JP2002286553A - 光信号電界の時間波形測定方法及び装置 - Google Patents

光信号電界の時間波形測定方法及び装置

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JP2002286553A JP2001084091A JP2001084091A JP2002286553A JP 2002286553 A JP2002286553 A JP 2002286553A JP 2001084091 A JP2001084091 A JP 2001084091A JP 2001084091 A JP2001084091 A JP 2001084091A JP 2002286553 A JP2002286553 A JP 2002286553A
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  • Photometry And Measurement Of Optical Pulse Characteristics (AREA)
  • Optical Modulation, Optical Deflection, Nonlinear Optics, Optical Demodulation, Optical Logic Elements (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 被測定光信号の一発毎に対称化位相を得るこ
とでショット毎の強度の変動に高い耐性を有し、かつ、
完全な単発の信号光の測定を実現する。 【解決手段】 被測定光信号に対し、局発光を作用させ
て位相共役光を生成し、前記被測定光と前記位相共役光
とを合波して混合光を生成し、この混合光のスペクトル
を観測して、前記被測定光信号の電界の周波数領域での
位相を測定する光信号電界の時間波形測定方法であっ
て、前記局発光と被測定光信号との相対位相が、光線断
面内の位置に依存するようにして、位相共役光を生成
し、この生成された位相共役光と前記被測定光とを合波
して混合光を生成し、この混合光のスペクトル強度を、
前記位置毎に分解された2次元像として観測記録し、前
記位置の変化に伴うスペクトル成分毎の強度の変化を比
較してスペクトル成分の間の相対的位相を測定するもの
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】現在の高速光検出器あるいは
高速電子回路の応答時間よりも遥かに高速に変化し、そ
れらを用いる通常手段によっては時間波形を測定できな
いような、高速の光信号の強度及び位相の時間変化を、
正確に測定する手段を提供する。一般に、強度と位相と
を同時に測定できれば、古典的電磁波としての光信号の
特性を余すところなく決定できる。従って、この種の測
定方法は、光信号電界の時間波形測定方法と呼ぶことが
できる。
【0002】本発明は、光信号電界の時間波形測定方法
及び装置に関し、特に、被測定光信号に対し、局発光を
作用させて位相共役光を生成し、前記被測定光と前記位
相共役光とを合波して混合光を生成し、この混合光のス
ペクトルを観測して、前記被測定光信号の電界の周波数
領域での位相を測定する光信号電界の時間波形測定方法
及び装置に関するものである。
【0003】
【従来の技術】ピコ秒からフェムト秒領域の超高速光信
号に対しては、十分な時間分解能を有する光検出器が存
在しないので、その強度波形を直接観測することは困難
である。
【0004】そこで、いきおい間接的な測定法によらざ
るを得ず、光信号の自己相関データを採取し、それから
繰返し演算によって、被測定信号光の強度と位相とを算
出する方法が行われてきた。しかしながら、繰返し演算
に依拠する光信号電界の時間波形測定方法には、複雑な
波形を有する光信号に対応できず、また、繰返し演算に
関わる本質的な曖昧さ故に、測定器の品質・精度を保証
し難いという問題がある。
【0005】そこで、光信号のスペクトル位相を直接観
測することで、繰返し演算にたよることなしに、光信号
電界の時間波形を求める、所謂、スペクトル位相の直接
測定法への関心が高まっている。これには、周波数シア
リング干渉計と周波数フォールディング干渉計の2つの
種類が知られている。特に、後者は、著しく薄い非線形
媒質を要求しないので実質的に感度の低下を免れること
ができ、また、パラメトリック混合に基づく構成と、4
光波混合に基づく構成があり、このそれぞれに、さら
に、適宜、光増幅器を導入することで、感度を高めるこ
とができ、構成の自由度が高いといった特長を有してい
る。この周波数フォールディング干渉計は、特願平11
−139087号として提案されている。
【0006】図6は、この従来例の光信号電界の時間波
形測定方法を説明するための図であり、図6(a)は、パ
ラメトリック混合を用いる場合の装置の構成を示し、被
測定光信号は、被測定光信号入力601として本従来例
装置に入射する。この入力は、分岐鏡602により2分
され、うち一方は濾波器642及び光増幅器643を通
過し、2次の非線形媒質604に入射・結焦される。こ
の非線形媒質604において第二高調波が発生され、局
発光が得られる。発生した局発光は、濾波器620及び
光増幅器644を通過し、反射鏡607を経て、合波鏡
625に達する。2分されたうち他方は、反射器645
を通過し、反射鏡624を経て、合波鏡625に達す
る。
【0007】以上、合波鏡625に達した局発光と光信
号は、合波され、位相調整器646を経た後に、2次の
非線形媒質628に入射・結焦される。この第2の非線
形媒質中で、パラメトリック混合が生じる。前記非線形
媒質628からの出射光のパワースペクトルが、光スペ
クトル観測器641によって観測される。
【0008】前記濾波器642としては、被測定光信号
のスペクトルの一部を抽出する帯域透過濾波器を用い
る。続く光増幅器643は、この抽出された光のパワー
を増し、2次の非線形媒質604中での第二高調波発生
の効率を高める目的で挿入される。
【0009】一方、非線形媒質604の後段の濾波器6
20は、第二高調波光に変換されずに残った抽出光を除
去するとともに、必要に応じて、発生された局発光の帯
域を制限するために設けられる。続く光増幅器644
は、発生された局発光のパワーを増し、2次の非線形媒
質628中でのパラメトリック混合の効率を高める目的
で挿入される。
【0010】前記光増幅器643、光増幅器644につ
いては、入射被測定光が強力で、それ自体ですでに十分
なパワーの局発光を発生し得る場合には、当然、これら
の一方または両方を省略できる。また、2次の非線形媒
質604中での第二高調波発生自体の位相整合帯域幅制
限により、被測定光信号のスペクトル幅に比して、十分
狭い線幅の局発光が得られる場合には、前段の濾波器6
42を省略でき、かつ、後段の濾波器620も、高域
(短波長)透過濾波器で十分となる。ここにおいて、合波
鏡625に高域(短波長)反射特性を持たせることで、本
機能を担務させ、濾波器620を完全に省略することも
可能である。
【0011】前記位相調整器646は、2次の非線形媒
質628に入射する時点での、局発光と光信号の間の相
対位相を調整する目的で挿入される。この場合、局発光
と光信号の波長(周波数)が2倍も離れているため、厚み
を変化できる任意の分散媒質をこれにあてることができ
る。このような位相調整が意味を持つためには、合波鏡
625を出射した局発光と光信号の相対位相が安定して
いることが必要である。このためには、2つの光路の光
路長差が、波長精度で安定していなければならない。こ
れは、通常の干渉計構築手段によって達成し得る。必要
ならば、光路長差監視機構を付加し、反射鏡607の位
置に帰還をかけて動的な安定化を図ることもできる。こ
れらは全て、標準的な干渉計安定化手段に属する。
【0012】図6(b)は、前記光スペクトル観測器64
1によって観測される混合スペクトルの容態を示す図で
ある。光周波数νの関数として通常観測されるパワース
ペクトルS(ν)に対して、光子流スペクトルs(ν)=S
(ν)/(hν)を導入するとき、得られる混合スペクトル
は、数1の式で表される。
【0013】
【数1】s(ν1)=s1+m21+m22+2m√(1+
2)√(s12)sin(φ1+φ2−2φ2p+δ) ここで、s1、s2はそれぞれ周波数ν1、ν2における被
測定光信号の光子流スペクトル、φ1、φ2は同スペクト
ル位相であり、これら周波数は縮退周波数νdに対し、
関係ν1+ν2=2νdを満たすとする。前記パラメトリ
ック混合による構成では、縮退周波数は局発光周波数の
2分の1(ν3=2νd)となり、また、位相φpは、局発
光位相の半分(φ3=2φp)に等しくなる。
【0014】このように混合スペクトルには、光信号の
スペクトル位相が、縮退周波数νdに関して対称化され
た形、φ1+φ2で含まれている。この対称化位相φ1
φ2は、干渉位相φ=φ1+φ2−2φp+δを求めること
ができれば、定数を除いて得ることができる。
【0015】しかしながら、一般に、1つの混合スペク
トルだけからでは、干渉位相φを求めることはできな
い。干渉位相φを、混合係数mの値如何に拘わらず、混
合スペクトルから正確に求めるには、位相2φpを変え
て、複数回、混合スペクトルを採取する。前述した位相
調整器646は、かかる位相調整に用い、このとき、位
相2φpを90°刻みで変えて測定を行うのがよい。
【0016】まず、基準となる位相2φpについて、混
合スペクトルsaを採取する。次に、位相2φpが90°
減じるように位相調整器を操作した後、混合スペクトル
bを採取し、さらに、位相2φpが最初の基準値から1
80°減じるところまで位相調整器を操作し、再び混合
スペクトルscを採取する。これら3つの混合スペクト
ルから、干渉位相φを数2の式に従って求めることがで
きる。
【0017】
【数2】 φ=tan-1[(sa−sc)/(2sb−sa
c)] 図6(b)に示したのは、実は、このような90°法求位
相計算に用いる3つの混合スペクトルの例である。
【0018】前述したように、対称化位相中に、スペク
トル位相部分は、常に対称化位相φ 1+φ2による対称化
を受けた形で含まれている。従って、対称化位相を得た
だけでは、一般の非対称なスペクトル位相を求めること
はできない。この問題は、縮退周波数νd、すなわち、
対称化の中心を異にする条件で測定して得る2つの対称
化位相を用いることで解決できる。
【0019】縮退周波数を変えた混合スペクトルを採取
のためには、図6(a)の構成では、濾波器642及び濾
波器620の透過帯域をずらし、必要に応じて、2次の
非線形媒質604の位相整合波長を同調すればよい。後
段の2次の非線形媒質628は、十分高帯域なので、位
相整合波長の再同調は通常要しない。
【0020】こうしてスペクトル位相が求まれば、後は
極く標準的な処理を残すのみである。すなわち、局発光
を遮った状態で、通常にスペクトルを採取し、被測定光
信号のパワースペクトルを得る。このスペクトルデータ
に平方根演算を施してスペクトル振幅データを得る。こ
れに前のスペクトル位相を付与して複素化した上で、逆
フーリエ変換を行えば、光信号電界の時間波形が算出さ
れる。かくして、前記従来例により、繰返し演算による
ことなしに、超高速光信号電界の時間波形が測定できる
のである。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した従来
の光信号電界の時間波形測定方法には、以下のような問
題がある。
【0022】前記数2の式による90°法求位相計算の
ためには、3つの混合スペクトルs a、sb、scを、相
対的大きさを厳密に保って、採取することが必要であ
る。これは、事実上、繰返し周波数の低いあまたの光源
に由来する光信号の測定を、不可能とする要求である。
【0023】本発明の測定方法が対象とするところのピ
コ秒からフェムト秒領域の超高速光信号には、様々な工
業的応用が創案されている。その重要な一翼を担うの
は、加工ないしは核融合炉の点火への応用である。これ
らは何れも、1パルス当たりに高いエネルギが要求され
る応用分野であり、比較的穏健な前者においてすら、必
要なエネルギは、通例0.1mJ/パルス以上である。
【0024】また、超高速光の理化学的な応用に至って
は、甚大な光非線形効果、あるいは更に甚だしく、光解
離電子の相対論的な挙動に負うような、非常に多くの現
象が取り上げられている。白色フェムト秒光、X線レー
ザ、あるいは、高高次高調波光発生は、それらの例であ
り、かかる極限的な光自身の性質、さらにそれらを用い
た物質あるいは生体現象の科学的探求には、人類の視野
を更に拡げるものとして、大きな期待が寄せられてい
る。ここでも、通常、前記と同様に、高いパルスエネル
ギが要求される。
【0025】このように、パルスエネルギの比較的大き
い超高速光の発生においては、発振器と増幅器の構成が
用いられる。ピコ秒からフェムト秒領域の光の生成に
は、モード同期技術が欠かせず、その結果、かかる光信
号の繰返し周波数は、通例、発振器の共振器縦モード間
隔に等しい。通常見られる共振器長1m前後の発振器か
ら直接出力されるパルス列においては、パルス列の繰返
し周波数は、100MHz程度で、これに伴うパルスエ
ネルギは、高々数10nJ/パルス程度である。
【0026】非常に長い共振器を持つ発振器を構築し
て、繰返し周波数を低め、その分パルスエネルギを増す
手法によっても、この100倍程度の、1μJ/パルス
が現在の技術の限界に近い。それ故、前記応用のために
は、このパルス列を、さらに光増幅することが必要とな
る。
【0027】増幅段において、仮にパルス列の繰返しが
保たれ、例えば0.1mJ/パルスが100MHzの繰
返しで出力されたとすると、その平均パワーは、実に1
0kWとなる。このような大出力の増幅器は、未だ実用
化されておらず、現状、実用に供されている増幅器の、
出力平均パワーは、1Wオーダである。これは、パルス
列が増幅段において必然的に間引かれ、繰返し周波数が
減じることを意味する。実際、0.1mJ/パルス級の
パルスを得る場合、1kHz台の出力パルス繰返しを持
つ再生増幅器を用いることが、現在最も普及している。
さらに、10mJ/パルスを越えるパルスエネルギを得
る場合、増幅器の出力パルス繰返しは、通常、10Hz
台となってしまう。
【0028】このように繰返し周波数の低いパルス列に
おいては、隣り合うパルス間の強度の揺らぎが、無視で
きなくなる。ここで、前記従来例により混合スペクトル
を観測しようとすると、先ず、光スペクトル観測器64
1が、掃引型の分光器であっては、1つの混合スペクト
ル形状すら、正確な測定は覚束ない。波長掃引に際し、
異なる波長のスペクトル強度が、異なるショットについ
て採取されるからである。
【0029】従って、このような場合、必要な波長範囲
のスペクトルを、単一のパルスについて一挙に採取すべ
く、光スペクトル観測器641には、必然的に、スペク
トログラフと線型光検出器列をあてる必要がある。
【0030】ところが、問題はこれに留まらない。従来
例では、少なくとも3つの混合スペクトルを、大きさを
正しく保って採取することが必要だからである。各混合
スペクトルを個別のパルスについて採取する場合、被測
定光パルスの強度がショット毎に変動すると、3つの混
合スペクトルの間での相対的大きさの関係が損なわれて
しまう。ここで、許容される強度変動は、前記の混合係
数mとの兼合いとなるが、通例の値m=0.1〜0.05
に対しては、1%の強度変動ですら、はなはだ大きな誤
差に通ずる。ところが、ショット毎の強度変動が1%と
いった増幅器は、現状、変動の少ない部類に属し、これ
以下の強度変動は到底期待し難いのである。
【0031】では、仮に、光スペクトル観測器641を
前記のように差配した従来例装置を3組用意して、単一
の被測定光パルスを3分して、各々に入力する構成とし
たらどうであろうか。この構成は、装置間の感度差の校
正といった一見して存する問題とは別に、より解決し難
い困難によって、実の所、全然機能し得ない。
【0032】何となれば、3つの混合スペクトルは、局
発光と被測定光信号との相対位相を、90°刻みで変化
させた組合わせでなければならないからである。個別に
構成した装置間で、かかる相対位相の関係が、自然に保
たれることは、全く期待できない。また、これを実現す
る手段も、到底、容易には想到し難いのである。この結
果、従来例方法では、加工等重要な応用を持つ、比較的
パルスエネルギの大きい低繰返し光信号の、干渉位相の
測定が行えなかった。
【0033】かかる従来例の改良としては、特願平11
−260816号に、被測定光信号の強度変動の影響に
配慮した、光信号電界時間波形測定方法と装置が提案さ
れている。この改良例は、局発光と被測定光信号との相
対位相を変化させる手段を備え、前記相対位相の変化に
伴う混合スペクトル上の2つ以上のスペクトル成分の強
度の変化を比較して、前記2つ以上のスペクトル成分の
間の相対的位相が測定される。
【0034】しかるに、この改良例においては、局発光
と被測定光信号との相対位相を、徐々に変化させること
に伴う、混合スペクトルの変化を逐一追跡することが、
意図されている。すなわち、測定過程で必要な被測定光
パルスのショット数は、前記の従来例技術よりもむしろ
多くなる。そもそもこの改良例では、微弱であるもの
の、十分高い繰返しを持つような、主に、光通信・情報
処理分野で用いられる光信号列の測定に注目している。
その結果、相対位相を変化させる間、被測定光信号は、
間断なく連続的に装置に入射することが、前提とされて
いる。
【0035】これに対し、前記加工用等に供給される光
の測定に際しては、パルスエネルギはショット毎の信号
を十分孤立して得るに十分な一方で、繰返しは、ショッ
ト間が無信号となってしまうほど低い。このように見る
と、前記の改良例は、パルスエネルギの大きい低繰返し
光信号の測定とは、むしろ逆の方向を志向していること
が明らかであり、いきおいその解決とならないことは、
言うまでもない。
【0036】このように、従来、パルスエネルギの大き
い低繰返し光信号については、パルスショット毎の強度
のばらつきにより、干渉位相の測定が困難であり、すな
わち、対称化位相すら得難かった。ところで、前述した
ように、対称化位相を1つ得たとしても、一般の非対称
なスペクトル位相を求めることはできない。縮退周波
数、換言すれば、局発光波長を異にする2つの対称化位
相を得て、初めてスペクトル位相が求まり、これを通常
に採取した(パワー)スペクトルと結合して、光信号電界
の時間波形が算出される。
【0037】このような事情を勘案すると、仮に1ショ
ットで干渉位相、すなわち対称化位相を得たとしても、
パルスの光信号電界の時間波形に至るまでには、別の局
発光波長についての対称化位相の測定に、もう1ショッ
ト、さらに通常のスペクトル測定に1ショットと、都合
3ショットが必要となる。混合スペクトル間の相対的な
強度の保持は、各干渉位相の抽出にのみ、要求されるの
で、パルスショット毎の強度のばらつきが、ショット毎
の電界波形の変化を伴わなければ、以上のように3ショ
ットを要する測定でも、精度が損なわれることはない。
【0038】勿論、後にも先にも1回きりといった純然
たる単発パルス、あるいは、核融合炉の点火パルスのよ
うに1時間当たり1発あるかないかといった極低繰返し
の場合には、複数ショットを要すること自体により、測
定法が全く実用にならない。
【0039】さらに、パルス毎のエネルギが高いこと
は、一般に、増幅段における由々しい光非線形効果の介
在の可能性に通じる。こうした非線形効果が作用する
と、強度のばらつきが、電界波形のばらつきに転化され
る。例えば、自己位相変調効果によれば、瞬時強度の変
動が、スペクトルの形状すら変化させ得ることは良く知
られているが、かかる自己位相変調効果は、大きさの差
こそあれ、あらゆる媒質に普遍的に見られるのである。
このような事情から、パルスショット毎の強度のばらつ
きが、電界波形の変化を伴わないという仮定は、楽観的
に過ぎる。
【0040】すなわち、頻度の低いパルスの取り扱い、
または、精密を期する測定のためには、1ショットで必
要なデータの全てを採取する、より完全な単発測定の実
現が望まれるのである。
【0041】以上述べたように、従来の光信号電界波形
測定方法では、(1)低繰返し被測定信号光のショット毎
の強度の変動が、大きな誤差を招き、ひいては、(2)単
発の信号光の測定が、不可能であるという解決すべき問
題があった。
【0042】本発明の目的は、被測定光信号の一発毎に
対称化位相を得ることでショット毎の強度の変動に高い
耐性を有し、さらに、完全な単発の信号光の測定を実現
することが可能な技術を提供することにある。本発明の
前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の
記述及び添付図面によって明らかにする。
【0043】
【課題を解決するための手段】本願において開示される
発明の概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0044】第1の発明は、被測定光信号に対し、局発
光を作用させて位相共役光を生成し、前記被測定光と前
記位相共役光とを合波して混合光を生成し、この混合光
のスペクトルを観測して、前記被測定光信号の電界の周
波数領域での位相を測定する光信号電界の時間波形測定
方法であって、前記局発光と被測定光信号との相対位相
が、光線断面内の位置に依存するようにして、位相共役
光を生成し、この生成された位相共役光と前記被測定光
とを合波して混合光を生成し、この混合光のスペクトル
強度を、前記位置毎に分解された2次元像として観測記
録し、前記位置の変化に伴うスペクトル成分毎の強度の
変化を比較してスペクトル成分の間の相対的位相を測定
するものである。
【0045】第2の発明は、前記第1の発明の光信号電
界の時間波形測定方法において、前記局発光と前記被測
定光信号のビーム断面内に、それら両光の相対位相を異
にする3つの部分を生成し、それらを非線形媒質に入射
・結焦して位相共役光を生成し、前記部分毎のスペクト
ル強度を連立して解きペクトル成分の間の相対的位相を
測定するものである。
【0046】第3の発明は、前記第1の発明の光信号電
界の時間波形測定方法において、前記局発光と前記被測
定光信号の波面に傾きを設け、それら両光の相対位相
を、光線断面内の位置に直線的に依存させて、非線形媒
質に入射・結焦して位相共役光を生成し、前記位置に伴
うスペクトル強度の変化の位相からスペクトル成分の間
の相対的位相を測定するものである。
【0047】第4の発明は、前記第1乃至3の発明のう
ちいずれか1つ光信号電界の時間波形測定方法におい
て、前記被測定信号を3分し、この3分して得られた1
者(第1の信号)と2者(第2の信号)をそれぞれ、前記局
発光の波長を異にする第2または第3の発明の2つの手
段に供給し、前記3者(第3の信号)をスペクトルを観測
する手段に供給するものである。
【0048】第5の発明は、前記第1乃至3の発明のう
ちいずれか1つ光信号電界の時間波形測定方法におい
て、被測定光信号に対し、波長を互いに異にする2つの
局発光を作用させ、前記2つの局発光のそれぞれについ
ての前記2次元像、及び前記局発光の作用を受けないス
ペクトル像の3つの像を、全て重畳して観測記録するも
のである。
【0049】第6の発明は、前記第5の発明の光信号電
界の時間波形測定方法において、被測定光信号を2分
し、この2分して得られた1者(第1の信号)を、前記2
つの局発光のうち1者の生成にあて、前記局発光に変換
されなかった前記2分して得られた1者(第1の信号)の
残余を、前記2つ局発光のうち他者の生成にあて、前記
2分して得られた他者(第2の信号)に対し、前記2つ
の局発光を作用させるものである。
【0050】第7の発明は、前記第5の発明の光信号電
界の時間波形測定方法において、被測定光信号を3分
し、この3分して得られた1者(第1の信号)と2者(第
2の信号)をそれぞれ、前記2つの局発光の生成にあ
て、前記3分して得られた3者(第3の信号)に対し、前
記2つの局発光を作用させるものである。
【0051】第8の発明は、被測定光信号に対し、局発
光を作用させて位相共役光を生成する位相共役光生成手
段と、前記被測定光と前記位相共役光とを合波した混合
光のスペクトルを観測するスペクトル観測手段と、前記
被測定光信号の電界の周波数領域での位相を算出する位
相算出手段を有する光信号電界の時間波形測装置であっ
て、前記局発光と被測定光信号との相対位相が、光線断
面内の位置に依存するようにして、位相共役光を生成す
る位相共役光生成手段と、該位相共役光生成手段で得ら
れた位相共役光と前記被測定光とを混合する混合光生成
手段と、該混合光生成手段で生成された混合光のスペク
トル強度を、前記位置毎に分解された2次元像として観
測記録する観測記録手段と、前記位置の変化に伴うスペ
クトル成分毎の強度の変化を比較して、スペクトル成分
の間の相対的位相を算出する相対的位相算出手段とを具
備するものである。
【0052】第9の発明は、前記第8の発明の光信号電
界の時間波形測定装置において、前記局発光と前記被測
定光信号のビーム断面内に、それら両光の相対位相を異
にする3つの部分を生成する光束分割手段と、該光束分
割手段で生成された3つの部分を非線形媒質に入射・結
焦して位相共役光を生成する位相共役光生成手段と、前
記3つの部分毎のスペクトル強度を連立して解きスペク
トル成分の間の相対的位相を算出する相対的位相算出手
段とを具備するものである。
【0053】第10の発明は、前記第8の発明の光信号
電界の時間波形測定装置において、前記局発光と前記被
測定光信号の波面に傾きを設け、それら両光の相対位相
を、光線断面内の位置に直線的に依存させて、非線形媒
質に入射・結焦して位相共役光を生成する位相共役光生
成手段と、前記位置に伴うスペクトル強度の変化の位相
からスペクトル成分の間の相対的位相を算出する相対的
位相算出手段とを具備するものである。
【0054】第11の発明は、前記第8乃至10の発明
のうちいずれか1つの光信号電界の時間波形測定装置に
おいて、前記被測定信号を3分する被測定信号3分手段
と、該被測定信号3分手段で得られた1者(第1の信号)
と2者(第2の信号)を、前記局発光の波長を異にする第
9または第10の発明の2つの手段に供給し、前記3者
(第3の信号)をスペクトルを観測する手段に供給する手
段とを具備するものである。
【0055】第12の発明は、前記第8乃至10の発明
のうちいずれか1つの光信号電界の時間波形測定装置に
おいて、前記被測定光信号に対し、波長が互いに異なる
2つの局発光を作用させ、前記2つの局発光のそれぞれ
についての前記2次元像、及び該局発光の作用を受けな
いスペクトル像の3つの像を、全て重畳して観測記録す
る観測記録手段を具備するものである。
【0056】第13の発明は、前記第12の発明の光信
号電界の時間波形測定装置において、前記被測定光信号
を2分する被測定光信号2分手段と、該被測定光信号2
分手段で得られた1者(第1の信号)を、2つの局発光の
うち1者の生成にあて、該局発光に変換されなかった該
2分して得られた1者(第1の信号)の残余を、前記2つ
の局発光のうち他者の生成にあて、前記2分して得られ
た他者(第2の信号)に対し、前記2つの局発光を作用
させる手段を具備するものである。
【0057】第14の発明は、前記第12の発明の光信
号電界の時間波形測定装置において、前記被測定光信号
を3分する被測定光信号3分手段と、該被測定光信号3
分手段で得られた1者(第1の信号)と2者(第2の信号)
をそれぞれ、前記2つの局発光の生成にあて、前記被測
定光信号3分手段で得られた3者(第3の信号)に対し、
前記2つの局発光を作用させる手段を具備するものであ
る。
【0058】本願において開示される発明のポイント
は、被測定光信号に対し、局発光を作用させて位相共役
光を生成し、前記被測定光と前記位相共役光の合波の結
果生ずる混合光のスペクトルを観測して、光信号電界の
周波数領域での位相を測定する方法及び装置であって、
前記局発光と被測定光信号との相対位相が、光線断面内
の位置に依存するようにして、位相共役光を生成する位
相共役光生成手段と、得られた混合光のスペクトル強度
を、前記位置毎に分解された2次元像として観測記録す
る観測記録手段と、前記位置の変化に伴うスペクトル成
分毎の強度の変化を比較して、スペクトル成分の間の相
対的位相を算出する相対的位相算出手段を具備すること
である。
【0059】ここで、局発光と被測定光信号との相対位
相が光線断面内の位置に依存するようにして、位相共役
光を生成する位相共役光生成手段としては、それら両光
の相対位相を異にする3つの部分を生成して、非線形媒
質に入射・結焦する方法がある。この場合、前記部分毎
のスペクトル強度を連立して解いて、スペクトル成分の
間の相対的位相を求める。
【0060】さらに、前記の他の手段として、局発光と
被測定光信号の波面に、傾きを設け、それら両光の相対
位相を、光線断面内の位置に直線的に依存させて、非線
形媒質に入射・結焦する方法があり、特に有用である。
この時には、前記位置に伴うスペクトル強度の変化の位
相から、スペクトル成分の間の相対的位相が、精度良く
求められる。
【0061】以上により、1つの対称化位相の測定が1
ショットで行えるが、さらに歩を進めて、単発の信号光
の測定を実現するためには、局発光の波長の設定を異に
した前記の光信号電界の時間波形測定装置を2つ用意
し、被測定信号を3分し、得られた1者(第1の信号)と
2者(第2の信号)を、これら装置にそれぞれ供給し、さ
らに前記3分して得られた3者(第3の信号)を、通常に
スペクトル観測する手段に供給すればよい。
【0062】単発の信号光の測定を実現する他の方法と
して、被測定光信号に対し、波長を互いに異にする2つ
の局発光を作用させ、前記2つの局発光のそれぞれにつ
いての前記2次元像、及び前記局発光の作用を受けない
通常のスペクトル像の3つの像全てを、重畳して観測記
録してもよい。
【0063】ここで、一般に、被測定光自身の一部から
局発光を生成する自己参照型の構成において、前記の2
つの局発光を得る手段として、2つの方法が考えられ
る。
【0064】その1は逐次型であり、被測定光信号を2
分する手段を備え、この2分して得られた1者を、前記
2つ局発光のうち1者の生成にあて、そのうち局発光に
変換されなかった残余を、次いで前記2つ局発光のうち
他者の生成にあて、得られた2つの局発光を、前記2分
して得られた他者(第2の信号)に対し作用させる。
【0065】その2は並列型であり、被測定光信号を3
分する手段を備え、前記3分して得られた1者(第1の
信号)と2者(第2の信号)をそれぞれ、前記2つの局発
光の生成にあて、得られた2つの局発光を、前記3分し
た残り(第3の信号)に対し作用させる。
【0066】ここで、本願発明の原理について説明す
る。従来の光信号電界の時間波形測定方法では、混合光
のスペクトルsaを観測・採取し、次に、位相2φpが9
0°減じるように位相調整器を操作した後、混合光のス
ペクトルsbを観測・採取し、さらに、位相2φpがさら
に90°減じるところまで位相調整器を操作し、再び混
合光のスペクトルscを観測・採取する。これを行うた
めには、少なくとも被測定信号光の3ショットを要し、
各々のスペクトルの観測・採取にかかるショット間に強
度変化が生じると、前記数2の式による干渉位相φの計
算に誤差が生じた。
【0067】ここにおいて、位相2φpが90°ずつ異
なる条件で生成した3つの混合光を、同時にスペクトル
分解して観測する対策が想起される。しかし、このため
に、独立な装置を3組用意して、被測定光パルスを各々
に入力するような構成では、一定の位相関係を到底期待
できないことは、既に述べた。故に、1つの装置の中
で、位相2φpが90°ステップで異なる3つの混合光
を同時に生成し、それらのスペクトルを一挙に観測・採
取することが不可欠である。
【0068】このような方法を行うには、そもそも、一
般に複数の光のスペクトルを一挙に観測・採取できる分
光手段の存在が前提となる。幸いにして昨今では、この
ような手段として、入射スリットに沿う方向に結像性を
持つ分光器の出射側に、2次元光検出器を装着して行
う、イメージング分光と称する手法が良く知られてい
る。ここで、2次元光検出器としては、撮像管ないしC
CD(電荷結合素子)など、いわゆるカメラとして用いら
れる機器から、波長域あるいは感度を考慮して選択して
用いればよい。
【0069】このイメージング分光によれば、例えば、
入射スリットに沿って垂直方向に、複数本の光ファイバ
を並べて装着すれば、出射側の検出器上には、水平方向
に分散されたライン状のスペクトルが、上下方向に平行
に並んだ像が得られる。ここで、縦に並んだラインの各
々が、それぞれ個別の光ファイバを経て入射した光のス
ペクトルを与えるのである。すなわち、一般に、水平方
向にスペクトル成分が、垂直方向に入射スリットに沿っ
た位置が、張られた2次元像が、出射側に現れる。
【0070】次に、位相2φpが90°ステップで異な
る3つの混合光を、同時に生成するために、従来例装置
の構成において、位相調整器646に、段差を有する階
段状のガラス板を用いる方法につき、考察を加えよう。
一般に、位相調整器を通過する光のビーム径は有限であ
るから、このような板の段の幅を、ビームの断面内に丁
度2回の段差が含まれるように、設計・製作すること
が、常に可能である。さらに、段差△が、数3の式を満
たせば、隣接する段を通過したビームの部分には、互い
に90°だけ異なる位相2φpが付与される。
【0071】
【数3】 ここで、λ3、λd(=2λ3)はそれぞれ局発光波長、縮
退波長であり、n(λ3)及びn(λd)は、階段状のガラス
板のそれら波長における屈折率である。
【0072】このように、2次の非線形媒質628に入
射・結焦されるビームの断面にわたり、位相2φpの異
なる複数の部分を作ることで、1つの装置の中で、位相
2φpが異なる混合光を同時に生成することができる。
すなわち、2次の非線形媒質を出射するビームの断面内
には、前記媒質に入射したビーム上の分布に対応して、
異なる位相2φpの下に生成された混合光が分布する。
【0073】ここで、この混合光を前述したイメージン
グ分光によって観測すれば、前記数2の式の90°法求
位相計算に必要なデータを、一発の被測定光信号に対し
て、得ることができる。例えば、入射スリットに沿って
並べた3本の光ファイバのそれぞれに、階段状の位相調
整器を用いて得た、互いに90°だけ異なる位相2φ p
を持つ混合光を、結合・入射し、3種の混合光のスペク
トルを一挙に観測・採取すればよい。
【0074】ここで、混合光のビームを、位相2φp
異なる部分に分割し、それぞれを光ファイバに結合する
のは、いささか繁雑の感を免れない。実は幸いにして、
今のように、位相2φpが異なる部分が、元々1つのビ
ームに束ねられている場合には、イメージング分光器へ
の入射に、光ファイバを介する必要は全然ない。すなわ
ち、混合光のビームを、円筒レンズ等により、スリット
の幅方向にのみ集束して、イメージング分光器へ入射す
れば事足りる。この際、位相2φpが異なる部分を分割
して観測するためには、それら部分は、入射スリットに
沿う方向に並んでいる必要がある。
【0075】ところで、円筒レンズ等により混合光を、
分光器のスリットに直接集光するならば、混合光ビーム
はスリットに沿う方向には、拡がらずに平行に進んで行
く。このような場合、分光器に、入射スリットに沿う方
向への結像性は要求されない。すなわち、あえてイメー
ジング分光器を用いなくとも、2次元光検出器を出射側
に装着した通常の分光器で事足りるのである。
【0076】以上、段差を有する階段状のガラス板を位
相調整器とし、得られた混合光を円筒レンズ等により、
2次元光検出器を装着した一般の分光器のスリットに入
射すれば、一発の被測定光信号に対して対称化位相を求
めるという本発明の目的は、原理的には達成できること
が分かった。しかし、この方法は、以下の2つの理由に
より、未だ十分実用的とは言い難い。
【0077】その1つの理由は、位相調整器として用い
る階段状のガラス板に係る問題がある。前記数3の式の
与える、板に必要な段差は、局発光波長λ3に依存す
る。それ故、局発光波長λ3を変える毎に、位相調整器
を取替える必要がある。1つの被測定光信号のスペクト
ル位相の測定には、局発光波長を変えた2つの対称化位
相の測定が必要なことを想起すれば、最低2個の位相調
整器を用意し、差替えて用いなければならない。さら
に、局発光波長λ3の2倍は縮退波長λdであり、後者は
被測定光信号のスペクトルの中心付近に設定するのが良
いことを考え合わせると、被測定光信号の波長が変わる
度に、新たな位相調整器の対の準備を強いられることと
なる。これは、汎用的な測定器を工業的に生産・供給し
ようとする際、甚だしい問題と言わざるを得ない。
【0078】その2つめの理由は、2次の非線形媒質に
入射・結焦されるビームの断面内の強度分布に起因する
問題である。90°法求位相計算に依拠する限り、位相
2φ pを変えた3系列のスペクトルの、相互の大きさの
関係が保たれている必要がある。これは今の場合、観測
する混合光の3つの部分について、局発光が無い状態で
の光量が正確に等しく、かつ、混合係数m、換言すれば
局発光の作用も正確に等しいことを要求する。一般に、
ビーム断面内での光強度分布は、均一ではない。さら
に、現実には、2次元光検出器においては、画素による
感度のばらつきが避け難い。要求の前段だけならば、標
準的なスペクトルの補正手段によって対処可能である
が、要求の後段を保証することは容易でない。いきお
い、位相2φpを変えた3つの部分を、ビームの中心部
分に配置することとなるが、これはビームの利用効率の
低下を招く。加えて、測定法の精度が、入射する被測定
光信号のビーム品質に強く依存する結果ともなる。
【0079】ここにおいて、本発明者は、より実用性及
び信頼性の高い構成を、鋭意考究し、局発光と被測定光
信号の波面に傾きを設けて非線形媒質に入射・結焦する
構成に想到した。以下、これについて述べる。
【0080】前記分光器に装着された2次元光検出器
は、いわゆるカメラであるから、スペクトルが分散され
る方向(以下、横方向と呼ぶ)の画素数と比較して、スリ
ットに沿う方向(縦方向と呼ぶ)にも、通例同程度の画素
数を持つ。すなわち、縦方向の画素数は、例外的に少な
い場合でも50、通常は100〜200以上あるのであ
る。ところが、前述した90°法に依拠する方法におい
ては、要するに、このうちの3画素を利用しているに過
ぎず、非常に効率が悪い。
【0081】縦方向の画素数の多さをより有効に利用す
るには、より多数の相対位相2φpについて、混合光の
スペクトルを観測するのが良い。特に、より細かい刻み
で、(準)連続的な位相2φpについて、混合光の強度変
化を観測するならば、位相調整器として校正された形
で、ビーム内に90°ステップの2φpの変化を作る必
然性はなくなる。なんとなれば、位相2φpの変化量
は、観測される強度変化から原理的に検知できるからで
ある。それ故、ここで、前記局発光波長に応じて交換を
迫られていた位相調整器を不要とすることができる。
【0082】ビーム断面内で、最も簡単に、連続的に位
相2φpを変化させるには、局発光と被測定光信号の波
面に傾きを設けて非線形媒質に入射・結焦すれば良い。
この場合、以下に示すように、局発光と被測定光信号の
なす角の方向に、位相2φpが直線的(リニアー)に変化
する混合光ビームが、非線形媒質から出射される。
【0083】非線形媒質内で、被測定光信号の周波数ν
2成分の伝搬ベクトルを 2、局発光の伝搬ベクトルを
3とする。これらの相互作用の結果、周波数νlの位相共
役光は、その伝搬ベクトル 1 ( c )が、関係 1 ( c ) 2
3を満たす方向に発生する。被測定光信号と局発光
の伝搬ベクトルのなす角、すなわち、被測定光信号と局
発光の波面の傾きをαとする。前記位相共役光の伝搬ベ
クトル 1 ( c )が局発光に対してなす角α'とし、上の関
係から3つのベクトル、 1 ( c ) 2及び 3が三角形を
成すことに留意すれば、幾何学的に数4の式を得る。
【0084】
【数4】 混合光は、伝搬ベクトル 1 ( c )の位相共役光と、伝搬ベ
クトル 1を持つ被測定光信号の周波数ν1成分の干渉の
結果生じる。ここで、被測定光信号中で 1は当然 2
平行であるから、 1 ( c ) 1のなす角はα+α'とな
る。一般に伝搬方向の異なる光が干渉する時、空間的な
干渉縞が現れることはよく知られている。それとの類推
によって、今の場合、混合光のスペクトルを与える前記
数1の式中、干渉位相に、位置に依存する項が加わり、
φ=φ1+φ2−2φp−KY+δとなることが、容易
に分かる。ここで、Yは、被測定光信号の伝搬方向に垂
直な平面上で、局発光伝搬ベクトル 3の射影方向にと
った座標、また、Kはベクトル 1 ( c ) 1のY
軸上への射影の大きさである。
【0085】ベクトル 1 ( c ) 1の作る三角形につい
ての初等的考察から、K=k1sin(α+α')である。
これに、前記数4の式の関係を代入すれば、次式の数5
の式が得られる。
【0086】
【数5】 K=k3sinα このように導出された干渉位相の空間(角)周波数K
は、被測定光信号の成分の周波数ν1、ν2の組合わせ
に全然依存しない。前記角α'は、周波数ν1に強く依存
するにも拘わらず、Kの中では、k1のν1依存性が丁
度これを打ち消しているからである。
【0087】かくして、混合光の全スペクトル成分にわ
たって、等しい空間周波数K⊥が得られるならば、その
空間周波数を局発光に付随しているものと解釈すること
が許される。すなわち、局発光の位相が、φ3=2φp
Yの形で、位置Yに依存すると考え得る。このY軸
方向を、2次元光検出器を装着した分光器のスリットに
沿う方向と一致させ、位置により分解して混合光スペク
トルを採取・記録すれば、連続的な位相2φpについて
のデータが一挙に得られる。
【0088】これを陽に表現して、混合光スペクトルを
与える式を書き直すと、数6の式が得られる。
【0089】
【数6】s(ν1)=s1+m21+m22+2m√(1+
2)×√(s12)×sin[φ1+φ 2−(2φp+k3Ysin
α)+δ)] これが、局発光と被測定光信号の波面に傾きを設けて非
線形媒質に入射・結焦する本発明につき、その原理を表
す基本的な式である。
【0090】次に、波面に傾きを設けて重ねた局発光と
被測定光信号を、非線形媒質に結焦する仕方につき、考
察を加える。非線形媒質上のビーム径をwと書くとき、
ビームをよぎる際の、位相2φpの変化量は、Aφ=k3
w sinαの程度である。
【0091】一方、同時に、局発光と被測定光信号は伝
搬方向に角度αだけの差を持つために、長さLの非線形
媒質を通過する間に、それらビームの中心は、H=Lta
nαだけの、乖離を蒙らざるを得ない。この乖離は、性
質(:Ltanα>Lsinα)を使って、以下の数7の式のよ
うに書き表すことができる。
【0092】
【数7】 ここで、括弧内の分母に現れた表式は、共焦点パラメー
タbと呼び慣わされている量の、縮退波長における値に
他ならない。媒質中での非線形効果の効率の観点から
は、媒質長Lとbの比ξを、1〜6にとるのが良いこと
が知られている。
【0093】一方、光強度分布、ないしは、混合係数m
が均一ではない混合光ビームから、干渉位相を求めるた
めには、最低でも、混合光スペクトルの正弦的変化の1
周期以上にわたって測定を行う必要がある。すなわち、
位相2φpの変化量Aφは、少なくとも2πである。
【0094】以上を斟酌すると、ビーム乖離量は、H>
πWとなり、ビーム径を遥かに超越してしまう。位相の
変化量Aφ全域で正しく混合スペクトルを得るには、ビ
ーム乖離量は、ビーム径に比して十分小さく留める必要
があるので、ここで矛盾が生じてしまうこととなる。か
くして帰謬法により、Y方向のビーム径wY、と、それ
と直交するX方向のビーム径wXの間に、差を設けるべ
きことが示唆される。
【0095】許容するビーム乖離量のビーム径に対する
比をεとすると、角度αは通常小さいことにより、cos
αを1と置くと、最適のwYは、wY=√(AφL/(ε
3))である。一方、X方向については、効率の観点か
ら、wX=√(L/(ξkd))が最適である。これらの比
をとると、次式の数8の式が得られる。
【0096】
【数8】 変化量Aφに6π、ビーム乖離比εに0.05、さらに
共焦点パラメータに対する媒質長ξとしては3を用いる
と、望ましいビーム径の比は7.9、すなわち10程度
と算出される。この最適比は、媒質長あるいは局発光波
長に依存しない、普遍的な目安となっている。
【0097】現在、加工等、工業的に応用されているパ
ルス光の時間幅は、概ね100fs前後である。このよ
うに比較的、時間幅の長い被測定信号の場合、パラメト
リック混合を行う非線形媒質としては、長さ5mm程度
以上のものが用いられる。この時、局発光波長を0.4
μmとしてY方向の最適ビーム径を算定すると、wY
して350μmが得られる。これは、測定器内を通常に
伝搬するビームの直径2w=1mmに、近似する値であ
る。すなわち、このような場合、Y方向には、通常に伝
搬するビームを、集束させることなく、そのまま非線形
媒質に入射して良いことになる。一方、X方向には効率
を高めるために、ビームを100μm以下の直径に集束
するのが望ましい。このように、一方向にのみ光線を結
焦する方法としては、円筒鏡あるいは円筒レンズといっ
た既知の方法を用いることができる。
【0098】これに対して、時間幅が極限的に狭い白色
フェムト秒光などの測定では、用いる非線形媒質の長さ
が50μm程度となる。これは、媒質におけるパラメト
リック混合の周波数帯域が、長さの2乗に反比例し、広
帯域の極限短光パルスを扱うには、その分、薄い非線形
媒質が必要となるからである。このときには、Y方向で
すら、最適のビーム径wYが35μmと小さくなる。X
方向のビームの直径に至っては、10μm以下に絞るの
が望ましい。このような楕円形のビームウエストを得る
には、X方向とY方向に、別個の円筒鏡あるいは円筒レ
ンズを作用させる。それら円筒光学系の焦点距離の比
を、前記数8の式の与えるビーム径比にとり、さらに互
いの焦点が一致するように、配置すれば良い。
【0099】以下に、本発明について、本発明による実
施形態(実施例)とともに図面を参照して詳細に説明す
る。
【0100】
【発明の実施の形態】(実施形態1)図1は、本発明の実
施形態1の光信号電界の時間波形測定方法及び装置を説
明するための図であり、図1(a)は、その光信号電界の
時間波形測定装置単体の概略構成を示す模式図、図1
(b)は、図1(a)の光信号電界の時間波形測定装置を複
数用いる装置の概略構成を示す模式図である。図1にお
いて、101は被測定光信号入力、102は分岐鏡、1
03はレンズ、104は2次の非線形媒質、106はレ
ンズ、107は反射鏡、108は光学楔、120は濾波
器、121、122、123、124は反射鏡、125
は合波鏡、127は円筒鏡、128は2次の非線形媒
質、129は円筒鏡、132はスペクトログラフ、13
3は2次元光検出器、134、135は分岐鏡、136
は3分手段、137、138は反射鏡、139、140
は本実施形態1の光信号電界の時間波形測定装置単体、
141は光スペクトル観測器である。本実施形態1の光
信号電界の時間波形測定装置では、Y方向に集束せずに
非線形媒質に入射・結焦できる場合の構成を与えてい
る。
【0101】図1(a)に示す被測定光信号は、被測定光
信号入力101として本実施形態1の光信号電界の時間
波形測定装置に入射する。前記該入力被測定光信号入力
101は、分岐鏡102により2分され、その一方はレ
ンズ103によって、2次の非線形媒質104に入射・
結焦される。本媒質104において第2高調波が発生さ
れ、局発光が得られる。発生した局発光は、レンズ10
6により平行光線とされ、反射鏡107を経、光学楔1
08および濾波器120を通過して、合波鏡125に達
する。ここで、濾波器120は、2次の非線形媒質10
4で局発光に変換されずに残った被測定光信号を、除去
するために、挿入されている。
【0102】分岐鏡102によって2分されたうち他方
は、反射鏡121、122、123、及び124からな
る光学遅延線を通過し、合波鏡125に達する。該光学
遅延線は、合波鏡125上で、被測定光信号と局発光が
時間的に同期するように、調整・固定される。
【0103】以上、合波鏡125に達した局発光と光信
号は、合波された後、円筒鏡127により、2次の非線
形媒質128に入射・結焦される。この非線形媒質12
8から出射する混合光は、円筒鏡129により、スペク
トログラフ132のスリットに集光される。このスペク
トログラフ132に装着された2次元光検出器133に
より、混合光のスペクトルが、図1(a)の紙面に垂直
な方向に位置分解されて、観測・採取される。
【0104】本実施形態1の構成により測定されるの
は、2次の非線形媒質128に入射した時点でのスペク
トル位相である故、前記非線形媒質に至るまでに装置固
有の分散を受けると、被測定光信号入力101に入射し
た被測定光信号のスペクトル位相と、測定結果の間に、
装置分散分の系統誤差を生じる。このような被測定光信
号に関る装置分散は、測定後に容易に補正することがで
きるものの、小さく抑えるべく装置を設計することが、
一般に推奨される。
【0105】本実施形態1の構成においては、被測定光
信号入力101から2次の非線形媒質128に至るま
で、被測定光信号は、全て反射光学系のみを経由してい
る。これは、前記装置分散を最小に留める設計の結果で
ある。本実施形態1の装置は、現状で工業応用を見てい
る、l00fs 前後の時間幅の光信号を対象としてい
る。その結果、非線形媒質128にY方向への集束を伴
わず入射・結焦している構成となっている。
【0106】一方、この程度の時間幅の信号では、スペ
クトル幅が甚だしく広くはないので、光信号のスペクト
ル全域を反射し、かつ局発光を透過するような、誘電体
多層膜鏡を容易に入手でき、これを合波鏡125として
用いることができる。その結果、被測定光信号を、反射
光学系のみを使って、2次の非線形媒質128まで導く
ことができるのである。
【0107】光学楔108の頂角をθ(<<1)、局発光波
長における屈折率をnとすると、この光学楔を通過する
ことにより、局発光の光軸は、αe=(n−1)θだけ偏
向する。光学楔の稜を、紙面上向きに配置することで、
局発光は仰角を持って、2次の非線形媒質128に入射
する。この時、前述したY方向は紙面上向きとなり、被
測定光信号と局発光の波面の傾きαとしては、sinα=s
inαe/n3が得られる。ただし、非線形媒質の局発光波
長における屈折率をn3とした。
【0108】ここで、現実には、局発光の光軸を偏向す
るために、あえて光学楔を用いる必要はない。反射鏡1
07、または、合波鏡125のあおりを調節すれば、必
要な仰角を与えることができるからである。図1の構成
において、光学楔108を書き入れてあるのは、本発明
の要件である波面の傾きを与えていることを、陽に示す
ために他ならない。
【0109】図2は、本実施形態1の位相差検出の例を
示しており、図2(a)は、2次元光検出器133上に現
れる像の輝度分布の例を示す図(ディスプレイ画面の写
真)であって、横軸方向には、スペクトル成分の強度
が、波長ないしは光周波数に分解されて得られる。これ
に対し、縦軸方向には、スペクトログラフ132のスリ
ットに沿う位置が分解されている。前述したように、本
実施形態1の構成では、このスリットに沿う方向は、前
記Y軸方向と一致しており、その結果、縦軸方向は、局
発光の位相φ3=2φpに対応することになる。
【0110】このような像には、対称化位相の形が、直
接的な形で可視化されている。すなわち、各光周波数に
ついて、輝度を縦方向に辿って行き、極値を与える局発
光位相を見い出す。このような局発光位相を結んだ曲線
が、光周波数の関数としての対称化位相に他ならない。
なんとなれば、この操作により、前記数1の式中の干渉
項の正弦関数の引数が一定、すなわち、移項により変形
すれば、曲線:φ1+φ2+δ=2φp+const(一定)が求
まるからである。
【0111】像のこのような性質は、採取された輝度像
から対称化位相を導き出す、最も初等的な方法を与え
る。しかし、ビーム断面内での光強度分布の不均一、あ
るいは、2次元光検出器の画素による感度のばらつきの
存在下では、このようなデータ解析は誤差を生じ易い。
利用している輝度データが、極値付近に限定・局在して
いるからである。それ故、以下に述べるような、よりデ
ータ全体を利用するデータ解析法が、推奨される。この
解析法は、特願平11−260816号に提案されてい
る相対位相の計算法を、本発明に即して適用したもので
ある。
【0112】まず、基準となる光周波数νrを適当に定
め、νrについて輝度を縦方向に辿って、輝度データ列
L(νr)を得る。ここで、νrは光信号のスペクトル強度
が大きい、スペクトルの中央付近に設定する。縮退周波
数νdは、同一の条件を満足するように選ばれているの
が通例なので、一般に、νr=νdに選べば良い。
【0113】データ列L(νr)を複素化した後、複素数
データ列についてのフーリエ変換を施す。こうして得ら
れる周波数領域で、負の周波数成分を全てゼロに置きか
える。これを逆フーリエ変換すると、その実部は、元の
実数データ列L(νr)を与えるが、同時にその虚部から
90°位相の異なるデータ列L'(νr)が得られる。以上
は、フーリエ変換を用いたHilbert変換の計算法となっ
ている。
【0114】上で得た周波数領域で、零周波数近傍を除
去する帯域濾波を行えば、データ列L(νr)内のDC成
分の除去が同時に行え、効率的である。光強度分布の不
均一に起因する、緩やかに変化する成分も、これにより
取り除くことができる。こうして得られた局発光位相φ
3による振動成分のみを含むデータ列L(νr)の零点を検
索して、振動の周期を求める。データ列L(νr)に含ま
れる周期の整数倍の区間のうち、最長の区間を以下の積
分区間とする。
【0115】次に、一般の光周波数νに対して、前記同
様、輝度を縦方向に辿って、輝度データ列L(ν)を得
る。データ列L(ν)をフーリエ変換し、周波数領域で、
上と同一の帯域濾波を行なった後、逆フーリエ変換す
る。これにより、データ列L(ν)から、緩やかに変化す
るDC近傍成分を取り除くことができる。こうして得た
データ列L(ν)にL(νr)を掛けた後、前記で決めた積
分区間に対して積分を実行して、Isを得る。同様に、
L'(νr)を掛けた後、積分を実行してIcを得る。これ
らの比から、位相差φ−φrが、次式の数9の式に従っ
て計算される。
【0116】
【数9】 図2(b)は、前述した位相差計算法を、図2(a)の輝度
分布に対して行った例を示す図である。図中、下側のデ
ータ列が、基準となる輝度データ列L(νr)であって、
基準周波数νrは縮退周波数νdに選んでいる。上側のデ
ータ列は、縮退周波数νdから1.0THzだけ長波長に
寄った光周波数における輝度データ列L(ν)である。
【0117】両データ列の何れにおいても、振動の重畳
以前の平均的な輝度が、画素番号中央付近で持ち上がり
を呈している。さらに詳細に見ると、振動の平均的輝度
に対する相対振幅も中央部で最も大きく、周辺では減少
していることが分かる。前者は、被測定光自体が持つ、
Y方向の光強度分布に起因している。かかる分布は、理
想的なガウシアンビームの場合、関数形:exp[−
(Y/wr)2]に従うことが良く知られている。後者は、
局発光の光強度分布が転化された混合係数mの不均一の
現れであって、ガウシアンビームの局発光では、exp
[−(1/2)(Y/wr)2]に従う。前記述した位相差計
算法は、輝度データ列に対するこれら2様の緩やかな変
調の何れに対しても、高い耐性を有し、精度の良い結果
を与えることができる。実際、この場合、算定された位
相差φ−φrは、図中に示した如く、Aφ=57.1°で
あり、この値は、両変調が全く無い理想的な場合の値5
7.2°に対して、殆ど狂いが生じていないのである。
【0118】2様の変調のうち、前記位相差計算法にと
ってより有害なのは、前者の、被測定光の光強度分布に
よるものである。前記数9の式に従う求位相計算では、
振動が重畳されていない(混合係数mが0の)L(ν)は、
L(νr)、L'(νr)の何れを掛けて積分しても、0を与
えることが、前提とされている。被測定光の光強度分布
による緩やかなL(ν)の変化は、この前提を覆すからで
ある。しかしながら、幸いなことに、被測定光の光強度
分布は、前記2様の変調のうちでは、より容易に校正が
可能である。
【0119】この校正のためには、局発光を遮った状態
で、2次元光検出器133上に現れる像の輝度分布を記
録しておく。任意の光周波数に対して、前同様に輝度を
縦方向に辿ることで、Y方向の光強度分布の校正データ
列L0を得ることができる。その後は、測定輝度データ
列L(ν)、あるいは、L(νr)を、枚正データ列L0で
除して規格化した後、前記位相差計算法に用いれば良い
のである。
【0120】以上に説明した位相計算法を、全ての光周
波数νに対して行えば、全光周波数測定点に対する干渉
位相データを得る。この場合、L(νr)、L'(νr)を求
める計算法の前段は、いちいち繰返す必要の無いこと
は、言うまでもない。
【0121】次に、縮退周波数をν'dに変えて、同様に
干渉位相の測定を実行する。この際、基準とする光周波
数ν'rは、先回のνrと等しくても良いし、異なってい
ても構わない。縮退周波数を変えるためには、2次の非
線形媒質104の位相整合波長を同調すればよい。後段
の2次の非線形媒質128は、十分高帯域なので、位相
整合波長の再同調は通常要しない。
【0122】上で得られた2つの干渉位相データの各々
に、位相アンラップと呼ばれる標準的な操作を施して、
2つの対称化位相データを得る。これらを連立すれば、
スペクトル位相が求まる。かくしてスペクトル位相が求
まれば、後はごく簡単な操作を残すのみである。すなわ
ち、局発光を遮った状態で、2次元光検出器133上の
像として、被測定光信号のパワースペクトルを得る。こ
のスペクトルデータに、平方根演算を施してスペクトル
振幅データを得、これに前に得たスペクトル位相を付与
して複素化した上で、逆フーリエ変換を行えば、光信号
電界の時間波形が算出されるのである。
【0123】かくして、本実施形態1の構成により、パ
ルスショット毎の強度のばらつきの影響を免れた、干渉
位相の測定が行え、かかる2回の干渉位相の測定と、別
途測定したパワースペクトルを組合わせて、光信号電界
の時間波形が求められる。
【0124】以上の手順では、電界の時間波形を得るの
に、被測定光信号が、つごう3ショット必要なのは明ら
かである。以下では、さらに歩を進めて、信号光単発で
の、電界の時間波形測定を実現する本実施形態1の構成
について説明する。
【0125】単一パルス測定のための自明な構成とし
て、前記本実施形態1の装置(構成)を2つ、通常のスペ
クトルの観測器と併せて、用意する方法がある。
【0126】ここで、前記2つの装置(構成)を、予め、
異なる縮退周波数νd、ν'dに、設定しておく。被測定
信号を3分し、得られた第1の信号(1者)と第2の信号
(2者)を、これら2つの装置(構成)にそれぞれ供給し、
さらに残余をスペクトル観測器に供給する。
【0127】図1(b)は、かかる装置の構成を示す図で
あり、図1(b)中、被測定光信号は、被測定光信号入力
101として本実施形態1の装置に入射する。この入射
された入力は、分岐鏡134により2分され、うち一方
は更に分岐鏡135により、概略均等に2分される。以
上2つの分岐鏡により、被測定光信号は3分されるの
で、これら総体としては3分手段136を形成してい
る。分岐鏡135を透過した被測定光信号は、本実施形
態1の単体装置(第1の構成)139に供給される。一
方、分岐鏡135で反射された被測定光信号は、別個の
本実施形態1の単体装置(第1の構成)140に入射す
る。ここで、これら2つの本実施形態1の単体装置(第
1の構成)は、その縮退周波数νd、ν'dを互いに異にす
るよう設定される。ひるがえって当初、分岐鏡134に
より2分された他方の被測定光信号は、反射鏡138を
経て、スペクトル観測器141に導かれる。
【0128】かくすれば、ただ1発の被測定信号に対し
て、光信号電界の時間波形の算出に必要なデータの全て
を採取することができ、単一パルス測定が実現する。
【0129】本実施例1の単体装置(第1の構成)を見る
とき、最も高価な構成要素は、スペクトログラフ132
及び2次元光検出器133であり、これらは通常のスペ
クトルの観測器の構成要素でもある。特に、前者は最も
かさ高い構成要素ともなっている。しかして、図1(b)
に示した単一パルス測定構成では、これら最も高価かつ
大きな構成要素を、総体として3対を要することにな
る。その結果、構成が高価かつ長大とならざるを得な
い。
【0130】核融合炉の点火パルス、あるいは最先端科
学を追求する極限的な短パルスを発生する光源に関る場
合、測定装置がいささか高価で長大となったとしても、
問題とするには当たらないかもしれない。この場合、光
源自体が極めて複雑・高価なので、その維持・管理に要
する測定装置にも、多くの費用を割り当て得るからであ
る。
【0131】しかしながら、加工等、より広く工業的に
用いられる短パルス光源にあっては、付随する測定装置
にも、高い費用対効用比が要求される。ここにおいて、
本発明者は、より低廉な構成につき、鋭意考究を加え、
単一のスペクトログラフ及び2次元光検出器を用いて、
光信号電界の時間波形の算出に必要なデータを全て採取
することのできる単一パルス測定構成を案出するに至っ
た。以下では、これにつき述べる。
【0132】2次元光検出器において、前記述したY方
向、すなわち縦方向の画素数には、前記の本発明の実施
形態1の構成を行っても、通常なお余裕がある。これを
利用することを考える。すなわち、2種類の局発光によ
る混合光の各々と、通常のスペクトルを、縦方向の領域
に分けて、一挙に観測する。このうち、各混合光の観測
にあてる領域では、異なる位相2φpの下で生成した混
合光を、Y方向に位置分解して測定する。これを行うた
めに、各々の局発光と被測定光信号は、前述したように
波面に傾きを設けて、非線形媒質に入射・結焦するのが
良い。
【0133】ここで、各々の局発光と被測定光信号を、
別個の非線形媒質に入射・結焦して、それぞれから混合
光を生成し、その後で、2つの混合光を、縦方向にずら
した上でまとめてスペクトログラフに入射する構成も、
勿論可能である。しかしながら、単一の非線形媒質上
に、2種の局発光と被測定光信号を入射・結焦する構成
の方が、簡便性に優れ望ましい。この際、2つの局発光
相互は、非線形媒質上で重なりが生じないように、注意
すべきである。何故なら、被測定光信号に同時に2つの
局発光が作用する場合、前記数6の式と異なる混合光が
生成されるからである。
【0134】前記本発明の実施形態1では、被測定光自
身を2分した一方から局発光を生成している。このよう
な構成を、自己参照型の構成と呼ぶことができる。この
自己参照型の構成においては、必要な2つの局発光を得
る手段として、一般に、2つの方法が考えられる。その
1は並列型であり、被測定光信号を3分し、3分して得
られた1者(第1の信号)と2者(第2の信号)をそれぞ
れ、2つの局発光の生成にあて、得られた2つの局発光
を、3分した残余の被測定光信号に作用させる。
【0135】その2は逐次型であり、被測定光信号を2
分し、2分して得られた一方を、先ず1つの局発光の生
成にあてる。ここで、局発光に変換されずに残余を、次
いで他の局発光の生成にあてる。得られた2つの局発光
を、最初2分して得た他方に対し作用させる。
【0136】以上で、単発信号光の測定構成の原理の説
明を終え、以下では、それに立脚した本発明の実施形態
2(第2の構成)について、図面を参照して説明する。
【0137】(実施形態2)図3は、本発明の実施形態2
の光信号電界の時間波形測定方法及び装置を説明するた
めの図であり、図3(a)は、その概略構成を模式的に示
す上面図であり、図3(b)は、本実施形態2の反射鏡3
18より2次の非線形媒質328に至る光路に沿った側
面図である。
【0138】本実施形態2の光信号電界の時間波形測定
装置は、Y方向にも集束して非線形媒質に入射・結焦す
ることが望ましい、時間幅が極限的に狭い白色フェムト
秒光を測定する場合の構成を与えている。また、2つの
局発光を得る方法としては、前述した逐次型を用いてい
る。
【0139】図3(a)において、被測定光信号は、被測
定光信号入力301として本実施形態2の光信号電界の
時間波形測定装置の構成に入射する。この入射された入
力は、分岐鏡302により2分され、うち一方はレンズ
303によって、2次の非線形媒質304に入射・結焦
される。本実施形態2の非線形媒質304において第2
高調波が発生され、光周波数ν3を持つ第1の局発光が
得られる。
【0140】発生した第1の局発光は、エッジ305に
よりビーム上端が掩蔽された後、レンズ306により平
行光線とされ、高調波分離鏡309を通過し、反射鏡3
21、322、323、及び324からなる光学遅延線
を経て、光学楔308及び濾波器320を通過して、合
波鏡325位置に達する。2次の非線形媒質304に入
射したものの、局発光に変換されずに残った被測定光信
号は、レンズ306により平行光線とされ、高調波分離
鏡309で反射され、レンズ310によって、2次の非
線形媒質311に入射・結焦される。
【0141】前記非線形媒質媒質311においても第2
高調波が発生され、光周波数ν'3を持つ第2の局発光が
得られる。この第2の局発光は、エッジ312によりビ
ーム下端が掩蔽された後、レンズ313により平行光線
とされ、反射鏡314、315、316、及び317か
らなる光学遅延線を経て、反射鏡318で反射され、光
学楔319及び濾波器320を通過して、合波鏡325
位置に達する。ここで、濾波器320は、2次の非線形
媒質304、311で局発光に変換されずに残った被測
定光信号を、除去するために、挿入されている。分岐鏡
302によって2分されたうち他方は、反射鏡307を
通過し、合波鏡325に達する。
【0142】前記反射鏡321、322、323、及び
324からなる光学遅延線は、合波鏡325位置で、被
測定光信号と第1の局発光が時間的に同期するように、
調整・固定される。同様に前記反射鏡314、315、
316、及び317からなる光学遅延線は、合波鏡32
5位置で、被測定光信号と第2の局発光が時間的に同期
するように、調整・固定される。
【0143】以上、合波鏡325の位置に達した2つの
局発光と光信号は、円筒鏡326及び円筒鏡327によ
り、2次の非線形媒質328に入射・結焦される。この
うち、円筒鏡326はY方向(図で紙面に垂直方向)への
集束、円筒鏡327はX方向(図で紙面に平行方向)への
集束を、各々担務している。前記非線形媒質328から
出射する混合光は、円筒鏡329、330及び331に
より、スペクトログラフ332に導かれる。うち、円筒
鏡330はY方向への結像に用いられ、スペクトログラ
フ332がイメージング機能を有する場合、スリット上
に、然らざる場合、2次元光検出器333上に、Y方向
の像が結ばれるよう配置するのが良い。残余の円筒鏡3
29と331はX方向への集光を担務している。これら
は、通例、混合光が、円筒鏡329によりX方向の平行
光束とされ、続く円筒鏡331によって、スリットに集
光されるように配置する。前記スペクトログラフ332
に装着された2次元光検出器333により、混合光のス
ペクトルが、図3(a)の紙面に垂直な方向に位置分解さ
れて、観測・採取される。
【0144】既に述べたように、被測定光信号に関る装
置分散を小さく抑えるべく、被測定光信号は反射光学系
のみを経由するような装置設計が推奨される。本実施形
態2の構成においては、これに加えて、時間幅が極限的
に狭い白色フェムト秒光を扱うために、被測定光信号に
関る鏡の反射回数自体を、極力減らす設計を採ってい
る。非線形媒質328に至るまでに、被測定光信号を反
射する5つの鏡、すなわち、分岐鏡302、反射鏡30
7、合波鏡325、円筒鏡326及び円筒鏡327のう
ち、反射鏡307と2つの円筒鏡326、327には広
帯域の金属鏡を用いるのが良い。分岐鏡302は、金属
鏡を採用できないためより困難であるが、反射率10%
程度のものは、ガラス表面のフレネル反射に基づいて構
成することができる。
【0145】しかして、最たる困難が生じるのは、合波
鏡325である。何故ならば、金属鏡を用いた場合に
は、裏手から合波されるべき2つの局発光が透過しな
い。かといって、分岐鏡302同様に、ガラス表面のフ
レネル反射により構成すると、被測定光信号に対する反
射率が、分岐鏡302と合波鏡325だけの積算で、既
に1%未満となり損失が大き過ぎるからである。
【0146】ところが、Y方向にも集束して非線形媒質
328に入射・結焦するという、白色フェムト秒光の測
定に伴って必要となった構成が、幸いなことに、この合
波鏡325に係る問題の解消に益するという事情が存す
る。図3(b)を参照してこれについて説明する。
【0147】図3(b)に示すように、本実施形態2の構
成のように、円筒鏡326を用い、Y方向にも集束して
非線形媒質328に入射・結晶する場合、被測定光信号
と局発光の光軸に、傾きα'eを持たせて円筒鏡326に
入射しても、非線形媒質328上での、波面の傾きを生
ずることにはならず、むしろ両光の焦点面上でのずれに
転化される。しかして、被測定光信号と局発光の波面に
必要な傾き角αを与えるには、両光を円筒鏡326上
で、ずらして反射させる必要がある。
【0148】ここで、両光の円筒鏡326上での間隔h
は、以下にして求まる。まず、被測定光信号と局発光の
波面の傾き角αは、位相2φpの変化量Aφ、Y方向の
ビーム径wY、さらに局発光波数k3を用いて、sinα=
φ/(k3Y)と表せる。屈折の法則を用いて、これを
非線形媒質328への局発光の入射角αeに直すと、si
e=Aφλ3/(2πwY)である。円筒鏡326の焦点
距離をfYとすると、h=fYtanαeであるから、αe
小さいとして、これに代入すると、数10の式を得る。
【0149】
【数10】 ところで、焦点距離fYの円筒鏡326により得られる
ビームウエストwYは、円筒鏡326に入射する(平行)
ビームの直径Dを用いて、2wY=fY(1.22λ 3/D)
で与えられることは、よく知られている。これを用い
て、間隔hとビーム直径Dの比を求めると、h/D=A
φ/(1.22π)である。ここで、干渉位相を求めるた
めに、Aφ>2πだったことを思い起こせば、h>Dが
常に成り立つ。況や、Aφの典型値であった6πに対し
ては、h≒5Dとなり、円筒鏡326上で、被測定光信
号と局発光の2つのビームは、完全に分離していると見
なせるのである。
【0150】すなわち、円筒鏡326の使用下で、本発
明で推奨される大きさの波面の傾きαを与えた場合、被
測定光信号と局発光のビームは、円筒鏡326上で、常
に十分に分離している。この必然的性質を利用すれば、
前記の合波鏡325に係る困難は解消される。すなわ
ち、図3(b)に示したように、上下の幅が数10の式の
与える間隔hに概ね等しいような、短冊状の金属鏡を合
波鏡325として用いれば良い。被測定光信号を短冊状
の金属鏡にて反射させる一方、2つの局発光は、かかる
短冊の上下を通過させれば、被測定光信号と2つの局発
光、何れに対しても損失が生じないのである。言うまで
もなく、金属膜を短冊状に蒸着した鏡を合波鏡325と
しても、同等の効果を得ることができる。
【0151】同様の事情は、光周波数ν3を持つ第1の
局発光と、光周波数ν'3を持つ第2の局発光が交差する
箇所に位置する反射鏡318についても成り立つ。すな
わち、反射鏡318における2つの局発光の間隔は2h
であり、合波鏡325におけるよりもさらに十分離れて
いる。従って、図3(b)に示すように、反射鏡317を
発した第2の局発光のみを反射鏡318で反射する一方
で、反射鏡323からの第1の局発光は、反射鏡318
の下側を通過させることは、至極容易に行える。
【0152】既に述べたように、2つの局発光は、非線
形媒質上で相互に重なりが生じないよう注意が必要であ
る。このために、本実施形態2の構成では、前述した円
筒鏡326に入射する被測定光信号と局発光の間の光軸
の傾きα'eによって生ずる両光の焦点面上でのずれを利
用する。図3(b)に示したように、光周波数ν'3を持つ
第2の局発光に、α'eだけの伏角をつけて、円筒鏡32
6に入射する。このとき、非線形媒質328上で、第2
の局発光のビームウエストの中心は、被測定光信号の中
心から、Y'ν=−fYα'eだけずれる。ここで、負号は
下へのずれを表す。
【0153】他方、円筒鏡326に入射する光周波数ν
3を持つ第1の局発光に、α'eだけの仰角をつければ、
非線形媒質328上で、第1の局発光のビームウエスト
の中心は、Yν=fYα'eだけ上にずれる。これらずれ
量Yν、Y'νの大きさは、非線形媒質328上での局
発光のY方向のビーム径wY程度に設定するのが良い。
【0154】これに必要な局発光の光軸の傾きα'eは、
円筒鏡326に入射する(平行)ビームの拡がり角程度と
なり、極く小さい角となる。図3(a)の構成に現れた2
つの光学楔308及び319は、それぞれ、第1及び第
2の局発光の光軸を偏向し、光軸の傾きα'eを与えるた
めに用いられる。ここでも、前記実施形態1の構成にお
けると同様、現実には、局発光の光軸を偏向するため
に、あえて光学楔を用いる必要はない。第1の局発光に
対しては、反射鏡324のあおりを調節すれば必要な仰
角を与えることができ、また、第2の局発光に対して
は、反射鏡317または反射鏡318のあおりを調節す
れば、必要な伏角を与えることができるからである。
【0155】図3(a)の構成に、光学楔308及び31
9をあえて書き入れてあるのは、前同様、局発光の光軸
に傾きを与えて円筒鏡326に入射すべきことを、陽に
示すためである。
【0156】前記ずれ量Yν及びY'νの大きさを、ビ
ーム径程度にとれば、非線形媒質328上での2つの局
発光の重なりはかなり小さくできるが、依然として完全
なゼロとはならない。ビーム断面内の強度分布が、ビー
ム径の外側で突然ゼロとなる訳ではないからである。こ
の問題に対処するために、図3(a)の構成には、2つの
遮光エッジ305及び312が挿入されている。エッジ
305のレンズ306による虚像は、円筒鏡326によ
り、非線形媒質328の極く近傍に、実像として結像さ
れる。すなわち、エッジ305の開口を下側にとり、エ
ッジ305の位置でビーム上端を掩蔽しておけば、第1
の局発光は、非線形媒質328上には、下端が欠けた形
状を以って結焦される。
【0157】他方、エッジ312のレンズ313による
虚像も、円筒鏡326により、非線形媒質328の極く
近傍に、実像として結像される。従って、エッジ312
の開口を上側にとり、エッジ312の位置でビーム下端
を掩蔽すれば、非線形媒質328上に結焦された第2の
局発光は、上端が欠けた形状を呈する。非線形媒質32
8上で、上側に位置する第1の局発光は下端を欠き、ま
た、下側に位置する第2の局発光は上端を欠くのである
から、両者の重なりはゼロとなる。
【0158】図4は、以上の本実施形態2の装置の動作
を説明するための図であり、図4(a)は、2次の非線形
媒質328上のビーム配置を示す図である。既に述べた
通り、光周波数ν3を持つ第1の局発光は、下端を欠き
つつ上側にずれて結焦され、一方、光周波数ν'3を持つ
第2の局発光は、上端を欠きつつ下側にずれて結焦され
ている。この結果、非線形媒質328上での2つの局発
光の重なりは生じない。
【0159】以上のように、局発光の結焦形状に意図的
な整形を加えた結果、非線形媒質328上で2つの局発
光の中間には、何れの局発光も照射しない非励起領域が
作られる。かかる非励起領域を通過した被測定光信号
は、単に非線形媒質328を透過したに過ぎず、それを
スペクトルグラフ332により光周波数(波長)に分解す
ることは、まさに通常のパワースペクトルの観測を行う
ことに当たっている。
【0160】図4(b)は、2次元光検出器333上に現
れる像の輝度分布の例を示す図であって、横軸方向に
は、スペクトル成分の強度が、波長ないしは光周波数に
分解されて得られる。これに対し、縦軸方向には、スペ
クトログラフ332のスリットに沿う位置、すなわち、
2次の非線形媒質328上のY方向位置が結像・分解さ
れている。ここで、この2次の非線形媒質328上で
の、ビーム配置は図4(a)に示すように、3つの領域に
分かれていた。これに対応して、2次元光検出器333
上に現れる像も、上下に3つの領域に分けることができ
る。
【0161】まず、被測定光信号と第1の局発光の重な
る領域が、図4(b)に示す像の上部に現れる。この第1
の局発光は、非線形媒質328内で、被測定光信号に対
し仰角αを持っていた結果、この領域で縦軸方向は、第
1の局発光の位相φ3=2φpに対応することになる。従
って、前述の実施形態1の構成同様、像のこの領域に
は、光周波数ν3を持つ第1の局発光についての対称化
位相の形が、直接的な形で可視化されている。当然、こ
の領域の輝度分布に村し、前述した位相差計算法を行え
ば、縮退周波数νd=ν3/2についての対称化位相を、
精度良く求めることができる。
【0162】続いて、被測定光信号に何れの局発光もあ
たらない非励起領域が、図4(b)に示す像の上下中央部
に現れる。この領域の輝度分布は、通常のパワースペク
トルを与える。この領域の、縦方向の画素数が、図4
(b)のように複数にわたる時に、それら画素の輝度の和
を採ることで、スペクトルの測定精度の向上を図ること
は、常套的な手法に属する。
【0163】最後に、被測定光信号と第2の局発光の重
なる領域が、図4(b)に示す像の下部に現れる。第2の
局発光は、非線形媒質328内で、被測定光信号に対し
伏角αを有したので、本領域の縦軸方向は、第2の局発
光の位相φ'3=2φ'pに対応する。その結果、本領域に
は、光周波数ν'3を持つ第2の局発光についての対称化
位相が、可視化されており、その輝度分布に対し、前述
の位相差計算法を行なって、縮退周波数ν'd=ν'3/2
についての対称化位相を、求めることができる。
【0164】以上、像の上部と下部それぞれの領域に対
する位相差計算に当たっては、前述した被測定光の光強
度分布の校正を行うのが望ましい。この校正は、図4
(b)に示す像を上下3つの領域に分割するに先立って、
像全体に対して一挙に行うことができる。すなわち、2
つの局発光を両者とも遮った状態で、2次元光検出器3
33上に現れる像の輝度分布を記録しておく。任意の光
周波数に対して、輝度を縦方向に辿ることで、Y方向の
光強度分布の校正データ列L0を得ることができる。そ
の後は、測定輝度分布を、校正データ列L0で除して規
格化し、校正された輝度分布を得た後、前記3つの領域
に分割し、それぞれの領域での解析を行なえば良いので
ある。
【0165】ここで、この被測定光の光強度分布の校正
データを得るために、余分な1ショットを要することに
なり、厳密な単発信号光の測定とならないとの見方が生
じる。しかし、これは実際上は問題とするにはあたらな
い。信号光のショット毎の、ビームの形状変化は、通常
無視し得る上に、必要に応じて、本発明の測定装置への
入射以前に、ビームの形状を一定化する光学系を設置す
ることもできる。
【0166】このような光学系としては、レンズ(また
は球面鏡)対と、それらの共焦点に配置したピンホール
の組合わせがよく知られている。これに加えて、校正デ
ータの光強度分布が、実際の被測定光の光強度分布と若
干ずれていたとしても、前記の位相差計算の精度が急激
に低下する訳ではない。この観点からは、実際に信号光
を入射して枚正データを採取せずとも、測定装置内の光
伝搬設計に際して、計算上のビームに想定した光強度分
布を、校正データとして代用することすら、許されるの
である。
【0167】以上の手順により図4(b)に示す像から、
2つの干渉位相データとスペクトルデータが一挙に得ら
れる。前記2者から、スペクトル位相が求まり、一方、
スペクトルデータに平方根演算を施してスペクトル振幅
データを得る。このスペクトル振幅データにスペクトル
位相を付与して複素化した上で、逆フーリエ変換を行う
ことで、光信号電界の時間波形が算出される。かくし
て、本実施形態2の構成により、単一ショットの光信号
に対し、光信号電界の時間波形が測定されるのである。
【0168】(実施形態3)図5は、本発明の実施形態3
の光信号電界の時間波形測定方法及び装置を説明するた
めの図である。本実施形態3の光信号電界の時間波形測
定装置は、前記図3と同様、時間幅が極限的に狭い白色
フェムト秒光を測定する場合であるが、2つの局発光を
得る方式として、前述した並列型を採用した構成となっ
ている。
【0169】図5において、被測定光信号は、被測定光
信号入力501として本実施形態3の光信号電界の時間
波形測定装置に入射する。この入射された入力は、分岐
鏡502により2分される。うち一方は更に分岐鏡50
9により、概略均等に2分される。以上2つの分岐鏡に
より、被測定光信号は3分されるので、これら総体とし
ては3分手段を形成している。分岐鏡509を透過した
被測定光信号は、レンズ503によって、2次の非線形
媒質504に入射・結焦される。この非線形媒質504
において第2高調波が発生され、光周波数ν3を持つ第
1の局発光が得られる。
【0170】発生した第1の局発光は、エッジ505に
よりビーム上端が掩蔽された後、レンズ506により平
行光線とされ、反射鏡521、522、523、及び5
24からなる光学遅延線を経て、光学楔508及び濾波
器520を通過して、合波鏡525位置に達する。
【0171】前記分岐鏡509で反射された被測定光信
号は、レンズ510によって、2次の非線形媒質511
に入射・結焦される。この非線形媒質511においても
第2高調波が発生され、光周波数ν'3を持つ第2の局発
光が得られる。この第2の局発光は、エッジ512によ
りビーム下端が掩蔽された後、レンズ513により平行
光線とされ、反射鏡514、515、516、及び51
7からなる光学遅延線を経て、反射鏡518で反射さ
れ、光学楔519及び濾波器520を通過して、合波鏡
525位置に達する。
【0172】ここで、濾波器520は、2次の非線形媒
質504、511で局発光に変換されずに残った被測定
光信号を、除去するために、挿入されている。当初の分
岐鏡502によって2分されたうち他方は、反射鏡50
7を経て、合波鏡525に達する。前記反射鏡521、
522、523、及び524からなる光学遅延線は、合
波鏡525位置で、被測定光信号と第1の局発光が時間
的に同期するように、調整・固定され、同様に、前記反
射鏡514、515、516、及び517からなる光学
遅延線は、合波鏡525位置で、被測定光信号と第2の
局発光が時間的に同期するように、調整・固定される。
以上、合波鏡525位置に達した2つの局発光と光信号
は、円筒鏡526及び円筒鏡527により、2次の非線
形媒質528に入射・結焦される。このうち、円筒鏡5
26はY方向(図で紙面に垂直方向)への集束、円筒鏡5
27はX方向(図で紙面に平行方向)への集束を、各々担
務している。上記非線形媒質528から出射する混合光
は、円筒鏡529、530及び531により、スペクト
ログラフ532に導かれる。うち、円筒鏡530はY方
向への結像に用いられ、一方、残余の円筒鏡529と5
31はX方向への集光を担務している。前記スペクトロ
グラフ532に装着された2次元光検出器533によ
り、混合光のスペクトルが、図5の紙面に垂直な方向に
位置分解されて、観測・採取される。
【0173】被測定光信号に関る装置分散を小さく抑え
る処方、円筒鏡526上で被測定光信号と局発光の光軸
の間隔h及び傾きα'e、その傾きα'eを2つの光学楔5
08及び519に依らず与え得ること、さらに、2次の
非線形媒質528上のビーム配置、2次元光検出器53
3上に現れる像の解析手順については、前記実施形態2
の構成に準ずる。かくして、本実施形態3の構成によっ
ても、単一ショットの光信号に対し、光信号電界の時間
波形が測定されるのである。
【0174】本発明方法及び装置の動作については、既
に前記において十分に述べた。それ故、以下では、本発
明の実施例について、その動作条件を数値的に示すに留
める。
【0175】(実施例1)現在、実用されているフェムト
秒Ti:サファイアレーザは、0.8μm帯で、100
fsのパルスを生成できる。これを再生増幅器により増
幅し0.1mJ/パルス、繰返し1kHzのパルス列を
得るシステムは、加工等に広く用いられている光源であ
る。このパルスの測定のために、前記実施形態1の構成
を実施する。
【0176】パルス幅が極端に短くないこのような場
合、装置を構成する鏡、すなわち、分岐鏡102、反射
鏡107、反射鏡121乃至124、合波鏡125、及
び円筒鏡127、129全てに、誘電体多層膜鏡を用い
ることができる。
【0177】波長0.8μmのパルス列の一部(0.1
%)、0.1μJ/パルスを被測定光入力101として入
射する。分岐鏡102は、このうち10%を反射鏡12
1に向けて反射する。残りの90%は、焦点距離125
mmのレンズ103によって、2次の非線形媒質104
に入射・結焦する。この非線形媒質104としては、5
mm厚のBBO結晶を選び、結晶(c)軸に対し29.2
°の方向から光を入射する角度位相整合を行う。このと
き、0.05μJ/パルスの局発光が得られ、そのスペ
クトル幅は、0.5nm(1THz)である。
【0178】前記角度位相整合BBO結晶には、結晶中
で第2高調波光のパワーの伝搬方向がずれること(ウォ
ークオフ効果)があるが、それにも拘わらず50%の変
換効率が得られているのは、入射パルスのピークパワー
が1MWと極めて高いからである。得られた局発光のピ
ークパワーとしては、0.16MWが見積もられる。得
られた局発光は、入射した被測定光信号と直交する偏光
を持つため、濾波器120に偏光子を用いて、未変換の
被測定光信号を除去することができる。
【0179】後段の2次の非線形媒質128にも、5m
m厚のBBO結晶を選び、前記同様の角度位相整合を行
う。直径lmmのビームを、Y方向にはそのまま、X方
向には焦点距離100mmの円筒鏡127を用いて、2
次の非線形媒質128に入射・結焦する。この円筒鏡1
27は、被測定光信号と局発光の両方に、高い反射率を
持つ必要がある。これは、局発光用の高反射多層膜の上
部に、被測定光信号用の高反射多層膜を重ねた誘電体多
層膜鏡により、被測定光信号に対する分散を低く保って
実現することができる。局発光と被測定光信号のなす角
αeとして0.14°を選んだとき、ビームに跨がる位相
の変化量Aφが、概略6πとなる。
【0180】このような偏向角αeは、合波鏡107の
あおりを調整することで付与できるので、光学楔108
はあえて用いなくて良い。厚さ5mmのこのBBO結晶
において、2次分散は、374fs2であり、41THz
のバンド幅が期待できる。これは、25fsのパルスの
測定にも十分なバンド幅である。以上の構成において、
混合スペクトル上で、混合係数mとして、0.5程度が
観測でき、パルス1ショットに対し容易に干渉位相(対
称化位相)の観測が行える。次いで、2次の非線形媒質
104を僅か(0.08°)回転し局発光の波長を、1.1
nm(2.0THz)だけずらして、前記と同様に、対称
化位相の観測を行う。以上2つの対称化位相から、周波
数刻み1.0THzをもってスペクトル位相が得られ
る。この周波数刻みは、100fsのパルスに対して十
分高分解能である。このスペクトル位相を通常のスペク
トル観測データと組合わせて、被測定光信号電界の時間
波形が測定できる。
【0181】(実施例2)前記実施例1では、被測定光信
号自体から、2次の非線形媒質104を介して、局発光
を得ていた。このような自己参照型の構成に対し、本発
明では、独立した光源を用いて局発光を充当する独立局
発型の構成も可能である。被測定光信号が繰返し発生す
る場合、一般に、独立な局発光源と被測定信号の間の位
相φ3=2φpは、ショット毎にランダムに変化するため
に、複数のショットについて混合スペクトルを積算して
測定する限り、独立局発型では干渉位相が均されてしま
って観測できない。これに対し、単一のショットについ
て観測を行う本発明では、独立局発型の構成が容易に採
り得るのである。
【0182】前記実施例1と同様に、0.8μm帯で、
100fsのパルスを被測定光入力101として入射す
る。前記実施例1で得たのに匹敵する局発光を得るため
に、倍波発生器を内蔵したQスイッチYAGレーザ励起
パルスTi:サファイアレーザを用意する。このパルス
レーザからは、倍波として、パルス幅50ns、波長
0.4μm、ライン幅0.5nm(1THz)の局発光が、
5mJ/パルス、繰返し10Hzで得られる。この局発
光のピークパワーとしては、0.1MWが見積もられ
る。これを合波鏡125に直接入射する。このような独
立局発型構成では、前記実施形態1の構成にあった局発
光生成部分、すなわち、レンズ103、2次の非線形媒
質104、レンズ106、反射鏡107、光学楔10
8、及び濾波器120が不要なことは、言うまでもな
い。また、被測定光信号を局発光生成部分に割り振る必
要もないので、分岐鏡102を全反射鏡に替えるのが良
い。パルス幅50nsの局発光と、被測定信号の時間的
一致は、YAGレーザのQスイッチトリガを介した電子
的手段により十分達成可能なので、反射鏡121乃至1
24からなる光学遅延線も不要となる。従って、この光
学遅延線を単一の反射鏡で置き換えて良い。
【0183】2次の非線形媒質128及びそれへの入射
・結焦条件を前記実施例1同様としたとき、混合スペク
トル上で、混合係数mとして、0.4程度が観測され
る。この際、非線形媒質128であるBBO結晶には、
波長0.4μmのナノ秒局発光パルスが、0.1GW/c
2のピーク強度で結焦される。幸い、この強度は、こ
の結晶の該波長帯における破壊強度よりも1桁小さいの
で、破壊の懸念を免れている。
【0184】独立局発型構成では、被測定光信号に対す
る感度は、単一のショットについての、2次元光検出器
133上のスペクトル観測限界によってのみ決まる。今
の100fsのパルスを、逆分散能3nm/mmのスペ
クトログラフ132に、Y方向に直径1mmのビーム高
さを保ったまま入射し、2次元光検出器133としてC
CD検出器を用いた時、信号対雑音比1000のスペク
トル観測を行うためには、6pJのパルスエネルギで十
分である。すなわち、非常に高感度の干渉位相(対称化
位相)の観測が実現される。このエネルギ感度をもって
すれば、発振器から直接出力されるパルス列の一発をと
っても、十分に観測可能である。
【0185】ここで、局発光源として用いたパルスT
i:サファイアレーザは、波長可変性を有するので、局
発光波長を1.1nm(2.0THz)だけずらして、前記
同様に、対称化位相の観測を行うこともた易い。以降
は、前記実施例1と同様にして、微弱な被測定光信号電
界の時間波形が測定できる。
【0186】(実施例3)より長波長の光信号に対する例
として、前記実施例2に対応する1.5μm帯での実施
例を示す。この波長帯のフェムト秒光源としては、C
r:YAGレーザが知られている。但しこの波長帯での
再生増幅器は未開発なので、再生増幅された、0.1m
J/パルス、繰返し1kHzといったパルス列を得るシ
ステムは、現存しない。従って、この波長帯では、前記
実施例1のように自己参照型の構成は実施対象を欠いて
おり、独立局発型構成での実施とならざるを得ない。
【0187】この波長帯の被測定光信号の測定には、
0.77μmの局発光が必要である。幸いなことに、こ
れも、前記の倍波発生器を内蔵したQスイッチYAGレ
ーザ励起パルスTi:サファイアレーザによって得られ
る。このパルスレーザからは、基本波として、パルス幅
50ns、波長0.77μm、ライン幅0.5nm(0.2
5THz)の局発光が、最大50mJ/パルス、繰返し
10Hzで得られる。このような最大パルスエネルギは
大き過ぎ、2次の非線形媒質128の破壊を招き兼ねな
い。そこでパルスエネルギを10mJ/パルス(ピーク
パワーは、0.2MW)に設定して動作させ、局発光とす
る。
【0188】今の場合、2次の非線形媒質128に、5
mm厚のBBO結晶を選び、結晶軸に対し19.4°の
方向から光を入射する角度位相整合を行う。より非線形
定数の大きい非線形媒質として、ニオブ酸リチウム(L
N)結晶が知られているが、今の独立局発型構成に用い
るのは、破壊強度(BBO結晶の1/50)の点で好まし
くない。直径lmmのビームを、Y方向にはそのまま、
X方向には焦点距離100mmの円筒鏡127を用い
て、2次の非線形媒質128に入射・結焦する。
【0189】局発光と被測定光信号のなす角αeとして
0.27°を選んだとき、ビームに跨がる位相の変化量
φが、概略6πとなる。厚さ5mmのこのBBO結晶
において、2次分散は、−76fs2であり、92TH
zと、llfsのパルスの測定にも十分なバンド幅が期
待できる。以上の構成において、混合スペクトル上で、
混合係数mとして、0.4程度が観測され、パルス1シ
ョットに対し容易に干渉位相(対称化位相)の観測が行え
る。
【0190】この際、非線形媒質128であるBBO結
晶には、波長0.77μmのナノ秒局発光パルスが、0.
2GW/cm2のピーク強度で結焦されるが、これは、
該結晶のこの波長帯における破壊強度よりも1桁以上小
さいので、破壊の心配には及ばない。スペクトログラフ
132として、線刻数600/mmの回折格子を備えた
12cmチェルニターナ型のものを(逆分散能13nm
/mm)用い、これに、2次元光検出器133として赤
外ビジコンカメラを装着した。
【0191】この分光検出システムを用い、Y方向に直
径1mmのビーム高さを保って入射する100fsのパ
ルスについて、単一ショットで信号対雑音比1000の
スペクトル観測を行うためには、12pJのパルスエネ
ルギを要する。これが、今の独立局発型構成による、被
測定光信号に対する測定感度となり、これをもってすれ
ば、Cr:YAGレーザ発振器から直接出力されるパル
ス列の一発をとっても、十分に観測可能である。この他
に、フェムト秒ファイバーレーザの出力、あるいは、フ
ァイバ光増幅器で増幅した直接変調半導体レーザパルス
についても、パルスー発について対称化位相の観測が行
える。より高感度の分光検出システムを用いれば、より
微弱な光信号が観測可能となることは、言うまでもな
い。
【0192】前記実施例2と同様、局発光源の波長可変
性を利用して、局発光波長を変えた対称化位相の観測を
行い、得られたスペクトル位相を、通常のスペクトル観
測データと組合わせて、微弱な被測定光信号につき、電
界の時間波形の測定が実現する。
【0193】(実施例4)前記実施例1、2、3では、1
つの測定装置について、設定を変えて3回動作させ、2
つの対称化位相の観測、及び通常のスペクトル観測を行
い、これらデータを組合わせて被測定光信号電界の時間
波形を求めた。当然、こうした手順の遂行には、最低3
ショットの被測定光信号が必要であった。
【0194】これに対して、前記実施例に述べた測定装
置を、2台用意し、同時に動作させる。これら2台の構
成は、異なる局発光波長に予め設定・固定しておく。さ
らに、少なくとも線型光検出器列を装着したスペクトロ
グラフを、通常のスペクトル観測手段として用意する。
このスペクトル観測には、2次元的な光検出器を必ずし
も要さないので、1次元的な線型光検出器を装着すれば
十分である。被測定光信号を3分し、2台の本発明装置
及びスペクトル観測手段に同時に供給する。
【0195】これによれば、当然のことながら、単一シ
ョットの被測定光信号電界の時間波形が測定できる。こ
の場合、3つの構成装置の何れもが、測定動作中に機械
的な運動を行う、いわゆる可動部分を持たず、その結
果、性能が長期間維持され、信頼性の高いシステムが構
築される。独立局発型の前記実施例2及び3に即して本
実施例4を行う際には、2台の装置内のパルスTi:サ
ファイアレーザが、1台の励起用QスイッチYAGレー
ザを共有する構成とすれば、費用の低減を図れる。
【0196】(実施例5)前記4つの実施例よりも低廉
に、単一ショット測定を行なうために、本発明の実施形
態2の構成を実施する。被測定光信号は、前記実施例1
と同様、再生増幅されたフェムト秒Ti:サファイアレ
ーザ光とする。パルス幅が極端に短くないこのような場
合、Y方向に集束して2次の非線形媒質328に入射・
結焦する必要は生ぜず、従って、図3(a)に示したより
も、若干簡易化された構成となる。また、前記実施例1
乃至4と同様、装置内の全ての鏡に、誘電体多層膜鏡を
用いることができる。
【0197】波長0.8μmのパルス列の一部(0.1
%)、0.1μJ/パルスを被測定光入力301として入
射する。分岐鏡302は、このうち10%を反射鏡30
7に向けて反射する。残りの90%は、焦点距離125
mmのレンズ303によって、2次の非線形媒質304
に入射・結焦する。該非線形媒質304としては、5m
m厚のBBO結晶を選び、結晶(c)軸に対し29.2°
の方向から光を入射する角度位相整合を行う。このと
き、0.03μJ/パルスの第1の局発光が得られ、そ
のスペクトル幅は、0.5nm(1THz)である。この
場合、前記実施例1よりも変換効率が低いのは、以下
の、第2の局発光とバランスを取るために、非線形媒質
304を意図的にレンズ303の焦点位置からずらし
て、変換効率を低めに設定しているからである。
【0198】この第1の局発光は、高調波分離鏡309
を透過し、反射鏡321に向かう。変換されずに残った
0.07μJ/パルスは、焦点距離125mmのレンズ
310によって、2次の非線形媒質311に入射・結焦
する。この非線形媒質311としても、5mm厚のBB
O結晶を選び、結晶軸に対し29.1°の方向から光を
入射する角度位相整合を行う。このとき、0.03μJ
/パルスの第2の局発光が得られ、このスペクトル幅は
第1の局発光に等しい一方、波長は1.1nm(2.0T
Hz)だけずれている。これら2つの局発光のピークパ
ワーとしては、0.10MWが見積もられる。これら局
発光は、入射した被測定光信号と直交する偏光を持つた
め、濾波器320に偏光子を用いて、未変換の被測定光
信号を除去することができる。
【0199】後段の2次の非線形媒質328にも、5m
m厚のBBO結晶を選び、上2つの中間の角度位相整合
を行う。直径1mmのビームを、Y方向にはそのまま、
X方向には焦点距離100mmの円筒鏡327を用い
て、2次の非線形媒質328に入射・結焦する。Y方向
に集束を行わない結果、円筒鏡326は不要である。
【0200】第1の局発光が被測定光信号に対し、0.
14°の仰角αeを持つとき、ビームに跨がる位相の変
化量Aφが、概略6πとなる。同様に、第2の局発光に
は、被測定光信号に対し0.14°の伏角αeを持たせ
る。このような偏向角αeは、第1の局発光には反射鏡
324の第2の局発光には反射鏡318のあおりを調整
することで付与できるので、光学楔308、319はあ
えて用いなくて良い。2つの局発光は、水平に対し逆方
向の偏向角を有する結果、2次の非線形媒質328より
50cm手前の反射鏡318位置では、上下に2.5m
mずれている。この性質に立って、反射鏡318を上側
の第2の局発光のみに作用させ、第1の局発光は反射鏡
318の下を通過させることで、両局発光への損失を回
避できる。
【0201】局発光のビームを整形する遮光エッジ30
5、312は、Y方向に集束を行なわない場合、局発光
ビームが平行となる位置で作用させるのが良い。故に、
この場合、第1の局発光に対しては、反射鏡323と反
射鏡318との間で、上側に開口をもつ遮光エッジ30
5を、第2の局発光には、反射鏡317と反射鏡318
との間で、下側に開口をもつ遮光エッジ312を挿入す
る。
【0202】2次の非線形媒質328として用いた厚さ
5mmのBBO結晶において、2次分散は、373fs
2であり、41THzのバンド幅が期待できる。これ
は、25fsのパルスの測定にも十分なバンド幅であ
る。Y方向に集束を行わないので、スペクトログラフに
混合光を結像する円筒鏡328は不要で、また、スリッ
トにX方向の再結焦を行う円筒鏡331も省略できる。
前段の円筒鏡329にその役を負わせ得るからである。
以上の構成において、混合スペクトル上で、混合係数m
として、0.4程度が観測でき、パルス1ショットに対
し容易に、2つの干渉位相(対称化位相)と通常のスペク
トルの観測が行える。
【0203】2つの対称化位相から、周波数刻み1.0
THzをもってスペクトル位相が得られ、これをスペク
トル観測データと組合わせて、単一ショットで被測定光
信号電界の時間波形が測定できる。この構成は、測定動
作中の可動部分を持たないので、性能が長期間維持さ
れ、安価で信頼性の高い測定システムである。
【0204】(実施例6)前記実施例2及び3に示した独
立局発型の構成を、前記実施例5に即して組み直すこと
により、それぞれを容易に単一ショット測定装置に変更
できる。この際、前記実施例4で述べたように、2台の
パルスTi:サファイアレーザの励起に、1台のQスイ
ッチYAGレーザを共有して用いれば、費用を低減でき
る。
【0205】(実施例7)以上の実施例に示した通り、現
状で実用されている光源の測定に限れば、図3に示した
ようなY方向にもビームを集束する構成は必要とされな
い。しかしながら、時間幅が極限的に狭い白色フェムト
秒光(ないしその候補)も実際に得られるようになってい
る技術の現状に鑑みれば、それの測定につき考究するこ
とも、あながち机上の空論ではない。
【0206】かかる極限光の発生は、大量の非線形効果
の積み重ねの末に生じるため、その電界波形がショット
毎に変動する可能性が極めて高い。いきおい、単一ショ
ット測定を迫られることになる。このように1オクター
ブに近いスペクトル成分を持つ膨大な帯域を有する光信
号に対し、単一ショット測定を行うために、本発明の実
施形態2の構成を実施する。
【0207】スペクトルが0.55μmから1.10μm
にかけて拡がった白色フェムト秒信号、1μJ/パルス
を被測定光入力301として入射する。このような白色
光になると、装置内の鏡の各々を、慎重に選定する必要
が生じる。まず、分岐鏡302であるが、超広帯域な分
岐鏡を誘電体と金属の多層膜鏡として設計するのは、容
易でない。幸い、本装置の構成では1:1の分岐比を要
求されないので、ガラス表面のフレネル反射(屈折率1.
5、45°S偏光入射に対し、反射率9.2%)を、理想
的な分岐鏡302として用いることができる。このガラ
スの裏面には、減反射(AR)コートを施すのがよい。こ
のコートによる光信号の変形は、局発光の発生に当てる
分にのみ作用するので、光信号電界の時間波形測定への
誤差は生じない。
【0208】反射鏡307及び短冊状の合波鏡325に
は、広帯域の金属鏡、特に、反射率の観点から、銀鏡が
推奨される。続く円筒鏡326及び円筒鏡327は、光
信号のみならず2つの局発光にも高い反射率が必要なた
め、要求条件がより厳しくなる。これらには、紫外増強
アルミ鏡をあてる。
【0209】2次の非線形媒質328以降の円筒鏡32
9乃至331には、局発光への要求が無くなるので、銀
鏡が使える。ただ、先頭の円筒鏡329は、局発光ビー
ムが、Y方向に依然集束されて入射する故、熱歪みによ
る破損を避けるために、紫外増強アルミ鏡とする方が無
難である。残余の高調波分離鏡309、反射鏡314乃
至317、反射鏡321乃至324、及び反射鏡318
は、局発光側にあり狭線幅の局発光のみを反射すれば事
足りるため、誘電体多層膜鏡が問題なく適用できる。
【0210】分岐鏡302により、反射鏡307に向け
て反射された残りの91%の被測定光信号は、焦点距離
80mmのレンズ303によって、2次の非線形媒質3
04に入射・結焦する。該非線形媒質304としては、
2mm厚のBBO結晶を選び、結晶(c)軸に対し34.
3°の方向から光を入射する角度位相整合を行う。この
とき、波長0.34μm、0.3μJ/パルスの第1の局
発光が得られ、そのスペクトル幅は、0.6nm(1.6
THz)である。
【0211】この第1の局発光は、下側に開口を持つ遮
光エッジ305を通過した後、レンズ306により平行
光束とされ、高調波分離鏡309を透過し、反射鏡32
1に向かう。変換されずに残った0.7μJ/パルス
は、焦点距離80mmのレンズ310によって、2次の
非線形媒質311に入射・結焦する。この非線形媒質3
11としても、2mm厚のBBO結晶を選び、結晶(c)
軸に対し34.2°の方向から光を入射する角度位相整
合を行う。このとき、0.3μJ/パルスの第2の局発
光が得られ、そのスペクトル幅は第1の局発光に等しい
一方、波長は1.7nm(4.4THz)だけずれている。
この第2の局発光は、上側に開口を持つ遮光エッジ31
2を通過した後、レンズ313により平行光束とされ、
反射鏡314に向かう。これら2つの局発光のピークパ
ワーとしては、1.5MWが見積もられる。これら局発
光は、入射した被測定光信号と直交する偏光を持つた
め、濾波器320に偏光子を用いて、未変換の被測定光
信号を除去することができる。
【0212】後段の2次の非線形媒質328には、0.
05mm厚の薄いBBO結晶を選び、上2つの中間の角
度位相整合を行う。直径1mmのビームを、Y方向には
焦点距離100mmの円筒鏡326、X方向には焦点距
離10mmの円筒鏡327を用いて、2次の非線形媒質
328に入射・結焦する。第1の局発光が被測定光信号
に対し、1.2°の仰角αeを持って結焦するとき、ビー
ムに跨がる位相の変化量Aφが、概略6πとなる。同様
に、第2の局発光には、被測定光信号に対し1・2°の
伏角αeを持たせて結焦する。このような偏向角αeは、
円筒鏡326に、上から下に第2の局発光、被測定光、
さらに第1の局発光と、互いにh=2mmずつずらして
入射することにより、付与できる。このずれは、合波鏡
325位置でも同様なので、合波鏡325を幅2mmの
短冊状として、被測定光のみを反射させることができ
る。また、反射鏡318位置で、2つの局発光は、上下
に4mmずれる結果、反射鏡318を上側の第2の局発
光のみに作用させ、第1の局発光は反射鏡318の下を
通過させることで、両局発光への損失を回避できる。
【0213】また、第1の局発光に0.03°の仰角α'
e、第2の局発光に0.03°の伏角α'eを持たせて、円
筒鏡326に入射することで、2次の非線形媒質328
上で、図4(a)に示したようにビーム配置が実現する。
これら僅かな偏向角は、第1の局発光には反射鏡324
の、第2の局発光には反射鏡318のあおりを調整する
ことで付与できるので、光学楔308、319はあえて
用いなくて良い。2次の非線形媒質328として用いた
厚さ0.05mmのBBO結晶において、2次分散は、
4.7fs2であり、368THzのバンド幅が期待でき
る。これは、0.49μmから1.19μmに至るスペク
トル範囲をカバーするバンド幅である。以上の構成にお
いて、混合スペクトル上で、混合係数mとして、0.3
程度が観測でき、パルス1ショットに対し容易に、2つ
の干渉位相(対称化位相)と通常のスペクトルの観測が行
える。2つの対称化位相から、周波数刻み2.2THz
をもってスペクトル位相が得られ、これをスペクトル観
測データと組合わせて、単一ショットで被測定光信号電
界の時間波形が測定できる。この装置の構成も、測定動
作中の可動部分を持たないので、性能が長期間維持さ
れ、白色フェムト秒光の評価に有効な測定装置である。
【0214】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
被測定光信号の一発毎に対称化位相を得るので、ショッ
ト毎の強度の変動に高い耐性を以って、繰返し周波数の
低い加工用等の超短光パルス信号を正確に測定できる。
また、強力な局発光源を内蔵した独立局発型の構成を採
ることで、高い感度を得ることができる。また、信号光
単発での測定が実現されるので、測定精度が向上でき、
かつ、頻度の非常に低いパルス光の取り扱いも可能とな
る。また、可動部分無しに動作するので性能が長期間維
持され、かつ低廉に構成できる。また、測定対象の光信
号電界の時間幅に応じて、構成を使い分けることによ
り、広い測定ニーズに対応できるので、工業的に大きな
効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1の光信号電界の時間波形測
定方法及び装置を説明するための模式図である。
【図2】本実施形態1の2次元光検出器上に現れる像の
輝度分布の例及び位相差計算手順を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2の光信号電界の時間波形測
定方法及び装置を説明するための模式図である。
【図4】本実施形態2の光信号電界の時間波形測定装置
の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施形態3の光信号電界の時間波形測
定方法及び装置を説明するための模式図である。
【図6】従来例の光信号電界の時間波形測定方法を説明
するための図である。
【符号の説明】
101…被測定光信号入力 102…分岐鏡 103…レンズ 104…2次の非線
形媒質 106…レンズ 107…反射鏡 108…光学楔 120…濾波器 121、122、123、124…反射鏡 125…合波鏡 127…円筒鏡 128…2次の非線形媒質 129…円筒鏡 132…スペクトログラフ 133…2次元光検
出器 134、135…分岐鏡 136…3分手段 137、138…反射鏡 139、140…第
1の構成 141…光スペクトル観測器 301…被測定光信
号入力 302…分岐鏡 303…レンズ 304…2次の非線形媒質 305…エッジ 306…レンズ 307…反射鏡 308…光学楔 309…高調波分離
鏡 310…レンズ 311…2次の非線
形媒質 312…エッジ 313…レンズ 314、315、316、317、318…反射鏡 319…光学楔 320…濾波器 321、322、323、324…反射鏡 325…合波鏡 326、327…円
筒鏡 328…2次の非線形媒質 329、330、3
31…円筒鏡 332…スペクトログラフ 333…2次元光検
出器 501…被測定光信号入力 502…分岐鏡 503…レンズ 504…2次の非線
形媒質 505…エッジ 506…レンズ 507…反射鏡 508…光学楔 509…分岐鏡 510…レンズ 511…2次の非線形媒質 512…エッジ 513…レンズ 514、515、516、517、518…反射鏡 519…光学楔 520…濾波器 521、522、523、524…反射鏡 525…合波鏡 526、527…円
筒鏡 528…2次の非線形媒質 529、530、5
31…円筒鏡 532…スペクトログラフ 533…2次元光検
出器 601…被測定光信号入力 602…分岐鏡 604…2次の被線形媒質 607…反射鏡 620…濾波器 624…反射鏡 625…合波鏡 628…2次の非線
形媒質 641…光スペクトル観測器 642…濾波器 643…光増幅器 644…光増幅器 645…反射器 646…位相調整器

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 被測定光信号に対し、局発光を作用させ
    て位相共役光を生成し、前記被測定光と前記位相共役光
    とを合波して混合光を生成し、この混合光のスペクトル
    を観測して、前記被測定光信号の電界の周波数領域での
    位相を測定する光信号電界の時間波形測定方法であっ
    て、 前記局発光と被測定光信号との相対位相が、光線断面内
    の位置に依存するようにして、位相共役光を生成し、こ
    の生成された位相共役光と前記被測定光とを合波して混
    合光を生成し、この混合光のスペクトル強度を、前記位
    置毎に分解された2次元像として観測記録し、前記位置
    の変化に伴うスペクトル成分毎の強度の変化を比較して
    スペクトル成分の間の相対的位相を測定することを特徴
    とする光信号電界の時間波形測定方法。
  2. 【請求項2】 前記局発光と前記被測定光信号のビーム
    断面内に、それら両光の相対位相を異にする3つの部分
    を生成し、それらを非線形媒質に入射・結焦して位相共
    役光を生成し、前記部分毎のスペクトル強度を連立して
    解きスペクトル成分の間の相対的位相を測定することを
    特徴とする請求項1に記載の光信号電界の時間波形測定
    方法。
  3. 【請求項3】 前記局発光と前記被測定光信号の波面に
    傾きを設け、それら両光の相対位相を、光線断面内の位
    置に直線的に依存させて、非線形媒質に入射・結焦して
    位相共役光を生成し、前記位置に伴うスペクトル強度の
    変化の位相からスペクトル成分の間の相対的位相を測定
    することを特徴とする請求項1に記載の光信号電界の時
    間波形測定方法。
  4. 【請求項4】 前記被測定信号を3分し、この3分して
    得られた1者(第1の信号)と2者(第2の信号)をそ
    れぞれ、前記局発光の波長を異にする請求項2または3
    に記載の2つの手段に供給し、前記3者(第3の信号)
    をスペクトルを観測する手段に供給することを特徴とす
    る請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の光信号電
    界の時間波形測定方法。
  5. 【請求項5】 被測定光信号に対し、波長を互いに異に
    する2つの局発光を作用させ、前記2つの局発光のそれ
    ぞれについての前記2次元像、及び前記局発光の作用を
    受けないスペクトル像の3つの像を、全て重畳して観測
    記録することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれ
    か1項に記載の光信号電界の時間波形測定方法。
  6. 【請求項6】 被測定光信号を2分し、この2分して得
    られた1者(第1の信号)を、前記2つの局発光のうち
    1者の生成にあて、前記局発光に変換されなかった前記
    2分して得られた1者(第1の信号)の残余を、前記2
    つ局発光のうち他者の生成にあて、前記2分して得られ
    た他者(第2の信号)に対し、前記2つの局発光を作用さ
    せることを特徴とする請求項5に記載の光信号電界の時
    間波形測定方法。
  7. 【請求項7】 被測定光信号を3分し、この3分して得
    られた1者(第1の信号)と2者(第2の信号)をそれ
    ぞれ、前記2つの局発光の生成にあて、前記3分して得
    られた3者(第3の信号)に対し、前記2つの局発光を
    作用させることを特徴とする請求項5に記載の光信号電
    界の時間波形測定方法。
  8. 【請求項8】 被測定光信号に対し、局発光を作用させ
    て位相共役光を生成する位相共役光生成手段と、前記被
    測定光と前記位相共役光とを合波した混合光のスペクト
    ルを観測するスペクトル観測手段と、前記被測定光信号
    の電界の周波数領域での位相を算出する位相算出手段を
    有する光信号電界の時間波形測装置であって、 前記局発光と被測定光信号との相対位相が、光線断面内
    の位置に依存するようにして、位相共役光を生成する位
    相共役光生成手段と、該位相共役光生成手段で得られた
    位相共役光と前記被測定光とを混合する混合光生成手段
    と、該混合光生成手段で生成された混合光のスペクトル
    強度を、前記位置毎に分解された2次元像として観測記
    録する観測記録手段と、前記位置の変化に伴うスペクト
    ル成分毎の強度の変化を比較して、スペクトル成分の間
    の相対的位相を算出する相対的位相算出手段とを具備す
    ることを特徴とする光信号電界の時間波形側定装置。
  9. 【請求項9】 前記局発光と前記被測定光信号のビーム
    断面内に、それら両光の相対位相を異にする3つの部分
    を生成する光束分割手段と、該光束分割手段で生成され
    た3つの部分を非線形媒質に入射・結焦して位相共役光
    を生成する位相共役光生成手段と、前記3つの部分毎の
    スペクトル強度を連立して解きスペクトル成分の間の相
    対的位相を算出する相対的位相算出手段とを具備するこ
    とを特徴とする請求項8に記載の光信号電界の時間波形
    測定装置。
  10. 【請求項10】 前記局発光と前記被測定光信号の波面
    に傾きを設け、それら両光の相対位相を、光線断面内の
    位置に直線的に依存させて、非線形媒質に入射・結焦し
    て位相共役光を生成する位相共役光生成手段と、前記位
    置に伴うスペクトル強度の変化の位相からスペクトル成
    分の間の相対的位相を算出する相対的位相算出手段とを
    具備することを特徴とする請求項8に記載の光信号電界
    の時間波形測定装置。
  11. 【請求項11】 前記被測定信号を3分する被測定信号
    3分手段と、該被測定信号3分手段で得られた1者(第
    1の信号)と2者(第2の信号)を、前記局発光の波長
    を異にする請求項9または10に記載の2つの手段に供
    給し、前記3者(第3の信号)をスペクトルを観測する
    手段に供給する手段とを具備することを特徴とする請求
    項8乃至10のうちいずれか1項に記載の光信号電界の
    時間波形測定装置。
  12. 【請求項12】 前記被測定光信号に対し、波長が互い
    に異なる2つの局発光を作用させ、前記2つの局発光の
    それぞれについての前記2次元像、及び該局発光の作用
    を受けないスペクトル像の3つの像を、全て重畳して観
    測記録する観測記録手段を具備することを特徴とする請
    求項8乃至10のうちいずれか1項に記載の光信号電界
    の時間波形測定装置。
  13. 【請求項13】 前記被測定光信号を2分する被測定光
    信号2分手段と、該被測定光信号2分手段で得られた1
    者(第1の信号)を、2つの局発光のうち1者の生成に
    あて、該局発光に変換されなかった該2分して得られた
    1者(第1の信号)の残余を、前記2つの局発光のうち
    他者の生成にあて、前記2分して得られた他者(第2の
    信号)に対し、前記2つの局発光を作用させる手段を具
    備することを特徴とする請求項12に記載の光信号電界
    の時間波形測定装置。
  14. 【請求項14】 前記被測定光信号を3分する被測定光
    信号3分手段と、該被測定光信号3分手段で得られた1
    者(第1の信号)と2者(第2の信号)をそれぞれ、前
    記2つの局発光の生成にあて、前記被測定光信号3分手
    段で得られた3者(第3の信号)に対し、前記2つの局
    発光を作用させる手段を具備することを特徴とする請求
    項12に記載の光信号電界の時間波形測定装置。
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