【発明の詳細な説明】
ヒトおよび哺乳類のDNA複製開始点コンセンサス配列背景技術
(a) 産業上の利用分野
本発明は、ヒトおよび哺乳類のDNA複製開始点コンセンサス配列;哺乳類のDNA
複製開始の制御のためのコンセンサス配列の使用;増殖中の哺乳類細胞内で半保
存的に複製され得る環状プラスミド構築物の維持を可能にする小配列;ヒトの遺
伝子治療における使用に適した小配列;哺乳類およびヒト人工染色体ベクターに
おける封入に適した小配列;二本鎖DNAに結合するタンパク質;DNA複製に対する
抗遺伝子;およびインビトロまたはインビボでDNA複製を阻害する方法に関する
。
(b) 先行技術の記述
ヒト人工染色体の構築は、染色体生物学の難問に答えるための価値のある道具
を供給するだけにとどまらず、相補マッピングの目的のため、または遺伝子治療
のために、最も大きな遺伝子にさえ由来する完全な転写単位を含む巨大な染色体
領域を運搬する能力を有するすべてのヒトトランスフェクションベクターを創製
するはずである(Huxley,C.(1994)Gene Ther.1:7-12)。
人工染色体は3種類のシス(cis)作用をもつ機能性構成成分を必要とする:複
製開始点、テロメア、およびセントロメアである。出芽酵母S.cerevisiaeの複
製開始点を有する酵母ARS(autonomously replicating sequence;自律複製配列
)プラスミドは、安定な酵母人工染色体またはYACの作製を完成させるためのテ
ロメア、TEL、およびセントロメア、CEN要素の付加のための基礎を供給した(Mur
ray,A.W.& Szostak J.W.(1993)Nature,305,189-193)。同様の戦略により
、そのセントロメアがはるかに複雑な構造であるにも拘わらず、分裂酵母Schizo
saccharomyces pombeにおける人工染色体に対して成功がもたらされた(Hahnenbe
rger,K.M.ら、(1989)Proc.Nat.Acad.Sci.USA,86:577-581)。
ヒト人工染色体の原型の構築のためのそのような「完全な」戦略において必要
とされる第一の構成成分は、機能的なヒトの複製開始点である。様々な技術によ
り、限定されているが急速に増加する数の、推定上のおよび証明された哺乳類の
DNA複製開始点の同定が可能になった(DePamphilis,M.L.(1993)Annu.Rev.
B
iochem.62:29-63)。
我々のグループは、新生鎖の押出し(extrusion)(Kaufmann G.ら、(1985)Mo
l. Cell.Biol.,5:721-727)および抗十字型免疫親和性精製(Bell,D.ら、(
1991)Biochem.Biophys.Acta,1089:299-308)などの技術を使用して、多数の
推定上の開始点を単離することを可能としてきた。これらの配列はヒトの細胞に
トランスフェクトされたプラスミドの短期の自律複製を可能にし、それらの本来
の染色体位置においては複製開始点として働くことが可能である(Wu,C.ら、(
1993a)Biochem.Biophys.Acta,1174:241-257)。
第一段階のヒト人工染色体の作製のためにそのような単離された開始点配列を
使用するために、ヒトの細胞へのトランスフェクションおよびトランスフェクト
されたクローン分集団の選択を可能にし、数百キロ塩基になり得るヒトの機能的
テロメアおよび推定上のセントロメア成分を運搬するためのさらなる修飾能力を
有する環状ベクター内にそれらをクローン化する必要がある。さらに方法は、こ
れらの構築物が長期の培養においても、宿主染色体に組込まれずに独立なエピソ
ーム要素として維持されることを論証するものとして適用および応用される。
我々はARSを有するcDNAクローンを同定し(Wu,C.ら、(1993a)Biochem.Biop
hys.Acta.1174:241-257)、染色体6qに位置するクローン343(Shihab-El-Deen
,A.ら、(1993)Somat.Cell Mol.Genet.19:103-109)がインビボで染色体
上の開始点として位置することを証明した(Wu,C.ら、(1993b)Biochem.Bioph
ys.Acta,1174:258-266)。我々はまた、チャイニーズハムスター由来の遺伝子
座であるジヒドロ葉酸還元酵素DHFRの両方向開始点(oriβ)が、大小の断片でARS
活性を有することをHeLa細胞へのトランスフェクション後のインビボのDpnI耐性
解析において、および我々の哺乳類インビトロDNA複製系(Zannis-Hadjopoulos,
M.ら、(1994)Gene,151:273-277)によりインビトロで証明した。(我々はARS
および開始点機能のインビボおよびインビトロ複製解析が同じ結果となること、
およびプラスミド構築物の複製開始がoriβを含む挿入配列内に生じることを示
した。)
我々は、我々のインビトロDNA複製系において使用したHeLa細胞抽出液から既
知の複製タンパク質との共精製により部分的に精製したors(origin enriched se
quence;開始点富裕配列)結合活性(今後は開始点結合活性(OBA)とも呼ぶ)の性質
決
定も行なった(Ruiz,M.T.ら、(1995)J.Cell.Blochem.58:221-236)。真核
生物のDNA複製の制御は最も重要な生物学上の機構の一つである。我々は開始点
を有する配列(S3(Nielsen,T.ら、(1994)Mol.Gen.Genet.242:280-288)
および343)が、YACneoプラスミドにおける選択条件下で長期間エピソームとして
維持されることを証明し、さらにARSを有する小断片の開始点としての機能性を
証明した。
以前の配列解析では、特定のヌクレオチドコンセンサス配列を明らかにするこ
とに失敗したが、我々は今回、2種類の推定上の最小の核のARSコンセンサス配
列(36bpおよび91bp)を導き出すために、多数のサルおよびヒトのARSを調べ、ARS
活性を有する小さいDNA断片を分類する機会を得た。インビボおよびインビトロ
の複製分析による予備的な解析により、哺乳類細胞におけるこれらのエピソーム
様の複製の分析において両者とも開始点として機能する能力を有することが示さ
れている。さらに、ある特定の配列はOBAに結合し、ORS8開始点の186bpの最小AR
Sの断片と同様に結合の競合因子として効果的であることが示された(Todd,A.ら
、(1995)J.Cell.Biochem.58:221-236)。
我々の独自の仕事および方策の全体の重要さにより、我々は哺乳類の最小の核
のARSコンセンサス配列の同定の可能性を確信し、酵母の最小の核のARSコンセン
サス配列の同定のように、哺乳類細胞におけるDNA複製機構の発見が急速に前進
するべきである。
ヒトの核のARSの改作(versions)を用いることにより染色体機能の維持のため
、および遺伝子治療における使用のために必要な哺乳類の染色体の本質的な要素
の定義において使用するためのシャトルベクター構築物を創製するために使用す
ることができる、最小コンセンサス配列が供給されることがきわめて望ましい。発明の概要
本発明の一つの目的は、哺乳類DNA複製開始の制御のためのコンセンサス配列
を提供することである。
本発明の他の目的は、増殖する哺乳類細胞中で半保存的に複製され得る能力を
有する環状プラスミド構築物の維持を可能にする小配列を提供することである。
本発明の他の目的は、哺乳類およびヒトの人工染色体ベクターに適した小配列
を提供することである。
本発明の一つの態様によれば、「アルファコンセンサス」と呼ばれる特定の36
-bpのコンセンサス配列、および「単一orsコンセンサス」と呼ばれる特定の91bp
のコンセンサス配列が提供される。
本発明の他の態様によれば、アルファコンセンサスは以下に示すヌクレオチド
配列:
アルファコンセンサス配列(36bp)は、アフリカミドリザルCV-1細胞のアルファ
-サテライト配列と関連し(ORS14 & ORS23 Landry,S.& Zannis-Hadjopoulos,M
.(1991)Biochem.Biophys.Acta,1088:234-244)、および、正常なヒトの肌
の線維芽細胞のアルファ-サテライト配列と関連する(F5およびF20 Nielsen,T.
ら、(1994)Mol.Gen.Genet.242:280-288)自律複製配列から導き出された。
アルファコンセンサス配列はマウスの線維芽細胞NIH 3T3およびマウスの胚性
癌腫細胞P19を用いたBVDR取り込み分析においてDNAを複製することが可能である
。
本発明の他の態様によれば、コンセンサスは、アルファコンセンサスの天然変
異型であるY.343、または、修飾および1から5個のヌクレオチドのギャップ挿
入を含む少なくとも20ヌクレオチドのその機能的な断片などの、アルファコンセ
ンサス配列と少なくとも70%の相同性をもつ配列を有するその機能的な変異体で
ある。
アルファコンセンサスと70%の相同性を示すそのような変異体は、各々の相同
性を有する例示された以下の配列を含むが限定されない。 本発明によれば、単一orsコンセンサスは以下に示すヌクレオチド配列:
単一orsコンセンサス(91bp)は、アフリカミドリザルCV-1細胞からの低コピー
または唯一の自律複製配列に由来し、ORS8(GenBank受け入れM26221)(Kaufmann
,G.ら、(1985)Mol.Cell.Biol.,5:721-727;Frappier,L.& Zannis-Hadjo
p
oulos,M.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84:6668-6672)、およびORS1
3,ORS20,ORS24,およびORS25,(Landry,S.& Zannis-Hadjopoulos,M.(199
1)Biochem.Biophys.Acta,1088:234-244)を含む。
本発明の他の態様によれば、コンセンサスは、単一orsコンセンサスと少なく
とも70%の相同性を持つ配列を有するその機能的な変異体である。
本発明によれば、以下の工程を含む哺乳類のDNA複製開始の制御のための方法
が提供される:
a) DNA断片を発現することができるベクターを形成するために、本発明の配列
をコードするコンセンサス配列をDNA断片と共に挿入すること;
b) 工程a)のベクターをインビトロで哺乳類細胞に導入すること。
工程b)において、ベクターは、リン酸カルシウム共沈殿トランスフェクション
法、電気穿孔法、マイクロインジェクション、およびリポソームを介したトラン
スフェクション法からなる群の中から選択した標準的な方法により導入される。
本発明によれば、増殖中の哺乳類の細胞において半保存的に複製され得る環状
プラスミド構築物の維持のためのDNA配列が提供され、本発明の配列からなる少
なくとも一種類のコンセンサス配列を含む。
本発明によれば、哺乳類およびヒト人工染色体ベクターへの封入に適したDNA
配列が提供され、本発明の配列からなる少なくとも1つのコンセンサス配列を含
む。
本発明によれば、二本鎖DNAに結合し、グリセロール勾配において約150kDaで
あり、各々約86および70kDaの2個のサブユニットからなる、LHeLa細胞抽出液に
由来するタンパク質が提供される。
本発明によれば、本発明のコンセンサス配列の二本鎖型を含む、DNA複製に対
する抗遺伝子が提供される。
本発明によれば、DNA複製をインビトロまたはインビボで阻害するための方法
が提供され、一本鎖または二本鎖型での本発明のコンセンサス配列の投与を含む
。
本明細書にて使用している、ヌクレオチドを表す略号は以下のとおりである:
コード 群 ヌクレオチド
A A アデニン
C C シトシン
G G グアニン
T T チミン(DNA中)
U U ウラシル(RNA中)
Y CまたはT(U) ピリミジン
R AまたはG プリン
M AまたはC アミノ
K GまたはT(U) ケト
S GまたはC 強い相互作用(3個の水素結合)
W AまたはT(U) 弱い相互作用(2個の水素結合)
H AまたはCまたはT(U) G以外
B GまたはT(U)またはC A以外
V GまたはCまたはA T以外、またはU以外
D GまたはAまたはT(U) C以外
N G,A,CまたはT(U) いずれか 図面の簡単な説明
図1はpYACneoべクターおよびクローン化された哺乳類の開始点およびコンセ
ンサス配列の模式図であり;
図2は、哺乳類の開始点を有する修飾されたpYACneoおよびpYACneoベクターに
よるトランスフェクションから得られた2種類の代表的なHeLaクローン分集団の
増殖曲線を示し;
図3は超らせん状エピソームおよび直鎖状ゲノムDNAの画分のPCR解析を示し;
図4は、コンセンサス配列を含む領域内で生じるDNA複製の開始を伴う、36bp
コンセンサス配列の一つの改作であるA3/4を有するプラスミドの哺乳類インビト
ロDNA複製を示し;
図5A-5Cは、個々のアルファコンセンサスプラスミドクローンのブロモデオ
キシウリジンのインビボ標識を示し;
図6A-6Bは、安定なHeLa細胞クローンからのエピソームDNAの単離を示し;
図7A-7Bは、安定なHeLa細胞クローンから得たエピソームDNAのブロモデオキ
シウリジンのインビボ標識および回収を示し;
図8A-8Bは、Ors結合活性のタンパク質結合性についての、競合によるバンド
シフト解析を示し;そして
図9は、p186のインビトロ複製に対する、二本鎖A3/4オリゴヌクレオチド配列
の効果を示す。発明の詳細な記述
15.8kbのプラスミドであるpYACneoは、細菌の開始点、G418耐性遺伝子、およ
び酵母のARS,CENおよびTetrahymena TEL因子を有する(GenBank受け入れ番号U13
189)。4種類の哺乳類の開始点がこの環状ベクターにクローン化されている:34
3、ヒト染色体6qの転写領域に由来する448bpの染色体上の開始点(Shihab-El-Dee
n,A.ら、(1993)Somat.Cell Mol.Genet.19:103-109);X24、ハムスター
のDHFRの細菌の双方向複製開始点(oriβ)を有する4.3kbの因子(Zannis-Hadjopou
los,M.ら、(1994)Gene,151:273-277)、およびS3、1.1kbのヒト抗十字形精
製された自律複製(Nielsen,T.ら、(1994)Mol.Gen.Genet.242:280-288)
、およびA3/4、36bpコンセンサス配列の変異体である。その結果生じた構築物(
それぞれY.343,Y.X24,YAC.S3,Y.A3/4)をHeLa細胞にトランスフェクトし、G41
8耐性を示す継代培養物を単離した。G418耐性の形質転換の効率は、ベクターの
みによるものよりも、開始点を含むpYACneoによるものの方が高かった。G418選
択条件下で45世代以上経った後、組込まれた構築物に対するエピソーム体の存在
を、周期的変動分析および、EtBr-CsCl勾配において分離した超らせん状の環状
および直鎖状のゲノムの細胞性DNAに対するPCRにより調べた。ベクターのみによ
りトランスフェクトされた安定なG418耐性の継代培養においては、開始点を有す
る環状の構築物によりトランスフェクトされた継代培養の幾つかと同様に、宿主
ゲノムへ組込まれることにより耐性を獲得した。しかしながら、選択培地におけ
る長期間の培養後には、1回の細胞分裂あたり70%-90%の安定性をもって厳密な
エピソーム状態のY.343,YAC.S3,およびY.A3/4環状構築物を維持するG418耐性
トランスフェクト体(transfectant)の例も見いだされた。幾つかのエピソーム構
築物の分析は、PCRで検出されたように、超らせん状のエピソーム画分に存在し
、直鎖状ゲノムCsCl画分には存在しない構築物を見いだした。哺乳類の開始点を
有するこれらの可変性の構築物は、ヒト人工染色体の構築につながる努力におけ
る、ヒトのテロメアま
たは巨大な推定上のセントロメア因子によるさらなる修飾の能力を有する。
材料と方法
分子クローニング
pYACneo(Clontech)ベクターをEcoRIで消化した。プラスミドS3(Nielsen,T.ら
、(1994)Mol.Gen.Genet.242:280-288)の1.1kbのEcoRI挿入配列を脱リン
酸化したベクターに直接連結し、他方でpURHc34(Wu,C.ら、(1993a)Biochem.
Biophys.Acta,1174:241-257)の448bpのEcoRI/HincII挿入配列およびpX24(Bur
hans,W.C.ら、(1990)Cell,62:955-965)の4.3kbのXbaI挿入断片は、平滑末
端の脱リン酸化されたベクターに連結する前に、T4 DNAポリメラーゼにより平滑
末端化した。適切なマルチクローニング部位(例えばNotI)およびT3プライマーお
よびM13リバースプライマー配列を有する229bpのDNA断片内に含まれている一種
の36bpコンセンサス配列であるA3/4は、EcoRI消化し、脱リン酸化したpYACneoベ
クターに連結した。生じた環状構築物をYAC.S3,Y.343,Y.X24およびY.A3/4と呼
ぶ。各々をコンピテントな大腸菌を形質転換するために使用し、アンピシリン耐
性コロニーをプラスミド大量調製用に増殖させた。クローン化された構築物の構
造はのちに制限酵素消化により確認した。
トランスフェクションおよびヒト細胞の培養
凍結保存物から回復させてから一度継代したHeLa細胞をT-25フラスコ内で1x1
04/cm2で接種し、リン酸カルシウム共沈法を用いて20μgのpYACneo,YAC.S3,Y.
343,Y.X24またはY.A3/4 DNAをトランスフェクションする前に2日間増殖させた
(α-MEM+10% FCS)。トランスフェクションから2日後、細胞を400μg/mL G418を
含む培地に転換し、さらに2日後に、T-25フラスコをトリプシン処理し、計測し
、1x105個の細胞を60mm皿に接種した。HeLa細胞はG418においてトランスフェク
ション後20日に至るまで培養し、そこで目に見える増殖を示した薬剤耐性コロニ
ーの皿を記録した。更なる解析のためのクローン分集団を単離するため、個々の
コロニーを60mm皿から直接拾った。この期間中、培養は100μg/mLのG418内で維
持し、最初のトランスフェクションと次のトランスフェクト構築物のエピソーム
対組込み状態の解析の間、推定で最小45の倍加で活動的に増殖した。
揺らぎ(fluctuation)分析
試験される各々のクローン化されたトランスフェクト体の細胞系列に関して、
G418内で維持されていた細胞を計測し、4x105個の細胞を2つのT-80フラスコ内
に移して培養したが、1つは薬剤を含まない非選択培地を含み、そして1つはG4
18-選択培地内で培養を維持するために使用した。薬剤選択の存在および非存在
の両方においてそれらの増殖曲線を続行可能とするために、並行して、細胞を同
一の密度で2枚の24穴プレート上に接種した(200mm2/穴)。3個の穴をトリプシ
ン処理し、毎日コールターカウンターZM(商標)装置により計測した。増殖の6日
後に、両方のT-80フラスコをトリプシン処理し、計測し、最終濃度が5細胞/mL
となるように、G418含有培地または非選択培地のいずれかにより希釈した。200
μLのアリコートを96穴プレートの各々の穴に分注した(32mm2/穴)。(2枚のプ
レートを、非選択培地で継代して、今はG418に戻した細胞のために使用した。)
8日後、顕微鏡下で観察し、増殖中の細胞のコロニーを有する穴の数を記録した
。
エピソームDNAの証明
陽性の対照として、リン酸カルシウム共沈殿法を用いて、HeLa細胞をY.X24で
一時的にトランスフェクトし、48時間後に回収した。標準的な方法を用いて、ト
ランスフェクトしていないHeLa(陰性の対照)、一時的にトランスフェクトしたHe
La、および試験されるべきクローン化されたトランスフェクト体の細胞系列から
、5x106個の細胞の総DNAを単離した。DNA調製物は1mgの臭化エチジウムおよび
75μgの運搬体プラスミド、この場合のF9においては0.5kbのヒトゲノムの挿入配
列を有するpBluescriptクローンと共に混合した(Nielsen,T.ら、(1994)Mol.
Gen.Genet.242:280-288)。VTi80(商標)遠心分離機内で20時間、67,500rpmで
超遠心分離する前に、最終密度が1.56g/mLとなるようにCsCl溶液を添加した。無
傷およびニックの入った運搬体プラスミドのバンドを、超らせん(下側のバンド)
および、直鎖状および弛緩した環状(上側のバンド)のDNAに対する目印として利
用して、2種類の完全に分離した画分を側方から注射針で注意深く取り出した。
臭化エチジウムはCsClを飽和させたイソプロパノールを用いた2回の洗浄により
除去し、CsClは、2回の70%エタノール洗浄工程を伴うエタノール沈殿により除
去した。
精製したDNAの8分の1にあたるアリコートを2種類の50μL PCR反応における
鋳型として使用した。トランスフェクトされた構築物内に存在するが陰性のHeLa
ゲノムDNAには存在しないneo遺伝子の131bpの領域を増幅するために、NEO遺伝子
内に位置するプライマー5'-TCA GGA CAT AGC GTT GGC T-3'(配列番号6)および5
'-CGT CAA GAA GGC GAT AGA A-3'(配列番号7)を(0.4μMで)、4種全てのdNTP's
(各0.2mM)、1x Taq緩衝液、および1U Taqポリメラーゼ(Pharmacia)とともに使用
した。各々94℃,20秒の変性;50℃,90秒の対合;および72℃,30秒間の伸長で
28回転行ない、最初の変性および最後の伸長工程は5分間実行した。ヒト第6染
色体の長腕上の423bpの単一領域を増幅するために、プライマー5'-TGT GTA TGG
GAC GGT AGT CA-3'(配列番号8)および5'-GGA GCA AGG CAG AAC TAC TC-3'(配
列番号9)(Wu,C.ら、(1993b)Biochem.Biophys.Acta,1174:258-266)を0.
25μMで、1.5U Taqとともに使用し、33回転行ない(それぞれ94℃,60秒;50℃,
60秒;72℃,60秒)続いて最後の伸長を5分間行なった。両者の反応産物は1.6%
アガロース,1x TBE(0.0089M Tris,0.0089Mホウ酸,0.002M EDTA,pH8.0)ゲル
上で電気泳動した。
結果
YACベクターの中へ哺乳類の複製開始点のクローニング
pYACneoは用途の広いシャトルベクタープラスミドである(Traver,C.N.et a
l.(1989)Proc.Nat.Acac.Sci.USA 86:5898-5902)。それは原核生物のCol
EI複製開始点およびpBR322由来のアンピシリン耐性マーカーを含むので、pYACne
oは環状のプラスミドとしてE.coliにおいて成長されることが可能である。この
ベクターはS.cerevisiaeのARS1複製開始点およびCEN4セントロメア要素も所有
しているので、それは、TRP1,URA3,およびHIS3選択マーカーを保有している環
状の酵母の人工染色体として選択的に維持されることが可能である。さらに、pY
ACneoは哺乳類細胞において選択することのできる形質のある薬剤G418に対する
耐性を提供する遺伝子を保有している。それ故、このベクターは、E.coliおよ
びS.cerevisiaeの両方において複製することができ、そして安定な細菌、酵母
、または哺乳類の細胞のトランスフェクト体の選択のためのマーカーを所有して
いる。
三種類の哺乳類の配列およびヒトの細胞において自律複製を可能にすることを
示した一つの36-bpのコンセンサス配列のバージョン、A3/4はpYACneoベクターの
EcoRI部位の中へクローン化された(図1)。
ベクターにおいて、原核生物の配列は薄い灰色の線により指し示される。機能
的な酵母のシス作用性染色体の成分は空白の箱として示され、一方酵母のマーカ
ー遺伝子は環状ベクター内に含まれる影のある箱により示される。哺乳類選択可
能なG418耐性マーカーは黒である。二つのヒトの配列(343,S3)、一つのハムスタ
ーの配列(X24)、および36-bpのコンセンサス配列のバージョン(A3/4)は全体が22
9bpのDNAの中に含まれ、複製開始点含有、自律複製配列と同じくpYACneoベクタ
ーのEcoR I部位の中ヘクローン化された;挿入物の方向が示している制限部位は
示されている。X23,343,およびS3を有するpYACneoの構築物において、制限地図
はTEL要素の一つの領域において約220塩基対の欠損を指し示した。A3/4コンセン
サス配列を有するpYACneoの構築物はpYACneoベクターにおいて検出された欠損は
なく、無傷と思われる。
343はヒトの6番染色体の長腕上の転写領域から由来された0.45kbのcDNAであ
り(Shihab-El-Deen,A.et al.(1993)Somat.Cell Mol.Genet.19:103-109
)、新生鎖PCRマッピングによりインビボ複製開始点活性がそこへ局限化されてい
た(Wu,C.et al.(1993b)Biochim.Biophys.Acta,1174:258-266)。S3は、
ゲノムDNAの抗-十字型の免疫親和性精製、続く集団トランスフェクションおよび
インビトロ複製分析により強力な自律複製活性を所有するクローンの競合的選択
により単離された、1.1kbのヒトの配列である(Nielsen,T.ら(1994)Mol.Gen.
Genet.242:280-288)。X24はハムスターのDHFRの3'領域から由来する4.3kbのXb
aI断片を有し、および優勢な開始部位oriβを含有し、その事実は複数の技術に
より示されるとおりである。最後に、A3/4は、数個の哺乳類ARSの配列比較に由
来する36-bpのコンセンサス配列である。
HeLaトランスフェクション効率は複製開始点構築物を伴うとより高くなる
Y.343,YAC.S3,Y.X24,およびY.A3/4構築物は比較的小サイズ(全て21kb未満)
であるので、哺乳類細胞をトランスフェクトするための酵母スフェロプラスト融
合等の技術の使用を必要とする0.1-1.0Mb範囲においてのYAC類とは異なり、それ
らは細菌において生育することができ、そして純粋な調製物は相対的高効率リン
酸カルシウム共沈法によりトランスフェクトできる。リン酸カルシウム処理され
た、偽トランスフェクトされた(mock-transfected)細胞はG418非耐性コロニーを
もた
らした;全ての哺乳類の複製開始点を欠損しているpYACneoベクターは培養した105
個の細胞あたり45コロニーが得られた。重要なことに、試験した構築物YAC.S3,
Y.343,Y.X24,およびY.3/4はベクターのみよりも70-900%の安定なトランスフェク
トされたG418耐性コロニーを得たが、短小なクローン化された複製開始点含有挿
入物の存在は、ヒトの細胞においてトランスフェクトされたneo形質の維持を促
進させるかもしれないことを示唆する。
単離されたコロニーはトランスフェクトされた構築物の維持を選択するために
G418においてクローン化されおよび成長させ、およびエピソームneo含有DNAの存
在および安定性を試験する前の培養において最低67日の(およびある場合は96日
に及んだ)月日が流れた。
トランスフェクトされた構築物の安定性
Luria-Delbruckの揺らぎ分析を基盤とした実験手順は、非選択培地において細
胞成長中の薬剤耐性マーカーの安定性の計算を可能にする。宿主ゲノムの中へト
ランスフェクトされたマーカーの組込みを通した通常の方法において獲得された
安定なトランスフェクト体は、たとえ選択圧の不在下でも薬剤耐性の形質は維持
する。しかしながら、機能的なセントロメアを欠損するエピソームによる複製DN
Aは正確な有糸分裂の分配が行えなく、および世代あたり特有の損失率を示す。
環状のpYACneo,YAC.S3,Y.343,またはY.X24を最初にトランスフェクトしたG41
8耐性のクローン細胞数の例は揺らぎ分析により試験した。本質において、細胞
はG418から非選択培地へ継代されおよび成長させ、一方平行して、細胞はそれら
の成長速度の毎日の監視を許すために24穴プレートにも接種された。独立のクロ
ーンの成長速度の実例は図2に示される。
200mm2の穴においてY.343クローン2およびY.A3/4クローン9を培養した後、
細胞数はCoulter計数器により測定した;各プロット点は対数増殖期にそれぞれ
の日の3通りの穴の平均を表す。中が空白の四角は非選択培地においての細胞数
の固有の対数期を示し、一方充満したダイヤモンドはG418が400μg/mlの存在下
においての成長を追跡している。Y.A3/4クローン9の選択培地においての成長は
6日を越える成長から測定された(2つの測定点は、最初および培養後6日)。連
続した直線は、細胞倍加時間が決定される直線回帰分析により引き出される;全
ての場
合において曲線適応相関(R2)値は0.98よりも良好であった。
非選択培地の中へ種をまいた6日後、細胞は未だ対数期にあるが、試験フラス
コは、neoマーカーが未だ保持されている細胞の比率を決定するためにトリプシ
ン処理、希釈、および再プレートした。結果は表1において、試験されたそれぞ
れの分集団における構築物の算出された安定性と共に示される。
(とりわけYAC.S3クローン1,Y343クローン2およびY.A3/4クローン9を含む
)いくつかの試験された細胞系統は非選択培地において成長した早さよりもG418
においての成長はわずかに遅かった。(例えば、図2を参照)。G418において減少
した個体群の成長速度は、幾つかの細胞分裂の間にneoマーカーの損失の反映か
もしれず、あるいは代わりに特別な組込みコンテクストにおけるneo遺伝子の乏
しい転写を反映できた。非選択培地においてのこれらの指数関数的成長曲線の回
帰分析から、揺らぎ期間の間に起こる倍加の数は計算された。
aG418=非選択培地において6日間成長させた試験クローン細胞を96穴プレート上
の1穴あたり1細胞で培養している間にG418選択培地に戻した後の成長している
コロニーを有する穴の数。b
非選択的=非選択培地において6日間成長させた試験クローン細胞を96穴プレー
ト上の1穴あたり1細胞で培養している間非選択培地において保持し続けた後の
成長しているコロニーを有する穴の数。c
♯gen=平行培養の毎日の計数による評価として、6日の非選択培地の揺らぎ期
間の間に起きた細胞分裂の数。a
分裂あたりの安定性(x)は、それぞれの細胞分裂の後に、娘細胞が選択マーカー
を受け継ぐ機会のことを意味し、そして下記の関係から算出される:
xg=%PE(G418で選択された)/%PE(非選択)(式中、g=細胞世代数および%PE=培養効
率パーセント=コロニーを有する96穴の数/96)。
結果は有効数字1桁で示され、可能な最大の安定性は1.0である。e
Murray & Szostak(1983)、およびHahnenbergerら(1989)からのデータ。セント
ロメア含有の酵母人工染色体の安定性は量の関数として増加する。
環状のpYACneoベクターを有する全てのHeLaクローンは約1の安定性にてneoマ
ーカを維持し、それらのトランスフェクションが組込みの事象の結果であるとの
仮説を指示する。同じことが、複製開始点含有の構築物と共にトランスフェクト
したいくつかのクローンに関して真実である。しかしながら、例えば、2つのYA
C.S3のうちの1つ、2つのY.343のうちの1つ、および1つまたは複数のY.A3/4H
eLa細胞クローンにおいては、それぞれの個体群において細胞の有意な割合が非
選択培地の揺らぎ期間の間にG418耐性の形質を失い、これらのクローン系列がト
ランスフェクトされた構築物のエピソーム型のみを有したことを強く暗示する。
実際に、これらの世代あたり0.8-0.9の算出された安定性は、セントロメアを欠
損しているが機能的なセントロメアを有する同等のプラスミドを使用して、S.c
erevisiaeおよびS.pombeの人工染色体の構築中に他により獲得された安定性と
類似している(表1)。この減少した安定性は、その形質が長期間の非選択培地の
培養において失われたことを予測する;即ち、6日間の揺らぎ分析からの結果を
確認するために、Y.343クローン2においてエピソームにより維持されるneoマー
カーの最終的な不安定性が揺らぎ分析の反復により試験され、46日間の非選択的
成長のこの時間の使用で、G418耐性のコロニーは検出できなかった。
Hela細胞はヒト複製開始点を含むYACをエピソームとして維持する
Hirt破砕液の低および高分子画分のサザンブロットによりエピソームを組込ま
れたDNAから区別する最初の試みは、貧弱な検出限界のため、20キロベースのエ
ピソームとゲノムDNAの分離の不十分さのため、そして接戦の(head-to-head)マ
ルチマー組込み事象の生成物とエピソームを識別することが制限酵素消化の後に
は不可能なために失敗した。にもかかわらず、結果が暗示したことは、Y.343ク
ローン1、およびYACneoクローン1および2において、トランスフエクトされた
構築物はゲノムに組込まれ、一方Y.343クローン2は完全なY.343を全コピー数が
細胞毎に約30で保持しており;YAC.S3クローン1におけるコピー数を調べるため
のサザン解析は、顕著な細胞毎のコピー数を確実するには十分な感度でなく、よ
って、コピー数はY.343クローン2より大幅に低いと推測されたことであった。4
5細胞世代後Y.A3/4クローン9 Hela細胞のHirt破砕液の低分子画分のサザン解析
は、約16kbのY.A3/4エピソームが他のY.A3/4でトランスフェクトされたHeLa細胞
クローン同様に維持されていることを示した。共有結合閉環状DNAを選別できる
アルカリ細胞溶出技術(Sun,T.Q.ら.(1994)Nature Genet.8:33-41)を用い
、我々はY.343がクローン2においてトランスフェクション後119日の時点で存在
することを見いだしたが、しかしG418選別が恒常的に維持された場合のみであっ
た。変動解析の結果に基づくと、非選択培地において89日から溶出される119日
までを経たY.343クローン2細胞集団においてY.343のpYACneo配列は検出されな
かった。
ヒト複製開始点を含む修飾YACプラスミドがエピソーム型を本当に維持してい
るか確認するための努力において、YAC.S3クローン1およびY.343クローン2のH
eL
aサブクローンよりDNAを単離し、揺らぎ分析の間薬剤耐性マーカーの不安定性を
調べた。事実、塩化セシウム/臭化エチジウム密度勾配超遠心分離が、HeLa細胞
中のゲノムDNAからエピソームを分離する手段として独自に開発され、より多く
の浮揚性色素をインターカレートする直鎖状およびニック入り(II型)環状DNA
から共有結合閉環状DNAを簡便に分離する。50%のニック入りおよび直鎖状型が蓄
積した無関係のプラスミド調製物は、密度勾配において下部(超らせんエピソー
ム)および上部(主に直鎖状ゲノムDNA)バンドの位置に対する可視の指標とし
て機能し得る。HeLaサブクローンから、並びに正および負の対照から、この様式
において調製されたDNA画分は、neo遺伝子からのプライマーを用いたPCRにより
解析された(図3)。
HeLa副培養物由来の全DNAは、超らせん環状DNAを含む下部バンド(L)、および
直鎖状および弛緩環状型のDNAを含む上部バンド(U)の位置を指標として、保有
プラスミドを用い、塩化セシウム/臭化エチジウム超遠心分離により分画された
。画分はneoマーカーに直接向けられたプライマー組を用いて131bpの産物を得る
PCR増幅により、トランスフェクトされた構築物の存在を試験した(正の対照鋳型
は純粋なY.X24プラスミド試料である)。直鎖状ゲノム染色体DNAの位置は異なる
増幅において確認された、ヒト染色体6における独特の領域(423塩基対)を認
識するプライマーを用い、最も右の3レーンに示す(正の対照はME180ヒト細胞、
ATCCHTB 33より単離された全ゲノムDNAである)。
通常のトランスフェクトされていないHeLa細胞のDNAはPCR産物を生じなかった
が(保有プラスミドだけが視認できる)、これらの細胞はneo遺伝子を保有してい
ないからである。DNA調製48時間前にY.X24をトランスフェクトされたHeLa細胞の
ポリクローナルな集団は、下部(完全な環状)および上部(ニック入りまたは損
傷した環状、または組込み)の双方の塩化セシウム勾配バンドおいて大量のPCR
鋳型を含んだ。しかし、試験クローンからは下部、エピソームDNA画分のみ由来
の産物が得られるが、これらの副培養においてはトランスフェクトされたYAC.S3
およびY.343構築物が、選択培地においての長期培養の間共有結合により閉じた
環状エピソームとして維持されていることを示す(YAC.S3クローン1においては8
1日、Y.343クローン2においては96日)。最も右のレーンは、独特なゲノム位置
に向け
たプライマーの使用を通して、直鎖状ゲノムDNAが上部塩化セシウムバンドに独
占的に分離することを示す。下部のバンドはゲノムDNAの汚染がない。neoマーカ
ーがこれらのクローン由来の上部バンドDNA画分において検出されないことから
、組込みコピーが存在しないことは明らかである。
複製開始点コンセンサス配列による半保存的複製の制御
以前に記載されたとおり(Wu,C.ら(1993a)Biochem.Biophys.Acta.,1174:2
41-257)、HeLa細胞を複数のアルファコンセンサスクローンおよび単一orsコンセ
ンサスクローンでトランスフェクトし、そして次に、Hirtの抽出による低分子量
DNAを得る前に、対数増殖期において増殖する細胞に40μMブロモデオキシウリジ
ンを48時間パルスし、中性塩化セシウム勾配上に乗せた。約200μlの画分を集め
、画分1は勾配の底を示す(横座標)。屈光計を用い、屈折率を測定した(縦座標
、Y2軸)、各画分由来の試料はドットブロットマニホールドに乗せ、pYACneoプロ
ーブとハイブリダイズさせた。ホスホイメージ解析により定量したDNAの全量は
、純黒のバーにより示す(縦座標、Y1軸)。
図5は、プラスミド、例えばpCRscript中に置いた場合の、複数のアルファコ
ンセンサス配列および単一orsコンセンサス配列による半保存的DNA複製の制御の
実
iptである。
一本鎖および二本鎖両者のブロモデオキシウリジン置換は、全ての場合に存在
する。A3/4、図5ははHeLa細胞におけるDNA複製制御に特に有力である。他種の
アルファコンセンサスであるA16、図5Bも、DNA複製の有力な開始点として機能
する。図5Cにおける、より低いが十分に高い量のDNA複製が、単一orsコンセン
サス配列の一種であるDNA複製開始点として機能するU22により制御される。
アルファコンセンサスと70%の相同性を有するY.343DNAクローン
HeLa細胞をトランスフエクトするのに用いたY.343投入DNAのアガロースゲル電
気泳動において、「非切断」は切断されていないY.343プラスミドDNAを示す(図
6A)。異なる型のDNAの移動位置は、左側に矢印により示す。「直鎖状」はSalI
の消化により直鎖状化したY.343プラスミドDNAを示し、「λ」は分子量マーカー
を示し、その大きさは右側に矢印により示す(図6A)。
Y.343のトランスフェクション後約45細胞世代の安定HeLa細胞クローン由来の
低分子量DNAの単離およびDpnI消化。低分子量DNAはHirtの抽出法を用いて抽出し
た。1は安定HeLa細胞Y.343クローン11のDNAを示し、2は安定HeLa細胞Y.343ク
ローン20のDNAを示し、3はpBluescript DNA(500ng)を示す。第二のパネルは
同じDNAを示すが、1ユニットのDpnIを用い37℃1時間の消化をした(図6B)。
図6は45細胞世代後のHeLa細胞より復帰したY.343DNAの性質を示す。パネルB
のレーン1はY.343クローン11のHeLa細胞より得られたDNAであり、レーン2はY.
343クローン20のHeLa細胞より得られたDNAである。レーン3においてはDpnl消化
の対照のための、500ngのpBluescriptDNAである。両者のクローンにおいて、大
部分のDNAは、弛緩環状の、II型に復帰しており、これは大規模なDpnI消化に耐
性である。(pBluescriptDNAは完全に消えており、わずかに小さな消化産物が見
えるだけであることに注意)Y.343 DNAは、少なくとも45細胞世代の間の大規模
な複製の後のこれらのHeLa細胞クローンから復帰可能である。
ブロモデオキシウリジンの新生DNAへの取り込みのため、Hirtの抽出により低
分子量DNAを得る前に、対数期で増殖する細胞に40μMブロモデオキシウリジンを
48時間パルスし、中性塩化セシウム勾配に乗せた(図7A)。約200μlの画分を集
め、画分1は勾配の底を示す(横座標)。屈光計を用いて屈折率を測定し(縦座標
、Y2軸)、各画分由来の試料はドットブロットマニホールドに乗せ、pYACneoプロ
ーブとハイブリダイズさせた。ホスホイメージ解析により定量したDNAの全量は
、純黒バーにより示す(縦座標、Y1軸)。重-重(H-H、ブロモデオキシウリジンに
より置換された両鎖)、重-線(H-L、ブロモデオキシウリジンにより置換された単
鎖)、および置換されていない投入した軽-軽(LL)DNAの相対的な位置が示され
る。ドットブロット解析より得られた信号はグラフの下のパネルに示される(図
7A)。
臭化エチジウム染色ゲルのプラスミドDNAが、トランスフェクション後約172細
胞倍加を伴い、安定にトランスフェクトしたHeLa細胞クローンY.343クローン20
か
ら単離したエピソームDNAで形質転換した細菌より得られた。「I」は細胞をトラ
ンスフェクトするために用いた元の投入したY.343プラスミドを示す(図7B)。レ
ーン1-3は独立の細菌クローン由来のDNAをHindIII,AvaIまたはBgIIIで消化し
たものを含む。分子量の大きさは、はるか右のレーンにおけるマーカーの位置に
より示される(λマーカー)。大きさは23.1kb、9.4kb、6.6kb、4.4kb、2.3kb、2.
0kb、および0.6kbである。
図7はY.343クローン20中に存在するエピソームDNAが半保存的に複製すること
を示す。HeLa細胞Y.343クローン20のブロモデオキシウリジン標識は、トランス
フェクシヨン後170以上の細胞世代後、一本鎖および二本鎖置換Y.343DNAの復帰
をもたらした。3つの制限酵素を用いたY.343DNA制限酵素解析は、HeLa細胞Y.34
3クローン20から回収した3つの単離物(実施例)Y.343DNA中で幾らかの重要な
再配置があったことを示さなかった。制限断片多型は3つの単離物の各々に関し
て同一であった。
OBAとA3/4DNAコンセンサス配列間の特異的相互作用
ors8の186塩基対断片の地図および配列の特徴は以前に報告されていた(Todd,
A.ら.(1995)J.Cell.Biochem.58:221-236;Ruiz,M.T.ら.(1995)J.Ce
ll.Biochem.58:221-236)。
バンドシフト実験のための186塩基対断片を得るために、ors8挿入物の増幅の
ためのPCR反応における鋳型としてors8プラスミドを用い、のちに以前に記載さ
れたようにNdeIおよびRsaIにより消化された(Todd,A.ら.(1995)J.Cell.Bio
chem.58:221-236;Ruiz,M.T.ら.(1995)J.Cell.Biochem.58:221-236)
。非特異的競合断片、pBRfg(206塩基対)を以前に記載されたように(Ruiz,M.T
.ら.(1995)J.Cell.Biochem.58:221-236)、pBR322 DNAのPCR増幅により調
製した。
(配列番号10))を含むオリゴヌクレオチドおよびpBR322由来の非特異的競合物
(Sheldon Biotechnology Center、McGill University、Montreal)、さらに変性
ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により精製され、Wallらにより記載さ
れたとおりにアニールした(Wallら.(1988)Gene,2:1089-1100)。186塩基対断
片およびA3/4二本鎖オリゴヌクレオチドの5'端ラベルは以前に記載されたとおり
に実施した(Rulz,M.T.ら.(1995)J.Cell.Biochem.58:221-236)。
バンドシフト競合実験は、186塩基対断片におけるOBAの結合位置を特定するた
めに実施した(図8)。
10のバンドシフト反応を、放射能ラベルされたA3/4 DNA(反応あたり10ng)お
よび反応あたり3.75mgのプールI由来のタンパク質(Sephacryl(セファクリル)(
商標)S-300、プールEの分離の後に得られた、約150-200kDaでのOBA分離の活性
プール;Ruiz,M.T.ら.(1995)J.Cell.Biochem.58:221-236)により、上記
条件を用いて実施した。対照として、同様の反応をDNA不在下で行った。バンド
シフトは、非変性4%ポリアクリルアミドゲルにおける電気泳動により解析し、
湿ゲルはオートラジオグラフィーのため4℃で5時間露出した。OBA-DNA複合体
をゲルから除き、タンパク質およびDNAはOfverstedtら(1994)(Biochem.Biophy
s.Acta,782:120-126)によりゲルから溶出し、その後還元条件下の8%SDS-ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動に供した。タンパク質はその後電気的にImmobilo
n(商標)-P膜(Millipore,Bedford,MA)に移し、サザンウエスタン解析に供し
た。簡単に言えば、膜は一晩(14-16時間)ブロッキング溶液(5%スキムミルク
および0.05% NP-40を含む緩衝液S:25mM Hepes-水酸化カリウム、pH7.7、25mM塩
化ナトリウム、5mM塩化マグネシウム、1mM DTT)中で一晩保温した。翌日、膜
は以下のとおりに変性-再生過程に供した:緩衝液S中の6Mグアニジン塩酸を含
む変性溶液中で10分保温し、その後緩衝液S中で希釈された3M,1.5M、0.75M、0
.375M、および0.187Mのグアニジン塩酸各々の中で10分保温し、ブロッキング緩
衝液中で2時間保温し、その後、緩衝液S+1%スキムミルク中で1時間保温した。
膜はその後、非特異的競合物としてポリdI-dC(50mg/ml)およびpBRfg DNA(454
ng/ml)存在下で放射能ラベルされたA3/4オリゴヌクレオチド(5.2ng/ml、2.6x1
06cpm/ml)を含むハイブリッド形成溶液(20mM Hepes、pH7.7、75mM塩化カリウ
ム、0.1mM EDTA、2.5mM塩化マグネシウム、1%スキムミルク、0.05%NP-40)中で
一晩保温した。最後に、膜をハイブリッド形成溶液で3回洗浄し、その後オート
ラジオグラフィーのために露出した。全ての手順は4℃で行い、保温は揺れる台
の上で行った。
非特異的競合物、競合しないpBRfgと対照的に、186塩基対の別の副断片はOBA
結
合の異なる範囲に競合した。最も効果的な競合物は、MslIおよびFokIによる186
塩基対断片の消化の結果生じる59塩基対断片であり、これは186塩基対断片その
ものと同等、あるいはより効果的に競合した。59塩基対断片はDNA配列(A3/4、3
6塩基対)と相同な(80%)配列を含み、さらに幾つかの異なるors(Kaufmann,G
.ら(1985)Mol.Cell.Biol.,5:721-727;Landry,S.& Zannis-Hadjopoulos,M
.(1991)Biochem.Blophys.Acta,1088:234-244;Raoら(1990)Gene,87:233-2
42)および他の我々の研究室で単離されたヒト複製開始点(BelI,D.ら(1991)Bi
ochem.Biophys.Acta.,1089:299-308;Wu,C.ら(1993a)Biochem.Biophys.A
cta.,1174:241-257;Nielsen,T.ら.(1994)Mol.Gen.Gene.242:280-288)
とも様々な相同性を有する。バンドシフト解析においてA3/4配列をOBAの186塩基
対断片への結合の競合物として試験し、そしてOBAの結合に関して少なくとも59b
p断片と同程度に競合可能であった(図8)。さらに、OBAがA3/4配列に結合する特
異性を、A3/4オリゴヌクレオチドを特異的競合物として用いる、モル倍数増加の
(50-200X)一連のバンドシフト解析の競合において試験した。OBA-A3/4複合体
形成は、50倍モル過剰のコールドA3/4オリゴヌクレオチド競合物存在下で減少し
、500倍モル過剰のA3/4において完全に消滅した。対照的に、同様の競合反応を
二つのA3/4配列の一本鎖オリゴヌクレオチドを競合物として用いたときに行うと
、そのどちらもOBA-A3/4複合体と競合できない。一方、A3/4同一配列を含む環状
二本鎖プラスミドはOBA結合と競合することが可能である。
図8は、OBA結合の競合バンドシフト解析を示す。図8Aでは、バンドシフト反
応を示す、タンパク質(プールI;200ng)および放射能ラベルしたDNA(186塩基
対断片;0.1ng)の両者を同一量保温した。186塩基対断片およびA3/4(36塩基対
)配列の様々な副断片は、示される過剰量のモル倍数においてコールド競合物と
して用いられた。シフトした複合体は密度計により定量し、結果は複合体形成の
減少百分率として示した。図8Bにおいて、競合物として用いた断片を含むors8
の186塩基対配列の制限酵素地図が示される。FokIサイト(矢印)は反転した繰
返し(><)を両断する。A3/4相同配列の位置を示す(*)。
A3/4オリゴヌクレオチドはp186のインビトロDNA複製を阻害する
A3/4配列のインビトロでのp186の複製への影響を調べるため、増加させたモル
過剰量のA3/4オリゴヌクレオチドまたはpBR322由来非特異的オリゴヌクレオチド
のいずれかを競合物として、インビトロ反応を実施した。
インビトロ複製は、若干の修飾を加えて以前に記載されたとおりに実施した(P
earson,C.E.ら.(1991)Biochem.Biophys.Acta.1090:156-166;Todd,A.
ら.(1995)J.Cell.Biochem.58:221-236)。A3/4オリゴヌクレオチドの追加
を含めた実験において、A3/4またはpBR322オリゴヌクレオチドのいずれかの過剰
量モル増加を、p186(200ng)の投入鋳型DNAに相対的に加えた。インビトロ複製
反応に先立つ氷上20分間のHeLa細胞抽出物およびオリゴヌクレオチドの前保温は
、以前に記載されたとおりに実施した(Pearson,C.E.ら.(1991)Biochem.Bio
phys.Acta.1090:156-166;Zannis-Hadjopoulos,M.ら.(1994)Gene,151:2
73-277;Todd,A.ら.(1995)J.Cell.Blochem.58:221-236)。反応産物は3つ
のアリコートに分割し、1つは以前に記載されたとおりに(Pearson,C.E.ら.
(1991)Biochem.Biophys.Acta.1090:156-166;Todd,A.ら.(1995)J.Cel
l.Biochem.58:221-236)DpnI(1U;New England Biolabs)により消化し、
2つは消化せずに保管した。DpnI消化物および非消化産物の3分の1は、1X TA
E緩衝液における1%アガロースゲル電気泳動に供した(16-20時間、50-55ボルト)
。ゲルは乾燥させ、DuPont反射NEF-オートラジオグラフィーフィルムに露出した
。DpnI消化産物について定量は、Phosphoimager(商標)アナライザー(FuJiBAS
2000)またはBio Image Densitometer(商標)(MillGen/Biosearch)を用いた密
度計測定により、以前に記載されたとおりに実施し(Todd,A.ら.(1995)J.Cel
l.Biochem.58:221-236)、両手法は同様の結果を与えた。
インビトロ反応における非特異的オリゴヌクレオチドの含有はpl86の複製に影
響を及ぼさなかったが、A3/4オリゴヌクレオチド量の増加の追加により、そのイ
ンビトロにおける複製を強力に阻害し、p186に対して10Xモル過剰においては約
4倍、250Xモル過剰においては10倍、複製を減少させる(図9)。
図9はA3/4オリゴヌクレオチド配列のインビトロにおけるp186複製に対する影
響を示す。186塩基対のors8を含むp186プラスミド(200ng)をインビトロ複製の
鋳型として用いた。A3/4(灰色の棒)またはpBR322(黒色の棒)オリゴヌクレオ
チドのp186鋳型に対するモル過剰量(示される)の増加は、各々特異的および非
特異的競合物として用いた。
考察
哺乳類複製開始点配列を、さらなる修飾および幾つかの宿主系における生育が
可能である多目的シャトルベクターにクローニングした。これら構築物は、リン
酸カルシウム共沈澱によりヒト細胞へトランスフェクトされるのに十分な程小さ
いままであり、neoマーカーを用いるために選択される。
ヒト5'c-mycのクローン化された部分を用いた以前の観察(McWhinney,C.& Le
ffak,M.(1990)Nucl.Acids Res.18:1233-1242)と一致して、安定なトラン
スフェクション効率は開始点配列の存在により1.7倍から10倍に上昇した。広大
なゲノム領域(数百kb)を哺乳類細胞にトランスフェクトするためにYACベクター
を使用する試みがなされたが、安定なトランスフェクションのためには宿主ゲノ
ムへの組込みが再び必要であった。NonetおよびWahl(Nonet,G.H.& Wahl,G.
M.(1993)Somat.Cell Mol.Genet.19:171−192)はマウスの5'アデノシン
デアミナーゼ複製開始点を含む70kbの領域をYACにクローン化し、酵母のスフェ
ロプラスト融合によりマウス細胞をトランスフェクトした。この場合、エピソー
ムにより複製している環状構築物を宿している安定なトランスフェクト体の例が
見いだされたが、共存する組込まれた複製物の存在下においてのみであった。Fe
atherstoneおよびHuxley(Featherstone,T.ら、(1993)Genomics,17:267-278
)は巨大で選択可能なヒトのゲノム挿入物(数個の複製開始点を有すると推定さ
れる)をもつ660kbのYACによりマウスの細胞をトランスフェクトするための酵母
スフェロプラスト融合法を使用し、長期間の選択下で他の不安定なエピソームを
維持した、トランスフェクトされた亜集団を観察した。しかしながら、これらの
エピソームは酵母、ヒトおよびヒトDNA間の限度を越えた組換えの結果であり、
完全に性質決定できなかった;トランスフェクトさせたDNAが厳密にエピソーム
状に存在する細胞系列において、多くのヒトDNAは明らかに欠失されていた。本
明細書においてヒトの細胞をトランスフェクトするために使用した修飾されたYA
Cは完全に明確であり細菌または酵母内で増殖することが可能であり、リン酸カ
ルシウム共沈法(本方法は高頻度の形質転換効率を示し、酵母ゲノムDNAと同時ト
ランスフェクトしない)によりトランスフェクトすることが可能であり、YAC.S3
,Y.343およびY.A3/4の両
者ともG418選択されたヒト細胞系において数カ月間、純粋にエピソーム状を維持
する能力を有することが示されている。
しかしながら、組込みが起きた細胞においてはG418における増殖が非選択培地
における増殖とほぼ同一であることとは対照的に、エピソームのneoを運搬する
細胞は、非選択培地よりもG418において遅く増殖した。この観察はエピソーム性
の細胞系列を同定するのを助けるかもしれないが、組込みが起きた細胞系列のサ
ブセットもG418において遅い増殖を示すため、それは特異的な試験方法ではない
。
Y.343クローン2のコピー数(30と推定される)は酵母に宿る環状ARSプラスミド
(Murray,A.W. & Szostak,J.W.(1983)Nature,305,189-193)において
観測される数と同様である。この見かけ上の増幅は有糸分裂時におけるプラスミ
ドの不正確な分配に由来し、選択下での充分に安定な維持および細胞の増殖に必
要である、ある閾値を越える長期間培養において平衡に達する。コピー数が多い
と80-90%よりも高い有糸分裂の安定性を与えることはできず、正確な分配を指示
する(セントロメアなどの)因子の存在が必要である。
非選択培地での増殖中におけるYAC.S3,Y.343およびY.A3/4エピソーム維持の
全般的な安定性は、自律複製する酵母のプラスミドにおいて得られる安定性に匹
敵し(表1)、酵母人工染色体の構築の最初の工程を構成した。数十から数百キロ
ベースの巨大なDNAドメインはそれら自身の複製開始点を有しているように思わ
れる。しかしながら、ミニ染色体解析を通して見たヒトの最小セントロメアの限
界は別の規定された複製開始点のシス(cis)作用での存在を必要とし、それから
利益を得るはずである。本明細書に記載された構築物は、クローン化されたヒト
のテロメアの付加、および内在性の複製開始点を有するかまたは有しない巨大な
推定上のセントロメア区画の付加を可能にする、充分に多能なものである;それ
らは小さくて容易に設計できる細菌のプラスミドとして、小さいかまたは大きい
環状または直鎖状の酵母人工染色体として、または有糸分裂の安定性を分析する
ことが可能であるヒトの細胞におけるエピソーム状の遺伝要素として操作するこ
とが可能である。セントロメアを有する巨大な構築物においては、非選択培地に
おける安定性は約80-90%から99.99%以上へ増強されることが期待されるはずであ
る。
哺乳類細胞において長期間の維持が可能であるベクターは他者により構築され
ているが、それらはウイルスのDNA複製開始点に依存している。その例には、欠
陥ポリオーマウイルスに基づくマウスのプラスミド(Gassman,M.ら、(1995)Pr
oc.Nat.Acad.Sci.USA,92:1292-1296)、およびEBV潜在性複製開始点をもつ
「ヒト人工エピソーム状染色体」oriP(Sun,T.Q.ら、(1994)Nature Genet.8
:33-41)が含まれる。そのような構築物はインビトロでは優秀な遺伝子ベクター
として機能する能力を有する一方で、哺乳類の染色体の複製開始点の生物学の研
究の助けとはならず、それらの複製のためにはウイルス性のトランス活性化タン
パク質の存在が必要である。本来の染色体から巨大な区分を削除することによる
人工染色体の作製の試みには莫大な不明の領域が残されている。遺伝子ベクター
としてだけでなく、染色体生物学の諸問題に答えるための模型としてでもある哺
乳類の人工染色体の潜在能力は、機能的なシス作用性の構成因子、開始点、テロ
メア、およびセントロメアの「完全な」構築を通して最もよく到達されると考え
られる。複製開始点は理論的な第一工程を意味する。
本発明は、本発明の範囲を限定するというよりは本発明を例示するために与え
られる以下の実施例を参照することにより、より容易に理解される。
実施例1
コンセンサス配列に関するいくつかの要点
コンセンサス配列に基づき、オリゴヌクレオチドのプールが合成された。合成
された配列は、
番号14)である。
次に、コンセンサス配列はT7プライマーおよびT3リバースプライマーを用いた
PCRにより増幅された。配列変異体を個別に解析するために、増幅産物はpCRscri
pt(Stratageneから入手されたpCR-Script Amp SK(+))のSnfI部位にクローン化さ
れた。連結されたプールは、HeLa細胞に直接トランスフェクトされて、3日後に
DNAの低分子画分が単離され、複製されていないプラスミドベクター+コンセンサ
ス配列挿入断片を除去するためにDpnI酵素で消化された。DpnI消化された変異群
のプールは、次に細菌を形質転換するために用いた。消化されないブラスミドベ
クター+コンセンサス配列挿入断片DNAはヒト細胞中で複製されたはずであり、即
ち哺乳類細胞中でのDNA複製の開始および調節に必要なコンセンサス配列を含む
。これらの機能試験は、HeLa細胞中でDNA複製を可能とするために最も効率的な
αコンセンサスおよび単一orsコンセンサス変異体を選択するために用いられた
。
両者の結果は、αコンセンサスおよび単一orsコンセンサスの変異体が哺乳類
細胞中での環状エピソームのDNA複製を可能とするのに有効であったことを示し
た。
HeLa細胞への個々のクローンのトランスフェクション後のDpnI耐性試験は、回
収された変異体試料がヒト細胞により複製できたことを示した。
また、HeLa細胞の抽出物を用いたインビトロの哺乳類DNA複製系での複製の後
のDpnI耐性試験も(Pearson,C.E.ら(1991)Biochem.Biophys.Acta 1090:156-1
66)、ヒト複製タンパク質により環状エピソームが複製されることを示した。
インビトロ複製系を用いて、DNA複製がαコンセンサス配列中で開始すること
が示された(図4参照)。
A3/4αコンセンサスがpCRscriptのsnfI部位にクローニングされた。挿入断片
を含むA3/4型のαコンセンサスについて、インビトロDNA複製の初期の最速標識
断片試験または選択的標識試験が反応の4分目および8分目に行われた。系にお
けるDNA合成をモニターするために、反応液は32P標識されたdCTPおよびdTTPの
両者を含んでいた。DNAの抽出および精製の後、産物はDdeIおよびPvuIIで消化さ
れ、ゲル電気泳動解析、放射線画像解析、および定量的濃度測定された。結果は
、各断片のkb当たりの相対的な取り込みを任意の単位で示した。
以前にOBAとして特徴付けられた活性(Ruiz,M.T.ら(1995)J.Cell.Biochem
.58:221-236)は、開始点活性を有するサル配列由来の配列と競合して結合する
。
A3/4と命名したコンセンサスが、酵母人工染色体クローニングベクターである
pYACneo(Genbank受け入れ番号U13189、Clontechより入手)のEcoRI部位にクロー
ニ
(配列番号10)である。得られたクローンは、pYACneoベクター単独よりも約10
倍大きな効率でHeLa細胞にトランスフェクトされた。
G418選択圧存在下での45細胞世代後のY.A3/4を含むHeLa細胞の、選択圧非存在
下での耐性維持の安定性が解析された。G418選択により影響された集団倍化時間
の変化は、7つのうちの5つのクローンが選択により延長された倍化時間を有し
たことを示した。これらのクローンのG418選択圧に対する耐性の維持の安定性は
0.8から0.9/細胞/世代であることが判明し、表現型が染色体外因子により維持さ
れていることが示唆された。
低分子量DNAのサザンブロット解析により、G418選択圧存在下で60から65世代
継代後の細胞中にY.A3/4エピソームが存在することが判明した。エンドヌクレア
ーゼDpnIによる消化に対する耐性から、エピソームが哺乳類宿主細胞であるHeLa
細胞中で複製されていることが示唆された。Y.A3/4でトランスフェクトしたHeLa
細胞中のY.A3/4エピソームクローンへのブロモデオキシウリジンの取り込みから
、Y.A3/4が半保存的に複製されることが示唆された。
以上では本発明をその特定の態様に関連して記載したが、さらなる変更が可能
であり、総じて本出願の原則に従い、既知または通例の当分野実施内の、本明細
書中前述の本質的な特性に適用され得る、追記の請求項の範囲に示されるような
本開示からの発展を含む、本出願のあらゆる変形、利用、または適応が本出願に
含まれると想定されていることは通常の理解の内である。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成11年2月9日(1999.2.9)
【補正内容】
請求の範囲を以下のとおり補正する。
または哺乳類のDNA複製開始点コンセンサス配列。
2.a)請求項1記載のコンセンサス配列とDNA断片とを挿入して上記DNA断片
を発現し得るベクターを形成し、b)工程a)のベクターを哺乳類細胞にインビ
トロで導入する工程からなる、哺乳類のDNA複製の開始の調節方法。
3.ウィルスベクターからなるグループからベクターが選択される、請求項2
記載の方法。
4.工程b)のベクターの導入が、りん酸カルシウム共沈殿トランスフェクシ
ョン法、電気穿孔法、マイクロインジェクション、リポソームを介したトランス
フェクション、およびウィルスによるDNAの導入からなるグループから選択され
る標準的な方法により行われる、請求項2記載の方法。
5.少なくとも45細胞世代にわたり宿主細胞中に環状プラスミド構築物を増加
して保持するための請求項1記載の配列からなる少なくとも一つのコンセンサス
配列を含むDNA配列の使用であって、プラスミド構築物は上記配列を含み、そし
て増殖中の哺乳類細胞中で半保存的に複製され得る、上記使用。
6.請求項1記載の配列からなる少なくとも一つのコンセンサス配列を含むDN
A配列の、遺伝子治療のための使用。
7.配列番号1の哺乳類DNA複製開始点コンセンサス配列に結合して、HeLa細
胞から単離され、そしてSephacry1(セファクリル)S-300(商標)上で約150から200
kDaにおいて分離する、タンパク質。
8.請求項1記載の配列の、DNA複製ブロッキングのための使用。
9.一本鎖型また二本鎖型の請求項1記載の配列を投与することからなる、イ
ンビトロまたはインビボにおいてDNA複製を阻害するための方法。
10.一本鎖型また二本鎖型の請求項1記載の配列の、インビトロまたはインビ
ボにおけるDNA複製の阻害するための使用。
11.一本鎖型また二本鎖型の請求項1記載の配列の、DNA複製を阻害するため
の薬剤の製造のための使用。』
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,LS,M
W,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY
,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM
,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,
CA,CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,E
S,FI,GB,GE,GH,HU,ID,IL,IS
,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,
LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M
N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU
,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,
TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,Z
W
(72)発明者 ニールセン,トルステン・オー
カナダ国ブリティッシュ・コロンビア ヴ
イ8ティー・4ズィー6,ヴィクトリア,
ペンブローク・ストリート 1020,ナンバ
ー 421
(72)発明者 コッソンズ,ナンディニ・エイチ
カナダ国オンタリオ ケイ7エル・3エヌ
6,キングストン,クィーンズ・ユニバー
シティ,グラデュエイト・レジデンス,ル
ーム 621