【発明の詳細な説明】
二機能性のタンパク質をコードする核酸分子、そのコードされるタンパク質、
およびそれらの利用方法関連出願
本出願は、1996年6月24日出願で、現在では放棄されている出願番号第
08/669,590号の一部継続出願である。発明の分野
本発明は、腫瘍拒絶抗原前駆体をコードする、核酸分子に関する。より具体的
には、本発明は、その腫瘍拒絶抗原前駆体が、とりわけ、HLA−B35分子に
よって提示される少なくとも一つの腫瘍拒絶抗原へとプロセシングされる遺伝子
に関する。問題となる遺伝子は他の既知の腫瘍拒絶抗原前駆体コード配列とは関
連していないようであるが、細胞アポトーシスに関連するタンパク質のグループ
である、システインプロテアーゼファミリーのメンバーと関連しているようであ
る。本発明はまた、HLA−B35分子によって提示されるペプチドおよびそれ
らの利用方法にも関する。背景および従来技術
哺乳類の免疫系が外来のまたは異質の物質を認識して、それらと反応するプロ
セスは複雑なものである。このシステムの重要な局面は、Tリンパ球、即ち“T
細胞”応答である。この応答は、T細胞が、ヒト白血球抗原(“HLA”)、また
は、主要組織適合遺伝子複合体(“MHC”)と称される細胞表面分子と、ペプ
チドとからなる複合体を認識し、その複合体と相互作用することを必要とする。
前記ペプチドは、HLA/MHC分子も提示する細胞によってプロセシングされ
るより大きな分子に由来する。この点に関しては、メール(Male)他,Advanced Immunology
(J.P.Lipincott Company,1987),特にその6−10章を参照。T細胞
とHLA/ペプチド複合体の相互作用は制限されたものである。即ち、HLA分
子とペプチドとの特定の組み合わせに対して特異的なT細胞が必要とされる。も
し特異的なT細胞が存在しなければ、たとえそのパートナー複合体が存在してい
てもT細胞応答は起こらな
い。同様に、T細胞が存在していても、それに特異的な複合体が存在しなければ
応答は起こらない。このメカニズムは、異物に対する免疫系の応答、自己免疫疾
患、および細胞異常に対する応答に関与している。タンパク質がHLA結合ペプ
チドへとプロセシングされるメカニズムに関して多くの研究がなされてきている
。この事については、バリナガ(Barinaga),Science 257:880(1992);フリーモ
ント(Fremont)他,Science257:919(1992);マツムラ(Matsumura)他,Science25
7:927(1992);ラトロン(Latron)他,Science257:964(1992)を参照。エンゲルハ
ルト(Engelhard),Ann.Rev.Immunol.12:181-207(1994)も参照。
T細胞が細胞異常を認識するメカニズムはガンにも関係している。たとえば、
1992年5月22日出願、1992年11月26日公表で、参考文献として本
出願にその内容を合体させるPCT出願PCT/US92/04354には、一
つの遺伝子ファミリーが開示されており、それらはプロセシングされてペプチド
となり、次に細胞表面に発現され、特異的なCTL細胞溶解性Tリンパ球、即ち
、以後“CTL”と称されるものによって腫瘍細胞の溶解を引き起こすことがで
きる。これら遺伝子は、“腫瘍拒絶抗原前駆体”即ち“TRAP”分子をコード
するものであると言われ、これら分子に由来するペプチドは、“腫瘍拒絶抗原”
即ち“TRA”と称される。このファミリーの遺伝子の詳細に関してはトラヴァ
ーサリ(Traversari)他,Immunogenetics35:145(1992);ファン・デア・ブルッゲ
ン(van der Bruggen)他,Science254:1643(1991)を参照。又、現在来国特許第
5,342,774号となっている、1991年12月12日出願の米国特許出
願第807,043号も参照。
その開示内容を本出願に参考文献として合体させる、現在米国特許第5,40
5,940号となっている、米国特許出願第938,334号において、プロセ
シングされてHLA−A1分子によって提示されるノナペプチドになる腫瘍拒絶
抗原前駆体をコードするMAGE−1遺伝子が説明されている。前記参考文献は
、特定のHLA分子に対する特定のペプチドの特異性が判明すれば、ある特定の
ペプチドは一つのHLA分子に対して結合するが、他のHLA分子に対しては結
合しないであろうと推測される、ということを教示している。これは重要なこと
である。なぜなら、異なる個体は異なるHLA表現型を有するからである。その
ため、ある特定の
ペプチドが、ある特定のHLA分子に対するパートナーであると同定されたこと
が、診断上および治療上の効果を有しているとしても、その効果はその特定のH
LA表現型を有する個体に対してしか適切ではないのである。細胞異常は一つの
特定のHLA表現型に限られるものではないため、また、標的化療法(targeted
therapy)には、問題の異常細胞の表現型に関する相当な知識が必要とされるため
、この分野において更なる研究を行う必要がある。
参考文献として本出願にその内容を合体させる、1993年1月22日出願の
米国特許出願第008,446号には、MAGE−1発現産物がプロセシングさ
れて第2のTRAになるという事実が開示されている。この第2のTRAはHL
A−Cクローン10分子によって提示される。この開示は所与のTRAPから複
数のTRAが生じることができるということを示している。
参考文献として本出願にその内容を合体させる、1992年12月22日出願
の米国特許出願第994,928号は、いくらかの正常細胞(例えば、メラノサ
イト)によって産生される分子である、チロシナーゼが、腫瘍細胞中でプロセシ
ングされてHLA−A2分子によって提示されるペプチドを生じるということを
教示している。
参考文献として本出願にその内容全体を合体させる、1993年3月18日出
願の米国特許出願第08/032,978号には、チロシナーゼ由来ではない、
第2のTRAがHLA−A2分子によって提示されるということが教示されてい
る。このTRAはTRAP由来であるが、非−MAGE遺伝子によってコードさ
れている。この開示はある特定のHLA分子が異なるソースに由来するTRAを
提示することができるということを示している。
参考文献として本出願にその内容を合体させる、1993年6月17日出願の
米国特許出願第08/079,110号には、関連のない腫瘍拒絶抗原前駆体で
ある、いわゆる、“BAGE”前駆体が記載されている。BAGE前駆体はMA
GEファミリーとは関連していない。
先に引用した論文、特許、および特許出願に示されている研究は、大部分は、
MAGEファミリーの遺伝子、および(それとは)関連のないBAGE遺伝子に
ついて扱っている。この研究はいずれもHLA−B35分子によって提示される
腫瘍
拒絶抗原については記載していない。ヒトMHC分子には多様性があるので、そ
のような分子の同定には長く続く興味がもたれる。この腫瘍拒絶抗原へとプロセ
シングされるタンパク質をコードする核酸分子は以前に同定されている腫瘍拒絶
抗原前駆体コード配列とは関連していないようである;むしろ、それはICEシ
ステインプロテアーゼコード配列と関連しているようである。このタンパク質は
細胞のアポトーシスと関連している。核酸分子(配列番号1)および腫瘍拒絶抗
原(配列番号2)は、本発明の特徴構成であり、以下の開示において示される。図面の簡単な説明
図1は、標的にされる細胞集団に対する種々のCTLクローンの溶解活性の研
究において得られた結果を示す。
図2は、同じCTLクローンを用いた、TNF放出試験を示す。
図3は、どのHLA分子がCTLによって標的にされる抗原を提示するのかを
判定するために行った、TNF放出試験を示す。
図4は、関連するHLA分子をより詳細に表すために計画された研究を示す。
図5は、HLA−B35およびcDNA配列番号1とでトランスフェクトされ
た細胞をCTLが同定したことを示す。
図6は、配列番号2を用いて行った51Cr試験を示す。好適実施例の詳細な説明 例1
BB49−SCCHNと称される、頭頸部扁平上皮ガンは、患者の腫瘍集団(
腫瘤:tumor mass)に由来し、これを切除し、そして培養に使用した。これら細
胞を次に周知のリン酸カルシウム沈殿法を用いて発現ベクターpEFBOSpu
roでトランスフェクトした。このベクターは、参考文献として本出願にその内
容を合体させる、ミズシマ(Mizushima)他,Nucl.Acids Res.18(17):5322(1990)
によって記載されているように、プラスミドpEFBOSにピューロマイシン耐
性遺伝子を挿入することによって調製した。このプラスミドはCD80としても
知られている、
ヒトの同時刺激分子B7.1をコードする核酸配列を含む。トランスフェクタン
トを0.5μg/mlのピューロマイシンを用いて選抜し、そして限界希釈法に
よってクローン化した。“BB49−B7.1クローン7”と称されるクローン
は、既知の抗−CD80モノクローナル抗体を用いた細胞けい光分析によって判
定して、高いB7.1発現に基づいて選抜された。このクローン、およびBB4
9−SCCHN細胞を、参考文献として本出願にその内容全体を合体させる、ガ
ズダー(Gazdar)他,Canc.Res.46:6011(1986)によって記載されているように、
10%ウシ胎児血清(FCS)、L−アルギニン(116mg/ml)、L−アス
パラギン(36mg/ml)、L−グルタミン(216mg/ml)およびACL
−4を加えたIscove’s培地中で培養した。末梢血単核細胞(以後、“P
BMC”と称する)もBB49−SCCHNを提供した患者から単離した。患者
BB49の細胞を血清学によってテストしたところ、HLA−A2、B35、B
62、Cw1およびCw4陽性であることが判明した。例2
細胞が確立されたので、自己混合リンパ球腫瘍細胞培養(MLTC)アッセイ
を行った。具体的には、0日目に、2mlの前述の、但しACL−4を含まずF
CSではなく10%プールヒト血清を追加した培地中で、2x106のPBMC
を105の照射されたBB49.B7腫瘍細胞(100Gy)で刺激した。3日
目に、25U/mlのインターロイキン−2(IL−2)を添加した。反応集団
を7日目および15日目に、25U/mlのIL−2を含む培地中で、105の
照射されたBB49.B7腫瘍細胞によって再刺激した。21日目に、周知の技
術を用いてCD8+細胞をソートした。簡単に説明すると、抗−ヒトCD8特異
的モノクローナル抗体を磁気マイクロビーズに結合させ、そしてビーズをサンプ
ルに添加した。CD8+細胞は付着し、そしてCD8+/CD8-細胞を分離カラ
ムに通すことによって分離した。全部で3x105のCD8+リンパ球を次に、2
5U/mlのIL−2の存在下で5x104の照射されたBB49.B7腫瘍細
胞および106の照射された(30Gy)CD8-細胞で再刺激した。
この後、28日目に、MLTC集団に対して限界希釈法技術を用いて
CD8+CTLクローンを単離した。これらCTLクローンの細胞溶解活性を、
BB49−SCCHN細胞を標的として用いて51Cr放出試験においてテストし
た。標的は100U/mlのIFN−γで72時間前処理したか、または処理し
なかった。
BB49を溶解した3つのCTLクローンが同定され、これらはNK−感受性
標的細胞、即ちK562細胞のコントロールサンプルを溶解しなかった。これら
クローンは、CTLクローン328a/69、328a/121および328c
/1と称される。図1は、様々なエフェクター:標的比における、標的細胞の溶
解のパーセンテージを示す実験の結果を示している。
前記CTLクローンについて、次にこれらがBB49腫瘍細胞で刺激された際
にTNFを放出するかを調べるためにテストした。このアッセイは、10%ヒト
血清および25U/mlのIL−2を含む100ulのIscove’s培地と
ともに、マイクロウェル中で104標的細胞と1500のCTLを混合すること
によって行った。上清を4または24時間後に収集し、そしてTNF含量を、T
NF感受性細胞であるWEHI−164クローン13を用いることによって測定
した。
図2は、3つのすべてのCTLクローンが有意な量のTNFを放出したことを
示す。例3
どのHLA分子が前記CTLクローンに対して抗原ペプチドを提示したのかを
決定することに興味が持たれた。CTLクローン328a/121をこれらの実
験において使用した。これは1500のCTLを、1−2x104のBB49細
胞、および当業者に周知の種々のモノクローナル抗体と混合する工程を含むもの
であった。W6/32は抗HLA−A,B,C mAbであり、B.1.23.
2は抗HLA−B,C mAbであり、2B5は抗−HLA−DR mAbであ
り(ネガティブコントロール)、そして4Eは抗−HLA−B mAbである。
図3は、これらの結果を示すものであり、TNF産生はW6/32、B.12
3.2および4Eの存在下においては激しく減少したが、2B6の存在下では減
少しなかったということを示しており、これはHLA−B35または
B62/ペプチド複合体の認識を示すものである。
どちらのHLA分子が関与していたかを決定するために、異なるHLA−B3
5およびHLA−B62陽性腫瘍細胞ラインについてテストした。図4は、これ
らの結果を示す。LB1047−RCCおよびLE92.11-RCCはともにHL
A−B35陽性であり、この結果はHLA−B35が提示分子であることを示唆
するものである。例4
HLA−B35に対するcDNAは以前にLB1047−RCCの細胞から得
られていた。BB49−SCCHNからcDNAライブラリーも調製した。次に
cDNAを、pcDNAI/Ampを用いて組換えプラスミドを調製するのに使
用し、その後これらプラスミドを大腸菌DH5αにエレクトロポレーションし、
そして50μg/mlのアンピシリンで選抜した。このライブラリーをそれそれ
100の細菌からなる800のプールに分けて、それぞれのプールの細菌を飽和
するまで増幅した。プラスミドDNAを次に抽出した。
次に抽出したcDNAを、以前に言及したHLA−B35cDNAを用いた共
トランスフェクション(co-transfection)実験において使用した。共トランスフ
ェクションは周知のDEAE−デキストラン−クロロキン法を用いて行った。簡
単に説明すると、1.5x104のCOS−7細胞を、上述のライブラリーから
の、100ngの組換えプラスミドpcDNAI/Ampおよび、HLA−B3
5cDNAを含む、50ngのプラスミドpcDNA3によってトランスフェク
トした。トランスフェクタントを次に、それらがここに記載した方法を用いてC
TLクローン328a/69および328a/121によるTNF産生を刺激す
ることができるかどうかを判定するためにテストした。1つのcDNAプールが
両方のCTLクローンについて陽性であることが判明、それを配列決定した。
次にサブクローニングを行い、そして個々のプラスミドDNAを上述のトラン
スフェクションおよびスクリーニングプロセスに使用した。配列番号1に示す、
1つのcDNAクローンをこれらの手順を用いて単離した。例5
単離したcDNAを次に、PCRによってクローニングされた自己HLA−B
35cDNAを用いた共トランスフェクション実験においてテストした。
HLA−B35をクローニングするために、プライマー
5’−CGGGATCCGCCGAGATGCGGGTCAC−3’
(配列番号2)
および
5’−ACTGCCCGAATTCTCTCAGTCCCTCACAAGGCA
GCTGTC−3’
(配列番号3)
をそれぞれセンスおよびアンチセンスプライマーとして使用した。PCRはPF
Uポリメラーゼ酵素を用いて35サイクル行った(94℃で1分、62℃で5秒
、75℃で5分が1サイクル)。PCR産物をpCDNA3にクローニングし、
配列番号1を含むプラスミドとともに、COS細胞を共トランスフェクトするの
に使用した。
図5に示すように、トランスフェクタントはCTLによって認識された。例6
前述のcDNAクローン(配列番号1)は、2649塩基対長である。最も近
いホモロジーは、the GenBankライブラリーにおいて“yyllgll.sl.
ヒトcDNAクローン270980”として同定されているクローンについて見
られた。このクローンは、ヘンカート(Henkart),Immunity 4:195-201(3/96)に
よって教示されている細胞死タンパク質3(“CED3”)をコードする配列と類
似している。配列番号1が関連遺伝子のファミリーに属しているかどうかを判定
するために次の実験を行った。
これをテストするために患者BB49の血中のリンパ球および腫瘍細胞から抽
出したDNAを用いてサザンブロッティングを行った。DNAをEcoRIまた
はHindIIIで消化した。次にアルカリブロッティングを用いて、DNAキ
ャピラリートランスファーをメンブランに対して行った。トランスファー後、メ
ンブラ
ンを2xSSC中でリンスし、80℃で1時間ベーキングし、そして6xSSC
、10xデンハルト溶液中で60℃で30分間前処理した。次にハイブリダイゼ
ーションを、3.5xSSC、1xデンハルト溶液、25mM NaH2PO4、
pH7.0、0.5% SDS、2mM EDTA、100μg/mlのニシン
精子DNAおよびPCRによって作った32Pで標識した配列番号1のヌクレオチ
ド1158−1482中で、65℃で18時間行った。メンブランを65℃で2
xSSC、0.5% SDSでそれぞれ30分間、2回洗浄し、次に、0.2x
SSC、0.1% SDSで30分間、2回洗浄し、そして0.1xSSC、0
.1% SDSで5分間、1回洗浄した。オートラジオグラフィーは3日間行っ
た。
EcoRIでの消化では1つのおよそ5kbのバンドのみが観察され、Hin
dIIIでの消化後には1つのおよそ4kbのバンドのみが観察された。これは
、単離された配列が関連遺伝子のファミリーに属するものではないということを
示唆している。
しかし、ヌクレオチドレベルでのホモロジーの欠如は、ICEシステインプロ
テアーゼとして知られるファミリーの分子の特徴である。事実、配列番号1の推
定アミノ酸配列は、そのようなタンパク質の1つ、即ちCPP32と21%のホ
モロジーを示し、モチーフ“QACXG”を含んでいる。ここで“X”は通常R
である。XがQであるという支持が、XがQである、配列番号1の推定アミノ酸
配列から得られる。この位置は参考文献として本出願にその内容を合体させる、
フェルナンデス-アルナーミ(Fernandes-Alnermi)他,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
93:7464-7469(1996)によって支持される。この論文は2つの新規に同定されたシ
ステインプロテアーゼファミリーのメンバー、即ちmch4およびmch5につ
いて記載しており、これらは両方関連する位置において“Q”を有する。参考文
献として本出願にその内容を合体させる、ヘンカート(Henkart),Immunity 4:1
95-201(3/96)も参照。ICEシステインプロテアーゼは細胞のアポトーシスに関
連しており、これは前記核酸分子によってコードされるタンパク質がアポトーシ
スに関連している可能性があることを示唆している。例7
抗原ペプチドをコードする、配列番号1の領域を決定した。これを行うために
、この配列のデリーション(deletions)をクローンの3’末端から市販のエキソ
ヌクレアーゼIIIを用いて行った。切形の(truncated)cDNAを含むプラス
ミドを次に自己HLA−B35cDNAとともにCOS−7細胞に共トランスフ
ェクトし、そして共トランスフェクタントを次にTNF産生アッセイにおいてC
TL認識についてテストした。最も長い陰性クローン(ヌクレオチド1−144
6)を最も短い陽性クローン(ヌクレオチド1−1600)と比較して、少なく
とも抗原ペプチドのC−末端はヌクレオチド1447−1600の範囲内にコー
ドされるということが明らかとなった。例8
cDNAのヌクレオチド1447−1600がその中に腫瘍拒絶抗原を含むペ
プチドをコードするとして同定されたことから、さらなる研究が導かれた。まず
、このヌクレオチド配列に対応するアミノ酸配列を推定した。次に、その推定ア
ミノ酸配列について、ラメンシー(Ramensee)他,Immunogenetics 41:178-229(1
995)によって提供されている、HLA−B35に対するペプチドの結合のための
、コンセンサス配列が存在しているかどうかを判定するために研究を行った。そ
のような結合のための前記コンセンサス配列は、位置2においてPRoを、そし
てC−末端において疎水性残基(Tyr、Phe、Met、LeuまたはIle
)を要求する。
以下のペプチドが前記推定アミノ酸配列内に含まれることが判明した:
PhePro Ser Asp Ser Trp Cys Tyr Phe(配列番号4)および
Phe Pro Ser Asp Ser Trp Cys Tyr(配列番号5)。
両方のペプチドを周知の固相方法を用いて合成した。それらを次に周知の51Cr
放出試験に用いて、それらがCTLによる標的細胞の溶解を引き起こすことがで
きるかどうか判定した。具体的には、標的細胞を51Crで37℃にて1時間標識
し、十分に洗浄した。1000細胞からなるグループを様々な濃度のペプチドと
ともに37℃で30分間インキュベートした。次に10,000のCTLを添加
し、そして51Cr放出を4時間後に測定した。
図6に示すように、前記ノナマーは溶解を引き起こした。前記オクタマーは51
Cr放出を引き起こさなかったので前記オクタマーについてのデータは示さない
。例9
前述の例6において論じた、配列番号1とyyllgll.s1との比較は、
配列番号1が位置1507−1509において突然変異した(mutated)終止コド
ンを有する可能性があるということを示唆していた。更に、ボルディン(Boldin)
他,Cell85:803-815(6-14-96)およびムズィオ(Muzio)他,Cell 85:817-827(6-1
4-96)によって発表された論文において、ボルディン(Boldin)他によっては“
MACH”、そしてムズィオ(Muzio)他によってはFLICEと名付けられた
タンパク質が開示されている。これらの論文において開示されたアミノ酸配列は
、配列番号1のヌクレオチド70−1507によってコードされるアミノ酸配列
に対応している。しかし、配列番号1のヌクレオチド配列内にコードされるオー
プンリーディングフレームはこれよりもっと長く、このことは終止コドン突然変
異(mutation)を示唆している。
この問題を研究するために、標準的方法に従ってBB49−SCCHNから採
取した外科的サンプルから、RNAを単離した。次にRNAを配列番号1のヌク
レオチド683−703(センス)および1510−1530(アンチセンス)
からなるプライマーを用いたRT−PCRに使用した。RT−PCRは95℃で
5分、その後30サイクル(1サイクル:95℃で1分、55℃で2分、そして
72℃で2分)、続いて更に72℃で15分で行った。PCR産物を次に精製し
て配列決定した。具体的には、配列番号1のヌクレオチド1423−1443か
らなるシークエンシングプライマーを、10ピコモルのプライマー(4μMのス
トックソリューションから)と、5ピコモルのγ33P−ATP、0.5μlの1
0xキナーゼバッファー(70mM Tris−HCl、10mM MgCl2、
5mM DTT)、pH7.6、および10ユニットのT4ポリヌクレオチドキ
ナーゼを混合することによって標識した。水を加えて容量を5μlとした。この
混合物を37℃で45分インキュベートし、その後15μlの水を流加した。
この反応の後、200ngのPCR産物をシークエンシング反応において用い
た。具体的には、11.5μlのPCR産物を、2.0μlの標準的反応バッフ
ァー、
および2.0μlの標識化プライマー(前述)と混合した。DNAポリメラーゼ
のサンプル(2.0μl)も添加した。この混合物の4μlの部分をそれぞれ4
本のチューブに添加した。チューブには4ulの、4種の終結混合物のうち1種
も添加した。各終結混合物は、それぞれ150μMのdATP、dCTP、dT
TP、および7−デアザdGTPを含むものであった。各混合物は、ddATP
、ddCTP、ddGTP、またはddTTPのうち1種を、1.5μM含むも
のであった。
前記チューブを次にサーモサイクラー(thermocycler)に配置し、そして増幅に
かけた。具体的には、増幅は95℃で5分間のサイクリングによって開始させ、
その後49サイクル反復させた。1サイクルは95℃で30秒、53℃で1分、
そして94℃で2分であった。反応は4μlの停止反応物(95%ホルムアミド
、2OmM EDTA、0.05%ブロモフェノールブルー、および0.05%
キシレンシアノールFF)を添加することによって停止させた。全部で3ulの各
増幅PCR産物を次に95℃で2分間変性させ、そして変性ゲルにローディング
した。
結果は2つの対立遺伝子が存在することを示していた。1つの対立遺伝子は位
置1508において突然変異を含んでおり、yyllgll.s1配列と比較す
ると“G”が“C”に(突然)変異しており、そしてこれはボルディン(Boldin
)およびムズィオ(Muzio)の論文において示される配列によって確認される。
これによって終止コドンが消失することになり(即ちトリプレットTGAがTC
Aとなる)、その結果、位置1771−1773の新しい終止コドンまでにわた
るオープンリーディングフレームの大きさが非常に大きくなった。
同じ実験をBB49−PBLおよびBB49−EBVからの2つの他のサンプ
ルについて行ったところ前記突然変異は観察されなかった。BB49−SCCH
NからのゲノムDNAを分析したところ、正常な“G”および突然変異した“C
”の両方の対立遺伝子が示された。
これらの結果は、細胞のアポトーシスが長い方のオープンリーディングフレー
ムから発現するタンパク質の存在または非存在に影響される可能性があることを
示唆するものである。これは例えば、正常および突然変異したタンパク質のレベ
ルのバランスにおける変化、および/または正常および突然変異したタンパク質
の間の何
らかのタイプの競合の結果である可能性がある。ここで、突然変異したタンパク
質は正常なアポトーシスの割合を減少させ、それによって、腫瘍細胞の特徴であ
る細胞の生存および増殖を増加させる。
前述の諸実験は、配列番号4のノナペプチドが、HLA−B35に結合しHL
A−B35をその表面上に提示する細胞によって提示される腫瘍拒絶抗原である
ということの同定について記載するものである。したがって、このペプチドは、
とりわけHLA−B35陽性細胞に対する“マーカー”として役立ち、標的細胞
に対するその結合および結合の欠如を研究することで、それらのHLAタイプを
判定することができる。前記ペプチドは例えば、周知のアッセイ技術を用いて、
標識された形態または標識されていない形態において利用可能である。
以上で示したように、配列番号4とHLA−B35との複合体は、それら複合
体に対するCTLの増殖を引き起こす。これら複合体に対する単離CTLは、こ
れらCTLの治療および診断に関する利用方法とともに本発明の更なる特徴であ
る。例えば、サンプルにおけるHLA−B35細胞の存在を、前記サンプルとそ
のようなCTLとを接触させ、そして前記細胞の存在の指標(indicia)として、
例えばTNF放出、標的細胞溶解などのいずれかを観察することによって、判定
することができる。同様に、配列番号4とHLA−B35との複合体によって特
徴づけられる障害を患う対象を、そのようなCTLを投与することによって治療
することができる。
更に、サンプルおよび/または対象から、配列番号4のペプチドを投与するこ
とによってHLA−B35細胞を除去することができる。というのは、配列番号
4はHLA−B35に結合して複合体を形成し、そしてそれが結合した細胞のC
TLによる溶解を引き起こすことが示されているからである。
本発明は配列番号1の単離核酸分子およびヌクレオチド1447−1600か
らなるそのフラグメントも包含する。これら分子はそれぞれ、上述したように、
腫瘍拒絶抗原即ち配列番号4の腫瘍拒絶抗原をコードする。配列番号4をコード
する核酸分子、およびストリンジェントな条件下で配列番号1またはその144
7−1600ヌクレオチドのフラグメントにハイブリダイズする単離核酸分子も
本発明に包含される。これらの条件は様々なものとすることができるが、少なく
とも65℃、0.2xSSC、0.1% SDSのストリンジェンシーが必要で
ある。プロモー
ターに操作可能にリンクした(operably Iinked to a promoter)、上述の配列の
いずれかを含む発現ベクター、および細胞、即ちリストされた核酸分子および/
または発現ベクターによってトランスフォームまたはトランスフェクトされた原
核細胞または真核細胞も、本発明の一部をなす。
前記終止コドンにおける突然変異は、本発明の部分をなすいくつかの効果を有
する。オープンリーディングフレームにおける変化の結果、正常に生じるタンパ
ク質よりも大きいタンパク質がコードされることになるということは当業者にと
って明らかである。付加された配列はそれを免疫原性にするのに十分な大きさで
あり、それにより当業者は前記突然変異したアポトーシスのタンパク質(即ちヌ
クレオチド1507−1773によってコードされるアミノ酸)に対して特異的
な抗体を作製することができる。これによって当業者が、細胞または細胞含有サ
ンプルのアポトーシスの状態を判定するための、イムノアッセイなどのアッセイ
を行うことが可能となる。そのようなアッセイは例えば、その割合の減少であれ
増加であれ、アポトーシスの状態における変化が望まれる治療に関して有用であ
る。更に、突然変異した対立遺伝子の存在または非存在を検出するための、標準
的なハイブリダイゼーションアッセイにおいて、配列番号1のヌクレオチド14
23−1443などのプライマーが利用可能である。更に、突然変異が1塩基で
あるという事実によって、例えば相同的組換えまたはその他のヌクレオチドを基
礎とする治療などの治療方法が利用可能であると考えることができる。
本発明のその他の側面は当業者にとって明らかであろうからここで示す必要は
ない。
ここに使用した用語および表現は、限定ではなく記載の用語として使用された
ものであり、従って、これらの用語および表現を使用するに当たって、図示およ
び記載された特徴構成またはその一部のいかなる均等物も除外する意図は無く、
本発明の枠内で様々な改変が可能であると理解される。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成10年8月24日(1998.8.24)
【補正内容】
次にサブクローニングを行い、そして個々のプラスミドDNAを上述のトラン
スフェクションおよびスクリーニングプロセスに使用した。配列番号1に示す、
1つのcDNAクローンをこれらの手順を用いて単離した。例5
単離したcDNAを次に、PCRによってクローニングされた自己HLA−B
35cDNAを用いた共トランスフェクション実験においてテストした。
HLA−B35をクローニングするために、プライマー
5’−CGGGATCCGCCGAGATGCGGGTCAC−3’
(配列番号3)
および
5’−ACTGCCCGAATTCTCTCAGTCCCTCACAAGGCA
GCTGTC−3’
(配列番号4)
をそれぞれセンスおよびアンチセンスプライマーとして使用した。PCRはPF
Uポリメラーゼ酵素を用いて35サイクル行った(94℃で1分、62℃で5秒
、75℃で5分が1サイクル)。PCR産物をpCDNA3にクローニングし、
配列番号1を含むプラスミドとともに、COS細胞を共トランスフェクトするの
に使用した。
図5に示すように、トランスフェクタントはCTLによって認識された。例6
前述のcDNAクローン(配列番号1)は、2649塩基対長である。最も近
いホモロジーは、the GenBankライブラリーにおいて“yyllgll.s1.
ヒトcDNAクローン270980”として同定されているクローンについて見
られた。このクローンは、ヘンカート(Henkart),Immunity 4:195-201(3/96)
によって教示されている細胞死タンパク質3(“CED3”)をコードする配列と類似
している。配列番号1が関連遺伝子のファミリーに属しているかどうかを判定す
るために次の実験を行った。
これをテストするために患者BB49の血中のリンパ球および腫瘍細胞から
抽出したDNAを用いてサザンブロッティングを行った。例7
抗原ペプチドをコードする、配列番号1の領域を決定した。これを行うために
、この配列のデリーション(deletions)をクローンの3’末端から市販のエキソ
ヌクレアーゼIIIを用いて行った。切形の(truncated)cDNAを含むプラス
ミドを次に自己HLA−B35cDNAとともにCOS−7細胞に共トランスフ
ェクトし、そして共トランスフェクタントを次にTNF産生アッセイにおいてC
TL認識についてテストした。最も長い陰性クローン(ヌクレオチド1−144
6)を最も短い陽性クローン(ヌクレオチド1−1600)と比較して、少なく
とも抗原ペプチドのC−末端はヌクレオチド1447−1600の範囲内にコー
ドされるということが明らかとなった。例8
cDNAのヌクレオチド1447−1600がその中に腫瘍拒絶抗原を含むペ
プチドをコードするとして同定されたことから、さらなる研究が導かれた。まず
、このヌクレオチド配列に対応するアミノ酸配列を推定した。次に、その推定ア
ミノ酸配列について、ラメンシー(Ramensee)他,Immunogenetics41:178-229(19
95)によって提供されている、HLA−B35に対するペプチドの結合のための
、コンセンサス配列が存在しているかどうかを判定するために研究を行った。そ
のような結合のための前記コンセンサス配列は、位置2においてPRoを、そし
てC−末端において疎水性残基(Tyr、Phe、Met、LeuまたはIle
)を要求する。以下のペプチドが前記推定アミノ酸配列内に含まれることが判明
した:
Phe Pro Ser Asp Ser Trp Cys Tyr Phe(配列番号2)および
Phe Pro Ser Asp Ser Trp Cys Tyr(配列番号6)。
両方のペプチドを周知の固相方法を用いて合成した。それらを次に周知の51Cr
放出試験に用いて、それらがCTLによる標的細胞の溶解を引き起こすことがで
きるかどうか判定した。具体的には、標的細胞を
これらの結果は、細胞のアポトーシスが長い方のオープンリーディングフレー
ムから発現するタンパク質の存在または非存在に影響される可能性があることを
示唆するものである。これは例えば、正常および突然変異したタンパク質のレベ
ルのバランスにおける変化、および/または正常および突然変異したタンパク質
の間の何らかのタイプの競合の結果である可能性がある。ここで、突然変異した
タンパク質は正常なアポトーシスの割合を減少させ、それによって、腫瘍細胞の
特徴である細胞の生存および増殖を増加させる。
前述の諸実験は、配列番号2のノナペプチドが、HLA−B35に結合しHL
A−B35をその表面上に提示する細胞によって提示される腫瘍拒絶抗原である
ということの同定について記載するものである。したがって、このペプチドは、
とりわけHLA−B35陽性細胞に対する“マーカー”として役立ち、標的細胞
に対するその結合および結合の欠如を研究することで、それらのHLAタイプを
判定することができる。前記ペプチドは例えば、周知のアッセイ技術を用いて、
標識された形態または標識されていない形態において利用可能である。
以上で示したように、配列番号2とHLA−B35との複合体は、それら複合
体に対するCTLの増殖を引き起こす。これら複合体に対する単離CTLは、こ
れらCTLの治療および診断に関する利用方法とともに本発明の更なる特徴であ
る。例えば、サンプルにおけるHLA−B35細胞の存在を、前記サンプルとそ
のようなCTLとを接触させ、そして前記細胞の存在の指標(indicia)として、
例えばTNF放出、標的細胞溶解などのいずれかを観察することによって、判定
することができる。同様に、配列番号2とHLA−B35との複合体によって特
徴づけられる障害を患う対象を、そのようなCTLを投与することによって治療
することができる。
更に、サンプルおよび/または対象から、配列番号4のペプチドを投与するこ
とによってHLA−B35細胞を除去することができる。というのは、配列番号
2はHLA−B35に結合して複合体を形成し、そしてそれが結合した細胞のC
TLによる溶解を引き起こすことが示されているからである。
本発明は配列番号1の単離核酸分子および請求の範囲
1. 配列番号2のアミノ酸配列からなる単離ペプチド。
2. 配列番号2とHLA−B35との複合体に対して特異的な単離細胞溶解性
T細胞ライン。
3. サンプルがHLA−B35陽性細胞を含むことを判定する方法であって、
前記サンプルを配列番号2の単離ペプチドと接触させる工程、および、前記サン
プル中のHLA−B35陽性細胞の指標として前記ペプチドの結合を判定する工
程を有する、サンプルがHLA−B35陽性細胞を含むことを判定する方法。
4. サンプルがHLA−B35陽性細胞を含むことを判定する方法であって、
前記サンプルを請求項2の単離細胞溶解性T細胞と接触させる工程、および、前
記サンプル中のHLA−B35陽性細胞の判定として前記細胞溶解性T細胞の活
性を測定する工程を有する、サンプルがHLA−B35陽性細胞を含むことを判
定する方法。
5. HLA−B35陽性細胞によって特徴づけられる病的状態を有する対象を
治療する方法であって、前記対象に、前記対象における前記HLA−B35陽性
細胞の溶解を引き起こすのに十分な量の請求項1の単離ペプチドを投与する工程
を有する、HLA−B35陽性細胞によって特徴づけられる病的状態を有する対
象を治療する方法。
6. HLA−B35陽性細胞によって特徴づけられる病的状態を有する対象を
治療する方法であって、対象に、前記対象における前記HLA−B35陽性細胞
を溶解するのに十分な量の請求項2の単離細胞溶解性T細胞を投与する工程を有
する、HLA−B35陽性細胞によって特徴づけられる病的状態を有する対象を
治療する方法。
7. その相補的配列がストリンジェントな条件下で配列番号1にハイブリダイ
ズする、腫瘍拒絶抗原前駆体をコードする単離核酸分子。
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フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12N 15/09 ZNA G01N 33/53 D
C12Q 1/04 33/566
G01N 33/53 C12N 15/00 ZNAA
33/566 A61K 37/02
(72)発明者 ブーン―ファラー,ティエリー
ベルギー国 ビー―1200 ブリュッセル
アベニュー・ヒポクラート 74 ユーシー
エル 7459