JP2002295675A - 耐摩環 - Google Patents

耐摩環

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JP2002295675A
JP2002295675A JP2001092138A JP2001092138A JP2002295675A JP 2002295675 A JP2002295675 A JP 2002295675A JP 2001092138 A JP2001092138 A JP 2001092138A JP 2001092138 A JP2001092138 A JP 2001092138A JP 2002295675 A JP2002295675 A JP 2002295675A
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JP2001092138A
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Hiroshi Takiguchi
寛 滝口
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Nippon Piston Ring Co Ltd
Original Assignee
Nippon Piston Ring Co Ltd
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F05INDEXING SCHEMES RELATING TO ENGINES OR PUMPS IN VARIOUS SUBCLASSES OF CLASSES F01-F04
    • F05CINDEXING SCHEME RELATING TO MATERIALS, MATERIAL PROPERTIES OR MATERIAL CHARACTERISTICS FOR MACHINES, ENGINES OR PUMPS OTHER THAN NON-POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES OR ENGINES
    • F05C2251/00Material properties
    • F05C2251/04Thermal properties
    • F05C2251/042Expansivity

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  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ピストンに鋳包んだ際に所望の境界強度を安
定して確保できる、ピストン材(アルミニウム合金)と
の接合性に優れた耐摩環を提供する。 【解決手段】 多孔質金属焼結体の熱膨張係数(20〜40
0 ℃)αが、該耐摩環の表面粗さの特性値との関係式で
ある、α≧[−4.4 ×A+19.8] ×10-6(ここで、A:
{Rvk×(100 −Mr2)}/100 、Rvk:油溜まり深さ
(有効負荷粗さRk を外れる溝部の深さ)(μm )、M
r2:負荷長さ率2(有効負荷粗さRk の下限値に相当す
る負荷長さ率)(%))を満足するように調整して、ピ
ストンに鋳包む。これにより、境界強度が安定して所望
の強度以上とすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ピストンに鋳包ま
れて使用される耐摩環に係り、特にディーゼルエンジン
および高出力ガソリンエンジンへの使途に好適な多孔質
金属焼結体製耐摩環に関する。
【0002】
【従来の技術】近年のエンジンの軽量化および放熱性を
高める目的から、アルミニウム合金製のエンジンが一般
化しつつあり、ピストンもアルミニウム合金製となって
いる。一方で、エンジン高出力化の要請に伴い、エンジ
ンはより高温の燃焼環境に曝され、またピストンリング
にも厳しい耐摩耗性が要求されている。
【0003】このようなピストンリングへの耐摩耗性向
上の要求から、高硬度のピストンリングが使用されるよ
うになっている。そのため、ピストンリング溝は、これ
らピストンリングの端面で叩きを受けるため、通常のア
ルミニウム合金ではピストンリング溝のへたりや変形が
生じるおそれがある。特に、ディーゼルエンジンのトッ
プリングでは燃焼圧が直接作用するので、トップリング
溝にはピストンリングによる衝撃が繰り返され、へたり
摩耗が生じやすい。トップリング溝に摩耗が生じると、
ガス漏れやオイル漏れが生じ、エンジン出力の低下をき
たすこととなる。
【0004】この問題を解決するために、ピストンリン
グ溝にピストン材料よりは高強度の材料からなる耐摩環
を固着し、ピストンリングを耐摩環により支持する構成
が提案されている。例えば、ディーゼルエンジン用のピ
ストンでは、そのトップリング溝にニレジスト鋳鉄製の
インサート(耐摩環)を鋳包み、この耐摩環によってシ
リンダ内におけるピストン摺動時のピストンリング溝の
摩耗を防止するようにしたものが主流となっている。
【0005】しかし、ニレジスト鋳鉄で耐摩環を構成す
るのは、鋳造品であるため材料費が高いうえに歩留りお
よび切削加工性が悪く、コスト高になるとともに、鋳包
み性改善のためにアルミナイズ処理が必要不可欠とな
る。また、鉄合金のため質量が大きく、熱伝導率も不十
分であるためエンジンの高性能化を阻害するという問題
があった。
【0006】また、特公昭57-32743号公報には、ピスト
ンリング溝のうち少なくともトップリング溝周壁に、N
i:8〜25%、Cu:3.5 〜10%、残部が実質的にFeから
なる焼結合金製インサート材を鋳包んだアルミニウム合
金製ピストンが提案されている。また、特開平3−1390
66号公報には、耐摩耗性向上のため、アルミニウム合金
製ピストンに鋳包んで使用するに好適な、多孔質金属強
化材が提案されている。この多孔質金属強化材は、Ni、
Co、Cr、Mo、Mn、Wよりなる群から選ばれた1種または
2種以上と鉄とからなる合金の粉末、あるいは、Ni、C
o、Cr、Mo、Mn、Wよりなる群から選ばれた1種または
2種以上と鉄とからなる合金の粉末と、鉄粉との混合
物、を多孔質状に焼結して得られる焼結体である。しか
し、特開平3−139066号公報に記載された多孔質焼結体
では、Ni、Co、Cr、Mo等の合金元素を多量に添加してお
り、経済的に不利となるとともに、ピストン鋳包み後の
溝加工性が悪化するという問題があった。
【0007】また、特開平8−319504号公報には、Cr、
Mo、V、W、Mn、Siのうち少なくとも1種が2〜70%、
炭素が0.07〜8.2 %、不可避の不純物の組成をもつ鉄系
原料粉末を用いて焼結体とし、気体中で冷却し気体焼入
れして構成する金属の硬さをマイクロビッカース硬さで
Hv200 〜800 に設定した多孔質金属焼結体と、気孔に含
浸し固化した軽金属とを備えた金属焼結体複合材料が提
案されている。しかし、特開平3−139066号公報、特開
平8−319504号公報に記載された多孔質金属焼結体で
は、気体焼入れが可能となるようにCr、Mo、V等の合金
元素を多量に添加しており、経済的に不利となる。ま
た、ピストン鋳包み後の溝加工性が悪化するという問題
もあった。
【0008】また、特開平9-143639 号公報には、20〜
55%の有孔Fe基焼結合金のスケルトンで構成され、かつ
300 〜2000cm2 /cm3の全体比表面積、並びに80〜97%の
全体気孔率を有する多孔質Fe基焼結合金からなる鋳包み
材でヘッド部を補強した軽量Al合金製ピストン本体鋳物
が提案されている。しかし、特開平9-143639 号公報に
記載された鋳包み材でピストンを補強すると、全体の鉄
基焼結合金部分が3〜20%と少なく耐摩耗性が不足する
場合があるという問題があった。
【0009】また、特開2001-32747号公報には、ピスト
ン溝を構成する、相対密度50〜80%のオーステナイト系
ステンレス鋼製多孔質体からなる支持部材を本体に鋳包
んでなる内燃機関用アルミニウム合金製ピストンが提案
されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上記したように、特公
昭57-32743号公報、特開平3−139066号公報、特開平8
−319504号公報、特開2001-32747号公報に記載された多
孔質金属焼結体(焼結合金)をアルミニウム合金製ピス
トンに鋳包んで使用することにより、ピストンリング溝
の耐摩耗性は確かに向上する。しかしながら、このよう
な多孔質金属焼結体をピストンに鋳包むと、ピストン材
(アルミニウム合金)との境界強度がばらつき、境界剥
離が生じ、安定した特性を有する製品となりにくい場合
があり、品質保証上問題があった。また、特開2001-327
47号公報に記載された相対密度50〜80%のオーステナイ
ト系ステンレス鋼製多孔質体からなる支持部材であって
も、依然としてピストン材(アルミニウム合金)との境
界強度にばらつきがあり、安定した特性を有する製品と
なりにくい場合があるという問題があった。
【0011】本発明は、上記した従来技術の問題を有利
に解決し、ピストンに鋳包んだ際に所望の境界強度を安
定して確保できる、ピストン材との接合性に優れた多孔
質金属焼結体製耐摩環を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成するために、ピストンに鋳包んだ際の、ピス
トン材と耐摩環との境界強度におよぼす要因について鋭
意検討した。従来の多孔質金属焼結体製耐摩環では、ピ
ストン材との所望の境界強度を得るために、空孔率を一
定範囲内に規制するのが、一般的であった。製品の空孔
率を測定するには、製品を切断して、断面組織を撮像
し、画像解析により算出するのが一般的であるが、しか
し、このような方法では、製品を切断する必要があり工
程生産に応用することは不可能であり、非破壊による測
定が要望されていた。そこで、空孔率の測定は、密度測
定で代用するのが通常であった。しかし、出荷品の検査
として密度測定を使用すると、密度測定時に封孔剤とし
て用いるパラフィン等が空孔内に残留する可能性があり
ピストン材との接合に悪影響を及ぼす。このため、出荷
品の検査として、密度測定は適用できない。
【0013】そこで、本発明者らは、非破壊で耐摩環と
ピストン材との境界強度を測定する方法について検討し
た。まず、本発明者らは、耐摩環形状とした空孔を有す
る鉄基焼結体をアルミニウム合金製ピストンに鋳包んだ
のち、接合境界を含む引張試験片を採取した。これら引
張試験を用いて引張試験を行い境界強度を求めた。な
お、各鉄基焼結体の空孔率は、密度測定により求めた。
【0014】境界強度と空孔率の関係を図4に示す。な
お、境界強度(σ)は、所望の境界強度(σE )に対す
る比、境界強度比σ/σE として表示した。境界強度比
1以上で、境界強度σが所望の境界強度σE 以上の値と
なることを意味する。図4から、同一空孔率でも境界強
度比には大きなばらつきが見られる。これは、空孔率を
密度測定で代用したためと考えられ、密度測定により得
られる空孔率の管理だけでは、耐摩環の境界強度に影響
する因子を代表していないことになる。
【0015】そこで、本発明者らは、図4の結果をさら
に詳細に検討し、同一の空孔率でも表面と内部または個
々のワーク間で、空孔の分布および形態に大きな相違が
ある場合があり、それが、ピストン材と多孔質金属焼結
体との境界強度に大きく影響していることに想到した。
そして、空孔率が同一であるが、空孔の大きさ、数が相
違する、例えば、図3(a)、(b)に模式的に示す、
断面での空孔分布を有する多孔質金属焼結体では、
(b)の空孔分布を有する焼結体の方が、ピストン材と
の境界強度が大きいことを見いだした。
【0016】本発明者らは、これらの知見に基づき、ア
ルミニウム合金の浸透しやすさを含め、さらに検討を加
えた結果、この境界強度の相違は、非破壊で測定できる
表面粗さ曲線から得られる特性値を用いれば、良く説明
できることを見いだした。そして本発明者の更なる研究
により、ピストン材と該ピストンに鋳包まれた多孔質金
属焼結体との境界強度(境界強度比)が、表面粗さ曲線
から得られる特性値の関係式で定義される、A値 A={Rvk×(100 −Mr2)}/100 (ここで、Rvk:油溜まり深さ(有効負荷粗さRk を外
れる溝部の深さ)(μm)、Mr2:負荷長さ率2(有効
負荷粗さRk の下限値に相当する負荷長さ率)(%))
と良い相関を示すことを見いだした。A値が所定値以上
の表面性状を有する多孔質焼結体からなる製品(耐摩
環)は、所望の境界強度(接合強度)以上の鋳包み後の
境界強度(接合強度)を有する。さらに、A値が所定値
以上を満足する場合には、鋳包み後の境界部での亀裂発
生を防止できるのである。
【0017】純鉄粉を用いた多孔質金属焼結体では、図
2に示すように、A値が1.5 以上を満足する表面性状を
有する場合には、境界強度比が1以上となり、耐摩環
は、所望の境界強度(接合強度)以上の鋳包み後の境界
強度(接合強度)を有し、鋳包み後の境界部での亀裂発
生を防止できるのである。さらに、本発明者の更なる研
究により、鋳包み後の境界強度(接合強度)は、前記し
た表面性状に関連するA値に加えて、鋳包まれる材料の
熱膨張係数が大きく影響することを見いだした。
【0018】本発明は、上記した知見に基づいて完成さ
れたものである。すなわち、本発明は、多孔質金属焼結
体からなり、ピストンに鋳包まれて使用される耐摩環で
あって、前記多孔質金属焼結体の熱膨張係数(20〜400
℃)αが、該耐摩環の表面粗さの特性値との関係式であ
る次(1)式 α≧[−4.4 ×A+19.8] ×10-6……(1) (ここで、α:熱膨張係数(20〜400 ℃)(/℃)、
A:{Rvk×(100 −Mr2)}/100 、Rvk:油溜まり
深さ(有効負荷粗さRk を外れる溝部の深さ)(μm
)、Mr2:負荷長さ率2(有効負荷粗さRk の下限値
に相当する負荷長さ率)(%))を満足する多孔質金属
焼結体であることを特徴とする接合性に優れる耐摩環で
あり、また、本発明では、前記多孔質金属焼結体が、空
孔を含む鉄基合金焼結体であることが好ましく、また、
本発明では、前記ピストンが、アルミニウム合金製であ
ることが好ましい。
【0019】また、本発明は、金属粉を潤滑剤とともに
混合し、加圧成形し、焼結して多孔質金属焼結体製耐摩
環とする耐摩環の製造方法において、前記多孔質金属焼
結体の熱膨張係数(20〜400 ℃)αが、該耐摩環の表面
粗さの特性値との関係式である次(1)式 α≧[−4.4 ×A+19.8] ×10-6……(1) (ここで、α:熱膨張係数(20〜400 ℃)(/℃)、
A:{Rvk×(100 −Mr2)}/100 、Rvk:油溜まり
深さ(有効負荷粗さRk を外れる溝部の深さ)(μm
)、Mr2:負荷長さ率2(有効負荷粗さRk の下限値
に相当する負荷長さ率)(%))を満足するように、金
属粉の混合、加圧成形、焼結を行うことを特徴とする接
合性に優れる耐摩環の製造方法である。
【0020】
【発明の実施の形態】耐摩環は、例えば、アルミニウム
合金製ピストンに鋳包まれたのち、ピストンリング溝や
オイルリング溝等に仕上げ加工されて、ピストンリング
やオイルリングを装着され、使用に供せられる。本発明
の耐摩環は、多孔質金属焼結体で構成され焼結体のまま
で製品とされる。多孔質金属焼結体の材質は、とくに限
定されるものではないが、耐摩耗性の観点から空孔を含
む鉄基合金焼結体とするのが好ましい。
【0021】本発明の耐摩環は、熱膨張係数(20〜400
℃)αが、該耐摩環(多孔質金属焼結体)の表面粗さの
特性値との関係式である次(1)式 α≧{−4.4 ×A+19.8}×10-6……(1) (ここで、α:熱膨張係数(20〜400 ℃)(/℃)、
A:{Rvk×(100 −Mr2)}/100 、Rvk:油溜まり
深さ(有効負荷粗さRk を外れる溝部の深さ)(μm
)、Mr2:負荷長さ率2(有効負荷粗さRk の下限値
に相当する負荷長さ率)(%))を満足する多孔質金属
焼結体からなる。このような表面粗さ(A値)と熱膨張
係数との関係を満足する多孔質金属焼結体を使用するこ
とにより、図1に示すように、境界強度比が1以上とな
り、所望の境界強度を満足するピストン材との接合性に
優れた耐摩環となる。
【0022】つぎに、A値を規定するRvk、Mr2につい
て説明する。Rvk、Mr2は、表面粗さ曲線から得られる
特性値であり、つぎのようにして求められる。まず、耐
摩環の仕上げ表面の表面粗さを、DIN 4776の規定に準拠
して測定し、得られた粗さ曲線から、負荷曲線(BA
C)を得る。粗さ曲線と負荷曲線(BAC)の関係を模
式的に図5に示す。
【0023】ついで、図6に示すように、上記したよう
に得られた負荷曲線(BAC)上で負荷長さ率の差が40
%となる2点A、Bを通る直線のうち、傾きがもっとも
小さい直線を選ぶ。そして、この直線が、負荷長さ率0
%の軸と交わる点を点C、負荷長さ率100 %の軸と交わ
る点を点Dとする。さらに、点Dを通る切断高さレベル
と負荷曲線との交点を点Eとし、負荷曲線と負荷長さ率
100 %の軸との交点を点Fとする。そして、線分DE、
曲線EF、線分FDで囲まれる面積と三角形DEGの面
積が等しくなる点Gを負荷長さ率100 %の軸上に求め
る。
【0024】点Dと点Gの距離をRvk、負荷曲線上の点
Eに相当する負荷長さ率をMr2、点Cと点Dとを通る切
断高さレベルの差をRk とする。本発明では、このRk
を有効負荷粗さ、Rvkを油溜まり深さ(有効負荷粗さR
k を外れる溝部の深さ)、M r2を負荷長さ率2(有効負
荷粗さRk の下限値に相当する負荷長さ率)と称する。
【0025】表面粗さの測定には、触針式粗さ計、ある
いは非接触式粗さ計いずれもが好適に適用でき、その方
法はDIN 4776の規定に準拠して行えばとくに問題はな
い。また、熱膨張係数の測定は、多孔質金属焼結体から
採取した試験片を用いて、レーザ干渉式熱膨張計、また
は押棒式熱膨張計を使用して測定することが好ましい。
採取した試験片について、室温(20℃)から 400℃間の
熱膨張率を測定し、20℃から 400℃の熱膨張係数を算出
して、本発明における熱膨張係数αとする。
【0026】本発明の耐摩環は、多孔質金属焼結体、好
ましくは空孔を有する鉄基合金焼結体により製造され
る。多孔質金属焼結体は、原料とする金属粉、好ましく
は純鉄粉および/または鉄基合金粉、あるいはさらに合
金粉を、潤滑剤等とともに混合したのち、加圧成形し圧
粉体とし、該圧粉体を焼結して得られる。本発明では、
熱膨張係数と表面性状が上記した(1)式を満足するよ
うに、主として、原料の純鉄粉および/または鉄基合金
粉等の金属粉の配合量を調整し、さらに配合する粉末の
粒径分布を予め所定の粒径分布を有するように調整して
混合し、さらに加圧成形、焼結条件を調整して焼結体と
するのが好ましい。なお、純鉄粉、鉄基合金粉は、アト
マイズ法、あるいは還元法で製造されたものを単独ある
いは混合して使用するのが好ましい。
【0027】なお、得られた多孔質金属焼結体の表面粗
さを測定し、仕上げ加工後の表面性状が上記した(1)
式を満足することを確認して、製品とするのが好まし
い。このようにして得られた環状の焼結体を、ピストン
を形成する鋳型のリング溝対応部位に装着し、その鋳型
内に溶融アルミニウム合金溶湯を注入し、高圧ダイキャ
ストしてあるいは溶湯鋳造して焼結体を鋳包んだピスト
ンを製造する。これにより、焼結体の空孔に溶湯が侵入
しピストン材との接合が完了する。その後、耐摩環は、
所定の溝寸法に切削加工される。
【0028】
【実施例】純鉄粉または鉄基合金粉に、合金元素粉とし
てCu粉、黒鉛粉、あるいはさらにMnS粉および/またはF
e−Mo粉を添加し混合して混合粉としたのち、さらに潤
滑剤を添加して、混練して、金型に充填し加圧成形し
て、所定寸法の耐摩環形状の圧粉体とした。なお、純鉄
粉、鉄基合金粉は、予め分級し、成形−焼結後に所定の
空孔率と、焼結体の表面性状が、熱膨張係数αとの関係
で、(1)式を満足するように粒径を調整し混合した。
ついで、これら圧粉体を1100〜1200℃で焼結し、空孔を
含む多孔質の耐摩環用鉄基合金焼結体とし、本発明例と
した。なお、本発明例の試料No.1は、純鉄粉に、質量%
で黒鉛粉を 1.1%、Cu粉を4%、 MnS粉を 0.5%、Fe−
Mo粉を 1.0%混合し(成分系No. a)、また、本発明例
の試料No.4、No.6は、SUS 304 鋼粉に、質量%で黒鉛粉
を 0.8%、MnS 粉を 0.5%混合し(成分系No. b)たの
ち、加圧成形、焼結して焼結体とした。
【0029】一方、比較例である試料No.2、No.3は本発
明例である試料No.1と同じ組成、また比較例である試料
No.5は本発明例である試料No.4、No.6と同じ組成で、A
値が本発明例より小さくなるように、本発明例より細か
い粒径の純鉄粉または鉄基合金粉を用いて、同様の工程
で多孔質の耐摩環用鉄基合金焼結体とした。得られた各
焼結体の表面について、触針式表面粗さ計で粗さ曲線を
求め、各特性値(Rvk、Mr2)を算出し、A値を求め
た。算出方法は、前記した通りとした。なお、密度測定
により空孔率を求めた。密度測定方法は、アルキメデス
法によった。また、熱膨張係数αは、レーザ熱膨張計に
より室温から400 ℃間の値を求めた。
【0030】これら焼結体を、ピストン用鋳型のリング
溝相当部に装着した。ついで鋳型内に、アルミニウム合
金溶湯(JIS AC8A)を注入したのち、溶湯鍛造を施
し所定の寸法のピストン形状に仕上げた。得られたピス
トンから、耐摩環との境界部を含む引張試験片を採取
し、引張試験により境界部の境界強度を求めた。引張試
験片の採取方向は、試験片の軸に対し垂直に境界面を含
む方向とした。なお、境界強度σは、所望の境界強度σ
E に対する比、境界強度比σ/ σE で評価した。
【0031】また、耐摩環を鋳包んだピストンについ
て、熱衝撃試験を実施した。この試験は、ピストンの下
部を水槽中に浸漬し、上部(耐摩環側)をバーナーで一
定時間加熱したのち、バーナ加熱を一定時間停止する、
加熱と冷却を2000サイクル繰り返す試験である。加熱冷
却サイクルは、100 ℃−350 ℃−100 ℃のサイクルを60
s間で行うものとする。試験後、境界部から試験片を採
取し、クラックの発生の有無を調査した。試験片の採取
個所は、20個所/個とした。この条件で2000サイクル繰
り返してクラックの発生がなければ、エンジンテストで
も問題がないことが確認されている。
【0032】これらの結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】本発明例は、いずれも1.0 以上の高い境界
強度比を有し、しかも熱衝撃による境界部での亀裂発生
もなく、高い境界強度を有する耐摩環となっている。一
方、本発明の範囲を外れる比較例は、境界強度比が低く
しかも境界部で亀裂が多数発生している。比較例は、本
発明例と同一空孔率にもかかわらず、接合性に劣る耐摩
環となっていた。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、安定して、優れた鋳包
み後の接合性を有する耐摩環を、能率良く製造でき、産
業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、製造
された耐摩環の鋳包み後の接合性の良否を非破壊で判断
することができ、品質の一定した製品を安定して供給で
きるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳包み後の耐摩環とピストン材との境界強度比
に及ぼす熱膨張係数αとA値との関係を示すグラフであ
る。
【図2】鋳包み後の耐摩環とピストン材との境界強度比
とA値との関係の一例を示すグラフである。
【図3】焼結体中の空孔の分布状況の一例を模式的に示
す説明図である。
【図4】鋳包み後の耐摩環とピストン材との境界強度比
と空孔率との関係を示すグラフである。
【図5】負荷長さ率(tp )と負荷曲線(BAC)の定
義を示す説明図である。
【図6】RvkとMr2の求め方を示す説明図である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 多孔質金属焼結体からなる耐摩環であっ
    て、前記多孔質金属焼結体が、該耐摩環の表面粗さの特
    性値との関係式である下記(1)式を満足する、熱膨張
    係数(20〜400 ℃)αを有することを特徴とする接合性
    に優れる耐摩環。 記 α≧[−4.4 ×A+19.8] ×10-6……(1) ここで、α:熱膨張係数(20〜400 ℃)(/℃) A:{Rvk×(100 −Mr2)}/100 Rvk:油溜まり深さ(有効負荷粗さRk を外れる溝部の
    深さ)(μm ) Mr2:負荷長さ率2(有効負荷粗さRk の下限値に相当
    する負荷長さ率)(%)
  2. 【請求項2】 前記多孔質金属焼結体が、空孔を含む鉄
    基合金焼結体であることを特徴とする請求項1に記載の
    耐摩環。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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