JP2002274129A - タイヤ異常判定装置 - Google Patents

タイヤ異常判定装置

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JP2002274129A
JP2002274129A JP2001074583A JP2001074583A JP2002274129A JP 2002274129 A JP2002274129 A JP 2002274129A JP 2001074583 A JP2001074583 A JP 2001074583A JP 2001074583 A JP2001074583 A JP 2001074583A JP 2002274129 A JP2002274129 A JP 2002274129A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】タイヤ異常の有無の判定結果の信頼性に影響を
及ぼすパラメータであるタイヤ負荷を適正に考慮するこ
とにより、タイヤ異常の有無の判定結果の信頼性を向上
させる。 【解決手段】タイヤ異常の有無を判定する装置を、タイ
ヤの空気圧であるタイヤ圧と基準値との比較により、タ
イヤが異常であるか否かを判定するとともに、その比較
を、タイヤの負荷に基づいて行うものとする。その基準
値は、タイヤの負荷の増加に応じて連続的にまたは段階
的に増加するように予め設定する。具体的には、その基
準値は、タイヤの負荷の増加に応じて増加するように予
め設定されたタイヤ負荷応答基準タイヤ圧と、そのタイ
ヤの負荷の変化に応じて変化しないように予め設定され
たタイヤ負荷不応答基準タイヤ圧との組合せとして構成
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両のタイヤの異
常を判定する技術に関するものであり、特に、その判定
結果の信頼性を向上させる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両のタイヤの空気圧であるタイヤ圧を
検出し、その検出されたタイヤ圧が、予め定められた基
準タイヤ圧以下であると、タイヤが異常であると判定す
る技術が既に存在する。
【0003】その一従来例が特開平7−54683号公
報に開示されている。この従来例においては、一連の車
両走行中に同じタイヤについてタイヤ圧が逐次検出され
るとともに、その初回の検出値に対して、それ以後にお
ける検出値が一定値以上低下したときに、そのタイヤが
異常であると判定される。
【0004】この従来例においては、タイヤ圧の検出値
がそれの初期値と比較されることにより、タイヤが異常
であるか否かが判定されるため、例えば、そもそもその
初期値が基準タイヤ圧より低かった場合には、タイヤ圧
が実際には異常に低下しているにもかかわらずその異常
低下を検出することができない検出不能という事態が起
こり得る。
【0005】一方、タイヤ圧を検出する方式には、圧力
センサや圧力スイッチを用いて直接に検出する方式と、
車輪の角速度である車輪速度等、タイヤ異常の有無を判
定するために利用可能な物理量であるタイヤ異常関連量
に基づいて間接に検出する方式とが存在する。前者の方
式を採用してタイヤ異常の有無を判定する装置の一従来
例が特開2000−238515号公報に記載され、一
方、後者の方式を採用してタイヤ異常の有無を判定する
装置の一従来例が特開2000−238516号公報に
記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、前記特開
平7−54683号公報に開示された従来例に対し、タ
イヤ圧の検出値をそれの初期値と比較するのではなく、
タイヤの耐久性を基準にして設定した基準タイヤ圧と比
較することにより、タイヤが異常であるか否かを判定す
る技術を案出した。この技術によれば、タイヤの異常判
定の結果が検出タイヤ圧の初期値に依存せずに済み、よ
って、その初期値が低いことが原因でタイヤ圧異常低下
の検出不能という事態が起こってしまうことを回避し得
る。
【0007】上記基準タイヤ圧は、一般に、外部からタ
イヤに加えられる負荷の大小とは無関係に一定値として
設定される。タイヤ負荷に依存しない値として設定され
るのが一般的なのである。
【0008】しかし、タイヤ負荷は、車輪の回転速度
(一般に、車両の走行速度である車速と実質的に一致す
る)や、車両走行中に路面からタイヤに作用する荷重が
大きいほど増加するタイヤ・パラメータである。
【0009】そのため、検出タイヤ圧と、タイヤ負荷に
依存しない上述の基準タイヤ圧との比較によってタイヤ
異常の有無を判定する場合には、タイヤ負荷が小さい領
域においては、タイヤ負荷の限界に対して余裕があるに
もかかわらずタイヤが異常であると判定される傾向が強
く、一方、タイヤ負荷が大きい領域においては、タイヤ
負荷の限界に対してそれほど余裕がないにもかかわらず
タイヤが正常であると判定される傾向が強い。
【0010】その結果、タイヤ負荷に依存しない基準タ
イヤ圧との比較によってタイヤ異常の有無を判定する技
術にも、その判定結果の信頼性を向上させる余地があ
る。
【0011】一方、タイヤ圧を検出してタイヤ異常の有
無を判定する装置においては、タイヤ圧の検出がすべて
の車両環境において正常に行い得ることが理想的である
が、実際には、特定の車両環境においては正常に行い得
ない形式のタイヤ異常判定装置も存在する。例えば、前
記特開2000−238516号公報に記載されたタイ
ヤ異常判定装置においては、タイヤ圧と車輪速度の振動
特性との関係を利用して、タイヤ異常関連量の一例であ
る車輪速度に基づいて計算された参照値としてタイヤ圧
が推定されるが、車輪速度の振動はその車輪速度の上昇
につれて低減する傾向があり、この傾向は、車輪速度の
上昇につれてタイヤ圧の推定精度が低下する傾向を招来
する。
【0012】いずれにしても、タイヤ圧を検出してタイ
ヤ異常の有無を判定する装置においては、タイヤ圧の検
出精度が低下すると、タイヤ異常の有無の判定結果の信
頼性も低下してしまう。
【0013】
【課題を解決するための手段および発明の効果】それら
の事情を背景として、本発明は、タイヤ異常の有無の判
定結果の信頼性に影響を及ぼすパラメータであるタイヤ
負荷とタイヤ異常関連量とそのタイヤ異常関連量に基づ
く計算値である参照値との少なくとも一方を適正に考慮
することにより、タイヤ異常の有無の判定結果の信頼性
を向上させることを課題としてなされたものであり、本
発明によって下記各態様が得られる。各態様は、請求項
と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じ
て他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、本
明細書に記載の技術的特徴のいくつかおよびそれらの組
合せのいくつかの理解を容易にするためであり、本明細
書に記載の技術的特徴やそれらの組合せが以下の態様に
限定されると解釈されるべきではない。 (1) ホイールに装着されたタイヤの内部に空気が圧
力下に封入されて構成された車輪を備えた車両に設けら
れ、前記タイヤが異常であるか否かを判定する装置であ
って、前記タイヤが異常であるか否かを判定するために
利用可能なタイヤ異常関連量を検出するタイヤ異常関連
量センサと、そのタイヤ異常関連量センサによる前記タ
イヤ異常関連量の検出値またはそれに基づく計算値であ
る参照値と基準値との比較により、前記タイヤが異常で
あるか否かを判定する判定器であって、前記比較を、前
記タイヤの負荷に基づいて行うものとを含むタイヤ異常
判定装置。
【0014】この装置によれば、タイヤ異常の有無の判
定をタイヤ負荷の変化を考慮して行うことが可能とな
る。タイヤ負荷が小さい領域においては、タイヤ負荷の
限界に対して余裕があるにもかかわらずタイヤが異常で
あると判定される傾向が抑制され、一方、タイヤ負荷が
大きい領域においては、タイヤ負荷の限界に対してそれ
ほど余裕がないにもかかわらずタイヤが正常であると判
定される傾向が抑制されるようにタイヤ異常の有無の判
定を行うことが可能となるのである。
【0015】したがって、この装置によれば、タイヤ異
常の有無の判定結果の信頼性を容易に向上させ得る。
【0016】本項および他の各項において「タイヤの異
常」は、例えば、タイヤの空気圧であるタイヤ圧が異常
に低いかまたは異常に高い状態を含むように解釈した
り、タイヤに素早い変形が生じている状態を含むように
解釈することが可能である。ここに、「素早い変形」
は、例えば、物理的な復元が困難または不可能な変形を
意味するものと解釈したり、不可逆的な変形を意味する
ものと解釈することが可能である。 (2) 前記タイヤの負荷が、前記車両の走行速度であ
る車速と、前記車輪の回転速度と、前記タイヤの接地荷
重との少なくとも1つにより表現される(1)項に記載
のタイヤ異常判定装置。
【0017】本項および他の各項において「車輪の回転
速度」は、その車輪の角速度を意味するように解釈した
り、その車輪の周速度を意味するように解釈することが
可能である。 (3) 前記タイヤ異常関連量センサが、前記タイヤの
空気圧であるタイヤ圧を前記タイヤ異常関連量として直
接に検出するセンサを含む(1)または(2)項に記載
のタイヤ異常判定装置。 (4) 前記タイヤ異常関連量センサが、前記車輪の角
速度である車輪速度を前記タイヤ異常関連量として検出
する車輪速度センサを含み、前記判定器が、(a)その
車輪速度センサにより検出された車輪速度に基づき、前
記タイヤの空気圧であるタイヤ圧を前記参照値として推
定する推定手段と、(b)その推定されたタイヤ圧と前
記基準値との比較により、前記タイヤが異常であるか否
かを判定する判定手段とを含む(1)または(2)項に
記載のタイヤ異常判定装置。 (5) 前記推定手段が、外乱オブザーバであって、前
記車輪に対して、相対回転可能なリム側部とベルト側部
とが少なくともねじりばねにより互いに連結されたタイ
ヤモデルが想定され、そのタイヤモデルに基づき、前記
車輪の回転運動を記述する運動システムが想定され、そ
の運動システムにおいて、前記タイヤ圧の変化に伴う前
記ねじりばねのばね定数の変化を前記車輪に対する外乱
とみなし、前記車輪速度センサから出力される信号を前
記リム側部の角速度を表す信号として用いることによ
り、前記外乱を前記運動システムの状態変数の1つとし
て推定し、それにより、前記タイヤ圧を推定するものを
含む(4)項に記載のタイヤ異常判定装置。 (6) 前記車両が、前記車輪を複数備えており、前記
タイヤ異常関連量センサが、前記車輪の角速度である車
輪速度を前記タイヤ異常関連量として検出する車輪速度
センサを複数、前記複数の車輪に関してそれぞれ含み、
前記判定器が、それら複数の車輪速度センサから前記複
数の車輪に関してそれぞれ出力された複数の信号間の相
対的な関係に基づき、それら複数の車輪のうちの少なく
とも1つのタイヤが異常であるか否かを判定する判定手
段を含む(1)または(2)項に記載のタイヤ異常判定
装置。 (7) 前記基準値が、前記タイヤの負荷の増加に応じ
て連続的にまたは段階的に増加するように予め設定され
ている(1)ないし(6)項のいずれかに記載のタイヤ
異常判定装置。
【0018】前記(1)ないし(6)項のいずれかに係
る装置においては、前記検出値または参照値と基準値と
の比較をタイヤの負荷に基づいて行うために、判定器
を、検出値または参照値にタイヤ負荷に応じた変更を加
え、その変更後の検出値または参照値を、タイヤ負荷の
変化に応じて変化しない基準値と比較する態様とした
り、前記検出値または参照値と、タイヤ負荷の変化に応
じて変化しない基準値との比較結果としての、検出値ま
たは参照値の基準値からの偏差と、タイヤ負荷の変化に
応じて変化する基準偏差とを比較する態様とすることが
可能である。
【0019】これに対して、本項に係る装置において
は、判定器が、検出値または参照値と、タイヤ負荷の増
加に応じて増加する基準値とを比較する。タイヤ負荷の
影響が基準値に現れるようにされているのであり、この
手法は、タイヤ負荷の影響が検出値または参照値に現れ
るようにしたり、検出値または参照値の基準値からの偏
差に現れるようにする手法より、それを実現するために
当該装置に対して行うべき設計を簡単にすることが容易
である。 (8) 前記基準値が、前記タイヤの負荷の増加に応じ
て増加するように予め設定されたタイヤ負荷応答基準値
と、そのタイヤの負荷の変化に応じて変化しないように
予め設定されたタイヤ負荷不応答基準値との組合せとし
て構成されるとともに、そのタイヤの負荷が変化可能な
全体領域のうちの第1の部分領域においては前記タイヤ
負荷応答基準値が、第2の部分領域においては前記タイ
ヤ負荷不応答基準値がそれぞれ選択されるように構成さ
れている(1)ないし(7)項のいずれかに記載のタイ
ヤ異常判定装置。
【0020】前述のように、前記(1)項に係る装置に
よれば、タイヤ負荷が小さい領域においては、タイヤ負
荷の限界に対して余裕があるにもかかわらずタイヤが異
常であると判定される傾向が抑制され、一方、タイヤ負
荷が大きい領域においては、タイヤ負荷の限界に対して
それほど余裕がないにもかかわらずタイヤが正常である
と判定される傾向が抑制されるようにタイヤ異常の有無
の判定を行うことが理論的に可能となる。しかし、実際
上は、タイヤ負荷に応答するタイヤ負荷応答基準値をタ
イヤ負荷の変化可能な全体領域の全域において採用する
ことが、すべてのタイヤ異常判定装置の設計方針に合致
するとは限らない。例えば、タイヤ負荷の特定の部分領
域においては、タイヤ異常の可能性を早期に発見するこ
ととしてタイヤ異常判定装置の設計方針が設定されてい
るような場合があるからである。
【0021】このような事情に鑑み、本項に係る装置に
おいては、基準値が、タイヤ負荷応答基準値とタイヤ負
荷不応答基準値との組合せとして構成されるため、タイ
ヤ負荷の各状態ごとに、それらタイヤ負荷応答基準値と
タイヤ負荷不応答基準値とのうち適当なものを選択して
基準値を構成し得る。
【0022】したがって、この装置によれば、タイヤ異
常の有無の判定結果の信頼性を向上させたいという要望
を満たしつつ、基準値の設定を最適化することが容易と
なる。 (9) 前記タイヤ負荷応答基準値と前記タイヤ負荷不
応答基準値との関係が、前記第1の部分領域において
は、前記基準値として選択されるタイヤ負荷応答基準値
の方が、選択されない負荷不応答基準値より大きく、前
記第2の部分領域においては、基準値として選択される
タイヤ負荷不応答基準値の方が、選択されないタイヤ負
荷応答基準値より大きいものに設定されている(8)項
に記載のタイヤ異常判定装置。
【0023】この装置においては、タイヤ負荷の各状態
ごとに、タイヤ負荷応答基準値とタイヤ負荷不応答基準
値とのうち大きい方、すなわち、タイヤが異常であると
の判定結果が出易い方が選択されて基準値が構成され
る。
【0024】したがって、この装置によれば、タイヤ負
荷の全体領域についてタイヤ負荷応答基準値のみを選択
して基準値を構成する場合に比較し、タイヤ異常の早期
発見という観点からタイヤ異常の有無を判定することが
容易になる。 (10) 前記第1の部分領域が、前記第2の部分領域
に対し、前記タイヤの負荷が増加する側に予め設定され
ている(8)または(9)項に記載のタイヤ異常判定装
置。
【0025】この装置においては、タイヤ負荷が大きい
領域において、そのタイヤ負荷を考慮してタイヤ異常の
有無の判定が行われる。
【0026】したがって、この装置によれば、タイヤ負
荷が大きいために、タイヤ異常の有無の判定結果により
高い信頼性が要望される領域において、その信頼性を容
易に向上させることが可能となる。 (11) 前記タイヤ異常関連量センサが、前記車輪の
角速度である車輪速度を前記タイヤ異常関連量として検
出する車輪速度センサを含み、前記判定器が、前記車輪
速度に基づいて前記タイヤの空気圧であるタイヤ圧を前
記参照値として計算し、前記比較を、その計算されたタ
イヤ圧と前記基準値との間について行う手段を含み、前
記タイヤ負荷応答基準値が、前記タイヤ圧に関し、車両
走行中における前記タイヤ負荷の変化に応じて変化する
ように設定されたタイヤ負荷応答基準タイヤ圧であり、
前記タイヤ負荷不応答基準値が、前記タイヤ圧に関し、
車両走行中における前記タイヤ負荷の変化とは無関係に
固定的に設定されたタイヤ負荷不応答基準タイヤ圧であ
る(8)ないし(10)項のいずれかに記載のタイヤ異
常判定装置。 (12) ホイールに装着されたタイヤの内部に空気が
圧力下に封入されて構成された車輪を備えた車両に設け
られ、前記タイヤが異常であるか否かを判定する装置で
あって、前記タイヤが異常であるか否かを判定するため
に利用可能な物理量であるタイヤ異常関連量を検出する
タイヤ異常関連量センサと、そのタイヤ異常関連量セン
サによる前記タイヤ異常関連量の検出値に基づき、前記
タイヤが異常であるか否かを判定するために基準値と比
較されるべき参照値を、第1の車両環境においては高い
精度で、第2の車両環境においては低い精度で計算し、
その計算された参照値と前記基準値との比較により、前
記タイヤが異常であるか否かを判定する判定器であっ
て、前記第2の車両環境においては、前記参照値を、先
行する前記第1の車両環境において計算された少なくと
も1つの参照値に基づいて計算するものとを含むタイヤ
異常判定装置。
【0027】この装置においては、タイヤが異常である
か否かを判定するために基準値と比較されるべき参照値
を高い精度で計算することが困難な車両環境において、
過去における正常な参照値、すなわち、参照値を高い精
度で計算することが可能である車両環境において取得さ
れた参照値を考慮して現時点における参照値が計算され
る。
【0028】したがって、この装置によれば、参照値を
高い精度で計算することが困難な車両環境においては、
過去における正常な参照値を有効に活用することによ
り、タイヤ異常の有無の判定結果の信頼性を容易に向上
させ得る。 (13) 前記判定器が、前記第2の車両環境におい
て、前記参照値を、先行する前記第1の車両環境におい
て計算された複数の参照値に対して平均化処理を行うこ
とにより取得する手段を含む(12)項に記載のタイヤ
異常判定装置。
【0029】この装置によれば、先行する第1の車両環
境において計算された複数の参照値の時間的なばらつき
が縮減されて、後続する第2の車両環境における参照値
が取得される。その結果、この装置によれば、その取得
精度を容易に向上させ得る。 (14) 前記判定器が、前記第2の車両環境におい
て、前記参照値を、先行する前記第1の車両環境におい
て計算された複数の参照値の時間的変化傾向を考慮する
ことにより取得する取得手段を含む(12)項に記載の
タイヤ異常判定装置。
【0030】この装置によれば、先行する第1の車両環
境において計算された複数の参照値の時間的変化傾向を
考慮することにより、後続する第2の車両環境における
参照値が取得される。 (15) 前記取得手段が、先行する前記第1の車両環
境において計算された複数の参照値の時系列が近似させ
られる1本の直線を定義する関数式であって時刻を変数
とするものを生成し、その生成された関数式に現在時刻
を代入することにより、その1本の直線の延長上に、後
続する第2の車両環境における参照値を取得する手段を
含む(14)項に記載のタイヤ異常判定装置。 (16) 前記判定器が、外乱オブザーバであって、前
記車輪に対して、相対回転可能なリム側部とベルト側部
とが少なくともねじりばねにより互いに連結されたタイ
ヤモデルが想定され、そのタイヤモデルに基づき、前記
車輪の回転運動を記述する運動システムが想定され、そ
の運動システムにおいて、前記タイヤ圧の変化に伴う前
記ねじりばねのばね定数の変化を前記車輪に対する外乱
とみなし、前記車輪速度センサから出力される車輪速度
信号を前記リム側部の角速度を表す信号として用いるこ
とにより、前記外乱を前記運動システムの状態変数の1
つとして推定し、それにより、前記タイヤ圧を前記参照
値として推定するものを含む(12)ないし(15)項
のいずれかに記載のタイヤ異常判定装置。 (17) 前記車両が、前記車輪を複数備えており、前
記タイヤ異常関連量センサが、前記車輪の角速度である
車輪速度を前記タイヤ異常関連量として検出する車輪速
度センサを複数、前記複数の車輪に関してそれぞれ含
み、前記判定器が、それら複数の車輪速度センサから前
記複数の車輪に関してそれぞれ出力された複数の信号間
の相対的な関係に基づき、それら複数の車輪のうちの少
なくとも1つのタイヤが異常であるか否かを判定する判
定手段を含む(12)ないし(15)項のいずれかに記
載のタイヤ異常判定装置。 (18) ホイールに装着されたタイヤの内部に空気が
圧力下に封入されて構成された車輪を備えた車両に設け
られ、前記タイヤが異常であるか否かを判定する装置で
あって、前記タイヤが異常であるか否かを判定するため
に利用可能な物理量であるタイヤ異常関連量を、第1の
車両環境においては高い精度で、第2の車両環境におい
ては低い精度で検出するタイヤ異常関連量センサと、前
記第1の車両環境においては、そのタイヤ異常関連量セ
ンサによる前記タイヤ異常関連量の検出値をそのまま利
用し、一方、前記第2の車両環境においては、先行する
前記第1の車両環境において前記タイヤ異常関連量セン
サにより検出された少なくとも1つのタイヤ異常関連量
に基づいて現時点におけるそのタイヤ異常関連量を計算
し、いずれの車両環境においても、そのようにして取得
されたタイヤ異常関連量と基準値との比較により、前記
タイヤが異常であるか否かを判定する判定器とを含むタ
イヤ異常判定装置。
【0031】この装置においては、タイヤ異常関連量を
高い精度で検出することが困難な車両環境においては過
去における正常な検出値、すなわち、タイヤ異常関連量
を高い精度で検出することが可能である車両環境におい
て取得された検出値を考慮して現時点におけるタイヤ異
常関連量が計算される。
【0032】したがって、この装置によれば、タイヤ異
常関連量を高い精度で検出することが困難な車両環境に
おいては、過去における正常な検出値を有効に活用する
ことにより、タイヤ異常の有無の判定結果の信頼性を容
易に向上させ得る。 (19) 前記第2の車両環境が、前記第1の車両環境
に対し、前記タイヤの負荷が増加する側に予め設定され
ており、前記判定器が、その第2の車両環境において
は、前記タイヤの負荷が基準値を超えた場合に、そのタ
イヤの負荷が通常より大きいと判定する判定手段を含む
(12)ないし(18)項のいずれかに記載のタイヤ異
常判定装置。
【0033】前記(12)ないし(18)項のいずれか
に記載の装置を実施しても、第2の車両環境において
は、第1の車両環境におけるより高い信頼性を有するよ
うにタイヤ異常の有無を判定するすることは困難であ
る。
【0034】一方、タイヤ負荷が大きい領域において
は、小さい領域におけるより高い信頼性がタイヤ異常の
有無の判定結果に要望されるにもかかわらず、第2の車
両環境が、第1の車両環境に対し、タイヤ負荷が増加す
る側に予め設定されている場合には、タイヤ異常関連量
にもそれに基づく参照値にもできる限り依存しないで、
タイヤ異常の有無を判定することが要望される。
【0035】このような知見に基づき、本項に係る装置
においては、第2の車両環境においては、タイヤ負荷が
基準値を超えた場合に、そのタイヤ負荷が通常より大き
いと判定される。
【0036】したがって、この装置によれば、タイヤ異
常関連量またはそれに基づく参照値を高い精度で取得す
ることが困難である車両環境であっても、車両の運転者
に対し、タイヤの負荷が通常より大きいから、通常より
慎重に運転することが好ましいことを告知することが可
能となる。 (20) 前記タイヤの負荷が、前記車両の走行速度で
ある車速と、前記車輪の回転速度と、前記タイヤの接地
荷重との少なくとも1つにより表現される(19)項に
記載のタイヤ異常判定装置。 (21) 前記判定器が、前記タイヤ異常関連量センサ
による前記タイヤ異常関連量の検出値またはそれに基づ
く計算値である参照値と基準値との比較を、前記タイヤ
の負荷に基づいて行う比較手段を含む(12)ないし
(20)項のいずれかに記載のタイヤ異常判定装置。
【0037】この装置によれば、前記(12)ないし
(20)項のいずれかに記載の装置におけると同じ作用効
果に加えて、前記(1)項に記載の装置におけると同じ
作用効果が実現され得る。
【0038】この装置は、前記(2)ないし(11)項
のいずれかに記載の特徴的技術と組み合わせて実施する
ことが可能である。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、本発明のさらに具体的な一
実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0040】図1には、本実施形態に従うタイヤ異常判
定装置のハードウエア構成がブロック図で示されてい
る。このタイヤ異常判定装置は車両に搭載されている。
【0041】その車両は、それの前後左右にそれぞれに
車輪を備えている。車輪の総数は4つである。各車輪
は、よく知られているように、金属製のホイールに装着
されたゴム製のタイヤの内部に空気が圧力下に封入され
て構成されている。
【0042】図1に示すように、タイヤ異常判定装置
は、各車輪ごとに車輪速度センサ10を備えている。同
図において「FL」は左前輪、「FR」は右前輪、「R
L」は左後輪、「RR」は右後輪をそれぞれ意味してい
る。
【0043】各車輪速度センサ10は、よく知られてい
るように、各車輪の角速度を検出し、それに応じた車輪
速度信号を出力するセンサである。具体的には、車輪速
度センサ10は、電磁ピックアップであり、車輪と共に
回転するロータの外周に形成された多数の歯の通過に応
じて周期的に変化する電圧を発生する。
【0044】それら4つの車輪速度センサ10は、図1
に示すように、判定器20に電気的に接続されている。
この判定器20は、コンピュータ22を主体とし、車両
の各車輪ごとにタイヤ圧をタイヤ情報として推定する装
置である。
【0045】図2には、そのコンピュータ22のハード
ウエア構成がブロック図で概念的に示されている。コン
ピュータ22は、よく知られているように、CPU30
(プロセッサの一例)とROM32(メモリの一例)と
RAM34(メモリの一例)とがバス36により互いに
接続されるように構成されている。
【0046】ROM32には、図2に示すように、タイ
ヤ圧推定プログラム、タイヤ異常判定プログラムおよび
車速推定プログラムを始めとし、各種プログラムが予め
記憶されている。車速推定プログラムは、よく知られて
いるように、複数の車輪速度センサ10によりそれぞれ
検出された複数の車輪速度に基づいて車速Vを推定する
プログラムである。その推定された車速VはRAM34
にストアされる。タイヤ圧推定プログラムとタイヤ異常
判定プログラムとについては後に詳述する。
【0047】図1に示すように、判定器20には、さら
に、警報器40も接続されている。警報器40は、各車
輪ごとに、タイヤ圧が異常に低いことを運転者に視覚的
にまたは聴覚的に告知するために作動させられる。
【0048】この判定器20には、さらに、注意報器4
2も接続されている。注意報器42は、タイヤ圧Pは参
照しないが車速Vは参照することにより、その車速Vが
しきい車速V1以上である高速走行領域において作動さ
せられる。それにより、タイヤの実際の負荷が現在かな
り大きいことが予想されるから現在の車両運転状態を長
時間維持することを回避することが望ましい状況にある
ことを運転者に告知する。
【0049】図3には、前記タイヤ圧推定プログラムの
内容が概念的にフローチャートで表されている。このプ
ログラムは、1つの車輪について1つの車輪速度センサ
10を外乱オブザーバと共に利用することにより、各車
輪のタイヤ圧Pを推定する。
【0050】外乱オブザーバによりタイヤ圧Pを推定す
る技術は、例えば、特開2000−238516号公報
に開示されている。
【0051】その技術を概念的に説明すれば、外乱オブ
ザーバにおいては、車輪に対して、相対回転可能なリム
側部とベルト側部とが少なくともねじりばねにより互い
に連結されたタイヤモデルが想定されている。外乱オブ
ザーバにおいては、さらに、そのタイヤモデルに基づ
き、車輪の回転運動を記述する運動システムが想定され
ている。その運動システムにおいては、タイヤ圧Pの変
化に伴うねじりばねのばね定数の変化が車輪に対する外
乱とみなされる。外乱オブザーバにおいては、車輪速度
センサ10から出力される車輪速度信号がリム側部の角
速度を表す信号として用いられる。それにより、外乱オ
ブザーバは、外乱を運動システムの状態変数の1つとし
て推定し、それにより、タイヤ圧Pを推定する。
【0052】この外乱オブザーバは、車速V(車輪速度
に近似する)が変化可能な全体領域のすべてにわたって
タイヤ圧Pを高い精度で推定することは困難である。具
体的には、この外乱オブザーバは、車速Vが前記しきい
車速V1より低いしきい車速V0以下である部分領域にお
いては高い精度でタイヤ圧Pを推定可能であるが、しき
い車速V0より大きい部分領域においてはそのように高
い精度でタイヤ圧Pを推定することは困難である。すな
わち、本実施形態においては、第1の部分領域が高精度
推定領域として、前記第1の車両環境の一例に相当し、
第2の部分領域が低精度推定領域として、前記第2の車
両環境の一例に相当しているのである。
【0053】このタイヤ圧推定プログラムは、コンピュ
ータ22のCPU30により、各車輪ごとに繰り返し実
行される。
【0054】このタイヤ圧推定プログラムの各回の実行
時には、まず、ステップS11(以下、単に「S11」
で表す。他のステップについても同じとする。)におい
て、RAM34から現在の車速Vが読み込まれる。次
に、S12において、その読み込まれた車速Vが前記し
きい車速V0以下であるか否かが判定される。
【0055】今回は、その読み込まれた車速Vがしきい
車速V0以下であると仮定すれば、車速Vが高精度推定
領域にあるとして、S12の判定がYESとなる。その
後、S13ないしS15において、上記外乱オブザーバ
によりタイヤ圧Pが推定される。
【0056】具体的には、S13において、4つの車輪
のうちこのタイヤ圧推定プログラムの今回の実行対象で
ある実行対象車輪に関し、車輪速度センサ10から車輪
速度信号が取り込まれる。続いて、S14において、そ
の取り込まれた車輪速度信号に基づいて車輪速度V
**(**:FL,FR,RL,RR)が演算される。そ
の後、S15において、今回の実行対象車輪に関し、上
記演算された車輪速度V**に基づき、外乱オブザーバに
より、タイヤ圧Pが推定される。
【0057】続いて、S16において、その推定値がR
AM34にストアされる。RAM34には、最新の設定
複数個の推定値が時系列的にストアされるようになって
いる。以上で、このタイヤ圧推定プログラムの一回の実
行が終了する。
【0058】以上、現在の車速Vがしきい車速V0以下
である場合、すなわち、車速Vが高精度推定領域にある
場合を説明したが、現在の車速Vがしきい車速V0より
大きい場合、すなわち、車速Vが低精度推定領域にある
場合には、S12の判定がNOとなり、直ちにこのタイ
ヤ圧推定プログラムの一回の実行が終了する。これによ
り、今回は、外乱オブザーバによるタイヤ圧Pの推定が
省略される。
【0059】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、車速が「タイヤ負荷」を表現するパラメ
ータとして使用されており、車輪速度が「タイヤ異常関
連量」の一例を構成し、車輪速度センサが「タイヤ異常
関連量センサ」の一例を構成し、タイヤ圧Pが「参照
値」の一例を構成しているのである。
【0060】図4には、前記タイヤ異常判定プログラム
の内容が概念的にフローチャートで表されている。
【0061】まず、このタイヤ異常判定プログラムの概
要を説明すれば、このプログラムにおいては、タイヤ圧
Pと基準値との比較により、タイヤが異常であるか否か
が判定されるとともに、その比較が、タイヤの負荷に基
づいて行われる。
【0062】本実施形態においては、その基準値が、タ
イヤの負荷の増加に応じて段階的に増加するように予め
設定されている。具体的には、その基準値は、図5に2
本のグラフで示すように、タイヤの負荷の増加に応じて
増加するように予め設定されたタイヤ負荷応答基準タイ
ヤ圧と、そのタイヤの負荷の変化に応じて変化しないよ
うに予め設定されたタイヤ負荷不応答基準タイヤ圧との
組合せとして構成されるとともに、そのタイヤの負荷が
変化可能な全体領域のうちの第1の部分領域においては
タイヤ負荷応答基準タイヤ圧が、第2の部分領域におい
てはタイヤ負荷不応答基準タイヤ圧がそれぞれ選択され
るように構成されている。
【0063】それら第1および第2の部分領域相互の関
係を説明すれば、本実施形態においては、第1の部分領
域が、第2の部分領域に対し、タイヤの負荷が増加する
側に予め設定されている。図5に示すように、第1の部
分領域は高負荷領域、第2の部分領域は低負荷領域とさ
れているのである。
【0064】さらに、本実施形態においては、それらタ
イヤ負荷応答基準タイヤ圧とタイヤ負荷不応答基準タイ
ヤ圧との関係が、高負荷領域においては、前記基準値と
して選択されるタイヤ負荷応答基準タイヤ圧の方が、選
択されない負荷不応答基準タイヤ圧より高く、一方、低
い負荷領域においては、基準値として選択されるタイヤ
負荷不応答基準タイヤ圧の方が、選択されないタイヤ負
荷応答基準タイヤ圧より高いものに設定されている。
【0065】さらにまた、本実施形態においては、図6
にグラフで示すように、それらタイヤ負荷応答基準タイ
ヤ圧およびタイヤ負荷不応答基準タイヤ圧が、主に、タ
イヤ圧Pに関する上しきいタイヤ圧PHIと、それより低
い下しきいタイヤ圧PLOとにより近似的に表現されてい
る。それら上しきいタイヤ圧PHIと下しきいタイヤ圧P
LOとは、いずれも、タイヤ圧の標準値である標準タイヤ
圧PSTDより低い唯一の値を有する固定値である。そし
て、本実施形態においては、タイヤ負荷不応答基準タイ
ヤ圧は、車速Vの変化にかかわらず常に下しきいタイヤ
圧PLOに一致する固定基準タイヤ圧PFIXとして表現さ
れる。一方、タイヤ負荷応答基準タイヤ圧は、車速Vの
増加に応じて増加する可変基準タイヤ圧PVALとして表
現される。
【0066】本実施形態においては、その可変基準タイ
ヤ圧PVALは、図6に示すように、車速Vに関する下し
きい車速VLOにおいては下しきいタイヤ圧PLOに一致
し、その下しきい車速VLOから上しきい車速VHIまでの
領域においては、下しきいタイヤ圧PLOから上しきいタ
イヤ圧PHIまで、車速Vに対して比例的に増加し、その
後、上しきいタイヤ圧PHIに一致する。
【0067】それら固定基準タイヤ圧PFIXと可変基準
タイヤ圧PVALとの関係を説明すれば、車速Vが下しき
い車速VLO以上である第1の部分領域においては、図6
に示すように、可変基準タイヤ圧PVALの方が固定基準
タイヤ圧PFIXより高いが、車速Vが下しきい車速VLO
より小さい第2の部分領域においては、図示しないが、
固定基準タイヤ圧PFIXの方が可変基準タイヤ圧PVAL
り高い。
【0068】以上の説明から明らかなように、本実施形
態においては、車速Vが下しきい車速VLO以上である第
1の部分領域が図5における「高負荷領域」に相当し、
車速Vが下しきい車速VLOより小さい第2の部分領域が
同図における「低負荷領域」に相当しているのである。
【0069】さらに、本実施形態においては、下しきい
車速VLOと上しきい車速VHIとが、図6に示すように、
いずれも、前記しきい車速V0(高精度推定領域と低精
度推定領域とを仕切る車速Vの値)より小さい値をとる
ように設定されている。
【0070】以上、このタイヤ異常判定プログラムの概
要を図5および図6を参照しつつ説明したが、次に、こ
のプログラムの内容を図4のフローチャートを参照しつ
つ説明する。
【0071】このタイヤ異常判定プログラムは、前記タ
イヤ圧推定プログラムと同様に、コンピュータ22のC
PU30により各車輪ごとに繰り返し実行される。
【0072】各回の実行時には、まず、S51におい
て、RAM34から現在の車速Vが読み込まれる。次
に、S52において、その読み込まれた車速Vが前記し
きい車速V0以下であるか否かが判定される。
【0073】今回は、その読み込まれた車速Vがしきい
車速V0以下であると仮定すれば、車速Vが高精度推定
領域にあるとして、S52の判定がYESとなる。その
後、S53において、前記外乱オブザーバによるタイヤ
圧Pの現在の推定値がRAM34から読み込まれる。続
いて、S54において、その読み込まれた推定値が以下
のステップにおいて使用されるタイヤ圧Pとされる。
【0074】これに対して、今回は、その読み込まれた
車速Vがしきい車速V0より大きいと仮定すれば、車速
Vが低精度推定領域にあるとして、S52の判定がNO
となる。その後、S55において、前記外乱オブザーバ
によるタイヤ圧Pの過去の少なくとも1つの推定値がR
AM34から読み込まれる。続いて、S56において、
その読み込まれた過去の少なくとも1つの推定値に基づ
き、現在のタイヤ圧Pが予想される。
【0075】その現在のタイヤ圧Pの予想値は、それの
一例においては、過去の複数の推定値(高精度推定領域
において取得されたもの)に対して平均化処理を行うこ
とにより取得することができる。
【0076】その現在のタイヤ圧Pの予想値は、それの
別の例においては、過去の複数の推定値の時間的変化傾
向を考慮することにより取得される。この例において
は、例えば、過去の複数の推定値の時系列が近似させら
れる1本の直線を定義する関数式であって時刻を変数と
するものが生成され、その生成された関数式に現在時刻
が代入されることにより、その1本の直線の延長上に、
現在のタイヤ圧Pが予想される。
【0077】その後、S57において、そのようにして
取得された予想値が、以下のステップにおいて使用され
るタイヤ圧Pとされる。
【0078】いずれの場合においても、その後、S58
において、現在のタイヤ圧Pが前記下しきいタイヤ圧P
LO以下であるか否かが判定される。今回は、下しきいタ
イヤ圧PLO以下ではないと仮定すれば、判定がNOとな
り、S59に移行する。
【0079】このS59においては、現在のタイヤ圧P
が前記上しきいタイヤ圧PHI以下であるか否かが判定さ
れる。今回は、上しきいタイヤ圧PHI以下でもないと仮
定すれば、判定がNOとなり、S60に移行する。
【0080】このS60においては、実際車速Vの可変
しきい車速Vthからの偏差である車速偏差ΔVの合計値
Σが0にリセットされる。それら可変しきい車速Vth
よび合計値Σの機能は後に説明する。その合計値ΣはR
AM34にストアされる。
【0081】その後、S61において、現在の車速Vが
前記しきい車速V1以上であるか否かが判定される。今
回は、しきい車速V1以上ではないと仮定すれば、判定
がNOとなり、S62において、警報器40と注意報器
42とに対してそれらの作動を解除するための信号が出
力される。これに対して、現在の車速Vがしきい車速V
1以上であると仮定すれば、S61の判定がYESとな
り、S68において、注意報器42が作動させられ、そ
れにより、車両の運転者に対し、タイヤの実際の負荷が
現在かなり大きいことが予想されるから現在の車両運転
状態を長時間維持することを回避することが望ましい状
況にあることが告知される。いずれの場合にも、以上
で、このタイヤ異常判定プログラムの一回の実行が終了
する。
【0082】これに対して、現在のタイヤ圧Pが下しき
いタイヤ圧PLO以下である場合には、S58の判定がY
ESとなり、S63において、警報器40が作動させら
れ、それにより、車両の運転者に対し、タイヤ圧Pが現
在異常に低いことが告知される。以上で、このタイヤ異
常判定プログラムの一回の実行が終了する。
【0083】また、現在のタイヤ圧Pが下しきいタイヤ
圧PLO以下ではないが、上しきいタイヤ圧PHI以下であ
る場合には、S58の判定はNO、S59の判定はYE
Sとなり、S64に移行する。
【0084】このS64においては、現在のタイヤ圧P
に応じて前記可変しきい車速Vthが決定される。この可
変しきい車速Vthは、現在のタイヤ圧Pが前記可変基準
タイヤ圧PVAL以下となるときにおける車速Vを意味す
る。
【0085】この可変しきい車速Vthは、下しきい車速
LOと上しきい車速VHIとの間におけるいずれかの値と
され、具体的には、この可変しきい車速Vthが下しきい
タイヤ圧PLOと上しきいタイヤ圧PHIとの間における区
間を内分する比率と同じ比率で、下しきい車速VLOと上
しきい車速VHIとの間における区間を内分する車速Vが
演算され、その演算値がその可変しきい車速Vthとされ
る。
【0086】その後、S65において、現在の車速V
が、その決定された可変しきい車速V th以下であるか否
かが判定される。現在のタイヤ圧Pが可変基準タイヤ圧
VAL以下ではないと仮定すれば、S65の判定がNO
となり、S60に移行する。これに対して、現在の車速
Vが可変しきい車速Vth以下であると仮定すれば、S6
5の判定がYESとなり、S66において、現在の車速
Vの可変しきい車速Vthからの偏差である偏差車速ΔV
(=V−Vth)が演算されるとともに、その演算値が、
RAM34から読み出された現在の合計値Σに加算され
る。これにより、合計値ΣがRAM34において更新さ
れる。
【0087】その後、S67において、現在の合計値Σ
が基準合計値Σ0以上であるか否かが判定される。今回
は、基準合計値Σ0以上ではないと仮定すれば、判定が
NOとなり、S61に移行する。
【0088】続いて、このタイヤ異常判定プログラムの
実行が繰り返され、それに伴い、S58,S59,S6
4,S65,S66およびS67の実行が繰り返され、
その結果、現在の合計値Σが基準合計値Σ0以上となれ
ば、S67の判定がYESとなる。この場合には、その
後、S63において、警報器40が作動させられ、それ
により、車両の運転者に対し、タイヤ圧が現在異常に低
いことが告知される。以上で、このタイヤ異常判定プロ
グラムの一回の実行が終了する。
【0089】なお付言すれば、本実施形態においては、
図6に示すように、下しきい車速V LOも上しきい車速V
HIも、高精度推定領域と低精度推定領域とを仕切るしき
い車速V0より小さい値に設定されているが、例えば、
図7に示すように、下しきい車速VLOははしきい車速V
0より小さいが、上しきい車速VHIはしきい車速V0と一
致するように設定したり、図8に示すように、下しきい
車速VLOはしきい車速V0と一致するが、上しきい車速
HIはしきい車速V0より大きくなるように設定するこ
とが可能である。
【0090】さらに付言すれば、本実施形態において
は、図6に示すように、可変基準タイヤ圧PVALを表す
グラフのうち固定基準タイヤ圧PFIXを表すグラフとの
連結部が車速Vの増加に応じて連続的に増加するように
設定されている。可変基準タイヤ圧PVALが、車速Vの
増加につれて増加した後、上しきいタイヤ圧PHIで維持
されるように設定されているのである。
【0091】しかし、可変基準タイヤ圧PVALをこのよ
うに設定することは本発明を実施する上において不可欠
ではなく、例えば、図9にグラフで示すように、車速V
がしきい車速V0より小さい値からそのしきい車速V0
等しい値に増加すると直ちに、下しきいタイヤ圧PLO
ら上しきいタイヤ圧PHIに増加するように可変基準タイ
ヤ圧PVALを設定する態様で本発明を実施することが可
能である。
【0092】同じ車速Vにおいてタイヤ圧Pの推定値ま
たは予想値(以下、「計算値」と総称する。)が変動す
ると、上記実施形態においては、タイヤ圧Pの計算値が
可変基準タイヤ圧PVAL以上である状態とそれより低い
状態とを交互に頻繁に繰り返す可能性がある。したがっ
て、タイヤが異常であるという判定と異常ではないとい
う判定とが頻繁に繰り返される可能性がある。
【0093】これに対して、上記態様においては、同じ
車速Vにおいてタイヤ圧Pの計算値が変動しても、タイ
ヤ圧Pの計算値が可変基準タイヤ圧PVAL以上である状
態とそれより低い状態とを交互に頻繁に繰り返す可能性
が低減される。したがって、タイヤが異常であるという
判定と異常ではないという判定とが頻繁に繰り返される
可能性が低減され、その結果、その判定結果の信頼性が
向上する。
【0094】さらに付言すれば、本実施形態において
は、タイヤの負荷が車速Vにより評価されるようになっ
ているが、例えば、車軸からタイヤに上下方向に作用す
る荷重である車輪荷重を検出する荷重検出器を車両に搭
載し、その荷重検出器により検出された車輪荷重により
タイヤの負荷を評価するようにして本発明を実施するこ
とが可能である。さらに、それら車速Vと車輪荷重との
双方によりタイヤの負荷を評価するようにして本発明を
実施することも可能であり、このようにすれば、タイヤ
の負荷の評価精度を容易に向上させ得る。
【0095】さらに付言すれば、本実施形態において
は、車速Vが変化可能な全体領域のうち、それを低速領
域と高速領域とに分けた場合のその高速領域のみに低精
度推定領域が存在するようになっているが、その全体領
域を低速領域と中速領域と高速領域とに分けた場合のそ
れら低速領域と高速領域とにそれぞれ低精度推定領域が
存在する形式のタイヤ異常判定装置にも本発明を適用す
ることが可能である。この場合、低速領域においてタイ
ヤ圧Pの予想値を、それに先行する中速領域、すなわ
ち、高精度推定領域においてタイヤ圧Pについて取得さ
れた少なくとも1つの推定値に基づき、前述のようにし
て取得することが可能である。
【0096】さらに付言すれば、本実施形態において
は、図4のS59以下のステップの実行内容が複数の場
合に分類され、該当する場合に応じて警報器40および
注意報器42の作動状態が制御される。以下、このこと
を具体的に説明する。 (1)タイヤ圧Pが上しきいタイヤ圧PHIより高く、か
つ、車速Vがしきい車速V1より小さい場合この場合、
警報器40も注意報器42も作動させられない。 (2)タイヤ圧Pが上しきいタイヤ圧PHIより高く、か
つ、車速Vがしきい車速V1以上である場合この場合、
注意報器42のみが作動させられる。 (3)タイヤ圧Pが上しきいタイヤ圧PHI以下であり、
かつ、車速Vが可変しきい車速Vth以下であり、かつ、
車速Vがしきい車速V1より小さい場合この場合、警報
器40も注意報器42も作動させられない。 (4)タイヤ圧Pが上しきいタイヤ圧PHI以下であり、
かつ、車速Vが可変しきい車速Vth以下であり、かつ、
車速Vがしきい車速V1以上である場合この場合、注意
報器42のみが作動させられる。
【0097】なお、可変しきい車速Vthがしきい車速V
1より小さい値に設定されている状況においては、この
(4)の場合は存在しない。 (5)タイヤ圧Pが上しきいタイヤ圧PHI以下であり、
かつ、車速Vが可変しきい車速Vthより大きく、かつ、
合計値Σが基準合計値Σ0より小さく、かつ、車速Vが
しきい車速V1より小さい場合この場合、警報器40も
注意報器42も作動させられない。 (6)タイヤ圧Pが上しきいタイヤ圧PHI以下であり、
かつ、車速Vが可変しきい車速Vthより大きく、かつ、
合計値Σが基準合計値Σ0より小さく、かつ、車速Vが
しきい車速V1以上である場合この場合、注意報器42
のみが作動させられる。 (7)タイヤ圧Pが上しきいタイヤ圧PHI以下であり、
かつ、車速Vが可変しきい車速Vthより大きく、かつ、
合計値Σが基準合計値Σ0以上であり、かつ、車速Vが
しきい車速V1より小さい場合この場合、警報器40の
みが作動させられる。 (8)タイヤ圧Pが上しきいタイヤ圧PHI以下であり、
かつ、車速Vが可変しきい車速Vthより大きく、かつ、
合計値Σが基準合計値Σ0以上であり、かつ、車速Vが
しきい車速V1以上である場合この場合、警報器40の
みが作動させられる。
【0098】それら8つの場合のうち、警報器40が作
動させられる場合を選択する態様や、注意報器42が作
動させられる場合を選択する態様は種々のものを採用し
得る。例えば、上記(6)の場合を、注意報器42に代
えて警報器40が作動させられる場合に変更するように
して本発明を実施することが可能である。このようにす
れば、合計値Σが基準合計値Σ0に到達するのを待っ
て、注意報器42の作動から警報器40の作動に切り換
えられる本実施形態に比較し、車速Vがしきい車速V1
以上であることを条件に警報器40が作動させられるこ
とになるため、運転者に対する早期警報が可能となる。
【0099】また、上記(4)の場合を、警報器40も
注意報器42も作動させられない場合に変更するように
して本発明を実施することも可能である。このようにす
れば、車速Vが可変しきい車速Vth以下である限り、た
とえ車速Vがしきい車速V1以上となっても、注意報器
42が作動させられないことになるため、本来であれば
運転者に対して注意を促すべきでない場合に注意が促さ
れてしまう事態の発生を回避することが可能となる。
【0100】さらに付言すれば、本実施形態において
は、4つの車輪が装着された車両(例えば、乗用車)に
対してタイヤ異常の有無の判定が行われるようになって
いるが、それより多い数の車輪が装着された車両(例え
ば、大型車両)に対してタイヤ異常の有無の判定が行わ
れるようにして本発明を実施することが可能である。
【0101】以上、本発明の一実施形態を図面に基づい
て詳細に説明したが、これは例示であり、前記[課題を
解決するための手段および発明の効果]の欄に記載の態
様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、
改良を施した形態で本発明を実施することが可能であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に従うタイヤ異常判定装置
のハードウエア構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】図1における判定器20におけるコンピュータ
22のハードウエア構成を概念的に示すブロック図であ
る。
【図3】図2におけるタイヤ圧推定プログラムの内容を
概念的に表すフローチャートである。
【図4】図2におけるタイヤ異常判定プログラムの内容
を概念的に表すフローチャートである。
【図5】上記実施形態におけるタイヤ負荷応答基準タイ
ヤ圧とタイヤ負荷不応答基準タイヤ圧との関係を示すグ
ラフである。
【図6】図4のタイヤ異常判定プログラムにおける可変
基準タイヤ圧PVALと固定基準タイヤ圧PFIXとの関係の
一設定例を示すグラフである。
【図7】図4のタイヤ異常判定プログラムにおける可変
基準タイヤ圧PVALと固定基準タイヤ圧PFIXとの関係の
別の設定例を示すグラフである。
【図8】図4のタイヤ異常判定プログラムにおける可変
基準タイヤ圧PVALと固定基準タイヤ圧PFIXとの関係の
さらに別の設定例を示すグラフである。
【図9】図4のタイヤ異常判定プログラムにおける可変
基準タイヤ圧PVALと固定基準タイヤ圧PFIXとの関係の
さらに別の設定例を示すグラフである。
【符号の説明】
10 車輪速度センサ 20 判定器 22 コンピュータ 40 警報器 42 注意報器

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ホイールに装着されたタイヤの内部に空
    気が圧力下に封入されて構成された車輪を備えた車両に
    設けられ、前記タイヤが異常であるか否かを判定する装
    置であって、 前記タイヤが異常であるか否かを判定するために利用可
    能なタイヤ異常関連量を検出するタイヤ異常関連量セン
    サと、 そのタイヤ異常関連量センサによる前記タイヤ異常関連
    量の検出値またはそれに基づく計算値である参照値と基
    準値との比較により、前記タイヤが異常であるか否かを
    判定する判定器であって、前記比較を、前記タイヤの負
    荷に基づいて行うものとを含むタイヤ異常判定装置。
  2. 【請求項2】 前記基準値が、前記タイヤの負荷の増加
    に応じて連続的にまたは段階的に増加するように予め設
    定されている請求項1に記載のタイヤ異常判定装置。
  3. 【請求項3】 前記基準値が、前記タイヤの負荷の増加
    に応じて増加するように予め設定されたタイヤ負荷応答
    基準値と、そのタイヤの負荷の変化に応じて変化しない
    ように予め設定されたタイヤ負荷不応答基準値との組合
    せとして構成されるとともに、そのタイヤの負荷が変化
    可能な全体領域のうちの第1の部分領域においては前記
    タイヤ負荷応答基準値が、第2の部分領域においては前
    記タイヤ負荷不応答基準値がそれぞれ選択されるように
    構成されている請求項1または2に記載のタイヤ異常判
    定装置。
  4. 【請求項4】 前記タイヤ負荷応答基準値と前記タイヤ
    負荷不応答基準値との関係が、前記第1の部分領域にお
    いては、前記基準値として選択されるタイヤ負荷応答基
    準値の方が、選択されない負荷不応答基準値より大き
    く、前記第2の部分領域においては、基準値として選択
    されるタイヤ負荷不応答基準値の方が、選択されないタ
    イヤ負荷応答基準値より大きいものに設定されている請
    求項3に記載のタイヤ異常判定装置。
  5. 【請求項5】 前記第1の部分領域が、前記第2の部分
    領域に対し、前記タイヤの負荷が増加する側に予め設定
    されている請求項3または4に記載のタイヤ異常判定装
    置。
  6. 【請求項6】 ホイールに装着されたタイヤの内部に空
    気が圧力下に封入されて構成された車輪を備えた車両に
    設けられ、前記タイヤが異常であるか否かを判定する装
    置であって、 前記タイヤが異常であるか否かを判定するために利用可
    能な物理量であるタイヤ異常関連量を検出するタイヤ異
    常関連量センサと、 そのタイヤ異常関連量センサによる前記タイヤ異常関連
    量の検出値に基づき、前記タイヤが異常であるか否かを
    判定するために基準値と比較されるべき参照値を、第1
    の車両環境においては高い精度で、第2の車両環境にお
    いては低い精度で計算し、その計算された参照値と前記
    基準値との比較により、前記タイヤが異常であるか否か
    を判定する判定器であって、前記第2の車両環境におい
    ては、前記参照値を、先行する前記第1の車両環境にお
    いて計算された少なくとも1つの参照値に基づいて計算
    するものとを含むタイヤ異常判定装置。
  7. 【請求項7】 前記第2の車両環境が、前記第1の車両
    環境に対し、前記タイヤの負荷が増加する側に予め設定
    されており、 前記判定器が、その第2の車両環境においては、前記タ
    イヤの負荷が基準値を超えた場合に、そのタイヤの負荷
    が通常より大きいと判定する判定手段を含む請求項6に
    記載のタイヤ異常判定装置。
  8. 【請求項8】 前記判定器が、前記タイヤ異常関連量セ
    ンサによる前記タイヤ異常関連量の検出値またはそれに
    基づく計算値である参照値と基準値との比較を、前記タ
    イヤの負荷に基づいて行う比較手段を含む請求項6また
    は7に記載のタイヤ異常判定装置。
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