JP2002267652A - 窒素同位体比の測定方法 - Google Patents
窒素同位体比の測定方法Info
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Abstract
化および迅速化を図る。 【解決手段】 硝酸イオンおよびアンモニウムイオンを
含む試料水溶液(S1)を蒸留して(S2)、蒸留によ
り得られたアンモニアを凝縮して留出液を得て(S
3)、留出液にテトラフェニルホウ酸ナトリウムを加え
てテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩を沈殿生成して
(S4)、濾過により分離回収して(S5)、その窒素
同位体比を測定する(S7)一方、試料水溶液を蒸留し
た残りの溶液中(S8)の硝酸イオンを還元蒸留して
(S9)、還元蒸留により得られたアンモニアを凝縮し
て留出液を得て(S10)、留出液にテトラフェニルホ
ウ酸ナトリウムを加えてテトラフェニルホウ酸アンモニ
ウム塩を沈殿生成して(S12)、濾過により分離回収
して(S13)、その窒素同位体比を測定する(S1
5)。
Description
化合物、特に窒素酸化物、硝酸およびアンモニアの窒素
同位体比を測定する方法に関する。さらに詳述すると、
本発明は元素分析計を連結した質量分析計により窒素同
位体比を測定するための前処理に関する。
化物、硝酸およびアンモニアの窒素同位体比(15N/
14N)は発生源ごとに異なることが知られている。こ
れら窒素化合物は酸性雨や富栄養化の原因となるので、
窒素同位体比の変動を利用することにより、それらの発
生源や反応メカニズムを解明することが進められてい
る。また、窒素酸化物の窒素同位体比が発生源ごとに異
なる性質を利用して、石炭燃焼で窒素酸化物とともに大
気中に排出される水銀等のガス状微量物質の寄与率を推
定することが可能になると考えられる。
モニアの窒素同位体比の測定方法としては、環境試料中
の窒素酸化物、硝酸およびアンモニアを水溶液に溶解さ
せて生じた硝酸イオンとアンモニウムイオンを蒸留法や
イオン交換法などで分離した後、得られた水溶液をいわ
ゆる蒸発法により前処理してから質量分析計で窒素同位
体比を測定していた。この蒸発法は、水溶液の水分を全
て蒸発させて残渣を掻き取り集めて質量分析計に測定さ
せるか、あるいは水溶液の水分を全て蒸発させずに残っ
た少量の水溶液の一部をスズカプセル(質量分析計に連
結させた元素分析計に試料を導入するために使用)に移
して液体窒素で冷却し凍結乾燥してから質量分析計に測
定させるものである。
た蒸発法では、水分を全て蒸発させるために処理に長時
間を要してしまう。また、蒸発させる水溶液中の窒素化
合物の含有量が非常に少なく、この窒素化合物を残渣と
して掻き取って集めているので、作業が面倒になってし
まう。また、蒸発で濃縮した水溶液の一部を冷却して凍
結乾燥するときは、冷却のために液体窒素等を使用しな
ければならず作業性が悪い。
迅速化を図れる窒素同位体比の測定方法を提供すること
を目的とする。
めに請求項1記載の窒素同位体比の測定方法は、アンモ
ニウムイオンを含む試料水溶液を蒸留して、蒸留により
得られたアンモニアを含む水蒸気を凝縮して酸性の溶液
に溶かして留出液を得て、留出液にテトラフェニルホウ
酸ナトリウムを加えてテトラフェニルホウ酸アンモニウ
ム塩を沈殿生成して、このテトラフェニルホウ酸アンモ
ニウム塩を濾過により分離回収して、得られたテトラフ
ェニルホウ酸アンモニウム塩の窒素同位体比を測定する
ようにしている。
方法は、硝酸イオンを含む試料水溶液を還元蒸留して、
還元蒸留により得られたアンモニアを含む水蒸気を凝縮
して酸性の溶液に溶かして留出液を得て、留出液にテト
ラフェニルホウ酸ナトリウムを加えてテトラフェニルホ
ウ酸アンモニウム塩を沈殿生成して、このテトラフェニ
ルホウ酸アンモニウム塩を濾過により分離回収して、得
られたテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩の窒素同位
体比を測定するようにしている。
定方法は、硝酸イオンおよびアンモニウムイオンを含む
試料水溶液を蒸留して、蒸留により得られたアンモニア
を含む水蒸気を凝縮して酸性の溶液に溶かして留出液を
得て、留出液にテトラフェニルホウ酸ナトリウムを加え
てテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩を沈殿生成し
て、このテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩を濾過に
より分離回収して、得られたテトラフェニルホウ酸アン
モニウム塩の窒素同位体比を測定する一方、試料水溶液
を蒸留した残りの溶液中の硝酸イオンを還元蒸留して、
還元蒸留により得られたアンモニアを含む水蒸気を凝縮
して酸性の溶液に溶かして留出液を得て、留出液にテト
ラフェニルホウ酸ナトリウムを加えてテトラフェニルホ
ウ酸アンモニウム塩を沈殿生成して、このテトラフェニ
ルホウ酸アンモニウム塩を濾過により分離回収して、得
られたテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩の窒素同位
体比を測定するようにしている。
ので、従来の蒸発法のように全ての水分を蒸発させる必
要が無く処理時間を大幅に短縮することができる。ま
た、硝酸イオンあるいはアンモニウムイオンを最終的に
テトラフェニルホウ酸アンモニウム塩として沈殿させて
濾過して取り出してるので、従来のように残渣を掻き取
って集めたり蒸発で濃縮した水溶液の一部を液体窒素に
より凍結乾燥する必要が無く作業性が良くなる。さら
に、テトラフェニルホウ酸アンモニウム塩の窒素同位体
比を測定しているので、従来の硝酸塩あるいはアンモニ
ウム塩の窒素同位体比を測定する場合に比べて、同じ量
の窒素を測定するのであれば質量分析計に測定させる物
質の量を多くすることができ、計量が容易になって作業
性を高めることができる。
実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。図1に本
発明の窒素同位体比の測定方法の実施形態の一例を示
す。この窒素同位体比の測定方法では、硝酸イオンおよ
びアンモニウムイオンを含む試料水溶液を蒸留して、ア
ンモニウムイオンを含む留出液にテトラフェニルホウ酸
ナトリウムを加えてテトラフェニルホウ酸アンモニウム
塩を沈殿生成してアンモニアに由来する窒素同位体比を
測定すると共に、試料水溶液を蒸留した残りの溶液中の
硝酸イオンを還元蒸留して、アンモニウムイオンを含む
留出液にテトラフェニルホウ酸ナトリウムを加えてテト
ラフェニルホウ酸アンモニウム塩を沈殿生成して硝酸に
由来する窒素同位体比を測定するようにしている。この
ため、沈殿法を用いているので、従来の蒸発法のように
全ての水分を蒸発させる必要が無く処理時間を大幅に短
縮することができる。また、硝酸イオンおよびアンモニ
ウムイオンを最終的にテトラフェニルホウ酸アンモニウ
ム塩として沈殿させて濾過して取り出してるので、従来
のように残渣を掻き取って集めたり蒸発で濃縮した水溶
液の一部を液体窒素により凍結乾燥する必要が無く作業
性が良くなる。
に示すフローチャートに基づいて説明する。
びアンモニアを水または酸性・アルカリ性の水溶液に溶
解させて試料水溶液を生成させる(ステップ1)。環境
試料が大気であれば、窒素酸化物および硝酸は大気を過
酸化水素等の酸化剤を含むアルカリ性水溶液中でバブリ
ングすることにより硝酸イオンを含む試料水溶液、アン
モニアは大気を酸性水溶液中でバブリングすることによ
りアンモニウムイオンを含む試料水溶液がそれぞれ生成
される。また、環境試料が海水や陸水(湖水、河川水、
地下水など)や雨水であれば、それをそのまま試料水溶
液とする。あるいは、環境試料が土壌や大気粉塵であれ
ば、その土壌や大気粉塵を水で抽出することにより硝酸
イオンとアンモニウムイオンを含む試料水溶液を生成す
る。
(ステップ2)。これにより、アンモニウムイオンがガ
ス化して試料水溶液から蒸発すると共に硝酸イオンが残
留するので、アンモニアが試料水溶液から分離される。
により凝縮されて水溶液となる。この溶液は硫酸の溶液
に添加されて留出液とされる(ステップ3)。ここで、
アンモニウムイオンを含む溶液はアルカリ性であるた
め、酸性の溶液に容易に溶解することができる。使用さ
れる酸性の溶液の種類としては窒素源を含有しないもの
であれば特に限定されず、硫酸以外に塩酸等の無機酸を
用いることができ、またその酸濃度としては50mmo
l/L程度であることが好ましい。
トリウム水溶液を加えて、テトラフェニルホウ酸アンモ
ニウム塩を沈殿生成する(ステップ4)。このテトラフ
ェニルホウ酸アンモニウム塩を濾過により分離回収して
乾燥させる(ステップ5)。テトラフェニルホウ酸アン
モニウム塩を得てから(ステップ6)、その窒素同位体
比を質量分析計によって測定する(ステップ7)。これ
により、試料水溶液中のアンモニウムイオンに由来する
窒素同位体比を測定することができる。
場合には、テトラフェニルホウ酸アンモニウム塩が一部
しか沈殿しないことがある。この場合でも、図2に示す
ように例えば沈殿率が約60%以上の範囲でほぼ等しい
窒素同位体比を測定することができたので、必ずしも全
量が沈殿しなくても高精度の測定を確保できる。よっ
て、無理に全量を沈殿させる必要が無いので、窒素同位
体比の測定の簡易化および迅速化を図ることができる。
た残りの溶液(ステップ8)を還元蒸留する(ステップ
9)。この還元蒸留は還元触媒の存在下、例えばデバル
ダ合金(Cu 50%、Al 45%、Zn 5%の合
金で、例えば和光純薬工業製)等の触媒金属を利用して
行う。これにより、この溶液に含まれる硝酸イオンが還
元されてアンモニウムイオンになる。なお、還元触媒と
してはデバルダ合金には限られず、他の既存あるいは新
規のものを使用することができる。さらに、アンモニウ
ムイオンがガス化して溶液から蒸発することにより、ア
ンモニウムイオンが溶液から分離される(ステップ1
0)。そして、蒸留および還元蒸留によっても取り出さ
れなかった成分は残渣になる(ステップ11)。
冷却により凝縮されて液化される。この溶液は硫酸の溶
液に添加されて留出液とされる。そして、留出液にテト
ラフェニルホウ酸ナトリウム水溶液を加えて、テトラフ
ェニルホウ酸アンモニウム塩を沈殿生成する(ステップ
12)。このテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩を濾
過により分離回収して乾燥させる(ステップ13)。テ
トラフェニルホウ酸アンモニウム塩を得てから(ステッ
プ14)、その窒素同位体比を質量分析計によって測定
する(ステップ15)。これにより、試料水溶液中の硝
酸イオンに由来する窒素同位体比を測定することができ
る。
は、テトラフェニルホウ酸アンモニウム塩が一部しか沈
殿しないことがある。この場合でも、上述したアンモニ
ウムイオンが低濃度の場合と同様に、必ずしも全量が沈
殿しなくても高精度の測定を確保できる。
ば、試料の窒素同位体比を測定するまでの前処理に要す
る時間が2時間程度になり、従来の蒸発法での所要時間
(約4時間)に比べて大幅に短縮することができる。
施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発
明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能で
ある。例えば、本実施形態では試料水溶液の硝酸および
アンモニアの窒素同位体比を測定しているが、これには
限られず一方のみを測定するようにしても良い。例えば
硝酸の窒素同位体比を測定する場合は、図1に示すフロ
ーチャートのステップ3〜7を省略することができる。
また、アンモニウムイオンの窒素同位体比を測定する場
合は、同フローチャートのステップ8〜15を省略する
ことができる。したがって、必要な測定作業のみを行う
ようにできるので、無駄な作業を省略して作業性を高め
ることができる。
した。ここでは、JIS(K0102)の工業排水の検
査用に設計された蒸留装置を利用した。また、窒素同位
体比の測定のために、元素分析計(商品名:カルロエル
バEA1108、ファイソンズ社製)にコンフローII
インターフェースで連結された質量分析計(商品名:フ
ィニガンマット Delta-plus、サーモクエスト社製)を
利用した。
イオンと硝酸イオンの各濃度をイオンクロマトグラフィ
ーで測定した。そして、蒸留装置により試料水溶液を蒸
留した。
試験方法に基づいて行った。まず試料水溶液を500m
lフラスコに注いで、300g/Lの水酸化ナトリウム
10mlを添加して溶液をアルカリ化した。この溶液に
脱イオン水を添加して、350mlにした。そして、こ
の溶液を蒸留し、25mmol/Lの硫酸溶液50ml
を入れたメスシリンダにアンモニウムイオンを含む約1
40mlの留出液が得られるまで行われた。
却した後、脱イオン水を添加して350mlにした。こ
の溶液に3gのデバルダ合金を添加して、硝酸イオンを
還元した。そして、この還元した溶液を蒸留してアンモ
ニアを蒸留させて硫酸溶液に留出させた。
ニウムイオンを含む硫酸酸性の留出液と次の還元蒸留に
より得られたアンモニウムイオンを含む硫酸酸性の留出
液とのそれぞれに脱イオン水を添加して200mlにし
た。これにより、試料水溶液のアンモニウムイオンを分
離した200mlの硫酸酸性溶液(pH2.0)と硝酸
イオンを分離した200mlの硫酸酸性溶液(pH2.
0)とを得た。
ラフェニルホウ酸ナトリウム50mlを添加して30分
かき混ぜた。これにより、アンモニウムイオンがテトラ
フェニルホウ酸アンモニウム塩として沈殿した。ここ
で、沈殿生成は約30分で平衡に到達することが判明し
た。また、テトラフェニルホウ酸アンモニウム塩の沈殿
率は、溶液中のアンモニウムイオンの濃度およびテトラ
フェニルホウ酸ナトリウムの濃度に依存するが、硫酸酸
性溶液中でテトラフェニルホウ酸が析出することはな
い。約0.02mol/Lのテトラフェニルホウ酸ナト
リウムが添加されていればアンモニウムイオンの濃度の
みに依存する。
ム塩を0.22μmのフィルタで濾過して回収し、約6
0℃で乾燥させた。乾燥したテトラフェニルホウ酸アン
モニウム塩を2.5mgだけ量り取ってスズカプセルに
封入した。そして、テトラフェニルホウ酸アンモニウム
塩をスズカプセルごと燃焼して、元素分析計および質量
分析計により窒素同位体比を測定した。ここでは、NI
STの標準物質である硫酸アンモニウム(RM854
7:IAEA−N1、窒素同位体比=0.43±0.0
7パーミル)から生成されたテトラフェニルホウ酸アン
モニウム塩を標準窒素として同位体比の校正に使用し
た。
り標準物質の窒素同位体比を測定した。ここでの標準物
質としては、NIST(National Institute of Standa
rds and Technology)により定められた硫酸アンモニウ
ム(RM8548:IAEA−N2、RM8550:U
SGS25)と硝酸カリウム(RM8549:IAEA
−N3)とを採用した。これらの物質を脱イオン水に溶
かして、1000mg/Lのアンモニウムイオンまたは
硝酸イオンを含む試料水溶液とした。各試料水溶液は窒
素を0.45mg含む350mlの溶液にして分析に使
用した。また、1つの試料水溶液について複数回の測定
を行った。
定結果を表1に示す。また、各試料水溶液についてのN
ISTによる報告値も示す。
く一致した。したがって、高精度の測定を実現できるこ
とが確認された。しかも、異なるレベルのアンモニウム
イオンおよび硝酸イオンであっても誤差が±0.12パ
ーミル以下であり、極めて高い再現性を得られることが
確認できた。
り降水試料の窒素同位体比を測定した。ここでの降水試
料は、森林域でウェットオンリー型採取装置(メティッ
ク社製)により採取した。各降水試料は分析するまで冷
蔵庫に保存した。また、1つの降水試料について複数回
の測定を行った。各降水試料についての窒素同位体比の
測定結果を表2に示す。
アンモニウムイオンおよび硝酸イオンであっても誤差が
±0.20パーミル以下であり、極めて高い再現性を得
られることが確認できた。
り標準物質の窒素同位体比を測定した。ここでの標準物
質としては、NISTの硫酸アンモニウム(RM854
7:IAEA−N1)を採用した。この物質を脱イオン
水に溶かして、1000mg/Lのアンモニウムイオン
を含む試料水溶液とした。試料水溶液は窒素を種々の量
(約0.2〜0.8mg)含む200mlの溶液にして
実験に使用した。これらの溶液への0.1mol/Lテ
トラフェニルホウ酸アンモニウムの添加量を変えること
により、アンモニウムイオンの沈殿率が異なる実験を複
数回実施し、それぞれの沈殿率に対して窒素同位体比を
求めた。その結果を図2のグラフに示す。
範囲で、窒素同位体比の殆どの値が0.38±0.09
パーミルに収まった。したがって、アンモニウムイオン
の沈殿率が少なくとも64%あれば、測定に極めて高い
再現性が得られることが確認できた。よって、窒素同位
体比の高精度な測定を行うために必ずしも100%の沈
殿率が必要ではないので、測定作業を簡素化したり迅速
化することができる。
液中の窒素濃度が約1mg/L以下であるとテトラフェ
ニルホウ酸アンモニウム塩の沈殿量が不十分になってし
まう。この場合、沈殿物の窒素同位体比が試料水溶液の
窒素同位体比と異なってしまう可能性(これを同位体分
別という)が考えられる。しかし、図2に示す結果から
明らかなように、沈殿率によらず窒素同位体比の値がほ
ぼ一定であったので、そのような同位体分別の可能性は
殆ど無いことが確認された。
り標準物質の窒素同位体比を測定した。ここでの標準物
質としては、NISTの硫酸アンモニウム(RM854
7:IAEA−N1)を採用した。ここでは、NIST
の硫酸アンモニウムのうちで、窒素同位体比の報告値が
0.43±0.07パーミルであるものを使用した。こ
の窒素同位体比のものを使用する理由は、地球上の窒素
化合物の窒素同位体比の値が通常−15〜+20パーミ
ルの範囲に入ることから当該範囲の中程度に合わせたた
めである。
1000mg/Lのアンモニウムイオンを含む試料水溶
液とした。試料水溶液は窒素を約5mg含む200ml
の溶液にして実験に使用した。この溶液から生成したテ
トラフェニルホウ酸アンモニウムの沈殿物から種々の量
(約1.0〜3.3mg)の試料を採取して、それぞれ
について窒素同位体比を求めた。その結果を図3のグラ
フに示す。
アンモニウム塩2.1〜3.3mg(窒素では0.08
〜0.14mg)の範囲で、窒素同位体比の殆どの値が
0.42±0.12パーミルに収まった。したがって、
テトラフェニルホウ酸アンモニウム塩が少なくとも2.
1mgあれば、測定に極めて高い再現性が得られること
が確認できた。しかも、窒素同位体比の測定値は、試料
水溶液として使用したNISTの硫酸アンモニウムの窒
素同位体比の報告値とほぼ一致した。
ェニルホウ酸アンモニウム塩を得るためには試料水溶液
中にどの位のアンモニウムイオンが必要かを逆算する
と、約0.30mg(窒素で0.23mg)となる。よ
って、窒素同位体比の高精度な測定を行うために必ずし
も多量の沈殿物が必要ではなく、その結果、試料水溶液
中に多量のアンモニウムイオンが必要ではないので、測
定作業を簡素化したり迅速化することができることが判
明した。
含有量がより少ない場合、例えば本実施例では窒素が約
0.23mg以下のときは、多量の試料水溶液を用いて
水分を蒸発させ、約350mlに濃縮することが望まし
い。また、多量の試料水溶液の蒸留が可能な大型の蒸留
装置を製作して使用することが望ましい。
を含む場合には、アンモニアの蒸留の間に有機窒素化合
物が分解されアンモニウムイオンが生ずるおそれがあ
る。この場合、試料水溶液を水酸化ナトリウムの代わり
に酸化マグネシウムによりアルカリ化して、蒸留するこ
とによりアンモニウムイオンを分離することが望まし
い。
1から3までに記載の窒素同位体比の測定方法によれ
ば、沈殿法を用いているので、従来の蒸発法のように全
ての水分を蒸発させる必要が無く処理時間を大幅に短縮
することができる。
テトラフェニルホウ酸アンモニウム塩として沈殿させて
濾過して取り出してるので、従来のように残渣を掻き取
って集めたり蒸発で濃縮した水溶液の一部を液体窒素に
より凍結乾燥する必要が無く作業性が良くなる。
ム塩の窒素同位体比を測定しているので、従来の硝酸塩
あるいはアンモニウム塩の窒素同位体比を測定する場合
に比べて、同じ量の窒素を測定するのであれば質量分析
計に測定させる物質の量を多くすることができ、計量が
容易になって作業性を高めることができる。
フローチャートである。
と窒素同位体比との関係を示すグラフである。
と窒素同位体比との関係を示すグラフである。
Claims (3)
- 【請求項1】 アンモニウムイオンを含む試料水溶液を
蒸留して、前記蒸留により得られたアンモニアを含む水
蒸気を凝縮して酸性の溶液に溶かして留出液を得て、前
記留出液にテトラフェニルホウ酸ナトリウムを加えてテ
トラフェニルホウ酸アンモニウム塩を沈殿生成して、こ
のテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩を濾過により分
離回収して、得られたテトラフェニルホウ酸アンモニウ
ム塩の窒素同位体比を測定することを特徴とする窒素同
位体比の測定方法。 - 【請求項2】 硝酸イオンを含む試料水溶液を還元蒸留
して、前記還元蒸留により得られたアンモニアを含む水
蒸気を凝縮して酸性の溶液に溶かして留出液を得て、前
記留出液にテトラフェニルホウ酸ナトリウムを加えてテ
トラフェニルホウ酸アンモニウム塩を沈殿生成して、こ
のテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩を濾過により分
離回収して、得られたテトラフェニルホウ酸アンモニウ
ム塩の窒素同位体比を測定することを特徴とする窒素同
位体比の測定方法。 - 【請求項3】 硝酸イオンおよびアンモニウムイオンを
含む試料水溶液を蒸留して、前記蒸留により得られたア
ンモニアを含む水蒸気を凝縮して酸性の溶液に溶かして
留出液を得て、前記留出液にテトラフェニルホウ酸ナト
リウムを加えてテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩を
沈殿生成して、このテトラフェニルホウ酸アンモニウム
塩を濾過により分離回収して、得られたテトラフェニル
ホウ酸アンモニウム塩の窒素同位体比を測定する一方、
前記試料水溶液を蒸留した残りの溶液中の硝酸イオンを
還元蒸留して、前記還元蒸留により得られたアンモニア
を含む水蒸気を凝縮して酸性の溶液に溶かして留出液を
得て、前記留出液にテトラフェニルホウ酸ナトリウムを
加えてテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩を沈殿生成
して、このテトラフェニルホウ酸アンモニウム塩を濾過
により分離回収して、得られたテトラフェニルホウ酸ア
ンモニウム塩の窒素同位体比を測定することを特徴とす
る窒素同位体比の測定方法。
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JP2001062989A JP3810645B2 (ja) | 2001-03-07 | 2001-03-07 | 窒素同位体比の測定方法 |
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