JP2002137046A - 薄肉鋳片連続鋳造用ドラム - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 鋳片の割れを防止するとともに、スカムの巻
き込みに起因する酸洗むらの発生を抑制して、表面性状
に優れた薄肉鋳片を連続鋳造する。 【解決手段】 薄肉鋳片連続鋳造用冷却ドラムにおい
て、（１）冷却ドラム周面に平均深さ４０〜２００μ
ｍ、円相当径０．５〜３ｍｍの窪みが、窪みの頂部を介
して相互に隣接して形成されており、窪みの底部から頂
部にかけての勾配の曲率が正であるか、または、（２）
冷却ドラム周面に平均高さ４０〜２００μｍ、円相当径
０．５〜３ｍｍの突起が相互に隣接して形成されてお
り、突起の底部から頂部にかけての曲率が正である薄肉
鋳片連続鋳造用ドラム。上記薄肉鋳片連続鋳造用ドラム
において、曲率半径が０．１〜３ｍｍであることが好ま
しい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、普通鋼、ステンレ
ス鋼、合金鋼及びその他の鋼や合金、金属の溶湯から直
接薄肉鋳片を鋳造する、単ドラム式連続鋳造機または双
ドラム式連続鋳造機の冷却ドラムの表面構造に関するも
のである。

【０００２】

【従来の技術】近年、溶鋼等の溶融金属から最終形状に
近い数ｍｍから数十ｍｍの肉厚鋳片を直接製造する方法
が注目されている。この方法によれば従来法のような圧
延工程を省略あるいは軽減できるために、工程や設備の
簡略化を図ることができる。この種の連続鋳造方法とし
ては、互いに逆方向に回転する一対の冷却ドラムとその
両側に当接するサイド堰で形成される溶湯を受容する湯
溜まり部を形成する双ドラム方式、冷却ドラムとベルト
の間に湯溜まり部を形成するドラムベルト方式、一本の
冷却ドラムの周面の一部に湯溜まりを形成する単ドラム
方式がある。

【０００３】これらの方式においては、いずれも冷却ド
ラムの周囲に接する部分で、溶湯の冷却・凝固が進行
し、凝固シェルを生成する。この技術は、最終製品に近
い形状を肉厚の薄肉鋳片を製造するもでのであるから、
歩留まりよく、所要レベルの品質を有する最終製品を最
終的に得るために、該技術に対しては、割れや亀裂等の
表面欠陥が皆無の薄肉鋳片を製造することが不可欠のこ
ととして要求される。

【０００４】この表面欠陥は、薄肉鋳片を鋳造する際、
冷却ドラムの表面における凝固シェルの生成が一様でな
いことに起因して生じる熱収縮応力の不均衡に基づいて
形成されることが知られていて、この凝固シェルを安定
して成長せしめるとともに、熱収縮応力の不均衡生成し
ないように溶湯を冷却、凝固せしめる冷却ドラムの周面
構造が種々提案されている。

【０００５】例えば、特開平４−２３８６５１号公報に
は、ドラム周面に５０〜２００μｍの深さの窪みを１５
〜３０％の面積率で形成するとともに、１０〜５０μｍ
の深さの窪みを４０〜６０％の面積率で形成した冷却ド
ラムが開示されている。また、特開平６−３２８２０４
号公報には、周囲に直径１００〜３００μｍ、深さ１０
０〜５００μｍの窪みを１５〜５０％の面積率で形成す
ると共に、直径４００〜１０００μｍ、深さ１０〜１０
０μｍ、周面との接線に対し垂直な線と窪みの側面との
なす角度が４５〜７５゜の窪みを４０〜６０％の面積率
で形成した冷却ドラムが開示されている。これらの冷却
ドラムによって鋳片表面に於ける表面割れや亀裂の発生
を抑制すると共に、ドラム周囲の窪みの存在によって生
じる鋳片組織むらに起因する光沢むらを抑制するもので
ある。

【０００６】しかし、かかる鋳造を行うに際し、湯溜ま
り部に注入された溶湯の表面に浮遊する酸化物（スカ
ム）が、冷却ドラムの回転とともに、流れ込む溶湯に付
随して引き込まれ、鋳片の凝固シェルの表面に付着して
鋳造される場合がある。この結果、鋳造された薄肉鋳片
に割れやスカム疵や、酸洗むらが発生し、鋳片の品質が
損なわれる。

【０００７】この酸洗むらの部分は、最終製品において
は光沢むらとして発現し、製品素材としての価値を低め
るから、最終製品の品質と歩留まりをさらに高めるため
には、湯溜まり部を不活性雰囲気で包囲する等によって
スカムの生成を極力抑制することに加えて、スカムが巻
き込まれるのを極力抑制できる対策が提案されている。
例えば、特開平６−３３９７５４号公報には、湯溜まり
部内にスカム堰を配し、スカム堰とサイド堰に囲まれた
スペースに、スカムを溶融状態に保つフラックスを添加
しながら溶湯を注入し、溶融状のスカムを除去しながら
鋳造を行う方法が記載されている。

【０００８】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、スカム
はスカム堰とドラムとの間にも生成し、これを巻き込む
ことによって欠陥が生じる。また、溶融状のスカムを完
全に除去することは困難である。そこで、本発明は、薄
肉鋳片の連続鋳造において、鋳片の割れを防止するとと
もに、スカムの巻き込みに起因する酸洗むらの発生を抑
制して、表面性状に優れた薄肉鋳片を製造するものであ
る。

【０００９】

【課題を解決するための手段】薄肉鋳片連続鋳造用冷却
ドラムに係る本発明の要旨は以下のとおりである。 （１）薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、そ
の周面に平均深さ４０〜２００μｍ、円相当径０．５〜
３ｍｍの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣接して形
成されており、窪みの底部から頂部にかけての勾配の曲
率が正であることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用ドラ
ム。 （２）薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであって、そ
の周面に平均高さ４０〜２００μｍ、円相当径０．５〜
３ｍｍの突起が相互に隣接して形成されており、突起の
底部から頂部にかけての曲率が正であることを特徴とす
る薄肉鋳片連続鋳造用ドラム。 （３）曲率半径が０．１〜３ｍｍであることを特徴とす
る請求項１または２に記載の薄肉鋳片連続鋳造用ドラ
ム。

【００１０】

【発明の実施の形態】本発明について、更に詳細に説明
する。酸洗むらは、スカムが付着した部位において溶鋼
の凝固核の生成開始が遅れ、その結果、スカム付着部の
凝固組織が、その周辺の凝固組織と異なった組織（以
下、異常組織と呼ぶ）となっていることに起因して、酸
洗後、鋳片表面に“むら”として発現したものである。

【００１１】本発明者は、酸洗むらが発生した薄肉鋳片
の凝固組織を詳細に調査したところ、異常組織は、“む
ら”部分の全面に分布しているのではなく、ドラムに形
成した窪みの頂部分に対応して鋳片が窪んでいる部分に
分散して発生しており、この異常組織が集合して連なっ
ているために肉眼で酸洗むらとして観察されることを発
見した。

【００１２】従って、ドラムに形成した窪みの頂部分に
対応して鋳片が窪んでいる部分での異常組織の生成を抑
制すれば酸洗むらは発現しない。そこで、ドラムに形成
した窪みの形状を種々に変化させて実験をおこなった結
果、図３に示すように、窪みの頂が尖っている場合に異
常組織が生成しやすいことを見いだした。これは、不均
質核生成では核生成基盤の曲率半径が小さいほど核発生
が起こり難く、核生成基盤であるドラム表面（スカムが
流れ込んだ場合にはスカム表面）の曲率半径が小さい場
合にも凝固核の核発生が起こり難く、異常組織が生成し
たものと推測される。

【００１３】従って、ドラムの突起部分の曲率半径を大
きくすること、さらにはドラムと接触する部分の溶鋼の
曲率を正（凸）とすることによってスカム流入部での凝
固核の生成を促進し、異常組織の生成を抑制することが
可能となる。本発明は、以上の知見に基づきなされたも
のである。図１は、本発明の請求項１に沿う冷却ドラム
の断面形状を示している。ドラム表面の窪みの形状にお
いて、窪みの底部から頂部にかけての勾配の曲率が正と
なっている。すなわち、上記形状を、丸みを帯びた形状
とすることによって、曲率半径が大きくなり、凝固核の
生成を促進し、異常組織の生成を抑制し、酸洗むらの発
生を防止する作用をなす。

【００１４】この窪みは、凝固シェルの不均一に起因す
る応力・歪みを緩和し、応力・歪みが原因となって発生
する割れを防止する作用をなす。図２は、本発明の請求
項２に沿う冷却ドラム表面の形状を示している。球冠状
の突起が相互に隣接して形成されており、突起の底部か
ら頂部にかけての曲率は正となり、頂部の曲率半径は大
きく、凝固核の生成を促進し、異常組織の生成を抑制
し、酸洗むらの発生を防止する作用をなす。この球冠状
の突起の隣接部は環状の窪みを形成しており、該部分に
よって凝固シェルの不均一に起因する応力・歪みを緩和
し、応力・歪みが原因となって発生する割れを防止する
作用をなす。

【００１５】窪みの深さが４０μｍ未満であると応力、
歪みの緩和効果が得られないので、下限は４０μｍとす
る。一方、窪みの深さが２００μｍを越えると、窪み底
部と侵入してきた溶鋼とのギャップが大きくなり、凝固
シェルが不均一になるとともに、曲率半径が小さくなっ
て異常組織の抑制効果が不十分となるので、上限は２０
０μｍとする。窪みの大きさは、円相当径で０．５ｍｍ
未満であると、ディンプル底部への溶鋼の侵入が不十分
となり凝固シェルが不均一となるとともに、曲率半径が
小さくなって異常組織の抑制効果が不十分となるので、
下限は０．５ｍｍとする。一方、円相当径が３ｍｍを越
えると、応力、歪みの緩和効果が得られないので、上限
は３ｍｍとする。

【００１６】突起の高さが４０μｍ未満であると応力、
歪みの緩和効果が得られないので、下限は４０μｍとす
る。一方、突起の高さが２００μｍを越えると、突起の
底部と侵入してきた溶鋼とのギャップが大きくなり、凝
固シェルが不均一になるとともに、曲率半径が小さくな
って異常組織の抑制効果が不十分となるので、上限は２
００μｍとする。突起の大きさは、円相当径で０．５ｍ
ｍ未満であると、突起の底部への溶鋼の侵入が不十分と
なり凝固シェルが不均一となるとともに、曲率半径が小
さくなって異常組織の抑制効果が不十分となるので、下
限は０．５ｍｍとする。一方、円相当径が３ｍｍを越え
ると、応力、歪みの緩和効果が得られないので、上限は
３ｍｍとする。

【００１７】本発明の冷却ドラムにおいては、曲率半径
が大きい方が凝固核発生の促進効果が高く、曲率半径が
０．１ｍｍ未満では異常組織の生成を抑制して酸洗むら
の発生を防止する作用が十分に得られないので、曲率半
径は０．１ｍｍ以上が望ましい。曲率が大きすぎると、
割れ防止作用が損なわれるため、上限は３ｍｍとする。

【００１８】

【実施例】ＳＵＳ３０４鋼を双ドラム連続鋳造機により
鋳造し、薄肉鋳片を製造した。鋳造条件は以下のとおり
である。ドラム表面への突起または窪みの加工は、機械
加工等によって所定の凹凸パターンを施工した転造ロー
ルをドラムに押しつけることによって行った。 鋳造ドラムの寸法：直径１３００ｍｍ、幅１０００ｍｍ 鋳造ドラムの構造：内部水冷式、表面Ｎｉメッキの銅製 鋳造鋼種 ：ＳＵＳ３０４ 鋳造速度 ：６０ｍ／分 鋳片厚 ：３ｍｍ この鋳片に発生した割れおよび酸洗むらの発生率を調査
した。その結果を表１に示す。この表１から、本発明の
条件を満たす鋳造ドラムを用いて鋳造した薄肉鋳片にお
いては、割れ、酸洗むらのいずれも発現していないこと
が解る。

【００１９】

【表１】

【００２０】

【発明の効果】本発明によると、双ドラム式連続鋳造に
よる薄肉鋳片の製造において、表面割れや酸洗むらのな
い表面性状の優れた薄肉鋳片を能率良く製造することが
できる。従って、本発明は、表面性状に優れた高品質の
ステンレス鋼薄鋼板を、歩留まりよく安価に提供するこ
とができ、ステンレス鋼を製品素材や建材として使用す
る消費財製造業や建築業等の発展に大きく寄与する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す冷却ドラムの断面形状
を示す図である。

【図２】本発明の他の一実施例を示す冷却ドラムの断面
形状を示す図である。

【図３】従来の冷却ドラムの断面形状を示す図である。

【符号の説明】

１…ドラム表面 ２…窪み凸部 ３…窪み底部 ４…突起 ５…突起隣接部 ６…Ｎｉ ７…Ｃｕ

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであ
   って、その周面に平均深さ４０〜２００μｍ、円相当径
   ０．５〜３ｍｍの窪みが、窪みの頂部を介して相互に隣
   接して形成されており、窪みの底部から頂部にかけての
   勾配の曲率が正であることを特徴とする薄肉鋳片連続鋳
   造用ドラム。
2. 【請求項２】 薄肉鋳片を連続鋳造する冷却ドラムであ
   って、その周面に平均高さ４０〜２００μｍ、円相当径
   ０．５〜３ｍｍの突起が相互に隣接して形成されてお
   り、突起の底部から頂部にかけての曲率が正であること
   を特徴とする薄肉鋳片連続鋳造用ドラム。
3. 【請求項３】 曲率半径が０．１〜３ｍｍであることを
   特徴とする請求項１または２に記載の薄肉鋳片連続鋳造
   用ドラム。