JP2002242935A - 軸受装置 - Google Patents

軸受装置

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JP2002242935A
JP2002242935A JP2001013755A JP2001013755A JP2002242935A JP 2002242935 A JP2002242935 A JP 2002242935A JP 2001013755 A JP2001013755 A JP 2001013755A JP 2001013755 A JP2001013755 A JP 2001013755A JP 2002242935 A JP2002242935 A JP 2002242935A
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ball
rolling
hardness
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JP2001013755A
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Susumu Ryu
劉  軍
Hisato Yamamoto
寿人 山本
Shoji Noguchi
昭治 野口
Susumu Tanaka
進 田中
Manabu Ohori
學 大堀
Toru Takamizawa
徹 高見沢
Seizo Miyazaki
晴三 宮崎
Yoshio Shoda
義雄 正田
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NSK Ltd
Original Assignee
NSK Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 疲労寿命はもとより、フレッチング耐久性や
耐摩耗性或いは耐焼付性などの諸特性に優れ、また、異
物の存在による圧痕の発生で短命化されることがなく、
更には、負荷容量と耐衝撃性の低下および予圧抜けや静
電気作用による問題(ゴミ音により不良率が大きくな
る、組立て工程で搬送トラブルが生じる等)や、総ボー
ル軸受或いは総ころ軸受とした場合の高速回転時の焼
付,摩耗の発生や高温或いは低温環境下での早期剥離、
更には、軸受取付回り構造の変更等のセラミック製転動
体を使用する場合の問題点を克服できる安価な軸受装置
を提供する。 【解決手段】 外方部材と内方部材との間に転動体を配
設してなる軸受装置において、前記転動体表面に窒化層
を有し、該窒化層がビッカース硬さでHv900以上の
化合物層と拡散硬化層とからなることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、工作機械、食品機
械、鉄鋼用設備、一般産業機械、或いはハードディスク
ドライブ装置(HDD)のスピンドルモータやスウィン
グアーム、レーザプリンタ(LBP)、ビデオテープレ
コーダー(VTR)、ディジタルオーディオテープレコ
ーダー(DAT)、掃除機、エアクリーナ、自動車、産
業機械用変速機プラネタリギア、ギアサポート、半導体
搬送ロボット・ リンク機構の間接部、CTスキャナ等に
組み込まれる玉軸受をはじめとする転がり軸受やリニア
ガイド、ボールねじ等の軸受装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図24及び図25は、軸受装置としての
玉軸受を、頻繁にON−OFFを繰り返すクリ−ナモー
タの回転軸に取り付けた例を示す。クリーナのモータ
は、通常、ブラシタイプが用いられており、ファンを高
速(40000 〜60000rpm)で回転させるためブラシ摩耗量
が多く、その結果、摩耗粉の飛散が多量である。また、
モータ内の空気の流れでコンミテータ(ブラシの電極)
側の玉軸受に摩耗粉が直に飛散する状況にある為、摩耗
粉が軸受内部に侵入し、焼付き寿命に大きな影響を及ぼ
す。このため、従来においては、モータとしては軸受と
コンミテータとの間にスリンガー(薄厚円盤)を設置し
て摩耗粉の軸受への飛散を防止し、軸受としては軸受に
接触シールを採用して軸受内部への摩耗粉侵入を防止す
るようにしている。
【0003】また、パラレルリンク機構の支持部として
用いられる軸受装置としては、ボール型自在継手や転動
体を複合させたものが多い。ボール型自在継手は、安価
で入手しやすいが、剛性が小さく負荷が変動すると継手
部が伸縮したり、鍛造で作るため摺動部の形状精度が不
十分であり運動精度が悪い。しかも、縦に長い構造をし
ているので、リンク脚部が長くなって該脚部が曲がりや
すくなってしまう問題がある。また、転動体を複合させ
た機構においては、すきまの調整が難しく、揺動トルク
を安定させ難かったり、継手部分が小型化できない等の
問題がある。
【0004】これらの問題を解決するために、特許25
56820号公報や特許2589276号公報では、内
輪に相当する球と外輪の凹球面の間に王を複列に配置し
た2自由度、3自由度の転がり軸受を開示しており、ま
た、特許2614430号公報や特開平11−1252
37号公報では、外輪を2つ割れにして、該外輪と内輪
に相当する球と間に球を囲む玉、保持器を挟む形で組み
立てる方式の球面軸受を開示している。
【0005】更に、特開平8−210358号公報に
は、軸受装置としての転がり軸受において、複数の転動
体の内の少なくとも一つの転動体を他の転動体より高い
硬度あるいは高い剛性の材料で形成したものが開示され
ており、高硬度転動体の具体例として、高硬度転動体の
ビッカース硬さ>13GPa(約Hv1300)又はヤ
ング率>280GPa、即ちセラミック製転動体が挙げ
られている。そして、異物かみ込みや油膜形成不十分で
生じた軌道面の面粗れ(圧痕)、特に圧痕周囲に生じた
突出部分を高硬度のセラミック製転動体の転動により潰
して平らにし、これにより、圧痕の発生による軸受の短
寿命化を防止するようにしている。
【0006】更に、特開平6−221326号公報、特
開平6−200926号公報、特開平11−29444
9号公報及び特開平11−320295号公報には、ハ
ードディスクドライブ装置のスピンドルモータやスウィ
ングアーム等の支持に好適な軸受装置が開示されてい
る。これらの公報に開示された軸受装置は、回転支持部
の振れ回り運動や軸方向の振れを防止すべくアキシアル
方向の予圧を付与して高精度化を図る際に、適正な予圧
を容易に付与できるようしたものや、予圧を軸方向外方
に付与してモーメント剛性を大きくとれるようにしたも
のである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述したクリーナモー
タにおいては、コスト面からスリンガーも無く、軸受に
は安価なシールド板を採用し、焼付き耐久性も良好なも
のが要求されている。転動体にセラミック材を採用する
ことにより、軸受の耐焼付き寿命が向上する事は知られ
ているが、セラミック製転動体は、コストが非常に高い
ばかりか、一般に、弾性係数が鋼と比較して著しく大き
いため、衝撃荷重によって軌道輪に圧痕が形成されやす
く音響劣化しやすい。また、線膨張係数が鋼球に比べて
著しく小さいため、機器が動作した際の温度上昇により
予圧抜けが生じて剛性が低下するといった問題点も有し
ている。さらに、セラミック材は一般に絶縁体であるた
め、静電気作用により異物が吸引されてゴミ音による不
良率が大きくなったり、さらに、極めて比重が小さいと
いうこともあって、組立て工程で静電気作用により搬送
トラブルが生じやすいという問題点も有している。
【0008】特許2556820号公報や特許2589
276号公報に開示されたパラレルリンク支持用の転が
り軸受では、王の組み込み性や予圧調整が難しく、ま
た、保持器については考慮されていないため、王配置の
偏りによる剛性の不均一が起こることが考えられ、特許
2614430号公報や特開平11−125237号公
報に開示された球面軸受では、剛性を向上させるための
予圧の設定が軸受各部の加工精度に依存するため難し
く、生産性に問題がある。
【0009】ところで、本出願人等は、このような問題
を解決するために、特願平11−034232号明細書
に記載の球面転がり軸受を先に提案した。この球面転が
り軸受は、自動調心玉軸受を応用したもので、内輪幅よ
りも外輪幅を大きくし、且つ、外輪軌道面球面部の赤道
面を外輪の幅方向の中心からずらして配置することによ
り、内輪に嵌合された支持軸が大きく揺動(傾斜)した
場合においても、前記赤道面のずれ方向の反対側に配置
された転動体列が外輪軌道面から外れないようにしたも
のである。
【0010】かかる構成の球面転がり軸受においては、
小型の軸受が生産可能であり、すきま調整(負すきまと
して剛性を最適化する。)も玉の寸法を変えることで対
応できるため、剛性を向上させるための予圧の設定も簡
単である。また、生産性においては、自動調心王軸受の
生産ラインを活用できるため安価で量産が可能であり、
高いコストパフォーマンスが期待できる。しかしなが
ら、構造上揺動時においては、玉が滑るため、揺動抵抗
の低減及び耐フレッチング性の向上が課題と考えられ
る。
【0011】特開平8−210358号公報に開示され
た転がり軸受においては、軸受内に異なる材質の転動体
を組み込み、その一つの材質をセラミック製転動体とす
ることにより、以下の〜の問題が存在する。 転動体の高剛性(弾性係数(ヤング率)が大きい)に
より、外輪と内輪に生じる応力が高くなり、結果的に負
荷容量が小さくなってしまう。 鋼製の転動体とセラミック製の転動体が通過する場合
では、固定輪に対して負荷される応力が異なり、振動荷
重が負荷されたと同じ条件になる。この振動荷重は、特
開平10−122243号公報の従来技術にあるように
軸受短寿命の原因となる。 予圧をかけない場合には、負荷圏と非負荷圏の2つの
領域ができ、転動体の負荷圏に入る時や出る時は滑りや
すく、セラミック製転動体と鋼製転動体の材質や寸法の
変化がすべりの加速要因となる。 転動体の高剛性およびセラミック材の脆性により、軸
受の耐衝撃性が低くなってしまう。 転動体と内外輪材料の線膨張率(セラミック材:窒化
けい素、炭化けい素、アルミナは線膨張係数α=2.5
〜8.1×10-6、鋼材:線膨張係数α=10〜15×
10-6 (軸受鋼:α=12.5×10-6)が異なるこ
とにより、使用中に予圧抜けの恐れがある。 転動体の密度(セラミック材:密度ρ=3.1〜3.
9g/cm3 )は小さいが、回転速度が大きくなると、
軸受内での転動体の遠心力がアンバランスの原因にな
る。これは軸受回転時の振動の原因となり、回転精度や
音響の劣化を招くだけでなく、保持器強度の低下に結び
つく。また、この遠心力の差は上記およびについて
も同じ悪影響を及ぼす。
【0012】更に、軸受の負荷容量を増すために、保持
器を用いずに転動体を一杯に詰め込んだ総ボール軸受或
いは総ころ軸受があり、これらの軸受は転動体間での油
膜の発生を期待することができないため、高速回転を行
うと焼付や摩耗のトラブルが発生しやすい。この場合、
転動体の一部にセラミック製転動体を用いることによ
り、鋼製転動体と該鋼製転動体に接触するセラミック製
転動体との表面特性の相違を利用して、鋼製転動体同士
が金属接触する場合よりも部分的には焼付や摩耗のトラ
ブルを生じにくくすることが考えられるが、全体として
焼付や摩耗を防止するには至らず、しかも、鋼とセラミ
ックとの線膨張係数の違いにより、高温或いは低温環境
下にて軸受を使用すると、鋼製転動体とセラミック転動
体との直径寸法に差が生じ、直径が大きくなった方の転
動体の荷重が大きくなって早期剥離に至るという問題が
生じてくる。
【0013】更に、特開平6−221326号公報、特
開平6−200926号公報、特開平11−29444
9号公報及び特開平11−320295号公報に開示さ
れた軸受装置や二個の玉軸受に軸方向内方に予圧を付与
した軸受装置をハードディスクドライブ装置のスピンド
ルモータやスウィングアーム等の支持に用いる場合に
は、転動体として、通常SUJ2等の軸受鋼球が用いら
れるが、ハードディスクドライブ装置の記録密度の増加
に伴う回転精度の高精度化の要請に応えるべく、鋼球に
代えて、Si3 4 、ジルコニア+アルミナ、アルミナ
等のセラミック球を用いて耐フレッチング性や耐摩耗性
の向上を図るようにすると、ヤング率が大きく変わるた
めに装置としての共振周波数が大きく変わってしまう。
従って、このままでハードディスクドライブ装置のスピ
ンドルモータやスウィングアーム等の支持に使用する
と、共振による音響や振動が大きくなるばかりか目標ト
ラックへの位置決め精度の低下等が発生してしまうた
め、軸受取付回りの構造を変更しなければならなくな
る。
【0014】本発明は前記諸問題を解決すべく開発され
たものであり、疲労寿命はもとより、フレッチング耐久
性や耐摩耗性或いは耐焼付性などの諸特性に優れ、ま
た、異物の存在による圧痕の発生で短寿命化されること
がなく、更には、負荷容量と耐衝撃性の低下および予圧
抜けや静電気作用による問題(ゴミ音により不良率が大
きくなる、組立て工程で搬送トラブルが生じる等)や、
総ボール軸受或いは総ころ軸受とした場合の高速回転時
の焼付,摩耗の発生や高温或いは低温環境下での早期剥
離、更には、軸受取付回り構造の変更等のセラミック製
転動体を使用する場合の問題点を克服できる安価な軸受
装置を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、基本的に
は鋼の特性をそのまま利用し、軸受装置の構成部品であ
る転動体の表面のみに適当改質層を形成することによっ
て、疲労寿命はもとより、フレッチング耐久性、耐摩耗
性、耐焼付性等の諸特性を改善することができないか検
討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0016】即ち、本発明に係る軸受装置は、外方部材
と内方部材との間に転動体を配設してなる軸受装置にお
いて、前記転動体表面に窒化層を有し、該窒化層がHv
900以上の化合物層と拡散硬化層とからなることを特
徴とする。ここで、本発明者等は、転動体の製造方法に
関して詳細に調査したところ、高精度の窒化処理鋼球を
製造するためには、まず素球を焼入、焼戻した後、一
旦、真球度3.0μm以下の半加工球に加工し、引き続
き、窒化処理、仕上加工することが好ましいことを知見
した。
【0017】本発明の軸受装置は、転動体の表面に適切
な窒素濃度及び硬さを有する層(以降、窒化層と記す)
を設けたので、セラミック製転動体を用いた軸受と同様
に静粛性,音響耐久性,フレッチング耐久性などが優れ
る。さらに加えて、本発明の軸受装置は、セラミック製
転動体を用いた軸受の短所を持たず、すなわち耐衝撃性
に優れ、予圧抜けや静電気作用による前記問題が生じに
くく、また、窒化層を設けた転動体と鋼製の転動体とを
全周にわたって交互に配置することにより、総ボール軸
受や総ころ軸受とした場合の高速回転時の焼付や摩耗を
防止できると共に、高温或いは低温環境下での早期剥離
の問題を解消することができ、しかも、共振周波数の変
化対策も不要にすることができるので、小型の情報機器
等のように振動等にさらされたり高い静粛性を要求され
る機器に好適に使用することができる。
【0018】また、前記転動体の真球度及び径相互差が
0.05μm以下、表面粗さが0.003μmRa以下
であることが望ましい。また、前記転動体の単一球の窒
化層の最大厚さと最小厚さとの差が5μm以内の均一な
付きまわり性を有することが望ましい。また、前記窒化
層中の化合物層の厚さが少なくとも3μm以上で、且つ
その平均厚さが転動体の径Daの2%以下であることが
望ましい。
【0019】また、転動体の母材は、Cr、Mo、V、
Nb、W、Ti、Al、Siの少なくとも1種以上を総
含有量で2%以上25%以下含有する鋼を用い、2%D
a(直径の2%の意)深さにおける硬さが少なくともH
v653以上であることが望ましい。また、転動体表面
に窒化層を形成した場合、その窒化層は化合物層と拡散
層とからなり、そのうちの化合物層の厚さが3μm以上
2%Da以下であることが望ましい。
【0020】また、軸受装置が玉軸受である場合にあっ
ては、外輪、内輪及び複数の転動体から構成されるか、
又は外輪、軸体及び複数の転動体から構成される玉軸受
において、前記転動体を除く、構成部品の少なくとも何
れか一方が、HRC58以上で且つ残留オーステナイト
が4%以下の軸受鋼からなることが望ましい。以下に臨
界的意義について説明する。 [転動体:材料について]転動体の母材となる軸受用鋼
としては、高炭素クロム軸受鋼の他に、浸炭鋼、耐熱
鋼、ステンレス鋼、合金工具鋼、高速度工具鋼、クロム
鋼、クロムモリブデン鋼等を使用し、表面層にHv90
0以上の窒化層を形成する。
【0021】また、好ましくは、Cr、Mo、V、N
b、W、Ti、Al、Siの少なくとも1種以上を総含
有量で2%以上、好ましくは5%以上25%以下含有す
る鋼を使用して、表面に窒化層を設けると、当該窒化層
には、これらの元素を含む微細な窒化物が析出して、フ
レッチング耐久性、耐焼付性、耐摩耗性が向上する。ま
た、窒化処理は通常、400〜600℃程度の比較的高
い処理温度で実施されるため、母材に十分な耐熱性がな
い場合には、窒化層を支える下地の強度が不足して、容
易に表面窒化層の破損を招く。従って、最大剪断応力位
置でもある2%Da深さにおける硬度を少なくともHv
653以上確保する。具体的には、前記合金元素添加に
よって耐熱性を向上させるか、或いは窒化層をより深く
設ける。また、窒化処理前に浸炭、浸炭窒化処理を行っ
て耐熱性を確保してもよい。
【0022】また、マルテンサイト系ステンレス鋼或い
は高速度工具鋼等であれば、十分な耐熱性があり、窒化
処理後においても十分な硬度を保持できるため、より好
ましい。また、窒化処理温度が高い場合には、母材の耐
熱性が不足して、十分な下地の硬度が得られない場合も
あるため、窒化処理温度は好ましくは500℃以下、更
に好ましくは460℃以下とする。
【0023】更に、軸受の静粛性の観点からは炭素とC
r含有量の関係を、C%≦−0.05Cr%+1.41
%を満たす鋼とするのが好ましい。その結果、窒化層の
最表面に生成する化合物層がCrの合金化及びCr窒化
物等の析出等によって非常に高硬度となり、極めて摺動
性、フレッチング耐久性などが向上する。この関係を満
たさない場合には、凝固過程で長径10μmを超える粗
大な共晶炭化物を生成して、素材の線引き時に断線の問
題が生じたり、仕上げ加工の際に目標精度が得られなか
ったりする。そして、好ましくは炭化物の大きさを5μ
m以下とする。また、窒化処理による芯部の軟化を抑え
るために、炭素と窒素の総含有量を0.45%以上と
し、炭化物の観点から、より好ましくは、炭素の一部、
少なくとも0.05%以上を窒素で置換した窒素添加鋼
を使用する。また、上記成分に加えて、Mo、V、W、
Nb、Al等の窒化物形成元素を複合的に添加すると、
更に耐久性が向上する傾向にあり、コストが許される範
囲で添加してよい。なお、炭素と窒素の総含有量が0.
45%以上で、窒素が0.05%とすると、炭素の下限
値が0.40%となり、この値を前記条件式に代入する
とCr%=20.2%となるので、この値がCrの上限
値となる。 [転動体の表面粗さについて]窒化処理直後の転動体の
表面粗さは、0.5〜2.0μmRa程度と大きいた
め、このままでは、静粛性が要求される情報機器用玉軸
受或いは各種ファンモータ用の玉軸受等には適用できな
い。また、表面の窒化物或いは酸化物粒子が転動時に脱
落するなどして装置の信頼性を低下させるため、少なく
とも転動面は窒化処理後に仕上加工されていることが必
要である。また、その粗さが大きい場合には、転動面に
おいて相手材への攻撃性が強まる傾向にあり、例えば境
界潤滑下で寿命が短くなる傾向にある。従って、これら
の問題を回避して十分な特性を引き出すために、少なく
とも転動体の表面は0.1μm以下に仕上加工するのが
好ましい。[転動体の窒化層が化合物層と拡散層とから
なり、化合物層厚さが3μm以上2 %Da以下であることについて]窒化層は一般的には化
合物層と拡散層とからなるため、被膜と母材との密着性
が強く、剥離しにくい。但し、転がり軸受のように、窒
化層よりも深い位置で、大きな剪断応力を受けると、や
はり剥離の問題を伴うことになるので、前述したように
下地の硬度も考慮する必要がある。また、化合物層は,
(Fe、Cr)2, 3or4N、CrN、Cr2N、Mo
2 N、VN等の緻密な窒化物から構成されており、優れ
た表面特性を有する。また、化合物層厚さが大きくなる
と、処理コストが嵩むだけでなく、本来、鋼が持ってい
る物性を損ない、例えば情報機器用の玉軸受にあっては
耐衝撃性が低下する。従って、信頼性を考慮すると、化
合物層厚さは3μm以上2%Da以下とするのが好まし
い。 [玉軸受の転動体について]玉軸受に使用される転動体
の窒化処理は400℃〜600℃、好ましくは400℃
〜480℃の範囲で実施されるが、窒化処理した後には
芯部は焼戻し作用によって軟化し、硬度が著しく低下す
る場合がある。通常、窒化処理後には、表面に化合物層
が形成され、それよりも深いところでは、窒素の拡散に
よる拡散硬化層を有する。窒化処理は、この拡散硬化層
を有するため、皮膜と母材との密着性が強く、剥離し難
い。しかし、軸受が作動したときに、窒化層よりも深い
最大剪断応力位置で大きな剪断力を受けると、その部分
に十分な強度がない場合には、塑性変形を伴って表面硬
化層の破損を招く恐れがある。従って、転動体の母材に
使用される材料には、窒化処理後でも剪断応力に耐えら
れるだけの十分な硬度を有する材料であることが必要で
ある。具体的にはマルテンサイト系ステンレス鋼、高速
度工具鋼或いは合金工具鋼等を使用し、表面から2%D
a深さまではロックウェルCスケールの硬さでHRC5
8以上とするか、もしくは芯部硬さを窒化処理後にHR
C58以上とするのが好ましい。 [転動体:製造方法及び完成品品質について]まず、転
動体は冷間で引抜加工された線材を用い、ヘッダーによ
る冷間加工或いは切削加工とフラッシング等により素球
を製作し、焼入、焼戻し、場合によってはサブゼロ処理
を併用することで硬化させる。その後、目標寸法、即ち
完成品寸法に設定取り代を加算した寸法まで研削加工を
行う(以下、これを半加工球と称する)。設定取り代
は、具体的には、目標とする精度まで仕上加工を行う際
の必要取り代を示すが、勿論窒化処理による膨縮量も含
めたものを示している。
【0024】窒化処理前の素球が焼入れされたままの状
態のものは、その真球度或いは直径相互差等は非常に大
きく、一般には、数十μm〜百μm程度の設定取り代が
必要であり、これに対して形成される窒化層はせいぜい
数十μm程度であることから、完成球に窒化層を残存さ
せることは実質不可能である。仮に、窒化層を残存させ
ることができたとしても、その精度はHDD等の情報機
器用玉軸受などの転がり軸受に適用できるほど高精度な
ものではない。即ち、焼入れされたままの状態のものを
使用して窒化処理すると、窒化層は一般には処理物の形
状に倣った形で生成するため、それを仕上加工すると窒
化層厚さが不均一となると同時に、窒化処理によって生
じた内部応力のバランスが崩れて、精度を得るために研
削に長時間を要したり、目標精度が達成できなくなった
りするのである。これらの問題は、焼入れされたままの
素球で特に顕著であるが、半加工球であってもその精度
が不十分である場合には、要求品質を満足できない。従
って、以上の理由から半加工球の真球度は3.0μm以
下、好ましくは1.0μm以下が必要となる。
【0025】また、半加工球は、焼入後、焼戻しを施し
ておかないと、焼入時に蓄積された内部残留応力が完成
品品質に悪影響を与える傾向にあるため、少なくとも1
40〜160℃、好ましくは窒化処理温度よりも高い温
度、具体的にはCr炭化物或いはCr窒化物等による二
次析出硬化が起こる450〜550℃程度で焼戻しを行
っておくとよい。また、取り扱い上の表面キズ発生の防
止対策として、半加工球を作製する上で熱処理後、バレ
ル或いはボールピーニング等の機械的硬化加工によっ
て、更に硬度を高めてもよい。
【0026】一般的に、窒化処理には、ガス窒化、塩浴
窒化、イオン窒化等が挙げられるが、イオン窒化は量産
性に欠け、処理物の形状などの影響も強く受け、球体表
面に均一な窒化層を形成させることができない。また、
一般のガス窒化、塩浴窒化は処理温度が480〜600
℃と比較的高く、その際、芯部は焼戻し作用により軟化
する。また、窒化処理後には、一般には表面に化合物層
(白層)が形成され、それよりも深い部分では拡散硬化
層(α−Fe)を形成する。従って、蒸着やメッキなど
のデポジットした改質膜と比較して被膜と母材との密着
性が強く、比較的剥離しにくい。
【0027】また一方、この化合物層は前述したように
比較的脆いため、ピッチング寿命(刃先の欠け)が問題
となる歯車やその他のギヤ等では除去されて使用される
ことが多い。しかし、本発明者等は、この化合物層が特
に摺動性に優れることをつきとめ、例えば、それが玉軸
受の転動体のような球体の場合、特に直径4mm以下の
鋼球においては、極めて好適に使用できることを見極め
た。
【0028】但し、軸受が高負荷条件で作動すると、窒
化層よりも深い位置で大きな剪断応力を受け、その部分
に十分な強度がない場合、例えば前述のように窒化処理
温度が高く、母材に十分な耐熱性がなくて、芯部が著し
く軟化したような場合には、塑性変形を伴って、表面硬
化層(化合物層)の破損を招く恐れがある。そこで、芯
部硬度を好ましくはロックウェルCスケールの硬さでH
RC57以上確保しておく。
【0029】なお、前記表面の硬さはビッカース硬さで
Hv1100以上であることが好ましい。Hv1100
未満であると、表面の窒化層が損傷を受けやすくなるの
で、音響特性や前記耐久性に悪影響を及ぼす場合があ
る。また、該窒化層の厚さが転動体の直径Daの2%を
超えた場合においても、耐衝撃性が低下する傾向にあ
り、また、必然的に窒化層と母材との界面付近では、窒
化物の析出量が不足して十分な硬さ及び耐久性が得られ
ない。このため、窒化層の厚さを、3μm以上且つDa
の2%以下とすることが好ましい。
【0030】なお、ここでは、玉軸受の転動体について
述べているが、他の転がり軸受の転動体(ころ等)につ
いても、上記同様のことがいえる。また、内方部材及び
外方部材を構成する鋼(母材)については、硬さがロッ
クウェルCスケールの硬さでHRC58以上であるなら
ば、JIS G 4805記載のSUJ2は勿論のこ
と、どのような軸受用鋼を用いても差し支えない。ただ
し、含有される炭化物が大きい場合、あるいは残留オー
ステナイト量が多い場合には、良好な静粛性や耐久性、
例えば、耐衝撃性が得られない。したがって、含有され
る炭化物の長径は5μm以下で、残留オーステナイト量
は6%以下であることが好ましい。なお、内方部材及び
外方部材を構成する鋼の硬さがロックウェルCスケール
の硬さでHRC58未満であると、疲労強度が低下しフ
レッチング耐久性,耐衝撃性等の機能が低下する等の問
題が生じる場合がある。
【0031】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図を
参照して説明する。まず、図1に示す二円筒摩耗試験機
により、表1に示す供試材の摩耗試験を行った。
【0032】
【表1】
【0033】この二円筒摩耗試験は、上下に対向する一
対の円筒10に供試材を装着し、上から荷重Pを負荷し
ながら互いに接触状態で、逆方向に低速で回転させ、上
下の円筒試験片の摩耗量を求めた。また、試験片作製に
あたっては、まず所定の形状に加工した後、焼入硬化
し、研削仕上加工を施した。更に引き続き、下記の何れ
かの条件で窒化処理を施した。 条件1:300〜380℃×1時間フッ化処理(90%
2−10%NF3 混合ガス)後、400〜480℃×
24〜48時間窒化処理(50%N2−50%NH3
合ガス) 条件2:480〜560℃×3〜8時間窒化処理(50
%N2−50%NH3 混合ガス) 条件3:480〜560℃×3〜8時間軟窒化処理(シ
アン酸塩(KCNO及びNaCNO)を主成分とする塩
浴窒化) このうち、条件1は前処理としてフッ化処理を施した場
合の例であり、フッ素系ガスのクリーニング作用によっ
て、窒化を阻害する表面酸化層が除去されるため、より
低温で均一な窒化層を形成させることができ、高合金系
では特に有効な手法である。また、条件2は従来のガス
窒化、条件3は軟窒化(タフトライド)の例である。
【0034】試験は、窒化処理のまま(黒皮)のもの及
び仕上加工を施したものについて実施した。品質及び試
験結果を下記表2に示す。なお、表2中には、上下に対
向させた一対の円筒試験片の摩耗量の平均値を示す。ま
た、表面硬さは、測定荷重100gでサンプル数n=1
0回測定した平均値を用いた。また、化合物層厚さは、
ピクラール又は塩化第二鉄塩酸溶液でエッチングした
後、光学顕微鏡によりサンプル数n=10回観察し、明
瞭に観察される表面窒化層と下地との境界から化合物層
の厚さを求め、その平均値を記載した。
【0035】摩耗試験条件は以下の通りである。 (二円筒摩耗試験) 荷重 :490N 回転数 :10rpm すべり率:10% 潤滑 :鉱油 試験時間:100時間 試験温度:常温
【0036】
【表2】
【0037】表2からも明らかなように、試験片表面に
ビッカース硬さでHv900以上の化合物層と拡散硬化
層とからなる窒化層が形成された各実施例A−1〜A−
8は、比較例A−9〜A−13に比較して、非常に良好
な耐摩耗性を有する。これに対して、比較例A−9はS
UJ2に窒化処理を施した場合の例であり、窒化処理し
ていない比較例A−13と比較するとやや耐摩耗性は向
上しているが、表面硬さも表面粗さも前記諸条件を満足
しておらず、各実施例に比較すると、効果が小さいこと
が分かる。
【0038】また、比較例A−10及びA−11はSU
J2を窒化処理後、仕上加工を施した場合の例である
が、化合物層が僅かしか生成されないため、表面仕上げ
の際に、化合物層が全て除去されてしまい、表面硬さ及
び化合物層厚さの点で前記諸条件を満足せず、前記比較
例A−9と比較してやや劣る結果となった。但し、拡散
層は存在しているので、前記比較例A−13と比較する
と、幾分耐摩耗性に効果が確認される。
【0039】また、窒化処理の違いについては、条件2
及び3では、SUJ2でも窒化処理しない場合より性能
が向上するが、条件1では、SUS440Cや0.7C
−13Crステンレス鋼等のマルテンサイト系のステン
レス鋼がより望ましい。また、表2の実施例の中でも、
A−5〜A−8は平均摩耗量が0.5×10-2g以下と
なっており、A−1〜A−4より耐摩耗性に優れてい
る。A−5〜A−8は全て窒化処理条件1のものであ
り、窒化処理条件1は条件2(ガス窒化)および条件3
(タフトライド)より優れている。また、A−5〜A−
8はいずれも、化合物層の厚さ10〜23μm、Cr含
有量4〜20wt%,Cr,Mo,V,Nb,W,T
i,Al,Siの少なくとも1種類以上の総含有量5%
以上25%以下の条件を満たしている。さらに、条件1
でA−3がA−5〜A−8と比べ摩耗量が多かったこと
から、C+Nの総含有量を0.45%とすることが望ま
しい。
【0040】次に、本発明の第1の実施の形態を図2〜
図4を参照して説明する。図2は本発明の第1の実施の
形態であるクリーナモータ用玉軸受を説明するための説
明的断面図、図3は比較例と実施例とにおける焼き付き
寿命の比較を示すグラフ図、図4は比較例と実施例とに
おけるグリース中のCu含有量の比較を示すグラフ図で
ある。
【0041】この実施の形態は、図2に示すように、外
輪(外方部材)11と内輪(内方部材)12との間に表
面に窒化層13が形成された玉(転動体)14が組み込
まれた玉軸受(軸受装置)15を、上述した頻繁にON
−OFFを繰り返すクリ−ナモータ(図24及び図2
5)のコンミテータ側の回転軸に取り付けたものであ
る。窒化層13は、ビッカース硬さでHv900以上の
化合物層と拡散硬化層とからなり、具体的には、表2の
実施例A−5に相当するものを採用した。
【0042】ここで、クリーナモータには、軸受15と
コンミテータとの間にスリンガー(薄厚円盤)は設置さ
れておらず、また、軸受15の両側面には安価な非接触
シールド板16が取り付けられている。非接触シールド
板16と内輪12との間には隙間があり、ブラシ摩耗粉
はこの隙間を通って内部に入るが、隙間が小さいので大
きな異物が入ることはない。また、カーボンブラシの硬
さがそれほど大きくないので、転がり疲れよりも焼付き
が軸受寿命を支配することになる。なお、予圧はバネに
よって付与している。
【0043】次に、窒化層13を形成した転動体14を
組み込んだ玉軸受を実施例とし、通常の転動体(SUJ
2)を組み込んだ玉軸受を比較例として、それぞれ上記
クリ−ナモータのコンミテータ側の回転軸に取り付けて
焼き付寿命を試験し、該試験終了後のグリースを原子吸
光分析して摩耗粉に含まれるCu量を調査した。なお、
比較例及び実施例の玉軸受は共に、外輪外径22mm、
内輪内径8mm、軸受幅7mmとし、グリースの種類及
び非接触シールド板の形状、大きさは同一とした。
【0044】試験条件を以下に示す。 グリース:基油 ポリαオレフィン 増ちょう剤 ウレア化合物 基油粘度 48cSt(40°C) 試験温度:常温 軸受回転数:40000rpm 予圧:49N 図3及び図4に試験結果を示す。
【0045】図3から明らかなように、比較例に比べて
実施例の玉軸受は焼き付き寿命が大幅に向上しているの
が判る。また、図4のデータでは、実施例の玉軸受の方
が摩耗粉の量は多くなっており、従って、実施例の玉軸
受は、摩耗粉の量が多くグリースが著しく劣化するまで
良好な耐焼き付き性を確保できることが判る。実施例の
玉軸受と比較例の玉軸受は転動体が異なるだけであり、
実施例は転動体に条件1により窒化処理した転動体を用
いたことにより、摩耗雰囲気中での耐焼き付き性を向上
させることができることを示している。すなわち、実施
例の玉軸受は、高速回転条件下でブラシ摩耗粉等が原因
となって焼き付きを引き起こすクリーナモータ用軸受の
長寿命化に著しい長寿命効果を示す。
【0046】このようにこの実施の形態では、SUJ2
の転動体を組み込んだ玉軸受に比べて、耐焼付き性の大
幅な向上を図ることができ、しかも、高価なセラミック
製転動体を用いた場合と同等の耐焼付き性を確保するこ
とができるので、該耐焼付き性の確保を低コストで実現
することができ、更に、母材の弾性係数がセラミックの
弾性係数より小さいので接触面圧pがセラミック製転動
体に比べて小さくなり、この結果、焼付きの度合いを決
めるpv値が小さくなって、より有利な耐焼付き性を確
保することができる。
【0047】次に、本発明の第2の実施の形態を図5〜
図13を用いて説明する。図5はパラレルリンクステー
ジの全体概略図、図6は本発明の第2の実施の形態であ
るパラレルリンク支持部用軸受を説明するための説明的
断面図、図7〜図10は外方部材としての外輪の変形例
を説明するための説明図、図11はピン−ディスク摩耗
試験を説明するための説明図、図12は比較例と実施例
におけるすべり距離と摩擦係数との比較を示すグラフ
図、図13は比較例と実施例におけるすべり距離と摩耗
量との比較を示すグラフ図である。
【0048】この実施の形態は、図6に示すように、外
輪(外方部材)21と内輪(内方部材)22との間に表
面に窒化層23が形成された玉(転動体)24が組み込
まれた球面転がり軸受(軸受装置)25を、図5に示す
パラレルリンクステージの支持部用軸受として取り付け
たものである。窒化層23は、ビッカース硬さでHv9
00以上の化合物層と拡散硬化層とからなり、具体的に
は、表2の実施例A−6に相当するものを採用した。
【0049】この球面転がり軸受は25、自動調心玉軸
受を応用したもので、内輪22の幅よりも外輪21の幅
を大きくすると共に、外輪軌道面球面部の赤道面Cを外
輪21の幅方向の中心からずらして配置し(A≧B)、
これにより、内輪22に取り付けられた支持軸26が大
きく揺動(傾斜)した場合においても、前記赤道面Cの
ずれ方向の反対側(図6では下側)に配置された負荷圏
側の転動体24列が外輪軌道面から外れないようにする
ことができ、しかも、転動体24が外輪軌道面と多く接
触しているので、従来の自動調心玉軸受よりも大きな荷
重を支持することができる。
【0050】また、剛性に影響を与える軸受すきまの調
整は玉直径を変えて行うが、転がり軸受用鋼球において
は、μm単位で寸法の異なる鋼球が用意されているた
め、容易に行うことができる。以下、この球面転がり軸
受25をパラレルリンクステージと共に詳述する。図5
を参照して、パラレルリンクステージは、被加工物31
等がセットされる移動テーブル27と、複数の例えばシ
リンダ装置等の駆動装置28と、例えば床状の固定部2
9とを備えている。複数の駆動装置28はそれぞれ一端
部が固定部29に接続していると共に他端部が移動テー
ブル27に接続している。駆動装置28はそれぞれ伸縮
機構を有して伸縮自在となっており、該駆動装置28を
伸縮することによって、複数の軸方向と、これらの軸回
りの方向とに移動テーブル27を移動する。図示例にお
いては、パラレルリンクステージは駆動装置28を6つ
備えており、互いに直交する3軸の方向と、これら3軸
回りの方向とに移動テーブル27を移動する。
【0051】球面転がり軸受25は、駆動装置28の一
端部と移動テーブル27との間、及び駆動装置28の他
端部と固定部29との間を連結しており、移動テーブル
27が複数の軸方向とこれらの軸回り方向とに移動する
際に、該移動テーブル27の移動を妨げないようになっ
ている。また、球面転がり軸受25、図6に示すよう
に、内輪22と外輪21とこれら内輪22と外輪21と
の間に転動自在に設けられた転動体24としての玉と、
保持器30とを備えている。
【0052】内輪22は、円環状に形成されている。内
輪22の内周には、支持軸26が嵌合等により取り付け
られる。内輪22の外周面には、断面円弧状の軌道溝3
2が全周に渡って形成されている。内輪22は、軌道溝
32をその幅方向に二列互いに平行に形成している。外
輪21は、内輪22と同一の軸線P回りに円環状に形成
されている。外輪21は、その内周面が断面円弧状に形
成されている。外輪21の内周面の曲率の中心(赤道
面)Cは、外輪21の軸線P上に位置している。内輪2
2の幅より外輪21の幅の方が大きく形成されている。
支持軸26は内輪22の内周に嵌合し、且つ、外輪21
の一方の端面から突出している。
【0053】また、外輪21の断面円弧状の内周面の曲
率の中心Cは、外輪21の幅方向の中心、又はこの中心
より支持軸26が突出した側に寄って配置されている。
前記曲率の中心Cと外輪の一端面(上端面)との幅B
と、他端面(下端面)との幅Aとの関係は、下記の式を
満たしている。A≧B転動体24は、内輪22と外輪2
1との間に周方向に沿って互いに等間隔となる位置に複
数配置されている。転動体24は、内輪22の軌道溝3
2それぞれの内に配されている。転動体24は内輪22
の幅方向に沿って二列配置されており、内輪22の外周
側や外輪21の内周側に油やグリースなどの潤滑剤によ
って潤滑された状態で設けられている。保持器30は、
それぞれ転動体24を内輪22の軌道溝32と外輪21
の内周面との間に転動自在に保持している。
【0054】前述した構成によって、支持軸26は転動
体24等によって外輪の軸線に対して全方向に揺動自在
に支持されており、球面転がり軸受25は、転動体24
が外輪21の内周面を転動することによって、内輪22
が外輪21に対して傾いても内輪22が回転できるよう
になっている。また、上述した幅Bは支持軸26の外径
をd、外輪21の内周面の曲率半径をr2 、支持軸26
と外輪21の軸線Pとのなす角度をθ0 とすると、下記
式の関係を満たしている。なお、θ0 =30°の範囲ま
で本式を満足するようにr2 ,B,dを選定することが
好ましい。
【0055】√(r2 2−B2 )≧B×tanθ0 +(d
/2)/cosθ0 また、図示例において、図中に一点鎖線Qで示す内輪2
2及び転動体24が揺動する際の軌跡の曲率半径r
1 は、外輪21の内周面の曲率半径r2 と略等しくなっ
ている。球面転がり軸受25がパラレルリンクステージ
に用いられる際には、外輪21が移動テーブル27又は
固定部29に固定され、支持軸26の外輪21の端面か
ら突出した端部が駆動装置28と固定される。このた
め、駆動装置28が伸縮すると、支持軸26に沿って球
面転がり軸受25に荷重が作用する。
【0056】球面転がり軸受25は、回転角θ0 の範囲
内で軸線Pに対して全方向揺動させても支持軸26が外
輪21と干渉しないと共に転動体24が外輪21と内輪
22との間から抜け出すことがない。また、球面転がり
軸受25は内輪22の幅方向に沿って転動体24を二列
配置しているため、駆動装置28から作用した荷重は図
6のα,βに示すように、内輪22の幅方向に沿って配
された転動体24とそれぞれに向かう方向の分力として
支持される。このため、外輪21と内輪22と転動体2
4との構成は高い剛性を支持できるので、駆動装置28
などの荷重に対する剛性を確保することができる。この
ため、パラレルリンクステージの運動性能の低下を抑制
できる。
【0057】更に、この実施の形態では、表面に窒化層
23が形成された転動体24を用いているので、転動体
24と内外輪21,22との摩擦力を下げてすべりを防
止することができ、この結果、揺動トルクの低減及び耐
フレッチング性の向上を図ることができ、パラレルリン
クステージ全体の位置決め精度や剛性に大きく影響する
支持部の運動精度や剛性を優れたものとすることがで
き、更には、小型で高剛性でもあり、支持軸26を短く
することができるので、装置として小型化を図ることが
できる。
【0058】なお、転動体については、パラレルリンク
では、揺動を積極的に利用するので、球面ころでも差し
支えないが、高速運動は玉の方が適している。球面ころ
を用いた方が重荷重を負荷できるが内輪の揺動では外輪
軌道面との相対運動はすべりとなり、また、接触面積が
大きく、油膜の形成も困難であるので摩擦力が大きく、
揺動させるためには大きな駆動力が必要となる。
【0059】転動体に玉を使用した場合には球面ころの
場合より内輪の揺動における外輪軌道面との相対すべり
量および接触面積が小さいので摩擦力が小さく、揺動さ
せるための駆動力を小さくすることができる。いずれに
しても、転動体として玉を用いた場合も球面ころを用い
た場合でも、いずれも軌道面と転動面の相対運動はすべ
りが大きく、摩擦力の減少および摩耗量の減少は軸受性
能を向上につながり、表面に窒化処理した転動体を用い
ることは有効である。
【0060】また、図7〜図10に示すように、球面転
がり軸受の外輪に取り付け用のボルト穴等を設けたフラ
ンジを形成することによって、球面転がり軸受の装置へ
の取付性を良くすることができ、パラレルリンクステー
ジの設計自由度を広げることができる。更に、軸受潤滑
はグリースを基本としているが、固形油で軸受内部を満
たす固形油潤滑を用いることにより、メンテナンスフリ
ー化及びシール効果の向上が期待できる。
【0061】以下、本実施形態の窒化処理がすべり摩擦
に優れた特性を示すことを検証した結果を述べる。図1
1に示すピン−ディスクすべり摩耗試験を行って表面に
上記窒化処理が施されたピン(実施例)とそうでないピ
ンとの摩擦係数及び摩耗量を比較した。試験条件は以下
の通りである。
【0062】 回転速度:n=300rpm 押付力:P=9.8N 潤滑:鉱油VG32(油浴中) 材質:ディスク(円板)SUJ2 ピン 実施例 表2の実施例A−6 比較例 SUJ2 寸法:ディスク φ60mm ピン φ6mm(ディスクのPCDφ50mm位置
でピンとディスクが接触する。) 摩擦係数:ピンに歪みゲージを貼り、その歪みゲージの
曲げ応力を測定することによって摩擦係数を求める。
【0063】摩耗量:ピンの質量減少量を摩耗量とし
た。図12に比較例と実施例における摩擦係数の比較試
験結果を、図13に比較例と実施例における摩耗量の比
較試験結果を示す。図12から明らかなように、実施例
の方が比較例よりも摩擦係数が小さくなっており、窒化
処理した転動体を組み込むことによって、軸受の揺動抵
抗を小さくできることが判る。
【0064】また、図13から明らかなように、実施例
の方が比較例よりも摩擦量が小さくなっており、窒化処
理した転動体を組み込むことによって、軸受の耐フレッ
チング性を向上させることができるのが判る。パラレル
リンクステージは高速での移動が要求されるが、そこに
用いられる軸受の相対速度は弾性流体潤滑油膜を形成す
るには十分ではなく、油膜が不十分な状態でのすべり運
動が主体で、負すきまを持った状態で組み立てられて頻
繁に往復運動を繰り返す。往復運動を繰り返す場合は、
その終端で加速及び減速の速度変動が起こり、かつ速度
ベクトルが逆転する。このような条件下では、摩擦係数
を小さくして摩耗量を減らすことが運動性能の向上には
不可欠である。すなわち、パラレルリンクステージ用軸
受として、本実施例の窒化処理条件1を施した転動体を
用いることにより、摩擦係数を小さくして低トルクで迅
速に正確な運動が可能になるとともに、耐フレッチング
の向上により著しい耐久性向上が可能となる。
【0065】次に、本発明の第3の実施の形態である転
がり軸受を図14及び図15を参照して説明する。この
実施の形態は、図14に示すように、外方部材と内方部
材との間に形成された環状の軸受空間50に、鋼材から
なる複数の玉(転動体)51と、鋼材表面に窒化層52
が形成された少なくとも一個(図では一個)の高硬度玉
(転動体)53とを組み込んだ転がり軸受(軸受装置)
を提供すると共に、図15に示すように、前記軸受空間
50に、鋼材からなる複数の玉(転動体)51と、鋼材
表面に窒化層52が形成されて軸受空間50の周方向に
等間隔で配置される少なくとも二個(図では二個)の高
硬度玉(転動体)53とを組み込んだ転がり軸受(軸受
装置)を提供する。
【0066】窒化層52は、Hv900以上の化合物層
と拡散硬化層とからなり、具体的には、表2の実施例A
−5に相当するものを採用して高硬度玉53の方が玉5
1より硬度が高くなるようにしている。また、内方部材
及び外方部材は共に鋼材からなり、内方部材は内輪、軸
部材やその他の部材を用いることができ、外方部材につ
いては、外輪又はその他の部材を用いることができる。
【0067】かかる構成の転がり軸受においては、高硬
度玉53が異物の存在により軌道面に生じた圧痕上を転
動する際に、圧痕周囲に生じた突出部分を平らにするこ
とにより、圧痕の影響を修復して軸受の長寿命化を実現
することができる。なお、転動面に残る小さい穴には少
量の潤滑剤が集まり、転動体潤滑の助けとなる。また、
均一な窒化層52をもつ高硬度玉53の材質は他の玉5
1及び内方部材、外方部材と同じく鋼材なので、ヤング
率、密度、線膨張率も略同じであり、このため、セラミ
ック製転動体を使用する場合の負荷容量と耐衝撃性の低
下、予圧抜けなどの「発明が解決しようとする課題」の
欄で説明した〜の問題を全て解決することができ
る。
【0068】更に、特に低速で使用される場合に、油膜
形成不十分による軌道面の面荒れを、該面荒れが大きく
ならないうちに修復機能を有する高硬度玉53が通過す
るので、面荒れの修復が定期的に行われる。また、揺動
する軸受では、高硬度玉53を軸受空間50の周方向に
不均一に配置すると、面荒れが修復されない場合が発生
する可能性があるが、軸受空間50の周方向に等間隔で
少なくとも二個の高硬度玉53を均等に配置することに
より、確実に高硬度玉53を通過させることできる。
【0069】次に、本発明の第4の実施の形態である総
ころ軸受を図16及び図17を参照して説明し、また、
本発明の第5の実施の形態である総ボール軸受を図18
及び図19を参照して説明する。まず、第4の実施の形
態である総ころ軸受を説明すると、この総ころ軸受は、
図16に示すように、軸受の負荷容量を増すために、外
方部材と内方部材との間に形成された環状の軸受空間2
00に、保持器を用いずにころが目一杯に詰め込まれた
もので、鋼材からなる複数のころ(転動体)201と、
鋼材表面に窒化層202が形成された高硬度ころ(転動
体)203とが全周にわたって交互に配置されている。
【0070】窒化層202は、ビッカース硬さでHv9
00以上の化合物層と拡散硬化層とからなり、具体的に
は、表2の実施例A−5に相当するものを採用して高硬
度ころ203の方がころ201より硬度が高くなるよう
にしている。ころ201はJIS規格SUJ2材より製
作され、焼き入れ硬化により表面硬さがHv697〜8
00とされている。なお、ころ201と高硬度ころ20
3とを全周にわたって交互に配置するために、総ころ数
は偶数とされている。
【0071】また、内方部材及び外方部材は共に鋼材か
らなり、内方部材は内輪、軸部材やその他の部材を用い
ることができ、外方部材については、外輪又はその他の
部材を用いることができる。かかる構成の総ころ軸受に
おいては、高硬度ころ203が異物の存在により軌道面
に生じた圧痕上を転動する際に、圧痕周囲に生じた突出
部分を平らにすることにより、圧痕の影響を修復して軸
受の長寿命化を実現することができる。なお、転動面に
残る小さい穴には少量の潤滑剤が集まり、転動体潤滑の
助けとなる。
【0072】また、均一な窒化層202をもつ高硬度こ
ろ203の材質は他のころ201及び内方部材、外方部
材と同じく鋼材なので、ヤング率、密度、線膨張率も略
同じであり、このため、セラミック製転動体を使用する
場合の負荷容量と耐衝撃性の低下、予圧抜けなどの「発
明が解決しようとする課題」の欄で説明した〜の問
題を全て解決することができる。
【0073】更に、ころ201と高硬度ころ203とを
全周にわたって交互に配置しているため、全てのころ2
01について周方向の両側に高硬度ころ203が配置さ
れることになり、従って、ころ201と該ころ201に
接触する高硬度ころ203との表面特性の相違により、
ころ201同士が金属接触する場合よりも焼付や摩耗の
トラブルを生じにくくすることができ、この結果、転動
体間での油膜の発生を期待することができない総ころ軸
受であるにもかかわらず、高速運転を可能にすることが
できる。
【0074】更に、ころ201と高硬度ころ203とは
いずれも鋼材であるため、異なる鋼を用いたとしても線
膨張係数はほぼ同じであり、この結果、高温或いは低温
環境下にて軸受を使用しても、ころ201と高硬度ころ
203との直径寸法に差が生じることはなく、早期剥離
等のトラブルを防止することができる。図17に上記構
成の総ころ軸受を自動車の自動変速装置のプラネタリー
ギヤの支持軸受として用いた例を示す。
【0075】図において符号204は外方部材としての
はすば歯車、205は内方部材としてのプラネタリーピ
ンである。はすば歯車204の内周面及びプラネタリー
ピン205の外周面は共に軌道面とされており、各軌道
面間に形成された軸受空間には、鋼材からなる複数のこ
ろ(転動体)201と、鋼材表面に窒化層が形成された
高硬度ころ(転動体)203とが全周にわたって交互に
配置されて総ころ軸受とされている。
【0076】はすば歯車204はSCN415等の浸炭
鋼を浸炭焼き入れして歯部204aと軌道面が硬化され
ており、歯部204aはサンギア及びリングギヤ(共に
図示せず。)に噛み合っている。また、プラネタリーピ
ン205はSUJ材に高周波焼入れを施して外周軌道面
が硬化されている。プラネタリーピン205の端面は未
焼入れのままとされており、両端部をキャリア206の
穴207に挿入した後、端面の縁部205aを該穴20
7の面取り部208に押し広げて加締めによる固定がな
されている。
【0077】なお、耐焼付性能を向上するため、プラネ
タリーピンも窒化層を持つ高硬度ピンにすることも可能
である。従来の構造では、通常、潤滑油を給油するため
の穴をピンに加工して強制潤滑としていたが、この実施
の形態では、窒化層を持つ高硬度ころ或いは窒化層を持
つ高硬度ピンを用いることによって、耐焼付性能を向上
して飛まつ潤滑とし、ピンの穴加工を省略することによ
る加工費のコストダウンを実現している。
【0078】また、窒化層を持つ高硬度ピンを用いる場
合には、軸端も硬化してしまうので、ピンをキャリアに
取り付ける際には、図示のようにピンの軸端を加締めて
(205a)固定する方法は行わず、これに代えて、例
えばピンの端部に切り欠きを設け、その切り欠きにキー
を差し込んで回り止めとしてキャリアに固定する。図1
8に本発明の第5の実施の形態である総ボール軸受を示
す。
【0079】この総ボール軸受は、軸受の負荷容量を増
すために、外方部材と内方部材との間に形成された環状
の軸受空間300に、保持器を用いずに玉が目一杯に詰
め込まれたもので、鋼材からなる複数の玉(転動体)3
01と、鋼材表面に窒化層302が形成された高硬度玉
(転動体)303とが全周にわたって交互に配置されて
いる。
【0080】窒化層302は、ビッカース硬さでHv9
00以上の化合物層と拡散硬化層とからなり、具体的に
は、表2の実施例A−5に相当するものを採用して高硬
度玉303の方が玉301より硬度が高くなるようにし
ている。玉301はJIS規格SUJ2材より製作さ
れ、焼き入れ硬化により表面硬さがHv697〜800
とされている。なお、玉301と高硬度玉303とを全
周にわたって交互に配置するために、総玉数は偶数とさ
れている。なお、総玉数を奇数とすることも可能である
が、その場合には耐焼付性能を考慮し、交互に配置でき
ない同種類の隣り合う玉は高硬度玉とすることが好まし
い。
【0081】また、内方部材及び外方部材は共に鋼材か
らなり、内方部材は内輪、軸部材やその他の部材を用い
ることができ、外方部材については、外輪又はその他の
部材を用いることができる。かかる構成の総ボール軸受
においては、高硬度玉303が異物の存在により軌道面
に生じた圧痕上を転動する際に、圧痕周囲に生じた突出
部分を平らにすることにより、圧痕の影響を修復して軸
受の長寿命化を実現することができる。なお、転動面に
残る小さい穴には少量の潤滑剤が集まり、転動体潤滑の
助けとなる。
【0082】また、均一な窒化層302をもつ高硬度玉
303の材質は他の玉301及び内方部材、外方部材と
同じく鋼材なので、ヤング率、密度、線膨張率も略同じ
であり、このため、セラミック製転動体を使用する場合
の負荷容量と耐衝撃性の低下、予圧抜けなどの「発明が
解決しようとする課題」の欄で説明した〜の問題を
全て解決することができる。
【0083】更に、玉301と高硬度玉303とを全周
にわたって交互に配置しているため、全ての玉301に
ついて周方向の両側に高硬度玉303が配置されること
になり、従って、玉301と該玉301に接触する高硬
度玉303との表面特性の相違により、玉301同士が
金属接触する場合よりも焼付や摩耗のトラブルを生じに
くくすることができ、この結果、転動体間での油膜の発
生を期待することができない総ボール軸受であるにもか
かわらず、高速運転を可能にすることができる。
【0084】更に、玉301と高硬度玉303とはいず
れも鋼材であるため、異なる鋼を用いたとしても線膨張
係数はほぼ同じであり、この結果、高温或いは低温環境
下にて軸受を使用しても、玉301と高硬度玉303と
の直径寸法に差が生じることはなく、早期剥離等のトラ
ブルを防止することができる。図19に上記総ボール軸
受を半導体搬送ロボット・ リンク機構の間接部に適用し
た例を示す。
【0085】この実施の形態は、第1のリンク304と
第2のリンク305との間接部に総ボール軸受として接
触角30°の二個のアンギュラ玉軸受306を背面組合
せで配置したものである。第1のリンク304はアルミ
ニウム合金製とされており、一端に互いに対向する一対
の突出片307が突設されている。各突出片307に
は、それぞれ貫通孔308が同軸に形成されている。
【0086】一方、第2のリンク305も同様にアルミ
ニウム合金製とされており、一端に第1のリンク304
の各突出片307間に挿入される突出片309が形成さ
れている。突出片309には第1のリンク304の貫通
孔308より小径の貫通孔310が形成されている。ま
た、貫通孔310には、第2のリンク305の突出片3
09を第1のリンク304の各突出片307間に挿入し
た状態で、軸311が嵌合固定されている。軸311は
SUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼にて
製作されており、軸方向の中央に貫通孔310に嵌合固
定される大径部312が形成され、軸方向の両端部にそ
れぞれ小径部313が同軸に形成されている。
【0087】そして、軸311の各小径部313と第1
のリンク304の各貫通孔308との間にそれぞれアン
ギュラ玉軸受306が背面組み合わせて装着されてい
る。アンギュラ玉軸受306は外方部材としての外輪3
14及び内方部材としての内輪315を備えており、外
輪314及び内輪315は共にSUS440Cに焼入れ
硬化を施したものが用いられている。外輪314の軌道
面と内輪315の軌道面との間に形成される軸受空間に
は、鋼材(SUS440C)からなる複数の玉(転動
体)301と、鋼材(SUS440C)表面に窒化層3
02が形成された高硬度玉(転動体)303とが全周に
わたって交互に配置されて保持器を用いない総ボール軸
受とされている。
【0088】また、内輪315は、軸311の大径部3
12と小径部313との段部と、小径部313に取り付
けられた止め輪316とによって抜け止めがなされ、外
輪314は貫通孔308の内周面に取り付けられた止め
輪317によって抜け止めがなされている。ここで、内
輪315の抜け止めをなす止め輪316は異なる板厚寸
法のものが複数種類用意されており、所定の板厚の止め
輪316を選別して取付けることにより、予圧荷重の調
整が行われるようになっている。
【0089】なお、特許公報第2952739号では、
全ての玉をセラミック製としたので玉と内輪、外輪との
線膨張係数に差が生じ、このため、環境温度によって予
圧荷重が変化しないようにすべく一方の外輪側の止め輪
と外輪端面との間に波ワッシャを装着することになって
この波ワッシャによりアキシャル方向の剛性が低い関節
になるが、この実施の形態では、外輪314、内輪31
5、玉301及び高硬度玉303の母材は同じ材料なの
で、環境温度が変化しても予圧荷重が変化することはな
く、従って、波ワッシャを用いない構造にできるので従
来構造のものよりも剛性の高い軸受になる。
【0090】次に、図20を参照して、本発明の第6の
実施の形態であるハードディスクドライブ装置のスピン
ドルモータ用軸受装置を、図21を参照して、本発明の
第7の実施の形態であるハードディスクドライブ装置の
スイングアーム用軸受装置をそれぞれ説明する。図20
はハードディスクドライブ装置のスピンドルモータの回
転支持部に玉軸受(軸受装置)を組み込んだ状態を示し
ている。図において符号71はモータベース70に突設
された固定軸、72は固定軸71に二個の玉軸受76を
介して回転可能に嵌め込まれたハブ、74はモータベー
ス70に取り付けられたステータ、73はハブ72の内
周部に取り付けられたロータ(磁石部)であり、ハブ7
2の外周部にはディスク75が搭載されている。そし
て、ハブ72等の回転部材を二個の玉軸受76を介して
ラジアル方向に支持すると共に、ステータ74周りに回
転自在に支持し、ステータ74が発生する回転磁界によ
って回転部材が一体的に回転するようになっている。
【0091】二個の玉軸受76はいずれも外輪(外方部
材)77と内輪(内方部材)78との間に表面に窒化層
が形成された複数の玉(転動体)79が周方向に沿って
介装されたもので、固定軸71の軸方向に互いに離間配
置されて軸方向内方に予圧がかけられている。玉79の
表面に形成された窒化層は、ビッカース硬さでHv90
0以上の化合物層と拡散硬化層とからなり、具体的に
は、表2の実施例A−5に相当するものを採用してい
る。
【0092】一方、図21に示すスイングアーム用軸受
装置は、固定軸80と、スイングアーム81が取り付け
られる円筒状のハウジング82と、固定軸80とハウジ
ング82との間に互いに軸方向に離間して介装された二
個の玉軸受83とを備えており、スイングアーム81の
先端には磁気抵抗ヘッド84が取り付けられている。二
個の玉軸受83はいずれも外輪(外方部材)85と内輪
(内方部材)86との間に表面に窒化層が形成された複
数の玉(転動体)87が周方向に沿って介装されたもの
で、固定軸80の軸方向に互いに離間配置されて軸方向
内方に予圧がかけられている。玉87の表面に形成され
た窒化層は、ビッカース硬さでHv900以上の化合物
層と拡散硬化層とからなり、具体的には、表2の実施例
A−5に相当するものを採用している。
【0093】ここで、第6及び第7の実施の形態共に、
転動体として、マルテンサイト系ステンレス鋼の母材表
面に窒化層を形成した玉79,87を用いているため、
ヤング率が軸受鋼SUJ2の場合と殆ど同じ(SUJ2
のヤング率:208GPa、本発明の窒化層形成玉のヤ
ング率:240GPa、Si3 4 のヤング率:320
GPa)となって共振周波数の変化も小さいものとな
り、従って、SUJ2の鋼球に代えてセラミック球を用
いた場合に必要となる共振周波数の変化対策が不要にな
って、軸受取付回り構造の変更を行うことなく、耐フレ
ッチング性や耐摩耗性の向上を図ることができ、この結
果、このままでハードディスクドライブ装置のスピンド
ルモータやスウィングアーム等の支持に使用しても、共
振による音響や振動を回避することができると共に目標
トラックへの位置決め精度の向上を図ることができる。
【0094】図22及び図23に軸受装置の変形例を示
す。図22に示す軸受装置は、軸100に二個の玉軸受
101が軸方向に互いに離間して装着されたものであ
る。二個の玉軸受101はいずれも外輪(外方部材)1
02と内輪(内方部材)103との間に、表面にビッカ
ース硬さでHv900以上の化合物層と拡散硬化層とか
らなる窒化層が形成された複数の玉(転動体)104が
保持器105を介して周方向に沿って介装されたもの
で、各玉軸受101間に外挿されたばね106によって
各外輪102を軸方向外方に押圧して適正な予圧を付与
する構造とされている。この場合、各玉軸受101の内
輪103の内径面を軸100に接着或いは圧入固定する
と共に、外輪102の外径面をハウジングに接着固定す
ると定位置予圧となる。
【0095】また、図23に示す軸受装置は、図22に
示す軸受装置の内輪103に代えて、軸100の外周面
に内輪軌道溝107を形成し、且つ、二個の外輪102
のサイズが異なったものである。なお、ハードディスク
ドライブ装置のスピンドルモータやスウィングアームの
構造は、これらに限定されるものではなく、種々の構造
のものを採用することができるのは勿論である。
【0096】また、軸受装置についても、上記に限定さ
れるものではなく、摺動性と耐フレッチング性の要求か
らSUJ2の鋼球に代えてセラミック球を用いた場合に
共振周波数の管理が問題となる全ての軸受装置に本発明
を適用することができ、例えば特開平6−221326
号公報、特開平6−200926号公報、特開平11−
294449号公報及び特開平11−320295号公
報に開示された軸受装置に本発明を適用してもよい。
【0097】
【発明の効果】上記の説明から明らかなように、本発明
によれば、疲労寿命はもとより、フレッチング耐久性や
耐摩耗性或いは耐焼付性などの諸特性に優れ、また、異
物の存在による圧痕の発生で短命化されることがなく、
更には、負荷容量と耐衝撃性の低下および予圧抜けや静
電気作用による問題(ゴミ音により不良率が大きくな
る、組立て工程で搬送トラブルが生じる等)や、総ボー
ル軸受或いは総ころ軸受とした場合の高速回転時の焼
付,摩耗の発生や高温或いは低温環境下での早期剥離、
更には、軸受取付回り構造の変更等のセラミック製転動
体を使用する場合の問題点を克服できる安価な軸受装置
を提供することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】二円筒摩耗試験の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態であるクリーナモー
タ用玉軸受を説明するための説明的断面図である。
【図3】比較例と実施例における焼付き寿命の比較を示
すグラフ図である。
【図4】比較例と実施例におけるグリース中のCu含有
量の比較を示すグラフ図である。
【図5】パラレルリンクステージの全体概略図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態であるパラレルリン
ク支持部用軸受を説明するための説明的断面図である。
【図7】外方部材としての外輪のより好ましい構造を説
明するための説明図である。
【図8】図7のB−B線断面図である。
【図9】外方部材としての外輪のより好ましい構造を説
明するための説明図である。
【図10】上半分が図9のC−C線断面を、下半分が図
9の右側面を示す図である。
【図11】ピン−ディスク摩耗試験を説明するための説
明図である。
【図12】比較例と実施例におけるすべり距離と摩擦係
数との比較を示すグラフ図である。
【図13】比較例と実施例におけるすべり距離と摩耗量
との比較を示すグラフ図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態である転がり軸受
を説明するための説明図である。
【図15】軸受空間の周方向に少なくとも二個の高硬度
転動体を等間隔で配置した例を説明するための説明図で
ある。
【図16】本発明の第4の実施の形態である総ころ軸受
を説明するための説明図である。
【図17】総ころ軸受をプラネタリーギヤの軸受として
用いた例を説明するための説明的断面図である。
【図18】本発明の第5の実施の形態である総ボール軸
受を説明するための説明図である。
【図19】総ボール軸受を半導体搬送ロボット・ リンク
機構の間接部に適用した例を説明するための説明的断面
図である。
【図20】本発明の第6の実施の形態であるハードディ
スクドライブ装置のスピンドルモータ用軸受装置を説明
するための説明的断面図である。
【図21】本発明の第7の実施の形態であるハードディ
スクドライブ装置のスイングアーム用軸受装置を説明す
るための一部を破断した説明的斜視図である。
【図22】軸受装置の変形例を説明するための説明的断
面図である。
【図23】軸受装置の変形例を説明するための説明的断
面図である。
【図24】クリーナモータの概略断面図である。
【図25】図24のA部詳細図である。
【符号の説明】
11,21…外輪(外方部材) 12,22…内輪(内方部材) 14,24…転動体 13,23…窒化層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野口 昭治 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 田中 進 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 大堀 學 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 高見沢 徹 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 宮崎 晴三 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 (72)発明者 正田 義雄 神奈川県藤沢市鵠沼神明一丁目5番50号 日本精工株式会社内 Fターム(参考) 3J101 AA02 AA62 AA63 AA64 BA10 DA02 DA05 EA02 EA03 EA04 EA05 EA06 FA31 FA33 FA35 GA01 GA11 GA31 GA34 GA53 GA55

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外方部材と内方部材との間に転動体を配
    設してなる軸受装置において、前記転動体表面に窒化層
    を有し、該窒化層がHv900以上の化合物層と拡散硬
    化層とからなることを特徴とする軸受装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2004055399A1 (ja) * 2002-12-16 2004-07-01 Nsk Ltd. 4点接触玉軸受
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