JP2002061686A - ディスクブレーキ装置 - Google Patents

ディスクブレーキ装置

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JP2002061686A
JP2002061686A JP2000247762A JP2000247762A JP2002061686A JP 2002061686 A JP2002061686 A JP 2002061686A JP 2000247762 A JP2000247762 A JP 2000247762A JP 2000247762 A JP2000247762 A JP 2000247762A JP 2002061686 A JP2002061686 A JP 2002061686A
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disk
brake
aluminum alloy
layer
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JP2000247762A
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Hirotaka Kurita
洋敬 栗田
Yutaka Yamagata
裕 山縣
Toshikatsu Koike
俊勝 小池
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Yamaha Motor Co Ltd
Original Assignee
Yamaha Motor Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルミニウム合金製のブレーキディスクの摩
擦係数及び耐摩耗性の両立を図ることができるブレーキ
ディスク装置を提供する。 【解決手段】 アルミニウム合金からなるディスク本体
10の表面に摩擦面となる硬化層14を形成してなるブ
レーキディスクと上記硬化層14を挟圧するブレーキパ
ッド8とを備えたディスクブレーキ装置1において、上
記ブレーキパッド8は移着系パッドで構成され、上記硬
化層14には網目状クラック14aが形成されており、
さらに使用に伴って該硬化層14を覆うようにブレーキ
パッド8の一部が移着してなる移着層15が形成されて
おり、さらに該移着層15の一部が上記クラック内部に
進入している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、摩擦面となる硬化
層が形成されたディスク本体と、上記硬化層を挟圧する
ブレーキパッドとを備えたディスクブレーキ装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、ブレーキディスクをブレーキ
パッドで挟圧するようにしたディスクブレーキ装置があ
る。この種のディスクブレーキ装置では、ブレーキディ
スクとして例えば鋳鉄製,SUS製,又はアルミニウム
合金製のものが採用され、またブレーキパットとしてメ
タル系パッド,樹脂系パッド等が採用されている。
【0003】
【発明が解決すようとする課題】上記アルミニウム合金
製のブレーキディスクを採用した場合は、軽量化を図る
上で有効であるものの、ブレーキディスクの摩擦係数を
確保しつつ耐摩耗性を確保するのは困難であった。
【0004】本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなさ
れたもので、アルミニウム合金製のブレーキディスクの
摩擦係数及び耐摩耗性の両立を図ることができるブレー
キディスク装置を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、アル
ミニウム合金からなるディスク本体の表面に摩擦面とな
る硬化層を形成してなるブレーキディスクと上記硬化層
を挟圧するブレーキパッドとを備えたディスクブレーキ
装置において、上記ブレーキパッドは移着系パッドで構
成され、上記硬化層には網目状クラックが形成されてお
り、さらに使用に伴って該硬化層を覆うようにブレーキ
パッドの一部が移着してなる移着層が形成されており、
さらに該移着層の一部が上記クラック内部に進入してい
ることを特徴としている。
【0006】
【発明の作用効果】請求項1の発明によれば、ブレーキ
パッドを移着系パッドとし、制動に伴ってブレーキパッ
ドの一部が移着してなる移着層が硬化層を覆うようにし
たので、該移着層が硬化層を保護することから該硬化層
ひいてはディスク本体の摩耗を抑制することができ、デ
ィスク本体の寿命を延長できる。
【0007】また、上記硬化層には網目状のクラックが
形成されており、さらに該クラック内に移着層の一部が
進入して付着しており、その結果移着層が硬化層に強固
に固着され、この点からも硬化層ひいてはディスク本体
の摩耗を抑制でき、ディスク本体の寿命を延長できる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下本発明の実施の形態を添付図
面に沿って説明する。
【0009】図1〜図7は本発明の一実施形態に係るデ
ィスクブレーキ装置を説明するための図であり、図1,
図2はディスクブレーキ装置の正面図,、断面側面図、
図3は製造工程図、図4〜7は硬化層及び移着層の微細
構造を説明するための模式図である。
【0010】図において、1は自動二輪車の前輪用のデ
ィスクブレーキ装置である。これは前輪のハブにキー結
合されるボス部材2と、該ボス部材2に一体形成された
フランジ部2aにリベット3のカシメ加工により固定さ
れたブレーキディスク4と、該ブレーキディスク4を挟
持して制動力を発生させるキャリパ5とを備えている。
【0011】上記キャリパ5は、対向2ピストンタイプ
のもので、以下の構造を有する。結合ボルト6c,6c
により一体的に結合された内側,外側シリンダ6a,6
bのピストン穴内にピストン7,7が互いに対向させて
かつ進退可能に挿入配置されている。またブレーキパッ
ド8,8が上記ブレーキディスク4を挟持するように配
置され、該各ブレーキパッド8,8が固定された保持板
8a,8aは上記前側,後側シリンダ6a,6bに架け
渡されたガイドピン8cにより移動可能に支持されてい
る。そして上記保持板8aの背面に上記ピストンの先端
面が当接している。なお上記外側シリンダ6bのブラケ
ット部6eが取付ボルト6dによりフロントフォークに
固定される。
【0012】油圧ホース12を介して油圧がシリンダ6
a,6bのピストン穴とピストン7で囲まれた油圧室a
に供給されると、ピストン7が前進し、ブレーキパッド
8,8が上記ブレーキディスク4を挟圧し、これにより
制動力が発生する。
【0013】ここで上記各ブレーキパッド8は、後述す
るディスク本体10の硬化層14を構成する金属材料や
セラミックや、あるいは金属にセラミックを分散させた
ものよりも硬度の低い材料によって形成されている。こ
のようにブレーキパッド8の硬度を比較的低く設定する
ことで制動時の摩擦で上記硬化層14が摩耗するのを防
止することができる。
【0014】ここで上記ブレーキパッド8の材料として
は、本ディスクブレーキ装置による制動に伴って、該ブ
レーキパッド8の一部がディスク本体10の硬化層14
の表面に移動して固着するいわゆる移着性のもの、例え
ば表1,表2に示された材料からなる合成樹脂系のもの
が採用される。後述するように上記ブレーキパッドの移
着によって硬化層14の表面に移着層15が形成され
る。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】上記ディスクプレート4はフローティング
タイプのもので、アルミニウム合金鋳造品からなる上記
ボス部2のフランジ部2aに固定された環状のベースプ
レート9と、該ベースプレート9の外周を囲みかつ同一
平面をなすように配置された環状のディスク本体10と
を6本の連結ピン11で連結した構造のものである。
【0018】上記ベースプレート9の外周とディスク本
体10の内周との間には僅かな隙間が設けられており、
またこの境界部に形成された連結穴に上記連結ピン11
が挿入配置されている。この連結ピン11は一端に係止
用フランジ11aを有し、他端にワッシャ11bを介在
させて止輪11cで抜け止めがされている。このように
して、上記ディスク本体10はベースプレート9に対し
て、周方向及び軸方向に僅かに相対移動可能になってい
る。これによりディスク本体10が熱等により変形した
場合でも上記キャリパ5により該ディスク本体10を確
実に挟圧して制動力を発生させることができる。
【0019】ここで上記ベースプレート9及びディスク
本体10は、アルミニウム合金粉末を鍛造成形したもの
である。このディスク本体10は詳細には以下の工程を
経て製造されたものである。なお、ベースプレート9も
ディスク本体10と同様の工程で製造されるが、このベ
ースプレート9には硬化層は形成されない。
【0020】表3(a),(b)に示す成分を有するア
ルミニウム合金インゴットを溶融し、このアルミニウム
合金溶湯からスプレーフォーミング法により、円柱状の
塊状素材w1を作成する(図3(a)参照)。
【0021】
【表3】
【0022】アルミニウム合金の溶湯中に、粉末粒子の
平均粒径が0.1〜50μmの炭化シリコン、酸化アル
ミニウム、窒化アルミニウムの何れか単独あるいは複数
を組み合わせた硬質成分粉末を10重量%以下分散含有
させるようにしても良い。この硬質成分粉末の分散含有
量を調整することにより、後工程を経て形成されるディ
スク本体10の剛性、強度、靭性を向上させることがで
きる。この場合、後工程において形成されるアルミニウ
ム合金粒子の平均粒子径を硬質成分粒子の平均粒径より
大きくなるようにする。
【0023】上記スプレーフォーミング法は、より詳細
には、溶解したアルミニウム合金を窒素ガスの雰囲気中
でノズルから所定半径の標的に向けて噴霧状に噴射さ
せ、生成されるアルミニウム合金の噴霧滴を冷気あるい
は常温窒素ガス中を通過させることにより途中で冷却さ
せて半凝固状とし、この半凝固状態のアルミニウム合金
の噴霧滴を所定直径の略円柱状に積み上げる方法であ
る。
【0024】なお、噴霧状に噴射する空間の雰囲気及び
噴霧滴を冷却凝固化させる空間の雰囲気を、常温空気あ
るいは冷却空気、あるいはアルゴンガスとしても良い。
また噴射する空間の雰囲気と、噴霧滴を冷却凝固化させ
る空間の雰囲気を変えて、例えば窒素ガスあるいはアル
ゴンガス中に噴射した後空気の割合の大きい雰囲気中を
通過させて冷却するようにしても良い。噴霧滴の大きさ
は噴射圧力や噴射ノズル径、溶湯温度等により変化させ
ることができ、噴霧滴が凝固して形成されるアルミニウ
ム合金粒子の平均粒子径は0.1〜500μmとなるよ
うにする。また、溶湯温度、噴霧滴を冷却凝固化させる
空間の雰囲気特に温度、及び噴霧滴の飛翔距離を変化さ
せることにより、アルミニウム合金粒子中のアルミニウ
ム合金結晶粒の平均粒径は0.005〜10μmとなる
ようにする。
【0025】上記塊状素材w1をシリンダ状の金型13
a内に入れて冷却し、あるいはアルミニウム合金が再び
溶融しない所望の温度で加熱した状態で、ピストン13
bで押し出す冷間あるいは熱間(溶融温度より低い温度
における)の押出成形により、棒状の素材w2を作成
し、該棒状素材w2を上記ディスク本体10に対応した
長さに切断して鍛造前素材w3を作成する(図3
(b),(c)参照)。この鍛造前素材w3は、上記デ
ィスク本体10に比較して小径でかつ軸方向に長い棒状
をなしている。
【0026】なお、図3において半凝固状態で略円柱状
に積み上げることなく、完全に凝固させて平均粒子径が
0.1〜500μmのアルミニウム合金粉末とし、この
粉末をそのまま、あるいは平均粒径が0.1〜50μm
の炭化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム
の何れか単独あるいは複数を組み合わせた硬質成分粉末
を10重量%以下分散含有させたものを、純アルミある
いはアルミニウム合金製の薄肉円筒容器に充填して円柱
状の塊状素材w1の替わりとしても良い。このアルミニ
ウム合金粉末を充填した薄肉円筒容器を使って図3
(b)に示す押出成形を実施し、棒状の素材w2を作成
させるようにする。
【0027】上記鍛造前素材w3を鍛造により軸方向に
圧縮しつつ外径を徐々に大きくしていき、上記ディスク
本体10に対応した所要の厚さ,径を有する鍛造品w4
を製造する(図3(d)参照)。そしてこの鍛造品w4
に所要の仕上げ機械加工を施すことにより上記ディスク
本体10又はベースプレート9に仕上げる(図3(e)
参照)。
【0028】上述の工程を経て製造された上記ディスク
本体10及びベースプレート9は、その中心部から外周
側に放射状に延びる無数の鍛流線aを有する。これは、
上記鍛造工程において、小径の鍛造前素材w3を軸方向
に圧縮して径方向に拡げることで鍛造品w4を製造した
ことにより生成されたものである。そしてこの鍛造品w
4の外表面を微視的に観察すると、該鍛造品w4を構成
する各粒子pは該鍛造品w4の中心から外周側に向けて
放射状に延びる長円状をなしており、かつ長円状の多数
の粒子pは概ね1本の線を構成しており、この粒子pを
連ねた線が上述の鍛流線aとなっている。
【0029】ここで上記各粒子pの粒形係数fを、 f=L/W≧1.5 (L:粒子pの長径、W:粒子pの短径)とするのが望
ましい。なお、粒子pの平均粒子径Dは0.1〜500
μm程度のものであり、鍛造後の粒子形状が楕円体にな
るとすると、鋳造により粒子容積はほとんど変化しない
ので、鍛造前粒子容積=(π/6)×D3=鍛造後粒子
容積=(π/6)×L×W2が成立する。粒子係数が
1.5となる場合、L=1.31Dとなるので、長径L
=0.13〜655μm , 短径W=0.087〜43
7μm程度となる。また、溶湯温度、噴霧滴を冷却凝固
化させる空間の雰囲気、特に温度、及び噴霧滴の飛翔距
離を変化させることにより、アルミニウム合金粒子中の
アルミニウム合金結晶粒の平均粒径は0.005〜10
μmとなるようにする。
【0030】そしてディスク本体10の表裏外表面に、
上記ブレーキパット8が圧接されることで制動力を発生
するための摩擦面となる環状の硬化層14が電気めっき
又溶射により形成される。この硬化層14の形成に当た
っては、まず、上記仕上げ加工済のディスク本体10の
外表面にショットピーニング又はアルカリエッチッング
を施す(図5(a),(b)参照)。これにより上記硬
度の高い鍛流線aの周囲の比較的硬度の低い部分bが選
択的に除去され、鍛流線aが浮き出た状態となる。
【0031】この後、溶射又は電解めっきによりディス
ク本体10の表裏に硬化層14を形成する(図5(c)
参照)。その結果、硬化層14と上記ディスク本体10
との境界には、外表面の浮き出た鍛流線a及びその周囲
の部分bの存在による凹凸が形成されており、該凹凸に
上記硬化層14が係止した状態となっている。
【0032】ここで上記電気めっき処理は以下の要領で
行われる。まず、脱脂,酸洗い,アルカリエッチング,
酸活性化,亜鉛置換,硝酸浸漬,等からなる一般的な前
処理を行い、電気めっきを行う。この電気めっきは、め
っき液内にディスク本体10を陰極として陽極とともに
浸漬し、これらに直流電源を供給することにより行われ
る。めっき液に含有させるイオンとして、Feイオン、
Crイオン、Niイオンを単独あるいはこれらを複数含
有させることにより、上記硬化層14を、Fe,Fe−
Cr合金,Cr,Ni,等の耐摩耗性の高い金属で形成
することができ、電流量を調整することにより概ね20
μm あるいはそれ以上の厚さに形成する。
【0033】なお、メッキ液中に微細な炭化シリコン、
酸化アルミニウム、窒化アルミニウムの何れか単独ある
いは複数を組み合わせた硬質成分粉末を分散させ、分散
メッキとしても良い。これにより、硬化層14の表面硬
度をさらに上昇させることが可能となる。
【0034】溶射の場合には、図5(b)で示すように
ショットピーニング又はアルカリエッチングを施した
後、図6に示すように溶射粉末としてFe,Cr,Ni
を単独あるいはこれらを複数含有させたものをノズル部
に供給し、電流により15,000℃の極めて高温の溶
湯とし、アルゴン+ヘリウムからなる作動ガスでノズル
から高速で噴霧して、液体微粒子の状態でディスク本体
14の表面に吹き付け、液体微粒子を偏平粒子の状態で
積層凝固させて皮膜状の硬化層14を形成する。溶融温
度は極めて高いので、金属粉末に炭化シリコン、酸化ア
ルミニウム、窒化アルミニウムの何れか単独あるいは複
数を組み合わせた硬質成分粉末を混合したものを、ある
いは硬質成分粉末のみをノズル部に供給しても良い。
【0035】また上記電解めっき処理において、厚みが
少なくとも10μm より厚くなるように硬化層14を形
成することにより、特別な前,後処理を施すことなく硬
化層14にクラック14aが発生する。このクラック1
4aは、めっき層の膜厚が10μm 程度であると図8に
示すように該クラック14aに内接する円の直径dが大
きなものでも約1.5mm程度となる。これは硬化層(め
っき層)14に縮まろうとする内部応力が発生している
からであり、膜厚が増加するとこの内部応力によってめ
っき面に網目状のクラックが発生する。
【0036】なお、クラックの発生が十分でない場合に
は、ディスク本体10を構成するアルミニウム合金の融
点より低い温度まで加熱する加熱処理、あるいはさらに
急冷処理を施し、強制的にめっき層に内接円の直径dが
大きなものでも約1.5mm程度のクラック14aを発
生させる。
【0037】さらにまた上記表裏の硬化層14の外表面
にはそれぞれ移着層15が形成されている。この移着層
15は、制動動作時にブレーキパッド8の表面が削り取
られて上記ディスク本体10の硬化層14の外表面に付
着してできたものであり、概ね1〜5μm の層厚を有す
る。その結果上記ディスク本体10の上記硬化層14を
含む厚さは使用開始時に較べて2〜20μm 厚くなって
いる。なお、上記移着層15は概ね5μm 程度以上にな
ると自然に脱落し、それ以上成長することはほとんどな
い。
【0038】ここで図7に示すように、上記移着層15
の一部は進入部15aとなって上記硬化層14のクラッ
ク14a内に進入して付着している。この進入部15a
は移着層15を硬化層14の外表面に安定的に固着させ
る錨として機能している。
【0039】以上のように本実施形態では、鍛流線aを
浮き出させたので、硬化層14の固着面積が増加し、そ
れだけ硬化層14の固着強度が向上する。また上記浮き
出た鍛流線aが硬化層14に周方向に作用するブレーキ
力fと直交する方向に延びていることから、該鍛流線a
が硬化層14に対する係止部材として機能することとな
り、この点からも硬化層14の接着力が高まり、その結
果、硬化層の剥離といった問題を防止できる。
【0040】なお、硬化層14とディスク本体との間の
熱伝達面積が増大するので、制動時に発生する摩擦熱に
よって硬化層14の表面が加熱されても、ディスク本体
14への放熱量が増加し、結果として硬化層14とディ
スク本体14との温度差が少なくなり、熱膨張量の差も
少なくなり、この点からも硬化層14の剥離防止に寄与
できる。
【0041】また制動時には、ブレーキパッド8と上記
硬化層14との間の摩擦により熱が発生する。この熱の
一部はブレーキディスク4内を中心側に移動して前輪の
ハブやブラケットから大気に放出されるのであるが、本
実施形態のブレーキディスク4では、これを構成してい
る粒子pがブレーキディスクの径方向に長い長円状をな
しているので、熱を効率良くハブ側に移動させることが
できる。
【0042】即ち、本実施形態の粒子pは長円状をなし
ているので、図4(b)に示すように、単位長さtで見
た場合の粒界sの数が、球状粒子p′では5であるのに
対し長円状粒子pでは2と少ない。この粒界sは熱伝導
性の悪い酸化皮膜po で覆われており、従って粒界sの
数が多いほど熱がハブ側に伝わり難い。本実施形態では
球状粒子p′の場合に比較して粒界sの数が少ないので
それだけ熱伝導性が良好となる。
【0043】なお、制動時に発生する摩擦熱が硬化層1
4からディスク本体14へ放熱されても、ディスク本体
14からハブ等への放熱が十分でない場合には、ディス
ク本体14の温度が上昇して強度が低下し、硬化層14
からの制動力でディスク本体14の硬化層14支持部が
破壊したり、塑性変形する可能性がある。しかしながら
本実施形態においては、ディスク本体14からハブ等へ
の放熱が十分とすることができるので、安定した制動力
を確保できる。さらに、ブレーキディスクの熱容量を小
さくしても温度上昇しにくいので、ブレーキディスクの
肉厚を小さくして軽量化を図ることもできる。
【0044】ここで上記押出成形工程,又は鍛造工程に
おいて、上記塊状素材w1又は鍛造前素材w3を制動時
におけるディスク本体の最高温度より若干高い温度、具
体的には例えば500℃以上に保持した状態で押出成形
又は鍛造を行うことが望ましい。
【0045】これによりアルミニウム合金中に固溶して
いる水素に起因する硬化層14のブリスター(膨出)を
防止でき、硬化層の剥離を防止することができる。即
ち、アルミニウム合金は溶湯状態で空気中の水蒸気を吸
収し易い性質があり、この吸収された水分が溶融アルミ
ニウム合金と反応し、Al23 とH(原子状水素)が
発生する。固体状態ではポロシティー(気泡)となり存
在する。通常ポロシティーは、熱間加工により圧着され
ている。しかし制動時の昇温によりポロシティーが再形
成され、硬化層14を内部から膨らませるいわゆるブリ
スターを発生し、その結果硬化層の剥離の原因となる。
【0046】本実施形態では上記制動時にディスク本体
が達する温度より高く、且つ、溶融温度よりは低い温度
で押出成形又は鍛造成形を行うことにより、上記水素を
強制的に外部に排出してディスク本体10内の水素を予
め減量でき、そのため制動時に昇温しても水素が外部に
出て来るといった現象を防止でき、その結果硬化層の剥
離を防止できる。なお、上記機械加工の前に上記鍛造品
かw4を上記温度に加熱することによってもある程度の
水素排出効果が得られる。
【0047】また本実施形態では、アルミニウム合金製
ディスク本体10の外表面に例えばFe−Cr合金から
なる硬化層14を形成し、ブレーキパッド8として樹脂
製の移着系のものを採用したので、制動動作により硬化
層14の外表面に移着層15が形成されている。即ち、
この移着層15により硬化層14が保護されており、そ
のためディスク本体10と特に摩擦面となる硬化層14
の摩耗を抑制できるとともに、ディスク本体10とブレ
ーキパッド8との間の摩擦係数を大きな値に保持でき
る。
【0048】また硬化層14に網目状のクラック14a
を形成し、移着層15の進入部15aがクラック14a
内に進入して付着するようにしたので、該進入部15a
が錨として機能し、移着層15が強固にディスク表面に
固着し、この点からも確実にディスク表面の摩耗を抑制
できるとともに、高い摩擦係数を保持できる。
【0049】以下本発明の作用効果を確認するために行
った実験結果について説明する。本実験では、表4に示
す成分系のアルミニウム合金を用いて、図13に示す工
程を経て本発明例のディスク本体を製造し、表1,表2
に示す材料からなるブレーキパッド8を採用し、制動回
数とディスク本体の摩耗量,パッドの摩耗量の関係,及
び摩擦係数について計測した。また従来のSUSディス
クとメタルパッドとの組合せ,アルミニウム合金製ディ
スクとメタルパッドとの組合せからなる比較例について
も同様に計測した。
【0050】
【表4】
【0051】まず、上述のスプレーフォーミング法によ
り、アルミニウム合金粒が固まった状態の例えば直径2
50mmの円柱(塊状素材)を作成する(ステップS
1)。
【0052】続いて上記アルミニウム合金粒円柱を切断
して例えば厚さ50mmの円盤(鍛造素材)を作成し(ス
テップS2)、該円盤をプリ鍛造により例えば厚さ30
mmに圧縮するとともに中心に穴を形成して密度を上げた
ドーナツ状の円盤(ビュレット)を作成する(ステップ
S3)。
【0053】上記ビュレットを鍛造により表面硬度がH
RB(ロックウェルBスケール)=55〜88で厚さが
15mmのドーナツ状円盤(鍛造品)とする(ステップS
4)。このドーナツ状円盤に、T6処理、即ち溶体化温
度(500℃)に4時間保持した後に水冷する溶体化処
理及び続いて200〜300℃に4時間保持した後に空
冷する時硬化処理からなる処理を施して、表面及び内部
硬度をHRB(ロックウェルBスケール)=90〜10
0程度とする(ステップS5)。
【0054】上記熱処理済のドーナツ状円盤に、内外形
加工,取付穴加工,及び円盤面加工等かちなる粗加工を
施す。円盤面加工のうち、摩擦面は表面粗Ra25μm
程度の研磨前面に下加工する(ステップS6)。続いて
仕上げ加工により上記摩擦面を表面粗さがRa1〜3.
5μmとなるように研磨し(ステップS7)、これによ
り上述のディスク本体10を作成する。
【0055】上記仕上げ加工済の摩擦面に表5に示す手
法により硬化層を形成する。例えば電気めっき(電解め
っき)処理による場合には、先ず上述の前処理を行い、
めっき液の静止浴中にディスク本体10を陰極として陽
極とともに浸漬し、こられに直流電源を接続することに
よって硬化層14を作成する(ステップS8)。これに
より、表6に示す皮膜組成(例えばFe−8%Cr)を
有し、膜厚概ね20μmあるいはそれ以上の硬化層が形
成される。
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】続いてステップS9で上記硬化層14にバ
ニシング加工、即ちめっき膜からなる硬化層14にロー
ラを押し付けて転動させる加工を施す。これにより硬化
層14には微細な網目状のクラック14aが形成され
る。
【0059】さらに上記バニシング加工済のFe−Cr
合金からなる硬化層14の硬度を増大させるためにガス
浸硫窒化処理を施す。このガス浸硫窒化処理は、表6に
示す熱処理条件のうち何れかで行う。即ち、例えば上記
ディスク本体10をNH3 ガス(流量15L/min)
と、N2 で希釈したH2 Sガス(流量20L/h)との
混合ガスからなる雰囲気の炉により加熱する。加熱温度
は500℃,加熱時間は3時間である。
【0060】このようにガス浸硫窒化処理を施すことに
よって、硬化層14の硬度を増大させることができると
ともに、ガス浸硫窒化処理時に硬化層14が加熱される
ことによって硬化層14にさらに微細な網目状のクラッ
ク14aが形成される。
【0061】そして上述の発明例試料及び比較例につい
て、制動回数とディスク摩耗量との関係、及び制動回数
とパッド摩耗量との関係を調べた。その結果を図9,図
10に示す。なお、この場合の計測条件は、初速(ディ
スク本体の回転数2200rpm)265Km/h,終
速100Km/h,減速度12m/S2 ,イナーシャ
0.5Kg・m2 とし、ディスク本体が830rpmま
で減速した時点で制動終了とした。
【0062】図9から明らかなように、アルミニウム合
金製ディスクと樹脂系パッドとの組合せからなる本発明
例の場合、制動回数の増加に伴ってディスクの厚みが逆
に8μm程度増加しており、移着層が形成されているこ
とが判る。一方、アルミニウム合金製ディスクとメタル
パッドとの組合せ又はSUS製ディスクとメタルパッド
との組合せからなる比較例では、制動回数の増加に伴っ
てディスクの厚みが20μm以上減少しており、ディス
クの摩耗が進行していることが判る。
【0063】また図10から明らかなように、本発明例
及び比較例の何れにおいても制動回数の増加に伴ってパ
ッドが摩耗しているが、その中でも本発明例におけるパ
ッドの摩耗量は比較例より少なく、従って本発明例で
は、ディスクの摩耗を防止しつつパッドの摩耗も減少で
きることが判る。
【0064】また図11はディスクとパッドとの間の摩
擦係数の計測結果を示している。同図から、アルミニウ
ム合金製ディスクと樹脂系パッドとの組合せからなる本
発明例は、他のあらゆる組合せより摩擦係数が大きいこ
とが判る。
【0065】なお、外表面にFe−Cr系の硬化層14
が形成されたアルミニウム合金製ディスク本体と樹脂系
パッドとの組合せの場合、摩擦係数は、図12に示すよ
うに、硬化層14の硬度がHv 500〜1200の場合
に最も大きくなる。
【0066】なお、上記実施形態では、硬化層14を電
解めっきで形成した場合を説明したが、この硬化層14
は従来公知のあらゆる方法、例えば表5に示す方法で形
成可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスクブレーキ装
置の正面図である。
【図2】上記ブレーキ装置の断面側面図(図1のII-II
線断面図)である。
【図3】ディスク本体の製造工程図である。
【図4】ディスク本体の長円状粒子の微視的構造を説明
するための模式図である。
【図5】ディスク本体の鍛流線と硬化層との微視的構造
を説明するための模式図である。
【図6】溶射方法を説明するための模式図である。
【図7】ディスク本体の硬化層及び移着層の微視的構造
を説明するための模式断面図である。
【図8】ディスク本体の硬化層及び移着層の微視的構造
を説明するための平面図である。
【図9】制動回数とディスク摩耗量との関係を示す特性
図である。
【図10】制動回数とパッド摩耗量との関係を示す特性
図である。
【図11】ディスク,パッドの組合せと摩擦係数との関
係を示す特性図である。
【図12】ディスク本体の皮膜厚さと摩擦係数との関係
を示す特性図である。
【図13】ディスク本体の製造工程を示す工程図であ
る。
【符号の説明】
1 ディスクブレーキ装置 8 ブレーキパッド 10 ディスク本体 14 硬化層 14a 網目状クラック 15 移着層 15a 移着層の一部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小池 俊勝 静岡県磐田市新貝2500番地 ヤマハ発動機 株式会社内 Fターム(参考) 3J058 AA43 AA48 AA53 AA66 AA69 AA74 AA77 AA84 AA87 BA41 BA76 CB11 CB27 EA06 EA08 EA32 EA34 EA35 FA02

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウム合金からなるディスク本体
    の表面に摩擦面となる硬化層を形成してなるブレーキデ
    ィスクと上記硬化層を挟圧するブレーキパッドとを備え
    たディスクブレーキ装置において、上記ブレーキパッド
    は移着系パッドで構成され、上記硬化層には網目状クラ
    ックが形成されており、さらに使用に伴って該硬化層を
    覆うようにブレーキパッドの一部が移着してなる移着層
    が形成されており、さらに該移着層の一部が上記クラッ
    ク内部に進入していることを特徴とするディスクブレー
    キ装置。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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FR2880086A1 (fr) * 2004-12-23 2006-06-30 Renault Sas Piece de friction mecanique pour systeme de freinage et d'embrayage comportant une zone d'alliage d'aluminium et de fer
CN102076986A (zh) * 2009-06-15 2011-05-25 丰田自动车株式会社 制动装置

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