取
付けて使用され、保存時や移送時に容器から薬液を遺漏
させず、また簡便かつ安全に薬液を容器から排出させる
ことができる薬液保管容器の中栓、およびそれを用いた
薬液の保管容器からの排出方法を提供することを目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
なされた本発明の薬液保管容器の中栓2は、実施例に対
応する図1を参照して説明すると、薬液33の充填され
た保管容器3に設けられている薬液出入開口31を塞ぐ
中栓であって、薬液出入開口31へ挿入される中栓2の
底面23には、その周囲の厚さの1〜50%の厚さであ
り薬液排出管(不図示)で突破られる脆弱部24が設け
られている。
【0007】薬液33と接触する底面23を形成してい
る中栓2の材質は、薬液33によって変質や劣化や溶解
を引き起こさない耐薬品性に優れ、適度な弾性を有する
樹脂が用いられ、具体的には、ポリエチレンのようなポ
リオレフィン系樹脂が用いられる。低密度ポリエチレン
であると一層好ましい。ポリオレフィン系樹脂に含有さ
れる酸化防止剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤
のような添加剤の総量は、1%以下であることが好まし
い。中栓2の底面23を形成するには、切削、プレス成
形、射出成形によることが好ましいが、射出成形である
と一層好ましい。
【0008】脆弱部24は、中栓2を一体成形して形成
された薄肉であることが好ましい。
【0009】脆弱部24は、図2に示すように、中栓2
の底面23にあけられた穴25を塞いでいるプラスチッ
クフィルムであってもよい。このフィルム24は、薬液
33によって変質や劣化や溶解を引き起こさない材質か
らなっており、具体的には、高密度ポリエチレン、低密
度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロ
ピレン、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合物、エチレン−ビニルアルコール共重合物の
ような樹脂、金属箔、紙からなる膜、またはこれらを貼
り合わせた多層膜であることが好ましい。なお、紙や金
属箔は、薬液による変質や劣化や溶解のおそれ、および
移送時の亀裂の発生や破損のおそれがないように、前記
の樹脂で被膜していることが好ましい。
【0010】脆弱部24の厚さは、その周囲の底面23
の厚さの1〜50%、好ましくは4〜10%である。脆
弱部24の厚さがこの範囲より薄いと、移送時の薬液保
管容器3内の気圧の変動や振動により、脆弱部24に亀
裂を生じ、薬液33が漏れ出すおそれがある。一方、脆
弱部24の厚さがこの範囲より厚いと、薬液排出管で脆
弱部24を突破ることができない。
【0011】脆弱部24は、薬液排出管の横断面の形状
に合わせて、円形や楕円形、三角形や四角形のような多
角形、星型、またはリング状としていることが好まし
い。真円形であると一層好ましい。脆弱部24の大きさ
は適宜、薬液排出管の太さにより変更できる。
【0012】本発明の薬液保管容器は、前記の薬液保管
容器の中栓2が、薬液保管容器3に結合する外蓋1で包
込まれて、盆状に窪んでおり、この窪み21へ外蓋1の
凹み11が嵌まって脆弱部24を覆い、凹み11と脆弱
部24との隙間が10mm以下となったものである。こ
の隙間が10mmより大きいと、移送時の薬液保管容器
3内の気圧の変動や振動による脆弱部24の伸縮を抑制
できず、脆弱部24が皺や亀裂を生じて破損してしまう
結果、薬液33が漏れ出してしまう。脆弱部24と、外
蓋1やその凹み11とは接触していないことが好まし
い。接触していると、脆弱部が押し付けられて変形した
り、移送時の振動による摩擦で亀裂を生じたりしてしま
う。
【0013】外蓋1の材質は、高剛性、高強度を示す高
密度ポリエチレンが好ましい。外蓋1を形成するには、
切削または射出成形によることが好ましいが、射出成形
であると一層好ましい。
【0014】薬液排出管の材質は、脆弱部24を突破っ
て貫通させる強度のあるものが用いられ、具体的には、
高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密
度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ
エステル、ポリアミド、ポリフッ化エチレン系樹脂が用
いられる。薬液排出管の横断面の形状は、真円や楕円、
三角形や四角形のような多角形、星形である。薬液排出
管の薬液33に浸かる尖端の形状は、脆弱部を突破り易
い斜断状、略円錐状、平坦状であることが好ましい。
【0015】なお、薬液保管容器3は、略直方体状やボ
トル状の形状であり、ポリエチレンまたはエチレンとα
−オレフィンとの共重合体からなる樹脂組成物を成形原
料としてブロー成形により一体成形された容器や、ガラ
ス製の容器や、金属製の容器であることが好ましい。薬
液保管容器3は、その薬液出入開口31の周囲に、外蓋
1と螺合できる螺子32を有していてもよい。
【0016】本発明の薬液保管容器3からの薬液33の
排出方法は、薬液33の充填された薬液保管容器3に設
けられている薬液出入開口31が、底面23に脆弱部2
4を有する中栓2を挿入することにより塞がれており、
脆弱部24を薬液排出管で突破り、薬液33にまで到達
させた薬液排出管を介して、薬液33を吸出して外界へ
排出するというものである。薬液33は、例えば薬液排
出管に繋がったポンプにより吸い出されて薬液保管容器
3の外へ排出される。
【0017】この薬液保管容器の中栓を用いた薬液排出
方法によれば、薬液が遺漏せず、簡便かつ安全に排出さ
れる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明を適用する薬液保管
容器の中栓の好ましい実施の形態を図面により詳細に説
明する。
【0019】図1は本発明の薬液保管容器の中栓の一実
施例を示す側面の一部断面図である。同図に示すとお
り、薬液保管容器の中栓2は、薬液33の充填されてい
る薬液保管容器3から突出た薬液出入開口31を、塞ぐ
ためのものである。
【0020】薬液保管容器の中栓2は、盆状であって、
その底面23の中央近傍に、薬液排出管(不図示)で突
破られる薄肉の脆弱部24が設けられている。この中栓
2の底面23が薬液出入開口31から挿入され、開口3
1を閉塞させている。中栓2の上端の縁にはフランジ2
2が設けられている。
【0021】薬液33を長期保存したり移送したりする
際、中栓2を包込んでいる外蓋1が、薬液保管容器3の
開口31の周囲近傍に設けられた螺子32と、螺合する
ことにより容器3に結合し、中栓2を締め付けている。
【0022】薬液保管容器3から薬液33を排出する方
法は以下のとおりである。先ず、外蓋1を外す。次い
で、先端の尖った薬液排出管で、脆弱部24を突破り貫
通させる。薬液排出管をさらに挿入して、薬液保管容器
3の底近傍にまで到達させる。薬液排出管の他端に接続
されたポンプを駆動することにより、薬液33は、薬液
排出管を介して吸い出され、外界へ排出される。薬液排
出管と脆弱部24との間の僅かな間隙から外気が流入
し、容器3内と外界との圧力が等しくなる。
【0023】以下に本発明を適用する薬液保管容器の中
栓を試作し、その性能を調べた例を実施例1〜2に示
す。また、本発明を適用外の中栓を試作し、その性能を
調べた例を比較例1〜5に示す。
【0024】(実施例1)薬液保管容器の中栓の試作に
用いた成形原料は、メルトフローレート(MFR:Melt
Flow Rate)が7.0g/10min、JIS−K7
140に準じて測定した密度が0.920g/cm
低密度ポリエチレンである。
【0025】中栓は、直径を約52mmとし窪みの深さ
を約14mmとする盆状であり、その底面が周縁近傍の
厚さを1.6mmとし、底面の中心から20mmまでの
円形の脆弱部の厚さを0.5mmとし、さらにフランジ
を有する図1のような形状であって、射出成形により形
成したものである。
【0026】外蓋は、MFRが0.04g/10mi
n、密度が0.960g/cmの高密度ポリエチレン
を用いて射出成形により形成されたものである。外蓋
は、中栓を包込み、内壁に雌螺子のついた蓋であって、
中栓の窪みに嵌まる凹みを有した、図1のような形状の
ものである。外蓋を容器に螺合させたとき、この凹みと
脆弱部とは、僅かに離れている。
【0027】なお、薬液保管容器は、MFRが0.4g
/10min、密度が0.956g/cmの高密度ポ
リエチレンを使用し、ブロー成形により、偏平した10
Lの容量であって突出た薬液出入開口を有するものであ
る。
【0028】薬液保管容器に水を満量充填し、中栓を開
口から挿入して、開口を閉塞させ、フランジを開口で係
止した。さらに中栓を包込む外蓋を、薬液保管容器に螺
合させた。
【0029】この薬液保管容器の輸送耐久性試験を行っ
た。この薬液保管容器を、車両による約550kmの陸
路輸送と、航空機による約20,000kmの航空輸送
とを行った。輸送後の薬液保管容器を目視で観察したと
ころ、薬液保管容器の開口からの水の漏れはなく、また
亀裂や皺の発生のような脆弱部の損傷は認められなかっ
た。
【0030】次いで、薬液排出性能試験を行った。MF
Rが0.4g/10min、密度が0.956g/cm
の高密度ポリエチレンを押出成形により形成した薬液
排出管の一端を40°に斜断した。この尖った先端で脆
弱部を突破った。薬液排出管の先端を薬液保管容器の底
近傍にまで挿入し、管の他端に繋いだポンプを稼動させ
て、水を排出することができた。
【0031】(実施例2)薬液保管容器の中栓の試作に
用いた成形原料は、MFRが7.0g/10min、密
度が0.920g/cmの低密度ポリエチレンであ
る。これを用い、直径を約52mmで窪みの深さを約1
4mmとする盆状であり、その底面が周縁近傍の厚さを
1.6mmとし、底面の中心近傍に20mmの穴のあい
た中栓用部材を、射出成形により形成した。MFRが
2.0g/10min、密度が0.920g/cm
低密度ポリエチレンのインフレーション成形により得た
厚さ60μmのプラスチックフィルムをインパルスシー
ラーで熱融着させて、この穴を塞いで、中栓を得た。
【0032】この中栓を用いたこと以外は、実施例1と
同様に薬液保管容器を試作し、輸送耐久性試験と薬液排
出性能試験を行ったところ、いずれの試験結果も実施例
1と同じく良好であった。
【0033】(比較例1)脆弱部の厚さを12μmとし
たこと以外は、実施例1と同様にして、輸送耐久性試験
と薬液排出性能試験とを行った。輸送耐久性試験におい
て、脆弱部に亀裂が認められ、開口から水が漏れてい
た。
【0034】(比較例2)脆弱部の厚さを1.0mmと
したこと以外は、実施例1と同様にして、輸送耐久性試
験と薬液排出性能試験とを行った。薬液排出性能試験に
おいて、薬液排出管で脆弱部を突破ることができなかっ
た。
【0035】(比較例3)同一の低密度ポリエチレンを
用いインフレーション成形により得た厚さ10μmのフ
ィルムを用いたこと以外は、実施例2と同様にして、輸
送耐久性試験と薬液排出性能試験とを行った。輸送耐久
性試験において、フィルムに亀裂が認められ、開口から
水が漏れていた。
【0036】(比較例4)同一の低密度ポリエチレンを
用いプレス成形により得た厚さ1.0mmのフィルムを
用いたこと以外は実施例2と同様にして、輸送耐久性試
験と薬液排出性能試験とを行った。薬液排出性能試験に
おいて、フィルムは薬液排出管で突破られなかった。
【0037】(比較例5)凹みのある外蓋に代えて、凹
みのない外蓋を用いたこと以外は、実施例2と同様にし
て、輸送耐久性試験と薬液排出性能試験とを行った。輸
送耐久性試験において、フィルムは、皺や亀裂が生じて
破損していた。
【0038】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように本発明の薬
液保管容器の中栓を用いると、薬液の充填された保管容
器により薬液を保存したり移送したりする際に容器から
薬液が遺漏しない。さらに簡便かつ安全に容器から薬液
を排出させることができる。この中栓は、水のような安
全な液体の他、毒性や腐食性のある危険な薬液の保存や
移送、および容器からの排出に用いることができる。薬
液は、中栓によって汚染されることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用する薬液保管容器の中栓の一実施
例を示す側面の一部断面図である。
【図2】本発明を適用する別な態様の薬液保管容器の中
栓の一実施例を示す側面の一部断面図である。
【符号の説明】
1は外蓋、11は凹み、2は薬液保管容器の中栓、21
は窪み、22はフランジ、23は底面、24は脆弱部、
25は穴、3は薬液保管容器、31は薬液出入開口、3
2は螺子、33は薬液である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B65D 51/20 B65D 53/10 53/10 85/82 85/82 85/84 85/84 A61J 1/00 315C (72)発明者 川合 恵治 愛知県豊川市豊川西町76 ソシエール西町 302 Fターム(参考) 3E035 AA03 BA04 BD10 CA03 3E084 AA04 AA12 AA22 AA25 AA32 AB05 BA02 BA08 CA01 CC04 DA01 DB12 DC04 EA02 EB01 EB02 EB10 EC04 EC09 FA09 FB01 GA04 GB04 KA12 LA01 LB02 LD21

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 薬液の充填された保管容器に設けられ
    ている薬液出入開口を塞ぐ中栓であって、該薬液出入開
    口へ挿入される該中栓の底面には、その周囲の厚さの1
    〜50%の厚さであり薬液排出管で突破られる脆弱部が
    設けられていることを特徴とする薬液保管容器の中栓。
  2. 【請求項2】 該脆弱部は、該中栓を一体成形して形
    成された薄肉であることを特徴とする請求項1に記載の
    薬液保管容器の中栓。
  3. 【請求項3】 該脆弱部は、該底面にあけられた穴を
    覆っているプラスチックフィルムであることを特徴とす
    る請求項1に記載の薬液保管容器の中栓。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の薬液保管容器の中栓
    が、薬液保管容器に結合する外蓋で包み込まれて、盆状
    に窪んでおり、この窪みへ該外蓋の凹みが嵌まって該脆
    弱部を覆い、該凹みと該脆弱部との隙間が10mm以下
    であることを特徴とする薬液保管容器。
  5. 【請求項5】 薬液の充填された薬液保管容器に設け
    られている薬液出入開口は、底面に脆弱部を有する中栓
    を挿入することにより塞がれており、該脆弱部を薬液排
    出管で突破り、該薬液にまで到達させた該薬液排出管を
    介して、該薬液を吸出して外界へ排出することを特徴と
    する薬液保管容器からの薬液排出方法。
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