JP2002071695A - エイズ関連脳疾患の診断剤、診断方法および診断用キット - Google Patents

エイズ関連脳疾患の診断剤、診断方法および診断用キット

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JP2002071695A
JP2002071695A JP2000262098A JP2000262098A JP2002071695A JP 2002071695 A JP2002071695 A JP 2002071695A JP 2000262098 A JP2000262098 A JP 2000262098A JP 2000262098 A JP2000262098 A JP 2000262098A JP 2002071695 A JP2002071695 A JP 2002071695A
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Hiroshi Kido
博 木戸
Tsutomu Kiyofuji
勉 清藤
Masahiro Maeda
雅弘 前田
Hideki Wakabayashi
英樹 若林
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MENEKI SEIBUTSU KENKYUSHO KK
Immuno Biological Laboratories Co Ltd
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MENEKI SEIBUTSU KENKYUSHO KK
Immuno Biological Laboratories Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 HIV脳症やその日和見感染であるサイトメ
ガロウイルス脳炎による脳の神経細胞破壊等のエイズ関
連脳疾患の診断およびその進行の程度を、早期に的確に
診断することのできる診断剤および診断方法を提供する
こと。 【解決手段】 14−3−3蛋白質のアイソマーγおよ
びアイソマーεを検出する試薬を有効成分として含有す
るエイズ関連脳疾患の診断剤、体液中の上記アイソマ−
を検出するエイズ関連脳疾患の診断方法およびこの診断
方法に利用する診断用キット。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来診断が困難で
あったエイズ関連脳疾患の診断剤および診断方法に関
し、更に詳細には、エイズ脳症やサイトメガロウイルス
(CMV)脳炎による神経細胞障害等のエイズ関連脳疾
患を早期に的確に診断することができ、その程度の判定
や予後の判定或いは治療効果の判定などに有効なエイズ
関連脳疾患の診断剤および診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】HIVは、リンパ球以外に直接神経組織
を標的にするため、感染初期から様々な神経症状を発症
することが知られているが、高度な神経障害は殆どの場
合、感染宿主の免疫系の荒廃に伴って生ずる日和見感染
や悪性腫瘍の併発によって認められる。このような神経
障害の原因となる基質疾患を的確に把握して治療を行う
必要があり、CTやMRIによる画像診断以外に非侵襲
的で治療効果や予後の判定に有用な検査方法の確立が待
たれている。しかしながら現在、エイズ脳症等のエイズ
関連脳疾患に伴う神経細胞の急速な破壊を、早期に的確
に診断する特異性の高い生化学的方法は確立されていな
い。
【0003】ところで、脳に豊富な酸性蛋白質として1
4−3−3蛋白質が最初に記述されたのは1967年で
ある(この命名は古典的な蛋白分離法での分画番号によ
る)。この蛋白質は、神経細胞に局在し、軸策輸送によ
って神経終末に輸送されることが知られていたが、長く
その構造や生理活性は不明であった。しかしその後、C
2+/カルモジュリン依存性蛋白質キナ−ゼIIの活性に
依存してモノアミン生合性を調節する因子であることが
明らかとなった(Ichimura et al., FEBS Lett. 219, 7
9-82, 1987)。
【0004】この14−3−3蛋白質はファミリ−とし
て存在し、その生理活性は種々で、例えばミトコンドリ
アへのチトクロムCをはじめとしたミトコンドリア蛋白
質前駆体の輸送蛋白とされており、また、Bad蛋白質
と結合することによる細胞死(アポト−シス)の抑制物
質として注目されている。更に、本発明者は、14−3
−3蛋白質がその酵素活性として分子シャペロン蛋白質
に共通するシャペロン型ヌクレオシド・ジホスフェート
・キナーゼ(nucleoside diphosphate kinase)活性を
有すことを見出している。
【0005】ヒトやラットなどの動物組織では、14−
3−3蛋白質は現在までに7種類のアイソザイムとその
リン酸化アイソマ−(α〜σ)の構造は決定されている
(蛋白質 核酸 酵素 41, (4), 313-326, 199
6)。
【0006】本発明者は、既にクロイッツフェルト・ヤ
コブ(Creutzfeldt-jakob)病(以下、「CJD」とい
う)患者の脳脊髄液に著名に増加する蛋白質として知ら
れている(Hish, G etal N. Engl. J. Med., 335, 924-
930, 1996)14−3−3蛋白質が、エイズ脳症患者の
脳脊髄液中に増加することを見出し報告している(厚生
科学研究費補助金エイズ対策研究事業<HIV感染症に
関する臨床研究>平成9年、10年研究報告書)。しか
し、知られている14−3−3蛋白アイソマ−のうち、
皮膚のみに存在するσ蛋白質以外のβ、γ、ε、ζ、
η、τは、脳に存在することが推定されるが、実際にど
のアイソマーが存在するかや、エイズ脳症患者の脳脊髄
液中に特異的に出現するのはどのアイソマ−であるか等
については全く知られていない。また、報告されている
14−3−3蛋白アイソマ−を識別しようとしても、各
々のアイソマ−の類似性が高いために、従来知られてい
る抗体は、各アイソマ−に対する特異性が低く、使用に
耐えるものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明は、HI
V脳症やその日和見感染であるCMV脳炎による脳の神
経細胞破壊等のエイズ関連脳疾患の診断およびその進行
の程度を、早期に的確に診断することのできる診断剤お
よび診断方法を提供することをその課題とするものであ
る。
【0008】
【発明を解決すための手段】本発明者は、前記のエイズ
脳症患者の脳脊髄液中に14−3−3蛋白質が増加する
との知見を元に、エイズ脳症患者およびその日和見感染
による脳の神経細胞破壊の程度を診断できる方法につい
て研究を開始した。すなわち、他の疾患や病態により脳
脊髄液中に14−3−3蛋白が増加することもあるの
で、この知見だけではエイズ脳症であるとの診断をする
ことができず、更に、エイズ脳症に特有の現象を見出す
ための研究を行う必要があった。
【0009】このような状況において、本発明者らは、
エイズ脳症患者等のエイズ関連脳疾患患者の産生する1
4−3−3蛋白質中のアイソマ−について、各アイソマ
ーを識別可能な抗体を入手して検討を行った結果、エイ
ズ関連脳疾患患者においては、特定のアイソマーのみが
増加していること、およびこのアイソマーを指標とすれ
ばエイズ関連脳疾患を非侵襲的に診断できることを見出
し、本発明を完成した。
【0010】すなわち本発明の目的は、14−3−3蛋
白質のアイソマーγおよびアイソマーε並びに必要によ
りアイソマーζを検出する試薬を有効成分として含有す
るエイズ関連脳疾患の診断剤を提供することである。
【0011】また本発明の他の目的は、体液中の14−
3−3蛋白質のアイソマ−γおよびアイソマーε並びに
必要によりアイソマーζを検出するエイズ関連脳疾患の
診断方法を提供するものである。
【0012】更に本発明の別の目的は、上記診断方法に
有利に使用されるエイズ関連脳疾患の診断用キットを提
供するものである。
【0013】
【発明の実施の形態】本明細書中においてエイズ関連脳
疾患とは、エイズ脳症や、CMV脳炎等の日和見感染症
による脳の神経細胞破壊をいう。
【0014】本発明においては、検体中に含まれる14
−3−3蛋白質のアイソマ−γおよびアイソマーε、更
に必要によりアイソマーζを検出し、これらアイソマー
の存在およびその量からエイズ関連脳疾患の診断および
これに伴う脳の神経細胞破壊の程度を判断する。当該ア
イソマーの検出には、生体成分中に含まれる蛋白質を測
定するために当業界で用いられる方法を広く利用するこ
とができ、例えば寒天ゲル免疫拡散法、凝集反応法、凝
集阻止反応、対抗免疫電気泳動法、免疫蛍光顕微鏡法、
免疫電子顕微鏡法、放射性免疫測定法及び酵素免疫測定
法などが例示される。
【0015】このような方法のうち、好適なものとして
は、14−3−3蛋白質のアイソマーγ、アイソマーε
またはアイソマーζに、これと特異的に反応する抗体に
結合させ、形成された抗原抗体複合体を検出する免疫測
定が挙げられる。このような各アイソマーと特異的に反
応する抗体の例としては、アイソマ−γ、アイソマーε
およびアイソマ−ζに対するモノクローナル抗体および
ポリクローナル抗体が挙げられる。
【0016】上記のような各アイソマーに対するモノク
ロ−ナル抗体は、例えば、常法に従ってそれぞれのアイ
ソマーで動物を免疫した後、Bリンパ球を取り出し、こ
れとミエロ−マ細胞とを細胞融合してハイブリド−マを
得、これを培養することにより得られる。また、ポリク
ローナル抗体は、各アイソマーをエピト−プペプチドと
してウシサイログロブリンに結合した後、これをウサギ
に免疫することにより得られる。
【0017】モノクローナル抗体やポリクローナル抗体
を得るために利用されるアイソマーとしては、例えば、
クロ−ニングによって、14−3−3蛋白質のアイソマ
ーγ、アイソマーεおよびアイソマーζをコードする遺
伝子を採取し、これをヘキサヒスチジン・タグ(hexahi
stidine tag)で、或いはグルタチオン−S−トランス
フェラーゼ(以下、「GST」という)融合蛋白質とし
て大腸菌に発現させ、各々を精製することにより得られ
る、各アイソマ−に対するリコンビナント蛋白が利用さ
れる。
【0018】本発明方法において、好ましく使用される
14−3−3蛋白質のアイソマーγおよびアイソマーε
に対する特異抗体は、次のエピト−プ抗原ペプチドを用
いて得られたものである。 アイソマ−γ QQDDDGGEGNN アイソマ−ε EQNKEALQDVENQ また、好ましいアイソマ−ζの特異抗体としては、市販
の製品(Santa Cruz SC-1019)を挙げることができる。
【0019】一方、本発明方法の実施において使用され
る検体としては、測定対象となる患者の脳脊髄液、血清
などの血液、リンパ液など14−3−3蛋白質を含む生
体成分であれば特に制約なく利用されるが、脳脊髄液を
用いることが好ましい。
【0020】酵素免疫測定法による本発明の実施は、例
えば、目的とする14−3−3蛋白質のアイソマーの存
在が疑われる検体に所定量の特異抗体を反応させ、つい
でこの特異抗体に結合する標識した二次抗体を加え、イ
ンキュベ−ション後、抗原抗体結合物と未反応の抗原及
び抗体を分離して標識した抗体を検出する試薬を用いる
ことで検体中の14−3−3蛋白質のモノマーの存在お
よびその量を検出することにより行われる。
【0021】より具体的に本発明の実施方法を、検体と
して脳脊髄液を用いる場合を例に取り説明すれば次の通
りである。すなわち、先ず、エイズ患者から血液の混入
のないように注意しながら脳脊髄液採取する。採取した
脳脊髄液の所定量を、例えば15000xg程度で遠心
し、上澄み液を採取する。この上澄み液を、例えば、ラ
エムリ(Laemmli)の方法で電気泳動し、更に、PVD
F膜にエレクトロブロッティング( electro blotting
)する。次に一次抗体として、ヒト14−3−3蛋白
質のアイソマ−γ、アイソマーεおよびアイソマーζに
対する特異抗体(ウサギ抗ヒト14−3−3 β、γお
よびζ)を用い、上記PVDF膜を4℃で一晩処理す
る。最後に、このPVDF膜をペルオキシダ−ゼ(PO
D)標識抗ウサギIgG二次抗体と室温で反応させ、E
CL化学発光検出システム(AmershamPharmacia Biotec
h)を用い、アイソマ−γ、アイソマーεおよびアイソ
マーζの存在をを検出する。
【0022】また、本発明方法によりヒト14−3−3
蛋白質のアイソマ−γ、アイソマーεおよびアイソマー
ζを定量するには、脳脊髄液中の14−3−3アイソマ
−蛋白質をウェスタンブロット法で検出と同時に、上記
した各リコンビナント14−3−3アイソマ−蛋白質
(0.5〜8.6ng)を同様にウェスタンブロットした
後、PODの産物をイメージマスター等で測定すれば良
い。
【0023】なお本発明において、あらかじめ特異抗体
をプレ−トなどに固相化しておき、検体中の14−3−
3蛋白質のアイソマーを反応させた後、更に標識した1
4−3−3蛋白質のアイソマーに対する抗体を反応させ
て測定するすることもできる。これらの測定方法におけ
る手段又は選択は何れも当業者の良く知るところであ
り、本発明においては各手法の何れも採用することがで
きる(「臨床検査法提要」金原出版、1995年など)かか
る免疫測定法の設計は、本発明の分野で通常行われてい
る変更を伴うことができる。
【0024】更に、各測定系における標識剤としても、
特に制限はされず、従来公知のもの又は将来使用されう
る何れをも用いることが、具体的にはH、14C等の
放射性元素、アルカリホスファタ−ゼ、パ−オキシダ−
ゼ等の酵素、フルオレセインイソチオシアネ−ト、テト
ラメチルロ−ダミンイソチオシアネ−ト等の蛍光物質が
例示される。これらを標識剤として使用する免疫測定法
はそれぞれラジオイムノアッサイ、エンザイムイムノア
ッサイ、フルオロイムノアッサイと称されるが、何れを
も用いることができる。
【0025】以上の方法により、検体中の14−3−3
蛋白質のアイソマーγとアイソマーεがほぼ同量で検出
された場合、当該検体の患者はエイズ関連脳疾患患者で
あると判断され(陽性)、また、その量が多い程重篤度
が高いと判断される。更に、エイズ関連脳疾患患者にお
いては、検体中の14−3−3蛋白質のアイソマーζが
アイソマ−γおよびアイソマーεと比べ低い量(十分の
一程度)で検出されるが、この値は AIDS Dementia Com
plex(以下、ADCという)ステ−ジと最も良く相関
し、診断において有用である。
【0026】本発明方法の実施のために用いられる診断
剤としては、14−3−3蛋白質のアイソマーγ、アイ
ソマーεおよび必要によりアイソマーζを検出する試薬
を有効成分として含有する薬剤が挙げられる。
【0027】これらの薬剤は、例えば14−3−3蛋白
質のアイソマーγ、アイソマーεまたはアイソマーζ各
々に対して特異的な抗体を含有するものであり、必要に
より適宜薬学的に許容される担体を組み合わせたもので
ある。
【0028】また、本発明方法を容易に実施するため
に、エイズ関連脳疾患の診断用キットを利用することも
できる。この診断用キットは、例えば次の組合せよりな
るものである。
【0029】次の試薬(a)および(b)の組合せ (a)14−3−3蛋白質のアイソマーγ、アイソマー
ε(および必要によりアイソマーζ)を認識する抗体を
含む試薬 (b)上記(a)に含まれる抗体を認識する標識抗体を
含む試薬
【0030】次の試薬(c)および(d)の組合せ (c)固定化された、14−3−3蛋白質のアイソマー
γ、アイソマーε(および必要によりアイソマーζ)を
認識する抗体を含む試薬 (d)標識された、14−3−3蛋白質のアイソマー
γ、アイソマーε(および必要によりアイソマーζ)を
含む試薬
【0031】
【作用】本発明は、14−3−3蛋白質のアイソマーを
定量することによりエイズ脳症等のエイズ関連脳疾患お
よびこれによる神経細胞の破壊の程度を非侵襲的に診断
できるようにしたものである。すなわち、14−3−3
蛋白質のうち、脳に存在することが推定される β、
γ、ε、ζ、η、τ各々のアイソマ−蛋白質に特異的に
反応する抗体を作成し、エイズの進行度の判断に用いら
れるCD4値との関係、更に脳細胞の破壊に伴って発現
するADCとの関連、及びHIVの進行に伴って発生す
る種々の日和見感染による脳症との関連を調べ、14−
3−3蛋白質のアイソマーのうち、γ、ε及びζが中枢
神経症状を伴うエイズ患者の脳脊髄液中に特異的に出現
することを見出したものである。従って、これらアイソ
マーの存在とその濃度を測定することでエイズ関連脳疾
患とこれに伴う神経細胞の破壊の程度が診断され、神経
細胞の破壊を伴う他の疾患、例えばCJDやヘルペス脳
炎との鑑別診断を可能としたものである。
【0032】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明を更に詳細に説
明する。
【0033】実 施 例 1 14−3−3蛋白質のアイソマ−に対する抗体の調製:
先ず、エイズ脳症患者の脊髄液中の14−3−3アイソ
マ−蛋白質のうち、β、γ、ε、ζ、η、τ各々のアイ
ソマ−蛋白質に対する抗体を入手し、これを用いて免疫
測定法を確立した。
【0034】すなわち、クロ−ニングによって得られた
14−3−3蛋白質のβ、γ、ε、ζ、η、τアイソマ
−蛋白の遺伝子をヘキサヒスチジン・タグで、或いはG
ST融合蛋白質として大腸菌に発現させ、各々を精製し
て抗原を得た。これらの各アイソマ−に対するリコンビ
ナント蛋白を抗原として、ウサギに投与し、ポリクロ−
ナル抗体の作成を行った。特にβ、γ、ε、ηの各特異
的な抗体の作成は、次のような各々のエピト−プ抗原ペ
プチドを用いることにより成功した。
【0035】 アイソマ−β MTMDKSELVQ アイソマ−γ QQDDDGGEGNN アイソマ−ε EQNKEALQDVENQ アイソマ−η MGDREQLLQR アイソマ−τの特異抗体は、リコンビナント蛋白質に対
するモノクロ−ナル抗体を作成し、特異的アイソマ−の
測定を可能にした。これらの各ポリ・モノクローナル抗
体の特異性を図1に示す。また、アイソマ−ζの特異抗
体としては市販品(SantaCruz SC-1019)を用いた。
【0036】実 施 例 2 免疫測定試験: (1)対象 国立国際医療センタ−で取り扱ったHIV患者23例か
ら採取した血液と脳脊髄液各23検体を対象とした。H
IV患者は23例でそのうち、エイズ脳症と診断された
者は4例、HIV日和見感染としてCMV脳炎と診断さ
れた者が6例、その他ウイルス性髄膜炎を診断された者
が3例、クリプトコッカス髄膜炎と診断された者6例、
及び中枢神経症状を伴わないHIV感染者4例からな
る。
【0037】(2)14−3−3蛋白質アイソマーの検
出法 血液の混入のない脳脊髄液脳脊髄液20μlを1500
0×gで10分間遠心した上澄みをラエムリ(Laemml
i)の方法で電気泳動した後に、PVDF膜にエレクト
ロ・ブロッティングした。次にこのPVDF膜を、実施
例1のヒト14−3−3蛋白質アイソマ−に対する特異
抗体(ウサギ抗ヒト14−3−3 β、γ、ε、ζ、
η)と、各アイソマ−に共通して反応するウサギ抗ヒト
14−3−3ユニバ−サル抗体( Sannta Cruz SC-629
)を一次抗体として4℃で一晩処理した後、ペルオキ
シダ−ゼ(POD)標識抗ウサギIgG二次抗体と室温
で反応させ、ECL化学発光検出システム( Amersham
Pharmacia Biotech )を用いて検出した。なお、ウェス
タンブロット法での脳脊髄液中の14−3−3アイソマ
−蛋白質の定量には、検出と同時に各リコンビナント1
4−3−3アイソマ−蛋白質(0.5〜8.5ng)を同様
にウェスタンブロットした後、PODの産物をイメージ
・マスターで測定して定量した。
【0038】
【表1】
【0039】(3)結果 表1に今回対象としたHIV感染者を、中枢神経症状を
伴う群と伴わない群の2群に分け、中枢神経症状を伴う
群では更に、エイズ脳症(HIV脳炎)と診断された群
と、日和見感染としてCMV脳炎、クリプトコッカス髄
膜炎及びその他のウイルス性髄膜炎(PML、VZV
E)を伴うと診断された5群に分け、合計6群に分類し
たときの脳脊髄液中の14−3−3蛋白質の各アイソマ
−の定量値と、HIV−RNA値、ADCステ−ジ及び
患者末梢血中のCD4値を示した。脳脊髄液中の14−
3−3アイソマ−パタ−ンの解析は、すべてのアイソマ
−を検出することのできるユニバ−サル抗体による検定
が陽性となった検体のみを更に各々の特異抗体で検定し
ている。したがって、ユニバ−サル抗体での検出が陰性
の検体では、何れのアイソマ−の出現も認められていな
い。
【0040】表1から明らかなように、HIV患者の脳
脊髄液中には、γとεタイプの14−3−3蛋白質が多
量に出現し、更に微量ではあるがζタイプの14−3−
3蛋白質も出現する。尚、調べた限りにおいて正常人あ
るいは各種髄膜炎患者とHIV感染者でも中枢神経症状
のない患者では、14−3−3蛋白質は殆ど検出されな
かった。
【0041】また、これらのデ−タを基に、ADCステ
−ジと脳脊髄液中に認められた14−3−3蛋白質γ、
ε、ζアイソマ−との相関関係を検討すると、図2に示
すようにγ、ε、ζアイソマ−は何れもADCステ−ジ
が上昇するにつれて、脳脊髄液中の値が増加しており、
相関関係の指標となるP値は、各々γタイプで0.00
10、εタイプで0.0019、ζタイプで0.0001
以下を示し、明らかに相関関係が認められた。脳脊髄液
ではγとεタイプ出現量が最も多く、高感度に検出でき
る患者アイソマ−であることと、ζタイプのアイソマ−
はγやεに比較して十分の一程度しか出現しないが、一
方でADCステ−ジと最も良く相関することが明らかに
なった。
【0042】更に、末梢血中のCD4値は、HIVの進
行度とともに減少するが、図3から明らかなように14
−3−3蛋白質のγ、ε、ζアイソマ−は、各々CD4
値が20cells/μl以下のときに高頻度に出現する
が、CD4値が20cells/μl以上の値では、脳脊髄
液中の14−3−3蛋白質の上昇は全く認められていな
い。また、脳脊髄液中の14−3−3蛋白質とCD4値
との相関関係が認められなかった。
【0043】ヒトの脳内の14−3−3蛋白質は、特に
神経細胞に多量に発現しているので、以上の事実は、H
IV脳症及びCMV脳炎により脳の神経細胞が障害され
た時に、脳脊髄液中に放出される14−3−3蛋白質量
が増加したためか、或いは神経細胞の障害時にアポト−
シス制御因子として反応性に発現が増加し、放出が生じ
たためと推定される。いずれにしても、CD4値が高度
に減少して、免疫不全が進行するとともに、脳脊髄液中
の14−3−3蛋白質が出現し、その量は中枢神経症状
の強さに相関していることが明らかとなった。
【0044】一方表1に示す通り、脳脊髄液中のHIV
−RNA値と14−3−3蛋白質の間には、明らかな相
関関係が認められなかった。又、HIV−RNA値と中
枢神経症状の程度を示すADCステ−ジとの間、及びH
IV−RNA値と末梢血CD4値との間にも明らかな相
関関係は認められなかった。以上のことより、脳脊髄液
中のHIV−RNA量は、神経細胞の破壊の程度を必ず
しも反映していないことが示唆された。
【0045】なお、4例のCJD患者の脳脊髄液では、
14−3−3蛋白質のγタイプのアイソマ−が優位に出
現しており、ごく僅かにεタイプの14−3−3蛋白質
が認められる。更に、ウイルトファング(Wiltfang)等
の報告によるとCJD患者ではβ、γ、ε、ηアイソマ
−が多量に、ヘルペス脳炎ではηアイソマ−が脳脊髄液
中に検出されると報告している(J.Neurochem 71、2485
-2490、1999)。このことから、HIV患者とCJD患
者及びヘルペス脳炎患者との脳脊髄液中に出現する14
−3−3アイソマ−蛋白質のパタ−ンに違いがあり、脳
脊髄液中の14−3−3アイソマ−パタ−ンによりこれ
ら疾患の鑑別診断が可能となる。
【0046】
【発明の効果】従来、エイズ脳症等エイズ関連脳疾患の
診断には、MRI、CT等の画像診断、脳生検或いはイ
ンタ−フェロン−α、ネオプテリン、キノリン酸、β2
−ミクログロブリン、TNF−α等が生化学的測定法と
して用いられてきたが、これ等の検査はいずれも特異性
が低く、しかも神経細胞破壊の程度を直接示す方法では
なかった。
【0047】これに対し、本発明によれば、エイズ関連
脳疾患とこれに伴う神経細胞の破壊の程度が高い精度で
診断され、神経細胞の破壊を伴う他の疾患、例えばCJ
Dやヘルペス脳炎との鑑別診断を可能とするものであ
り、エイズ患者の処置、治療等において有用なものであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各14−3−3蛋白質アイソマ−を認識する
特異抗体。6種の14−3−3蛋白質アイソマ−(抗原
10ng)に対して本発明者が作成した特異抗体(A)
と市販されているサンタ・クルツ( Santa Cruz )の特
異抗体(B)の特異性を示す。市販の抗体に比べて、発
明者が作成したβ、γ、ε、η、τ抗体では著しく特異
性の増した抗体が得られている。
【図2】 HIV患者の脳脊髄液中の14−3−3蛋白
質アイソマ−とADCステ−ジとの相関関係の重回帰分
析の結果を示す図面。
【図3】 HIV患者の脳脊髄液中の14−3−3蛋白
質アイソマ−と末梢血CD4値との相関関係の重回帰分
析の結果を示す図面。 以 上
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 前田 雅弘 群馬県佐波郡玉村町2104番地8 (72)発明者 若林 英樹 徳島県徳島市南佐古八番町2番地9の303

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 14−3−3蛋白質のアイソマーγおよ
    びアイソマーεを検出する試薬を有効成分として含有す
    るエイズ関連脳疾患の診断剤。
  2. 【請求項2】 更に14−3−3蛋白質のアイソマーζ
    を検出する試薬を有効成分として含有する請求項第1項
    記載のエイズ関連脳疾患の診断剤。
  3. 【請求項3】 14−3−3蛋白質のアイソマーγ、ア
    イソマーεまたはアイソマーζを検出する試薬が、14
    −3−3蛋白質のアイソマ−γ、ε又はζを特異的に認
    識する抗体である請求項第1項または第2項に記載のエ
    イズ関連脳疾患の診断剤。
  4. 【請求項4】 検体として脳脊髄液を用いるものである
    請求項第1項ないし第3項の何れかの項記載のエイズ関
    連脳疾患の診断剤。
  5. 【請求項5】 エイズ関連脳疾患がエイズ脳症またはエ
    イズ患者における日和見感染症による脳の神経細胞破壊
    である請求項第1項記載のエイズ関連脳疾患の診断剤。
  6. 【請求項6】 体液中の14−3−3蛋白質のアイソマ
    −γおよびεを検出することを特徴とするエイズ関連脳
    疾患の診断方法。
  7. 【請求項7】 更に14−3−3蛋白質のアイソマーζ
    を検出する請求項第6項記載のエイズ関連脳疾患の診断
    方法。
  8. 【請求項8】 14−3−3蛋白質のアイソマ−γ、ε
    およびζを認識する抗体を使用する請求第6項または第
    7項記載のエイズ関連脳疾患の診断方法。
  9. 【請求項9】 体液が脳脊髄液であるクレ−ム第6項な
    いし第8項の何れかの項に記載のエイズ関連脳疾患の診
    断方法
  10. 【請求項10】 14−3−3蛋白質のアイソマ−γと
    εをほぼ同量検出することにより陽性と診断する請求項
    第6項、第8項または第9項記載のエイズ関連脳疾患の
    診断方法。
  11. 【請求項11】 14−3−3蛋白質のアイソマ−γと
    εが同程度検出され且つζがそれらに比べて低いことに
    より陽性と診断する請求項第6項ないし第9項の何れか
    の項に記載のエイズ関連脳疾患の診断方法。
  12. 【請求項12】 脳脊髄液中の14−3−3蛋白質のア
    イソマ−γ、εおよびζを検出し、その量からエイズ関
    連脳疾患の重篤度を判断する請求項第5項ないし第10
    項の何れかの項記載のエイズ関連脳疾患の診断方法。
  13. 【請求項13】 エイズ関連脳疾患がエイズ脳症または
    エイズ患者における日和見感染症による脳の神経細胞破
    壊である請求項第6項または第7項記載のエイズ関連脳
    疾患の診断方法。
  14. 【請求項14】 次の試薬(a)および(b)、 (a)14−3−3蛋白質のアイソマーγ、アイソマー
    ε(および必要によりアイソマーζ)を認識する抗体を
    含む試薬 (b)上記(a)に含まれる抗体を認識する標識抗体を
    含む試薬を含有するエイズ関連脳疾患の診断用キット。
  15. 【請求項15】 次の試薬(c)および(d)、 (c)固定化された、14−3−3蛋白質のアイソマー
    γ、アイソマーε(および必要によりアイソマーζ)を
    認識する抗体を含む試薬 (d)標識された、14−3−3蛋白質のアイソマー
    γ、アイソマーε(および必要によりアイソマーζ)を
    含む試薬 を含有するエイズ関連脳疾患の診断用キット。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005100992A1 (ja) * 2004-04-01 2005-10-27 National University Corporation Chiba University 脳機能障害性疾患の検査方法、それに用いるタンパク質マーカ、診断薬および診断キット
JP2009536318A (ja) * 2006-05-09 2009-10-08 ザ ユニバーシティ オブ ブリティッシュ コロンビア 溶解したタンパク質関節炎マーカー
JP2013513103A (ja) * 2009-12-04 2013-04-18 ランドックス ラボラトリーズ リミテッド アルツハイマー病の診断法
JP2013101047A (ja) * 2011-11-08 2013-05-23 Nagasaki Univ 14−3−3蛋白γアイソフォーム特異的ELISA

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