【発明の詳細な説明】
ヒトのサイトメガロウイルスプロテアーゼ用の改良した基質 発明の分野
本発明は、ヘルペスウイルスプロテアーゼ用の基質、ヘルペスウイルスプロテ
アーゼの活性を決定する方法及びヘルペスウイルスプロテアーゼの阻害剤を同定
する方法に関する。発明の背景
ヘルペスウイルスは、ヒト及び動物に対して広範囲な病気の原因となっている
。例えば、単純庖疹ウイルスの1型及び2型(HSV−1及びHSV−2)は、口唇ヘル
ペス及び生殖障害のそれぞれ原因となり;水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)は、水
疱瘡及び帯状疱疹の原因となり;エプスタイン−バールウイルス(EBV)は、感
染性単核球症の原因となり;ヒトサイトメガロウイルス(HCMV、β−ヘルペスウ
イルス)は、免疫無防備状態のヒト、例えばAIDS患者、新生児及び臓器移植の受
容者にとって重大な病原体となる(Mocarski,E.S.(1996)in Vrology(Fields,B.N
.,Knipe,D.M.,Howley,P.M.,編集),pp.2447-2492,Lippincott-Raven Publishers
,フィラデルフィア;及びBritt,W.J.Ard,C.A.(1996)in Virology(Fields,B.N.,K
nipe,D.M.,Howley,RM.,編集),pp.2493-2523,Lippincott-Raven Publishers,フィ
ラデルフィア)。
現在最も広く使用されている抗ヘルペス剤は、アシクロビル(acyclovir)及
びガンシクロビル(gancidovir)(プリン及びピリミジンヌクレオシド類似体)並
びにフォスカーネット(foscarnet)である。これらの薬剤によるヘルペスウイ
ルス感染症の治療は限られた成功しか収めておらず、より安全で有効な治療剤が
求められている。
ヘルペスウイルス科の一つとして、HCMVは、キャプシド構造に含まれかつ感染
性のビリオンに必須である特異なセリンプロテアーゼをコードする(Preston,V.G
.,Castes,J.A.V.,Rixon,F.J.(1983)J.Virol.45,1056-1064;
Gao,M.,Matusick-Kumar,L.,Hurlburt,W.,DiTusa,S.F.,Newcomb,W.W.,Brown,J.C.
,McCanm,P.J.,III,Deckman,I.,Colonno,R.J.(1994)J.Virol.68,3702-3712;Matu
sick-Kumar,L.,McCann,P.J.,III,Robertson,B.J.,Newcomb,W.W.,Brown,J.C.,Gao
.,M.1995 J.Virol.69,7113-7121;Gibson,W.,Welch,A.R.,Hall,M.R.T.(1995)Pers
pect.Drug Discovery Des.2,413-426;及びLitu,F.,Roizman,B.(1991)J.Virol.,6
5,5149-5156)。この酵素はアセンブリータンパク質のプロセシングを引き起こす
原因となり、その機能はバクテリオファージの“骨格形成(scaffolding)”タン
パク質に類似している(Casjens,S.,King,J.(1975)Annu.Rev Biochem.44,555-61
1)。アセンブリータンパク質のプロセシングに失敗すると、異常な、非−感染性
のキャプシドだけが蓄積されることとなる(Preston,V.G.et al.,下記参照)。そ
れゆえこのプロテアーゼは、新規な抗ウイルス剤を開発する際に魅力的な目標と
なる。
ヘルペスウイルスプロテアーゼの阻害剤を同定するために、プロテアーゼ活性
の測定を可能とする分析が必要である。最初の分析は開裂生成物の電気泳動によ
る分離に基づいていた(Gibson,W.et al.,下記参照、及びLiu,F.et al.,下記参照
)。しかしながら、これらの分析は速度が遅く扱いが面倒であった。より早く処
理能力が高い分析は、次に開発された、HCMVプロテアーゼ用の蛍光源性基質を使
用するものであった(Holskin,B.P.,Bukhtiyarova,M.,Dunn,B.M.,P.,de Chastona
y,J.,Pennington,M.W.(1995)Anal.Biochem.227,148-155;Pinko,C.,Margosiak,S.
A.,Vanderpool,D.,Gutowski,J.C.,Condon,B.,Kan,C.-C.(1995)J.Biol.Chem.270,
23634-23640;Handa,B.K.,Keech,E.,Conway,E.A.,Broadhurst,A.,Ritchie,A.(199
5)Antivir.Chem.Chemother.6,255-261;及びToth,M.V.,Wittner,A.J.,Holwerda,B
.C.,米国特許第5,506,115、1996年4月9日発行)。これらの蛍光源性基質は、酵
素の成熟開裂サイト(“M−サイト”)に基づき、かつ蛍光の供与体/受容体ペア
、例えばEDANS/DABCYL及び2−アミノ安息香酸/3−ニトロチロシンのスペクト
ルが重なる性質を利用している(Matayoshi,E.D.,Wng,G.T.,Krafft,G.,Erickson,
J.(1990)Science 247,954-958;及びMelda,M.,Breddam,K.(1991)Anal.Biochem.19
5,141-147)。これらのHCMVプロテアーゼの基質におけるペアの
間の分離は、10から11個のアミノ酸まで変化し、特異性定数kcat/Kmは800から3
000M-1s1まで変化する(表I)。
表I
従来報告されたHCMVプロテアーゼの蛍光源性基質
a.Holskin,B.P.,Bukhtiyarova,M.,Dunn,M.B.,Baur,P.,de Chastonary,J.,Pennin
gton,M.W(1995)Anal.Biochem.227,148-155。
b.Handa,B.K.,Keech,E.,Conway,E.A.,Broadhurst,A.,Ritchie,A.(1995)Antivir.
Chem.Chemother.6,255-261。
c.Pinko,C.,Margosiak,S.A.,Vanderpool,D.,Gutowski,J.C.,Condon,B.,Kan,C.-C
.(1995)J.Biol.Chem.270,23634-23640。
これらの数字は、ヘルペスウイルスプロテアーゼには長いペプチド鎖が必要で
あること及び、他のウイルス性プロテアーゼに比べて相対的に活性が低いことを
反映している(Gibson,W.et al.,下記参照)。
ここに開示したように、酵素の成熟サイト上にモデル化した新規な種類の基質
を開発した。この種類の新規な基質の反応速度論的な特質は、HCMVプロテアーゼ
阻害剤のスクリーニング及び構造の研究に使用する、例えば蛍光、発色又は放射
線による分析を精緻なものとするのに適している。ペプチドを主体とする阻害剤
の合理的な構造において急速な発展を達成しようとする場合、従来の報告に見ら
れるより活性のある基質が必要となる。より活性のある基質から得られる利点は
、分析において酵素濃度を大きく減少させ得ること及び阻害剤の有効性を明確に
決定できることである。改良された活性に対する要件は、ここで開示された新規
な基質によって満たされた。
これらの新規な基質は、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、放射線、
発色及び蛍光による分析に特に有用である。後者の型の分析では、通常他の方法
を越える大きな利点、例えぼより大きな処理能力、より高い感度及び加水分解工
程の連続的な監視、をもたらす。
ごく最近、新規な蛍光源性基質の構造に対する興味が増大してきており、この
ことは、種々の酵素を利用した手順において多数のこの基質の使用例があること
で分かる(Matayoshi,E.D.et al.,下記参照;Wang,G.T.,Chung,C.C.,Holzman,T.F.
,Krafft,G.A.(1993)Anal.Biochem.210,351-359;Pennington,N.W.,Zaydenberg,I.
,Byrnes,M.E.,de Chastonay,J.,Malcolm,B.A.,Swietnicki,W.,Farmerie,W.G.,Sc
arborough,P.E.,Dunn,B.M.(1993)in Peptides 1992:Proceedings of the 22nd.E
uropean Peptide Symposium(Schneider,C.H.,Eberle,A.N.,編集)、pp.936-937,E
scom,Leiden,オランダ;Pennington,M.W.,Thornberry,N.A.(1994)Peptide Res.7,
72-76;Knight,G.C.(1995)Meth.Enzymol.248,18-34(及びこの参考文献);及びJean
,F.,Basak,A.,DiMaio,J.,Seidah,N.G.,Lazure,C.(1995),Biochem.J.307,689-695
)。発明の概要
本発明の一つの観点は、式Iで表わされるヘルペスウイルスプロテアーゼによ
る開裂に適した基質を含む:
X−Tbg−Tbg−Y−Ala−Z (I)
ここでXは、蛍光供与体基、蛍光受容体基、親和性タグ、検出可能な標識又はN
−末端キャッピング群であり;又はXは、基質を十分に認識することができるア
ミノ酸配列又はその誘導体であって、この配列に、蛍光供与体基、蛍光受容体基
、親和性タグ、検出可能な標識若しくはN−末端キャッピング群が任意に結合し
ている配列である;
Yは、二価の基NHCH{CH2C(O)N(R1)(R2)}C(O)であり、ここで、R1及びR2は独立
して、水素、低級アルキル、低級シクロアルキル若しくは(低級シクロアルキル
)−(低級アルキル)、又はR1及びR2は窒素原子と共に結合してピロリジノ、ピペ
リジノ若しくはモルホリノ基を形成する;及び
Zは、基質を十分に認識することができるアミノ酸配列又はその誘導体であって
、
この配列に、蛍光供与体基、蛍光受容体基、親和性タグ又は検出可能な標識が任
意に結合している配列;又はZは、アミノ酸によるアシル化によって蛍光又は吸
収特性が変化する、芳香族アミノ又はフェノキシ化合物であり;又はZは、アミ
ノ、低級アルキルアミノ又は低級アルコキシであり;
ただし、(1)X及びZの一が蛍光供与体を含む場合はX及びZの他の一が蛍光受
容体基を含み、かつ(2)X及びZの一が親和性タグを含む場合はX及びZの他の
一が検出可能な標識を含み;ここで、前記プロテアーゼは前記基質をAlaとZの
間の対応するアミド又はエステル結合で開裂する。
本発明の他の観点によると、先に延べた基質を使用してヘルペスウイルスプロ
テアーゼの活性を測定する方法が提供される。
本発明のさらに他の観点によると、先に延べた基質を使用してヘルペスウイル
スプロテアーゼの阻害剤を同定する方法が提供される。図面の説明
第1図は、本出願の改良した基質の種々の濃度における、HCMVプロテアーゼに
対するペプチド阻害剤の阻害効果を示す。発明の詳細な説明
一般に、ここで使用したアミノ酸及び保護基の略称は、IUPAC−IUB生化学命名
法委員会の勧告に基づいており、European Journal of Biochemistry 138,9(198
4)を参照されたい。例えば、Ala、Arg、Val、Ile、ser、Tbg、Thr、Tyr、Ans及
びLeuはそれぞれL−アラニン、L−アルギニン、L−バリン、L−イソロイシ
ン、L−セリン、L−tert−ブチルグリシン、L−スレオニン、L−チロシン、
L−アスパラギン及びL−ロイシン残基を表わす。
ここで使用する“蛍光供与体基”という用語は、変性し、アミノ酸配列に結合
することができる蛍光発光基を意味する。このような基の例は、2−アミノベン
ゾイル(及びそのハロゲン化誘導体)、5−{(2−アミノエチル)アミノ}−ナフタ
レン−1−スルホニル(EDANS)、5−(ジメチルアミノ)ナフタレン−1−スルホニ
ル(DANSYL)、7−メトキシクマリン−4−アセチル、ニコチン酸(及
びその誘導体)及びトリプトファンから誘導されるものである。
ここで使用する“蛍光受容体基”という用語は、芳香族消光基であって、蛍光
供与体基が受容体基に近接して共有結合している場合に、蛍光供与体基の蛍光エ
ネルギーを吸収しかつ蛍光発光を減少させる基を意味する。このような基の例は
、3−ニトロチロシン、4−ニトロフェニルアラニン、2,4−ジニトロフェニルア
ラニン、DANSYL、4−〔{4−(ジメチルアミノ)フェニル}アゾ〕ベンゾイル(DA
BCYL)又は4−(ジメチルアミノ)アゾベンゼン−4'−スルホニル(DABSYL)を
含む。
ここで使用する“親和性タグ”という用語は、リガンドの受容体に対する強い
親和力を、リガンドが共有結合しているものを溶液から抽出するのに使用できる
リガンドを意味する。このようなリガンドの例は、ビオチン、又はその誘導体、
ヒスチジンポリペプチド、アミロース糖部分又は特定の抗体で認識可能な定義し
たエピトープを含む。
ここで使用する“検出可能な標識”という用語は、物理的特性又は他の分子と
の相互作用を放射活性又は発色を測定することによって、存在の検出が可能とな
る原子又は基を意味する。
ここで使用する“キャッピング群”という用語は、アミノ酸又はペプチドのN
−末端窒素に結合する水素を置換する群を意味する。キャッピング群を最終的に
除去するまでは、この部位で更なる化学反応が生じることを妨げる効果を、この
群は有している。キャッピング群の例は、アセチル及びスクシンイミジル基を含
む。
ここで使用する“芳香族アミノ基”という用語は、アミノ基から水素を除去す
ることによって芳香族アミンから誘導される基;アミノ基のアシル化によって変
化する蛍光又は吸収特性を有する芳香族アミン、を意味する。芳香族アミンの例
は、7−アミノ−4−メチルクマリン、6−アミノ−1−ナフタレンスルホンアミン
、ローダミン110(Aldrich Chemical Co.、ミルウォーキー、WI、USA)2−ナフ
チルアミン、4−メトキシ−2−ナフチルアミン及びニトロアニリンを含む。
ここで使用する“フェノキシ基”という用語は、フェノール系化合物の水酸基
から水素を除去して誘導された基であって、水酸基のアシル化によって変化する
蛍光及び吸収特性を有するフェノール系の化合物を意味する。このようなフェノ
ール系の化合物の例は、4−ニトロフェノール及び類似物を含む。
ここで使用する“低級アルキル”という用語は、単独で又は基と組み合わせて
、1〜6個の炭素原子を含む直鎖アルキル基及び3〜4個の炭素原子を含む分岐アル
キル基を意味し、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、1−メチルエ
チル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル及び1,1−ジメチルエチルを含む
。
ここで使用する“低級シクロアルキル”は、3〜6個の炭素原子を含む飽和の環
状炭化水素基を意味し、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシ
クロヘキシルを含む。
ここで使用する“低級アルコキシ”という用語は、1〜6個の炭素原子を含む直
鎖のアルコキシ基及び3〜4個の炭素原子を含む分岐鎖アルコキシを意味し、メト
キシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキソキシ、1−メチルメトキシ及び1
,1−ジメチルエトキシを含む。後者の基は通常第三−ブトキシとして公知である
。
本発明の基質及び分析についてさらに述べると、HCMVプロテアーゼはタンパク
質の内部を分解する酵素であり、その前駆体タンパク質を、一般的コンセンサス
V−(N/E/K)−A↓(S/A)を有する多くの異なる部位(成熟、終結及び内部
)で開裂する(Gibson,W.et al.,下記参照)。HCMVプロテアーゼによるペプチド基
質を天然開裂サイトに対応して効率よく加水分解するためには、少なくともP4か
らP'4のアミノ酸配列が必要である。さらに、成熟サイトのペプチドの開裂は、
対応する終結サイトのペプチドに比べて、効率が最大で30倍高い。(それゆえ、
成熟配列を、基質の合成及びペプチドに基づく阻害剤の開発のいずれにおいても
出発点として選んだ。)
式(1)の構造を有する本発明の最初の蛍光源性基質は、アントラニルアミド
/ニトロチロシン系を使用した。
ABz-Val-Val-Ans-Ala-Ser-Ser-Arg-Leu-Tyr(3-NO2)Arg-OH (1)
この供与体/受容体ペアのスペクトルの重なり特性が非常に優れていたこと及び
、固相化学による合成が容易であることの両者を考慮してこれを選択した
(Mendal,M.et al.,下記参照、及びGron,H.,Mendal,M.,Breddam,K.(1992),Bioch
emistry 31,6011-6018)。式(1)の基質は、成熟サイトの配列P4−P'4を含んで
おり、この配列のP'2システイン残基はセリンと置換されていて、酸化の問題を
防止している。アントラニルアミド部分はN−末端をうまくキャップしており、
ここでは3−ニトロチロシンが8残基離れて位置し、溶解性を増すために取り込
んだC−末端アルギニン残基に先行している。供与体/受容体ペアの間の距離が
相対的に短いこと、及びアミノ酸配列の特質から、効率的な内部蛍光消光が可能
となった。実際、312nmでの励起及び415nmでの発光の場合のF0/F∞比率は約4
%であった(F0及びF∞は基質とN−末端加水分解生成物を同一の条件で蛍光測定
した)。さらに、15μMより下の信号で干渉される過剰な基質による蛍光の分子間
消光(内部フィルター効果)は実質的に存在せず、このことはこの種の基質につ
いての初期の報告と一致する(Mendal M.et al.,下記参照)。これより上の濃度で
は大きな内部フィルター効果が現われた。
式(1)の基質を、0.5MのNa2SO4の存在下に50nMのHCMVプロテアーゼを使用してH
PLCで測定したところ、反応速度論的なパラメーターであるkcat及びKmは、それ
ぞれ0.20s-1及び760μMであった(表II)。
表II
HCMVプロテアーゼ基質の反応速度論的パラメーター
a.50nM HCMVプロテアーゼを使用(全モノマー濃度)。
b.200〜500nMのHCMVプロテアーゼを使用。
c.HPLCで決定。
d.蛍光定量法で決定。
得られた260M-1s-1における特異性定数kcat/Kmは、他の成熟サイトの基質
と比較して勝るとも劣らない(Gobson,et al.,上記参照)。しかしながら、式(1)
の基質の溶解性に限度があり、そのKm値が高いため、個々のパラメーターの正確
度に限界を生じ、かつ内部フィルター効果のために蛍光による反応速度論的なパ
ラメーターを決定できなかった。にもかかわらず、この濃度より下では、この基
質はHCMVプロテアーゼの活性を十分監視することができる。
式(1)の基質は、阻害剤の定常的なスクリーニングにおける100nM HCMVプロテ
アーゼ分析に使用することができた。しかし、構造−活性相関(SAR)の研究の
進展が急速であるため、酵素濃度を下げて有効な化合物間を識別することが究極
的に必要となっていいる。実際、IC50値は、分析における酵素濃度の1/2より低
くすることはできない。それゆえ酵素を減少させると、活性な阻害剤の有効性を
正確に決定することができる。
天然のP4−P2のVal−Val−Asn配列の代りに、Tbg−Tbg−Asn(Me)2を式(1)の基
質に直接導入すると、式(2)の構造を有する、より効率の高い開裂した蛍光源性
基質が得られることが分かった:
ABz-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-Ser-Ser-Arg-Leu-Tyr(3-NO2)-Arg-OH (2)
式(2)の基質の蛍光特性は式(1)の基質のそれと類似しているが、反応速度論的
な特徴は大きく改善された。標準的な条件下での式(2)の基質の反応速度諭的な
パラメーターであるkcat及びKmは、蛍光定量法で測定して、それぞれ0.051s-1及
び3.2μMであった(表II)。得られた特異性定数kcat/Kmは15940M-1s-1であり、
最適化していない基質より60倍も大きかった。Kmが大きく減少したのは、活性の
本質的な増大及び結合における予期した改良を反映したことが原因であった。N
-末端生成物のABz-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-OHの阻害活性を決定して、反応過程に
干渉するかどうか調べた。75μMより大きいIC50においては、使用した基質の濃
度範囲で、その影響が大きくないことが明白に分かった。
式(2)の基質の反応速度論的パラメーターが改良されたため、基質は既存の蛍
光源性基質を越えた優れた利点を多く有することとなった。第一に、この基質に
よってわずか5nMのHCMVプロテアーゼ使用する分析の開発が直ちに可能となり、
この結果、低いナノモルレベルで有効な阻害剤を明確に特徴付けることが可能と
なった。第二に、基質濃度はKm値よりかなり高いが、内部フィルター
効果により設定される限度より低いため、連続的な蛍光監視が容易となり、この
結果、多種類の反応速度論的分析を厳密に簡単かつ迅速に行うことが可能となっ
た。現在までのところ、冗長で時間を浪費するHPLCの手順がいくつかの適用形態
で使用可能であったのみであり、十分に特徴付けられたHCMVプロテアーゼの蛍光
源性基質であって、Kmを越えた測定と両立可能な蛍光特性を示す基質はまったく
利用できなかった(Margosiak,S.A.,Vanderpool,D.L.,Sisson,W.,Pinko,C.,Kan,C
.-C.(1996)Biochemistry 35,5300-5307)。このような測定は、個々のkcat及びKm
値の正確な決定並びに阻害の様式の分析に不可欠である。
例えばHCMVNoプロテアーゼのペプチドが主体のケトアミド阻害剤DATbg-Tbg-As
n(Me)2-Ala-CONHCH2Phの阻害の様式としては、基質2及び阻害剤濃度が異なるDi
xon-プロット分析で加水分解の初期速度を分析したところ、競合的であることが
分かった(第1図)。この実験で蛍光体を十分に使用できたのは、基質濃度が0.4
から2.5Kmまでの範囲で許容されていたからである。基質1がこの適用形態で使
用できなかったのは、そのKm値が内部フィルター限度を十分に越えていたからで
ある。
先に述べたケトアミド阻害剤は実施例9の手順に従って製造した。
これらの内部的に消光する蛍光源基質の使用を制限する最も重要な要因は、約
15−20μMの内部フィルター効果及び低濃度における重大な蛍光背景の存在であ
る。蛍光源性基質の武器をさらに改良する試みにおいて、蛍光基7−アミノ−4−
メチルクマリン(AMC)を開裂性の結合に導入することとした(Zimmerman,M.,Yurew
icz,E.,Patel,G.(1976)Anal.Biochem.70,258-262)。AMCを種々の蛍光セリン及び
システインプロテアーゼ基質に使用して成功してきた(Meth.Enzymol.244,(Barre
tt,A.J.,編集)におけるProteolytic Enzyme:Serine and Cysteine Peptidases(1
994)pp.1-765)。主な利点は、蛍光が開裂部位にのみ現れ、かつ他に装飾用のグ
ループを必要としないため、信号対雑音比率が高いことにある。P1アラニン残基
に直接この蛍光担持体を付加すると、P'残基のAMC分子による置換が生じた。こ
れらの残基は天然ペプチドの基質に必須であるが、最適化したTbg−Tbg−Asn(Me
)2P4−P2配列はAMC群による置換を十分に補償していることが理由であると考え
られる。式(3)を有する基質を、新たな種類
である短い蛍光源性HCMVプロテアーゼ基質の一日の代表として合成した。
N-Ac-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-AMC (3)
式(3)の基質は、蛍光定量法で測定してそれそれ0.035s-1及び13.2μMのkcat及び
Km値という優れた反応速度論的特性を示した(表II)。得られた特異性定数kcat/
Kmの2650M-1s-1という値は4個のP'残基を欠くものの式(1)の基質の10倍より大
きく、式(2)の基質の6倍より小さい。式(3)の基質は、HCMVプロテアーゼ(及び
多分他の全てのヘルペスウイルスプロテアーゼ)は、十分な開裂にP'アミノ酸の
存在がまったく必要ないことを始めて示したことを表わしている。AMCグループ
の放出によって生成した強い蛍光信号によって、バックグラウンドが無視できる
こともあいまって、式(3)の基質は、感度が低い機器で簡単に開裂の検出ができ
ること、及び溶解性によって決まる限度内において広い濃度範囲で利用可能であ
るという利点を有することとなった(Knight,G.C.et al.,下記参照)。
さらに、本発明に従って、式(1)の改良した基質及び改良した基質を使用する
ヘルペスウイルスプロテアーゼの分析を開示する。分析は、ヘルペスウイルスプ
ロテアーゼを改良した基質と接触させ、基質の開裂を監視して、CMVプロテアー
ゼの活性を測定して行われる。
好ましい種類の基質は式(1)で表わされ、ここで、Zは、7−アミノ−4−メチ
ルクマリン、6−アミノ−1−ナフタレンスルホンアミド、ローダミン110、2−ナ
フチルアミン、4−メトキシ−2−ナフチルアミン、4−ニトロアニリン又は4−ニ
トロフェノールから誘導される芳香族アミノ基又はフェノキシ基である。
他の好ましい種類の基質は、式(1)の基質を含み、ここで、基質は蛍光供与体
基及び蛍光受容体基と共有結合で結合しており、供与体基と受容体基はアラニン
残基と7から12個の付加的なアミノ酸残基で隔てられている。
さらに他の好ましい基質のグループは、式(1)で表わされ、ここで、供与体基
/受容体基のペアは以下のペアから選択される:
EDANS/DABCYL、
トリプトファン/2,4−ジニトロフェニル、
トリプトファン/DANSYL、
7−メトキシクマリン/2,4−ジニトロフェニル、
2−アミノベンゾイル/2,4−ジニトロフェニル又は
2−アミノベンゾイル/3−ニトロチロシン。
本発明の他の有用な基質は、検出可能な標識及び親和性タグに結合している。
実際的で有用な検出可能な標識は放射活性標識、例えば125I、又はβ−ガラクト
シダーゼ、p−ニトロフェノール若しくはp−ニトロアニリンである。実際的で有
用な親和性タグは、ビオチン(又はその誘導体)、ポリヒスチジン、アミロース糖
部分又は特定の抗体で認識が可能な定義されたエピトープから誘導されたもので
ある。このような標識及び親和性タグは、公知の方法で基質と結合する。
ヘルペスプロテアーゼ活性の測定方法は、ヘルペスウイルスプロテアーゼの阻
害剤の同定方法と同様に、以下により詳細に記載し説明する。
以下の実施例は本発明をさらに説明する。
実施例について、以下に注意されたい:
全天然アミノ酸誘導体及びN-α-Fmoc-NG-Pmc-L-アルギニン-Wang樹脂をBachem
(Torrance、CA、USA)から購入した。3-ニトロ-L-チロシンをSigma Chemical C
o.、セントルイス、MO、USAから購入し、及び2−アミノ安息香酸(ABz)及び7−
アミノ4−メチルクマリン(AMC)をAldrich Chemical Co.、ミルウォーキー、WI
、USAから購入し、これらの化合物を標準的な方法で保護した。ペプチド基質(1)
をAdvanced Chemtechペプチド合成機型ACT396/5000MPSで製造した。基質(2)を
、Vega Biotechnologies(Dupont Co.、
用して製造した。1H NMRスペクトルをBruker 400MHz分光計で記録し;化学シフ
ト(δ)を百万分率で報告した。分析的HPLCを、0.46×25cm、5μm、300ÅのVyd
acC18の逆相カラムを備えたWatersの装置で行った(勾配:5〜65%アセトニトリ
ル/0.06%のTFAを含有する水を25分で1.5ml/分の流速
った。酵素の反応速度論については、Perkin−Elmer Xpress 3x3CR C8逆相カー
トリッジカラムを使用してHPLCで決定した。蛍光測定を、Perkin−Elmer LS50B
の発光分光光度計で、石英キュベットに試料を入れて行った。
実施例又は本明細書を通じて使用した略語又は象徴は、以下を含む。:Aba、2
−アミノ酪酸;ABz、2−アミノ安息香酸又はアントラニル酸;Ac、アセチル;AM
C、7−アミノ−4−メチルクマリン;Asn(Me)2、2(S)−アミノ−4−(ジメチルア
ミノ)−4−オキソブタン酸;Boc、第三ブチルオキシカルボニル;DABCYL、4−〔
{4−(ジメチルアミノ)フェニル}アゾ〕安息香酸;DANSYL、5−(ジメチルアミノ)
ナフタレン−1−スルホニル;DATbg、デスアミノ−第三−ブチルグリシン(3,3−
ジメチルブチルブタン酸);DCC:N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド;DIC
、2−ジメチルアミノイソプロピルクロリドヒドロクロリド;DIPEA、ジイソプロ
ピルエチルアミン;DMF、N,N−ジメチルホルムアミド;DMSO、ジメチルスルホキ
シド;DTT、ジチオスレイトール;EDANS、5−{(2−アミノエチル)−アミノ}ナフ
タレン−1−スルホン酸;Et2O、ジエチルエーテル;EtOAc、酢酸エチル;Fmoc、9
−フルオレニルメチルオキシカルボニル;HCMV、ヒトサイトメガロウイルス;HO
BT、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物;IPTG、イソプロピル−β−D−チ
オガラクトピラノシド;MeOH、メタノール;MES、4−モルホリンエタンスルホン
酸;NMP、N−メチルピロリドン;PCRポリメラーゼ連鎖反応;Ph、フェニル;Pmc
、2,2,5,7,8−ペンタメチルクロマン−6−スルホニル;PMSF、フェニルメチルス
ルホニルフルオリド;QSAR、定量的構造活性相関;Tbg、第三−ブチルグリシン
;tBu、第三−ブチル;TFA、トリフルオロ酢酸;Trt、トリフェニルメチル;TBT
U、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテ
トラフルオロボレート;TCEP、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンヒドロ
クロリド;TRIS、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;Tyr(3−NO2)、3−
ニトロチロシン。
基質の位置をPi,....P2,P1↓P'1,P'2,....P'jで示し、ここで、開裂は矢印の
ところで生じる(Schechter,J.,Berger,A.(1970)Philos.Trans.R.Soc.London,Ser
.B.257,249-264)。
実施例1
組換え野生型HCMVプロテアーゼの調製
ゲノムDNA(HCMV菌株ADl69、aa 1−256から得られるUL80遺伝子)から得られ
るPCR強化HCMVプロテアーゼの遺伝子をプラスミドベクターpET−17bのNdeI/BamH
I制限サイトにクローン化し、大腸菌菌株BL21(DE3)pLYSsで発現させた。IPTG
による誘導で発現させた後、細胞を収穫し、分解緩衝液(50mMトリス/塩酸pH8.
0、1mM EDTA、1mM DTT、25mM NaCl、及び1mM PMSF)に再懸濁し、超音波処理し
て分解及びDNAの切断を完全なものとした。プロテアーゼを含む部分を遠心分離
によって収穫した。収穫した材料を、0.1%の非アセチレン系グリコールオクチ
ルエーテル(NP−40、Sigma Chemical Co.)を含む分解緩衝液で二度洗浄した。
収穫した材料の可溶化及び変性を、含有部分を100mMのトリス/塩酸pH8.0、0.1m
M EDTA、100mM DTT、50mM NaCl、及び7M尿素中に再懸濁し、37℃で2時間インキ
ュベートすることにより行った。遠心分離により、不溶物を除去し、上澄を50mM
MES pH5.0、0.1mM EDTA、10mM DTT、及び7M尿素で大規模に透析し、Resource S
カラムのカチオン交換クロマトグラフィーを行った。得られたプロテアーゼを含
む画分のプールを、25mMトリス/塩酸pH7.8、1mM EDTA、及び1M尿素で透析し、
約100μg/lまで希釈し、これに0.2mMの酸化グルタチオン及び2mMの還元グルタ
チオンを添加した。一夜4℃で緩く攪拌しながらインキュベートし、25mMトリス
/塩酸pH7.8、1mM EDTA、1mM DTT、及び100mM NaClで大規模に透析して再生を完
結させ、次いで強い緩衝液(20mM酢酸pH5.0、0.1mM EDTA、1mM DTT、及び50mM Na
Cl)で透析し、試料を濃縮して所望のプロテアーゼを得た。
実施例2
ABz-Val-Val-Asn-Ala-Ser-Ser-Arg-Leu-Tyr(3-NO2)-Arg-OH(1)
ペプチド(1)を、N-α-Fmoc-NG-Pmc-L-アルギニンWang樹脂(0.31mmol、0.2mmo
l、1.650mg)上で、Fmoc/DCC/HOBt固相法を使用しACT396 MPSペプチド合成機
で製造した。側鎖保護基はArgにPmc、AsnにTrt、及びSerにO-tBuであった。Fmoc
アミノ保護基は段階ごとに、樹脂をNMPで洗浄し、NMP中の25%ピペリジン溶液と
振盪し、順次NMP、MeOH及びNMPで洗
浄して、除去した。アミノ酸を、4個の等価の試薬を使用して以下のように、そ
の活性化HOBtエステルとして結合させた:Fmoc-保護アミノ酸0.5Mの溶液及びNMP
(1.6ml、各0.8mmol)中のHOBtの0.5M溶液を脱保護化した樹脂に自動的に添加し
、次いでNMP(1.6ml、0.8mmol)中の0.5M DIC溶液を添加した。反応管を4時間
振盪した。溶液をろ過によって除去し、残った樹脂を二度3.5mlのNMPで洗浄した
。試薬溶液の新たな部分を添加し、結合を4時間繰り返した。各サイクルが完了
したとき、樹脂を順次NMP、MeOH及びNMPで洗浄した。N−Boc−2−アミノ安息香
酸(Boc−ABz−OH)と最後の結合を試薬の1.1等量だけと4時間行い(単一結合)
、チロシンエステル化副生物の生成を避けた(チロシンヒドロキシルは保護して
いない)。得られた樹脂を順次上記のように洗浄し、CH2Cl2による洗浄を付け加
え、減圧下に乾燥した。完全な脱保護化及び樹脂の開裂を、樹脂と10mlのTFA/
アニソール/チオアニソール/エタンジチオール(90/2/3/5)混合物を、2.5
時間室温で窒素雰囲気下に攪拌して達成した。混合物をEt2O(200ml)中に吸引
ろ過して黄色の沈殿物を得た。この懸濁物を氷浴中で冷却し、45μmの膜でろ過
して黄色の固体を得た(281mg、分析HPLCで47%の均一性)。粗生成物を二つのバ
ッチに分けて(2×140mg)分離用のHPLCで精製した(ワットマンHPLCカラム、2
2.0m
6%TFA/H2O、B=75%のCH3CN−25%の0.06%TFA含有H2O;勾配0から35%B、60
分で)。凍結乾燥の後、化合物(1)を非晶質の黄色の固体として回収した(101.5mg
、95%HPLC均一度)。この材料を同じ分離用のHPLCで、より早い0から40%B、60
分という勾配を使用して再度精製した。生成物(62mg、96%HPLC均一度)を三度
目の分離用HPLCで、さらに早い溶媒の勾配(0から50%B、60分で)を使用して精
製し、31mg(99%HPLC均一度)の式(1)の所望のペプチドを得た。MS−FAB(チオ
グリセロール):MH+=1329.0 Da。アミノ酸分析:計算(実測)Asx 1(0.99)、
Ser 2(1.93)、Arg 2(1.99)、Ala 1(1.01)、Leu 1(1.07)、Val2(1.48、部分的加
水分解)、Tyr(3-NO2)1(存在)、2−アミノ安息香酸1(存在)、ペプチドの回収率
:79%±6%。
実施例3
ABz-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-Ser-Ser-Arg-Leu-Tyr(3-NO2)-Arg-OH (2)
このペプチドを、本質的に先に述べたようにシェーカー型のペプチド合成機
ミノ酸(1mmol)、HOBt(140mg、1mmol)及びCH2Cl2(1ml、1mmol)中のDCC 1M溶液
、NMP(2ml)及びCH2Cl2(6ml)の混合物を室温(20−22℃)で30分攪拌した。
得られた懸濁液をろ過した。ろ液をNMP(10ml)で希釈しFmoc−脱保護化樹脂に
加えた。完全な結合を、Kaiserテストを樹脂試料上で行って、確実なものとした
。最後の結合の後、ペプチド−樹脂を先に述べたように洗浄し、減圧下に乾燥し
た。残渣を、TFA/アニソール/チオアニソール/エタンジチオール(90/2/3
/5)の混合物10mlと4時間窒素雰囲気下で攪拌した。得られた混合物を冷Et2O
(200ml)に注ぎ黄色の沈殿物を得た。ろ過の後、黄色の固体を回収した(450mg
、HPLCは二つの主な成分の存在を示した:24%の19.28分及び34%の21.88分)。
粗生成物(200mg)を分離用HPLC(ワッ
粒径10μm、溶媒:A=0.06%TFA/H2O、B=75%のCH3CN−25%の0.06%TFA含有H2
O;勾配:10から40%B、30分で、次いで40%から50%B、30分で)で精製した。
凍結乾燥後、式(2)の黄色の化合物が非晶質固体として得られた(24mg、>99%HP
LC均一性)。MS−FAB(チオグリセロール):MH+=1384.9Da、アミノ酸分析:計算(
実測)Asx 1(1.03)、Ser 2(1.86)、Arg 2(2.02)、Ala 1(1.05)、Leu 1(1.05)、Tb
g 2(1.12、部分的加水分解)、Tyr(3-NO2)1(0.88)、2-アミノ安息香酸1(0.71)、
ペプチドの回収率:75.2%±0.6%.
実施例4
N-アセチル-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-AMC (3)
この基質を溶液中で以下の手順により合成した:
(a)Boc-Ala-AMC(4)。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、3.6ml、20.5mm
ol)を、Boc−L−アラニン(1.55g、8.20mmol)、7−アミノ−4−メチ
ルクマリン(MCA、0.72g、4.1mmol)及びDMF(10ml)中のTBTU(2.63g、8.19mmol
)の氷冷溶液に添加した。混合物を、氷浴中で30分窒素雰囲気下で、次いで室温
において暗中で15時間攪拌した。反応混合物を、EtOAc(60ml)で希釈し、溶液
を2N NaOH(3×30ml)、1N HCl(3×30ml)、水(3×20ml)及び飽和ブライン(2×20m
l)で順次洗浄した。有機溶液を乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、減圧下に濃縮して残
渣EtOAc中に白色固体を得た。この残渣を、Et2O(50ml)で摩砕し、ろ過してEt2
O(3×20ml)及びヘキサン(3×20ml)で順次洗浄し、減圧下に乾燥して白色生
成物を得た(0.657g、収率46%、98%HPLC均一度)。MS-FAB:MH+=347Da;
(b)HCI・H-Ala-AMC(5)。Boc-Ala-AMC(4)(0.557g、1.61mmol)を、4N HCl/ジオキ
サン溶液(30ml)に溶解した。5分の攪拌後、白色の沈殿物を形成し始めた。混
合物を室温で45分間、窒素雰囲気下に暗中で攪拌した。次いで減圧下に濃縮して
半乾燥状態とした。残った白色のペーストをEt2O(50ml)で摩砕し、ろ過し、減
圧下に乾燥して化合物(5)を黄色を帯びた白色固体として得た(0.495g、定量的な
収率、96%HPLC均一度)。この生成物の特徴をさらに調べずに直ちに次の合成段
階に使用した。
(c)Boc-Asn(Me)2-Ala-AMC(6)。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、1.7ml
、9.76mmol)を、N',N'−ジメチル−Boc−L−アスパラギン(0.5g、1.92mmol)、
粗製の(5)(1.61mmolと推定)及びDMF(5ml)中のTBTU(0.617g、1.92mmol)を含む溶
液に加えた。混合物を、窒素雰囲気下に室温、暗中で2.5時間攪拌した。反応混
合物をEtOAc(50ml)で希釈し、溶液を2N NaOH(3×20ml)、1N HCl(3×20ml)、水
(2×20ml)及び飽和ブライン(2×20ml)で順次洗浄した。洗浄の途中で生成
物が沈殿し始めた;さらにEtOAc(30ml)を添加してそれを再溶解させた。有機
溶液を乾燥し(Na2SO4)、ろ過し、減圧下
に濃縮して、半固体の白色残渣を得た。この残渣をEt2O(100ml)で摩砕し、45
μmの膜でろ過した。得られた固体を、Et2O(3×20ml)及びヘキサン(3×20ml)で
順次洗浄した。この後、それを減圧下に乾燥して白色の固体生成物を得た(0.470
g、60%の収率、99%HPLC均一度)。MS-FAB:MH+=489Da、(M+Na+)=511 Da、
(d)HCl・H-Asn(Me)2-Ala-AMC(7)。Boc-Asn(Me)2-Ala-AMC(6)(0.370mg、0.76mmol
)を、(5)の化合物の製造のために記載した標準的な手順を使用して、2時間脱保
護化して、化合物(7)を回収した(0.320g、100%の収率、99%HPLC均一度)。この
生成物の特徴をさらに調べずに直ちに次の段階に使用した。
(e)Boc-Tbg-Asn(Me)2-Ala-AMC(8)。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、0
.8ml、4.59mmol)を、Boc-L-第三-ブチル-グリシン(Boc-Tbg-OH、0.21g、0.9mmo
l)、粗製の(7)(0.76mmolと推定)及びDMF(3.5ml)中のTBTU(0.29g,0.9mmol)を
含む溶液に添加した。化合物(6)の製造における対応する混合物についての記載
と同様な方法で、この混合物を処理して、白色固体生成物(0.358g、79%の収率
、99%HPLC均一度)を得た。MS-FAB:MH+=602Da、
(f)HCl・H-Tbg-Asn(Me)2-Ala-AMC(9)。Boc-Tbg-Asn(Me)2-Ala-AMC(8)を、
(5)の製造用に記載した標準的な手順を使用して、3時間脱保護化した。この方
法で化合物(9)を得た(0.240g、定量的な収率、97%HPLC均一度)。この生成物の
特徴をさらに調べずに直ちに次の段階に使用した。
(g)Boc-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-AMC(10)。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIP
EA、0.5ml、2.57mmol)を、Boc-L-第三-ブチル-グリシン(Boc-Tbg-OH、0.119g、0
.515mmol)、粗製の(9)(0.43mmolと推定)及びDMF(2ml)中のTBTU(0.165g、0.515m
mol)を含む溶液に添加した。化合物(6)の製造における対応する混合物について
の記載と同様な方法で、この混合物を処理した。この方法で白色固体生成物(0.
227g、74%の収率、96%HPLC均一度)を得た。MS-FAB;MH+=715Da、
(h)HCl・H-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-AMC(11)。Boc-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-AMC(10
)(0.127g、0.177mmol)を、化合物(5)の製造用に記載した標準的な手順を使用し
て、2時間脱保護化した。そこで化合物(11)を得た(0.125g、定量的な収率、96
%HPLC均一度)。この生成物の特徴をさらに調べずに直ちに次の段階に使用した
。
(i)Ac-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-AMC(3)。無水酢酸(50ml、0.53mmol)を、ピリジン
(1ml)中の粗製(11)(0.177mmolと推定)溶液に加えた。混合物を、室温で暗中
において窒素雰囲気下に1時間攪拌した。反応混合物をEtOAc(30ml)で希釈し
た。溶液を1N HCl(3×20ml)、水(3×20ml)、飽和ブライ
ン(2×20ml)で順次洗浄し、Na2SO4で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。半
固体残渣をEt2O(100ml)で摩砕し、45μmの膜でろ過した。得られた固体を、Et2
O(3×10ml)及びヘキサン(3×10ml)で順次洗浄し、減圧下に18時間乾燥して
、基質(3)を白色の固体生成物として得た(90mg、77%の収率、98%HPLC均一度)
。MS-FAB:MH+=657Da、 実施例5
d-ビオチン-Arg-Gly-Val-Val-Asn-Ala-Ser-Ser-Arg-Leu-Ala-Tyr-NH2(12)
この化合物を、アプライド バイオシステム ペプチド シンセサイザー(Ap
phed Biosystem peptide synthesizer)モデル430Aを使用し、Fmoc/DCC/HOBtの
手順に従って製造した。合成を0.25mmolのリンク(Rink)樹脂(Advanced Chemt
ech,Louisville KY,USA)の上で、1mmolの保護アミノ酸を使用して行い、1時
間結合させた。Tyr、Ala、Leu及びArgに対しては単一の結合を、Ser、Ser、Ala
、Asn、Val、Gly及びArgに対しては二重の結合を行った。ビオチンをTBTUと、DM
SO/NMPの1:3混合物中で24時間結合させた。最後の結合後、ペプチド−樹脂
結合物を先に記載したように洗浄し、減圧下に乾燥した。開裂及びそれに伴う側
鎖の脱保護化を、TFA/フェノール/チオアニソール/エタンジチオール/H2O(9
0/3.5/2.5/1.2/2.5)の混合物10ml中で2.5時間窒素雰囲気下で行った。開裂
物の混合物を減圧下に濃縮した。残渣を20mlのEt2Oで希釈した。得られた沈殿物
をフィルター上に集め、逆相
−3M/20−50、粒径10μm、溶媒:A=0.06%TFA/H2O、B=75%のCH3CN−25%
の0.06%TFA含有H2O;勾配:0から40%B、60分で)で精製した。所望の生成物を
含む画分を一緒にし、同一条件下に凍結乾燥及び再精製をし、凍結乾燥の後に所
望の化合物を白色の非晶質固体として得た(88mg、96%HPLC均一度)。MS-FAB(チ
オグリセロール):MH+=1517.6 Da、アミノ酸分析:計算(実測)Asx 1(0.97)、Ser
2(1.79)、Gly 1(1.03)、Arg 2(1.87)、Ala 2(2.06)、Tyr 1(0.98)、Val 2(1.23
、部分的に加水分解)、Leu 1(1.09)、ペプチド回収率:68%±1%。
実施例6
d-ビオチン-Arg-Gly-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-Ser-Ser-Arg-Leu-Ala-Tyr-NH2(13)
この化合物を、ACT396 MPSペプチドシンセサイザーで、4個のアミノ酸の等価
物、HOBt水和物及びTBTU及び8個のDIPEAの等価物を使用して製造した。各アミノ
酸を二重に結合させた。各結合の反応時間は1時間であった。合成の終わりに、
先に記載したのと同様の手順を使用して、ビオチン残基を取り込んだ。開裂及び
それに伴う側鎖の脱保護化を、TFA/アニソール/チオアニソール/エタンジチ
オール(90/3/5/2)の混合物10ml中で2.5時間窒素雰囲気下で行った。開裂物
の混合物を減圧下に濃縮した。残渣を20mlのEt2Oで希釈した。得られた沈殿物を
ろ過し、逆相半分離用HPLC(Waters PrepPak 500カートリッジ、60mm×330mm、C
18、粒径15μm、溶媒:A=0.5M NH4OAc/H2O、B=CH3CN;勾配:0から35%B、
80分で;流速50ml/分)で精製した。生成物を含む画分を一緒にし、凍結乾燥し
、再精製した(Waters PrepPak 500カートリッジ、60mm×330mm、C18、粒径15μm
、溶媒:A=0.06%TFA/H2O、B=75%のCH3CN−25%の0.06%TFA含有H2O;勾
配:0から40%B、90分で;流速50ml/分)。凍結乾燥後、所望の化合物を、白色
の非晶質固体として分離した(60mg、95%HPLC均一度)。MS-FAB(チオグリセロー
ル):MH+=1573.8Da、アミノ酸分析:計算(実測)Asx 1(1.02)、Ser 2(1.84)、
Arg 2(2.01)、Ala 2(2.05)、Tyr 1(1.00)、Leu 1(1.05)、Tbg 2(0.25、部分的に
加水分
解)、ペプチド回収率:66%±2%。125
I標識(13a):
ビオチン-Arg-Gly-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala↓Ser-Ser-Arg-Leu-Ala-Tyr-NH2(13)の125
I標識。
基質(13)をNa125Iで、不溶性ヨウ素化試薬1,3,4,6−テトラクロロ−3α,6α−て使用して、標識化した。
μg/ml溶液を、16×100mmのホウ珪素管中で窒素気流によって徐々に蒸発させた
。この管に、187μlの氷冷した0.5M pH7のリン酸カリウム緩衝液及びDMSOに溶か
した13μMの1mM基質(13)を入れた。ヨウ素化を、10μlの1mCiNa125Iを添加して
開始した。反応を45秒間0℃で進め、その後300μlの20%水性アセトニトリル+0
.1%トリフルオロ酢酸を添加した。反応混合物を、20%水性アセトニトリル+0.
1%トリフルオロ酢酸で平衡させた25cm Vydac 18C逆相カラムに直ちに注入した
。カラムを同じ条件で10分間洗浄し、30分で直線的な溶出勾配(20〜80%水性ア
セトニトリル+0.1%トリフルオロ酢酸)で溶出した。未反応の基質(13)に対応
するピークが出現した後、250μlの画分を直ちに集めてカウントした。基質(13)
に続く最初の放射活性ピークはモノ−標識基質(13a)(ビオチン-Arg-Gly-Tbg-Tb
g-Asn(Me)2-Ala↓Ser-Ser-Arg-Leu-Ala-Tyr(125I)-NH2)に対応した。これらの
画分をプールし過剰のアセトニトリルを蒸発させた。カゼイン、標識していない
基質(13)及びジチオスレイトールをプールにそれぞれの最終濃度が0.1%w/v、2
0μM及び5mMとなるように添加して、固着及び酸化の問題を阻止した。基質(13a)
溶液をアリコットにして4℃で保存したところ、3〜4週間安定であった。
実施例7
Ac-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-pNP
精製したPOCl3(1.0ml、11mmol)を−15℃で2分間かけて、Boc-Ala-OH
(1.89g、l0mmol)及びピリジンN(30ml)中のp-ニトロアニリン(1.38g、10mmo
l)の溶液に添加した。混合物を30分攪拌し、100mlの氷水に注ぎ、得られた混合
物をEtOAc(3×50ml)で抽出した。有機層を一緒にして、1M HCl(3×50ml)、飽
和NaHCO3水溶液(3×50ml)及び飽和ブライン(3×50ml)で順次洗浄した。有機
層を乾燥(Na2SO4)し、溶媒を減圧下に蒸発させた。残渣の固体をエーテルで摩
砕し、ろ過してBoc-Ala-pNAを黄色の固体として得た(1.72g、56%の収率)。 Boc-Ala-pNAを出発物質とし、実施例4に記載した逐次の脱保護化及び結合の
手順を使用して、表記の化合物を、白色の非晶質固体として製造した(半分離用H
PLCでの精製後)。エレクトロスプレーMS:MH+=620.5Da、アミノ酸分析:計算(
実測)Asx 1(0.96)、Ala 1(1.04)、Tbg 2(存在、部分的加水分解)、ペプチド回収
率:102±1%.
実施例8
Ac-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-pNA
前駆体Ac-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-OBnを、溶液中で実施例4に記載したのと同
じ方法で合成した。ベンジルエステルを、実施例1のB段階に記載したのと同じ
手順を使用して水素化分解した。
Ac-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-OHを出発原料として、表記の化合物を以下の手順に
従って製造した:上記のテトラペプチド(200mg、0.4mmol)及びp-ニトロフェノ
ール(60mg、0.43mmol)をDMF(2ml)及びEtOAc(5ml)に溶解した。混合物を0
℃に冷却し、EtOAc(0.5ml)中のDDC(80mg、0.388mmol)溶液を添加した。混合
物を0℃で40分間、続いて一夜室温で攪拌した。混合物をろ過し、ろ液をEtOAcで
希釈し、水性飽和ブライン(2×10ml)、水(3×10ml)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し
、溶媒を蒸発させた後、214mgの粗製材料得たが、これはRP-HPLCでほぼ同じ強度
の二つのピークを示した。この化合物をシリカゲルのクロマトグラフィーによっ
て精製しようと試みたが、分離することはで
きなかった。全画分を一緒にし、半分離用HPLC(実施例3と同じクロマトグラフ
ィーのカラム及び溶出液)で精製した。勾配:0から20%溶出液B/A、10分で、次
いで20から60%溶出液B/A、80分で。分離した二つの化合物のうち一つは、移動
が遅いもの(A)で、所望の化合物(白色の非晶質固体、40mg)であり、一方移
動の早いもの(B)はその対応するD−Alaジアステレオマーであった(キラルGC
カラムを使用して消化したペプチドから決定した)。化合物A:HPLC100%均一度
、エレクトロスプレーMS:MH+=621.4Da、アミノ酸分析:計算(実測)Asx 1(0.98)
、Ala 1(1.02)、Tbg 2(1.29,部分的に加水分解)、ペプチド回収率:90±8%。
実施例9
ペプチドが主体のケトアミド阻害剤DA-Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-CONHCH2Ph
エタノール(15ml)中のニトロエタン(4.0g、53mmol)の溶液に、水性NaOH(2N溶
液68ml、136mmol)を添加した。この溶液に、急速に攪拌しつつグリオキシル酸
(5.9g、64mmol)を添加した。溶液を15時間攪拌し、10%の水性HCl(pH2)で酸
性化し、水層をNaClで飽和させ、EtOAc(3×150ml)で抽出した。有機層を乾燥
し(MgS04)、ろ過し、濃縮して8.1gの粘性のある黄色油を得た。この粗製材料を
、Et3N(18ml、119mmol)を含むエタノール(50ml)に溶解し、ジ−第三−ブチ
ル−ジカーボネート(12.2g、56mmol)及び使用直前に水で洗浄したラネーニッケ
ル(3g)で処理した。珪素土によるろ過及び濃縮の後、水素化を45p.s.iで20時
間行い、粗製の酸(11.1g)を得た。粗製の酸の一部(3.07g、14mmol)をDMF(3
0ml)に溶解し、無水K2CO3(4.3g、30.8mmol)及び臭化ベンジル(2.5ml、21mmol
)で処理した。室温で3時間攪拌した後、DMFを減圧下に除去し、残渣をEtOAc(1
50ml)に溶解し、水(100ml)及びブライン(80ml)で洗浄した。有機層をMgSO4で乾
燥し、ろ過し、濃縮した。粗製の黄色油(4.3g)を、シリカゲル上のフラッシュク
ロマトグラフィー(230−400メッシュ)を用いて、ヘキサン中の33%のEtOAcで溶
出して精製し、精製ベンジルエステルBocNHCH(Me)CHOHC(O)O−CH2Ph(1.8g、ニト
ロエタンから42%)を得た。HPLC(系C)99%、(系D)97%;IR(KBr)υ3422,3361,174
0,
1684cm-1;
第三−ブチルオキシカルボニル(Boc)基を、先に延べたベンジルエステル(4.0g
、12.9mmol)から4N HCl/ジオキサン(30ml)を使用し、45分0℃で除去した。
塩酸塩を、濃縮及びトルエン(15ml)との共蒸発によって得た。HCl塩(12.9mmo
l)を、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(2.6g、1
3.6mmol、1.1当量)、HOBT(1.8g、13.6mmol、1.1当量)及びDMF(50ml)中のBoc
−Asn(NMe)2−OH(3.4g、12.9mmol、1.1当量)と窒素雰囲気下で反応させた。溶
液を0℃まで冷却し(氷浴)、iPr2NEt(7.9ml、45.3mmol、3.5当量)を添加した。溶
液を室温で16時間攪拌した。反応混合物を、EtOAc(250ml)と飽和水性NaHCO3(
150ml)との間で区分した。有機層を5%の水性HCl(150ml)で、最後はブライン
(150ml)で洗浄した。ろ過し、濃縮し、乾燥(MgSO4)して、6.0gの粗製材料を
得た。多くの場合、粗製材料を精製することなく次の結合に使用することができ
た。最後の結合の後、α−ヒドロキシベンジルエステルペプチドを、フラッシュ
クロマトグラフィーで精製した。対応するα−ヒドロキシ酸は、ベンジルエステ
ル(1.10g、2.0mmol)の水素化を、エタノール(30ml)中10%のPd/C(55mg)
上で、常圧下に数時間行い、珪藻土のパッドでろ過して白色固体(0.95g、100%
の収率)として得た。HPLC(系A)100%、(系C)100%;IR(KBr)υ3316,1727,1
642cm-1;
P1’残基とベンジルアミン(1.2当量)との結合を、前に述べた一般的な結合手
順を使用して行った。最後の酸化段階を、α−ヒドロキシアミド(62mg、0.11mm
ol)を2当量のDMF(1ml)に溶解した1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−
1,2−ベンズヨードオキソール−3(1H)−オン(94mg、0.22mmol)で4時間処理し
て行った。10%のチオ硫酸ナトリウム(5ml)及び飽和NaHCO3(5ml)を添加して
15分攪拌し、EtOAc(3×10ml)で抽出して、所望のα−ケトアミドを得た。最後
の精製を、分離用のHPLCを使用して行い、凍結乾燥後にDATbg−Thg-Asn(Me)2−A
la−C(O)NHCH2Ph(51mg、収率82%)を白色固体として得た。
HPLC(系C)100%、(系D)96.1%;IR(KBr)υ3316,1641,1529cm-1;
実施例10
HCMVプロテアーゼ分析
実施例2、3、4、5及び6で製造した化合物をDMSOに溶解したストック溶液
(10mM)を4℃で保存した。この溶液中の化合物はこの条件下で数週間安定であ
った。HCMVプロテアーゼ50μM(1.4mg/ml)をアリコットにした試料を、保存緩
衝液中に80℃で保存したが、1年を越える長期間にわたって活性の損失は検出で
きなかった。野生型のHCMVプロテアーゼの計算上の分子量は
28042Daであった。回転数、kcat、及び特異性定数、kcat/Kmが計算の結果導き
出される酵素濃度を、全モノマー濃度によって表わした。
HPLC分析
実施例2のペプチド基質の特異性定数kcat/Km及び個々のパラメーターkcat及
びKmを、種々の基質濃度におけるN−末端開裂生成物が現れる初期速度をHPLCで
監視することによって決定した。50mM トリス/HCl pH8、0.5M Na2SO4、50mM Na
Cl、0.1mM EDTA、1mM TCEP、3%DMSOv/v、及び0.05%w/vカゼインを含むイン
キュベーション緩衝液に、20−500μM基質を添加した。30℃で平衡を取った後、
反応を、分析緩衝液中の2.5μMのストック溶液からの50nMのHCMVプロテアーゼ(
全モノマー濃度)を添加して開始し、通常の間隔で1%のTFAにより、全加水分解
の約25%までで停止した。アリコットをC8逆相カラムに注入し、0.05%のH3PO4
を含む水性の3mM SDSに溶解したアセトニトリルの直線的な勾配を使用した(一定
の流速4ml/分で、22〜28%のアクリロニトリルを2分、30%までを4分、50%
までを6分)。N-末端生成物の較正カーブを使用して、転換の程度を推定した(
保持時間=2.7分)。このデータは、反応速度諭のソフトウェアであるGRAFIT(Gr
afit、Erithacus Software Ltd.、1989−1992、3.0版、Leatherbarrow,R.J.ロン
ドン、英国)によるミカエリス−メンテン式の非直線性回帰分析と合致した。実
施例5及び6のペプチド基質についても同様の手順を採用した。この場合、使用
した酵素の濃度は、それぞれ500nM及び200nMであった。HPLCの勾配は、一定の流
速4ml/分で、25から38%までのアセトニトリルを11分、100%までを13分とした
。
蛍光定量分析
実施例3及び4のペプチド基質の特異性定数kcat/Km及び個々のパラメーター
kcat及びKmを、50nMのHCMVプロテアーゼの存在下にAla−Ser又はAla−AMCアミド
結合の開裂における蛍光強度の増大から測定できた初期速度反応速度論によって
決定した(アントラニルアミドに対してλex=312nm & λem=415nm,7−アミノ−
4−メチルクマリンに対してλex=360nm & λem=
440nm.スリット幅の大きさは2.5nmから5nmまで変化した。)。
Kmより高い又は低い基質濃度を使用して、個々の反応速度論的パラメーターを
正確に決定することができる。反応条件及びデータの一致は先に延べたとおりで
ある。
放射活性分析:
この最適化した配列Tbg−Tbg−Asn(Me)2の使用は蛍光源性の基質に限られるこ
とはなく、他の方法にも適用が可能であった。事実、式(12a)の構造を有する放
射線定量基質にこの配列を導入すると、
d-ビオチン-Arg-Gly-Val-Val-Asn-Ala-Ser-Ser-Arg-Leu-Ala-Tyr(125I)-NH2(12a
)式(13a)の構造を有する基質を生成し、
d-ビオチン-Arg-Gly−Tbg-Tbg-Asn(Me)2-Ala-Ser-Ser-Arg-Leu-Ala-Tyr(125I)-N
H2(13a)
このkcat及びKm値はそれぞれ0.045s-1及び19μMであり、特異性定数kcat/Kmは2
370M-1s-1、すなわち式(12a)の基質と比較して12倍大きくなる(HPLCで測定)。こ
れらの反応速度論上の改良により、標準的な放射線定量分析を、シンチレーショ
ン近接分析(Bosworth,N.,Towers,P.(1989)Nature 341,167-8;及びBrown,A.M.,
George,S.M.,Blume,A.J.,Dushin,R.G.,Jacobsen,J.S.,Sonneberg-Reines,J.(199
4)Anal.Biochem.217,139-147)に変換可能となり、酵素濃度、インキュベーショ
ン時間が低下し、操作性が上がるという大きな利点が生じた。125Iに基づく本分
析は、すでに公表されているHCMVプロテアーゼSPAと比較して好ましいものであ
るが、それは従来の分析ではより長い基質及び33Pによるホスホリル化にタンパ
ク質キナーゼの使用が必要であったことによる(Baum,E.Z.,Johnston,S.H.,Beber
nitz,G.A.,Gluzman,Y(1996),Anal.Biochem.237,129-134)。
発色分析:
実施例7及び8の比色定量用ペプチド基質の反応速度諭的パラメーター(kcat
、Km及びkcat/Km)を、HCMVプロテアーゼの存在下にp−ニトロフェノール
又はp−ニトロアニリン部分の開裂におけるλ=405nmでの吸収の増大から測定で
きる初期速度の反応速度論によって決定する。Kmより高い又は低い基質濃度を使
用して、個々の反応速度諭的パラメーターを正確に決定することができる。反応
条件及びデータの一致は先に延べたとおりである。
従って、HCMVプロテアーゼの改良された合成及び特徴付けが記載された。改良
は、従来の基質にあるP4−P2のVal−Val−Asnという配列を、阻害剤のQSAR研究
中に認識された修飾アミノ酸Tbg−Tbg−Asn(Me)2で置き換えたことに起因してい
た。この修飾により、ペプチドを主体とする阻害剤の有効性が大きく増大するこ
とを示したが、基質が置き換えを受け、それが低いKm及び速い開裂の二次速度と
なって現れた。これらの基質(式(2)の基質及び式(3)の基質)が改良されたため
に、有用なHCMVプロテアーゼ阻害剤の不明確な特徴付けをするナノモルレベルの
酵素分析を開発することが可能となり、今まで蛍光源性基質として利用すること
ができなかった基質にまで蛍光の適用範囲を拡大することが可能となった。HCMV
プロテアーゼ変異体の反応速度論的な特徴付けによると、野生型より低い活性を
示しており、このことも大きく強化されることが期待できる。絶対的な反応速度
諭的なパラメーターは、酵素の調製及び実験条件によって変わり得るが、ここに
記載した相対的な改良は保持されると考えられる。この考え方を他の検出方法に
適用しても成功する可能性は十分にある。改良したHPLCN放射線定量及び発色源
性HCMVプロテアーゼ基質(式(13a)の基質)を製造し、それによって、シンチレ
ーション近接分析を含む分析を急速かつ便利に行うことが可能となった(Boswort
h,N.et al.,下記参照;Brown,A.M.et al.,下記参照;及びBaum,E.Z.etal.,下記参
照)。