JP2001502666A - 肺遺伝子送達のための組成物および方法 - Google Patents
肺遺伝子送達のための組成物および方法Info
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Abstract
(57)【要約】
気道への遺伝子送達のための組成物および方法が提供される。特に、霧状化核酸/安定化剤複合体を含む組成物、およびこのような複合体を肺遺伝子送達のために用いる方法が提供される。このような組成物は、好ましくは、超音波霧状にされる。
Description
【発明の詳細な説明】
肺遺伝子送達のための組成物および方法技術分野
本発明は、一般に、気道上皮細胞への遺伝子送達の分野に関する。本発明は、
より詳細には、霧状化核酸/安定化剤複合体を含む組成物、およびこのような複
合体を患者への核酸送達のために用いる方法に関する。発明の背景
吸入を介する遺伝子送達は、種々の疾患の処置および防止のかなりの見込みを
示す技術であるが、その適用は、実用上の困難性により制限されてきた。特に、
安全性への関心が、いくつかのエアロゾル遺伝子送達方法(特に、ウイルスに基
づく系を含むエアロゾル遺伝子送達方法)の開発を緩慢にさせており、そして他
の送達方法の適用は、効率の問題により制限されている。遺伝子送達の見込みの
あるアプローチの1つは、脂質に基づくキャリア、すなわちリポソームの使用を
含む。しかし、他のキャリアのように、リポソームは、通常用いられる薬物送達
装置を用いる核酸送達については非効率的であった。
エアロゾル薬物送達のために用いられてきた薬学的装置は、計量吸入器(mete
red dose inhaler)(MDI)、乾燥粉体吸入器(DPI)、および空気噴出噴霧器を
含む。このような装置は、いくつかの治療剤の送達に適しているが、これらの装
置を介する遺伝子送達は、実用上の問題を示す。MDIは、遺伝子送達には用いら
れていない。なぜなら、プラスミドを高圧ガス混合物とともに処方することの困
難性のためである。DPIもまた、遺伝子送達に適切ではない。なぜなら、法外に
速い吸入空気流速度が、粉体ブレンドの有効な分散を達成するために必要とされ
るからである。
現在、遺伝子送達のための最も実用的な薬学的装置は、空気噴出噴霧器である
。この装置は、オリフィスを介して高速空気噴出を送達して、リザーバーからの
液体を空気流にするベンチュリ効果を生じるために、圧縮空気供給源を使用する
。
空気と液体との間の異なった速度は、液体をバラバラにして小滴を生じ、大多数
の小滴は、呼吸可能な範囲(1〜5μm)である。噴出噴霧器は、脂質に基づく
遺伝子送達に好ましい。なぜなら、処方の比較的容易さ(例えば、しばしば非経
口処方物は、直接使用され得る)、用量調節の融通性(濃度および頻度)、入手
可能性および時間をかけて実証された送達技術のためである。噴霧器の薬物リザ
ーバーはまた、高用量のエアロゾル化治療剤を肺に投与するように設計され得る
。
しかし、空気噴出噴出器を用いる遺伝子送達にはかなりの欠点(携帯性がない
こと、ユニット毎の排出の変動性、大きなデッドボリューム、および排出される
溶液対溶媒の変動を含む)が残っている。送達効率(噴出される薬物の質量対下
気道において沈着される薬物の質量の比として定義される)は非常に低い−2%
未満。この低い送達効率は、この系を介する一定の空気流に寄与し得、排出エア
ロゾル流の連続的な噴霧化および付随した希釈をもたらす。さらに、噴出噴霧器
を用いて、エアロゾルは、呼吸周期の60%をしめる呼息の間に、均等に生成され
る。
従って、肺遺伝子送達の改善された方法についての必要性が当該分野に存在す
る。本発明はこれらの必要性を満たし、そしてさらに他の関連する利点を提供す
る。発明の要旨
簡略に述べれば、本発明は、肺遺伝子送達のための組成物および方法を提供す
る。1つの局面では、本発明は、核酸送達装置を提供する。この装置は、1つの
実施態様では、(a)超音波噴霧器(sonic nebulizer)、(b)核酸、および(c)安定
化剤を備え、ここで、核酸および安定化剤は、超音波噴霧器の中に含まれる。関
連する実施態様では、核酸および安定化剤は、別々の容器の中で提供され、超音
波噴霧器は、この容器を受け、そしてそれからの吸入に適切なエアロゾルを生じ
るように適用される。
別の局面では、超音波霧状化核酸/安定化剤複合体を調製するための方法が提
供される。この方法は、(a)少なくとも1つの核酸を、少なくとも1つの安定化
剤と合わせて複合体を形成させる工程;および(b)複合体のエアロゾルを、超音
波噴霧器で形成させる工程を含む。
関連する局面では、本発明は、超音波霧状化核酸/安定化剤複合体を提供する
。ここで、複合体は、少なくとも1つの核酸および少なくとも1つの安定化剤を
含み、そしてここで複合体は、超音波により霧状化されてエアロゾルを形成する
。
さらなる局面では、本発明は、超音波霧状化核酸/安定化剤複合体で患者を処
置するための方法を提供する。この方法は、超音波霧状化核酸/安定化剤複合体
を患者に提供する工程を含み、ここで、複合体は、患者による吸入に適切である
。関連する局面では、治療用タンパク質をコードする核酸で患者を処置するため
の方法が開示される。この方法は、上で議論されたような複合体を患者に提供す
る工程を含み、ここで、複合体は、患者による吸入に適切である。
なお別の関連する局面では、超音波霧状化核酸/安定化剤複合体で患者を処置
するための方法が提供される。この方法は、(a)少なくとも1つの核酸と少なく
とも1つの安定化剤を合わせて複合体を形成させる工程;(b)複合体のエアロゾ
ルを、超音波噴霧器で形成させる工程;および(c)エアロゾルに患者による吸入
を提供する工程を含む。
なおさらなる局面では、本発明は、霧状化核酸/安定化剤複合体で患者を処置
するための方法を提供する。この方法は、霧状化核酸/安定化剤複合体を患者に
提供する工程を含み、ここで、安定化剤は、カチオン性脂質を有し、正味の正の
荷電を有し、そして患者による吸入に適切である。
関連する局面では、霧状化核酸/カチオン性脂質複合体で患者を処置するため
の方法が提供される。この方法は、(a)少なくとも1つの核酸と少なくとも1つ
のカチオン性脂質を合わせて、正味の正の荷電を有する複合体を形成させる工程
;(b)複合体のエアロゾルを、噴霧器で形成させる工程;および(c)エアロゾルに
患者による吸入を提供する工程を含む。
本発明のこれらおよび他の局面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照
することにより明らかになる。本明細書中に開示される全ての参考文献は、各々
が個々に援用されたかのように、本明細書によってその全体が参考として援用さ
れる。図面の簡単な説明
図1は、異なった荷電比の代表的な核酸/安定化剤複合体(50μgのプラスミ
ドDNAを含む)の気管内滴注後のラットの肺におけるCAT発現のレベル(全肺あた
りのpg CATとして示す)を示すグラフである。評価した荷電比(−:+)は、1
:0.5(第3カラム)、1:0.8(第4カラム)、1:2(第5カラム)、および
1:3(第6カラム)であった。ラクトース(第1カラム)および水(第2カラ
ム)中でのCMV-CATの滴注後に観察された発現のレベルもまた示す。第3カラム
〜第6カラムについては、括弧内の数字は、裸のDNAを越える増強倍数を示す。
図2は、異なったサイズのリポソームを用いて処方された代表的な核酸/安定
化剤複合体(50μgのプラスミドDNAを含む)の気管内滴注後のラットの肺にお
けるCAT発現のレベル(全肺あたりのpg CATとして示す)を示すグラフである。
1:3の荷電比(−:+)を有するCMV-CAT/DOTMA:Cholの発現レベルは、237nm
(第1カラム)、392nm(第2カラム)、および901nm(第3カラム)の粒径を有
する複合体を示す。
図3は、気管内滴注後の一連の代表的な核酸/安定化剤複合体のトランスフェ
クション効率を示すヒストグラムである。発現のレベルは、裸のDNAを越える増
強倍数として表す。各例において、プラスミド/脂質複合体は、異なった孔径を
有するポリカーボネートフィルターを通して押し出されたカチオン性リポソーム
を用いて、1:3の荷電比(−:+)で処方された。複合体は、10%ラクトース
中に、125μg/mLの濃度で処方された。評価した複合体(フィルター孔サイズを
有する)は、DOTMA:DOPE:Chol 800nm(第1カラム)、DOTMA:DOPE MLV(第2
カラム)、DOTMA:Chol 800nm(第3カラム)、DOTMA:DOPE 800nm(第4カラム
)、DOTMA:DOPE 400nm(第5カラム)、DOTMA:Chol 100nm(第6カラム)、DOT
MA:DOPE 100nm(第7カラム)、EDOPC(すなわち、エチルジオレイルホスファ
チジルコリン):DOPE 100nm(第7カラム)、およびDOTMA:DOPE SUV(第8カ
ラム)であった。
図4は、50μgの代表的な非霧状化核酸/安定化剤複合体(第1カラム)、ま
たは霧状化(第2カラム)もしくは残余(第3カラム)複合体の超音波噴霧器か
らの気管内滴注後のラットの肺におけるCAT発現のレベル(全肺あたりのpgのCAT
として示す)を示すヒストグラムである。各々の例では、複合体は、CMV-CAT/D
OTMA:Chol(直径530nm、荷電比(−:+)1:3)であった。第2カラムおよ
び第3カラムは、それぞれ、10分間および30分間の霧状化の後の複合体の発現の
レベルを示す。
図5は、噴出噴霧器または超音波噴霧器での霧状化による、代表的なエアロゾ
ル化核酸/安定化剤複合体の吸入後のCAT発現のレベル(全肺あたりのpg CATで
)を示すヒストグラムである。各々の例では、複合体は、CMV-CAT/DOTMA:Chol
(直径815nmおよび1:3(−:+荷電))であった。第1カラム〜第3カラム
は、噴出霧状化および鼻への曝露の後の発現のレベルを示す。第1カラムについ
ては、吸入時間は60分間であり、そして送達されたDNA用量は2.1μg(測定値)
であり;第2カラムについては、吸入時間は120分間であり、そして送達されたD
NA用量は4.2μg(測定値)であり;そして第3カラムについては、吸入時間は2
40分間であり、そして送達されたDNA用量は6.4μg(測定値)であった。第4カ
ラムは、超音波霧状化および10.5μgの送達されたDNA用量(測定値)で10分間
の経口吸入の後の発現のレベルを示す。各々の場合、動物の肺に沈着したエアロ
ゾルの用量は、以下の式を用いて評価された:
沈着した用量=エアロゾル濃度(μg/L)×呼吸した空気の容量(L)×沈着係数。
エアロゾル濃度は、臨界流速オリフィスを用いて所定の流速でフィルター上への
エアロゾルをサンプリングすることにより決定された。呼吸した空気の容量は、
動物の通気パラメーターから評価した(HarknessおよびWagner,「The Biology
and Medicine of Rabbits and Rodents」、LeaおよびFebiger,Philadelphia,1
983)。沈着モデルを用いて、下気道に沈着したエアロゾルの画分を評価した(S
chlesinger,「Deposition and Clearance of Inhaled Particles」,R.O.McCl
ellanおよびR.T.Henderson編「Concepts in Inhalation Toxicology」,Hemisp
here Publishing Corporation,New York,1988)。
図6は、水で再水和して等張にする際の、代表的な凍結乾燥したおよび噴出製
粉核酸/安定化剤複合体の気管内滴注後のラットの肺におけるCAT発現のレベル
(全肺あたりのpg CAT)を示すグラフである。CMV-CAT/DOTMA:Chol複合体(1
:3(−:+)の荷電比を有する)は、50μgのDNA用量で滴注された。第1
カラムは、ポジティブコントロールラット(10%ラクトース中に処方されたCMV-
CAT/DOTMA:Cholで滴注された、粒子サイズ422nm)における発現のレベルを示
し;第2カラムは、凍結乾燥複合体(456nmの粒子サイズ)での滴注後のCAT発現
のレベルを示し;そして第3カラムは、噴出粉砕された複合体(488nmの粒子サ
イズ)での滴注後の発現のレベルを示す。
図7は、凍結乾燥したプラスミド/脂質複合体の安定性を示すグラフである。
CMV-CAT/DOTMA:Chol複合体(1:2(−:+)の荷電比を有する)を凍結乾燥
し、そして等張まで再構成した。0日目ならびに1、2、および4ヶ月後に測定
した粒子サイズ(nm)およびゼータ電位(mV)を示す。
図8は、非霧状化、エアロゾル化、および残余のプラスミド/脂質複合体にお
ける代表的なプラスミドのスーパーコイル形態の画分を示すグラフである。第1
カラムは非霧状化複合体のスーパーコイルの%を示し、第2カラムは10分間のエ
アロゾル化複合体のスーパーコイルの%を示し、そして第3カラムおよび第4カ
ラムはそれぞれ10分間および30分間後の残余の複合体のスーパーコイルの%を示
す。
図9は、超音波噴霧器からのエアロゾル化プラスミド/脂質複合体のサイズ分
布を示すグラフである(一連の有効カットオフ直径未満の蓄積%として示す)。
示した有効カットオフ直径は、0.4μm(第1カラム)、0.7μm(第2カラム)
、1.1μm(第3カラム)、2.1μm(第4カラム)、3.3μm(第5カラム)、4
.7μm(第6カラム)、5.8μm(第7カラム)、および9μm(第8カラム)
である。発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、一般に、肺遺伝子送達のための組成物および方法に
関する。本発明の状況では、安定化剤(例えば、カチオン性脂質キャリア)と複
合体化した遺伝子は、エアロゾル中に効率的に処方され、そして超音波霧状化の
使用を介して患者に送達され得ることが見出されている。従って、本発明は、特
に、超音波霧状化核酸/安定化剤複合体を含む組成物、このような組成物を含む
超音波噴霧器、および患者の気道への治療用核酸薬物の送達のためのこのような
組成物の使用に関する。
本発明の状況では、核酸/安定化剤複合体の荷電が、霧状化または気管内滴注
を介する遺伝子移入効率に影響を与える重要な要素であることもまた見出されて
いる。より詳細には、正に荷電した複合体は、負に荷電した複合体よりも高レベ
ルのトランスジーン発現をもたらし、そしてその効率は、正荷電の増加に伴って
改善する。従って、本発明はまた、遺伝子移入を増強するように選択された荷電
比(代表的には、少なくとも1:2の比(−:+))を有する核酸/安定化剤複
合体を含む組成物に関する。好ましくは、このような複合体は、患者への投与の
前に霧状化される。
本明細書で用いられる用語「霧状化」は、本明細書中で記載されるように、噴
出霧状化または超音波霧状化により処理され、エアロゾルを形成する複合体をい
う。用語「超音波霧状化」は、超音波霧状化により処理された複合体をいう。任
意の市販の噴霧器を用いて、霧状化複合体を調製し得る。超音波霧状化複合体の
調製のために、Omron Model NE-U07(Omron Health Care,Inc.,Lake View,IL
)のような超音波噴霧器が用いられ得る。超音波噴霧器は、非常に高い周波数で
振動してリザーバー溶液中に波動を誘導する圧電性トランスデューサーを用いる
。液体の表面でのこれらの波動の干渉は、エアロゾル(すなわち、コロイド状粒
子の懸濁液)としての小滴の生成を導き、次いでこれは気流により運ばれる。こ
の方法は、呼吸可能な範囲の粒子(代表的には1〜5μm)を含むエアロゾルを
生成する。本発明の何らかの理論または機構に結びつけられることを望まないが
、超音波霧状化核酸/安定化剤複合体の高い送達効率は、超音波噴霧器が受容的
な態様で操作され、そして吸入の間にのみ、一方向弁を介してボーラスとしてエ
アロゾルを送達するという事実に寄与し得ると考えられる。このことは、呼息の
間のエアロゾルの喪失を最小にする。
任意の核酸分子が、本発明の霧状化核酸/安定化剤複合体の調製に用いられ得
るが、プラスミドDNAおよびRNA分子が好ましい。好ましくは、複合体のサイズは
、2μm未満であり、超音波噴霧器による有効なエアロゾル形成を可能にする。
好ましい核酸分子は、目的の遺伝子を含むプラスミド発現ベクターである。この
ようなプラスミドは、当業者に周知の技術(例えば、Sambrookら,Molecular Cl
oning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratories,Cold Spring
H
arbor,N.Y.,1989に見出される技術)を用いて調製され得る。好ましいプラスミ
ドは、サイトカイン(例えばIL-12であるがこれに限定されない)、プロテアー
ゼインヒビターα-1アンチトリプシン、嚢胞性線維症膜貫通レギュレーター、お
よび他のこのようなタンパク質をコードするプラスミドである。
本発明の状況では、「安定化剤」は、核酸分子に複合体化された場合、核酸の
トランスフェクション効率の有意な喪失を伴わずに、複合体の超音波霧状化を可
能にする任意の化合物または物質であり得る。霧状化の際のスーパーコイル形態
(最も強力なかつ壊れやすいプラスミドの物理的形態)の喪失は、20%未満であ
るべきである。適切な安定化剤は、1つ以上の脂質、ペプチド、および/または
ポリマーを含む。例えば、1:3:1の荷電比(−:+:−)で処方された縮合
ペプチド(GM208)および溶解ペプチド(GM225.1)を含むペプチド/DNA複合体
は、粒径およびゼータ電位測定により示されるように、霧状化のあとに安定であ
る。脂質は好ましい安定化剤であり、そしてカチオン性脂質(例えば、N-[1-2,3
-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N-N-N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTM
A))は特に好ましい。カチオン性脂質は、代表的には、エンドソーム膜に融合
し、そしてそれらの物理的状態を調整することにより、核酸/脂質複合体のエン
ドサイトーシス性取り込みの後にエンドソームからのDNAの放出を促進するヘル
パー脂質(または共脂質(co-lipid))とともに用いられる。適切な共脂質は、
ジオレイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)および/またはコレステロ
ール(Chol)を含む(Brighamら,Am.J.Med.Sci.298:278-281;1989;Canoni
caら,Am.J.Resp.Cell.Mol.Biol.10:24-29,1994;Bennettら,Biosci.Re
p.15:47-53,1995を参照のこと)。本発明において使用するための脂質は、一
般に、商業的供給源(例えば、Avanti Polar Lipids Inc.(Alabaster,AL))か
ら入手され得る。
特に好ましい実施態様では、脂質の量およびタイプは、気管内滴注および/ま
たはエアロゾル吸入の後に呼吸器上皮細胞に対して増強された遺伝子移入をもた
らす複合体を生じるように選択される。本発明の状況では、粒子サイズおよび荷
電が、肺トランスジーン発現に影響を与える重要な要素であることが見出されて
いる。これらの特性は、カチオン性脂質、共脂質、および処方の方法により決定
される。核酸/カチオン性脂質複合体のサイズおよび荷電比は、脂質および核酸
の化学量論を改変することにより変化し得る(TomlinsonおよびRolland,J.Con
trol.Rel.,印刷中,1996を参照のこと)。このような複合体の平均サイズは、
カチオン性脂質の相対レベルのの関数として変化する(例えば、1:0.5(−:
+)荷電比についての100nmから、1:3荷電比についての220nmまで)。さらに
、固定されたDNA/脂質比については、DNA濃度の増加は、複合体の平均直径の増
加をもたらすことが見出されている。
複合体のサイズおよび表面荷電は、一般に、当業者に周知の方法を用いて評価
され得る。例えば、荷電比は、ドップラー電気泳動光散乱により決定され得る。
複合体の平均直径およびゼータ電位は、ダイナミック光散乱およびドップラー電
気泳動光散乱(TomlinsonおよびRolland,J.of Cont.Rel.,39:357-372,1996
を参照のこと)により特徴付けられ得る。ドップラー電気泳動光散乱は、一般に
、任意の適切な装置(例えば、Coulter DELSA440(Coulter Corp.,Hialleah,FL
))を用いて行われ得る。このような分析は、4つの異なる角度からの散乱光を
収集することにより行われ得る。装置の操作周波数は、サンプルの伝導性と電流
が等しいかまたは低い振幅とともに、約500Hzであり得る。Coulter N4 MD Sub-M
icron Particle Size Analyzer(Coulter Corp.,Hialeah,FL)を含む、ダイナミ
ック光散乱分析を行うに適切な任意の装置が用いられ得る。
一般的に、正に荷電した複合体は、負に荷電した複合体よりも高レベルの発現
を与える(図1を参照のこと)。さらに、トランスジーン発現のレベルは、複合
体の粒子サイズが増大するにつれて増加する(図2および3を参照のこと)。従
って、核酸/安定化剤複合体は、代表的には、少なくとも1:2、好ましくは1
:2〜1:6の範囲、そしてより好ましくは約1:3の荷電比(−:+)を有す
る。核酸/安定化剤複合体の粒子サイズは、効率的な取り込みのためには200nm
よりも大きいべきである。
核酸および安定化剤は、特定の成分に適切な任意の技術を用いて複合体に処方
され得る。このような技術は、当業者に周知である。1つ以上の脂質安定化剤を
含む複合体では、大きな多層小胞(MLV)または押し出されたリポソーム(すな
わち、単層小胞)が、核酸の添加の前に調製され得る。例えば、1:1のモル比
で共脂質DOPEまたはコレステロールとともにDOTMAから構成されるカチオン性リ
ポソームは、種々の孔径(例えば、200、400、および800nm)を有するポリカー
ボネートフィルターを通して押し出して、種々のサイズの単層小胞を調製し得る
。100nm未満の直径を有する小さな単層小胞(SUV)もまた、適切な大きさのフィ
ルターを通しての押出しにより調製され得る。次いで、プラスミド/脂質複合体
は、連続注入装置を用いて、所定の比(DNAのカチオン性脂質に対する化学量論
は、荷電および濃度に依存する)でのカチオン性リポソームとプラスミドDNAと
の制御された混合により調製され得る。好ましくは、複合体は、10%ラクトース
中に調製され、その結果、処方物は等張である。リポソームおよびプラスミドは
、例えば、種々の流量自給式蠕動ポンプ(例えば、VWR Model Number 54856(VWR
,Houston,TX))を用いて正確な比で混合チャンバーに送達され得る。定常状態
条件は、混合チャンバーへの成分の投入流速が、混合チャンバーからの処方され
た複合体の流出速度に等しいように混合チャンバー中で維持され得る。複合体化
効率(すなわち、カチオン性脂質上に縮合されたプラスミド画分)は、アガロー
スゲル電気泳動により決定され得る。プラスミドの完全性はまた、Triton Xを用
いてDNAを複合体からストリッピングし、そしてストリッピングされたDNAバンド
を裸のDNAコントロールのバンドと比較することにより、アガロースゲル電気泳
動を用いて決定され得る。
核酸/安定化剤複合体のコロイド安定性は、臨床適用に重要である。研究は、
処方された複合体が経時的に凝集することを示し(Rollandら,Proc.Intern.S
ymp.Contl.Rel.Bioact.Mat.21:240-241,1994を参照のこと)、それは減少
したトランスフェクション効率をもたらす。本発明の状況では、等張媒体中での
複合体の安定性は、処方された複合体を凍結防止剤(例えば、ラクトース、マン
ニトール、スクロース、および/またはトレハロース)の存在下で凍結乾燥する
ことにより増加され得ることが見出されている。例えば、ラクトース中に処方さ
れた複合体は、凍結乾燥機(例えば、Model TDS2COT500,FTS Systems Inc.,St
one Ridge,NY)を用いて−30℃で凍結乾燥され得る。冷却、一次冷却、二次冷
却、および減圧を、マイクロコンピューターを用いて制御し得る。制御された条
件下での凍結乾燥および等張への再水和の後、複合体の安定性特性(サイズおよ
びゼータ電位)は維持される(図7を参照のこと)。
凍結乾燥複合体は、噴出粉砕されて、乾燥粉末吸入投薬形態の調製のための1
〜3μmの範囲の粒子を生成し得る。再水和され、そして滴注される凍結乾燥お
よび噴出製粉複合体は、細胞をトランスフェクトするそれらの能力を維持する;
さらに、トランスフェクション効率は、凍結乾燥されていないプラスミド/脂質
複合体に匹敵する(図6を参照のこと)。噴出粉砕は、例えば、Micro-Jet Mode
l 00,Fluid Energy Aljet,Plumsteadville,PAを、60psigの粉砕圧、50psigの
供給圧、および手動の供給で用いて行われ得る。患者への投与の前に、凍結乾燥
し、そして噴出製粉複合体を、等張まで再水和するべきである。
核酸/安定化剤複合体は、超音波噴霧器(例えば、Omron Model NE-U07)を用
いてエアロゾル化され得る。この装置は、高周波(2.4Hz)での圧電性結晶の振
動によりエアロゾルを生成する。他の噴霧器が用いられ得るが、3つのパラメー
ターが噴霧器の選択に特に重要である:質量メジアン空気力学的直径(mass med
ian aerodynamic diameter)(MMAD)、呼吸可能な用量(RD)、および送達効率
(標準的な技術を用いて決定され得る)。好ましくは、MMADは約5μm未満であ
り、RDは約60%より大きく、そして送達効率(すなわち、下気道に沈着した薬物
の質量の、エアロゾル化した薬物の質量に対する比)は約10%より大きい(Pill
aiら,J.Aerosol Med.9:227-240,1996を参照のこと)。
エアロゾル化した核酸/安定化剤複合体は、例えば、改変された試験管埋伏装
置を用いて収集され得る。エアロゾルは、可撓性のタイゴンチュービング(tygo
n tubing)、およびピペットを出るエアロゾル粒子が氷冷試験管上に衝突し、そ
して濃縮されるように、細いガラスピペットを通して供給され得る。このように
して、エアロゾルは、所定の時間間隔で収集され得る。
本明細書中に記載されるように調製される核酸/安定化剤複合体は、一般に、
患者の気道への遺伝子送達のために用いられ得る。本発明の状況では、患者は、
ヒトまたは他の哺乳動物であり得、そして1つ以上の疾患に罹患し得るが、検出
可能な疾患に罹っていなくともよい。従って、1つ以上の核酸/安定化剤複合体
での患者の処置は、予防目的または存在する疾患の処置のためであり得る。例え
ば、IL-12をコードする核酸を含む複合体は、エアロゾル吸入により投与されて
、
アレルゲン誘導性喘息発作に対する免疫応答を改変し得る。本明細書中に記載さ
れる核酸/安定化剤複合体は、吸入(これは、経口および/または経鼻であり得
る)による投与に適切である。好ましくは、複合体は、超音波霧状化されるが、
上記のように、正味の正荷電を有する複合体に噴出霧状化もまた用いられ得る。
患者への投与のために、1つ以上の核酸/安定化剤複合体が、一般に、薬学的
組成物として処方される。薬学的組成物は、核酸/安定化剤複合体を、生理学的
に受容可能なキャリア(すなわち、有効成分の活性を妨害しない非毒性物質)と
組み合わせて含む。当業者に公知の任意の適切なキャリアは、本発明の薬学的組
成物に用いられ得る。代表的なキャリアは、合成粒子キャリア(例えば、ペプチ
ドおよび生分解性ポリマー、またはこのような物質の組合せ)を含む。必要に応
じて、薬学的組成物は、例えば、保存剤、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活
性ガス、および/または他の活性成分のような他の添加剤をさらに含み得る。
投与の頻度および投薬量は、患者毎に、そして投与される特定の核酸、気道上
皮細胞への処方されるプラスミドの生物学的利用能、ならびに遺伝子発現のレベ
ルおよび持続期間に依存して異なる。トランスジーンによりコードされるタンパ
ク質は標的部位で発現されるので、予防効果のために必要とされる用量は、従来
の経路による薬物送達のために必要とされる用量より少ない大きさのオーダーで
あり、同時に副作用がより少ない。一般的に、1〜2用量は、予防効果または治
療効果のために標的部位で必要とされる治療タンパク質のレベルに依存して毎週
投与され得る。適切な用量は、疾患に罹患した患者の症状に改善を示すに十分で
ある超音波霧状化/安定化剤複合体の量である。このような改善は、より少ない
全身性副作用、改善された患者のコンプライアンス、および/または疾患状態に
関連する臨床症状の改善に基づいて検出され得る。一般的に、1用量の中に存在
する超音波霧状化/安定化剤複合体の量は、約500μg〜4mgの範囲である。本
明細書中に詳述される処方物についての超音波噴霧器から放出される用量は、約
10〜15μg/Lの範囲である。エアロゾルの流出濃度から評価された曝露時間、正
常な呼吸条件下でのヒトの換気パラメータ、およびエアロゾルの質量メジアン空
気力学的直径(MMAD)に基づく沈着効率は、約15分間〜約2時間で変化し得る。
以下の実施例は例示のために提供されるのであって、限定のために提供される
のではない。
実施例
実施例1 核酸/安定化剤複合体の調製
本実施例は、核酸/安定化剤複合体の調製を例示する。
サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター/エンハンサーにより駆動される
細菌レポーター遺伝子クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT
)を含むプラスミドを、標準的技術を用いて構築した。DOPEまたはコレステロー
ル(Chol)のいずれかを有するカチオン性脂質DOTMA(全ての脂質は、Avanti Po
lar Lipids Inc.,Alabaster,ALから入手した)から1:1のモル比で構成され
る単層小胞を、200、400、および800nmの孔径を有するフィルター(Poretics Co
rp.,Livermore,CA)を通しての押出しにより調製した。
1:3の荷電比(−:+)のCMV-CAT/DOTMA:DOPE複合体およびCMV-CAT/DOT
MA:Chol複合体を、制御された条件下で連続注入装置を用いてプラスミドをリポ
ソームに混合することにより10%(w/v)ラクトース中に処方した。プラスミドD
NA濃度は、200μg/mLであった。複合体の平均直径およびゼータ電位は、Coulte
r N4 MD Sub-Micron Particle Size Analyzer(Coulter Corp.,Hialeah,FL)
を用いてダイナミック光散乱を介して、およびドップラー電気泳動光散乱(Coul
ter DELSA 440(Coulter Corp.,Hialeah,FL))を介して特徴付けられた。分析
を、4つの異なる角度からの散乱光を収集することにより行なった。器具の操作
の周波数は約500Hzであり、そして電流の振幅はサンプルの伝導率と同じである
かまたはそれより低かった。平均直径は図2に示す通りであり、そしてゼータ電
位の測定は、複合体上の全荷電が正であることを示した。複合体化効率を、アガ
ロースゲル電気泳動により決定し、そして調製した複合体が100%、1:3の荷
電比(−:+)であることが見出された。
実施例2 エアロゾル超音波霧状化核酸/安定化剤複合体の調製
本実施例は、エアロゾル複合体の生成および特徴付けを例示する。
実施例1に記載されるプラスミド/脂質複合体を、超音波噴霧器(Model NE-U
07,Omron Health Care,Inc.,Lake View,IL)を用いて、製造者の説明書に従
ってエアロゾル化した。エアロゾル化複合体を、改変された試験管埋伏装置を用
いて収集した。この系において、エアロゾルを、可撓性タイゴンチュービング中
に、そして細いガラスピペットを通して供給した。ピペットを出たエアロゾルを
、氷冷試験管上に衝突させ、そして濃縮させた。エアロゾルを、以下に記載され
る通りに、特徴付けのために所定の時間間隔で収集した。
超音波霧状化プラスミド/脂質複合体の安定性および複合体内のDNAを、上記
のようにダイナミック光散乱およびドップラー電気泳動光散乱を用いて評価した
。複合体化効率およびプラスミドの完全性を、アガロースゲル電気泳動により決
定した。プラスミド完全性決定のために、電気泳動の前にTriton-Xでの処理によ
り、DNAを複合体から剥がした。Triton処理サンプルにおけるDNAバンドの構造を
、裸のDNAコントロールの構造と比較した。
図8は、非霧状化複合体および霧状化複合体におけるスーパーコイルプラスミ
ドの画分が、「裸のDNA」コントロールにおける画分と同様であったことを示す
。スーパーコイル形態は、プラスミドの物理的形態のうちで最も強力(potent)
かつ脆弱である。スーパーコイル形態の完全性が霧状化の後に維持されたという
事実は、カチオン性脂質が、小滴形成の間に誘導される剪断からDNAを保護する
のを助けることを示す。
放出用量および空気力学的直径を、米国薬局方<601>に定義されるような標
準法を用いて決定した。エアロゾルを、0.2μmフィルター上で、3L/分の所定
の流速で、臨界流れオリフィス(critical flow orifice)(CFO)を用いて収集
した。エアロゾルを含むフィルターを、5mLの5%ドデシル硫酸ナトリウム(SD
S)緩衝液で洗浄して脂質からDNAを分離した。溶液を遠心分離し、そして260nm
の波長でDNA濃度について分光光度学的にアッセイした。超音波噴霧器からの流
出エアロゾル流中のDNA濃度は、5μg/mLであった。
超音波噴霧器から生成されたエアロゾルを、慣性埋伏技術(inertial impacti
on technique)を用いて、質量メジアン空気力学的直径(MMAD)および幾何標準
偏差(GSD)に基づいて特徴付けた。8つの埋伏ステージおよびプレセパレータ
ー(preseparator)からなるAndersen 1 SCFM(28.3L/分)非生存可能環境サン
プラーを用いて、エアロゾル粒子を収集するために使用した。エアロゾルを5分
間収集した。エアロゾルを、ステンレススチールディスクの上および0.2μmの
孔径を有するガラス繊維フィルター(Gelman Type A/E,Gelman Sciences Inc.
,Ann Arbor,MI)上の8つの埋伏ステージの各々で収集した。ディスクのそれ
ぞれを、インパクター(impactor)から取り出し、ペトリ皿上に置き、そして5
mLの5%SDSで洗浄した。各々のペトリ皿を、沈着した粒子からの脂質の完全な
溶解のために定期的な間隔で振盪した。溶液を遠心分離し、そしてDNA濃度につ
いて260nmの波長で分光光度学的にアッセイした。対数方眼紙に、カスケードイ
ンパクターの各々のステージで収集したDNAの累積的質量画分を、その段階の有
効なカットオフ直径に対してプロットし、そして対数正規分布を最小二乗法によ
ってデータについて計算した。MMAD(質量を等しく分割する回帰上の点としてと
られる)は、2.4μmであった。GSD(粒径サイズ(それより下に84.1%の質量分
布が存在する)を、質量メジアンサイズで割ることにより計算する)は、3.2で
あった。エアロゾルのサイズ分布(図9に示す)は、大多数の粒子が呼吸可能な
範囲にあることを示す。
実施例3 プラスミド/脂質複合体の肺滴注
本実施例は、非霧状化および霧状化プラスミド/脂質複合体の気管内滴注後の
トランスジーン発現のレベルを例示する。
動物を、3つの処置群(3動物/群)に分け、そして腹腔内に与えられた80mg
/kgのケタミンで麻酔した。処置群に、気管カテーテルで挿管し、そして手術台
の上に仰臥しておく。エアロゾルを、気管カテーテルを通して送達し、そして換
気気流により運んだ。動物を、所定の時間間隔でエアロゾル化した複合体に曝露
した。吸入後、動物を抜管し、そして麻酔から回復させ、そして動物飼育施設に
戻した。動物を、ドライアイスチャンバーを用いて吸入48時間後のCO2窒息によ
り安楽死させ、そして肺組織を採取した。組織をTris/HCl緩衝液中でホモジナイ
ズし、そして遠心分離した。続いて、上清を、製造者の説明書に従ってCAT発現
についてELISAアッセイを用いて分析した(Boehringer Mannheim CAT ELISA Kit
、カタログ番号1363727)。
以下でさらに議論する図4は、気管内挿管により400μlの音波霧状化複合体
(10分後、インピンジャー(impinger)で収集)、または噴霧器リザーバーから
30分後にアリコートに分けられた残りの複合体(100μgのプラスミドDNA)が滴
注された動物におけるCAT発現のレベルを示す。結果は、非霧状化、霧状化、ま
たは残りのプラスミド/脂質複合体の気管内滴注後のトランスジーン発現のレベ
ルが匹敵したことを示す。
実施例4 トランスフェクション効率に対する荷電の効果
本実施例は、共脂質DOPEおよびコレステロールとともにカチオン性脂質DOTMA
を含む核酸/安定化剤複合体のインビボトランスフェクション効率に対する複合
体の荷電の効果を示す。
カチオン性脂質および共脂質を、種々の孔径(100、400、または800nm)を有
するポリカーボネート膜フィルターを通しての押出しにより調製される大きな多
層小胞(MLV)または単層小胞として処方した。種々の荷電比でのCMV-CAT/DOTMA
:Chol複合体を、10%(w/v)ラクトース中に実施例1に記載される通りに処方
した。
プラスミド/脂質複合体(125μg/mLプラスミドDNA)の気管内滴注後のラッ
ト肺におけるCAT発現のレベルを、上記で議論したように、ELISAアッセイにより
評価した。結果(図1に示す)は、評価した比の範囲にわたって荷電比が増加す
るにつれ、増加したレベルのCAT発現をもたらすことを示す。
実施例5 トランスフェクション効率に対する粒子サイズの効果
本実施例は、共脂質DOPEおよびコレステロールとともにカチオン性脂質DOTMA
を含む核酸/安定化剤複合体のインビボでのトランスフェクション効率に対する
粒子サイズの効果を例示する。
カチオン性脂質および共脂質を、大きな多層小胞(MLV)として処方したか、
または種々の孔径(100、400、および800nm)を有するポリカーボネート膜フィ
ルターを通して押し出した。種々の粒径および固定された1:3(−:+)の荷
電比を有するCMV-CAT/DOTMA:Chol複合体およびCMV-DOTMA:DOPE複合体を、実施
例1に記載される通りに10%(w/v)ラクトース中に処方した。プラスミドDNA濃
度は125μg/mLであった。上記のように、複合体の平均直径およびゼータ電位を
、ダイナミック光散乱およびドップラー電気泳動光散乱により特徴付け、そして
複合体化効率を、アガロースゲル電気泳動により決定した。
図2に示すデータは、トランスジーン発現のレベルが、複合体の粒子サイズが
237から901nmへと増加するにつれて増加することを実証する。さらに(図3)、
1:3の荷電比を有する処方物での気管内滴注後に観察された発現のレベルは、
処方されなかったDNA(水中またはラクトース中の非縮合DNA)よりも100倍を越
えて高かった。
実施例6 トランスフェクション効率に対する霧状化の効果
本実施例は、霧状化核酸/安定化剤複合体のトランスフェクション効率を例示
する。
CMV-CAT/DOTMA:Chol複合体(直径530nm、1:3(−:+)荷電比)を、上記
のように調製した。次いで、気管内滴注後に高レベルのトランスジーン発現を与
える制御されたコロイド特性および表面特性を有する最適化したプラスミド/脂
質複合体を、超音波噴霧器を用いてエアロゾル化した。これらの複合体を、超音
波噴霧器を用いてエアロゾル化し、プラスミドおよびプラスミド/脂質複合体の
安定性、ならびに気管内滴注およびエアロゾル複合体の吸入後のラット肺におけ
るインビポでのトランスジーン発現を評価した。DNAはカチオン性リポソームに
複合体化したままであり、そしてプラスミドの完全性は保持された(霧状化前の
サンプルおよび霧状化後のサンプルにおけるプラスミドのスーパーコイル形態の
画分が類似であったことを示す、図8を参照のこと)。霧状化の前の複合体の平
均直径は、530±329nmであった。10分間または20分間の霧状化の後に噴霧器中に
残存している複合体の平均直径は、それぞれ、481±289nmおよび510±361nmであ
った。ゼータ電位測定は、粒子の表面荷電が、霧状化プロセスの後に荷電してい
ないことを示した。これらの知見は、プラスミド/脂質複合体のコロイド特性が
、霧状化後に保持されたこと、およびカチオン性リポソームへのDNAの結合は、
小滴形成の間に誘導される剪断からDNAが保護され得ることを実証する。超音波
噴霧器を用いて生成されたエアロゾルの質量メジアン空気力学的直径(MMAD)は
、5μm未満であった。このことは、粒子が呼吸可能な範囲にあることを示す(
図9を参照のこと)。
次いで、気管内滴注(霧状化なしおよび10分間または30分間の超音波霧状化あ
り)後のラット肺におけるCAT発現のレベルを、上記の通りに評価した。動物を
、腹腔内に与えた80mg/kgのケタミンで麻酔し、そして3つの処置群に分けた(
3動物/群)。処置群に、リザーバーからアリコートに分けた、霧状化複合体ま
たは残りの複合体の400μl(100μgプラスミドDNA)を気管内挿管により滴注
した。霧状化していない複合体を滴注した動物は、ポジティブコントロールとし
て使用した。動物を、ドライアイスチャンバーを用いて、滴注48時間後にCO2窒
息により安楽死させ、そして肺組織を採取した。組織をTris-HCl緩衝液中でホモ
ジナイズし、そして遠心分離した。続いて、CAT発現のためのELISAアッセイを用
いて上清を分析した。
図4に示す結果は、霧状化および残余の複合体で得られた発現レベルが、匹敵
したことを示す。これらの知見は、プラスミドDNAのトランスフェクション効率
が、霧状化後に保持されたことを示す。
本発明者らはまた、再水和懸濁液として気管内滴注によりラット肺に送達され
た凍結乾燥しそして噴出製粉(jet mill)プラスミド/脂質複合体のインビボで
のトランスフェクション効率を評価した。本発明者らは、処方された物質を、等
張性媒体中でプラスミド/脂質複合体の安定を増加させるための凍結保護物質の
存在下で凍結乾燥するための方法を開発した。ラクトース中で処方された複合体
は、凍結乾燥機(Model TDS2COT500,FTS Systems Inc.,Stone Ridge,NY)を
用いての特定の凍結保護物質(ラクトースおよびマンニトール)での制御された
条件下で−30℃で凍結乾燥された。冷却、一次冷却、二次冷却、および減圧を、
マイクロコンピューターを用いて制御した。噴出粉砕を、例えば、Micro-Jet Mo
del 00,Fluid Energy Aljet,Plumsteadville,PAを、60psigの粉砕圧、50psig
の供給圧、および手動の供給で用いて行った。次いで、凍結乾燥し、そして噴出
製粉複合体を、等張まで再水和した。
図6は、凍結乾燥し、そして噴出製粉DNA/脂質複合体の気管内滴注後のラッ
ト肺におけるCAT発現のレベルを評価した実験の結果を示す。凍結乾燥し、そし
て噴出粉砕し、再水和し、そして滴注した複合体は、肺細胞をトランスフェクト
するその能力を保持した。さらに、トランスフェクション効率は、凍結乾燥しな
かったプラスミド/脂質複合体のトランスフェクション効率に匹敵した。
図7に示すように、凍結乾燥し、そして再水和したCMV-CAT/DOTMA:Chol複合
体(1:2(−:+)の荷電比で)の安定性特徴(サイズおよびゼータ電位)は
、少なくとも4ヶ月の期間にわたって変化しないままであった。トランスフェク
ション効率はまた、この時間の期間にわたって安定であることが見出された。
実施例7 核酸/安定化剤複合体の吸入後のトランスジーン発現
本実施例は、核酸/安定化剤複合体の経鼻または経口吸入後の肺におけるトラ
ンスジーン発現のレベルを例示する。
CMV-CAT/DOTMA:Chol複合体(直径813nm、1:3(−:+)の荷電比)を、上
記の通りに調製した。これらの複合体を、噴出および超音波噴霧器を用いてエア
ロゾル化し、そして上記の通りに、鼻のみを曝露するチャンバーを用いて、また
は気管カテーテルを通してラットに投与した。鼻曝露のために、鼻のみを曝露す
るチャンバーは、水平な側枝を有するエアロゾル入口部分およびエアロゾル排出
部分からなっていた。入口部分は、排出に比較してより高圧に保持された。エア
ロゾル化複合体は、頂部を通ってチャンバーに入り、動物の鼻の周辺に流れ、そ
して動物の鼻の周辺の一連の穴を通して出ていった。エアロゾル濃度が頂部およ
び底の口で均一であるようにチャンバーを操作した。動物を、所定の時間間隔で
、エアロゾル化した複合体に曝露した。曝露後、動物を管からはずし、それらの
そ
れぞれのケージに置き、そして動物飼育施設に戻した。曝露の48時間後、肺組織
を採取し、そして上記の通りにアッセイした。
図5に示される、肺におけるCAT発現のレベルは、エアロゾル化複合体の経口
吸入および鼻の曝露が、トランスジーン発現を生じることを実証する。さらに、
超音波霧状化複合体は、噴出霧状化複合体により達成されたDNA送達およびトラ
ンスジーン発現のレベルに匹敵するDNA送達およびトランスジーン発現のレベル
を、有意に少ない吸入時間でだが達成し得る。
前述から、本発明の特定の実施態様を、例示の目的のために本明細書中に記載
してきたが、種々の改変が本発明の精神および範囲から逸脱せずに行われ得るこ
とが理解される。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
C12N 15/09 C12N 15/00 A
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1.核酸送達装置であって、以下: (a)超音波噴霧器; (b)核酸;および (c)安定化剤; を備え、ここで、該核酸および安定化剤は、該超音波噴霧器の中に含まれる、核 酸送達装置。 2.核酸送達装置であって、以下: (a)超音波噴霧器; (b)核酸;および (c)安定化剤; を備え、ここで、該超音波噴霧器は、該核酸および安定化剤を受けるように適応 され、そしてそれからの吸入に適切なエアロゾルを生成する、核酸送達装置。 3.前記核酸が、DNAである、請求項1または2に記載の装置。 4.前記DNAが、サイトカインをコードする、請求項3に記載の装置。 5.前記サイトカインが、IL-12である、請求項4に記載の装置。 6.前記DNAが、α-1アンチトリプシンまたは嚢胞性線維症膜貫通レギュレータ ーをコードする、請求項3に記載の装置。 7.前記安定化剤が、脂質である、請求項1または2に記載の装置。 8.前記脂質が、カチオン性脂質である、請求項7に記載の装置。 9.前記核酸および前記安定化剤が、正味の正の荷電を有する複合体が生成され るような量で存在する、請求項8に記載の装置。 10.前記複合体が、1:2〜1:6の範囲の荷電比(−:+)を有する、請求 項9に記載の装置。 11.前記安定化剤が、ペプチドである、請求項1または2に記載の装置。 12.前記安定化剤が、ポリマーである、請求項1または2に記載の装置。 13.超音波霧状化核酸/安定化剤複合体を調製するための方法であって、以下 の工程: (a)少なくとも1つの核酸を、少なくとも1つの安定化剤と合わせて、複合体 を形成させる工程;および (b)該複合体のエアロゾルを、超音波噴霧器で形成させる工程、 を包含する、方法。 14.前記核酸が、DNAである、請求項13に記載の方法。 15.前記DNAが、サイトカインをコードする、請求項14に記載の方法。 16.前記サイトカインが、IL−12である、請求項15に記載の方法。 17.前記DNAが、α-1アンチトリプシンまたは嚢胞性線維症膜貫通レギュレー ターをコードする、請求項14に記載の方法。 18.前記安定化剤が、脂質である、請求項13に記載の方法。 19.前記脂質が、カチオン性脂質である、請求項18に記載の方法。 20.前記複合体が、正味の正の荷電を有する、請求項19に記載の方法。 21.前記複合体が、1:2〜1:6の範囲の荷電比(−:+)を有する、請求 項20に記載の方法。 22.前記安定化剤が、ペプチドである、請求項13に記載の方法。 23.前記安定化剤が、ポリマーである、請求項13に記載の方法。 24.超音波霧状化核酸/安定化剤複合体。 25.前記核酸が、DNAである、請求項24に記載の複合体。 26.前記DNAが、サイトカインをコードする、請求項25に記載の複合体。 27.前記サイトカインが、IL-12である、請求項26に記載の複合体。 28.前記DNAが、α-1アンチトリプシンまたは嚢胞性線維症膜貫通レギュレー ターをコードする、請求項25に記載の複合体。 29.前記安定化剤が、脂質である、請求項24に記載の複合体。 30.前記脂質が、カチオン性脂質である、請求項29に記載の複合体。 31.前記複合体が、正味の正の荷電を有する、請求項30に記載の複合体。 32.前記複合体が、1:2〜1:6の範囲の荷電比(−:+)を有する、請求 項31に記載の複合体。 33.前記安定化剤が、ペプチドである、請求項24に記載の複合体。 34.前記安定化剤が、ポリマーである、請求項24に記載の複合体。 35.超音波霧状化核酸/安定化剤複合体で患者を処置するための方法であって 、超音波霧状化核酸/安定化剤複合体を患者に提供する工程を包含し、ここで、 該複合体は、治療用タンパク質をコードする核酸を含み、そして該患者による吸 入に適切である、方法。 36.治療用タンパク質をコードする核酸で患者を処置するための方法であって 、超音波霧状化核酸/安定化剤複合体を患者に提供する工程を包含し、ここで、 該複合体は、該患者による吸入に適切である、方法。 37.超音波霧状化核酸/安定化剤複合体で患者を処置するための方法であって 、以下の工程: (a)少なくとも1つの核酸と少なくとも1つの安定化剤を合わせて複合体を形 成させる工程; (b)該複合体のエアロゾルを、超音波噴霧器で形成させる工程;および (c)該エアロゾルを、患者による吸入のために提供する工程、 を包含する、方法。 38.霧状化核酸/安定化剤複合体で患者を処置するための方法であって、霧状 化核酸/安定化剤複合体を患者に提供する工程を包含し、ここで、該安定化剤は 、カチオン性脂質を有し、正味の正の荷電を有し、そして該患者による吸入に適 切である、方法。 39.霧状化核酸/カチオン性脂質複合体で患者を処置するための方法であって 、以下の工程: (a)少なくとも1つの核酸と少なくとも1つのカチオン性脂質を合わせて、正 味の正の荷電を有する複合体を形成させる工程; (b)該複合体のエアロゾルを、噴霧器で形成させる工程;および (c)該エアロゾルを、患者による吸入のために提供する工程、 を包含する、方法。 40.前記複合体が、1:2〜1:6の範囲の荷電比(−:+)を有する、請求 項38または39のいずれかに記載の方法。
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