JP2001521756A5 - - Google Patents

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【書類名】 明細書
【発明の名称】 トランスジェニックアルファルファ植物におけるタンパク質産生
【特許請求の範囲】
【請求項1】 抽出可能なタンパク質を安定に産生するための方法であって、以下の工程:
a)少なくとも3時間にわたって抽出物中で無視し得るタンパク質分解活性を示すアルファルファ遺伝子型を、選択する工程であって、該遺伝子型は、
i)多年生であり;
ii)20のリーフディスクまたは他の外殖片組織あたり少なくとも1つの胚芽形成カルスの胚芽形成潜在能を示し;かつ
iii)該遺伝子型から作成した抽出物において少なくとも1時間にわたって抽出可能なタンパク質の100%のタンパク質濃度安定性を示すものである、工程
b)工程a)で選択された遺伝子型の少なくとも1つのアルファルファ植物を、該タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換し、少なくとも1つの形質転換型アルファルファ植物を産生する工程;
c)該少なくとも1つの形質転換型アルファルファ植物において該遺伝子の存在を確認する工程;
d)該少なくとも1つの形質転換型アルファルファ植物を生長させ、該タンパク質を産生する工程;
e)該タンパク質を該植物から抽出する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】 前記抽出する工程が、前記少なくとも1つの形質転換型アルファルファ植物、または該少なくとも1つの形質転換型アルファルファ植物の栄養繁殖体から産生された少なくとも1つの形質転換型子孫アルファルファ植物から、地上部を収穫する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】 前記少なくとも1つの形質転換型アルファルファ植物、または前記少なくとも1つの形質転換型子孫アルファルファ植物の地上部が、再生長される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】 前記栄養繁殖体が、茎由来の栄養繁殖体である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】 前記栄養繁殖体が、胚芽由来の栄養繁殖体である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】 前記タンパク質が、モノクローナル抗体であり、そして工程b)が、第1のアルファルファ植物を、該モノクローナル抗体の重鎖をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換して、第1の形質転換型アルファルファ植物を産生する工程、および第2のアルファルファ植物を、該モノクローナル抗体の軽鎖をコードする遺伝子を含むベクターで形質転換して、第2の形質転換型アルファルファ植物を産生する工程、および、次いで
該第1の形質転換型アルファルファ植物と、該第2の形質転換型アルファルファ植物とを交配させて、該少なくとも1つの形質転換型アルファルファ植物を産生する工程であって、ここで、該少なくとも1つの形質転換型アルファルファ植物が、該モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖の両方を発現する、工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】 前記抽出する工程の後に、前記タンパク質を精製する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】 前記タンパク質を精製する工程が、アフィニティークロマトグラフィーを使用して行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】 前記アルファルファ遺伝子型が、アルファルファ遺伝子型11.9に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】 前記抽出する工程が、プロテアーゼインヒビター、抗酸化剤、還元剤、または安定剤を添加することなしに行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】 前記抽出する工程が、水中で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】 前記収穫された地上部を、前記収穫する工程の後、および前記抽出する工程の前に、乾燥する工程をさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項13】 前記抽出する工程が、プロテアーゼインヒビター、抗酸化剤、還元剤、または安定剤を添加することなしに行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項14】 前記抽出する工程が、水中で行われる、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
(トランスジェニックアルファルファ植物におけるタンパク質産生)
本発明は、アルファルファ植物におけるトランスジェニックタンパク質の産生に関連する。より詳細には、本発明は、診断アッセイのようなある範囲の適用に使用するための、トランスジェニックアルファルファ植物内の多量体タンパク質の産生に関連する。
【0002】
(発明の背景)
参考文献についての全引用は、実施例の節の最後に示す。
【0003】
ある範囲の薬学的に関連する適用における使用のためのタンパク質の使用は、政府により制定された厳密な法的要求事項に供される。例えば、米国において、Center for Biologics Evaluation and Research(CBER)は、トランスジェニックで産生されたタンパク質の生産および監視に関する要求事項を概説した一組の文書を公表しており(fttp://www.fda.gov/cber/cberftp/htmlを参照のこと)、同様の一組の法規は、カナダにおける生物製剤の製造および使用に関連している。CBER文書は、一貫した産物が得られることを保証するために、生物製剤が信頼性がありかつ持続的な供給源から産生されるべきであることを示す(ftp://ftp.fda.gov/cber/ptc/ptc_mab.txt)。これは、その産物が、その使用のための認可の前に重点的に試験および確認されなければならず、そして将来の販売のために同じ形態で利用可能でなければならないからである。細胞培養物のためのマスター細胞バンク、トランスジェニック植物のための種子バンク、トランスジェニック発現系のためのウィルス種子ストック、およびトランスジェニック動物のためのファウンダー株を包含する、生物製剤産生のためのいくつかの十分に確立された発現系が存在する。マスターベクター種子ストックは、一過性の発現系の使用のために生成されなければならず、その発現構築物の安定性が慣用的に試験される。モノクローナル抗体のようなタンパク質が細胞株から産生される場合、親細胞株の特徴づけ、細胞産生プロトコール、精製および品質管理に関する文書の提出が、マスター細胞バンクおよび作業(working)細胞バンクの双方について要求される。製造または処方のいかなる変更は、とくに臨床試験が始まっている場合、マスターおよび作業細胞バンクおよび産物の広範な再特徴付けを必要とする。なぜなら、これらの変更は、生物学的活性の有意な変化を生じ得るからである。CBER文書「Points to Consider in the Manufacture and Testing of Monoclonal Antibody Products for Human Use」(1997年2月28日)の中では、「前臨床研究において使用される材料は、臨床試験のために材料を製造するときに使用されるか、または使用を意図される手順と同様の手順を使用して製造されるべきであることが推奨される」と明言されている。さらに、いかなるスケールアップが行われた場合(例えば、フェーズ2の研究のため)も、「その産物の適合性が実証されなければならないであろう...(そしてそれは)さらなる臨床研究を必要とし得るかもしれないし、または必要としないかもしれない」と明言されている(ftp://ftp.fda.gov/cber/ptc/pct_mab.txt)。
【0004】
植物は、トランスジェニックタンパク質の産生に使用されてきたが、上記で議論したようなマスター細胞株の維持に適用される同様の考慮は、植物の等価物に対して適用される(Miele,1997年を参照のこと)。トランスジェニック植物のための種子バンクは、種子は無期限に保存し得ないので、定期的な増幅を必要とする。種子ストックの保存は、目的のあるトランスジーンの潜在的な遺伝的損傷を減少しなければならない。昆虫、真菌類、または細菌による種子の汚染を含む、種子バンクに影響を及ぼし得る任意の他のファクターもまた、制御されなくてはならない。さらに、トランスジーンの安定性、および種子バンクの再増幅後の所定の種子ロット内、または種子ロット間の代表的植物における産物発現のレベルが決定されなくてはならない。異なる種子バンクから調製された産物を比較する、さらなるデータもまた必要とされ得る。この後者の特徴づけもまた、収穫された種子ストックにおける年々の変異に適用される。通常、産物の開発は、トランスジェニック産物の生化学的および生物学的性質の定常的な監視を必要とする(Miele,1997年)。これらの判定基準が、多量体タンパク質の産生のための植物系に連関された場合、問題が混合される。なぜなら、多量体タンパク質を産生し得るハイブリット種子を産生するためには、相同的種子ロットから得られ、そして上記に概説したような再増幅および維持を必要とするトランスジェニック植物は、最終ハイブリット種子を産生するために交雑を必要とし、そしてそれは再び上記で規定されたように維持されなければならないからである。明らかに、安定で、そして多数の種子バンクの広範な維持を必要としないタンパク質の持続的供給を生じる、トランスジェニックタンパク質の代替的な供給源が、必要とされる。
【0005】
植物を用いたトランスジェニックタンパクの調製は、文献の中で十分に確立され、そしていくつかの成功した形質転換系が、確立されている。例えば、多量体タンパク質は、タバコ植物の有性交雑の子孫を経て調製されているが(Hiatt,1990、HiattおよびPinney,1992;Maら、1995)、薬学的適用のためのトランスジェニックタンパク質の産生に使用されてきた現在までの全ての植物供給源は、1年生植物を利用してきた。これは、上記のような、種子バンクストックの定常的な再増幅および再確認を必要とする。明らかに、多年生植物種がトランスジェニックタンパク質の生成に利用された場合、全体的維持費、およびロット対ロットの変異性は大幅に減少する。さらに、多年生の植物の植物性構造物が、トランスジェニックタンパク質の供給源として収穫された場合、法的な要求事項はいっそう減少される。トランスジェニックタンパク質の多年生供給源の産生を保証するために、安定で、持続性の供給源に由来する産物の信頼度の一貫性に関する上記要求事項に関連した多くの因子を考慮しなければならない。
【0006】
最も重要な血液型決定試薬の1つは、非凝集抗体の検出に使用される抗ヒトIgG試薬である。安定な抗ヒトIgG特異性を有するマウスmAbが得られており、そしてクームス試薬(St Laurentら、1993)に伝統的に使用されるウサギポリクローナル抗ヒトIgGに徐々に取って代わられている。これらのmAbは、B細胞ハイブリドーマの大量培養により産生される。信頼できる一方、このプロセスは、洗練された設備、高価な培養培地、および訓練された人員が必要とされるため高価である。mAbの他の診断的適用と比較すると、血液バンク試験において使用されるタンパク質の市場は、極めて競争力がある;従って、タンパク質の価格が比較的安く、そしてmAb産生の原価能率が決定的争点なる。
【0007】
mAbの軽鎖および重鎖をコードするcDNAクローンの単離により、細菌、真菌、昆虫細胞、植物および非リンパ系哺乳動物細胞を包含する、種々の非相同系の抗体遺伝子の発現が可能となった(Wangら、1995、Wrightら、1992)。これらの系のうちで、植物が最も原価能率の見込みがある1つであるように思える。しかし、始めにタバコにおいて行われたのに続き、それは作物植物を見つけるために重要になり、そこでこの技術は市場性に対する現代の需要に直面させ得た。Hiattら(WO96/21012、1996年7月11日公開)は、植物における、粘膜の病原体に対する使用のための治療的免疫グロブリン(「防御タンパク質」)の方法および調製を開示する。EP0 657 538において、GaleffiおよびNataliは、乳腺および卵巣腫瘍に存在するHER−2癌遺伝子を認識する治療的または診断的使用のための抗体の産生を開示する。組換えタンパク質が産生され得る作物植物を見出すことは重要であり、そしてそれは市場性に対する現代の需要に直面し得る。これらの需要には、生産コストの競争力のみならず、信頼性もまた包含される。これは、精製された組換え分子の長期に安定な供給が確立され得ない限り、クローンの集団が誘導され得る同調化した供給源材料の永続性を保証する手段が、開発されなければならないことを意味する。B細胞ハイブリドーマについて、永続性が、マスター細胞バンクの設立によって確立される。そのマスター細胞バンクは、均一のプールから得られた細胞のアリコートから成り、そして液体窒素中で凍結保存される。Hiatt(1990)は、アルファルファ、ダイズ、トマトおよびジャガイモが、抗体の増殖のための宿主として有用な代替物であり得ることを示唆する。アルファルファは、現在の農業生態系(agro−ecosystems)において産生するのに最も廉価な植物生物資源の1つであり、そしてほとんどの気候状態におけるその多年生が、アルファルファを維持可能な農業のための魅力的な作物としている。さらに、アルファルファ(Medicago sativa
L.)は、一年ごとの耕作および植付けを必要とせず、そして残余の植物組織の動物飼料への使用は、十分確立されている(AustinおよびBingham、1997)。しかし、いくつかの研究によって、サイロに貯蔵する飼料種におけるタンパク分解の程度が試験されており、そしてタンパク分解が、イネ科草本よりマメ科飼料種において広範であり、アルファルファは最も高い割合および量のタンパク分解を示すことが公知である(Jonesら、1995;PapadopoulosおよびMcKersie、1983)。さらに、全てのアルファルファ植物が多年生であるわけではなく、そして多年生アルファルファ植物のうち、全てが、形質転換プロトコールの影響を受けやすいわけではないことが当該分野で周知である(Desgagnes、1995)。
【0008】
植物組織中での、およびその抽出の際のトランスジェニックタンパク質の安定性は文献において懸念されてきた。しかし、植物細胞系における抗体の安定性についてはほとんど知られていない(WongsamuthおよびDoran、1997)。何人かの研究者(Hiattら(1989)、Duringら(1990)、Maら(1995)、MaおよびHein(1995)、Schouten(1996))は、小胞体中の構築物の同時翻訳的挿入を指向させるためのシグナル配列を含むキメラ構築物が、トランスジェニック植物中の構築物の安定性を増加することを観察している。リーダー配列の不在下において、トランスジェニックタンパク質の回収は非常に低い(Hiattら、1989)。トランスジェニック植物組織からのタンパク質回収を最大にするために、抽出混液中にプロテアーゼインヒビターを含むことは一般的なやり方である。しかし、植物由来のトランスジェニックタンパク質の市場向きの生産には、簡易性が要求される。例えば、AustinおよびBingham(1997)は、圃場での大規模粉砕(maceration)および汁(juice)抽出プロトコル、および数時間後に処理工場で行う最終処理を総説している。このようなプロトコルは、水および機械的粉砕の使用を利用し、そして抽出中のタンパク質分解が問題である場合、または抽出の間にプロテアーゼインヒビターが必要とされた場合には、非実用的である。これは、とくに収穫後、高い割合のタンパク質分解を示すことが公知であるアルファルファ種の適用についてとくに真実である(Jonesら1995;PapadopoulosおよびMcKersie1983)。
【0009】
mAbの1kgは、現在市場で1,000,000ドル〜10,000,000ドルの価値を有する。温室条件下(暖房、人件、および抽出および精製のための消耗品を含む)で産生されたC5−1の1gあたりの生産費用が1年当たり100gの期待される収量を伴う250m2において見積もられた場合、C5−1の1gあたりの費用は、500ドル〜600ドルの間であるが、なお400,000ドルの市場価値をもたらす。このような見積もりは、組換えタンパク質が植物において費用有効的に産生し得ることを示すが、適合植物系が確立される必要がある。本発明の1つの実施態様の1つの局面は、適合トランスジェニック植物株に必要とされる特徴の決定に関し、その適合トランスジェニック植物株は、生物製剤化合物についてのCBERの推奨において確立された判定基準の多くを満たす目的のトランスジェニックタンパク質の産生に使用され得る。
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、アルファルファ植物におけるトランスジェニックタンパク質の産生に関する。
【0011】
本発明はまた、血清学的アッセイにおいて使用するためのタンパク質を産生するための方法に関し、この方法は、タンパク質をコードする目的の遺伝子でアルファルファ植物を形質転換する工程、およびこのタンパク質を発現する形質転換型アルファルファ植物、または選択されたアルファルファ植物の子孫を選択する工程、ならびにこの形質転換型植物からタンパク質を抽出する工程を包含する。本発明の実施態様の1つの局面は、アフィニティークロマトグラフィーを使用するタンパク質の精製に関する。
【0012】
本発明はまた、赤血球血清学において使用されるモノクローナル抗体産生のための方法に関し、以下の工程:
a)形質転換体を産生するためのモノクローナル抗体をコードする遺伝子を含有するベクターで、アルファルファを形質転換する工程、
b)トランスジェニック遺伝子の存在に対してその形質転換体をスクリーニングする工程、
c)そのトランスジェニック遺伝子によってコードされるモノクローナル抗体を産生するように形質変換体を生長させる工程、
d)上記トランスジェニックアルファルファ植物の地上部を収穫する工程、
e)上記トランスジェニックアルファルファの所望の組織から上記モノクローナル抗体を抽出する工程、
f)トランスジェニックアルファルファ植物の再生長を可能にする工程、および、
g)工程c)〜f)を繰り返す工程、
ならびに、必要に応じてトランスジェニック植物を増殖させる工程を、包含する。本発明はまた、この方法に関し、ここでトランスジェニック植物を随意に増殖させる工程は、茎または胚芽増殖を含む任意のクローン増殖方法を含む。本発明の1つの実施態様のさらなる局面は、アフィニティークロマトグラフィーを使用するモノクローナル抗体の精製に関する。
【0013】
本発明はまた、この方法によって産生されるモノクローナル抗体を含む。
【0014】
本発明はまた、形質転換型アルファルファにおいて目的のタンパク質を産生する方法に関し、この方法は、以下の工程;
a)目的のタンパク質をコードする遺伝子を含有するベクターで適合アルファルファ遺伝子型を形質転換して、形質転換体を産生する工程、
b)トランスジェニック遺伝子の存在下について形質転換された適合アルファルファ遺伝子型をスクリーニングする工程、
c)上記の形質転換された適合アルファルファ遺伝子型を生長させて、目的のタンパク質を産生する工程、
d)トランスジェニック適合アルファルファ遺伝子型の地上部を収穫する工程、
e)トランスジェニック適合アルファルファ遺伝子型の所望の組織から目的のタンパク質を抽出する工程、
f)トランスジェニック適合アルファルファ遺伝子型の再生長を可能にする工程、および、
g)工程c)〜f)を繰り返す工程、
を包含する。
【0015】
本発明はまた、多量体の、生物学的に活性なタンパク質を発現可能であるトランスジェニックアルファルファ植物に関する。
【0016】
本発明は、モノクローナル抗体C5−1の調製によって例証されるが、実施において任意の目的の産物は、本発明の以下のプロトコルに従って形質転換型アルファルファにおいて調製され得る。先行技術において開示されていないトランスジェニックタンパク質の発現のために適合アルファルファ遺伝子型を使用する利点には、以下におけるタンパク質の安定性が含まれる:
1)植物から得られ、そして風乾のために放置され、抽出前に保存される収穫された組織;
2)室温下で、そして安定剤、プロテアーゼインヒビター、緩衝液、塩、抗酸化剤、還元剤、安定剤、またはタンパク質の安定性および活性を保証するために抽出物反応混液に代表的に添加される他の添加剤の非存在下において、水中にて収穫された抽出物;
3)生長期、および生長期と生長期の間での繰り返し収穫にわたる同じ植物;ならびに
4)クローン栄養繁殖体
さらに、アルファルファが多年生植物であり、栄養繁殖可能である場合、クローン材料が得られ得、そして多くの生長期にわたる相当長い期間にわたって収穫され得る。これは、トランスジェニックアルファルファ内における目的のタンパク質の安定な供給源を保証する。このような特徴は、トランスジェニックタンパク質産生に使用される他の代表的な植物(タバコ、Arabidopsis、ダイズ、およびトウモロコシを含む一年生植物である傾向にある)において見出されない。しかし、全てのアルファルファの変種が多年生であるわけではなく、そして多年生かつ高収率(農学的に言って)である多くの変種が、形質転換プロトコルにとって困難であることが知られている。従って、本発明はまた、トランスジェニックタンパク質の産生において使用するための適合アルファルファ株または遺伝子型の選択のための方法に関し、以下の工程:
(a)アルファルファ遺伝子型または株のライブラリーをスクリーニングして多年生である遺伝子型または株を決定する工程;
(b)胚形成の潜在能力ついて、(a)において同定された、選択された株または遺伝子型をスクリーニングする工程;
(c)形質転換可能性について、(b)において同定された、選択された株または遺伝子型をスクリーニングする工程;
(d)トランスジェニックタンパク質の安定性について、(c)において同定された、選択された株または遺伝子型をスクリーニングする工程、
を包含する。
【0017】
本発明はまた、生物製剤に関する規制当局の許可要件を満たすのに有用であるトランスジェニックタンパク質を産生するための適合アルファルファ遺伝子型または適合アルファルファ遺伝子型に由来する栄養繁殖体に関する。適合アルファルファ遺伝子型は、多年生であり、胚形成の潜在能力を提示するとして特徴付けられ、形質転換可能であり、そしてトランスジェニックタンパク質を分解しないため、そのタンパク質は、インビボで、乾燥した気中組織中で、ならびに抽出手順の間安定である。さらに、本発明は、茎または胚芽由来の栄養繁殖体のようなクローン由来の栄養繁殖体を含有する、適合アルファルファ遺伝子型の栄養繁殖体を包含する。
【0018】
本発明のこれらの特徴および他の特徴は、添付の図面に対して言及がなされる以下の説明からより明らかになる
(好ましい実施態様の説明)
本発明は、トランスジェニックアルファルファ植物中でのタンパク質の産生に関する。
【0019】
本発明に従って、「目的の遺伝子」により、タンパク質をコードし得る遺伝子を意味する。しかし、この定義はまた、例えば血清学的アッセイにおいて、生物製剤としての使用のために、組み合わされた転写産物および翻訳された産物が多重体タンパク質の産生を導く目的の遺伝子にも適用する。目的の遺伝子は、確立されたプロトコル(例えば、Desgagnesら、1995)を使用してアルファルファを形質転換するために使用され得る。アルファルファゲノムの複雑性に関わらず、Agrobacteriumが媒介する遺伝子移入を介して得られる形質は安定であり、そして単純なメンデルのパターン(Desgagnesら、1995)に従って性的に伝達される。この特徴は、多重体タンパク質を含むタンパク質の産生のために不可欠である。いかなる意味でも、本発明を使用して産生され得るタンパク質の型を限定することを希望しないが、多重体タンパク質の例は、C5−1のようなmAbであり得る。このタンパク質の産生および特性は、以下に例示される。
【0020】
「プロモーター」により、当業者により代表的に理解されるように、そのプロモーター領域の制御下の遺伝子発現の開始および調節の際に活性なDNA配列の領域を意味する。このDNAの配列は、通常、構造遺伝子のコード配列の上流(5’側)にあり、RNAポリメラーゼおよび/または正確な部位で転写を開始するのに必要な他の因子の認識を提供することにより、コード領域の発現を制御する。
【0021】
一般に、2つの型のプロモーター、すなわち誘導性および構成的、が存在する。「誘導性プロモーター」は、インデューサーに応答して1つ以上のDNA配列または遺伝子の転写を、直接または間接的に活性化し得るプロモーターである。インデューサーの非存在下では、このDNA配列または遺伝子は、転写されない。代表的に、転写を活性化するために誘導性プロモーターに特異的に結合するタンパク質因子は、不活性形態で存在し、次いでインデューサーにより直接または間接的に活性形態に変換される。インデューサーは、タンパク質、代謝産物、成長調節因子、除草剤またはフェノール化合物のような化学薬剤、または熱、寒冷、塩、または毒性エレメントにより直接賦課される生理学的ストレス、または病原体もしくはウイルスのような症状の因子の作用を介して間接的に賦課される生理学的ストレスであり得る。誘導性プロモーターを含む植物細胞は、例えば、噴霧、散水、加熱または類似の方法によって、インデューサーを細胞または植物に外部から適用することにより、インデューサーに曝露され得る。さらに、誘導性プロモーターは、植物の選択された組織中で目的の遺伝子を調節するために、組織特異的な様式で機能する、組織特異的プロモーターを含む。このような組織特異的プロモーターの例は、当該分野で周知であるような種子特異的プロモーター、花特異的プロモーターまたは根特異的プロモーターを含む。
【0022】
「構成的プロモーター」により、植物の種々の部分を通して、そして植物発達を通して連続して、遺伝子の発現を指向するプロモーターを意味する。公知の構成的プロモーターの例は、CaMV35S転写産物およびAgrobacterium Tiプラスミドのノパリン(nopaline)シンターゼ遺伝子に関連する構成的プロモーターを含む。
【0023】
本発明の遺伝子構築物は、3’非翻訳領域を含む。3’非翻訳領域は、ポリアデニル化シグナルおよびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現に影響を与え得る他の任意の調節シグナルを含む、DNAセグメントを含む遺伝子の部分をいう。ポリアデニル化シグナルは、通常、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラック(track)の付加に影響することにより特徴付けられる。ポリアデニル化シグナルは、変動は共通ではないけれども、一般に、カノニカル形5’ AATAAA−3’への相同性の存在により認識される。適切な3’領域の限定を意味しない例は、Agrobacterium腫瘍誘導(Ti)プラスミド遺伝子(例えばノパリンシンターゼ(Nos遺伝子))およびダイズ貯蔵タンパク質遺伝子のような植物遺伝子およびリブロース−1,5−ニリン酸カルボキシラーゼ(ssRUBISCO)遺伝子の小サブユニットのポリアデニル化シグナルを含む3’転写非翻訳領域である。
【0024】
本発明の遺伝子構築物はまた、必要とされ得る場合には、エンハンサー(翻訳エンハンサーまたは転写エンハンサーのいずれか)のような他の随意の調節モチーフを含み得る。これらのエンハンサー領域は、当業者に周知であり、そして例えば、35S調節領域および他の調節領域から得られる他のエンハンサーのエンハンサー領域、ならびに/またはATG開始コドンおよび隣接する配列を含み得る。開始コドンは、配列全体の翻訳を確実にするために、コード配列の読み取り枠と同相であるはずである。翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、種々の起源(天然および合成の両方)由来であり得る。翻訳開始領域は、転写開始領域の供給源から、または構造遺伝子から提供され得る。この配列はまた、遺伝子を発現するために選択されたプロモーター由来であり得、そしてmRNAの翻訳を増加するために特異的に修飾され得る。
【0025】
形質転換された植物細胞の同定を補助するために、本発明の構築物は、さらに操作して植物選択マーカーを含み得る。有用な選択マーカーは、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシンなどのような、抗生物質に対する抵抗性を提供する酵素を含むが、これらに限定されない。同様に、GUS(β−グルクロニダーゼ)のような色彩変化、またはルシフェラーゼのような発光によって同定可能な化合物の産生を提供する酵素は、有用である。
【0026】
また、本発明の考えられる部分は、本発明のキメラ遺伝子構築物を含むトランスジェニック植物である。本発明はまた、目的の遺伝子を発現するトランスジェニック植物から得られた部分、例えば、葉、幹、種子、花、または根、に関する。植物のこれらの選択された部分は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターのいずれかを含むベクターで形質転換した植物から得られ得る。植物細胞から植物全体を再生する方法は、当該分野で公知であり、そして形質転換した植物および再生した植物を得る方法は、本発明にとって重要ではない。一般に、形質転換した植物細胞を、抗生物質のような選択薬剤を含み得る、適切な培地で培養し、選択マーカーを使用して形質転換した植物細胞の同定を容易にする。一旦カルスを形成すると、胚形成または苗条形成は、公知の方法に従う適切な植物ホルモンの使用により促進され得、そして苗条は、植物の再生のための発根培地に移される。次いでその植物は、種子から、または植物増殖技術を使用してのいずれかにより、反復性の再生を確立するために使用され得る。
【0027】
本発明の構築物は、Tiプラスミド、Riプラスミド、植物ウイルスベクター、直接のDNA形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどを使用して、植物細胞に導入され得る。このような技術の概説については、例えば、WeissbachおよびWeissbach(1988)およびGeiersonおよびCorey(1988)を参照のこと。本発明はさらに、キメラ遺伝子構築物および上記の遺伝子構築物の発現に関わる、関連する5’および3’調節領域を含む適切なベクターを含む。
【0028】
「適切な(適合)アルファルファ系統(株)」または「適切な(適合)アルファルファ遺伝子型」により、多年生であり、胚芽形成潜在能を示し(例えば、20のリーフディスクまたは他の外殖片組織あたり少なくとも1つの胚芽形成カルス)、形質転換可能であり、そしてその中のトランスジェニックタンパク質が、本文書を通して議論されるような安定性の判定基準に従う安定であるアルファルファの遺伝子型または系統が意味される(また、実施例3を参照のこと)。全てのアルファルファ遺伝子型または系統が多年生ではなく、そして多くのアルファルファの多年生遺伝子型または系統が、胚芽不形成および形質転換不能であること、またはこれらの特性は形質転換に際し変化し得ることが周知である(Desgagnes、1995)。たとえ、アルファルファ植物が、先に記載された利点により宿主植物として望ましいものであると思われる場合でも、アルファルファ植物は高プロテアーゼ活性を示すことが公知である。実際、特徴付けられた飼料種に関して、マメ科植物飼料はサイロに貯蔵する間、イネ科牧草種よりも高い程度のタンパク質分解を示し、そしてアルファルファはマメ科飼料の中でも、最も高い程度および率のタンパク質分解を示す(Jonesら、1995)。さらに、他の植物種(例えば、タバコ)におけるトランスジェニックタンパク質は、内因性タンパク質分解活性によって容易に分解されることが証明されている(例えば、Hiattら、1989)。これら2つの因子を組み合わせて考慮すると、トランスジェニックタンパク質の安定性を保証する特性を示すという適切なアルファルファ遺伝子型が単離され得るということは全く期待されない。従って、適切なアルファルファ遺伝子型における任意のタンパク質分解活性が、植物内で産生される目的のトランスジェニックタンパク質に向けられているか否かを決定することが重要である。許容し得るタンパク質分解活性を確実にするために、特定の最少水準が得られるべきである。これらの最少水準は目的のトランスジェニックタンパク質の適用による要求にしたがって変化する。例えば、大量のトランスジェニックタンパク質が要求される場合、このタンパク質は水性抽出物中で、好ましくはプロテアーゼインヒビターまたは抽出溶液に代表的に添加される他の試薬のような任意の添加成分が存在しない中で安定であるべきである。また、トランスジェニックタンパク質は、植物の大規模収穫を可能にする乾燥中および乾燥採集組織において安定であることも要求され得る。
【0029】
適切なアルファルファ遺伝子型または系統は、それらが多年生であるアルファルファ植物を決定するためにアルファルファ植物のライブラリーをスクリーニングすること、次いでこれら選択された遺伝子型または系統を胚芽形成潜在能に関してスクリーニングすること、続いてこの選択された遺伝子型または系統を形質転換可能性に関してスクリーニングすることにより得られる。これらの植物は次いで、目的のタンパク質を使用して形質転換され、そして粗抽出物中および乾燥した気中の組織(aerial tissue)内でタンパク質の安定性が決定される。これに次いで、必要に応じて、生物製剤(Biologic)としての使用のためのトランスジェニックタンパク質の有用性を確かめる工程が続く。本発明を例証する目的に、胚芽形成アルファルファ遺伝子型、11.9が特徴付けられたが、他の遺伝子型もまた使用され得る。この遺伝子型は、多年生で、胚芽形成し、形質転換し得、そして以下に示されるようにトランスジェニックタンパク質に対してごくわずかなタンパク質分解活性を示すものであることが確証された。しかし、この遺伝子型は、上記の判断基準を使用して選抜され得る可能なアルファルファ遺伝子型または系統の例として考えられるべきであり、そしてこの遺伝子型は、このスクリーニング方法の適用に関し、またはこのスクリーニングプロトコールの結果として得られる植物に関して限定することを意味しないということが理解されるべきである。
【0030】
試薬において使用され得る目的のタンパク質の調製のための費用効果の良い方法を探究するため、適切なアルファルファ遺伝子型または系統におけるトランスジェニックタンパク質の産生が考えられた。mAb C5−1は赤血球血清学において有用であると立証されたため、C5−1の重鎖および軽鎖をハイブリドーマ細胞cDNAのライブラリーからクローン化し、そしてアルファルファ植物への形質転換に先立って35Sプロモーターの制御下に配置した(実施例1を参照のこと)。しかし、このmAb、およびこの35Sプロモーターの使用は、各々キメラ遺伝子構築および適切なアルファルファ遺伝子型または系統において使用および産生され得るタンパク質の例として提供されることが理解されるべきであり、そしてこの例は任意の様式においても限定されることを意図しない。
【0031】
C5−1の適切なトランスジェニックアルファルファ植物における発現は、遺伝子がトランスジェニック組織において発現されていたかということを確認したノーザン(図1)およびウェスタン(図5)分析を介して決定された。トランスジェニックによって発現されたmAbは、抽出された組織のウェスタンブロットによって決定されたように、室温でまたは数日間にわたる圃場条件下で乾燥された気中の組織において安定であった(実施例3、図5)。このmAbはまた、アルファルファ葉の存在下で同時抽出(co−extract)された場合に安定であったが、タバコ葉とC5−1の同時抽出では有意に低かった(実施例3、図4)。類似の結果はまた、他の抗体がアルファルファと同時抽出され、一定期間にわたりインキュベートされた場合に観察された(実施例3、表1および2を参照のこと)。さらに植物由来のC5−1は、マウスに静脈的に注射した場合に、ハイブリドーマ由来のC5−1と同じような安定性を示し(図6)、ハイブリドーマ由来のタンパク質に対する保護と同程度の保護が、植物由来のグルコシル化によって得られることを示した。目的のタンパク質の大規模生産および採集がアルファルファを使用して考慮されるべき場合、これらの特性は重要である。なぜなら、そのような手順は、代表的には採集組織を長期間の風乾および単純な水性抽出プロトコールに曝すからである。
【0032】
アルファルファのいくつかの変種の栄養組織は、低レベルのタンニンを示すことが公知である(MorrisおよびRobbins、1997)。理論に束縛されることは望まないが、これらアルファルファの組織抽出物中の増強されたタンパク質の安定性は、フェノール類およびタンニンの低減されたレベルの結果であり得る。これらの特性は、アルファルファの飼料作物としての使用を限定することが見出され、そして飼料としてのその有効性を増加させるためにこの植物中のフェノール類のレベルを増加させることが第一に進行されているが(MorrisおよびRobbins、1997)、これらの特性は本発明に対して開示された目的のために有益であり得る。
【0033】
粗製の清澄化抽出物のアフィニティ−クロマトグラフィーを用いる植物C5−1の精製は、クマシーブルーでの染色により、その最終調製物は夾雑物を含まないことが明らかにされた(実施例2を参照のこと)。これは以前に報告された方法論(例えば、Duringら、1990)からは重要な改善である。また、精製プロセスの間C5−1の明らかな損失は見られず、従って植物C5−1内からの精製C5−1への収率は、70%より多いと予測された。
【0034】
精製された植物由来C5−1の免疫反応性は、ELISAおよび標準化された血球凝集反応アッセイにおいて試験された場合に、ハイブリドーマ細胞由来のその相対物に対して類似していた。いくつかのアセンブリ型が粗抽出物中に存在するが、開示された精製手順は、血清学的試験における反応性応答に関してハイブリドーマ由来のC5−1と区別がつかないH2L2形態を生じる。これは、植物C5−1がハイブリドーマ由来のC5−1と同じく効果的な診断薬タンパク質として使用され得ることを示す。
【0035】
mAbに基づくタンパク質のライセシングに関して、監督官庁は、生物学的に活性な分子の質および収率が経時的に変化しないことを保証するため、mAb産生に使用される生存材料は安定でなければならないことを要求する(www.fda.gov/cber/cberftp/html;Miele、1997)。植物栄養繁殖体間のC5−1の安定性は、F1子孫由来の2つの遺伝子型から得られる再生体内のC5−1濃度を決定することにより、およびこれらのレベルを親材料内のレベルと比較することにより試験された(実施例3を参照のこと)。これらの結果は、植物組織内のC5−1濃度が、栄養繁殖体間で一定に維持されること、およびこのようなトランスジェニックアルファルファ系統はC5−1
mAbの安定な供給源であるように思われることを示す。11.9のような高胚芽形成潜在能を有する遺伝子型は、インビトロで高率でクローン栄養繁殖体を産生するように誘導され得る。この栄養繁殖体は休眠状態へと導かれて、15〜20%水分含量にまで乾燥され、人工内胚乳で被覆されて、そして−80℃で保存され得る(McKersieおよびBowley、1993)。このクローン材料は、数年間発芽能力を有意に損失することなく維持され得、従って細胞銀行(ここから、最初の生存材料と同一の材料が新たな産生サイクルを開始するために回収され得る)を構築し得る。当業者に公知であるように、他のクローン栄養繁殖体の供給源が、適切なアルファルファ遺伝子型の継続される繁殖のために使用され得ることもまた予期される。他の供給源は、胚芽、茎、または繁殖され得る他の栄養構造を含み得るが、これらに限定されない。
【0036】
さらに、アルファルファは多年生植物であり、そして栄養繁殖し得るため、多くの生長期におよぶ実質的に長い間にわたり、圃場から直接的に得られおよび採集され得る。これは、1つの植物が10年以上の間にわたり繰り返し採集され得ることを意味する。この再生能力および同一ストック材料の継続入手能力は、トランスジェニックアルファルファにおける目的のタンパク質の一貫した供給源を保証する。そのような能力および特性は、トランスジェニックタンパク質産生のために代表的に使用される他の植物(例えば、タバコ、Arabidopsis、ダイズ、トウモロコシ、またはアルファルファの多くの遺伝子型もしくは系統)においては見出されない。
【0037】
植物体戦略(plantibody strategy)の商業的適用としての、トランスジェニックアルファルファにおけるC5−1 mAbの大規模な産生は、それが他の植物を含む多くの異種系と比較して経済的な選択肢を代表するため、非常に将来有望である。さらに、適切なアルファルファ遺伝子型の使用は、生物製剤の認可試験および臨床試験のために要求されるような細胞銀行集団を特徴付けおよび維持するための費用を最小限にする能力を提供する。また、トランスジェニックアルファルファからのC5−1 mAbの精製は、ハイブリドーマ上清からのその精製に類似する。
【0038】
圃場規模で、成熟アルファルファ株立本数は、1ヘクタールあたり1〜3×106植物個体を含む;これは、予測されるクローン栄養繁殖体の産生費用を約$8,000に確定する。繁殖されたトランスジェニックアルファルファ中の抗体含有量に関する本発明者らの予測(全可溶性タンパク質の0.13〜1.0%)に従うと、1年あたりの1ヘクタールの収率は500〜1000gである。アルファルファは多年生作物であり、この植物の圃場実施性は3〜4年間維持され得る。これは、開放圃場開拓において原材料の産生費用を、mAb 1kgあたり$3,000に導く。従来のハイブリドーマ細胞培養によるC5−1 mAb 1kgの産生費用は(約50mgのC5−1 mAb/L)、およそ200万ドルであると予測される。たとえハイブリドーマ培養の抗体収率が20〜40の因数で増加したとしても、低減される費用(約750000$/kg)は植物由来のC5−1よりもなお有意に高い。
【0039】
いまだ、トランスジェニック植物からのmAbの大規模精製に関する報告は無い。植物由来mAbの精製に関する以前の報告は、均質性への精製には、アフィニティ−クロマトグラフィー前後に精巧な操作を必要とすることを示した(Duringら、1990)。本発明の精製手順の拡大は、膨張床(expanded bed)吸着クロマトグラフィの使用により促進された。この技術は、低減された時間枠において、大量の粗く清澄された抽出物から精製ペプチドを産生し、従ってコロイド抽出物からの精製費用低減のための新しいアプローチを開いたよう思われる。
【0040】
さらに、クームズ試薬が、ハイブリドーマ細胞培養由来の未精製上清で調製され、従って部分的に精製された植物調製物は、延長安定性が4℃で観察されるのであれば、この診断薬として適切であり得る。
【0041】
(実施例)
以下の方法は、目的のトランスジェニックタンパク質を産生する際の使用のために適切なアルファルファ遺伝子型または系統を選抜するために導かれた。本方法の異なる工程は、続く実施例においてより詳細に記載される。本方法は、以下の工程を含む:
(a)多年生である遺伝子型または系統を決定するために、アルファルファ遺伝子型のライブラリーをスクリーニングする工程;
(b)胚芽形成潜在能に関して、(a)において同定された選抜遺伝子型または系統をスクリーニングする工程;
(c)形質転換可能性に関して、(b)において同定された選抜遺伝子型または系統をスクリーニングする工程;
(d)トランスジェニックタンパク質の安定性に関して、(c)において同定された選抜遺伝子型または系統をスクリーニングする工程。
【0042】
(植物材料)
多年生アルファルファの、胚芽形成潜在能、および形質転換可能性についての選抜に基づき、本発明者らは以前に、市販の育種系統より単離された遺伝子型11.9を同定した(Desganesら、1995)。上記判断基準の結果として選択された植物の安定性をさらに保証するために、本発明の有用性を例証するためのモデル系としてこの遺伝子型を使用して実験が実施された。しかし、この遺伝子型の使用は、任意の様式で限定することを考慮すべきではない。遺伝子型11.9の使用は、選抜プロトコール、および所望の特性で選抜された植物の特性を例証する目的のためである。上記の選抜プロトコールは、他のアルファルファ遺伝子型または系統の選抜に対しても使用され得ることが理解されるべきである。
【0043】
(細菌株、バイナリ−ベクター)
E.coli株DH5αをDNAクローニングのために使用した。植物形質転換は、オクトピンを解去した(disarmed)株Agrobacterium tumefaciens(LBA4404)を使用して実施された。バイナリ−植物発現ベクターpGA643を、DNA移入のために使用した(Anら、1988)
(C5−1ハイブリドーマ細胞系統の選抜)
ハイブリドーマ細胞系統は、SP2/0マウス骨髄腫細胞とヒトIgGで過免疫されたBalb/cマウスの脾細胞との融合により調製された。C5−1ハイブリドーマ細胞系統は、以前に記載されたように(St Laurentら、1993)弱く感作した赤血球細胞に対する上清の反応性に基づきスクリーニングされた。
【0044】
(cDNA単離、サブクローニングおよびDNA構築物)
重鎖(H)および軽鎖(L)のcDNAを、ハイブリドーマ細胞のcDNAのライブラリーからクローニングした。適切な制限酵素部位を付加した後、5’非翻訳リーダー配列を含むこれらの全長cDNAを、共に35Sプロモーターの転写制御下のpGA643にサブクローニングし、pGA643−ガンマおよびpGA643−カッパを生成した。これらのcDNAは、Canadian Red Cross Society、Transfusion Dept.、Sainte−Foy、Quebecより入手可能である。
【0045】
(植物形質転換、選択および交雑)
pGA643−ガンマおよびpGA643−カッパを、A.tumefaciensに導入し、そしてT−DNAを、記載(Desgagnesら、1995)のように遺伝子型11.9に転移した。カッパ鎖およびガンマ鎖のmRNAを発現するトランスジェニック植物を、除雄せずに交雑した。子孫を、ノーザンハイブリダイゼーションによりスクリーニングし、そして二重トランスジェニック体を、ウェスタンブロッティング法によりIgG含量について試験した。
【0046】
(RNAの単離およびノーザンブロット分析)
総RNAを、記載(de Vriesら、1988)のように、コントロールおよびトランスジェニックアルファルファ葉から単離した。総RNA(15μg/レーン)を、1%アガロース−ホルムアルデヒドゲル上で分離し、そしてHybond−Nナイロンメンブレンに転写した。ハイブリダイゼーションは、カッパcDNAまたは完全なガンマ鎖cDNAからの0.6kbのEcoRI/Hinc IIフラグメントからなる32P−標識プローブを用いて行なった。
【0047】
(タンパク質抽出および免疫検出)
1グラムの葉組織を、5mLの抽出緩衝液(50mM Tris−HCl、pH8.0、1% SDS、1% βメルカプトエタノール)中で海砂と共にホモジナイズした。ホモジナイズ産物を、一重のMiraclothで濾過し、そして遠心分離(20,000g、20分)により浄化した。安定性の研究のために、ホモジナイゼーションおよび浄化を、蒸留水中で行ない、そして抽出物を、ホモジナイズしている間、生葉1グラムに付き25μgNaOHを加え、中性にした。非還元条件での研究のために、抽出を、50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaClおよび2mM PMSF中で行なった。抽出物を、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、そしてニトロセルロース膜に電気的に転写した。膜のブロッキングおよび結合したペルオキシダーゼ活性の検出を、製造者により記載のようにBoehringer ManheimからのBM化学蛍光キットを用いて行なった。初めのインキュベーションを、4℃でウサギ抗マウス抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories、West Grove、PA)を用いて行なった。組換えIgGのジスルフィド結合の破壊を、サンプルを10mM アスコルビン酸ナトリウムを含んだ、または含まない0.4% βメルカプトエタノールに添加し、そして100℃で5分加熱して行なった。
【0048】
(植物mAbの精製および特徴づけ)
20gの葉組織を、100mLの抽出緩衝液A(50mM Tris−塩基 pH7.4、150mM NaCl、6mM PMSF)中でホモジナイズした。ホモジナイズ産物を、上述のように濾過および浄化した。上清を、Whatman紙を用いて濾過し、CNBr−Sepharose(Sigma)にヒトIgGを結合させて調製したアフィニティーカラムに適用した。カラムを、PBSで洗浄し、そして抗体を、グリシン緩衝液(100mM、pH2.3)を用いて溶出した。抗体含有画分を、収集し、0.1M Tris−HCl(pH7.0)で中和し、そしてPBSで透析した。植物精製C5−1および抽出液中に存在するタンパク質の量を、記載(Bradford、1976)のように測定した。
【0049】
(血球凝集アッセイ)
感作赤血球細胞に対する植物C5−1 mAbの反応性を、スピンチューブ技術(Issit、1985)を用いて研究した。Rh(o)−陽性ヒト赤血球細胞を、ヒト抗−Rh(D)試薬とインキュベートして感作させ、そしてPBSで洗浄した。40μLの感作された赤血球細胞の2%(v/v PBS)懸濁液を、ガラス試験管中で既知濃度のC5−1 mAb 40μLに加えた。試験管を混合し、そして5分間室温でインキュベートした後で20秒間500gで遠心分離した。凝集の程度を、視覚的に測定した。力価は、陽性の凝集反応を与える最終の希釈の逆数である。
【0050】
(ELISA)
マイクロプレート(Costar)のウェルを、炭酸緩衝液(100mM、pH9.6)中に5μg/mLに希釈したヤギ抗マウスまたはヒトIgGで一晩コーティングした。ブロッキングを、0.25%カゼインを含むPBS(PBS−カゼイン)を用いて行なった。植物抽出液を、アフィニティー精製について以前記載されたように調製し、そしてコーティングされたプレートに対するPBS−カゼイン(1/10および1/100)中の希釈に続いて、ウェルに直接適用した。インキュベーション後、プレートを洗浄し、そしてC5−1の結合をヤギ抗マウスIgGペルオキシダーゼ結合体(Jackson Imm.Res.Lab)を用いて明らかにした。酵素結合体を、オルトフェニレンジアミン(Gibco BRL)基質により明らかにした。490nmでの光学密度を、マイクロプレートリーダー(Dynatech MR 5000、Alexandria、Va.、USA)で測定した。
【0051】
(実施例1)
mAbのような多量体のタンパク質を含むタンパク質の発現におけるアルファルファの有用性を例示するために、高アフィニティmAbを高アフィニティマウス抗ヒトIgG mAb(St Laurentら1993)のライブラリーから選択した(C5−1)。C5−1 mAbは、血液群抗体で弱く感作された赤血球細胞を用いて試験した場合、市販のウサギポリクローナル試薬と類似した反応を与えた。
【0052】
(アルファルファにおける導入遺伝子の組み込みおよび発現)
C5−1の軽鎖および重鎖をコードするcDNAを、Desgagnesら(1995)のプロトコールに従いアルファルファ植物に移入した。それぞれ15および25の植物体がカッパ鎖およびガンマ鎖について得られた。カッパ鎖およびガンマ鎖のmRNAレベルを、ノーザンハイブリダイゼーションによりモニターした。プローブは、カッパ鎖について約1.25kbpのmRNA(図1A)およびガンマ鎖について約1.75kbpのmRNA(図1B)に特異的にハイブリダイズした。マウスcDNAと比較して、アルファルファ由来mRNAは約250bp長く、どちらの場合においても遺伝子7のポリアデニル化シグナルが用いられたことを示す。分析した29のF1植物のうち7つの植物体が、HおよびL鎖の両方のcDNAを同時に発現していることが見出された。図1Cは、無作為に選択されたF1子孫植物におけるカッパおよびガンマcDNAの発現で得られた変異を示す。
【0053】
(F1子孫におけるC5−1 mAbのH鎖およびL鎖の発現およびアッセンブリ)
無作為に選出した、H鎖およびL鎖のcDNAの同時発現を呈するF1子孫植物を、免疫検出によって対応するサブユニットの存在について分析した。この最初のスクリーニングは、これらの全てが両方のmAbペプチド鎖を含有することを示した(データ示さず)。これらの二重トランスジェニック体のうちの1つの対応する親植物と比較したさらなる分析により、L鎖のcDNAを発現するモノトランスジェニック体は、有意な量の対応するペプチドを蓄積しないこと、H鎖のcDNAを発現するモノトランスジェニック体は、H鎖の二量体をもっぱら含むこと、そしてF1子孫からの二重トランスジェニック体は、ペプチドH2L2、H2L、H2、HLおよびH複合体に対応する分子量を伴う5つのアッセンブリ型を含むことが示された(図2)。完全にアセンブルされた植物IgG(H2L2)の分子量は、ハイブリドーマ由来C5−1 mAbの分子量と類似した。ジスルフィド結合を破壊するために、サンプルを0.4%βメルカプトエタノールに加えた。これらの条件では、100℃に加熱することにより、全ての免疫反応性物質が沈殿した。しかし、アスコルビン酸を加えた場合、2つの構成性サブユニットが溶液中に残り、そしてSDSアクリルアミドゲル上で分離された。完全変性条件での分離は、植物由来C5−1の構成性サブユニットが、ハイブリドーマ由来C5−1の構成性サブユニットとサイズにおいて同一であることを示した(データは示さず)。
【0054】
(実施例2)
(アフィニティー精製)
アルファルファ由来C5−1 mAbのペプチド含量および安定性。アフィニティー精製を用いて、トランスジェニックアルファルファ植物の葉抽出物からのC5−1 mAbを回収した(図3A)。個々のF1二重トランスジェニック植物からの葉抽出物を用いた量的な測定は、C5−1抗体のレベルが、全可溶性タンパク質の0.13〜1.0%の範囲であることを示した。還元条件下での精製タンパク質のSDS−PAGE分析(図3B)により、2つの鎖がクマシーブルー染色により検出され、そしてそれらが、ハイブリドーマ細胞からのそれらの対応物と同じ移動度を有することが示された。これらの結果は、植物由来C5−1が、ハイブリドーマ細胞により産生されたC5−1と同程度、グリコシル化によって保護されたことを示唆する。
【0055】
(実施例3)
(アルファルファで生産され、そして抽出されたトランスジェニックタンパク質の安定性)
組換えIgGのタンパク質分解が、Nicotiana tabacumおよびArabidopsis thalianaにおいて生じることが示された(Hiattら、1989;Maら1994)。非短縮型IgGが、不活性な細胞外マトリックスへの標的化を促進するシグナルペプチドと共に、植物において合成されるが(De Wildeら1996)、IgGが抽出の際に内因性プロテアーゼにより分解され得ることが観察されている(Hiattら(1989)、Duringら(1990)、Maら(1995)、MaおよびHein(1995)、Schouten(1996))。本発明は、アルファルファにおけるmAb C5−1のような単一または多量体のタンパク質の調製に関するので、そのような産物の安定性を調べた。
【0056】
(1)タバコ抽出物と比較したアルファルファ抽出物中のタンパク質の安定性)
アルファルファ組織の粗抽出液中でタンパク質が安定であるかどうかを確立するために、植物由来またはハイブリドーマ由来のC5−1をアルファルファ(11.9遺伝子型)葉の存在下で水中で共抽出し、そして放置して25℃で5日までの間インキュベ−トした。このインキュベーション期間中はアリコートを、ウェスタン分析によりC5−1のレベルが決定され得るように取り出した。供給源に関わらず、mAbは、水中で調製されたアルファルファ抽出物中で安定であった。本実施例の最初の3時間のデータを示すが、しかし同程度の安定性が、5日間のインキュベーション期間後にも観察された。さらに、mAbは、図4の種々の緩衝液中で調製した場合においても安定であった(データ示さず)。図4にはまた、タバコの組織の存在下での同じ実験、C5−1の共抽出の結果も示す。タバコ抽出物の存在下でインキュベートしたC5−1のレベルは、経時的に減少していき、そしてインキュベ−トし始めてから3時間後には検出されなくなることが見られ得る。従って、例示したmAb、アルファルファからのトランスジェニックタンパク質の抽出物のためのC5のような目的のトランスジェニックタンパク質の安定化のために、抽出培地に代表的に加えられるような、緩衝化塩(slats)、抗酸化剤、還元剤、安定化剤、プロテアーゼインヒビターなどを加える必要がない。
【0057】
アルファルファの抽出物中のタンパク質の安定性を、上記に概説した(表1参照)ように、緩衝液の非存在化でアルファルファと共抽出したモノクローナル(25F5、ヒトmAb)およびポリクローナル(hISG、ヒト免疫グロブリン)抗体を用いて、さらに調査した。その結果は、室温で保存したアルファルファ抽出液内では、4日間のインキュベーション後、有意な量の免疫学的に検出可能なタンパク質が存在することを示す。
【0058】
【表1】
Figure 2001521756
2)トランスジェニックアルファルファ植物からの抽出中の組換えタンパク質の安定性
粗抽出物中のトランスジェニックC5−1の安定性はまた、純水中のデュアルトランスジェニックの葉のホモジナイゼーションにより実証された。このような葉抽出物は、100gの新鮮葉を含む抽出物中において1モルのNaOH当たり約0.4pH単位(pH6.5とpH8.5の間)を確立する、小さいが重要な緩衝能を有した。結果は、これらの抽出物は少なくとも2時間、pHの顕著な変化なく室温で維持され得ることを示す。水単独は、プロテアーゼインヒビターを含む緩衝液(緩衝液A)と同程度に良好なトランスジェニックC5−1の抽出剤であり、そしてC5−1は、この最小抽出系内で少なくとも2時間室温で100%安定なままであった(表2)。
【0059】
【表2】
Figure 2001521756
3)採収した植物組織内のタンパク質の安定性
アルファルファの地上部(aerial portion)の乾燥がC5−1のレベルおよび/またはトランスジェニックの気中組織(aerial tissue)からC5−1を抽出する能力に影響を与えるかどうかを決定するために、デュアルトランスジェニックを、採収し、25℃、相対湿度20%で最長30日間まで放置し、乾燥させた。この乾燥期間の終了時には、葉物質の水分含量は20%を下回り、これは圃場条件下で観察されるレベルであった。等量の葉物質をこの乾燥期間中に採収、抽出し、そしてC5−1のレベルをウエスタン分析を使用してアッセイした。図5(これは初めの5日間にわたるデータを示す)で見られ得るように、乾燥中または乾燥したアルファルファ葉から抽出可能なトランスジェニックタンパク質の量には、減少が観察されなかった。圃場条件下で植物を採収しそして維持した場合、30日間の乾燥の後、同様の結果が観察される。
【0060】
4)マウスへの投与後のC5−1の安定性
等量のアルファルファ由来C5−1、またはハイブリドーマ由来C5−1を、マウスへ静脈内投与した。そしてこのタンパク質の出現を、28日間にわたって得られた血漿サンプル内で決定した。本実験の結果を、図6に提示する。投与されたC5−1タンパク質のマウス内での半減期は、ハイブリドーマ由来タンパク質、植物由来タンパク質のいずれであれ同じであった。これは、植物由来C5−1が、ハイブリドーマ由来タンパク質(がグリコシル化により保護される程度)と同程度までグリコシル化によって保護されることを示唆する。5日間にわたる注入タンパク質の50%損失に続き、残存するタンパク質は、次の20日間にわたりさらに25%減少した。評価期間の終了時には、最初に供給したタンパク質の25%が、マウス内で検出可能であった。
【0061】
5)アルファルファの珠芽内でのタンパク質の安定性
トランスジェニックアルファルファ珠芽内でのトランスジェニックタンパク質の発現の安定性を確立するために、このF1子孫由来の2つの遺伝子型の15植物を、葉組織内のC5−1の濃度について調べた。珠芽を、節間茎部分における根形成の誘導により調製した。2つの遺伝子型由来の15の再生植物を、それらのC5−1含量について分析し、そして親物質内でのC5−1のレベルと比較した。表3に示されるデータは、このような実験の結果を示し、C5−1レベルが親物質および繁殖物質内に観察されるレベル間で一定のままであることを示す。
【0062】
【表3】
Figure 2001521756
(実施例4)
(抗原結合活性および血球凝集活性)
植物由来C5−1 mAbをさらに、ELISA試験を使用してその抗原結合能力について試験した。C5−1を生成する植物からの葉抽出物の系列希釈物を、この試験に使用した。表4Aは、1/10希釈サンプルから得られる吸光度の値を示す。この結果は、植物由来C5−1 mAbが、抗マウスIgG抗体により認識されることを示した。このことは、植物が産生した抗体の全体コンホメーションがIgGの全体コンホメーションであることを示唆する。さらに、植物C5−1は、ヒトIgGを特異的に認識した。このことは、抗原結合部位を形成するために、H鎖およびL鎖が適切に折り畳むことを示す。予備試験は、C5−1植物抽出物がヒトIgGで感作された赤血球を特異的に凝集し得ることを示した。より完全な特徴付けを、ハイブリドーマ由来C5−1 mAbと平行してアフィニティー精製物質において実行した。結果(表4B)は、植物由来C5−1 mAbが、抗D感作ヒトRBCを特異的に凝集し、6μg/mLにおいて完全な(4+)反応を与えることを示した。これはハイブリドーマ由来C5−1 mAbを用いて観察される結果と同様である。
【0063】
コート抗体として抗マウスIgGを用いるELISAアッセイはまた、親トランスジェニックの反応性を決定するために使用された。表5Aは、Lモノトランスジェニックにおいてシグナルが検出されなかったこと、およびH鎖を含む植物でシグナルが検出されたことを示す。これらの結果は、粗抽出物における免疫反応物質の量を決定するために使用された。次いで、既知量の粗反応物質を、ヒトIgGでコートしたウェルにおける比活性について試験した(表5B)。この2番目の実験は、重鎖が単独ではヒトIgGと反応し得ないことを示した。また、植物H2L2は、ハイブリドーマ細胞由来のC5−1の比活性と類似した比活性を有することが示される。その抗原に対する植物由来抗体の真の親和性を、平衡状態での解離定数の測定により、ハイブリドーマ由来抗体の真の親和性と比較した。KDは、植物由来C5−1およびハイブリドーマ由来C5−1に対して、それぞれ4.7×10-10Mおよび4.6×10-10Mであった。
【0064】
【表4】
Figure 2001521756
【0065】
【表5】
Figure 2001521756
(実施例5)
(植物C5−1の大規模精製)
300gの植物材料を、50mMホウ酸および4M NaClを含むpH9.0の1.2Lの抽出緩衝液中でホモジネートした。このホモジネートを、チーズクロスでのろ過により明澄化した。このホモジネートを次いで、Streamline rProtein A matrix(Pharmacia)の膨張ベッド上に上方流により直接充填した。充填を、4℃で7mL/分の速度で行った。カラムを、250mLの抽出緩衝液で洗浄し、そして50mMクエン酸ナトリウム、50mMリン酸ナトリウムおよび300mM NaCl(pH3.0)で溶出した。画分(1.5mL)を、回収し、そしてすぐに100μLの1.5M
トリス(pH8.8)で中和した。
【0066】
膨張ベッド吸着(STREAMLINETMrProtein A)は、高い流速で、コロイド状物質を含む部分的に明澄化された植物抽出物の充填を可能にするために、選択された。この技術を使用して、植物C5−1を、SDS−PAGEゲル上でCoomassie染色により示される単一ペプチドとして非明澄化粗植物抽出物から精製した(図3B)。
【0067】
全ての学術刊行物および特許書類は、本明細書中で参考として援用される。
【0068】
本発明は、好ましい実施態様に関して記載される。しかし、上記の特許請求の範囲に記載のような本発明の範囲を逸脱することなく、多くの改変および変更がなされ得ることは、当業者にとって明白である。
【0069】
(参考文献)
【表6】
Figure 2001521756
Figure 2001521756
Figure 2001521756
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、トランスジェニックアルファルファ植物におけるC5−1 mAb cDNAの発現を示す。トランスジェニック植物およびコントロール植物から単離した全RNA(15μg/レーン)を1%アガロースホルムアルデヒドゲル上で分離し、そしてハイボンド−ナイロン膜上にトランスファーした。転写物のサイズをキロベースで示す。オートラジオグラムを−70℃で24時間の曝露によって行った。図1A、pGA643−κで形質転換した植物からの抽出物をこのκ cDNA由来の放射性標識プローブ(600bp)でハイブリダイズした。レーン1、2および4〜9は、トランスジェニック植物からのRNA抽出物を含む;レーン3は、形質転換していない遺伝子型11.9からのRNAを含む。図1B、pGA643−γで形質転換した植物からの抽出物を放射性標識した全γ
cDNAでハイブリダイズした。レーン1〜5は、トランスジェニックからのRNA抽出物を含む;レーン6は形質転換していない遺伝子型11.9からのRNA抽出物を含む。図1C、F1子孫の植物からの抽出物をκプローブおよびγプローブの両方の混合物でハイブリダイズした。レーン1〜5および7はトランスジェニックからのRNA抽出物を含む;レーン6は形質転換していない遺伝子型11.9からのRNAを含む。
【図2】
図2は、単一トランスジェニックアルファルファ植物および二重トランスジェニックアルファルファ植物における、C5−1ペプチドの発現および集合を示す。タンパク質を、Tris−HCl(50mM)、PMSF(2mM)およびNaCl(150mM)の存在下でメルカプトエタノールを用いずに抽出した。これらタンパク質をSDS PAGEにより分離し、そしてニトロセルロース膜上にエレクトロトランスファーした。C5−1ペプチドを、ウサギ抗マウスIgGに続きペルオキシダーゼに結合する抗ウサギIgGを使用するブロットで検出した。ペルオキシダーゼ活性を、Boehringer Manheim BM chemiluminescence kitを使用する化学発光により検出した。レーンL:κ cDNAを発現する親植物からのタンパク質抽出物。レーンH:γ cDNAを発現する親植物からのタンパク質抽出物。レーンF1:κ cDNAおよびγ cDNAの両方を発現するF1子孫からのタンパク質抽出物。レーンHyb:ハイブリドーマ細胞から単離したC5−1 mAb。
【図3】
図3は、植物C5−1の精製を示す。図3A、拡張吸着床アフィニティクロマトグラフィ(STREAMLINETM−rProtein A matrix)から精製したC5−1の溶出プロフィール。各フラクションは1.5mLの溶出物を含み、そこから20μLをレーンごとにロードし(図3B)、そして変性しない条件でのSDS−PAGEで分離し、そしてクマシーブルーで染色した。
【図4】
図4は、アルファルファの葉またはタバコの葉の存在下で同時抽出したC5−1タンパク質のウェスタンブロットを示す。2グラムのアルファルファの葉組織またはタバコの葉組織を2μgのトランスジェニック培養またはハイブリドーマ培養で産生されたC5−1の存在下で抽出した。抽出を0℃で10mlの水を用いて行い、20,000×gで遠心分離し、そして25℃でウェスタンブロットの3時間前までインキュベートし、抽出溶液中に残存するC5−1の量を決定した。
【図5】
図5は、切断し、そして室温で5日間まで乾燥させた、C5−1を発現する二重トランスジェニックアルファルファ植物の地上部から得たタンパク質のPAGEおよびウェスタンブロットを示す。収穫した組織の等量を、相対湿度20%で0時間、7時間、1日、2日、および5日間維持し、その後抽出し、そしてタンパク質プロフィールを決定した(図5A)。そしてウェスタン解析を使用してC5−1のレベルをアッセイした(図5B)。
【図6】
図6は、静脈内注射後、1ヶ月にわたる期間のマウス中での、植物由来のC5−1(黒丸)およびハイブリドーマ由来のC5−1(白丸)の安定性を示す。免疫したヒトIgGに対するELISAを用いて検出を行った。
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