JP2002138005A - 土壌病虫害防除用資材および土壌病虫害防除法 - Google Patents

土壌病虫害防除用資材および土壌病虫害防除法

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JP2002138005A
JP2002138005A JP2000329069A JP2000329069A JP2002138005A JP 2002138005 A JP2002138005 A JP 2002138005A JP 2000329069 A JP2000329069 A JP 2000329069A JP 2000329069 A JP2000329069 A JP 2000329069A JP 2002138005 A JP2002138005 A JP 2002138005A
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進 伊豆
Misao Kobayashi
操 小林
Kyo Nagashima
協 長嶋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自然環境に悪影響を及ぼすことなく、かつ
早期に土壌病虫害防除効果を発現させるとともに、農作
物の生育期間の全般にわたって安定的に土壌病虫害防除
効果を持続させることのできる土壌病虫害防除用資材お
よび安全で効果的な土壌病虫害の防除法を提供する。 【解決手段】グリオクラディウム(Gliocladi
um)属に属する菌の培養物および/またはトリコデル
マ(Torichoderma)属に属する菌の培養物
と、これら菌の栄養源との混和物からなる土壌病虫害防
除用資材、および該土壌病虫害防除用資材を土壌に混和
する土壌病虫害の防除法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、農作物の土壌病虫
害防除用資材および土壌病虫害防除法に関する。さらに
詳しくは、自然環境に悪影響を及ぼすことがなく、かつ
病虫害防除効果の安定した土壌病虫害防除用資材および
安全で効果的な土壌病虫害の防除法に関する。
【0002】
【従来の技術】農作物の栽培においては、限られた耕作
地で最大限の収穫をあげるため、連作されることが多
い。そのため、耕作地の土壌に棲息する微生物相のバラ
ンスが崩れ、農作物に土壌病虫害が多発している。そこ
で、この土壌病虫害の防除には、従来から土壌消毒する
方法が採用されてきた。この土壌消毒には、臭化メチル
やクロールピクリンなどの人体に対して毒性の強いガス
剤が用いられている。土壌消毒剤として臭化メチルやク
ロールピクリンが用いられてきたのは、これら化合物が
卓越した殺菌殺虫力を有しているからである。したがっ
て、耕作土壌をこれらガス剤で処理すると、土壌病虫害
を引き起こす病原性微生物群を殺すだけに止まらず、土
壌に棲息する有用微生物群をも殺してしまう。このよう
に、耕作土壌中の微生物群を完全に殺してしまうと、土
壌消毒の効力消滅後に、新たに土壌に混入してきた病原
性微生物の大増殖を招くという問題がある。また、臭化
メチルは、土壌の消毒に使用後、大気中に拡散してオゾ
ン層の破壊を招くおそれのある物質であり、これに代わ
る安全性が高く、かつ環境負荷の少ない土壌消毒法の開
発が求められている。
【0003】このような要請から、土壌の太陽熱消毒や
熱水消毒、水蒸気消毒が検討されているが、太陽熱だけ
では十分な消毒をすることができず、熱水消毒や水蒸気
消毒では、移動可能な熱水や水蒸気の発生設備を必要と
し、エネルギー消費量も大きいという欠点がある。そこ
で、このような多大なエネルギーを消費することなく土
壌病虫害を防除する方法として、微生物の有する機能を
利用した安全で環境負荷の少ない土壌病虫害防除法とし
て、特開平8−53317号公報や特開平10−174
22号公報においては、グリオクラディウム(Glio
cladium)属に属する菌の培養物を用いて土壌病
虫害を防除する方法が提案されている。しかしながら、
単に、このグリオクラディウム属に属する菌の培養物を
耕作地の土壌に混和するだけでは、早期に土壌病虫害防
除効果を発現させることができず、また農作物の生育期
間の全般にわたって安定的に土壌病虫害防除効果を持続
させることができないという難点がある。
【0004】このようなことから、自然環境に悪影響を
及ぼすことがなく、しかも早期に土壌病虫害防除効果を
発現させるとともに、農作物の生育期間の全般にわたっ
て安定的に土壌病虫害防除効果を持続させることのでき
る土壌病虫害防除用資材および安全で効果的な土壌病虫
害の防除法の開発が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、自然環境に
悪影響を及ぼすことがなく、かつ早期に土壌病虫害防除
効果を発現させるとともに、農作物の生育期間の全般に
わたって安定的に土壌病虫害防除効果を持続させること
のできる土壌病虫害防除用資材および安全で効果的な土
壌病虫害の防除法を提供することを目的とするものであ
る。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記の課題
を解決するため、種々検討を重ねた結果、グリオクラデ
ィウム(Gliocladium)属に属する菌の培養
物および/またはトリコデルマ(Torichoder
ma)属に属する菌の培養物と、これら菌の栄養源との
混和物からなる土壌病虫害防除用資材を農作物の作付け
前の本圃土壌に混和することにより、上記の目的を達成
し得ることを見出し、これら知見に基づいて、本発明を
完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明の要旨は、下記のとおり
である。 (1)グリオクラディウム(Gliocladium)
属に属する菌の培養物および/またはトリコデルマ(T
orichoderma)属に属する菌の培養物と、こ
れら菌の栄養源との混和物からなる土壌病虫害防除用資
材。 (2)グリオクラディウム(Gliocladium)
属に属する菌の培養物および/またはトリコデルマ(T
orichoderma)属に属する菌の培養物0.1
〜10質量%と、これら菌の栄養源90〜99.9質量
%との混和物からなる前記(1)に記載の土壌病虫害防
除用資材。 (3)栄養源が、籾殻、フスマ、カニ殻、エビ殻、オキ
アミ微粉末、米糠、小麦粉、トウモロコシ穂軸、落花生
殻、骨粉、魚粉、粕粉、鋸屑、木粉、炭、くん炭、バー
ク炭、籾殻くん炭、草木灰、ピートモス、草炭、乾燥畜
糞、活性炭、油粕、脱脂大豆粉、全脂大豆粉、グルコー
ス、硫酸アンモニウムおよび尿素の群から選択される1
種または2種以上の栄養源である前記(1)または
(2)に記載の土壌病虫害防除用資材。 (4)グリオクラディウム(Gliocladium)
属に属する菌の培養物が、グリオクラディウム・ビレン
ス(Gliocladium virens)種に属す
る菌の培養物である前記(1)〜(3)のいずれかに記
載の土壌病虫害防除用資材。 (5)グリオクラディウム(Gliocladium)
属に属する菌の培養物が、グリオクラディウム・ビレン
ス(Gliocladium virens)G2菌株
の培養物である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の
土壌病虫害防除用資材。 (6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載の土壌病虫
害防除用資材を、農作物の作付け前の本圃土壌に混和す
ることを特徴とする土壌病虫害防除法。 (7)土壌病虫害が、糸状菌、細菌、線虫、線虫媒介ウ
ィルス、微生物媒介ウィルスにより発生する土壌病虫害
である前記(6)に記載の土壌病虫害防除法。 (8)土壌病虫害防除用資材の施用量が、圃場10アー
ルあたり50〜500リットルである前記(6)または
(7)に記載の土壌病虫害防除法。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の土壌病虫害防除用資材
は、グリオクラディウム(Gliocladium)属
に属する菌の培養物および/またはトリコデルマ(To
richoderma)属に属する菌の培養物と、これ
ら菌の栄養源との混和物からなる土壌病虫害防除用資材
である。
【0009】このグリオクラディウム属に属する菌の培
養物を用いる場合には、グリオクラディウム・ビレンス
(Gliocladium virens)種に属する
菌の培養物が好ましく、さらに、グリオクラディウム・
ビレンス(Gliocladium virens)G
2菌株の培養物が、土壌中に棲息する病原菌に対して強
い拮抗作用を発現することから特に好ましい。
【0010】また、トリコデルマ属に属する菌の培養物
を用いる場合には、トリコデルマ・ハルジアナム(To
richoderma harzianum)種に属す
る菌の培養物が好ましく、さらに、トリコデルマ・ハル
ジアナム・リファイ(Torichoderma ha
rzianum Rifai)T−33菌株〔ATCC
−28017〕の培養物を用いるのが好ましい。
【0011】そして、これらグリオクラディウム属に属
する菌の培養物やトリコデルマ属に属する菌の培養物
は、これら菌を通常の微生物の培養方法と同様の方法に
より培養して得られる培養物を用いることができる。そ
の具体的な培養方法としては、往復動式振盪培養、ジャ
ーファメンター培養などによる液体培養法や、固体培養
法による方法を採用することができる。
【0012】これら菌の培養に際して用いる培地成分と
しては、特に制約はなく、炭素源としてグルコース、シ
ュークロース、糖蜜などの糖類、クエン酸などの有機酸
類、グリセリンなどのアルコール類、また窒素源として
アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝
酸アンモニウムなどのアンモニウム塩や硝酸塩が用いら
れる。また、有機窒素源としては、酵母エキス、コーン
・スティープ・リカー、肉エキス、小麦胚芽、ポリペプ
トン、大豆粉などが用いられる。さらに、無機塩類とし
て、リン酸、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マン
ガン、硫酸第1鉄などを用いることができる。
【0013】また、この場合の培養条件は、通気攪拌や
振盪培養などの好気的条件下で行われる液体培養や固体
培養が望ましく、培養温度は10〜37℃、好ましくは
15〜32℃である。そして、培養期間は1〜14日
間、好ましくは2〜7日間である。さらに、大量培養す
る場合には、タンク培養などの通常の液体培養でもよい
し、また、フスマなどの植物由来の固体成分や糖類、窒
素源を含浸させた多孔質体などを用いた固体培養を採用
してもよい。
【0014】このようにして培養することにより得られ
た培養物は、そのまま用いることもできるが、培養物を
培地とともに粉砕または細断して用いてもよい。また、
培養物中の培地から菌体をかき取って用いてもよいし、
この培養物を遠心分離して、菌体を分離して用いてもよ
い。さらに、ここで回収した培養物の粉砕物や菌体は、
自然乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などにより乾燥粉末とし
て用いるのがよい。この乾燥粉末は、水分含有量が20
質量%以下であるものが好ましく、また、粒径は5mm
以下であるものが好ましい。
【0015】そして、このグリオクラディウム属および
トリコデルマ属に属する菌の培養物は、いずれもその菌
体濃度が、これら菌体のコロニー形成単位において、1
×102 〜1×1010cfu/g、好ましくは1×10
3 〜1×109 cfu/g、さらに好ましくは5×10
3 〜1×108 cfu/gである培養物が好適に用いら
れる。
【0016】また、この土壌病虫害防除用資材の構成成
分のうち、グリオクラディウム属やトリコデルマ属に属
する菌の栄養源としては、籾殻、フスマ、カニ殻、エビ
殻、オキアミ微粉末、米糠、小麦粉、トウモロコシ穂
軸、落花生殻、骨粉、魚粉、粕粉、鋸屑、木粉、炭、く
ん炭、バーク炭、籾殻くん炭、草木灰、ピートモス、草
炭、乾燥畜糞、活性炭、油粕、脱脂大豆粉、全脂大豆
粉、グルコース、硫酸アンモニウムおよび尿素の群から
選択される1種または2種以上の栄養源が好適に用いら
れる。そして、これら栄養源は、その水分含有量が15
質量%以下であり、また、粒径が2mm以下であるもの
が、上記培養物との均一な混合物が得られることから好
ましい。
【0017】つぎに、この土壌病虫害防除用資材におけ
るグリオクラディウム属に属する菌の培養物および/ま
たはトリコデルマ属に属する菌の培養物成分と、これら
菌の栄養源成分との配合割合については、これら培養物
成分0.1〜10質量%と、栄養源成分90〜99.9
質量%の範囲において配合してなるものが好ましい。そ
れは、この培養物成分の配合割合が0.1質量%未満で
あると、これを土壌に混和した後の土壌病虫害防除効果
の発現までに要する期間が長くなり、また、この培養物
成分の配合割合を10質量%を超えて配合しても、それ
に見合う効果の増大はなく、この土壌病虫害防除用資材
の製造コストの増大を招くようになるからである。さら
に好ましい配合割合は、この培養物成分5〜10質量%
と、栄養源成分90〜95質量%の範囲において配合し
てなるものである。なお、ここで用いる培養物成分は、
グリオクラディウム属に属する菌の培養物またはトリコ
デルマ属に属する菌の培養物をそれぞれ単独で用いても
よいし、任意の比率において混合したものを用いてもよ
い。
【0018】本発明の土壌病虫害防除用資材は、上記の
グリオクラディウム属に属する菌の培養物および/また
はトリコデルマ属に属する菌の培養物成分と、これら菌
の栄養源成分とを基本的な構成成分とするのであるが、
さらに、培養物成分に対し、増量材を配合して、その取
扱い性を改善してもよい。このような増量材としては、
カオリンクレー、パイロフェライトクレー、ベントナイ
ト、モンモリロナイト、珪藻土、合成含水酸化珪素、酸
性白土、タルク類、粘土、セラミック、石英、セリサイ
ト、バーミキュライト、パーライト、大谷石、アンスラ
石、石灰石、石炭灰、ゼオライトなどの鉱物質微粉末が
好適に用いられる。これら増量材の配合割合は、培養物
成分に対して、質量比で0〜200倍、好ましくは4〜
20倍とするのがよい。
【0019】また、この土壌病虫害防除用資材を、耕作
地の土壌に施用するに際しては、粉状のままでもよい
が、粒子状に製剤することにより、土壌にすき込み易い
形態として用いてもよい。この場合、上記培養物成分と
栄養源成分との混和物に、液体担体を加えて粒状化した
ものを用いてもよい。このような液体担体としては、
水、植物油、液体動物油、ポリビニルアルコールやポリ
ビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの水溶性高分子
化合物が好適に用いられる。さらに、必要に応じて、デ
ンプンの加水分解物やD−ソルビトール、ラクトース、
マルチトースなどの可溶性増量剤、カゼインやゼラチ
ン、アラビアゴム、アルギン酸、ベントナイトなどの固
着剤や分散剤、プロピレングリコールやエチレングリコ
ールなどの凍結防止剤、キサンタンガムなどの天然多糖
類やポリアクリル酸などの増粘剤を用いて粒状化しても
よい。
【0020】つぎに、この土壌病虫害防除用資材を用い
る農作物の土壌病虫害防除法については、この土壌病虫
害防除用資材を、農作物の作付け前の本圃土壌に混和す
る方法によることができる。具体的には、例えば、ジャ
ガイモの場合には、種ジャガイモの植え付け前、好まし
くは7日前ないし植え付け当日に、この土壌病虫害防除
用資材を圃場に均一に散布して、耕運機などにより土壌
にすき込むようにすればよい。また、この資材を種イモ
表面に塗布する方法や種イモの植え穴に施用する方法、
さらには種イモの植え付け畝に沿って施肥機により筋状
に施用する方法であってもよい。
【0021】また、この土壌病虫害防除用資材の施用量
は、圃場10アールあたり50〜500リットルとする
のが好ましい。それは、この土壌病虫害防除用資材の施
用量が圃場10アールあたり50リットル未満である
と、土壌病虫害防除効果が充分に発現しなかったり、そ
の効果が発現するまでに長期間を要することがあり、ま
た、圃場10アールあたり500リットルを超えて多量
に施用しなくても充分に土壌病虫害を防除できるからで
ある。
【0022】そして、この土壌病虫害防除用資材の施用
によって防除することのできる土壌病虫害としては、糸
状菌、細菌、線虫、線虫媒介ウィルス、微生物媒介ウィ
ルスによって、植物の地下部に発生する土壌病虫害の防
除に有効に作用する。これら土壌病虫害の中でも、ウリ
科、ナス科、バラ科、マメ科、アブラナ科、ユリ科、キ
ク科、アカザ科、セリ科などに発生する炭そ病、白絹
病、根ぐされ病、萎ちょう病、根ぐされ萎ちょう病、萎
黄病、つる割れ病、急性萎ちょう病、根こぶ病、苗立枯
病、半身萎ちょう病などの土壌病害や、シストセンチュ
ウ、ネコブセンチュウ、ネグサレセンチュウなどの線虫
によって引き起こされる土壌線虫害の防除に特に有効に
作用する。このような土壌線虫害の中でも、例えば、ジ
ャガイモにおけるそうか病、粉状そうか病および青枯
病、レタスにおける根腐病や萎ちょう病、白菜における
根こぶ病、イチゴにおける萎黄病、トマトにおける半身
萎ちょう病などが、農作物の栽培上重大な病害である。
【0023】このようにして圃場の土壌中に施用された
土壌病虫害防除用資材は、この資材中の培養物成分や栄
養源成分が、土壌中の水分を吸収してグリオクラディウ
ム属に属する菌やトリコデルマ属に属する菌の育成を促
進し、さらにこれら菌が栄養源成分を資化して土壌中で
増殖する。そして、これらグリオクラディウム属に属す
る菌やトリコデルマ属に属する菌は糸状菌であることか
ら、例えば、そうか病菌など土壌病害をもたらす放線菌
に較べて上記栄養源成分の資化性が大であり、圃場の土
壌中の菌相として、糸状菌の濃度が高くなる。したがっ
て、この土壌中で生育する農作物の根に、土壌病害をも
たらす放線菌が増殖することができなくなり、これに起
因して、農作物の土壌病害が効果的に防除されるのであ
る。また、土壌病害をもたらす他の糸状菌に対しても、
これらグリオクラディウム属やトリコデルマ属に属する
菌は、先に栄養源成分を資化して増殖しているので、他
の糸状菌がこの栄養源成分によって増殖することはでき
ず、他の糸状菌による土壌病害も効果的に防除すること
ができるのである。
【0024】
〔実施例1〕
(1)グリオクラディウム・ビレンスG2菌の培養物の
製造 ポテトデキストロース培地中に凍結保存されているグリ
オクラディウム・ビレンスG2菌株の種菌を植菌して、
28℃において、24時間振盪培養した。培養担体とし
て押麦100kgを用い、この押麦に、培養液と滅菌水
を合わせたもの10リットルを添加した。
【0025】ついで、縦50cm、横50cm、深さ6
cmのトレー4個に、上記の培養液を加えた押麦を、厚
さが約5cmになるように入れた。このトレーの上面に
は、通気孔を有する蓋をして、28℃において10日間
静置培養した。この培養期間中は、光が当たる条件にお
いて培養し、培養開始から3日目に、担体全体をかき混
ぜた。
【0026】培養の終了後、培養物を乾燥トレーに移し
かえて、厚さ1cm程度に薄く広げ、表面を濾紙で覆っ
て、30〜35℃の乾燥機により24時間乾燥した。つ
いで、乾燥した培養物を粉砕して、この培養物の乾燥粉
末を得た。このグリオクラディウム・ビレンスG2菌の
培養物における菌濃度は、そのコロニー形成単位におい
て、1×109 cfu/g培養物であった。
【0027】(2)土壌病虫害防除用資材の製造 栄養源成分として脱脂大豆を用い、グリオクラディウム
属に属する菌の培養物成分として上記(1)で得られた
グリオクラディウム・ビレンスG2菌の培養物を用い、
これらをコンクリートミキサーにより混和した。ここで
の両成分の配合割合は、質量比において、前者:後者=
98:2とした。
【0028】(3)ジャガイモそうか病防除能の評価 ジャガイモの栽培用圃場として、ジャガイモそうか病菌
の棲息する畑10アールを選定した。この圃場に、ジャ
ガイモそうか病防除用資材として、上記(2)で製造し
た資材100リットルを均一に散布した後、耕運機によ
り耕してジャガイモそうか病防除用資材を土壌中にすき
込んだ。そして、このジャガイモそうか病防除用資材の
すき込みから1日後に、種ジャガイモ〔品種名;ニシユ
タカ〕を畝幅60cm、株間25cmで植え付けた。
【0029】種ジャガイモの植え付けから3カ月後に掘
り取り、その塊茎部へのジャガイモそうか病の罹病の状
況を調査した。罹病率は下記により算出した。
【0030】
【数1】
【0031】また、比較のために、同一圃場内に10ア
ールのジャガイモそうか病防除用資材をすき込まない区
画(無処理区)を設けて、上記と同日に種ジャガイモの
植え付け、その3カ月後に掘り取り、その塊茎部へのジ
ャガイモそうか病の罹病の状況を観察した。そして、こ
の無処理区での罹病率を算出し、さらに下記により防除
価を算出した。
【0032】
【数2】
【0033】ここで算出した防除価を第1表に示す。
【0034】〔実施例2〕ジャガイモそうか病防除用資
材の土壌へのすき込み量を、200リットルとした他
は、実施例1の(3)と同様にした。結果を第1表に示
す。
【0035】〔比較例1〕実施例1の(1)と同様にし
て製造したグリオクラディウム・ビレンスG2菌の培養
物のみを10リットル土壌にすき込んだ他は、実施例1
の(3)と同様にした。結果を第1表に示す。
【0036】〔比較例2〕実施例1の(1)と同様にし
て製造したグリオクラディウム・ビレンスG2菌の培養
物のみを20リットル土壌にすき込んだ他は、実施例1
の(3)と同様にした。結果を第1表に示す。
【0037】〔実施例3〕実施例1の(2)と同様にし
て製造した土壌病虫害防除用資材を用いて、レタス〔品
種名;キャスパー〕の根腐病防除能の評価をした。この
レタス根腐病防除用資材のすき込み量は、圃場10アー
ルあたり100リットルとし、すき込み方法は、圃場の
耕起前に土壌の全面に均一に散布して、深さ25cmま
で耕起することにより土壌に均一に混和した。
【0038】ついで、このレタス根腐病防除用資材のす
き込みから3日後に、マルチングして、レタス苗を定植
した。この場合の畝幅は60cmとし、株間は30cm
とした。そして、レタス苗を定植から30日後に、レタ
スを収穫し、その根腐病への罹病の有無を調査した。こ
の結果、根腐病の罹病は見られなかった。また、比較の
ため、同一圃場内に10アールのレタス根腐病防除用資
材をすき込まない区画(無処理区)を設け、上記と同様
にレタス苗の栽培をして、実施例1と同様の手法でレタ
ス根腐病の防除価を算出した。結果を第1表に示す。
【0039】〔実施例4〕トリコデルマ属に属する菌と
して、トリコデルマ・ハルジアナム・リファイ(Tor
ichoderma harzianum Rifa
i)T−33菌株を用い、実施例1の(1)と同様にし
て、その培養物を得た。このトリコデルマ・ハルジアナ
ム・リファイT−33菌株の培養物における菌濃度は、
そのコロニー形成単位において、1×109 cfu/g
培養物であった。
【0040】つぎに、この培養物を用いた他は、実施例
1と同様にして、そのジャガイモそうか病に対する防除
能の評価をした。結果を第1表に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、自然環境に悪影響を及
ぼすことがなく、かつ早期に土壌病虫害防除効果を発現
させるとともに、農作物の生育期間の全般にわたって安
定的に土壌病虫害防除効果を持続させることのできる土
壌病虫害防除用資材および安全で効果的な土壌病虫害の
防除法を提供することができる。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 グリオクラディウム(Glioclad
    ium)属に属する菌の培養物および/またはトリコデ
    ルマ(Torichoderma)属に属する菌の培養
    物とこれら菌の栄養源との混和物からなる土壌病虫害防
    除用資材。
  2. 【請求項2】 グリオクラディウム(Glioclad
    ium)属に属する菌の培養物および/またはトリコデ
    ルマ(Torichoderma)属に属する菌の培養
    物0.1〜10質量%と、これら菌の栄養源90〜9
    9.9質量%との混和物からなる請求項1に記載の土壌
    病虫害防除用資材。
  3. 【請求項3】 栄養源が、籾殻、フスマ、カニ殻、エビ
    殻、オキアミ微粉末、米糠、小麦粉、トウモロコシ穂
    軸、落花生殻、骨粉、魚粉、粕粉、鋸屑、木粉、炭、く
    ん炭、バーク炭、籾殻くん炭、草木灰、ピートモス、草
    炭、乾燥畜糞、活性炭、油粕、脱脂大豆粉、全脂大豆
    粉、グルコース、硫酸アンモニウムおよび尿素の群から
    選択される1種または2種以上の栄養源である請求項1
    または2に記載の土壌病虫害防除用資材。
  4. 【請求項4】 グリオクラディウム(Glioclad
    ium)属に属する菌の培養物が、グリオクラディウム
    ・ビレンス(Gliocladium virens)
    種に属する菌の培養物である請求項1〜3のいずれかに
    記載の土壌病虫害防除用資材。
  5. 【請求項5】 グリオクラディウム(Glioclad
    ium)属に属する菌の培養物が、グリオクラディウム
    ・ビレンス(Gliocladium virens)
    G2菌株の培養物である請求項1〜4のいずれかに記載
    の土壌病虫害防除用資材。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の土壌病
    虫害防除用資材を、農作物の作付け前の本圃土壌に混和
    することを特徴とする土壌病虫害防除法。
  7. 【請求項7】 土壌病虫害が、糸状菌、細菌、線虫、線
    虫媒介ウィルス、微生物媒介ウィルスにより発生する土
    壌病虫害である請求項6に記載の土壌病虫害防除法。
  8. 【請求項8】 土壌病虫害防除用資材の施用量が、圃場
    10アールあたり50〜500リットルである請求項6
    または7に記載の土壌病虫害防除法。
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