JP2002028401A - 金属捕集材からの金属の溶離回収及び溶離液の再生方法 - Google Patents
金属捕集材からの金属の溶離回収及び溶離液の再生方法Info
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Abstract
川水や排水から有害重金属等を捕集除去した金属捕集材
から、できるだけ少ない廃棄物発生量で、捕集された有
用金属や有害金属を効率的に分離回収する方法を提供す
る。 【解決手段】 本発明に係る金属捕集材からの金属の溶
離回収方法は、金属を吸着した金属捕集材に、濃度の薄
い溶離液を接触させる第1工程;第1工程よりも濃度の
高い溶離液を金属捕集材に接触させて、目的の金属を溶
離液中に回収する第2工程;第2工程で得られた使用済
みの溶離液を再生すると同時に、回収された目的の金属
を更に濃縮する第3工程;を含み、第3工程において再
生された溶離液を、第1工程の溶離液として再使用する
ことを特徴とする。
Description
属を捕集したり、或いは河川水や排水から有害重金属等
を捕集除去した金属捕集材から、できるだけ少ない廃棄
物発生量で捕集された有用金属や有害金属を効率的に分
離回収する方法に関する。
ト、バナジウムなどの有用金属が多く含まれている。日
本は、これらの金属のほぼ100%を輸入に頼っている
ので、海水中からこれらの金属を採取することができれ
ば、エネルギーの自給という長年の悲願を達成できるば
かりでなく、有用希少金属の海外依存度を小さくするこ
とができ、更には地球環境の保護にも寄与できる。
は、1960年頃に英国で、また日本においても197
0年代の前半から行われた。試みられた方法は、チタン
酸を主成分とした捕集材を用いたものであり、捕集容量
や捕集速度が小さく、また捕集材の耐久性も十分なもの
ではなかった。したがって、経済評価が先行し、地球環
境の保護、省資源・省エネルギー、長期的なエネルギー
源の確保といった観点から海水中の有用金属の捕集技術
が開発されたことはなかった。例えば、カラム流通方式
で海水を捕集装置内に流入させてウランを回収するとい
う手法に関しては、ポンプ動力が、回収したウランのエ
ネルギーの大半を占めてしまうという問題があった。
ウランをはじめとする有用金属の捕集に有効であること
が見出された。また、1980年代の前半になると、放
射線グラフト重合法による機能性材料の開発が盛んにな
り、既存のポリオレフィン繊維のグラフト側鎖にアミド
キシム基を導入した捕集材が提案され、更に性能が向上
した。
び省資源・省エネルギーを求める社会的背景により、1
990年代に入って再び海水中の有用金属を捕集・回収
する技術の開発の必要性が叫ばれるようになった。
効率的に捕集・回収して利用するためには、優れた金属
捕集材の開発も重要であるが、一方、金属を捕集した捕
集材から目的の金属を溶離回収する方法の開発も重要で
ある。例えば、捕集材から金属を溶離しても、それが有
効に回収されずに廃棄されてしまうと、折角捕集した金
属を有効に利用することができない。また、金属捕集材
は、例えば河川水や工場排水から有害な重金属等を捕集
除去する目的でも用いることができるが、この場合の使
用後の捕集材の処理方法として、捕集された金属を溶離
回収して金属を単独で回収・処理すると共に捕集材を再
利用可能にするという方法が考えられる。この方法にお
いて、金属の溶離回収の際に、その一部が回収されずに
廃棄されてしまうと、環境汚染などの問題を引き起こす
おそれがある。
鑑み、金属を吸着捕集した金属捕集材から、できるだけ
廃棄物を発生させずに且つエネルギーを消費しないで、
捕集された金属を溶離回収する方法を見出すべく鋭意研
究を重ねてきた。
属を、廃棄物の発生を極力抑えながら効率的に溶離する
方法は、これまで皆無であった。これを達成するために
は、性能のよい捕集材、目的金属の効率的な溶離方法、
及び溶離液の再利用などの開発が必要である。
階的に行う方法は、イオン交換の分野では従来から行わ
れている。例えば、カルシウムイオンの多い原水をイオ
ン交換し、再生を硫酸で行う場合には、石膏(CaSO
4)の生成を抑えるために、硫酸の濃度を、最初は低
く、次に段階的に高くして数段で再生する方法があり、
Stepwise再生法と呼ばれている。しかし、これは、目詰
まりの原因を取り除いて正常な再生が実施できるように
することを目的としており、被吸着物質を積極的に分離
回収しようと考えたものではなかった。
用方法ばかりでなく、捕集材の溶離特性も重要な影響を
与える。従来のイオン交換樹脂は、スチレンの骨格をジ
ビニルベンゼンで架橋させた三次元網目構造を有してい
るため、高分子鎖が剛直であり、スルホン基や4級アン
モニウム基などのイオン交換基がこの剛直な高分子鎖に
導入されているため、イオンの吸着速度や拡散速度が小
さい。したがって、吸着済みのイオン交換樹脂への再生
剤の拡散速度も低いため、再生効率が小さいばかりでな
く、吸着されたイオン、例えばカルシウムイオンなどの
2価金属イオンと、ナトリウムイオンなどの1価金属イ
オンとの分離効率も小さい。このような問題は、イオン
交換の分野ばかりでなく、本発明が関係する金属の吸着
及びその溶離に関してもあてはまる。
題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成す
るに至った。即ち、本発明は、金属を吸着した金属捕集
材に、濃度の薄い溶離液を接触させる第1工程;第1工
程よりも濃度の高い溶離液を金属捕集材に接触させて、
目的の金属を溶離液中に回収する第2工程;第2工程で
得られた使用済みの溶離液を再生すると同時に、回収さ
れた目的の金属を更に濃縮する第3工程;を含み、第3
工程において再生された溶離液を、第1工程の溶離液と
して再使用することを特徴とする、金属捕集材からの金
属の溶離回収方法に関する。
主成分とするキレート樹脂を用い、海水からウラン、バ
ナジウムなどの有用金属を吸着捕集するために使用され
た金属捕集材から、吸着捕集された有用金属を溶離回収
する方法を例として、本発明に係る方法の説明を行う。
なお、海水からウラン等を吸着捕集した捕集材からウラ
ン等を回収するという以下に例示する方法は、本発明を
適用することのできる方法の一例であり、他の金属を捕
集した捕集材から当該金属を回収するためにも本発明を
適用することができることは、当業者であれば容易に理
解できる。
ミドキシム基を主成分とするキレート樹脂を、数十日間
海水中に浸漬して、ウランやバナジウム等を吸着した使
用済みの金属捕集材を、まず、濃度の低い溶離液、例え
ば0.01規定及至0.1規定の塩酸と接触させる。こ
の程度の薄い塩酸では、ウランやバナジウムは溶離せ
ず、マグネシウムやカルシウムなどが先ず溶離する。次
に、第2工程として、捕集材を、第1溶離液よりも高い
濃度の溶離液と接触させる。例えば、0.5規定の塩酸
と接触させると、捕集材に吸着されたウランの90%以
上が溶離する。溶離液中のウランの濃度は、数十ppm
のオーダーであるので、海水中での濃度3ppbが10
000倍に濃縮できたことになる。また、第2工程の溶
離液中には、マグネシウムやカルシウムなどの不純物が
少なく、精製も合わせて行われたことになる。
回収した金属の精製方法、溶離のし易さ、官能基の種類
や耐久性などに依存して適宜選択される。例えば、ウラ
ンやバナジウムが回収目的の金属である場合には、塩酸
が溶離液として好ましく用いられる。また、有害重金属
であるニッケル、銅などをイミノジ酢酸基という官能基
を有する捕集材で捕集した場合には、溶離液として塩
酸、硫酸などが好ましく用いられる。また、溶離液とし
て用いるべき濃度は、第1溶離液にあっては、目的とす
る金属が溶離しないが、それ以外の金属が溶離するよう
な濃度、第2溶離液にあっては、目的とする金属が溶離
するような濃度である。これは、用いる溶離液の種類、
回収すべき金属の種類、第1溶離工程において除去すべ
き回収対象でない金属の種類、使用環境における汚染物
の付着状況などによって変動し、先行試験を行うことに
よって、経験的に定められる。例えば、回収目的金属が
ウランで、溶離液として塩酸を用いる場合には、第1溶
離液の塩酸の好ましい濃度は、0.01〜0.1規定、
第2溶離液の塩酸の好ましい濃度は0.2〜1規定であ
る。
生すると同時にウランを濃縮する第3工程を行う。即
ち、第3工程においては、第2工程のウラン含有溶離液
を分離して、ウランを除去した再生溶離液と、ウランを
濃縮した濃縮溶離液とを生成させる。
イオンを除去した液と、金属イオン濃縮液とを生成させ
る方法としては、例えば、電気透析によって行う方法が
挙げられる。電気透析法は、主要部が直流の電場とイオ
ン交換膜より構成されているもので、製塩のために海水
を濃縮したり、或いは飲料用のために高塩濃度の水を脱
塩するのに利用されている。溶離液は、金属捕集材と接
触し、一部消費されたり、液量の増加に伴う濃度低下が
起こる。例えば、溶離液として塩酸を用いた場合、金属
捕集材に吸着されていたウランの他に、カルシウムやマ
グネシウムも同時に溶離する。これらの溶解金属イオン
を除去して、塩酸濃度を高めるのには、電気透析法が最
適である。
は、正電極2と陰電極3との間に、陰イオン交換膜4及
び陽イオン交換膜5がこの順番に配置されている電気透
析槽1を示す。両イオン交換膜に挟まれた部分6が脱塩
室を形成する。例として、ウラニルイオンUO2 2+を含
む塩酸からなる溶離液をこの電気透析槽で処理する方法
について説明する。電極2及び3に直流電流を流しなが
ら、ウラニルイオンを含む塩酸溶離液7を脱塩室6に導
入する。なお、酸濃縮室11への導入液としては、第1
溶離液又は第2溶離液と同様の液(例えば同等の濃度の
塩酸溶液など、或いは溶離液それ自体)を用いることが
できる。また、金属イオン濃縮室12への導入液として
は、ウラニルイオンを含む溶離済み液を用いることがで
きる。例えば、金属イオン濃縮室12への導入液として
は、脱塩室に導入するものと同じウラニルイオンを含む
塩酸溶離液7を通液することができ、或いは、前回のプ
ロセスにおいて得られたウラニルイオンが濃縮された濃
縮液を導入して、更に濃度を高めることもできる。通電
により、ウラニルイオンUO2 2+は、陰電極に引かれて
移動し、陽イオン交換膜5を通って金属イオン濃縮室1
2に入る。その結果、金属イオン濃縮室12からは、ウ
ラニルイオンが濃縮された濃縮液9が得られる。一方、
塩酸の塩素イオンCl-は、陽電極に引かれて移動し、
陰イオン交換膜4を通って酸濃縮室11に入る。その結
果、酸濃縮室11からは、金属イオンを含まない塩酸
(HCl)溶液が得られる。金属イオンは、陰イオン交
換膜を通過することができず、また、塩素イオン(Cl
-)は陽イオン交換膜を通過することができないので、
金属イオンを含む塩酸溶離液から、再生された塩酸溶離
液及び金属イオンの濃縮液を得ることができる。また、
脱塩室からは、金属イオン及び塩素イオンの両方が除去
された水が得られるので、これを、溶離液濃度調整用の
希釈水として用いることができる。
から微量に含まれる金属イオンを回収・濃縮し、塩酸を
再生するだけであれば、図1に示されるような通常の電
気透析装置は必要なく、例えば、図2に示されるような
陽イオン交換膜のみを用いた装置でも、金属イオンの濃
縮及び溶離液の再生を行うことができる。これについて
説明すると、図2の装置11は、正電極12と陰電極1
3との間に、陽イオン交換膜14が配置されている。両
電極間に電流を通電しながら、微量のウラニルイオンを
含む塩酸溶離済み液17を、処理室15中に導入する
と、溶離液中に含まれる微量のウラニルイオンUO2 2+
は、陰電極13に引き寄せられ、陽イオン交換膜を通過
して、金属イオン濃縮室16に入る。これにより、処理
室15からは、金属イオンが除去された再生溶離液が得
られ、金属イオン濃縮室19からは、金属イオンが濃縮
された濃縮液が得られる。なお、この態様においては、
濃縮室への導入液として、金属イオンを含む溶離済み液
(例えば処理室に導入する塩酸溶離済み液17と同じも
の)を用いることができる。本発明においては、このよ
うに直流の電場とイオン交換膜のように水を透過しない
がイオンを選択的に透過させることのできる膜を用い
て、金属イオン溶液から、金属イオン濃縮液と金属イオ
ン除去液とを得る方法を総称して「電気透析法」と称す
る。
金属濃縮を、電気透析法によって行う場合には、イオン
交換膜に加えて、脱塩室(処理室)及び/又は濃縮室内
においてイオン交換樹脂、イオン交換繊維、イオン交換
ネット、キレート樹脂、キレート繊維、キレートネット
などから選択される少なくとも1種のイオン交換体又は
キレート材料を装填して、イオン移動媒体として用いる
と、金属の分離性能、分離効率、電気特性等が格段に向
上されるので、好ましい。
って、溶離金属が除去された再生溶離液及び目的の金属
が濃縮された濃縮液が得られる。再生された溶離液は、
必要に応じて濃度を調整した後、第1工程及び/又は第
2工程における溶離液として再使用することができる。
これにより、用いられる溶離液を、プロセス内で有効に
再利用することが可能になる。
的金属濃縮液を、更に金属捕集材とは別の金属再吸着材
料に接触させて、目的の金属を吸着させることができる
(第4工程)。これによって、ウランの更なる濃縮と精
製が可能になる。この第4工程で用いることのできる金
属再吸着材料は、酸性溶液中でウランと錯安定度定数の
大きなキレート基を有するものの中から選択することが
できる。用いられる金属再吸着材料の種類は、回収対象
の金属の種類に依存して定められることは言うまでもな
く、どの金属に対してどの金属再吸着材料が好ましいか
は、当業者であれば容易に決定することができる。ま
た、用いることのできる金属再吸着材料の形態として
は、ビーズ状樹脂、繊維材料、織布又は不織布材料、ネ
ット状材料、スポンジ状材料、板状材料、フィルム状材
料、或いはこれらの加工品の形態を用いることができ
る。
料としては、キレート樹脂を好ましく用いることができ
る。かかる目的で用いられるキレート樹脂としては、ポ
リスチレンを架橋させた三次元網目構造を骨格とするも
のを用いることができるが、グラフト重合を利用したキ
レート樹脂の方が、吸着速度、溶離液との拡散速度、他
の金属との分離効率などの点で有利である。また、特定
金属に特に親和性のある官能基を有するもの、例えば包
接化合物などからなる材料を捕集材及び/又は金属再吸
着材料として用いることもできる。
第2工程との間に、第1工程の溶離液の濃度よりも高い
が第2工程の溶離液の濃度よりも低い濃度の溶離液を用
いて捕集材と接触させる工程を更に含むことができる。
海水中にはウランばかりでなく、バナジウム、チタン、
コバルトなどのような他の有用金属も含まれており、こ
れらも金属捕集材で捕集することができる。捕集材に接
触させる溶離液の濃度を段階的に高くすると、その濃度
に対応して特定の金属イオンが溶離する。この方法によ
り、回収目的の金属の溶離液中に他の金属イオンが混入
することを防止することができる。なお、この場合にお
いては、各溶離段階において用いる溶離液の濃度は、所
望の特定の金属イオンのみが溶離するような濃度を選択
する。かかる濃度は、回収すべき金属イオンの種類や用
いられる溶離液の種類等によって変動するが、先行試験
を行うことによって、経験的に定めることができる。こ
の態様においては、各段階において得られる特定の金属
イオンを溶離させた溶離済み液は、それぞれ別々に第3
行程にかけて、目的の金属を濃縮させると共に、溶離液
を再生させる。
る使用済み溶離液及び/又は第4工程で得られる処理済
み溶離液(目的の金属を金属再吸着材料に再吸着させた
後の溶離液)を、必要に応じて濃度を調整した後に、第
1工程前の捕集材洗浄液として用いることができる。海
水中に長期間浸漬させた捕集材には、海中生物、それら
の分泌物や死骸が多く付着している。これらの付着物
は、海水の組成と異なる水溶液に接触させることで、そ
の多くを除去することができる。この理由は不明である
が、浸透圧やpHなどが影響しているものと思われる。
したがって、本発明方法の第1工程前に、捕集材を洗浄
することが望ましい。この目的で用いられる洗浄液とし
ては、第1工程で得られる使用済み溶離液や、第4工程
で得られる金属再吸着処理済みの溶離液を、適宜濃度を
調整して用いることができる。
属再吸着処理済み溶離液は、その濃度が第2工程におい
て用いられる溶離液の濃度よりも多少下回っているの
で、これを適宜希釈した後、第1工程における溶離液と
して用いることができる。
又は第4工程で用いた溶離液を再使用することができ、
用いられる溶離液を、プロセス内において更に有効に再
利用することが可能になる。
目的の金属を再吸着させた金属再吸着材料においては、
目的の金属が非常に高濃度に濃縮されている。樹脂を取
り出してそのまま分解して目的の金属を回収することが
できる。また、第4工程において用いる溶離液よりも更
に濃度の高い溶離液を用いて、目的の金属を再吸着させ
た金属再吸着材料と接触させることによって、該金属を
溶離液中に回収することもできる。
金属捕集材の一例としては、官能基としてアミドキシム
基及び/又はイミドジオキシム基を含む金属捕集材料を
挙げることができる。アミドキシム基というキレート官
能基は、海水中のウラン等の有用金属との錯安定度定数
が大きく、海水中からウランを回収するという用途に最
も適したキレート官能基である。アミドキシム基は脱ア
ンモニアしてイミドジオキシム基に容易に移行すると言
われているが、いずれの官能基も、金属捕集材に使用す
ることができる。このような官能基を有する捕集材を、
海流中に係留することにより、海流等の自然流を利用し
て海水中のウラン等の有用金属を捕集することができ
る。また、金属捕集材の他の例としては、イミノ二酢酸
基を有する鉄、銅、コバルト、ニッケルなどを吸着する
ための捕集材、チオール基を有する水銀用の捕集材など
を挙げることができる。
できる金属捕集材の形態の一例としては、繊維の集合体
である織布又は不織布材料を挙げることができる。捕集
材の形態を織布又は不織布とすることにより、繊維の利
点である表面積の大きさが生かされ、また、織布や不織
布は、任意の形状に容易に成形加工ができるので、海流
を利用した吸着方式を採用し易い。有用金属の吸着量
は、捕集材への海水流入量が大きいほど多くなる。従来
のビーズ状樹脂の場合、充填塔方式であるため、圧力損
失が大きく、流入海水量が小さかった。
る金属捕集材は、高分子基材の主鎖上に、放射線グラフ
ト重合法を用いて、所期のキレート官能基を有する重合
体側鎖が導入されたものであることが好ましい。金属捕
集材の吸着及び溶離特性は、キレート基の種類ばかりで
なく、高分子鎖の構造も重要な影響を与える。上記のよ
うに、高分子基材の主鎖上にグラフト側鎖を導入する
と、グラフト鎖は架橋していないため、運動量が極めて
大きく、大きな吸着速度と拡散速度を得られる。したが
って、海水という高塩濃度の媒体中に存在する3ppb
という微量のウランや他の有用金属を効率よく吸着し、
また、高効率で分別溶離するのに特に優れている。
放射線を照射してラジカルを生成させ、それにグラフト
モノマーを反応させることによって、所望のグラフト重
合体側鎖を基材に導入することのできる方法であり、グ
ラフト鎖の数や長さを比較的自由にコントロールするこ
とができ、また、織布/不織布をはじめとする各種形状
の既存の高分子材料に重合体側鎖を導入することができ
るので、金属捕集材を製造する目的で用いるのに最適で
ある。
できる放射線としては、α線、β線、γ線、電子線及び
紫外線等が挙げられるが、γ線及び電子線が特に好まし
い。グラフト重合法には、放射線を基材に照射した後、
重合性単量体を接触させてグラフト重合反応を行わせる
前照射グラフト重合法と、基材と重合性単量体の共存下
に放射線を照射する同時照射グラフト重合法とがある
が、本発明方法によって処理される金属捕集材の製造に
おいては、いずれの方法も採用することができる。
のできる金属捕集材としてアミドキシム基及び/又はイ
ミドジオキシム基を含む不織布の形態の金属捕集材料を
用いる場合、このアミドキシム基及び/又はイミドジオ
キシム基は、重合性単量体(グラフトモノマー)として
アクリロニトリルを用いて不織布基材にグラフト重合
し、これをヒドロキシルアミン等によってアミドキシム
化することによって形成することができる。
透析法を用いる場合、電気透析槽において好ましく用い
られるイオン交換樹脂、イオン交換繊維、イオン交換ネ
ット、キレート樹脂、キレート繊維、キレートネットな
どのイオン交換体又はキレート材料として、高分子基材
の主鎖上に、放射線グラフト重合法を用いて、所期の官
能基を有する重合体側鎖が導入されたものを用いること
ができる。これらの材料としてポリスチレンを架橋させ
た三次元網目構造を骨格とするものを用いてもよいが、
放射線グラフト重合法を用いて高分子基材に官能基を導
入したイオン交換体やキレート材料の方が、吸着速度、
溶離液の拡散速度、他の金属との分離効率などの点で有
利である。
面を参照しながら説明する。
フローシートである。フローシートに示された方法に従
って、海水からウラン、バナジウム等の有用金属を回収
する方法について説明する。
金属を吸着した金属捕集材を、金属捕集材溶離槽21中
に充填する。捕集材には、海水生物やその分泌物等が多
数付着しているので、まず、第1工程溶離済み液25を
用いて洗浄して、付着物を除去することができる。ま
た、洗浄液として、純水を用いてもよく、或いは、後述
の第4工程からの再吸着処理済み廃液7を適宜希釈して
用いてもよい。この洗浄工程からの洗浄廃液31には、
生物由来の固形物や有機物が含まれているので、排水規
制値に達するように、放流水処理装置(図示せず)にお
いて、所定の水処理を行った後、放流する。図3におい
ては、洗浄を溶離槽21内において行っているが、洗浄
効率が悪い場合には、別の洗浄槽(図示せず)を設け、
そこで洗浄を行ってもよい。
第1溶離液33、例えば0.1規定以下の低濃度の塩酸
を接触させ、カルシウムやマグネシウム等を溶離除去す
る(第1工程)。この工程からのカルシウムやマグネシ
ウム等を高濃度に含む廃液は、第1工程溶離済み液貯留
槽25に貯留し、次回のプロセスにおいて、洗浄液とし
て使用することができる。
離液24、例えば0.5規定以上の濃度の塩酸を、捕集
材に接触させ、ウランやバナジウム等の有用金属を溶離
する(第2工程)。得られた溶離液を貯留槽26に貯留
する。この溶離液の中には、ウランやバナジウム等の有
用金属が、ある程度の濃度(数ppmのオーダー)で含
まれている。第2工程においては、捕集材中に残留する
溶離液を押し出すために、溶離液通液後に押し出し液を
更に通液することが好ましい。この目的で用いられる押
し出し液としては、水や、また場合によっては水道水処
理水や海水などを使用することができる。
1に示すような構造の電気透析装置27に送られ、電気
透析にかけられて、含有金属が除去された再生溶離液
と、目的の金属が濃縮された濃縮液28とが得られる
(第3工程)。再生された溶離液は、必要に応じて濃度
を調整した上で、第1溶離液23及び/又は第2溶離液
24として再使用することができる。
回収目的の金属を更に濃縮するために、金属再吸着材料
槽22に通水することができる。金属再吸着材料槽22
内には、目的とする金属を再吸着させることのできるキ
レート樹脂等が充填されている。例えば、ウランの回収
を目的とする場合には、金属再吸着材料槽22内には、
アミドキシム基を主成分とする樹脂を充填することがで
きる。金属再吸着材料槽22内においては、目的とする
金属が樹脂に再吸着される(第4工程)。第4工程から
の排液は、押し出し液や洗浄液が加わるために第2溶離
液よりも多少濃度が薄くなるが、第1溶離液としては十
分に使用することができるので、適宜濃度を調整して、
第1溶離液23として用いることができる。或いは、第
4工程からの排液を、第1工程前の洗浄液として用いる
こともできる。
は、樹脂を分解することによって直接回収することがで
きる。樹脂上に金属を吸着させた状態にすると、輸送に
好都合であり、金属の精製回収を他の場所で行う場合に
有利である。或いは、金属を再吸着した材料に、更に高
濃度の溶離液29、例えば更に高濃度(例えば、1〜5
規定)の塩酸を接触させて、再吸着材料上に吸着された
金属を再び溶離液29中に溶離することもできる。この
工程から得られる溶離済み液30中には、極めて高い濃
度で目的とする金属が含まれているので、これを当該技
術において周知の方法によって回収することができる。
を、精製された状態で金属捕集材から回収することがで
きるので、海水中からウラン、バナジウムなどの有用金
属を捕集したり、或いは河川流中のカドミウム、鉛、銅
等の有害金属を捕集除去したり、工場の排水から水銀等
の有害金属を捕集除去したり、或いはニッケルメッキ工
程の排液からニッケルを除去する技術に適用すれば、回
収効率を著しく高めることができる。また、使用される
溶離液を可能な限り再利用できるので、回収にかかるコ
ストをより低減させることができる。したがって、本発
明方法は、招来のエネルギー・資源・環境問題に資する
こと大である。河川流中に配置して、したりする
60g/m2の不織布に、γ線を窒素雰囲気で150k
Gy照射した後、アクリロニトリルとメタクリル酸の混
合モノマー溶液中に浸漬し、50℃で6時間反応させ
て、グラフト重合を行った。次に、不織布をジメチルホ
ルムアミドに浸漬し、50℃で3時間洗浄した後、重量
を測定したところ、グラフト率132%が得られた。
塩酸ヒドロキシルアミンを濃度3%となるように加え、
この液に上記で得られたグラフト不織布を浸漬し、80
℃で1時間反応させてアミドキシム化を行った。次に、
水酸化カリウムの2%水溶液に浸漬し、80℃で1時間
アルカリ処理を行った。この不織布を純水で十分洗浄
し、金属捕集材として用いた。
cmの試験試料を10枚切り取り、ステンレス製の金網
からなるかご内に収容した。海流速度が約1m/秒の海
域(水深約3m)に、試験試料をいれたかごを係留し、
約3週間配置することにより、海水中の有用金属の捕集
吸着を行った。この海域における海水中のウラン濃度は
3.1ppbであった。
浄した。洗浄液として、捕集材に0.1規定の塩酸を通
液した後の廃液を用いた。次に、捕集材を、溶離用カラ
ム(直径50mm)内に充填した。充填方法は、20c
m×30cmの不織布捕集材を、5枚ずつのり巻き状に
巻き、これを2段に重ねて高さ40cmとして、カラム
に収容した。
を通液し、カラムからの流出液を次回の洗浄用に保管し
た。この流出液の中には、カルシウムやマグネシウムが
高濃度に含まれていたが、ウラン、バナジウム等の有用
金属は殆ど含まれていなかった。
mlを通液し、残留液を押し出すために、押し出し液と
して更に600mlの水をカラムに通液した。カラムか
らの全流出液1.8リットル中のウラン濃度を測定した
ところ、4.7mg/lであった。第2溶離処理済みの
捕集材を分解して、0.5規定の塩酸で溶離できなかっ
たウランの量を測定したところ0.1mg以下であり、
捕集したウランの95%以上が効率よく溶離できたこと
が分かった。
7mg/l)を、図1に示すように、面積5cm×10
cmの陽極及び陰極の間に、強酸性カチオン交換膜(旭
硝子(株)製、商品名セレミオンCMV)と強塩基性ア
ニオン交換膜(旭硝子(株)製、商品名セレミオンAM
V)とを、その間にスペーサーネットを介して間隔3m
mで配置した電気透析装置(酸濃縮室及び金属濃縮室の
厚さは3mm)の脱塩室に、10ml/分の流量で通液
し、電流0.2Aを通電した。酸濃縮室へは、0.5規
定の塩酸溶液を循環して供給し、金属濃縮室へは、第2
溶離済み液を循環して供給した。陰極側の金属濃縮室内
にウランが移動して、約13mg/lの濃度でウランを
含む濃縮液が得られた。脱塩室からの流出液のウラン濃
度は0.02mg/lと極めて低濃度であり、また陽極
側の酸濃縮室からの流出液には、ウランは殆ど含まれて
おらず、どちらの液も溶離液又は溶離液の濃度調整用の
液として再使用可能であった。
液を、更に、ウランに対して錯安定度定数の大きなビー
ズ状のキレート樹脂(ユニチカ(株)製、商品名ユニセ
レックUR−3100)5mlを充填した金属再吸着カ
ラムにSV3で通液して、ウランを樹脂上に再吸着させ
た。再吸着カラムからの流出液のウラン濃度を測定した
ところ0.013ppmであり、殆どのウランがキレー
ト樹脂に再吸着されていることが分かった。樹脂中のウ
ラン濃度は0.18%であり、海水中の濃度3ppbか
ら約60万倍に濃縮されたことが分かった。このカラム
からの流出液も、溶離液又はその濃度調整用液として再
使用可能であった。
された塩酸を用いた結果、塩酸消費量は、初回の約35
%に低減した。
置の概念を示す図である。
電気透析装置の概念を示す図である。
ートである。
Claims (9)
- 【請求項1】 金属を吸着した金属捕集材に、濃度の薄
い溶離液を接触させる第1工程;第1工程よりも濃度の
高い溶離液を金属捕集材に接触させて、目的の金属を溶
離液中に回収する第2工程;第2工程で得られた使用済
みの溶離液を再生すると同時に、回収された目的の金属
を更に濃縮する第3工程;を含み、第3工程において再
生された溶離液を、第1工程及び/又は第2工程の溶離
液として再使用することを特徴とする、金属捕集材から
の金属の溶離回収方法。 - 【請求項2】 第1工程の前に、純水及び/又は第1工
程からの使用済み溶離液を金属捕集材に接触させて、金
属捕集材を洗浄する前処理工程を更に含む請求項1に記
載の方法。 - 【請求項3】 第3工程における溶離液の再生と目的金
属の濃縮を、電気透析法を利用して行う請求項1又は2
に記載の方法。 - 【請求項4】 電気透析において、イオン交換膜に加え
て、イオン交換樹脂、イオン交換繊維、イオン交換ネッ
ト、キレート樹脂、キレート繊維、キレートネットなど
から選択される少なくとも1種のイオン交換体又はキレ
ート材料をイオン移動媒体として用いる請求項3に記載
の方法。 - 【請求項5】 第3工程で得られる金属が更に濃縮され
た濃縮液を、金属再吸着材料に接触させて目的の金属を
再吸着させる第4工程を更に含む請求項1〜4のいずれ
かに記載の方法。 - 【請求項6】 第4工程で得られる排液を、前処理工程
での洗浄液及び/又は第1工程での溶離液として再使用
する請求項5に記載の方法。 - 【請求項7】 処理される金属捕集材が、アミドキシム
基及び/又はイミドジオキシム基を含むものである請求
項1〜6のいずれかに記載の方法。 - 【請求項8】 処理される金属捕集材が、繊維の集合体
である織布又は不織布の形態のものである請求項1〜7
のいずれかに記載の方法。 - 【請求項9】 処理される金属捕集材が、放射線グラフ
ト重合法を利用して製造されたものである請求項1〜8
のいずれかに記載の方法。
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