JP2002097568A - 金属薄膜蒸着方法 - Google Patents

金属薄膜蒸着方法

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JP2002097568A
JP2002097568A JP2000287931A JP2000287931A JP2002097568A JP 2002097568 A JP2002097568 A JP 2002097568A JP 2000287931 A JP2000287931 A JP 2000287931A JP 2000287931 A JP2000287931 A JP 2000287931A JP 2002097568 A JP2002097568 A JP 2002097568A
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hearth
evaporation
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thin film
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JP2000287931A
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Nobuhiro Tanaka
信寛 田中
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NITSUTOUSHIYA KK
Original Assignee
NITSUTOUSHIYA KK
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Abstract

(57)【要約】 【目的】電子ビーム加熱方式で金属薄膜蒸着を行う際
に、蒸発材料の金属を所定の組成と量を調合して、全量
を蒸発させることで膜厚と組成を制御する方法を提供す
る。 【構成】 電子ビーム加熱装置のハースライナーに目標
膜厚に相当する量だけ調整した蒸発原料である純金属や
所定の組成の金属合金と一緒に粉末を主体とする高融点
金属を入れて加熱蒸発し、蒸発材料の金属のみを蒸発さ
せ、高融点金属をハースライナーに残留させてハースラ
イナーの損傷を防ぎながら、所定の膜厚と組成の皮膜を
得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子ビームを熱源
として使用する電子銃を使用して行う金属薄膜の蒸着方
法に関し、特にハースライナーを使用しての蒸着法に関
する。
【0002】
【従来の技術】金属の皮膜を成形するのに、蒸着もしく
はイオンプレーテイングによる成膜が増加してきてい
る。蒸着、イオンプレーテイングの蒸発源として、抵抗
加熱式、電子ビーム加熱、誘導加熱式があるが、電子ビ
ーム蒸発源は、大きいエネルギーを投入することが可能
で、各種の金属の蒸着に適応できることや膜厚が厚い場
合に有効で広く使用されている。
【0003】イオンプレーテイングは、蒸着における蒸発金
属にエネルギーを与えて、プラズマ状態にして製膜する
蒸着の一種であり、ここでは蒸着に含めて解説する。
【0004】しかし、電子ビーム蒸発源は、調整した蒸発原
料の全量を蒸発させる、いわゆる「飛ばしきり」が出来
ないことや合金成分をそのままの組成で蒸着出来ないな
どの制約がある。
【0005】全量蒸発させることが出来ないのは、投入エネ
ルギーが大きく、電子ビームを蒸発原料に照射すると小
さい範囲に電子ビームのエネルギーが集中するため、蒸
発原料が蒸発して減少すると原料金属を入れている水冷
のハース底部やハースライナーの底部が電子ビームによ
り損傷するためである。
【0006】ハースは、蒸発原料を入れるるつぼ部分で、通
常水冷された銅で作られている。直接ハースに蒸発原料
を入れて、電子ビームを照射することも行われている
が、ハースライナーという容器に入れて使用されること
が多い。
【0007】ハースライナーを使用すると、蒸発材料と水冷
のハースが直接接触しないため、直接蒸発原料をハース
に入れる場合に比べ熱が伝わりにくいため、蒸発に必要
なエネルギーも少なく、コントロールしやすく、再現性
も良好である。さらにハースを蒸発材料で汚染せず、蒸
着材料の交換が容易で、ハースの底部の溶損という事態
を起こしにくいので、ハースライナーを使用することが
望ましい。しかし、高融点の金属やニッケルやアルミニ
ウムのようにハースライナーの材質と合金を作りやすい
原料には使用が難しい。
【0008】ハースライナーは、高融点の金属、例えば、モ
リブデン、タンタル、タングステンなどで作られるが、
価格や加工のしやすさから、ハースライナーの素材金属
としては、モリブデン製のものが多い。その他、セラミ
ツクや黒鉛などで作られることもあるが、急激な加熱に
よって破損することもあり、金属製が広く使われてい
る。ここでは、金属製、特にモリブデン製のハースライ
ナーを使用して行う蒸着を中心に解説しているが、他の
金属であっても差し支えない。しかし、モリブデン製で
あっても、ハースライナーは、高価であるので、繰り返
しての使用が望まれる。
【0009】電子ビーム加熱によって、合金の成分を成膜す
ることが困難な理由は、真空中で合金を加熱していく
と、蒸気圧の高い成分から優先的に蒸発し、蒸気圧の低
い成分が底部に残留する金属に濃縮してくるため、皮膜
中には、蒸気圧の低い成分は入りにくく、繰り返し使用
するとますます残留成分も成膜金属も組成が変化するか
らである。
【0010】電子ビーム加熱では、ハースやハースライナー
の底部の損傷を防ぐため、蒸発原料を所定の量よりも過
剰に入れて、その一部のみを蒸発させるようにし、相当
量を残留させることが必要で、電流も高い設定を避けて
操業するため、高電流を流す場合に比べ、蒸着時間がか
かる。通常は電子銃では、ハースに直接蒸発原料を入れ
る場合には、調整した試料のほぼ1/3しか飛ばさないこ
とが多く、ハースライナーを使用する場合においても底
部に損傷を起こさない以上の残留を見込んだ量を入れる
必要があり、過剰量を入れることになる。
【0011】蒸発する量を肉眼で観察したり、制御すること
は難しいので、所定の膜厚を得るには、水晶振動子など
を使用する制御法が使われている。この水晶振動子は、
高価で、蒸着によって消耗する。膜が厚い場合には、使
用数が多くなり、大量の蒸発原料を蒸発させる製造装置
では、デュアルタイプの水晶振動子でも間に合わなくな
る。
【0012】水晶振動子が基板と同じ位置にセットされてい
る場合は、膜厚モニターと基板の厚みは対応している
が、多くの生産設備では、基板を、自転、公転を組み合
わせて移動させ、数多くの基板の膜厚を均一にするよう
に作られている。この場合、膜厚モニターを基板に追随
して動かすことが困難であるので、膜厚のモニターを基
板位置ではなく、蒸発源の近くに設置し、蒸発速度を測
定して膜厚に対応させている。
【0013】膜厚モニターで検出された値を、自転、公転の
組合せを装置の形状係数で換算し、また、蒸発原料が変
わると蒸発原料特有の係数で補正することになる。
【0014】しかし、同じ装置を使用しても、散乱蒸着、イ
オンプレーテイングや、反応性蒸着、反応性イオンプレ
ーテイングといわれる成膜法のように、蒸着中にガスを
導入したり、プラズマをかけると、蒸発物質は散乱さ
れ、装置内における蒸発物質すなわち膜厚の分布が大幅
に変化する。この場合は、標準的な蒸着で割り出した係
数では、齟齬が生じることになる。
【0015】そのため、標準的な蒸着以外の方法による成膜
の際に、正確な膜厚を得るには、条件が変わる度に実際
の膜厚とモニターとの対応を求める必要があり、実用上
不便である。
【0016】また、膜厚のモニターは、基板の位置の膜厚を
正確に検出したとしても、それは、標準状態の膜厚を示
しているにすぎない。実際の生産においては、蒸着に供
する基板は、複雑な形状をしていることが多く、また、
同時に各種の形状の基板を処理することが必要となる。
【0017】蒸着の原理は、蒸発した粒子が直進して、基板
に衝突して堆積して膜を形成するので、基板が複雑な形
状をしていると、粒子の蒸着しにくい場所や装置内に基
板を設置した位置によって基板上の膜厚の不均一が生じ
る。生産現場における成膜に必要とされる膜厚は、基板
の各位置において皮膜に望まれる必要な特性を満足する
膜厚を確保することと、つきにくい箇所での最低限必要
な膜厚の確保である。
【0018】従って、工業的な生産の場合には、膜厚モニタ
ーによって標準的な位置での膜厚を一定にする技術より
も、蒸発粒子の入り込みにくい位置の膜厚を確保するた
め、先に述べた蒸着法を適応して蒸発粒子の回り込みを
よくすることと標準状態よりも過剰に蒸発させ、特性上
必要な最低の膜厚を確保することのはうが実用的であ
る。この場合、蒸発原料を闇雲に過剰に蒸発されるので
はなく、実際の測定や経験から割り出した、一定の比率
で蒸発量を管理することが望ましいのは言うまでもな
い。
【0019】水晶振動子を使用しないで蒸著する場合は、経
験からエミッション電流値と照射時間を設定して操業す
ることになるが、所定以上の膜厚を確保するために、過
剰量を蒸発させることになり、均一な膜厚を得ることは
難しく、原料使用量も多くなる。
【0020】基板に形成される膜の厚みは、蒸発量と装置内
の分布により決定されるが、適当な分布が得られるよう
に作られた装置では、膜の厚みは、蒸発量によって決定
される。従って、膜厚に相当する量を入れ、全量飛ば
す、いわゆる「飛ばしきり」が可能であれば、所定の膜
厚が得られる。抵抗加熱などは、この方法によってい
る。
【0021】また、合金の蒸発原料でも全量揮発させれば、
残留する金属に高沸点の金属が濃縮することもなく、皮
膜としてみれば、合金組成が保たれることになる。同じ
ハースライナーを繰り返して使用しても、同じ条件を繰
り返すことが可能である。
【0022】電子ビーム加熱でも、ハースもしくはハースラ
イナーが電子ビームにより損傷を受けなければ、飛ばし
きることは可能であり、ハースライナーを繰り返し使用
することも可能である。
【0023】ハースライナーの保護のために、例えば、ハー
スライナーの底を厚くしても、底部にビームが直接当た
ると、損傷は避けられず、また、電子ビームにより高温
にさらされると、肉眼で観察される損傷がなくとも、ハ
ースライナーの材料が再結晶をおこし、結晶が粗大化し
て、結晶粒界からクラックが発生し、蒸発材料の金属の
漏れを生じる。
【0024】高融点金属の板を作ってハースライナーの底部
を2重にしたり、高融点金属の破片を底部に敷き詰める
方法は、使っているうちに板状の金属に穴が開いたり、
素材の隙間からビームが当たって、同様なダメージを受
ける。また金属片でハースライナーの底部を完全に覆っ
てしまうと、電子ビームの当たらない範囲の蒸発原料は
蒸発しにくいため、ハースライナーのすみや金属片の隙
間に蒸発原料が残る。特に金属片の裏や陰に回っている
部分は蒸発し難い。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、電子ビームのエネルギーからハースライナー底部を
保護し、繰り返し使用できようにするとともに、蒸発原
料全量を飛ばしきって、所定の膜厚と組成を得る方法を
提供することにある。
【0026】
【課題を解決するための手段】本発明の金属薄膜蒸着方
法は、蒸発原料を調整する際に、膜厚に相当する量の純
金属あるいは目標組織に調合した合金から成る蒸発原料
と共に、金属粉末を主体とする高融点の金属をハースラ
イナーまたはハースの底部全面を覆うに足る量を入れ、
蒸発原料に電子ビームを照射することにより、前記蒸発
原料を全量蒸発させるとともに、高融点の金属を残留さ
せてハースライナーまたはハースの底部を保護すること
を特徴とする金属薄膜蒸着方法であり、前記蒸発原料
は、ハースライナーまたはハースと反応しない原料であ
ることが望ましい。
【0027】本発明で使用する金属粉末を主体とする高融点
の金属は、金属粉末単独、または、金属粉末と金属板と
針金状金属と網目状金属との任意の組合わせから成り、
前記金属粉末は、蒸発する過程で溶融した蒸発原料を毛
細管現象で移動させることが可能な粒度であることが好
ましい。
【0028】
【発明の実施の形態】発明者が電子ビームによる損傷か
らハースライナーの底部を守るために見いだした方法
は、ハースライナーに蒸発原料と共に、高融点金属の粉
末、または、金属粉末と金属片を入れて蒸発を行う方法
である。粉末を主体とする金属で底部を保護されたハー
スライナーに蒸着したい純金属や希望する組成の金属合
金を目標膜厚に相当する量をいれて全量加熱蒸発させる
に十分なエネルギーを投入して、蒸発材料を全部飛ばし
きって、所定の膜厚と組成を得る。
【0029】粉末は、蒸発材料よりも比重が高く、蒸発材料
と溶けあわず、高温に置いても蒸気圧が低い金属が有効
である。一般に高融点金属の比重は重く、底部に沈むの
で好都合である。高融点金属の粉末として、具体的に
は、タングステン、タンタル、モリブデンなどが考えら
れる。中でもタングステンの粉末は、もっとも高融点で
比重も高く有効な材料である。これ以外の金属であって
も、対象とする蒸発原料の金属に対して、融点が高く、
比重が大きく、蒸発金属やハースライナーの材質と合金
を形成しない物であれば、使用可能であるが、多くの金
属材料に広く適応する事は難しい。
【0030】金属以外に酸化物などの化合物については、一
般に融点は高いが、金属に比べ比重が小さく、熱を伝え
にくく、蒸発原料やハースライナーの材質と反応する懸
念もあり、適応するメリットは少ない。また、蒸発材料
の金属との濡れ性も低いので、後に述べるような毛細管
現象による金属の浸透をあまり期待できない。
【0031】蒸発原料と合金を作らず、電子ビームの照射に
よっても溶解しないような高融点の金属の粉末を使用す
ると、金属片の場合に比べ、表面積が大きく、液体状態
の蒸発原料が毛細管現象により金属粉末部に拡散して、
粉末同士をつなげると共に、加熱が進むと、直接ビーム
が当たらない箇所の蒸発原料も毛細管現象と伝熱により
蒸発し、ほぼ全量が飛びきる。
【0032】蒸発材料がなくなってくると、蒸発材料は、粉
末の隙間にしみこんで、粉末は、連続したひとかたまり
になり、ビームが粉末の部分にしばらく当てていても、
粉末の蒸発やハースライナー底部の損傷は起こらない。
電子ビーム加熱方式による金属薄膜の蒸着を行う際にハ
ースライナーの底に金属粉を含む高融点の金属を入れる
ことで、蒸発原料を全量飛ばし切りにして、ハースライ
ナーを繰り返し使用する。
【0033】タングステンを代表とする高融点の金属粉末は
具体的には、銅などの金属の蒸発を行うエネルギーの投
入では、ほとんど蒸発しないので皮膜組成や抵抗などの
特性に影響を与えることはない。蒸発原料の金属が残っ
ている間、ハースやハースライナーの底部はほとんどダ
メージを受けない。粉末の量は、底部全体を覆っている
と、それなりに効果は得られるが、安定した効果を持続
させるには、ほぼ2mm以上の厚みになることが望まし
い。
【0034】金属粉のみによっても、底部の保護は可能であ
るが、粉末部に電子ビームが当たると、粉末がハースラ
イナーの底部から板状に剥離する事があり、そこにビー
ムが当たるとダメージは避けられない。かかる剥離を防
止するため、金属のかけらなりメッシュなどと併用する
ことは有効であるが、粉末を欠くことは出来ない。主体
とするという表現は、このことを指している。
【0035】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 (実施例1)3基の電子銃を備えた真空槽を使用して、銅
の蒸着を行った。3ケの1mm厚みの重さ50gのモリブデン
製のハースライナーにタングステンの0.8mmの直径の針
金の切片25gと150マイクロメートル以下のタングステン
粉末25gと銅140gを入れて、直径60mmのハースにセット
する。
【0036】真空槽に、基板としてプラスチック成型品を入
れ、真空に排気し、5分間のプラズマ処理の後、2分かけ
て、365mAまでエミッション電流を上げて銅原料を溶か
し込んだ。その後、365mAで3分30秒、さらに365mAから3
30mAまで30秒かけて電流を下げ、330mAで2分30秒、330m
Aから200mAまで30秒かけて200mAで30秒保持して電流を
停止した。
【0037】大気開放後、その重量を測ったところ、いずれ
のハースライナーも140gの重量減を示していた。ハース
ライナーに損傷は認められなかった。このハースライナ
ーに140gの銅を入れて、もう一度、同様のプロセスで蒸
着を行い、大気開放後、重量を測ったところ、いずれも
140gの重量減が認められた。
【0038】(比較例1)上記と同様の装置で、タングステ
ンの粉末を入れないハースライナー、3ケにそれぞれ合
計で240gになるように銅原料を加えた。これを、2分30
秒かけて溶かし込み、シャッターを開けて、さらに280m
Aで12分間電子ビームを照射し続けた。蒸発量を最初の
合計重量から、蒸発後の重量を引いて求めたところ、金
属の減少量は、それぞれ、171g、136g、158gであった。
重量変化した分だけ、蒸着材料を追加して、次の操業を
繰り返した。
【0039】実施例1では、蒸発材料の蒸発して少なくなっ
て、底部が露出してくると、ビームが当たっている部分
の光り方が、わずかでも銅が残留しているときと、ほぼ
完全に銅がなくなった場合とで、大きく異なるため、終
点を肉眼で観察、確認する事が可能である。また、蒸着
中に金属をプラズマ化するとさらに終点の判定はわかり
やすくなる。
【0040】このように蒸発の過程や蒸発後のハースライナ
ーを見れば、目的の重量が蒸発し、残留金属がないこと
が容易に判定できるので、蒸着後、ハースライナーを取
り出して、残重量を量らずに、予め準備した所定量を追
加するだけで、次の操業に移ることが出来る。このよう
に蒸着時間ともに操業の問の外での段取り時間も短くす
ることが出来る。残留の金属もないため、歩留まりも良
く品質も安定する。また、粉末を回収することも可能で
あり、ハースライナー素材のリサイクルもより容易であ
る。
【0041】ハースライナー内に蒸発材料が残ると、残留金
属とハースライナーの収縮率の違いから、ハースライナ
ーの側面が変形して膨らむ現象が起こってくる。膨らみ
が大きくなると、同じエネルギーを投入しても、蒸発量
が変化してくるため、ハースライナーの底部が損傷して
いなくても、使用を続けることは出来なくなる。蒸発原
料がなくなった状態では、この現象は起こらないため、
ハースライナーそのものも長持ちする事が分かった。
【0042】その他、飛ばしきりの場合、蒸発原料が溶解し
た状態でのハースライナー内の液面が低いため、電子ビ
ームの照射により、液面が波立つ現象が起こることがあ
るが、同じ条件では、飛ばしきりの場合は、通常の入れ
方よりも、こぼれにくい等の特徴もある。
【0043】(実施例2)約50gのモリブデン製のハースライ
ナーにタングステンの粉末を加え、合計重量を80gに調
整したあと、直方体の形状の3%の銅を含むスズ合金を3
5.8g入れて、合計115.8gの蒸発原料を真空に排気した
後、電子ビームを照射し、最初は、250mAまで1分まで上
げ、その後、250mAで電子ビームを蒸発原料に照射し
た。2分47秒後に底に電子ビームが当たり、ほば蒸発が
完了し、その後、3分30秒まで照射し続けたあと、停止
した。この後、装置を大気に戻して、開放して、ハース
ライナーを取り出し、ハースライナーとタングステン粉
の重量を測ったところ、79.82gであった。
【0044】(実施例3)この後、再び、同じハースライナ
ーに少量のタングステンの粉を追加して、80gとして、3
%の銅を含むスズ合金を14.89g入れて、合計104.89g
の蒸発原料を真空に排気した後、電子ビームで、最初
は、250mAまで1分まで上げ、その後、250mAで電子ビー
ムを蒸発原料に照射した。250mAで照射して始めてか
ら、1分15秒後に底に電子ビームが当たり、ほば蒸発が
完了し、250mAで照射して始めてから2分経過するまで照
射し続けたあと、停止した。この後、装置を大気に戻し
て、開放して、ハースライナーを取り出し、ハースライ
ナーとタングステン粉の重量を測ったところ、79.88g
であった。
【0045】(実施例4)この後、タングステンの粉を追加
して、80gとして、銅の粉末3.0gとスズの粉末5.0gを入
れて、合計88.0gの蒸発原料を1×10-2Paまで排気した
後、電子ビームで、最初は、200mAまで20秒で上げ、200
mAで電子ビームを蒸発原料に照射した。この蒸着中、装
置内にアルゴンガスを5×10-2Paの圧力になるまで導入
して、電場をかけてプラズマ化させた。蒸発した金属、
特に銅がイオン化して、緑色の光を発することで、蒸発
が確認できた。残留蒸発材料が残り少なくなると、この
緑色の光が次第に薄くなり、200mAで照射を始めて、1分
15秒すると、目視では、銅の色が確認できなくなった。
200mAで照射を始めてから2分経過するまで照射し続けた
あと、停止した。この後、装置を大気に戻して開放し、
ハースライナーを取り出して、ハースライナーとタング
ステン粉の重量を測ったところ、80.18gであった。
【0046】以上の実施例のように、合金の蒸着原料は、ほ
ぼ全量が蒸発してハースライナー内に残留しなかった。
実施例2、3のように元の重量よりも、蒸発後の重量が減
少することがあるが、これらは、タングステンの粉末や
ハースライナーの材質のモリブデンが蒸発したと考える
よりも、電子ビームのエネルギーでタングステンの粉末
がはじけて飛び出した物と考えられる。この例のよう
に、ハースライナー部を観察していると、金属が蒸発し
て無くなってくると、タングステンの粉末の部分が現
れ、さらに金属の粉末に含まれている金属が無くなって
くると、底部に当たるビームの色や光り方が変化してき
て、蒸発の終了を知ることが出来る。また、実施例4の
ように、プラズマ化しても蒸発の完了を観察することが
出来る。
【0047】ここでは、いずれも、観察による蒸発完了後
も、しばらくビームを照射し続けて、残留分を減少させ
るようにした。
【0048】蒸発原料が残留しないので、形成された皮膜の
0.1〜1.0μmの中では、多少の濃度勾配はあるものの、
全体としては組成は一定の比率が確保されており、実用
的には問題はない。
【0049】以上のように、スズ/銅合金の例で見ても、金
属の混合の比率を問わず、また蒸発原料の形状を問わず
に蒸着に供することが出来る。この方法を使用せずに過
剰量の合金をハースライナーに入れて蒸着したり、繰り
返して使用していくと、コントロールも困難で、電子銃
毎や毎回、膜厚がまちまちになる。ほとんど底部が現れ
るまで過剰に蒸発させたハースライナー内の残留金属に
銅の粒が観察される。また、ほとんど底部まで蒸発させ
たハースライナーは、次回の蒸着時に底部より金属の洩
れが起こり、使用できなくなる。また、この方法によら
ずに蒸着する場合、予備試験無しに、初回から適切な蒸
着の条件を把握することは困難である。
【0050】通常の操業では、いったん使用したハースライ
ナーを同じ成分であっても、組成の異なる金属の蒸着に
適応することは、汚染の危険性が高く、行うことはまれ
であるが、実施例のように残留金属が無いので、同じ成
分の合金であれば、転用することも可能である。
【0051】ハースライナーに金属を残留させて、繰り返し
て使用していくと、ハースライナーの材質と、残留金属
の膨張率の差によって、ハースライナーの側面が膨らん
できたり、ハースライナーに残留する金属は、冷却しに
くい為、蒸着終了後、すぐに大気開放すると、表面が酸
化する事があった。
【0052】これらの現象に対しても、蒸発原料の金属を残
留させなければ、ハースライナーの変形も起こらず、ハ
ースライナーも長持ちし、残留蒸発原料の酸化も防止で
きて、皮膜の品質維持と繰り返しが容易である。
【0053】なお、ここでは、例として、純金属として銅の
例を、合金成分としてすずと銅の例を示したが、この発
明は、高融点金属以外で、ハースライナーや高融点金属
と融け合わない金属全般に適応することができる。例え
ば、金や銀を蒸発材料として用いることもできる。さら
に合金としても、2成分にはとどまらず、さらに多くの
金属から成る合金でも可能である。また、単層だけでな
く、多層の膜に対しても適応できる。
【0054】
【発明の効果】以上の実施例のように、本発明により、
電子ビーム加熱方式の蒸着に置いても、飛ばしきりが可
能となる。この発明で、工業的な生産現場において、蒸
発原料を有効に、より短時間で、過不足無く蒸発させる
ことが可能である。この発明により、高価なセンサーを
使用しなくても、また、センサーによる制御が困難なガ
スを導入したり、プラズマをかけるような条件での成膜
の制御が容易で、合金組成でも原料と皮膜が同じ組成に
蒸着可能で、容易に蒸着完了を確認でき、ハースライナ
ーを繰り返し使え、しかも長持ちさせることが可能であ
る。また、蒸着完了後、予め、調合した蒸発原料をハー
スライナーに追加する事で、操業と操業の間に、ハース
ライナーを取り出したり、重量を測ったりする必要が無
くなり、操業と操業の間を短縮させ、装置の稼動率を上
げることが可能となる。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】蒸発原料を調整する際に、膜厚に相当する
    純金属あるいは合金蒸発原料と共に金属粉末を主体とす
    る高融点の金属をハースライナーまたはハースの底部全
    面を覆うに足る量を入れ、蒸発原料に電子ビームを照射
    することにより、蒸発原料を全量蒸発させるとともに、
    高融点の金属を残留させてハースライナーまたはハース
    の底部を保護することを特徴とする金属薄膜蒸着方法。
  2. 【請求項2】蒸発原料が合金であり、目標組成に調合し
    た所定の膜厚に相当する量の金属混合物を、金属粉末を
    主体とする高融点の金属とともにハースライナーまたは
    ハースに入れて、全量蒸発させることを特徴とする請求
    項1記載の金属薄膜蒸着方法。
  3. 【請求項3】前記金属粉末を主体とする高融点の金属
    は、金属粉末単独、または金属粉末と金属板と針金状金
    属と網目状金属との任意の組合せから成ることを特徴と
    する請求項1または2記載の金属薄膜蒸着方法。
  4. 【請求項4】前記金属粉末の粒度は、蒸発する過程で溶
    融した蒸発原料を毛細管現象で移動させることができる
    粒度であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1
    つに記載の金属薄膜蒸着方法。
  5. 【請求項5】前記蒸発原料としてはハースライナーまた
    はハースと反応しないものを用いることを特徴とする請
    求項1〜4のいずれか1つに記載の金属薄膜蒸着方法。
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