JP2001511344A - 転写因子Brn−3aの使用 - Google Patents

転写因子Brn−3aの使用

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JP2001511344A
JP2001511344A JP2000504246A JP2000504246A JP2001511344A JP 2001511344 A JP2001511344 A JP 2001511344A JP 2000504246 A JP2000504246 A JP 2000504246A JP 2000504246 A JP2000504246 A JP 2000504246A JP 2001511344 A JP2001511344 A JP 2001511344A
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スミス・マーティン・ダミアン
ラッチマン・デビッド・セイマー
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ニューロヴェックス リミテッド
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、ヒトまたは動物の身体を療法によって治療する方法に使用するための、転写因子Brn-3aまたはその誘導体を含むポリペプチドを提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (技術分野) 本発明は転写因子Brn-3aおよびその誘導体の使用に関する。
【0002】 (背景技術) 神経系が正常に発生していく間に、最初に形成される神経細胞のうち、かなり
の部分がプログラムされた死、すなわちアポトーシスを受ける。このような細胞
死は神経系の正常な発生に必須であり、また細胞がエネルギー依存的な方法で効
果的な自殺をとげる活性なプロセスである。したがって、このような細胞死は毒
性または有害作用物質によって誘導される壊死性の死滅(このような死は発生し
つつある神経系では通常起こらない)とは区別される。
【0003】 過剰な細胞死は正常な発生に必須であるが、それは多くのヒト神経性疾患の特
徴でもある。したがって、家族性自律神経障害または小児脊髄性筋萎縮などのい
くつかの遺伝性疾患は、その発症の際にプログラムされた細胞死の増大を伴い、
その結果、残る特定の神経細胞型の数が少なくなる。同様に、進行性の神経細胞
死の増大は、筋萎縮性側索硬化(運動ニューロン疾患)および遅発性神経退化性
疾患(アルツハイマー病、パーキンソン病など)の特徴である。これらの疾患で
は神経細胞死が発達する進行性神経病巣に関与している。
【0004】 正常な発生、および先天性または慢性疾患において役割を果たすと共に、プロ
グラムされた細胞死は急性損傷に対する神経系の応答にも関与している。したが
って、例えば脊髄に損傷を受けると、多数の神経細胞の壊死による最初の死に続
いて、アポトーシスの波が押し寄せ、さらなる神経細胞の死をもたらす。このよ
うにして多数の神経細胞が失われることと、残った神経細胞が軸索を再生できな
いことが結びついて、損傷領域より下の部分が永久に麻痺したヒト脊髄損傷患者
がこうむる運動および感覚傷害をもたらす。したがって、プログラムされた細胞
死は神経系の先天性、急性および慢性疾患において重要な役割を果たす。それゆ
え、このプロセスの作用機構を理解すること、特にこのプロセスを制御し、操作
する手段の同定は、そのような疾患を治療する新しい方法を開発するうえで非常
に価値がある。
【0005】 転写因子のBrn-3 ファミリーの3つのメンバー、すなわちBrn-3a、Brn-3bおよ
びBrn-3cは、発生しつつある神経系および成熟した神経系において、別個である
が互いにオーバーラップする神経細胞のセット中に発現される(Fedtsovaら,199
6)。Brn-3a、Brn-3bおよびBrn-3cは、哺乳動物転写因子Pit-1、Oct-1およびOct-
2 ならびに線虫転写因子Unc-86に見いだされる共通のDNA結合POUドメインに基づ
いて最初に規定された転写因子POU (Pit-Oct-Unc) ファミリーのメンバーである
。このファミリーのもとのメンバーは、特定の神経細胞型の発生に重要な役割を
果たすことが知られている。Pit-1因子は下垂体の発生に必須であり、またunc-8
6突然変異は線虫において特定の神経細胞型の不在をもたらす。マウスの神経発 生においてBrn-3の3つのアイソフォーム(isoform)の全てが示差的に発現される
という観察は、神経分化の際に起こる表現型変化の調節におけるこれらのタンパ
ク質の役割を示唆する。
【0006】 Brn-3a、Brn-3bおよびBrn-3cは、DNA結合POUドメイン内で相互に密接な相同を
示すが、このドメインの外では相同性は大幅に低下し、そして3つの異なる遺伝
子によってコードされている(Theilら,1993および1994)。Brn-3aは2つの異な るスプライス変異型(splice variant)として発現される。短型Brn-3aSは、全長 型Brn-3aLのN末端の84アミノ酸を欠いている。
【0007】 (発明の開示) 本発明は、転写因子Brn-3aの過剰発現は神経細胞をアポトーシスから保護する
ことができるという我々の発見に基づいている。我々はまた、Brn-3aが神経細胞
におけるBcl-2遺伝子の発現を特異的に活性化すること、およびこの活性化がBcl
-2遺伝子の5'調節領域に存在するBrn-3a応答エレメントによって媒介されること
を示した。重要なことに、我々のデータは、Brn-3aの抗アポトーシス効果および
Bcl-2の発現を活性化するBrn-3aの能力の両方が、全長型Brn-3aLには存在するが
末端切断型Brn-3aSには存在しないN末端ドメインによって媒介されているよう であることを示している。
【0008】 Bcl-2、Bcl-xL、BadおよびBaxを含むBcl-2ファミリーのメンバーは、神経系の
発生時における選択的アポトーシスの調節に決定的な役割を果たす。Brn-3aによ
る神経細胞特異的なBcl-2発現の刺激、およびその結果としての神経細胞のアポ トーシスからの保護は、発生の間および損傷を受けた後における神経細胞再構成
の幾つかの側面をBrn-3aが調整するのかもしれないことを示唆している。したが
って、薬理学的療法または遺伝子療法によってBrn-3a発現を増大させることは、
過剰な神経細胞死および/または神経再生の欠如を伴うヒト疾患を治療するため
の可能性のある方法である。
【0009】 したがって、本発明はヒトまたは動物の身体を療法によって治療する方法に使
用するための、転写因子Brn-3aまたはその誘導体を含むポリペプチドを提供する
。好ましくは、Brn-3aの誘導体はBrn-3aの全長型のN末端断片、より好ましくは
N末端の84アミノ酸を含む。より好ましくは、上記誘導体は、抗アポトーシス活
性を有するが、神経突起の伸び出し(outgrowth)を刺激する活性を有しない。
【0010】 本発明はさらに、ヒトまたは動物の身体を療法によって治療する方法に使用す
るための上記Brn-3aまたはその誘導体をコードするポリヌクレオチドを提供する
。本発明はまた、Brn-3aまたはその誘導体の宿主細胞における発現を可能とする
調節配列と機能しうる形で連結されている、Brn-3aまたはその誘導体をコードす
るポリヌクレオチドを含む核酸ベクターを提供する。好ましくは、上記宿主細胞
は動物、より好ましくは哺乳動物(ヒトおよび霊長類の動物を含む)の中枢また
は末梢神経系の細胞である
【0011】 本発明の核酸ベクターは、上記ポリヌクレオチドの哺乳動物細胞ゲノムへの相
同組換えによる導入を可能とするため、上記ポリヌクレオチドおよび調節配列の
両側に哺乳動物ゲノム配列をも含むことができる。好ましくは、これらの哺乳動
物ゲノム配列はヒトゲノムに由来するものである。本発明のベクターはまた、上
記Brn-3aまたはその誘導体をコードするポリヌクレオチドを含むウイルス株の構
築を可能とするために、上記ポリヌクレオチドおよび調節配列の両側にウイルス
ゲノム配列を含むことができる。好ましくは、これらのウイルスゲノム配列は単
純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus)のゲノムに由来するものである。
【0012】 したがって本発明はさらに、Brn-3aまたはその誘導体の宿主細胞における発現
を可能とする調節配列に機能しうる形で連結されている、Brn-3aまたはその誘導
体をコードするポリヌクレオチドを含む、ヒトまたは動物の身体を療法によって
治療する方法に使用するためのウイルス株を提供する。好ましくは、上記ウイル
ス株は単純ヘルペスウイルスである。
【0013】 本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたはウイルス株の宿主細胞への送達は
、それらをトランスフェクション作用物質と組み合わせることによって増大させ
ることができる。そのようなトランスフェクション作用物質としては、カチオン
性作用物質(例えばリン酸カルシウムおよびDEAE-デキストラン)およびリポソ ーム組成物(例えばLipofectinTMおよびTransfectamTM)が挙げられる。したが って、本発明はまた本発明のポリヌクレオチド、ベクターまたはウイルス株をト
ランスフェクション作用物質と共に含む、ヒトまたは動物の身体を療法によって
治療する方法に使用するための組成物を提供する。
【0014】 神経退行性疾患および神経損傷の治療は、付加的な治療用ポリペプチドの投与
を必要とするかもしれない。例えば、神経成長因子(NGF)、毛様体神経栄養因子(
CNTF)、脳由来神経栄養因子(BNTF)およびニューロトロフィン(NT-3、NT-4/5等)
を含む神経栄養因子は、パーキンソン病の治療剤として可能性を有する。したが
って本発明は、本発明のポリペプチドおよび少なくとも1つの他の治療用ポリペ
プチドを含む、ヒトまたは動物の身体を療法によって治療する方法に使用するた
めの組成物を提供する。
【0015】 上記治療用ポリペプチドは、該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの
形で投与してもよいし、また該ポリヌクレオチドは、Brn-3aまたはその誘導体を
コードするポリヌクレオチドと同じ方法で核酸ベクターまたはウイルス株の一部
を形成してもよい。
【0016】 本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ウイルス株および組成
物を用いて治療することができる疾患は、神経退行性疾患および傷害/外傷の結
果としての神経組織の損傷、等の末梢または中枢神経系の疾患である。特に、神
経退行性疾患は運動ニューロン疾患、いくつかの遺伝性疾患(家族性自律神経障
害または小児脊髄性筋萎縮など)および遅発性神経退化性疾患(パーキンソン病
、アルツハイマー病など)を含む。
【0017】 本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ウイルス株および組成
物は、特にヒトまたは動物の末梢または中枢神経系の細胞におけるアポトーシス
を阻止するために、および/または損傷(典型的には傷害による)を受けた後の
神経再生を促進するために用いることができる。
【0018】 (発明を実施するための最良の形態) A.ポリペプチド 本発明のポリペプチドは、転写因子Brn-3aおよびその誘導体を含む。Brn-3aの
ヒト型およびマウス型の両方がクローン化され、それらのヌクレオチドおよびア
ミノ酸配列が決定されている。ヒトBrn-3a配列はXiangら, 1995に公表されてお り(GenBank受託番号 U10062/U10063/U09783)、配列番号1および2にそれらを示
す。マウスBrn-3aの配列はTheilら,1994に公表されており(GenBank受託番号 S6
9350)、配列番号3および4にそれらを示す(配列番号3ではイントロンは除か れている)。
【0019】 したがって、本発明のポリペプチドは配列番号2または4に示すアミノ酸配列
または実質的にそれに相同な配列、またはこれらの配列のどちらかの断片を含む
。一般に、配列番号2および4にそれぞれ示す、天然に存在するヒトまたはマウ
スBrn-3aアミノ酸配列が好ましい。しかし、本発明のポリペプチドは天然のヒト
またはマウスBrn-3a配列の誘導体を含む。「誘導体」という用語は、配列番号2
および4に示すヒトまたはマウスBrn-3a配列に実質的相同性を有する全ての相同
体および対立遺伝子変異型を含むものと解される。この用語はまた、配列番号2
および4に示すヒトまたはマウスBrn-3a配列、ならびにそれらの相同体および対
立遺伝子変異型の抗アポトーシス活性を有する断片をも含むものと解される。特
に、好ましい誘導体は、マウスBrn-3aまたはヒトBrn-3aの全長スプライス変異型
に存在するN末端84アミノ酸(マウス:配列番号3のヌクレオチド1から234に よってコードされる配列番号4のアミノ酸1から84)(ヒト:配列番号1のヌク
レオチド1から234によってコードされる配列番号2のアミノ酸1から84)に実 質的相同性を有するアミノ酸配列を含む。マウスおよびヒトBrn-3aのN末端の98
アミノ酸は同一であり、それに続く37残基に(すなわちアミノ酸135に至までに )ただ1つの相違があるのみであることに注意すべきである。Brn-3aのN末端領
域はマウスとヒトの間で高度に保存されている。
【0020】 対立遺伝子変異型とは、ヒトまたはマウスにおいて天然に存在し、そして配列
番号2または4のポリペプチドに実質的に類似した様式で機能する変異型である
。特に、対立遺伝子変異型は抗アポトーシス活性を有する。同様に、上記タンパ
ク質の種相同体とは、別の種において天然に存在する機能的に等価なポリペプチ
ドである。そのような相同体は、哺乳動物(例えばラットまたはウサギ)等の動
物、特に霊長類に存在しうる。任意の1つの種の中で、相同体はいくつかの対立
遺伝子変異型として存在しうる。そしてこれらの変異型は配列番号2および4の
タンパク質の相同体であると見なされる。
【0021】 対立遺伝子変異型および種相同体は、標準的な方法を用いて得ることができる
。特に、Brn-3aヌクレオチド配列を用いて、哺乳動物細胞から作製したライブラ
リーを釣り上げ、対立遺伝子変異型または種変異型をコードするクローンを得る
ことができる。これらのクローンを通常の技法で操作して本発明のポリペプチド
を同定し、次にこのポリペプチドを公知の組換えまたは合成技法によって産生す
ることができる。好ましい種相同体は、霊長類動物の種相同体を含む。
【0022】 配列番号2もしくは4のポリペプチドに少なくとも70%相同なタンパク質、ま
たは該ポリペプチドの対立遺伝子変異型もしくは種相同体は、少なくとも20個、
好ましくは少なくとも30個、例えば少なくとも40個、60個または100個またはそ れ以上の連続したアミノ酸の領域にわたって、好ましくは少なくとも80または90
%、より好ましくは少なくとも95%、97%または99%該ポリペプチドに相同であ
る。特に対立遺伝子変異型または種相同体は、少なくとも40個、60個または100 個の連続するアミノ酸からなるN末端ドメインにわたって少なくとも90%、95%
、97%または99%相同である。タンパク質の相同性の測定方法は当技術分野で周
知であり、当業者にはこのような関係においては相同性はアミノ酸同一性(「ハ
ードホモロジー(hard homology)」とも言われる)に基づいて計算されることが 理解されるであろう。
【0023】 配列番号2および4のポリペプチドの配列、ならびに対立遺伝子変異型および
種相同体の配列を改変して本発明のポリペプチドを提供することができる。改変
されたポリペプチドが抗アポトーシス活性を保持するならば、アミノ酸置換は例
えば1、2または3から10、20または30個まで行うことができる。
【0024】 同類置換は、例えば下記の表にしたがって行うことができる。第2欄の同一ブ
ロック内のアミノ酸、好ましくは第3欄の同一線上のアミノ酸を相互に置換する
ことができる。
【0025】 本発明のポリペプチドの誘導体は、好ましくは神経突起の伸び出し(outgrowth
) を刺激する活性をも有する。我々はこの活性が主としてC末端DNA結合POUドメ
インに位置することを示した。したがって、本発明のポリペプチドは、好ましく
はヒトまたはマウスBrn-3aのC末端DNA結合POUドメインに実質的相同性を有する
ドメインを含み、より好ましくは配列番号2または4に示す配列のおおよそアミ
ノ酸302から416までを含む。
【0026】
【表1】 脂肪族 非極性 GAP ILV 極性−非荷電 CSTM NQ 極性−荷電 DE KR 芳香族 HFWY
【0027】 我々はまた、Brn-3aのN末端ドメインおよびC末端ドメインにおける特定の突
然変異は、Brn-3aの抗アポトーシス活性および神経突起の伸び出しを刺激する活
性をそれぞれ消滅させうることを示した。したがって、置換、挿入および欠失を
含む突然変異誘発技法によってこれらの活性のうち1つを欠くポリペプチドを調
製することが可能である。特に、マウスBrn-3aのホメオドメインの第22位(配列
番号4の残基380;配列番号2の残基378に相当する)でバリンをイソロイシンに
置換すると、Brn-3aの神経突起の伸び出しを刺激する活性を重大に低下させる。
これは、Brn-3aのC末端ドメインをこれに相当するBrn-3bのC末端ドメイン(ホ
メオドメインの第22位にバリン残基の代わりにイソロイシン残基を有する)と置
換することによっても達成できる。さらに、全長スプライス変異型には存在する
が短い変異型には存在しないBrn-3aのN末端ドメインを欠失させることは、Brn-
3aのアポトーシスを抑制する能力を消滅させる。または、Brn-3aのN末端ドメイ
ンをbcl-2遺伝子のプロモーター領域に結合できる異種DNA結合ドメイン(典型的
にはPOUドメイン)に融合させることによって、抗アポトーシス活性を有するが 神経突起の伸び出しを刺激する活性を有しないBrn-3aの誘導体を作製することが
できる。このような融合タンパク質の作製および試験は分子生物学の通常の技法
を用いて実施することができる。
【0028】 したがって、本発明のポリペプチドは、神経突起の伸び出しを刺激できる、ま
たはアポトーシスを抑制できる、またはその両方ができる種々の治療用試薬の調
製に用いることが可能である。好ましくは、本発明のポリペプチドは神経細胞中
で、より好ましくは感覚または運動ニューロン中で、その効果を特異的に発揮す
る。
【0029】 本発明のポリペプチドは実質的に単離された形で存在しうる。このポリペプチ
ドを該ポリペプチドの意図された目的を妨げない担体または希釈剤と混合しても
、なお実質的に単離されていると見なされることが理解されるであろう。本発明
のポリペプチドは実質的に精製された形で存在することも可能である。この場合
、そのような形は一般に、調製物中のポリペプチドの90%以上(例えば95%、98
%または99%)が本発明のポリペプチドである調製物の形をとる。
【0030】 本発明のポリペプチドは、合成手段によって、または当業者に周知の技法を組
換え的に用いて作製することができる。
【0031】 本発明のポリペプチドをin vitroまたはin vivo細胞培養系に用いて、Brn-3a の役割および疾患におけるその相同体を研究することができる。例えば、末端切
断型または改変Brn-3aを細胞に導入し、その細胞に存在する正常な機能を破壊す
ることができる。本発明のポリペプチドは、組換え発現ベクター(下記参照)か
らの該ポリペプチドのin situ発現によって細胞に導入することができる。場合 により、この発現ベクターは該ポリペプチドの発現を制御する誘導プロモーター
を担持する。
【0032】 哺乳動物宿主細胞の使用は、本発明の組換え発現産物に最適な生物学的活性を
付与するのに必要な翻訳後修飾(例えば、ミリストイル化、グリコシル化、末端
切断、ラピデーション(lapidation)およびチロシン、セリンまたはトレオニンリ
ン酸化)を提供することが期待される。本発明のポリペプチドが発現される細胞
培養系をアッセイ系に用いて、細胞中における本発明のポリペプチドの機能を妨
げる、または増大させる候補物質を同定することができる。
【0033】 B.抗アポトーシス活性および神経突起の伸び出しを刺激する活性のアッセイ 下記のアッセイ方法を用いて、上記の誘導体を抗アポトーシス活性および神経
突起の伸び出しを刺激する活性について試験することができる。
【0034】 抗アポトーシス活性 Brn-3aの誘導体がアポトーシスを抑制するかどうかを決定するモデル系として
、典型的にはND7細胞を用いることができる。場合によりレチノイン酸(RA)を含 む無血清培地にND7細胞を導入することによってND7細胞にアポトーシスを誘導す
ることができる。
【0035】 アポトーシスの誘導は種々の手段によって確認することができる。細胞死がア
ポトーシスによるものであるかどうかを決定するためのいくつかの技法が当業者
には公知である。アポトーシス性の細胞死は、顕微鏡によって観察可能な形態学
的変化、例えば細胞質の水ばれ(blebbing)、細胞の萎縮、ヌクレオソーム間(int
ernucleosomal)の断片化およびクロマチンの凝縮、などによって特徴づけられる
。アポトーシス過程に典型的なDNA切断は、TUNELアッセイおよびDNAラダーアッ セイ(Materials and Methods, Gavreiliら, 1992参照)を用いて示すことができ
る。
【0036】 典型的には、Brn-3aの誘導体はND7細胞のゲノムに安定に組み込まれる。これ は、Brn-3aをコードする、適切なプロモーター(例えばマウス乳癌ウイルス(MMT
V)プロモーター)の制御下にある核酸、およびネオマイシン耐性遺伝子などの選
択マーカーを用いて細胞をトランスフェクションすることによって達成される。
ある集団は上記核酸を取り込み、そのうちのあるサブ集団はそのゲノム中に上記
核酸を組み込む。次にこれらの安定なクローンを選択することができる(マーカ
ーがネオマイシン耐性遺伝子である場合は、培地へのジェネティシン(G418)の添
加によって行う)。
【0037】 好ましくは、血清飢餓/RAに対するアポトーシス性応答は、該誘導体の不在下
における応答と比較して該誘導体の存在下では少なくとも25%、より好ましくは
少なくとも50%または75%減少する。したがって、例えば該誘導体の不在下にお
けるND7細胞の細胞生存百分率が20%であるならば、該誘導体の存在下における 細胞生存百分率は好ましくは40%以上、より好ましくは60%または80%以上であ
る。
【0038】 神経突起の伸び出しを刺激する活性 Brn-3aの誘導体が神経突起の伸び出しを刺激するかどうかを決定するモデル系
として、典型的にはND7細胞を用いることができる。神経突起の伸び出した長さ は免疫細胞化学的技法(Smithら,1997 a.bに記述されている)を用いて測定する
ことができる。細胞をαチューブリンに対する一次抗体と共にインキュベートし
、ペルオキシダーゼ-ジアミノベンジジン発色反応によって検出する。各400個の
細胞のうち最も長い突起の長さを、video capture NIH Image software (バーシ
ョン1.59) を用いて各サンプルについて測定する。
【0039】 誘導プロモーター(例えばデキサメタゾンを用いて誘導することができるMMTV
プロモーター)の制御下で該誘導体を発現する構築物を、上記のようにND7細胞 のゲノムに安定に組み込む。該誘導体をコードする配列を欠く対照ベクターを対
照として用いる。次に、誘導物質(例えば1 μM デキサメタゾン)の不在下また
は存在下において形成された突起の数および長さを、対照ベクターでトランスフ
ェクトした細胞および該誘導体を発現するベクターでトランスフェクトした細胞
について測定する。
【0040】 好ましくは、該誘導体の存在下では、突起を有する細胞数の百分率は対照ベク
ターのみを使用した場合の突起を有する細胞数の百分率と比較して、少なくとも
50%、より好ましくは少なくとも75%または100%増加する。好ましくは、該誘 導体の存在下における細胞突起の平均長さは、対照ベクターのみを使用した場合
の細胞突起の平均長さと比較して少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75
%または100%増大する。
【0041】 C.ポリヌクレオチドおよびベクター 本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を
含む。本発明のポリヌクレオチドはDNAからなっていてもよいし、RNAからなって
いてもよい。また、本発明のポリヌクレオチドはその中に合成または改変ヌクレ
オチドを含むポリヌクレオチドであってもよい。いくつかの異なる種類のオリゴ
ヌクレオチドの改変が当技術分野で公知である。これらはメチルホスホネートお
よびホスホロチオエート主鎖、分子の3'および/または5'末端へのアクリジンま
たはポリリシン鎖の付加を含む。本発明の目的のためには、本明細書に記述され
るポリヌクレオチドは当技術分野で利用可能な任意の方法によって改変されうる
ことが理解されるべきである。そのような改変は本発明のポリヌクレオチドのin vivo活性を高めるため、または寿命を延ばすために実施することができる。本 発明の好ましい実施形態においては、本発明のポリヌクレオチドは配列番号1ま
たは3に示す核酸配列を含む。
【0042】 本発明の好ましいポリヌクレオチドはまた、上に記述した本発明のポリペプチ
ドの任意のものをコードするポリヌクレオチドを含む。当業者には、遺伝暗号の
縮重の結果、おびただしい数の異なるポリヌクレオチドが同一のポリペプチドを
コードしうることが理解されるであろう。
【0043】 本発明のポリヌクレオチドを組換え複製ベクターに組み込むことができる。こ
のベクターは、適合する宿主細胞中で核酸配列を複製するために用いることがで
きる。したがって、さらなる実施形態において、本発明は本発明のポリヌクレオ
チドを複製可能なベクターに導入し、このベクターを適合する宿主細胞に導入し
、そして該ベクターの複製をもたらす条件下で該宿主細胞を増殖させることによ
る、本発明のポリヌクレオチドを作製する方法を提供する。該ベクターを該宿主
細胞から回収することができる。適切な宿主細胞は大腸菌などの細菌、酵母、哺
乳動物細胞系、および他の真核生物細胞系(例えば昆虫Sf9 細胞)を含む。
【0044】 好ましくは、ベクター中の本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞によるコー
ド配列の発現をもたらすことのできる調節配列に機能しうる形で連結されている
。すなわち、このベクターは発現ベクターである。「機能しうる形で連結された
」という用語は、記述された構成要素が意図された様式でそれらを機能させる関
係に並置されていることを言う。コード配列に「機能しうる形で連結された」調
節配列は、調節配列に適合した条件下でコード配列の発現が達成されるように連
結されている。
【0045】 そのようなベクターを適切な宿主細胞中に上記のように形質転換またはトラン
スフェクションし、本発明のポリペプチドの発現を提供することができる。この
方法は、発現ベクターで形質転換した宿主細胞を、該ポリペプチドをコードする
コード配列を有するベクターによる発現をもたらす条件下で上記のように培養し
、そして場合により発現されたポリペプチドを回収することを含む。
【0046】 上記ベクターは、例えば複製起点、場合により該ポリヌクレオチドの発現のた
めのプロモーター、および場合により該プロモーターのレギュレーター(regulat
or)を備えたプラスミドまたはウイルスベクターであってよい。ベクターは1個 以上の選択マーカー遺伝子、例えば細菌プラスミドの場合にはアンピシリン耐性
遺伝子、または哺乳動物ベクター用にはネオマイシン耐性遺伝子などを含むこと
ができる。ベクターは例えばRNAの産生のため、または宿主細胞をトランスフェ クションまたは形質転換するためにin vitroで用いることができる。ベクターは
、例えば遺伝子療法などにin vivoで用いるように適合させることも可能である 。特にウイルスベクターは以下に記述するように用いることができる。
【0047】 発現ベクターをそれに合わせて設計した宿主細胞と適合するように、プロモー
ター/エンハンサーおよび他の発現調節シグナルを選択することができる。例え
ば、βアクチンプロモーターなどの哺乳動物プロモーターを用いることができる
。組織特異的プロモーター、特に神経細胞特異的プロモーター(例えばチロシン
ヒドロキシラーゼ(TH)、L7またはニューロン特異的エノラーゼ(NSE)プロモータ ー)は特に好ましい。特定の神経細胞型(例えば、感覚または運動ニューロン)
に特異的なプロモーターは特に好ましい。ウイルスプロモーターもまた用いるこ
とができる。例えば、モロニーマウス白血病長末端反復(MMLV LTR)プロモーター
、ラウス肉腫ウイルス(RSV) LTRプロモーター、SV40プロモーター、ヒトサイト メガロウイルス(CMV) IEプロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーターまた
はアデノウイルスプロモーターが挙げられる。これらのプロモーターはすべて、
当技術分野で容易に入手できる。
【0048】 D.ウイルスベクター 本発明のポリヌクレオチドは裸の核酸構築物の形で用いることができる。また
は、本発明のポリヌクレオチドは種々の核酸ベクターに導入することができる。
それらのベクターはプラスミドおよびウイルスベクターを含み、好ましくは単純
ヘルペスウイルスベクターである。ベクターはさらに、本発明のポリヌクレオチ
ドの両側に真核生物ゲノム配列(好ましくは哺乳動物ゲノム配列)またはウイル
スゲノム配列に相同な配列からなる配列を含むことができる。これは本発明のポ
リヌクレオチドを相同組換えによって真核生物細胞またはウイルスのゲノムに導
入することを可能とする。特に、ウイルス配列(好ましくはHSV1またはHSV2配列
)によって両側を囲まれた発現カセットを含むプラスミドベクターは、本発明の
ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に送達するのに適したウイルスベクター(好ま
しくはHSVベクター)を作製するのに使用できる。これは単純ヘルペスウイルス をとり上げて以下にさらに詳しく記述する。しかし、用いられている技法は当業
者に周知のもので、またアデノウイルス等の他のウイルスにも適しているであろ
う。適切なウイルスベクターの他の例は、宿主細胞のゲノムに自らのゲノムを組
み込むことができるウイルスベクター、例えばレトロウイルス(レンチウイルス
を含む)およびアデノ随伴ウイルスを含む。
【0049】 単純ヘルペスウイルスベクター 1.ウイルス株 Brn-3aまたはその誘導体をコードするポリヌクレオチドを含む本発明のウイル
ス株は、例えばHSV1若しくはHSV2株またはそれらの誘導体から誘導されるものが
よく、HSV1が好ましい。誘導体としてはHSV1およびHSV2株からのDNAを含有する
インタータイプ(inter-type)の組換え体が含まれる。誘導体は好ましくはHSV1ま
たはHSV2ゲノムのいずれかに対して80%以上の配列相同性を有し、さらに好まし
いのは90%以上、それ以上に好ましいのは95%のものである。
【0050】 治療の過程においてHSV株を使用するためには、溶菌サイクルを確立すること ができないように、この株を弱毒化する必要がある。特に、HSVベクターをヒト の遺伝子治療のために使用しようとする場合、本発明のポリヌクレオチドを好ま
しくは必須遺伝子中に挿入すべきである。この理由は、ベクターウイルスが野生
型ウイルスに遭遇した場合、組換えによって、その野生型ウイルスへの本発明の
ポリヌクレオチドの転移が発生するかも知れないからである。しかし、本発明の
ポリヌクレオチドが必須遺伝子中に挿入されている限り、この組換え転移によっ
てレシピエントウイルス中の必須遺伝子も欠失されることになり、したがって複
製能力がある野生型ウイルス集団中へのこの異種遺伝子の「脱出」が防止される
【0051】 遺伝子治療における使用に好適なHSV株を製造するために使用することができ る弱毒株として、単なる例として示すと、ICP34.5またはICP27に突然変異を有す
る株が含まれ、例えば、全部がICP34.5に突然変異を有する1716株(MacLeanら、
1991)、R3616およびR4009株(Chou and Roizman,1992)ならびにR930株(Chou
ら、1994)、そしてICP27に欠失を有するd27-1(Rice and Knipe,1990)がある 。英国特許出願第9615794.6号に開示されているようなICP34.5およびICP27の両 方について欠失がある株も使用することができる。あるいは、VMW65に不活性化 突然変異を有するICP4、ICP0、ICP22、VHS若しくはgH、または上記のあらゆる組
合せを使用して、本発明のHSV株を製造することができる。 各種のHSV遺伝子を記載するために使用する用語はCoffin and Latchman,1996 、中のものにしたがう。
【0052】 2.補足用(complementing)細胞系 ICP27を発現する細胞系、例えばV27細胞(Rice and Knipe,1990)、2-2細胞(
Smithら、1992)またはB130/2細胞、好ましくはB130/2細胞(下記参照)中でICP
27に欠陥があるHSVウイルスを増殖させる。 ICP27発現細胞系は、哺乳動物細胞、例えばVeroまたはBHK細胞を、この細胞中
で発現されうる機能性HSV ICP27遺伝子を含むベクター、好ましくはプラスミド ベクターと、選択性マーカー(例えばネオマイシン耐性)をコードするベクター、
好ましくはプラスミドベクターで同時トランスフェクトすることによって、製造
することができる。その後、当業者に知られている(例えばRice and Knipe,199
0に記載されているような)方法を使用して、例えばICP27突然変異HSV株の増殖 を援護する能力に基づいて、この選択性マーカーを保有するクローンをさらにス
クリーニングして、機能性ICP27をも発現するクローンを判定する。
【0053】 ICP27欠失ウイルスの増殖を可能にするが、その補足用配列と上記のICP27欠失
ウイルス間には重複がない(したがってウイルス増殖中に相同組換えによるICP2
7の修復が防止される)好適な補足用細胞系(B130/2)が英国特許出願第9615794
.6号に記載されている。B130/2は、プラスミドpSG130BS(Sekulovichら、1988)
DNAとネオマイシン耐性をコードするプラスミドpMamNeo(Invitrogen)のBHK細胞 中への同時トランスフェクトおよびネオマイシン耐性クローンの選別によって作
製された。ウイルスの増殖のため、HSV-1 ICP27欠失突然変異体の増殖を高度に 可能にする1クローン(B130/2)が選別された。PSG130BSは完全ICP27コード配 列およびUL55の部分をコードするHSV-1からの1BamHI/SacI断片(nts 113322-11
5743)を保有する。
【0054】 機能性ICP27遺伝子を含むベクターがICP27突然変異ウイルス中に残留する配列
と重複する(すなわちこれに相同な)配列を含有しないことを確認して、ICP27 突然変異HSV株を機能性ICP27を有する株に復帰させない細胞系を上記のようにし
て製造する。 HSV株がその他の必須遺伝子、例えばICP4中に不活性化する改変を含む場合は 、ICP27について記載したものと同じ方法で、この改変された必須遺伝子を補足 する機能性HSV遺伝子を、補足用細胞系にさらに含ませる。
【0055】 3.突然変異誘発の方法 当分野で周知のいくつかの技法によって、HSV遺伝子を機能的に不活性にする ことができる。例えば、欠失、置換または挿入、好ましくは欠失によって機能的
に不活性にすることができる。欠失ではその遺伝子の部分または遺伝子全部を除
去することができる。挿入される配列としては上記のような発現カセットが含ま
れる。
【0056】 当業者に周知の相同組換え方法によって、HSV株中に突然変異を起こさせる。 例えば、HSVゲノムDNAを、相同なHSV配列に隣接して突然変異した配列を含むベ クター、好ましくはプラスミドベクターとともにトランスフェクトする。突然変
異配列は欠失、挿入または置換を含むものとすることができ、これらはすべて常
套技法によって構築することができる。挿入として、例えばβガラクトシダーゼ
活性によって組換えウイルスをスクリーニングするための選択性マーカー遺伝子
、例えばlacZが含まれる。
【0057】 その他のHSV遺伝子、例えばICP0、ICP4、ICP6、ICP22、ICP47またはVMW65など
のIE遺伝子、好ましくはICP4およびVMW65中で突然変異させることもできる。VMW
65遺伝子の場合、これが必須の構造タンパク質をコードするので遺伝子全体を欠
失させることはしないで、IE遺伝子の転写を活性化するVMW65の能力を壊滅させ る小さな不活性化挿入を実施する(Aceら、1989)。
【0058】 4.発現カセットを含むHSV株 ウイルスがなお増殖することができる限り、本発明のポリヌクレオチドをHSV ゲノム中のどんな位置に挿入してもよい。このとき、このポリヌクレオチドが必
須遺伝子の1つの中に挿入される場合は、(2.に記載したように)そのHSV必 須遺伝子を別に保有する細胞系の使用が必要とされる。例えば、ポリヌクレオチ
ドがHSV株のICP27遺伝子中に挿入される場合ならば、ICP27を発現する細胞系が 必要となるわけである。ポリヌクレオチドは好ましくはそのICP27の突然変異の 領域に挿入される。なぜならば、万一野生型ウイルスとの組換えによってその突
然変異が修復された場合、その修復によって挿入されたポリヌクレオチドが除去
されることになるからである。
【0059】 例えば突然変異の導入について上に記載したような、HSV配列に隣接してポリ ヌクレオチド配列を保有するプラスミドベクターとのHSV株の相同組換えによっ て、本発明のポリヌクレオチドをHSVゲノム中に挿入することができる。当分野 で周知のクローニング技法を使用して、HSV配列を含む好適なプラスミドベクタ ー中にポリヌクレオチドを挿入することもできる。
【0060】 E.治療用ポリペプチド 本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびベクターを使用する疾病の治
療法をその他の治療用ポリペプチドの投与によって改良することができる。例え
ば、神経成長因子(NGF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、脳由来神経栄養因子 (BNTF)およびニューロトロフィン(neurotrophin)(NT-3、NT-4/5など)を含む
神経栄養因子はパーキンソン病の治療のための治療用作用物質としての可能性が
ある。この治療用ポリペプチドも、この治療用ポリペプチドをコードするポリヌ
クレオチドの形態で投与してもよく、そしてBrn-3aまたはその誘導体をコードす
るポリヌクレオチドと同様の様式で、このポリヌクレオチドが核酸ベクターまた
はウイルス株の部分を形成するようにさせることもできる。
【0061】 F.投与 このように、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよびベクターを、場
合によってその他の治療用ポリペプチドまたはこの治療用ポリペプチドをコード
する核酸/ベクターとともに、治療が必要なヒトまたは動物に投与することがで
きる。本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ウイルス株および
組成物を使用して治療することができる疾病として、神経退行性疾患および(卒
中を含む)傷害/外傷の結果としての神経組織の損傷などの末梢または中枢神経
系の疾患が含まれる。特に、神経退行性疾患として、運動ニューロン疾患、家族
性自律神経失調症および小児脊髄性筋萎縮症などのいくつかの遺伝性疾患、なら
びにパーキンソン病およびアルツハイマー病などの遅発性神経退行性疾患が含ま
れる。
【0062】 本発明のポリペプチドおよび本発明のポリペプチドを1以上の治療用ポリペプ
チドとともに含む組成物を治療すべき部位、例えば神経系の組織中への直接の注
射によって投与することができる。好ましくは医薬組成物を製造するため、この
ポリペプチドを製薬上許容される担体または希釈剤と組合せる。好適な担体およ
び希釈剤として、等張生理食塩水、例えばリン酸緩衝化食塩水が含まれる。組成
物を非経口、筋内、静脈内、皮下、眼内または経皮投与用に製剤することができ
る。典型的には、各ポリペプチドを0.01〜30mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/k
gの1投与量として投与する。
【0063】 本発明のポリヌクレオチドを、好ましくはその宿主細胞ゲノムに相同なフラン
キング配列をさらに含む裸の核酸構築物として、直接投与することもできる。哺
乳動物細胞による裸の核酸の取り込みは、例えばトランスフェクション作用物質
の使用を含むものなどのいくつかの既知のトランスフェクション技法によって、
強化される。これらの作用物質の例として、カチオン性作用物質(例えばリン酸
カルシウムおよびDEAE-デキストラン)ならびにリポフェクタント(lipofectant)
(例えばlipofectamTMおよびtransfectamTM)が含まれる。典型的には、核酸構 築物をトランスフェクション作用物質と混合して組成物を製造する。
【0064】 好ましくは、裸の核酸構築物、ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターまた
は組成物と製薬上許容される担体または希釈剤を組合せて、医薬組成物を製造す
る。好適な担体および希釈剤として、等張生理食塩水、例えばリン酸緩衝化食塩
水が含まれる。組成物を非経口、筋内、静脈内、皮下、眼内または経皮投与用に
製剤することができる。
【0065】 遺伝子治療のための本発明のポリヌクレオチド、ウイルスベクターが適切な区
域の細胞中に取り込まれるような方法で、医薬組成物を投与する。例えば、遺伝
子治療のターゲットが中枢および末梢神経系であり、そして本発明のポリヌクレ
オチドを単純ヘルペスウイルスベクターによって送達しようとする場合、組成物
をシナプス終末が位置する区域に投与して、ウイルスがその終末中に取り込まれ
て、軸索を逆行して逆方向軸索輸送を介して軸索細胞体中に輸送されるようにす
る。典型的には、医薬組成物を定位接種によって脳に投与する。医薬組成物を眼
に投与する場合、網膜下注射が典型的に使用される技法である。
【0066】 本発明のポリヌクレオチドをウイルスベクターによって細胞に送達する場合、
投与するウイルスの量は、ヘルペスウイルスベクターについて104〜108pfu、好 ましくは105〜107pfu、さらに好ましくは約106pfu、アデノウイルスベクターに ついて106〜1010pfu、好ましくは107〜109pfu、さらに好ましくは約108pfuの範 囲である。注射の場合、典型的には製薬上許容される好適な担体または希釈剤中
のウイルス1〜2μlを投与する。本発明のポリヌクレオチドを裸の核酸として投 与する場合、投与する核酸の量は典型的には1μg〜10mgの範囲である。
【0067】 本発明のポリペプチドが誘導性プロモーターの制御下にある場合、治療の期間
に限って遺伝子発現の誘導を必要とさせることができる。その症状が治療された
後、そのインデューサーを除去すれば本発明のポリペプチドの発現が停止する。
これは明らかな臨床上の利点である。こうしたシステムに、例えば抗生物質テト
ラサイクリンの投与を関与させて、tetリプレッサー/VP16融合タンパク質に対 する効果を介して遺伝子発現を活性化することができる。
【0068】 組織特異的プロモーターの使用が、本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチド
およびベクターを使用する疾病の治療の補助となり得る。例えば、いくつかの神
経障害は細胞の小サブセットのみにおける特定の遺伝子産物の異常な発現による
。治療用遺伝子をこの関連する患部細胞タイプのみで発現させることができるな
らば、特にこうした遺伝子がその他の細胞タイプで発現された時に毒性である場
合、有利になる。特異的にターゲットとされ得るニューロンのサブタイプとして
、末梢神経系のニューロン、例えば感覚ニューロン、運動ニューロン、交感神経
細胞および副交感神経細胞などの自律神経細胞、ならびに中枢神経系のニューロ
ン、例えば運動ニューロンおよび感覚ニューロンが含まれる。
【0069】 記載した投与経路および投与量は1指針としてのみであることを意図している
。なぜならば、当業界の実務者はどんな特定の患者および症状についても最適の
投与経路および投与量を容易に決定することができるはずだからである。 本発明を以下の実施例を引用して記載するが、これは説明のためのものであっ
て、限定することを意図してはいない。実施例は図面を引用する。図面を引用し
てさらに詳細に説明する。
【0070】 (図面の詳細な説明) (図1) Brn-3aの発現は血清除去後のND7細胞をアポトーシス性のプログラムされた細 胞死から救済する。 a) pJ5ベクターのみでトランスフェクトしたND7細胞(□)に比較した、血清を
含まず1μM RAを含有する培地中に72時間維持した、Brn-3a(■)またはBrn-3b (○)を過剰発現する細胞系中の細胞の生存。 b) 血清を含まず1μM RAを含有する培地中に24、48および72時間維持した、pJ5
ベクターのみ(□)、Brn-3a(■)またはBrn-3b(○)を発現する細胞内のDNA の断片化の相対量。 c) 血清を含まず1μM RAを含有する培地中に48時間維持した時の、デキサメタ ゾンの不在(斑点をつけた棒)または存在(黒く塗った棒)下で、空のpJ5ベク ターのみまたはBrn-3aを発現するND7細胞の総数の比率としての、TUNEL陽性核。
【0071】 (図2) ND7細胞の保護にはBrn-3a内のN-末端活性化ドメインの存在が必要である。 a) 本研究で使用する構築物の図式表示。構築物を安定な細胞系の作製のために
pJ5発現ベクター中にサブクローン化するか、または一時的発現の研究のためにp
J4(Morgenstern and Land,1990)発現ベクター中にサブクローン化した。キメ ラ構築物(C1、C2、C3およびC4)はpJ5中にサブクローン化しなかった。 b) pJ5ベクターのみでトランスフェクトしたND7細胞(□)に比較した、血清を
含まず1μM RAを含有する培地中に24、48および72時間維持し、デキサメタゾン でMMTVプロモーターを誘発した後の、長型Brn-3a(■)、短型Brn-3a(○)、ま
たは単離したBrn-3aのPOUドメイン(●)を過剰発現する細胞系中の細胞の生存 。
【0072】 (図3) ND7細胞中でBcl-2タンパク質の発現はBrn-3aによって調節される。 a) 完全血清培地中、デキサメタゾンの不在(−)または存在(+)下で維持し
た時の、指示した構築物を過剰発現する細胞系からの抽出物中のBcl-2(上段パ ネル)およびBad(中段パネル)タンパク質発現のウエスタンブロット分析。pGp
9.5タンパク質レベルの検出(下段パネル)によって、サンプルの等量負荷を確 認した。 b) デキサメタゾンの不在(斑点をつけた棒)または存在(黒く塗った棒)下で
維持した、ベクターのみ(pJ5)でトランスフェクトしたND7細胞中に比較した、
指示した構築物を発現する細胞系中のBcl-2タンパク質発現。
【0073】 (図4) ヒトBcl-2プロモーターはBrn-3a転写因子のN-末端活性化ドメインによって調 節される。 a) 2つのプロモーター領域(P1およびP2)を指示する、ヒトBcl-2遺伝子の5' 末端の図式表示。ORFはオープンリーディングフレームの開始点を示し、斜線領 域はイントロンを示し、Xは可能なBrn-3結合部位を示す。 b,c) 指示したプラスミドと(b)P1、(c)P2 Bcl-2プロモーター構築物とのND7細 胞(黒く塗った棒)またはBHK細胞(斑点をつけた棒)への同時トランスフェク ト後のリポーター遺伝子アッセイの結果。C1、C2、C3およびC4は図2aに図示した
Brn-3aおよびBrn-3bのキメラ構築物を示す。
【0074】 (図5) P1およびP2 Bcl-2プロモーターの欠失構築物はBrn-3aによるリポーター構築物
の活性化に必要な領域を同定する。 a) 長型Brn-3aと指示したヒトP1 Bcl-2プロモーターの欠失構築物との同時トラ
ンスフェクト後のルシフェラーゼアッセイの結果は、活性化に必要な113 bp断片
(-1528〜-1416)を同定する。 b) Brn-3aの長型と指示したヒトP2 Bcl-2プロモーター領域の欠失構築物との同
時トランスフェクト後のルシフェラーゼアッセイの結果は、活性化に必要な569
bpの領域(-746〜-178)を同定する。P1領域を包含する-3933と-1793の間の配列
の欠失後、P2領域の活性が8倍増大することに注目すべきである。斑点をつけた
棒は各欠失構築物について適切なベクター対照でのトランスフェクションである
【0075】 (図6) Brn-3aに結合し、Brn-3aによる異種プロモータの活性化を充足する、ヒトBcl-
2プロモーター領域内のモチーフの同定。 a) ヒトP2 Bcl-2プロモーター領域からの173 bp BglII/NsiI断片(-744〜-571 )を含有する異種プロモーターをトランス活性化する、指示したBrn-3因子の能 力のクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)アッセイ。 b) BglII/NsiI断片およびOligoP2内に含まれる最小CATCAATCTTCモチーフ(-594
〜-584)を含有する異種プロモーターをトランス活性化する、指示したBrn-3因 子の能力を判定するためのCATアッセイの結果。
【0076】 (図7) Brn-3aの過剰発現は、(a)新生児脊髄後根神経節および(b)新生児三叉ニューロ
ンを、神経成長因子の除去によって誘発されるアポトーシスから保護する。 グラフの棒は(同時トランスフェクトしたb-ガラクトシダーゼ発現プラスミド
の存在についての染色によって判定した)トランスフェクトが成功したニューロ
ンの生存数を示す。斑点をつけた棒はNGF存在下で培養液中に維持した結果を示 し、一色の棒はNGFを除去した培養液中のものを示す。示した親発現ベクターま たはBrn-3a発現ベクターのいずれかを細胞に注入した。
【0077】 (図8) 空の発現ベクター(実線)またはBrn-3a発現ベクター(点線)のいずれかでト
ランスフェクトした後、NGFの存在(パネルa)または不在(パネルb)下で培 養した、指示した胚発生の段階から取得した三叉神経節ニューロンの生存。数値
は3以上の独立した実験の平均であり、その標準偏差を棒線によって示す。
【0078】 (図9) 空の発現ベクター(実線)またはアンチセンスBrn-3aベクター(点線)でトラ
ンスフェクトし、NGFの存在下で培養した、指示した胚発生の段階から取得した 三叉神経節ニューロンの生存。数値は3以上の独立した実験の平均であり、その
標準偏差を棒線によって示す。
【0079】 (実施例)材料および方法 別記する以外は、使用する方法は標準的生化学技法である。好適な一般方法論
の指示書として、Sambrookら、Molecular Cloning,a Laboratory Manual(1989)
およびAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology(1995),John Wiley
& Sons,Inc.が含まれる。
【0080】DNAラダー(ladder)アッセイ 5cm組織培養皿(Nunc,Roskilde,Denmark)上で細胞を増殖させた。処理後、細
胞を収穫し、氷冷PBSで1回洗浄し、溶菌バッファー(10mM Tris-HCl pH7.6、20
mM EDTA pH8.0、0.5% v/v Triton X-100)250ml中に再懸濁し、そしてサンプル
を室温で15分放置した。16,000gで5分間遠心分離した後、上清を別のEppendorf 管に移し、逐次抽出を実施した。サンプルを等容積のフェノールで1回、フェノ
ール−クロロホルム(1:1)で1回、そしてクロロホルム−イソアミルアルコー
ル(24:1)で1回抽出した。0.1容積の3M酢酸ナトリウムpH4.8および2.5容積の
エタノールで、20℃、一晩でDNAを沈殿させた。次に、翌日DNAを16,000g、30分 でペレット化した。70%エタノールで1回洗浄した後、サンプルを37℃で30分、
RNAアーゼA 0.1μgで消化し、1.5%アガロースゲルに負荷し、DNAを臭化エチジ ウム染色によって可視化した。
【0081】TUNELアッセイ Apop Tag検出キット(Oncor,Gaithersburg,MD)を使用し、製造者の指示にし たがって、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ(TnT)-仲介dU
TP-ビオチンニック末端標識アッセイ(TUNEL)を実施した。簡単に述べると、タ
ーミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼによってDNA断片の3'-OH末
端にジゴキシゲニンヌクレオチドの残基を添加し、抗ジコキシゲニン抗体ペルオ
キシダーゼコンジュゲートを使用して、アポトーシスDNA断片を染色する。
【0082】 (実施例1) Brn-3aはND7細胞をアポトーシスから救済する。 そのタンパク質産物がニューロン細胞をアポトーシスから保護することができ
る遺伝子を同定するためのモデルシステムとして、ND7ニューロン細胞系(Wood ら、1990)を使用した。これらの細胞を最初にラット脊髄後根神経節(DRG)ニ ューロンの不朽化によって単離したので、培養液中で大量に増殖させることがで
きる。本発明者らは以前、グルココルチコイド誘発性MMTVプロモーターの制御下
で各種のBrn-3ファミリー転写因子を高レベルで過剰発現する、ND7感覚ニューロ
ン細胞系に由来する細胞系の構築およびその特性決定について報告した(Smith ら、1997a&b)。血清を除去すると、親ND7細胞はアポトーシス性のプログラム された細胞死(PCD)または神経突起を生み出す非分割性表現型に分化するかの いずれかを経過する。ただし、レチノイン酸(RA)がこの分化現象中のアポトーシ
スの割合を強化する(Howardら、1993)。
【0083】 血清を含まず、MMTVプロモーターを誘発するための1μMデキサメタゾンを含有
する培地に、挿入物がないpJ5ベクター(Morgenstern and Land,1990)を含有す
る、安定な細胞系を移した後、従来の研究通りに、一部の細胞は増殖を停止して
突起の延長を開始した。これらの対照細胞中の細胞死の割合をトリパンブルー排
除によってアッセイしたところ、どの時点でも親ND7細胞の場合と同様であるこ とがわかった。分化した培養物に1μM全トランスRAを添加した結果、全時点にお
いて生存細胞の数がさらに減少した。これらのデータは、デキサメタゾンの添加
は、同一の実験条件下で親ND7細胞において観察された効果に比較して、生存細 胞の割合に対して何ら有意な効果がないことを証明している。これらの類似性は
研究したすべてのベクターのみの対照細胞系において観察された。しかし、高レ
ベルの全長Brn-3a(Brn-3aL)を安定して過剰発現する3つの独立した細胞系にお いては、RAを含有し、血清を含有しない培地に1μMデキサメタゾンを添加してMM
TVプロモーターを誘発させた後、生存細胞数の有意な増加(24時間p<0.05;48 時間p<0.005;72時間p<0.05)が観察された(図1a;表I、Brn-3aL)。血清を
含まず、RAを補充しない培地中でのBrn-3aの過剰発現によって、同様の保護がも
たらされた。
【0084】 表I:Brn-3aの過剰発現は血清除去後のND7細胞を救済するが、Brn-3bまたはBrn
-3cの場合は救済しない。
【表2】
【0085】1 トリパンブルー排除法による、血清を含まず1μMレチノイン酸を含有する培地 に移した後24、48および72時間目の細胞の生存。数値は、各構築物を発現する3
つの独立した細胞系について2回測定したものの平均値±平均の標準偏差である
。L=長型、S=短型、P=単離されたPOUドメイン、I=イソロイシン突然変異体 、V=バリン突然変異体。* 適切なベクター対照からの統計的に有意な増加(p<0.05)** 適切なベクター対照からの統計的に有意な増加(p<0.005)
【0086】 このように血清を含まずRAを含有する培地へのND7細胞への移動はアポトーシ ス性PCDを誘発することが知られているので、これらのデータは、Brn-3aのレベ ルの上昇がND7細胞をアポトーシス性PCDの運命から救済することができることを
示している。こうしたアポトーシス細胞の数の減少は、PI/FITC染色細胞のフロ ーサイトメトリー分析によって確認され、それによると、分化した(空のベクタ
ーのみの)対照ND7細胞中の2N DNA含量未満のアポトーシス性集団が、3つのBrn
-3a過剰発現系でのBrn-3a発現の誘発後に減少したことが同定された。Brn-3bを 過剰発現するすべての細胞系において、生存細胞の数またはアポトーシスの割合
に何ら有意な変更が観察されなかった(図1a、表I)。
【0087】 これらの観察を確認し、そして拡張するため、多数の技法を利用して、ゲノム
DNAのヌクレオソーム断片化の程度をアッセイした。Sellins and Cohen(1987)の
比色DNA断片化アッセイ、そしてゲノムDNAのアガロースゲル電気泳動後のヌクレ
オソームラダーリングの程度の両方によって判定したところ、Brn-3aの過剰発現
の結果、細胞集団内の断片化したDNAの割合が減少した。Brn-3aを過剰発現する 細胞系では、クロマチンの断片化の程度に有意な変更が観察されなかった。
【0088】 ターミナルデオキシヌクレオチドトランスフェラーゼによる遊離の3'DNA末端 への標識を利用するTUNEL技法によって培養した細胞を標識して、アポトーシス 中に発生する特徴的なエンドヌクレオチド切断で産生されたDNA断片を可視化す ることによって、これらの観察を拡張した。図1cおよび1dに示すように、Brn-3a
の過剰発現の結果、血清を含まずRAを含有する培地に移動した後、24時間目(45
±%、p<0.005)、48時間目(35±6%、p<0.001)および72時間目(37±8%、
p<0.005)に、ベクターのみを過剰発現する細胞系に比較して、TUNEL陽性細胞 の数が3倍減少した。予想されたように、血清を含まずRAを含有する培地で生存
した中の高比率のBrn-3a発現細胞が突起を産生するのが観察された。
【0089】 これらの知見をまとめると、Brn-3aの安定した過剰発現は1つの型の分化刺激
後、ND7細胞をアポトーシスの運命から保護すること、および救済された細胞の 一部が正常に分化することができることが示される。本発明者らの以前の実験で
は、Brn-3aのその標的プロモーターを活性化する能力はBrn-3b中には存在しない
2つの活性化ドメインの存在に依存することが証明される。例えば、(単純ヘル
ペスウイルスチミジンキナーゼプロモーターの上流にBrn-3因子のための結合部 位を含有する)tk-Oct試験プロモーターの活性化には、活性化ドメインとしても
作用するDNA結合POUドメインのみが必要である(Morrisら、1994)。対照的に、
このドメインはαインターネクシン(internexin)プロモーターには何ら効果がな
く、これにはプロモーターの活性化のためにBrn-3aのN-末端の別のドメインが必
要である(Budhram-Mahadeoら、1995)。興味深いことに、SNAP-25プロモーター
の最大活性化およびBrn-3aの突起の伸び出し(outgrowth)を最大効果で誘発する 能力の両方とも、両方のドメインを必要とする。ただし、POUドメインのみでも 最大より小さい応答をすることができる(Morrisら、1997;Smithら、1997a)。
【0090】 Brn-3aのND7細胞を救済する能力についてのこれらのドメインのそれぞれを試 験するために、単離されたBrn-3aのPOUドメイン、またはN-末端活性化ドメイン を欠失した(Smithら、1997a)天然に生起する短型のBrn-3a(Theilら、1993) を過剰発現する、pJ5に基づく安定な細胞系を準備した。これらの細胞系をアポ トーシス性PCDからND7細胞を救済するそれらの能力について分析したところ、Br
n-3a POUドメインのみまたは短型Brn-3aのいずれもが全長Brn-3aによってもたら
された保護を与えることができなかった(表Iおよび図2b)。したがって、血清
の除去によって誘発されるアポトーシスからND7細胞を保護するBrn-3aの能力は 、全長Brn-3a中に存在するN-末端活性化ドメインの存在に依存するものである。
【0091】 本発明者らは以前、Brn-3aおよびBrn-3bのPOUホメオドメイン中の22番位置の 差異が、いくつかのターゲットプロモーターに対する、および神経突起の伸び出
しにおけるこれら2つのイソ型の反対の効果において、重要な役割をしているこ
とを示した。特に、Brn-3aのホメオドメインの22番位置のバリンをイソロイシン
で置換した構築物(Brn-3aI構築物)は、同時トランスフェクションアッセイに おいてtk-Oct試験プロモーターをもはや活性化することができず(Dawsonら、19
96)、そして安定なND7細胞系中で過剰発現したとき、突起の伸び出しを誘発す る能力がずっと小さい(Smithら、1997a)。
【0092】 Brn-3aがND7細胞をアポトーシスから救済するためには、Brn-3aのN-末端ドメ インが見かけ上重要であるという観察をさらに拡張するため、これらのBrn-3a(
Brn-3aI)およびBrn-3b(Brn-3bV)の突然変異型を過剰発現することができる安
定な細胞系を構築した。その中で発現されたタンパク質がBrn-3aのN-末端を含有
するがBrn-3bの機能性POUドメインを含有する、Brn-3aI細胞系は、上記のすべて
の規準によってアッセイしたとき、ND7細胞を救済する能力を維持していた(表 I)。この構築物の神経突起の伸び出し誘発能力がないこととのこの対比は、機
能性Brn-3a POUドメインの欠如によるものである(Smithら、1997a)。逆に、機
能性Brn-3a POUドメインを含有するがこれとともにBrn-3bのN-末端を有するBrn-
3bV構築物(Brn-3bV)の過剰発現はND7細胞を救済することができなかった(表 I)。
【0093】 (実施例3) A.Brn-3aはND7細胞中でBcl-2タンパク質の発現を強化する。 親ND7細胞の分化の際にBcl-2タンパク質レベルが約4倍増加するという観察の
後、Brn-3aによって与えられるアポトーシスに対する保護についての可能な機構
を探査するために、各種の細胞系からのタンパク質抽出物について、ウエスタン
ブロット分析を実施した。Bcl-2特異的抗体とのインキュベーションで、ベクタ ーのみを発現するものに比較して、Brn-3a(長型)を過剰発現する細胞系中のBc
l-2タンパク質レベルが16倍増加することが明らかになった(図3a、上段パネル および図3b)。Brn-3bを過剰発現するように誘発された細胞からの抽出物中では
、Bcl-2タンパク質の有意な増加は何ら観察されなかった(図3aおよび3b)。ベ クター対照細胞中でBcl-2タンパク質レベルの有意な変化が何ら観察されなかっ たことは、培地へのデキサメタゾンの添加がNd7細胞中でBcl-2を調節しないこと
を意味している(図3a、上段パネル)。
【0094】 突然変異を誘発された型のBrn-3a(Brn-3aI)およびBrn-3b(Brn-3bV)を過剰
発現する細胞系からのタンパク質抽出物研究から、22番位置の突然変異はBrn-3a
のBcl-2タンパク質レベルを誘発する能力に何ら有意に影響しないこと、一方Brn
-3bの逆の突然変異はこの因子がBcl-2タンパク質レベルを変更することを可能に
しないことが明らかになった。これらのデータは共に、Bcl-2遺伝子の調節に関 係するBrn-3aの活性化ドメインはおそらくPOUドメインの外部にあるらしいこと を示唆している。
【0095】 この仮説は、単離されたBrn-3a POUドメインまたは天然に生起する短型Brn-3a
のいずれかを過剰発現する細胞系からのタンパク質抽出物の分析によって、続い
て確認された。これらの2つの構築物のいずれかの安定な過剰発現はBcl-2タン パク質レベルを有意に変更しなかったので、Brn-3aによるBcl-2タンパク質の調 節はBrn-3a(長型)中に存在するN-末端活性化ドメインに依存することが証明さ
れ、これらの細胞中のアポトーシスからの保護を与えるためにこのドメインが必
要とされることと一致する。
【0096】 B.Brn-3aはBcl-2ファミリーのその他のメンバーを調節しない。 これらの細胞系のいずれにおいてもBadまたはBaxタンパク質発現レベルの有意
な変更は観察されず、一方これらの細胞中でBcl-xのいずれのイソ型(Bcl-x L またはBcl-xS)も検出し得るレベルで発現しなかった。
【0097】 C.Brn-3によるBcl-2プロモーターの調節 ヒトBcl-2遺伝子の5'フランキング配列は転写の開始に必要な2つの異なるプ ロモーター(P1およびP2)を含有している(図4a)。これらの2つのプロモータ
ーのどちらがニューロン起源の細胞中で利用されるのかは知られていないが、研
究では、Bcl-2プロモーター活性が特性決定されているその他の細胞型(主とし て増血系統の細胞)において、転写が優先的にP1領域から開始することが証明さ
れている。本研究で使用するND7ニューロン細胞系中のBcl-2転写は、未分化およ
び分化段階の両方で、優先的にP2プロモーター領域内から開始する(未発表デー
タ)。
【0098】 Brn-3ファミリーの物質によるBcl-2プロモーターの調節を調べるため、P1また
はP2プロモーターのいずれかを含有するルシフェラーゼリポーター遺伝子推進性
(driving)のプラスミド構築物(図4a)(Chen and Boxer,1995)を、Brn-3a(長
型)、Brn-3a(短型)またはBrn-3bのいずれかを含有する構成的発現ベクターと
ともに、親ND7細胞中に同時トランスフェクトした。 親ND7細胞系中で、両プロモーター構築物(P1およびP2)は長型Brn-3aによっ て有意に活性化された(図4bおよびc;すべての場合、p<0.01)。ただし、P2構
築物はBrn-3aによって、P1構築物について観察されたものよりもずっと強度に活
性化された。短型Brn-3aもP1リポーター構築物を活性化したが、長型Brn-3aによ
って得られた活性のわずか約1/5であった(図4b;p<0.05)。Brn-3bおよび短 型Brn-3aの両者ともP2プロモーター構築物には何ら有意な影響をしなかった。た
だし、Brn-3bはP1プロモーターの基準活性を有意に抑制した(図4b;p<0.01) 。
【0099】 対比してみると、BHK細胞の同時トランスフェクション実験では、Brn-3aまた はBrn-3bとの同時トランスフェクト後、P1プロモーターリポーター遺伝子構築物
の活性に対して何ら有意な効果が観察されなかった(図4b)。しかし、Brn-3aと
の同時トランスフェクト後、P2リポーター遺伝子構築物では、小さいが有意な増
加(250±21%、p<0.01)が観察された。けれどもこれらの効果はND7の実験に おいて観察されたものよりも有意に小さかった(データは示していない、それぞ
れp<0.001およびp<0.005)。Brn-3bではBHK細胞中へのどのプロモーター構築 物との同時トラランスフェクト後も、何らの効果も観察されなかった(図4bおよ
びC)。したがって、これらのデータは、Bcl-2プロモーターがBHK細胞に比較し てND7細胞中ではるかに(約10倍強く)活性化されることを証明し、ニューロン 特異的効果であることを示唆する。ND7の同時トランスフェクションからのデー タと併せて、これらのデータは、ニューロン起源の細胞中でP2プロモーター領域
およびこの領域の5'に直結する配列を含む構築物に対するBrn-3aのはるかに強力
な活性化能力を示唆している。重要なことは、ND7およびBHK細胞中でのこれらの
リポーター構築物の基本的な活性間には有意な差異が観察されなかったことであ
る。
【0100】 Oct-1、Oct-2.1、Oct-2.4およびOct-2.5を発現する構築物と組合せてBcl-2プ ロモーター構築物を使用する同時トランスフェクション実験によって、ニューロ
ンにおいて発現されたBrn-3ファミリーのPOU因子に対するこれらの効果の特異性
が確認された。ND7またはBHK細胞中のいずれかにこれらのTypeII POU因子を同時
トランスフェクトしたとき、Bcl-2プロモーター活性の活性化も抑制も観察され なかった。
【0101】 D.5'および3'Bcl-2プロモーターは長型Brn-3aのN-末端活性化ドメインによっ て調節される。 長型および短型Brn-3aによるリポーター遺伝子構築物の活性化レベルの差異を
調べるため、Brn-3a POUドメインのみ、またはBrn-3aの領域をBrn-3bの相当する
領域で置換して作製したキメラBrn-3構築物を含有する発現プラスミドとともにB
cl-2プロモーター構築物を同時トランスフェクトした(図2a)。
【0102】 Bcl-2プロモーター活性に調節を与えるには単離されたBrn-3aのPOUドメインで
は不十分であり(図4bおよびc)、ホメオドメイン22番位置の突然変異体から得 られたデータが拡張された。さらに、Brn-3aおよびBrn-3bのドメインの各種の組
合せを含有する前述のキメラ構築物(図2a)を使用して、Bcl-2プロモーターの 活性化に必要なBrn-3aの領域をさらに特性決定しようとした。Brn-3aのN-末端ド
メインは保存して、Brn-3aのPOUドメイン領域(キメラ1)、POUドメインの5'に 接する領域(キメラ2)またはこれらの領域の両方(キメラ3)をBrn-3bの対応す
る領域で置換しても、これらのキメラ構築物のBrn-3a(長型)の様式でのリポー
ター構築物を活性化する能力は有意に変更されなかった(図4bおよびc)。対照 的に、Brn-3aのPOUドメインを含有するがBrn-3bのN-末端領域を有するキメラ( キメラ4)は活性化の能力がなかった(図4bおよびc)。これらのデータを併せる と、POUドメインはDNAの結合には必要であるが、Bcl-2プロモーターの活性化の ためにはPOU活性化ドメインではなくN-末端活性化ドメインが必要であるという 以前の観察が拡張され、そして証明される。この結果はN-末端ドメインが内在性
Bcl-2発現の活性化およびND7細胞のアポトーシスからの保護のために必要である
という観察に一致する。
【0103】 E.Bcl-2の潜在的Brn-3a結合部位がトランス活性化のために十分である Brn-3aによるトランス活性化に必要なP1およびP2領域内の配列エレメントを同
定するために、2つのBcl-2プロモーターの欠失構築物をルシフェラーゼリポー ター遺伝子の上流にクローニングし、そして親ND7細胞中にBrn-3a発現プラスミ ドと一緒に同時トランスフェクトした。P1プロモーターの欠失は、113bp断片(-
1412〜-1525)がBrn-3aによるトランス活性化に必要であることを表し(図5a) 、この断片は、先にBrn-3aおよびBrn-3bと結合することが示されているインター
ネクシンプロモーター内のCTTCNNNCTTC(配列番号6)モチーフと同様の反復エレ
メントCCTCTTACTTC(配列番号5)を含み(Budhram-Mahadeoら,1995)、そして、
Brn-3aの長型に存在するN末端活性化ドメインを介してのみ活性化された。
【0104】 P2 Bcl-2プロモーターを含有する領域の研究は、イントロンおよびNREを含有 する領域のすぐ5'側の569bp領域(-746〜-178)(YoungおよびKorsemeyer,1993 )がBrn-3aによるトランス活性化に必要であることを明らかにした(図5a)。こ
の領域は、α-インターネクシン中で同定されたインターネクシンCTTCNNNCTTC(
配列番号6)モチーフに対する配列と同様な2つの反復エレメント、CTTCTGTTC(
配列番号7)およびCATCAATCTTC(配列番号8)を含有する。この領域を含む173b
p BglII/NsiI断片を切除してクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ
リポーター遺伝子ベクターpBL2CAT中にサブクローニングし、続いて、Brn-3発現
プラスミドとともに親ND7細胞中に同時トランスフェクトした。Brn-3aおよびBrn
-3aIによる同時トランスフェクションはCATリポーター遺伝子活性の有意な増加 (共にp<0.05)をもたらすが、Brn-3bおよびBrn-3bVはリポーター遺伝子活性に 有意な変化をもたらさなかった(図6a)。
【0105】 F.Brn-3aはP1およびP2 Bcl-2プロモーター内のエレメントと結合する Brn-3因子がこれらの配列エレメントと結合する能力を有することを確認する ために、P1プロモーター(オリゴP1)由来の配列CCTCTTACTTC(配列番号5)およ
びP2プロモーター(オリゴP2)由来の配列CATCAATCTTC(配列番号8)を含む合成
オリゴヌクレオチドを使って、電気移動度シフトアッセイ(electromobility sh
ift assay)を行った。
【0106】 2本鎖オリゴヌクレオチド(オリゴP1およびオリゴP2)は両方ともin vitroで 翻訳されたBrn-3aに結合したが、無標識オリゴとの競合により測定した結果、Br
n-3aのオリゴP2に対するアフィニティーはP1に対するそれよりほぼ10倍強かった
。結合の特異性を、過剰の無標識オリゴヌクレオチドの存在下での結合部位に対
する競合により確かめた。1本鎖プローブとして個々のオリゴヌクレオチドを使 った結果、両ケースとも、Brn-3aは、センス鎖に対するよりはるかに大きなアフ
ィニティーでアンチセンス配列と結合した。このような観察は、Brn-3aは対応す
るセンス鎖と結合するより大きなアフィニティーでCTTCNNNCTTC(配列番号6)モ
チーフを含むアンチセンス鎖と同様に結合すると報じた本発明者らの先のα-イ ンターネクシンプロモーターの研究(Budhram-Mahadeoら, 1995)と一致した。
【0107】 これらのエレメントは単独でBrn-3を介する応答を与えるのに十分であるかを 決定するために、両方のオリゴヌクレオチドをpBL2CATリポーター遺伝子ベクタ ー中にクローニングした。したがって、これらのオリゴヌクレオチドに含まれる
エレメントは、P1(オリゴP1)の5'-CCTCTTACTTC-3'(-1493〜-1503)(配列番 号5)およびP2(オリゴP2)を含む領域の5'-CATCAATCTTC-3'(-584〜-594)(配
列番号8)であった。Brn-3発現ベクターと一緒にこれらの構築物で同時トランス
フェクトした細胞からの抽出物の分析は、オリゴP2内に含まれるエレメントはBr
n-3aに応答を与えるに十分であるが(図6b)、この構築物のBrn-3aによる活性化
の程度は全長プロモーター(図4cと比較すること)または単離173bpBglII/NsiI 断片(図6aと比較すること)を使った実験で先に観察したよりかなり低いことを
実証した。オリゴP1内に含まれる単離エレメントはBrn-3a応答を与えるのに十分
ではなかった。
【0108】 G.bax遺伝子プロモーターはBrn-3aにより調節されない Bcl-2プロモーターのBrn-3aによるトランス活性化が他のBcl-2関連遺伝子の特
性であるかを判定するために、CATリポーター遺伝子の上流にクローニングされ たヒトbaxプロモーター領域の-687〜-318bpを含むプラスミド(クローンTM-668 ;MiyashitaおよびReed, 1995)をND7およびBHK細胞中に各種のBrn-3発現プラス
ミドと一緒に同時トランスフェクトした。全ての実験で、CATリポーター遺伝子 発現レベルの有意な増加または抑制は観察されなかった。
【0109】 (実施例4) Brn-3aの長型は一次DRGおよび小脳ニューロンをアポトーシスから救出する これらの知見のin vivoでの関連を広げるために、Brn-3発現構築物を一次培養
した新生DRGニューロンにlacZ発現マーカープラスミドと一緒にマイクロインジ ェクションし、NGF除去で誘導されるアポトーシスからの保護を評価し、グルタ ミン酸誘導アポトーシス後の培養小脳ニューロンに与える影響を測定した。これ
らの実験は、Brn-3a発現後にアポトーシスを起こす細胞数において同様かつ高度
に統計的有意な低下を示し、これはBrn-3b発現後には見られなかったことである
(下記参照)。
【0110】材料と方法 DRGを新生Wistarラットから出生1日後(P1)に摘出した。結合組織の被膜(co
nnective tissue sheath)を除去後、細胞をコラゲナーゼ(0.3%)中で解離し 、次にポリオルニチン/ラミニンをコートしたカバーグラス上にカバーグラス当
り200〜250ニューロンの最終密度で接種した。細胞を、規定の培地(Davies, 19
95)中で組換えNGFを20ng/mlの最終密度で補充して培養した。
【0111】 翌日、各カバーグラス上に存在するニューロンの数を標準顕微鏡法により測定
した。ニューロンに、構成的サイトメガロウイルス遺伝子プロモーターの下流に
クローニングされたマウスの長型Brn-3aを含有するpCi(Promega)発現ベクター
100 ng/細胞を、マイクロインジェクションした。対照ニューロンに空のpCi(Pr
omega)発現ベクター100 ng/細胞をインジェクションした。マイクロインジェク
ションは細胞核中に行い、カバーグラス上の全ニューロンにインジェクションし
た。
【0112】 培養物をさらに24時間インキュベートした後、培地をNGFを含有しない新鮮培 地に置き換えた。NGFを含有する培養物中の細胞死の数を測定する目的で、控え のカバーグラス中の培地をNGFを補充した培地に置き換えた。それぞれのカバー グラスのニューロン数をNGF除去後24時間で測定した。
【0113】 細胞生存を、各サンプルについて、インジェクション前の数の比率としてのイ
ンジェクション後のニューロン数を計算した。
【0114】結果 発生中のニューロンの生存の調節に果すBrn-3aの潜在的役割を研究するために
、本発明者らは、NGFに依存する出生後DRGニューロンの一次培養におけるこの因
子の過剰発現の効果を分析した。Brn-3aの過剰発現は、NGFの欠乏したDRGニュー
ロンの生存を強化した(図7a、表II)。したがって、Brn-3aの長型はNGF欠乏DRG
ニューロンの生存を促進することが可能であり、この効果はNGFの効果より勝っ ている。
【0115】
【表3】 表II:Brn-3aの過剰発現は新生の後根神経節(dorsal root ganglion)ニューロ
ンを、神経増殖因子の除去により誘導されるアポトーシスから保護する インジェクトした構築物 細胞全数 +NGF -NGF ベクター 220 126 Brn-3a 236 220
【0116】 同一の方法で培養し処理した新生ラット三叉神経神経節から得た感覚ニューロ
ン(sensory neurons)の一次培養で同様な結果を得た(図7b、表III)。ニュー
ロンのこの集団もin vitroの生存はNGFに依存する。
【0117】
【表4】 表III:Brn-3aの過剰発現は三叉神経神経節ニューロンを、神経増殖因子の除去 により誘導されるアポトーシスから保護する インジェクトした構築物 細胞全数 +NGF -NGF ベクター 125 40 Brn-3a 125 40
【0118】 (実施例5) 無能化単純ヘルペスウイルスベクターを使うDRGニューロンにおけるBrn-3aの 発現材料と方法 一次ニューロンの培養 後根、三叉および上頚(superior cervical)神経節を、出生1日後(P1)新生
Sprague Dawleyラットまたは、膣栓を見出す日を胚日e0.5とするステージド(st
aged)C57マウス胚から摘出した。結合組織の被膜を除去した後、神経節をトリ プシン(カルシウムおよびマグネシウム不含イーグル均衡塩類溶液(Eagle Bala
nced Salt Solution)の0.1%溶液(Worthington))中でインキュベートした。そ
の後、神経節をPBS中で2回洗浄し、解離し、そして、ポリオルニチン(0.5mg/ml
)およびラミニン(20μg/ml)でプレコートした滅菌カバーグラス上にカバーグ
ラス当りほぼ200ニューロンの最終密度で広げた。細胞を、組換え神経増殖因子 (NGF;Gibco)を補充した規定の培地で、20ng/mlの最終濃度で培養した。
【0119】 翌日、構成的サイトメガロウイルス(CMV)遺伝子プロモーター下流にクロー ニングされたマウスのBrn-3a長型を含有するpCi発現ベクター(pCi3A)1μgを、
リポソーム介在トランスフェクションにより培養細胞中に導入した。対照培養物
を同様に空のpCi発現ベクター(pCi)1μgによりトランスフェクトした。トラン
スフェクトした細胞を、トランスフェクション後24時間インキュベートし、その
後、培地をNGF添加したもしくは添加していない新鮮培地で置換えた。トランス フェクションの効率を測定するためおよび個々のトランスフェクトしたニューロ
ンを確認するために、培養物を、CMVプロモーター調節下のlacZ遺伝子(CMV-Lac
Z)をコードするプラスミド1μgで同時トランスフェクトした。(β-ガラクトシ
ダーゼ染色により可視化した)トランスフェクト細胞の生存を、NGF有りまたは 無しの培地に移して24時間後に評価した。平行実験で、100ngのプラスミドDNA(
CMV-LacZを伴なうpCiまたはpCi3A)をマイクロインジェクションによりニューロ
ンの核中に導入した。
【0120】ウイルス構築と増殖 プラスミドpR20.5は、HSVゲノム(nts 118,866〜120,219)から誘導された中 央領域により分離された反対(背と背(back to back))方向のRSV/LacZ/pAお よびCMV/GFP/pAカセットからなり、HSV潜伏期間にRVSおよびCMV両方に駆動され る遺伝子の発現を可能にする。これらの配列は、このカセットのいずれの側にも
SrfI部位を含有するオリゴヌクレオチドが挿入されているので、pGEM5(Promega
)プラスミド主鎖からSrfIにより切除することができる。プラスミドpR20.5を構
築するために、RSVプロモーターをpRc/RSV(Invitrogen)から、lacZ/pAをpCH11
0(Pharmacia)から、CMV/pAをpcDNA3(Invitrogen)から、そしてGFPをpEGFP-N
1(Clontech)から切り出した。
【0121】 RSV/lacZ/pAおよびCMV/GFP/pA発現カセットを、pR20.5からSrfIによる消化に よって切り出し、単純ヘルペスウイルスI(HSV-1)UL43遺伝子配列を含有するシ
ャトルベクターの唯一のNsiI部位へサブクローニングして(Coffinら, 1996)、
該カセットをUL43遺伝子配列にフランキングさせた。これによりプラスミドpR20
.5/UL43が得られた。全長Brn-3a cDNAを、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモー ターの下流に、かつCMVプロモーターの制御下でクローニングされたグリーン蛍 光タンパク質(GFP)をコードするcDNAと逆方向に、pR20.5/UL43のBamHI部位に クローニングした。その後、生成したpR20.5/Brn-3a/UL43シャトルベクターを、
Vmw65遺伝子の不活性化挿入ならびにICP34.5遺伝子の両コピー欠失を有するHSV-
1株1764 DNAと一緒に、BHK細胞中に同時トランスフェクトした(Coffinら, 1996
b)。組換えウイルスは、その後、紫外条件下でGFPを可視化してプラーク精製し
た。ウェスタンブロット分析を実施して、高レベルのBrn-3aタンパク質が、高力
価ストックが増殖する前に感染培養物中に生成したことを確認した。RSVプロモ ーター下の細菌のlacZ遺伝子(即ち、pR20.5/lacZ/UL43)を含有する対照ウイル
スを、Brn-3aクローニング工程なしで同様に作製した。
【0122】 三叉神経節ニューロンを単離し、上に記載したようにカバーグラス上にカバー
グラス当り約200ニューロンの密度で培養物中に維持した。二組の培養物を、カ バーグラス当り約1×105プラーク形成単位(pfu)のBrn-3aまたは対照ウイルス に60分間感染させ、洗浄し、その後、NGFを補充した培地で24時間維持した。ウ イルス感染の効率をGFPの可視化により測定した後に、培地を、NGFを添加したま
たは添加しない新鮮培地で置き換えた。その後、24時間後に、神経細胞数を計数
した。
【0123】統計 中央値の比較を、マン-ホィットニー試験(Mann-Whitney test)により、ウィ
ンドウズソフトウエアのミニタブ(Minitab)を使って実施した。
【0124】結果 Brn-3aの過剰発現を指令するウイルスベクターを効率的に神経細胞中に導入で
きることを実証するために、Brn-3aおよびグリーン蛍光リポータータンパク質(
GFP)の両方を発現する無能化単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターを調製した
。このベクターは、Vmw65トランスアクチベータタンパク質およびICP34.5神経毒
性因子をコードする機能性ウイルス遺伝子を欠落し、本発明者らは、in vitroお
よびin vivoでともに有意な神経細胞死を起こすことなく、遺伝子を神経細胞に 効果的に送達することが可能であることを先に示している。
【0125】 E16胚動物からの頚部または腰部DRGの培養物をこのウイルスまたはリポーター
遺伝子のみを発現する対照ウイルスに感染させた。NGFの存在下または不在下で の生存に与える効果を、前のように評価した。これらの実験(表IV)で、頚部お
よび腰部DRG培養物は、NGFを除去すると著しいニューロン損失を示した。両ケー
スで、Brn-3a発現ウイルスはこの損失に対して有意な保護を行った。したがって
、これらのデータは、Brn-3aの保護効果が、Brn-3a発現プラスミドのウイルスベ
クターを使ってならびにリポソーム介在送達によって観察できることを実証した
【0126】
【表5】 表IV:グリーン蛍光タンパク質を発現する無能化単純ヘルペスウイルスベクター
(ベクター)またはBrn-3aを発現する同ウイルスに感染させ、その後NGFの存在 下または不在下で培養した、E16腰部または頚部後根神経節ニューロンの培養物 の生存。数値は少なくとも3つの独立実験の平均で、標準偏差も記載した。 腰部 頚部 ベクター+NGF 98±0 98.5±0.5 ベクター-NGF 25.5±1.5 38.5±0.5 Brn 3a+NGF 89.5±8.5 83±8.5 Brn 3a-NGF 71.5±0.5 88±5
【0127】 (実施例6) 内因性Brn-3aは神経細胞をアポトーシス細胞死から保護する材料と方法 プラスミド構築物 全長Brn-3a cDNA発現ベクターはスミスら(Smithら, 1997c)、ラキンら(Lak
inら, 1995)およびブドラム‐マハデオら(Budhram-Mahadeoら, 1995)により 詳細に記載されている。アンチセンスBrn-3a特異的構築物は、ポリメラーゼ連鎖
反応(PCR)によりプライマーGGATCCGCTGCAG AGCAACCTCTTC(配列番号9)および GTCGAC GAGCGACGGCGACGAGATC(配列番号10)(配列中、太字および下線配列はそ れぞれBamHIおよびSalI制限酵素認識部位を示す)を使って作製された。240塩基
対PCR産物をpGEM-Tベクター(Promega, UK)中に連結し、BamHI/SalI断片として
哺乳類発現ベクターpJ7中へサブクローニングした(MorgensternおよびLand, 19
90b)。
【0128】 結果 本発明者らは先の実施例で、Brn-3aの過剰発現が発生中のニューロンの生存の
調節に作用することを示した。内因性Brn-3a発現もこれらのニューロンの生存に
作用するかを確認するために、アンチセンス手法を使った。したがって、Brn-3b
またはBrn-3cとクロスハイブリダイゼーションできないBrn-3aのN末端から誘導 された240塩基対領域がCMVプロモーター制御下でアンチセンス方向に発現された
特異的アンチセンス構築物を作製した。本発明者らは先に同様の手法を使って、
不死化したニューロン細胞系でBrn-3aのレベルを低下することに成功している(
Lakinら, 1995)。
【0129】 出生1日後のラットから得た三叉神経節ニューロンを、NGFを補充した培地で24
時間培養し、その後、プラスミドDNAをリポソーム介在トランスフェクションに より導入した。細胞の平行サンプルを、(i)インサートの欠落した空の発現ベク ター、(ii)構成的サイトメガロウイルス遺伝子プロモーターの下流にクローニン
グされたBrn-3aに対する全長cDNAを含有する同じ発現ベクター、または(iii)Brn
-3aのN末端から誘導された240bpアンチセンス構築物を含有する同じ発現ベクタ ーによりトランスフェクトした。各トランスフェクションはβ-ガラクトシダー ゼ発現ベクターも含有し、トランスフェクションが成功した細胞をβ-ガラクト シダーゼ染色により可視化することができた。典型的なトランスフェクション効
率は60〜70%であることが観察された。その後、各ケースにおいて生存するトラ
ンスフェクトしたニューロン数を基にして、各サンプルに対する細胞生存を計算
した。
【0130】 これらの実験で、前と同じように、ベクターでトランスフェクトしたものと比
較してNGFの存在する場合でも、Brn-3aでトランスフェクトした細胞に明確な生 存強化が観察された(表VおよびVI)。しかし、重要なことは、三叉(表V)およ
びDRG(表VI)ニューロンの両方とも、空の発現ベクターによるトランスフェク ションと比較して、Brn-3aアンチセンス構築物でトランスフェクトすると生存の
有意な低下を示したことである。この生存の低下はNGFの存在下または不在下の 両方で観察され、Brn-3aの発現がこれら両方の条件下で生存に重要であることを
示した(ベクターでトランスフェクトした細胞の生存をBrn-3aアンチセンスプラ
スミドでトランスフェクトした細胞のそれと比較したとき、p<0.05)。興味深 いことに、このケースでは、NGFが不在の場合、DRGニューロンのより高い生存は
、Brn-3aアンチセンス構築物でトランスフェクトしたときのそれらの生存のより
大きな低下と対応していた(表Vと表VIを比較)。
【0131】
【表6】 表V:空の発現ベクター、Brn-3a発現ベクターまたはアンチセンスBrn-3aベクタ
ーでトランスフェクトしかつその後NGFの存在下または不在下で培養した、出生 後の三叉神経節ニューロンの培養物の生存。数値は少なくとも3つの独立実験の
平均で、標準偏差も記載した。 +NGF -NGF ベクター 70±3 27±17 Brn 3a 91±5 79±0.5 Brn 3aアンチセンス 35±11 18±9
【0132】 このように、これらのデータは、特定のニューロン栄養因子の存在下または不
在下の両方で、Brn-3aの過剰発現は三叉およびDRGニューロンの両方の生存を増 加することができることを示す。
【0133】
【表7】 表VI:空の発現ベクター、Brn-3a発現ベクターまたはアンチセンスBrn-3aベクタ
ーでトランスフェクトしかつその後NGFの存在下または不在下で培養した、出生 後の後根神経節ニューロンの培養物の生存。数値は少なくとも3つの独立実験の
平均で、標準偏差も記載した。 +NGF -NGF ベクター 74.5±11.5 47±5 Brn 3a 84±6 64±17 Brn 3aアンチセンス 37±7 15±3
【0134】 (実施例7) Brn-3aの過剰発現は発生の異なる段階における神経細胞の生存を増加する 発生の異なる段階におけるニューロンを保護するBrn-3aの能力に関する研究を
広げるために、本発明者らは、E11〜E18の異なる胚段階から調製した三叉神経節
培養物に及ぼす過剰発現Brn-3aの効果を検証する同様の研究を実施した。これら
の実験では、Brn-3a過剰発現は、試験した発生の異なる段階でベクターのみで処
理した細胞で観察された生存レベルと比較して、NGFの存在下での生存にはほと んど効果はなく、恐らくは、これらの条件下で観察された高い生存レベルによる
のであろう(図8a)。対照的に、NGF不在下では、Brn-3aを過剰発現した培養物 はベクターで処理した培養物と比較して明らかに強化された生存が全時点で観察
されることを示した(試験した全時点でBrn-3aまたはベクター処理細胞の比較に
対してp<0.05)。これは、Brn-3aの過剰発現が、胚発生のいくつかの異なる段階
で三叉神経節ニューロンを保護することができることを示す(図8b)。
【0135】 Brn-3aはこの発生期間全体を通して三叉神経節で発現されるので、本発明者ら
はBrn-3a発現のアンチセンス抑制が異なる発生段階の三叉神経節ニューロンの生
存を低下するかについても確認したいと考える。図9に示されるように、これら ニューロンが胚発生後期から誘導されるときは、Brn-3a発現のアンチセンス抑制
は、NGFの存在下で、三叉神経節ニューロンの生存を低下させ、E14日以後に調製
された培養物中のベクター対照とBrn-3aアンチセンス処理ニューロンの間では生
存に高度な有意差が観察された。対照的に、E12およびE13日では効果は小さく、
E11では全くなかった。
【0136】 したがって、全てのこれらの段階でニューロンに発現される内因性Brn-3aは、
発生の進むにつれてさらに有意な生存促進の役割を果すことが明らかである。こ
れは、Brn-3aノックアウトマウスの三叉神経節は胚発生の初期には正常サイズで
あるが、胚発生期後期および出生後にのみ野生型動物のそれらとサイズに有意な
差を表すという知見と一致する。
【0137】考察 本発明者らはそのタンパク質産物が神経細胞をアポトーシスから保護すること
ができる遺伝子を同定するためのモデル系として、ND7ニューロン細胞系を使用 した。アポトーシスから神経細胞を保護しうる遺伝子を試験するにあたり、本発
明者らの実験室で起源を同定したBrn-3aおよびBrn-3b転写因子を試験した。人工
的にBrn-3bまたはBrn-3aの短型を過剰発現するND7細胞系は、対照ND7細胞に対し
て、レチノイン酸を添加した無血清培地に移した後にアポトーシスの程度におい
て差を示さず、これらの因子は保護効果のないことを示した。対照的に、Brn-3a
の長型を過剰発現する細胞系は、同じ培地に移した後に全細胞死の測定(染料ト
リパンブルーを除去する能力)およびアポトーシス度の測定(二倍体未満のDNA 含量をもつ細胞の数、クロマチン断片化アッセイおよび部分分解したDNAの自由 末端を検出するTUNEL標識)の両方によりアッセイした細胞死の著しい低下を示 した。
【0138】 したがって、Brn-3aの長型は、Brn-3bまたBrn-3aの短型とは異なり、ND7細胞 をアポトーシスに対して保護することができる。この効果は、Bcl-2タンパク質 の発現を誘導するBrn-3aの長型の能力に関係することが明らかである。このよう
に、Brn-3aの長型を発現するND7細胞は、対照細胞またはBrn-3aの短型もしくはB
rn-3bを発現する細胞と比較して、ほぼ15倍のBcl-2を過剰に発現する。
【0139】 さらに、bcl-2遺伝子プロモーターは、同時トランスフェクションアッセイに おいてBrn-3aの長型により活性化される。抗アポトーシス効果の場合、この活性
化は、長型のN末端ドメインを欠くBrn-3aの短型では観察されないので、このド メインに依存する。対照的に、Brn-3aの長型および短型は両方とも、神経突起の
伸び出しに関わる神経フィラメントおよびSNAP-25をコードする遺伝子のプロモ ーターを活性化することができ、この活性化は該タンパク質の両型に共通なタン
パク質のC末端POUドメインに依存する。これは、C末端ドメインがND7細胞の神経
突起の伸び出しの誘導に必須であり、そしてこの効果はBrn-3aの長型および短型
の両方により誘導することができるという本発明者らの知見に一致する。
【0140】 したがって、アポトーシスからの保護および神経突起の伸び出しの刺激に対す
るBrn-3aの効果は、タンパク質の別の領域を必要とし、N末端ドメインをもつ領 域が細胞死からの保護に必要であり、一方、C末端ドメインPOUは神経突起の伸び
出しを刺激する。興味深いことに、バリン残基をBrn-3bの等価位置に見出される
イソロイシンに変換するBrn-3aのPOUドメインにおける単一変異は、神経突起の 伸び出しに関わる遺伝子を刺激する能力を消滅させ、この伸び出しを刺激するこ
とを阻止する。しかし、予測されるように、この変異は、該タンパク質のN末端 領域に影響を与えないので、Bcl-2発現を活性化するまたはプログラムされた細 胞死から細胞を保護するBrn-3aの能力に影響を与えない。したがって、神経突起
の伸び出しおよび細胞死に対する全ての可能な組合わせをもつBrn-3aの型を調製
することが可能である。Brn-3aの天然に存在する長型は神経突起の伸び出しおよ
び生存の両方を刺激するが、短型は神経突起の伸び出しのみを刺激する。同様に
、バリンのイソロイシンへの変異を有する長型は生存を刺激するが神経突起の伸
び出しを刺激せず、そしてこの変異を有する短型はいずれの過程にも影響を与え
ない。
【0141】 このように、Brn-3aのこれらの型は、これらの各過程に関わる多重遺伝子の発
現を刺激することによって作用し、神経突起の伸び出しおよび/または神経細胞
生存を刺激することが可能な試薬の特有なパネルを提供する。Brn-3aは、神経細
胞の生存および伸び出し過程に要求される遺伝子発現の特定のプログラムを誘導
するマスターレギュレーターを代表しうる。したがって、Brn-3aの過剰発現は、
これらの事象に関わる単一構造タンパク質をコードする単一遺伝子の過剰発現よ
りも、治療の立場では大きな価値を有するであろう。さらに、細胞生存および伸
び出し過程を個別にまたは平行して刺激するBrn-3aの型の利用可能性は、これら
過程の両方を刺激するかまたは1つを刺激し他を刺激しない必要のある様々な立
場で価値を有するであろう。
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【配列表】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1A】 Brn-3a過剰発現の存在下または不在下における細胞の生存/アポトーシスを比
較するグラフを示す。
【図1B】 Brn-3a過剰発現の存在下または不在下における細胞の生存/アポトーシスを比
較するグラフを示す。
【図1C】 Brn-3a過剰発現の存在下または不在下における細胞の生存/アポトーシスを比
較するグラフを示す。
【図2A】 本研究に用いた構築物を示す。
【図2B】 異なるBrn-3a構築物を発現する細胞についての細胞生存のグラスを示す。
【図3A】 Brn-3a発現に応答するBcl-2およびBadのレベルを示す、ND7細胞抽出物のウエ スタンブロットである。
【図3B】 Brn-3aの過剰発現に応答するBcl-2発現を示すグラフである。
【図4A】 Bcl-2遺伝子の5'末端を示す。
【図4B】 異なるBrn-3a構築物を用いたリポーター遺伝子アッセイの結果を示す。
【図4C】 異なるBrn-3a構築物を用いたリポーター遺伝子アッセイの結果を示す。
【図5A】 異なるBcl-2プロモーター構築物を用いたリポーター遺伝子アッセイの結果を 示す。
【図5B】 異なるBcl-2プロモーター構築物を用いたリポーター遺伝子アッセイの結果を 示す。
【図6A】 異なるBrn-3a因子およびBcl-2プロモーターの1領域を用いたリポーター遺伝 子アッセイの結果を示す。
【図6B】 異なるBrn-3a因子およびBcl-2プロモーターの1領域を用いたリポーター遺伝 子アッセイの結果を示す。
【図7A】 Brn-3aの存在下または不在下における細胞生存のグラフを示す。
【図7B】 Brn-3aの存在下または不在下における細胞生存のグラフを示す。
【図8A】 胎児発生の種々の段階から得た三叉神経節ニューロンの、Brn-3a過剰発現の存
在下または不在下における生存を示す。
【図8B】 胎児発生の種々の段階から得た三叉神経節ニューロンの、Brn-3a過剰発現の存
在下または不在下における生存を示す。
【図9】 胎児発生の種々の段階から得た三叉神経節ニューロンの、アンチセンスBrn-3a
ベクターの存在下または不在下における生存を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07K 14/47 C12N 15/00 ZNAA C12N 7/00 A61K 37/12 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U S,UZ,VN,YU,ZW (72)発明者 ラッチマン・デビッド・セイマー イギリス国 ダブル1ピー 6ディーピー ロンドン、クリーブランド ストリート 46、ザ ウィンデイヤー ビルディン グ、デパートメント オブ モレキュラー パソロジー、ディビジョン オブ パソ ロジー、ユーシーエル メディカル スク ール

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ヒトまたは動物の身体を療法によって治療する方法に使用す
    るための、転写因子Brn-3aまたはその誘導体を含むポリペプチド。
  2. 【請求項2】 前記誘導体がBrn-3aのN末端断片を含む、請求項1に記載の
    ポリペプチド。
  3. 【請求項3】 前記誘導体が抗アポトーシス活性を有するが、神経突起の伸
    び出し(outgrowth) を刺激する活性を有しない、請求項1または2に記載のポリ
    ペプチド。
  4. 【請求項4】 上記請求項のいずれかに記載の、ヒトまたは動物の身体を療
    法によって治療する方法に使用するためのポリペプチドをコードするポリヌクレ
    オチド。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む核酸ベクターであ
    って、該ポリペプチドがヒトまたは動物の身体を療法によって治療する方法に使
    用するための前記ポリペプチドの宿主細胞における発現を可能とする調節配列に
    機能しうる形で連結されている該ベクター。
  6. 【請求項6】 前記宿主細胞が哺乳動物の中枢または末梢神経系の細胞であ
    る、請求項5に記載のベクター。
  7. 【請求項7】 前記ポリヌクレオチドおよび調節配列の両側に哺乳動物ゲノ
    ム配列をさらに含む、請求項5または6に記載のベクター。
  8. 【請求項8】 前記ポリヌクレオチドおよび調節配列の両側にウイルスゲノ
    ム配列をさらに含む、請求項6または7に記載のベクター。
  9. 【請求項9】 請求項4に記載のポリヌクレオチドを含むウイルス株であっ
    て、該ポリヌクレオチドが該ポリヌクレオチドによってコードされているヒトま
    たは動物の身体を療法によって治療する方法に使用するためのポリペプチドの宿
    主細胞における発現を可能とする調節配列に機能しうる形で連結されている該ウ
    イルス株。
  10. 【請求項10】 前記ウイルス株が単純ヘルペスウイルス(herpes simplex
    virus)株である、請求項9に記載のウイルス株。
  11. 【請求項11】 請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5から8のい
    ずれかに記載のベクター、または請求項9もしくは10に記載のウイルス株をトラ
    ンスフェクション作用物質と共に含む、ヒトまたは動物の身体を療法によって治
    療する方法に使用するための組成物。
  12. 【請求項12】 前記トランスフェクション作用物質がカチオン性作用物質
    である、請求項11に記載の組成物。
  13. 【請求項13】 前記トランスフェクション作用物質がリポソーム組成物で
    ある、請求項11に記載の組成物。
  14. 【請求項14】 請求項1から3のいずれかに記載のポリペプチド、および
    少なくとも1つの他の治療用ペプチドを含む、ヒトまたは動物の身体を療法によ
    って治療する方法に使用するための組成物。
  15. 【請求項15】 請求項3に記載のポリヌクレオチド、および治療用ペプチ
    ドをコードする少なくとも1つの他のポリヌクレオチドを含む、ヒトまたは動物
    の身体を療法によって治療する方法に使用するための組成物。
  16. 【請求項16】 請求項5から8のいずれかに記載のベクター、および第2
    の治療用ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドであって該因子の宿主
    細胞中における発現を可能とする調節配列に機能しうる形で連結されたポリヌク
    レオチドを含むベクターを含む、ヒトまたは動物の身体を療法によって治療する
    方法に使用するための組成物。
  17. 【請求項17】 請求項9または10に記載のウイルス株、および第2の治療
    用ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含むウイルス株を含む、ヒ
    トまたは動物の身体を療法によって治療する方法に使用するための組成物。
  18. 【請求項18】 請求項1から3のいずれかに記載のポリペプチドをコード
    するポリヌクレオチド、および第2の治療用ポリペプチドをコードするポリヌク
    レオチドを含むウイルス株。
  19. 【請求項19】 前記第2の治療用ポリペプチドが神経栄養因子である、請
    求項14から17のいずれかに記載の組成物または請求項18に記載のウイルス株。
  20. 【請求項20】 請求項1から3のいずれかに記載のポリペプチド、請求項
    4に記載のポリヌクレオチド、請求項5から8のいずれかに記載のベクター、請
    求項9、10もしくは18に記載のウイルス株、または請求項11から17のいずれか、
    もしくは19に記載の組成物を、製薬上許容される担体もしくは希釈剤と共に含む
    医薬組成物。
  21. 【請求項21】 ヒトまたは動物の末梢神経系または中枢神経系の疾患を治
    療する方法に用いるための、請求項1から3のいずれかに記載のポリペプチド、
    請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5から8のいずれかに記載のベクタ
    ー、請求項9、10もしくは18に記載のウイルス株、請求項11から17のいずれか、
    もしくは19に記載の組成物、または請求項20に記載の医薬組成物。
  22. 【請求項22】 前記疾患が神経発生性疾患である、請求項21に記載のポリ
    ペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、ウイルス株または組成物。
  23. 【請求項23】 前記疾患がヒトまたは動物の末梢神経系または中枢神経系
    の傷害である、請求項21に記載のポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、
    ウイルス株または組成物。
  24. 【請求項24】 ヒトまたは動物の末梢神経系または中枢神経系の細胞にお
    けるアポトーシスを阻止するのに用いるための、請求項1から3のいずれかに記
    載のポリペプチド、請求項4に記載のポリヌクレオチド、請求項5から8のいず
    れかに記載のベクター、請求項9、10もしくは18に記載のウイルス株、請求項11
    から17のいずれか、もしくは19に記載の組成物、または請求項20に記載の医薬組
    成物。
  25. 【請求項25】 損傷を受けた後で神経の再生を促進するのに用いるための
    、請求項1から3のいずれかに記載のポリペプチド、請求項4に記載のポリヌク
    レオチド、請求項5から8のいずれかに記載のベクター、請求項9、10もしくは
    18に記載のウイルス株、請求項11から17のいずれか、もしくは19に記載の組成物
    、または請求項20に記載の医薬組成物。
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