JP2002031162A - 電磁式ローラクラッチ - Google Patents

電磁式ローラクラッチ

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JP2002031162A
JP2002031162A JP2000217142A JP2000217142A JP2002031162A JP 2002031162 A JP2002031162 A JP 2002031162A JP 2000217142 A JP2000217142 A JP 2000217142A JP 2000217142 A JP2000217142 A JP 2000217142A JP 2002031162 A JP2002031162 A JP 2002031162A
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electromagnetic
clutch
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armature
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Yoshinori Yamada
良則 山田
Shigetaka Nagamatsu
茂隆 永松
Takashi Nozaki
孝志 野▲崎▼
Takahide Saito
隆英 齋藤
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NTN Corp
Toyota Motor Corp
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NTN Corp
Toyota Motor Corp
NTN Toyo Bearing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 電磁式ローラクラッチにおける係合トルクを
低減する。 【解決手段】 外輪2Aの内周面を多角形のカム面7A
とし、出力軸の外周面4asとの間で楔状空間を形成す
る。この楔状空間に保持器8によってローラ10を保持
する。電磁力の作用によって保持器8を回動させ、ロー
ラ10を非係合位置PDから係合位置PCに移動させる
ことによって、外輪と出力軸とを係合させることができ
る。ローラ10にかかる遠心力が、この移動に対する抵
抗となる。かかる構成の電磁式ローラクラッチにおい
て、カム面7Aの断面形状は、ローラ数の2倍の頂点を
有する正多角形とする。こうすることにより、カム面7
Aの各辺と半径との間のカム面角度βを小さくすること
ができ、遠心力による抵抗成分の低減、保持器による係
合トルクの低減を図ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電磁力の作用により
係合子としてのローラの位置を制御し、2つの回転軸間
の動力伝達状態を切り替える電磁式ローラクラッチに関
する。
【0002】
【従来の技術】2つの回転軸の結合および切り離しを電
磁的に制御し、かつ比較的大きな動力の伝達が可能な機
構として、電磁式ローラクラッチが知られている。電磁
式ローラクラッチとは、係合子としてローラを用い、電
磁力の作用でローラの位置を制御することで2つの回転
軸を断続する機構である。一例として、特開平10−5
3044記載の回転伝達装置が知られている。従来技術
として、この回転伝達装置の概略構成を説明する。
【0003】図12は従来技術としての回転伝達装置1
の回転軸に沿った面内の断面図である。図13は回転伝
達装置1のA−A断面図である。図14は回転伝達装置
1のB−B断面図である。特開平10−53044に記
載の装置を示した。
【0004】回転伝達装置1は、外輪2と出力軸4aと
を切断・結合する2方向クラッチである。図13に示す
通り、外輪2の内面は、正八角形の断面形状を成してい
る。正八角形の各辺が8つのカム面となる。出力軸4a
は円形断面である。カム面は、出力軸4の外周面との間
で周方向の両側が狭幅になる8つの楔状空間を形成す
る。
【0005】外輪2と出力軸4aとの間には環状の保持
器8が設けられている。保持器8には周方向に8つのポ
ケット9が形成され、各ポケット9に係合子としてのロ
ーラ10が組込まれている(図13参照)。保持器8は
周方向に回動可能になっており、それに伴ってローラ1
0の位置も周方向に移動する。ローラ10と外輪2また
は出力軸4aとの間に隙間がある位置では(図13参
照)、2つの回転軸は非係合状態となる。ローラ10が
楔状空間の狭幅部分に移動すると外輪2と出力軸4aと
が係合される。
【0006】図14に示す通り、保持器8と外輪2の両
者には切り欠き11a、12aが設けられており、ここ
にスイッチバネ13が組み付けられている。スイッチバ
ネ13は、外力が作用していない時にローラ10が非係
合位置になるよう保持器8を付勢している。スイッチバ
ネ13の作用により、外輪2と保持器8は一体的に回転
する。
【0007】保持器8の軸方向には、環状のアマチュア
21、ロータ18が設けられている。アマチュア21
は、保持器8と相対回転不能で軸方向への移動はできる
よう、アマチュア21に設けられた突起に遊嵌されてい
る。ロータ18は、出力軸4aと相対回転不能に嵌合さ
れている。ロータ18を挟んで保持器8に対向する側に
は、コイル16が巻回されたフィールドコア17が設け
られている。フィールドコア17は固定されている。
【0008】コイル16に通電していない状態では、ア
マチュア21とロータ18の間には隙間bが存在し、両
者はそれぞれ外輪2、出力軸4aと一体的に回転する。
コイル16に通電すると、ロータ18にアマチュア21
が吸着して両者間に摩擦力が生じ、保持器8は外輪2と
出力軸4aとの相対的な回転数差に伴って回動する。こ
の結果、保持器8はスイッチバネ13の弾性力に抗じ
て、ローラ10を係合位置に移動させ、外輪2と出力軸
4aとが係合する。なお、ここでは、説明の便宜上、外
輪2を動力の入力側、出力軸4aを動力の出力側として
いるが、出力軸4aから外輪2に動力を伝達すること
も、もちろん可能である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】図13に示す通り、ク
ラッチが非係合状態にあるとき、遠心力Fの作用によっ
てローラ10は外輪2の内面に押しつけられる。非係合
時の回転中心とローラ10との半径rは、係合時よりも
大きい。クラッチを係合するためには、スイッチバネの
弾性力のみならず、遠心力Fにも抗ってローラ10を周
方向に移動させる必要がある。回転中におけるローラ1
0の位置エネルギは、非係合時よりも係合時の方が大き
くなるから、係合動作には、少なくとも両者の差分に相
当する電力の供給が要求される。従来、この移動を可能
にする十分な大きさの摩擦トルクを保持器8に付加する
ためには、コイル16およびアマチュア21の大型化、
係合時の電力増が要求されていた。遠心力Fは、回転数
の自乗で大きくなるから、クラッチが用いられる回転数
が高くなる程、装置のサイズ、消費電力に与える影響は
極端に大きくなっていた。
【0010】クラッチはサイズに対する要求が厳しいの
が通常であり、コイル16およびアマチュア21の十分
な大型化は図れないことが多い。一方、サイズに対する
制約を厳守すれば、保持器8への摩擦力が不十分とな
り、クラッチの係合動作の不安定化を招くこともある。
【0011】本発明は、かかる課題を解決するためにな
され、非係合時にローラと外輪とが一体的に回転する構
成の電磁式ローラクラッチにおいて、係合動作に要求さ
れる電磁力を低減する技術を提供することを目的とす
る。
【0012】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】上
記課題を解決するために、本発明では、第1回転軸と第
2回転軸の結合および切り離しを電磁力の作用によって
行う電磁式ローラクラッチにおける第1の構成として、
前記第2回転軸の外周側に同心円状に配置されて前記第
1回転軸に結合され、広間隔部と狭間隔部を有する複数
の楔状空間を前記第2回転軸の外周面との間で形成する
外輪と、前記楔状空間内にそれぞれ設けられた複数のロ
ーラと、前記外輪に対し所定範囲で回動可能に設けら
れ、非係合時には前記広間隔部に前記ローラを保持し、
係合時には前記狭間隔部に前記ローラを保持する保持器
と、前記保持器と相対的に回動不能、かつ軸方向に移動
可能に設けられたアマチュアと、前記アマチュアと対向
する位置で前記第2回転軸に結合された摩擦係合器と、
前記摩擦係合器側に吸引するよう、前記アマチュアに電
磁力を作用させる電磁石とを備えるものとし、前記外輪
の内周面は、前記回転軸に直交する面内において、非係
合時に外輪に接した位置で隣り合ったローラ同士を結ぶ
外接線よりも外側に凸の領域がある断面形状を有するも
のとした。狭間隔部が広間隔部の一方向に設けられてい
れば、該方向に対応した回転時にのみトルク伝達する機
構となる。狭間隔部が広間隔部の両端に設けられていれ
ば、正逆いずれの回転方向でもトルクを伝達することが
できる機構となる。
【0013】本発明の作用を説明するに先立ち、本発明
者は、非係合時にローラと外輪とが一体的に回転する構
成の電磁式ローラクラッチにおいて、係合動作に要求さ
れるトルク(以下、「係合トルク」と呼ぶ)、ひいては
電磁力が大きかった原因について解明した。図1は遠心
力による係合トルクへの影響を示す説明図である。図1
2〜図14で説明したのと同型のクラッチについて、ロ
ーラ10の近傍を拡大して示した。ここで、外輪2の内
周面は、正多角形のカム面7を成しており、出力軸の外
周面4asとの間で楔状空間を形成している。半径に直
交する方向とカムの各辺とがなす角度βを以下、カム面
角度と呼ぶものとする。非係合時には、ローラ10は図
中の位置PDにあり、遠心力Fによってカム面7に押し
つけられている。係合時には、ローラ10が位置PCに
移動することによって、両回転軸間にかみ込む。この間
にローラ10は、周方向に動作角度αだけ移動する。
【0014】ローラ10の移動は、カム面7に沿って行
われる。遠心力Fをカム面7に垂直な成分F1と平行な
成分F2に分けると、平行成分F2は移動に対する抵抗
力となる。また、垂直成分F1は、カム面7とローラ1
0との間の摩擦力F1fを生じさせる。これらの合力が
遠心力によって各ローラに作用する抵抗力Frとなり、
その大きさは、次式で表される。 F1=F×cosβ; F2=F×sinβ; Fr=μF1+F2=F×(μ・cosβ+sin
β); 但し、μは、ローラ10とカム面7との間の摩擦係数
【0015】保持器8は、係合トルクとして、抵抗力F
rに逆らうトルクをローラ10に作用させる。ローラ1
0と保持器8とが接触する部分の半径をR、ローラの数
をnとすると、係合トルクTは、次式で与えられる。 T=n×Fr×R/cosβ=n×F×R(μ+tanβ); ・・・(1 ) 厳密には、半径Rはローラ10の位置によって変動する
が、動作角度αは微小であり、半径Rは一定値として扱
っても差し支えない。
【0016】本発明者が解析した上式(1)から明らか
な通り、係合トルクTは、カム面角度β(0≦β<90
度)の単調増加関数である。従って、カム面角度を浅く
する程、係合トルクを小さくすることができる。
【0017】本発明は、かかる原理に基づいてなされた
ものである。非係合時の位置で隣り合ったローラ同士を
結ぶ外接線よりも外側に凸の領域があるようにカム面7
の断面形状を設定することにより、カム面角度βを低減
することができ、係合トルクを低減することができる。
外側に凸の領域は、非係合位置から係合位置までのロー
ラの可動範囲に設けられていることを要する。
【0018】かかる条件を満たす内周面形状は、例え
ば、内周面を多角形断面とし、その辺の数が前記ローラ
数のn倍(nは2以上の自然数)とすることにより実現
される。ローラとローラの間に少なくとも一つの頂点を
有する多角形断面形状ということもできる。断面形状
は、曲線を含んでも構わないことはいうまでもない。
【0019】本発明では、第2の構成として、外輪の内
周面の前記回転軸に直交する断面形状を次の形状とし
た。即ち、前記楔状空間として、非係合時における前記
ローラとの接点と、係合時における前記ローラとの接点
とを結んだ直線よりも外側に凸の部分を有する空間を形
成する形状とした。ローラの可動範囲でカム面角度が変
動する構成である。非係合位置でのカム面角度が係合位
置でのカム面角度よりも小さい場合に相当する。かかる
構成では、ローラの移動につれて係合トルクが変化し、
非係合位置では係合トルクが小さく、係合位置では大き
くなる。従って、係合時のローラの初動トルクを小さく
できる。電磁式ローラクラッチでは、電磁コイルへの通
電により保持器に係合トルクを作用させるが、電圧の印
加から電磁力の発生まではインダクタンスの影響により
時間遅れが生じることがある。第2の構成では、初動ト
ルクが小さいため、十分な電磁力が発生しない初期段階
でも、ローラの移動を開始でき、係合動作を速やかに行
うことができる。
【0020】第2の構成においては、さらに非係合時の
ローラとの接点における接線が、該接点と前記回転軸中
心とを結ぶ径にほぼ直交する形状とすることができる。
こうすれば、初動時のトルクを最小限に抑制することが
できる。
【0021】また、断面形状は、前記凸の部分が曲線で
あるものとしてもよい。こうすれば、ローラを滑らかに
移動させることができる。
【0022】第1および第2の構成では、外輪の内周面
形状の変更により、先に説明した課題を解決した。本発
明は、電磁式ローラクラッチにおける同一の課題を解決
する第3の構成として、前記第2回転軸の外周側に同心
円状に配置されて前記第1回転軸に結合され、広間隔部
と狭間隔部を有する複数の楔状空間を前記第2回転軸の
外周面との間で形成する外輪と、前記第1空隙内に設け
られ、該空隙の最も狭い間隔より大きく、最も広い間隔
よりも小さい直径の第1ローラと、前記第2空隙内に設
けられ、該空隙の最も狭い間隔よりも小さい径の第2ロ
ーラと、前記外輪に対し所定範囲で回動可能に設けら
れ、非係合時には前記第1ローラを前記広間隔部、前記
第2ローラを前記狭間隔部に保持し、係合時には前記第
1ローラおよび第2ローラを、それぞれ第1空隙および
第2空隙の一端側の所定位置に保持する保持器と、前記
保持器と相対的に回動不能、かつ軸方向に移動可能に設
けられたアマチュアと、前記アマチュアと対向する位置
で前記第2回転軸に結合された摩擦係合器と、前記摩擦
係合器側に吸引するよう、前記アマチュアに電磁力を作
用させる電磁石とを備えるものとした。第1空隙は、先
に説明した擬楔状空間に相当する。第1空隙を広間隔部
から両端に向けて末狭まりとし、第2空隙を狭間隔部か
ら両端に向けて末広がりとすれば正逆いずれの方向にも
トルクを伝達可能となる。
【0023】第3の構成によれば、保持器の回動によっ
て、第1ローラが係合位置に移動させられるとともに、
第2ローラが末広がりの端部に移動させられる。第1ロ
ーラについては、先に図1で示した通り、遠心力が抵抗
として作用する。第2ローラについては、これと逆の作
用により、遠心力が推進力として作用する。従って、第
1ローラと第2ローラとを連動して動かすことにより、
第1ローラに働く抵抗の少なくとも一部を第2ローラの
推進力で相殺することができる。この結果、係合トルク
の低減を図ることができる。
【0024】第3の構成においては、回転軸に直交する
面内における前記外輪の断面形状、即ちカム面を、非係
合時の前記第2ローラとの接点における接線と前記回転
中心から該接点への径とがほぼ直交する形状としてもよ
い。例えば、回転軸に直交する面内における前記外輪の
断面形状を、非係合時の前記第2ローラとの接点近傍で
内側に凸の形状としてもよい。こうすれば初動時に第2
ローラに作用する推進力を抑制でき、わずかなトルクで
第1ローラが係合してしまうという不安定な動作を回避
できる。
【0025】また、上記形状には、次に示す通り、遠心
力による抵抗が第2ローラに作用するのを回避できる利
点もある。移動時に第2ローラに推進力が作用するため
には、第2ローラの径方向位置が単調増加する必要があ
るが、非係合位置となる狭間隔部では、保持器と第2ロ
ーラの遊びや加工精度などに起因してこの条件が満足さ
れない場合がある。特に、狭間隔部から双方向に末広が
りになっているカム面では、非係合時に第2ローラが狭
間隔部からいずれかにずれて保持されると、こうした状
況に陥いることがある。上述の形状とすれば、非係合位
置近傍での第2ローラの径方向位置の変化を抑制するこ
とができるため、非係合時に第2ローラが狭間隔部に適
正に保持されなかったとしても、第2ローラに作用する
抵抗力を抑制することができる。
【0026】第3の構成において、第1ローラを非係合
位置に保持する方向に前記保持器を付勢する弾性部材を
備える場合には、前記内周面の形状および前記第1ロー
ラおよび第2ローラの質量は、前記保持器の回動中に伴
う、前記弾性部材による弾性トルクの増加分、前記第1
ローラに作用する遠心力の変化に伴うトルクの減少分、
前記第2ローラに作用する遠心力の変化に伴うトルクの
増加分の三者が実質的に相殺し合う条件下で設定しても
よい。こうすれば、ローラの移動開始から係合までに要
求されるトルクがほぼ一定となるため、ローラが移動し
始めた後、係合トルク不足が生じることを回避でき、係
合動作を安定させることができる。
【0027】なお、本発明では、ローラに作用する遠心
力による係合動作への悪影響を軽減するものであるか
ら、第1〜第3の構成においては、ローラを中空ローラ
としたり、セラミックス製その他の軽量材料のローラと
して、軽量化を図ることが望ましい。この場合、係合時
にはローラにトルク伝達に伴う圧力が加わるから、ロー
ラの材質および肉厚は、この圧力による損傷を招かない
範囲で設定する必要がある。
【0028】本発明は、電磁式ローラクラッチとしての
態様のみならず、その設計方法として構成することもで
きる。一例として、(a) 該電磁式ローラクラッチの
動作を保証すべき最大回転速度において、前記各ローラ
にかかる遠心力の合計Fを算出する工程と、(b) 前
記保持器に付与し得る最大トルクTを求める工程と、
(c) 非係合時における前記内周面への前記ローラの
接点における接線と、前記内周面の外接円の該接点にお
ける接線との間の角度βの上限値βLIMを、前記回転中
心からローラ中心までの距離R、ローラ数n、前記ロー
ラと内周面との摩擦係数μを用いた次式により算出する
工程と、 βLIM=tan-1{T/(n・F・R)−μ}; (d) 前記角度βが前記βLIM以下となる条件下で、
前記内周面の断面形状を設計する工程とを備える電磁式
ローラクラッチの設計方法として構成することができ
る。これは、従来とは逆のアプローチによる設計方法で
ある。従来は、伝達すべきトルクの大きさを考慮してロ
ーラ数を決め、各ローラが頂点に来る正多角形断面にカ
ム面を設計し、十分な係合トルクを作用させることがで
きるよう、保持器に付与すべきトルクT、即ち電磁石の
サイズ等を設計していた。かかるアプローチでは、全体
のサイズや消費電力を所望の範囲に収めるために、ある
程度の試行錯誤が必要であった。これに対し、本発明の
方法によれば、遠心力Fの影響を考慮して、カム面角度
の上限値を求めるため、サイズや電力等に対する要求を
満たしつつ、安定して係合動作を行うことができるクラ
ッチを容易に設計することができる。
【0029】本発明は、こうした設計方法を実現するた
めのコンピュータプログラム、該プログラムと同視し得
る種々の信号形態、コンピュータプログラムをコンピュ
ータ読みとり可能に記録した記録媒体として構成するこ
ともできる。記録媒体としては、フレキシブルディスク
やCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROM
カートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が
印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RA
MやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等、コン
ピュータが読取り可能な種々の媒体を利用できる。ま
た、こうしたコンピュータプログラムをインストールし
たコンピュータシステムにより、電磁式ローラクラッチ
の設計システムの態様で構成してもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について、以
下の項目に分けて説明する。 A.第1実施例: A1.基本構成: A2.設計方法: A3.カム面形状: B.第2実施例: C.第3実施例: D.第3実施例の変形例: E.第4実施例:
【0031】A.第1実施例: A1.基本構成:本実施例における電磁式ローラクラッ
チの基本的な構成は、先に図12〜図14を用いて説明
した従来技術と同様である。即ち、電磁式ローラクラッ
チは、外輪2と出力軸4aとを切断・結合する2方向ク
ラッチとして構成されている。外輪2の内面と出力軸4
aとの間に形成された楔状空間に組み込まれたローラ1
0が保持器8の回動に伴って周方向に移動することによ
って、両回転軸、即ち外輪2と出力軸4aとが係合され
る。なお、説明の便宜上、用語の混乱を回避するために
出力軸4aという名称を用いるが、出力軸4aから外輪
2への動力伝達も可能である。
【0032】保持器8は外輪2と一体的に回転しつつ、
スイッチバネ13(図14参照)の弾性力によってロー
ラ10を非係合位置に保持する。コイル16に通電さ
れ、保持器8とロータ18が電磁力によって吸着される
と、両者間に摩擦力が生じる。この摩擦力がある程度大
きくなると、保持器8はスイッチバネ13の弾性力に抗
じてローラ10を係合位置に移動させる。この結果、外
輪2と出力軸4aとが係合する。
【0033】本実施例の電磁式クラッチは、こうした基
本構成及び動作では従来技術と共通するが、外輪2の内
周面形状、即ちカム面形状が以下に説明する通り相違す
る。
【0034】A2.設計方法:図2は電磁式ローラクラ
ッチの設計方法を示す工程図である。最初に設計ポイン
トとして、クラッチが運用される最大回転数、係合トル
クが設定される(ステップS10)。係合トルクとは、
ローラを係合位置に移動させるために、電磁力によって
保持器8に加え得る最大トルクをいう。この値は、サイ
ズ、消費電力などの要求を考慮して設定される。なお、
これらの値は、設計ポイントであるから、実用範囲に対
し、ある程度の設計余裕を見込んで設定することができ
る。設計ポイントは、必要に応じて更に多くの項目を設
定可能であることは言うまでもない。
【0035】次に、設計ポイントに従って、カム面の限
界角度が算出される(ステップS12)。カム面の限界
角度とは、先に図1を用いて説明したカム角度βの最大
値である。限界角度βLIM(rad)は、先に示した式
(1)を解くことによって次式で得られる。 βLIM=tan-1{T/(F・R)−μ}; ここで、Fは、最大回転数において各ローラにかかる遠
心力(N);Tは、ステップS10で設定された係合ト
ルク(N・m);Rは、クラッチの回転中心から保持器
8とローラ10の接点までの距離(m);μは、ローラ
10と外輪2の内周面との摩擦係数;
【0036】こうして得られた限界角度を満たすように
カム面の形状が設計される(ステップS14)。カム面
の形状は、正多角形の他、曲面を含む形状など種々設定
可能である。
【0037】A3.カム面形状:上述の設計方法に準じ
て実現されるカム面形状を例示する。図3はカム面形状
を示す断面拡大図である。第1実施例の電磁式ローラク
ラッチ1Aについて、クラッチの回転軸に直交する断面
内において、ローラ10の近傍を拡大して示した。第1
実施例の外輪2Aは、その内周面、即ちカム面7Aが、
正多角形の断面形状をなしている。ローラ数をnとする
と、カム面7Aは2n角形となっている。カム面7Aと
出力軸の外周面4asとの間には、2n個の楔状空間が
形成され、ローラ10は、1個おきに組み込まれる。図
3には、ローラ数が10個でカム面が正20角形の場合
を例示した。
【0038】従来のカム面との差違を説明する。従来
は、ローラ10が各頂点に位置するようにカム面形状が
設定されていた。これは、ローラ同士を結ぶ外接線(図
中の破線TL)で構成される形状に相当する。本実施例
のカム面形状は、ローラ数の2倍の頂点を有するため、
ローラ同士を結ぶ外接線TLよりも外側に凸の領域TA
を有することになる。このように設定することにより、
カム面7Aのカム面角度βを小さくすることができる。
カム面角度βが小さいとはいえ、外周面4asとカム面
7Aとの間では、楔状空間が形成されているから、ロー
ラ10を非係合位置PDから係合位置PCに移動させる
ことによって、外輪2と出力軸とを係合させることがで
きる。
【0039】本実施例の電磁式ローラクラッチ1Aによ
れば、カム面角度βを非常に浅くすることにより係合ト
ルクを抑制することができる。図4は係合トルクの抑制
効果を示すグラフである。クラッチの回転数と係合トル
クとの関係を示した。曲線C15はカム面角度が15度
の場合の係合トルクを示す。外接線TLでカム面形状を
構成した場合に相当する。曲線C8はカム面角度が8度
の場合の係合トルクを示す。本実施例のカム面形状に対
応する。図示する通り、カム面角度が浅くなることによ
り、係合トルクが約45%低減する。このように係合ト
ルクが低減することにより、本実施例の電磁式ローラク
ラッチは、係合動作の安定化、消費電力の抑制、装置サ
イズの低減を図ることができる。
【0040】先に説明した通り、電磁式ローラクラッチ
1Aの係合トルクには、ローラ10に働く遠心力が影響
を与える。本実施例では、遠心力自体を低減させるた
め、ローラの軽量化を図ることも望ましい。図4中に
は、軽量化による係合トルクへの影響を併せて示した。
曲線CL8は、カム面角度が8度の状態で、ローラの重
量を30%軽減した場合の係合トルクを示している。こ
の軽量化により、さらに約16%の係合トルク低減を図
ることができる。軽量化は、ローラ10をセラミックス
等の軽量材料で形成したり、ローラ10を中空にするな
どの方法で実現することができる。係合時には外輪2と
出力軸4aとの間の伝達トルクに応じた圧力(以下、
「係合面圧」と呼ぶ)がローラ10に作用する。従っ
て、材質および肉厚は、係合面圧によってローラ10が
損傷を受けない範囲で適宜設定する必要がある。
【0041】本実施例の電磁式ローラクラッチによれ
ば、係合面圧の低減による装置の小型化という効果も生
ずる。一般に係合面圧は、カム面角度βの減少に伴って
低減することが知られている。本実施例では、カム面角
度βを小さく設定できるから、ローラ10のより一層の
軽量化、小型化を図ることが可能となる。これは、ロー
ラ10に作用する遠心力の低減につながるため、係合ト
ルクの更なる低減、コイル16の小型化につながる。
【0042】第1実施例では、ローラ数nに対し2n角
形のカム面形状を例示した。カム面形状は、これに限ら
ずm×n角形(mは2以上の自然数)として構成するこ
とが可能である。また、質量分布の軸対称性が維持でき
る範囲で、カム面形状は正多角形に限らず、ローラ数n
に対し(n+1)角形を適用してもよい。図2で説明し
たカム面限界角度の要件を満足する形状であれば、曲線
を含む断面形状であっても構わない。
【0043】第1実施例では、図2で説明したカム面限
界角度の要件を比較的容易に満足できるカム面形状とし
て2n角形の断面形状を例示した。このカム面形状は、
必ずしも図2の設計工程を経て設定される必要はない。
結果的にカム面限界角度の要求を満足すればよい。
【0044】B.第2実施例:第1実施例で説明した設
計方法(図2参照)に従って設計されたカム面形状につ
いて更に例示する。図5は第2実施例のカム面形状を示
す断面拡大図である。第2実施例の電磁式ローラクラッ
チ1Bの構成は、外輪2Bを除いて図12〜図14で示
した従来技術と同じである。第2実施例は、カム面7B
が曲線を含む断面形状となっている点で従来技術および
第1実施例と相違する。
【0045】図5の下段には、ローラの近傍を更に拡大
した断面図を示した。第2実施例のカム面7Bは、ロー
ラ10の可動範囲で断面形状が外側に凸の円弧状の曲線
となっている。このカム面形状は、非係合時におけるロ
ーラ10と外輪2Bとの接点Ptdと、係合時における
接点Ptcとを結んだ直線よりも外側に凸の部分を有す
る形状ともいえる。このカム面7Bは、第1実施例と同
様、出力軸4aとの間で楔状空間を形成する。カム面角
度βはローラ10の可動範囲で変動する。つまり、ロー
ラ10が非係合位置PDにある場合には0度、係合位置
PCにある場合にはβ1度となっている。係合位置にお
けるカム面角度β1は、カム面限界角度βLIMよりも浅
く設定されている。
【0046】第2実施例の電磁式ローラクラッチ1Bに
よれば、非係合位置PDにおけるカム面角度が非常に浅
いため、係合の初期にローラ10に加えられるべき初動
トルクを低減することができる。この結果、以下に示す
作用により、クラッチを速やかに係合させることができ
る。
【0047】図6はコイル16への電圧指令値と電流と
の関係を示す説明図である。時刻t1においコイル16
への電圧印加が開始されたとする。インダクタンスの影
響により、コイル16には、電圧の印加から徐々に電流
が増え、時刻t2に至った後、印加された電圧に応じた
電流が流れる。電流値は、コイル16により生じる電磁
力に比例する。従って、電磁力も電圧印加直後は低く、
所定時間経過した後に所望の値に達する。
【0048】第2実施例の構成によれば、初動トルクが
小さいため、電圧印加直後の比較的小さな電磁力でロー
ラ10の移動を開始することができる。かかる作用によ
り、第2実施例では、電圧の印加からクラッチの係合ま
での時間を短縮することができる。
【0049】第2実施例では、非係合位置PDでのカム
面角度が0となるカム面形状を例示した。カム面角度が
非係合位置PDでは小さく、係合位置PCに近づくにつ
れて大きくなる種々のカム面形状を適用可能である。ま
た、カム面形状は、ローラ10の可動範囲で曲線となっ
ている必要もない。
【0050】第2実施例においても、係合位置における
カム面角度は、カム面限界角度の要求を満たす程度に小
さく設定されるから、第1実施例と同様、ローラ10へ
の面圧を低減することができ、装置の小型化を図ること
ができる。また、遠心力による影響を更に低減させるた
め、第1実施例と同様、ローラ10の軽量化を図ること
も好適である。
【0051】C.第3実施例:係合トルクの低減は、カ
ム面形状のみならず、遠心力による影響を低減するため
のダミーローラを用いることによっても実現できる。第
3実施例では、かかる構成を例示する。
【0052】図7は第3実施例における電磁式ローラク
ラッチ1Cの断面拡大図である。回転軸に直交する断面
においてローラの近傍を拡大して示した。電磁式ローラ
クラッチ1Cも、基本的な構成は、図12〜図14で示
した従来技術と同じである。第3実施例では、ローラ、
保持器、外輪の構成が従来技術と相違する。
【0053】図示する通り、外輪2Cのカム面は出力軸
4aとの間で、広間隔部の両端に狭間隔部を備える末狭
まりの第1空間と、その逆の末広がりの第2空間とを交
互に形成する。末狭まりとは、回転軸の回転方向(例え
ば図中の矢印方向)に沿って間隔が狭まっていることを
いい、末広がりとはその逆をいう。末狭まりの空間は、
楔状空間と同義である。
【0054】第1空間、第2空間には、ローラ10c、
10dが組み込まれている。保持器8Cは、両者を共に
保持するよう構成されている。ローラ10cの径は、第
1空間の広間隔部の間隔よりも小さく、狭間隔部の間隔
よりも大きい。ローラ10dの径は、第2空間の狭間隔
部の間隔よりも小さい。従って、ローラ10cは、非係
合位置(図中実線の位置)から係合位置(破線の位置)
に移動することにより、外輪2Cと出力軸4aとを係合
させる。ローラ10dは、いずれの位置にあっても、外
輪2Cと出力軸4aとの係合には関与しない。図から明
らかな通り、非係合位置から係合位置への移動に伴っ
て、ローラ10cはクラッチの回転中心Oからの距離が
縮まり、ローラ10dは距離が伸びる。こうした特徴に
より第3実施例の電磁式ローラクラッチは、以下の作用
を奏する。
【0055】図8は第3実施例の電磁式ローラクラッチ
1Cにおける係合トルクを示す説明図である。クラッチ
の回転数と係合トルクとの関係を示した。曲線C1は、
ローラ10cを係合位置に移動させるためのトルクであ
る。先に図1で示した通り、ローラ10cに対しては遠
心力が抵抗として作用するから、係合トルクは正の値と
なる。遠心力が回転数の自乗で大きくなるのに伴って係
合トルクも大きくなる。
【0056】曲線C2はローラ10dを移動させるため
のトルクである。図1で示したのと逆の原理により、ロ
ーラ10dについては、遠心力が移動方向への推進力と
して作用する。従って、係合トルクは負となる。
【0057】曲線C3は保持器に付加されるべき係合ト
ルクである。保持器は曲線C1に相当する係合トルクを
ローラ10cに加えるとともに、曲線C2に相当する推
進力をローラ10dから受け取る。従って、保持器に付
加されるべき係合トルクは、曲線C1,C2の和に相当
する。図示する通り、両者が一部相殺することによっ
て、保持器に付加されるべき係合トルクは非常に小さく
なる。ローラ10c,10dの係合トルクが十分に相殺
するよう、それぞれの重量、および第1空間、第2空間
の形状は設定される必要がある。
【0058】以上の作用により、第3実施例の電磁式ロ
ーラクラッチは、係合トルクを低減することができる。
従って、係合動作の安定化、装置の小型化、消費電力の
低下を図ることができる。
【0059】D.第3実施例の変形例:係合子となるロ
ーラ10cと、係合トルク軽減を図るためのダミーとな
るローラ10dとを備える構成において、カム面形状に
は種々の変形例が考えられる。図9は第3実施例の変形
例としてのカム面形状を示す拡大断面図である。変形例
の電磁式ローラクラッチ1Dの外輪2Dは、カム面7D
が曲線で構成されている点で第3実施例と相違する。
【0060】ローラ10cは末狭まりの第1空間、ロー
ラ10dは末広がりの第2空間に保持されている点で
は、第3実施例と同様である。第1空間の断面形状は、
第2実施例(図5参照)と同様、ローラ10cの可動範
囲で外側に凸の曲線で構成されている。このため、ロー
ラ10cの初動トルクが低減される。第2空間の断面形
状は、逆に内側に凸の曲線で構成されている。このた
め、非係合位置からの移動初期においてローラ10dに
作用する推進力は小さい。変形例では、ローラ10c,
10dへの遠心力の影響が移動初期には小さく、終期に
は大きくなることで互いにバランスをとっている。
【0061】変形例によれば、非係合時におけるローラ
10dの位置のずれによる悪影響を緩和できる利点があ
る。ローラ10dは非係合時に図中の実線の位置P2に
保持されるべきであるが、保持器8Cとの遊びや加工誤
差により、図中の一点鎖線の位置P1に保持された場合
を考える。ローラ10cが係合位置に移動するにつれ
て、ローラ10dは図中の破線の位置P3に移動するも
のとする。このとき、ローラ10dは、位置P1,P
2,P3の順に移動する。位置P1→P2の移動時に
は、クラッチの回転中心からローラ10dまでの距離は
縮む。この区間では、ローラ10dに作用する遠心力
は、移動への抵抗力となる。第2空間のカム面角度が非
係合位置近傍で比較的大きい場合には、ローラ10dの
保持位置がずれた場合に、遠心力による抵抗力が大きく
なる。これは、クラッチの係合動作の遅れを招く。初動
トルクは比較的小さいのが通常であるから、遠心力によ
る影響は特に大きく現れる。変形例の構成は、かかる悪
影響を軽減し、クラッチを速やかにかつ安定して係合さ
せることができる。
【0062】E.第4実施例:第4実施例として、第3
実施例で例示した電磁式ローラクラッチ1Cと、その動
作を制御するユニットとを組み合わせたシステムを例示
する。図10は第4実施例としてのクラッチシステムの
概略構成を示す説明図である。
【0063】電磁式ローラクラッチ1Cは、第3実施例
とほぼ同じ構成である。このクラッチシステムでは、コ
イル16への通電を制御するユニットとして、バッテリ
101、駆動回路102、制御ユニット100を備え
る。駆動回路102は、バッテリ101を電源として、
コイル16への通電を制御するための回路であり、トラ
ンジスタ等のスイッチング素子から構成される。制御ユ
ニット100は、駆動回路102のスイッチング素子が
オンとなるデューティを制御することにより、コイル1
6に任意の電圧を印加することができる。この電圧に伴
って、コイル16には電流が流れ、電磁式ローラクラッ
チ1Cに結合された2つの回転軸S1,S2間の動力伝
達が実現される。
【0064】ここで、第4実施例に適用される電磁式ロ
ーラクラッチ1Cのローラ10c,10dの重量につい
て説明する。図11はローラの動作角度と係合トルクと
の関係を示す説明図である。特定の回転数での状態を示
した。動作角度は、図1に示した通り、非係合位置から
係合位置までのローラ10cの移動角度をいう。
【0065】図11中の曲線L1は、ローラ10cを移
動させるためのトルクを示している。移動につれてロー
ラ10cとクラッチの回転中心との距離は縮まるから、
動作角度の増加に伴って、ローラ10cの係合トルクは
減少する。厳密には、曲線状に減少するが、動作角度は
比較的小さいため、直線で近似することができる。
【0066】曲線L2は、ローラ10dを移動させるた
めのトルクを示している。ローラ10cとは逆に、動作
角度の増加に伴って、ローラ10dに働く推進力の絶対
値は増加する。ローラ10dの係合トルクも直線で近似
することができる。曲線L3は、ローラ10c、10d
の係合トルクの和である。直線L4は、スイッチバネ1
3の弾性力によるトルク変化分である。弾性力は、動作
角度、即ち、スイッチバネ13のたわみ量に比例して増
加する。第4実施例では、曲線L3と直線L4がほぼ相
殺するように設定されている。最初に直線L4を求め、
これとほぼ相殺するようにローラ10c,10dの重量
を調整することにより実現される。こうすることによ
り、係合初期から終期までの係合トルクをほぼ一定にす
ることができる。
【0067】この結果、第4実施例のクラッチシステム
では、クラッチを安定して係合させることができる。つ
まり、係合トルクが一定であるため、ローラ10c,1
0dが移動を開始した後、係合トルクの不足が生じる可
能性が低い。
【0068】ここでは、第3実施例の電磁式ローラクラ
ッチ1Cを用いた場合を例示したが、その変形例の電磁
式ローラクラッチ1D(図9)を用いることもできる。
係合トルクは、動作角度に対し厳密に一定値となる必要
はなく、動作の安定化が図れる程度に変動範囲が抑制さ
れていればよい。
【0069】以上、本発明の種々の実施例について説明
したが、本発明はこれらの実施例に限定されず、その趣
旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採ることができるこ
とはいうまでもない。上述の実施例では、2つの回転軸
の結合・切り離しを行うクラッチシステムを例示した。
このクラッチシステムを2つ同心円状に配置して3つの
回転軸、即ち内軸、中間軸、外軸につき、中間軸を選択
的に内軸と外軸とに結合・切り離しする2段クラッチと
して構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】遠心力による係合トルクへの影響を示す説明図
である。
【図2】電磁式ローラクラッチの設計方法を示す工程図
である。
【図3】カム面形状を示す断面拡大図である。
【図4】係合トルクの抑制効果を示すグラフである。
【図5】第2実施例のカム面形状を示す断面拡大図であ
る。
【図6】コイル16への電圧指令値と電流との関係を示
す説明図である。
【図7】第3実施例における電磁式ローラクラッチの断
面拡大図である。
【図8】第3実施例の電磁式ローラクラッチにおける係
合トルクを示す説明図である。
【図9】第3実施例の変形例としてのカム面形状を示す
拡大断面図である。
【図10】第4実施例としてのクラッチシステムの概略
構成を示す説明図である。
【図11】ローラの動作角度と係合トルクとの関係を示
す説明図である。
【図12】従来技術としての回転伝達装置1の回転軸に
沿った面内の断面図である。
【図13】回転伝達装置1のA−A断面図である。
【図14】回転伝達装置1のB−B断面図である。
【符号の説明】
1…回転伝達装置 1A、1B,1C,1D…電磁式ローラクラッチ 2、2A、2B、2C、2D…外輪 4a…出力軸 4as…外周面 7、7A、7B、7D…カム面 8、8C…保持器 10、10c,10d…ローラ 13…スイッチバネ 16…コイル 18…ロータ 21…アマチュア 100…制御ユニット 101…バッテリ 102…駆動回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 永松 茂隆 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動 車株式会社内 (72)発明者 野▲崎▼ 孝志 静岡県磐田市東貝塚1578番地 エヌティエ ヌ株式会社内 (72)発明者 齋藤 隆英 静岡県磐田市東貝塚1578番地 エヌティエ ヌ株式会社内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1回転軸と第2回転軸の結合および切
    り離しを電磁力の作用によって行う電磁式ローラクラッ
    チであって、 前記第2回転軸の外周側に同心円状に配置されて前記第
    1回転軸に結合され、広間隔部と狭間隔部を有する複数
    の楔状空間を前記第2回転軸の外周面との間で形成する
    外輪と、 前記楔状空間内にそれぞれ設けられた複数のローラと、 前記外輪に対し所定範囲で回動可能に設けられ、非係合
    時には前記広間隔部に前記ローラを保持し、係合時には
    前記狭間隔部に前記ローラを保持する保持器と、 前記保持器と相対的に回動不能、かつ軸方向に移動可能
    に設けられたアマチュアと、 前記アマチュアと対向する位置で前記第2回転軸に結合
    された摩擦係合器と、 前記摩擦係合器側に吸引するよう、前記アマチュアに電
    磁力を作用させる電磁石とを備え、 前記外輪の内周面は、前記回転軸に直交する面内におい
    て、非係合時に外輪に接した位置で隣り合ったローラ同
    士を結ぶ外接線よりも外側に凸の領域がある断面形状を
    有している電磁式ローラクラッチ。
  2. 【請求項2】 前記外輪の内周面は、多角形断面をなし
    ており、その辺の数が前記ローラ数のn倍(nは2以上
    の自然数)となっている請求項1記載の電磁式ローラク
    ラッチ。
  3. 【請求項3】 第1回転軸と第2回転軸の結合および切
    り離しを電磁力の作用によって行う電磁式ローラクラッ
    チであって、 前記第2回転軸の外周側に同心円状に配置されて前記第
    1回転軸に結合され、広間隔部と狭間隔部を有する複数
    の楔状空間を前記第2回転軸の外周面との間で形成する
    外輪と、 前記楔状空間内にそれぞれ設けられた複数のローラと、 前記外輪に対し所定範囲で回動可能に設けられ、非係合
    時には前記広間隔部に前記ローラを保持し、係合時には
    前記狭間隔部に前記ローラを保持する保持器と、 前記保持器と相対的に回動不能、かつ軸方向に移動可能
    に設けられたアマチュアと、 前記アマチュアと対向する位置で前記第2回転軸に結合
    された摩擦係合器と、 前記摩擦係合器側に吸引するよう、前記アマチュアに電
    磁力を作用させる電磁石とを備え、 前記外輪の内周面の前記回転軸に直交する断面形状は、
    前記楔状空間として、非係合時における前記ローラとの
    接点と、係合時における前記ローラとの接点とを結んだ
    直線よりも外側に凸の部分を有する空間を形成する形状
    である電磁式ローラクラッチ。
  4. 【請求項4】 前記断面形状は、さらに非係合時のロー
    ラとの接点における接線が、該接点と前記回転軸中心と
    を結ぶ径にほぼ直交する形状である請求項3記載の電磁
    式ローラクラッチ。
  5. 【請求項5】 前記断面形状は、前記凸の部分が曲線で
    ある請求項3記載の電磁式ローラクラッチ。
  6. 【請求項6】 第1回転軸と第2回転軸の結合および切
    り離しを電磁力の作用によって行う電磁式ローラクラッ
    チであって、 前記第2回転軸の外周側に同心円状に配置された状態で
    前記第1回転軸に結合され、該第2回転軸の外周面との
    間で、広間隔部から周方向の少なくとも一方に向けて末
    狭まりの第1空隙と、狭間隔部から該一方に向けて末広
    がりの第2空隙とを、少なくとも一つずつ形成する外輪
    と、 前記第1空隙内に設けられ、該空隙の最も狭い間隔より
    大きく、最も広い間隔よりも小さい直径の第1ローラ
    と、 前記第2空隙内に設けられ、該空隙の最も狭い間隔より
    も小さい径の第2ローラと、 前記外輪に対し所定範囲で回動可能に設けられ、非係合
    時には前記第1ローラを前記広間隔部、前記第2ローラ
    を前記狭間隔部に保持し、係合時には前記第1ローラお
    よび第2ローラを、それぞれ第1空隙および第2空隙の
    前記一端側の所定位置に保持する保持器と、 前記保持器と相対的に回動不能、かつ軸方向に移動可能
    に設けられたアマチュアと、 前記アマチュアと対向する位置で前記第2回転軸に結合
    された摩擦係合器と、 前記摩擦係合器側に吸引するよう、前記アマチュアに電
    磁力を作用させる電磁石とを備える電磁式ローラクラッ
    チ。
  7. 【請求項7】 前記回転軸に直交する面内における前記
    外輪の断面形状は、非係合時の前記第2ローラとの接点
    における接線と前記回転中心から該接点への径とがほぼ
    直交する形状である請求項6記載の電磁式ローラクラッ
    チ。
  8. 【請求項8】 前記回転軸に直交する面内における前記
    外輪の断面形状は、非係合時の前記第2ローラとの接点
    近傍で内側に凸の形状である請求項6記載の電磁式ロー
    ラクラッチ。
  9. 【請求項9】 請求項6記載の電磁式ローラクラッチで
    あって、 前記第1ローラを非係合位置に保持する方向に前記保持
    器を付勢する弾性部材を備え、 前記内周面の形状および前記第1ローラおよび第2ロー
    ラの質量は、前記保持器の回動中に伴う、前記弾性部材
    による弾性トルクの増加分、前記第1ローラに作用する
    遠心力の変化に伴うトルクの減少分、前記第2ローラに
    作用する遠心力の変化に伴うトルクの増加分の三者が実
    質的に相殺し合う条件下で設定されている電磁式ローラ
    クラッチ。
  10. 【請求項10】 前記ローラは中空ローラである請求項
    1〜9いずれか記載の電磁式ローラクラッチ。
  11. 【請求項11】 前記ローラはセラミックス製のローラ
    である請求項1〜9いずれか記載の電磁式ローラクラッ
    チ。
  12. 【請求項12】 第1回転軸と第2回転軸の結合および
    切り離しを電磁力の作用によって行う電磁式ローラクラ
    ッチのうち、 前記第2回転軸の外周側に同心円状に配置された状態で
    前記第1回転軸に結合され、非円形断面の内周面を有す
    ることによって、該第2回転軸の外周面との間で周方向
    の位置によって広間隔部の少なくとも一端に狭間隔部が
    存在する複数の楔状空間を形成する外輪と、 前記楔状空間内にそれぞれ設けられた複数のローラと、 前記外輪に対し所定範囲で回動可能に設けられ、非係合
    時には前記広間隔部に前記ローラを保持し、係合時には
    前記狭間隔部に前記ローラを保持する保持器と、 前記保持器と相対的に回動不能、かつ軸方向に移動可能
    に設けられたアマチュアと、 前記アマチュアと対向する位置で前記第2回転軸に結合
    された摩擦係合器と、 前記摩擦係合器側に吸引するよう、前記アマチュアに電
    磁力を作用させる電磁石とを備える電磁式ローラクラッ
    チの設計方法であって、(a) 該電磁式ローラクラッ
    チの動作を保証すべき最大回転速度において、前記各ロ
    ーラにかかる遠心力の合計Fを算出する工程と、(b)
    前記保持器に付与し得る最大トルクTを求める工程
    と、(c) 非係合時における前記内周面への前記ロー
    ラの接点における接線と、前記内周面の外接円の該接点
    における接線との間の角度βの上限値βLIMを、前記回
    転中心からローラ中心までの距離R、ローラ数n、前記
    ローラと内周面との摩擦係数μを用いた次式により算出
    する工程と、 βLIM=tan-1{T/(n・F・R)−μ}; (d) 前記角度βが前記βLIM以下となる条件下で、
    前記内周面の断面形状を設計する工程とを備える設計方
    法。
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KR101863502B1 (ko) * 2016-06-09 2018-05-31 도요타지도샤가부시키가이샤 구동 전달 장치

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101863502B1 (ko) * 2016-06-09 2018-05-31 도요타지도샤가부시키가이샤 구동 전달 장치

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