JP2002193997A - 蛋白質分解酵素によるローヤルゼリーの分解組成物とそれを含有する食品組成物 - Google Patents
蛋白質分解酵素によるローヤルゼリーの分解組成物とそれを含有する食品組成物Info
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Abstract
性食品等として利用可能な安全性の高い食品用素材を提
供する。 【解決手段】ローヤルゼリーを、ペプシン並びにトリプ
シン及び/又はキモトリプシンにより処理して得られる
分解組成物。そして、該分解組成物を含有してなる食品
組成物。
Description
成物とそれを含有する食品組成物に関し、より詳細に
は、ローヤルゼリーの蛋白質分解酵素による分解組成物
とそれを含有する食品組成物に関する。本発明のローヤ
ルゼリー分解組成物(以下、「本分解組成物」とい
う。)は、アンジオテンシンI変換酵素阻害活性にもと
づく血圧降下作用を奏するので、本分解組成物やそれを
含有する食品組成物は、高血圧の予防、改善等に有用で
ある。
の一つとされる高血圧症は、心筋梗塞といった心疾患や
脳梗塞や脳閉塞といった脳血管疾患等のような重篤な疾
患の原因となり得ることが知られている。このため高血
圧症は、早期の改善が必要であり、軽症の段階から高血
圧発症の予防をするのが望ましい。高血圧症は、本態性
高血圧症とニ次性高血圧症とに大まかに分類される。こ
れら両者のうち高血圧症の約90%を占める本態性高血
圧症は、食品からの食塩の過剰摂取や、レニン−アンジ
オテンシン−アルドステロン系やカリクレイン−キニン
−プロスタグランジン系の調節不全、カテコラミン分泌
過剰などの相互作用により発症する。また、生体内の血
圧維持機構には、昇圧系であるレニン−アンジオテンシ
ン系と降圧系であるカリクレイン−キニン系が深く関っ
ているとされ、特にレニン−アンジオテンシン系におい
て強力な昇圧物質であるアンジオテンシンIIの生成
は、昇圧に関して最も重要な因子であるとされている。
臨床学的及び食品化学的にもアンジオテンシンIIの生
成とその作用を抑制することが重要である。このため、
高血圧症の改善のためには、アンジオテンシンIをアン
ジオテンシンIIに変換することでアンジオテンシンI
Iの直接的な生成を担うアンジオテンシンI変換酵素
(以下、「ACE」という)の活性を阻害することが有
力な方法のひとつとされている。このようなACE活性
阻害作用を有する降圧薬としては、たとえば、カプトプ
リルが市販に供されている。しかしながら、従来、降圧
剤として市場に供されてきたこのような医薬品は、優れ
た薬効を奏する反面、多くの場合副作用等を有していて
安全性に問題があり、当該疾患を日常の食生活のなかで
予防、改善してゆくために使用することは困難であっ
た。一方、古来から栄養価が高く様々な効用をもたらす
ものとして珍重され、食されてきたものとしてローヤル
ゼリーがある。経験的には、ローヤルゼリーを摂取する
ことにより高血圧症を予防、改善できると言われている
が、その生理活性物質について解明した報告は少なく、
当該報告の多くは10−ヒドロキシデセン酸の活性を報
告したものである。
的確な血圧降下作用を奏し、かつ、たとえば機能性食品
等として利用可能な安全性の高い食品用素材を提供する
ことを目的とする。
題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ローヤルゼリ
ーを所定の蛋白質分解酵素で分解して得られた分解組成
物が優れた血圧降下作用、とくにアンジオテンシンI変
換酵素阻害活性、を奏することを見いだし、本発明を完
成するに至った。本発明の第1の態様によれば、ローヤ
ルゼリーを、ペプシン並びにトリプシン及び/又はキモ
トリプシンにより処理して得られる分解組成物(本分解
組成物)が提供される。なお、ここにいう「ペプシン並
びにトリプシン及び/又はキモトリプシンにより処理」
するとは、(1)ペプシンとトリプシンとによって処理
すること、(2)ペプシンとキモトリプシンによって処
理すること、(3)ペプシンとトリプシンとキモトリプ
シンとにより処理すること、の(1)、(2)及び
(3)の全ての場合を含む概念である。
態様において、ペプシンとトリプシンとキモトリプシン
とにより処理して得られる本分解組成物が提供される。
本発明の第3の態様によれば、上記第1又は2記載の態
様において、ペプシンにより処理された後、トリプシン
及び/又はキモトリプシンによって処理されたものであ
る本分解組成物が提供される。本発明の第4の態様によ
れば、上記第1乃至3のいずれかに記載の態様におい
て、Lys-Phe,Ala-Val-Leu,Thr-Lys-Tyr,Ile-Val-Tyr, P
he-Tyr,Ile-Met-Tyr,Gly-Leu-Tyr,Asp-Gly-Leu,Leu-Thr
-Phe,Phe-Asn-Pheおよびそれらの塩からなる群から選ば
れる少なくとも一のものを含有する本分解組成物が提供
される。
至4のいずれかに記載の態様において、アンジオテンシ
ンI変換酵素に対する阻害を目的として用いられるもの
である本分解組成物が提供される。本発明の第6の態様
によれば、上記第1乃至5のいずれかに記載の態様にお
いて、高血圧症の予防、改善又は治療を目的として用い
られるものである本分解組成物が提供される。本発明の
第7の態様によれば、上記第1乃至6のいずれかに記載
の態様における本分解組成物を含有してなる食品組成物
が提供される。本発明の第8の態様によれば、上記第7
の態様において、アンジオテンシンI変換酵素阻害効果
を奏する量の本分解組成物を含有するものである、食品
組成物が提供される。
りがない限り、「%」は重量%をいうものとする。 ま
た、上記10種のペプチドを示す式中の記号において、
Tyrはチロシンを、Lysはリジンを、Pheはフェ
ニルアラニンを、Alaはアラニンを、Valはバリン
を、Leuはロイシンを、Ileはイソロイシンを、M
etはメチオニンを、Glyはグリシンを、Aspはア
スパラギン酸を、Thrはトレオニンを、そしてAsn
はアスパラギンを表す。
組成物(本分解組成物)は、アンジオテンシンI変換酵
素の活性を阻害する性質を有していることから、アンジ
オテンシンI変換酵素の作用によって生じる疾患の予防
および改善に用いる食品類(例えば、機能性食品)の有
効成分として使用することができる。例えば、アンジオ
テンシンI変換酵素の機能が過剰に亢進しバランスが崩
れることによって生じる疾患としては、現在わかってい
るものだけでも、高血圧症、またこれから誘発される冠
動脈疾患や心筋梗塞といった心疾患、脳血管障害、腎障
害等があり、本発明に係るローヤルゼリー分解組成物
(本分解組成物)は、これら疾患の予防および改善に用
いることができる。
リー分解組成物(本分解組成物)は、ローヤルゼリーを
ペプシン、並びにトリプシンおよび/またはキモトリプ
シンで分解処理すること、即ち、前述の通り、(1)ロ
ーヤルゼリーをペプシンとトリプシンとによって処理す
ること、(2)ローヤルゼリーをペプシンとキモトリプ
シンによって処理すること、(3)ローヤルゼリーをペ
プシンとトリプシンとキモトリプシンとにより処理する
こと、のいずれかにより製することができる。分解処理
に供するローヤルゼリーは、いかなるものであってもよ
く、女王蜂を育てるために蜜蜂が分泌するものを広く用
いることができる。また、このようにして収集した生ロ
ーヤルゼリーをそのまま用いても良く、或いは、生ロー
ヤルゼリーを適宜前処理して得た蛋白画分を用いても良
い。当該前処理した蛋白画分としては、たとえば、生ロ
ーヤルゼリーを遠心分離、アルコール沈殿、硫安処理、
加熱処理して採取した蛋白画分を好適に用いることがで
きる。それ故、本発明において「ローヤルゼリー」と称
するときは、上記生ローヤルゼリーそれ自体、およびこ
れから採取した蛋白画分のいずれをも包含するものと理
解されるべきものである。
ン、トリプシンおよびキモトリプシンとしては、特に限
定はなく、たとえば一般に市販されているものをいずれ
も用いることができる。ペプシンとしては、たとえば、
豚、牛、羊等哺乳動物の胃粘膜由来のもの、トリプシン
およびキモトリプシンとしては、たとえば、豚、牛、羊
等哺乳動物の膵臓、脾臓由来のものなどを、何れも好適
に用いることができる。
る酵素処理は、常法にしたがい、例えば、水性溶媒中約
15℃から約50℃、好ましくは約20℃から約45℃
で、適宜実施することができる。また、この際、反応液
の液性は、使用する蛋白質分解酵素の種類に応じて、適
宜調整することができる。例えば、蛋白質分解酵素とし
て、ペプシンを用いた場合はpH0.5から5で、トリ
プシン、キモトリプシンを用いた場合にはpH6から1
0で適宜実施することができる。反応溶媒は、水性溶媒
であれば、特に制限はなく、たとえば含水アルコールを
適宜用いることができる。
解処理と、トリプシン及び/又はキモトリプシンによる
分解処理と、のいずれを先に行うようにしてもよいが、
ペプシン分解処理の後にトリプシン及び/又はキモトリ
プシン分解処理を行うのがより好ましい。さらに、トリ
プシン及び/又はキモトリプシンによる酵素処理は、ト
リプシン又はキモトリプシンのいずれか少なくとも一種
を用いて行うことができるが、トリプシンとキモトリプ
シンとの両方を用いるようにすれば(即ち、この場合
は、ペプシンとトリプシンとキモトリプシンとにより処
理される。)、更に好ましい。
変換酵素阻害活性にもとづく優れた血圧降下作用を奏す
るローヤルゼリー分解組成物(本分解組成物)を得るこ
とができる。例えば、ローヤルゼリー自体はなんらアン
ジオテンシンI変換酵素阻害活性を示さないが、本発明
に係るローヤルゼリー分解組成物は、後記実施例に示す
とおり、ペプシン単独処理して得られるローヤルゼリー
分解組成物と対比して、約4倍強力な同酵素阻害活性を
示すことができる。
リプシン、キモトリプシンはそれぞれ異なるペプチド切
断点をもつため、本発明に係るローヤルゼリー分解組成
物(本分解組成物)は、これら2乃至3種のプロテアー
ゼの併用によって生成する固有のペプチドを含有し、た
とえば、後記実施例記載の反応条件にしたがえば、Lys-
Phe,Ala-Val-Leu,Thr-Lys-Tyr,Ile-Val-Tyr, Phe-Tyr,I
le-Met-Tyr,Gly-Leu-Tyr,Asp-Gly-Leu,Leu-Thr-Phe,Phe
-Asn-Phe等のジまたはトリペプチドを含むローヤルゼリ
ー分解組成物として得ることができる。
チドまたはトリペプチドは各々優れたアンジオテンシン
I変換酵素阻害活性を示す。しかし、これら活性成分の
生成比および生成量或いはさらにこれら活性成分のうち
の個々の成分の生成の有無は、使用原料の種類やその酵
素反応条件によって変動しうるものであるから、本発明
に係るローヤルゼリー分解組成物は、これら10種ペプ
チドを全て含むものには限定されない。即ち、その酵素
処理条件を前記本発明の態様の範囲内で適宜選択して得
られるものであって、かつアンジオテンシンI変換酵素
阻害活性を示す有効成分を含むものは本発明の範囲に含
まれるものであり、例えば、Lys-Phe,Ala-Val-Leu,Thr-
Lys-Tyr,Ile-Val-Tyr, Phe-Tyr,Ile-Met-Tyr,Gly-Leu-T
yr,Asp-Gly-Leu,Leu-Thr-Phe,Phe-Asn-Pheからなる群か
ら選ばれる少なくとも一種のペプチドを含むものは、す
べて本発明の範囲に含まれるものである。
解組成物)としては、上記酵素処理で得られた溶液をそ
のまま用いることができ、或いはより好ましくは、上記
酵素処理溶液を蛋白変性処理(例えば、熱処理)して蛋
白質分解酵素を失活し、必要に応じてこれを乾燥粉末化
(例えば、凍結乾燥)したものとして使用する。また、
その際、当該分解組成物に含まれるペプチドは、必要に
応じて、生理的に許容しうる各種無機酸または有機酸と
の塩、例えば、塩酸塩等としておくこともできる。
(本分解組成物)は、機能性食品、健康食品、健康志向
食品等のような食品組成物として使用することができ
る。当該用途に使用するに際しては、本発明のローヤル
ゼリー分解組成物をそのままこれらの食品組成物として
利用することができ、或いは、当該分解組成物を、例え
ば水、アルコール、ビタミン、ミネラル、でんぷん質、
蛋白質、繊維質、糖質、脂質、脂肪酸、着香料、着色
料、甘味料、調味料、香辛料、乳化剤、防腐剤、保存
料、防カビ剤、殺菌剤、酸化防止剤のごとき食品に通常
用いられる原料及び/又は素材の1または複数とともに
配合して使用することもできる。食品組成物の個々の使
用形態に応じて溶液状、懸濁液状、シロップ状、クリー
ム状、ペースト状、ゼリー状、粉末状、顆粒状、粒状、
チュアブル状、或いはそれ以外の所望の形状で、必要に
応じて成形して使用することもできる。
当該食品組成物への配合割合は、特に限定されず、当該
食品組成物の使用目的、使用形態および使用量に応じ、
適宜選択することができる。なお、当該食品組成物が、
アンジオテンシンI変換酵素阻害効果を奏する量の本分
解組成物を含有するようにするには、通常、タンパク質
由来の加水分解物量に換算して、食品組成物100重量
部あたり0.lから90重量部の範囲内である。
成物(本分解組成物)を添加・配合して調製しうる食品
組成物の具体的形態としては、例えば、飲料類(清涼飲
料(コーヒー、ココア、ジュース、ミネラル飲料、茶飲
料、緑茶、紅茶、烏龍茶等)、乳飲料、乳酸菌飲料、ヨ
ーグルト飲料、炭酸飲料、酒類(日本酒、洋酒、果実
酒、はちみつ酒等)等)、スプレッド(カスタードクリ
ーム、バタークリーム、ピーナツクリーム、チョコレー
トクリーム、チーズクリーム等)、ペースト(フルーツ
ペースト、野菜ペースト、ゴマペースト、海藻ペースト
等)、洋菓子(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュー
クリーム、エクレア、マフィン、ワッフル、ガム、グ
ミ、ゼリー、キャンデー、クッキー、クラッカー、ビス
ケット、スナック菓子、ケーキ、プリン等)、和菓子
(飴、煎餅、かりんとう、あられ、団子、おはぎ、大
福、豆もち、餅、餡、饅頭、カステラ、あんみつ、羊か
ん等)、氷菓(アイスクリーム、アイスキャンディ、シ
ャーベット、かき氷等)、レトルト食品(カレー、牛
丼、中華丼、雑炊、おかゆ、味噌汁、スープ、ミートソ
ース、デミグラスソース、ミートボール、ハンバーグ、
おでん種、赤飯、焼き鳥、茶碗蒸し等)、即席食品(即
席ラーメン、即席うどん、即席そば、即席焼きそば、即
席スパゲティ、即席ワンタン麺、即席しるこ、味噌汁の
素、粉末スープの素、粉末ジュースの素、ホットケーキ
ミックス等)、瓶詰・缶詰、ゼリー状食品(ゼリー、寒
天、テリーヌ、ゼリー状飲料等)、調味料(食塩、天然
塩、醤油、みりん、酢、砂糖、蜂蜜、味噌、ドレッシン
グ、旨味調味料、複合調味料、ソース、マヨネーズ、ケ
チャップ、ふりかけ、天つゆ、麺つゆ、だしの素、中華
スープの素、中華の素(麻婆豆腐の素、チンジャオロー
スの素)、ブイヨン、焼肉のたれ、冷しゃぶのたれ、カ
レールー、シチューのルー等)、養蜂産品(はちみつ、
ローヤルゼリー、プロポリス、花粉荷(花粉だんご)、
蜂の子等)、乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト、生ク
リーム等)、加工果実(ジャム、マーマレード、シロッ
プ漬、干し果実等)、加工野菜(野菜ジャム等)、穀類
加工食品(麺、パスタ、パン、ビーフン等)、漬物(た
くあん、奈良漬、キムチ漬、福神漬、らっきょう漬、白
菜漬、からし漬、しば漬、浅漬け、ピクルス等)、漬物
の素(即席漬けのもと、キムチ漬のもと等)、魚肉製品
(かまぼこ、ちくわ、はんぺん等)、畜肉製品(ハム、
ソーセージ、サラミ、ベーコン等)、珍味(さきする
め、さきタラ、ウニの塩辛、イカの塩辛、タコの塩辛、
カワハギのみりんぼし、フグのみりんぼし、イカの薫
製、コノワタの塩漬等)、乾物(味付け海苔等)、惣菜
類(あえもの、揚げ物、炒め物、焼き物、煮物、酢の物
等)、冷凍食品(エビフライ、コロッケ、春巻き、とん
かつ、シューマイ、餃子、ハンバーグ、たこ焼き、今川
焼き(回転焼き)、肉まん、あんまん等)、油脂食品
(サラダオイル、マーガリン、バター)等を挙げること
ができる。さらに、本分解組成物を添加・配合して調製
しうる食品組成物は、食品(飲料水を含む。)に添加す
るための食品添加用組成物として用いてもよい。本発明
のローヤルゼリー分解組成物を添加・配合して調製しう
る食品組成物は、いわゆる健康食品、機能性食品、栄養
補助食品、サプリメント、特定保健用食品(厚生労働
省、特別用途食品の一種)、病者用食品・病者用組合わ
せ食品(厚生労働省、特別用途食品の一種)又は高齢者
用食品(厚生労働省、特別用途食品の一種)としてもよ
く、その場合であれば、素錠、糖衣錠、顆粒、粉末、タ
ブレット、カプセル(ハードカプセルとソフトカプセル
とのいずれも含む。)、チュアブルタイプ、シロップタ
イプ等とすることもできる。 本発明に係るローヤルゼ
リー分解組成物を添加・配合した食品組成物の調製は、
それ自体公知の方法で行うことができる。
施例及び試験例を挙げる。しかしながら、本発明は、か
かる実施例等によって何ら制限されるものではない。
せ、ボルテックス(商標、Scientific Industries社
製)で攪拌した後、4℃、12,000rpmで20分間遠心分離を
行なった。その上清を凍結乾燥したものを試料N-RJ
(Native Royal Jelly)とした。N−RJ 3gを30ml
の脱イオン水に溶解し、ボルテックスで攪拌後、その攪
拌された液に20%塩酸を加えてpHを1.2に調整した。そ
のpH1.2に調整された液に、対基質(N−RJ 3
g)に0.4重量%となるようにペプシン(ブタ胃粘膜由
来、ナカライテスク社製)12mgを加え、37℃で4時間イ
ンキュベートした。
20%水酸化ナトリウム溶液を加えて、その溶液のpHを
6.8に調整した。次いでpHを6.8に調整された溶液の上
清3mlを分取し、これを凍結乾燥させてローヤルゼリ
ーのペプシン分解組成物を得た。該溶液の残分に対基質
0.2重量%となるようにキモトリプシン6mg及びトリ
プシン6mg(いずれもウシ脾臓由来、ベーリンガーマ
ンハイム社製)を添加し、それを37℃で4時間インキュ
ベートした。その37℃で4時間インキュベートされた溶
液を98℃で15分間加熱処理し、その加熱処理された溶液
を10,000rpmで15分間遠心分離した。その遠心分離され
た溶液の上清を凍結乾燥して、ローヤルゼリーのペプシ
ン・トリプシン・キモトリプシン分解組成物(本分解組
成物)を得た。
びペプシン・トリプシン・キモトリプシン分解組成物
(本分解組成物)のアンジオテンシンI変換酵素阻害活
性を、Lieberman変法(山本 節子、戸井田 一郎、岩
井 和郎、日胸疾会誌18(5)、p297−30
3.、1980)に準じて測定した。
れた分解組成物(ペプシン分解組成物とペプシン・トリ
プシン・キモトリプシン分解組成物(本分解組成物)と
のそれぞれ)を脱イオン水に溶解させて調製した分解組
成物サンプル25μl及び前述のほう酸緩衝液(0.2M
ほう酸、0.05M四ほう酸ナトリウム、pH8.3)
に溶解した25mUウサギ肺由来アンジオテンシンI変換
酵素(ACE、シグマ社製)50μlを穏やかに混合し、3
7℃で5分間プレインキュベートした後、12.5mMの擬似
基質hippuryl−L−histidyl−L−leucine(HHL、
ペプチド研究社製)を50μlを添加することによって反
応を開始した。37℃で1時間インキュベートした後、0.5
M塩酸125μlの添加によって反応を停止した。次に、
酢酸エチル750μlを加える事によって、生成した馬尿
酸を抽出し、228nmでの吸光度を測定した。そして阻
害率IC(%)を、以下に示す式に従って算出した。
ンプルを加えず、正常活性を有するACEを用いて反応
させたもの、ブランクとは分解組成物サンプルを加え
ず、失活させたACEを用いて反応させたもの、サンプ
ルブランクとは分解組成物サンプルを加えて、失活させ
たACEを用いて反応させたもの、をそれぞれ意味す
る。
プルブランクについては、次のようにして測定した。ま
ずコントロールは、前述する分解組成物サンプルの反応
において、脱イオン水に溶解した分解組成物サンプル25
μlに代えて脱イオン水25μlを用いる以外は同様にして
反応させ、得られた反応液から抽出した馬尿酸の吸光度
(228nm)を測定した。またブランクは、前述する分
解組成物サンプルの反応において、脱イオン水に溶解し
た分解組成物サンプル25μlに代えて脱イオン水25μlを
用いて、これを同様に25mUのACE50μlと混合し、3
7℃で5分間プレインキュベートした後、直ちに0.5M
塩酸125μlを加えてACEを失活させる操作を行っ
た。次いでこれに12.5mMの擬似基質hippuryl−L−hi
stidyl−L−leucine(HHL、ペプチド研究社製)を5
0μlを添加し、分解組成物サンプルの場合と同様にし
て反応させて、得られた反応液から抽出した馬尿酸の吸
光度(228nm)を測定した。そしてサンプルブランク
は、分解組成物サンプル25μlを25mUのACE50μlと
混合し、37℃で5分間プレインキュベートした後、直ち
に0.5M塩酸125μlを加えてACEを失活させる
操作を行った。次いでこれに12.5mMの擬似基質hippur
yl−L−histidyl−L−leucine(HHL、ペプチド研
究社製)を50μlを添加し、分解組成物サンプルの場合
と同様にして反応させて、得られた反応液から抽出した
馬尿酸の吸光度(228nm)を測定した。
I変換酵素の活性を50%阻害したとき(即ち、IC
(%)=50のとき)の反応液中での分解組成物濃度を
IC50値として定義した。IC50値の具体的な求め方
は、各分解組成物それぞれについて、いくつか異なる濃
度のサンプルで上記式1よりIC(%)を得て、縦軸に
阻害率IC(%)をとり、横軸に反応液中の分解組成物
の濃度(μM)をとり、検量線を作成する。その検量線
から50%活性が阻害された分解組成物濃度を読みと
り、その分解組成物のIC50値とした。また、N−RJ
についても、上記と同様にIC(%)を得て、縦軸に阻
害率IC(%)をとり、横軸に反応液中の分解物の濃度
(mg/ml)をとり、検量線を作成する。その検量線
から、酵素阻害活性を測定した。結果を、次の表1に示
す。
−RJをトリクロロ酢酸処理して採取した蛋白質画分)
にはACE阻害作用は全く認められないことが明らかと
なった。一方、N−RJをペプシンによる酵素処理する
ことでACE阻害作用が発現するが、ペプシン分解組成
物をさらにトリプシンとキモトリプシンで酵素処理する
ことで、ACE阻害作用が著しく上昇することが判明し
た(ペプシン分解組成物と対比して、後者がほぼ4倍の
ACE阻害活性(IC50=0.353mg/ml)を
有している)。
分解組成物(本分解組成物)から、Superdex Peptide H
R カラム(Bio-Rad社製、φ10mm×300mm)を用いた
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)-HPLCの高速液体ク
ロマトグラフィーにより、ジペプチド及びトリペプチド
の粗画分を分離した。この分離条件は以下の通りであ
る。移動相には、0.1%トリフルオロ酢酸と30%アセト
ニトリルを含む含水有機溶媒(トリフルオロ酢酸とアセ
トニトリルと水との混合溶媒)を用い、流速0.3ml/
分、35℃のカラム温度で分画を行ない、溶出は、220n
mでモニターし、約100分間実施した。このときの溶出
曲線を図1に示す。図1の横軸は溶出時間(単位:分)
を、縦軸は吸光度(220nm)を示す。ジペプチド及び
トリペプチドを含む粗画分として、溶出時間が約50〜
70分の画分を採取した(図1中、矢印Aの範囲)。こ
の粗画分に含まれるジペプチド及びトリペプチドの産生
率は、最初のN−RJサンプルの3.3%であった。
70分の画分)は、分子量マーカーとしてGly−Gl
y(最小分子量マーカー)、Gly−Tyr、Gln−
Val−Lys、Trp−Trp−Trp(最大分子量
マーカー)、アンジオテンシンII(ANGII)を用
いて、上記と同じ条件でGPC−HPLCを行い、最小
分子量マーカーであるGly−Glyから最大分子量マ
ーカーであるTrp−Trp−Trpまでの全てのジペ
プチド及びトリペプチドが溶出する時間から決定した。
この結果を検量曲線として図2に示す。図2の横軸は溶
出時間(分)、縦軸は分子量の対数値(log.M.
W.)を示している。
含む粗画分を、まず、ODS−Phe修飾カラム(ナカ
ライテスク社製、φ4.6mm×250mm)を用い、つい
で、ODS−ARIIカラム(ナカライテスク社製、φ
4.6mm×250mm)を用いた2段階の逆相高速液体クロ
マトグラフにかけ、アンジオテンシンI変換酵素阻害ペ
プチドを単離した。この分離条件は以下の通りである。
まず、ODS−Phe修飾カラムによる分離について
は、移動相には、アセトニトリル濃度が1から40%の濃
度勾配となるようにアセトニトリル−水の混合溶媒を用
い、流速0.3ml/分、常温のカラム温度で分画を行な
い、溶出は、220nmで状況をモニターしながら、約60
分間実施した。次に、ODS−ARIIカラムによる分
離については、移動相は、0.1%トリフルオロ酢酸とア
セトニトリル濃度が5から35%の濃度勾配となるように
アセトニトリル−水の混合溶媒を用い、流速0.3ml/
分、常温のカラム温度で分画を行ない、溶出は、220n
mで状況をモニターしながら約60分間実施した
いて以下詳述する。まず、第1及び第2のペプチドの単
離について説明する。上記ジペプチド及びトリペプチド
を含む粗画分(図1、A画分)を、前述の条件のもとO
DS−Phe修飾カラムを用いた高速液体クロマトグラ
フによって分画し、図3に示す溶出曲線を得た。図3
中、▲及びそれを結ぶ点線は右軸であり、○及びそれを
結ぶ実線は、左軸を示す。この溶出成分のうち溶出時間
39分の画分を採取し、引き続き前述の条件のもとOD
S−ARIIカラムを用いた高速液体クロマトグラフィ
ーにかけ、図4に示す溶出曲線を得た。図4の各ピーク
について、後述するアミノ酸組成分析及びアミノ酸配列
分析を行った。その結果、溶出時間48.3分の画分が
第1のペプチドたるLys−Pheであることが判明
し、溶出時間60.5分の画分が第2のペプチドたるA
la−Val−Leuであることが判明した。
の単離について説明する。第1及び第2のペプチドの単
離の場合と同様に、図3に示す溶出曲線のうち溶出時間
43分の画分を採取し、引き続き前述の条件のもとOD
S−ARIIカラムを用いた高速液体クロマトグラフに
かけ、図5に示すような溶出曲線を得た。図5の各ピー
クについて、後述するアミノ酸組成分析及びアミノ酸配
列分析を行った。その結果、溶出時間46.7分の画分
が第3のペプチドたるThr−Lys−Tyrであるこ
と、溶出時間56.7分の画分が第4のペプチドたるI
le−Met−Tyrであること、溶出時間59.7分
の画分が第5のペプチドたるPhe−Tyrであること
が判明した。
する。第1及び第2のペプチドの単離の場合と同様に、
図3に示す溶出曲線のうち溶出時間48分の画分を採取
し、引き続き前述の条件のもとODS−ARIIカラム
を用いた高速液体クロマトグラフにかけ、図6に示すよ
うな溶出曲線を得た。図6の各ピークについて、後述す
るアミノ酸組成分析及びアミノ酸配列分析を行った。そ
の結果、溶出時間59.7分の画分が第6のペプチドた
るGly−Leu−Tyrであることが判明した。
明する。第1及び第2のペプチドの単離の場合と同様
に、図3に示す溶出曲線のうち溶出時間52分の画分を
採取し、引き続き前述の条件のもとODS−ARIIカ
ラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにかけ、図7
に示すような溶出曲線を得た。図7の各ピークについ
て、後述するアミノ酸組成分析及びアミノ酸配列分析を
行った。その結果、溶出時間66.7分の画分が第7の
ペプチドたるAsp−Gly−Leuであることが判明
した。
明する。第1及び第2のペプチドの単離の場合と同様
に、図3に示す溶出曲線のうち溶出時間60分の画分を
採取し、引き続き前述の条件のもとODS−ARIIカ
ラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにかけ、図8
に示すような溶出曲線を得た。図8の各ピークについ
て、後述するアミノ酸組成分析及びアミノ酸配列分析を
行った。その結果、溶出時間70.1分の画分が第8の
ペプチドたるLeu−Thr−Pheであることが判明
した。
第1及び第2のペプチドの単離の場合と同様に、図3に
示す溶出曲線のうち溶出時間68分の画分を採取し、引
き続き前述の条件のもとODS−ARIIカラムを用い
た高速液体クロマトグラフィーにかけ、図9に示すよう
な溶出曲線を得た。図9の各ピークについて、後述する
アミノ酸組成分析及びアミノ酸配列分析を行った。その
結果、溶出時間76.1分の画分が第9のペプチドたる
Phe−Asn−Pheであることが判明した。
説明する。第1及び第2のペプチドの単離の場合と同様
に、図3に示す溶出曲線のうち溶出時間46分の画分を
採取し、引き続き前述の条件のもとODS−ARIIカ
ラムを用いた高速液体クロマトグラフィーにかけ、図1
0に示すような溶出曲線を得た。図10の各ピークにつ
いて、後述するアミノ酸組成分析及びアミノ酸配列分析
を行った。その結果、溶出時間60.1分の画分が第1
0のペプチドたるIle−Val−Tyrであることが
判明した。なお、上記した高速液体クロマトグラフィー
操作は、いずれも島津製作所社製LC−9AHPLCシ
ステムを用いて行った。以上のようにして、分解物(分
解組成物)からペプチドの単離を高速クロマトグラフィ
ーによって行い、第1〜10のペプチドそれぞれの画分
を採取した。
いた前記アミノ酸組成分析及び前記アミノ酸配列分析に
ついて簡単に説明しておく。アミノ酸組成分析は、常法
に従ってサンプルを6N塩酸で110℃で24時間、加
水分解した後、LC−10Aアミノ酸アナライザー(島
津製作所社製)によって分析した。アミノ酸配列分析
は、PPSQ−21プロテインシーケンサー(島津製作
所社製)を用いて、常法に従って自動エドマン分解法に
より分析を行った。これらの分析結果から、ペプチドの
構造を決定した。
のアンジオテンシンI変換酵素阻害活性(IC50値)を
実施例2記載の方法に準拠して求めた。結果は、次の表
2に示すとおりである。
た。
分攪拌して用いる。
は、アンジオテンシンI変換酵素阻害作用を有するとと
もに、その成分が主に比較的小さなペプチド分子である
ため粘膜や皮膚等を経由して効率よく吸収される。さら
に、ローヤルゼリーを蛋白質分解酵素によって分解して
得られるものであるため、優れた安全性を有するという
特徴を有する。従って、本発明に係るローヤルゼリー分
解組成物それ自体および同組成物を添加・配合した食品
組成物は、機能性食品等として、高血圧の予防や改善な
どを効率よくかつ安全に実現することができる。また、
本発明に係るローヤルゼリー分解組成物および同組成物
を添加・配合した食品組成物は、アンジオテンシンI変
換酵素の活性を阻害する性質を有しているので、アンジ
オテンシンI変換酵素の作用に基づく各種疾患、例え
ば、高血圧症、これから誘発される冠動脈疾患や心筋梗
塞といった心疾患、脳血管障害、腎障害などの予防に効
果的に使用することができる。
クロマトグラフィーにより分画する際の溶出曲線であ
る。
クロマトグラフィーにより分画する際の採取する画分の
溶出時間を決定するためのグラフである。
ロマトグラフィーによる溶出曲線である。
−ARIIカラムを用いた高速液体クロマトグラフィー
による溶出曲線である。
のODS−ARIIカラムを用いた高速液体クロマトグ
ラフィーによる溶出曲線である。
Iカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによる溶
出曲線である。
Iカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによる溶
出曲線である。
Iカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによる溶
出曲線である。
Iカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによる溶
出曲線である。
RIIカラムを用いた高速液体クロマトグラフィーによ
る溶出曲線である。
Claims (8)
- 【請求項1】ローヤルゼリーを、ペプシン並びにトリプ
シン及び/又はキモトリプシンにより処理して得られる
分解組成物。 - 【請求項2】ペプシンとトリプシンとキモトリプシンと
により処理して得られる、請求項1に記載の分解組成
物。 - 【請求項3】ペプシンにより処理された後、トリプシン
及び/又はキモトリプシンによって処理されたものであ
る、請求項1又は2に記載の分解組成物。 - 【請求項4】Lys-Phe,Ala-Val-Leu,Thr-Lys-Tyr,Ile-Va
l-Tyr, Phe-Tyr,Ile-Met-Tyr,Gly-Leu-Tyr,Asp-Gly-Le
u,Leu-Thr-Phe,Phe-Asn-Pheおよびそれらの塩からなる
群から選ばれる少なくとも一のものを含有するものであ
る、請求項1乃至3のいずれかに記載の分解組成物。 - 【請求項5】アンジオテンシンI変換酵素に対する阻害
を目的として用いられるものである、請求項1乃至4の
いずれかに記載の分解組成物。 - 【請求項6】高血圧症の予防、改善又は治療を目的とし
て用いられるものである、請求項1乃至5のいずれかに
記載の分解組成物。 - 【請求項7】請求項1乃至6のいずれかに記載の分解組
成物を含有してなる食品組成物。 - 【請求項8】アンジオテンシンI変換酵素阻害効果を奏
する量の前記分解組成物を含有するものである、請求項
7に記載の食品組成物。
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- 2001-10-02 JP JP2001306302A patent/JP4045401B2/ja not_active Expired - Lifetime
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