JP2002060892A - 溶接熱影響部靱性に優れた鋼材 - Google Patents

溶接熱影響部靱性に優れた鋼材

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JP2002060892A
JP2002060892A JP2000247567A JP2000247567A JP2002060892A JP 2002060892 A JP2002060892 A JP 2002060892A JP 2000247567 A JP2000247567 A JP 2000247567A JP 2000247567 A JP2000247567 A JP 2000247567A JP 2002060892 A JP2002060892 A JP 2002060892A
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haz
welding
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Takeshi Ichinose
威 一ノ瀬
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Nippon Steel Corp
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Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】種々の条件で溶接しても良好なHAZ靱性を示
す鋼材の提供。 【解決手段】C:0.02%超〜0.05%未満、Si≦1.0%、M
n:0.8〜2.5%、Al:0.002〜0.02%、Ti:0.003〜0.05
%、Nb:0.003〜0.15%、 B:0.0003〜0.004%、N:0.0
01〜0.008%、P≦0.05%を含有し、(Ti/N)≦8.0(t×
Pcm1)-0.5を満足する鋼材。ここで、Pcm1=C+(Si/3
0)+(Mn/20)+5Bで、tはmm単位での接合部の厚さを
表す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、溶接熱影響部靱性
に優れた鋼材に関し、詳しくは、鋼管、船舶、タンク、
海洋構造物、建築などの分野に使用され、小入熱溶接で
ある電子ビーム溶接やレーザ溶接から、大入熱溶接であ
るサブマージアーク溶接やエレクトロガス溶接といった
種々の条件で溶接されても、良好な溶接熱影響部靱性を
示す厚鋼板、鋼帯、形鋼、棒鋼などの鋼材に関する。な
お、以下の説明において「溶接熱影響部」を「HAZ」
という。
【0002】
【従来の技術】鋼材を溶接すると、母材の溶接金属に接
するHAZの結晶粒が粗大化して靱性が劣化し、したが
って、溶接構造物自体の靱性劣化が生じる。特に、溶接
金属とHAZの境界部分(以下、「ボンド部」という)
は、組織の粗大化が最も著しく、このボンド部の靱性が
最も劣る。
【0003】ボンド部の靱性を確保するための最も直接
的な方法は、溶接入熱を制限してボンド部の組織粗大化
を抑制することである。
【0004】しかし、上記の方法は、ボンド部の組織粗
大化を抑制して微細組織を得るには有効であるものの、
HAZから粗大組織を完全になくすというわけには行か
ず、しかも小入熱溶接であるため、厚さの厚い鋼板を溶
接する場合には多パスの溶接が必要となって、生産性は
著しく低下してしまう。
【0005】更に、小入熱溶接の場合には、しばしばH
AZの硬化が生じるので、却って靱性が低下してしま
う。電子ビームやレーザーといった指向性高エネルギー
ビームによる溶接を行い、全体として小入熱溶接とした
場合にも、同様なHAZの硬化による靱性劣化が生じ
る。HAZの硬化による溶接部の靱性低下を回避するた
めに、一般に炭素当量(以下、Ceqと記す)の制限が行
われる。このCeqとしては、元素記号をその元素の質量
%での含有量として、例えば次の (3)式が提案されてい
る。 Ceq=C+(Mn/6)+(Si/24)+(Ni/40)+(Cr/5)+ (Mo/4)+(V/14)・・・(3) しかし、Ceqを管理する方法は、特に合金元素の削減に
主眼をおくものである。したがって、その鋼材が使用さ
れる構造物の設計に強い制限を加えることになるので、
必ずしも満足の行く方法ではない。
【0006】HAZの靱性改善については、特開平10
−88276号公報に、希土類元素(以下、「REM」
という)、V、N、O及びBを適正添加することによっ
て、小入熱から大入熱溶接のHAZにおけるオーステナ
イト粒径の粗大化防止と粒内フェライトの析出を促進さ
せる技術が開示されている。オーステナイト粒径の粗大
化防止と粒内フェライト析出の促進は、いずれも焼入れ
性を下げる効果を持つため、この公報で提案された技術
によればHAZ硬化の抑制も期待できる。しかし、高価
なREMを含むものであるため、鋼材コストが嵩んでし
まう。
【0007】特公平4−28474号公報には、鋼材に
特定サイズのTi酸化物を均一に分散させて、電子ビー
ム溶接などの低酸素溶接手段によって得られる溶接金属
の低温靱性を高める技術が提案されている。この公報で
開示された技術によれば、確かに溶接金属は組織が微細
化されて高靱化される。しかし、前記の効果は必ずしも
HAZにまで及ぶものではなく、したがって、必ずしも
HAZ靱性を改善できるというものでもない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑みなされたもので、その目的は、小入熱溶接である電
子ビーム溶接やレーザ溶接から、大入熱溶接であるサブ
マージアーク溶接やエレクトロガス溶接といった種々の
条件で溶接されても、良好なHAZ靱性、具体的には、
後述の実施例における図1(a)、(b)に示すよう
に、溶接金属とHAZの境界部(つまりボンド部)から
採取したVノッチシャルピー試験片を用いた衝撃試験
で、幅10mmのフルサイズ試験片を用いた場合には−
30℃以下、幅5mmのサブサイズ試験片を用いた場合
には−50℃以下という低いエネルギー遷移温度を確保
できる鋼材を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は下記
(1)、(2)に示す鋼材にある。
【0010】(1)質量%で、 C:0.02%を超えて0.05%未満、 Si:1.0%以下、 Mn:0.8〜2.5%、 Al:0.002〜0.02%、 Ti:0.003〜0.05%、 Nb:0.003〜0.15%、 B:0.0003〜0.004%、 N:0.001〜0.008%、 P:0.05%以下、 を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記 (1)式
を満足する鋼材。
【0011】 (Ti/N)≦8.0(t×Pcm1 )-0.5 ・・・(1) なお、Pcm1 =C+(Si/30)+(Mn/20)+
5Bで、各式における元素記号はその元素の質量%での
含有量を表し、 (1)式におけるtはmm単位での接合部
の厚さを表す。
【0012】(2)上記(1)に記載の成分に加えて更
に、質量%で、 第1群:Cu:0.05〜2.5%、 第2群:Ni:0.05〜4.0%、Cr:0.05〜
2.0%、Mo:0.03〜0.5%、V:0.003
〜0.10%のうちの1種以上、 第3群:Ca:0.0005〜0.010% の1群以上をも含み、下記 (2)式を満足する溶接熱影響
部靱性に優れた鋼材。
【0013】 (Ti/N)≦8.0(t×Pcm2 )-0.5 ・・・(2) なお、Pcm2 =C+(Si/30)+(Mn/20)+
(Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+
(Mo/15)+(V/10)+5Bで、各式における
元素記号はその元素の質量%での含有量を表し、 (2)式
におけるtもmm単位での接合部の厚さを表す。
【0014】この明細書でいう「接合部の厚さ」とは、
母材の板厚そのものを指す。
【0015】本発明者らは、上記の課題を解決するため
に、実験室レベル及び試験製造ラインで様々な試験を行
い、HAZ靱性向上の可能性を調査した。その結果、下
記の知見を得た。 (a)HAZには、Cが濃縮した硬質相が形成され、こ
の硬質相が靱性劣化の原因となるが、鋼中のAl含有量
を低減することによって前記硬質相が減少し、HAZ靱
性が向上する。 (b)TiとNを適正量含有させることでTiNが形成
されて、HAZのオーステナイト粒の粗大化が抑制さ
れ、HAZ組織を改善することができる。しかし、Ti
Nは微細であっても介在物として靱性劣化の原因となる
ため、TiとNの含有量を厳密に規制する必要がある。
更に、オーステナイト粒径が同じ場合でも、(Ti/
N)の値が大きいほど靱性が劣化する傾向があるため、
(Ti/N)の値に上限を設けることが重要である。 (c)前記した良好なHAZ靱性を確保するための(T
i/N)の上限値は、接合部の厚さtが厚いほど、又、
Pcm1 の値やPcm2 の値が大きいほど、小さくする必要
がある。これは、接合部の厚さtが厚いほど周囲からの
抜熱が大きいために溶接後の冷却速度が大きく、又、P
cm1 の値やPcm2 の値が大きいほど焼きが入りやすくな
るためと考えられる。なお、以下の説明においては、前
記Pcm1 及びPcm2 をまとめてPcmということもある。 (d)実験的に上記良好なHAZ靱性を確保するための
(Ti/N)の上限値は、mm単位での接合部の厚さt
及びPcmで表すことができ、(Ti/N)の値が8.0
(t×Pcm)-0.5 以下の場合に、前記した良好なHA
Z靱性が確保できる。 (e)C含有量を低減すればHAZ靱性は改善する。し
かし、C含有量を0.02%以下にまで低減すると、引
張試験を行った際に明瞭な降伏点が現れなくなって構造
物用として使用し難くなるので、これを避けるために
0.02%を超えるCを含有させる必要がある。C含有
量が0.02%を超える場合のHAZ靱性は、C含有量
が0.02%以下の場合よりも劣化するが、前記(d)
で述べた(Ti/N)の上限規定と(a)で述べたAl
含有量の低減によって、高C含有量に起因する硬質相の
形成が抑制され、良好なHAZ靱性が維持できる。本発
明は、上記の知見に基づいて完成されたものである。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の要件について詳し
く説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質
量%」を意味する。
【0017】C:0.02%を超えて0.05%未満 Cは、強度を確保するために有効な元素であるが、その
含有量が0.02%以下では添加効果に乏しく、しかも
引張試験を行った際に明瞭な降伏点が現れなくなって構
造物用として使用し難い。一方、C含有量が0.05%
以上の場合にはHAZ靱性が低下し、所望のHAZ靱性
が確保できない。したがって、Cの含有量を0.02%
を超えて0.05%未満とした。なお、C含有量は0.
025%以上とすることが好ましい。
【0018】Si:1.0%以下 Siは、脱酸作用があり、鋼材の強度上昇にも寄与する
が、1.0%を超えて含有させた場合、靱性の低下をも
たらすため、1.0%を上限とする必要がある。なお、
鋼の脱酸に支障をきたさない限り、Si含有量は幾ら少
なくとも問題はなく、0.01%程度であってもよい。
【0019】Mn:0.8〜2.5% Mnは、鋼の焼入れ性を高め、強度を確保するのに有効
な成分である。しかし、その含有量が0.8%未満で
は、焼入れ性が不足して強度、靱性が得難いので、所望
の性能を有する鋼材を製造することが難しい。一方、
2.5%を超えて含有させると、偏析が増すとともに焼
入れ性が高くなりすぎて、溶接した場合にHAZ及び母
材の靱性が低下する。したがって、Mnの含有量を0.
8〜2.5%とした。
【0020】Al:0.002〜0.02% Alは脱酸のために必須の元素であり、本発明の鋼材の
場合、0.002%以上の含有量が必要である。しか
し、AlはHAZにおいてCの濃縮した硬質相の形成を
促進し、HAZ靱性を低下させてしまう。特にその含有
量が0.02%を超えると、硬質相の形成によるHAZ
靱性の低下が著しい。したがって、Alの含有量を0.
002〜0.02%とした。
【0021】Ti:0.003〜0.05% Tiは、Nと結合してTiNを形成し、オーステナイト
粒の成長を抑制して組織、なかでもHAZ組織を微細化
する作用を有する。しかし、その含有量が0.003%
未満では、TiNの生成量が少なすぎるため、オーステ
ナイト粒、特に、HAZにおけるオーステナイト粒の成
長を十分に抑制できないので、HAZ靱性が低下してし
まう。一方、TiNは微細であっても介在物として靱性
低下の原因となるので、Tiの含有量は厳密に規制する
必要があり、0.05%を超えると靱性低下が著しくな
る。したがって、Tiの含有量を0.003〜0.05
%とした。
【0022】Nb:0.003〜0.15% Nbは、焼入れ性を向上させて強度を高めるだけでな
く、圧延時に、未再結晶温度域を広げて制御圧延効果を
高め、組織を細粒化して母材の高靱化に有効に働く。
又、再加熱焼入れ処理を行う場合にも、Nbの炭窒化物
がオーステナイト粒の粗大化を抑制するため、細粒組織
を得るのに有効である。こうした好ましい効果を得るた
めには、Nbを0.003%以上含有させる必要があ
る。しかし、0.15%を超えて含有させても、前記の
効果は飽和しコストが嵩むばかりである。したがって、
Nbの含有量を0.003〜0.15%とした。
【0023】B:0.0003〜0.004% Bは、オーステナイト粒界に偏析して界面エネルギーを
下げるため、微量の添加で焼入れ性を向上させて、強度
を高める作用を有する。しかし、その含有量が0.00
03%未満では添加効果に乏しい。一方、0.004%
を超えて含有させてもその効果が飽和する。このため、
Bの含有量を0.0003〜0.004%とした。
【0024】N:0.001〜0.008% Nは、Tiと結合してTiNを形成し、オーステナイト
粒の成長を抑制して組織、なかでもHAZ組織を微細化
する作用を有する。しかし、その含有量が0.001%
未満では、TiNの生成量が少なすぎるため、オーステ
ナイト粒、特に、HAZにおけるオーステナイト粒の成
長を十分に抑制できないので、HAZ靱性が低下してし
まう。一方、TiNは介在物として靱性低下の原因とな
るし、固溶Nが多くなっても靱性低下が顕著になるの
で、Nの含有量は厳密に規制する必要がある。特に、N
の含有量が0.008%を超えると、粗大なTiNや固
溶Nによる靱性低下が顕著になる。したがって、Nの含
有量を0.001〜0.008%とした。
【0025】P:0.05%以下 Pは粒界に偏析して靱性を低下させ、更に、溶接時に高
温割れを生じさせる。特にその含有量が0.05%を超
えると、靱性の低下及び溶接時の高温割れ発生が著しく
なる。したがって、Pの含有量を0.05%以下とし
た。なお、Pは延性破面率を低下させ、特に、米国石油
協会(API)規格のX70グレード以上の高強度材に
おける延性破面率の低下をもたらす。したがって、X7
0グレード以上の高強度を得る場合には、Pの含有量を
0.02%以下とすることが望ましい。
【0026】本発明のHAZ靱性に優れた鋼材には、上
記の各成分元素に加えて更に、前記第1群〜第3群のう
ちの1群以上を含んでいてもよい。これらの合金元素の
作用効果と望ましい含有量は下記のとおりである。
【0027】Cu:0.05〜2.5% Cuには強度及び耐食性を高める作用があるので、一層
高い強度及び一層良好な耐食性を確保させる目的で含有
させるが、Cu含有量が0.05%未満ではその効果が
得難い。なお、Cuを0.5%以上含有させると、鋼材
を焼入れ−焼戻し処理する場合にはCuが時効析出する
ので、より高い強度が得られる。しかし、2.5%を超
えて含有させても、前記の効果は飽和しコストが嵩むば
かりである。したがって、Cuを添加する場合には、そ
の含有量を0.05〜2.5%とするのがよい。
【0028】Ni:0.05〜4.0%、Cr:0.0
5〜2.0%、Mo:0.03〜0.5%、V:0.0
03〜0.10% Ni、Cr、Mo及びVには焼入れ性を高める作用があ
るので、鋼材が大型構造物に使用される場合の焼入れ性
を確保する目的で含有させてもよい。上記焼入れ性を高
めることに加えてNiには固溶状態において鋼のマトリ
ックス(素地)の靱性を高める作用、Crには耐炭酸ガ
ス腐食性を高める作用、Moには高温強度を高める作
用、Vには焼戻し時の炭窒化物の析出で強度を大きく高
める作用がある。しかし、Ni含有量が0.05%未
満、Cr含有量が0.05%未満、Mo含有量が0.0
3%未満、V含有量が0.003%未満ではその効果が
得難い。一方、Niを4.0%を超えて、Crを2.0
%を超えて、又、Vを0.10%を超えて含有させても
その効果は飽和しコストが嵩むばかりであるし、Crを
2.0%を超えて含有させた場合には、HAZが硬化し
て靱性の低下が生じ所望のHAZ靱性が得られない。
又、Moを0.5%を超えて含有させるとHAZ靱性の
低下が著しくなって所望の特性が得られない。したがっ
てNi、Cr、Mo、Vの1種以上を添加する場合に
は、Niの含有量を0.05〜4.0%、Crの含有量
を0.05〜2.0%、Moの含有量を0.03〜0.
5%、Vの含有量を0.003〜0.10%とするのが
よい。なお、Ni、Cr、Mo、Vの1種以上を添加す
る場合において、Niの含有量は0.1〜4.0%、C
rの含有量は0.05〜1.5%とするのが好ましく、
特に前記した量のCuを含有させる場合にはCuチェッ
キングを防止するためにNiをCu含有量の1/3以上
含有させるのがよい。
【0029】Ca:0.0005〜0.010% Caには鋼中のSと反応して溶鋼中で酸・硫化物(オキ
シサルファイド)を形成し、この酸・硫化物はMnSな
どと異なって圧延加工で圧延方向に伸びることがなく圧
延後も球状であるため、延伸した介在物の先端などを割
れの起点とする溶接割れや水素誘起割れを抑制する作用
がある。したがって、上記の割れを防止する目的でCa
を含有させるが、0.0005%未満の含有では効果が
得難い。一方、Caの含有量が0.010%を超えると
介在物が過度に増加して破面遷移温度が上昇するなど靱
性の低下を招く場合がある。したがって、Caを添加す
る場合には、その含有量を0.0005〜0.010%
とするのがよい。
【0030】本発明においては、上記に加えて、更にT
i、N及びPcmに関する下記の式を規定する。なお、P
cmがPcm1 及びPcm2 をまとめたものを指すことは既に
述べたとおりである。
【0031】(Ti/N)≦8.0(t×Pcm )-0.5 TiNでオーステナイト粒の成長を抑制すれば、HAZ
の焼入れ性は低下するが、オーステナイト粒径が同じ場
合でも、焼入れ性は(Ti/N)の値によって変化す
る。このため、HAZの硬化、なかでも小入熱溶接する
場合のHAZの硬化を抑制するためには、TiとNの含
有量を制御すると同時に、(Ti/N)の値も制限する
必要がある。すなわち、各成分元素の値を既に述べた範
囲に制限しても、(Ti/N)の値が16.0(t×P
cm)-0.5を超える場合には、所望のHAZ靱性を確保で
きない。したがって、(Ti/N)の値を8.0(t×
Pcm)-0.5以下とした。なお、(Ti/N)の値は7.
0(t×Pcm )-0.5以下とするのが好ましい。
【0032】
【実施例】表1に示す化学組成を有する鋼を通常の方法
によって真空溶解炉で溶製し、180kg丸形インゴッ
トを得た。なお、表1には、後述の表2に示す母材の板
厚(すなわち接合部の厚さ)tと化学組成とから求めた
8.0(t×Pcm )-0.5の値も併せて示した。
【0033】表1における鋼1〜9は化学組成が本発明
で規定する範囲内にあり、しかも、それを素材鋼とする
鋼材が本発明で規定する (1)式や (2)式を満たすもので
ある。一方、鋼10〜18は少なくとも成分のいずれか
が本発明で規定する含有量の範囲から外れるか、鋼材が
本発明で規定する (1)式や (2)式を満たさないものであ
る。ここで、鋼1と鋼10、鋼2と鋼11、鋼3と鋼1
2、鋼4と鋼13、鋼5と鋼14、鋼6と鋼15、鋼7
と鋼16、鋼8と鋼17、鋼9と鋼18はそれぞれM
n、Cu、Ni、Cr、Mo、Vの含有量をほぼ等しく
したものである。
【0034】
【表1】 次いで、上記インゴットを通常の方法で熱間鍛造して鋼
片とし、更にこれらの鋼片を1100℃に加熱してか
ら、950℃以下の累積圧下率が55%又は65%とな
るように熱間圧延して厚さ9.5〜40.0mmに仕上
げた。熱間圧延後は750℃又は800℃から水で強制
冷却して圧延後直接焼入れし、鋼板表面の温度が500
℃になった時点で水冷を停止し、以後は大気中放冷し
た。なお、一部のものについては常温まで水冷し、その
後600℃で焼戻し処理を行った。この製造条件の詳細
を表2に示す。
【0035】
【表2】 こうして得られた板厚9.5〜40.0mmの鋼板の板
厚中央部から、JIS Z2201(1998)に記載の4号引張り試
験片とJIS Z 2202(1998)に記載のVノッチシャルピー衝
撃試験片をいずれも圧延方向に対して直角の方向から採
取し、引張試験とシャルピー衝撃試験を行って母材の性
能(降伏強度(YS)、引張強度(TS)及び50%破
面遷移温度VS)を調査した。なお、板厚が12.7〜
40.0mmの鋼板からは幅が10mmのフルサイズシ
ャルピー衝撃試験片を、板厚が9.5mmの鋼板からは
幅が5mmのサブサイズシャルピー衝撃試験片を採取し
た。この母材の性能調査結果を表2に併せて示す。
【0036】更に、前記板厚9.5〜40.0mmの鋼
板を表3に示すサブマージアーク溶接(SAW)、電子
ビーム溶接(EB)、レーザ溶接(LS)の3種類のい
ずれかの方法で溶接し、溶接部から各種試験片を採取し
て、溶接継手引張性能、HAZ最高硬さ及びHAZ靱性
を調査した。なお、サブマージアーク溶接は、ルートギ
ャップが1〜2mmのV開先に対して、20kJ/cm
の条件で通常の多層溶接を行った。
【0037】レーザ溶接は、大気圧Arガスシールド雰
囲気中で、ルートギャップ無しのI開先に対して、出力
10kWの炭酸ガスレーザを用いて実施し、又、電子ビ
ーム溶接は、真空チャンバー内で、電圧150kV、電
流150mA、振幅0.8mmの条件で、ルートギャッ
プ無しのI開先に対して、速度20〜80cm/min
で行った。
【0038】HAZ靱性は、図1(a)、同図(b)に
示すようにして、すなわち、溶接線にVノッチ底を一致
させ、鋼板表面から1mm下の位置に側面を一致させる
ようにしてJIS Z 2202(1998)に記載のVノッチシャルピ
ー衝撃試験片を採取し、シャルピー衝撃試験を行ってエ
ネルギー遷移温度(VE)を調査した。なお、採取した
Vノッチシャルピー試験片の幅は、母材の板厚が12.
7〜40.0mmの場合が10mmで、母材の板厚が
9.5mmの場合が5mmである。
【0039】継手引張り試験は、図1(a)、同図
(b)に示すように溶接金属の中心が引張り試験片の中
心に位置するようにし、板厚中央部からJIS Z 2201に記
載の4号丸棒引張り試験片を採取して行った。
【0040】HAZ最高硬さは、溶接方向に直角な断面
を試験面として、試験力4.903Nで硬さ分布を測定
することによって求めた。なお、EB及びLSの場合に
は、ビーム入射側の鋼板表面から1mmの深さにおける
硬さ分布を測定した。一方、SAWの場合には、最終溶
接パス側の鋼板表面から1mmの深さにおける硬さ分布
を測定した。表3に、溶接継手引張性能、HAZ最高硬
さ及びHAZ靱性を併せて示す。
【0041】
【表3】 表2から明らかなように、それぞれMn、Cu、Ni、
Cr、Mo、Vの含有量をほぼ等しくした鋼1と鋼1
0、鋼2と鋼11、鋼3と鋼12、鋼4と鋼13、鋼5
と鋼14、鋼6と鋼15、鋼7と鋼16、鋼8と鋼1
7、鋼9と鋼18の母材性能(YS、TS及びVS)に
は大きな差異は認められない。
【0042】しかし、表3に示すように溶接後のHAZ
最高硬さ及びHAZ靱性には明らかな差が認められる。
【0043】すなわち、化学組成が本発明で規定する範
囲内にあり、しかも、それを素材鋼とする鋼材が本発明
で規定する (1)式や (2)式を満たす試験番号1〜9の場
合には、HAZ最高硬さもHv硬さで高々315であり
HAZ靱性も幅10mmのフルサイズシャルピー試験片
でのVEが−47℃以下、幅5mmのサブサイズシャル
ピー試験片でのVEが−75℃と良好である。これに対
して、少なくとも鋼の成分のいずれかが本発明で規定す
る含有量の範囲から外れるか、鋼材が本発明で規定する
(1)式や (2)式を満たさない試験番号10〜18の場合
には、前記試験番号1〜9に比べてHAZ最高硬さが高
い。更に、HAZ靱性は幅10mmのフルサイズシャル
ピー試験片でのVEが−25℃以上、幅5mmのサブサ
イズシャルピー試験片でのVEが−34℃と高く、所望
のHAZ靱性が確保できていない。
【0044】
【発明の効果】本発明の鋼材は、小入熱から大入熱の種
々の条件で溶接してもHAZ靱性に優れているので、鋼
管、船舶、タンク、海洋構造物、建築などの分野に使用
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において溶接部からシャルピー衝撃試験
片と丸棒引張試験片を採取した方法を説明する図で、
(a)はサブマージアーク溶接した溶接部からの試験片
採取方法、(b)は電子ビーム溶接又はレーザ溶接した
溶接部からの試験片採取方法である。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、 C:0.02%を超えて0.05%未満、 Si:1.0%以下、 Mn:0.8〜2.5%、 Al:0.002〜0.02%、 Ti:0.003〜0.05%、 Nb:0.003〜0.15%、 B:0.0003〜0.004%、 N:0.001〜0.008%、 P:0.05%以下、 を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記 (1)式
    を満足する鋼材。 (Ti/N)≦8.0(t×Pcm1 )-0.5 ・・・(1) なお、Pcm1 =C+(Si/30)+(Mn/20)+
    5Bで、各式における元素記号はその元素の質量%での
    含有量を表し、 (1)式におけるtはmm単位での接合部
    の厚さを表す。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の成分に加えて更に、質量
    %で、 第1群:Cu:0.05〜2.5%、 第2群:Ni:0.05〜4.0%、Cr:0.05〜
    2.0%、Mo:0.03〜0.5%、V:0.003
    〜0.10%のうちの1種以上、 第3群:Ca:0.0005〜0.010% の1群以上をも含み、下記 (2)式を満足する鋼材。 (Ti/N)≦8.0(t×Pcm2 )-0.5 ・・・(2) なお、Pcm2 =C+(Si/30)+(Mn/20)+
    (Cu/20)+(Ni/60)+(Cr/20)+
    (Mo/15)+(V/10)+5Bで、各式における
    元素記号はその元素の質量%での含有量を表し、 (2)式
    におけるtもmm単位での接合部の厚さを表す。
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