JP2001501469A - 腫瘍抑制タンパク質をコードする核酸分子およびその単離方法 - Google Patents

腫瘍抑制タンパク質をコードする核酸分子およびその単離方法

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マックス―プランク―ゲゼルシャフト ツール フェルデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー.
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Abstract

(57)【要約】 腫瘍抑制タンパク質の生物学的活性を有する新規タンパク質および前記タンパク質をコードする核酸分子を開示する。腫瘍抑制タンパク質をコードする核酸分子の単離方法ならびに前記方法により得られる核酸分子も提供する。さらに、原核または真核宿主細胞内での発現を可能にする調節エレメントに機能しうる形で連結されている、前記核酸分子を含有するベクターを使用して、前記核酸分子によりコードされる腫瘍抑制活性を有するポリペプチドを生産することができる。本発明の核酸分子および/またはこのような核酸分子に相補的な核酸分子を含有する医薬用および診断用組成物を提供する。さらに、前記核酸分子によりコードされる腫瘍抑制活性を有するポリペプチドおよび/または前記ポリペプチドを特異的に認識する抗体を含有する組成物も開示する。

Description

【発明の詳細な説明】 腫瘍抑制タンパク質をコードする核酸分子 およびその単離方法 本発明は、腫瘍抑制タンパク質(tumor suppressor protein)の生物学的活性を 有するタンパク質をコードする新規な核酸分子に関する。本発明はまた、腫瘍抑 制タンパク質をコードする核酸分子の単離方法および前記方法により得られる核 酸分子を提供する。さらに、本発明は、前記核酸分子を含有するベクター(前記 核酸分子は原核または真核宿主細胞内での発現を可能にする調節エレメントに機 能しうる形で連結されている)、前記核酸分子によりコードされる腫瘍抑制活性 を有するポリペプチド、ならびにその生産方法を提供する。本発明はさらに、前 記核酸分子を含有するかつ/またはこのような核酸分子に相補的な核酸分子を含 有する医薬用および診断用組成物に関する。また、前記核酸分子によりコードさ れる腫瘍抑制活性を有するポリペプチドおよび/または前記ポリペプチドを特異 的に認識する抗体を含有する組成物も開示する。 細胞周期調節遺伝子、原がん遺伝子、腫瘍抑制遺伝子を含めた遺伝子ネットワ ークが見え始めており、かかるネットワークは正常な生理学的プロセスや腫瘍の 進行において大きな役割を果たしている(Grana and Reddy,Oncogene 11(1995) ,221-219;Hartwell and Kastan,Science 266(1994),1821-1828;Hoffman and Liebermann,Oncogene 9(1995),1807-1812;Sherr,Cell 79(1994),551-555)。 がん遺伝子は細胞の形質転換に関する分子・遺伝子研究において最初に最大の関 心を集めたものである。しかし、現在では、腫瘍抑制遺伝子(TSG)または抗がん 遺伝子として様々に知られている異なったクラスの遺伝子により提示される、同 等に重要な遺伝子の存在が認められている。論理的には、増殖促進性の原がん遺 伝子に反作用するように働く増殖抑制エレメントの同等に複雑なアレイが細胞シ グナル伝達回路に存在しなければならないとされる(Fisher,Cell 78(1994),53 9-542;Karp and Broder,Nature Med.1(1995),309-320;Liebermannら,Oncoge ne 11(1995),119-210;Thompson,Science 267(1995),1456-1462)。これら腫瘍 抑制遺伝子には特に興味がもてる。というのは、それ らが様々な種類のがんの治療の新たな可能性を引き出し、がん発症の原因となる 分子機構をよりよく理解するための一助となりうるからである。 このような抑制遺伝子の単離は、分子遺伝学と細胞周期分析の大きな貢献によ り、いろいろな分野で次第に実施可能になってきている。分子遺伝学ではTSGの 単離に連鎖研究が応用されたが、最も効果的な戦略は、腫瘍抑制遺伝子座でのホ モ接合性をもたらす腫瘍抑制遺伝子の第2の生存コピーを排除するために新生腫 瘍細胞が採用する遺伝子機構の研究から導き出された。この現象はしばしばアノ ニマスDNAマーカー(その多型がこれらの染色体領域でのヘテロおよびホモ接 合状態の検出を可能にする)の運命をたどることで追跡することができる。この 戦略により、網膜芽細胞腫の遺伝子産物(Rb)、ウイルムス(Wilms)がん抑制遺伝 子(WT)およびフォンヒッペル・リンドウ(von Hippel-Lindau)がん抑制遺伝子の 同定が可能となった。ごく最近、乳がん感受性遺伝子のBRCA1およびBRCA2のクロ ーニング(Mikiら,Science 266(1995),66-71;Woosterら,Nature 378(1995),7 89-792)がこの方法により成し遂げられた。 しかし、乳がんを含めて、大多数のヒトがんは自然にまたは遺伝的感受性のわ ずかに規定された規準のもとで発生しており、このことが連鎖研究をおこなうの を妨げ、また、後成的機構(epigenetic mechanism)が多くの段階を経て発生する ように思われる腫瘍の開始および形成において主要な役割を担っているらしいこ とを示す。 TSGの概念の更なる支持は、哺乳動物の細胞周期の調節成分の特性決定と単離 によりもたらされた。これが発展して、新しいクラスの候補腫瘍抑制遺伝子、普 遍的に発現するサイクリン依存性キナーゼインヒビター(cdk;細胞周期の進行に 負の調節を及ぼす)の同定へと導いた。これまでに開示された種々の形態(p15 ,p16,p18,p21およびp27)のうち、cdk p16は試験した広範囲の腫瘍においてin vivoで突然変異を起こしていることが実証された(Marx,Science 264(1994),3 44-345;Kambら,Science 264(1994),436-440;Noboriら,Nature 368(1994),75 3-756)。 腫瘍抑制遺伝子のもう一つの重要な例はp53 TSGであり、その生物学的活性は 、それがリー・フラウメニ(Li-Fraumeni)症候群の原因遺伝子であると同定され る ようになる前に、分子・生化学的研究によりin vitroで解明されている。これは 様々な起源のヒト腫瘍において突然変異が最も頻発している腫瘍抑制遺伝子の一 つである(Hollsteinら,Science 253(1991),49-53)。このTSGはその増殖抑制機 能に寄与する2つの重要な機能的特性(すなわち、アポトーシスの誘導および細 胞周期の停止)を備えた転写因子をコードしている(Vogelstein and Kinzler,C ell 70(1992),523-526;Oren,FASEB J.6(1992),3169-3176;Perry,Curr.Opi ll.Genet.Dev.3(1993),50-54;Bates and Vousden,Curr.Opin.Genet.Dev .6(1996),12-19)。 腫瘍抑制遺伝子は最近、それらががん治療の重要なターゲットになりうるとい う可能性ゆえに、多くの注目を集めているが、限られた数のTSGが同定されクロ ーン化されているにすぎない。したがって、がんのような疾病の発症メカニズム をさらに理解し、かつ腫瘍性疾患の別の形の治療手段または腫瘍性疾患の改善さ れた治療手段を提供できるように、更なる腫瘍抑制遺伝子を同定する必要性が依 然存在している。TSGクローニングのはかどり具合が遅い理由の一つは、腫瘍抑 制活性について多数の潜在配列を迅速にスクリーニングできるin vitroで簡単に 実施可能な同定・単離方法がまったくないという事実にある。 したがって、本発明の根底にある技術的課題は、腫瘍抑制活性を示すタンパク 質をコードする更なる核酸分子ならびにそれらの同定・単離方法を提供すること である。 上記の技術的課題の解決は、請求の範囲において特徴づけられる実施形態を提 供することで達成される。すなわち、新規クラスの腫瘍抑制タンパク質をコード する核酸分子が同定された。これは、in vitro機能的発現トランスダクトリー・ クローニング技術(in vitro functional expression transductory cloning tec hnique)を用いて成し遂げられた。開示される新規クラスの腫瘍抑制タンパク質 は、アポトーシスによる細胞死と細胞周期の進行を制御することにより腫瘍細胞 の増殖を抑制するp53の能力を持ち合わせ、アポトーシスと細胞周期調節におい て重要な役割を担っているようである。しかし、新たに同定された腫瘍抑制遺伝 子は、p53のような既知のTSGと比べて、限定された組織発現パターンおよび異な った活性を示すものである。 かくして、一態様において、本発明は、 (a) 配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分子; (b) 配列番号1に示すヌクレオチド配列を含む核酸分子; (c) (a)または(b)に規定した核酸分子とハイブリダイズする核酸分子;および (d) 遺伝暗号の結果、(a)、(b)または(c)に規定した核酸分子のヌクレオチド配 列に縮重しているヌクレオチド配列をもつ核酸分子; よりなる群から選択される、腫瘍サプレッサーの生物学的活性を有するタンパク 質をコードする核酸分子に関する。 配列番号1に示したコーディング領域のヌクレオチド配列を有する核酸分子は 、667個のアミノ酸からなる推定分子量75kDaのタンパク質をコードする(図1A) 。AGGCCATGG(配列番号4)のATGは、それが好適な翻訳開始のためのCC(A/G)CCATG G(配列番号5)Kozakコンセンサス配列に近似することと、12ヌクレオチド上流に インフレーム(in-frame)TGA停止コドンが存在することに基づいて、開始コドン であると決定された。データベース検索から、N末端領域に7個のジンクフィン ガー(Klug and Schwabe,FASEB J.(1995),597-604)が存在することが明らかに なった。しかし、ジンクフィンガータンパク質ファミリーの他のメンバーに対す る相同性は低く(最大30%)、最も近縁のグループは正常な発達と腫瘍形成に関 係しているジンクフィンガータンパク質のGLI-Kruppelファミリーである(Rupper tら,Mol.Cell.Biol.8(1988),3104-3113)。特に、最初のH/Cリンク(HSRERPF KC(配列番号6))はGLI-Kruppelファミリーのコンセンサスモチーフ(H(S/T)GEKP( F/Y)XC(配列番号7))(Schuhら,Cell 47(1986),1025-1032)とよく一致している 。一方、残りの459C末端アミノ酸はSwissprotおよびNBRF-PIRデータベースの配 列に対して有意な相同を示さなかった。このタンパク質の中央領域(275-383)は3 4のPLE、PMQまたはPMLリピートにより特徴づけられ、このことはタンパク質-タ ンパク質相互作用に決定的に係わっていると考えられるポリプロリンタイプIIヘ リックスとして知られる構造を示唆する(Williamson,Biochem.J.297(1994), 249-260)。COOH末端領域は特にP、QおよびEに富んでおり、これはしばしば転写 因子のトランス活性化ドメインが示す特徴である。さらに、第2および第3のジ ンクフィンガーモチーフ間に位置するサイクリン依 存性キナーゼ(Cdk)の推定上のリン酸化部位(HSPQK(配列番号8))(残基56-60)お よびまさにC末端に位置する推定上のプロテインキナーゼA(PKA)-リン酸化部位( KKWT(配列番号9))(残基663-666)の存在はプロテインキナーゼによる調節が起こ りうることを示唆する。 本発明の範囲内で実施された研究から、配列番号1の核酸配列によりコードさ れるタンパク質は腫瘍サプレッサーの生物学的活性を示すことが明らかになった 。 本明細書中で用いる「腫瘍サプレッサー」とは、in vitroおよび/またはin v ivoにおいて腫瘍細胞の増殖を抑制するタンパク質/ポリペプチドをさす。増殖 抑制にはアポトーシスおよび/または細胞周期の進行の制御といった作用機序だ けでなく、これまでに確認されていない作用機序が必要である。「腫瘍サプレッ サー」はp53、Rb(網膜芽細胞腫の遺伝子産物)、WT(ウイルムスがん抑制遺伝 子)、VHL(フォンヒッペル・リンドウがん抑制遺伝子)、BRCA1(乳がん感受性遺 伝子)およびp16(サイクリン依存性キナーゼインヒビター)の生物学的活性と同一 のまたは類似した生物学的活性を示すタンパク質である。 腫瘍サプレッサーの重要な生物学的活性の例としては、コロニー形成、増殖速 度、軟寒天でのクローニングなどを測定することで証明される、腫瘍細胞のin v itro増殖を抑制する能力、およびヌードマウスにおけるin vivo腫瘍形成を抑制 する能力がある。こうした生物学的活性を測定するには、例えば、Zhouら,Proc .Natl.Acad.Sci.USA 91(1994),4165-4169;Chenら,Science 250(1990),15 76-1580;Bakerら,Science 249(1990),912-915;Dillerら,Mol.Cell.Biol.10 (1990),5772-5781;Caseyら,Oncogene 6(1991),1791-1797;Chengら,Cancer R esearch(1992),222-226;Wang and Prives,Nature 376(1995),88-91;Mercerら ,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87(1990),6166-6170;Antelmanら,Oncogene 10 (1995),697-704に従っておこなうか、または添付の実施例に記載するようにお こなうことができる。 配列番号1の核酸配列によりコードされるタンパク質は腫瘍細胞の増殖を抑制 する能力を示し、こうした能力はトランスフェクト腫瘍細胞における前記タンパ ク質の構成的かつ誘導された発現により証明することができる。さらに、前記タ ンパク質は、しばしば腫瘍形成と関係があり、培養細胞形質転換の強力な規準で もある、足場非依存性増殖の阻止能を持ち合わせている。その上、この新規タン パク質はヌードマウスに注入した形質転換細胞の腫瘍形成を抑制することもでき る。こうして、本発明のタンパク質は例えばp53と同様の腫瘍サプレッサーの本 質的な特性をすべて兼ね備えている。この新しい腫瘍サプレッサーはまた、腫瘍 細胞の成長の抑制をもたらすアポトーシスを誘導することができる。しかしなが ら、この新しい腫瘍サプレッサーはp53と比べて機能的に相違しており、例えば 、アポトーシスによる細胞死の誘導はSaos-2細胞においてp53よりも本発明のタ ンパク質の場合により顕著である。さらに、本発明の腫瘍サプレッサーは、p53 とは対照的に、サイクリン依存性キナーゼインヒビターp21をコードする遺伝子 のトランス活性化とは無関係に、細胞周期のG1停止を誘導する。最後に、このタ ンパク質は核転写因子として働くことが見いだされた。 前述のことから、配列番号1に示したヌクレオチド配列は新規クラスの腫瘍サ プレッサーをコードすることが明らかである。このヌクレオチド配列を供給する ことによって、今や、他の種または生物から、腫瘍サプレッサーの生物学的活性 を示すタンパク質をコードする同一のまたは類似した核酸分子を単離することが 可能である。このような関連配列を同定し単離するための十分に確立された方法 として、例えば、開示された配列の全体または一部をプローブとして用いてゲノ ムもしくはcDNAライブラリーから単離すること、あるいは特定のプライマー を用いてポリメラーゼ連鎖反応により対応の核酸分子を増幅すること、などがあ る。 かくして、本発明はまた、上記の核酸分子とハイブリダイズし、かつこれらと 比較して1以上の位置で異なっている核酸分子(ただし、それらは腫瘍抑制活性 をもつタンパク質をコードする)に関する。かかる分子には、例えば、上記の核 酸分子と対比して1以上の欠失、挿入、置換または当技術分野で知られた他の修 飾により変化しているものが含まれる。本発明の核酸分子にこのような修飾を導 入する方法は当業者に公知である。例えば、Sambrookら(Molecular cloning;ALa boratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor NY(1989))を参照のこと。本発明はまた、遺伝暗号の縮重のため上記分 子のいずれとも配列が異なる核酸分子に関する。 上記の(c)で特徴づけた配列に関して、本明細書中で「ハイブリダイズする」 とは、通常のハイブリダイゼーション条件、好ましくは、50%ホルムアミド/6xSS C/0.1%SDS/100μg/ml ssDNA中でのハイブリダイゼーション、その際のハイブリ ダイゼーション温度37℃以上、0.1xSSC/0.1%SDS中での洗浄温度55℃以上、をさ すと理解される。最も好ましくは、「ハイブリダイズする」という用語はストリ ンジェントのハイブリダイゼーション条件、例えば、Sambrook,前掲に記載され るような条件をさす。本発明の分子にハイブリダイズし、かつ腫瘍サプレッサー をコードするる核酸分子は、例えば、推定上のリン酸化部位が変化しているタン パク質をコードするものでありうる。野生型p53配列特異的DNA結合の調節の 生化学的分析は、例えば、非リン酸化テトラマーが隠蔽配列特異的DNA結合活 性をもつことを明らかにした。この隠蔽または潜伏状態のp53は、非リン酸化テ トラマーを不活性状態にロックするC末端のネガティブ調節ドメインに依存する 。潜伏p53のC末端ネガティブ調節ドメインのプロテインキナーゼCもしくはカ ゼインキナーゼIIによるリン酸化またはこの調節ドメインの欠失は、配列特異的 DNA結合を活性化する。加えて、モノクローナル抗体はプロテインキナーゼの 作用を模倣し、潜伏p53を活性化することができる。それゆえ、このネガティブ 調節ドメインの共有結合または非共有結合修飾による中和はp53の活性化におい て重要なステップである。上述したように、配列番号1によりコードされるタン パク質はプロテインキナーゼのための2つの推定リン酸化部位を有する。サイク リン依存性キナーゼのコンセンサスモチーフはDNA結合ドメインに位置してお り、このことはDNA結合親和性が細胞周期の駆動力により微調整されうる可能 性を引き出し、推定上のフィードバック回路を構成する。この調節部位は、サイ クリン/サイクリン依存性キナーゼに対する分子ツールが、この回路により、こ のタンパク質の活性を変更してアポトーシスを実行するという、興味ある可能性 を提供するだろう。同様に、タンパク質トランス活性化ドメインのまさにC末端 にプロテインキナーゼAのモチーフが存在することは、トランス活性化の効力を モジュレートするための重要な標的となろう。 新規クラスの腫瘍サプレッサーをコードする上記の核酸分子は、in vitro機能 的トランスダクトリークローニング技術を用いて同定された。したがって、別の 態様において、本発明は、腫瘍サプレッサーの生物学的活性をもつタンパク質を コードする核酸分子を同定してクローニングする方法に関し、この方法は、 (i) 噛乳動物細胞を、 (a) cAMP誘導発現を可能にするように下記リポーター遺伝子に対して位置づ けられた少なくとも1つのcAMP応答エレメントを含む調節エレメントに 機能しうる形で連結された評価可能なリポーター遺伝子を含有する第1 のベクター、および (b) 哺乳動物細胞内での発現を可能にする調節エレメントに連結された核酸 分子を含有する発現ベクターのプール、 によりトランスフェクトし、 (ii)トランスフェクトした細胞を、ベクター中に存在する核酸分子の発現を可能 にする条件下で培養し、 (iii) トランスフェクション後に噛乳動物細胞において前記リポーター遺伝子の 発現をもたらすベクタープールを同定し、 (iv)場合により、ステップ(iii)で同定したベクタープールを再分割して、ステ ップ(i)から(iii)を繰り返し、そして (v) このようにして同定したベクタープールからベクター中に存在する核酸分子 を単離し、腫瘍抑制活性についてその産物を試験する、 ことを含んでなる。 この新規な機能的発現クローニング技術は、活性化された形態でcAMPシグナル 伝達経路を刺激し、ひいてはcAMP応答遺伝子の誘導をもたらすGタンパク質共役 受容体(GPCR)をコードする遺伝子の転写誘導に依存している。 本発明の方法では、前記GPCR遺伝子の転写誘導が機能的な腫瘍サプレッサーの 発現により与えられ、腫瘍サプレッサーの存在は内因性シグナル伝達経路のその 後の活性化により検出され、かつ下流の増幅物質(例えばcAMP応答リポーター遺 伝子)の活性化によりモニターすることができる。GPCR(その発現は腫瘍サプレ ッサーにより誘導される)は、それがcAMPシグナル伝達経路を活性化するという 意味で、採用する培養条件のもとで活性な、どのようなGPCRであってもよい。例 えば、GPCRは構成的に活性であってもよいし、コグネイト(cognated)リガンドに より活性化されてもよい。cAMPの産生にポジティブに関連しているGPCRの例はカ ルシトニン、副甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、βアドレナリン、および 脳下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)の受容体である。コグネ イトGPCR(その発現は腫瘍サプレッサーにより誘導される)を活性化するリガン ドまたは種々のリガンドの組合せを添加することにより、ある種のGPCRの転写を 引き出す腫瘍サプレッサーを特異的にターゲッティングしうる。好ましい実施形 態において、このリガンドはペプチドPACAPであり、かつGPCRはPACAP-1(PVR1)受 容体である(Spenglerら,Nature 365(1993),170-175)。 上述したように、リガンドの添加によりGPCRを活性化する必要はない。例えば 、これらは天然に存在する構成的に活性な天然型または変異型のGPCRでありうる 。 PVR1受容体発現の調節は、現在のところ解明されていない作用機構による内因 性遺伝子の活性化に依存する。この分子経路の輪郭描写はTSGによるトランス活 性化に用いられるPVR1受容体中のシス調節配列の決定を可能にするだろう。した がって、リポーター遺伝子へのこのようなTSG応答領域の融合は本方法の別の利 用可能性を提供するだろう。 上記方法の目的に適した細胞は、細胞内cAMPの上昇に対して、cAMP応答エレメ ントに連結された遺伝子の転写活性化をもたらす核応答を示すような細胞である 。このような細胞の例はブタ腎上皮LLC-PK1(ATCC CC101)およびヒト骨肉腫Saos- 2(ATCC HTB 85)細胞系の細胞である。適当な細胞系はcAMP依存性プロテインキナ ーゼA(PKA)の存在とcAMPの作用を仲介するcAMP応答エレメント(CRE)-結合タン パク質の存在により特徴づけられる。cAMPの結合後、PKAは活性化されてCRE-結 合タンパク質をリン酸化することができ、CRE-結合タンパク質は活性化されてcA MP応答遺伝子(すなわち、CRE-結合タンパク質の結合をもたらすCREと呼ばれる 短鎖調節配列を含む遺伝子)の転写を引き起こす。cAMPシグナル伝達経路の一般 的な概論については、例えば、Albertsら,Molecular Biology of the Cell,第 3版,Garland Publ.,Inc.N.Y.(1994)第15章を参照のこと。 その他の適当な細胞系は、当業者であれば、高トランスフェクション効率とcA MPに対する高い応答性とを兼ね備えた発現ベクターの効率的発現について細胞系 のパネルをスクリーニングすることで同定できよう。発現およびトランスフェ クションの効率は当技術分野で公知の慣用方法により最適化しうる。cAMPに対す る応答性は、例えば、cAMP産生にポジティブに関連している受容体(例えば、上 記のGPCR)をコードし発現するプラスミドでトランスフェクトし、cAMP介在細胞 応答の誘導を測定することで調べることができる。cAMP介在細胞応答は、例えば 、cAMPの生産量を測定するか、または内因性cAMP応答遺伝子および/または同時 トランスフェクトしたcAMP応答リポーター遺伝子の活性化をモニターすることで 判定することができる。適当な細胞系を同定する方法の詳細は例えば実施例1に 記載される。 第1ベクター上のリポーター遺伝子の発現を駆動する調節エレメント中に存在 するcAMP応答エレメントは、原則的に、シスに連結された配列の転写速度の増加 により細胞内cAMPの上昇レベルに応答することが知られているどのようなエレメ ントであってもよい。この種のcAMP応答エレメントは、例えば、ペプチドホルモ ン(例えば、ソマトスタチンおよび副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン)をコー ドする遺伝子より知られており、Spenglerら,Mol.Endocrinology 6(1992),19 31-1941;Combら,Nature 323(1986),353-356;Roeslerら,J.Biol.Chem.263( 1988),9063-9066;Karin,Trends Genet.5(1989),65-67およびLalli and Sass one-Corsi,J.Biol.Chem.269(1994),17359-17362に記載されている。好まし くは、cAMP応答エレメントは文献に開示されたcAMP応答エレメントのコンセンサ ス配列のヌクレオチド配列を有する。最も好ましくは、cAMP応答エレメントはヒ ト副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子(有利には、天然でその周囲にある 配列が隣接しているもの)から知られたものである。また、AP1エレメントのコ ンセンサス配列またはその縮重体を含むcAMP応答エレメントの使用も適している 。 cAMP応答エレメントを含みかつトランスフェクト細胞におけるリポーター遺伝 子の発現を指令する調節エレメントは、所定の細胞において発現を指令すること ができる任意の適当なエレメントでありうる。これらのエレメントは通常プロモ ーター配列を含み、特に最小プロモーター、好ましくは、 (a) 好ましくはSp1依存性アクチベーターと共同した、TATAまたはCAATボックス 、または (b) Sp1依存性アクチベーターと共同した開始エレメント(Inr)、 を含むものである。好ましい実施形態では、調節エレメントはマウス乳癌ウイル ス(MMTV)プロモーターに由来するものである。 第1ベクター中に存在するリポーター遺伝子は、その発現がトランスフェクト 細胞において検出され得る任意の適当なリポーター遺伝子であってよい。好まし くは、リポーター遺伝子として、その発現を容易に検出できるもの、例えば、光 度分析または蛍光分析、アイソトープ標識または染色反応により検出できるもの が選ばれる。本発明の方法で用いるのに好ましいリポーター遺伝子の例は、クロ ラムフェニコール-アセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(β -Gal)、分泌型アルカリホスファターゼ(SEAP)または成長ホルモン(GH)をコード するものである。ルシフェラーゼをコードする遺伝子を使用することが最も好ま しい。 本発明の方法のステップ(i)(b)における「発現ベクターのプール」という用語 は、トランスフェクト細胞での発現に適した、同一のまたは同一でない多数のベ クター分子として理解されるべきである。このようなベクター分子は連結された 配列の発現をトランスフェクト細胞において指令することができる調節エレメン トを含む。さらに、これらのベクター分子は、前記調節エレメントに連結された 、遺伝子産物をコードするがベクタープールの各メンバー間で同一でも異なって いてもよい核酸配列を含む。前記ベクタープールのベクターはさらに、トランス フェクト真核細胞内での複製を確実にする配列だけでなく原核宿主細胞内での複 製を確実にする配列を含む。このような発現ベクターのプールは、例えば、トラ ンスフェクト細胞において発現させるのに適した発現ベクターにクローニングさ れたcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーでありうる。 これに関連して、適当な発現ベクターは当技術分野で知られており、例えば、 Okayama-Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、p cDNA3(In-vitrogene)、pSPORT1(GIBCO BRL)などがある。 好ましい実施形態において、ベクタープールのベクター中に存在する核酸分子 はcDNA分子である。特に、前記cDNAはあらゆる生物または組織から、つ まりあらゆる動物、細菌、真菌もしくは植物の細胞からまたはウイルスから、得 られるRNAより調製できる。最も好ましくは、RNAは哺乳動物細胞から得ら れるものである。こうした場合に、哺乳動物の特定の組織または器官(例えば、 腸、胃、肺、副腎、腎臓、乳腺、前立腺、精巣)からRNAを調製することが好 ましく、最も好ましくは、前記組織は下垂体、脳または卵巣である。 本発明の方法のステップ(iii)でベクタープールが同定されたら、そのように 同定されたベクタープールのもとのプールから、ベクタープールのベクター中に 存在する核酸分子を単離し、コードされる産物を特性づけることが可能であり、 また、もとのベクタープールをさらに再分割して、例えば、それが多数の異なる インサートを含むベクターからなる場合は、プールあたりの異なるベクターの数 を減らし、もとのプールの再分割部分を用いてこの方法を繰り返すことができる 。プールの複雑性に応じて、これを数回おこなうことができ、好ましくは、本方 法のステップ(iii)で同定されたベクタープールがそれらのインサート核酸分子 に関して異なるベクターを限定数だけ含むようになるまでおこなう。通常、細胞 をトランスフェクトするためにステップ(i)で使用するベクタープールは異なる ベクターを保有する細菌の混合物から単離されたものであり、したがって、それ は一種のライブラリーを構成する。それゆえ、本方法のステップ(iii)の目的の ためのベクタープールの再分割は、インサート核酸配列に関してのベクターの多 様性がもとのライブラリーよりも再分割部分において低くなるように、細菌を含 む前記ライブラリーを再分割することにより達成できる。その後、ライブラリー のこれら再分割部分から発現ベクターを単離することができる。これらの単離物 はもとのベクタープールの再分割部分を代表する。 本発明の方法の(iii)で同定されたベクタープールのベクター中に存在する核 酸分子は、例えば適当な制限酵素で消化することによりベクターから単離するこ とができ、さらに、例えば制限マッピング、塩基配列決定などにより特性づける ことができる。その後、このようにして得られた核酸分子の発現産物の腫瘍抑制 活性について試験する。これをおこなうには、例えば、TSG発現ベクターでトラ ンスフェクトした形質転換細胞系のコロニー形成の抑制を測定する。さらに、誘 導可能な発現系を用いて、誘導性TSGで安定にトランスフェクトした腫瘍細胞の 増殖の抑制を測定してもよい。TSG発現の誘導後、腫瘍細胞の増殖をモニターし 、 TSGを発現しない腫瘍細胞と比較する。誘導可能な発現系の例はテトラサイクリ ン-調節遺伝子発現であるが、他のものも同様に使用でき、例えば重金属で誘導 可能な発現系がある。推定上のTSGの腫瘍抑制活性は、安定にトランスフェクト した腫瘍細胞のTSGの誘導後に、足場非依存性細胞増殖を抑制するその能力をア ッセイすることでも検出できる。さらに、TSGの発現下での腫瘍発生の低下を、 例えば、誘導性TSGを保有する腫瘍細胞をヌードマウスに植え込み、TSG発現の誘 導後に腫瘍発生をモニターすることで調べることができる。腫瘍細胞の増殖を抑 制するアポトーシスプログラムを強化するTSGの能力は、例えば、誘導したTSG発 現細胞がMTTを変換できないこと、そのサイズの縮小、位相差顕微鏡でのその存 在量、その膜の水庖化(blebbing)、プレートから離脱する前の細胞の集団化によ り証明される。また、細胞死はDNAの規則的なサブユニットのはしご(ladder) への断片化を伴うことがある。上記の方法はすべて当技術分野で公知であり、本 出願の実施例および/またはZhouら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91(1994),4 165-4169;Chenら,Science 250(1990),1576-1580;Bakerら,Science 249(1990) ,912-915;Dillerら,Mol.Cell.Biol.10(1990),5772-5781;Caseyら,Oncoge ne 6(1991),1791-1797;Chengら,Cancer Research(1992),222-226;Wang and P rives,Nature 376(1995),88-91;Mercerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87(1 990),6166-6170;Antelmanら,Oncogene 10(1995),697-704;Gossenら,Trends Biotech.12(1994),58-62;Gossen and Bujard,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8 9(1992),5547-5551に記載されている。 さらに、同定された核酸分子の発現産物を特性づけるには、それらを原核宿主 細胞において発現させて、それらを精製する。続いて、酵素活性および/または 他の生物学的活性についてin vitroアッセイで調べる。真核宿主細胞またはin v itro転写・翻訳系で発現させると、起こりうるリン酸化および/またはグリコシ ル化パターンなどの更なる情報が得られる。 本発明の実施例において実証されるように、上記の方法は腫瘍サプレッサーの 生物学的活性をもつタンパク質をコードする核酸分子を同定し単離するのに適し ている。 かくして、別の態様において、本発明は、本発明の方法により得られる、腫瘍 抑制活性を有するタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子に関する 。このような核酸分子の例は上記したものである。好ましい実施形態において、 本発明の核酸分子はDNA分子であり、cDNA分子が最も好ましいものである 。 本発明の核酸分子はあらゆる生物、すなわち、動物、植物、真菌、細菌または ウイルスに由来するものである。好ましい実施形態では、本発明の核酸分子は哺 乳動物、最も好ましくはヒトまたはマウスに由来するものである。 本発明の方法により同定され単離された核酸分子を用いて、同一のまたは異な る生物から同一のまたは関連した分子を単離することが可能であり、例えば、上 記方法により単離した核酸分子をプローブとして用いてゲノムまたはcDNAラ イブラリーをスクリーニングする。 かくして、本発明はまた、上記した本発明の核酸にハイブリダイズしかつ腫瘍 抑制活性を有するタンパク質をコードする核酸分子に関する。本発明に従って、 腫瘍抑制活性を有するタンパク質をコードする別の核酸分子が、配列番号1のコ ーディング配列を含む核酸分子をプローブとして用いて単離された。前記核酸分 子のヌクレオチド配列は配列番号16に示してあり、これは配列番号17に示したア ミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。 配列番号1と配列番号16のコーディング配列間の全体的な同一性は、ヌクレオ チドレベルで74.6%であり、アミノ酸レベルで68.5%であった。実施例9に記載す るように、このタンパク質のアミノ酸配列(配列番号17)中にいくつかのドメイ ンが同定され、それぞれが配列番号2中にその同等物を有している。実施例12〜 15に記載するように、配列番号16の核酸配列によりコードされるタンパク質は、 上記の配列番号1のヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質の特性と全 く同じ特性を示し、したがって、上記の核酸分子およびタンパク質の供給により 樹立されたTSGの新規クラスの一メンバーを構成する。かくして、好ましい実施 形態において、本発明は、配列番号17に示したアミノ酸配列をコードするヌクレ オチド配列を含むか、または配列番号16に示したヌクレオチド配列を含む核酸分 子に関する。 さらに、本発明は、上記した本発明の核酸分子にハイブリダイズし、かつその 腫瘍抑制活性を消失した上記核酸分子によりコードされるポリペプチドの変異体 をコードする核酸分子に関する。 さらに、本発明は、上記いずれかの核酸分子またはその一部の相補鎖を表すか 、または該相補鎖を含んでなる核酸分子に関する。この種の分子はデオキシリボ 核酸であってもリボ核酸であってもよい。このような分子は例えばアンチセンス RNAを含む。上記の核酸分子に相補的な、本発明のこの好ましい実施形態の核 酸分子はまた、例えばアンチセンスまたは三重らせん効果による、TSG発現の抑 制のために、あるいは本発明の核酸分子を含む遺伝子のプレ-mRNAを特異的 に開裂する適当なリボザイムの構築(例えば、EP-B1 0 291 533、EP-A1 0 321 2 01、EP-A2 0 360 257を参照のこと)のために使用することもできる。適切な標 的部位および対応するリボザイムの選択は、例えばSteinecke,Ribozymes,Meth ods in Cell Biology 50,Galbraithら編,Academic Press,Inc.(1995),449- 460に記載されるようにおこなう。 本発明はまた、上記の核酸分子のいずれか一つまたはその相補鎖に特異的にハ イブリダイズする、長さが少なくとも15ヌクレオチドの核酸分子に関する。前記 核酸分子は、例えば、本発明のTSGまたはそのmRNAを検出するためのプロー ブとして使用できる。好ましい実施形態では、前記核酸分子を標識する。核酸の 検出法は当技術分野で公知であり、例えば、サザンおよびノーザンブロッティン グ、PCR、プライマー伸長などがある。別の好ましい実施形態では、前記核酸分 子をTSG発現の抑制のために使用する。 さらに、本発明は、本発明の核酸分子を含有するベクターに関する。このよう なベクターの例はpUCl8、pBR322、pBlueScriptである。 好ましい実施形態において、ベクター中に存在する核酸分子は原核または真核 宿主細胞内での発現を可能にする調節エレメントに機能しうる形で連結される。 原核宿主細胞内での発現を可能にしうる調節エレメントとして、例えば大腸菌の lacまたはtrpプロモーターがあり、真核宿主細胞内での発現を可能にする調節エ レメントの例は、酵母のAOX1もしくはGAL1プロモーター、または哺乳動物や他の 動物細胞用のCMV-、SV40-、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エン ハンサー、SV40-エンハンサーもしくはグロビンイントロンである。転写開 始に応答するエレメントのほかに、この種の調節エレメントは核酸分子の下流に SV40ポリA部位またはtkポリA部位などの転写終結シグナルを含むことができる 。 本発明はまた、本発明のベクターを含有する宿主細胞に関する。これに関して 、宿主細胞は細菌、真菌、植物または動物の細胞でありうる。好ましい実施形態 では、宿主細胞は噛乳動物細胞である。 更なる実施形態において、本発明は、腫瘍サプレッサーの生物学的活性を有す るポリペプチドの産生方法に関し、この方法は、上記の宿主細胞をポリペプチド の発現を可能にする条件下で培養し、産生されたポリペプチドを培養物から回収 することを含んでなる。かかる方法は、例えば、LaVallie and McCoy,Curr.Op in.Biotech.6(1995),501-506;Wong,Curr.Opin.Biotech.6(1995),517-52 2;Romanos,Curr.Opin.Biotech.6(1995),527-533;Keranen and Penttila,C urr.Opin.Biotech.6(1995),534-537;Williamsら,Curr.Opin.Biotech.6( 1995),538-542;Davies,Curr.Opin.Biotech.6(1995),543-547;Holmgren,A nnu.Rev.Biochem.54(1985)237-271またはLaVallieら,Bio/Technology 11 (1993)187-193に記載されている。 さらに、本発明は、本発明の核酸分子によりコードされた、または上記の方法 により産生された、腫瘍抑制活性をもつポリペプチドに関する。 これに関して、本発明のポリペプチドは当技術分野で公知の慣用方法によりさ らに修飾され得ることも理解されよう。本発明のポリペプチドを提供することに より、その生物学的活性(すなわち、その腫瘍抑制活性)に関連した部分を決定 することも可能である。これは、腫瘍抑制にとって非常に重要な本発明の腫瘍抑 制タンパク質に由来するアミノ酸配列と、同一または異なるタンパク質に由来す る他の機能性アミノ酸配列(例えば、核局在化シグナル、トランス活性化ドメイ ン、DNA結合ドメイン、ホルモン結合ドメイン、タンパク質タグ(GST、GFP、 h-mycペプチド、Flag、HAペプチド)とを含むキメラタンパク質の構築を可能に する。 本発明はまた、本発明の核酸分子によりコードされた、または上記の方法によ り産生された、腫瘍抑制活性を消失している上記ポリペプチドの変異体であるポ リペプチドに関する。 本発明はさらに、腫瘍抑制活性をもつ本発明のポリペプチドを特異的に認識す る抗体に関する。すなわち、本発明は、本発明のポリペプチドが機能的な腫瘍サ プレッサーであるか否か、またはそれらが腫瘍抑制活性を消失している変異体で あるか否かにかかわりなく、本発明のポリペプチドを特異的に認識する抗体に関 する。 好ましい実施形態において、この抗体は腫瘍抑制活性をもつ本発明のポリペプ チドを特異的に認識するが、腫瘍抑制活性を消失している前記ポリペプチドの変 異体であるポリペプチドを認識しない。 別の好ましい実施形態において、この抗体は腫瘍抑制活性を消失している変異 体を特異的に認識するが、腫瘍抑制活性を有する対応のポリペプチドを認識しな い。 好ましい実施形態において、前記抗体はモノクローナル抗体である。 抗腫瘍抑制タンパク質抗体は、精製した本発明の腫瘍抑制タンパク質またはそ れから誘導される合成断片を抗原として用いて、公知の方法で調製することがで きる。モノクローナル抗体は、例えば、マウスミエローマ細胞を免疫哺乳動物か らの脾細胞に融合させることを含む、Kohler and Milstein,Nature 256(1975) ,495およびGalfre,Meth.Enzymol.73(1981),3に記載されるような技術によ り調製することができる。抗体はモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ま たは合成抗体、あるいはFab、FvまたはscFvフラグメントなどの抗体フラグメン トであってよい。さらに、前記腫瘍抑制タンパク質に対する抗体またはそのフラ グメントは、例えば、Harlow and Lane“Antibodies,A Laboratory Manual”, CSH Press,Cold Spring Harbor,1988に記載される方法を用いても得られる。 こうした抗体は、例えば、本発明のタンパク質の免疫沈降および免疫局在化に使 用するだけでなく、例えば組換え生物における前記タンパク質の存在をモニター するために、また、本発明のタンパク質と相互作用する化合物を同定するために 使用できる。例えば、BIAcoreシステムで使用されるような表面プラズモン共鳴 を用いて本発明のタンパク質のエピトープに結合するファージ抗体の効率を高め ることができる(Schier,Human Antibodies Hybridomas 7(1996),97-105;Malmb org,J.Immunol.Methods 183(1995),7-13)。 さらに、本発明は、本発明の前記核酸分子、ベクター、ポリペプチドおよび/ または抗体の少なくとも1種を単独でまたは組み合わせて、場合により製薬上許 容される担体または賦形剤と共に、含有する医薬組成物に関する。適当な製薬上 の担体の例は当技術分野で周知であり、リン酸緩衝溶液、水、エマルジョン(例 えば、油/水型エマルジョン)、種々のタイプの湿潤剤、無菌溶液などである。 このような担体を含有する組成物は慣用方法で製剤化することができる。医薬組 成物は適切な用量で被験者に投与され、さまざまな経路(例えば、静脈内、腹腔 内、皮下、筋肉内、局所または皮内経路)で投与することができる。投与レジメ は医師および他の臨床的要因により決定されよう。医療分野では公知であるよう に、患者一人の投与量は患者の身長・体重、体表面積、年齢、投与される個々の 化合物、性別、投与時間および投与経路、一般的な健康状態、同時に投与される 他の薬剤を含めて、多くの要因に左右される。一般的に、医薬組成物の規則的投 与としてのレジメは1日あたり1μg〜10mg単位の範囲である。このレジメが連 続注入である場合は、1μg〜10mg単位/kg体重/分の範囲であろう。定期的な 評価により進展をモニターすることができる。投与量は変わるだろうが、DNA の静脈内投与の好適な投与量は約106〜1022コピーのDNA分子である。本発明 の組成物は局所に投与しても全身に投与してもよい。投与は一般に非経口的、例 えば静脈内に行われるが、標的部位に直接、例えば内部または外部標的部位にバ イオリスティック・デリバリー(biolistic delivery)で、または動脈内の部位に カテーテルでDNAを投与してもよい。 本発明の医薬組成物はいろいろな疾病、例えば、がん(すなわち、良性または 悪性の腫瘍)、後天性または先天性神経障害、神経変性および関連障害、の予防 または治療に使用することができる。腫瘍の予防または治療に関して、前記腫瘍 は好ましくは内分泌または神経組織、すなわち、腸、胃、肺、副腎、腎臓、乳腺 、前立腺、精巣に由来するものであり、最も好ましくは前記組織は結腸、膵臓、 甲状腺、下垂体、脳、乳房または卵巣である。 第一の態様において、腫瘍抑制活性をもつ非変異型のタンパク質をコードする ヌクレオチド配列を含む医薬組成物を遺伝子治療に使用することが可能である。 上述したように、腫瘍または他の疾病は、細胞が腫瘍抑制遺伝子の機能的コピー 数を失うときにしばしば発生する。このような場合に、機能的コピー数の対応遺 伝子の誘導はその状況を改善するのに役立つ。例えば、神経系の細胞への遺伝子 導入に関連する研究はニューロサイエンスにおいて最も進展している分野の一つ である。ex vivoまたはin vivo技術により神経系の細胞に治療用遺伝子を導入す ることに基づく遺伝子治療は、遺伝子導入の最も重要な応用例の一つである。神 経系の遺伝子治療は3つの一般的な目的(すなわち、遺伝病、後天性変性脳障害 、および悪性新生物のコントロール)のために適用される。 遺伝病において、突然変異を起こした核遺伝子の正常なまたは機能的に適切な 対立遺伝子の導入は遺伝子置換療法に相当し、この療法は主に一遺伝子性の劣性 疾患に適用可能である。 例えば、神経生物学の分野では、胚形成中の細胞増殖と細胞死のバランスが中 枢神経系(CNS)の形成において最重要事項であると久しく認識されてきた。細胞 分裂周期とプログラムされた細胞死を引き起こす分子機構が最近規定されたこと により、細胞周期の調節をCNS-パターン形成、神経分化および組織形成と調和さ せて働かせる分子相互作用を研究する機会が提供された。細胞分裂周期が発生的 に制御される分子シグナルにより停止または進行するように調節されるばかりで なく、この周期を作動させる遺伝子産物も神経分化とアポトーシスの過程に影響 を与えうることは明らかなように思える。ニューロン数を調節するための神経栄 養戦略は、多くの他の脊椎動物細胞型(やはり生存のために他の細胞からのシグ ナルを必要とする)の数を調節するのに役立つ一般的な機構の一例にすぎない。 こうした生存シグナルは内因性細胞自殺プログラム(そのタンパク質成分は明ら かに大部分の細胞型において構成的に発現される)を抑制することにより働くよ うである。TSGはこの領域でのメジャーな働き手としてここ数年の間に出現した ものである。Rbを欠損しているマウスは細胞分裂を止めることができないため大 量のニューロン細胞死を示した。p53-欠損マウスのサブセット(8〜16%)は脳ヘル ニアを示し、高比率(40%)のBrcal-欠損マウス胎児はさまざまな程度の二分脊椎 無脳症を呈した。さらに、これらの動物は急速増殖と過度の細胞死の徴候を伴う 感覚上皮の崩壊を示した。それゆえ、TSGはCNS形成に密接に関与しているようで あり、増殖抑制エレメントと神経栄養的支援とのバランスがニューロン構成体 の形成において鍵となる現象であるらしい。これに関連して、腫瘍抑制活性を示 すタンパク質をコードする本発明の核酸分子はこれらの過程に関与している可能 性がある候補物質である。重要なことは、新規腫瘍サプレッサーをコードする配 列番号1および配列番号16のヌクレオチド配列が成熟した脳のさまざまな脳領域 から単離された全RNAにハイブリダイズすることである。これは、配列番号1 または配列番号16によりコードされるタンパク質のようなアポトーシスの促進物 質とニューロトロフィンのような保護物質との微妙なバランスが成熟脳の機能的 完全性を守っているという見方を切り開くものである。アポトーシス細胞死の発 生率の増加を示すためにアルツハイマー病やハンチントン舞踏病を含む神経変性 疾患のリストの漸増が報告されている。この見解によれば、配列番号2または配 列番号17に示したアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸分子または 本発明の関連タンパク質をコードする核酸分子の遺伝子ターゲッティングが、い ろいろな状況下でのアポトーシス細胞死を軽減しかつニューロン細胞数とニュー ロン生存能を保護することを目的とした神経栄養治療に対する感受性を高める可 能性がある。 さらに、最近の報告から、p53-依存性アポトーシスは電離放射線、フルオロウ ラシル、エトポシド、ドキソルビシンなどの一般的な抗腫瘍剤の細胞傷害作用を モジュレートすることが示された。野生型p53を欠失している細胞はこれらの薬 剤に対して耐性であるが、野生型p53を発現している細胞はそれらに感受性で、 アポトーシスによる細胞死を受ける。こうした観察は、p53の突然変異が薬剤耐 性の遺伝的基礎を提供しうるというエキサイティングな展望をもたらす。p53の 存在下で、発がん遺伝子を発現する細胞は腫瘍を形成することができるが、アポ トーシスへの感受性が増加することにより細胞の生存は限られる。反対に、p53 の欠損は、おそらく本来備わっている老化プログラムを排除することにより、不 死化と発がんに直接寄与する。その結果、p53に対する選択がしばしばがんの進 行において遅くまで起こる。抗がん剤はこれらの感受性細胞に固有のアポトーシ スプログラムを単に活性化するだけである。これらの観察から、腫瘍抑制遺伝子 中に突然変異を有する腫瘍に正常な腫瘍抑制機能を再導入すれば、放射線または 化学療法(肺がん細胞系でシスプラチンについて成功することが証明されたアプ ローチ)後にアポトーシスが高まると予想される。 本発明の核酸分子の導入は形質転換細胞系においてアポトーシスによる細胞死 を引き起こす(一部はp53がもたらすアポトーシス細胞死を超えた)ことが観察 されたので、これらの新規TSGは遺伝子治療実験での非常に興味のもてる強力な 選択肢を提供する。p53と配列番号1または配列番号16によりコードされるタン パク質は同様の応答(すなわち、細胞周期調節および細胞死)を記述的レベルで 引き起こすが、その根底にある分子経路は違っている。この観察は、配列番号1 および配列番号16によりコードされるタンパク質のDNA結合ドメインが典型的 なジンクフィンガー構造をとり、p53の中央のDNA結合ドメインとは無関係で あるという事実に由来する。したがって、配列番号1および配列番号16によりコ ードされるタンパク質および関連タンパク質は遺伝子治療戦略においてp53に取 って代わるだろう。重要なことは、p53が一部の細胞型である種の条件下に増殖 停止の引き金を引くだけで、細胞死を誘導しないように見えることである。この 見解に合致して、本発明者らは、p53-陰性細胞系Saos-2(ヒト、骨肉腫)におけ る誘導性p53機能の回復が優先的に増殖および比較的弱いアポトーシス応答をも たらすが、Saos-2細胞は配列番号1および配列番号16によりコードされるタンパ ク質の発現下では非常にアポトーシス応答が高まることを実証した。このアポト ーシス応答の差は次のような考えを強調する。すなわち、本発明のこのタンパク 質および他のTSGとp53とがアポトーシスに対する異なる分子経路を提供し、アポ トーシス能は組織特異的なコード化遺伝的プログラムであるというエキサイティ ングな見方を切り開く。最後に、本発明により提供されるような組織特異的TSG は発がん細胞をアポトーシス細胞死に導く特定の性質をコードしており、そのよ うに行動するその能力は配列番号1および配列番号16によりコードされるタンパ ク質についてSaos-2細胞で例示したようにp53をしのいでいる。 この場合も重要なことは、腫瘍抑制遺伝子の例としてのp53機能の理解が、p53 の突然変異と患者の予後の悪さとを結び付ける土台を示唆していることである。 すなわち、p53の突然変異(ヒトがんにおいて観察される最も一般的な変異の50% を占める)は成功を収めるがん治療の顕著な障害となりうる。例えば、p53の突 然変異は、B細胞慢性リンパ球白血病患者が化学療法後に快方に向かう 確率を劇的に低下させる。同様に、腫瘍サンプル内での本発明の核酸分子により コードされるタンパク質および関連タンパク質の状態(status)の評価は、外科的 切除の程度および必要性、また補助療法の必要性を決定するためのパラメーター として役に立つだろう。より一般的な見解では、アポトーシス誘導能をもつタン パク質をコードする本発明の核酸分子の状態は、個々の腫瘍検体の治療優先順位 を開発するための決定的な規準になるだろう。別の重要な面では、上記の医薬組 成物を免疫療法に使用することができる。TSGの十分に特徴づけられた突然変異 はまた、免疫療法やがんワクチン(変異型タンパク質に対して生体の免疫系に注 意を喚起する)の可能性をも示唆する。制御できない自己免疫反応性により野生 型機能を弱めることは更なる腫瘍形成の危険性を劇的に高めることとなるので、 野生型に対する交差反応性は起こりうる望ましくない副作用であると見なさなけ ればならない。これに関連して、配列番号1または配列番号16で表されるような 、組織特異的TSGを用いることが有利である。というのは、この方法では上記の 望ましくない副作用の危険性を大幅に低下できるからである。本発明の核酸分子 を含有するベクターは細胞のゲノムに安定した状態で組み込まれても、染色体外 に維持されてもよい。例えば、Calos,Trends Genet.12(1996),463-466を参照 のこと。また、ある種の細胞、組織または器官をトランスフェクトするために先 行技術において開示されたウイルスベクターを使用してもよい。適当な遺伝子送 達系としては、リポソーム、受容体介在送達系、裸のDNA、特にヘルペスウイ ルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルスなどのウイルスベ クターが挙げられる。遺伝子治療のために体内の特定部位に核酸分子を送達する ことは、Williamsの方法(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88(1991),2726-2729) のようなバイオリスティック・デリバリー・システムを使っても実施できる。 核酸分子を用いて細胞をトランスフェクトする標準方法は、分子生物学の分野 の当業者には公知である。例えば、WO 94/29469を参照のこと。腫瘍の発生を予 防したり低下させる遺伝子治療は、TSGをコードする本発明の核酸分子を患者に 直接投与するか、またはex vivoで本発明の核酸分子により細胞をトランスフェ クトし、そのトランスフェクト細胞を患者に注入することで実施できる。さらに 、生殖系統の細胞への遺伝子導入に関する研究は生殖生物学の最も進展しつつあ る 分野の一つである。ex vivoまたはin vivo技術により治療用遺伝子を細胞に導入 することに基づく遺伝子治療は遺伝子導入の最も重要な応用例の一つである。in vitroまたはin vivo遺伝子治療に適したベクターおよび方法は文献に記載され ており、当業者に公知である。例えば、WO94/29469、WO97/00957、またはSchape r,Current Opinion in Biotechnology 7(1996),635-640およびそこに引用され た文献を参照のこと。本発明の医薬組成物中に含まれる核酸分子は、細胞に直接 導入するように、または前記核酸分子を含むリポソームもしくはウイルスベクタ ー(例:アデノウイルス、レトロウイルス)により導入するように、デザインす ることができる。好ましくは、前記細胞は生殖細胞系、胚性細胞、または卵細胞 であり、トランスジェニック非ヒト動物の作製を意図する場合は、それらから誘 導される。 腫瘍サプレッサーの生物学的活性をもつタンパク質をコードする、導入された 核酸分子は前記細胞に導入後前記タンパク質またはアクチベーターを発現し、好 ましくは前記細胞の生存期間中その状態のままで存在する。例えば、腫瘍サプレ ッサーの生物学的活性をもつ前記タンパク質を安定に発現する細胞系は当業者に 公知の方法に従って遺伝子工学的に作製される。ウイルスの複製起点を含有する 発現ベクターを用いるのではなく、本発明の組換えDNA分子またはベクターと 、同一もしくは別個のベクターに担持される選択マーカーにより宿主細胞を形質 転換する。外来DNAの導入後、作製した細胞を富化培地中で1〜2日間増殖さ せ、その後選択培地に変える。組換えプラスミド中の選択マーカーは選択に対す る耐性を賦与し、プラスミドを染色体に安定的に組み込んだ細胞の選択を可能に する。前記細胞を増殖させてフォーカスを形成させ、次にクローニングして細胞 系へと増やすことができる。この方法は、腫瘍サプレッサーの生物学的活性をも つタンパク質を発現する細胞系を遺伝子工学的に作製するために有利に用いられ る。 多くの選択系を使用することができ、例えばtk、hgprtまたはaprt細胞におい て、それぞれ単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(Wigler,Cell 11(1977) ,223)、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalsk a,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 48(1962),2026)、およびアデニンホスホリボ シルトランスフェラーゼ(Lowy,Cell 22(1980),817)を使用できる が、これらに限らない。また、代謝拮抗物質耐性を選択の土台として使用するこ とができ、例えば、dhfr、メトトレキセート耐性を賦与する(Wigler,Proc.Nat l.Acad.Sci.USA 77(1980),3567;O'Hare,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(1 981),1527)、gpt、ミコフェノール酸耐性を賦与する(Mulligan,Proc.Natl.A cad.Sci.USA 78(1981),2072);neo、アミノグリコシドG-418耐性を賦与する(C olberre-Garapin,J.Mol.Biol.150(1981),1);hygro、ハイグロマイシン耐性 を賦与する(Santerre,Gene 30(1984),147);またはピューロマイシン(pat,ピ ューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ)がある。追加の選択遺伝子、例 えば、trpB、トリプトファンの代わりにインドールを細胞に利用させる;hisD、 ヒスチジンの代わりにヒスチノールを細胞に利用させる(Hartman,Proc.Natl. Acad.Sci.USA 85(1988),8047);およびODC(オルニチンデカルボキシラーゼ) 、オルニチンデカルボキシラーゼ阻害剤2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチンDF MOに対する耐性を賦与する(McConlogue,1987,In:Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory編)も記載されている。 別の面において、医薬組成物は、本発明の核酸分子によりコードされる機能性 タンパク質、または種々の疾病において見いだされるこれらのタンパク質の変異 体に相当するタンパク質を含むことが可能である。これらの組成物は関連遺伝子 の機能的コピー数を失っている細胞の正常な腫瘍抑制活性を回復させるのに有用 であり、また、すでに上述したように免疫療法にも有用である。 さらに、本発明の腫瘍サプレッサーの変異体をコードするRNAに特異的にハ イブリダイズするアンチセンス・オリゴヌクレオチドを含有するか、または前記 変異体を特異的に認識するが機能性野生型を認識しない抗体を含有する医薬組成 物の使用は、細胞中の変異体の濃度を減らす必要がある場合に考えられる。本発 明の医薬組成物はいろいろな種類の疾病の治療に用いることができる。したがっ て、本発明はまた、有効量の本発明の医薬組成物を被験者に投与することを含ん でなる、腫瘍または神経障害を治療または予防するための、あるいは腫瘍または 神経障害の再発を遅らせるための方法に関する。 さらに、上記の本発明による核酸分子、ベクター、ポリペプチドおよび/また は抗体のいずれか一つまたは組合せを用いて、被験者の疾病を治療する、予防す るおよび/または疾病の再発を遅らせるための医薬組成物を調製することができ る。好ましくは、前記疾病は腫瘍または神経障害で、例えば上記したような腫瘍 または神経障害である。 本発明はまた、上記の本発明による核酸分子、ベクター、ポリペプチドおよび /または抗体の少なくとも1種を単独でまたは組合せで含み、場合により適当な 検出手段を含有する診断用組成物に関する。 かかる診断用組成物は、腫瘍サプレッサーをコードするmRNAの存在を検出 することにより腫瘍サプレッサーの発現を検出する方法に使用することができ、 この方法は、細胞からmRNAを取得し、得られたmRNAを、腫瘍サプレッサ ーをコードする核酸分子と特異的にハイブリダイズすることができる少なくとも 15ヌクレオチドの核酸分子からなるプローブとハイブリダイゼーション条件の下 で接触させ、前記プローブとハイブリダイズしたmRNAの存在を検出し、それ により細胞による前記腫瘍サプレッサーの発現を検出することを含んでなる。 さらに、本発明は、サンプル(例えば細胞サンプル)中の本発明の腫瘍サプレ ッサーの存在を検出する方法を含み、この方法は、被験者から細胞サンプルを取 得し、前記サンプルを上記抗体の1種と、腫瘍サプレッサーへの抗体の結合を可 能にする条件下で接触させ、そのように結合した抗体の存在を例えばイムノアッ セイ法(例えばラジオイムノアッセイまたはエンザイムイムノアッセイ)を用い て検出することを含んでなる。さらに、腫瘍抑制活性をもつポリペプチドを特異 的に認識するがその不活性形態を認識しない抗体、あるいは不活性形態を特異的 に認識するが腫瘍抑制活性をもつ対応のポリペプチドを認識しない抗体を用いる ことにより、機能性腫瘍サプレッサーであるポリペプチドを特異的に検出して、 その腫瘍抑制活性が消失したまたは改変された変異体から区別することができる 。本発明の抗体は本発明のポリペプチドを精製し、種々の供給源からそれらを単 離するためのアフィニティークロマトグラフィーにも使用することができる。 本発明はまた、腫瘍または腫瘍サプレッサー対立遺伝子の発現と関連した障害 にかかりやすい被験者の素質を診断する方法に関し、この方法は、腫瘍または腫 瘍サプレッサーの発現と関連した障害の罹患者からDNAを単離し、単離したD NAを少なくとも1種の制限酵素で消化し、得られたDNA断片をサイズ分画用 ゲル上で電気泳動的に分離し、得られたゲルを、腫瘍サプレッサーをコードする DNAと特異的にハイブリダイズしかつ検出可能なマーカーで標識した上記の核 酸プローブと接触させ、標識プローブにハイブリダイズしたゲル上の標識バンド を検出して、腫瘍または腫瘍サプレッサーの発現と関連した障害の罹患者のDN Aに特異的なバンドパターンを作製し、上記ステップに従って被験者のDNAを 調製してゲル上に検出可能な標識バンドを作製し、そして腫瘍または腫瘍サプレ ッサーの発現と関連した障害の罹患者のDNAに特異的なバンドパターンを被験 者のDNAと比較して、そのパターンが同一であるか異なるかを判定し、それに よりそのパターンが同一である場合は腫瘍または前記障害にかかりやすい素質で あると診断することを含んでなる。本発明の検出可能なマーカーは32Pや35Sの ような常用されている放射性標識で標識することができるが、ビオチンや水銀の ような他の標識を使用してもよい。当業者に公知のさまざまな方法を用いて検出 可能なマーカーを標識しうる。例えば、DNAおよびRNA配列はランダムプラ イマー法を使って32Pや35Sで標識できる。適当な検出可能マーカーが得られた ら、検出可能マーカーと関心のあるサンプルとを接触させるために当業者に公知 のいろいろな方法を用いることができる。例えば、DNA−DNA、RNA−R NAおよびDNA−RNAハイブリダイゼーションを標準方法によりおこなう。 核酸の検出方法は当技術分野で公知であり、例えば、サザンおよびノーザンブロ ッティング、PCR、プライマー伸長などがある。さらに、被験者から得られた mRNA、cRNA、cDNAまたはゲノムDNAの塩基配列を解析して、腫瘍 またはTSGもしくはその変異体の発現と関連した障害におけるTSG突然変異の特徴 的なフィンガープリントでありうる突然変異を同定することができる。本発明は さらに、このようなフィンガープリントを被験者由来のDNAまたはRNAのRF LP(制限断片長多型)により生成する方法(場合により、分析に先立ってDNA またはRNAを増幅してもよく、かかる増幅方法は当技術分野で公知である)を 包含する。RNAのフィンガープリントは、例えば、被験者由来のRNAサンプ ルを適当なRNA酵素(例えば、RNase T1、RNase T2など)またはリボザイムで 消化し、例えば電気泳動分離して、上記のようにRNA断片を検出することに よりおこなう。 さらに、「キラー遺伝子」をデザインするために本発明のTSGおよびタンパク 質を使用することが可能である(Da Costaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93(1 996),4192-4196)。腫瘍形成は細胞増殖と細胞死を制御している遺伝子の変異が 引き金となることが明らかになっている。遺伝子治療の目的は腫瘍抑制遺伝子の 変異体を発現している腫瘍細胞を特異的に殺すことにある。要点を述べると、標 的タンパク質、すなわち突然変異を起こした腫瘍抑制タンパク質が外因的に導入 された遺伝子産物と結合し、その結果毒性遺伝子の転写活性化が起こる。この戦 略は一般的に、遺伝子変異または異常な遺伝子発現の基本的なパターンが知られ ている新生物疾患に適用することができる(Da Costaら,Proc.Natl.Acad.Sci .USA 93(1996),4192-4196)。 また、突然変異を起こした腫瘍抑制タンパク質の野生型コンホメーションの回 復も考えられる。 いくつかの遺伝子変化はタンパク質のコンホメーション状態を改変させる。例 えば、突然変異p53タンパク質は、それらを野生型DNA認識エレメントと結合 できなくする三次構造をとっている。変異したタンパク質の正常なまたは調節さ れたコンホメーションを回復させることは、こうした分子欠陥を修正するための 最も洗練された具体的手段であるが、それは難しいことである。これに関連して 、もしも変異タンパク質においてDNA結合能が低下しているのであれば、配列 番号1または配列番号16によりコードされるタンパク質のジンクフィンガー構造 には特に興味がもてる。配列番号1または配列番号16に示したヌクレオチド配列 を有する核酸分子が組織特異的に発現されるという事実が特定の関心を引いても おかしくない。野生型コンホメーションp53の回復を目的とした薬理学的操作は すべて、顕著な副作用を伴って、近隣の非腫瘍化組織のこの腫瘍サプレッサーの 野生型機能を妨げるリスクを抱えている。これとは対照的に、組織特異的TSGの ターゲティングはターゲティングアプローチの応用範囲を著しく拡げることとな ろう。というのは、かなり高濃度の分子および/または持続性誘導体を有害な副 作用のリスクを低下させて使用することができるからである。 したがって、本発明の核酸分子およびコードされるタンパク質は、腫瘍サプレ ッサーの野生型機能を活性化または抑制することができる分子および化合物をデ ザインしかつ/また同定するために使用しうる。こうした分子および化合物は小 さな有機化合物、抗体、ペプチドミメティック、PNAまたはペプチドであってよ い(Milner,Nature Medicine 1(1995),879-880;Huppら,Cell 83(1995),237-2 45;Gibbs and Oliff,Cell 79(1994),193-198)。 かくして、本発明はさらに、腫瘍サプレッサーのアンタゴニストまたはアゴニ ストとして有効な化合物を同定する方法に関し、この方法は、 (a) 本発明のポリペプチドを発現する細胞にスクリーニングすべき化合物を接触 させ、そして (b) 前記化合物が腫瘍サプレッサーの活性化を抑制するかまたは促進するかを調 べる、 ことを含んでなる。 前記化合物はサンプル、例えば植物、動物または微生物からの細胞抽出物中に 含まれていてよい。さらに、前記化合物は当技術分野で知られているが、本発明 のタンパク質のアンタゴニスト/インヒビターまたはアゴニスト/アクチベータ ーであることがこれまでに知られていないものであってよい。好ましくは、前記 サンプルは同様の化学的および/または物理的性質の物質を含み、最も好ましく は前記物質は同じものである。本発明の使用により調製され同定されうる化合物 は発現ライブラリー(例:cDNA発現ライブラリー)、ペプチド、タンパク質 、核酸、抗体、小さな有機化合物、リガンド、ホルモン、ペプチドミメティック 、PNAなどでありうる。腫瘍サプレッサーの野生型機能を活性化または抑制する ことができる化合物の同定は当技術分野で知られた方法に従って、例えばEP-A-0 403 506に記載されるようにおこなう。上記の方法により同定されたアンタゴニ ストは例えば腫瘍形成に関与する新規クラスの物質である可能性がある。本発明 の方法により同定されたアゴニストは腫瘍性疾患の治療に有用でありうる。それ ゆえ、本発明はまた、本発明のポリペプチドに対する、または上記の方法により 得られるアンタゴニスト/インヒビターおよびアゴニスト/アクチベーターに関 する。 これらおよび他の実施形態は開示されているか、または本発明の説明および実 施例から明らかになろう。例えば、本発明に従って用いられる方法、使用および 化合物のいずれかに関する追加の文献は、例えば電子機器を使って、図書館から 取り寄せることが可能である。例えば、パブリックデータベース「Medline」は インターネット、例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/medline.html.で 利用可能である。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/,http://www.infobiogen.fr/ ,http://www.fmi.ch/biology/research_tools.html,http://www.tigr.org/, などの他のデータベースおよびアドレスは当業者の知るところであり、また、例 えばhttp://www.lycos.com.を使っても得られる。バイオテクノロジーにおける 特許情報の概観、ならびに過去のサーチと現在の知識にとって有用な特許情報の 関連ソースの調査は、Berks,TIBTECH 12(1994),352-364に示されている。 本発明の医薬組成物、使用、方法は、腫瘍抑制遺伝子またはそのコード化タン パク質のモジュレーションに関係しているかまたはそれに依存していることがこ れまでに知られていない、あらゆる種類の疾病の治療に使用することができる。 本発明の医薬組成物、方法および使用は、望ましくはヒトにおいて用いられるが 、動物の治療もここに記載した方法および使用により意図される。 図面は以下の通りである。 図1:Bop1配列および組織分布 (A)Bop1タンパク質の配列。7つのC22タイプのジンクフィンガーモチーフの システインおよびヒスチジン残基を四角で囲んだ。残基56-60に位置するコンセ ンサスモチーフ(b/p)(S/T)Pxbに対応するサイクリン依存性キナーゼ(Cdks)の推 定のリン酸化部位には下線を付す。残基666におけるプロテインキナーゼA(PKA) の推定のリン酸化部位を示す(*)。 (B)Boc1クローンの概略図。クローンp2195およびp1270はAtT-20副腎皮質刺激 ホルモン産生腫瘍細胞系から得た。クローンB-16はBALB/c脳下垂体ライブラリー から単離したものであり、p2195およびp1270において同定されたものと同じタン パク質をコードする。p1270およびB-16のコード領域は630bpの挿入物により残基 658で中断されている。この挿入物の境界の配列は図の下部に示したが、コンセ ンサスエクソン-イントロン接合部とよく一致しており、リーディングフレーム を保存している。EcoRI(R)、BamHI(B)、およびNotI(N)の制限部位を示した。 (C)マウス組織におけるBop1mRNAの発現。Bop1分布は、種々の脳領域(嗅球(Olf )、前頭皮質(fCx)、後頭皮質(oCx)、海馬(Hip)、視床下部-視床(HyT)、脳幹(BSt )、小脳(Crb)および末梢組織(脳下垂体前葉(Pit))、心臓(Hea)、肝臓(Liv)、胃( Sto)、腸(Int)、腎臓(Kid)、副腎(Adr)、脾臓(Spl)、肺(Lun)から調製した全R NAのノーザンブロット分析により調べた。各RNA調製物の等しいそのままの 量を示すゲルのエチジウムブロミド染色を挿入図に示す。 図2:Bop1およびp53はLLC-PK1およびSaos-2細胞の増殖を変化させる LLC-PKIおよびSaos-2細胞中でBop1およびp53のアンヒドロテトラサイクリン(A Tc)-調節発現を樹立した。 (A)ATcの存在下(+)および非存在下(-)でのBop1およびp53-発現LLC-PK1(それぞ れL-BopおよびL-p53)およびSaos-2(それぞれS-BopおよびS-p53)クローンと比較 した親tTAクローン(L-tTAおよびS-tTA)の細胞数。 (B)Bop1およびp53はDNA合成(BrdU)および細胞生存率(MTT)を阻害する。 各時点におけるBrdU取り込みあるいはホルマザンブルー形成をATcの存在下(+)お よび非存在下(-)で測定した。 (C)Bop1およびp53による増殖阻害は血清非依存性である。細胞は示した量のウ シ胎仔血清の存在下(10%、あるいは0.1%)、およびATcの存在下(+)および非存 在下(-)で増殖させた。 (D)Bop1およびp53による増殖阻害は可逆的である。細胞をAtc含有培地に播種 し、2日間に渡ってATcの非存在下で増殖させ、ATcを含有する培地(-/+)、含有し ない培地(-/-)により培地を更新した(矢印)。 図3:Bop1およびp53はソフトアガーコロニーの形成を阻害する Bop1(L-BopおよびS-Bop)およびp53(L-p53およびS-p53)クローンをATcの存在下 で増殖させた後、6-ウェルプレート中でウェルあたり1×105(No.1+4)、5×104( No.2+5)、および2.5×104(No.3+6)細胞の密度でソフトアガー中にプレーティ ングした。リプレッサーATcは上の列において含まれ(+)、下の列において含まれ ていない(-)。10日目に写真撮影のためにソフトアガーにMTTを4時間重層した。 示した写真は3〜5つの独立した実験を代表するものである。 図4:Bop1およびp53はアポトーシス細胞死を誘発する (A)DNAラダーの形成(DNA laddering)。ATcの存在下(+)および非存在下(-) で3日間増殖させたBop1(L-BopおよびS-Bop)およびp53(L-p53およびS-p53)発現 クローンからゲノムDNAを単離し、遠心分離し、可溶性DNAをアガロース電 気泳動にかけ、エチジウムブロミドで染色した。 (B)エチジウムブロミドおよびアクリジンオレンジにより染色したBop1およびp 53クローンの蛍光顕微鏡像。細胞(a:L-Bop、b:L-p53、c:S-Bop、d:S-p53)をATc の非存在下で3日間増殖させた。浮遊細胞を回収し、エチジウムブロミドととも にインキュベートし、蛍光顕微鏡観察により調べた(510〜550nm;×1000)。 (C)DNA末端標識化。S-Bop(Bop1)およびS-p53(p53)細胞をATcの存在下(黒) および非存在下(グレー)で3日間増殖させた。ジゴキシゲニン標識dUTPの存在下 で、透過性になった(permeabilized)細胞をターミナルトランスフェラーゼ末端 標識化した(TUNEL)。そして細胞をフルオレセイン結合抗ジゴキシゲニン抗血 清と共にインキュベートし、フローサイトメトリーにかけた。 図5:Bop1およびp53は細胞周期分布を調節する (A)Bop1によるG1停止、およびp53によるG2/M停止の誘導。S-Bop(上の図)およ びS-p53(下の図)をATcの存在下(左)あるいは不存在下(右)で3日間増殖させた。 プロピジウムイオダイド染色細胞をフローサイトメトリーにより分析し、DNA 含量を測定した。Bop1は、S相およびG2/M相におけるS-集団数の比率をそれぞれ 37.8%および17.5%から24.5%および12.6%に減少させ、G1における細胞集団を 抑制状態の44.7%からS-Bopの発現状態の63.0%に増加させた。p53についてはG1 およびS相において39.4%から31.8%、および43.7%から35.0%への減少が見ら れ、その後G2/Mにおいて16.9%から33.2%への明らかな増加が続いた。 (B)Bop1によるG1-停止はP21waf1発現から独立している。S-tTA(tTA)、S-p53(p 53)およびS-Bop(Bop1)細胞をATcの存在下(+)および非存在下(-)で3日間増殖さ せた。全細胞溶解物のウェスタンブロットを抗-p21、抗-p53および抗-GST-Bop1 ΔZF抗血清を使用して行った。 (C)Bop1およびp53発現後のアポトーシス細胞死は細胞周期に無関係である。AT cの存在下(左)あるいは不存在下(右)で3日間増殖させた透過性になったS-Bop(Bo p1、上の図)およびS-p53(p53、下の図)についてTUNELを行った。その後のプロピ ジウムブロミドでの染色によりDNA含量とフローサイトメトリーによるアポト ーシスの同時調査が可能となった。四角で囲んだ範囲のグレーのドットは高いTU NEL蛍光を有し、従ってアポトーシスを起こしている細胞を示す。四角の外のグ レイの異なる陰影のドットは細胞周期のG1(下)、SおよびG2/M(上)相にある生存 細胞に対応する。アポトーシス蛍光の閾値は、ATcの存在下あるいは不存在下で 増殖したS-tTA細胞の5%未満がアポトーシスを起こすものとなるように設定した 。ATcの存在下においてアポトーシスを起こした細胞は、S-Bopの場合、細胞の5 %未満であり、S-p53については1%未満である。ATcの不存在下では、S-Bop細胞 の70%(S-p53については65%)が上昇した、あるいは高いTUNEL蛍光を示した。 図6:Bop1ジンクフィンガードメインを介したPVR1遺伝子調節の移入およびBo p1の核偏在 (A)Bop1/ステロイド受容体ハイブリッドの概略図。使用した略号はGおよびMが それぞれヒトグルココルチコイド(GR)ドメインおよびミネラルコルチコイド(MR) 受容体ドメインを表す。GRのトランス活性化ドメインは斜線を付した四角で表し 、MRホルモン結合ドメインは黒の四角で表し、MR DNA結合ドメインはグレー の四角で表し、縦線で表した2つのジンクフィンガーを有する。各四角の上の数 字はアミノ酸を表す。 (B)Bop1のジンクフィンガードメインはPVR1遺伝子の調節を与える。天然のBop 1およびp53(左)あるいはハイブリッドGBZM(右)cDNAをcAMP-応答性リポータ ーpΔMC16LUCとともにLLC-PK1細胞(2×106)に同時トランスフェクトし、アルド ステロン(Aldo;10-9M)またはスピロノラクトン(Spiro;10-7M)とともにプレーテ ィングした。PACAP-38(10-9M)を翌日に加え、4時間後に細胞を回収した。誘導 率を計算するため、MTT値についてルシフェラーゼ活性を標準化した。 (C)Bop1によるPVR1の調節はトランス活性化(左)を必要とする。構築物ΔBZMを GRトランス活性化ドメインについて切断し、上記と同じ条件下で試験した。Bop1 の細胞質トラップ形成(trapping)がPVR1遺伝子のトランス活性化を阻害する(右) 。天然のBoplcDNAをMRのホルモン結合ドメインに融合させてBopXMを形成し た。トランスフェクトされたLLC-PK1細胞(2×106)を木炭処理血清中に再プレー ティングし、アルドステロンまたはスピロノラクトンを別に加えた。PACAP-38(1 0-9M)を翌日に加え、4時間後に細胞を回収した。誘導率を計算するため、MTT値 についてルシフェラーゼ活性を標準化した。 (D)Bop1は核タンパク質である。S-Bop細胞をATcの存在下あるいは不存在下で 3日間増殖させ、ローダミン結合ファロイジンで同時に免疫染色してアクチンフ ィラメントを染色し、またGST-Bop1ΔZF融合タンパク質に対して生成したウサギ 抗血清で同時に免疫染色した。グレーの棒は25μmを示す。 図7:ZAC/LOTファミリーの配列 (A)ZAC/LOTタンパク質の配列アライメント。ヒトZAC(hZAC、hLOT1に同一)、 マウスZAC(mZAC)およびラットLOT1(rLOT)をClustal法に従って整列させた。一距 離単位でhZACとマッチする残基を四角で囲んだ。 (B)ZAC/LOTタンパク質の構造の概略図。各ドメイン、すなわちC2H2タイプの7 ZF、リンカー領域、mZACのみに存在するPro反復、Pro、GlnおよびGluリッチ領域 、hZACに存在しないGluクラスター、およびC-末端は四角で表した。アミノ酸残 基の番号は四角の下に示した。 (C)ZAC/LOTファミリーの系統樹。ZFドメインのみを分析において考慮した。 図8:hZACおよびmZAC遺伝子の位置決定 (A)染色体位置決定。hZACプローブを使用したFISHによりヒト染色体6バンド6q 25にスポットが見られ、mZACプローブを使用したFISHによりマウス染色体10バン ド10A2にスポットが見られ、mZACプローブを使用したFISHによりヒト染色体6バ ンド6q25にスポットが見られた。 (B)ヒトおよびマウスゲノムDNAのサザンブロット。ヒト(H)およびマウス(M )ゲノムDNAを示した制限酵素で消化し、1%アガロースゲル上で分画化し、ブ ロットした。ブロットを最初に放射活性mZACプローブとインキュベートしオート ラジオグラフにかけた。次いで膜をストリップ化してmZACプローブの除去をチェ ックし、ブロットをhZACプローブとハイブリダイズさせてオートラジオグラフに かけた。NcoI、SacII、SacIおよびPstIを含む酵素の別のセットにより同様のデ ータを得た。 図9:hZACのヒト組織分布 ヒトRNAマスターブロットをhZACプローブとハイブリダイズさせ、各ドット のシグナル強度を貯蔵燐光イメージングシステム(Bio-Rad)を使用して測定した 。 成人末梢白血球、脊髄、肝臓、骨格筋、および脳全体にもhZACの弱い発現が見 られた(150単位未満)。hZACは種々の脳の領域で見られるが、主として後頭葉、 視床、および大脳皮質において見られ(100〜150単位)、その他の領域(小脳扁桃 、尾状核、小脳、前頭葉、海馬、延髄、被殼、黒質、側頭葉、視床下核)におい てはシグナルは非常に弱い(<100単位)。 図10:hZACは核転写アクチベーターである (A)hZACの核偏在。HA-標識-hZAC(1μgプラスミド)または-mZAC(200ngプラス ミド)でトランスフェクトしたSaOs-2細胞の免疫化学的分析を抗-HA抗体およびFI TC-結合第二抗体を使用して行った。細胞を一時的にトランスフェクトする間、 陽性トランスフェクト細胞(矢印で示す)および陰性非トランスフェクト細胞は同 一サンプル上に存在させた。 (B)hZACの転写活性。SaOs-2細胞を、GAL4 DNA結合ドメインとhZAC、mZACあ るいはSP1しくはCTFのトランス活性化ドメインのいずれかとの間で融合タンパク 質をコードするプラスミドにより、GAL4感受性最小プロモーターの制御下にある ルシフェラーゼリポーター遺伝子とともにトランスフェクトした。各条件につい てのルシフェラーゼ活性を基準に対する刺激倍数として示す。 図11:hZACはコロニー形成を阻害する ピューロマイシン耐性をコードするプラスミド(pRK5-PUR)のみ、あるいはhZAC 、mZACおよびp53をそのセンスおよびアンチセンス方向においてコードするプラ スミドとともにSaOs-2細胞をトランスフェクトした。ピューロマイシンを9d加え 、耐性コロニーをカウントした。偽トランスフェクトSaOs-2細胞をピューロマイ シンで死滅させた。この実験は3回の独立した実験を代表するものである。 図12:hZACはG1停止を誘導する (A)細胞周期分布。SaOs-2細胞を、CD20をコードするpRK5およびmZAC、hZACあ るいはp53のいずれかをコードするpRK5の種々の量で同時にトランスフェクトし た。CD20陽性およびプロピジウムイオダイド染色細胞をフローサイトメトリーで 分析してDNA含量を測定した。この実験は3回の独立した実験を代表するもの である。 (B)ウェスタンブロット。SaOs-2細胞を、示したようにmZAC、hZACあるいはp53 のいずれかをコードするpRK5の種々の量でトランスフェクトした。全細胞溶解物 のウェスタンブロットを抗-HA抗体により行った。 図13:hZACはアポトーシス細胞死を誘導する DNAラダー形成:SaOs-2細胞を、異なる量のpRK5プラスミド(1500ng、レーン 1)、あるいはそのCAT(1500ng、レーン2)、mZAC(50、150、および500ng、それぞ れレーン3、4、5)、hZAC(500、1000、および1500ng、それぞれレーン6、7、8)あ るいはp53(100ng、レーン9)をコードするものによりトランスフェクトした。こ の実験は3回の独立した実験を代表するものである。 例示のために記載した以下の実施例から、本発明およびその多くの利点のより 良い理解が得られよう。 実施例1:TSG Bop 1のクローン化、構造分析、および組織分布 アデニリルシクラーゼに積極的に結合する種々の受容体をコードするDNA群 を単離するため、最近記載された発現クローニング法(Spenglerら、Nature 365( 1993),170-175)を用いた。この方法は、活性化標的受容体を介したアデニリル シクラーゼの刺激による、cAMP応答性ルシフェラーゼリポーター遺伝子の転写誘 導に基づくものである。 マウスの副腎皮質刺激ホルモン産生脳下垂体腫瘍細胞系(AtT-20)(Spenglerら 、Nature 365(1993),170-175)cDNAライブラリー、および新生仔ラット小丘 ライブラリーからのクローンのプールを、cAMP応答性リポーターとともに、機能 的発現トランスダクトリークローニング法(functional expression transductor y cloning technique,FETCH)により、LLC-PK1細胞に同時トランスフェクトした 。 この発現クローニング技術は、哺乳動物細胞系、最も好ましくはLLC-PK1細胞 へのcDNA発現ライブラリーからのクローンのプールとcAMP応答性リポーター との同時トランスフェクションに依るものである。 これまでの一連の研究において、本発明者らはhCRH遺伝子プロモーターに由来 するcAMP応答性エレメントが、異種プロモーターにcAMPによる調節を与えること を指摘した(Spenglerら、Mol.Endocrinology 6(1992),1931-1941)。さらに実 験を行った結果、基本的および誘導された発現が、プロモーターの状況および使 用される細胞系に厳密に依存することが証明された。この観点から、改変 されたマウスの乳癌ウイルスプロモーター(ΔMTV)が、CV-1(サル腎臓繊維芽細胞 )、JAR(ヒト絨毛癌)、SK-N-MC(ヒト神経芽細胞腫)、およびAtT-20(マウス脳下垂 体前葉)を含む試験した種々の細胞系における低いレベルの基本的発現と強い誘 導比率との組合せの例外であることがわかった(Spenglerら.,Mol.Endocrinolo gy 6(1992),1931-1941)。このリポーターの特性は、CREの数の増加によりさら に改善された。これらの改変により、この構築物の発現の基本レベルにおける変 化無しに、臨界的な数である8個の5'末端から3'末端へ挿入されたコピーでの誘 導プラトーに近づく、cAMPに応答した相乗的な増強が可能となった。さらにCR Eの数が増加すると、TATAボックスに媒介された発現の基本レベルが抑制される ために負の影響が生じた。この限界を回避するため、本発明者らはPCR法によりp ΔMC16LUCと指称する構築物を作成した。この構築物は、cAMP応答性領域5'-CRE8 -TATA-3'の重複を含むものである。 細胞系のパネルをスクリーニングして、pRKベクター(CMVプロモーターおよびC MVエンハンサー)からの効率的な発現と、高いトランスフェクション効率およびc AMPに対するリポーターの最も高い応答性とを併せ持つものを同定した。予備調 査において、本発明者らはLLC-PK1細胞におけるpRKベクターからの発現が、標準 的な発現クローニング技術において用いられる他の細胞系、例えばCos-1および2 93細胞より明らかに優れていることをノーザンブロット実験で確認した。一般的 には、最も高レベルの発現により、バックグラウンドノイズに対して特異的シグ ナルを検出する最も良い状態が得られるものと考えられる。従ってCOS細胞は、 トランスフェクトされたcDNAの複製を可能にし、それぞれのリガンドまたは 抗体により同定することができる目的のタンパク質を大量に産生する発現クロー ニング法の選択されたモデルである。しかしCOS細胞は、リポータープラスミド の誘導についてはcAMPに対する応答性が悪く、従って本発明者らは次の段階で、 高いトランスフェクション効率(トランスフェクト細胞の数)を得るためにLLC-PK 1細胞におけるエレクトロポレーションパラメータについて検討した。エレクト ロトランスフェクションパラメータ(電圧、キャパシタンス、抵抗、トランスフ ェクション量、電極、緩衝液の組成)を系統的に変化させ、同時トランスフェク トした、SV40プロモーターの制御下にあるβガラクトシダ ーゼ遺伝子をコードしているプラスミドpCH110のガラクトシダーゼ活性のin sit u染色により、準定量的に評価した。予想通り、一時的発現レベルおよびトラン スフェクション効率は電界強度が高くなるにつれて直線的に増加した。第二の実 験系列では、pRKベクターから発現されたGタンパク質結合受容体をコードする対 照プラスミドとのpΔMC16LUCの同時トランスフェクションについて観察された誘 導範囲を試験した。重要なこととして、得られた最も高い誘導比率はin situ染 色により示唆されたパラメータから明らかに垂離していた。驚くべきことに、80 %を越える細胞でマーカータンパク質のガラクトシダーゼの発現が見られる条件 下では、cAMPに対する応答がその大きさについて著しく損なわれた。これに対し 、中程度のレベルの刺激を受けていないルシフェラーゼ活性を示す、典型的には トランスフェクトされた細胞の40%が最大の誘導比率を示した。この知見は、宿 主細胞の内在バソプレッシン受容体によるリポーターの最大刺激が、Gタンパク 質結合受容体をコードする組換えcDNAのトランスフェクションで得られた設 定と一致するという事実によってさらに証明された。結論として、cAMPに対する この系の最高の感受性は、エレクトロポレーションの後の回収が最大となる場合 に達成され、この利点は、より高いトランスフェクション効率のレベルや個々の 細胞におけるDNA量のより高いレベルによる利点をはるかに凌ぐものである。 この関係は、機能的発現トランスダクトリークローニング法(FETCH)なる名称で 知られており、標的クローンの同定が機能的(完全長)cDNAの発現に依存する ということを強調するものであり、この発現の存在は、その後の内在シグナル伝 達経路の活性化によって検出され、下流のアンプリフィケーター、即ちリポータ ー遺伝子の活性化によってモニターされ得る。 さらに改善することにより、エレクトロトランスフェクションの際の細胞死の 程度がさらに低下し、48時間以内のトランスフェクトDNAの崩壊によって予め 設定された時間枠の範囲内で最大速度での回収が可能となる。この段階では、細 胞の分裂を進行させている細胞の密度および播種された数が、細胞生存性および cAMP応答性の生存性非依存設定ポイントを確定的に決定することがわかった。例 えば、LLC-PK1細胞の集密プレートのトランスフェクションにより細胞死が僅か に増加したが、誘導状態で得られる活性と同等の基本的発現レベルの劇的な アップレギュレーションにより、リポーターのcAMP応答性がほぼ完全に消失した 。この結果は、細胞間接触そしてLLC-PK1細胞の分裂活性が、Gタンパク質結合受 容体によって活性化されるcAMP依存性転写因子の応答性を制御していることを示 している。従って本発明者らは、LLC-PK1細胞の継代のための経験的なスキーム を開発した。そのスキームは、即ち、1日目に3.3×104細胞/cm2の密度で細胞を 播種し、48時間増殖させる。指数増殖条件の下での倍増時間は約18時間であるこ とからプレートは3日目に約75%コンフルエントとなり、ここで培地を更新する 。この培地の変更が強力な増殖刺激となり、24時間後に細胞密度の増加による穏 やかな増殖の停止が起こる。その晩に、エレクトロトランスフェクションのため の細胞を6.6×104細胞/cm2に分割し、この増殖ブロックから解放することによっ て分裂活性が強化されることになり、エレクトロポレーションの後12時間後には 細胞死は見られなくなり、リポーターの基本発現レベルは低く、cAMPによる刺激 に対する優れた応答が得られる。保存集団の細胞を同一条件下(1日目に3.3×104 細胞/cm2の細胞を播種し、3日目に培地を更新し、4日目に継代する)に維持し、 これによって増殖が促進される結果が得られた。最適なトランスフェクションコ ンピテント状態への移行には、詳細なプロトコルの下でLLC-PK1細胞の少なくと も2回の継代が必要であった。 さらに本発明者らは、DNA取り込みおよび安定性の強化(細胞の同期化、酪 酸塩、PEG)、またはPKA経路の応答性の強化(Ca++イオノフォア、PKCアゴ ニスト、ホスファターゼインヒビター)のために記載された一連のツールを試験 した。これらはいずれも細胞の生存性の低下のために感受性に悪影響を及ぼす。 この法則の注目すべき例外は、エレクトロトランスフェクションの8時間後の血 清の省略であった。血清は、回収段階においてエレクトロトランスフェクション の直後に必要であったが、その夜に1回の洗浄および無血清培地の補充を行うこ とによってこの系のcAMP応答性が2〜3倍上昇した。これはリポーターの基本的 活性が低下したためと考えられる。 cDNAプールのLLC-PK1細胞へのトランスフェクションの後、内在バソプレ ッシン受容体の刺激およびリポーターの活性化は、PKA経路の応答性、従って細 胞生存性を評価するための内部対照としての役目を果たした。エレクトロポ レーションは化学的方法と比較して高い再現性を示すが、上述のcAMP応答性への 依存性のために、僅かな変化が誘導比率の解釈を著しく歪め得る。さらに本発明 者らは、正の内部対照としてβ1−アドレナリン作動性受容体をコードするプラ スミドを含めた。この受容体はcAMP産生に正に結びついており、同じ発現クロー ニングベクターから発現されるものとした。この対照プラスミドの同一のアリコ ートを、試験されるcDNAの各プールと対照のプールに加えた。この対照のプ ールは、2000個の独立したクローンの明確に陰性の1つのプールからなるもので あった。バソプレッシンおよびβ1−アゴニストであるイソプロテレノールの誘 導比率の情報を合わせることにより、以下の状態の間の識別が可能となった。 a)バソプレッシンおよびイソプロテレノールの両方の比率が低いことは、cAMP 応答性が低く、細胞生存性が損なわれていることを意味する。 b)バソプレッシンの比率が高く、イソプロテレノールの比率が低いことは、ト ランスフェクション効率が悪いこと、またはプールDNAの分解を意味する。 c)バソプレッシンおよびイソプロテレノールの比率が高いことは、最適なトラ ンスフェクションを意味する。 d)試験プールのイソプロテレノールの比率が対照プールの比率より低いことは 、クローン数が2000個を越えていることか、DNAの質が悪いことを意味する。 e)試験プールのイソプロテレノールの比率が対照プールの比率より高いことは 、プールの数が2000未満であり、スクリーニングされた独立したクローンの数の 過大評価につながることを意味している。 上記のスキームでは、試験される物質に対して得られた各誘導比率に対するカ ットオフが、各プールに対して外部のバソプレッシンおよびイソプロテレノール 内部対照について得られた各比率と関連していなければならない。この観点では 、3倍のPACAP依存性誘導比率は、条件a)の下では有意であると考えられなけれ ばならないが、条件c)の下ではボーダーラインの値を示すものである。 この標準化により、同一あるいは異なる実験的設定から得られた異なるサンプ ルの比較が可能となり、またこの標準化はボーダーラインにあるプールの再試験 の結果、もしくは推定上の陽性プールの連続的細分からの結果の比較のために必 要である。 細胞の別々のアリコートを、エレクトロポレーションの後12時間、PACAPを含 むペプチドホルモンとともにインキュベートした。ラットの小丘ライブラリーか らのクローンのプールの一つは、PACAPの存在下で一貫してルシフェラーゼ活性 を刺激し、PVR1受容体をコードする機能的クローンを連続的細分により単離した (Spenglerら.,Nature 365(1993),170-175)。このクローンのプールの細分は、 該クローンのプールが、一貫してルシフェラーゼ活性を刺激するクローンの実質 的に均質なプールとなるまでcDNAライブラリーを細分することによって行っ た。他のプールの幾つかは、同じ表現型、即ちリポーター遺伝子のPACAP依存性 刺激を示し、対応する活性クローンは同じ細分プロセスによって単離した。配列 決定は、T3、T7、内部プライマーを用いてpBSBluescriptに制限断片をサブクロ ーニングすることによって行った。PVR1発現を誘導するAtT-20ライブラリーから の2つのクローン(p2195およびp1270)は、同じタンパク質(本発明の範囲ではBop 1と称する)をコードすることが判った。 この単離されたcDNAクローンp2195およびp1270は、それぞれ2.8kbおよび4 .7kbのインサートを含んでいた。クローンp2195の全体の配列決定により、2790b pのcDNA(配列番号1に示す)が、667個のアミノ酸からなるオープンリーディ ングフレーム(配列番号2に示す)をコードし、推定分子量75kDaのタンパク質(図 1A)を産生することが分かった。好適な翻訳開始のためのCC(A/G)CCATGG(配列番 号5)Kozakコンセンサス配列との高い一致度、および12ヌクレオチド上流にフレ ーム内TGA終始コドンが存在することに基づき、AGGCCATGG(配列番号4)のATGを開 始コドンとした。データベース検索により、Bop1のN末端領域に7個のジンクフィ ンガー(KlugおよびSchwabe,FASEB J.(1995),597-604)が存在することがわか った。しかし、ジンクフィンガータンパク質ファミリーの他のメンバーとの相同 性は低く(最大30%)、最も近縁なグループは、通常の発生 ーであった(Ruppertら、Mol.Cell.Blol.8(1988),3104-3113)。特に、第1の サスモチーフ(H(S/T)GEKP(FIY)XC(配列番号7))とよく一致する(Schuhら、Cell47 (1986),1025-1032)。一方、残りの459個のC末端アミノ酸はSwissprotおよ びNBRF-PIRデータベースにおける配列との有意な相同性を示さなかった。このタ ンパク質の中央領域(275〜383)は、34 PLE、PMQ、よたはPML反復により特徴付け られ、これはタンパク質間相互作用に臨界的に関与していると考えられているポ リプロリンII型ヘリックスとして知られている構造を示唆している(Williamson ,Biochem.J.297(1994),249-260)。COOH-末端領域は特にP、Q、およびEが多 く、この特徴は転写因子のトランス活性化ドメインによって示されることが多い ものである。さらにサイクリン依存性キナーゼ(Cdks)の推定上のリン酸化部位(HS PQK(配列番号8))が、第2および第3のジンクフィンガーモチーフの間(残基56〜6 0)に存在すること、およびまさにC末端(残基663〜666)に推定上のPKAリン酸化部 位(KKWT(配列番号9))が存在することは、タンパク質キナーゼによる調節があり 得ることを示唆している。 cDNA p2195/p1270がAtT-20腫瘍細胞系に由来することから、これらのcD NAが、野生型形態とは関係のない機能の獲得や機能の消失を生じ得る突然変異 を有している危険がある。この可能性を排除するため、本発明者らは、Balb/cマ ウスの全下垂体組織から構築されたプラスミドライブラリーからBop1を再クロー ン化した。Bop1野生型cDNAを単離するため、80匹の雄性Balb/cマウス(Balb/ cAnNCrIBR)からポリ(A)+RNAを得、ランダムプライマーNotIアダプター(5'-ATGTC TCGAGGCCTTTGCGGCCGCTATANNNNNNNN-3'(配列番号3))を用いて5μgのポリ(A)+に ついて逆転写を行った。第2鎖の合成の後、BstXIアダプター(In-Vitrogen)を加 えた。このcDNAをNotIで消化し、クロマスピンカラム1000(Clontech)上でサ イズ選択して、改変したpRK5ベクターであるpRK8(Spenglerら、Nature 365(1993 ),170-175)のBstXI/NotI部位にクローン化した。p2195cDNAプローブで〜0. 5×106のクローンをスクリーニングすることにより、3.7kbのインサートを含む 、B-16と指称する1つの完全長cDNAクローンが単離できた。B-16をLLC-PK1 細胞にトランスフェクトすることによりPVR1発現の調節に関してp2195またはp12 70を置換することに成功した。クローンB-16の完全な配列決定により、86bpの非 翻訳5'領域および延長された0.7kbの非翻訳3'領域が判明した(図1B)。B-16のコ ーディング領域は、リーディングフレームが残基658で630bpの挿入によって中断 されていたことを除いてp2195と同 一であった。この挿入物の境界における配列は、コンセンサスエクソン-イント ロンジャンクション配列と極めてよく一致し、リーディングフレームを保存して いる(図1B)。本発明者らは、AtT-20ライブラリーに由来するクローンp1270にお いて正確に同じ位置にこの挿入物があることを確認した(図1B)。この知見は、ク ローンB-16におけるクローニングアーチファクトが無いことを証明するものであ り、スプライシングされないイントロン領域の存在を示唆している。この仮説を 支持する事項として、このイントロン領域をコードするPCRで得られた断片は 、AtT-20細胞からのポリA+ブロットとハイブリダイズしなかった。Bop1の分布 は、種々のマウス組織から調製された全RNAのノーザンブロットによって調べ た。興味深いことに、脳下垂体前葉がBop1 mRNAの抜きん出た最高レベルの発現 を示した(図1C)。Bop1遺伝子は、嗅球、皮質、海馬、視床下部−視床、脳幹、お よび小脳を含む脳の種々の領域において極めて低いレベルで発現され、末梢組織 ではハイブリダイゼーションが観察されなかった。 実施例2:Bop1およびp53の構成的発現は腫瘍細胞の増殖を減少させる Bop1の機能を研究するために、本発明者らはLLC-PK1細胞系においてBop1タン パク質を安定に発現するクローンを生成することを目標とした。しかし、使用さ れた耐性マーカーとは無関係に、Bop1発現細胞クローンを樹立することができな かった。Bop1が腫瘍増殖を阻害している可能性を調べるため、ピューロマイシン 耐性遺伝子を有するベクター(pCMVPUR)におけるサイトメガロウイルスプロモー ターの下流にセンス方向およびアンチセンス方向にBop1およびp53をサブクロー ニングした。 pCMVPURセンス/アンチセンス構築物(1.0μg)およびpGEM4充填DNA(3.0μ g)を、2×106個のLLC-PK1細胞系に、さらにヒト骨肉腫細胞系Saos-2(ATCCHTB 8 5)にトランスフェクトした。Saos-2は、野生型p53により増殖阻害されることが 以前に示されていたものである(Dillerら、Mol.Cell.Biol.10(1990),5772-5 781)。pGEM4は、偽トランスフェクト細胞においてpCMVPURを置換した。各構築物 についての3つのエレクトロポレーション生成物をプールし、そのアリコートを1 5cmの培養皿にプレーティングした。この細胞系を10%ウシ胎仔 血清(GIBCO)を補充したDMEM(GIBCO)において増殖させた。ピューロマイシン(5.0 μg/ml)による選択をトランスフェクションの24時間後に開始した。トランスフ ェクションの後10日間、細胞をピューロマイシンとともに増殖させ、MTTととも にインキュベートした後、生存可能なコロニーの数を数えた。表Iに示したデー タは、Bop1センス発現ベクターの導入により、p53により誘導されるのと同等の コロニー形成の実質的な抑制が得られたことを示している。Bop1またはp53によ る細胞増殖の抑制は、Saos-2細胞系においてより顕著であった。さらに、Bop1ま たはp53センス構築物のLLC-PK1細胞系へのトランスフェクションの後に現れたク ローンは、継代の後、選択に再暴露すると死滅し、さらに選択しなかった場合に はゆっくりとした速度で増殖した。 表I Bop1およびp53は腫瘍細胞の増殖を抑制する 上皮細胞系LLC-PK1およびヒト骨肉種細胞系Saos-2に、親ベクターpCMVPUR、ま たはセンスおよびアンチセンスBop1または野生型ラットp53をコードするベクタ ーをエレクトロトランスフェクトした(n=3)。pGEM4キャリアDNAは、偽トラン スフェクト細胞においてpCMVPURを置換した。24時間後、細胞を5μg/mlのピュ ーロマイシンの存在下で増殖させ、定期的な培地変更を行いながら10日間保持し た。生存可能なコロニーを数えるため、細胞をMTTとともにインキュベートした 。 実施例3:Bop1およびp53は腫瘍細胞の増殖を抑制する テトラサイクリン調節遺伝子発現用の系が最近発表された(GossenおよびBujar d,Proc.Natl.Acad.Sci.89 USA(1992),5547-5551)。この系は、調節配列(t etO)の制御の下におかれた標的遺伝子を活性化するテトラサイクリン調節トラン ス活性化因子タンパク質(tTA)の構成的発現に依るものである。テトラサイクリ ン(Tc)、あるいは親和性がより高いその誘導体、アンヒドロテトラサイクリン(A Tc)のtTAへの結合により活性化が妨げられるが、活性化はリプレッサーの離脱に よって達成される(Gossenら、Trends Biotech.12(1994),58-62)。ここに示す 方法では、LLC-PK1およびSaos-2細胞系にtTAコードベクターをトランスフェクト し、tetO配列の下流にクローン化された遺伝子の効率的な調節を示す一つのクロ ーンを各細胞系(L-tTAおよびS-tTA)から単離した。 さらに、基本的発現レベルが顕著に低く、宿主系のパネルにおいて、元の最小 CMVベース発現ベクターによって示されるレベルと同一またはそれ以上の強力な 調節特性を有する新規なシス調節発現ベクターを開発した。これは、この系をそ の将来の用途、最も好ましくはTSGの研究において広く用いられ得ることを示す ものである。pUHC13-3(GossenおよびBujard,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89(1 992),5547-5551)の調節領域を、HindIIIおよびEcoRIの部分的消化により切り出 し、EcoRIおよびHindIIIによって消化されたpBlueScript SK(-)に挿入し、pBS-C MVtetOを得た。tetO配列をコードする157bpの断片をSmaIにより放出させ、HindI IIによって+256bpで直線化したプラスミドpΔMTVLUC(Spenglerら、Nature 365(1 993),170-175)に挿入し、T4-DNAポリメラーゼで平滑化し、構築物pΔMtetOLUC を得た。 pΔMtetOLUCのXhoI部位(+1)を、内部にNotI部位を有するオリゴヌクレオチド を挿入することによってNotI部位に変換した。pΔ5'ΔMtetOLUCを得るため、pΔ MtetOLUCのStuI(+863)/NotI(+1)断片をSmaI/NotIによって切断されたpBlueScrip tに挿入し、PpuMI(+786bp)およびEcoRVによる消化、平滑末端化、および再結合 によってサイズを短くした。この断片は、pBlueScriptポリリンカーHindIII部位 および内部BstEII部位(+56bp)を用いてプラスミドpΔMTVLUCに再度移入するか、 あるいはHindIIIおよびNotIによる消化によってプラスミドpOPIPURに移入し、PM tetOを得た。ベクターpOPIPURは、pOPI3CAT(Stratage ne)に由来し、SV40プロモーターの制御下のpPUR(Clontech)のピューロマイシン 遺伝子を含む。 七量体tetO配列の別のコピーをSmaIおよびKpnIによる消化によってpBS-CMVtet Oから単離し、Ecl136IIおよびKpnIによってtetO配列内で制限酵素処理されたPMt etOLUCに挿入した。この方法を用いて、tetoのコピー数が増加する一連の構築物 を作成した。この構築物は、以下、PMtetOxLUCと略記し、添え字は七量体tetOの コピーの数を示す。 標的cDNAを、唯一のNot I部位を介してΔMtetO配列の下流に挿入した。 安定なトランスフェクションのため、プラスミドp3'SStTA、PMtetO5Bop1、およ びPMtetO5p53をEam11051Iで直線化し、1μgのDNAを3μgのpGEM4充填DN Aとともに、2×106個の細胞に同時トランスフェクトした。tTA-細胞クローン の選択は、LLC-PK1およびSaOs-2細胞において、ハイグロマイシン(MERCK)を用い てそれぞれ700μg/mlおよび500μg/mlの濃度でトランスフェクションの24時間 後に開始した。Bop1遺伝子またはp53を発現するクローンの選択は、5.0μg/ml の濃度のピューロマイシンで行った。以下の数のクローンをスクリーニングした 。即ち、L-tTA:Bop1=95、p53=92、およびS-tTA:Bop1n=77、p53:n=72であった 。これらの全てのクローンは活性化状態(-ATc)の下、種々の程度で細胞増殖の低 下を示した。これは、7日間に2回顕微鏡を用いてカウントしたものである。各条 件について、最も有望なクローンの二分の一に対して追加の分析を行い、4回目 の分析で約10個のクローンが残った。 各トランスフェクション条件からの3つの候補クローンに対して、細胞の数を カウントする予備分析を行った。増殖について最も大きな差を示したLLC-PK1由 来およびSaos-2由来のクローン(それぞれL-BopおよびL-p53、S-BopおよびS-p53) についてさらに分析を行った(図2A)。重要なことは、リプレッサーATcの存在下 で、Bop1-とp53-発現クローンとの間、また親クローンL-tTAとS-tTAとの間で増 殖の挙動に大きな差が認められなかったことである(図2A)。従って、6日目の細 胞数の差は、主としてリプレッサー不存在下での増殖の抑制によるものであった 。増殖速度の測定から、両方の細胞系の増殖速度を低下させることにおいて、Bo p1(L-Bop:11倍:S-Bop:20倍)は、p53(L-p53:15倍;S-p53:25倍)と 比較して、僅かに弱いことがわかった。ウェスタンブロット分析により、Bop1タ ンパク質が、ATcの存在下では、L-BopまたはS-Bop細胞において検出不可能であ ることがわかった。Bop1のタンパク質レベルの強い上昇が活性化状態で認められ た(図5B)。Saos-2およびLLC-PK1細胞におけるp53の調節についても類似の結果が 得られた(図5B)。これらの結果は、改変した発現ベクターは、低い基本的活性と 強力な調節特性とを合わせ持つことを支持するものである。 細胞の総数は、細胞増殖および生存性の変化を必ずしも区別するものではない 。そこで二つの補完的方法により、Bop1およびp53発現の効果を評価することと した。第1に、ATcの存在下または不存在下で6日間の各日における2-ブロモデオ キシウリジン(BrdU)の核DNAへの取り込みに基づく非放射性イムノアッセイに よりDNA合成を調べた(図2B)。第2に、テトラゾリウム塩MTTのホルマザンブル ーへの変換を測定した。この変換は、ミトコンドリアおよび細胞質の脱水素酵素 の活性によるものである。この活性は細胞の生存性に依存し、細胞増殖と密接に 関連している(図2B)。 細胞数のカウント、2-ブロモデオキシウリジン取り込み、およびホルマザン生 成は、以下のように行った。 等しい数の細胞(5000個)を、24ウェルプレートのATc(10-11μg/ml)を添加し たDMEM/10%FCS中に播種した。36時間で回収した後、培地を更新し、半分のサン プルでリプレッサーを除いた。リプレッサーを含まないサンプルについては培地 を3時間後に再び変えて、残った量のATcを除去した。増殖培地は3日毎に定期的 に変えた。リプレッサーの除去後、3回ずつの3〜5の実験の平均細胞数を時間に 対してプロットした。DNA合成の測定のため、上記したように細胞(1000個)を 48ウェルプレートに播種し、培養した。6日間の各日に、10μMの2-ブロモデオ キシウリジンを8時間加え、その後の段階を製造業者の説明書(Boehringer Mannh eim)に従って行った。細胞生存性の測定のため、1000個の細胞を24ウェルプレー トに播種し、上記のように培養した。DNA合成および細胞生存性のためのOD測 定値の平均値は、3回ずつ行った3つの実験から得た。血清非依存性を試験するた め、細胞を通常の培地に36時間維持した後、血清をDMEMで1回洗い流し、DM EM/0.1%FCS/±ATcで置換した。 S-BobおよびS-p53について得られた結果は、観察された細胞数の差を支持する ものであり(図2A)、全体的な細胞増殖および全体的な生存性測定で得られたもの と相関する(図2B)。L-BopおよびL-p53についても類似の結果が得られた。抑制状 態で低い血清条件(0.1%FCS)下に維持されたLLC-PK1およびSaos-2クローンから の細胞は、低下した増殖速度および3日目から細胞死を示し、これは対数的増殖 を維持するには血清に依存することを示している(図2C)。これに対して、Bop1お よびp53の発現下での増殖は変化を示さなかった(図2C)。従って、Bop1およびp53 による腫瘍増殖の阻害は、これらの細胞モデルにおける血清因子の存在とは無関 係なメカニズムを通して進行するものである。 Bop1の増殖を抑制する能力は、細胞死をもたらすタンパク質過剰産生の非特異 的致死効果によるものであり得る。あるいは、細胞増殖に対するより特異的な効 果の発現であるかもしれない。これら2つの可能性をさらに調べるため、生存し た細胞をATcに再暴露した後の増殖パターンを試験した。Bop1およびp53発現によ る細胞増殖の阻害は、調べたLLC-PK1およびSaos-2クローンの双方について一過 的なものであった。リプレッサーATcに再暴露することにより、48時間後細胞が 対数的な増殖を再開した(図2D)。従って、細胞増殖におけるBop1およびp53に誘 導された変化は持続的ではなく、少なくとも部分的に可逆的であり、タンパク質 過剰産生の非特異的効果に対する反証となるものである。 実施例4:Bop1及びp53は軟寒天内コロニー形成を阻害する アンカー非依存性増殖は腫瘍形成と相関性を有することが多く、培養細胞の形 質転換の強力な判定基準である。Bop1またはp53のアンカー非依存性増殖への影 響を試験するため、LLC-PK1及びSaos-2細胞クローンを、軟寒天内におけるその 増殖能力についてアッセイした。6ウェル培養皿の各ウェル(35mm)を、4mlの下 側アガー混合物(DMEM/10%FCS/0.6%アガー/±ATc)でコーティングした。下側層 が固化した後、細胞を含む2mlの上側アガー混合物(DMEM/10%FCS/0.3%アガー/ ±ATc)を加えた。ATcは、3×10-11μg/mlの最終濃度で用いた。7日後、さらに1 .5mlの上側アガー混合物(±ATc)を加えた。10日目にウェルに2mlのMTT(1mg/ml) を重層し、さらに4時間インキュベートしてPBSで1回洗浄し、そ して写真撮影を行った。Bop1またはp53発現細胞(-)によるコロニー形成は、抑制 状態(+)と比較して劇的に低下した(図3)。また、Bop1またはp53発現下で形成さ れた少数のコロニーは、より小さいサイズを有していた。これらの結果は、Bop1 及びp53が腫瘍形成能の特徴の一つである腫瘍細胞のアンカー非依存性増殖を制 限し得ることを示すものである。 実施例5:Bop1及びp53はヌードマウスにおいて腫瘍形成を抑制する 新生物の挙動についての最も厳密な実験的試験は、ヌードマウスに注入された 細胞の腫瘍を形成する能力である。さらに、in vitroでの形質転換された状態と 一般に関連を有する変化した細胞増殖特性の全てがin vivoでの新生物増殖に必 要な訳ではなく、その逆も言える。従って、in vivoにおけるBop-1発現下での腫 瘍形成能の消失の試験は、Bop1の腫瘍抑制機能を実証するための重要な試験であ る。ヌードマウスにおいてTcによる遺伝子調節を得るため、半分の動物にTcペレ ットを移植し、残りの動物にはプラシーボペレットを移植した。36匹のヌードマ ウスを無作為に12の動物からなる3つのグループに分けた。各グループにおいて 、半分の動物の皮下にTcペレットを移植し(63mg;1日当たり0.7mgテトラサイク リン塩酸塩;Innovative Research of America)、残りの半分にはプラシーボペ レット(Innovative Research of America)を移植した。2日後、ATcの存在下で増 殖させ、トリプシン処理し、5×107細胞/mlの密度でPBSに再懸濁したS-Bopまた はS-p53細胞を各動物の各体側に皮下注射した。ATcが継続的に存在する状態で成 長させた各動物の各体側に100μlのこの細胞の懸濁液を皮下注射した。2つのグ ループに、2つの独立したトリプシン処理を行ったS-Bop細胞を注射し、1つの実 験はS-p53細胞で行った。S-Bop及びS-p53のクローンの起源により、各クローン の腫瘍形成性の差を、S-Bopの場合は細胞注射の11週間後に、S-p53の場合は16週 間後に評価された腫瘍形成において観察されたラグの差から推定されるものとし て観察した。S-Bop及びS-p53を注射した動物は、それぞれ11週間、16週間で屠殺 し、解剖して腫瘍を秤量した。表IIに、S-Bop(Bop1)を用いた2つの実験と、S-p5 3(p53)を用いた1つの実験の結果を示す。以前に行われた実験結果(Chenら、Scie nce 250(1990)1576-1580)と一致して、p53発現はS aos-2細胞のin vivoでの腫瘍形成を阻害した。興味深いことに、腫瘍発生率(表I I)及び平均腫瘍重量(Tcの場合193±13mg(n=14)であるのに対して、プラシーボの 場合18±7mg(n=2))から推定されるように、腫瘍形成の阻害についてはBop1はp5 3と同様に効果的であった。結論として、Bop1及びp53は、in vivoでの腫瘍形成 の阻害について同等の効果を有する。 表II Bop1及びp53はin vivoで腫瘍形成を阻害する プラシーボまたはTcペレットをヌードマウスの皮下に移植した。2日後、各ク ローンからの5×106個の細胞を各動物の各体側に皮下注射し、腫瘍形成は、S-B op(Bop1)の場合11週間後に、p53の場合16週間後に計測した。 実施例6:Bop1及びp53の発現はアポトーシスを誘導する p53発現の誘導の2日後、Saos-2細胞は平坦になり、その平均直径が著しく増大 し(3〜8倍)、これは小さいクラスタに成長したとき最も明らかであった。L-p53 についてはそれほど顕著ではないが、類似の変化が認められた(平均直径2〜4倍 増加)。これに対してBop1を発現するLLC-PK1またはSaos-2クローンは親細胞系か ら区別不可能であるようであり、Bop1とp53との間の機能的な差の第1のヒントを 与えるものである。さらに、細胞生存性の喪失の徴候を示す細胞数の増加がBop1 またはp53発現の2日目以降に認められた。これらの細胞はMTTを変換せず、サイ ズが縮小しており、位相差顕微鏡による観察では大量に存在し、膜小疱形成を示 し、プレートからの剥離の前にさらに集合した。Bop1の場合、このような変化は Saos-2細胞(S-Bop)において最も明確であり、p53の場合、LLC-PK1細胞中(L-p53) において最も明確であり、アポトーシス細胞死を想起させた。この細胞死の形態 は、DNAの一定のサブユニットのラダーへの断片化が伴うこと が多い。 この問題を調べるため、LLC-PK1及びSaos-2細胞を、3日間ATcとともに(4000細 胞/cm2)、またはATc無しに(8000細胞/cm2)播種し、可溶性DNAを文献に記載の ように調製した(Hockenberyら、Nature 348(1990),334-336)。DNAのアリコ ートを1.2%アガロースゲル上で分画化した。リプレッサーを除いた場合、明ら かに目で確認できるオリゴヌクレオソームのDNA断片への分解が顕著になるが (図4A)、これはSaos-2細胞におけるBop1の発現の後に最も進行した。 蛍光DNA染色エチジウムブロミド及びアクリジンオレンジを用いて、ATc-枯 渇条件下での核の変化を調べた。すなわち、この細胞(5×104)を12ウェルのクラ スターにATcの不存在下で播種し、3日間増殖させた。培地を吸引した後、この細 胞をPBSで二度洗浄し、エチジウムブロミド(50μg/ml)及びアクリジンオレンジ (10mg/ml)の染色混合液を10〜20分重層した。写真撮影は、400〜420nm及び510〜 550nmのUVフィルターを用いて行った。 p53発現細胞の平坦化しサイズが増大した細胞形状によりプラスチック表面へ の付着が促進されるので、細胞の相当数がアポトーシスの核の徴候を示したが、 Bop1発現細胞は収縮し、速やかに消滅し、これらの実験においては存在量が低い ようであった。Bop1発現の後の核の消滅の構造的な変化は、浮遊細胞を回収し分 析するとより明らかであった(図4B)。核の崩壊には、核の収縮、クロマチンの凝 縮、パッチへ、さらには核エンベロープに沿って三日月形へ、そして最終的に1 以上の高密度の球体への崩壊が含まれた(図4B)。 DNA損傷の程度を調べるため、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラ ーゼ媒介ニック末端標識(TUNEL)を、ApopTagキット(Oncor)を用いて製造者の説 明書に従って行い、その後フローサイトメトリーを行った。この細胞は、ATcと ともに(1800細胞/cm2)、またはATc無しに(3600細胞/cm2)で3日間播種した。次に この細胞をペレット化し、少なくとも10分間氷冷状態に維持し、900μlのプロ ピジウムイオダイド染色溶液(PISS=50μg/mlプロピジウムイオダイド;0.1%ク エン酸三ナトリウム二水和物;0.1mg/ml RNアーゼA;0.1% Triton X-100)に再懸 濁した。一晩インキュベートした後、細胞周期の相分布をModfitsoftware(Verit y Software House,Inc.)を用いて分析した2000ケースについてFAC Scan(Becton-Dickinson)で求めた。ATcの不存在下での各クローンのインキュベ ーションにより、細胞数の著しい増加が誘導されるとともに、遊離DNA末端及 び核断片化を示す増強されたあるいは高いレベルの蛍光が観察された(図4C)。こ れらの結果は、エチジウムブロミド染色ゲルで得られたデータを確認するもので あり、核損傷を示す細胞の比率がBop1またはp53の何れかの発現の後に60〜70% の高い比率であったことを示している。 これらの実験結果を総合すると、Bop1及びp53がアポトーシスプログラムを使 用して腫瘍細胞の増殖を抑制することの証拠を与えるものであり、またSaos-2細 胞ではBop1発現の後アポトーシスが一層発生しやすいようである。 実施例7:Bop1及びp53の発現は細胞周期分布の変化を誘導する Bop1が細胞増殖を調節し得るメカニズムをさらに特性化するため、細胞周期相 の分布について調べた。wt p53レベルの増加は、細胞周期のG1からSへの移行を ブロックすることにより細胞増殖を抑制することが知られている(Hunter及びPin es,Cell 79(1994),573-582;Sherr and Roberts,Genes and Dev.91(1995),1 149-1163)。さらに最近、p53がG2/M境界で細胞を停止させることにより、別のチ ェックポイントに作用することが示唆されている(Agarwalら、Proc.Natl.Acad .Sci.USA 92(1995),8493-8497;Crossら、Science 267(1995),1353-1356;Ste wartら、Oncogene 10(1995),109-115;Yamamotoら、Oncogene 11(1995),1-6)。 対照実験では、親クローンL-tTA及びS-tTAは、ATcの存在下でも存在していない 場合でも細胞周期の異なる期における細胞の分布の差を示さなかった。これに対 し、Bop1が発現すると、S期及びG2/M期におけるS-Bop集団の比率は、それぞれ3 7.8%及び17.5%から、24.5%及び12.6%に低下した。重要なことは、抑制状態 の44.7%からS-Bopの発現状態での63.0%へのG1期の細胞集団の明らかな補完的 増加が見られたことである(図5A)。 S-p53細胞クローンにおけるp53発現について得られた結果は、最近Saos-2細胞 において温度感受性変異体p53により最近得られた結果と一致している(Yamatoら 、Oncogene 11(1995),1-6)。G1及びS期ではそれぞれ39.4%から31.8%、及び43 .7%から35.0%への低下がみられ、G2/Mでは16.9%から33.2%への明らかな 増加がみられた(図5A)。p53がG1停止に進めることができないことは、Saos-2細 胞系における非機能性網膜芽細胞腫遺伝子産物(Rb)の欠損の存在を示す可能性が 尚い。 これらの観察はLLC-PK1細胞系に拡張され、Bop1及びp53の発現下での細胞周期 相の集団の変化はSaos-2細胞クローンでの場合ほど顕著でないが、Bop1の発現に ついてやはりG1期の集団の明らかな増加がみられ(G1 59.1% vs.43.7%;S 28 .2% vs.38.9%;G2/M 12.7% vs.17.4%)、またp53下ではG2/M集団において 変化が見られた(G1:39.3% vs.44.1%;S:32.1% vs.40.2%;G2/M:28.6%vs .15.7%)。 p53は、サイクリン依存性キナーゼインヒビタ−p21(Cip1、Waf1、Sdi1、Cap20 とも指称される)をコードする遺伝子のトランス活性化によりG1停止を達成する 。p21の濃度の上昇はcdk2のキナーゼ活性を阻害し、E2Fファミリーのメンバーと 強く結びついた低リン酸化状態にRbを維持する。この結果、細胞周期を駆動する 遺伝子のトランス活性化が阻害される(Goodrichら、Cell 67(1991),293-302;We inberg,Cell 81(1995),323-330)。Bop1により誘導されるG1停止がp53と同じ分 子経路を用いているか否かという問題が生じる。Saos-2細胞におけるp53の発現 により、p21タンパク質の強力な誘導が生じ、これは外来p53タンパク質による内 在遺伝子のそのままの効率的なトランス活性化を示している(図5B)。さらにBop1 の発現の後、Saos-2細胞におけるp21遺伝子の調節が無くなる状態が起こった(図 5B)。p53によってp21の強力な誘導がみられたLLC-PK1クローンにおいても同じ結 果が得られた。結論として、Bop1は、p21とは無関係な分子中継を介してこれら の細胞モデルにおけるG1での停止を誘導する。 多くの細胞系で、wt p53活性化が増殖停止をもたらすことが示されている(Mer cerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87(1990),6166-6170;Merloら、Oncogene 9(1994),443-453;Michalovitzら、Cell 62(1990),671-680;Roemer及びFriedm ann、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90(1993),9252-9256)。これに対して、wt p 53はM1細胞における測定可能な停止を引き起こすことができず、細胞周期は進行 し、生存性は48時間以内に失われた(Yonish-Rouachら、Mol.Cell.Biol.13(19 93)1415-1423;Yonish-Rouachら、Nature 352(1993)345-3 47)。その系では、G1の細胞がwt p53の死亡誘導活性の影響を優先的に受けるよ うであった。従って、Bop1及びp53がアポトーシス細胞死及び細胞周期の進行の 調節において二重の役割を果たす使用された細胞モデルにおいて、細胞周期の特 定の期が、細胞死に対する保護あるいは感受性の増加と関係を有しているか否か という問題が生ずる。この問題を調べるため、細胞周期分析を拡張してプロピジ ウムイオダイドを用いて二重染色を行ってDNA含量及びTUNELの測定を行い、 アポトーシスを評価した。図5Cに示すように、アポトーシス細胞は、アポトーシ ス細胞のDNA含量の分布から分かるように、細胞周期の各期から進行していた 。細胞周期の停止はアポトーシスにとって必要事項ではなく、Bop1とp53の双方 ともに、細胞周期停止に関与するものとは無関係の経路を介してアポトーシスを 誘導したと結論された。 実施例8:Bop1は核転写因子である Bop1の構造分析により、N末端の7-ジンクフィンガー結合DNAドメイン及び COOH末端トランス活性化ドメインからなる転写因子に相当する特徴が示された。 標的遺伝子をトランス活性化するBop1によって認識される実際のシス調節配列に ついての情報は無かったが、Bop1の機能的ドメインを分析するモデルとして内在 PVR1遺伝子の誘導を用いることとした。cAMP感受性ルシフェラーゼ遺伝子の誘導 によって測定されるPVR1遺伝子の二モード調節が観察され、Bop1及びwt p53 c DNAについて区別不可能であった(図6B)。多量のcDNAでのPVR1発現の低下 は細胞毒性とは無関係であった。ハイブリッドステロイド受容体GMZMの2つのジ ンクフィンガードメイン(Rupprechtら、Mol.Endocrinology 7(1993),597-603) を、Bop1(BZ)の7-ジンクフィンガードメインで置換し、GBZMを作成した(図6A)。 ミネラルコルチコイド受容体のホルモン結合ドメインを、この構築物において 置換し、糖質コルチコイドと関係する多面発現性作用を回避した。GRNX,、MRNX 、及びGMZM構築物については、以前に記載されている(Rupprechtら、Mol.Endoc riology 7(1993),597-603)。GBZMを作成するのに用いたプライマーは、5-gtgatggcggccgC CATTCCGCTGTCAAAAATGTG-3'(+7bp〜+27bp)(配 列番号10)、及び 5'-ccgcgcctcgagGGTCTTCTTGGTGTGACG-3'(+618bp〜+601bp)(配列番号11)であっ た。 これらの異なる構築物をpRK5PURにサブクローニングした。構築物ΔBZMを作成 するため、EcoRI/MluIによる消化によってGBZMからGRトランス活性化ドメイン及 びBop1ジンクフィンガー結合ドメインの一部を切り出し、p2195の制限断片EcoRI /MluI(-541bp〜+272bp)によって置換した。 BopZMを作成するために用いたプライマーは、 5'-gcggccgCAGAGCCGTCTTTCACTC-3'(+1148bp〜+1166bp)(配列番号12)、及び 5'-ccgcgcctcgagAACTGTCCATTTCTTATAGAC-3'(+2001bp〜+1980bp)(配列番号13)で あった。 p2195の停止コドンを、MR-ホルモン結合ドメインへの結合のために用いられる XhoI部位の一部としてアミノ酸ヒスチジン(CTC)によって置換した。PCRで作成さ れた断片を配列決定し、正確な増幅がなされているかを検証した。 LLC-PK1細胞(2×106)のトランスフェクションにおいては、pGEM4プラスミドを キャリアとして用い、pRK発現ベクターの量はpRK5CATにより一定に維持した。ル シフェラーゼ活性を、以前に記載されたように(Spenglerら、Nature 365(1993) ,170-175)トランスフェクションの12時間後に測定した。 Bop1/ステロイド-受容体ハイブリッド遺伝子GBZMを、cAMP応答性受容体pΔMC1 6LUCとともにLLC-PK1細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクト細胞 のアリコートを、ミネラルコルチコイド受容体アンタゴニストであるスピロノラ クトン、またはアゴニストであるアルドステロンの何れかとともにインキュベー トし、PACAPを12時間後に両条件に添加した(図6B)。GBZMのトランス活性化能力 は、天然のBop1 cDNAと比較して10倍低く、GBZMの量を増加させるPVR1遺伝 子の二モード誘導は一貫して観察され、これはBop1及びp53について観察される ものと非常に類似している。これに対して糖質コルチコイド受容体トランス活性 化ドメインを欠いている構築物ΔBZMはPVR1の調節を与えず、これはこの応答の 基礎となる活性転写メカニズムに関係している(図6C)。P VR1遺伝子の調節が無いことは、トランスフェクト親構築物GMZMについても観察 された。 核転写制御因子としてのBop1の役割をさらに支持する材料が融合タンパク質Bo pxMで得られた。この融合タンパク質ではBop1のC末端が、ミネラルコルチコイド 受容体のホルモン結合ドメインとリンクするものである(図6A)。この構築物をLL C-PK1細胞にトランスフェクトすると、ミネラルコルチコイド受容体リガンドの 不存在下でPVR1遺伝子のトランス活性化が完全に抑止された。これに対し、アル ドステロン及びスピロノラクトンによってPVR1遺伝子の効果的な調節が可能とな った(図6C)。アルドステロンアンタゴニストであるスピロノラクトンによるBopX Mの活性化は、結合したホルモン結合ドメインは単に細胞質熱ショックタンパク 質にこの融合タンパク質をトラップする役目を果たしているのみであり(Picard ,Trends Cell Biol.3(1993),278-280)、これがなければBop1の機能に干渉し ないという見方を支持する。これに対し、アルドステロンまたはスピロノラクト ンの何れかによってこの細胞質アンカーからBop1が放出されると、Bop1標的遺伝 子の核転移及びトランス活性化が可能となった。 さらに、S-Bop細胞上でのBop1免疫細胞化学の核局在化の証明は、ジンクフィ ンガードメインについて切断されたBop1融合タンパク質(GST-BopΔZF)に対して 生成された抗血清を用いて行った。 GST-BopΔZF融合タンパク質をコードするプラスミドを、プラスミドpRK8-p219 5をBstXIで部分的に消化し、T4 DNAポリメラーゼで平滑末端化し、NotIで消 化することによって構築した。得られた0.9kbの断片を、前もってSmaI及びNotI で消化しておいたpGEX-5X-3(Pharmacia)中にサブクローニングした。この融合タ ンパク質を、グルタチオン−セファロースビーズを用いるアフィニティクロマト グラフィーと、その後のSDS-PAGE及び電気溶出処理によって精製した。40μgの この融合タンパク質でウサギを免疫し、抗血清を一週間単位で回収した。精製Ig Gをウェスタンブロット及び免疫細胞化学的実験に用いた。ウェスタンブロット は、上述の精製IgGまたは市販のp53に対する抗体(Pharmingen,San Diego,USA 、カタログ番号14091A)、p21Waf1(Transduction laboratories,Lexington,USA 、カタログ番号C24420)、p27Kip1(Transduction laboratori es、カタログ番号K25020)、及びP16ink4(Santa Cruz Biotechnology,Inc.,San ta Cruz,USA、カタログ番号sc-759)を用いて、全細胞溶解物(50μg)について 行った。ローダミン結合ファロイジンを用いたアクチンフィラメントの染色、標 識および免疫細胞化学は、これまでに記載されたように行った(Ibarrondoら、Pr oc.Natl.Acad.Sci.USA 92(1995),8413-8417)。図6Dにおいて、ATcの存在下 ではBop1免疫反応性は検出されず、ATcの不存在下では強い核免疫染色がみられ た。 ここに説明した方法によって調製された核酸分子は、カルチャーコレクション Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturen GmbH,Braunschwei g,Germanyに1996年8月12日に寄託され、pBluescript II SK(-)p2195(NotI)とし て特定される培養物により例示される。 この培養物は受託番号DSM 11112を付されている。 実施例9:Bop1のヒト相同体のクローニング 上記の実施例に示した通り、Bop1(以下においては、アポトーシスと細胞周期 進行を同時に調節する能力をp53と共通して有するマウスジンクフィンガータン パク質についてmZacと称する)は、p53を除いて、2つの基本的な遺伝プログラム 、すなわち細胞周期進行及びアポトーシスを制御する最初の遺伝子である。実施 例6及び7参照。従って本発明者らは、mZACはその腫瘍抑制活性もp53と共通して 有するものと予測し、mZACのヒト相同体を単離してヒト腫瘍がZACの不活性化変 異を有し得るかどうかを調べた。さらに、hZACは、cdkインヒビターp16及び新規 なTSG p73について示されているように(Merloら、Nature Medicine 1(7)(1995) ,686-692;Kaglradら、Cell 90(4)(1997),809-819)、両方の対立遺伝子のメチ ル化、あるいは一つの対立遺伝子の刷り込みと残りの対立遺伝子の喪失による別 の形態での機能的な不活性化を示し得た。従って、ヒト腫瘍におけるZAC発現に ついての研究が進行中である。さらにヒト腫瘍におけるZAC遺伝子の機能的な不 活性化は、遺伝子疾患のみにおいて見られたこれまでに記載された遺伝子メカニ ズム、例えばZAC遺伝子のコード及び非コード領域におけるミニサテライト不安 定性(Buard及びJeffrey,Nature Genetics 15(1997),327-32 8)に依存し得るものであった。mZACのヒト対応物(hZAC)をヒト脳及び下垂体cD NAライブラリーから単離した。ヒト下垂体cDNAライブラリー(5'-STRETCH ,Clontech)からの1×106のクローンを、標準的な方法を用いて配列番号1のコー ド配列に対応するランダムプライム化プローブでスクリーニングした。40の陽性 クローンをpBlueScriptにサブクローン化し、T3、T7及び内部プライマーを使用 して両鎖を配列決定した。配列番号16に示したヌクレオチド配列を含む一つの2. 3kbクローンは、802bp 5'-非翻訳領域及び142bp 3'非翻訳領域とともに、hZACの 全コード配列(1389bp、配列番号17に示したアミノ酸配列をコードする)を含んで いた。配列アラインメント及び系統樹作成を、Lasergeneソフトウェア、DNASTAR Inc.,Madison,WIを使用して行った。 hZAC及びmZACコード配列の全体的な同一性は、ヌクレオチドレベルで74.6%で あり、アミノ酸レベルで68.5%であった。それぞれがmZAC中に対応物を有するい くつかのドメインがhZAC中に見出された(図7A、7B)。N末端における7つの(CH2C H2)タイプのジンクフィンガー(ZF)のドメインが最も保存されており(アミノ酸レ ベルで84.2%同一性)、2番目及び3番目のZFの間に(残基56〜60)サイクリン依存 性キナーゼについて同一のコンセンサスリン酸化部位を示した(HSPQK、配列番号 8)。リンカー領域、Pro、Gln及びGluリッチ領域及びC末端(図7B)は比較的保存さ れていた(それぞれ54%、58%及び63%同一性)。最後の11のC末端残基は同一で あった(図7A)。マウス及びヒト配列の間には2つの主要な相違があった。実際に 、mZACの2つの領域、34Pro反復(PLE、PMQあるいはPML)ドメイン及びGlu-クラス タードメインはhZACにおいて失われていた(図7A、7B)。Uni-Geneデータベース(0 5/29/97,Pearson,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(1988),2444-2448)におけ る相同性サーチについてのFASTA分析により、hZAC配列は、胎盤、大動脈、卵巣 、前立腺、心臓を含む種々の成人ソース、並びに心臓、脳、鍋牛、肝臓及び脾臓 を含む胎児組織から得られた43のヒト発現配列タグとマッチすることが示された 。この研究の間に、LOT1と指称されるラット及びヒト配列(受託番号U72620及びU 72621)が報告され(Abdollahi,Oncogene 14(1997),1973-1979,Abdollahi,Can cer Res.57(1997),2029-2034)、hZACとの有意な相同性を示した。実際に、hZA CとhLOT1は2残基を除いて同一であった(hZ AC及びrLOT1のLeu81はhLOT1においてはPheであり、hZACにおけるPro440(rLOT1に おけるPro671)はhLOT1においてはAla)。驚くべきことに、hLOT1及びhZACの5'-非 翻訳領域はAGTの上流の完全に異なる189ヌクレオチドであった。この矛盾につい ての一つの説明は、hZACあるいはhLOT1 5'末端が2種の異なるスプライシング変 異体に対応するか、あるいはいずれか一つが非スプライシングイントロンを含む ということである。推定3'スプライシング部位(CACAG)が今回のhLOT1におけるAT Gの190ヌクレオチド5'に存在したことから、第二の仮説が正しいようである。さ らにマウス遺伝子においてはその位置にイントロンも存在していた。 mZACの大きいドメインがhZACにおいて失われていることから、これらのドメイ ンを含み得る、mZACに密接に関連する別の遺伝子の存在が推定された。ZFドメイ ン及びPro及びGlnリッチ領域におけるhZAC及びmZACの間で保存された残基に対応 する縮退プライマーを使用してヒトゲノムDNAの集中的なPCR分析を行った。Z ACとは異なる2クラスのみのPCR断片が単離されたが、密接に関連した遺伝子を 示唆するものであった。この研究の期間中に、Unigeneデータベース中に対応す るcDNAの配列が利用できるようになった。PCR断片の一方のクラスは、唾液 腺の多形態性腺腫の病原に関与し得る胎児遺伝子、hPLAG1(Kas,Nature Genet. 15(1997),170-174)に対応した。PCR断片の第二のクラスは、その機能がまだ知 られていない、ヒト細胞系KG-1からクローン化されたcDNA、KIAA0198(Nagas e,DNA Res.3(1996),17-24)に対応した。複数の配列のアラインメントにより 、これらのcDNAがZFタンパク質の新たなファミリーのメンバーであることが 明らかになった(図7C)。 実施例10:染色体位置決定及びゲノムDNAのサザンブロット 両方の遺伝子の最初の染色体位置決定は、蛍光in situハイブリダイゼーショ ン(FISH)により行った。hZACの2.3kb cDNA、mZACの4.7kb cDNA、及びmZ AC遺伝子の6kb BglII断片をプローブとして使用し、ニックトランスレーション によりビオチン-11-dUTPで標識し、以前に記載されたようにして(Eyc ズした。ハイブリダイゼーションの検出は、ヤギ抗-ビオチン抗体(Vector labor e,France)を用いて行った。BrdU置換染色体のダイレクトバンディング(Lemieux ,Cytogenet.Cell Genet.59(1992),311-312)を、ヒト染色体についてはプロ ピジウムイオダイドで、マウス染色体についてはDAPIで染色した。蛍光顕微鏡(D MRB,Leica,Germany)下で有糸分裂中期が観察された。冷却測光CCDカメラ及びQ uips-smartキャプチャーソフトウェア(Vysis)によりイメージを取得した。 hZAC cDNAプローブにより、ヒト染色体6上に回帰的な単一及び二重のスポ ットが明らかになり(バンド6q25)、30の中期のうち、70%がこの位置に少なくと も一つのスポットを示した(図8A)。cDNA及びゲノムmZACプローブは、マウス 染色体10上に回帰的なスポットを示し(バンド10A2)、25の中期のうち、cDNA プローブにより50%が、ゲノムプローブにより60%が、低バックグラウンドでこ の位置に回帰的な単純な二重のスポットを示した(図8A)。マウスゲノムプローブ により、ヒト染色体6バンド6q25上に低バックグラウンドで20%の比率で回帰的 な単一のスポットが明らかになった(図8A)。マウス10A2及びヒト6q25遺伝子座は シンテニックであり(Copeland,Science 262(1993),57-66)、マウスプローブは ヒト6q25上にヒトプローブと同じスポットを示したことから、mZAC、及びhZACは オーソログであるかあるいはシンテティック領域にクラスター化した関連遺伝子 である。このデータは、最近発表されたhLOG1のFISHマッピング(Abdollahi,Onc ogene 14(1997),1973-1979)により確認された。ヒトゲノムマップ(Dib,Nature 380(1996),152-154,Schuler,Science 274(1996),540-546)によれば、hLOT1 (hZAC)は6q24においてマーカーD6S308及びD6S978の間に位置していた。染色体6 は、ヒト腫瘍において4番目に多く再構成される染色体である(Teyssier,Antica ncer Res.12(1992),997-1004)。6q24における対立遺伝子喪失がB-細胞非ホジ キンリンパ腫で報告されており(Zhang,Genes Chromosomes Cancer 18(1997),3 10-313,Johansson,Blood 86(1995),3905-3914)、多くの固形腫瘍においても 報告されており、例えば胃癌(Queimado,Genes Chromosomes Cancer 14(1995), 28-34)、膵臓腺癌(Griffin,Cancer R es.55(1995),2394-2399)、腎臓細胞癌(Thrash-Bingham,Proc.Natl.Acad.S ci.USA 92(1995),2854-2858)、神経膠星状細胞腫(Liang,Neurology 44(1994) ,533-536)、メラノーマ(Millikin,Cancer Res.51(1991),5449-5453,Walker ,Int.J.Cancer 58(1994),203-206)、卵巣癌(Lastowska,Cancer Genet.Cyt ogenet.77(1994),99-105,Foulkes,Br.J.Cancer 67(1993),551-559)及び 乳癌(Fujii,Genes,Chromosomes & Cancer 16(1996),35-39,Noviello,Clin ical Cancer Res.2(1996),1601-1606,Theile,Oncogene 13(1996),677-685 )等がある。さらに、hZAC遺伝子座の周辺のD6S292-D6S310-D6S311で定義される6 q24における頻繁に欠失している領域が乳癌において同定されている(Noviello, Clinical Cancer Res.2(1996),1601.1606)。さらに、D6S310周辺の規定され た染色体6q断片、すなわちhZAC遺伝子座を含むもののマイクロセル媒介移入によ り乳癌細胞系CAL51の腫瘍形成性が抑制されることが示されている(Theile,Onco gene 13(1996),677-685)。これらの遺伝子データは、少なくとも1のTSGがhZAC 遺伝子座の近くに位置することを示唆しており、本発明の機能的なデータととも に、hZACを乳癌に関与し6q24に位置する候補TSGとして証拠付けている。 本発明により得られたデータは、最近Abdollahiにより発表された研究(Abdoll ahi,Cancer Res.57(1997),2029-2034)によりさらに支持されるものであり、 彼は上皮卵巣癌のラットモデルにおけるZACの発現の喪失によりそれをクローン 化し、「Lost On Transformation」からLOTと名付けた(Abdollahi,Cancer Res .57(1997),2029-2034)。彼らはさらにhLOT1を単離し、これはhZACに同一であ り、hLOT1(hZAC)発現はいくつかのヒト卵巣癌細胞系においても失われているこ とを示した(Abdollahi,Oncogene 14(1997),1973-1979)。これはやはりhLOT1(h ZAC)が候補TSGであることを示している。 mZAC及びhZACがオーソログであることをさらに確認するため、我々は消化され たヒト及びマウスゲノムDNAのサザンブロットを行った。抹消血リンパ細胞か らのヒトゲノムDNA(Montpellier blood bank,Franceから入手した)及び肝臓 からのマウスゲノムDNAを標準的なプロトコールにより調製した。消化したゲ ノムDNAのサザンブロットを最初にmZAC ZF及びリンカー領域に対応す るmZACプローブとハイブリダイズさせた。オートラジオグラフィーの後、ブロッ トをストリップ化し、hZAC ZF及びリンカー領域に対応するhZACプローブで再探 索した。mZAC及びhZACのZFドメインから得たプローブは、ヒト及びマウスDNA において正確に同じバンドにハイブリダイズし(図8B)、mZAC及びhZACプローブの 両方が両方の種の一種のみの遺伝子を認識したことを示している。 実施例11:ヒト組織におけるhZAC発現 hZACmRNA分布を、hZACプローブとハイブリダイズしたヒト成人及び胎児組織か らの正規化した量のポリA+RNAを含むHuman RNA Master Blot(PT3004-1,Clontec h,Palo Alto,CA)を使用し、製造者の説明書に従って測定した。マスターブロ ット上のポリA+RNAサンプル(80〜400ng)は、研究所内で維持している8種の異な る遺伝子のmRNA発現レベルに対して正規化されているので、hZACmRNAの相対 的発現レベルを調べることができた。hZACは成人及び胎児組織の両方に広範に発 現された(図9)。発現の最も強いレベルが、下垂体、腎臓、胎盤、副腎、子宮、 乳腺、卵巣、肺、胃腸管に見られ、リンパ様組織も強いハイブリダイゼーション シグナルを示した。骨格筋、抹消白血球細胞、肝臓、脳全体、及び脊髄はhZACを 弱く発現した。成人の脳では最も強いシグナルは後頭葉、大脳皮質、及び視床に おいて観察された(図9の説明を参照)。 実施例12:hZACは核トランス活性化因子である ヒト骨肉腫細胞系SaOs-2を実施例2に記載したように増殖させ、エレクトロポ レーションにかけた。GAL4融合タンパク質を除いて、全てのcDNAをpRK5ベク ター(Spengler,Nature 365(1993),170-175)にサブクローン化し、5'非翻訳領 域を切り出し、HAエピトープタグをN末端に付加した。構築物はいずれも配列決 定により確認した。 hZACの細胞内位置を免疫細胞化学的分析により測定した。免疫細胞化学的測定 のため、トランスフェクト細胞をガラスカバースリップ上で増殖させ、固定し、 透過性にし、抗-HA抗体、その後抗-マウスFITC(Sigma,StLouis,MO)とインキュ ベートした。mZACあるいはhZACを発現するSaOs-2細胞の核が強く標識さ れた(図10A)。偽トランスフェクト細胞及び非透過性化細胞のいずれにもシグナ ルは検出されなかった。 hZACが多くのZFタンパク質及びp53と同様に転写活性の能力を有するかどうか を調べるため、酵母転写アクチベーターGAL4 DNA結合ドメインに融合したhZA C及びmZACをコードするプラスミドのトランスフェクションの後、GAL4に感受性 を有する最小プロモーターにより駆動されるルシフェラーゼリポーターの転写活 性化を測定した。GAL4融合タンパク質については、mZAC及びhZACコード配列をpS G424(Blau,Mol.Cell.Biol.16(1996),2044-2052)のBamHI部位に挿入した。 これらの発現ベクターの異なる量を、ルシフェラーゼ遺伝子の発現を駆動するEI B-アデノウイルス由来TATAAボックスの上流のGAL4 DNA結合部位の5つのコピー を含むリポータープラスミドpEIBTATALUC(0.5μg)とともにトランスフェクトし た。SV40プロモーターにより駆動されるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子をコードす る、同時にトランスフェクトされたプラスミドpCH110は、トランスフェクション 効率についてルシフェラーゼ値を標準化する役割を果たした。mZACまたはhZACの いずれかを含む融合物を増加する量でトランスフェクトすると、段階的に増加す るルシフェラーゼ活性が誘導された(図10B)。GAL4 DNA結合ドメイン(GAL1-14 7)のみがトランス活性化活性を何ら有していなかった(図10B)。GAL4 DNA結合 ドメインの、転写因子SP1及びCTFのよく特性化されたトランス活性化ドメイン(B lau,Mol.Cell.Biol.16(1996),2044-2052)との融合物を陽性コントロールと した(図10B)。 実施例13:hZACの発現は腫瘍細胞の増殖を阻害した hZACのトランスフェクションの24時間後、偽トランスフェクト細胞と比較して 細胞数の減少が見られた。さらに、hZACトランスフェクションの後、有意な数の 細胞が生存可能性喪失の兆候、例えば細胞の収縮、小水庖形成、凝縮したクロマ チン等を示し、これはp53(Bates,Curr.Opin.Genet Dev.6(1996),12-19)及 びmZACについてこれまでに指摘されていたものである。実施例6を参照。hZACが マウスの対応物と同じ抗増殖特性を有するかどうかを調べるため、コロニー形成 アッセイを行った。コロニー形成アッセイのため、CMVプロモーター の制御下にあるピューロマイシン耐性遺伝子を含むpRK5-PUR(0.2μg)をmZAC(1 μg)、hZAC(3.8g)あるいはp53(1μg)のいずれかとともに、2,000,000のSaOs-2 細胞中にセンス及びアンチセンス方向で同時トランスフェクトした。これらの3 種のトランスフェクションからの細胞をプールし、異なるプレート上に分けた。 ピューロマイシン処理の9日後にクローンをMTT染色しカウントした。 hZAC、mZAC、あるいはp53が発現されると、ピューロマイシン耐性クローンは 対照実験よりも小さく、mZACあるいはp53はピューロマイシン耐性コロニーの数 を強力に減少させたが(図11)、アンチセンス構築物は何ら効果を示さなかった。 hZACはより弱くではあるがやはり細胞増殖を阻害した(図11)。 実施例14:hZAC発現がG1停止を誘導した mZACは、p53と同様に、アポトーシスと細胞周期停止の誘導により腫瘍細胞増 殖を阻害する。実施例5〜7参照。hZACが細胞増殖の制御のための同じメカニズム を取り戻したかどうかを調べるため、hZACの一時的な発現の際のSaOs-2細胞の細 胞周期進行を最初に調べた。SaOs-2細胞に、mZAC、hZACあるいはp53をコードす る種々の量のプラスミドを、トランスフェクト細胞の選択のためのマーカーとし て使用されるCD20抗原をコードするpRK5-CD20とともに一時的にトランスフェク トした。プロピジウムイオダイド染色を以前に記載されたように行った(Brons, Cytometry 11(1990),837-844)。細胞周期分布をFACScanフローサイトメーター( Beckton-Dickinson)により測定した。CD20について最も陽性の強い細胞の5%に 対応する5000の事象をModfitソフトウェア(Verity Software House Inc.)を使用 して分析した。hZACはG1停止を誘導し、G0〜G1にある細胞の率を増加させ、Sに あるものを減少させた(図12A)。mZACはG1ブロックを誘導した(図12A)。p53で一 時的にトランスフェクトしたSaOs-2細胞は、以前に報告されているように(Chen ,Genes Develop.10(1996),2438-2451)、G1で強力に停止された(図12A)。 mZAC、hZAC及びp53発現レベルを、同じ抗-HA抗体を使用して行ったウェスタン ブロットにより評価した。ウェスタンブロットは、抗-HA抗体(クローン12CA5,B oehringer Mannheim,France)及びペルオキシダーゼ結合抗-マウスIg (Amersham,France)を使用して、全細胞溶解物(20μgタンパク質)について行っ た。p53及びmZACは相当に高い発現レベルに達した(図12B)。hZACを検出するため にはより高い量のプラスミドのトランスフェクションが必要であった(図12B)。 しかし、検出不可能なレベルのhZACでもG1停止を誘導し得た(pRK-hZAC、125及び 250ngを参照、図12A、12B)。 実施例15:hZAC発現はアポトーシスを誘導した ゲノムDNAラダー形成を測定することによりアポトーシスを調べた。可溶性 DNAを以前に記載されたように調製し(Hockenberry,Nature 348(1990),334- 336)、1.2%アガロースゲル上に分画化した。 偽トランスフェクト(レーン1)あるいは対照(pRK5-CAT)トランスフェクト細胞( レーン2)はアポトーシスの兆候を示さなかった(図13)。hZAC発現は、実施例6に 記載したように、mZAC(レーン3、4、5)及びp53(レーン9)について示されたのと 同様にSa0s-2トランスフェクト細胞(レーン6、7、8)のアポトーシスを誘導した 。 要約すると、mZAC(Bop1)は、その晴乳動物の対応物、例えばラット、特にヒト の対応物(hZAC)とともにTSGの新たなクラスを形成することを我々は示した。mZA C及びhZAC遺伝子の同一性は、in vitroにおける両タンパク質の性質の同一性、 例えばこれらの核転写アクチベーターの抗増殖特性により強調されるものである 。hZACは、p53を除いて、アポトーシスと細胞周期の両方を制御し得るこれまで 唯一のヒト遺伝子である。これらの経路はTSG p53の活性の中枢であることが知 られており(Bates,Curr.Opin.Genet.Dev.6(1996),12-19)、hZACはヒト腫 瘍において喪失されていることが多い染色体領域6q24〜q25に位置するので、hZA CはヒトTSGの候補であると結論される。 本発明は、本発明の個々の形態を単に例示するために記載された具体的な態様 によりその範囲を制限されるものではなく、機能的に等価なあらゆる核酸分子、 タンパク質、構築物、あるいは抗体は本発明の範囲内にあるものである。実際に 、本明細書に示し、記載したものに加えて種々の本発明の改変は上記の記載及び 添 付の図面から当業者には明らかであろう。そのような改変は添付した請求の範囲 の範囲内にあるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 35/00 C07K 14/47 C07K 14/47 16/18 16/18 16/32 16/32 C12Q 1/68 A C12N 5/10 G01N 33/15 Z C12Q 1/68 33/50 Z G01N 33/15 33/574 D 33/50 C12N 5/00 B 33/574 A61K 37/02 (72)発明者 ジョルノー,ロレント フランス国 エフ―34570 ピグナン,ア ベニュー ド ラ ガレ,15

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.(a) 配列番号2に示すアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸分 子; (b) 配列番号1に示すヌクレオチド配列を含む核酸分子; (c) (a)または(b)に規定した核酸分子とハイブリダイズする核酸分子;およ び (d) 遺伝暗号の結果、(a)、(b)または(c)に規定した核酸分子のヌクレオチ ド配列に縮重しているヌクレオチド配列を含む核酸分子; よりなる群から選択される、腫瘍サプレッサーの生物学的活性を有するタンパ ク質をコードする核酸分子。 2.腫瘍サプレッサーの生物学的活性をもつタンパク質をコードする核酸分子を 同定してクローニングする方法であって、 (i) 哺乳動物細胞を、 (a) cAMP誘導発現を可能にするように下記リポーター遺伝子に対して位置 づけられた少なくとも1つのcAMP応答エレメントを含む調節エレメン トに機能しうる形で連結された評価可能なリポーター遺伝子を含有す る第1のベクター、および (b) 哺乳動物細胞内での発現を可能にする調節エレメントに連結された核 酸分子を含有する発現ベクターのプール、 によりトランスフェクトし、 (ii)トランスフェクトした細胞を、ベクター中に存在する核酸分子の発現を可 能にする条件下で培養し、 (iii)トランスフェクション後に哺乳動物細胞において前記リポーター遺伝子 の発現をもたらすベクタープールを同定し、 (iv)場合により、ステップ(iii)で同定したベクタープールを再分割して、ス テップ(i)から(iii)を繰り返し、そして (v)このようにして同定したベクタープールからベクター中に存在する核酸 分子を単離し、腫瘍抑制活性についてその産物を試験する、 ことを含んでなる、上記方法。 3.ステップ(ii)において、細胞内cAMPのレベルを高めることができる受容体の リガンドを培地に添加する、請求項2に記載の方法。 4.前記リガンドがペプチドPACAPである、請求項3に記載の方法。 5.哺乳動物細胞がLLC-PK1細胞(ATCC CC101)またはSaos-2細胞(ATCC HTB85)で ある、請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法。 6.cAMP応答エレメントが副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン遺伝子に由来する ものである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。 7.リポーター遺伝子を制御する調節エレメントがMMTVに由来するものである、 請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法。 8.リポーター遺伝子がルシフェラーゼをコードする、請求項2〜7のいずれか 1項に記載の方法。 9.ベクタープールのベクター中に存在する核酸分子がcDNAである、請求項 2〜8のいずれか1項に記載の方法。 10.前記cDNAが哺乳動物、細菌、真菌もしくは植物の細胞、またはウイルス より得られるRNAから作製される、請求項9に記載の方法。 11.腫瘍抑制活性を有するタンパク質をコードする、請求項2〜10のいずれか1 項に記載の方法により得られる核酸分子。 12.請求項1または請求項11に記載の核酸分子にハイブリダイズし、かつ腫瘍抑 制活性を失っている請求項1および11に記載のタンパク質の変異体をコードす る核酸分子。 13.DNAである、請求項1、11または12に記載の核酸分子。 14.cDNAである、請求項13に記載の核酸分子。 15.哺乳動物に由来するものである、請求項1または請求項11〜14のいずれか1 項に記載の核酸分子。 16.哺乳動物がヒトまたはマウスである、請求項15に記載の核酸分子。 17.配列番号17に示したアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列、または配 列番号16に示したヌクレオチド配列を含んでなる、請求項16に記載の核酸分子 。 18.請求項1に記載の核酸分子または請求項11〜17のいずれか1項に記載の核酸 分子またはその相補鎖とハイブリダイズする、長さが少なくとも15ヌクレオチ ドの核酸分子。 19.請求項1に記載の核酸分子または請求項11〜17のいずれか1項に記載の核酸 分子を含有するベクター。 20.前記核酸分子が原核および/または真核宿主細胞における発現を可能にする 調節エレメントに機能しうる形で連結されている、請求項19に記載のベクター 。 21.請求項19または20に記載のベクターを含有する宿主細胞。 22.細菌、真菌、植物または動物の細胞である、請求項21に記載の宿主細胞。 23.哺乳動物細胞である、請求項22に記載の宿主細胞。 24.請求項22または23に記載の宿主細胞をポリペプチドの発現を可能にする条件 下で培養し、この培養物から産生されたポリペプチドを回収することを含んで なる、腫瘍サプレッサーの生物学的活性を有するポリペプチドの産生方法。 25.請求項1に記載のまたは請求項11〜17のいずれか1項に記載の核酸分子によ りコードされる、または請求項24に記載の方法により産生されるポリペプチド 。 26.請求項25に記載のポリペプチドを特異的に認識する抗体。 27.請求項1に記載のまたは請求項11〜17のいずれか1項に記載の核酸分子、前 記核酸分子に相補的な核酸分子、請求項18に記載の核酸分子、請求項19または 20に記載のベクター、請求項25に記載のポリペプチド、および/または請求項 26に記載の抗体を、場合により製薬上許容される担体と共に、含有する医薬組 成物。 28.請求項1に記載のまたは請求項11〜17のいずれか1項に記載の核酸分子、前 記核酸分子に相補的な核酸分子、請求項18に記載の核酸分子、請求項19または 20に記載のベクター、請求項25に記載のポリペプチド、および/または請求項 26に記載の抗体を、場合により適当な検出手段と共に、含有する診断用組成物 。 29.請求項27に記載の医薬組成物を有効な量で被験者に投与することを含んでな る、腫瘍の治療方法。 30.請求項27に記載の医薬組成物を有効な量で被験者に投与することを含んでな る、腫瘍の予防方法。 31.請求項27に記載の医薬組成物を有効な量で被験者に投与することを含んでな る、腫瘍の再発の遅延方法。 32.前記腫瘍が良性または悪性であり、最も好ましくは内分泌または神経組織、 すなわち、乳房、肺、結腸、腸、胃、前立腺、精巣、卵巣、甲状腺、膵臓に由 来する、請求項29、30または31に記載の方法。 33.請求項27に記載の医薬組成物を有効な量で被験者に投与することを含んでな る、神経障害の治療方法。 34.請求項27に記載の医薬組成物を有効な量で被験者に投与することを含んでな る、神経障害の予防方法。 35.請求項27に記載の医薬組成物を有効な量で被験者に投与することを含んでな る、神経障害の再発の遅延方法。 36.腫瘍サプレッサーをコードするmRNAの存在を検出することにより腫瘍サ プレッサーの発現を検出する方法であって、 (a) 細胞からmRNAを取得し、 (b) 得られたmRNAに請求項18に記載の核酸分子を含むプローブを、ハイ ブリダイゼーションの条件下で接触させ、そして (c) 前記プローブにハイブリダイズしたmRNAの存在を検出し、それによ り前記細胞による腫瘍サプレッサーの発現を検出する、 ことを含んでなる、上記方法。 37.腫瘍サプレッサーの存在を検出することにより腫瘍サプレッサーの発現を検 出する方法であって、 (a) 被験者から細胞サンプルを取得し、 (b) 得られた細胞サンプルに請求項26に記載の抗体を、腫瘍サプレッサーへ の前記抗体の結合を可能にする条件下で接触させ、そして (c) 結合した抗体の存在を検出し、それにより腫瘍サプレッサーの発現を検 出する、 ことを含んでなる、上記方法。 38.腫瘍抑制活性を失っている腫瘍サプレッサーの発現を検出するための請求項 37に記載の方法。 39.腫瘍または腫瘍サプレッサー対立遺伝子の発現と関連した障害にかかりやす い被験者の素質を診断する方法であって、 (a) 前記腫瘍または障害の罹患者からDNAを単離し、 (b) ステップ(a)で単離したDNAを少なくとも1種の制限酵素で消化し、 (c) 得られたDNA断片をサイズ分画用ゲル上で電気泳動的に分離し、 (d) 得られたゲルに、検出可能なマーカーで標識した請求項18に記載の核酸 分子を含むプローブを接触させ、 (e) (d)で定義したプローブとハイブリダイズしたゲル上の標識バンドを検 出して、前記腫瘍または障害の罹患者由来のDNAに特異的なバンドパターン を形成し、 (f) ステップ(a)〜(e)により被験者のDNAを調製して、ゲル上に検出可能 な標識バンドを形成し、そして (g) ステップ(e)の前記腫瘍または障害の罹患者のDNAに特異的なバンド パターンとステップ(f)の被験者のDNAのそれとを比較して、前記パターン が同一であるか異なるかを判定し、前記パターンが同一である場合は前記腫瘍 または障害にかかりやすい素質であると診断する、 ことを含んでなる、上記方法。 40.被験者における疾病を治療し、予防し、かつ/またはその再発を遅延させる 医薬組成物を調製するための、有効量の請求項1に記載のもしくは請求項11〜 17のいずれか1項に記載の核酸分子、または前記核酸分子に相補的な核酸分子 の使用。 41.被験者における疾病を治療し、予防し、かつ/またはその再発を遅延させる 医薬組成物を調製するための、有効量の請求項18に記載の核酸分子の使用。 42.被験者における疾病を治療し、予防し、かつ/またはその再発を遅延させる 医薬組成物を調製するための、有効量の請求項19または20に記載のベクターの 使用。 43.被験者における疾病を治療し、予防し、かつ/またはその再発を遅延させる 医薬組成物を調製するための、有効量の請求項25に記載のポリペプチドの使用 。 44.被験者における疾病を治療し、予防し、かつ/またはその再発を遅延させる 医薬組成物を調製するための、有効量の請求項26に記載の抗体の使用。 45.前記疾病が腫瘍または神経障害である、請求項40〜44のいずれか1項に記載 の使用。 46.前記腫瘍が良性または悪性であり、最も好ましくは内分泌または神経組織、 すなわち、乳房、肺、結腸、腸、胃、前立腺、精巣、卵巣、甲状腺、膵臓に由 来する、請求項45に記載の使用。 47.腫瘍サプレッサーに対するアンタゴニスト/インヒビターまたはアゴニスト /アクチベーターとして有効な化合物を同定する方法であって、 (a) 請求項25に記載のポリペプチドを発現する細胞に、スクリーニングすべ き化合物を接触させ、そして (b) 前記化合物が腫瘍サプレッサーの活性化を抑制するか促進するかを調べ る、 ことを含んでなる、上記方法。 48.請求項25に記載のポリペプチドに対する、または請求項47に記載の方法によ り同定されたアンタゴニスト/インヒビターまたはアゴニスト/アクチベータ ー。
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