JP2001515614A - 分子コンピュータ - Google Patents

分子コンピュータ

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アドルマン,レオナルド,エム.
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ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア
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    • B82Y10/00Nanotechnology for information processing, storage or transmission, e.g. quantum computing or single electron logic
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Abstract

(57)【要約】 分子コンピュータが計算を実行する。解は、分子によって表される。処理手順を分子に対して実行することによって、その分子が適正な結果を表す確率を高める具合に、当該分子を分離する。

Description

【発明の詳細な説明】 分子コンピュータ 発明の起源 この発明は、助成第CCR−9214671号により全米科学財団の援助によ ってなされたものである。米国政府がこの発明に一定の権利を有するかもしれな い。 発明の分野 この発明は、計算媒体として化学物質を使用する計算技術に関するものである 。さらに、具体的に述べれば、この発明は、DNA分子などの分子を用い大規模 に並列計算する計算技術に関し、その計算技術は、細胞プロセスまたは実験プロ セスなどの手順を使って実行するものである。 背景および概要 計算(computing)は、何らかの入力情報に基づいて何らかの結果を計算する 科学である。コンピュータは、通常、結果を計算するために使用される入力情報 に対して処理ステップを実行する。 現在のコンピュータは、双安定電子デバイスの状態に基づいて作動する最も初 期の構造のUNIVAC−1が基礎になっている。UNIVAC−1は、真空管 を使用して製造された。ソリッドステートの物理学によってコンピュータ産業に 大変革が起こり、コンピュ ータは、大きさが小さくなり、電力の散逸が少なくなり、かつ長期間安定になっ た。これらのデバイスにより、電子計算機は安定して高信頼性で作動するように なった。しかし、コンピュータ産業の黍明以来、計算の基本概念に急進的な躍進 がないといわれている。例えば、Adam Osborne著「An Introduction to Microco mputors」1976年を参照)。 今日のコンピュータは、それら初期のコンピュータを超えて、はるかに進歩し ている。計算速度は、最も初期のコンピュータ以来、何桁も上がっている。コン ピュータのアーキテクチャは、ますます複雑になってきているし、コンピュータ は、ますます縮小してきている。双安定デバイスの大きさは、例えば、材料のエ ッチングを行うのに使用される照射線の波長などからくる物理的な限界がある。 さらに、どんな計算を実行するにも、コンピュータの各素子は、状態を変化さ せ、従って仕事をしなければならない。その仕事は、真空管ほど非能率ではない が、極めて非能率的な具合に行われている。コンピュータプロセスが状態を変化 させるごとに、熱としてかなりな量の無駄なエネルギーを散逸しなければならな い。 電子計算機の動作速度を上げるのには、二つの方法がある。すなわち、より多 くのスイッチ素子を設けるか、またはスイッチ素子をより速く駆動するがである 。いずれの場合も、単位時間当たり生成される熱の量は、計算能力が増大するに つれて増大する。これらのコンピュータで生成される熱は、累進的に処理しにく くなっていく。 多くの人たちが、電工学ベースのコンピュータは、計算能力が物理的大きさと 冷却の要求のため制限される限界に直面するであろうと、予測している。 計算のための代替技術が提案されてきている。これらの提案の多 くは、まさに空想科学小説の域を出ないものである。情報を記憶し処理するのに 結晶面を使用するという提案もある。これらのおよびその他の提案は、どれも、 計算して結果を得る非電気機械的技術を行う真に実用的な方法を提案していない ので、非常に予言的な提案である。 この発明の発明者は、DNAまたは分子の相互作用とコンピュータが作動する 仕方との間に、ある種の類似性があることに気付いた。この発明の発明者は、こ れらのDNAプロセスの多くは、選択的な仕方で実行されていることに気付いた 。すなわち、DNAは、他の組合せを除外してある特定の組み合わさり方で組み 合わさる。発明者は、この類似の作用を、実際に計算機能を実行させるために、 分子反応を操作するのに使うことができるという、全く非自明の事柄を洞察した のである。 発明者は、この技術の強さは、その並列進行性にあることに気付いた。一滴の DNAは、1014個を超える分子を含有している。それらの分子の各々は、各特 定の状態を表現する性能を持っている。したがって、その一滴は、1014を超え る状態を現わすことができる。 この発明は、これらの手順をどのように使用して多重動作を実行させることが できるかについて、説明するものである。各物質、例えば分子は、反応すること ができる。各種の分子を選択的に反応させるのに適した固有の反応手順が使用さ れる。この選択的な反応は、これらの分子を使用して、大規模に並列進行する仕 方で複雑な計算動作を行わせる。この場合、各動作は、DNA分子の全てまたは 少なくとも大部分について、並列して実行することができる。 この発明の第一の実施態様は、DNAを計算媒体として用いて、 数時間で、極めて複雑な問題を実行することができるやり方について、説明する ものである。しかしながら、さらに一般的に述べれば、この発明によれば、特定 の仕方で反応できるいかなる分子または複合体(すなわち、非共有結合で合わさ って維持されている分子の集合体)でも、使用することができる。これらの特徴 の全てについて、この明細書全体を通してさらに詳細に述べる。 この発明の他の面は、この種のコンピュータの各種の特性を改善する仕方に関 する。例えば、発明者は、このようなコンピュータの誤り率が電子計算機のそれ より多数桁高いことに気付いた。この発明は、この障害をいかにして克服するか について説明する。 上記のことから明らかなように、この発明は、分子のような物質を用いる異例 のやり方で演算動作を実行するコンピュータシステムおよびそのシステムの動作 メカニズムを定義することを目的とする。この発明の好ましい一つの計算動作モ ードは、人体において利用されるDNAプロセスに類似のDNAプロセスを使用 する。計算を大規模に並列に行わせることは、分子レベルで動作を行わせること によって可能になる。各ステップは、何百万もの並列動作を起こさせることを可 能とする。 この明細書は、分子計算のすばらしい潜在的可能性を詳細に示す。しかし、分 子コンピュータについて解決すべき問題点は、注意深く選択して定義しなければ ならない。DNAコンピュータが実行する各ステップを定義するのに、新しい種 類のプログラム言語が必要であろう。 電子計算機は、多種の計算動作を実行することができ、かつこれらの計算動作 を実行するのに大いに柔軟性がある。電子計算機では、二つの100桁の整数の 掛け算を全く能率的に行うことができる。 現在入手できるプロトコルと酵素を使って分子コンピュータで上記の計算を行う ことは、負担が大きくかつ非常に非能率的なタスクであろう。このことは、初期 の電子計算機に類似しているとも考えられる。すなわち、Univac−1上で 2+2の加算を行うことは、一致した結果を得るには正確なプロセス制御が必要 であったため、著しく困難であったと考えられる。しかし、今日では、これは自 明なタスクである。 ある種の本来的に複雑な問題点、例えば有向ハミルトン道(パス)の問題およ びここに述べる他の問題などは、大規模な並列サーチによって能率的に解決する ことができる。これらのサーチは、この明細書で述べるように、分子生物学の特 徴をうまく利用して、編成することができる。この発明の技術は、多くのNP完 全の問題を解くのに、非常に好適である。 このシステムの重要な利点は、この発明の発明者が実際にこの発明を最も完全 な形で考え出した後に初めて気付いたのである。このシステムは、極めてエネル ギー効率がよい。事実、発明者は、このシステムは、エネルギー効率の限界近く まで到達できると考えている。天然の細胞プロセスは、何十億年もかかって進化 してきたのである。この進化の一つの結果が、極めて高いエネルギー効率である 。発明者は、それ以上の効率はほとんど不可能であると考えている。というのは 、それ以上効率を上げようとすれば、動作が高い信頼性で行われるのを実際に阻 害するからである。このシステムは、いかなる電子計算機より何桁も効率が高い 。 したがって、この発明の他の目的は、極めてエネルギー効率が高いコンピュー タを紹介することである。 これらの目的の全ては、他の物質と結合できるタイプの複数の物 質、例えば分子または複合体を得ることによって達成される。上記物質が分子で あると仮定すると、各状態はこれらの各分子に割り当てられる。分子の集合が多 数の結果のユニバースを形成することを統計的にほとんど確実にするために、十 分な分子を用意する。これらの分子は、所望の結果を示す特定の分子と望ましく ない結果を示す分子とを分けるタイプの分子反応などの手順(手続)で、選択的 に処理される。 これらのプロセスは、種々の作用機能を実行して種々の結果が得られるように 、実施される。しかし、重要なことは、これらのプロセスが大規模に並列進行の システムで実行され、それぞれの可能なプロセスが並列に多数回実行されること である。 このコンピュータがDNAプロセスに基づいて運転される(動かされる)場合 、これらのDNAプロセスは、分子レベルで自然の営みに類似した動き方をする 。 図面の簡単な説明 この発明の上記のおよび他の面について、添付の図面を参照ながら詳細に述べ る。 図1は、簡単なハミルトン道の問題を示すグラフ図である。 図2は、上記問題の解を求める第一の実施態様において用いられる技術の流れ 図である。 図3は、ハミルトン道の問題の第二の実施態様を示す。 図4は、ハミルトニアンがどのようにしてDNA配列としてコードされ得るか を示す。 図5A〜5Cは、異なる状態を示すDNAがどのようにして各特 定のやり方で処理されるかを示す。 図6は、分子コンピュータの実際の実施態様を示す。 図7は、実際の分子コンピュータの動作の流れ図を示す。 好ましい実施態様の説明 この発明は、結果を得るための計算動作を実行する全く新しいやり方を定義す る。これらの動作は、多数の並列的に実行される化学反応を使って実行される。定義 以下の定義は、この明細書および請求の範囲の全体を通して適用される。 手順とは、化学剤の特性を変えるあるゆるプロセスを意味する。これには、例 えば、化学反応、化学プロセス、細胞反応、細胞プロセス、実験的手順、実験的 プロセス、実験室手順または実験室プロセスが含まれる。 物質とは、いかなる分子または分子の複合体をも意味する。これには、DNA およびその他の分子が含まれる。 付着剤(sticker)とは、第一の物質に結合されおよび/または第一の物質か ら除かれることができて、第一の物質が示す情報を修飾(改変)する第二の物質 を意味する。第一の物質は、背骨(backbone)ということもできる。 問題とは、「正しい解」を求める必要がある質問を意味する。問題には「可能 な解」が多数あり、その一部は「正しい解」であり、残りは「誤りの解」である 。第一実施態様 ハミルトン道の問題 この発明の第一の実施態様は、いわゆるハミルトン道(ハミルトンパス)の問 題を解くことに向けられたものである。ハミルトン道の問題は、次のようにモデ ル化することができる。ある固定数の頂点およびそれら頂点間の可能なパスがあ ると仮定する。その問題に対する正しい解を得るには、一つのの頂点から出発し 、他の全ての頂点を一回そして一回だけ通って、最後に終点の頂点に到達するパ ス(道)を作れるかどうか決定する必要がある。さらに数学的に述べると、指定 の点VinとVoutを有する有向グラフGが与えられているとする。このグラフG は、適合性のある一方向の辺e1、e2、e3……の系列(sequence)が存在する 場合かつその場合に限り、ハミルトン道を有する。正しい解に向かうパスは、多 数の一方向の辺を有し、そしてVinで始まりVoutで終わり、他の全ての頂点に 正確に一度入らねばならない。 ハミルトン道を有する4頂点グラフを、図1を参照して説明する。この4頂点 グラフの問題に対する正しい解は、自明である。しかし、頂点の数が増大するに つれて、正しい解を解くことは、累進的にかつ指数関数的に難しくなる。 図1は、Vin=AおよびVout=Dを有するグラフを示す。このグラフには、 辺A→B,B→C,C→Dで与えられる図示のハミルトンパスを有する。示され ている頂点の数が少ないので、ハミルトンパスがあることが、容易に分かる。読 者には、Vinを頂点Bに変更すると、どの辺も点Aに全く入らないので、ハミル トンパスが存在しないと、容易に解くことができる。 ハミルトンパスの問題は、NP完全であることが知られいる。こ れは、数学者らが、この問題を解く効率的な方法がなく、そしてその問題は本質 的に試行錯誤により解かねばならないと考えていることを意味している。頂点の 数が多くなるにつれて、この試行錯誤方は、ますます計算上大規模になっていく 。全ての公知のアルゴリズムには、指数関数的に増大する最悪な場合の計算複雑 度がある。 この発明の発明者が気付いた重要なことは、この問題およびこの種の他の問題 は、それぞれが少数の簡単な技術を使用した多数の並列に行う計算を可能とする やり方に付すことができるということである。これらの計算技術の数は、問題の サイズ(大きさ)の関数として、指数関数的ではなくて線形関数的である。 パスは、図2に示す流れ図に従って分析される。 ステップ200は、グラフ全体を通して可能な全てのパスを生成する。これは 、各頂点を、各DNA分子で表されるラベルに割り当てることによって行われる 。この実施態様は、好ましい分子としてDNAを用いて実行される。したがって 、グラフ中のi番目の点は、Oiとして示されるDNA分子と関連する。 この第一ステップによって、その有向グラフ全体を通してあらゆる可能なパス を含むユニバースUが得られる。そのプロセス以外の残りのプロセスは、誤った 解を示す全ての誤ったパスを同定するのに用いられる基準を求めること、および 、正しい解を示す正しいパスがある場合、その正しいパスだけが残るまで、それ ら誤ったパスを捨てることからなっている。 ハミルトンパスの問題に対する解は、Vinで始まりVoutで終了しなければな らない。したがって、Vinで始まってVoutで終らないパスは、全て、ステップ 202で誤ったパスとして捨てられ、修正されたユニバースU1が形成される。 ハミルトンパスの問題の他の重要な特徴は、パスが各頂点にただ一回だけ入ら なければならないということである。したがって、N個の頂点の場合、そのパス にはN個のエレメントしかあってはならない。ステップ204で、N以外の数の 頂点を有するすべてのパスが捨てられる。このステップで、さらに別の修正ユニ バースU2が形成される。したがって、U2には、Vinで始まってVoutで終り、 適切な数の頂点に入るパスが含まれている。 U2の経路がどれも各頂点に入れば、そのパスはハミルトンパスであり、した がって正しい解である。ステップ206は、このグラフの各頂点の全部には入ら ないパスを全て捨てる。その結果は、解Sである。Sがその中にDNAをもって いれば、そのグラフは、このテストを経て生き延びてきた分子によって表される ハミルトン道を有している。Sがその中にDNAを持っていない場合、そのハミ ルトンパスの問題に対する解は存在しない。 上述のように、この実施態様の一つの重要な特徴は、各々がその問題のある部 分を表す非常に多数の分子を生成することができることである。このように多数 の分子が生成されるので、すべての可能な解が分子で表されることが統計的にほ とんど確実になる。全ての可能な解のユニバースは、次いで選択的にさらに処理 されて、全ての誤った解を除く。そのプロセスを、ここでより詳細に説明する。 この発明によれば、各可能な解が、それぞれDNAの指定の配列に割当てられ る。第一に、DNA上の短いプライマーとその組合せ特徴である。 DNAは、二本鎖の分子であり、そのDNAの一方のストランドは、DNAの 第二のストランド(すなわち、「相補体」)にアニールされている。DNAのこ れらストランドは、もともと有極性であ り、5’末端にリン酸基および3’末端にヒドロキシル基を有している。DNA 構造体の各ストランドを構成する4種の塩基成分(すなわち、ヌクレオチド): A、G、TおよびCがある。各ヌクレオチドは、いわゆるワトソン−クリックの 補体を持っており、その補体がDNAの二つのストランドが互いにアニールでき るかどうかを決定する。DNAの一方のストランド中のヌクレオチドAは、DN Aの第二のストランド中のヌクレオチドTにのみアニールする。同様に、ヌクレ オチドCは、ヌクレオチドGにのみアニールする。二本鎖分子の例を、そのリン 酸基およびヒドロキシル基とともに以下に示す。 5’−P−ATAGCGT−OH−3’ 3’−OH−TATTCGCA−P−5’ 例えば、ATTCGのワトソン−クリックの補体は、TAAGCである。DN Aの化学的組成によって、DNAの第一のストランドを元の化合物の「補体」で あるDNA分子にアニールさせることができる。DNA分子は、通常、その補体 を含有する他のDNA分子にしかアニールしない。 この実施態様は、最初に、全ての可能なパスのユニバースを得る。これは、各 パスの各部分に対して一意のDNA分子を得て、これらの部分を結合して、各々 なパスを得ることによって行われる。 グラフの各頂点は、特定のDNA配列Oに割当てられる。我々は、そのDNA 配列を、前方部分Ofと後方部分Orを含ませて定義する。二つの頂点間の各転移 (辺)に対して、我々は、先に割り当てた頂点の部分の特定の組合せを割当てる 。すなわち、頂点AからBまでの辺に対して、我々は、配列Arfを割り当てる 。 図1は、四つの頂点A,B,CおよびDを示す。頂点Aは、例え ば、6量体の5’AGTCAT3’に割り当てられる。その6量体は、このDN A分子をさらにAfとArに分割し、AfはAGTでArはCATである。同様に、 B、CおよびDにDNA配列が割り当てられる。すなわち、Bに5’TTGAC G3’が割り当てられ、TTGがBfでありACGがBrである。 ここで、AからBまでの辺は、第一頂点の最後の部分(Ar)と第二頂点の最 初の部分(Bf)を含む辺と定義される。したがって、A→Bは、Arf、すな わち、5’CATTTG3’とコード化される。 このことをより完全なやり方で述べるために、グラフ中の各辺I→Jに対して 、オリゴヌクレオチドOI →Jが生成される。そのオリゴがx量体の場合、オリゴ ヌクレオチドOI →Jは、OIの3’x/2量体とこれに続くOJの5’x/2量体 である。この構造によって、全ての辺の配向が維持される。例えば、O2 →3はO3 →2 と同じではない。 OIのワトソン−クリックの補体である配列は、(OI not)として示す。 ここで、我々は、前記アルゴリズムのステップ1を続けて、グラフ全体に亘っ てあり得るランダムで許容可能なパスを全て作成しようとしているを思い起こし てみよう。それを実行するため、我々は、頂点間のあり得る許容可能な辺を示す DNA分子の混合物から出発する。 グラフの頂点間の各辺を示すこのような各DNA分子は、あらゆる許容可能な 転移を示し、したがって、各可能な解を示す。さらに、このような各DNA分子 の多数のコピーがある。この混合物の中には、それぞれ全部の辺を示すそれぞれ のDNA分子、すなわち、例えば、A→Bを示すDNA分子1、B→Cを示すD NA分子2、な どなど、が含まれている。 一旦、これらの部分がすべて結合したならば、次のステップは、適合性のあり 得る辺の全てを互いに結合させることである。したがって、また、我々は、原頂 点の各々の補体も添加する。例えば、(A not)は、AfをAlに結合させて 、Afで終わる全てのパスをAlで始まる全てのパスに結合させる。 上述の我々の実施例に戻ると、Aは、5’AGTCAT3’であり、Bは、5 ’TTGACG3’であり、Cは、5’GATTAC3’である。(B not )は、3’AACTGC5’である。したがって、(B not)の3’部分は 、A→B辺中のBfを相補する、つまりA→B辺中のBfに結合する。 我々は、該溶液に、各辺に対するDNA分子、すなわち、A→Bは5’CAT TTG3’(Alf)であり、B→Cは5’ACGCAT3’(Blf)である 、を添加する。また、我々は、すべての(頂点 not)も添加する。(B n ot)は、3’AACTGC5’に等しい。(B not)分子の3’部分の( Bf not)は、A→B辺中のBfにアニールする。(B not)分子の3’ 部分の(Bf not)は、B→C辺のBlに結合する。これらの(点 not) は、A→Bを示す分子をB→Cを示す分子に効率的に連結または接続する。それ は、これらの辺を結合させて、結局、一層大きい、つまり組み合わせた分子が形 成される。 この反応が続いて、配列の長い複数のDNA複合体が形成される。試料中に十 分な分子があれば、これらの配列は、点どうしの間に形成されるあらゆる可能な パスを示す。すなわち、その配列全体で全てのランダムな許容可能なパスがステ ップ200で形成されている。 DNAリガーゼを用いて、一つのDNA分子の5’末端と他の一 つのDNA分子の3’末端との間の共有結合を生成させる。リガーゼは、DNA 中の切断部分を修復して二つのDNAを末端どうし接続できる酵素である。した がって、リガーゼは、A→BおよびB→Cなどを示す分子を末端どうし共有結合 させて単一分子を確実に生成させる。同様に、DNAの他のストランドを形成す る「点 not」は、共有結合/化学的に末端どうしリガーゼで接続される。こ のように、リガーゼは、二つの(各DNAストランドに対して一つずつ)DNA の長い連鎖を作製し、これらの連鎖は、望ましくないパスを示す分子を除くのに 必要なその後の処理に耐えることができる。 ステップ202は、Vinで始まりかつVoutで終るものではないあらゆるパス を放棄することを要求する。 この実施態様による動きは、増幅技術を用いて、適当な部分に的をしぼる。こ の実施態様で、我々は、望ましい配列がAlで始まりDfで終ることが分かる。ポ リメラーゼ連鎖反応(「PCR」)を用い、特定の管(試験管)の中で、分子を 選択的に複製させることが好ましい。ここで、我々は、Alで始まりDfで終る分 子だけを選択的に複製したい。これらの特定の分子だけをコピーすると、残りの 分子の存在量が効果的に減少する。 これは、プライマーを添加することによって行われる。そのプライマーは、所 望の末端のうちの一方に相補的である。換言すれば、我々はAlに対応するプラ イマーと(Df not)に対応するプライマーを添加する。このプライマーの 対は、正しい末端を有する分子を例えば106倍複製する。 ステップ204では、点の数がnである場合、正しくn個の点に入るものでな いパスがすべて捨てられる。この実施態様では、長す ぎるかまたは短すぎる配列は捨てられる。この動作は、ゲル電気泳動法を用いて 実施される。電気泳動法は、分子をマトリックスを通して移動させるために電子 的な分離を利用するプロセスである。電気泳動法は、すべての分子をゲル媒体の 一方の末端に置いて、次にこれら分子を電界に暴露させる。短いDNA分子は、 電気泳動場の下ではより迅速に移動し、長いDNA分子はより遅く移動する。電 気泳動法によって、最終的に、ヌクレオチドのバンドからなる生成物が形成され 、ゲル中の最終の位置バンドは、配列中のヌクレオチドの数に比例している。 この発明による大きさの弁別は、バンドを検査し、短すぎるかまたは長すぎる 全てのバンドを切り離して捨てる。必要に応じて、このプロセスは、一つのヌク レオチドしか異なっていない分子を弁別できる高度の分解能で実施できる。ステ ップ204で形成されるU2は、正しい出発部分と終了部分を有し、かつ長さが 正しい全ての配列を有している。残っているものには、正しいハミルトンパスと 、一つ以上の点を飛ばして、そのため他の点を1回より多く通る誤ったパスが含 まれている。したがって、最後のステップ206を使って、グラフのそれぞれの 点に1回入るパスだけを残す。 この発明の好ましい態様は、これを、アフィニティー分離法を実施することに よって行う。アフィニティー分離法は、物質を付着させた1μmのピーズを用い て実施することが好ましい。これらの物質は、ある種の他の特徴づけられた分子 に付着させるように処理されている。例えば、その表面にストレプタビジンの結 合剤を有する直径1マイクロメートルのアガロースビーズが使用される。ストレ プタビジンは、DNA分子の末端に結合できるリガンドであるビオチンに対して 高い親和力を有している。この実施例では、ビオチン は(B not)に結合され、そのビオチン/(B not)の接合体がアガロ ースビーズのストレプタビジン結合剤に結合される。これら調製されたビーズは 、B、すなわち(B not)の補体、を含有するDNA分子を捕獲することが できる。 DNAの溶液をビーズ上を通過させ、そのビーズがその表面に(B not) を有していれば、Bを含有するDNA分子が該ビーズ上の(B not)に付着 する。結合させた後、Bを欠くDNA分子を含有する過剰溶液を流出させる。中 にBを含有するDNAだけが該ビーズに付着する。次に、そのB含有DNAは、 溶液中でビーズを加熱することによって、ビーズ上の(B not)から分離さ せることができる。そのB含有物質を、次に、(A not)、(C not) および(D not)を保持している類似のビーズ上を順々に通過させ、過剰分 は取り除く。この最後の試験で付着している物質は、その中にA、B、Cおよび Dを全て含有している。これが最終結果のSである。 上記の技法に類似の技法を用いて、一層大きな点試料を処理することができる 。 図3は、Vin=OおよびVout=6を有するグラフを示す。このグラフは、辺 0−1、1−2、2−3、3−4、4−5および5−6で与えられるハミルトン パスを有する。示されている頂点が少ないので、ハミルトンパスの存在が容易に 分かるであろう。もし、Vinを頂点3に変え、Voutを頂点5に変えると、点0 に入る辺が全くなくなるので、ハミルトンパスがなくなることを、読者は容易に 理解できるであろう。 図2に示す流れ図は、この問題を大規模に解くのに用いられる。ステップ20 0は、最初に、特有の配列を有するDNA分子を各頂 点に割当てることによって実行される。DNA分子の長さは、グラフがどの程度 大きいかに応じて異なる。20量体の配列のDNAは、420の可能な組合せをコ ードするのに十分である。したがって、この実施態様の好ましいモードでは、グ ラフ中の各点iが、ランダムに20量体の配列と関連づけられる。グラフ中の各 頂点iおよびグラフ中の各辺i→jに対して、それぞれ50pmolの(Oi not)と50pmolのOi →jを混合して、単一の連結反応を行う。5’末端 リン酸残基を有する各オリゴヌクレオチド(50pmol)、5単位のT4DN Aリガーゼ(ドイツ所在のBoehringer-Mannheim社)およびリガーゼ緩衝液に、 ddH2Oを加えて全容量100μlにして、室温で4時間インキュベートした 。(Oi not)のオリゴヌクレオチドは、連結のために、適合性のある辺に 関連づけられたオリゴヌクレオチド同士を結合させる副子(splint)として働く 。図4は、割当ておよび連結反応を示す。 ランダム20量体のオリゴヌクレオチドが各点に対して生成する。図4は、O2 、O3およびO4だけを示す。グラフ中の各辺は、Oiの3’10量体とOjの5 ’ 10量体由来のオリゴヌクレオチドOi →jによって代表される。図4は、辺 2−3に対する配列O2-3および辺3−4に対する配列O3-4を示す。図4は、( O3 not)を除いて、5’から3’の方向に記述された全てのオリゴヌクレ オチドを示す。この結果、グラフ全体を通してのランダムパスをコードするDN A分子が形成される。 この連結反応の規模は、検討中のグラフに対して必要な規模をはるかに超えて いる。グラフ中の各辺に対し、関連するオリゴヌクレオチドの約3×1013個の コピーを、連結反応に加える。したがって、ハミルトンパスをコードする多数の DNA分子が生成すると考 えられる。論理的には、そのような分子一つだけ生成すれば十分出ある。このグ ラフの場合、アトモル(amol)未満の量のオリゴヌクレオチドでおそらく十 分であろう。代わりに、はるかに大きいグラフが、ピコモル(pmol)の量を 使用して処理できたであろう。 ステップ202は、プライマーO0および(O6 not)を用いたPCRを利 用して増幅することによって実行される。点0で始まり点6で終わる分子だけが 増幅される。PCRによる増幅は、全て、Perkin-Elmer社(米国コネティカット 州ノーウォーク所在)の9600熱サイクラーで実施した。ステップ2での増幅 の場合、PCR緩衝液中の各プライマー50pmolずつおよびTaqDNAポ リメラーゼ(米国ニューヨーク州グランドアイランド所在のGibco-BRL社)5単 位を全容量50μlにして、94℃で15秒および30℃で60秒のサイクルで 35回処理した。段階的PCR(graduted PCR)の場合、PCR緩衝液中の各プ ライマー50pmolずつおよびTaqDNAポリメラーゼ2.5単位を全容積 50μlにして、94℃で25秒および40℃で60秒のサイクルで25回処理 した。 ステップ204は、7個の頂点を有する二本鎖DNAに対応する140個の塩 基対(bp)のバンドを用い、アガロースゲル上で実行する。正しく7個の点に 入るパスに対応するDNAを切り取り、2回蒸留した水ですすぎ、次に数回ゲル で精製して、その純度を高めた。ゲルは、全て、トリス−ホウ酸−EDTA緩衝 液中3〜5%のアガロース(来国メイン州ロックランド所在のFMC Bio-Products 社のNuSieve)であり、臭化エチジウムの染色剤入りであった。 ステップ206は、最後に、最も新しい試料U2の、ビオチン− アビジン磁気ビーズ系によるアフィニティ精製が行われる。これは、2ステップ のプロセスで行った。ステップAにおいて、前記磁気ビーズ系を使用して、ステ ップ3の二本鎖DNA産物から一本鎖DNAが作製される。(O6 not)の オリゴヌクレオチドは、LC Biotin-ON Phosphoramidite(Clontech社)で5’を ビオチニル化した。一本鎖DNAを得るため、ステップ3由来の産物を、プライ マーOoおよびビオチニル化した(O6 not)を用いて、PCRで増幅した。 その増幅された生成物のビオチン基が、常に振盪しながら、室温で45分間、0 .5×食塩水クエン酸ナトリウム(SSC)100μl中でインキュベートする ことによって、その二本鎖DNAを常磁性粒子(米国ウイスコンシン州マディソ ン所在のPromega社)上のストレプタビジン基にアニールさせた。これらの粒子 を、200μlの0.5×SSC中で3回洗浄し、次いで100μlのddH2 O中で5分間80℃で加熱し、その結合された二本鎖DNAを変性させた。その 結果、ステップ3の産物に対応する一本鎖DNAを含有する水性相が得られた。 ステップBで、磁気ビーズ系を用いて、O1を含有するDNAアフィニティ精 製を行った。アフィニティ精製を行う場合、1nmolのビオチニル化した(O1 not)を上記のように粒子に対しアニールし、400μlの0.5×SS C中で3回洗浄した。次に、一本鎖DNAを、150μ1の0.5×SSC中で 常に攪拌しながら、室温で45分間、これら粒子とともにインキュベートした。 粒子を400μlの0.5×SSC中で4回洗浄して、未結合の一本鎖DNAを 除き、次に100μlのddH2O中で5分間80℃で加熱して、(O1 not )に結合した一本鎖DNAを放出させた。一本鎖DNAを含有する水性層が得ら れた。配列O1を含有する(したがっ て、少なくとも1回頂点1に入ったパスをコードする)それらの一本鎖DNA分 子だけが、結合された(O1 not)にアニールして、保持された。このプロ セスを、順次、(O2 not)、(O3 not)、(O4 not)そして( O5 not)を用いて繰り返す。 グラフ理論の観点から、連結反応で各オリゴヌクレオチドを同量使用すると、 最適ではなく、点0から出発しもしないしかつ点6で終わりもしないパスをコー ドする多量の分子が生成することになる。進めるべき別のやり方としては、まず グラフ上の流れを計算し、次いでその計算結果を利用して必要なオリゴヌクレオ チドの量を決定する。 その生成物をPCRで増幅して、ゲル上で泳動させる。 図5A〜5Cは、これらの手順の結果を示す。図5Aにおいて、レーン1は、 ステップ200における連結反応の結果を示す。縞模様のしみは、図3のグラフ を通るランダムパスをコードする分子が構築されたことを示している。図5のレ ーン2〜5は、ステップ202でのPCR反応の結果を示す。優性のバンドは、 点0から始まり点6で終わるパスをコードする分子が増幅されていることに対応 する。 図3Bは、ステップ204で切り取ったバンドから得た一本鎖DNA分子に対 して実施した「段階的PCR」の結果を示す。段階的PCRによって、上記結果 の「プリントアウト(print out)」が形成され、段階的PCRは、i番目の試 験管内で右のプライマーとしてOoを用い、左のプライマーとして(Oi not )を用いて、6種の異なるPCR反応を行うことによって実施される。例えば、 ハミルトンパス0→1、1→2、2→3、3→4、4→5、5→6をコードする 分子に対して、段階的PCRを行うと、順次レーンに40、 60、80、100、120および140bpのバンドが生成される。パス0→ 1、1→3、3→4、4→5、5→6をコードする分子に対して、段階的PCR を行うと、順次レーンに40、x、60、80、100、および120bpのバ ンドが生成される。記号xは、このパスに沿って点2が脱落していることに対応 して、レーン2にバンドがないことを示す。パス0→3、3→2、2→3、3→ 4、4→5、5→6をコードする分子は、順次レーンに、x、60、80−40 、100、120および140bpのバンドとして出現している。80−40は 、40bpと80bpのバンドの両方が、(このパスに沿って点3を2回通過し たことに対応して)レーン3に生成にされていることを示す。 図5B中の最も顕著なバンドは、上記の3パスに対して予想されるバンドが重 ね書きされたために生じたであろうバンドである。パス0→1、1→3、3→4 、4→5、5→6に対応するバンドは、予想されておらず、ステップ3で切り取 られたバンドが、120bpの分子由来の汚染物を含有していたことを支唆して いる。しかし、このような低重量の汚染物は、ステップ206を通って存続しな いので、問題にならない。 図5Cは、ステップ206の最終産物中の分子に応用された段階的PCRの結 果を示す。これらのバンドは、これらの分子がハミルトンパス0→1、1→2、 2→3、3→4、4→5、5→6をコードしていることを実証している。 図3のグラフおよびステップ200〜260について説明したこの演算(計算 )は、約7日間の研究室の作業を必要とした。ステップ206の磁気ビーズの分 離作業は、最も労働集約的であり、一日中、作業台に着いている必要があった。 一般に、上記のアルゴリズ ムを使う場合、必要な手順の数は、グラフ中の点の数ととも直線的に増大する。 大きなグラフに対して必要な労力は、図6を参照して説明する自動化技術を含む 代替手順を使用することによって、少なくすることができる。もっと労働集約的 でない分子アルゴリズムも使用することができる。 必要とされる相異なるオリゴヌクレオチドの数も、辺の数とともに直線的に増 大する。必要とされる各オリゴヌクレオチドの数は、かなり微妙なグラフ理論上 の問題である。おおよそ、使用される数は、ハミルトンパスがグラフ中に存在し ている場合、連結ステップ200中に、ハミルトンパスをコードする分子が高い 確率で確実に形成されるのに充分でなければならない。この数は、グラフ中の点 の数とともに、指数関数的に増大する筈である。 さらに、上記のハミルトンパス問題の検討は、単に例示的なものであり、他の 計算問題も類似の方法で解くことができると解すべきである。 Vinと命名された点とVoutと命名された点を有するn個の点からなるグラフ は、どれも多重のハミルトンパスをもっている可能性がある。ステップ206は 、前記問題に対して、すべてのハミルトンパスを表す分子による解(分子を有す る溶液)を残す。ステップ206の最後に行われる段階的PCRによって、n− 1本の順次並んだレーンに、これらハミルトンパスの全てに対応するバンドが重 なって作られる。 指定の点VinとVoutを有するn個の点からなるグラフ上には、多重のハミル トンパスがあり得る。あるハミルトンパスについての明白な説明が望ましいので あれば、その説明はアルゴリズムを以下のように延ばすことによって達成できる 。ステップ206の最後に、 <G、Vin、Vout>に対するすべてのハミルトンパスをコードする分子を含有 する、化学的意味での溶液(解)が存在する。ステップ206の最後で実施され る段階的PCRによって、n−1の順次のレーンに、これらハミルトンパスの全 てに対応するバンドが重なって生成される。あるレーンiに対し、最小重量(4 0bp)のバンドが出現する。これは、あるハミルトンパスがVinから始まって 点iへ直接進むことを示している。プライマーO1と(On not)を有するそ の溶液をPCRで増幅し、ゲル中を泳動させ、次いで20×(n−1)bpのバ ンドを切り取ることによって、そのようなハミルトンパスをコードする分子だけ を確実に保持することができる。ここに、<G’、iin、Vout>、この場合G ’は頂点Vinが除去されたグラフである、に対する全てのハミルトンパスをコー ドする分子を含有する溶液(解)が得られる。ここに、この手順を繰り返す。 この分子コンピュータでは、多くのエラー(誤り)が生じ得る。例えば、ステ ップ200において、非適合性の辺オリゴヌクレオチドの連結が時折起こり、グ ラフ中に実際は起こらない「擬道(pseudopath)」をコードする分子を生成する ことになる。このような分子は、ステップ200中で増幅され、かつステップ2 04を通って存続するが、ステップ206での分離工程を生き延びることはない ようである。しかし、発明者は、このコンピュータの能力が、その解に誤りの確 立がいくらかあっても、正しい確率の高い解を同定できることにあることを認識 したのである。 この実施態様のための一つの簡単な誤り訂正技術としては、在来の電子計算機 を使って、推定ハミルトンパスがいずれかの計算の最後にグラフ中に実際に出現 することを確認するやり方がある。 誤り発生のある他のあり得る原因は、分離ステップ中に見られ、 すなわち、ハミルトンパスをコードする分子が十分に結合できずに失われるかも しれないことである。非ハミルトンパスをコードする分子が非特異的に結合して 保持されることがある。後者の問題は、より厳重にまたは練返して行う分離手順 により軽減することができる。前者の問題は、ハミルトンパスを増幅するよう設 計されたプライマー(上記の例では、プライマーOoと(O6 not))を用い てPCRを定期的に適用することによって解決できる。これらの技法を釣合いを 保って使用すれば、充分に上記のような誤りを制御することができる。 グラフをコードするのにランダム20量体のオリゴヌクレオチドを選択するこ とは、以下の理由に基づいている。第一に、420個の20量体のオリゴヌクレオ チドが存在しているので、ランダムに選択すれば、異なる点に関連づけられたオ リゴヌクレオチドが、連結ステップ200中に「意図しない」結合をもたらすか もしれない長い普通のサブシーケンス(subsequence)を共有することがないよ うになる。第二に、潜在的に有害な(まれであると推定されるが)特徴、例えば 激しいヘアピンループは起こりそうにないと考えられる。最後に、20量体を選 択したことにより、「スプリント」と「辺」のオリゴヌクレオチド間の結合が、 10個のヌクレオチド対を関与させることになって、その結果、室温で安定とな ろうことが保証される。 また、このモデルは、「充足可能性(satisfiability)」を解決するのにも利 用できる。充足可能性は、ブール要素の式が与えられる場合の問題である。例え ば、下記形式の式である。 φ=(A or B)and(C or D or not A).. . この充足可能性の問題は、4個の変数A〜Dと4個の結合子(andとor) を有している。 充足可能性の問題は、例えばφが真になる真理割当て(truth-assignment)と いう可能な解があるかどうかを決定することからなる問題である。この小さな集 合を使う場合でも、24=16個の真理割当でがある。これらの各々が、真か偽 であるφを与え、そして少なくとも一つの真理割当てが真であるφを与える場合 およびその場合に限り、φは充足可能であるという。 変数が4個の場合、この問題は、それぞれのあらゆる可能な真理割当てを図解 することによって容易に解くことができる。もし、70個の変数があると、それ は270個の割当てを生じることになる。 上記のように、1個のDNA分子の配列をそれぞれ一つの真理割当てを表すの に用いる。ビット数1が真であることを表すのに分子T1を用い、ビット数1が 偽であることを表すのにF1を用い、ビット数2が真であることをあらわすのに T2を用いる、などである。これらの分子を組み合わせることにより、真と偽の 配列270個の可能なすべての組合せ、すなわち真理割当て、をコードする分子群 が得られる。したがって、我々は、この場合、700量体を使用することになろ う。 この好ましい700量体は、例えば、05’T12...03’、ここでT1 2...は700量体である、の形式のものである。700量体の総量は、約 0.93ポンドのDNAを必要とし、この量は人体のDNAの量にほぼ等しい。 このように多くの可能性があるので、我々は、可能な各解をコードするDNA分 子の1個ずつがそのユニバース内に含まれていると見なすことができる。このユ ニバースは、上記のように適当に試験されて、予め決められた基準に一 致する、すなわち元の式を満たす、真理割当てをコードする解だけを残す。 速度とエネルギー効率 この発明の重要な特徴は、大規模に並列にかつ信じがたいほどのエネルギー効 率で作動(稼動)できることである。細胞の進化は、細胞内のエネルギー効率プ ロセスを最適化してきているのである。 典型的なデスクトップコンピュータは、1秒当たり約106の演算を実行でき る。現在利用可能な最も速いスーパーコンピュータは、1秒当たり約1012の演 算を実行できる。二つのDNA分子の連結(ligation)(連鎖(concatenation ))を単一動作(=単一演算)と呼称する。ハミルトン道の問題のステップ20 0中の約4×1014個の辺のオリゴヌクレオチドの約半分が連結されると仮定す ると、ステップ200は、約1014の演算を実行する。このステツプは、相当に スケールアップされ得る。ピコモルの量でなくマイクロモルの量を用いることに より、1020以上の演算を容易に実施できる。この規模で、連結ステップ中の1 秒当たりの演算数は、現在のスーパーコンピュータの場合より3桁より多い量で 高まるであろう。この莫大な数の演算は、信じがたいほどのエネルギー効率で行 われる。アデノシン三リン酸の単一分子を加水分解してアデノシン三リン酸とピ ロリン酸を生成させると、1連結動作についてギブスの自由エネルギー(△G= −8kcal mol-1)を提供する。したがって、原理的には、約2×1019 個のそのような動作(=演算)に対して1ジュールで充分である。 このことは、熱力学の第二法則が300K(ケルビン)において1ジュール当 たり3×1019の(不可逆)動作という理論的な最大値を呈示していることから 見て、驚くべきエネルギー効率である。 既存のスーパーコンピュータは、エネルギー効率がはるかに小さく、1ジュール 当たりせいぜい109の演算を実行するに過ぎない。分子計算の他の部分、例え ばオリゴヌクレオチドの合成やPCRなどで消費されるエネルギーも、現在のス ーパーコンピュータが消費するエネルギーと比べて当然に少ない。 最後に、DNA分子の中に情報を記憶すると、1nm3当たり約1ビットの情 報密度で行うことできる。これは、1012nm3当たり約1ビットの密度で情報 を記憶するビデオテープなどの既存の記憶媒体を超える劇的な改良を呈する。第二実施態様 第一のサブセット ここに記載の自動化の目的を達成するため、一つの試験管を、一組のDNA分 子と、またはより形式的にはアルファベットA、C、G、Tについての有限のス トリングの一つの多重組と、定義すると便利である。もちろん、実際の系では、 分離の時間と正確さが、考慮されている試験管と記号により左右されるであろう 。しかし、便宜のため、均一な時間と正確さが与えられるものと仮定する。 以下の作用は、いずれも試験管内で実施できる。 1.分離。試験管Tと{A,C,G,T}についてのストリングSが与えられ る場合。なお、Sは、A,C,G,Tの記述上のストリングであって、必ずしも 実際の分子ではない。その分離作用は、二つの試験管:+(T、S)と−(T、 S)を作製するのに使用され、ここに、 +(T、S)は、連続サブシーケンスSが入っているT中の全DNA分子で あり、 −(T、S)は、連続サブシーケンスSが入っていないT中の全DNA分子 である。 第一実施態様中のステップ202は、どの分子が特定の開始配列と終止配列を 有しているか決定する必要があるので、分離ステップであると考えることができ る。 2.併合。n個の試験管T1、T2、…、Tnが与えられ、T1〜Tnの併合集 合:U(T1,T2,...,Tn)を生成すること。ここに、U(T,T2,. ..,Tn)=T1∪T2...∪Tnである。 3.検出。試験管Tが与えられ、TにいずれかのDNAが入っているとき「y es」といい、そうでないとき「no」ということ。 4.増幅。試験管Tが与えられ、T=T’(T)=T”(T)であるような二 つの試験管T’(T)とT”(T)を生成すること。 この第二の実施態様は、より構築化されたプログラムの言語が使用される。試 験管は、入力として受け入れられる。出力は、yes、noまたは一つの新しい 試験管もしくは一組の試験管として戻される。 以下のプログラムは、試験管を入力し、そして試験管が全体的にAで構成され ている配列を含んでいる場合およびその場合に限り、「yes」を戻すことを示 している。このプログラムは、4個の要素のアルファベット:A、G、Tおよび Cを想定している。 Input(T) T1=−(T,C) T2=−(T1,G) T3=−(T2,T) Detect(T) 最後のステップを変更して、OUTPUT(T3)にして、上記に替えて、A の要素だけを有する試験管を戻すようにすることもできる。 第二のサブセット 第二の実施態様のこの第二サブセット(部分集合=小組)は、制限モデルを使 うことが好ましく、このモデルは、より効果的に実行できる各種の特徴を有する 。 この発明者は、第一の実施態様で使用した増幅動作(オペレーション)は、実 際に実施することが困難な方のオペレーションの一つであることに気付いた。増 幅は、複雑でまれなプロセスである。現在、増幅は、特定の生物学的分子、例え ばDNAとRNA、および特定の生物体に適用されることが最も多い。増幅を行 うには、共有結合の構築と処理が必要である。この第二の実施態様の一つの目的 は、増幅の使用を回避するかまたは制限して、前記アルファベットのサイズを増 大させることである。増幅を回避した場合の一つの利点は、DNA以外の物質を 使用することができることである。したがって、我々は、第二実施態様のこの制 限モデルに用いるアルファベットを、必ずしもA、G、T、CではないΣと定義 する。 DNAは、特定の記号の発生を監視することを許容する自然構造を有してい るが、配列のことについて言及すれば、このことは他の種類の物質については当 てはまらない。例えば、他の種類の物質内に記号をコードする基は、標準の潜在 的に非線形の分子骨格のどこにでも簡単に位置させることができる。したがって 、「試験管」の要素は、DNA配列に限定されない。さらに一般的に述べると、 これらの要素は、集合体(aggregates)と呼称してもよい。これらの 集合体は、一般に、Σのサブセットである。分離は、記号だけを参照して行うこ とができる。 試験管は、アルファベットΣに関する複数組の集合体である。試験管が与えら れると、以下のオペレーションを実施することができる。 1.分離。試験管Tと記号sεΣが与えられ、二つの試験管+(T、S)と− (T、S)を作りだす。なお、+(T、S)は、記号sを含有するTの集合体の 全てであり、かつ−(T、S)は、記号Sを含有していないTの集合体の全てで ある。 2.併合。n個の試験管T1、T2...、Tnが与えられ、むすびの集合:∪ (T1,T2,...,Tn)を構成する。ここで、∪(T1,T2,...,Tn) =T1∪ T2∪...Tnである。 3.検出。試験管Tが与えられ、Tに少なくとも一つの集合体が入っていると き「yes」といい、そして入ってないとき「no」という。 このより制限されたモデルは、上記に述べたのと類似の方法で問題を解くのに 使用できる。この第二の実施態様は、このモデルが公知の「3色着色可能性」の 問題(3 colorability problem)を解くのにどのように使用できるかを説明する ものである。 3色着色可能性の問題は、無向グラフ G=<V,E> について、グラフ中の各点を、着色した後、一つの辺によって接続されたどの二 つの点も同じ色でないような具合に、赤、緑または青に着色できるかどうかを決 定することを求めるものである。 上記のように、この問題は、第一に、分子オペレーションにおける選択性によ りこの問題が解けるようにする要領で呈示されなけれ ばならない。 辺e1,e2,..,enを有するn個の点のグラフGが与えられ、Σ={r1, b1,g1,r2,b2,g2,...,rn,bn,gn}とし、以下の制限されたプロ グラムが入力された場合について検討する。 ∨="OR". プログラムは、次のように書くことができる。 ここで、ek=<i,j> ここで、iとjは、隣接する辺である。 入力試験管Tの要素は、Gの点に色を割り当てることができるやり方のユニー バースと1対1の対応をしている。 上記プログラムのステップ(2)は、ci=cjである、すなわち同じ色を点i とjに割当てた全集合体αが除かれた新しいの試験管 を創製する。5kの分離、2kの併合および1の検出を行った後、このプログラ ムは、Gが3色で着色可能であれば「yes」を出力し、そうでなければ「no 」を出力する。その結果、この制限されたプログラムは、辺の数に基づいた線形 関数的時間でグラフGに対する3色着色性問題に回答する。電子計算機は、これ と対照的に、この機能を実行するには指数関数的な時間を必要する。 このことは、並列性の価値を示しており、このステップは、同時に3nもの多 数の入力で作動する。 第三のサブセット この技術は、命題式(必ずしも、論理積標準形(conjunctive normal form) ではない)が与えられ、それが充足可能であるかどうかを決定する、周知の(N P完全)の「充足可能性の問題」を効率的に解くのに使用できる。 n個の変数とm個の2進結合子(andもしくはor)と任意の数のnot、 m+1個の分離とm個の併合における命題式を使用して二つの試験管を作ること ができるばあいは、第一の試験管には充足する真理割当てをコードする分子が入 っており、第二の試験管には充足しない真理割当てをコードする分子が入ってい る。第一試験管に対する単一の最終検出によって、この問題が充足可能か否かが 決定される。 併合は、複数の入力試験管の内容物を単一の試験管中に注入することによって 実施することができる。これは、分割よりはるかに速くかつ誤りが少ない傾向が ある。これらの制限されたコンピュータが取り組む多くの問題に対して、検出は まれにしか行われない。 増幅の命令は制限モデルには使用されないので、上記のような計 算に生物分子を用いる必要はもはやない。生物分子を用いることは、いくつかの 利点を有する。 第一に、これらの分子は、DNAコンピュータに用いられている分子よりはる かに小さくできる可能性を有する。DNAコンピュータでは、各記号は分子量が 約3000ダルトンの10量体と関連づけられている。非生物分子コンピュータ の場合、各記号は、はるかに小さい分子と関連づけることが期待できる。質量は 、利用できる並列性の大きさにほぼ反比例するので、このような小分子によって 、DNAコンピュータよりはるかに大きな並列性を有する制限分子コンピュータ を得ることができる。 極端に安定な有機分子を構築することができる。このことによって、「触媒」 分子コンピュータがもたらされる。併合と分離は、共有結合の作製または切断を 必要としない。検出も、分子の構築または破壊なしで実施できる。したがって、 計算が一旦完了すると、全ての得られた試験管は、単一の試験管中に併合しさえ すればよく、新しい入力用の試験管を再生することができる。その結果、その分 子コンピュータは、実際の意味で、計算を触媒する。このことは、実用上の問題 として重要である。例えば、充足可能性に対する分子コンピュータは、全ての可 能な真理割当てをコードする分子からなる入力試験管Tを、一回だけ生成すれば よい。式φが与えられた場合、Tは、式φが充足可能であるかどうかを決定する のに使用される。その計算が完了したならば、試験管Tは再生されて、次の式が 処理される。 第三に、任意の分子を選択する自由度が与えらた場合、誤り率の小さいシステ ムが可能になる特性を有する一組の無機化合物を選択することも可能になる。 一実施態様は、次のように実施される。各記号を小さな官能基(例えば、メチ ル、アミノ)に関連づける。適当な官能基をフラーレンの骨格に結合させること によって、集合体を形成させる。分離の目的のために、組み込まれた各官能基に 特異的に結合する酵素を開発するため「コンビナトリアル」ケミストリー(’co mbinatorial’chemistry)または有理設計(rational design)を使用する。この ようなシステムは、DNAコンピュータに使用される質量の約1/50の集合体 をエンコードすることになろう。したがって、このようなシステムは、単位のサ イズ当たり約50倍の並列性を提供する。さらに、フラーレン類は、極めて安定 である。第三の実施態様 上記第一および第二の実施態様で挙げた分子演算の制限されたモデルは、分子 自体が計算の課程において変わらないという意味で、メモリなしである。計算の 状態は、主として分子の収集によって表され、すなわち、どの分子がどの試験管 に入っているかで表される。この実施態様は、メモリを有する分子計算機を使う システムに関する。この実施態様では、解における分子を変えることができる。 この変更によって、その分子は、記憶された情報を表す。 このモデルは、非制限モデルと同じ能力を持っているのみならず、中間の演算 の結果を記憶することができ、すなわち異なる試験の結果を記憶できる。このモ デルは、コンピュータのメモリとして使用される。 第一のサブセット 試験管は、アルファベットΣ={a1,a2,...an,b1,b2 ,...,bn}に関する集合体の複数組である。 以下の機能を定義する。 1.分離。試験管Tと記号sεΣが与えられ、二つの試験管+(T、S)と− (T、S)を作りだす。なお、+(T、S)は、記号sを含有するTの集合体の 全てであり、かつ−(T、S)は、記号sを含有していないTの集合体の全てで ある。 2.併合。n個の試験管T1、T2が与えられ、むすびの集合:∪(T1,T2) を構成する。ここで、∪(T1,T2)=T1∪T2である。 3.検出。試験管Tが与えられ、Tに少なくとも一つの集合体が入っていると き「yes」といい、そして入ってないとき「no」という。 4.フリップ(flip)。 (a)試験管Tと記号ai∈Σが与えられ、新しい試験管Tai={αa i|α∈ T}を生成する。なお、全てのα⊂Σに対し、a −{ai})∪{bi}である。 (b)試験管Tと記号bi∈Σが与えられ、新しい試験管Tb i={αb i|α∈ T}を生成する。なお、全てのα⊂Σに対し、b −{bi})∪{ai}である。 したがって、上記のフリップ動作は、ai(bi)が入っている全ての集合体に おいて、aiからbiへ(aiからbiへ)切り換える。 したがって、各ロケーションlは、メモリ要素のように作用する。 Tの中の各集合体は、n個のロケーションを有するメモリであり、そのi番目の ロケーションは、li=aiのとき1を有し、li=biのとき0を有している。こ れによって、そのプロセスがどこにあったかに依存する、追加のオペレーション および追加の命令を実行させることができる。 試験管T中の全ての集合体に対し、ロケーション3が1を有し、かつロケーシ ョン5が0を有する場合、ロケーション51を1に設定する、という手順を考察 する。 以下の分子プログラムを用いて、例えば、以下を実施できる。すなわち: 無機の具体化(incarnation)も可能である。上記のように、各aiをある種の 小さな官能基と関連づけて、aiに結合する分子を非共有結合させることによっ てbiをaiから得る。 第二のサブセット ある種のプロセスは、履歴を分子に記録させる必要がある。一例の問題 − 一連の副問題(サブプロブレム)を解くことによって解くことができる問題を想 定する − は、各々独特の解をもっている。分子が副問題を満たすかどうかを 確かめるために、分子を試験する。試験された分子にマークを付ける。したがっ て、マーキングの存在を試験することによって試験された分子を確認できる。 上記のオペレーションは、本質的に、作動中の分子に履歴を記録する。この実 施態様は、分子付着剤(molecular sticker)を用いてこの履歴を記録する技術 を提案するものである。各付着剤の位置に付着剤が存在していることは、物質が 特定の演算を通過してきたのかまたはその演算を通過してこなかったのかを示す 。しかし、さらに一般的に述べると、付着剤の存在の有無は、計算について何か を確認するのに利用される。 付着剤s1,s2...s10の限られたユニバースを想定する。各付着剤は、 DNAの配列として例示することができる。各付着剤は、もちろん、固有の補体 、すなわち(s1 not)、(s2 not)...(s10 not)をもって いる。これらの補体をロケーション(location)と呼ぶ。 付着剤評価分子(sticker evaluating molecular)は、ロケーションの複合体 を含有している。これらのロケーションは、各々付着剤によって相補されている か、または相補されていない。付着剤が存在していることは、その分子が特定の 副問題について試験されたことがあることを示している。 この発明のこの態様によれば、複数の付着剤ロケーションを、分子の末端に配 置する。付着剤ロケーションが付着剤で相補されていれば、そのロケーションに 関連づけられた状態は、「1」と評価される。付着剤ロケーションが付着剤で相 補されていない場合は、「0」と評価される。上記説明は、付着剤の一用途につ いて述べできたが、これらのメモリの位置は、分子についての多くの追加事項を 確認するのに使用できると解すべきである。 例えば、付着剤S5をその適当なロケーションに結合させることによって、オ ペレーションにマークを付けることができる。その後、 全分子をビーズに結合されたS5を横切って通過させる。S5でマークされていな い分子だけが付着する。 付着剤評価分子は、ウイルス、例えばM13ウイルスのゲノムでもよい。その 分子は、あるいは非DNA、例えばフラーレン類でもよい。 付着剤は、後で検出できる予想可能な手法で、付着剤評価分子と反応する如何 なる物質でもよい。 その検出は、例えば分離を利用する。その分離は、付着剤が存在するかどうか に基づいて行われる。付着剤sに対するロケーション1の付着剤評価分子が入っ ている試験管を、Sが中に入っているかどうかに基づいて分離する。この分離に よって、2種類の異なる試験管、すなわちSが結合した約269個の配列およびS が結合していない別の269個の配列がそれぞれ入っている試験管が得られる。得 られたこれら二つの試験管は、それぞれ異なる特性をもっている。 汎用分子コンピュータは、上記メモリモデルを実現するのにも使用できる。各 「ロケーション」iに対し、aiはオリゴヌクレオチドOiに関連し、そしてbi はOiのメチル化形に関連している。酵素を用いてメチル化および脱メチル化を 行う。例えば、Oi=5’...GAATTC...3’の場合、EcoR I メチラーゼは、メチル基の転移(S−アデノシルメチルニンから)を触媒して5 ’...GAmATTC...3’を生成する。EcoR Iメチラーゼは、サ ブシーケンスGAATTCなしのオリゴをメチル化しない。他の方法を用いて脱 メチル化して、付着剤を除くことができる。 第三のサブセット 第三のサブセットは、再生可能でかつ再使用可能なワークスベー スを提供するものである。この実施態様は、2種類の付着剤、すなわち弱く結合 される付着剤と強く結合される付着剤を使用する。弱く結合される付着剤は、強 く結合される付着剤に対して何も影響を与えることなく除去することができる。 この特徴によって、上記のどれかの方法を用いて、複数の強力なビットが提供さ れる。付着剤評価分子のワークスベースWは、弱い付着剤のビットで形成される 。これらの弱いビットは、加熱することによってそれらの結合から分離させるこ とができる。この発明のこの技法によって、強いビットを用いて、情報を記憶さ せるかまたは先の実施態様に記載されているようにオペレーションを通して各種 のパスにマークを付ける。これらの弱く結合される付着剤は、作業用メモリとし て使用される。この作業メモリの内容は、その物質の溶液を加熱することによっ てクリアすることができる。前記ワークスベースは、付着剤評価分子から、これ らの弱い付着剤を分離されるために充分加熱するが、強い付着剤を解離させない 程度にする。 第四のサブセット 別のメモリモデルによって、各種の特定の要素の分離を容易に行えるようにな る。このメモリモデルは、例えば長さが10,000の配列Mを使用する。Mに 対する活性配列は、Mの多数のコピーが必要なほどには重要でない。 この実施態様は、ファージ、例えば細菌ウイルス、のゲノムの使用を提案して いる。ファージを「供給して」Mのコピーを作ることができる。Mのこれらのコ ピーは、全て同一である。 Mは、我々が、B1、B2...B200と呼ぶ複数のサブパートを含有して いる。このことは、この実施態様のメモリが200個 のロケーションをもっていることを意味する。すなわち、そのメモリは、200 ビットのメモリである。サブパートの各々は、長さ50のブロックである。各ブ ロックは、メモリ中のロケーションに対応する。 各ブロックは、三つの部分のZ、CおよびOに分けられる。ZとOは10量体 であり、一方Cは30量体である。概念として、Z部分は0を表し、Oは1を意 味し、そしてCは共通(common)を表す。 メモリ中のロケーションは、次のように記入される。この実施態様では、オリ ゴである付着剤を使用する。上記の各ブロックBiは、二種の異なる付着剤オリ ゴをもっている。その付着剤オリゴ(Zii not)は、そのブロックが0を 示す(すなわちZが相補されている)指標を呈している。付着剤(Zii no t)は、そのブロックが1を表すことを示している。 200個のロケーションを有する上記例の場合、我々は、200個のブロック 各々に対し2個ずつの合計400個の付着剤オリゴを作る必要がある。しかし、 付着剤のオリゴは短いので、容易に大量に合成することができる。 ロケーションiは、付着剤(Zii not)をMに対しアニールすることに よって、0に設定することができる。ロケーションiは、付着剤(Cii no t)をMにアニールすることによって、1に設定することができる。 (Zii not)および(Cii not)は、ロケーションCiに対して競 合する。したがって、一方もしくは他方がロケーションiに結合するが、両者が 結合することはない。一方のロケーションが結合すると、他方のロケーションは 結合できない。 このシステムの利点は、異なってコードされた要素を分離できる 便利さである。0に設定されたロケーション5を有するストリングを検討する。 このストリングは、ロケーションB5が付着剤(Z55 not)にアニールさ れる。B5の40個の塩基対は、対になっているZ5とC5を含有している。 10個の塩基のO5は、対になっていない。したがって、0に設定されたB5 を有するストリングは、ビーズに結合した(O5 not)にアニールする。こ れとは対照的に、1に設定されたロケーションB5を有する他のストリングは、 ロケーションB5が(C55 not)にアニールされる。したがって、O5は露 出されていない。これらのストリングは、ビーズに結合した(O5 not)に アニールしない。 分子は、このように、ビーズに結合した(O5 not)上を通過させること ができる。0に設定されたロケーション5を有する分子だけが、ビーズに捕獲さ れる。 捕獲されたストリングは、0に設定されたロケーション5を有するストリング を含んでいる。これらストリングは、溶離させることによって放出させることが できる。これは溶離温度まで加熱することによって行うことが好ましい。この温 度によって、O5とビーズ結合した(O5 not)との間を結ぶ10個の塩基対 結合を分解する。この溶離温度は、B5と(Z55 not)の間の40個の塩 基対結合またはその分子上の他の場所の他の付着剤を分解するのに充分なほど高 くはない。 このシステムの一つの利点は、1、0をそして1でも0でもない分子をも、明 確に決定できることである。また、容易に溶離することができる比較的弱い結合 (僅か10個の塩基対の結合)を許容することである。第五のサブセット − XYZの付着剤オリゴ。 このシステムの第五のサブセットは、上記第四サブセットのサブセットである 。このサブセットにおいて、我々はブロックBの部分を、X、YおよびZで標識 化する。ここで、XとZは20量体で、Yは10量体である。したがって、使用 される付着剤オリゴは、長さ50のオリゴである。 各ブロックBiは、Xiiiからなっている。我々は、付着剤オリゴ(Xii i not)も構築する。これには、200個の各ブロックに対し1個ずつの 合計200個の付着剤オリゴだけが必要である。やはり、これらの付着剤オリゴ は短いので、容易に合成することができる。 付着剤(Xiii not)をMに対しアニールすることによって、任意の ロケーションiを1に設定する。オリゴがMにアニールされない場合、ロケーシ ョンiは「0」に設定されている。 ここで、ビーズに結合した(Yi not)は、Yiを暴露された全ての分子M を捕獲する。換言すれば、被覆されているポジション5を有するこれら分子は、 ビーズに結合された(Y5 not)を有するビーズによって捕獲されない。これ らの分子は、これらビーズを低温で洗浄することによって捕獲できる。しかしポ ジション5を被膜されていないこれら分子は、これらビーズによって捕獲される 。 ここで、その捕獲されたストリングは、10対の塩基の結合を切断するのに充 分な温度で溶離することによって放出することができるが、それは50対の塩基 の結合を切断するのに充分なほど高くない温度である。 この第五のサブセットは、合成する必要がある付着剤が少ないの で、より簡単である。しかし、不適当な状態、すなわち陽性(正)でも陰性(負 )でもない状態を検出するのには、このシステムを使うことはできない。第四の実施態様 この実施態様は、第三の実施態様に記載の制限されたモデルのDNAベースの 実現に関する。 ここで使用される記号Σのアルファベットは、二つの特別の記号s5とs3を含 んでいる。各記号sεΣは、オリゴヌクレオチド(「オリゴ」)すなわちスクレ オチドの短い配列と関連している。オリゴの得られた組合せは、以下の特性を満 たすことが好ましい。 (1)容易に達成できる条件下で、各オリゴは、そのワトソン−クリックの補 体と安定なハイブリッドを確実に形成する。これらの条件には、例えば、温度、 pH、塩の濃度またはイオン濃度の制御が含まれている。 (2)容易に達成できる条件下で、各オリゴは、そのワトソン−クリックの補 体から確実に解離する。 (3)上記のどの条件下でも、どのオリゴも、それ自体もしくは他のオリゴま たは他のオリゴのワトソン−クリックの補体とハイブリッドを形成しない。 もちろん、これらの特性からいくらか小さなずれが考えられるが、この中でな される誤りの訂正でカバーされる。DNAコンピュータの場合、我々は、全入力 試験管が、(5’)でs5'とのオリゴ結合体で始まり、そして(3’)でs3'と のオリゴ結合体で終わるDNA分子で構成されていることを要求するものである 。この後者の特徴は、オプショナルであるが、この特徴によって、マークされた D NA分子が溶液の中に残っているかどうかを確認することができる。 試験管の併合は、全ての試験管の内容物を単一の試験管の中に注入して併合す ることによって達成される。 分離は、試験管Tに対し、記号Sについて、以下のようにして実施する。sを オリゴOに関連づけたならば、オリゴ(O not)の分子からなるセパレータ 、固体支持体に接合されたOに対するワトソン−クリックの補体が使用される。 例えば、第一の実施態様に記載の磁気ビーズ系またはアフィニティーカラムを使 用できる。 試験管Tに対する検出には、共通の5’末端および3’末端の配列に対して適 切なプライマーを用いるPCR法、続いてゲル電気泳動法を使用する。 この新しいモデルは、例えば「充足可性能」の問題を解く場合に使用すること ができる。 70個の変数と1000個の2進結合子を有する命題式φが与えられたならば 、これは次のように定義できる。 なお、各変数に対する「真」の記号と「偽」の記号、および必要な「PCR記 号」のs5'とs3'を有している。 Σの各記号は、ランダムに選択された(または注意深く設計された)10量体 と関連づけられ、前記3条件を満たしている.Tiと関連づけられたオリゴをOi T として示し、Fiと関連づけられたオリゴをOi Fとして示し、s5'およびs3'そ れぞれと関連づけられたオリゴをO5'およびO3'として示す. 上記のように、入力の試験管Tには、その問題に対する可能な全ての真理割当 ての全ユニバースが入っている。したがって、入力の 試験管は、以下の形式の全DNA分子のセットで構成されている。 O5'12...M703' ここで、i=1,2,...,70の場合、Mi=OitまたはMi=OiFである 。したがって、Tの要素は、70個の変数に対する全ての可能な真理割当てのセ ットと1対1の対応を有している。 このユニバースには、270個の分子が含まれており、これら分子は各々720 量体である。各ヌクレオチドの分子量が300ダルトンであるとすると、試験管 Tの中の分子は、質量が約425g(0,93lb)になる。 Tは、好ましくは次のようにして製造する。第一に、全てのOiを別個に製造 する。次に、約270個のO5'を、試験管T内の固体支持体に接合する。次に、i =1,2,...,70に対して、次のステップを実施する。 (1)試験管Tの内容物の半分をT1中に注入し、残りの半分をT2中に注入す る。 (2)T1中の分子の3’末端に(単一の)Oi Tを連結する。 (3)T2中の分子の3’末端に(単一の)Oi Fを連結する。 (4)T1をTに併合する。 最後に、単一のO3をT中の分子に連結する。 必要な併合は、簡単に実行できる。 PCRによる検出は、標準の手段で容易に達成することができる。このような PCRは、計算の最後に一度だけ実施することを思い起こすべきである。最後の 試験管に多数のDNA分子が入っていたならば(すなわち、式中を満たす多くの 真理割当てがあったならば)、検出オペレーションは、光学濃度測定法のような 粗い技術でも実施できる。 分離は、第一の実施態様に記載した磁気ビーズ系を用いることができる。ビー ズは、各々、直径が約1ミクロンで重量が約1.3pgである。各ビーズは、約 7.8×105個のビオチニル化オリゴと結合する。ビーズに関連づけられたオ リゴ1個が標的分子1個と結合すると仮定すれば、結合している269個の標的分 子(この演算中に行われる最大分離時の標的の数)は、体積が約0.39リット ル(約0.49qt)であり、約984g(約2.2lb)のビーズを必要とす る。これらのビーズは、体積が約750mlである。 これらのビーズは、再使用できることに留意することが重要である。分離の後 、そのビーズとそれらのオリゴは「自然劣化」を除いて無傷である。したがって 、このオペレーションは、自動化コンピュータ系の実施態様について述べたよう に、これらのビーズを使用し再使用する自動化プロセスと合致している。 各分離は、1000秒で行うことができ、τ=約16.7分であり、かつ併合 の時間は無視できると想定する。また、分離中、誤りがない(すなわちε+- =0)と想定する。この想定は不合理であるが、誤りの効果と扱いについてはこ の明細書で検討する。分離中にDNAの分子を一つの試験管に入れるかもしくは 他の試験管に入れるかを決定するか、または併合中にDNAの分子を一つの試験 管から他の試験管に移すオペレーションを行う。分離の回数が1001で、併合 の回数は1000である。典型的な式φの場合、各分離と各併合は、約269個の DNA分子が入っている試験管に実施される。 したがって、1秒当たりの操作の回数は、約1.2×1018である。これは、 最も速いスーパーコンピュータより約1,200,000倍速い。計算にかかる 合計時間は、1001回の分離によって 左右され、その結果約11.6日になる。計算の間、約1024回の演算が実行さ れ、この回数は、有史以来、人工の計算装置で実行された演算の合計回数より大 きくなる可能性がある。 上記の分子コンピュータは、140個の「セパレータ」:各比例変数に対する 「真」と「偽」が必要である。したがって、140個もの多数の命題式を機械に よって同時に扱うことができる。この場合、その機械は、1秒当たり、1.6× 1020回もの多数の演算を実施できる。 この速度でさえ、この出願で説明する自動化の実施態様を用いて、桁違いの大 きさで改善するすることができる。第五の実施態様 − 誤りの訂正 多数の誤りが起こると、現在の電子計算機では破減的になる。しかし、このよ うな誤りは、上記の実施態様で予想される。例えば、以下のことが考えられる。 制限コンピュータの各具体化(incarnation)を行って、諸パラメータ、すな わちτ:操作時間;ε+:+であるべき粒子が最終的にーと示される確率、およ びε−:−であるべき粒子が+として示される確率と関連づける。ε+とε−は 非常に異なっている。例えば、第二の実施態様で説明したDNAコンピュータは 分離を以下のように実施できる。 (1)アニール。Tの内容物をビーズとともにインキュベートし、正しい連続 サブシーケンス(subsequence)を有する分子が得られる時間をかけてアニール させる。アニールしない分子を含有する液相を流出させる。 (2)洗浄。溶液をビーズに添加し、次いで流出させる。この ようにして、ビーズにアニールしない粒子(例えば、試験管の内壁上に残ってい るかまたはビーズに弱く保持されている分子)をさらに除去する。この洗浄を繰 り返し行う。 +(T,s)であるべき分子がビーズに一旦付着すると、通常、多数回洗浄し ても、(非常に高い確率で)付着したままである。ε+は、+(T,s)の分子 がアニールステップ中に充分付着するかによって測定される。ビーズに対し弱く アニールするかまたは試験管の側壁に付着する分子は、二回目または三四回目の 洗浄でようやく除去することができる。ε−は、洗浄を行う回数によって決まる 。何回もの洗浄によって、ε+=1/10およびε−=1/106のような値を 与えるシステムを考えることができる。ε+とε−をほぼ等しく維持することに よって、その後に分析する場合、状態が簡単になる。この状態は、分離を繰り返 すことによって常に達成することができる。 (最初に)Input(T) (1)T1=+(T,s)and T’1− −(T,s) (2)T2=+(T’1,s)and T’2=−(T’,s) ・ ・ ・ (n)Tn=+(T’n-1,s)and T’n=−(T’n-1,s) (最後に)T+=∪(T1,T2,...,Tn)and T-=T’n n回のステップの後、T+は、+(T,s)にあるべき要素の(1−εn)を有 し、かつ−(T,s)にあるべき要素の1−(1−ε-nを有している。さらに、T=∪(T+,T-)である。εnが1−(1−ε-n (それ自体ほぼ1−nε-に等しい)にほぼ等しいように選択される場合、我々 は、Tから試験管T+とT-が得られるn回繰り返す分離操作を、ε+がε−とほ ぼ等しくかつ元のτよりn倍大きい単一の新しい分子操作と考えることができる 。例えば、元の分離がε+=1/20、ε-=1/106およびΠ=1000秒で ある場合、前記新しい分離操作(n=6 − 実際にはn=5.28の方がよい が、我々は繰り返し数として整数値を使用する)は、ε+=1/106、ε−が約 6/106およびn=6000秒である。 これらの方法はε-=ε+とするのに使用することができる。我々は、この値を εで表す。我々は、我々の充足可能性の例として、ε=6/106を想定する。 与えられた分子が、計算の過程でS回の分離操作に入ると想定する(例えば充 足可能性の例S≦1000で)。この分子が、誤りなしに、すなわち「間違った 」試験管に入ることなく、全ての分離操作を実行する確率Pgoodは、(1−ε)s であり、そして与えられた分子が、誤りなしにs回の分離操作を実行できない 確率Pbadは大きくても1−(1−ε)sである。上記充足可能率の例の場合、全 ての分子に対し、Pgood≧(1−6/1061 000で、ほぼ0.994であり、 一方、Pbad≦0.006である。したがって、各1000個の分子のうち少な くとも994個の分子が、誤りなく全体の計算を通過する。このことは、非常に 優れているが充分ではない。というのは、分子の数(約1.5×262)が、ある 点で誤りがあることがありかつ演算がなされるときに間違った試験管内でそのま まになってしまうことがあるからである。この問題を処理するため、以下のこと を想定する。 伝統的な順次処理電子計算機を想定する。述語P(すなわち各入力に対し、「 yes」または「no」を戻す関数)があり、そして、Pが「yes」の回答を 与える「ウイナー(winner)」のストリングの存在について、長さが70の270 個の2進ストリングを全て網羅的に(および順次)サーチするプログラムを書き 込むと想定する。さらに、長さ70の各ストリングに対し、Pは1000回の操 作で計算することができると想定する。サーチ中に、コンピュータが停止し、「 αがウイナー」であるとプリントアウトした場合、それを信じるべきだろうか? 分子コンピュータと同様に、電子計算機は誤りをまぬがれることができない物 理的システムである。自分のコンピュータが21,000,000回の操作中、多くても 1回の誤りをすると告げられた場合、実際問題として、αが実際にウイナーであ ると信じてもよいである。しかし、自分のコンピュータが166,666回の操 作毎に多くても一回の誤りをすると告げられたとき、その状態がそれほど完全な ものではない。ストリングαを数回再試験することによってコンピュータの応答 をチェックすることが望ましい。「αがウイナー」であるという応答を得る度ご とに(「αがルーザー(loser)」であるという応答を受けることなく)、 αが実際にウイナーであると信頼を深めていってもよい。しかし、もちろん、無 条件に信用はできない。 これらの考えを分子の設定に利用する。Pgoodがかなり大で(充分可能率の例 の場合のように)あり、計算が命題式φについて行われた結果、出力試験管T1 Wが生成したと想定する。この試験管は理想的に、ウイナーすなわちφを満足さ せる真理割当て、をコードする分子をもっているはずである。この試験管T1W を、全演算の 再実行に対する入力として用いて、ウイナーといわれているもの全てを再チェッ クする。 この新しい試験管T2Wには、全演算を2回実行し、両方の演算ともにウイニ ング(winning)試験管で終わった全ての分子が入っている。したがって、試験 管T2W中の物質が間違っている確率は著しく小さくなっている。 そのプロセスは、全演算をr回を繰り返して、2種類の分子が入っている試験 管TrWを作ることができる。TrWには、満足な真理割当を実際にコードする 「真のウイナー」が入っており、そして、不満足な真理割当を実際にコードする 「偽のウイナー」がどういうわけが誤りを通り抜けてTrW中に入っている。 まちろん、「真のウイナー」としてTrWに入る方が「偽のウイナー」として 入るよりはるかに容易なので、はるかに確率が高い、「真のウイナー」は誤りな しでr回の演算を実行することだけが必要である。大部分の分子は誤りなしで、 我々の例では少なくとも1000回毎に994回、演算を通過する。一方、「偽 のウイナー」はR回の演算を通過できないようである。「偽のウイナー」は、演 算を通過するごとに少なくとも一回の誤りをする筈である。 与えられた例では、間違った操作の確率は約6/1000である。続けて10 回誤りを起こす確率は約1/(13.5*270)である。したがって、試験管T w10に予想される「偽のウイナー」の数は多くても1/(13.5)(1より 小さい)である。したがって、たとえφが充足できなくても、ある種の偽ウイナ ーはTW10内で終わらないようである。ここで、P10 goodは約0.94である 。したがつて、たとえ、φとして丁度一つの充足する真理割当てしかなくても、 その割当てをコードする分子がTW10内で終わるチャン スが少なくとも94%あり、したがって、我々はQが充足可能であるという正し い答を与えるであろう。 この分析結果は、これらの誤りを管理可能な数まで減らすことができることを 示している。この方法はかなり不器用な方法であり、より洗練された方法を代わ りに用いることができる。例えば、誤りの確率が小さい物質を選択することがで きる。使用するオリゴは、特に特異的結合の起こる可能性を減らすように選択す ることができる。これらの試験管は減菌状態を保持して、例えば相互作用を併発 することがある酵素などの外来分子なしにできる。さらに、このようなシステム は対称性をもっている。例えば、記号F5について分離を行った場合、そのシス テム内のあらゆる分子はT5またはF5であるが両方ではないので、−(T,F5 )=+(T,T5)である。誤りを減らすため「ダブルポジティブ」(double po sitive)のシステムを使用できる。 オリゴは通過させるがビーズは通過させない半透膜を間に配置し、左側にT5 に対するビーズを入れ、右側にF5に対するビーズを入れたチャンバーに、試験 管の内容物を入れることを想定する(実際にこのようなシステムの場合、ビーズ は、該半透膜を通過できない大きい分子で代替することができる)。上記チャン バーを攪拌すると非常に完全な分離を行うことができる。このようなシステムは 、非常に高速にすることができ、かつ使用する溶媒の容積を増やす必要なしで分 離を行うことができる。 もちろん、分子演算には、誤りを起こす可能性のある他の原因がある。例えば 分子の「自然変性」がある。DNAコンピュータにおいて、ヌクレアーゼの汚染 のような変性の主要原因は回避することはもちろん必要であり、そしてできるだ け緩和な条件下で分離を行 うことが賢明であろう。また、例えばより強健なペプチド骨格を有するDNAの 類似体を使用することも賢明であろう。第6実施例 − 実用DNAコンピュータ ここに記載したDNAコンピュータは、ある一定の演算を行うのに十分好まし いものである。分子コンピュータは、電子コンピュータが実用上埋めていないコ ンピュータのニッチを埋めるものである。ある種の問題は、多くの電子コンピュ ータであれば大規模な並列手法で行うことがるであろうように、十分に分解する ことができる。例えば、1秒間に1012回の命令を実行する電子コンピュータと 1000秒ごとに1020回の計算を実行する生物コンピュータとの間で、どちら を取るかの問題はあろう。よりよい解決は、この問題の分解能力の程度に依存し て決まる。これらの演算を行う実用コンピュータの実施例を作成することができ 、発明者は、ここに、そのようなシステムの一実施例を図6を参照して説明する 。この発明の基本的なシステムでは、上述の試験管モデルに従って複数の試験管 にDNAサンプルが入っている。各試験管には、ある実行物質の小サンプルが入 っている。各試験管には、番号が付されており、それには例えばホログラフィー 指標やバーコードのような光学的に検出可能な指標が含まれていてもよい。これ らのコードは、スキャナ601によって読み取って、現チューブの番号を検知す ることができる。チューブは、全て、好ましくは6000個のチューブを配設で きるような回転式トレー610上に取り付けられている。この回転式トレーは、 ステップモータ612によって回転できる。しかしながら、これとは異なる手法 として、回転式トレーが静止していてもよく、または異なる幾何学的構造のラッ クで置き換えられてもよく、そし てロボットアームが回転式トレーのどの位置にでも延びて、どのチューブでもつ かむようにしてもよう。 ステップモータは、予め記憶されているフローチャートに従って、全体的な作 動をコントロールするプロセッサ614からのパルスによって駆動される。この プロセッサは、ここに記載する他の作動をもコントロールする。 それぞれのチューブ600、602は、1サンプルの物質−−この実施例では 、殆どのサンプルはDNAである−−を収容している。異なる試験管には、異な るサンプルを収容することができる。プロセッサは、回転式トレーに配設するチ ューブの位置と回転式トレー自体の位置を示す情報を記憶している。例えば、位 置604として示された回転式トレーの特定の位置がある。この位置は、0点を 表していてもよい。その場所の現在位置を検知することによって、いずれの所望 のチューブ、例えばチューブ600でも、それがどこに配置されているかを常に 決定することができる。チューブ600は、Yで示される位置に回転されること ができる。これに替え、またはこれに加えて、チューブの指標を読み取ることに よって正しいチューブがアクセスされていることを確認することができる。 複数のロボット620のそれぞれは、一本のロボットアーム624を備えてい る。このロボットアームは、位置Yで、または他のプログラム可能な場所で、回 転式トレーに到達することによって、その位置Yでチューブをつかむことができ る。それぞれのロボットアームは、異なるグループの場所からチューブをつかむ ことが可能である。 それぞれのロボットアームは、また関連作業領域630をも備えていて、その 領域においてつかまれたチューブには更なる処理、例 えば併合を分離したり、付着剤を加えたり、溶出したり、またはここに記載の他 の操作を行ったりする処理が施されてもよい。 図6には、チューブS10を有する第2位置にあるロボットアームが示されてい る。チューブS10は、装置632に注がれる内容物を収容している。装置632 は、例えば、特定要素の相補体(complement)で印付けした磁気ビーズであって もよい。チューブ632内の内容物は、ロボットアーム622によって除去と保 持がなされている。S10の内容物は、632において装置に注がれる。例えば、 10番目のビットに0を有するすべての要素は、要素632によって分離し取り 出されることができる。したがって、チューブ634の内容物は、10番目のビ ットに0を持たない全ての材料を含んでいる。続いて、チューブ634は、ロボ ット626のロボットアーム628によってつかまれて、回転式トレーの特定の 場所に戻されることができる。したがって、戻されたチューブ634には、10 番目のビットに0を含まない材料のみが含まれている。 この他の動作も作業スペース630で行うことができる。これらの作業には、 作業スペースにおいて例えばチューブを加熱することによって弱く結合した付着 剤(ステッカ)分子を取り外す作業、または付着剤の存在に基づいて分離する作 業動作が含まれる。 さらに一般的には、それぞれのロボット動作は、そのロボットのアームが届く 範囲内にあるいずれの位置からもチューブを引き抜く。続いて、そのチューブは 、別のチューブから取り出してきてもよい他の材料を入れて作業スペース630 において次のプロセスを行うことによって、上述したようないくつかの異なる作 業を行うこともできる。 これらのそれぞれのロボット動作は、ほぼ1分間で遂行すること ができ、したがって、前に見積もった単位時間あたりの動作量が、桁違いに増加 する。さらに、多くのロボット作業が異なるロボットによって並列して行うこと が可能なため、作業に必要な時間をより減少させることができる。 回転式トレーの実施例は、好ましくは、多数のビーズオペレータ(演算子)を 備えた回転式トレーを取り囲んだ複数個のチューブを用いてる。回転式トレーの 外側にあるいくつかのチューブは、分離用、併合用および付着剤操作ように使う ことができる。3142本の1/4インチのチューブを備えた回転式トレーは、 半径が約10フィートとなろう。 この実施例では、ロボットアームを用いての動作を説明しているが、ここでの キーポイントは、分子を第1位置から第2位置へと移動させる機能にあることを 理解すべきである。これらの分子を移動させるための、ポンプ、静電的移動、お よび他の同様の特徴をもつ他の手段なども利用することができる。 図6の装置の動作のフローチャートを、図7のフローチャトを参照しながらこ こで説明する。プロセッサ614は、種々の動作を行う。まず、それは、さまざ まな位置に移動させるようにステッパモータを制御する。また、それは、種々の 材料を取り上げるためにロボットアームの制御も行う。最後に、このプロセッサ は、処理結果が誤りを含んでいるかどうかを判定するのに寄与することもできる 。図7は、実行されつつあるこれらの作用を基本ブロック図の形式で示している 。 ステップ700において、このシステムは、次の作業動作を検出し、その作業 動作に必要なチューブの位置を決定し、そしてロボットアームにそれらのチュー ブをつかむように命令する。これには、 プロセッサが回転式トレー610の位置を制御すること、そしてロボットアーム の動きを異なる位置の間で制御することが必要である。続いて、チューブが作業 スペース630に配置される。 ステップ702で、このシステムは、このようにして得られたチューブに対し て所望の動作を行う。 ステップ704は、採否任意である。というのは、続いて行う動作中にこれら のチューブが最も効果的に得られるように、それらのチューブについての適切な 位置を先を見越して決定しようとすることをふろに要求するからである。このよ うなパイプライン化のためのアルゴリズムは、周知である。例えば、ある問題を 上述したように分解することができるのであれば、その問題の別の部分を同時に 計算することができる。 ステップ706では、材料が回転式トレー内で置き換えられ、プロセスが続き 得る。 プロセスがステップ706で終了すると、次に、このコンピュータで求められ た解を、ステップ708で電子コンピュータを用いてテストしてもよい。 このテストを行う電子コンピュータの利点は、次のとおりである。例えば、問 題に対して1022の可能な解があり、各解を電子コンピュータが計算するのには 、1マイクロ秒さえかかかもしれない。このことは、その問題を解くのに、それ でも1016秒(3.1×108年)かかることになる。 しかしながら、一旦この問題が分子コンピュータで解かれると、その解は、そ れでも電子コンピュータで1マイクロ秒でテストすることができる。仮に103 個の結果があっても、そのうちの一つのみが正しく、分子コンピュータは23桁 の大きさでその結果をさらに 狭めている。一台の電子コンピュータで、これらの103個の結果を1秒未満で テストすることができる。 このテスト動作は、電子コンピュータと分子コンピュータの利点を組み合わせ たもので、場合によっては、上述した誤り訂正の必要性を除去することもできる 。第7実施例 − デザイナー分子 所望の特性を持つ分子(例えば、酵素、薬物)を「要求次第」形成する能力は 、非常に重要なことである。歴史的に見て、このような分子を形成するプロセス は、難しく(仮に、可能であったとしても)、そして費用も高い。この課題に対 処する有望な手法、「コンビナトリアル」ケミストリー(組合せ化学)と言われ る手法が起こってきている。Alper J.,Drug discover on the assembly line, Science,264:1399-1401(June 3,1994)を参照。 下記は、組合せ化学において、分子コンピュータを設計するにあたっての有用 な概念を利用した実施例である。その実施例に続いて、これらの概念の持つ潜在 的な応用について説明する。 最近、BartelとSzostak(「BS」)は、組合せ化学の手法を用いることによ って「擬酵素」と言われるものを作成している。彼らの基本的な手法を簡単に述 べる。明瞭にする目的で、数多くの簡略化をするとともに、多くの重要な詳細を 省略している。 実験の目的は、RNAρ1とρ2(ρ1とρ2は、連結反応の準備において、ハイ ブリダイゼーションにより5’−トリホスフェート基と3’−水酸基を近接させ るような具合で、相補的な塩基対である)の二つの基質分子をつなげるであろう RNA分子を見いだすことにあった。 約425のランダム配列のRNAからなるプールが開発された。このプールのそ れぞれのRNAは、5’末端でρ2のコピーに、また3’末端で定常領域Cのコ ピーに結合していた。したがって、約425個の分子を含む一本のチューブが作成 され、そのチューブ内のそれぞれの分子は、分子形がρ2RC(ここで、Rは、 元のプールからのRNAの何らかの分子である)であった。このチューブに過剰 量のρ1を加えた。もし、このRNAプール内にρ1をρ2に連結することのでき る「ウイナー(winner)」Wが存在していたらそのチューブ内にρ1ρ2WCが形 成されたであろう。次に、配列ρ1を含む分子が分離され、保持された(だから 、元のプール由来の「ノンウィナー(non winner)」RNAは除去された)。ρ1 の5’末端が既知であるとともに配列Cが既知であるため、分子形ρ1ρ2WC の分子のみを増幅する(逆転写、PCR、転写を用いて)ことがこの場合可能で あった。ここで、「ウィナー」の配列を発見するために標準的な手段を用いるこ ともできる。 BartelとSzostakの実験の「ウィナー」(実際には、複数の「ウィナー」)は 、真の酵素ではない。というのは、基質に作用する際にそれが「使い切られてし まう(used up)」からである。基質の一つに「掛け留め(anchored)され」た 「ウィナー」RNAを持っていることの価値は、一旦ウィナーが働くと、その反 応生成物に永久的に掛け留めされるようになることである。これによって、RN Aプールの残りからそれを区別し、後で定量するために回収することが可能にな る。もし、真の酵素を形成することを望むのであれば、基質に作用した後でプー ルに再び入るという実状にかかわらず、「ウィナー」を同定しなくてはならない 。これは、われわれが今や更に探求しようとしている課題の例であり、すなわち 、それは、利 用できる全てのことが大きなプールのどこかに一つの「ウィナー」が存在してい ることを検出する能力であるときに、「ウィナー」を見つけ出すことである。一 般的な設定でこの課題を解決する能力は、プールの分子がヌクレオチドでない( 例えば、タンパク質のプール、実在する化合物の多数の変成物からなるプール) 場合に、特に重要であろう。あるいは、掛け留め作用が物理的に可能または適切 でなかったりする場合(例えばエ、ンドヌクレアーゼが要求される場合や、細胞 膜を通過してから特定のホスト分子に結合する薬物)である。以下に、一例とし て、広範囲の種々の設定でこの課題が解決できることを示す。われわれの目標は 、二つのDNA分子であるδ1とδ2(これは、上述したように、連結反応の準備 においてハイブリダイゼーションにより5’−トリホスフェート基と3’−水酸 基を近接させる)を連結することのできるRNA分子(真の酵素として)を見い だすことにある。 次の表記法を考慮されたい。Pで25量体のRNAの全て(全部で425ある) を表す。RNA配列σを有している場合、Pσは(5’)がσで始まるすべての 25量体のRNAである。例えば、PAはAで始まるすべての25量体のRNA (全部で424ある)であり、また、P'ACCUはACCUで始まるすべての25量 体のRNA(全部で421ある)である。 二つのDNAの50ヌクレオチド配列であるδ1とδ2、およびそれらを連結す るRNAを見つけ出すことを考慮されたい。{[BS]}においけるのと同様に 、すべての25量体(すなわち、Pで始まる)からなるRNAプールを作成する ことで始めることができる。次に、Pと、過剰量のδ1およびδ2を適当な緩衝液 中でインキュベートする。適当な時間が経過した後、δ1の5’末端とδ2の3’ 末端から 誘導されたプライマーを用いてPCR法を行う。こうして、δ1とδ2のどちらも 増幅されないが、それらの連結反応の生成物は増幅されるであろう。したがって 、もしPCR生成物が生成されない場合には、プールPには「ウィナー」が含ま れていないと宣言し、そのプールについての実験を中止する。もしPCR生成物 が生成されている場合には、プールPには「ウィナー」が含まれていたと宣言す る。この例示の目的のため、私たちは、時折起こるδ1とδ2の非触媒性の連結反 応のような「実際上の」問題を無視することにする。どのようにウィナーを見い だすか?次のとおり進める。次のステップで、PA、PC、PGおよびPUのそれぞ れを用いて、1度ずつ、上記の実験を4回繰り返す。 P=PA∪PC∪PG∪PU であるので、それらのうちの少なくとも一つ(そして、おそらく一つより多く) が「ウィナー」を含んでいるであろう。仮に、PCが「ウィナー」を含んでいる のであれば、その際、いくつかの「ウイナー」がCで開始することが分かる。次 に、PCA、PCC、PCGおよびPCUを用いてこの実験を繰り返す。また、少なくと も一つが「ウィナー」を含んでいるに違いない。PCAとすれば、いくつかの「ウ ィナー」がCAで始まることが分かる。このやり方を続けて、必要に応じて、い くつかの「ウィナー」の正確な配列が分かってくる。 この発明者は、充足性を決定するために多項式倍のアルゴリズムが存在するな らば、充足する真理割当て表を見つけだすために多項式倍のアルゴリズムが存在 する、ということを実証するために用いられる技術に、この技術が似ていること に気付いた。 一般の認めるところによると、これは相当な量の繰り返し作業である。それは 、プールの合成、インキュベーション、それにPCR の101ステップを必要とする。しかしながら、これらのステップの多くは、並 列して遂行することもできる。しかし、これらの101ものステップでは、425 (1000兆を超える)のRNAストリングがサーチされる。これは、もちろん 、充足性のような問題に対して応用される私たちの分子コンピュータで達成され た兼合い条件選択と同様の種類の事柄である。すなわち、それは、線形倍か指数 関数倍かの違いである。さらに、「最良の」ウィナーのみしか作用する機会がな いような「すなおでない」条件下でインキュベーションを行うことによって、例 えば[BS]でなされたような答えを「展開する」必要はなくなり、これにより 相当な時間が節約される筈である。また、RNAの場合には骨の折れることであ り、そして他の分子では不可能であるようなプールの要素に対して増幅を行う必 要は全くない。 4個の「塩基」RNAユニットの任意の組からの全長が25配列の要素からな るRNA(例えば、実施例で用いた単量体ではなく、4個の10量体)でそのプ ールが構成されているならば、同じようにこの方法がうまくゆくことは注目に値 する。所望されれば、このプールに含まれるRNAも、固定された定常領域を持 つことができる。 同様の技法が広範囲の種々の装置設定でもうまくゆくであろうことが明らかで あろう。RNA、DNAまたは他の形態の集合体でできたプールを使用する。「 ウィナー」の存在が検出される限り、連結反応であろうと何らかの他の作用であ ろうと望ましかった。 それで、この方法は、ウィナーの存在を検出する能力があれば、効率的にウィ ナーを同定するに至ることを実証している。第8実施例 前述の実施例では、アルファベットΣに亘る物質の多数組のチューブにおいて 行えるオペレーションについて記述した。この実施例では、遂行可能な追加のオ ペレーションについて記述する。 A)ランダム化 − 物質の入ったチューブTが与えられ、元の物質のランダ ム変形体である物質を持ったチューブを作る。 これは、例えば、付着剤の入った一次ストランドのチューブを分離温度にまで 加熱し、次いで、それを冷却することによって行うことができる。これによって 、すべての付着剤を分離し、ランダムにそれらが再アニールするようになる。こ のシステムは、ランダムオペレーションのために用いることができる。 複数の真理割当てを発生させることを必要とする前述の実施例を考慮されたい 。50の真理割当てがあると想定すると、250の状態が必要である。このことは 、250の一次ストランドを必要とする。これらのストランドは、例えば長さが5 00である。私たちは、それぞれの付着剤(長さが10)の249個のコピーを添 加したくなる。この比率によって、適正に結合している付着剤のすべてのとりう る組合せの可能性が最大になるであろう。 このシステムを加熱し、続いて冷却する。これにより、付着剤がランダム化さ れる。ランダム化のオペレーションを行うと、すべての所望の表現形が、統計的 多様性の限界まで得られる。 250の一次ストランドに対して正確に249の付着剤を添加することは困難であ ろう。一つのとりうる方法は、250の一次ストランドから開始することである。 その溶液の半分を取り、すべてのタイプの過剰量の付着剤とそれを混合する。こ れらの付着剤は、あらゆる位置で一次ストランドを飽和するようにアニールする 。次いで、こ の一次ストランドを残った付着剤から分離する。 未使用の一次ストランドの残りの半分を次いで添加し、ランダム化オペレーシ ョンを行うべく加熱する。 このランダム化オペレーションは、前記に記載した実施例の最初のストランド を調製するために用いることができる。 B)点変異(ポイントミューテーション)。点変異は、このプロセスにおいて 何らかの統計的な変化を許容するオペレーションである。この変化は、付着剤の あるものがそれぞれの一次ストランドから外れてくるようにすることで行われる 。 部分的なランダム化オペレーションは、ランダムに各一次ストランドから1個 から50個の付着剤が外れさせる。その後で、これらの付着剤は、ランダムに新 たな一次ストランドに付着することができる。したがって、それぞれの一次スト ランドは、数個の付着剤をランダムに失い、また数個の新しい付着剤をランダム に拾い上げる。これによって、酵素または複製を利用しない付着剤の変異が可能 になるとともに、発見的アルゴリズムの効率的な実行が可能になる。また、酵素 または複製を利用して、もしくは他の方法によって、ランダム性を作ることも可 能である。 このシステムの一つの重要な特徴は、弱く結合した付着剤を形成できることで ある。これらの弱く結合した付着剤には、一次ストランドから容易に分離させら れる点において標準の付着剤とは異なる付着剤が含まれている。例えば、これら の弱く結合した付着剤は、低温で、または別の塩濃度にすることで分離する。例 えば、弱く結合した付着剤は、ミスマッチを導入したり、長さを減少させたり、 またはホスホジエステル以外の骨格構造を用いることで作り出すことができる。 同様に、標準的な付着剤がよりしっかりと結合してい る系において、弱く結合した付着剤として、DNAオリゴ体を用いることができ る。例えば、標準の付着剤がもっと長いか、あるいは他の骨格構造である例えば ペプチド骨格構造を用いる場合である。これによって、弱い付着剤のみがランダ ム化され、通常の付着剤はその場所に残ったままになる。また、標準の、または より強く結合した付着剤をその場所に残したままで、弱い付着剤を全体的に除去 することも可能である。第9実施例 − データ表現およびデータ表現間の変換 上記の実施例では、分子を用いて、計算状態および記憶状態を含むデータの記 憶、並びにこれらのデータを表現する二つの異なったやり方について記載した。 第1実施例で記載したような「ストランド」表現は、一緒に保たれている分子 のストリングを用いて状態を表現している。溶液に含まれる分子の種類は、計算 と問題の現在状態を表現している。この表現法は、多くの利点、例えば種々の技 法によって分離できる能力や、PCR法によってクローニングできる能力を有し ている。 付着剤の表現法については、例えば第3実施例において説明されている。この 付着剤表現は、メモリに使えるし、または状態を表現するのに使える。このユニ ットの情報内容は、容易に変えることができるが、そのユニットをクローニング するための直接的技法はない。 これらのそれぞれの表現法によれば、異なるオペレーションを行わせることが 可能である。これらの表現法の一つと他の一つとの間 で情報を変えることが望ましいであろう。このシステムは、計算過程で両方の表 現法を使うことを容易化している。 この技法の好ましい実施例は、長さが500の一次ストランドで、概念的に5 0量体で構成されるストランドを用いて開始する。各50量体のブロックBiは 、Liiiと表現される。なお、ここで、Liは20量体、Miは10量体、そ してRiは20量体である。各ブロックBiは、付着剤Si=(Liii not )と関連させることができる。 計算の後で残っている分子のチューブには、一次ストランドとそれにくっつい たある小群(サブセット)の付着剤が含まれる。異なる複合体には、異なるサブ セットをくっつけてもよい。それぞれの付着剤Siは、この場合、新しい置換付 着剤のS’i=(LiM’ii not)と関連している。(M’i not)は 、(Mi not)とは無関係の10量体である。 そのチューブに過剰量の置換付着剤が加えられる。ここで、それぞれの複合体 における各ブロックBiは、SiまたはS’iのいずれかにくっつく。このブロッ クの条件は、このブロックがくっついたSiを当初持っていたか持っていなかっ たかに依存する。Siがくっついているブロックは、S’iを受け入れるないこと が明かである。 リガーゼを添加して、付着剤の配列を共有結合させ付着剤を置換して一つの二 次ストランドを形成する。次いで、一次ストランドを除去する。 これらの二次ストランドは、今や、それらが誘導されてきた元の付着剤ストラ ンドによって表現されていたのと同じ情報のストランド表現である。この対応性 は、もし二次ストランドが誘導されてきた元の複合体がBiに付着剤を有してい たならば、二次ストランドに おけるBiがMiを有していることを示している。もし二次ストランドが誘導され てきた元の複合体がBiに付着剤を有していなかったならば、二次ストランド上 のブロックBiは、M’iを有している。 これらの二次ストランドは、PCR法を用いてクローニングすることができ、 したがってこのストランド表現の利点を多く含んでいる。 代替実施例では、複合体の最初のチューブにポリメラーゼと過剰量のユニバー サルヌクレオチドモノマーを直ちに添加する。これらのユニバーサルヌクレオチ ドはATCGの全てを相補するものであり、したがって付着剤間の隙間を埋める 。 得られた二次ストランドは、今や一つのストランド表現になる。PCR法によ ってクローニングした場合、そのユニバーサルヌクレオチドは、他のヌクレオチ ドと置き換えられる。したがって、これらの位置には不要物があるが、位置Bi に付着剤を持っているはじめの複合体に対応するi番目のブロックに、Biの相 補体を見いだす確率が高い。 上記では、僅かに少数の実施例について詳細に記載したが、当業者は、それら の教えるところから離脱することなく、上記の好適な実施例において多くの改変 が可能であることを、もちろん理解できるであろう。 そのような改変の全ては、下記の請求の範囲内に包含されるものとの意図であ る。 例えば、ここに記載の分子、DNA、および他の物質は、この発明で応用し得 る可能物質の単なる例にすぎない。将来的には、分子生物学における研究が巨大 分子を操作する改良された技術を提供するであろう。化学における研究が合成デ ザイナー酵素の開発を可能 とするであろう。巨大分子に作用する酵素のリボソーム様集合体に複合化した一 個の巨大分子以外の何ものでもないものからなる汎用コンピュータが究極的に出 現することを想像することができよう。 DNAの一個の分子もまた、チューリングマシンの「瞬時記述」をエンコード するために用いることも可能である。現在利用可能なプロトコールおよび酵素は 、配列の修飾を順次連続的に誘導するために用いることができ、このことはその 機械の実行に対応する。 小さい分離時間τのコンピュータを構築することが、非常に望ましい。この点 について記載された設計における問題の一つは、「分離」がチューブの外部から 行われる概して機械的なプロセスであることにある。ここで用いたものとは異な る「原始的要素」をおそらく用いて、分子コンピュータを設計することができ、 それは一個のチューブの内部で純粋な化学的手段によってタスクを達成するもの であろう。 制限された計算モデルでは、併合、分離および検出のみを要求しているので、 他の物理的なシステムにより具体化がもたらされよう。例えば、これらの全ての オペレーションのうちのいくつかの形態は、質量または電荷によりなされる分離 法を用いた加速装置内で移動する原子の粒子または原子よりも小さい粒子使用し て、可能のようである。 単一の分子が、Eigen他の「Sorting single molecules...」,PNAS 91:5740-5 747(June 21,1994)に記載されているように、蛍光リガンドを用いてそれらを ラベルすることによって、溶液中で検出することができる。物理学者もまた、ニ ュートリノを検出する場合、巨大容積の空間内における単一の原子下の事象を検 出する方法を決定している。これは、ここの検出オペレーションにも用いること が できる。 分子コンピュータは、また、記述オペレーション(a Describe operation)を 用いることもできる。概略すると、分子がエンコードするシンボルの組の中にそ の分子をデコードして戻す。例えば、命題式φが充足性を有するか有しないかを 決定するのに、分子コンピュータが、もしあるなら、充足する心理割当てをエン コードする分子を含む一本のチューブを作製すればよい。人は、少なくとも一つ が存在するということを知るだけよりも、むしろ一つのそのような心理割当てに ついての明白な説明を聞く方を望むであろう。したがって、チューブから分子を 取り出して、それを記述することが要求されるであろう。このオペレーションは 、分子生物学の周知の方法(例えば、配列決定法)により、DNAコンピュータ において実行可能であろう。しかしながら、限定された分子コンピュータのあら ゆる具体化においてそれが実際に実行可能であることは、注目に値する。このシ ステムのアルファベットを{s1,...,sz}とすれば、一本のチューブTに 含まれる単一の分子を記述するために、次のプログラムを使用することができる 。 たとえ、それぞれが異なるセットのシンボルをエンコードする多くの異なる分 子をTが含んでいたとしても、上記のプログラムは正にそれらの一つについての 明白な記述を与えるものであろう。
【手続補正書】 【提出日】平成10年3月20日(1998.3.20) 【補正内容】 【図1】 【図2】 【図3】【図4】 【図5】【図6】【図7】【手続補正書】 【提出日】平成12年1月19日(2000.1.19) 【補正内容】2 ,...,bn}に関する集合体の複数組である。 以下の機能を定義する。 1.分離。試験管Tと記号sεΣが与えられ、二つの試験管+(T、S)と− (T、S)を作りだす。なお、+(T、S)は、記号sを含有するTの集合体の 全てであり、かつ−(T、S)、記号sを含有していないTの集合体の全てであ る。 2.併合。n個の試験管T1、T2が与えられ、むすびの集合:∪(T1,T2) を構成する。ここで、∪(T1,T2)=T1∪T2である。 3.検出。試験管Tが与えられ、Tに少なくとも一つの集合体が入っていると き「yes」といい、そして入ってないとき「no」という。 4.フリップ(flip)。 (a)試験管Tと記号ai∈Σが与えられ、新しい試験管Tai={αa i|α∈ T}を生成する。なお、全てのα⊂Σに対し、a −{ai})∪{bi}である。 (b)試験管Tと記号bi∈Σが与えられ、新しい試験管Tb i={αb i|α∈ T}を生成する。なお、全てのα⊂Σに対し、b −{bi})∪{ai}である。 したがって、上記のフリップ動作は、ai(bi)が入っている全ての集合体に おいて、aiからbiへ(aiからbiへ)切り換える。 i=1,2,...,n} したがって、各ロケーションlは、メモリ要素のように作用する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S Z,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD ,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CZ, DE,DK,EE,ES,FI,GB,GE,HU,I S,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN, MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,S D,SE,SG,SI,SK,TJ,TM,TR,TT ,UA,UG,UZ,VN

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.分子配列を使用して計算を実行する方法であって、 複数の異なる分子配列を入手することと、 分子が計算に対する解を表す要領で、計算に対する一組の可能な解に前記複数 の異なる分子配列を関連づけて、前記一組の可能な解が問題に対する可能な解を 表させることと、 前記複数の分子配列全てに対して化学的プロセスを実行して、前記化学プロセ スによって分子配列が所望の結果を表す確率を高めること を備えてなる方法。 2.請求項1に記載の方法において、 前記分子配列がDNAである ことを特徴とする方法。 3.請求項1に記載の方法において、 前記計算は正しい解と間違った解を有していて、 さらに、前記間違った解を表す少なくとも一つの特徴を持つ前記分子配列を決 定することを含み、 かつ前記化学的ふろを実行することには、前記少なくとも一つの特徴を持つ前 記分子配列を除去することを含む ことを特徴とする方法。 4.請求項1に記載の方法において、 前記分子配列は、異なる位置に異なる分子を有する分子のストラ ンドである ことを特徴とする方法。 5.請求項1に記載の方法において、 前記分子配列は、特定の位置に特定の化学的結合をした種を持つ基本骨格の配 列である ことを特徴とする方法。 6.計算媒体としてDNAを使用する計算方法であって、 複数の第1のDNA分子を提供することと、 複数の第1のDNA分子を複数の状態に割り当て、該状態が問題を解くために 結合することのできる一組の片を含むことと DNA分子に反応媒体を添加し、その反応媒体が前記DNA分子を選択的につ なぎ合わせて複数のランダムに形成された第2DNA分子をランダムに形成する ことと、 予め決められた基準に従って適切な解を表さない第2DNA分子配列を除去す るために、前記第2DNA分子に対して少なくとも一つの手順を実行することと 、 前記少なくとも一つの手順の後で残っているDNA分子を樹立させて、問題に 対する結果をより確率高く表わすようにすること 含んでなる方法。 7.請求項1に記載の方法において、 前記第2DNA分子配列が問題に対する全ての解の完全な組を統計的に適切に 含むユニバースを備えてなるように、十分な数の前記第1DNA分子配列を用意 する ことを特徴とする方法。 8.請求項6に記載の方法において、 前記少なくとも一つの化学に基づいたオペレーションが、所定の特性を持つ第 2DNA分子をその所定の特徴を持たない他のDNA分子から分離ことを含むも のである ことを特徴とする方法。 9.請求項6に記載の方法において、 前記少なくとも一つの化学に基づいたオペレーションが、ある特性を有するD NA分子のみを増幅し、当該ある特性有しないDNA分子を増幅しないことを含 むものである ことを特徴とする方法。 10.請求項8に記載の方法において、 前記分離が、所定の特性を有する第2DNA分子を磁気ビーズに付けることに よってなされる ことを特徴とする方法。 11.請求項8に記載の方法において、 前記分離が、ゲル電気泳動およびそれに続いて行う得られたバンドの分離によ ってなされる ことを特徴とする方法。 12.請求項6に記載の方法において、 さらに、第2DNA分子の所定の位置に付着剤を付けることを含 み、該付着剤が生じたオペレーションのある特性を表示する ことを特徴とする。 13.請求項9に記載の方法において、 さらに、所定の位置に所定の付着剤を持つDNA分子を、前記所定の位置に前 記所定の付着剤を持たないDNA分子から分離すること含む ことを特徴とする方法。 14.計算を実行するために分子を用いて複雑な問題を解く方法であって、 前記問題を複数の観点に分離し、そのそれぞれの観点が前記問題に対する一部 分の解を含むことと、 許容できる物質のアルファベット、および前記アルファベットから形成された 複数物質のユニバースを定義し、前記物質のユニバーサスはそれぞれ異なる状態 を有する複数の物質を含み、前記状態は互いに化学的に区別することのできるも のであることと、 ランダムに前記分子配列を組み合わせることによって、複数の組合せ物質を用 意し、前記物質が前記物質間の可能な接続を表し、それによりその問題に対する 可能な解を表すことと、 前記問題に対する適正な解を求めるための少なくとも一つの化学的手順を決定 し、前記少なくとも一つの化学的手順は、その物質が問題に対する正しい解を表 わす確率を高めるようにする要領で、前記物質を変えることと、 前記テストの後に残った物質を処理し、問題に対する見込みある解にすること を含んでなる方法。 15.前記結合した物質が、課題に対する全てのとりうる解を意味する全てのと りうる状態を表示することが統計的に見込まれている全ての結合した物質の母集 団を表していて、かつ前記処理工程が、前記変化工程によって残った物質を確認 する工程、及び操作工程からの間違いを表示しない少なくともいくつかの物質を 排除するための間違い−削減操作を行う工程を含むことを特徴とする請求項14 に記載の方法。 16.前記間違い削減操作が、不適切な物質が変化操作によって溶液から除去さ れることが確実になるように前記変化操作を繰り返す工程を含むことを特徴とす る請求項15に記載の方法。 17.前記間違い削減操作が、前記見込みのある解を意味する物質を確認する工 程、それが表す解を確認する工程、及びその解が正しいことを証明する電子コン ピュータを用いる工程を含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。 18.前記物質が、少なくとも一つの開始及び終了の配列を含むことを特徴とす る請求項14に記載の方法。 19.解決すべき前記課題は、NP完全であることを特徴とする請求項14に記 載の方法。 20.次の工程を含むことを特徴とする分子コンピュータを用いて コンピュータ計算する方法。 複数の分子を入手する工程であって、その複数の分子が課題に対してとりうる 解を含む母集団を含むことを特徴とする工程、 前記分子の母集団に対して少なくとも一つの化学反応を行う工程であって、前 記反応は適切な解を意味しない分子を除去する反応である工程、及び 望ましい結果が得られるまで分子の除去を続けるために別の化学反応を反復し て行う工程。 21.前記化学反応の間違いを減少させるために間違い削減工程をさらに含むこ とを特徴とする請求項20に記載の方法。 22.前記間違い削減が、前記化学反応の間違いを最小にするために複数回その 化学反応を繰り返すことを特徴とする請求項21に記載の方法。 23.前記間違い削減が、負の結果が間違って得られる確率と正の結果が間違っ て得られる確率とが等しくなる最初の工程を含むことを特徴とする請求項22に 記載の方法。 24.前記間違い削減が、適切な回答を表す分子を確認する工程、前記適切な回 答分子が表す解を確認する工程、及びその解が正しいことを証明する電子コンピ ュータを用いる工程を含むことを特徴とする請求項23に記載の方法。 25.次の構成を含むことを特徴とする分子コンピュータ。 分子の第1容器であって、その分子の第1容器は内部に異なる化学的特徴を有 する複数の分子を収容しており、また前記複数の分子のそれぞれは課題に対して とりうる解のいくつかの観点を示す表示を含むことを特徴とする第1容器、 第1分子処理装置であって、その第1分子処理装置は前記第1容器から確かな 化学的特徴を持つ分子を除去する要素を含む装置であり、前記確かな化学的特徴 は前記分子がその課題に対して適切な解であるかどうかに関連するいくつかの観 点を示す特徴であることを特徴とする第1分子処理装置、及び 第1容器に残っていて、その課題に対する解を決定するために特徴を用いる分 子のその特徴を決定するために、第1容器に含まれる分子をモニターする分析手 段。 26.前記第1分子処理装置は電気泳動分離手段であることを特徴とする請求項 25に記載のコンピュータ。 27.前記第1分子処理装置は、目的の分子を増幅し、これにより効果的に望ま しくない分子を希釈する増幅装置であることを特徴とする請求項25に記載のコ ンピュータ。 28.前記増幅装置は、PCR装置であることを特徴とする請求項27に記載の コンピュータ。 29.前記複数の分子が次の工程によって形成されることを特徴とする請求項2 5に記載のコンピュータ。 とりうる解の部分を示す分子を得る工程、 前記最初の解の部分を他の部分に結合するとともに一緒に保持する補充の分子 を得る工程、及び 全ての部分が全ての補充物と満足のゆくほど適切に結合して全てのとりうる解 を形成するように、前記部分と前記補充物を解に結合する工程。 30.次の工程を含むことを特徴とするコンピュータの計算結果を得る方法。 課題を決定する工程、及び解を形成するために結合することができる前記課題 の部分を決定する工程、 複数の物質を入手する工程及び特定の部分に物質を割り当てる工程、 前記物質のカップリング試薬を入手する工程であって、前記カップリング試薬 は、一部分を表す物質のどれかを、前記一つの種にカップリングすることが可能 な許容できる部分を表す他のどれかの物質と一緒に結合させる能力を持っている 試薬であることを特徴とする工程、及び 溶液中で前記カップリング試薬を用いて前記物質を結合させることによって、 複数のとりうる解を表す物質の結合体をその溶液中に提供する工程。 31.溶液中で物質の特徴に基づいて追加の操作を行うことによって、間違った 解を表す全ての物質をその溶液から除去する工程を含むことを特徴とする請求項 30に記載の方法。 32.前記物質がDNA分子であることを特徴とする請求項31に 記載の方法。 33.前記追加の操作は、目的の分子を再生産するためのポリメラーゼ連鎖反応 を含むことを特徴とする請求項30に記載の方法。 34.前記除去工程は、大きさに基づいて電気泳動により物質をグループに分け る工程、及び大きさに基づいて選択された物質を摘出する工程を含むことを特徴 とする請求項31に記載の方法。 35.次の構成を含むことを特徴とする分子反応に基づいて計算を行うコンピュ ータ。 それぞれの容器に配置した複数の異なる種類の物質、 その物質についての複数の異なる種類の反応機構であって、その反応機構のそ れぞれは、ある物質との反応で選択性を持つようにする機構からなり、 第1の位置から第2の位置に物質の容器が移動するように作用する複数の移動 手段、 電子的計算手段であって、その電子気的計算手段は前記移動手段を制御するた め及び作業の所定の配列にしたがって前記移動手段の位置を制御するために作用 し、前記作用の所定の配列は所定の特徴を持たない物質から所定の特徴を持つ物 質を分離する第1作業を行うために分子処理手段を用い、その所定の特徴は解決 すべき課題に関連するものであり、そしてその分離工程は分離された物質を課題 に対する回答のより適切な指標であるようにする工程であることを特徴とする電 子的計算手段。 36.前記電子的計算手段は、前記第1作業の後で前記試験管内の物質を調べる ために作用する構造であって、前記物質をそれらの回答に割り当てるため及び回 答が正しいことを検出すべく前記回答をテストするための構造も含むことを特徴 とする請求項35に記載のコンピュータ。 37.前記物質は、ある化学物質にのみステッカーが付く磁気ビーズを含む要素 を処理することを特徴とする請求項35に記載のコンピュータ。 38.前記物質分離手段は、ゲル電気泳動及び分離システムを含むことを特徴と する請求項35に記載のコンピュータ。 39.前記物質は第1のマーカーを受け入れる部分を含んでおり、そのマーカー はマーカーを含むかあるいはマーカーを持っていないいずれかの部分を受け入れ 、前記物質処理手段の一つはマーカーを添加するための手段であり、前記物質処 理手段のもう一つは特定の位置におけるマーカーの存在を検出するための手段で あることを特徴とする請求項34に記載のコンピュータ。 40.前記物質は、非−マーカー部分の化学的性質を決定する強い結合部分と、 マーカー部分の化学的性質を決定する弱い結合部分を含んでいることを特徴とす る請求項39に記載のコンピュータ。 41.物質の前記弱い結合の部分を物質の強い結合の部分から除去できることを 特徴とする請求項40に記載のコンピュータ。 42.次の工程を含むことを特徴とする物質を用いてコンピュータ計算を行う方 法。 複数の物質を入手する工程、 異なる解または課題に対する解のセットに物質を割り当てる工程、 前記物質のセットを課題に対する回答により適当に対応させるそのセットにつ いて、分子関数を行う工程。 43.前記反応工程を解だけが残るまで繰り返す工程をさらに含むことを特徴と する請求項42に記載の方法。 44.前記物質がDNA物質であることを特徴とする請求項42に記載の方法。 45.前記物質をそれが行った反応のいくつかの観点を示す様式に形成する工程 を更に含むことを特徴とする請求項42に記載の方法。 46.前記形成工程は、物質の特定の位置にステッカーを付与することによって 行われることを特徴とする請求項45に記載の方法。 47.前記ステッカーは、その物質が作られたいくつかの他の反応よりも弱い結 合であることを特徴とする請求項46に記載の方法。 48.次の工程を含むことを特徴とする分子を用いてコンピュータ計算を行う方 法。 異なる特徴を持つ複数の分子を入手する工程、 その分子のそれぞれを課題の異なる観点と関連づける工程、 前記複数の分子に対していくつかの操作を行うことにより、課題をより適切に 解決できるようにする様式に異なる特徴を持つ前記の異なる分子の間の比率を変 える工程、及び このような分離された分子のいくつかの観点をマークすることにより前記反応 を示す工程。 49.次の工程を含むことを特徴とする物質を用いてコンピュータ計算を行う方 法。 複数の異なる物質を入手する工程、 前記複数の異なる物質がコンピュータ計算に解を示すように、その複数の異な る物質をコンピュータ計算に対してとりうる結果のセットに関連づける工程、及 び 前記複数の物質を修飾するためにその物質に対して処理を行う工程であって、 その工程はその物質が望ましい結果を示すことがより見込まれるようにする工程 であることを特徴とする工程。
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