JP2002235131A - 金属材料 - Google Patents

金属材料

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JP2002235131A
JP2002235131A JP2002007465A JP2002007465A JP2002235131A JP 2002235131 A JP2002235131 A JP 2002235131A JP 2002007465 A JP2002007465 A JP 2002007465A JP 2002007465 A JP2002007465 A JP 2002007465A JP 2002235131 A JP2002235131 A JP 2002235131A
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Katsuaki Nakamura
克昭 中村
Nobuyuki Ashie
伸之 芦江
Ryuji Matsubara
隆二 松原
Masanao Hamazaki
正直 濱崎
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高速な外力に対して高い延性をもつ黄銅及び
かかる黄銅の製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明の黄銅の製造方法は、(1)原料
組成の見掛け上のZn含有量が37〜46mass%であ
り、(2)鋳造時の凝固温度が5×101〜105K/s
ecであり、(3)凝固後の冷却速度が、400℃以下
になるまでは5K/sec以上である、の条件下で鋳造
を行って黄銅鋳造物を作るステップと、前記黄銅鋳造物
を再結晶温度まで加熱するステップと、480〜650
℃の範囲の温度で前記黄銅鋳造物の熱間押し出しを行な
って黄銅押出し物を作るステップを有する。これにより
外力をうけ変形するとき金属結晶の歪が分散して生じる
ような結晶組織が形成され、高速外力を受けると、分散
して生じた歪エネルギーが再結晶を生じさせて転位を解
消し、高速外力に対する高い延性をもつ黄銅が得られ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属材料とその製
造方法及び金属製品に関する。本発明は、主としてCu
−Zn系の銅合金つまり黄銅及びその製造方法に関わる
が、本発明の原理は黄銅のみに適用が限定されるもので
はない。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】従来よ
り、1000%を越える伸び率をもつ金属材料として、
例えばアルミニウムやステンレススチールが知られてい
る。これらの良好な延びは、結晶粒の粒界すべりが歪を
緩和することによって得られるものである。粒界すべり
は歪速度が0.01/sec程度の低速の外力に対して
有効に働くので、このような低速の外力に対してアルミ
ニウムやステンレススチールは大きな延性をもつ。しか
し、歪速度が0.1/secを越えるような高速の外力
に対しては、粒界すべりが有効に働かなくなるため、結
晶粒に過大な転位が生じ、結果として割れが発生する。
【0003】このような高速の外力に対して割れを生じ
させないために、加工中、熱エネルギーや変形による歪
エネルギーによって再結晶させること(動的再結晶)が
知られている。延性を向上させるための動的再結晶の利
用は黄銅などで実用されている。
【0004】従来の黄銅では、歪速度が0.1/sec
の高速外力に対して100%を若干越える程度の伸び率
を実現している。しかし、それ以上の延性を得ることは
従来技術では困難である。高速の外力に対して高い延性
を得るには再結晶速度を速くする必要がある。その方法
として再結晶を起こす熱エネルギーを増やすため高温状
態にすると、加工力が働く以前に結晶粒が粗大化してし
まい加工時に動的再結晶が起きなくなってしまう。そこ
で、従来は、結晶粒が粗大化しない限界の温度以下で加
工力を加えており、そのため、再結晶速度をより高める
にはエネルギーが不足している。
【0005】ところで、黄銅には実に多くの用途があ
る。用途に応じて黄銅に要求される特性は様々である。
例えば、鍛造用の黄銅素材には、上述した高速外力に対
する高い延性が要求される。また、例えばバルブや水栓
金具等の水接触部品に適用される黄銅には、水に対する
高い耐食性や高い耐浸食性が要求される。更に、高い強
度や良好な切削性も、種々の用途で要求される。
【0006】水に対する良好な耐食性を有するCu−Z
n−Sn系の銅合金としてネーバル黄銅棒(JIS C
−4641)、Cu−Zn系の銅合金として高力黄銅棒
(JIS C−6782)が知られている。ここで、黄
銅の耐食性とは主として脱亜鉛腐食に対する耐性を意味
する。脱亜鉛腐食とは、CuとZnのイオン化傾向の違
いから、水中にZnが優先的に溶出しやすく、その結
果、時間の経過とともにZnの含有量が減少して強度が
低下する現象を言い、黄銅を水接触部品に適用する場合
の重要な問題である。
【0007】耐食性の改善については、特公昭61−5
8540号公報に、Cu−Zn−Sn系の銅合金にP
b,Fe,Ni,Sb及びPを添加した、実質的にα相
である黄銅が開示されている。特開平6−108184
号公報には、Cu−Zn−Sn系の銅合金にPb,F
e,Ni,Sb及びPを添加したものを、熱間で押出ま
たは引抜いた後に500〜600℃で30分〜3時間熱
処理して実質的にα相とすることが開示されている。こ
れらの従来技術は、耐食性に極めて劣るβ相を析出させ
ず、実質的にα単相とすることにより、良好な耐食性を
実現している。
【0008】しかし、実質的にα相単相である上述した
従来の黄銅は、機械的強度及び切削性において劣る。機
械的強度及び切削性が良好な従来の黄銅はα+βの結晶
組織を有している。しかし、β相は耐食性に極めて劣る
から、α+βの結晶組織をもつ従来の黄銅は耐食性に劣
る。要するに、従来技術によれば、耐食性と、強度及び
切削性とを両立させることが困難である。
【0009】本発明はこのような問題点に鑑みてなされ
たものであって、高速な外力に対して高い延性をもった
金属材料を提供することを目的とする。また、高速な外
力に対しての高い延性と、良好な耐食性と良好な切削性
をもち、延性、強度、切削性及び耐食性のような種々の
特性に優れた黄銅を提供することにある。また、上記各
目的にかかる黄銅の製造方法を提供することを目的とす
る。さらには、種々の特性に優れた金属製品及び黄銅製
品を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の第1の側面に従う金属材料は、外力をうけ
変形するとき金属結晶の歪が分散して生じるような結晶
組織を有しており、変形による歪エネルギーが金属結晶
の再結晶化のエネルギー源となり得るものである。その
ため、高速外力を受けると、歪が局所的ではなく分散し
て生じて、その大きな歪エネルギーが再結晶を生じさせ
て転位を解消する。結果として、高速外力に対する高い
延性が得られる。
【0011】本発明に第2の側面に従う金属製品の製造
方法は、熱間加工時の外力により変形が生じた金属結晶
の歪エネルギーをSE、熱間加工時の加熱により金属結
晶に与えられる熱エネルギーをTEとしたとき、SE+
TE>変形した金属結晶の再結晶に必要な最低のエネル
ギー、TE<外力がない状態で結晶粒が粗大化するため
に必要なエネルギー、なる条件下で金属材料に熱間加工
を行う工程を有する。
【0012】本発明の製造方法では、熱間加工を行おう
とするとき、結晶粒が粗大化して延性が低下してしまう
ような高温にまでは金属材料を加熱しないが、比較的に
低い温度であっても動的再結晶が有効に生じるように、
外力による変形によって生じた金属材料内の歪エネルギ
ーが十分に大きくなるような条件を調える(変形による
エネルギーとは、転位の有するポテンシャルエネルギー
と推測される)。そのような条件の一例は、熱間加工に
供される金属材料の結晶組織を、外力を受けたときに歪
が分散して生じるようなものに調整することである(歪
が分散することは、ミクロ的には転移が分散することと
推測される)。その結果、加熱時に結晶粒が粗大化せ
ず、かつ加工の外力を加えた時、材料内で動的再結晶が
有効に発生するので、高速の外力に対しても大きな延性
が実現できる。
【0013】外力を受けたとき歪が分散して生じるよう
な結晶組織の一つのタイプは、比較的軟質な結晶と比較
的硬質な結晶との混合であって、かつ、結晶粒が十分に
微細なものである。そのような結晶組織では、外力を受
けたとき軟質結晶に変形が生じ、(多分、軟質結晶と硬
質結晶間の粒界すべりの作用で)その変形の生じた軟質
結晶が移動し分散する。そのような結晶組織は、少なく
とも2種の金属元素を含有し軟質な結晶相と硬質な結晶
相とが析出するような合金、典型的にはCuとZnの合
金である黄銅、において実現することができる。具体例
として、α+β、α+β+γ、α+γ型の黄銅であっ
て、結晶粒が微細(15μm以下)なものを挙げること
ができる。
【0014】また、上記のような2種金属の合金の軟質
結晶中に再結晶速度を高める(再結晶のための核が生じ
る速度を高める)のに寄与する第3元素を固溶させるこ
とも有効である。そのような第3元素の典型は、軟質結
晶中に置換型で固溶するように、上記2種類の金属元素
と原子半径が近似したもの、例えば黄銅の場合のSnで
ある。
【0015】本発明の第3の側面に従う黄銅は、再結晶
温度域においてα+βの結晶組織を有し、そして、再結
晶温度域において (A1) β相の面積比率が30〜80%であり、(A2) α
相及びβ相の平均結晶粒径が15μm以下、好ましくは
10μm以下であり、かつ、(A3) α相が分散して存在
する、という条件を満たしている。
【0016】この本発明に従う黄銅の好適な実施例は、
再結晶温度域において (1)歪み速度が1/secで100%の歪みを与えて破
損がない、(2)歪み速度が0.1/secで200%の
歪みを与えて破損がない、(3)歪み速度が0.01/s
ecで200%を越える歪みを与えて破損がない、又
は、 (4)歪み速度が0.001/secで600%を
越える歪みを与えて破損がない、という高い熱間延性を
有する。従来の黄銅では、このような高い延び率は実現
できない。また、従来の超塑性材料(例えばアルミニウ
ムやステンレススチール)は、上記(1)、(2)のような高
速歪みに対しては、良好な延性を有しない。
【0017】本発明の黄銅は、「α+γタイプ」、「α
+β+γタイプ」、「α+ノーマルβタイプ」及び「α
+強化βタイプ」と本明細書で呼ぶ4つのタイプに大別
できる。「α+γタイプ」の黄銅は、常温においてα+
γの結晶組織を有し、そして、常温において (B1) γ相の面積比率が3〜30%、好ましくは5〜3
0%であり、(B2) α相の平均結晶粒径が15μm以
下、好ましくは10μm以下であり、(B3) γ相の平均
結晶粒径(短径)が8μm以下、好ましくは5μm以下
であり、かつ、(B4) α相の粒界に前記γ相が存在して
いる、の条件を満たしている。このタイプの黄銅は切削
性に優れている。
【0018】「α+β+γタイプ」の黄銅は、常温にお
いてα+β+γの結晶組織を有し、そして、常温におい
て (B1) α相の面積比率が40〜94%であり、(B2) β
相及びγ相の面積比率が共に3〜30%であり、(B3)
α相及びβ相の平均結晶粒径が15μm以下、好ましく
は10μm以下であり、かつ(B4) γ相の平均結晶粒短
径が8μm以下、好ましくは5μm以下である、という
条件を満たしている。このタイプの黄銅も切削性に優れ
る。このタイプの黄銅は、好ましくは、更に、常温にお
いて (B5) γ相中に8mass%以上のSnを含有し、かつ
(B6) β相を前記γ相が包囲している、という条件を満
たすようにすることができる。すると、耐食性及び耐応
力腐食割れ性(耐SCC性)にも優れるようになる。
【0019】「α+ノーマルβタイプ」の黄銅は、常温
においてα+βの結晶組織を有し、そして、常温におい
て (B1) β相の面積比率が20%以上、好ましくは25%
以上であり、かつ(B2) α相及びβ相の平均結晶粒径が
15μm以下、好ましくは10μm以下である、という
条件を満たしている。このタイプの黄銅は切削性及び強
度に優れる。「α+強化βタイプ」の黄銅は、常温にお
いてα+βの結晶組織を有し、そして、常温において (B1) β相の面積比率が15%以上、好ましくは20%
以上であり、(B2) α相及びβ相の平均結晶粒径が15
μm以下、好ましくは10μm以下であり、かつ(B3)
β相が1.5mass%以上のSnを含有する、という
条件を満たしている。このタイプの黄銅は、切削性、耐
食性及び耐SCC性の全てに優れる。
【0020】いずれのタイプであっても、好適な実施例
は、再結晶温度域において歪み速度が0.01/sec
で400%の歪みを与えて破損がないという良好な熱間
延性を有し、更に、常温において下記(1)〜(3)に示す優
れた特性をもつ。 (1)良好な切削性 日本工業規格JIS C−3604に従う快削黄銅棒を
基準とした切削抵抗指数が80以上である。 (2)良好な耐食性 日本伸銅協会技術標準JBMA T−303に従う脱亜
鉛腐食試験を行なったとき、最大脱亜鉛浸透深さ方向が
加工方向と平行な場合には最大脱亜鉛深さ100μm以
下である、又は、最大脱亜鉛浸透深さ方向が加工方向と
直角な場合には最大脱亜鉛深さ70μm以下耐食性であ
る。 (3)良好な耐SCC性 円筒形試料を14%アンモニア水溶液上のアンモニア雰
囲気中に24時間暴露した後に荷重を加えたとき、前記
試料が割れない最大応力が180N/mm2以上であ
る。
【0021】従来のどのような金属材料も上記のような
条件を満たすことはできない。例えば、SPZ(亜鉛ア
ルミニウム)やアルミニウムは水中での耐食性に劣り、
特にアルミは孔食を生じ、また、これらは粘っこいため
に切削性にも劣る。
【0022】本発明の第4の側面に従う黄銅の製造方法
は、(1) 原料組成の見掛け上のZn含有量が37〜46
mass%であり、(2) 鋳造時の凝固速度が5×101
〜105K/sec、好ましくは102〜105K/se
cであり、かつ(3) 凝固後の冷却速度が、400℃以下
になるまでは5K/sec以上である、の条件下で鋳造
を行って黄銅鋳造物を作るステップを有する。この方法
で製造された黄銅鋳造物は、本発明の第3の側面に従う
黄銅の再結晶温度域における条件を満たすので、高い熱
間延性を持つ。
【0023】本発明の製造方法は、上記鋳造の後に、4
80〜650℃、好ましくは480〜600℃の範囲の
温度で上記黄銅鋳造物の熱間押し出しを行なって黄銅押
出し物を作るステップを更に有することができる。この
熱間押出し後の冷却は、好ましくは、400℃以下にな
るまで0.4K/sec以上の速度で行う。結果とし
て、その黄銅押出し物も、本発明の第3の側面に従う黄
銅の条件を満たす。
【0024】本発明の第5の側面に従う黄銅の製造方法
は、見掛け上のZn含有量が37〜46mass%であ
る黄銅素材を、(1) 押出し時の温度が480〜650
℃、好ましくは480〜600℃の範囲内であり、かつ
(2) 押出し時の断面減少率が90%以上、好ましくは9
5%以上である、の条件下で熱間押出しして黄銅押出し
物を作るステップを有する。この製造方法によっても、
本発明の第3の側面に従う黄銅の条件を満たす黄銅押出
し物を得ることができる。熱間押出し後の冷却速度は、
好ましくは400℃以下になるまでは0.4K/sec
以上である。このような冷却により、冷却後も結晶粒径
が粗大化せず、本発明の黄銅の一つの特徴である15μ
m以下の微細な結晶粒をもった結晶組織が得られる。
【0025】この製造方法は、上記黄銅押出し物を再加
熱し、480〜750℃の範囲内の温度で熱間鍛造して
黄銅鍛造物を作るステップを更に有することができる。
その鍛造物も、本発明の第3の側面に従う黄銅の条件を
満たす。熱間鍛造の歪み速度は、好ましくは1/sec
以上である。そのような高速な熱間鍛造では、鍛造時に
結晶粒径が粗大化することがない。熱間鍛造後の冷却速
度も、好ましくは、400℃以下になるまで0.4K/
sec以上である。それにより、冷却後も結晶粒径が粗
大化せず、15μm以下の微細な結晶粒が得られる。
【0026】上記の製造方法を用いて本発明の「α+γ
タイプ」の黄銅を作る場合、黄銅素材のSn含有量が
0.9〜7mass%、熱間押出し又は熱間鍛造後の冷
却速度が400℃以下になるまで0.4〜5K/sec
という条件を選ぶことができる。あるいは、別法とし
て、黄銅素材のSn含有量を0.9〜7mass%にす
るとともに、黄銅鍛造物を加熱して400〜550℃の
温度に30秒間以上維持し、その後400℃以下になる
まで0.4〜5K/secの速度で冷却する、という熱
処理工程を熱間鍛造工程の後に加えることもできる。
【0027】上記製造方法を用いて本発明の「α+β+
γタイプ」の黄銅を作る場合、黄銅素材のSn含有量が
0.9〜7mass%、熱間押出し又は熱間鍛造後の冷
却速度が400℃以下になるまで0.4〜10K/se
cという条件を選ぶことができる。あるいは、冷却速度
を上記のように調整するのに代えて、熱間鍛造後に、黄
銅鍛造物を加熱して450〜550℃の温度に30秒間
以上維持し、その後400℃以下になるまで0.4〜1
0K/secの速度で冷却する、という熱処理工程を追
加することもできる。
【0028】上記製造方法を用いて本発明の「α+強化
βタイプ」の黄銅を作る場合、黄銅素材のSn含有量が
0.5〜7mass%で見掛け上のZn含有量が37〜
44mass%、熱間押出し又は熱間鍛造後の冷却速度
が400℃以下になるまで5〜1000K/secとい
う条件を選ぶことができる。あるいは、冷却速度を上記
のように調整するのに代えて、熱間鍛造後に、黄銅鍛造
物を加熱して475〜550℃の温度に30秒間以上維
持し、その後400℃以下になるまで5〜1000K/
sec以上の速度で冷却するという熱処理工程を追加す
ることもできる。
【0029】本発明の第6の側面に従う黄銅の製造方法
は、見掛け上のZn含有量が37〜46mass%であ
る黄銅素材を加熱し次に冷却するステップと、その黄銅
素材の冷却後の結晶組織をα+γ、α+β及びα+β+
γの中から選択するために、加熱温度、加熱の保持時間
及び冷却速度の少なくとも一つを制御するステップとを
有する。例えば、同一の加熱温度及び加熱保持時間の下
で、冷却速度を、α+γを得るには最も遅くし、α+β
+γを得るにはより速くし、α+βを得るには最も速く
する、のように制御することができる。
【0030】本発明の第7の側面に従う銅合金(典型的
には黄銅)は、次のような優れた切削生と機械的強度と
を有する。すなわち、日本工業規格JIS C−360
4に従う快削黄銅棒を基準とした切削抵抗指数が80以
上であり、かつ、0.2%耐力又は降伏応力が300N
/mm2以上である。従来、このように優れた切削性及
び強度を兼ね備えている銅合金はない。例えば青銅は、
80以上の切削抵抗指数を有するが、その0.2%耐力
は80N/mm2、引張強度220N/mm2程度にすぎ
ない。青銅は銅を79%以上含むため、一般的に強度を
向上させることが難しい。青銅の強度向上のための一つ
の方法はSn量を増すことである。しかし、青銅におい
てSn量が増すと、鋳造時のひけ巣(凝固収縮時の気
泡)という欠陥がより多くなり、結果的に強度が劣化す
る。これに対し、本発明の銅合金、特に黄銅は、耐食性
に優れた銅と切削性に優れた亜鉛とが適切にバランスす
ることにより、切削性と強度が改善されている。
【0031】本発明の第8の側面に従う銅合金(典型的
には黄銅)は、次のような優れた耐SCC性を有する。
すなわち、本発明の銅合金の円筒形試料を14%アンモ
ニア水溶液上のアンモニア雰囲気中に荷重を加えながら
24時間暴露したとき、その試料が割れない最大応力が
180N/mm2以上である。耐SCC性向上には、強
度向上と耐食性向上が必要(それだけで十分ではない
が)である。本発明では、耐食性に優れた銅の特性を利
用して耐SCC性を改善している。因みに青銅は応力に
弱く、100N/mm2程度の応力で塑性変形を起して
しまう。
【0032】本発明の第9の側面に従う黄銅は、次のよ
うな優れた切削生と耐食性とを有する。すなわち、快削
黄銅棒を基準にした切削抵抗指数が80以上であり、か
つ日本伸銅協会技術標準JBMA T−303に従う脱
亜鉛腐食試験を行なったとき、最大脱亜鉛浸透深さ方向
が加工方向と平行な場合には最大脱亜鉛深さが100μ
m以下、又は、最大脱亜鉛浸透深さ方向が加工方向と直
角な場合には最大脱亜鉛深さ70μm以下である。因み
に快削黄銅棒は耐食性に劣り、上記脱亜鉛腐食試験を行
ったときの最大脱亜鉛深さが200μm程度に達する。
【0033】黄銅の切削性を向上させる一つの方法は、
平均結晶粒径を15μm以下、好ましくは10μm以下
とすることである。これに加えて、α相と、このα相の
粒界に存在する、α相より軟質又は硬質な部分とを有す
るように結晶組織を調整すると望ましい。α相より軟質
な部分とは、例えばPb又はBiのような別の金属であ
る。α相より硬質な部分とは、例えばβ相やγ相や、F
eSi又はFePのような金属間化合物や、Cu又はM
gの酸化物などである。α+βとα+γの結晶組織を比
較した場合、α+γの方がα+βより2相間の硬度差が
大きいため、切削性がより高い。
【0034】黄銅の切削性だけでなく耐食性も向上させ
るためには、次の様な方法を採ることができる。例え
ば、α+γの結晶組織では、γ相にSnを好ましくは8
mass%以上含有させることが有効である。また、α
+βの結晶組織では、β相に耐食性向上のための第3元
素(例えば、Sn、Si、Al、Sb、Ge又はGa)
を含有させることが有効である。Snを含有させる場
合、β相中のSn濃度は1.5mass%以上が好まし
い。また、α相と、β相と、β相の結晶粒を包囲したβ
相より耐食性に優れた部分とを有する結晶組織も有効で
ある。β相より耐食性に優れた部分とは、例えばSnを
8mass%以上含有したγ相である。このようなα+
β+γの結晶組織では、γ相の脆さが現れないようにす
るために、γ相の平均結晶粒短径を8μm以下とするこ
とが望ましい。
【0035】本発明に従って切削性と耐食性を向上させ
た黄銅は、種々の用途に適用できるが、特に水管部品に
適している。本発明の黄銅は平均結晶粒径が小さいた
め、冷間延性はあまり優れない。しかし、水管部品の用
途では、本発明の黄銅は要求される製品品質を十分満た
し得る。
【0036】本発明のさらに別の側面は、本発明の金属
又は黄銅を用いた各種の製品を提供する。本発明のさら
にまた別の側面は、本発明の金属又は黄銅を製造するた
めに使用できる製造設備も提供する。
【0037】
【発明の実施の形態】Cu−Zn系の銅合金の用途は、
水栓や水道管のような水接触部品、家電製品、機械部
品、建材、ガス器具及び光学部品など広範囲にわたる。
この種の銅合金には、強度、冷間延性、硬度、切削・研
磨性等の一般的特性に優れるだけでなく、耐食性、耐潰
食性、耐応力腐食割れ性等の水接触部品で要求される諸
特性にも優れることが望まれる。
【0038】本発明の一つの原理は、上記諸特性を向上
させるために、Cu−Zn系銅合金の結晶相の特性に着
目している。α、β、γの3つの結晶相が従来から知ら
れている。γ相は、耐食性及び強度には優れるが、脆性
が高いためその特性を積極的に活用しようとする試みは
従来なされていない。β相は、耐食性が低いため、水接
触部品には適しないと従来評価されている。α相は、耐
食性及び冷間延性に優れるが、強度及び切削性において
劣る。このように各結晶相の特性は従来は固定的に捉え
られがちであり、積極的に結晶相の特性を改変しようと
する試みはなされていない。
【0039】これに対し、本発明の発明者らは、上記の
各種特性に影響を与える要因について研究を重ねた結
果、結晶相の種類以外に結晶粒の大きさも重要な要因で
あることを究明した。この研究の成果によれば、第1
に、γ相を有効利用することにより黄銅の特性が改善さ
れる。第2に、特にβ相の特性を改変することにより黄
銅の特性が改善される。第3に、結晶粒径を最適化する
ことにより黄銅の特性が改善される。
【0040】γ相を析出させるため及びβ相の特性を改
変するための一つの具体的手段として、Snの添加が採
用できる。しかし、Snの添加は熱間延性の低下を生じ
させるので、鍛造用の黄銅素材には不適である。この問
題を解決するため、熱間延性に関して発明者らは更なる
研究を重ねた。その結果、第4に、結晶粒径の最適化が
熱間延性の向上をもたらすことが究明された。第5に、
α相及びβ相の混合比を最適化することにより、β相の
動的再結晶が得られ、それによって熱間延性が向上する
ことが究明された。
【0041】本発明の実施例では上記の研究成果が活用
される。本発明の実施例の説明に入る前に上述した3つ
の結晶相の特性を説明しておくことが有用であろう。図
1は、Cu−Zn合金(黄銅)に現れる3つの結晶相の
特性と、純Cu、純Zn、純Snの特性を示す。
【0042】図1から分るように、純Cuは耐食性、常
温での延性及び冷間鍛造性(冷間鍛造の容易さ)には優
れるが、耐力及び切削性(切削の容易さ)等において劣
る。その代り、従来からZnを添加したCu−Zn合金
(黄銅)が広く実用されている。Cu−Zn合金では、
Znの添加量によって結晶組織が異なる。見掛け上のZ
n含有量を37mass%以下とした場合にはα相単相
となり、見掛け上のZn含有量を37mass%以上と
した場合にはβ相が現れる(α+β又はβ)。更に見掛
け上のZn含有量を増やすとγ相が現れる(α+β+
γ、α+γ、β+γ又はγ)。Znの真の含有量が低く
ても、Sn(そのZn当量は2である)を添加して特定
の熱処理を施すと、見掛け上のZn含有量が増えてγ相
が現れる。ここで、「見掛け上のZn含有量」という用
語は、AをCu含有量〔mass%〕、BをZn含有量
〔mass%〕、tを添加した第3元素(例えばSn)
のZn当量、Qをその第3元素の含有量〔mass%〕
としたとき、「{(B+t・Q)/(A+B+t・
Q)}×100」の意味で用いる。
【0043】α相単相の黄銅は耐食性、冷間鍛造性に優
れるが、耐力及び切削性において劣る。これにSnを添
加することによって耐食性及び耐力を向上させることが
できるが、Snの添加量を2mass%以上にすると逆
に脆くなってしまう傾向がある。β相はα相とほぼ逆の
特性を持ち、耐食性及び冷間鍛造性には劣るが、耐力、
熱間鍛造性(熱間鍛造の容易さ)及び切削性には優れ
る。発明者らの研究により得られた一つの新規な知見
は、β相結晶粒中にSnを添加することによって耐食性
及び耐力がともに向上し、特に耐食性はα相単相の合金
とほぼ匹敵する程度まで向上することである。γ相はS
nを所定量以上添加した場合に現れる。γ相は脆いが、
耐食性及び耐力には優れる。
【0044】ここに、銅合金の「耐食性」とは主として
脱亜鉛腐食に対する耐性を指す。脱亜鉛腐食とは、Cu
とZnのイオン化傾向の違いから、水中にZnが優先的
に溶出してZn含有量が減り、時間の経過とともに強度
が低下する現象を言い、Cu−Zn系合金を用いる場合
の問題である。本発明に従うCu−Zn系合金(黄銅)
では、上述した異なる特性(改質した特性を含む)をも
つ結晶相が適切に組み合わされるとともに、結晶粒径が
最適化されている。
【0045】図2〜図4は、本発明に従う黄銅の19種
類の実施例の組成と諸特性を、従来技術に従う黄銅(比
較例)のそれと対比して示している。実施例1〜19の
結晶組織における特徴は次の通りである。実施例1〜5
はα+γの結晶組織を有し、結晶粒が微細化(15μm
以下)され、かつ改善された特性をもつγ相が有効に利
用されている。実施例6〜12はα+β+γの結晶組織
を有し、結晶粒が微細化され、かつ改善された特性をも
つβ相とγ相とが有効に利用されている。実施例13〜
15はα+βの結晶組織を有し、結晶粒が微細化されて
いる。実施例16〜19はα+βの結晶組織を有し、結
晶粒が微細化され、かつSn添加によりβ相の特性が改
善されている。更に、これら実施例1〜19では、各結
晶相の比率も適切に調整されている。これら実施例の結
晶組織の詳細については後に説明する。
【0046】実施例1〜19は、本発明の原理に従った
製造条件下で、図2に示す組成をもった黄銅試料を鋳造
しこれを熱間押出しし次いで熱間鍛造することにより製
造された(具体的な製造手順は図5に示す)。図2〜図
4中の熱処理条件は、鍛造時の温度と冷却方法とを示
す。空冷の冷却速度は0.8K/sec、水冷の冷却速
度は100K/secであった。
【0047】図4には特性として、「0.2%耐力〔N
/mm2〕」(0.2%の永久伸びを起こす引っ張り応
力)、「冷間延性〔%〕」(冷間加工温度域での延
性)、「硬度〔HV〕」、「熱間延性」(熱間加工温度
域つまり再結晶温度域での延性)、「切削抵抗指数」、
「耐食性」、「耐エロージョン腐食性」、及び「耐応力
腐食割れ性」(耐SCC性)が挙げられている。図4で
は、各特性についての評価がマークで示されている。
「0.2%耐力」については、300N/mm2未満を
劣(×)、300N/mm2以上350未満を良
(○)、350N/mm2以上を優(◎)と評価した。
「熱間延性」については、歪速度100(/SEC)で
試料の引っ張りテストを行った結果、割れが生じなかっ
た最大の歪率が100%未満を劣(×)、100%以上
を良(○)とした。「切削抵抗指数」については、後述
するような切削テストを行った結果、快削黄銅棒(JI
S C−3604)を基準とした切削抵抗指数が80未
満を劣(×)、80以上を良(○)とした。
【0048】「耐食性」については、日本伸銅協会技術
標準(JBMA T−303)による脱亜鉛腐食試験を
行ない、JBMA T−303に示されている判定基準
に従って評価を行った。すなわち、脱亜鉛浸透深さ方向
が加工方向と平行な場合には最大脱亜鉛浸透深さが10
0μm以下を良(○)、また脱亜鉛浸透深さ方向が加工
方向と直角な場合には最大脱亜鉛浸透深さが70μm以
下を良(○)とし、これらの基準に満たないものを劣
(×)とした。
【0049】「耐エロージョン腐食性」については、後
述するテスト条件の下で、1500時間経過後に漏れを
生じないのに必要な締めつけトルクが0.8N・m以上
を劣(×)、それ以下を良(○)とした。「耐応力腐食
割れ性」については、後述するテスト条件の下で、24
時間経過後に割れを発生したものを劣(×)、割れのな
いものを良(○)とした。図2〜図4からわかるよう
に、実施例1〜5は、耐力、冷間延性、耐食性、耐エロ
ージョン腐食性、耐応力腐食割れ性で良(○)又は優
(◎)と評価された。実施例1及び2は切削性で劣
(×)と評価されたが、その理由は、γ相が3%以上且
つβ相が3%以上、又はγ相が5%以上という最適条件
が満たされていないからと推測される。実施例1は熱間
延性でも劣(×)と評価されたが、その理由は、見掛け
上のZn含有量が38mass%に満たないため、熱間
加工時にβ相が30%に達していないからと推測され
る。
【0050】実施例6〜12は、全ての特性について良
(○)又は優(◎)と評価された。実施例13〜15で
は、耐食性、耐エロージョン腐食性を除く他の特性で良
(○)又は優(◎)と評価された。実施例13〜15が
耐食性及び耐エロージョン腐食性で劣(×)と評価され
た理由は、耐食性に優れるγ相を含んでおらず、かつβ
相中のSn濃度が1.5mass%に満たないからと推
測される。実施例16〜19は、全ての特性について良
(○)又は優(◎)と評価された。
【0051】以下に、本発明の実施例の有利性を、特に
「熱間延性」、「切削抵抗指数」、「耐エロージョン腐
食性」、「耐応力腐食割れ性」に関して説明する。ま
ず、「熱間延性」における本発明実施例の有利性を説明
する。熱間延性が良好であることは、熱間鍛造のような
熱間加工に供されるビレットの最重要特性の一つであ
る。
【0052】図5は、黄銅製品の熱間鍛造を用いた製造
工程の一例を示す。まず、ステップ1で、電気銅、電気
亜鉛及びスクラップを混合して溶解鋳造を行なう。次に
ステップ2で、鋳造後に急冷して中間成形体を製造した
後、この中間成形体を加熱し、押出成形により棒状又は
線状のビレットを作る。次のステップ3で、棒状又は線
状のビレットを冷間引抜きし、焼鈍及び酸洗いを行い、
そして所定寸法に切断する。
【0053】次のステップ4では、次ステップの鍛造に
適した特性を確保するため、上記ビレットを加熱する。
次のステップ5で、その加熱したビレットを鍛造用金型
内にセットして鍛造を行なう。この後、ステップ6への
移行準備として、冷却を行なう。冷却が終わると、ステ
ップ6へ進み、酸洗及びショットブラストを行って表面
の酸化被膜を除去し、更にバリ取りを行う。最後のステ
ップ7で、切削、研磨及び鍍金の各工程を経て製品を得
る。
【0054】図6及び図7は、図5の製造工程に従っ
た、本発明の製造方法の2つの実施例(本発明方法1、
本発明方法2)と従来の製造方法とを、製造条件及び製
品の結晶組織に関して対比して示している。図6におい
て、「見掛け上のZn含有量」は図5に示したステップ
1で溶融される材料の混合率に関わり、「鋳造時の凝固
速度」及び「鋳造後の冷却速度」はステップ1の鋳造の
条件に関わり、「押出温度」及び「押出し後の冷却」は
ステップ2の熱間押出しの条件に関わるものである。図
7において、「粒径」はステップ2の熱間押出しが終わ
った後のビレットのそれ(本発明方法では最終製品の結
晶粒径も同様になる)を指し、「鍛造時のβ相比率」、
「鍛造温度」及び「歪率と歪速度」はステップ5におけ
る鍛造の条件に関わり、「耐力」及び「鍛造後のα、
β、γ相比率」はステップ7で完成した製品のそれを指
す。
【0055】図6に示すように、従来方法に比較して、
本発明方法1及び2では、黄銅素材の見掛け上のZn含
有量がより大きく(典型的には、Snの添加量がより多
い)、熱間鋳造(ステップ1)時の凝固速度及び鋳造後
の冷却速度がより速く、熱間押出し(ステップ2)時の
温度がより低く、かつ、押出し後の冷却速度がより速い
(具体的には、400℃までは0.4K/sec以上の
速度で冷却する)。また、図6には示してないが、本発
明方法1及び2では、押出しの断面減少率は90%以
上、好ましくは95%以上である。
【0056】このような本発明方法1及び2で準備され
たビレットは、図7に示すように、従来方法で準備され
たビレットに比較して、より低い鍛造温度下で、より大
きい歪率と歪速度をもって鍛造(ステップ5)すること
ができる。その理由は、図7に示すように、本発明方法
1、2によるビレットは、従来方法によるビレットに比
較して、結晶粒径がより小さく、かつ、比較的に低い鍛
造温度でも熱間延性に優れるβ相を適当な比率で含むた
めと推測される。より低い温度で鍛造できることは、鍛
造設備の劣化が少ない点で有利である。更には、図7に
示すように、本発明方法1及び2で鍛造された製品の耐
力は従来の鍛造製品より大幅に大きい。
【0057】図8は、本発明の方法と従来の方法とでそ
れぞれ作られた2種類のビレット(具体的には図2〜図
4に示す実施例10と比較例4)の鍛造温度域での熱間
延性を示している。横軸が歪速度ε〔sec−1〕を示
し、縦軸が歪率εL〔%〕を示す。実施例10は明らか
に比較例4より明らかに熱間延性で優れている。次に、
「切削抵抗指数」における本発明の実施例の有利性を説
明する。図9は、図2〜図4に示した比較例3、実施例
8、10、11、快削黄銅棒(JIS C−360
4)、及びα相単相の黄銅素材について、切削試験を行
った結果を示している。
【0058】切削試験では、図10に示すように、旋盤
で丸棒状の試料1の周面を100〔m/min〕と40
0〔m/min〕の2つの異なる速度で切削しつつ、主
分力Fvを測定した。各試料の切削抵抗指数は、各試料
の主分力に対する切削性が最も良いといわれる快削黄銅
棒の主分力の百分率である。図9に示すように、実施例
8、10及び11の切削抵抗指数は、最良の切削性をも
つ快削黄銅棒の90%近くに達し、比較例3及びα相単
相黄銅のそれよりも良好であった。
【0059】次に、「耐エロージョン腐食性」における
本発明実施例の有利性を説明する。図11は、図2〜図
4に示した実施例8、11及び比較例4の耐潰食性試験
の結果を示している。図12は、その耐潰食性試験の方
法を示している。耐潰食性試験では、図12に示すよう
に、オリフィス7を内部に有する円筒状試料5を用い、
そのオリフィス7に水を流速40m/secで所定時間
流した後、4.9×105Pa(5Kg/cm2)の水圧
下でオリフィス7をシールするのに要する樹脂栓9への
締めつけトルクを測定した。図11に示すように、実施
例8及び11は、比較例4に比べて優れた耐潰食性を有
していることが分かる。
【0060】次に、「耐応力腐食割れ性(耐SCC
性)」における本発明実施例の有利性を説明する。耐S
CC性試験では、図13に示すように、ガラスデジケー
タ11内で円筒状の試料13に垂直に荷重を加えた状態
で、NH3蒸気雰囲気中に24時間暴露した後、割れの
発生を調査した。図14は、図2〜図4に示した実施例
8、11、15及び比較例4の試験結果(主応力と割れ
の発生の関係)を示している。図14から、実施例8、
11、15が比較例4よりも良好な耐SCC性を有して
いることが分かる。
【0061】以上のように、図2〜図4に示した本発明
の実施例1〜19は良好な特性を有する。既に述べたよ
うに、実施例16〜19はα+β結晶組織において、結
晶を微細化(15μm以下)し、かつβ相中へのSn添
加により特性を改善したものであり、本発明に従う黄銅
の中でこのタイプを以下「α+強化βタイプ」という。
実施例1〜5はα+γ結晶組織において結晶粒を微細化
しかつγ相を利用して特性を改善したものであり、この
タイプを以下「α+γタイプ」という。実施例6〜12
はα+β+γ結晶組織において結晶粒を微細化しかつγ
相を利用して特性を改善したものであり、このタイプを
以下「α+β+γタイプ」という。実施例13〜15は
α+β結晶組織において結晶粒径を微細化して特性を改
善したもので、これを以下「α+ノーマルβタイプ」と
いう。
【0062】以下、本発明に従う上記3つのタイプの黄
銅の結晶組織や製法について詳説する。まず、「α+強
化βタイプ」について説明する。このタイプでは、α相
の結晶粒の間に、Snを1.5mass%以上含有した
β相が存在している。
【0063】図15に、「α+強化βタイプ」に関連す
る7種類の黄銅試料No.1〜7を列挙する(図2〜図
4に列挙したものとは別物である)。図15には、試料
No.1〜7の組成、見掛け上のZn含有量、β相中の
Sn濃度、及び耐食性(耐脱亜鉛腐食性)試験の結果が
示されている。β相中のSn濃度は、熱処理と冷却処理
とによって調整されたものであり、EPMA分析により
定量した。耐食性判定結果は、図2〜図4に関連して既
に説明した通りの方法で行った。
【0064】図15から、耐食性にはβ相中のSn濃度
が密接に関連していることが明らかである。つまり、β
相中のSn濃度が1.5mass%以上であることが良
好な耐食性を得る上で必要である。図15中、試料N
o.3〜7がこの条件を満たしており、これらが本発明
の「α+強化βタイプ」に属するものである。因みに、
β相中のSn濃度が1.5mass%以上であるこのタ
イプの黄銅では、合金全体でのSn濃度は0.5mas
s%以上、見掛け上のZn含有量は37mass%以上
44mass%以下である。
【0065】β相中のSn濃度には、製造工程で行う熱
処理又は熱間加工の条件(例えば、冷却速度、熱処理温
度、熱処理時間など)が影響する。図16は、熱処理温
度が550℃の場合において、熱処理後の400℃まで
の冷却時間と、β相中のSn濃度との関係を調べた実験
結果を示すグラフである。図16から、冷却開始から4
00℃までの冷却速度が0.4K/sec以上(図16
中の点より左側の領域)であれば、β相中のSn濃度
が1.5mass%以上となることが分る。更なる実験
により、冷却速度の上限については少なくとも1000
K/secまでは許容できることが確認できた。また、
熱処理温度が550℃の場合だけでなく、510℃のよ
うな他の熱処理温度の場合にも、上記と同じ実験結果を
得た。
【0066】図17は、熱処理温度(熱処理時の試料の
温度)と熱処理時間(熱処理温度の保持時間)がβ相中
のSn濃度及び及びβ相の面積占有比率に及ぼす影響を
調べた実験結果を示している。図17から、熱処理温度
がより高い程、又は熱処理時間がより長い程、β相中の
Sn濃度が増加することが分る。一方、熱処理温度がよ
り高い程、又は熱処理時間がより長い程、β相の面積占
有比率が低下することが分る。また、少なくとも、図1
7に示した熱処理温度が475℃から550℃で且つ熱
処理時間が30秒以上であるという範囲内であるなら
ば、β相中のSn濃度が1.5mass%以上にするこ
とができる。熱処理時間を長くするとβ相中のSn濃度
が増加して耐食性が向上するが、製造工程における熱処
理の経済性を考慮すると、熱処理時間は3時間以下が好
ましい。
【0067】次に、本発明の「α+γタイプ」及び「α
+β+γタイプ」の黄銅について説明する。図18
(A)は、後述する図20に示す黄銅試料No.7の結
晶組織を示す顕微鏡写真であり、図18(B)は図18
(A)に基づいて作成した結晶組織の模式図である。図
19(A)は、図20に示す黄銅試料No.4の結晶組
織を示す顕微鏡写真であり、図19(B)は図19
(A)に基づいて作成した結晶組織の模式図である。図
18(A)に示す結晶組織では、α相の結晶粒(図中の
白い部分)の境界にγ相(図中の黒い部分)が析出及び
成長しており、β相は殆ど消失している。これが本発明
の「α+γタイプ」の典型例である。図19(A)に示
す結晶組織では、α相とβ相とを含み、α相(図中の大
きい白い部分)とβ相(図中の小さい白い部分)の結晶
粒界にβ相を取り囲むようにγ相(図中の黒い部分)が
析出している。これが本発明の「α+β+γタイプ」の
典型例である。γ相の平均粒径(この場合は短径の平
均)はα相やβ相の平均粒径より小さいことが望まし
く、例えば8μm以下、より好ましくは5μm以下であ
る。
【0068】図20に、本発明の「α+γタイプ」及び
「α+β+γタイプ」に関連する7種類の黄銅試料N
o.1〜No.7を列挙する(図2〜図4に示した試料
とは異なる)。図20には、各試料No.1〜No.7
の組成、見掛け上のZn含有量、γ相の面積占有比率、
耐食性(耐脱亜鉛腐食性)試験の結果、及びγ相中のS
n濃度が示されている。耐食性試験は、図2〜図4に関
連して説明した通りの方法で行った。図20から、γ相
の面積占有比率が3.0%以上20%以下の範囲内であ
れば、良好な耐食性が得られることが分る。図20中、
試料No.3〜No.7がこの条件を満たしており、本
発明の「α+γタイプ」又は「α+β+γタイプ」に属
する。また、上記条件を満たせば熱間延性も良好である
ことも実験で判明した。γ相の面積占有比率には、製造
工程で行われる熱処理又は熱間加工の条件(例えば、熱
処理温度や冷却速度)が影響する。
【0069】図21は本発明に従う黄銅製品の製造方法
の一例を示す。図21に示す製造方法では、図20に例
示した試料No.3〜No.7のような組成をもったC
u−Zn−Sn系の黄銅素材を熱間鍛造や熱間押出しな
どで成形する。次に、この成形体に対し400℃以上5
50℃以下で保持時間30秒以上の熱処理を施し、次い
でその成形体を400℃までの冷却速度が0.4K/秒
以上10K/秒以下で冷却する。この熱処理と冷却とに
より、成形体の結晶組織が本発明の「α+γタイプ」又
は「α+β+γタイプ」になる。その後、その成形体に
切削加工、研磨、メッキ等を施す。
【0070】因みに、従来の一般的な製造方法では図2
2に示すように成形を鋳造で行っている、鋳造に必要な
工程はかなり多い。図21に示す本発明の製造方法例で
は、成形を熱間鍛造や熱間押出しなどで行えるので、従
来の鋳造を用いた方法よりも工程数が減少する。
【0071】図23は、γ相の面積占有比率と熱処理条
件との関係を調べた実験の結果を示す。この実験では、
図20に示す試料No.3の組成をもったCu−Zn−
Sn系銅合金に対して、異なる処理温度(試料の温度)
および温度保持時間の条件下で熱処理を加え、各熱処理
後にγ相の面積占有比率(%)を調べた。熱処理後の4
00℃までの冷却速度は、処理温度が425℃以下の時
は0.4〜5K/sec、処理温度が450℃以上の時
は5〜10K/secであった。
【0072】図23から、熱処理温度が550℃から4
00℃、保持時間が30秒以上、冷却速度が0.4K/
secから10K/secの範囲内であれば、γ相の面
積占有比率(%)が3%以上になることが分る。また、
熱処理温度が550℃を越えると、保持時間を長くして
もγ相の面積占有比率は増加せず、逆に減少する傾向を
した。したがって、γ相の面積占有比率(%)を3%以
上にするには熱処理温度は550℃以下とすべきであ
る。また、図23における処理温度400℃から450
℃までの範囲の熱処理では「α+γタイプ」の結晶組織
ができ、処理温度450℃から550℃までの範囲の熱
処理では「α+β+γタイプ」の結晶組織ができた。
【0073】次に、「微細な結晶粒」について説明す
る。本発明の黄銅の上述した全ての実施例で、平均結晶
粒径は15μm以下、好ましくは10μm以下である。
このような微細は結晶粒は、従来品よりかなり低い温度
で熱間鍛造することができ、且つ熱間延性(鍛造温度域
での延性)及び降伏点強度(耐力)がかなり高いという
利点を生む。
【0074】結晶粒を微細にするには、製造工程中の諸
条件が寄与する。例えば、図5に示した製造工程では、
結晶粒を微細化するために、次のような条件を選ぶこと
ができる。先ず、電気銅、電気亜鉛及びスクラップを混
合して溶解鋳造を行なうとき(ステップ1)、再結晶温
度域でのα相とβ相との比率が適切な範囲、つまりβ相
の比率が30%〜80%となるように、亜鉛の混合量を
調整する。β相の比率が上記範囲であることは、後の熱
間押出しや熱間鍛造時に動的再結晶を起こすために有用
である(動的再結晶が起きると結晶粒径は小さくな
る)。次いで、鋳造後の凝固後の冷却において、400
℃以下になるまでは5K/sec以上の冷却速度で急冷
して、中間成形体を製造する。このように急冷すること
で、結晶粒を微細化することができる。更に、鋳造後の
凝固速度を5×10〜105K/secの範囲内、より
好ましくは102〜105K/secの範囲内とすること
も、結晶粒の微細化に有効である。
【0075】鋳造段階で結晶粒の微細化を助ける他の方
法としては、原料中にB,Fe,Ni,P,Co,N
b,Ti,Zr等の元素を添加することが有効である。
その添加割合〔mass%〕としては、Bは0.005
〜0.5、Feは0.01〜2.0、Niは0.05〜
0.2、Pは0.04〜0.2、Coは0.01〜2.
0、Nbは0.01〜0.2、Tiは0.01〜1.
0、Zrは0.005〜0.5が適当である。特に、P
をFeと共に添加すると、相乗効果が認められる。
【0076】次に、上記の中間成形体を480〜650
℃の範囲内(より好ましくは480〜600℃の範囲
内)の温度まで加熱し、その温度で熱間押出を行って棒
材若しくは線材に成形する(ステップ2)。この押出成
形では断面減少率を90%以上(より好ましくは95
%)として、有効に動的再結晶が生じさせて、結晶粒の
粗大化を防止する。押出成形後の冷却でも、400℃以
下になるまでは0.4K/sec以上の速度で急冷し
て、結晶粒の粗大化を防止する。更に、中間成形体の加
熱温度を下げること、及び加熱時間を短縮することも、
結晶粒の粗大化を防止するために有効である。
【0077】この後、棒材若しくは線材を冷間引抜き
し、焼鈍及び酸洗いを行い、所定寸法に切断して、鍛造
用のビレットを得る(ステップ3)。こうして得られた
ビレットを、後続の熱間鍛造のための特性を確保するた
めに加熱する。加熱温度は480〜750℃の範囲内と
し、また加熱時間の短縮によって微細な結晶粒を維持す
る。次いで、加熱したビレットを鍛造用金型にセット
し、480〜750℃の範囲内の温度で熱間鍛造を行な
う(ステップ5)。この時も粗大粒の成長を抑制して微
細な結晶粒を維持するため、加熱から鍛造までの時間を
短縮することが有効である。鍛造後、酸洗やショットブ
ラストへ移行するために冷却を行う。熱間鍛造時に動的
再結晶が行われた後に結晶粒が粗大化するのを防ぐた
め、冷却速度を0.4K/sec以上とすることが有用
である。
【0078】上記したように、結晶粒の微細化には鋳造
後の冷却速度や押出し条件などが寄与する。まず冷却速
度の結晶粒微細化への寄与について、図24〜図27を
用いて具体的に説明する。
【0079】図24(A)は鋳造後の冷却速度を19K
/secとして作った黄銅素材の結晶組織を示す顕微鏡
写真であり、図24(B)は図24(A)に基づいて作
成した模式図である。図25(A)は図24(A)の一
部を拡大した顕微鏡写真であり、図25(B)は図25
(A)に基づいて作成した模式図である。一方、図26
(A)は鋳造後の冷却速度を1.3K/secとした場
合の黄銅素材の結晶組織を示す顕微鏡写真であり、図2
6(B)は図26(A)に基づいて作成した模式図であ
る。図27(A)は図26(A)の一部を拡大した顕微
鏡写真であり、図27(B)は図27(A)に基づいて
作成した模式図である。
【0080】これらの図から明らかなように、鋳造後の
冷却速度を速くすることで結晶の微細化が図れる。例え
ば、図25(A)、(B)に示すように、冷却速度を1
9K/secとした場合、平均結晶粒径は15μm以下
で且つほぼ全域でα相とβ相とが混合した組織となって
いた。一方、図27(A)、(B)に示すように、冷却
速度を1.3K/secとした場合、平均結晶粒径は1
5μm以上でしかもα相とβ相の境界にγ相が析出して
いた。ここで、平均結晶粒径の測定は日本工業規格(J
IS)の基準に従って測定した。更なる実験により、平
均結晶粒径を15μm以下とするには、冷却速度を5K
/sec以上としなければならないことが判明した。
【0081】次に、押出し条件の結晶粒の微細化への寄
与について、図28〜図31を用いて具体的に説明す
る。図28(A)は、Cuが58.3mass%、Sn
が1.9mass%、Znが残部という組成をもった黄
銅素材を、押出し温度が550℃、押出し比が50%、
押出し後の強制空冷による冷却速度が30K/secと
いう条件で押出して作った棒状押出し品の結晶組織を示
す顕微鏡写真である。図28(B)は図28(A)に基
づいて作成した模式図である。図29(A)は図28に
示した棒状押出し品を、鍛造形状が円柱形状、圧縮方法
が1軸圧縮、鍛造率が50%、鍛造温度が550℃、鍛
造後の冷却速度が20K/secという条件で鍛造して
作った鍛造品の結晶組織を示す顕微鏡写真である。図2
9(B)は図29(A)に基づいて作成した模式図であ
る。
【0082】図28(A)、(B)に示す黄銅素材は、
α相とβ相との混合であり、鍛造加熱中のβ相の比率は
30%以上80%以下で、平均結晶粒径は15μm以下
であり、本発明の「α+強化βタイプ」に属するもので
ある。そして、図29(A)、(B)に示すように、こ
の黄銅素材は鍛造後も、結晶粒径、α相とβ相の比率及
び結晶粒の形状に変化がない。鍛造割れも発生しなかっ
た。
【0083】図30(A)は、Cuが58.7mass
%、Snが2.3mass%、Znが残部という組成を
もつ黄銅素材を、押出し温度が550℃、押出し比が5
0%、押出し後の強制空冷による冷却速度が30K/s
ecという条件で押出して作った棒状押出し品の結晶組
織を示す顕微鏡写真である。図30(B)は図30
(A)に基づいて作成した模式図である。図31(A)
は図30に示す棒状押出し品を、鍛造形状が円柱形状、
圧縮方法が1軸圧縮、鍛造率が50%、鍛造温度が55
0℃、鍛造後の冷却速度が20K/secという条件で
鍛造して作った鍛造品の結晶組織を示す顕微鏡写真であ
る。図31(B)は図31(A)に基づいて作成した模
式図である。
【0084】図30に示す黄銅素材も本発明の「α+強
化βタイプ」に属するものである。特にこの素材はSn
の含有割合が、従来は鍛造割れが生じるとされていた1
mass%を大幅に超えているにも拘らず、鍛造割れを
生じなかった。その理由は、結晶粒径が微細であるから
と推測される。結晶粒の微細化は、良好な熱間延性を得
るのに有効である。また、熱間加工温度域での結晶組織
がα相とβ相の混合であってβ相の比率が30%〜80
%の範囲であることも、良好な熱間延性を得るのに有効
である。その理由は次の通りと推測される。
【0085】熱間鍛造や熱間押出し時には、外力を加え
られた結晶組織内で歪が生じる。これはミクロ的には、
原子配列が乱れた状態、つまり転位が生じていることで
ある。熱間加工中に動的再結晶が発生すると、転位の再
配列が行われて歪が緩和又は消去されるので、良好な熱
間延性が得られる。動的再結晶を起こすエネルギー源
は、加熱による熱エネルギーと外力による歪エネルギー
である。α相とβ相との混合組織では、外力が加わると
硬質なα相粒子からのストレスにより軟質なβ相粒子内
に転位が生じる。α相の結晶粒径が大きいと、(多分、
転位の生じたβ結晶粒の移動が大きいα粒子に妨げられ
るために)β相内の歪は局所に集中する。一方、α相の
結晶が微細であると、(多分、α結晶粒とβ結晶粒との
間で粒界すべりが起きてβ結晶粒が移動するために)β
相内の歪が分散する。局所的な歪より、分散している歪
の方が、歪の全体的なポテンシャルエネルギーが大きい
ため、しきい値をこえて再結晶し、よって良好な熱間延
性が得られる。
【0086】また、Snの添加は、β相の耐食性の向上
だけでなく、再結晶速度を高めるのにも寄与していると
考えられる。再結晶速度を高まることによって、高速な
外力に対する延性が向上する。更に、充分な加工を加え
た後に再結晶を起こすと結晶粒は小さくなる。加工後の
冷却速度を速くして、動的再結晶で生じた微細な結晶粒
の粗大化を防止すれば、加工後の成形品でも、微細な結
晶粒が維持でき良好な特性が得られる。
【0087】図32は、本発明の4タイプの黄銅につい
て、常温での最終的な結晶組織、熱間加工時の(つま
り、再結晶温度域での)結晶組織、及び組成に関する、
好ましい条件を示している。図33は、最初に黄銅素材
を鋳造するときの典型条件と、その黄銅素材を熱間押出
しして図32に示す最終組成を得る場合の熱間押出しの
典型条件とを示している。図34は、黄銅素材を熱間押
出しし更に熱間鍛造して最終組成を得る場合の、押出し
及び鍛造の典型条件を示している。図35は、黄銅素材
を熱間押出しし次に熱間鍛造し更に熱処理して最終組成
を得る場合の、押出し、鍛造及び熱処理の典型条件を示
している。図中の括弧内には、特に好ましい数値範囲が
示されている。
【0088】以下、図32〜図35を参照して、本発明
に従う黄銅の結晶組織、組成、典型的な製法例について
説明する。 (1)常温での結晶組織について(図32) 「α+γ」タイプの黄銅はα+γの結晶組織をもつ。α
相の面積比率は97〜70%でγ相の面積比率は3〜3
0%、好ましくはα相の面積比率が95〜70%でγ相
の面積比率が5〜30%である。α相の平均粒径は15
μm以下、好ましくは10μm以下である。γ相の平均
粒径(この場合は短径)は8μm以下、好ましくは5μ
m以下である。顕微鏡写真によれば、α相の結晶粒界
に、γ相の薄い層(厚さ8μm以下)が形成されてい
る。γ相のSn濃度は8mass%以上であり、例えば
図2〜図4に示す実施例1〜5では14〜18%であっ
た。
【0089】「α+β+γタイプ」の黄銅はα+β+γ
の結晶組織をもつ。α相の面積比率は40〜94%であ
り、β相とγ相の各々の面積比率は3〜30%である。
例えば図2〜図4に示した実施例6〜12では、α相が
65〜82.5%、β相が9.8〜13.4%、γ相が
4〜24%であった。α相とβ相の平均粒径は15μm
以下、好ましくは10μm以下である。γ相の平均粒径
(この場合は短径)は8μm以下、好ましくは5μm以
下である。顕微鏡写真によれば、β相の結晶を包囲する
ように、γ相の薄い層(厚さ8μm以下)が形成されて
いる。γ相のSn濃度は8mass%以上であり、例え
ば図2〜図4に示す実施例6〜12では11〜13.4
%であった。
【0090】「α+ノーマルβタイプ」の黄銅はα+β
の結晶組織をもつ。β相の面積比率は20%以上、好ま
しくは25%以上であり、例えば図2〜図4に示す実施
例13〜15では23.1〜25.6%であった。α相
及びβ相の平均結晶粒径は15μm以下、好ましくは1
0μm以下である。
【0091】「α+強化βタイプ」の黄銅はα+βの結
晶組織をもつ。β相の面積比率は15%以上、好ましく
は20%以上であり、例えば図2〜図4に示す実施例1
6〜19では23〜38%であった。α相及びβ相の平
均結晶粒径は15μm以下、好ましくは10μm以下で
ある。β相のSn濃度は1.5mass%以上であり、
例えば図2〜図4に示す実施例16〜19では2.5〜
7.1mass%。であった。
【0092】(2)熱間加工時の(再結晶温度域での)
結晶組織について(図32) 全てのタイプの黄銅が、再結晶温度域でα+βの結晶組
織をもち、β相の面積比率は30〜80%である。α相
及びβ相の平均結晶粒径は15μm以下、好ましくは1
0μm以下である。α結晶粒子は実質的に均一に分散し
て存在する。
【0093】(3)組成について(図32) 「α+γタイプ」及び「α+β+γタイプ」の黄銅で
は、見掛け上のZn含有量が37〜46mass%であ
り、良好な熱間延性を得るためには38〜46mass
%が好ましい。全体的なSn含有量は0.9〜7mas
s%である。例えば図2〜図4に示す「α+γタイプ」
の実施例1〜5では、見掛け上のZn含有量が37.8
〜44mass%、全体的Sn含有量が1〜5mass
%であった。また、「α+β+γタイプ」の実施例6〜
12では、見掛け上のZn含有量が41.5〜44ma
ss%、全体的Sn含有量が1.5〜3.5mass%
であった。
【0094】「α+ノーマルβタイプ」の黄銅では、見
掛け上のZn含有量が37〜44mass%であり、良
好な熱間延性を得るためには38〜44mass%が好
ましい。例えば図2〜図4に示す実施例13〜15で
は、見掛け上のZn含有量は41.8〜44mass%
であった。全体的なSn含有量は0.5mass%未満
である。
【0095】「α+強化βタイプ」の黄銅では、見掛け
上のZn含有量が37〜44mass%であり、良好な
熱間延性を得るためには38〜44mass%が好まし
い。全体的なSn含有量は0.5〜7mass%であ
る。例えば図2〜図4に示す実施例16〜19では、見
掛け上のZn含有量が40.1〜42.6mass%、
全体的Sn含有量が0.8〜3.6mass%であっ
た。
【0096】(5)鋳造の条件について(図33) 鋳造時の凝固速度は5×101〜105K/sec、好ま
しくは102〜105K/secである。凝固速度105
K/secはアモルファス状態にならない上限値であ
る。凝固後の冷却速度は400℃以下になるまでは5K
/sec以上である。
【0097】(6)最終組織を熱間押出しで得る場合の
熱間押出し条件について(図33) 押出し時の温度は480〜650℃であり、好ましくは
480〜600℃である。断面減少率は90%以上、好
ましくは95%以上である。押出し後の冷却速度は、4
00℃以下になるまで、「α+γタイプ」は0.4〜5
K/sec、「α+β+γタイプ」は0.4〜10K/
sec、「α+ノーマルβタイプ」は0.4℃/sec
以上、「α+強化βタイプ」は5〜1000K/sec
である。例えば、図2〜図4に示す実施例では、「α+
γタイプ」(実施例1〜5)、「α+β+γタイプ」
(実施例6〜12)及び「α+ノーマルβタイプ」(実
施例13〜15)を作るときは冷却速度が0.8K(空
冷)であり、「α+強化βタイプ」を作るときは冷却速
度が100K/sec(水冷)であった。
【0098】(7)最終組織を熱間鍛造で得る場合の熱
間押出しと熱間鍛造の条件について(図34) 熱間押出しの条件は、押出し後の冷却速度がタイプに関
わらず400℃以下になるまで0.4℃以上であればよ
いという点以外は、上記(6)で説明したそれと同様で
ある。熱間鍛造の温度は480〜750℃であり、例え
ば図2〜図4に示す実施例では500〜600℃であ
る。鍛造の歪速度は好ましくは1/sec以上である。
鍛造後の冷却速度は、上記(6)で述べた押出し後のそ
れと同様である。
【0099】(8)最終組織を熱処理で得る場合の熱間
押出し、熱間鍛造及び熱処理の条件について(図35) 熱間押出しの条件は上記(7)で説明したそれと同様で
ある。熱間鍛造の条件も、鍛造後の冷却速度がタイプに
関わらず400℃以下になるまで0.4℃以上であれば
よいという点以外は、上記(7)で説明したそれと同様
である。熱処理は、「α+ノーマルβタイプ」を作る場
合には不要である(つまり、熱間鍛造を上記条件で行え
ば「α+ノーマルβタイプ」の最終組成が得られる)。
熱処理の温度と保持時間については、「α+γタイプ」
は400〜550℃で30秒以上保持、「α+β+γタ
イプ」は450〜550℃で30秒以上保持、「α+強
化βタイプ」は475〜550℃で30秒以上保持であ
る。熱処理後の冷却速度は、上記(6)で述べた押出し
後のそれと同様である。
【0100】以上、本発明にかかる黄銅及びその製造方
法について典型的な例を説明したが、その趣旨はあくま
で本発明を説明するための例示であって、本発明の範囲
をそれら典型例のみに限定するものではない。本発明の
原理は典型的には黄銅に適用されるが、黄銅以外の合金
にも適用することができる。
【0101】本発明の産業上の利用の可能性について以
下に述べる。本発明に従うα+β+γ、α+γ、α+ノ
ーマルβ及びα+強化βタイプの黄銅は、バルブや水栓
等の水接触部品、衛生陶器金具、各種継手、パイプ、ガ
ス器具、ドアやノブ等の建材、家電製品等の従来から黄
銅が用いられていた用途の他に、従来は表面粗度、耐食
性、寸法精度等の理由から黄銅以外の材料を用いていた
製品にまで適用することができる。本発明に従う黄銅が
使用できる水接触部品として、給水栓や給湯器や温水洗
浄便座等のための取付金具、給水管、接続管、及びバル
ブなどが例示的に列挙できる。以下に幾つかの具体例を
示す。
【0102】図36は本発明の黄銅を使用した水栓金具
の例を示す。一次圧のかかる耐圧の大きい本体21に、
二次圧側である耐圧の小さい継手23を介して、スパウ
ト25が接続されている。本体21の最低肉厚は0.2
mm以上であり、継手及びスパウトの最低肉厚は0.1
mm以上である。図37に示した別の例では、水管27
と接続されたエルボー管29に本発明の黄銅の鍛造品が
使用されている。図38に示す更に別の例では、シャワ
ー用ホース31への接続金具33に本発明に係る黄銅の
鍛造品が用いられている。図39に示すさらに別の例で
は、配管35、37、39間の継ぎ手41に本発明に係
る黄銅の鍛造品が用いられている。
【0103】図40、41及び42は、本発明の黄銅を
使用した給湯機の部品を示す。図40は給湯機の全体の
断面図を示している。図40に示すように、入水管51
に接続された減圧弁53と、この減圧弁53からの送水
管55に接続された逃がし弁57とに本発明の黄銅が使
用されている。具体的には、図41に示す減圧弁53で
は弁箱61と弁棒63(ハッチングで示した部分)と
に、また、図42に示す逃がし弁57では弁箱71(ハ
ッチングで示した部分)に、本発明の黄銅が使用されて
いる。
【0104】本発明に係る黄銅は耐食性及び耐酸性に優
れるため、上記のような水接触部品に用いると、水接触
部品の経年変化による強度変化が少ない。また、本発明
の黄銅は耐食性及び耐酸性に優れるだけでなく強度も大
きいので、水接触部品の肉厚を薄くすることができる。
具体的には、給水栓のJIS規格では一次圧のかかる接
水耐圧金属部には17.5kg/cm2の耐圧性能が要
求されている。この耐圧性能に、経時的な腐食による肉
厚の減少を加味して、水接触部品の肉厚を決める必要が
ある。従来、100mmの円筒形状の水栓金具の最低肉
厚は1.0mm〜1.5mm程度に決定されていた。こ
れに対し、本発明に係る黄銅を用いると、最低肉厚を
0.8mm〜1.2mm程度にすることができる。
【0105】更に、本発明の黄銅は切削性がよいので切
削加工時間が短縮でき、また、熱間延性が高いので鍛造
等で短時間に成形できる。更に、鍛造による成形が可能
であるから、デザインの自由度も増す。熱間延性が高
く、600℃以下での低温で鍛造も可能なことから、鍛
造品精度や面精度も向上し酸化皮膜もつかない。
【0106】本発明に従うα+β+γ、α+γ、α+ノ
ーマルβ及びα+強化βタイプの黄銅の用途は以下に例
示列挙するように極めて広く、従来から黄銅が用いられ
ていたもの、従来はステンレススチールのような別の金
属が用いられていたもの、および従来は非金属材料が用
いられていたものを含む。
【0107】(1)素材、中間品、最終製品および組立体 板材、管材、棒材、線材および塊材などの各種形状の黄
銅素材、中間品、最終製品、それらの組立体、及び他素
材品と結合された複合品。溶接、融接、ろう付け、接
着、熱切断、熱加工、鍛造、押出し、引抜き、圧延、せ
ん断、板材成形、ロール成形、転造、スピニング、曲げ
加工、矯正加工、高エネルギー速度加工、粉末加工、各
種切削加工、および研削加工などの各種加工により造ら
れた黄銅素材、中間品、最終製品、それらの組立体、及
び他素材品と組み合わされた複合品。金属被膜処理、化
成処理、表面硬化処理、非金属被膜処理および塗装など
の各種表面処理を施された黄銅素材、中間品、最終製
品、それらの組立体、及び他素材品と組み合わされた複
合品。
【0108】(2) 輸送機器用部品 (2-1)自動車及び二輪車用部品 トランスミッション部品、例えばシンクロギア、軸受け
など。エンジン部品、例えばタイミングギア、プーリ
ー、軸受け、継ぎ手、燃料配管、排気管、ガスケット、
噴射ノズル、エンジンブロックなど。ラジエター部品、
例えば継ぎ手など。車両ボディー。外装部品、例えばモ
ール、ドアハンドル、ワイパーなど。内装部品、例えば
メーター、警報器など。駆動系部品、例えばタイヤエア
ノズル、車軸、ホイールベースなど。ブレーキ部品、例
えば継ぎ手など。操蛇部品、例えば油圧継ぎ手、ギアな
ど。空調機部品、例えば継ぎ手など。サスペンション部
品、例えば軸受けなど。油圧ポンプ部品、例えばボディ
ー、弁、ピストンなど。
【0109】(2-2)小型及び大型船舶用部品 エンジン部品、例えばタイミンググギア、プーリー、軸
受け、継ぎ手、燃料配管、排気管、ガスケット、噴射ノ
ズル、エンジンブロックなど。船体。艤装部品、例えば
手すり、モール、ドアハンドル、マストなど。駆動系部
品、例えばスクリュー、プロペラ、シャフトなど。計器
部品、例えばケーシング、ハンドルなど。操蛇部品。空
調機部品。油圧ポンプ部品。
【0110】(2-3)鉄道車両用部品 エンジン部品、例えばタイミンググギア、プーリー、軸
受け、継ぎ手、燃料配管、排気管、ガスケット、噴射ノ
ズル、エンジンブロックなど。モータ部品、例えば、ボ
ディー、軸受け、冷却継ぎ手など。トランスミッション
部品、例えばシンクロギア、軸受けなど。ラジエター部
品、例えば継ぎ手など。車両ボディー。外装部品、例え
ばモール、ドアハンドル、ワイパーなど。内装部品、例
えばメーター、警報器、手すりなど。駆動系部品、例え
ばタイヤエアノズル、車軸、ホイールベースなど。ブレ
ーキ部品、例えば継ぎ手など。操蛇部品、例えば油圧継
ぎ手、ギア、ハンドルなど。空調機部品、例えば継ぎ手
など。サスペンション部品、例えば軸受など。油圧ポン
プ部品、例えばボディー、弁、ピストンなど。パンタグ
ラフ部品、例えば継ぎ手など。架線部品、例えば継ぎ手
など。 (2-4)航空機、宇宙船、エレベータ、遊戯乗り物用部品
【0111】(3)産業機械用部品 (3-1)建設機械用部品 エンジン部品、例えばタイミンググギア、プーリー、軸
受け、継ぎ手、燃料配管、排気管、ガスケット、噴射ノ
ズル、エンジンブロックなど。モータ部品、例えば、ボ
ディー、軸受け、冷却継ぎ手など。トランスミッション
部品、例えばシンクロギア、軸受けなど。ラジエター部
品、例えば継ぎ手など。外装部品、例えばモール、ドア
ハンドル、ワイパーなど。内装部品、例えばメーター、
警報器など。ブレーキ部品、例えば継ぎ手など。操蛇部
品、例えば油圧継ぎ手、ギア、ハンドルなど。空調機部
品、例えば継ぎ手など。サスペンション部品、例えば軸
受など。油圧ポンプ部品、例えばボディー、弁、ピスト
ンなど。
【0112】(3-2)溶接機用部品 ガス溶接機用部品、例えばトーチなど。アーク溶接機用
部品、例えばトーチなど。プラズマ溶接機用部品、例え
ばトーチなど。 (3-3)金型及びその部品 (3-4)ローラコンベア用部品 (3-5)ベアリング、歯車 (3-6)シンクロリングなどの機械的摺動部品 (3-7)熱交換機用部品 ボイラー部品、例えばボディー、バルブなど。太陽熱温
水器部品、例えばボディー、バルブなど。
【0113】(4)楽器用部品 (4-1)鍵盤楽器用部品 ピアノ部品、例えばペダル、継ぎ手など。エレクトーン
部品、例えばペダル、継ぎ手など。オルガン部品、例え
ばペダル、継ぎ手、共鳴パイプなど。 (4-2)管楽器用部品 トランペット部品、例えばボディー、ピストン、レバ
ー、継ぎ手など。トロンボーン部品、例えばボディー、
ピストン、レバー、継ぎ手など。チューバ部品、例えば
ボディー、ピストン、レバー、継ぎ手など。クラリネッ
ト部品、例えばピストン、レバー、継ぎ手など。ファゴ
ット部品、例えばピストン、レバー、継ぎ手など。 (4-4)打楽器用部品 ドラム部品、例えばホルダー、シンバルなど。太鼓部
品、例えばホルダ、ケトルなど。木琴部品、例えば共鳴
パイプ、フレームなど。
【0114】(5)電気製品用部品 (5-1)視聴覚機器用部品 アンプ、ビデオプレーヤ、カセットプレーヤ、CDプレ
ーヤ及びLDプレーヤの部品、例えば調節つまみ、脚、
シャーシ、スピーカコーンなど。 (5-2)気体・液体制御機器用部品 ルーム空調機部品、例えば継ぎ手、冷媒管、弁など。給
湯機及び電気温水器部品、例えばケーシング、貯湯容
器、ガス配管、ガスノズル、バーナ、減圧弁、逃がし
弁、比例弁、電磁弁、ポンプ部品など。ルームヒータ及
びルームクーラー部品、例えば気化器、冷媒管、サービ
スバルブ、フレアナットなど。
【0115】(5-3)家庭電化製品用部品 洗濯機部品、例えばケーシング、洗濯槽など。 (5-4)縫い機、編み機用部品 (5-5)遊戯具用部品 パチンコ台部品。スロットマシン部品。 (5-6)屋外電気製品用部品 自動販売機部品、例えばコイン投入口、コインアクセプ
タなど。 (5-7)電気・電子回路用部品 制御基板、プリント配線板、配電盤電極、スイッチ部
品、抵抗器部品、電源プラグ部品、電球口金、ランプホ
ルダー部品、放電電極、水浸電極、銅線、電池端子、ケ
ーシング、半田など。
【0116】(6)住宅用品 (6-1)建材 外装用建材、建材取付け部品、壁パネル、鉄筋、鉄骨な
ど。 (6-1)外装品 ドア部品、例えばドアパネル、ノブ、錠、モール、ヒン
ジなど。門部品、例えば門柱、門扉、モール、ヒンジな
ど。柵部品、例えば柵ボディー、モールなど。外灯部
品、例えばケーシング、笠、支柱など。シャッター。ベ
ランダフェンス。郵便受け。雨どい。雨どい受け金具。
屋根。スプリンクラー。フレキシブル管。
【0117】(6-2)内装品 手すり部品、例えば手すりパイプ、継ぎ手など。ドア部
品、例えばノブ、錠、モール、ヒンジなど。台所用品、
例えばガスバーナ、コンロ台天板など。浴室品、例えば
配水口の目皿、排水栓、排水栓の玉鎖、シャワーハンガ
ー、散水板など。洗面所用品、例えばカウンター固定金
具、タオルバーなど。居間用品、例えばシャンデリア部
品、照明部品、装飾置物など。トイレ用品、例えばトイ
レブースの外壁パネルなど。家具部品、例えば椅子脚、
テーブル脚、テーブル天板、ヒンジ、取っ手、レール、
棚の調節ネジなど。 (6-3)神社仏閣用品 手すり部品、例えば手すりパイプ、継ぎ手など。仏壇部
品、例えば仏像、モール、燭台、鐘など。
【0118】(7)精密機械用部品 (7-1)光学機器及び測定・計測機器用部品 カメラ、望遠鏡、顕微鏡及び電子顕微鏡の部品、例えば
ボディー、マウント、レンズケースなど。 (7-2)時計用部品 腕時計、掛け時計及び置き時計の部品、例えばボディ
ー、針、モール、ギア、振り子など。
【0119】(8)筆記具、事務用品 筆記具、例えばボールペン、シャープペンシルなど。ハ
サミ、カッター、バインダ、ペーパークリップ、画鋲、
スケール、定規、キャビネップ、テンプレート、マグネ
ット、書類トレイ、電話台部品、ブックエンド、穿孔機
部品、ステープラー部品、鉛筆削り機部品、キャビネッ
トなど。
【0120】(9)給排水配管、バルブ及び水栓用品 排水プラグ、硬質塩化ビニル管用継ぎ手、排水溝、エル
ボ管、継ぎ手、フレキシブル継ぎ手用ベローズ、給排水
コック、バルブ、便器用接続フランジ、ステム、スピン
ドル、ボール弁、ボール、シートリング、パッキンナッ
ト、KCPジョイント、ヘッダー、分岐栓、フレキシブ
ルホース、ホースニップル、水栓ボディー、水栓付属金
具、バルブボディー、ボールタップ、止水栓、単機能水
栓、サーモスタット付水栓、2バルブ壁付け水栓、2バ
ルブ台付け水栓、スパウト、UBエルボ、ミキシングバ
ルブなど。
【0121】(10)装飾品、服飾品 ピアス、ペンダント、指輪、ブローチ、ネームプレー
ト、タイピン、タイバー、ブレスレット、鞄金具、靴金
具、衣裳金具、ボタン、ファスナー部品、ホック、ベル
ト金具などの装飾品及び服飾品部品。 (11)スポーツ用品、武器 ゴルフクラブ部品、例えばシャフト、ヘッド、トウ、ヒ
ール、ソールなど。ダンベル、バーベル、ヨットのフレ
ーム、トランポリンのフレーム、スターティングブロッ
ク、剣道の面、スケートブレード、スキーエッジ、スキ
ービンディング、ダイビング部品、スポーツジム機器、
自転車チェーン、テント固定具、拳銃部品、ライフル銃
部品、火縄銃部品、刀剣部品、銃弾など。
【0122】(12)缶、容器 食物、飲料、燃料、塗料、粉、液、ガスなどを入れる缶
及び容器。 (13)医療器具 ベッドのフレーム、メス、内視鏡部品、歯科器具部品、
診察器具部品、手術器具部品、治療器具部品など。 (14)工具、農具、土木具 ペンチ、ハンマー、物差し、錐、やすり、鋸、釘、の
み、かんな、ドリル、固定具、締めつけ具、砥石台、ネ
ジ、ボルト、ナット、ビス、鍬、斧、スコップなど。
【0123】(15)食器、日常生活用品 鍋、釜、包丁、フライパン、おたま、スプーン、フォー
ク、ナイフ、缶切り、コルク抜き、フライ返し、てんぷ
ら箸、ホットプレート、水切り篭、たわし、屑入れ、塵
埃用篭、手桶、洗面器、じょうろなど。 (16)雑貨、園芸具、小物 カップ、レプリカ、ライター、燭台、キャラクターズグ
ッズ、メダル、ベル、ヘアピン、ホットカーラー、灰
皿、花瓶、キー、コイン、釣り具、ルアー、眼鏡フレー
ム、つめ切り、パチンコ玉、虫篭、傘、剣山、針、剪定
ハサミ、園芸用支柱、園芸用フレーム、園芸用棚、花入
れ、指抜き、灯籠、金庫、キャスターなど。
【0124】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、高速な外力に対して高い延性をもった金属材
料を提供することができる。特には、高速な外力に対し
ての高い延性と、良好な耐食性と良好な切削性をもち、
延性、強度、切削性及び耐食性のような種々の特性に優
れた黄銅及びその製造方法、黄銅製品を提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】黄銅の3種類の結晶相、純Cu、純Zn、及び
純Snの特性を表した表である。
【図2】本発明の黄銅の種々の実施例と従来の黄銅の幾
つかの例について、組成、結晶組織及び諸特性を表した
表である。
【図3】本発明の黄銅の種々の実施例と従来の黄銅の幾
つかの例について、組成、結晶組織及び諸特性を表した
表である。
【図4】本発明の黄銅の種々の実施例と従来の黄銅の幾
つかの例について、組成、結晶組織及び諸特性を表した
表である。
【図5】黄銅製品の製造工程の一例を示すフローチャー
トである。
【図6】本発明の黄銅の製造方法の2つの実施例と従来
の製造方法の一例について、鋳造及び熱間押出しの条件
を表した表である。
【図7】本発明の黄銅の製造方法の2つの実施例と従来
の製造方法の一例について、熱間鍛造の条件と製品の結
晶組織とを表した表を示す。
【図8】再結晶温度域での延性(歪率と歪速度)試験の
結果を示すグラフである。
【図9】切削性試験の結果を表した表である。
【図10】切削性試験の方法を説明した斜視図である。
【図11】耐エロージョン腐食性試験の結果を示すグラ
フである。
【図12】耐エロージョン腐食性試験の方法を説明する
図である。
【図13】耐応力腐食割れ性試験の方法を説明する図で
ある。
【図14】耐応力腐食割れ性試験の結果を表した表であ
る。
【図15】「α+強化βタイプ」の黄銅に関連する幾つ
かの試料の組成と耐食性試験の結果とを表した表であ
る。
【図16】β相中のSn濃度と400℃までの冷却時間
との関係を示すグラフである。
【図17】本発明の「α+強化βタイプ」の黄銅に対す
る熱処理の効果を表した表である。
【図18】(A)は、本発明の「α+γタイプ」の黄銅
の一実施例の結晶組織を示す顕微鏡写真であり、(B)
は、(A)に基づいて作成した模式図である。
【図19】(A)は、本発明の「α+β+γタイプ」の
黄銅の一実施例の結晶組織を示す顕微鏡写真であり、
(B)は、(A)に基づいて作成した模式図である。
【図20】本発明の「α+γタイプ」及び「α+β+γ
タイプ」の黄銅に関連する幾つかの試料の組成及び耐食
性試験結果を表した表である。
【図21】本発明の「α+γタイプ」又は「α+β+γ
タイプ」の黄銅を用いた水接触部品の製造工程の一例を
示すフローチャートである。
【図22】従来の黄銅を用いた水接触部品の製造工程の
一例を示すフローチャートである。
【図23】本発明の「α+γタイプ」及び「α+β+γ
タイプ」の黄銅に対する熱処理の効果を表した表であ
る。
【図24】(A)は、鋳造後の冷却速度を19K/se
cとして鋳造した鍛造用黄銅素材の結晶組織を示す顕微
鏡写真であり、(B)は、(A)に基づいて作成した模
式図である。
【図25】(A)は、図24(A)の一部を拡大した顕
微鏡写真であり、(B)は、(A)に基づいて作成した
模式図である。
【図26】(A)は鋳造後の冷却速度を1.3K/se
cとして鋳造した鍛造用黄銅素材の結晶組織を示す顕微
鏡写真であり、(B)は、(A)に基づいて作成した模
式図である。
【図27】(A)は、図26(A)の一部を拡大した顕
微鏡写真であり、(B)は、(A)に基づいて作成した
模式図である。
【図28】(A)は、Snを1.9mass%含んだ黄
銅素材を熱間押出しし、押出し後に30K/secで冷
却して作った鍛造用黄銅ビレットの結晶組織を示す顕微
鏡写真であり、(B)は、(A)に基づいて作成した模
式図である。
【図29】(A)は、図28(A)に示した黄銅ビレッ
トを熱間鍛造し、鍛造後に20K/secで冷却して作
った黄銅鍛造物の結晶組織を示す顕微鏡写真であり、
(B)は、(A)に基づいて作成した模式図である。
【図30】(A)は、Snを2.3mass%含んだ黄
銅素材を熱間押出しし、押出し後に30K/secで冷
却して作った鍛造用黄銅ビレットの結晶組織を示す顕微
鏡写真であり、(B)は、(A)に基づいて作成した模
式図である。
【図31】(A)は、図30(A)に示す黄銅ビレット
を熱間鍛造し、鍛造後に20K/secで冷却して作っ
た黄銅鍛造品の結晶組織を示す顕微鏡写真であり、
(B)は、(A)に基づいて作成した模式図である
【図32】本発明の黄銅の結晶組織と組成について、好
ましい条件を表した表である。
【図33】本発明の黄銅を最終的に熱間押出しで製造す
るときの、鋳造と熱間押出しの好ましい条件を表した表
である。
【図34】本発明の黄銅を最終的に熱間鍛造で製造する
ときの、熱間押出しと熱間鍛造の好ましい条件を表した
表である。
【図35】本発明の黄銅を最終的に熱処理で製造すると
きの、熱間押出し、熱間鍛造及び熱処理の好ましい条件
を表した表である。
【図36】本発明の黄銅を適用した水栓の一例を示す斜
視図である。
【図37】本発明の黄銅を適用した水管の一例を示す断
面図である。
【図38】本発明の黄銅を適用した水管の別の例を示す
断面図である。
【図39】本発明の黄銅を適用した水管の更に別の例を
示す断面図である。
【図40】本発明の黄銅を使用した減圧弁と逃がし弁と
をもつ給湯機の例を示す図である。
【図41】図40の給湯機の減圧弁を示す図である。
【図42】図40の給湯機の逃がし弁を示す図である。
【符号の説明】
21 水栓金具本体 23 継手 25 スパウト 27 水管 29 エルボー管 31 シャワー
用ホース 33 接続金具 35、37、3
9 配管 41 継手 51 入水管 53 減圧弁 55 送水管 57 逃がし弁 61 弁箱 63 弁棒 71 弁箱
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (31)優先権主張番号 特願平9−31849 (32)優先日 平成9年2月17日(1997.2.17) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平9−74111 (32)優先日 平成9年3月26日(1997.3.26) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平9−167833 (32)優先日 平成9年5月20日(1997.5.20) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平9−167834 (32)優先日 平成9年5月20日(1997.5.20) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平9−167835 (32)優先日 平成9年5月20日(1997.5.20) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平9−167836 (32)優先日 平成9年5月20日(1997.5.20) (33)優先権主張国 日本(JP) (31)優先権主張番号 特願平9−167837 (32)優先日 平成9年5月20日(1997.5.20) (33)優先権主張国 日本(JP) (72)発明者 松原 隆二 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号 (72)発明者 濱崎 正直 福岡県北九州市小倉北区中島2丁目1番1 号

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 外力をうけて変形するとき金属結晶の歪
    が分散して生じるような結晶組織を有し、変形による歪
    エネルギーが前記金属結晶の再結晶化のエネルギー源と
    なる金属材料。
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JP9-4027 1997-01-13
JP402797 1997-01-13
JP9-31849 1997-02-17
JP3184997 1997-02-17
JP9-74111 1997-03-26
JP7411197 1997-03-26
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JP9-167837 1997-05-20
JP16783697 1997-05-20
JP9-167835 1997-05-20
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