JP2002122243A - 分割型シール - Google Patents

分割型シール

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JP2002122243A
JP2002122243A JP2000316186A JP2000316186A JP2002122243A JP 2002122243 A JP2002122243 A JP 2002122243A JP 2000316186 A JP2000316186 A JP 2000316186A JP 2000316186 A JP2000316186 A JP 2000316186A JP 2002122243 A JP2002122243 A JP 2002122243A
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Japan
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seal
seal ring
inner peripheral
pressure
peripheral surface
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Ryoji Muraki
良次 村木
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Eagle Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 良好な密封性を保ちつつ、内周材との摩擦を
小さく抑えることのできる圧力条件の上限を上昇させ
る。 【解決手段】 内周材80が挿通された環状の端壁部1
2の高圧空間H側に非回転状態で配置された第一及び第
二シールリング20,30を備える。第一シールリング
20は、第一セグメント21が円周方向に隙間のある状
態で環状に組み合わされガータスプリング22で弾性的
に結束されて内周材80の外周面に密接され、第二シー
ルリング30は第一シールリング20を介してコンプレ
ッションスプリング40により軸方向付勢されて一端面
31cが端壁部12に密接されると共に内周面と内周材
80の外周面との間に隙間Gを有する。第一セグメン
ト21の内周面に、高圧空間H側に開放された圧力バラ
ンス溝21c,21dが形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、円弧状の複数のセ
グメントを環状に組み合わせて結束した構造のシールリ
ングを有する分割型シールに関し、特に、高圧条件での
特性の改善を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】分割型シールは、比較的低圧(但し大気
圧よりも高圧)のガスを、回転軸が比較的高速で回転す
るような条件において、液体による摺動部の潤滑や冷却
を行うことなく、直接シールすることができる密封装置
として、例えばブロワやコンプレッサ等に使用されてい
る。また、合成ゴムやパーフロロエラストマ等からなる
パッキングが使用できないような高温又は極低温等の条
件において、メカニカルシールの固定環を、シールハウ
ジング側に気密的かつ軸方向移動可能な状態に保持する
手段として適用されることもある。いずれの場合も、分
割型シールは、内周において良好な密封性を保ちつつ、
内周材の外周面との摩擦を小さく抑える必要がある。
【0003】従来の技術による分割型シールとしては、
例えば図11及び図12に示されるようなものがある。
まず図11は、従来の分割型シール100をその軸心を
通る平面で切断して示す断面図である。すなわちこの種
の分割型シール100は、内周に回転軸200が挿通さ
れた環状の端壁部110と、その高圧空間H側に形成さ
れたシールリング収容室111に非回転状態で配置され
た第一及び第二シールリング120,130と、第一シ
ールリング120を介して第二シールリング130を軸
方向に付勢し端壁部110に密接させるコンプレッショ
ンスプリング140とを備える。
【0004】第一シールリング120は、図12(a)
に示されるように、円弧状の複数のセグメント121を
円周方向に適当な円周方向隙間Gaのある状態で環状に
組み合わせてガータスプリング122で弾性的に結束し
たものであって、内周面120aが回転軸200の外周
面に密接されている。円周方向隙間Gaは、内周面12
0aが回転軸200との摺接によって摩耗されるのに追
随して各セグメント121が内径方向へ変位し、回転軸
200との密接状態を保つことを可能とするためのもの
である。
【0005】第二シールリング130は、図12(b)
に示されるように、円弧状の複数のセグメント131を
円周方向両端が互いに密接した状態で環状に組み合わせ
てガータスプリング132で弾性的に結束したものであ
って、その内周面130aと回転軸200の外周面との
間には径方向隙間Gbが存在し、コンプレッションスプ
リング140の軸方向付勢力が第一シールリング120
を介して与えられることにより、一端面が端壁部110
に密接されている。
【0006】上記構成を備える分割型シール100は、
図12(c)に示されるような円周方向複数の漏れ経路
100aを有する。この漏れ経路100aは、第一シー
ルリング120における各セグメント121間の円周方
向隙間Gaと、第二シールリング130の内周の径方向
隙間Gbとが重なり合うことによって限定的に形成され
たものである。このため、ある程度の漏れを許容するよ
うな部分の密封手段、例えばメカニカルシールを冷却す
るクエンチング液が機外へ大量に流出するのを防止する
ために設けられる補助シールとして使用されることが多
い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この種
の分割型シール100においては、一般に、回転軸20
0の外周面に対する第一シールリング120の摩擦力
は、このシールリング120に作用する密封対象流体の
圧力に比例するため、所定の圧力を超える高圧条件で
は、摩擦力の増大によって摩耗や発熱が著しく大きくな
ったり、回転軸200の軸方向変位等に対する第一シー
ルリング120の作動性が低下して第一シールリング1
20と第二シールリング130及び第二シールリング1
30と端壁部110との密接状態が損なわれ、大量の漏
れを発生するおそれがある。したがって、使用可能な圧
力の上限が比較的低いものであった。
【0008】また、一般に摺動面の摩擦負荷を軽減する
ための方法としては、摺動面に動圧発生溝を設けて流体
の動圧による軸受力を発生させることが知られている
が、分割型シール100を、例えばメカニカルシールに
おける固定環とシールハウジングとの間のように、相対
回転しない部材間の密封手段として採用した場合には、
第一シールリング120の内周面に動圧発生溝を設けて
も動圧を得られず、したがって高圧条件での摩擦力の増
大を抑えることが困難であった。
【0009】本発明は、以上のような問題に鑑みてなさ
れたもので、その主な技術的課題とするところは、内周
において良好な密封性を保ちつつ、内周材との摩擦を小
さく抑えることのできる圧力条件の上限を上昇させるこ
とにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述した技術的課題は、
本発明によって有効に解決することができる。すなわち
請求項1の発明に係る分割型シールは、内周材が挿通さ
れた環状の静止シール部の高圧空間側に非回転状態で配
置された第一及び第二シールリングを備え、前記第一シ
ールリングは、円弧状の複数のセグメントを円周方向に
隙間のある状態で環状に組み合わせて弾性的に結束した
ものであって内周面が前記内周材の外周面に密接され、
前記第二シールリングは、前記第一シールリングを介し
て付勢手段により軸方向付勢されて一端面が前記静止シ
ール部に密接されると共に内周面と前記内周材の外周面
との間に隙間を有し、前記第一シールリングの内周面に
高圧空間側に開放された圧力バランス溝が形成されたも
のである。なお、前記内周材は、回転軸のような回転体
である場合や、非回転の円筒体である場合等がある。
【0011】また、請求項2の発明に係る分割型シール
は、請求項1の構成において、第二シールリングの内周
面に、前記第一シールリング側に開放された圧力バラン
ス溝が形成されたものである。
【0012】また、請求項3の発明に係る分割型シール
は、請求項1の構成において、第二シールリングが、円
弧状の複数のセグメントを円周方向に互いに密接衝合状
態で環状に組み合わせて弾性的に結束したものである。
【0013】また、請求項4の発明に係る分割型シール
は、請求項1の構成において、第二シールリングが、自
己潤滑材料からなるものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る分割型シール
の好適な実施の形態を図面を参照しながら説明する。ま
ず図1は、第一の実施の形態としての分割型シール1
を、その軸心を通る平面で切断して示す断面図で、図中
左側が密封対象となる機内の高圧空間H、右側が機外の
低圧空間Lとなっている。
【0015】参照符号80は内周材としての回転体であ
り、機器のシールハウジング(図示省略)に非回転状態
かつ気密的に配置されるハウジング側密封要素10の内
周を貫通するように延びている。なお、ここでいう回転
体80は、例えば回転軸であり、外周に金属スリーブが
装着されている場合は、この金属スリーブも含むもので
ある。
【0016】ハウジング側密封要素10の内周部には、
内周及び高圧空間H側に開放されたシールリング収容部
11が形成され、低圧空間L側の端部には、円周方向に
連続した端壁部12が形成され、シールリング収容部1
1には、第一及び第二シールリング20,30が配置さ
れている。また、ハウジング側密封要素10の高圧空間
H側の端部には、環状のプレート13がボルト14によ
って固定されており、このプレート13には、第一及び
第二シールリング20,30を静止シール部である端壁
部12側へ軸方向に付勢する付勢手段としての複数のコ
ンプレッションスプリング40が、軸方向に適宜圧縮さ
れた状態で配置されている。
【0017】図2は第一シールリング20の正面図、図
3はこの第一シールリング20を構成する第一セグメン
ト21を単体で示す斜視図である。すなわち、第一シー
ルリング20は、図3に示されるような円弧状に形成さ
れた複数(図示の例では3個)の第一セグメント21
を、図2に示されるように環状に組み合わせ、その外周
面に円周方向に形成された溝21aに装着したガータス
プリング22によって弾性的に結束したもので、このガ
ータスプリング22の張力によって、各セグメント21
の内周面21bが回転体80の外周面に密接されるよう
になっている。
【0018】各第一セグメント21は適当な円周方向隙
間Gをもって配置されている。この隙間Gは、各第
一セグメント21が、その内周面21bが回転体80と
の摺接によって経時的に摩耗するのに追随して、ガータ
スプリング22の張力によって内径方向に変位可能とす
るものであり、これによって回転体80との密接状態を
保つことができるようになっている。
【0019】各第一セグメント21の内周面21bに
は、それぞれ円周方向に延びる圧力バランス溝21c
と、この圧力バランス溝21cから軸方向に延びて高圧
空間H側の端面21eの内周部に達する圧力バランス溝
21dが形成されている。このため、第一セグメント2
1の内周を低圧側へ通過しようとする高圧空間H側の密
封対象ガスに対する堰き止めは、圧力バランス溝21c
より低圧側の面であるシールダム部21Sにおいてなさ
れる。
【0020】図4は第二シールリング30の正面図、図
5はこの第二シールリング30を構成する第二セグメン
ト31を単体で示す斜視図である。すなわち第二シール
リング30は、図5に示されるような円弧状に形成され
た複数(図示の例では3個)の第二セグメント31を、
図4に示されるように円周方向両端が互いに密接した状
態で環状に組み合わせ、その外周面に円周方向に形成さ
れた溝31aに装着したガータスプリング32によって
弾性的に結束したもので、各第二セグメント31の内周
面31bの曲率半径が回転体80の外周面の半径よりも
僅かに大径に形成され、このため第二セグメント31の
内周面31bと回転体80の外周面との間には、径方向
隙間Gが存在する。
【0021】第二セグメント31の内周の径方向隙間G
は、極力小さく設定されている。このため、回転体8
0の偏心等によって、第二セグメント31の内周面31
bが、回転体80の外周面と接触しても問題がないよう
に、第二セグメント31は、例えばカーボン等のよう
な、自己潤滑性に富む材料で形成されている。
【0022】コンプレッションスプリング40は、プレ
ート13と、第一シールリング20における各第一セグ
メント21との間で軸方向に適宜圧縮された状態に配置
されており、前記プレート13に形成された保持穴13
aにそれぞれ半収容状態に保持されている。そして、こ
のコンプレッションスプリング40の軸方向付勢力によ
って、第一及び第二シールリング20,30が互いに軸
方向に密接状態に衝合されると共に、第二シールリング
30の各第二セグメント31の端面31cがハウジング
側密封要素10の端壁部12に密接されている。
【0023】各第一セグメント21及び各第二セグメン
ト31には、それぞれ互いに対応する位置に、軸方向に
貫通した係合孔21f,31dが形成されており、ハウ
ジング側密封要素10の端壁部12に軸方向に打ち込ま
れた回り止めピン15が、双方の係合孔21f,31d
に跨って遊嵌係合している。これによって、第一及び第
二セグメント21,31が、径方向へ変位可能な状態で
回り止めされている。
【0024】図6は第一及び第二シールリング20,3
0の組み込み状態を示す正面図である。この図6に示さ
れるように、第一シールリング20における各第一セグ
メント21間の隙間Gと、第二シールリング30の分
割部(各第二セグメント31の衝合部)30aが、互い
に異なる位相上に位置するように、ハウジング側密封要
素10に組み込まれる。
【0025】上記構成を備える分割形シール1は、図1
における左側の高圧空間Hから右側の低圧空間(機外の
大気)Lへの機内ガスの漏洩を抑止するもので、第一シ
ールリング20における第一セグメント21間の円周方
向隙間Gと、第二シールリング30の内周の径方向隙
間Gとが重なり合った部分が、図6に示されるような
オリフィス状漏洩経路1aとなる。
【0026】図7は上記構成の分割型シール1に作用す
るガス圧力の分布を示す説明図である。すなわち上述の
構成によると、第一セグメント21の外周面に作用する
密封対象ガスの圧力Pが、この第一のセグメント21
を回転体80の外周面に押し付ける方向に作用する。一
方、この第一セグメント21の内周面21bに形成され
た圧力バランス溝21c,21dに導入されたガス圧力
は、回転体80の外周面への第一セグメント21の
押し付け力を相殺するように作用する。そして、圧力バ
ランス溝21c,21dに導入されたガス圧力Pは、
シールダム部21Sより高圧側では殆ど圧力損失を生じ
ないため、この部分ではガス圧力Pが径方向にほぼバ
ランスする。
【0027】高圧空間Hの密封対象ガスの圧力Pは、
第一セグメント21の内周面21bにおけるシールダム
部21Sを通過する際に圧力損失ΔPを生じてP
なり、また、第二シールリング30の内周の径方向隙間
における第一シールリング20側の端部の圧力は、
図6に示されるオリフィス状漏洩経路1aの出口付近で
はPとなり、その円周方向両側はPより低圧のP
となる。更に、前記径方向隙間Gを通過する際の圧力
損失によって、低圧空間L側の出口では、この低圧空間
Lの圧力P(大気圧)まで低下する。
【0028】ここで、高圧空間Hのガス圧力Pがある
程度の高圧になって、オリフィス状漏洩経路1aでの流
速が音速になった状況(チョーク流れという)では、オ
リフィス状漏洩経路1aにおける圧力損失ΔPが一定
となるので、Pが高圧であるほど、オリフィス状漏洩
経路1aの出口付近の圧力Pも高圧になる。しかも、
第二シールリング30の内周の径方向隙間Gは、極力
小さく設定されているため、圧力Pは容易に逃げず、
その結果、径方向隙間Gにおける第一シールリング2
0側の端部の圧力が高く維持される。そして、この圧力
と、高圧空間Hの圧力Pとの差圧は、第一セグメント
21に回転体80の外周面への押し付け荷重として作用
するが、この差圧が小さくなるため、回転体80の外周
面と第一セグメント21との摩擦が軽減される。
【0029】また、第二シールリング30の内周の径方
向隙間Gが小さく設定されているため、回転体80の
振動や偏心、あるいは回転体80と第二シールリング3
0の熱膨張差等によって、第二セグメント31の内周面
31bが回転体80の外周面に接触するおそれがある
が、第二セグメント31は自己潤滑性に優れたカーボン
等の材料からなり、しかもガータスプリング32の弾性
によって円周方向へ互いに分離可能であるため、回転体
80との接触による負荷の増大が抑えられる。
【0030】次に図8は、本発明に係る分割型シールの
他の形態を、その軸心を通る平面で切断して示す断面図
である。この実施の形態による分割型シールにおいて、
上述した第一の実施の形態と異なるところは、第一シー
ルリング20の第一セグメント21の内周面21bに形
成した圧力バランス溝21c,21dに加えて、第二シ
ールリング30の各第二セグメント31の内周面31b
にも圧力バランス溝31e,31fを形成したことにあ
る。
【0031】詳しくは、第二セグメント31の内周面3
1bには、比較的第一シールリング20寄りに位置し
て、それぞれ円周方向に延びる圧力バランス溝31e
と、この圧力バランス溝31eから軸方向に延びて第一
シールリング20側の端面の内周部に達する圧力バラン
ス溝31fが形成されている。その他の部分の構成は、
第一の実施の形態と同様である。
【0032】図9は上記他の形態による分割型シール1
に作用するガス圧力の分布を示す説明図である。すなわ
ち上述の構成によると、第一セグメント21に径方向に
作用する密封対象ガスの圧力Pの分布は、先に説明し
た図7と同様である。そして、圧力Pの密封対象ガス
は、第一セグメント21の内周面におけるシールダム部
21Sを通過する際に、圧力損失ΔPを生じてP
低下し、また、図6に示されるオリフィス状漏洩経路1
aでは圧力損失ΔPを生じてその出口付近の圧力がP
となる。
【0033】ここで、第二シールリング30における各
第二セグメント31の内周面31bに形成された圧力バ
ランス溝31e,31fは、オリフィス状漏洩経路1a
でのチョーク流れにより生じた圧力Pに近似した圧力
を円周方向全域に導入し、第二シールリング30の
内周の径方向隙間Gを高圧に保持する作用を有するも
のである。
【0034】具体例を示すと、今、機内の高圧空間Hの
ガス圧力Pが0.8MPa[abs]、機外の低圧空
間Lの圧力Pが大気圧(0.1MPa[abs])で
ある場合、第一シールリング20における第一セグメン
ト21間の円周方向隙間G(図2参照)や、第二シー
ルリング30の内周の径方向隙間Gや、第一及び第二
セグメント21,31のシールダム部21S,31Sの
軸方向幅等を、適切に設計することによって、P
0.75MPa、P=0.40MPa、P=0.3
6MPaになったとする。この場合、圧力Pはオリフ
ィス状漏洩経路1aでのチョーク流れによるものである
から、オリフィス状漏洩経路1a付近にのみ発生し、径
方向隙間Gのうち第一シールリング20寄りにおける
圧力は、オリフィス状漏洩経路1aの出口を除く円周方
向大部分が、圧力バランス溝31e,31fによってP
程度の圧力に保持される。このため、第一シールリン
グ20(第一セグメント21)に回転体80の外周面へ
の押し付け荷重として作用する差圧ΔPは、ΔP=P
−P=0.44MPaとなる。
【0035】すなわちこの例では、高圧空間Hのガス圧
力Pと、低圧空間Lの圧力Pとの差圧が、0.8M
Pa−0.1MPa=0.7MPaという条件でシール
を行っているにも拘らず、第一セグメント21に押し付
け荷重として作用する差圧は、0.44MPaに過ぎな
い。
【0036】したがって、回転体80の外周面に対する
第一セグメント21の摩擦が一層有効に軽減され、その
結果、第一セグメント21の内周面21bの摩耗が抑制
されると共に、ハウジング側密封要素10と回転体80
の軸方向相対変位に対する追随性も良好に維持されて、
ハウジング側密封要素10の端壁部12と第二シールリ
ング30との密接状態及び第一シールリング20と第二
シールリング30との密接状態が損なわれるのを防止す
ることができる。またこのため、例えば、従来構造にお
いては0.5MPa程度とされていた高圧空間Hと低圧
空間Lとの差圧の上限を、装着スペースの増大等を来す
ことなく、1.5〜2倍程度に引き上げることが可能と
なる。
【0037】なお、第二シールリング30は、回転体8
0の外周面と密接させるものではないので、必ずしも上
述の各形態のように、複数の第二セグメント31をガー
タスプリング32によって弾性的に結束した構成とする
必要はなく、例えば円周方向に連続した単一の環状とし
たり、あるいは複数の第二セグメント31を互いにボル
ト等で連結して環状としたものであっても良い。但し、
上述のように、第二セグメント31をガータスプリング
32によって弾性的に結束した構造とすれば、先に説明
したように、回転体80の外周面と接触しても、これに
よる負荷の増大を緩和することができるので、回転体8
0の外周面との間の径方向隙間Gを小さくできるとい
った利点がある。
【0038】[実施例]図10は、本発明に係る分割型
シール1を、ドライガスシール2の固定環70とシール
ハウジング50との間の密封手段として採用した実施例
を示す要部断面図で、この図において、参照符号50は
回転体80の軸封部を包囲するように複数の部材によっ
て組み立てられたシールハウジングである。
【0039】ドライガスシール2は、回転軸90の外周
に配置されて内周部がこの回転軸90のスリーブ91,
92間に挟持・固定された回転環60と、この回転環6
0の軸方向両側に対向配置されると共に外周がそれぞれ
シールハウジング50に打ち込まれたノックピン51に
より回り止めされた一対の固定環70,70とを備え、
動的シール部Sが回転環60の軸方向両側に存在するダ
ブルシールの形態を有する。各固定環70は、シールハ
ウジング50の内周部に固定された支持筒52の外周に
軸方向移動可能に支持されており、本発明による分割型
シール1は、各固定環70と支持筒52との間に配置さ
れている。なお、参照符号53,93,94はパッキン
である。
【0040】この実施例においては、固定環70が分割
型シール1における静止シール部に相当するものであ
り、すなわち、コンプレッションスプリング40の軸方
向付勢力によって、第一及び第二シールリング20,3
0が互いに軸方向に密接状態に衝合されると共に、第二
シールリング30の各第二セグメント31の端面31c
が、固定環70における回転環60と反対側の端面に密
接されている。また、コンプレッションスプリング40
は、第一及び第二シールリング20,30を介して固定
環70を回転環60側へ向けて付勢する手段を兼ねてい
る。
【0041】また、この実施例においては、シールハウ
ジング50の支持筒52が、分割型シール1の内周材に
相当するものであり、この支持筒52は非回転であるか
ら、第一シールリング20における第一セグメント21
の内周面が、内周材としての支持筒52と円周方向に摺
動することはない。
【0042】回転環60の両端面における固定環70,
70との対向面には、動圧発生溝61,61が形成され
ており、回転環60が回転軸90と一体的に回転するこ
とによって、固定環70,70との間に、動圧発生溝6
1,61による顕著な動圧を発生するようになってい
る。すなわちこのドライガスシール2は、回転時に動圧
発生溝61,61により発生する動圧によって、固定環
70,70を、コンプレッションスプリング40の付勢
力に抗して、回転環60との間に微小な隙間のある状態
に保持しつつ、軸封機能を奏するものである。
【0043】ドライガスシール2の機外側にはラビリン
スシール3が設けられている。このラビリンスシール3
は、シールハウジング50側に固定され、回転軸90の
外周面に設けられたカラー95の外周面に内周縁が近接
した複数の環状プレート3aを有する公知の構造を有す
るもので、各環状プレート3aとカラー95の外周面と
の間の微小間隙で漏れ圧力を減衰させる、非接触式のシ
ールである。
【0044】ドライガスシール2の機内側の空間(以
下、機内空間という)Aには圧力Pの密封対象ガス
(例えば水蒸気)が存在しており、シールハウジング5
0とドライガスシール2との間の中間室Bには、シール
ハウジング50に設けられた給排気孔54を介して、機
内空間Aより高圧Pのバッファガス(例えば水蒸気)
が供給されている。ドライガスシール2とラビリンスシ
ール3との間は、シールハウジング50に設けられた漏
洩ガス排出孔55が開口した漏洩空間Cとなっており、
この漏洩空間Cの圧力Pは、機外Dと同じ大気圧
(0.1MPa)となっている。したがって、分割型シ
ール1及びドライガスシール2の周囲の圧力関係は、P
<P<Pとなっている。
【0045】以上の構成において、ドライガスシール2
は、機内空間A及び漏洩空間Cよりも高圧のバッファガ
スを中間室Bに供給して機内空間A及び漏洩空間C側へ
僅かずつ流出させ、これによって、機内空間Aの密封対
象ガスを機外Dへ漏らさないようにしているものであ
る。中間室Bから漏洩空間Cへ流出したバッファガス
は、漏洩ガス排出孔55を介して排出される。
【0046】非接触式メカニカルシールであるドライガ
スシール2にあっては、回転環60と固定環70,70
とのシール隙間を、常に最良の状態に維持するために、
固定環70,70の軸方向作動性を良好にすることが重
要である。すなわち、固定環70,70の軸方向作動性
が不良であると、回転軸90の軸方向変位等に伴って回
転環60が軸方向変位した時に、この変位に対して固定
環70,70が応答性良く追随することができないの
で、回転環60が一方の固定環70に接触して摩耗や異
常発熱を来したり、他方の固定環70との隙間が増大し
て漏れが著しく増大するからである。
【0047】しかしながら、この実施例では、ドライガ
スシール2における固定環70とシールハウジング50
(支持筒52)との間の密封手段として、本発明の分割
型シール1を採用しており、その周囲の圧力関係がP
>P及びP>Pにあるため、この分割型シール1
は、先に説明した作用によって、支持筒52の外周面に
対する第一セグメント21の摩擦が小さなものとなり、
固定環70,70の軸方向作動性を良好にすることがで
きる。
【0048】
【発明の効果】請求項1の発明に係る分割型シールによ
れば、第一シールリングの内周面に高圧空間側に開放さ
れた圧力バランス溝を有することによって、内周材に対
する第一シールリングの押し付け荷重が小さくなり、内
周材との摩擦が軽減される。したがって、内周において
良好な密封性を保ちつつ内周材との摩擦を小さく抑える
ことのできる圧力条件の上限を、上昇させることができ
る。
【0049】しかも、動圧を利用するものではないの
で、例えばメカニカルシールにおける固定環とシールハ
ウジングとの間のように、相対回転しない部材間の密封
手段として採用した場合でも、内周材との摩擦力を有効
に軽減することができる。
【0050】請求項2の発明に係る分割型シールによれ
ば、第二シールリングの内周面にも、第一シールリング
側に開放された圧力バランス溝が形成されているので、
第一シールリングの第一セグメントの間の円周方向隙間
と第二シールリングの内周の径方向隙間とによって形成
されるオリフィス状漏洩経路に発生するチョーク流れに
よる圧力が全周に導入され、その結果、第一シールリン
グに作用する差圧が軽減されて、内周材との摩擦が一層
軽減される。
【0051】請求項3の発明に係る分割型シールによれ
ば、第二シールリングが、円弧状の複数のセグメントを
円周方向に互いに密接衝合状態で環状に組み合わせて弾
性的に結束した構成を備えるため、第二シールリングの
内周面が、内周材の偏心や、内周材と第二シールリング
の熱膨張差等によって、内周材の外周面と接触しても、
これによる負荷の増大を緩和することができ、したがっ
て、内周材の外周面との間の径方向隙間を小さくして、
密封性能を向上させることができる。
【0052】請求項4の発明に係る分割型シールによれ
ば、第二シールリングが、自己潤滑材料からなるため、
第二シールリングの内周面が、内周材の偏心や、内周材
と第二シールリングの熱膨張差等によって、内周材の外
周面と接触しても、これによる負荷の増大を緩和するこ
とができ、したがって、内周材の外周面との間の径方向
隙間を小さくして、密封性能を向上させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る分割型シールの実施の形態を、軸
心を通る平面で切断して示す半断面である。
【図2】上記実施の形態における第一シールリングを示
す正面図である。
【図3】上記実施の形態における第一シールリングを構
成するセグメントを単体で示す斜視図である。
【図4】上記実施の形態における第二シールリングを示
す正面図である。
【図5】上記実施の形態における第二シールリングを構
成するセグメントを単体で示す斜視図である。
【図6】上記実施の形態における第一及び第二シールリ
ングの組み込み状態を示す正面図である。
【図7】上記実施の形態におけるガス圧力の分布を示す
説明図である。
【図8】本発明に係る分割型シールの他の形態を、軸心
を通る平面で切断して示す半断面である。
【図9】上記他の形態におけるガス圧力の分布を示す説
明図である。
【図10】本発明に係る分割型シールを、ドライガスシ
ールの固定環とハウジングとの間の密封手段として採用
した実施例を示す説明図である。
【図11】従来の技術に係る分割型シールを、軸心を通
る平面で切断して示す半断面である。
【図12】従来の技術に係る分割型シールを示すもので
(a)は第一シールリングを軸方向から見た正面図であ
り、(b)は第二シールリングを軸方向から見た正面図
であり、(c)は第一及び第二シールリングの組み込み
状態を示す正面図である。
【符号の説明】
1 分割型シール 2 ドライガスシール 3 ラビリンスシール 10 密封要素 11 シールリング収容部 12 端壁部(静止シール部) 13 プレート 15 回り止めピン 20 第一シールリング 21 第一セグメント 21c,21d,31e,31f 圧力バランス溝 22,32 ガータスプリング 30 第二シールリング 31 第二セグメント 40 コンプレッションスプリング(付勢手段) 50 シールハウジング 52 支持筒(内周材) 60 回転環 61 動圧発生溝 70 固定環(静止シール部) 80 回転体(内周材) 90 回転軸

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 円筒面状の内周材(80,52)が挿通
    された環状の静止シール部(12,70)の高圧空間
    (H)側に非回転状態で配置された第一及び第二シール
    リング(20,30)を備え、 前記第一シールリング(20)は、円弧状の複数のセグ
    メント(21)を円周方向に隙間(G)のある状態で
    環状に組み合わせて弾性的に結束したものであって内周
    面(21b)が前記内周材(80,52)の外周面に密
    接され、 前記第二シールリング(30)は、前記第一シールリン
    グ(20)を介して付勢手段(40)により軸方向付勢
    されて一端面(31c)が前記静止シール部(12,7
    0)に密接されると共に内周面(31b)と前記内周材
    (80,52)の外周面との間に隙間(G)を有し、 前記第一シールリング(20)の内周面(21b)に、
    前記高圧空間(H)側に開放された圧力バランス溝(2
    1c,21d)が形成されたことを特徴とする分割型シ
    ール。
  2. 【請求項2】 前記第二シールリング(30)の内周面
    (31b)に、前記第一シールリング(20)側に開放
    された圧力バランス溝(31e,31f)が形成された
    ことを特徴とする請求項1に記載の分割型シール。
  3. 【請求項3】 前記第二シールリング(30)が、円弧
    状の複数のセグメント(31)を円周方向に互いに密接
    衝合状態で環状に組み合わせて弾性的に結束したもので
    あることを特徴とする請求項1に記載の分割型シール。
  4. 【請求項4】 前記第二シールリング(30)が、自己
    潤滑材料からなることを特徴とする請求項1に記載の分
    割型シール。
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