JP2002173328A - ガラス塊の製造方法及び製造装置、並びにプレス成形品の製造方法 - Google Patents

ガラス塊の製造方法及び製造装置、並びにプレス成形品の製造方法

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JP2002173328A
JP2002173328A JP2000367764A JP2000367764A JP2002173328A JP 2002173328 A JP2002173328 A JP 2002173328A JP 2000367764 A JP2000367764 A JP 2000367764A JP 2000367764 A JP2000367764 A JP 2000367764A JP 2002173328 A JP2002173328 A JP 2002173328A
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Atsushi Watabe
敦 渡部
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融ガラス滴や軟化点以上に加熱されたガラ
スを他の物体(例えば成形容器)に接触させない無接触
状態でガラス塊を成形することができる製造方法及び製
造装置等を提供する。 【解決手段】 成形対象であるガラス1(例えば溶融状
態のガラス)を浮上させた状態で、成形してガラス塊を
作製するガラス塊の製造装置であって、前記成形対象で
あるガラス1を所定の浮上位置に浮上させる気流を発生
させる気流発生部(例えばガス加熱供給系2)と、前記
浮上位置にある成形対象であるガラス1に音響圧を加え
るための音波発生部(例えば3軸の音源5)とを備え
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は溶融ガラスから、プ
レス成形によって光学ガラス素子などを製造するための
プレス成形用ガラス素材(例えば、プレス成形後に研削
又は研磨を必要としないガラスの精密プレス、いわゆる
モールドプレスに使用するガラスプリフォーム)のよう
なガラス塊を成形するガラス塊の製造方法及びこのガラ
ス塊を製造するための装置、並びにこのようなガラス塊
から光学ガラス素子などのプレス成形品を作製するプレ
ス成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】レンズなどの光学素子を製造する方法と
して、軟化ガラスを成形型によりプレス成形して、研削
又は研磨を必要としない所望の形状の光学素子を製造す
る方法が知られている。このような製造方法では、プレ
ス成形を行う前に、溶融したガラスから、プレス成形に
適した形状を有し、表面にキズや汚れ等のないガラスプ
リフォーム(ガラス予備成形体)を形成し、このガラス
プリフォームを再加熱して軟化させプレス成形するのが
通常である。しかしながらガラスプリフォームには、ミ
リグラム単位の重量精度が要求され、かつ、脈理、デビ
(失透)、傷、泡などの欠陥や表面付着物は許されな
い。
【0003】このようなプリフォームを安価に量産する
方法としては、特開平2−14839号の方法が知られ
ている。この方法では、流出パイプから流下する溶融ガ
ラスを成形型の凹部で受ける際、この凹部に開口する細
孔から、空気、不活性ガス等の気体を吹き出し、溶融ガ
ラス塊と成形型凹部の内面との間に気体の層を作り、溶
融ガラス塊の少なくとも表面の一部が軟化点温度以下に
達するまで、溶融ガラス塊を前記凹部内面と実質的に非
接触状態で凹部内に保持し、冷却してガラス塊を作る方
法が開示されている。この方法によれば、上下面とも自
由表面となるため、表面品質の良好なプリフォームを得
ることができる。またこの方法では、溶融ガラスを自然
滴下又は切断刃で切断することによって溶融ガラスを落
下させるため、実用レベルの重量精度を得ることも可能
となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来例においては、成形型凹部に設けた細孔からガスを噴
出させ溶融ガラスを浮上させており、このような浮上方
式において、ガス流量を増やし溶融ガラスを完全に浮上
させようとすると、溶融ガラス表面にミカン肌状の凹み
(窪み)ができることがある。この凹みは細孔からの噴
出ガス圧でガラスが凹む(窪む)ことが原因なので、表
面凹みが起こらない程度にガス流量を下げてやる必要が
あった。そのため、特にガラスの流下初期段階などにお
ける成形型とガラスの一時的な接触を完全に防止するこ
とはできない。その対策として、上記方法では成形型凹
部表面を鏡面仕上げし、一時的接触によるガラス表面の
キズ発生や汚れ付着を防止している。ところが上記成形
型凹部表面を鏡面仕上げする方法では品質の良いプリフ
ォームが作製できないガラスもある。例えば流下温度域
で成分揮発が多いガラスを成形する場合、揮発成分ガス
が低温設定の成形型に凝結して堆積しやすく、成形型に
堆積した揮発成分が、成形型とガラスとの接触によりガ
ラス表面に再付着するという現象が起こる。また流出温
度付近で結晶化(失透)しやすいガラスを成形する場合、
流下直後の成形型とガラスとの接触が結晶化の引き金に
なりガラス表面が結晶化する場合がある。ガラスのよう
な過冷却液体からの結晶化は結晶核の生成と結晶成長の
2段階に分けて考えることができる。ガラス融液から過
冷却状態を経て(結晶化させずに)ガラスを得るには、
結晶核の生成とそれに続く結晶成長を避けながら、冷却
することが必要である。ガラス融液から結晶核が均一に
生成する場合の自由エネルギー変化△Ghomは、界面
エネルギーの増加と体積エネルギーの減少の和によって
表わされる(下記数式(1))。 △Ghom=4πr2γ+4/3πr3△Gv …(1) ここで、γはガラス融液と結晶核の間の単位面積あたり
の界面エネルギー、△Gvはガラス融液と結晶核の自由
エネルギー差である。また、成形容器壁などで不均一核
生成が起きる場合の自由エネルギー変化△Ghetは、
ガラス融液と接触している表面(面積はS1)からの界
面エネルギーの増加、成形容器壁との接触(面積はS
2)による界面エネルギーの減少、体積エネルギーの減
少の和によって表わされる(下記数式(2))。 △Ghet=S1γ−S2γcosθ+4/3πr3△Gv …(2) ここで、常に△Ghom>△Ghetであり、不均一核
生成は均一核生成よりも起きやすい。容器を使って成形
している場合には、容器とガラス融液の界面あるいは、
容器から溶け出た異物粒子との界面が不均一核生成の場
となる。一方、浮上状態下で無容器成形させた場合に
は、均一核生成のみとなって、結晶核が生成しにくくな
り、過冷却状態を経てガラスを得る可能性が大きくな
る。浮上状態下の無容器成形では均一核生成のみが起き
るが、容器を使った場合には不均一核生成と均一核生成
が同時に起きる。両者の自由エネルギー変化は、△Gh
om>△Ghetであるため、均一核生成のみの場合の
核生成速度I(T)と、不均一核生成と均一核生成の両
方を含めた核生成速度I’(T)の関係は、常にI
(T)<I’(T)となる。つまり、一定量の結晶転移
を引起こすのに必要な時間tは、均一核生成のみの場合
の方が長くなり、均一核生成のみが起きる無容器溶融で
は、不均一核生成と均一核生成が同時に起きる容器内で
の冷却速度Rc’より、小さな冷却速度Rcでもガラス
が得られるようになる。また、同じ冷却速度であれば、
容器中では冷却中に結晶化を避けることができなかった
組成でもガラス化することができるようになる。また、
容器がないため揮発凝集堆積物の付着もない。以上のよ
うに、流下温度域で揮発部が多いガラスや、結晶化しや
すいガラスを成形するには、型とガラスを完全に非接触
状態に保つ必要がある。
【0005】本発明は、上記問題を解決するためになさ
れたものであり、ガラス融液を受け、浮上状態(一時的
な接触あり)、好ましくは無接触状態(一時的な接触も
ない完全な非接触状態)でガラス塊を成形するか、浮上
状態、好ましくは無接触状態のガラスを加熱、溶融して
ガラス塊を成形することによって、表面欠陥のないガラ
ス塊を製造するための方法及び装置を提供することを目
的とする。また、本発明の別の目的は、上記方法又は装
置によって作製されたガラス塊から表面欠陥のない精密
プレス成形品を作製するプレス成形品の製造方法を提供
することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、音響圧を
加えて成形対象であるガラスの浮上状態を保ちつつ、前
記ガラスを成形し、ガラス塊を形成することを特徴とす
るガラス塊の製造方法である。ここで、音響圧は、成形
対象であるガラスの浮上を補助する作用、成形対象であ
るガラスの浮上位置を制御する作用、成形対象であるガ
ラスの形状を制御する作用、のうちの少なくとも一つの
作用を発揮させる目的で成形対象であるガラスに加えら
れる。つまり、音響圧の作用で成形対象であるガラスの
浮上状態を安定して保つことができ、音響圧の作用で成
形対象であるガラスの浮上位置を制御することができ
る。また、音響圧の作用で成形対象であるガラスの形状
を制御することもできる。成形対象であるガラスには、
成形対象であるガラスの浮上位置への供給時からガラス
塊に至るまでの間の状態(固体状態、軟化状態、溶融状
態、融液の状態のガラスから冷却されてガラス塊に至る
までの状態)のガラスが含まれ、これらの状態のガラス
に音響圧を加えることができる。第1の発明のより好ま
しい態様は、浮上状態にある溶融ガラス又は軟化点以上
のガラス塊を成形容器や支持部材などの他の物体と接触
させない無接触状態で保持し、前記成形を行うものであ
る。そして、音響圧に加えて、ガラスに浮上する力を加
えるべく、風圧を加えることが好ましい。上記発明にお
いて溶融ガラスは、ガラス融液を滴下したものを空中で
浮上、保持したものでもよいし、固体状態のガラスを浮
上させ、そのガラスを加熱、溶融させたものでもよい。
浮上状態は、ガラスの温度が軟化点未満となるまで維持
することが好ましく、ガラス転移点未満となるまで維持
することがより好ましい。さらに無接触状態による浮上
も同様に、ガラスの温度が軟化点未満となるまで維持す
ることが好ましく、ガラス転移点未満となるまで維持す
ることがより好ましい。
【0007】第2の発明は、成形対象であるガラスを浮
上させた状態で、ガラスを成形してガラス塊を作製する
ガラス塊の製造装置であって、前記成形対象であるガラ
スを所定の浮上位置に浮上させる気流を発生させる気流
発生部と、前記浮上位置にある成形対象であるガラスに
音響圧を加えるための音波発生部とを備えることを特徴
とするするものである。上記ガラス塊の製造装置におい
ては、例えば、前記音響圧を加えることによって、前記
浮上位置より位置ずれした成形対象であるガラスを前記
浮上位置へ戻し、浮上状態を保ちつつ前記成形を行う機
能を有する装置であることが好ましい。
【0008】第3の発明は、第1の発明又は第2の発明
により作製されたガラス塊を再加熱し、成形型によって
精密プレス成形し、最終製品形状を有するプレス成形品
を作製することを特徴とするプレス成形品の製造方法で
ある。第3の発明の好ましい態様は、ガラス塊を再加熱
し、精密プレス成形して光学ガラス素子を作製するもの
である。ここで、精密プレス成形とは、上記のようにプ
レス成形によって目的とする最終製品形状をガラスに付
与するプレス成形法であり、プレス成形後、研削加工や
研磨加工を行う必要がない程度にまで、精密な形状に成
形する方法を意味し、球面レンズ、非球面レンズ、マイ
クロレンズ、レンズアレイ、プリズム、フレネルレン
ズ、回折格子、ポリゴンミラーなどの高精度成形が要求
される光学ガラス素子をプレス成形のみで作製すること
が可能なプレス成形法である。
【0009】
【作用】上方に向かって流れる気流を軟化状態にあるガ
ラス及びガラス塊に吹き付け、風圧を加えてガラスの重
量を支える。前記気流による浮上を安定して行うため、
軟化状態のガラス及びガラス塊に音波をあてて音響圧を
加え、軟化状態にあるガラス及びガラス塊を安定して浮
上できる位置に保持する。このように気流による風圧と
音波による音響圧によって溶融ガラス、ガラス塊を安
定、浮上させることができ、溶融、軟化状態のガラスが
他の物体と接触するのを防ぐ、又は音響圧を加えない場
合に比べ接触を低減することができる。なお、浮上状態
で加熱することによりガラスは、固体から軟化状態、溶
融状態になる。また軟化状態や溶融状態、融液の状態の
ガラスが成形、冷却されることによってガラス塊にな
る。上記の固体状態、軟化状態、溶融状態、融液の状態
のガラスと、ガラス塊とは同じガラスを示しており、温
度変化による状態変化に即して呼び方を変えている。こ
のように、軟化状態、溶融状態におけるガラスが非接触
状態でガラス塊に成形されるので表面欠陥がないプレス
成形用ガラス素材のようなガラス塊を得ることができ
る。このようなガラス塊をプレス成形用素材として使用
し、精密プレス成形された成形品の表面には、プレス成
形用素材であるガラス塊の欠陥が残留することがない。
【0010】
【発明の実施の形態】図1は、音響浮揚装置の構成及び
作用(原理)を説明するための概略図である。図1に示
すように、共通軸Xに沿って互いに相手に向かって音響
を十分に発生させる音響放射面14、14’を有する一
対の向き合う音源12、12’が配置されている。音源
12、12’は、圧電気又は磁気歪、あるいは従来の音
声コイルなどの電気機械駆動体を含む個体ピストンタイ
プの音源である。音源12、12’は、軸Xに沿って反
対方向に強い音響の柱をつくる。これら音源12、1
2’は共通発振器15及び増幅器16、16’に接続
し、同一周波数で音響を生成する。各音源12、12’
は、共通発振器15からの信号を受信する複数の圧電ウ
ェーハ11、11’を含み、凹形の放射器14、14’
に留めてある円筒形ロッドあるいはピストン13、1
3’に圧着されている。圧電ウェーハ11、11’は、
力の高いレベルで広がったり縮んだり、あるいは振動
し、ロッド13、13’及び放射器14、14’の振動
を起こす。音源12、12’が同一周波数で駆動される
とき、相互に作用する音波の間に干渉する波形パターン
が創出される。図1は、音源12からの音波20、及び
音源12’からの同一波長の音波20’を図示する。こ
の二つの音波20、20’は、軸Xに沿ったある点で干
渉し、互いに強化し合い、低音圧のノード(波節)2
1、21’を生成する。このノード21、21’は、各
半波長の位置に現れ、そこに固形あるいは液状の物体を
浮揚するエネルギーのくぼみ(区域)を限定する。この
ノードあるいはエネルギーのくぼみ21、21’は、物
体30を軸方向また放射状の両方に保持あるいは収容す
る合力を生成する。位相移動及びレベル制御器17、1
7’は、一方に比例して他方の音源の位相を変えるため
に、増幅器16、16’のどちらか一方あるいは両方に
接続している。位相移動及びレベル制御器17、17’
は、そのどちらか一方あるいは両方に接続された制御器
(図示せず)によって、両音源間でのエネルギーのくぼ
み21、21’の正、負あるいはゼロ変化を生成するた
めに調整されることがある。この調整により、軸Xに沿
ったエネルギーのくぼみ21、21’の位置及び物体の
動きが対応して変化する。
【0011】図2は、本発明の一実施の形態にかかる風
圧・音響空中浮揚装置の構成及び作用を説明するための
概略図である。図2に示すように、圧力調整器52を有
する圧力タンク50などの圧縮ガス源が、ニードル弁5
6を有する一本の出力線54に接続している。ガスの制
御された量が、適切な大きさの穴58を通って通過す
る。この穴58は今度は放出口62を有する一本の直立
した放出管60に接続している。放出管60の放出口6
2からガスが放出する。この放出管60は、そこに試料
としての物体40が懸下あるいは浮揚される浮揚区域に
対して向けられている。この物体40は、電気的に導体
あるいは不導体である材料で構成されていることがあ
る。一般には、垂直軸(重力方向)に対して斜めに配置
された一本あるいは複数のガス気流あるいはジェット状
のガス気流で物体を浮揚することが可能であるが、ガス
気流は垂直軸(重力方向)に沿って向けることが好まし
い。このガス気流の速度は、所望の浮揚の度合を保持す
るように調整することが可能であり、またノズルからの
距離(放出口62と物体40との距離)を調整すること
が可能である。具体的には例えば、薄い層状あるいはジ
ェット状のガス気流を使用する。薄い層状のガス気流の
場合は、放出口62の直径はその物体の直径よりも大き
く、そのガス気流は側方保持力が少ししかないか又は全
然ない上向きの浮揚成分を生成する。ジェット状のガス
気流の場合は、ジェットの直径は浮揚される物体よりも
小さく、そのジェットの流れはその物体の周囲のガスの
流れによる横方向の安定の度合と上記と同様な上向きの
浮揚成分を生成する。本発明では、特にガス浮揚の軸に
対して直角に、物体を安定した位置に保持するために、
音響浮揚位置決めを行う。この音響浮揚位置決めには、
図1に図示する装置を使用することが望ましい。二対の
向き合っている音源66、68が、浮揚区域あるいは浮
揚区域にある物体40に対して向けられている。これら
音源66、68は、互いに直角に配置されていて、それ
ぞれの放射軸が共通平面内に存在するようにして、等し
く離れて置かれている。放射の軸は、強力な横方向の位
置決め力を生成するように、水平な平面内に存在してい
る。物体を監視しかつ各種の機能を可能にするように、
ビデオスキャナあるいは他のセンサ70が物体40に対
して向けられている。この機能には、位置、回転、温
度、動き、位相変化、形状あるいは他の特性が含まれ
る。さらに、物体40の回転を最小にする又は制御する
目的でその物体に回転力を与えるため、あるいは回転を
生成するために位相移動制御器(共通制御器)72を使
用することが可能である。音響場は、物体40に対して
均一な保持力を作用する。これにより、浮揚された液体
に対してより安定した形状をもたらすことになる。CO
2ガスレーザ74あるいは他の既知の加熱器などの熱源
が、物体40の加熱あるいは溶融に使用することが可能
である。
【0012】図3は、本発明の一実施の形態にかかる風
圧・音響空中浮揚装置の概略図であり、図3に示す装置
を実際に使用してガラス成形を行った。図3に示すよう
に、浮上装置は、ガス加熱供給系2、流量コントロール
系3及び4、3軸の音源5、試料位置検出器用光源とし
てのダイオードレーザ6と試料位置検出器7、ビデオカ
メラ8、真空チャック9、CO2ガスレーザ加熱系10
よりなる。ガス加熱供給系2からのガス流と、3軸の音
源5からの音波の相互作用により作られる音圧により試
料1が中央の谷間(空間位置)に浮上する。音源からの
音波は約22kHzである。試料位置は3軸のダイオー
ドレーザと試料位置検出器7(他の2軸は図示省略)に
より測定されてフィードバックされる。加熱は、水平方
向の向かいあった2方向から、400WのCO2ガスレ
ーザにより行なわれる。まず、試料1が、真空チャック
9により吸着された状態で中央位置まで運ばれこの位置
で吸着が開放され、ガス流と、3軸の音源からの音波に
より初期浮上が行われる。浮上が確認された後、CO2
ガスレーザの窓をあけて、試料を加熱していく。試料が
加熱されるとまわりのガス温度が変ってガス流を伝わっ
ている音速が変化するため、加熱はゆっくりと行なわれ
る。試料1が溶融すると、形状が変化する。試料温度は
連続的に非接触温度計により連続して行なわれる。ガス
流量は、0.2〜10L(リットル)/min(好まし
くは、1.2〜2.8L/min)で、ガス種は空気
で、150℃に加熱されている。また、音源の周波数
は、22kHzを用いた。浮上実験結果を表1に、また
浮上状態を撮影した様子を図4に示す。
【0013】
【表1】
【0014】表1からわかるように、約φ6.5mmの
ガラス(390mg)までの浮上が確認された。ガス流
量を増大させ音源の周波数を適正化することによりφ1
4mmまでの試料の浮上が可能である。また、CO2
スレーザを照射し、30−120Wの出力で十分軟化す
ることが確認できた。CO2ガスレーザを用いて、ガラ
スプリフォームを加熱成形できる。また、軸に沿ったあ
るいは軸から離れる物体のゆっくりした移動は、その物
体の位置を感知することにより修正することが可能であ
り、つぎに相対位相あるいは適正な音源の強度を調整し
て、物体を所望の位置に戻すことが可能である。浮揚さ
れた物体が溶融した場合は、その物体は平らな形状にな
ることが多い。このような事態には、音源の強度を増加
させて圧迫を強化する。さらに、ガスの流量を強力に減
少させて(例えば浮揚させる物体の直径よりも小さい直
径のジェット流を物体の下方から吹き付けて)変形物体
の形状を補整し、所望の位置に物体を保持する。浮上さ
せた融液に外力を加えることによって望む形に成形し、
その形を保ったまま冷却・固化させることができるから
である。浮上した融液の回転を変化させながら加熱・冷
却をすることができ、ガラスの無接触成形が可能とな
る。これにより、自由表面のみに囲まれ、非常に滑らか
で特異な表面形状を有したガラスを得ることができる。
具体的には例えば、米の長粒種(例:タイ米)のような
特異な形状を持ったガラスを得ることができた。
【0015】本形態は、ガラス塊を非接触状態を保った
まま、浮上成形できるので、次のようなガラスからなる
ガラス塊の成形に好適に用いることができる。 (1)液相温度における粘度が7ポアズ以下のガラス。 通常、精密プレス成形用に使用されるガラスは、液相温
度において10ポアズ以上の粘度を示すが、7ポアズ以
下になるとガラス融液からプリフォームを作る際、これ
を容器で受けることが困難になる。これに対して、本形
態の方法及び装置によれば、風圧と音響圧により低粘度
のガラスでも浮上状態を安定に保つことができる。この
ようなガラスとしては、リン酸ガラス、フッ化物ガラス
を示すことができる。 (2)1300℃以上で10ポアズ以下の粘度を示すガ
ラス 精密プレス成形用ガラス素材(プリフォーム)をガラス
融液から作製するには、流下するガラス融液を切断刃で
切断することができない。これは、切断刃による切断箇
所にシェアマークと呼ばれる痕跡が残り、その部分が成
形品の欠陥となるからである。そのため、ガラス素材は
ガラス融液を自然滴下したり、あるいは、パイプより流
出するガラスの下端部を支持し、パイプから流出したガ
ラスが所定の量に達したときに、ガラスの流出速度より
も大きな速度でガラス下端部の支持を取り去ることによ
って、所定重量のガラスを分離して得られる。このよう
なガラスの滴下や分離は、10〜40ポアズで良好に行
われるが、この粘性領域へ1300℃以上にしないと達
しないガラスについては、ガラスを受ける容器をすべて
酸化してしまい、使用できる容器が存在しない。これに
対し、例えば、石英ガラス、硼珪酸ガラスなど1400
〜2000℃で上記10ポアズ以下の粘度を示すものに
本形態の方法、装置は好適に用いることができる。
【0016】なお、本発明においては音波発生部を複数
設け、異なる方向からガラスに音響圧を加えることがガ
ラスを安定浮上させる上から望ましい。さらに音響圧を
複数の方向からガラスの重心に加えるのではなく、重心
からずらした位置に加えることにより、ガラスを回転さ
せることによって軟化状態にあるガラスを回転させ、球
状もしくは回転体形状に成形することができる。また、
得られたガラス塊の表面には、適宜離型膜を形成しても
よい。
【0017】上記実施の形態で得られたガラス塊をプリ
フォームとして、窒素雰囲気中で再加熱し、ガラスの粘
度が107〜109ポアズになったときに、上型、下型、
胴型からなる成形型でガラスを精密プレス成形(モール
ドプレス成形)し、光学ガラス素子を得た。光学ガラス
素子としては、前述のように球面レンズ、非球面レン
ズ、マイクロレンズ、レンズアレイ、プリズム、フレネ
ルレンズ、回折格子、ポリゴンミラーなどを上げること
ができる。これらの光学ガラス素子の表面には、欠陥が
全く認められず、良好な素子を得ることができた。
【0018】上記実施の形態で示した方法によれば、成
形対象であるガラスの浮上位置への供給時からガラス塊
に至るまでの間、ガラスを完全に非接触状態に保つこと
ができる。したがって、流下温度域で揮発成分が多いガ
ラスや、結晶化(失透)しやすいガラスを上記実施の形
態で示した方法で成形した場合、揮発成分がガラス表面
に再付着したり、あるいは、他の物体との接触が結晶化
の引き金になりガラス表面が結晶化したりすることがな
い。
【0019】本発明は、上記実施の形態に限定されな
い。例えば、本発明の風圧及び音響圧を加える方法は、
風圧を利用した公知の成形方法に適用できる。具体的に
は例えば、従来技術で説明した成形型凹部に設けた細孔
からガスを噴出させ溶融ガラスを浮上させる浮上方式に
おいて、溶融ガラス表面にミカン肌状の凹み(窪み)が
起こらない程度にガス流量を下げた場合であっても、浮
上位置に音響圧を加えることによって、音響圧による浮
上を補助する作用によって成形型凹部表面への一時的な
接触を回避又は低減でき、一時的な接触による障害を回
避又は低減できる。さらに、音響圧による浮上位置を制
御する作用、及び音響圧によるガラス形状を制御する作
用、を付加することができる。
【0020】また、図1に図示する装置を使用すること
が望ましいが、他の音響浮揚装置を使用することもでき
る。さらに、ガラス塊の製造装置は、図2や図3に示す
風圧・音響空中浮揚装置に限定されず、風圧及び音響を
成形対象であるガラスに加えることができる装置であれ
ばよい。ここで、風圧を加える手段としては、成形型の
成形面を多孔質材料で形成し、多孔質材料の微小な孔か
らガスを噴出する方法や、成形型の成形面に1つ又は複
数の孔を設け、その孔からガスを噴出する方法などを例
示することができ、噴出するガスによってガラスに風圧
を加える。
【0021】さらに、風圧及び音響圧の双方の作用で成
形対象であるガラスを浮上させることができ、風圧及び
音響圧の双方の作用で成形対象であるガラスの浮上位置
を制御することができ、風圧及び音響圧の双方の作用で
成形対象であるガラスの形状を制御することができる。
【0022】
【発明の効果】以上説明した如く、本発明の製造方法及
び製造装置によれば、音響圧好ましくは音響圧及び気流
による風圧をガラスに加え、重力下でガラスを安定して
浮上させることができるので、溶融ガラス滴や軟化点以
上に加熱されたガラスを他の物体(例えば成形容器)に
接触させない無接触状態でガラス塊を成形することがで
きる。したがって、結晶化やクラック発生の原因となる
高温状態におけるガラスと他の物体との接触をなくす、
あるいは低減することにより、ガラス塊表面の欠陥発生
を防止あるいは低減することができる。また、ガラス塊
を成形する成形温度が高いガラスや成形温度における粘
度が低いガラスでも、ガラス塊成形を良好に行うことが
でき、ガラス塊を成形できるガラスの範囲を広げること
もできる。また、本発明によって得られたガラス塊をプ
レス成形用素材とし、これを再加熱、プレス成形するこ
とにより、表面欠陥のないガラス成形品を作ることがで
きる。特に、プレス成形後に研削、研磨加工を施さない
精密プレス成形では、プレス成形品の表面に欠陥が残る
と、研磨等により除去できない(形状が変化するため)
ので表面欠陥のないプレス成形素材を用いることが有効
である。さらに光学ガラス素子のプレス成形に適用する
ことによって、良好な表面を有する素子を得ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】音響浮揚装置の構成及び作用(原理)を説明す
るための概略図である。
【図2】本発明の一実施の形態にかかるガラス塊の製造
装置(風圧・音響空中浮揚装置)を説明するための概略
図である。
【図3】本発明の他の実施の形態にかかるガラス塊の製
造装置(風圧・音響空中浮揚装置)を説明するための概
略図である。
【図4】ガラスの浮上状態の様子を示す図である。
【符号の説明】
1 試料 2 ガス加熱供給系 3、4流量コントロール系 5 3軸の音源 6 ダイオードレーザ6 7 試料位置検出器 8 ビデオカメラ 9 真空チャック 10 CO2ガスレーザ加熱系 X 共通軸 11、11’ 圧電ウェーハ 12、12’ 音源 13、13’ 円筒形ロッド(又はピストン) 14、14’ 音響放射面(凹形の放射器) 15、15’ 共通発振器 16、16’ 増幅器 17、17’ 位相移動及びレベル制御器 20、20’ 音波 21、21’ 低音圧のノード(波節) 30、30’ 物体 40 物体 50 圧力タンク 52 圧力調整器 54 出力線 56 ニードル弁 58 適切な大きさの穴 60 放出管 62 放出口 66、68 音源 70 ビデオスキャナ(又はセンサ) 72 位相移動制御器 74 CO2ガスレーザ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 音響圧を加えて成形対象であるガラスの
    浮上状態を保ちつつ、前記ガラスを成形し、ガラス塊を
    形成することを特徴とするガラス塊の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記音響圧は、成形対象であるガラスの
    浮上を補助する作用、成形対象であるガラスの浮上位置
    を制御する作用、成形対象であるガラスの形状を制御す
    る作用、のうちの少なくとも一つの作用を発揮させる目
    的で成形対象であるガラスに加えられることを特徴とす
    る請求項1に記載のガラス塊の製造方法。
  3. 【請求項3】 成形対象であるガラスを浮上させた状態
    で、ガラスを成形してガラス塊を作製するガラス塊の製
    造装置であって、 前記成形対象であるガラスを所定の浮上位置に浮上させ
    る気流を発生させる気流発生部と、前記浮上位置にある
    成形対象であるガラスに音響圧を加えるための音波発生
    部とを備えることを特徴とするガラス塊の製造装置。
  4. 【請求項4】 請求項1又は2に記載の方法により作製
    されたガラス塊又は請求項3の装置によって作製された
    ガラス塊を再加熱し、成形型によって精密プレス成形
    し、最終製品形状を有するプレス成形品を作製すること
    を特徴とするプレス成形品の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記プレス成形品が光学ガラス素子であ
    ることを特徴とする請求項4に記載のプレス成形品の製
    造方法。
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