【発明の詳細な説明】
P−セレクチンアッセイおよびその使用方法
関連出願
本願は、1996年11月13日出願の米国特許出願第08/748,387
号明細書の一部継続出願であり、その完全な教示は参照により明細書に取り込ま
れる。
発明の背景
血小板は、動脈血栓症や急性虚血性冠動脈症候群において重要な役目を果たし
ているとされている[ガワズら(Gawaz,M.et al.)、"直接血管形成で試験し
た急性心筋梗塞における血小板機能"Circulation,93:229-237(1996);トリッ
プら(Trip,M.D.et al.)、"心筋梗塞の生存者における血小板過敏性および
予後"N.Engl.J.Med.,322:1549-1554(1990);ヒルシュ(Hirsh,J.)、"過
敏性血小板および冠動脈疾患の合併症"N.Engl.J.Med.,316:1543-1544(1989)
;フリンクら(Frink,R.J.et al.)、"心筋梗塞に関連する死における冠動脈
血栓症および血小板/フィブリン微塞栓"Br.Heart.J.,59:196-200(1988)]。
血小板は、トロンビン、内皮下相互作用、人工表面との接触、およびある種の免
疫複合体の存在を含む多くの刺激を介して活性化される[ベロンら(Bellon,J.
L.et al.)、"人工心臓弁をもつ患者を追跡調査するためのβ−トロンボグロ
ブリンおよび血小板第4因子の測定"Sem.in Thromb.and Hemost.,19(Suppl 1
):178-182(1993);シャルフら(Scharf,R.E.et al.)、"血灌流血管形成−傷
害冠動脈における血小板活性化:フローサイトメトリー検出"Arteriosclerosis
and Thrombosis,12:1475-1487(1992)]。ひとたび活性化された血小板は、膜糖
蛋白質GPIIb/IIIa複合体上にフィブリノーゲン結合部位を露出し、フ
ィブリノーゲン架橋を介して血小板凝集が起きる[マックイーバ
ー(McEver,R.P.)、"血小板膜糖蛋白質の臨床的意義"Hematol.Oncol.Clin.
North Am.,4:87-103(1990);ドゥーら(Du,X.et al.)、"リガンド「活性」
インテグリンαIIbβ3(血小板GPIIb−IIIa)""Cell,65:409-416(199
1)]。
P−セレクチンはCD62、GMP−140またはPADGEMとして知られ
、白血球輸送を調節する接着受容体のセレクチンファミリーの1つである[ロー
レンスとスプリンガー(Lawrence,M.B.and T.A.Springer)、Cell,65:859(
1991);ジョンストンら(Johnston,G.I.et al.)、Cell,56:1033-1044(198
9);マックイーバー(McEver,R.P.)、米国特許第5,378,464号明細書
]。P−セレクチンは、活性化されていない血小板のα顆粒、および内皮細胞の
ヴァイベル-パラーデ体に存在する内在性膜糖蛋白質である[ペールシュケ(Pee
rschke,E.I.B.)、Am.J.Clin.Pathol.,98:455(1992);マックイーバー
(McEver,R.P.)、1993,"P−セレクチンを介した白血球相互作用"Structure
,Function and Regulation of Molecules Involved in Leukocyte Adhesion中
、リプスキーら(Lipsky,P.E.et al.)編、(Springer Verlag,New York)1
35-150頁]。血小板や内皮がトロンビン、ホルボールエステル、またはADPを
含むアゴニストにより活性化されると、分泌粒子から細胞表面へのP−セレクチ
ン転位が起き、その合成はサイトカイン類によっても増大する[ステルンベルグ
ら(Sternberg,P.E.et al.)、1985,"血小板のα顆粒膜蛋白質(GMP−1
40)は活性化後の血漿上で発現される"J.Cell Biol.,101:880-886(1985)]。
血小板上のP−セレクチン発現を最大50倍に増大させ、血栓形成につながる血
小板−白血球(単球、好中球)接着相互作用と内皮細胞−白血球付着相互作用を
誘導することができる[ウェンら(Wen,D.et al.)、J.Lab.Clin.Med.,124
:447(1994);ラーセンら(Larsen,E.et al.)、"PADGEM蛋白質:活性
化血小板と好中球および単球との相互作用を仲介するレセプター"Cell,59:305-
312(1989);ハンブルガーとマックイーバー(Hamburger,S.A.and R.
P.McEver)、"GMP−140は刺激された血小板の好中球への接着を仲介する
"Blood,75:550-554(1990)]。α顆粒膜は、表面に結合した小管系の膜と融合し
、P−セレクチンなどの糖蛋白質が特異的抗体により検出されうる表面上に拡散
する[ヌルデンら(Nurden,A.T.et al.)、Nouv.Rev.Fr.Hematol.,35:67(
1993)]。
P−セレクチンは、炎症性刺激に反応した白血球の血管内皮および血小板への
接着を引き起こすP−セレクチン、E−セレクチン、およびL−セレクチンを含
む3種類の構造的に関連した膜糖蛋白質の1つである。各セレクチン分子は、C
型レクチンに特有のNH2末端炭化水素基認識ドメインと、それに続くEGF様
モチーフと、補体調節蛋白質に含まれるものと類似のコンセンサス反復配列と、
膜貫通ドメインと、細胞質テール(cytoplasmic tail)を含んでいる[ウシヤマ
ら(Ushiyama,S.et al.)、J.Biol.Chem.,268:15229(1993)]。P−セレ
クチンの場合、これらのドメインはそれぞれ別のエキソンによってコードされて
いる。内皮細胞ライブラリーから得られたクローニングデータから、補体調節蛋
白質反復配列の数が異なる2種類と、膜貫通ドメインを欠き可溶性であると予想
される3番目のものとの3種類の型のP−セレクチンが存在することが示された
[ダンロップら(Dunlop,L.C.et al.)、"循環血漿蛋白質としてのGMP−
140のキャラクタリゼーション"J.Exp.Med.,175:1147-1150(1992)]。その
後、ヒト血小板は、膜貫通ドメインの有無にかかわらず、ほぼ等量のP−セレク
チンをコードしたmRNAを含んでいることが判明した[ジョンストンら(John
ston,G.I.et al.)、J.Biol.Chem.,265:21381(1990)]。可溶型のP−セ
レクチンが健常ドナーの血漿から単離されている。この精製蛋白質は、血小板膜
P−セレクチンの分子量(3kD以下、還元状態)とほぼ同じ分子量(非還元状
態)を有し、ポリクローナルおよびモノクローナル抗P−セレクチン抗体によっ
て免疫ブロットされた。分析的ゲル濾過研究で、血漿P−セレクチンは膜貫通ド
メインを欠くモノマーとして溶出されることが示された。固定化血小板と同様
にプラスチック結合好中球上に固定化させたところ、精製血漿P−セレクチンは
、膜結合型と同じ好中球受容体に結合した[ダンロップら(Dunlop,L.C.et al
.)、"循環血漿蛋白質としてのGMP−140のキャラクタリゼーション"J.E
xp.Med.,175:1147-1150(1992)]。血小板が可溶性P−セレクチンをコードす
るmRNAを含んでいるとすれば、血漿型のP−セレクチンは、エキソン14に
よってコードされる膜貫通配列を欠く選択的スプライシングされた可溶性P−セ
レクチンを含む可能性が高い。しかしながら、膜結合P−セレクチンのタンパク
分解により血漿P−セレクチンの一部が生じる可能性があることを示唆する証拠
がある。例えば、観察されたやや低い分子量は、膜P−セレクチンのN末端また
はC末端の蛋白質分解によるか、グリコシル化低下などの翻訳後修飾のわずかな
違いのいずれかによって、これを説明することができる[チョンら(Chong,B.H
.et al.)、Blood,83:1535(1994)]。したがって、血漿P−セレクチンは、膜
結合P−セレクチンの蛋白質分解だけでなく、RNAスプライスバリアントによ
っても産生される可能性が残る。
発明の要旨
本発明は、個体由来の試料のP−セレクチンのレベルをモニターすることによ
り、血小板の活性化状態に影響を及ぼす「抗血小板」剤の効果を評価する方法に
関する。1つの態様においては、膜結合P−セレクチンのアッセイを用いて、血
小板を含む試料(例えば血液試料、血小板高含有血漿(PRP))のP−セレク
チンのレベルをモニターする。別の態様においては、可溶性P−セレクチンのア
ッセイを用いて、予め血小板が除去されている試料[例えば血小板低含有血漿(
PPP)、血清]のP−セレクチンのレベルを測定する。好ましい態様において
は、S12、W40、G1、およびVH10を含むモノクローナル抗体などの抗
P−セレクチン抗体(1つ以上の抗体)または同様のエピトープ特異性を有する
抗体を用いて、P−セレクチンを免疫学的に検出する。非蛍光的免疫結合アッセ
イを用いて膜結合P−セレクチンを測定することが好ましく、ELISAアッセ
イを用いて可溶性P−セレクチンを測定することがさらに好ましい。とくに好ま
しい態様においては、サンドイッチELISAを用いて可溶性P−セレクチンを
測定する。また、膜結合P−セレクチンと可溶性P−セレクチンの両者を、場合
によっては同時に測定して、P−セレクチンのプロフィールを確立することもと
くに好ましい。
該方法は、膜結合P−セレクチンおよび/または可溶性P−セレクチンのレベ
ルに反映される、抗血小板療法が血小板活性化に及ぼす影響をモニターするのに
有用である。それゆえに、所望の血小板活性化レベルを維持するように、治療を
調整することができる。例えば、膜結合P−セレクチンおよび/または可溶性P
−セレクチンのレベルを測定することにより、健常者または患者における血小板
の基底活性化状態を評価することができ、上記基底活性化状態またはその他の所
望の血小板活性化状態を達成するように、療法を調整することができる。
本明細書に示すように、経皮的冠動脈形成術(PTCA)を行ったところ、可
溶性P−セレクチンのレベルの上昇を導いた。また、静脈血栓障害の1つである
深部静脈血栓症(DVT)の二次診断を有する血管手術後患者においては、術前
の可溶性P−セレクチンのレベルも上昇ならびに血管介入術後の高レベルを示し
た。したがって、別の概念において、本発明は、とくに冠動脈疾患を有する患者
における、(すなわち1つ以上の)血管介入術(例えば心血管介入、冠動脈介入
)および冠動脈介入術がとくに血小板活性化状態に及ぼす影響を評価する方法で
あって、試料の可溶性P−セレクチンのレベルを測定する工程を含む方法に関す
る。例えば、血管造影術、血管形成術[例えばバルーン法、冠動脈硬化切除術、
レーザー血管形成術、またはその他の適当な方法(ロータブレーション(rotablat
ion)および/またはステント留置の有無を問わない)]、冠動脈バイパス手術、ス
テント留置(例えば冠動脈ステント)、および/またはその他の血管介入術(例
えば血管手術、血管移植、末梢ステント配備、人工弁または人工血管挿入術(
例えば自己血管移殖術、非自己血管移植術、または人工血管移植術など)が、可
溶性P−セレクチンのレベルによって示される血小板活性化状態に及ぼす影響を
評価することができ、基底活性化状態またはその他の所望の内因性血小板活性化
状態を達成するように抗血小板療法を維持または調整することができる。同様に
、静脈血栓障害とくに深部静脈血栓症を有する患者において、可溶性P−セレク
チンのレベルによって示される血小板活性化状態を評価することができ、血小板
活性化を抑えるように抗血小板療法を開始または調整することができる。
図面の簡単な説明
添付図面に図解されるように、以下の本発明の好ましい態様のさらに詳細な説
明により、上記本発明の特徴および利点を明確にするであろう。図面の重要性は
、本発明の本質を説明することにある。
図1は、膜結合P−セレクチンの測定に有用な放射免疫測定法を説明する概略
図である。ACDはクエン酸デキストロース;PGE1はプロスタグランジンE
1;PRPは血小板高含有血漿;PPPは血小板低含有血漿;PMAはホルボー
ル ミリステート アセテート; 125I-S12 IgGは125I標識抗P−セ
レクチンモノクローナル抗体(Mab)S12。
図2は、可溶性P−セレクチンの測定に有用な酵素結合免疫吸着測定法(EI
AまたはELISA)のステップを説明する概略図である。該測定法においては
、血小板低含有血漿(PPP、ELISA緩衝液で4倍に希釈した)を、ビオチ
ン化抗P−セレクチンモノクローナル抗体S12 IgGおよびストレプトアビ
ジン結合HRP(ストレプトアビジン-HRP)と同時に、抗P−セレクチン抗体
W40被覆マイクロタイタープレートに添加する。HRPはセイヨウワサビペル
オキシダーゼ;OPDはHRPの基質であるO-フェニレンジアミン二塩酸塩。
その他の略号は図1に示したものと同様である。
図3は、ヒト293トランスフェクタントの組織培養上清から精製した組換え
生産した短縮型P−セレクチンの濃度を上昇させて(3.2ng/mlから32
0ng/ml)、実施例2で説明する可溶性P−セレクチンELISAを用いて
作成した標準曲線である。アッセイフォーマットは、W40被覆マイクロタイタ
ープレートを用いた。ビオチン化S12抗体およびストレプトアビジン-HRP
と同時に標準品をプレートに添加し、2時間保温した。20分後、4NのH2S
O4によりOPD存在下での発色を停止させた。0.996以上の相関係数が得
られた。データの最適適合として、対数間適合を選択した。アッセイの測定間精
度と測定内精度はCV<10%である。
図4A〜4Bは、放射免疫測定法(RIA、実施例1)を用いて測定した血小
板膜P−セレクチン発現量の用量依存性上昇を示したグラフである。図4Aは、
最終濃度範囲が5〜500nMのPMAによって活性化させた血小板に対する12 5
I-S12の結合量の用量依存性上昇を示す。図4Bは、PMA用量滴定の血小
板P−セレクチン発現量の活性化指標を示す。発現された内因性P−セレクチン
と、全ての利用可能なP−セレクチンの発現を刺激するように設定された条件下
で発現することができるP−セレクチンとの比を活性化の指標とした。
図5は、ReoProR(最終濃度5μg/ml)の存在下または非存在下で
PMAの滴定によって活性化された2名のドナーの血小板の活性化指標を示した
グラフである。両名のドナーはいずれも、PMA滴定の範囲内では、ReoPr
oR存在下での活性化指標が低かったことから、ReoProRは、予想に反して
、P−セレクチン発現によって測定する血小板活性化を低下させたことがわかる
。
図6は、5μg/mlのReoProTMの存在下(黒塗りバー)またはReo
ProTMの非存在下(白抜きバー)で、PMA(0nM、20nM、100nM
または500nMのPMA)とともに保温した全血試料から調製した血小板低含
有血漿(PPP)における、ELISA(実施例2)による可溶性P−セレクチン
の産生量および検出量の平均値を示した棒グラフである。生産はPMAに対し
て用量応答性を示し、ReoProは、予想に反し、24時間の実験期間中、活
性化血小板によって産生される可溶性P−セレクチンを減少させた。このグラフ
は、さまざまな濃度のPMAで刺激した3名のドナーの全血のデータを示す。
図7は、膜結合P−セレクチンの測定に有用なアッセイであるフローサイトメ
トリーアッセイによる分析用試料の調製法を説明する概略図である。図では、ア
ッセイに用いたさまざまな試薬について、以下の略号を用いた:ACDはクエン
酸デキストロース;PGE1はプロスタグランジンE1;PRPは血小板高含有血
漿;A/PはアピラーゼとプロスタグランジンE1;MTBは改変タイロード緩
衝液;FITCはフルオレセインイソチオシアナート;PMAはホルボール12
-ミリステート 13−アセテート;S12−FITCはFITC標識抗P−セ
レクチンモノクローナル抗体(Mab)S12。
図8は、膜結合P−セレクチンの測定に有用な容積測定キャピラリーサイトメ
トリー系による分析用試料の調製法を説明する概略図である。図では、アッセイ
に用いたさまざまな試薬について、以下の略号を用いた:ACDはクエン酸デキ
ストロース;PGE1はプロスタグランジンE1;WBは全血;A/Pはアピラー
ゼとプロスタグランジンE1;MTBは改変タイロード緩衝液;CD61−Cy
5は実質的にすべての血小板上に存在する受容体に結合するCy5標識Mab;
S12/W40−Cy5はCy5標識抗P−セレクチンMabのS12およびW
40の等量混合物。
図9は、患者試料から得た血漿中の可溶性P−セレクチンの測定に有用な容積
測定キャピラリーサイトメトリー系による分析用試料の調製法を説明する概略図
である。図では、アッセイに用いたさまざまな試薬について、以下の略号を用い
た:ACDはクエン酸デキストロース;A/Pはアピラーゼとプロスタグランジ
ンE1;PPPは血小板低含有血漿;W40は9.7μMのポリスチレン粒子の被
覆に用いたP−セレクチン特異的Mab;S12−Cy5はCy5標識P−セレ
クチン特異的Mab。
発明の詳細な説明
本発明は、個体由来の試料におけるP−セレクチンのレベルをモニターするこ
とにより、血小板の活性化状態に影響を及ぼす「抗血小板」剤の効果を評価する
方法に関する。1つの態様においては、膜結合P−セレクチンのアッセイを用い
て、血小板を含む試料(例えば血液試料、血小板高含有血漿(PRP))のP−
セレクチンのレベルをモニターする。別の態様においては、可溶性P−セレクチ
ンのアッセイを用いて、予め血小板が除去されている試料〔例えば血小板低含有
血漿(PPP)、血清〕のP−セレクチンのレベルを測定する。P−セレクチンの
検出にはさまざまな方法が利用できる。好ましい態様においては、モノクローナ
ル抗体S12またはモノクローナル抗体W40などの抗P−セレクチン抗体(す
なわち、1つ以上の抗体)を用いて、P−セレクチンを免疫学的に検出する。ポ
リクローナル抗体および/またはモノクローナル抗体の混合物を用いることがで
きる(例えばネズミW40、S12およびG1モノクローナル抗体のカクテル)
。例えば、被験者から試料(例えば組織および/または体液)を取得し、適当な
アッセイを用いて、P−セレクチンのレベルを評価することができる。適当なア
ッセイとしては、FACS分析、放射免疫測定法、酵素結合免疫吸着測定法(E
LISA)などの免疫学的方法などが挙げられ、化学発光測定法も含まれる。
P−セレクチンという用語は、成熟蛋白質などのP−セレクチン分子(例えば
血小板由来のもの、内皮由来のもの、膜結合したもの、可溶性のもの)、P−セ
レクチンの多型変異体または対立遺伝子変異体、およびその他のアイソフォーム
(例えば選択的スプライシングまたはその他の細胞プロセスによって産生された
もの)、および上記のものの修飾または非修飾型(例えばグリコシル化されたも
の、グリコシル化されていないもの)を含む。
P−セレクチンまたはその一部に対して反応する抗体を、本発明の方法におい
て用いることができる。好ましい態様においては、抗体は、膜結合P−セレクチ
ンおよび/または可溶性P−セレクチンあるいはその一部に特異的に結合する〔
例えば、フリエら(Furie et al.)、米国特許第4,783,330号明細書;
その教示はすべて、参照により本明細書に取り込まれる]。抗体は、ポリクロー
ナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよく、抗体という用語は、
ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両者を包含するものとする。ポリク
ローナルおよびモノクローナルという用語は、抗体調製物の均一性の程度をいう
ものであって、特定の製造方法に限定するものではない。
単離P−セレクチンおよび/または組換えP−セレクチンあるいはその一部(
合成ペプチドなどの合成分子を含む)などの適当な免疫原に対する抗P−セレク
チン抗体を生成させることができる。1つの態様においては、単離P−セレクチ
ンおよび/または組換えP−セレクチンあるいはその一部(例えばペプチド)に
対する抗体、または組換えP−セレクチンを発現する宿主細胞に対する抗体を生
成させることができる[ジョンストンら(Johnston,G.I.et al.)、Cell,56
:1033-1044(1989);およびマックエバー(McEver,R.P.)、米国特許第5,3
78,464号明細書;両文献の全教示は、参照により本明細書に取り込まれる
]。また、トランスフェクト細胞などの組換えP−セレクチンを発現する細胞を
免疫原として使用したり、受容体に結合する抗体のスクリーニングに使用したり
することができる[例えば、チュンザラパイら(Chuntharapai et al.)、J.Im
munol.,152:1783-1789(1994);チュンザラパイら(Chuntharapai et al.)
、米国特許第5,440,021号明細書参照]。
免疫抗原の調製、およびポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の製造
は、適当な技術を用いて行うことができる。さまざまな方法が記載されている[
例えばコフラーら(Kohler et al.)、Nature,256:495-497(1975)ならびにEur
.J.Immunol.6:511-519(1976);ミルステインら(Milstein et al.)、Nat
ure 266:550-552(1977);コプロウスキーら(Koprowski et al.)、米国特許
第4,172,124号明細書;ハーローとレーン(Harlow,E.and D.Lane)
、1988,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory:C
old Spring Harbor,NY);Current Protocols in Molecular Biology,Vol.2(S
upplement 27,Summer'94),アウスベルら(Ausubel,F.M.et al.)編、(John
Wiley & Sons:New York,NY),Chapter 11,(1991)]。通常、適当な不死細胞株
(例えばSP2/0などの骨髄腫細胞株)と抗体産生細胞とを融合させることに
よってハイブリドーマを製造する。抗体産生細胞、好ましくは脾臓またはリンパ
節の細胞は、目的の抗原で免疫した動物から得ることができる。融合細胞(ハイ
ブリドーマ)は、選択培養条件を用いて単離し、限界希釈法によってクローン化
することができる。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、適当なアッセ
イ(例えばELISA)によって選択することができる。
必要な特異性を有する抗体を製造または単離する他の方法としては、例えばラ
イブラリーから組換え抗体を選択する方法や、ヒト抗体全レパートリーを産生し
うるトランスジーニック動物(例えばマウス)の免疫化に依存する方法がある[
例えばジャコボビッツら(Jacobovits et al.)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
,90:2551-255(1993);ジャコボビッツら(Jacobovits et al.)、Nature,362
:255-258(1993);ロンベルグら(Lonberg et al.)、米国特許第5,545,8
06号明細書;スラニら(Surani et al.)、米国特許第5,545,807号
明細書参照]。
単鎖抗体およびキメラ抗体、ヒト化抗体(humanized antibodies)、または霊長
類化抗体(primatized antibodies)[CDR移植抗体(CDR grafted antibody)]、
またはベニヤ抗体(veneered antibodies)、ならびに異なる種に由来する部分か
らなるキメラ単鎖抗体、CDR移植単鎖抗体、またはベニヤ単鎖抗体なども、本
発明および抗体という用語の範囲に含まれる。これらの抗体のさまざまな部分は
、常法により化学的に連結させたり、遺伝子工学技術を用いて、連続(contiguou
s)蛋白質として調製することができる。例えば、キメラ鎖またはヒト化鎖をコー
ドする核酸を発現させて、連続蛋白質を製造することができる[例えばキャビリ
ーら(Cabilly et al.)、米国特許第4,816、567号明細書;キャビリー
ら(Cabilly et al.)、欧州特許第0,125,023B1号明細書;ボスら(B
oss et al.)、米国特許第4,816、397号明細書;ボスら(Boss et al.)
、欧州特許第0,120,694B1号明細書;ノイベルガーら(Neuberger,M
.S.et al.)、国際公開第86/01533号パンフレット;ノイベルガーら(
Neuberger,M.S.et al.)、欧州特許第0,194,276B1号明細書;ウイ
ンター(Winter)、米国特許第5,225,539号明細書;ウインター(Wint
er)、欧州特許第0,239,400B1号明細書;クイーンら(Queen et al.
)、欧州特許第0,451、216B1号明細書;およびパドランら(Padlan,E
.A.et al.)、欧州特許第05l9596A1号明細書参照]。また、霊長類化
抗体についてはニューマンら[(Newman,R.et al.)、BioTechnology,10:1455-1
460(1992)]を、単鎖抗体についてはラドナーら(Ladner et al.)、米国特許第4
,946,778号明細書およびバードら(Bird,R.E.et al.)、Science,242:
423-426(1988)を参照されたい。
また、キメラ抗体、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ベニヤ抗体、または単鎖抗体
の断片を含む抗体の機能的断片を生産することもできる。上記抗体の機能的断片
としては、P−セレクチンと反応するものが挙げられる。例えば、P−セレクチ
ンまたはその一部に結合しうる抗体断片も本発明に包含され、具体的にはFv、
Fab、Fab’、およびF(ab)’断片などが挙げられるが、これらに限定
されない。かかる断片は、酵素分解または組換え技術によって製造することがで
きる。例えば、パパインまたはペプシン分解により、それぞれFab断片または
F(ab’)2断片を生成することができる。抗体は、予め1つ以上の終止コド
ンを天然終止部位の上流に導入しておいた抗体遺伝子を用いて、様々な短縮型と
して製造することもできる。例えば、該重鎖部分をコードするキメラ遺伝子はF
(ab’)2重鎖のCH1ドメインとヒンジ領域をコードするDNA配列を含む
ように、設計されうる。抗体は、例えば放射性同位体やスピン標識や抗原(例え
ばFLAGタグなどのエピトープ標識)または酵素標識、蛍光基または化学発光
基などの検出可能標識の導入または付着〔直接的または間接的(例えばリンカー
を介する)〕により、修飾することができるという利点があることが認識されう
るであろうし、このような修飾型も「抗体」という用語の範囲に含まれる。
「デュアルアッセイ」または「P−セレクチンプロフィール」という用語は、
可溶性および膜結合P−セレクチンの値を測定しうるアッセイをいう。両者の値
を測定するアッセイにおいては、いずれかの値の上昇が、血小板活性化の存在の
指標となりうる。「マーカー」または「血小板活性化マーカー」という用語は、
可溶性P−セレクチンのレベルまたは膜結合P−セレクチンのレベルまたは両者
のいずれかをいう。
P−セレクチンの免疫学的評価
該方法によれば、試験対象の生体試料とP−セレクチンに対する特異性を有す
る抗体とを、該抗体とP−セレクチンの複合体の形成に適した条件下に合わせ、
複合体の形成を(直接的または間接的に)検出または測定することによって、試
料に含まれる膜結合P−セレクチンおよび/または可溶性P−セレクチンをはじ
めとするP−セレクチンのアッセイを行うことができる。試料は、直接的または
間接的(例えばヘルスケア施設から提供を受ける)に入手することができ、選ん
だ特定の試料(例えば全血、血小板高含有血漿、血小板低含有血漿、血清)およ
びアッセイ形式に適した方法によって調製することもできる。例えば、全血は、
静脈穿刺法によりACD−A、ヘパリン、またはEDTAなどの抗凝血剤を含む
容器中に採取するか、留置動脈ラインからこの容器に採取するなどの適当な方法
により採取することができる。試料と抗体を合わせる方法および複合体形成を検
出する方法もアッセイ形式に合わせて選択される。抗体は、放射性標識、蛍光標
識、または化学発光標識など直接的に検出することができるもの、または酵素標
識またはその他の抗原性または特異的な結合相手(例えばビオチン)など間接的
に検出することができる適当な標識で標識することができる。このような標識の
具体例としては、例えば蛍光標識(例えばフルオレセイン、ローダミン)、化学
発光標識(例えばルシフェラーゼ)、放射性同位体標識(例えば32P、125I、1 31
I)、酵素標識(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファター
ゼ、β-ガラクトシダーゼ)、ビオチン、アビジン、スピン標識などが挙げられ
る。複合体における抗体の検出も、後で検出する(例えば標識を用いる)二次抗
体を用いて免疫学的に行うことができる。従来の方法またはその他の適当な方法
を用いて、抗体を直接的または間接的に標識することができる。
血小板膜結合P−セレクチンの検出用アッセイ
公知方法または将来開発される方法を、膜結合P−セレクチンを測定するため
に用いることができる。1つの態様においては、本発明は、血小板結合P−セレ
クチンの発現量を測定することにより、血小板活性化レベルへの抗血小板療法の
効果を決定する方法を提供する。例えば、血小板を含有する試料を、抗体と該血
小板上で発現されたP−セレクチンの複合体の形成と、複合体の形成の検出また
は測定(間接的または直接的)に適した条件下で、P−セレクチンに対する特異
性を有する抗体と接触させることができる。とくに好ましい態様においては、放
射性同位体共役免疫結合アッセイが用いられる。内因性血小板活性化は、与えら
れた試料について発現可能な全P−セレクチンの百分率として測定することかで
きる。図1は、用いることのできるアッセイの1つのタイプを示す(実施例1も
参照)。
例えば、内因性血小板活性化は、下記工程:
(a)それぞれ前もって選ばれた数の血小板を含む第1と第2の血小板試料を得
る工程;
(b)該第1試料と、ホルボール ミリステート アセテート(PMA)、AD
P(アデノシンニリン酸)、トロンビン、コラーゲン、および/またはTRAP
(トロンビン受容体活性化ペプチド)などの血小板活性化アゴニストとを、該第
1試料における血小板の活性化に適した条件下で、好ましくは該血小板を最大限
に活性化させるのに有効な時間に渡り、好ましくは第2の試料を内因性血小板活
性化レベルの維持に適した条件下に接触させる工程、
(c)好ましくは血小板上で発現されたP−セレクチンに結合するのに必要な量
より過剰量にて、該2つの試料と、
(i)放射性標識を含有する抗P−セレクチン抗体、または
(ii)放射性標識を含有する二次抗体との結合部位を含有する抗P−セレクチ
ン抗体、
など抗P−セレクチン抗体を含有する組成物とを、該抗P−セレクチン抗体と活
性化血小板の標識複合体の形成に適した条件下に接触させる工程、
(d)該第1試料における複合体検出量と比較した該第2試料における複合体検
出量を、該第2試料における血小板活性化の程度の指標として、該試料中の複合
体の形成を測定(検出または定量)する工程、
を含む免疫結合アッセイによって評価することができる。
例えば、該第1試料における複合体検出量に対する該第2試料における複合体
検出量を反映する比率は、該第2試料における血小板活性化の程度の尺度が得ら
れる。放射免疫測定法を用いる場合、該第1試料に対する該第2試料の放射活性
の比率を、該第2試料における血小板活性化の程度の指標として、各試料におけ
る標識複合体に含まれる放射活性を決定することにより、複合体の形成を評価す
ることができる。
第1と第2試料は同じドナーから採取したものであることが好ましい。とくに
好ましい態様においては、第1と第2の試料をほぼ同時に採取する(例えは1名
のドナーから得た1つの試料を分割したり、連続的に採取した2つの試料からそ
れぞれ得る)。
本アッセイは、前単離工程や血小板数標準化を経ないで全血に対して行うこと
もでき、したかって実質的に処理時間が短縮される。例えば、血小板活性化レベ
ルを測定しようとするドナーから全血試料を得ることができ、これを2分割する
ことができる。一方の試料はPMAなどの血小板アゴニストで処理して血小板を
最大限に活性化させ、他方の試料は活性化アゴニストで処理しないで、内因性(
イン・ビボ)活性化レベルを維持するように設定された条件下に維持する(例え
ばアプロチニン、テオフィリン、アピラーゼ、および/またはプロスタグランジ
ンE1などの活性化阻害剤の添加などによる)。放射性標識抗P−セレクチン抗
体を両方の試料に加え、P−セレクチンへの特異的結合に適した条件下に試料を
維持するが、結合が完了するまで維持することが好ましい。結合の程度が評価量
である。該試料を処理して、非結合抗P−セレクチン抗体から複合体を分離する
ことができる。例えば、試料を、タイロードの改変緩衝液などの血小板活性化状
態を変化させない緩衝液で1:6に希釈し、30%スクロースバリヤー(barrier
)に重層し(例えばあらかじめローディングしておいた微量遠心管中で)、微量
遠心分離(例えば11,000×gで4分間)することができる。放射性標識抗
P−セレクチン抗体が結合したペレットをクリップし、ガンマカウンターで計数
することができる。最大限に活性化させた試料に対する内因性活性化試料の放射
活性の百分率を計算し、試料の活性化指数(AI)とすることができる。このよう
にして、内因性血小板活性化を、発現可能なP−セレクチンの総量の百分率とし
て測定することかできる。
すなわち、さらに、本発明は、(a)第1と第2の全血試料を得る工程、
(b)好ましくは該第2の全血試料を内因性血小板活性化レベルの維持に適した
条件下に維持しながら、該第1試料とホルボール ミリステート アセテート(
PMA)などの血小板活性化アゴニストとを、該試料における血小板の活性化に
適した条件下に、好ましくは該血小板を最大限に活性化させるのに有効な時間に
渡り接触させる工程、
(c)該試料を、好ましくは血小板上で発現されたP−セレクチンに結合するの
に必要な量より過剰量にて、
(i)放射性標識を有する抗P−セレクチン抗体、または
(ii)放射性標識を有する第2抗体との結合部位を有する抗P−セレクチン抗
体などの抗P−セレクチン抗体を含有する組成物とを、該抗P−セレクチン抗体
と活性化血小板の標識複合体の形成に適した条件下に接触させる工程、
(d)該2つの試料における複合体の形成を決定(検出または測定)する工程で
あって、ここで、該第1試料の複合体検出量に対する該第2試料の複合体検出量
を、該第2試料における血小板活性化の程度の指標とする
を含む、血小板活性化を測定しようとするドナーの全血試料における内因性血小
板活性化を測定するための放射性同位体共役免疫結合アッセイを提供する。
上記のように、該第1試料において検出された複合体の量に対する該第2試料に
おいて検出された複合体の量を反映する比率は、該第2試料における血小板活性
化の程度の尺度を提供しうる。
膜結合P−セレクチンのレベルを評価する他の方法は、フローサイトメトリー
がある。血小板または膜結合P−セレクチンを測定するためのフローサイトメト
リーの方法は当該分野において公知である[シャッティルら(Shattil,Sanford
J.et al.)、"活性化依存性のモノクローナル抗体およびフローサイトメトリを
用いる全血中の活性化血小板の検出"Blood,Vol.70,No.1(July),1987:pp 3
07-315;シャルフら(Scharf,Rudiger E.,et al.)、"血灌流血管形成術傷害
冠動脈における血小板の活性化、フローサイトメトリー検出"Arteriosclerosis
and Thrombosis,第12巻,第12号(12月),1992:1475-1487頁;これら文献の
教示はすべて、参照により本明細書に取り込まれる]。また、本願の同時継続出
願である1996年11月13日出願の「静脈血栓障害、血管介入、および抗血
小板療法のモニタリングにおけるP−セレクチンの評価」という名称の米国特許
出願第08/748,387号明細書、および1997年10月7日出
願の「P−セレクチンのレベルの検出による血栓事象の診断」という名称の米国
特許出願第08/946,350号明細書の教示もすべて、参照により本明細書
に取り込まれる。
1つの例示においては、血小板を含有する試料とP−セレクチンに対する特異
性を有する抗体とを、抗体と血小板上で発現されたP−セレクチンの複合体の形
成に適した条件下に接触させ、複合体の形成の検出または測定(直接的または間
接的)することができる。とくに好ましい態様においては、抗体S−12をFI
TCと共役させる。図7は、1つのタイプのフローサイトメトリーアッセイを説
明する(実施例9も参照)。
別の例示においては、膜結合P−セレクチンの値は、
(a)血小板を含有する第1試料および第2試料を得る工程、
(b)対照とする該第1試料とホルボール ミリステート アセテート(PMA
)、ADP(アデノシン二リン酸)、トロンビン、コラーゲン、および/または
TRAP(トロンビン受容体活性化ペプチド)などの血小板活性化アゴニストと
を、好ましくは、第2の試料を内因性血小板活性化レベルの維持に適した条件下
に維持しながら、該第1試料における血小板の活性化に適した条件下に、好まし
くは、該血小板を最大限に活性化させるのに有効な時間に渡って接触させる工程
、
(c)好ましくは血小板上で発現されたP−セレクチンに結合するのに必要な量
より過剰量にて、該試料と蛍光標識を有する抗P−セレクチン抗体などの抗P−
セレクチン抗体から成る組成物とを、該抗P−セレクチン抗体と活性化血小板の
標識複合体の形成に適した条件下に接触または染色させる工程、
(d)検出された複合体の量を、該第2試料における血小板活性化の程度の指標
として、該2つの試料における複合体の形成を測定(検出または定量)する工程を
含む、フローサイトメトリーによって評価することができる。
膜結合P−セレクチンのレベルのもう1つのアッセイ法は、容積測定キャピラ
リーサイトメトリー系による分析に関する。容積測定キャピラリーサイトメトリ
ー系の具体例としては、Biometric Imaging社(Mountain View,CA)製のIMA
GN2000TMが挙げられる。図8および実施例10で説明するように、P−セ
レクチン特異的抗体またはその混合物を用いて、膜結合P−セレクチンを測定す
る。抗体は蛍光物質で標識することが好ましい。使用する抗体は、それぞれ蛍光
物質Cy5(Amersham-Searle社)で標識したS−12とW−40の混合物または
カクテルであることがさらに好ましい。容積測定キャピラリーサイトメトリー系
は、事象数と蛍光強度を検出するものである。
具体的には、(a)血小板を含有する試料を得る工程、
(b)該試料とアピラーゼやプロスタグランジンE1などの安定化試薬とを接触
させて、イン・ビトロの血小板活性化を防止し、かつ血小板上で発現されたP−
セレクチンを安定化させて、イン・ビボの血小板活性化の尺度を得る工程、
(c)該試料と蛍光標識を有する抗P−セレクチン抗体などの抗P−セレクチン
抗体から成る組成物とを、好ましくは血小板上で発現されたP−セレクチンに結
合するのに必要な量より過剰量にて、該抗P−セレクチン抗体と活性化血小板の
標識複合体の形成に適した条件下に接触または染色する工程、
(d)複合体検出量を、該試料における膜結合P−セレクチンのレベルの指標と
して、該試料における複合体の形成を決定(検出または測定)する工程、
を含む、容積測定キャピラリーサイトメトリー系によって、膜結合P−セレクチ
ンのレベルを評価することができる。
合計血小板数を評価すれば、血小板活性化の程度の決定に役立つため、膜結合
P−セレクチンに加え、合計血小板数を測定することが好ましい。試料を、実質
的にすべての血小板に対して特異的である蛍光物質標識抗体と接触させた後、事
象の数または蛍光強度を検出することによって、合計血小板数を測定することが
できる。抗体は、糖蛋白質GPIIb/IIIa、CD61,10E5、CD4
1、およびCD42など、実質的にすべての血小板上に存在する受容体に対して
特異的である抗体が好ましい。これらの抗体は、蛍光物質Cy5(Amersham-Sear
Ie社)によって標識することができる。
例えば、
(a)血小板を含有する試料を得る工程、
(b)該試料を、蛍光標識を有する抗GPIIB/IIIa抗体などの抗血小板
抗体を含有する組成物とを、好ましくは血小板に結合するのに必要な量より過剰
量にて、該抗P−セレクチン抗体と血小板の標識複合体の形成に適した条件下に
接触または染色する工程、
(c)複合体の検出量を、該試料における合計血小板数の指標として、該試料に
おける複合体の形成を決定(検出または測定)する工程、
を含む方法で、容積測定キャピラリーサイトメトリー系により合計血小板数を評
価することができる。
これらの方法を用いて、P−セレクチンプロフィールから独立的にまたはその
一部として膜結合P−セレクチンを測定して、血小板活性化を診断したり、抗血
小板療法の有効性をモニターしたりすることができる。
可溶性P−セレクチン検出のためのアッセイ
可溶性P−セレクチンを測定するために、いかなる現在公知の方法または将来
開発される方法をも用いうる。本発明は、抗血小板治療剤および/または血管介
入術による治療を受けた患者の血漿における可溶性P−セレクチンのレベルを決
定することにより、抗血小板療法および/または血管介入術(例えばPTCA)
が血小板活性化レベルに及ぼす影響を決定する方法を提供する。血小板活性化状
態は、治療前、治療中、および/または治療後に評価することができるため、選
択された時点において、基底状態に比較した患者の内因性血小板活性化状態の変
化を検出することができる。内因性血小板活性化レベルを適当な対照(例えば健
常者)のレベルと比較することによって、血小板活性化亢進状態を評価すること
もできる。
好ましい態様においては、ELISAアッセイを用いて可溶性P−セレクチン
を測定し、とくに好ましい態様においては、サンドイッチELISAを用いる。
図2は、行うことのできる1つのアッセイタイプを説明したものである(実施例
2も参照)。1つの態様においては、ネズミW40を捕捉抗体として用い、ネズ
ミS12をディテクター抗体(detector antibody)として用いる。
適当な試料中の可溶性P−セレクチンを検出する場合、試料(例えば血液)を
採取するが、例えば血清または血漿を調製することによって(例えば血小板低含
有血漿の単離)、試料から血小板を除去(一部または全部)することが好ましい。
追加のP−セレクチンの産生(例えば血小板からの分泌やタンパク分解による)
によるものなど可溶性P−セレクチンのアーチファクト増大を低下させるのに適
した時間内に血小板を除去するように試料を処理することが好ましい。例えば、
約1時間以内、好ましくはただちに、上記処理を開始することが望ましい。試料
は、さらに適宜処理することができる(例えばアッセイ緩衝液(例えばELIS
A希釈液)による希釈)。
したがって、本発明は、
(a)ディテクター抗体が捕捉抗体によって認識されるものとは異なるP−セレ
クチンエピトープを認識するように、該抗P−セレクチン抗体と可溶性P−セレ
クチンの複合体の形成に適した条件下で、適当な試料と、
(i)ビオチン化抗P−セレクチンMab(例えばS12)とHRP−ストレプ
トアビジン、または
(ii)HRP結合抗P−セレクチンMabなどディテクターとしての抗P−セ
レクチン抗体を含有する組成物と、抗P−セレクチン捕捉抗体を結合させた(直
接的または間接的に)マイクロタイタープレートなどの固相支持体とを合わせる
工程、
(b)該試料における複合体の形成を測定する工程
を含む、酵素結合免疫吸着測定法などのアッセイを用いて、適当な試料(例えば
血清、血小板低含有血漿(PPP))における可溶性P−セレクチンを測定するこ
とで、抗血小板療法および/または血管介入術(例えばPTCA)が血小板活性
化レベルに及ぼす影響を測定する方法を提供する。
マイクロタイタープレート、ディップスティック、ビーズ、またはその他の適
当な支持体などの固相支持体は、抗P−セレクチン抗体で直接的または間接的に
被覆することができる。例えは、マイクロタイタープレートは、抗P−セレクチ
ン抗体で被覆することができ、ビオチン化抗P−セレクチンMabをストレプト
アビジン被覆支持体に加えてもよい。さまざまな固相支持体および固定化または
被覆化方法を用いることができ、目的の形式に応じて選ぶことができる。
とくに好ましい態様においては、試料(または可溶性P−セレクチン標準物質
)を、ディテクター抗体と同時に固相支持体と任意にディテクターをモニターす
ることができる(すなわち、1つ以上の)試薬と合わせる。例えば、試料(例え
ばPPP)は、(a)HRP結合抗P−セレクチンMabまたは(b)ビオチン
化抗P−セレクチンMabおよびHRP−ストレプトアビジンと同時に固相支持
体と合わせることができる。
上記のようにして、適当な試料について、既知量の可溶性P−セレクチン標準
物質を調製し、処理することができ、検出されたP−セレクチンの量の定量に用
いることができ、標準物質に対する相対的レベルを測定することができる。1つ
の態様においては、可溶性短型P−セレクチンを標準物質として用いる。
検出された複合体の量を適当な対照と比較して、レベルが上昇しているかどう
かを評価することができる。例えば、血管介入術後の可溶性P−セレクチンのレ
ベルを、個体の基底レベル(例えば術前または術中に測定したもの)、または健
常者または適当な対照におけるレベルと比較することができる。
本発明の1つの態様においては、凝血促進ゲルを有するまたはもたない、抗凝
血剤の非存在下で凝固させるドナー由来全血から単離した血清に対して、アッセ
イを行うことができる。例えば、全血を採取することができる(例えば血清分離
用に設計された凝血促進ゲルプラグの存在下または非存在下、抗凝血剤の非存在
下でバキュテイニナー(vacutaininer)に採取する)。血液を凝血させ、凝血細
胞ペレット上面から血清を採取することができる。血清は、上記ELISA形式
でただちにアッセイしてもよいし、-70℃で凍結させてから分析してもよい。
凝血の過程で、表面にP−セレクチンを発現している可能性のある血小板微小粒
子が遊離する。血清を107,000×gで3時間超遠心分離に付したところ、
上記可溶性P−セレクチンELISA形式では微小粒子結合P−セレクチンは検
出されなかった(表1)。表1からわかるように、血清中に検出された可溶性P−
セレクチンの量は、試料を、血清から微小粒子を除去するであろう手順である超
遠心分離に付した後でも変化しなかった。したがって、ELISAは血清中の可
溶性P−セレクチンのみを測定することになる。このアッセイにおいては、血清
中の可溶性P−セレクチンの平均量は、血漿中で見られるものより上昇している
(表1)。
表1
微小粒子を除去するための超遠心分離は、W40-S12 Mab ELISAで検出される可溶
性P-セレクチンを顕著に変えない 表1は、107,000×gで3時間の超遠心分離を行っても、血漿または血
清の可溶性P−セレクチンELISAにおけるP−セレクチンの検出量は変化し
ないことを示す。これらの結果から、超遠心分離により除去されるはずの微小粒
子は、可溶性P−セレクチンELISAにおいては検出されないが、血漿P−セ
レクチンのみか検出されていることを示唆する。表中、ACD−Aは酢酸デキス
トロース溶液Aを示す。
すなわち、とくに好ましい態様においては、適当な試料における可溶性P−セ
レクチンを測定するアッセイは、下記工程:
(a)適当な試料(例えば血漿)を得る工程、
(b)マイクロタイタープレートを、抗P−セレクチン捕捉抗体(例えはW40
)で被覆、またはビオチン化抗P−セレクチン捕捉抗体(例えばW40)をマイ
クロタイタープレートなどのストレプトアビジン被覆固相支持体に添加する工程
、
(c)抗P−セレクチンディテクター抗体が、捕捉抗体によって結合されるもの
とは異なるP−セレクチンエピトープに結合するように、該マイクロタイタープ
レートに、試験対象の試料(例えばELISA希釈液で最終的に4倍に希釈した
もの)と、
(i)HRP結合抗P−セレクチンディテクター抗体(例えばHRP−S12)
または
(ii)ビオチン化抗P−セレクチンディテクター抗体(例えばビオチン化Ma
b S12)とHRPストレプトアビジンなどのディテクター抗体および任意に
検出用試薬を含有する組成物とを、好ましくは同時に添加し、これらのものを該
抗P−セレクチン抗体と可溶性P−セレクチンの複合体との形成に適した条件下
、好ましくは結合を最大化させる条件下で保温する工程、
(d)捕捉抗体と可溶性P−セレクチンとディテクター抗体とを含有する複合体
(例えば洗浄により)を分離する工程、
(e)該複合体における可溶性P−セレクチンの量を測定する工程、
を含む。
P−セレクチンの典型的なアッセイとしては、プレートを1次抗体で被覆し、
血漿を添加し、プレートを洗浄し、2次標識抗体を添加し、プレートを洗浄し、
結合した第2の抗体を定量する連続アッセイである。しかしながら、結合動態を
調べたところ、同時形式では、2次抗体のオフ率が低下し、アッセイはより高感
度であることが示された(実施例2)。したがって、固相支持体を捕捉抗体(例
えばW40)で被覆し、血漿とディテクター抗体(例えばS12)を同時に添加
する同時形式により、感度を高めることができるため、この態様が好ましい。
複合体における可溶性P−セレクチンの量は、さまざまな方法によって測定す
ることができる。例えば、HRPを標識として用いる場合、OPDなどの適当な
基質を添加して、結合した抗P−セレクチンMabに正比例し、したがって試料
中の可溶性P−セレクチンに正比例する色強度(例えば光学密度によって評価す
る)を生ぜしめることができる。
結果は、適当な対照(例えば標準物質、健常者におけるP−セレクチンのレベ
ル、同じドナーから得た試料のベースラインレベルのP−セレクチンのレベル)
と比較することができる。例えば、試料の代わりに既知量の可溶性P−セレクチ
ン標準物質を用いてアッセイを行い、標準曲線を作成することができる。次いで
、既知量の可溶性P−セレクチン標準物質によって産生される複合体の量に対す
る試料中の複合体形成量を測定することができる。
可溶性P−セレクチンのもう1つの測定法は、容積測定キャピラリーサイトメ
トリー系を利用するものである。図9は、容積測定キャピラリーサイトメトリー
系が行うことができる1つのタイプのアッセイを説明したものである(実施例1
1も参照)。1つの態様においては、ネズミW40を捕捉抗体として用い、ネズ
ミS12をディテクター抗体として用いる。
容積測定キャピラリーサイトメトリー系を利用して可溶性P−セレクチンを測
定する場合、上記ELISAおよびサンドイッチELISAで用いる抗体検出コ
ンセプトが適用される。上記ELISA法は、用いる支持体表面と検出方法が容
積測定キャピラリーサイトメトリー系による測定に適したものとなるように適合
させることができる。
上記したように、適当な試料を取得する。適当な時間内、好ましくは1時間以
内に血小板が除去され、追加のP−セレクチンの産生によるものなどの可溶性P
−セレクチンのアーチファクト増大を低下させるように、試料を処理する。さら
に、イン・ビトロの血小板活性化を安定化させ、防止する試薬を添加することが
できる。これらの安定化試薬の具体例としてはアピラーゼやPGE1などが挙げ
られる。P−セレクチンに対して特異的な抗体を、ビーズ、固相支持体ストリッ
プ、または修飾キャピラリー表面などの支持体表面上に被覆または固定化する。
試料を、被覆面と接触させる。被覆抗体はW40であることが好ましい。あるい
は、さらに好ましくは、P−セレクチンまたはP−セレクチンと被覆抗体の複合
体に対して特異的な別の抗体を試料と接触させることも可能である。この第2の
抗体を、Cy5などの蛍光物質で検出可能な状態に標識する。次いで、容積測定
キャピラリーサイトメトリー系で、可溶性P−セレクチンの指標としての蛍光強
度を測定することができる。
すなわち、とくに好ましい態様においては、下記工程:
(a)例えば血漿などの適当な試料を得る工程
(b)支持体表面を抗P−セレクチン捕捉抗体(例えばW40)で被覆、または
ストレプトアビジン被覆固相支持体にビオチン化抗P−セレクチン捕捉抗体(例
えばW40)を添加する工程、
(c)試験対象の試料と、ディテクター抗体および蛍光物質(例えばCy5−S
12)などの検出試薬を含有する組成物であって、抗P−セレクチンディテクタ
ー抗体は捕捉抗体によって結合されるものとは異なるP−セレクチンエピトープ
に結合することを特徴とする組成物とを、好ましくは同時に添加し、これらのも
のを該抗P−セレクチン抗体と可溶性P−セレクチンの複合体の形成に適した条
件下、好ましくは結合を最大化させる条件下で保温する工程、
(d)容積測定キャピラリーサイトメトリー系または同様の系を用いて、該複合
体における可溶性P−セレクチンの量を測定する工程
を含む、容積測定キャピラリーサイトメトリー系で、適当な試料中のP−セレク
チンを評価することができる。
可溶性P−セレクチンを単独で、またはP−セレクチンプロフィールの一部と
して測定すると、血小板活性化の指標または診断が得られ、抗血小板療法のモニ
タリングが可能になる。同様に、これらの方法を利用したキットまたは系により
、P−セレクチンプロフィールの指標を測定することができる。
診断適用
本方法は、膜結合P−セレクチンおよび/または可溶性P−セレクチンレベル
によって反映される、血小板活性化に対する抗血小板療法の効果をモニターする
のに有用である。処置は、所望のレベルの血小板活性化を達成するように調節さ
れうる。従って、本方法は、抗血小板療法の必要性が示されるかまたは抗血小板
療法を変更すべき場合に、評価するために使用されうる。得られる結果に基づい
て、治療は、維持されるかまたは調節(増加されるかまたは減少される、開始さ
れるまたは中止されるを含む)されうる。例えば、正常な個体または患者におけ
る血小板の基底の活性化状態は、膜結合P−セレクチンおよび/または可溶性P
−セレクチンのレベルを測定することによって評価され得、そして治療は、この
ような基底の活性化状態または他の所望の血小板活性化状態を達成するために調
節されうる。従って、基底の活性化状態についての抗血小板療法の効果は、本方
法に従って評価されうる。請求項に記載の方法は、それぞれ独立して可溶性P−
セレクチンおよび膜結合P−セレクチンを利用することができるか、またはP−
セレクチンプロフィールの場合は共に利用することができる。P−セレクチンプ
ロフィールは、血小板活性化のため、ならびに抗血小板療法の必要性をモニター
および決定するための特定の感受性マーカーを提供する。
驚くべきことに、GPIIb/IIIaブロッカー、ReoProTM、糖蛋白質IIb/IIIa(GPII
b/IIIa)に対して導入されたキメラFab抗体断片は血小板活性化を低下させ、そ
してP−セレクチンレベルを低下させることが発見されている。ReoProTM(abci
ximabおよびc7E3 Fabとも呼ばれる)はまた、αV β3ビトロネクチンレセプタ
ーと交差反応する(Coller,B.S.ら、「新規の抗血小板試薬:血小板GPIIb/IIIa
アンタゴニスト」Thrombosis and Haemostasis、74:302−308(1993);Genett
a,T.B.およびV.F.Mauro「ABCIXIMAB:血管形成術で使用される新規の抗凝血剤
」Ann.Pharmocother.、30:251−257(1996))。本明細書中で記載する研究
は、膜結合P−セレクチンアッセイ(例えば、RIA)および可溶性P−
セレクチンアッセイ(例えば、ELISA)の両方について、GPIIb/IIIaブロッカー
であるReoProTM(abciximab、c7E3 Fab)の有効性をモニターすることにおける
有用性を示す。これらの結果は、膜結合P−セレクチンレベルが、ステント血栓
症のイヌモデルでの7E3抗体の投与後、または冠状血管の血管形成術を受けた患
者へのReoProRの投与後にフローサイトメトリーでモニターした場合、それぞれ7
E3によって有意には影響されないか、またはコントロール群と同様であることが
見出された報告とは対照的である(Makkar,R.R.ら、「ステント血栓症の微視
的機構」要約番号1519(1996);およびMickelson,J.K.ら、「キメラ7E3 Fab(
ReoProR)は冠状血管の血管形成術を受けた患者に由来する好中球について検出
可能なCD11bを減少させる」要約番号0233(1996)、米国心臓学会、第69回科学
会議、1996年11月)。
他の抗血小板剤(ヒト化抗体を含む他の抗GPIIb/IIIa抗体(ここで、用語「
抗体」は本明細書中で定義される)のような他のGPIIb/IIIaアンタゴニストを
含む)、ならびにヘビの毒液蛋白質およびそれらの誘導体(例えば、ジスインテ
グリン、インテグレリン)、ならびに非ペプチド化合物またはペプチド模倣物(
例えば、Ro44−9883(Hoffman−LaRoche)、MK−383(Merck)、SC54684(Searl
e))、あるいは他の抗血小板剤(例えば、Coller,B.S.ら、「新規の抗血小板
試薬:血小板GPIIb/IIIaアンタゴニスト」Thrombosis and Haemostasis、74(1)
:302−308(1995);Cook,J.S.ら、「血小板糖蛋白質IIb/IIIaアンタゴニス
ト」、Drugs of Future、19:135−139(1994);およびCox,D.ら「インテグ
リンの薬理学」、Medicinal Research Reviews、14:195−228(1994)を参照の
こと)は、本明細書中に記載されるように、または他の適切な方法を使用して本
質的にP−セレクチンのレベルに対するそれらの影響について評価されうる。例
えば、c7E3 Fabまたは7E3抗体によって結合された場合にGPIIb/IIIaおよびビト
ロネクチンレセプター上の同じまたは機能的に同等のエピトープと反応する抗体
を含む、GPIIb/IIIaおよび/またはビトロネクチンレセ
プターに対する7E3もしくはc7E3 Fabのエピトープ特異性と同様のエピトープ特
異性を有する他の抗体が、この方法で評価されうる。c7E3 Fabまたは7E3モノク
ローナル抗体のエピトープ特異性と同様のエピトープ特異性を有する抗体は、GP
IIb/IIIaおよび/またはビトロネクチンレセプターに対するc7E3 Fabまたは7E3
モノクローナル抗体の結合をブロックすることができる抗体を含む。EP 0,205,2
07号、EP 0,206,532号、およびEP 0,206,533 B1号もまた参照のこと、これらの
教示は本明細書中に参照として組み込まれる。(ネズミのハイブリドーマ7E3は
、1985年5月30日にアメリカンタイプカルチャーコレクション、12301 Perklawn
Drive、Rockville、MD 20852に寄託され、そして登録番号HB 8832のもとで入手
可能である。)従って、血小板の活性化状態を変化させ、その影響が内因性の膜
結合P−セレクチンおよび/または可溶性P−セレクチンのレベルに反映される
、抗血小板療法の効果が、本方法に従って評価されうる。
本明細書中でさらに示すように、経皮的冠動脈形成術(PTCA)は、可溶性P−
セレクチンのレベルの上昇を誘導した。従って、別の局面において、本発明は、
(すなわち、1つ以上の)血管介入手順(例えば、心臓血管の介入、冠動脈の介
入)の影響、および冠動脈介入手順の影響を、特に試料中の可溶性P−セレクチ
ンのレベルを決定することを含む血小板活性化状態に関して評価する方法に関す
る。例えば、可溶性P−セレクチンのレベルによって示される、血管造影法、血
管形成術(例えば、バルーン、冠動脈粥腫切除、レーザー血管形成術、または他
の適切な方法(ロータブレーション(rotablation)および/またはステントの配
置を伴うかまたは伴わない)、冠動脈のバイパス手術、ステントの配置(例えば
、冠状血管のステント)、ならびに/あるいは他の血管介入手順(例えば、血管
手術、血管の移植、末梢ステントの配備、補綴バルブまたは補綴血管の挿入(例
えば、自己、非自己、または人工的な血管移植))の血小板活性化状態に対する
影響が評価され得、そして抗血小板療法が、基底の活性化状態または他の所望の
血小板活性化状態を達成するために維持または調節されうる。従って、本方法は
、抗血小板療法の必要性が示されるかまたは抗血小板療法が変更されるべき場合
に、評価するために使用されうる。得られる結果に基づいて、治療は、調節(開
始または中止を含む、増加または減少)または維持されうる。例えば、血小板活
性化状態を、可溶性P−セレクチンレベルをモニターすることによって評価した
場合に、適切な対照と比較して(例えば、前処理した対照レベル、正常な対照レ
ベルと比較して)上昇している患者は、可溶性P−セレクチンレベルを低下させ
るためにReoProRのような抗血小板剤で治療されうる。
本明細書中で示すように、深部静脈血栓症(DVT)を有すると診断された患者
は、血管の介入に先立って上昇したレベルの可溶性P−セレクチンを示す(実施
例8)。従って、静脈血栓症障害(特に、深部静脈血栓症)を有する患者におい
て、可溶性P−セレクチンのレベルによって示される血小板活性化状態が評価さ
れ得、そして抗血小板療法か、血小板活性化を打ち消すように開始されうるかま
たは調節されうる。
上記のように、P−セレクチンプロフィールは、血小板活性化に対して特に敏
感なマーカーであり、そしてその結果は、抗血小板療法の必要性および有効性を
決定することができる。以下の表2は、抗血小板療法の1つの形態である、ReoP
roTMを受容する患者をモニターするためのP−セレクチンプロフィールの使用を
具体的に説明する。血小板高含有血漿(PRP)および血小板低含有血漿(PPP)を
、冠動脈の疾患についてステントの移植を用いる高リスクのPTCAを受けた3人の
患者の全血から調製した。これらの患者には、高リスクの性質のPTCAに対する抗
血小板剤の標準的な用量を受容させた。より詳細には、患者は、介入の間に、0
.25mg/kgの量でReoProTMの10μg/分の点滴を受けた。
本明細書中に記載するように、フローサイトメトリー分析によって膜P−セレ
クチンについて陽性の血小板の割合を測定した。(図7および実施例9を参照の
こと)。対数スケールで血小板の順方向散乱と副散乱により、患者の試料中の血
小板を同定した。収集口(Collection gate)を血小板の周囲に移動させた。Cell
Quest 40TMで、血小板に結合したP−セレクチンの発現について血小板領域の分
析を行った。分析方法には、陰性のイソ型対照マウスIgG−FITCの対数FL1ヒスト
グラムと、P−セレクチン特異的抗体S12−FITCの対数FL1ヒストグラムとを重ね
あわせることを含んだ。技術者は、統計学的マーカーを配置して陽性と考えられ
るマウスの対照抗体で染色された1%の細胞で結果を得た。同じ位置にマーカー
を維持しながら、技術者は、P−セレクチン特異的抗体であるS12−FITCについ
て陽性に染色した血小板の割合を決定した。
本明細書中に記載するように、サンドイッチELISA法によって、患者の全血か
ら生成した血小板低含有血漿(PPP)中の可溶性P−セレクチンのレベルを測定
した。(図2および実施例2を参照のこと)。好ましい実施態様において、本方
法は、試料中の可溶性P−セレクチンの検出に基づき、ここでP−セレクチンに
特異的な2つのモノクローナル抗体はそれぞれ、P−セレクチン分子上の異なる
エピトープに結合する。このアッセイの別の実施態様としてサンドイッチイムノ
アッセイが挙げられ、これは、モノクローナルおよびポリクローナルP−セレク
チン抗体を利用する。いずれの形式においても、既知の量の可溶性P−セレクチ
ン部分を有する試料から得られた値の標準曲線が、可溶性P−セレクチンレベル
の決定を補助する。
連続的な試料についてのP−セレクチンプロフィールを、PTCAが評価される前
および後の種々の時点で得た。膜結合P−セレクチンまたは可溶性P−セレクチ
ンのいずれかについての陽性の値は、明らかに健常なドナーに由来する試料中の
P−セレクチンの平均値より2標準偏差より大きいかまたはそれに等しい値であ
る。表2に示すデータについて、4.4%の血小板より大きい%陽性血小板値お
よび30ng/mlより大きい可溶性P−セレクチン値は、血小板活性化に対して陽
性の結果を示すカットオフの陽性値である。
表は、抗血小板療法の有効性のモニターと同様に、抗血小板療法の必要性を決
定するためのP−セレクチンプロフィールの能力を具体的に説明する。PTCAの前
および後の種々の時点でモニターすることによって、抗血小板療法の有効性の決
定が可能となり、それに応じて投与量の調節が行われ得る。例えば、患者#1は
、PTCAの前に上昇したレベルの血小板活性化を示した。介入の間にReoProTMを受
けた後、患者#1の血小板活性化レベルは、介入後2時間以内に低下した。しか
し、血小板活性化は、PTCA後24時間上昇した。このことは、患者#1が受容し
ているReoProTMの量に対して調節が行われ得ることを示す。
可溶性P−セレクチンレベルおよび膜結合P−セレクチンレベルの両方を測定
することによって、いずれか一方のレベルの上昇が陽性の診断を示すため、血小
板活性化について特に敏感なマーカーが提供される。例えば、患者#1について
の24時間の時点での測定は、P−セレクチンの膜結合レベルが正常の範囲内で
あるにもかかわらず、可溶性P−セレクチンレベルは上昇したことを示す。PTCA
の24時間後の患者#1についての血小板に結合したP−セレクチンレベルのみ
の測定は、膜結合P−セレクチンのレベルもまた、正常の範囲内であったため、
抗血小板療法が適切であったこと、および患者の血小板活性化状態が正常の範囲
内であったという決定を導いた。両方のレベルの測定は、膜結合P−セレクチン
のレベルが正常の範囲内にある場合でもなお、上昇したレベルの可溶性P−セレ
クチンが存在するため、血小板活性化について陽性の診断を示す。この患者の集
団について、表は、15個のうちの13個または87%の時点が、1つのP−セ
レクチンレベルのみの上昇を示したことを示す。両方のレベルの測定によって、
抗血小板療法を受けている患者について血小板活性化を診断する能力に関する精
度が有意に増大する。従って、両方のP−セレクチンレベルの測定によって、増
大した感度を有する抗血小板療法の調節が可能になる。
この表はまた、膜結合P−セレクチンおよび可溶性P−セレクチンのレベルが
、同様の手順および抗血小板療法を受けている患者間で異なることを具体的に説
明する。例えば、患者#1は、24時間の時点および14日の時点で増大した量
の血小板活性化を有した。患者#2は、PTCAの前、および2時間、3日、および
14日の時点で増大したレベルの血小板活性を有した。患者#3は、PTCAの前、
2時間、3日、7日、および14日の時点で増大したレベルの血小板活性を有し
た。これらの結果は、各患者では、示された抗血小板療法の間に、異なる時点で
血小板活性化が増大されることを示している。従って、患者のP−セレクチンレ
ベル間の変化は、P−セレクチンをアッセイすることによって血小板活性化を効
率よくモニターすることの重要性に寄与する。
表2.ReoProで処理した後のP−セレクチンプロフィールの測定による血小板活
性化の決定 実施例
本発明は、ここで、以下の実施例によって具体的に説明され、これらは、いか
なる方法によっても制限されることは意図されない。実施例1.血小板に結合したP−セレクチンの検出および血小板活性化の検出の ためのラジオイムノアッセイ(RIA)
これらインビトロおよびインビボでの研究に使用されるラジオイムノアッセイ
法を、図1に模式的に示す。本明細書中に示すように、本方法は、血小板に結合
したP−セレクチンの発現を測定することによって、血小板活性化のレベルに対
する抗血小板療法の効果を決定するために使用されうる。実施例に記載する、血
小板に結合したP−セレクチンのインビトロおよびインビボでの全ての決定を、
以下のプロトコールに従って行った。
インビトロでの研究およびいくつかのインビボでの研究のために、全血(8.
5cc)を、抗凝血剤としてACD−A(1.5cc)を含有する2つの10mlのバキュ
テイナー管中に19ゲージ針を使用して、静脈穿刺によって採集した。患者が適
切な動脈カテーテルを有する場合、内在する動脈系から1.5ccのACD−A抗凝血
剤を含有する2つのプラスチック注射器中に血液を採集した。この後者の場合、
各注射器を10ccの標線まで満たした(8.5ccを採取した)。
1つのバキュテイナーおよび注射器からの抗凝血剤を有する血液を、直ちに、
アピラーゼ(最終濃度1U/mL)(Sigma、St.Louis、MO、カタログ番号A 9149)
およびプロスタグランジンE1(PGE1、最終濃度1μM)(Sigma、St.Louis、MO
、カタログ番号P 5515)のアリコートの予め測定したものを含有するポリプロピ
レン遠心管(15ml)に移した。アピラーゼおよびPGE1は、インビトロでの血小
板活性化を妨げ、そして血小板上で発現されるP−セレクチンを安定化させ、そ
の結果、この血液試料中の血小板上で発現されるP−セレクチンは血小板活性化
の実際のインビボでのレベルを示す。第2のバキュテイナーまたは注射器
に由来する血液を、直ちに、空のポリプロピレン遠心管(15ml)に移し、続い
てドナーについて最大のP−セレクチン発現を確立するために、血小板アゴニス
トで処理した。血小板高含有血漿(PRP)を、600×gで6分間の、両方のポ
リプロピレン管の遠心分離によって全血から調製した。黄色の上清のPRPを、プ
ラスチックピペットを用いて各管(アピラーゼおよびPGE1を含むか、またはそれ
らを含まない)から取り出し、そして空のポリプロピレン管に入れた。
血小板低含有血漿(PPP)を、PRPの調製後にポリプロピレン遠心管中に残存し
ている赤血球ペレットを遠心分離(1900×gで10分間)することによって
調製した。PRP中の血小板数を、コールター計数機を使用して決定し、そして適
切なPPP(すなわち、アピラーゼおよびPGE1を含むか、またはアピラーゼおよびP
GE1を含まない)を使用して、最終的な血小板濃度を1.0×108血小板/mLに
調節した。
血小板に結合したP−セレクチンの発現を、S12と称される、125I標識したネ
ズミ抗ヒトP−セレクチンモノクローナル抗体(MAb)を使用する、ラジオイムノ
アッセイ(RIA)において測定した。S12モノクローナル抗体(P−セレクチンに特
異的である)は、未刺激のヒト血小板と最小に反応するが、トロンビンで活性化
した後は血小板に大量に結合する(McEver,R.PおよびM.N.Martin、「膜糖蛋白
質に対するモノクローナル抗体は活性化された血小板にのみ結合する」、J.Blo
l.Chem.259(15):9799−9804(1984)、この教示は全て本明細書中に参照と
して組み込まれる)。RIAにおいて、125I標識した抗P−セレクチンモノクロー
ナル抗体S12の、(1)未刺激の血小板表面で発現されるP−セレクチン分子(
インビボでのP−セレクチンの発現を維持するためにアピラーゼおよびPGE1で処
理した)に対する結合、ならびに(2)血小板上での最大のP−セレクチンの発
現を生じる、最終濃度0.5μMのホルボールミリステートアセテート(PMA)(
Sigma、St.Louis、MO、カタログ番号P 8139)(アピラーゼまたはPGE1を含まな
い)を用いた刺激後の同じドナーの血小板上で発現されるP−セレク
チン分子に対する結合を決定した。
RIAを実施するために、Mab S12を、以前に記載されているように放射性ヨウ素
標識した(Wagner,C.ら、Blood、88:907(1996)、この教示は、全て本明細書
中に参照として組み込まれる)。アピラーゼおよびPGE1を含有する、1.0×1
08血小板/mlに調整したPRPの1つの0.5mlのアリコートを、20μlの改変
タイロード緩衝液を含むポリプロピレン微量遠心管(500μl容量)に移し、
一方、PRPの第2の0.5mlのアリコート(アピラーゼまたはPGE1を含まない)
を、20μlのPMA(0.5μMのPRP中の最終濃度)を含む同様の微量遠心管に移
した。両方の管を穏かに反転させ、そして室温で15分間インキュベートした。
125I標識した抗P−セレクチンMab S12(PRP中で最終濃度2μg/ml)を各微
量遠心管に添加し、そして管を30分間室温でインキュベートした。比活性は、
一般的に2〜4μCi/μgの範囲であった。PRPのアリコート(100μl)を各
微量遠心管から取り出し、細長い(400μl)ポリプロピレン微量遠心管に予
め入れておいた30%スクロース(200μl)(J.T.Baker、Phillipsburg、N
J、カタログ番号4097−04)上に重層した。試料を、4分間11、000×gで
遠心分離して、ペレットに対してそれらが結合した125I−S12を有する血小板を
生じ、そしてこれはスクロースの隔壁によって遊離の125I−S12から分離された
。遊離の125I標識した抗P−セレクチンMab S12を含有する血小板のペレットを
、微量遠心管の底を切り取り、そしてガンマカウンターで1分あたりの結合カウ
ントを決定することによって上清から分離した。
活性化指標(AI)を、各ドナー/患者について計算した。活性化指標は、エキ
ソビボの試料中で血小板によって発現される(内因性の血小板活性化)全P−セ
レクチンの割合である(PMA活性化試料中で決定される)。
活性化指標=(エキソビボでのPRPのペレット中のcpm)/(PMA活性化PRPの
ペレット中のcpm)×100
8人(n=8)の健常なドナーについて計算した活性化指標(AI)は、2.7±
1.5であった。実施例2.ELISAによる可溶性P−セレクチンの測定
これらのインビトロおよびインビボでの研究で使用したELISA法を図2に模式
的に記載する。本明細書中に示すように、本方法は、抗血小板治療剤および/ま
たはPTCAを用いた治療の前、間および/または後の、ヒトの血漿中の可溶性P−
セレクチンの量を決定することによって、血小板活性化のレベルに対する抗血小
板療法またはPTCAの効果を決定するために使用されうる。実施例に記載する可溶
性P−セレクチンの全てのインビトロおよびインビボでの決定を、以下に記載す
るELISAプロトコールに従って行った。
ELISAのための抗体の選択
サンドイッチELISAのためにモノクローナル抗体を選択するために、3つの抗
P−セレクチンネズミモノクローナル抗体(W40、S12、およびG1)の抗原結合動
力学を、BIAcore機器(Pharmacia Biosensor、Uppsala Sweden)、表面プラスモ
ン共鳴検出システム(これは、動力学的分析、結合部位の分析、および濃度分析
に適用される)で試験した。各モノクローナル抗体を、ウサギ抗マウスFc特異的
抗体でBIAcoreチップ上に捕捉した。チップ上に可溶性P−セレクチンを通過さ
せ、質量の増大(抗体の結合速度を示す)を測定した。抗原の飽和が達成された
後、チップ上に緩衝液を通過させ、抗原の解離速度を質量の減少として観察した
。各モノクローナル抗P−セレクチン抗体についての会合速度は等しいが、一方
、解離速度は有意に異なった。S12およびG1抗体の両方が、ただちに抗原の速い
解離(解離速度)を示した。対照的に、W40は、抗原の供給を緩衝液のみと
置き換えた場合、P−セレクチンの減少を示さなかった。従って、BIAcoreの結
果は、W40からの可溶性P−セレクチンの解離速度がS12またはG1モノクローナル
抗体のいずれよりもはるかに遅いことを実証した。
BIAcore実験はまた、Sl2からの可溶性P−セレクチンの解離速度が、P−セレ
クチンがW40抗体と結合している場合に予想外に変化したことを明らかにした。S
12がBIAcoreチップ上に被覆され、そして可溶性P−セレクチンが飽和状態まで
結合している場合、可溶性P−セレクチンは、抗原の供給が停止されるとすぐに
放出された。しかし、W40がチップ上に可溶性P−セレクチンを捕捉するために
使用され、そしてS12が捕捉した可溶性P−セレクチンに結合できる場合、S12は
、緩衝液がチップ上を通過する時に付着したままであった。可溶性P−セレクチ
ンからのS12の解離速度は、P−セレクチンがW40によって捕捉される場合に低下
した。
従って、捕捉抗体としてW40を、そして検出抗体としてS12を使用する同時形式
を、感度を最大にするために選択した。
材料
以下の材料を、可溶性P−セレクチンアッセイで使用した:
Nunc MaxiSorpTM96ウェルマイクロタイタープレート(VWR Scientific、カタ
ログ番号62409−004);
PBSの10×ストック(JRH Bioscience、カタログ番号59331−79P);
ウシ血清アルブミン(BSA、Intergen);
Tween 20、ポリオキシエチレン−ソルビタンモノラウレート(Sigma Chemical
Co.、カタログ番号P 7949);
可溶性短型P−セレクチン(tPS)を、以下に記載するように生成した。
西洋ワサビペルオキシダーゼ共役ストレプトアビジン(HRP−ストレプトアビ
ジン;Jackson Immunoresearch Labs、カタログ番号016−030−084);
ビオチン化したネズミS12 IgG(bmS12 IgG)を以下に記載のように生成した。
クエン酸(J.T.Baker、カタログ番号0118−01);
二塩基性リン酸ナトリウム(Sigma Chemical Co.、カタログ番号S 9763);
30%H2O2(Sigma Chemical Co.、カタログ番号H 1009);
O-フェニレンジアミンジヒドロクロライド(OPD)(Sigma Chemical Co.、カ
タログ番号P 8287);
B2TTである無関係のネズミ抗体は、Centocor,Inc.で調製された。
4Nの硫酸(H2SO4)を濃酸(J.T.Baker、カタログ番号968102)から調製した
。
以下の緩衝液を、アッセイを実施する前に調製した:
1×PBS 脱イオン水で1:10に10×PBSを
希釈する
PBS/1%BSA 500mlのPBSに5gのBSAを溶解し、
濾過(0.2μm)する
PBS/1% BSA/0.05% 500mlのPBSに5gのBSAを溶解する
Tween 20/25μg/ml B2TT ;0.250mlのTween 20を添加する
(アジ化物を含まない) ;1.25mlのB2TT 0.10mg/ml
を添加する;そして濾過(0.2μm
)する
PBS/0.05% Tween 20 1リットルのPBSあたり0.5mlのTw
een 20を添加し、そして完全に混合す
る
クエン酸/リン酸緩衝液 4.2gのクエン酸(20mM);7.
(1リットル) 1gの二塩基性リン酸ナトリウム(無
水物)(50mM):900mlの水を添
加し、pHを5.0に調整する:1.0
リットルまで水を加え、そして濾過(
0.2μm)する。
OPD基質溶液 25mlのクエン酸/リン酸緩衝液に3
(25ml) つの10mgのOPDの錠剤を溶解し、そ
して40μlの30% H2O2を添加する
。
使用の直前に調製する。
4N硫酸 160mlの脱イオン水に20mlの濃硫
酸を添加する
ネズミW40 IgG1の精製
ネズミW40 IgG1(ヒトP−セレクチンに特異的なネズミモノクローナル抗体(
Johnston,G.I.ら、J.Biol.Chem.、264:1816−1823(1989)、この教示は本
明細書中に参照として組み込まれる)を、腹水液として調製し、そして「高塩」
プロテインAクロマトグラフィーによって精製した。腹水液を-70℃から解凍
させ、そしていくつかのガラス製の前置フィルターおよび0.2μmのメンブレ
ン注射器フィルターを使用して濾過した。次いで、腹水液を、顆粒の塩化ナト
リウムで3MのNaClに調節し、そしてpHを、1Mのグリシン(pH9.6)の添加
によって8.9に上昇させた。プロテインAハイトラップカラムをMAPS緩衝液中
(3MのNaCl、1.5Mのグリシン(pH8.9))でPharmacia FPLC上で平衡化し
た。腹水液(塩濃度およびpHを調節した)をプロテインAカラムに充填し、そし
てOD280がベースラインを超えた時にフロースルーを回収した。一旦試料の充填
が完了すると、カラムを、0D280がベースラインに戻るまでさらにMAPS緩衝液で
洗浄した。結合した抗体を最初に、0.1Mのクエン酸(pH5.5)で溶出した
。溶出物の回収を、OD280がベースラインを超えた時に開始し、ベースラインに
戻った時に停止した。溶出した抗体のプールを、1/3の最終容量の1MのTris(
pH8.0)の添加によって直ちに中和した。カラムに結合した他のW40 IgG以外
の蛋白質を、0.1Mのクエン酸(pH3.5)での洗浄によって除去した。
次いで、pH5.5および3.5の溶出物を、centriplusTM濃縮機を使用して濃
縮し、そしてSlide−A−LyzerTM装置(Pierce)を使用してPBS中で透析した。最
後に、試料を0.2μmのフィルターで濾過し、そしてOD280によって濃度を決定
した。
ネズミS12 IgG1のビオチン化
ネズミS12 IgG1抗体を、プロテインAセファロースカラムクロマトグラフィー
を使用してハイブリドーマ組織培養上清から精製し、そしてビオチン化のために
200mMのNaHCO3、150mMのKCl(pH8.5)中に透析し、3.95mg/mlに
濃縮した。ビオチン化を、ネズミS12 IgGに対して30:1のモル過剰のN.S.−L
C−ビオチン(Pierce)を用いて行った。簡潔には、mS12 IgGを5mlのポリプロ
ピレン管に移し;N.S.−LC−ビオチンを秤量し、そして迅速にDI水中で4mg/ml
に再構成した。適量のN.S.−LC−ビオチンを、S12 IgGを含有する反応試験管に
移し、そして室温で1時間混合した。
PBS中での透析のためにSlide−A−LyzerTMに移すことによって、ビオチン化し
たネズミS12 IgG抗体から遊離のビオチンを除去した。最後に、抗体を、0.2
μm濾過し、そしてOD280によって濃度を決定した。
短型P−セレクチンの生成および精製
トランスフェクトした293組織培養方法
ヒト293腎臓細胞(ATCC CRL 1573)を、アメリカンタイプカルチャーコレクシ
ョン、12301 Parklawn Drive、Rockville、MD 20852から入手し、そしてpRC/RS
V(Invitrogen)(Ushiyama,S.ら、J.Biol.Chem.、268:15229(1993)、
この教示は全て本明細書中に参照として組み込まれる)からの可溶性短型P−セ
レクチン(tPS)の発現を導く構築物でトランスフェクトした。トランスフェク
タントを、T-150フラスコ中の、10%FBSを含有し、そしてL-グルタミン、ピル
ビン酸ナトリウム、NEAA、およびジェネテシン(G-418)を補充したαMEM中で培
養した。細胞がコンフルエントに到達したら、上清を廃棄し、精製のために遠心
分離して細胞および壊死組織片を除去し、4℃で保存した。
短型のP−セレクチンの親和的精製
短型のP−セレクチン(tPS)を含有する293細胞由来の組織培養上清を採集し
、処理のためにプールした。25mlのネズミG1アフィニティーカラムを、抗P−
セレクチンネズミモノクローナル抗体G1(Geng,J.-G.ら、Nature、343:757−
760(1990))を使用して調製し、そしてカラムを、5倍のカラム容量の20mM
のTris、100mMのNaCl(pH8.3)で4℃にて平衡化した。組織培養上清をカ
ラムに充填し、そしてフロースルーを回収した。試料の充填が完了したら、カラ
ムを、OD280がベースラインに戻るまで平衡緩衝液で洗浄した。次いで、アフィ
ニティーカラムを、5倍のカラム容量の20mMのTris、1MのNaCl(pH8.3)で
洗浄した。再度、カラムを、5倍のカラム容量の20mMのTris、100
mMのNaCl(pH8.3)で平衡化した。結合したtPSを、9倍のカラム容量の10
0mMの酢酸ナトリウム、100mMのNaCl(pH4.1)で溶出した。カラムを、0
.1%のNaN3を含有する、20mMのTris、100mMのNaCl(pH8.3)中で再度
平衡化し、そしてその後の使用のために保存した。
溶出画分をただちに1MのMOPS(pH7.9)で中和し、そしてCentriplusTM濃縮
機を使用して濃縮した。次いで、精製したtPSを、Slide−A−lyzerTM装置を使用
して20mMのMOPS、100mMのNaCl(pH7.5)に緩衝液交換した。最後に、試
料を、0.2μm濾過し、そしてOD280の吸光係数12.3で濃度を決定した。
可溶性P−セレクチンを検出するためのサンドイッチELISA
可溶性P−セレクチンレベルを、以下の手順を使用してアッセイした。
表3.ELISAで用いる試薬の終濃度
tPsを320ng/mlから3.2ng/mlまで連続して希釈することに
より、6点標準曲線を作成した。100μlの緩衝液を含有するウェル中に66
μlの標準品を移し、混合し、再び移すことより連続希釈を行った。
全血(8.5cc)を、抗凝血剤として、ACD−A(1.5cc)、ヘパリン、また
はEDTAを含む2つの10mlのバキュテイナー管中に19ゲージ針を使用して静脈
穿刺によって採集した。患者が適切な動脈カテーテルを有する場合、血液を内在
する動脈系から抗凝血剤として1.5ccのACD−A、ヘパリンまたはEDTAを含有す
るプラスチック注射器中に回収した。注射器を、10ccの標線まで満たした(8
.5cc採取した)。
バキュテイナーまたは注射器から抗凝血剤を含有する血液を、直ちに、ポリプ
ロピレン遠心管に移した。血小板低含有血漿(PPP)を、1900×gで20分
間全血を遠心分離することによって生成した。PPPを、プラスチックの移動ピペ
ットによって細胞ペレットから採取し、以下に記載するELISA形式でアッセイし
たか、または後の分析のために等分して−70℃で凍結した。
可溶性P−セレクチンを、96ウェルMaxiSorpTM(Nunc)マイクロタイタープレ
ートをネズミ抗P−セレクチンMab W40 IgGで被覆し、各ウェルに100μlの抗
体を(PBS中5μg/mlの濃度で)添加することによって酵素結合免疫吸着アッセ
イ(ELISA)で測定した。プレートを4℃にて約18時間インキュベートした。被
覆したマイクロタイタープレートを、200μl/ウェルのPBSで3回洗浄し、そ
して1%のウシ血清アルブミン(BSA、Fraction V、Sigma、St.Louis、MO)を
含有する200μl/ウェルのPBSの添加によって37℃にて1時間ブロックした
。ブロックしたプレートを、以下の同時に添加した成分とともに、37℃にて2
時間インキュベートした:可溶性P−セレクチン標準品またはドナー血漿試料で
ある西洋ワサビペルオキシダーゼ共役ストレプトアビジンおよびビオチン共役抗
P−セレクチン抗体S12 IgG(これは、W40 IgGによって認識される点で異なるP
−セレクチンエピトープに結合する)。1%のBSA、0.05%のTween 20、お
よび25μg/mlのB2TT(非P−セレクチン特異的ヒト抗ネズミ
反応性を排除するためのネズミIg;Centocor、Malvern、PA)を含有するPBSを、
全てのアッセイ成分の希釈剤として使用した。血漿試料を、アッセイ希釈物中で
1:4の最終濃度で評価した。試料および標準品のインキュベーション後、プレ
ートを、0.05%のTween 20を含有する200μl/ウェルのPBSで4回洗浄し
た。色素を、100μl/ウェルのHRP基質であるO-フェニレンジアミンジヒドロ
クロライド(OPD)の添加によって発色させた。発色を、100μl/ウェルの4
NのH2SO4の添加によって20分後に停止させた。
プレートを、Molecular Deviceプレート読み取り機で490nMで読み取った。
データを分析するためにSoftmaxソフトウェアを使用した。標準曲線(図3)を
、分子の膜貫通部分を含まないP−セレクチンの短型を生じる遺伝子(Ushiyama
,S.ら、J.Biol.Chem.、268:15229(1993)、この教示は、全て本明細書中
で参照として組み込まれる)でトランスフェクトした、ヒト腎臓細胞株(293細
胞)によって産生される、既知の量の可溶性P−セレクチンについての平均の吸
光度をプロットすることによって作成した。図3は、3.2〜320ng/mlまで
の可溶性P−セレクチンの濃度についての、可溶性P−セレクチンのELISAを実
行して得られる典型的な標準曲線を示す。図3に見られるように、各標準値につ
いて平均の吸光度を、Y軸にプロットし、P−セレクチンの濃度をX軸にプロッ
トした。点を、対数−対数曲線適合プログラムを使用して適合させた。試料中の
可溶性P−セレクチンの濃度を、適当な希釈率で掛け算した標準曲線から決定し
た。
内因性の可溶性P−セレクチンの正常なレベルを、抗血小板療法を受けていな
いかまたは冠動脈疾患を罹患していないボランティアのドナー(n=12)で評
価した。表4は、凝固促進ゲルを含むまたは含まないバキュテイナー中に採集し
た血清中、および以下の抗凝血剤中に採取した血漿中の可溶性P−セレクチンの
正常範囲を示す:ACD−A、ヘパリン、およびEDTA。
表4.正常(n=12)血漿中および血清中の可溶性P−セレクチンレベル表4は、回収された全血から単離された血漿について、あるいは凝血誘導ゲルを
用いてまたは用いないで回収した血清について、抗凝血剤であるACD−A、ヘ
パリン、またはEDTA中で可溶性P−セレクチンELISAを行う場合の正常
なドナー(n=12)に見られる可溶性P−セレクチンの平均±標準偏差を提供
する。可溶性P−セレクチンは、その値が特定のタイプの血漿試料または血清試
料についての正常な平均値より3標準偏差超えれば、有意に高いと考えられる。
性能特性
可溶性P−セレクチンのELISA形式についてのアッセイ中の変化(アッセイ内
の精度)を、ACD−A抗凝血剤中に採集したヒト血漿に対して、既知の量の可溶性
P−セレクチンを添加することによって決定した。詳細には、4つの血漿試料を
、高量(600ng/ml)、中程度の量(300ng/ml)、低量(40ng/ml)の
tPS、またはtPSなし(0ng/ml)で強化した。(血漿中の可溶性P−セレクチン
の内因的レベルを、このアッセイの目的のためにゼロ添加したP−セレクチンと
みなした。)アッセイ中の変化を導くために、各値について21連で、同じマイ
クロタイタープレート上で決定した(すなわち、各4つの試料を、21連で一つ
のプレート上でアッセイした)。
表5に示すように、低量、中程度の量、高量のP−セレクチンを、アッセイで
決定した。表5に示すように、10%未満の変化率(CV)が、全ての可溶性のセ
レクチンレベルについて達成された。
表5.ヒト血漿用可溶性P−セレクチンELISAのアッセイ中の変化性 可溶性P−セレクチンのELISA形式のアッセイ間の変化(アッセイ間の精度)
を、10個の異なるアッセイで決定した。ここで、4つの血漿試料(抗凝血剤と
してACD−A)の6連の測定を、ゼロ(内因性の可溶性P−セレクチンのみ)、低
量(20ng/ml)、中程度の量(250ng/ml)、および高量(600ng/ml)
の可溶性P−セレクチン(tPS)で強化した。観察されうるように、全てのCVは
15%以下であった(表6)。
表6.ヒト血漿用可溶性P−セレクチンELISAのアッセイ間の変化性
実施例3.PMAに応答した血小板P−セレクチン発現の誘導を測定するためのラ ジオイムノアッセイ(RIA)の使用
健常なドナー由来の血漿中の血小板を、実施例1に記載のように全血から単離
し、そして5〜500nMの範囲の種々の最終濃度での血小板活性化アゴニストPM
Aによって活性化した。活性化した血小板中のP−セレクチンを、容量に依存し
た方法でPMAに応じて膜に移し、これを、ヨウ素化抗P−セレクチン抗体である1 25
I−S12の結合によって測定した。1分あたりのより高いカウントで示されるよ
り多量の抗体が、濃度を増加させたPMAと結合した。図4Aおよび図5Bは、こ
の滴定の結果を示す。図4Aにおいて、このデータを結合したカウントとして示
し、図4Bにおいては、PMAの各滴定についての活性化指標(AI)を、実施例1
に示す式に従って計算する。実施例4.PMAによって誘導された血小板に結合したP−セレクチンの発現はReo ProRの存在下で減少し、RIAによって測定されうる
血小板高含有血漿(PRP)を、実施例1に記載するように2人の正常なドナー
の全血から調製し、各ドナーに由来するPRPを2つの等量のアリコートに分けた
。ReoProR(abciximabまたはc7E3 Fabとも呼ばれる;Centocor,Inc.、Malvern
、PA)は、血小板上の糖蛋白質IIb/IIIa(GPIIb/IIIa)レセプターに対して特
異性を有するキメラFab抗体フラグメントである(国際公開第95/12412号パンフ
レット、1995年5月11日;国際公開第89/11538号パンフレット、1989年11月30
日;EPIC研究員、N.Engl.J.Med.、330:956−961(1994);およびTopol,E
.J.ら、The Lancet、343:881−886(1994)を参照のこと、これらの教示は、全
て本明細書中に参照として組み込まれる)。ReoProR(5μg/mlの最終濃度で)
を各ドナーのPRPの半分に添加し、そして20分間インキュベートした。次いで
、ReoProを含むおよび含まないPRPを0.5mlのアリコートに分け、そして種々
の濃度のPMAで15分間刺激した。全ての種々の条件
に供した血小板の表面上で発現されたP−セレクチンを、実施例1に記載したRI
Aプロトコールを使用して、125I−S12の結合によって測定した。各条件下(すな
わち、種々の濃度のPMAで刺激されたReoProRを含むまたは含まない)での各ドナ
ーの活性化指標を、実施例1の式に従って計算した。予想外に、ReoProRは、血
小板に結合したP−セレクチンの発現を低下させ、従って、両方のドナーについ
ての活性化指標(AI)を低下させ、そしてこの低下を、実施例1に記載のRIAプ
ロトコールを使用して測定することができた(図5)。5μg/mLのReoProの存
在下で1つのドナーについて、10nMのPMAで、AIの33%の低下(8.22に
対して5.48)を観察した。実施例5.PTCAを受けた患者における血小板に結合したP−セレクチンの発現を RIAで測定することができ、この発現はReoProRの存在下で低下する
血小板高含有血漿(PRP)を、不安定な扁桃炎および心筋梗塞を含む冠動脈疾
患についてPTCAを受けた6人の患者の全血から調製した。2人の患者はReoProR
を受け、1人の患者は、回転式粥腫切除(ロータブレーション)を受けた。正常
なドナーについて計算した活性化指標は、2.7±1.5である。4.2の活性
化指標は、平均よりも1標準偏差より大きい。5.7以上の活性化指標は、平均
よりも2標準偏差大きい。表7は、患者#4および#6(両者とも、製造業者の
説明書に従って、比較的多量にReoProRの12時間の点滴を受けさせた)におい
て、活性化指標が、PTCA前や直後に有意に上昇したが、手順後24時間までに正
常な範囲に戻ったことを示す。ReoProRを含む抗血小板療法の効果を、P−セレ
クチンの発現を通じて血小板活性化状態を測定するため、実施例1に記載のRIA
を使用して決定することができる。
表7.PTCAを受けた患者から得られるRIAおよび可溶性P−セレクチンE
LISAの結果表7は、PTCA前後の6人の患者における血小板P−セレクチン発現を示す。血小
板P−セレクチンを、FITC標識したS12 Mabを使用してPRPのフローサイトメトリ
ーでの評価によって(R.E.Scharfら、Arteriosclerosis and Thrombosis、12:
1475(1992)を参照のこと)、および実施例1に詳述する125I標識したS12を使
用するRIAによって、陽性細胞の割合として測定した。PTCAの前および後での可
溶性P−セレクチンの発現を、実施例2に記載のELISAプロトコールを使用
して決定した。実施例6.可溶性P−セレクチンの発現は時間および用量に依存した方法でPMA 活性化によってインビトロで誘導され、そしてReoProRの存在下で減少する
GPIIb/IIIaアンタゴニストReoProRの効力を測定するための実施例2に記載の
可溶性P−セレクチンアッセイの予測外の有用性を、全血が3人の正常なドナー
由来のACD−A抗凝血剤中で得られる活性化インビトロの研究において観察した。
全血を、2mlのアリコートに分け、そして種々の量の血小板活性化アゴニストPM
Aとともに種々の時間の間、別々のポリプロピレン管中で室温でインキュベート
した。アッセイした時点は、1、5、および24時間であり、そしてPMAの量は
、0、20、100、および500nMであった。各ドナーについて、二連の管を
、各時点および各PMA濃度について作製した。二連の管のうちの一方は、ReoProR
(abciximab、c7E3)を最終濃度5μg/mlで含み、別の管には、等量のReoProR
希釈物を添加した。血小板低含有血漿を、1〜24時間の種々の時点で全血から
調製し、そして可溶性P−セレクチンを、実施例2に記載のELISAプロトコール
を使用して決定した。図6は、5時間までに、ReoProRの存在下での20、10
0、および500nMのPMAによって刺激された血液中で観察される可溶性P−セ
レクチンの減少を示す(96.8±4ng/mLに対して66.1±5ng/mL(50
0nMのPMA処理))。500nMのPMAの存在下では、可溶性P−セレクチンが31
%減少し、これは、ReoProの存在下で検出することができる。24時間までのRe
oProに起因する可溶性P−セレクチンの減少は、41%であった(179.5±
12.5ng/mLに対して105.7±11.1ng/mL(500nMのPMA処理))
。実施例7.可溶性P−セレクチンはそれらの血小板に結合したP−セレクチンに おける増大に比例してPTCAを受けた患者において増大され、PTCAによって生じた 活性化のモニターにおける有用な手段である
予想外に、可溶性P−セレクチンのレベルは、PTCA手順が有意な血小板活性化
を誘導した患者においてPTCA後に上昇した。PTCAを受けた6人の患者からACD−A
抗凝血剤中に全血を採集し、そして実施例2に記載のように血小板低含有血漿を
単離した。それらの血小板低含有血漿中で可溶性P−セレクチンのレベルを、実
施例2に記載のELISAプロトコールによって決定した。表7に示すこの観察の一
例は、不安定なプラークの構築により29.95のPTCA後の活性化指標(2.7
±1.5が正常)を生じた患者#3である。患者#3の可溶性P−セレクチンレ
ベルは続いて、手順後24時間で上昇した(PTCA前の24.5ng/mlからPTCAの
24時間後で34.14ng/ml)。
PTCAによって生じる活性化の程度をモニターするための可溶性P−セレクチン
の使用の他の例は、ロータブレーションにより活性化指標が増加し、また手順直
後に観察される可溶性P−セレクチンが増大する患者#5において観察される(
44.85ng/ml〜51.54ng/ml)。対照的に、ReoProを与えた2人の患者
は、PTCA後の彼らの可溶性P−セレクチンレベルにおいて減少を示した。この結
果は、図6に記載する研究において観察された可溶性P−セレクチンの減少と同
様である。
AMIについてPTCAを受けた1人の代表的な患者は、PTCA前のAIが6.6であっ
た。この患者に、ReoProRを与え、そしてPTCAの直後のこの患者のAIは5.1で
あり、そして手順後24時間で2.4に低下した。同じ期間の間に、この患者の
血漿のP−セレクチンレベルは、ReoProRが可溶性P−セレクチンレベルを低下
させ得るという観察とは対照的に、45%低下した。実施例8.可溶性P−セレクチンは深部静脈血栓症の病歴を有する患者において 正常なレベルより増大する
予想外に、可溶性P−セレクチンのレベルは、その病歴が深部静脈血栓症(DV
T)を含む2人の患者について、正常な平均値(ACD血漿中での正常な平均値=2
5.6±7.5ng/ml)よりも3標準偏差より大きかった。動脈血栓症は血小板
媒介性であると一般に考えられているが、静脈の血栓症は主に血小板に媒介され
るとは考えられていない。DVT患者に存在する有意に高いレベルの可溶性P−セ
レクチンは、活性化された血小板が深部静脈血栓症において役割を果たすことを
示す。表8に示すように、患者#2および#13の両方はDVTと診断され、そし
て有意に高レベルの可溶性P−セレクチンを有した(患者#2は65.03ng/
ml;および患者#13は55.3ng/ml)。対照的に、可溶性P−セレクチンお
よび血小板に結合したP−セレクチンは、冠状血管の疾患の非存在下での血管の
外科手術(腹部の大動脈瘤(AAA)の修復を含む)において有意に上昇しなかっ
た(患者#4および#7)。
患者#1(RIAにおいて有意に上昇した血小板P−セレクチンを示し、そして
非イオン性の対照培地(NCM)を使用する外科手術後に有意に上昇した可溶性P
−セレクチンを示した)にもまた、関心がある。この対照培地は、フローサイト
メトリーでの評価によって評価した場合に、血小板活性化を生じたことが報告さ
れているが(M.J.Kozaら、Investigative Radiol.、30:90(1995)を参照の
こと)、この決定は、これまでは、本研究におけるようには可溶性P−セレクチ
ンの増大とは関連付けられていなかった。患者#1では、可溶性P−セレクチン
のレベルは、非イオン性の対照培地が使用される血管造影手順の後までは有意に
増大しなかった。次いで、対照培地による血小板活性化の効果を、手順後の可溶
性P−セレクチンの決定で観察した。これは、対照培地によって誘導された血小
板活性化の決定のための独特の方法である。この患者のRIAは、可溶性P−セレ
クチンの結果と一致した。RIAによって測定した血小板活性化は、非イオン性の
対照培地の使用の結果と同様に有意に上昇した。この効果をまた、Kozaおよび他
の研究者らによって使用されているフローサイトメトリー対照法において観察し
た。
表8は、血管の外科手術またはPTCA以外の項目を受けた13人の患者の血小板
P−セレクチンの発現を示す。血小板P−セレクチンを、フローサイトメトリー
プロトコールにおいて陽性細胞の割合として(表7を参照のこと)、そして実施
例1のプロトコールに従ってRIAによって測定した。外科手術前および後の可溶
性P−セレクチンの発現を、実施例2のELISAプロトコールを使用して決定した
。表8において、AAAは、腹部の大動脈瘤の修復であり;NCMは、非イオン性対照
培地であり;AMIは、急性心筋梗塞であり;DVTは、深部静脈血栓症である。
表8.血管手術(非−PTCA)を受けた患者についてのRIAおよび可溶性P
−セレクチンELISAの結果 実施例9:膜結合P−セレクチンを測定するためのフローサイトメトリーの使用
フローサイトメトリーは、血小板P−セレクチンレベルを決定する一つの方法
であり、その結果は、P−セレクチンのプロフィールの測定に寄与する。サブパートa)フローサイトメトリーの準備用全血由来の血小板高含有血漿(P RP)の調製:
フローサイトメトリーは、本明細書で述べるように患者試料中の血小板P−セ
レクチンを決定する方法である。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)プロ
トコールを用いて可溶性P−セレクチンを決定した。膜結合P−セレクチンで測
定される血小板活性化の正常値と循環可溶性P−セレクチンの正常レベルを明ら
かに健常なボランティアのドナーについて決定した。
インビトロ研究のため、19ゲージ針を用い、抗凝血剤としてACD溶液A(
Becton Dickinson、カタログ番号364606)またはACD溶液B(Becton-Dickins
on、カタログ番号364816)のいずれかを含んだバキュテイナー(vacutainer)管内
に静脈穿刺で全血を集めた。抜き取る30分内に、一つのバキュテイナーから抗
凝血剤を含有した血液を、改変タイロード緩衝液(MTB)(20mM HEP
ES、187mM NaCl、4mM KCl、50mM Na2HPO4、1m
M MgCl 6H2O、5.5mM グルコース、1%ウシアルブミン)中ア
ピラーゼ(終濃度1U/mL(Sigma、St.LouiS、MO、カタログ番号A 9149)と
プロスタグランジンE1(PGE1、終濃度1μM)(Sigma、St.Louis、MO、カ
タログ番号P 5515)のアリコートの予め測定したものを含有する15mLのポリ
プロピレン製遠心管(VWR、カタログ番号21008-102)に移した。血液試料中の
血小板上で発現されるP−セレクチンが実際のインビボレベルの血小板活性化を
示すように、ポリプロピレンの使用と、アピラーゼおよびPGE1の添加が、イ
ンビトロの血小板の活性化を防ぎ、血小板上でのP−セレクチン発現を
安定化させた。また、試料を穏やかに混合し、取扱い、かつ室温で全ての工程を
実行することは、インビトロ活性化を防ぐのに重要なことであった。全血を60
0×gでベックマンGS−6KR遠心分離機中またはスイッチングバケットを有
するローターを配設した均等物中で、3分間(3〜6mLの血液量)または6分
間(10mLの血液量)室温で停止せずに血小板高含有血漿を遠心分離すること
により調製した。上清血小板高含有血漿を各遠心管からプラスチック製トランス
ファーピペット(Sarstedt、番号86.1174または均等物)を用いて取り除き、5
mLのポリプロピレンスナップキャップ管(VWR、カタログ番号60819-728ま
たは均等物)に移し、蓋をしてCO2放出を最小にした。サブパートb)フローサイトメトリー分析用血小板高含有血漿の処理:
血小板高
含有血漿中の血小板をフローサイトメトリー分析用P−セレクチン特異的モノク
ローナル抗体で染色した。正常なドナーは、活性化した血小板又はP−セレクチ
ンを発現している血小板の割合が低い。これらの正常なドナーは、有意な血小板
活性化のレベルを決定するのに用いられる試料を提供した。患者の試料は、P−
セレクチンに対して陽性な全血小板の割合が明らかに健常なボランティアのドナ
ーに見られる陽性な血小板の割合の平均より2標準偏差以上である場合に、有意
な血小板活性化を示した。
フローサイトメトリー分析用血小板高含有血漿を改変タイロード緩衝液(MT
B)中で1:6に希釈し、逆さにして穏やかに混合した。これらの染色した試料
を、45μLの希釈した血小板高含有血漿を5μLの改変タイロード緩衝液を含
有する2つの試験管と5μLのホルボール12−ミリステート13−アセテート
(PMA)(Sigma、P-8139または均等物)を含有する1つの試験管にそれぞれ
等分し、終濃度20nM PMAを製造することにより調製した。20nM P
MAは、室温での15分間のインキュベーションの間に血小板高含有血漿を最大
に活性化し、この試料は、P−セレクチン特異的抗体が、この系中のそのリガン
ドに結合したことを示すための対照として役割を果たす。30μLのマウスIg
G FITC(50μg/mL、Becton Dickinson、カタログ番号349041または
均等物)をPRPと緩衝液を含有する1本の非活性化試験管に添加した。この試
料は、陰性のアイソタイプ適合対照試験管であった。30μLのフルオレセイン
共役P−セレクチン特異的抗体S12−FITCを1つの非活性化試料(試験試
料)と、希釈したPRPの最大に活性化した(陽性対照)試料とに添加した。室
温で20分間インキュベーションした後、試料を80μLの2%パラホルムアル
デヒド(Electron Microscopy Sciencesカタログ番号15712-Sまたは均等物)を
室温で30分間添加して固定した。試料をフローサイトメトリー分析前の72時
間まで2〜8℃で保存した。サブパートc)PRPでの血小板のフローサイトメトリー分析:
調製した試料を
FACSanフローサイトメーター(Becton Dickinson、San Jose、CA)を用い
て血小板P−セレクチン発現について分析した。該装置には波長が488nmの
15mWアルゴン−イオンレーザーが配設されていた。FITC蛍光を530n
mバンド通過フィルターを用いて検出した。血小板を対数スケールでそれらの順
方向散乱と副散乱により同定した。10E5−FITC抗体を用いて、全ての血
小板上に見られるGP IIB/IIIaレセプターを染色することで指標の血
小板光散乱を確認した。収集口を血小板群の周囲に移動させ、それを用いて、1
秒当たり400〜1000事象の速度で10,000個の血小板を集めた。血小
板領域の分析をCellQuestTM40を用いて行った。使用した分析方法に
おいて、対照マウスIgG−FITCとS12−FITCの対数FLIヒストグ
ラムを重ねた。統計学的なマーカーは、陽性と思われるマウス対照で染色された
1%の細胞に帰する場所に置かれた。同じ位置にマーカーを維持して、P−セレ
クチン発現について陽性であったS−12−FITC染色された細胞の割合を決
定した。最大に活性化された試料中の陽性の細胞の割合も評価して、S12−F
ITC抗体がP−セレクチンに最適に結合したことを保証した。
図1に示すフローサイトメトリーアッセイから診断的な感度を説明する一連の
カラーヒストグラムを作成した。ヒストグラムには色がつけられているので、ヒ
ストグラムをアプリケーションに含めなかった。ヒストグラムの目的は、非活性
化血小板を含む全血に対する完全に活性化された血小板の増加割合の追加の直線
性を示すことにあった。血液をドナーから取り出し、2つの部分に分け、そのう
ちの1つを活性化させず、もう1つをPMAで活性化した。活性化した血小板を
非活性化試料に対する全体の増加割合に加えた。活性化した血小板の添加効果を
、得られた割合の陽性の血小板のフローサイトメトリー測定により決定した。こ
の詳細な実験において、非活性化試料の基底の活性は5.06%である。非活性
化血液試料に対する総数の1%を数える最大に活性化した血小板を添加すること
で、6.41%の活性化した血小板を検出した。5.06%の基準に5%の活性
化血小板の添加は、この方法により決定される9.39%の活性化に帰した。こ
の実験は、全血の試料中に存在する活性化した血小板の割合がこれらを活性化し
た血小板決定するための実行可能な方法にするのに必要な感度で正確に評価され
うることを示す。実施例10:膜結合P−セレクチンを測定するための容積測定キャピラリーサイ トメトリーシステムの使用:
膜結合P−セレクチンを測定するのに利用する容積測定キャピラリーサイトメ
トリーシステムは、Biometric Imaging、Mountain View、CA製のIMAGN20
00TMであった。(図8を参照)。サブパートa)容積測定キャピラリーサイトメトリーシステムを用いた膜結合P −セレクチンを測定するのに好適な試料の獲得と調製:
全血を19ゲージ針を用い、抗凝血剤としてACD溶液A(Becton Dickinson
、カタログ番号364606)またはACD溶液B(Becton-Dickinson、カタログ番号
364816)のいずれかを含んだバキュテイナー管内に静脈穿刺で全血を集めた。抜
き取る30分以内に、1つのバキュテイナーから抗凝血剤を含有した血液を、改
変タイロード緩衝液(MTB)(20mM HEPES、187mM NaCl
、4mM KCl、50mM Na2HPO4、1mM MgCl 6H2O、5
.5mM グルコース、1%ウシアルブミン)中アピラーゼ(終濃度1U/mL
(Sigma、St.Louis、MO、カタログ番号A 9149)とプロスタグランジンE1(P
GE1、終濃度1μM)(Sigma、St.Louis、MO、カタログ番号P 5515)のアリ
コートの予め測定したものを含有する15mLのポリプロピレン製遠心管(VW
R、カタログ番号21008-102)に移した。血液試料中の血小板上で発現したP−セ
レクチンが実際のインビボレベルの血小板活性化を示すように、ポリプロピレン
の使用と、アピラーゼおよびPGE1の添加により、インビトロにおける血小板
の活性化を防ぎ、血小板上でのP−セレクチン発現を安定化させた。また、試料
を穏やかに混合し、取扱い、室温で全ての工程を実行することは、インビトロ活
性化を防ぐのに重要なことであった。サブパートb)容積測定キャピラリーサイトメトリーシステムを用いた使用に好 適な試料の染色:
アピラーゼとPGE1とを含有する全血を、フルオロフォアCy5で標識した
P−セレクチン特異的抗体S12とW40のカクテル(Amersham-Searle)で染色
した。改変タイロード緩衝液中のCy5標識したS12/W40カクテル5μg
/mL(10×濃度)を50μLアリコートで−20℃で凍結保存した。必要な
時や廃棄する時に新鮮なアリコートを解凍した。P−セレクチンについて血小板
を染色するために、45μLの全血を5μLのS12−Cy5/W40−Cy5
カクテルを終濃度がそれぞれ0.5μg/mLで含有した琥珀色の試験管(Sars
tedtカタログ番号72.694.034または均等物)内に等分し、室温で20分間イン
キュベートした。染色インキュベーションの終了時に、血小板を、1200μL
の2%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciencesカタログ番号1571
2-Sまたは均等物)の添加により、希釈し固定した。
染色し、固定し、希釈した全血試料(40μL)をプラスチック製キャピラリ
ーのウェル(カタログ番号VC120、Biometric Imaging、Mountain View、CA)に
入れ、蛍光強度と血小板サイズゲート内の事象の数をIMAGN2000装置(
Biometric Imaging、Mountain View、CA)において測定した。サブパートc)容積測定キャピラリーサイトメトリーシステムを用いた全血小板 カウント:
各試料における全血小板カウントをその両者が全ての血小板に本質的に結合す
るCy5標識したCD61抗体(Becton Dickinson)または10E5−Cy5抗
体(Centocor社、Malvern PA)を用い、IMAGN2000 バイオメトリック
イメージング装置において決定した。Cy5標識したCD61と10E5を5μ
g/mL(10×)で200μLアリコート中に凍結保存(−20℃)した。使
用中、試薬を4℃に保持する。未使用の冷凍試薬を毎月廃棄した。全血小板カウ
ントを5μLの血液を5mLの改変タイロード緩衝液を含有する12×75mm
のポリプロピレン製試験管(Falcon 2063または均等物)に移し、ピペットで2回
上げ下げして、1:1000希釈を完了することにより行った。次いで、45μ
Lの希釈血液を5μLのCD61−Cy5または10E5−Cy5(5μg/m
L)を含有する琥珀色の試験管(Sarstedtカタログ番号72.694.034または均等物
)に添加し、室温で20分間インキュベートした。全−血小板(pan-platelete)
マーカーで染色した40μLの希釈した血液をプラスチック製のキャピラリーの
ウェル(カタログ番号VC120、Biometric Imaging、Mountain View、CA)中に入
れ、蛍光強度と血小板サイズゲート内の事象の数をIMAGN2000TM装置(
Biometric、Imaging、Mountain View、CA)において測定した。実施例11:可溶性P−セレクチンを測定するための容積測定キャピラリーサイ トメトリーシステムの使用:
IMAGN2000TM容積測定キャピラリーサイトメトリーシステムを用いて
、可溶性P−セレクチンを測定した。好ましい態様は、ビーズベースの形式を使
用することである。(図9を参照)。この実施例のための試料を、可溶性P−セ
レクチンを決定するELISA法を述べている実施例2で調製した試料と同様の
方法で調製した。本技術者は、実施例2のようにマイクロタイタープレート被覆
するよりむしろ、抗P−セレクチン抗体であるW40でポリスチレンビーズを被
覆した。ポリスチレンサルフェート化微小粒子とも呼ぶ、該ビーズ(9.7μm
)を0.5×有用な粒子表面領域をP−セレクチン特異的抗体であるW40で受
動的に被覆した。ビーズを30mMリン酸緩衝化食塩水、1%BSA、0.01
%Tween20中に固体が0.01%のアッセイ容量を含有するように希釈し
た。トランスフェクトしたヒト腎臓細胞株(293細胞)で産生した可溶性P−
セレクチンをある範囲の濃度の希釈液中のビーズに添加した。蛍光標識した抗P
−セレクチン抗体であるS12−Cy5をアッセイにおいて終濃度2.5μg/
mLで添加し、室温で2時間浸透しながらインキュベートした。本技術者は、実
施例2でのようにプレートリーダー中にマイクロタイタープレートを置くよりむ
しろ、ビーズを含有するアッセイ混合物をIMAGN2000TM装置のキャピラ
リー中に入れた。40μLのアッセイ混合物をプラスチック製のキャプラリー(
カタログ番号VC120、Biometric Imaging、Mountain View、CA)のウェル中に入
れ、蛍光強度と血小板サイズゲート内の事象の数をIMAGN2000装置(Bi
ometric、Imaging、Mountain View、CA)において測定した。実施例12:容積測定キャピラリーサイトメトリーシステムを用いた血小板アゴ ニストの存在下でのP−セレクチンの測定および感度:
製造品であるIMAGN2000TMは、全血の試料中における活性化され、従
ってその表面(膜)上でP−セレクチンを発現している血小板数を検出する性能
を提供する。標識したP−セレクチン特異的Mab(本態様ではS12−Cy5
とW40−Cy5のカクテル)の添加により、活性化した血小板を検出した。最
後に固定剤を全血に添加し、インビトロの血小板の活性化が生じないこと保証し
た。1または複数の標識したP−セレクチンMabとインキュベートし、固定し
た血液を、次いでキャピラリー内に入れ、予め決定した容量の血液を装置の光学
(レーザー)機構でスキャンした。サイズに基づいて異なる細胞型の識別が可能
なサイズ範囲は、装置に予めプログラムすることができる。予め決定したサイズ
範囲内では、バックグラウンドの蛍光より十分に大きな蛍光事象はいずれも1つ
の事象として記録された。増加させた濃度の血小板活性化アゴニストに全血を供
した場合、血小板の増加数をそれらの蛍光強度(シグナル)がバックグラウンド
(ノイズ)より十分大きな程度にまで活性化して、ノイズに対するシグナルの割
合が事象として装置によりカウントされうるようにした。該装置を用いて行った
一連の実験において、血小板活性化アゴニストPMA(ホルボール ミリステー
ト アセテート)を量を増加しながら全血に添加した。その結果により、全血試
料中に存在する活性化した血小板の数の評価における装置の有効性を確認した。
アゴニストの非存在下で、4つの陽性な事象(血小板)が、レーザーでスキャン
された1:25に希釈された約5μLの血液であることが決定された。5nMの
PMAで、8個の活性化した血小板を検出した。40nMのPMAで120個の
活性化した血小板を検出し、500nMのPMAで965個の活性化した血小板
をカウントした。この装置の最新モデルは、最大1000事象をカウントする。
活性化した血小板数の検出に加え、1または複数の標識したP−セレクチン特異
的Mabを用いて、全ての血小板に共通した表面分子に特異的な二次Mab(全
血小板マーカー)も全血に添加した。この詳細な態様において、使用したマーカ
ーはCD61−Cy5である。各血小板は、十分なCD61−Cy5をその膜上
に有しており、事象として検出される(ノイズに対するシグナルの割合が十分に
高い)。CD61−Cy5に対して陽性である事象の数は、スキャンした容量や
血液の希釈率に応じて、全血中の血小板数のカウントを提供した。P−セレクチ
ンに対して陽性な事象(血小板)数を血小板の総数で割って陽性の血小板の割合
を得た。正常な状態および活性化した血小板の状態の割合をフローサイトメトリ
ーで確認した。最新の装置から得られる陽性の血小板の割合は、まず同じ試料で
のフローサイトメトリー決定から得られる同様の計算と相関させて2つの方法の
実質的に同値であることを確認した。実施例13:容積測定キャピラリーサイトメトリーシステムにおけるビーズ形式 を用いたP−セレクチンの測定:
製造品であるIMAGN2000は、血小板低含有血漿(PPP)の試料中に
存在する可溶性P−セレクチン量を検出し定量する性能を提供する。本態様のア
ッセイにおいて、9.7μMのラテックスビーズをP−セレクチン特異的Mab
で(共役的または受動的に)被覆した。均一な量のP−セレクチンMabが各ビ
ーズ上に存在するように、ビーズの被覆を慎重に制御した。明確な数のビーズを
可溶性P−セレクチンを含有するPPP中でインキュベートした。ビーズの添加
と同時に、ビーズを被覆するのに用いたMabが結合する部位と異なる、可溶性
P−セレクチン上の部位に結合しているCy5標識したP−セレクチン特異的M
ab、またはCy5標識したポリクローナル抗P−セレクチン抗体調製物をPP
Pに添加した。インキュベーション期間の終わりに、ビーズを含有する血漿をキ
ャピラリーに入れ、予め決定した容量の血漿を装置の光学(レーザー)機構でス
キャンした。9.7μMのビーズを含むサイズ決定を装置のプログラム内に予め
設定した。サイズの一定領域で、十分な蛍光のある(バックグラウンドを超える
)全ての事象の蛍光強度を計算した。ビーズの蛍光強度は、表面Mabが結合し
、1または複数の標識されたP−セレクチン抗体で検出される可溶性P−セレク
チンの量に正比例した。特異的な蛍光強度と相互に関連する可溶性P−セレクチ
ンの量を定量するため、増加し、慎重に決定した量の単離した組換え可溶性P−
セレクチンで一連のビーズを被覆し、次いでアッセイに用いたCy5標識した抗
P−セレクチン抗体でインキュベートした。この方法において、可溶性P−セレ
クチン濃度と一致する蛍光強度の標準曲線を確認した。次いで、ビーズの蛍光強
度を決定することにより、試験血漿とインキュベートしたビーズに結合する可溶
性P−セレクチンの量を標準曲線のみから決定した。この方法を用いる初期のア
ッセイは、公知の量の単離された組換え可溶性P−セレクチンをヒト血漿中に加
えて強化し、Cy5標識したS12の存在下で抗P−セレクチンMab(W40
)被覆したビーズとインキュベートした場合、ビーズの蛍光強度が可溶性P−セ
レクチンの濃度の増加と共に直線的に増加することを示す。この方法は、本明細
書に記載のELISAである参照方法に匹敵する結果を提供するような、可溶性
P−セレクチンを測定する代替方法である。
均等物
本発明は、その好ましい態様への参照を具体的に示し、かつ述べているが、様
々な形態の変化および詳細が、添付された請求の範囲により規定された本発明の
思想および範囲から離れることなくなされることを、当業者により理解されるで
あろう。当業者は、本明細書に詳細に記載された発明の特定の態様に対して多く
の均等物を、日常的な経験を用いるだけで認識し、あるいは確認することができ
るであろう。そのような均等物は、以下の請求の範囲に包含されることを意図す
る。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成10年11月23日(1998.11.23)
【補正内容】
ひとたび活性化された血小板は、膜糖蛋白質GPIIb/IIIa複合体上にフ
ィブリノーゲン結合部位を露出し、フィブリノーゲン架橋を介して血小板凝集が
起きる[マックイーバー(McEver,R.P.)、"血小板膜糖蛋白質の臨床的意義"Hem
atol.Oncol.Clin.North Am.,4:87-103(1990);ドゥーら(Du,X.et al.)
、"リガンド「活性」インテグリンαIIbβ3(血小板GPIIb−IIIa)""C
ell,65:409-416(1991)]。血小板活性化の程度は、最大活性血小板試料を参照標
準として用い、全血試料中のP−セレクチンのイン・ビトロでの発現の程度を決
定することにより蛍光定量的に測定された。国際公開第96/12956号パン
フレット。
P−セレクチンはCD62、GMP−140またはPADGEMとして知られ
、白血球輸送を調節する接着受容体のセレクチンファミリーの1つである[ロー
レンスとスプリンガー(Lawrence,M.B.and T.A.Springer)、Cell,65:859(
1991);ジョンストンら(Johnston,G.I.et al.)、Cell,56:1033-1044(19
89);マックイーバー(McEver,R.P.)、米国特許第5,378,464号明細
書]。P−セレクチンは、活性化されていない血小板のα顆粒、および内皮細胞
のヴァイベル-パラーデ体に存在する内在性膜糖蛋白質である[ペールシュケ(P
eerschke,E.I.B.)、Am.J.Clin.Pathol.,98:455(1992);マックイーバ
ー(McEver,R.P.)、1993,"P−セレクチンを介した白血球相互作用"Structur
e,Function and Regulation of Molecules Involved in Leukocyte Adhesion中
、リプスキーら(Lipsky,P.E.et al.)編、(Springer Verlag,New York)1
35-150頁]。血小板や内皮がトロンビン、ホルボールエステル、またはADPを
含むアゴニストにより活性化されると、分泌粒子から細胞表面へのP−セレクチ
ン転位が起き、その合成はサイトカイン類によっても増大する[ステルンベルグ
ら(Sternberg,P.E.et al.)、1985,"血小板のα顆粒膜蛋白質(GMP−
140)は活性化後の血漿上で発現される"J.Cell Biol.,101:880-886(1985)]
。
17. 血小板が該試料から予め除去されており、かつ該P−セレクチンが可溶
性P−セレクチンである、請求項15記載の方法。
18. 該アンタゴニストが糖蛋白質IIb/IIIaに対する特異性を有する
抗体である、請求項15記載の方法。
19. 糖蛋白質IIb/IIIaに対する特異性を有する抗体がキメラ7E3
Fab断片である、請求項18記載の方法。
20. P−セレクチンレベルを評価する工程が可溶性P−セレクチン及び膜結
合P−セレクチンのレベルを評価する工程を含む、請求項15記載の方法。
21. 可溶性P−セレクチンのレベル及び膜結合P−セレクチンのレベルを評
価する工程が本質的に同時に起こる、請求項20記載の方法。
22. 試験対象の試料とP−セレクチンに対する特異性を有する抗体とを、該
抗体とP−セレクチンの複合体の形成に適した条件下に合わせる工程、および該
複合体の形成を検出または測定する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
23. 該抗体が標識される、請求項22記載の方法。
24. 該標識が放射活性標識である、請求項23記載の方法。
25. 複合体の形成が検出可能な標識を含有する2次抗体を用いて検出または
測定される、請求項22記載の方法。
26. P−セレクチンレベルを評価する工程が可溶性P−セレクチン及び膜結
合P−セレクチンのレベルを評価する工程を含む、請求項22記載の方法。
27. 可溶性P−セレクチンのレベル及び膜結合P−セレクチンのレベルを評
価する工程が本質的に同時に起こる、請求項26記載の方法。
28. (a)血小板を含有する第1試料および第2試料を得る工程;
(b)内因性血小板活性化レベルを維持するに適する条件下に該第2試料を維持
しながら、該試料中の血小板の活性化に適する条件下に、該第1試料を血小板活
性化アゴニストと接触させる工程;
(c)該試料と抗P−セレクチン抗体を含有する組成物とを、該抗P−セレクチ
ン抗体と活性化血小板との標識複合体の形成に適する条件下に接触させる工程;
ならびに
(d)該試料中における複合体の形成を決定する工程であって、該第1試料中に
検出された複合体の量と比較した第2試料中に検出された複合体の量が、該第2
試料中の血小板活性化の程度の指標である、
を含む、個体における内因性血小板活性化を決定する工程をさらに含む、請求項
1記載の方法。
29. 該第1試料及び第2試料が全血および血小板高含有血漿からなる群より
選択される、請求項28記載の方法。
30. 各試料が前もって選択された数の血小板を含む、請求項28記載の方法
。
31. 該抗P−セレクチン抗体が放射活性標識を含有する、請求項28記載の
方法。
32. 該抗P−セレクチン抗体が放射活性標識を含有する2次抗体の結合部位
を含有する、請求項28記載の方法。
33. (a)適当な試料と、ディテクターとして、抗P−セレクチン抗体を含
有する組成物とそれに結合した抗P−セレクチン捕捉抗体を有する固相支持体と
を接触させる工程であって、該抗P−セレクチン抗体と可溶性P−セレクチンと
の複合体の形成に適する条件下に、ディテクター抗体が該捕捉抗体により認識さ
れるものと異なるP−セレクチンエピトープに結合する;ならびに
(b)該試料中における3成分複合体の形成を決定する工程
を含む、個体における内因性血小板活性化を決定する工程をさらに含む、請求項
1記載の方法。
34. 該ディテクター抗体がビオチン化抗P−セレクチン抗体およびHRP結
合抗P−セレクチン抗体からなる群より選択される、請求項33記載の方法。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG
,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT
,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,
CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F
I,GB,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE
,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,
LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,M
X,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE
,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,TT,
UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZW
(72)発明者 ガンブズ,シンディー,アイ.
アメリカ合衆国 ペンシルバニア 19380
ウェスト チェスター,ウェスト マー
シャル ストリート 524,アパートメン
ト イー