JP2001500105A - リポソームを封入した両親媒性薬剤組成物 - Google Patents

リポソームを封入した両親媒性薬剤組成物

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Abstract

(57)【要約】 燐脂質/両親媒性化合物モル比に基づいて、荷電されていない種としての両親媒性化合物を取り込む方法。両親媒性化合物のイオン化種は、結晶を含まなくても調製できるが、荷電されていない種の両親媒性化合物は、リポソーム内部に専ら取り込まれた化合物、またはリポソーム外結晶を有しないリポソーム内部に部分的に取り込まれた化合物を用いて調製できる。

Description

【発明の詳細な説明】 リポソームを封入した両親媒性薬剤組成物技術分野 本発明は、リポソーム外結晶またはイオン種を懸濁液中に含むまたは含まない リポソーム中に、荷電されていない種またはイオン種としての両親媒性化合物を 取り込むこと;および細胞膜への前記化合物の透過を予測し得る方法に関する。 両親媒性化合物は、親水性部と疎水性部を有する分子である。例えば、燐脂質 は、2種の疎水性脂肪酸鎖と親水性ホスホコリン基を含む両親媒性化合物である 。本発明では、そのような化合物の例が錫(II)ジオキシナートである。両親媒 性化合物は、荷電されていない疎水性分子形態とイオン化親水性分子形態で表さ れることもあり、前記分子の割合はpHに依存する。そのような化合物のpKs は、荷電されていない分子形態と荷電された分子形態が等濃度であることが分か ってときのpHで定義される。そのような4種の化合物の具体例として、いわゆ るモルヒネ、ブピバカイン、オキシンおよびクロニジンを本発明では述べている 。先行技術の現状 両親媒性化合物のリポソーム取り込み リポソームは、水溶液中に燐脂質2層膜を含有する小胞であって、水と接触し ている親水性部と前記2層膜内部の疎水性部を含む。 両親媒性化合物の燐脂質単層膜および2層膜へのリポソーム取り込みは、この 分子種が、不安定な燐脂質小胞であると考えられているため、あまり実施されて いない(参考文献1)。 リポソームと薬剤組成物に関連する実行可能性や安定性を予測するためには、 表Iに示すように、水と有機溶媒(例えば、オクタノール)の間の分配係数(下 記表中、Log Poctanol)を考慮していた(参考文献1)。 表 I リポソーム中での前記化合物の性質の分類は、水/オクタノール間の分配係数 に基づく(参考文献1)。 負のLogオクタノール/水分配係数(Log Poctanol>-0.3)を有する親水性化 合物は、燐脂質小胞の不活性な水性区分内に取り込まれる。 その安定性および放出は、それぞれの寸法や化合物の電荷および脂質膜の孔に依 存する。脂質溶解性薬剤は、高いオクタノール/水分配係数(Log Poctanol>5 )を有し、脂質膜内部にほぼ完全に取り込まれる。脂質膜内部での安定性は、一 度取り込まれると脂質膜からそれ以上放出されないほど、非常に高い(参考文献 2)。両親媒性化合物は、上記の中間の分配係数(-0.3<Log Poctanol<5)を 有し、化合物のpKsに対する小胞水和物のpHに依存してリポソーム脂質と水 相の間で容易に分離される。両親媒性化合物は、脂質膜のアシル鎖と錯体を形成 場合にのみ、リポソーム二層膜中に取り込まれるこどが分かった(参考文献3) 。 たいていの薬剤用化合物の分配係数は、対数で-0.3〜5の範囲にあり、そのた め、両親媒性である(参考文献4)。この分類は、経験によって立証できる情報 やそのリポソーム取り込みについての誤った情報しか提供しないため、現在開発 されている取り込み工程を制限する。実際、新しい予測データとして天然種の分 配係数を用いると、両親媒性化合物は、ゾル中性の無極性疎水性種の挿入後、予 備リポソーム脂質膜内部に取り込まれる。この方法は、いくつかの特許または特 許出願公報に開示されている(参考文献5〜9)。燐脂質二層膜への取り込みの 試みは、予備リポソーム脂質膜に挿入された両親媒性化合物のイオン種を用いて は、未だ行われていない。前記イオン種は、水溶性であることから親水性である と考えられ、そのため、燐脂質膜内に挿入できないと考えられていた(参考文献 4)。したがって、イオン化ヒドロゾル系種は、いずれも親水性化合物として、 リポソーム外の水性区分中に厳密には取り込まれる(参考文献1、10)。「脂 質溶解性化合物は、分散中に燐脂質混合物中へ封入されることにより、リポソー ム内に取り込まれ得る」が、「水溶性化合物は、燐脂質の分散中に水性媒体中へ の封入によって、リポソーム内に取り込まれ得る。」ことが原則である(参考文 献10)。このようなことは、大抵の両親媒性化合物、特にプロカイン(参考文 献11)、リドカイン(参考文献12)、ブピヴァカイン(参考文献13)を含 むカチオン性局部麻酔薬、およびモルヒネ(参考文献14)、フェンタニール( 参考文献15)およびアルフェンタニル(参考文献16)を含むカチオン性鎮痛 薬の場合に相当していた。 上述の場合はいずれも、多層ラメラ状小胞(MLV)中への化合物の取り込み の安定性が、小さな単層ラメラ状小胞(SUV)よりも高い。MLVは、最も調 製し易いリポソームでもある。乾燥脂質膜は、脂質を溶解している有機溶媒を窒 素雰囲気下で蒸発した後、撹拌しながら水和することによって得られる。すなわ ち、ドラッグデリバリーには、多層ラメラ状小胞が一般に好ましい。 脂質膜と薬物との関係の予測される向上は、治療有効性を高めること、活性の 持続性を延ばすこと、およびそれによって、ヒト臨床応用における薬物治療指数 を向上することである。これらの向上は、取り込まれた薬剤の脂質膜からの放出 速度を遅くすることによって現れる。多数の両親媒性薬剤化合物において、動物 または人類へ有効な結果を約束することは、アクチノマイシンD(参考文献1) 、ビンブラスチン(参考文献1)およびブピバカイン(参考文献17〜19)を 用いた場合にのみ得られている。 リポソーム中に取り込まれたブピバカインを含む薬剤組成物は、米国特許第52 44678号公報(参考文献8)に記載されている。前記公報に記載の組成物は、注 射可能な形態である。ブピバカインのリポソーム中への取り込みは、取り込まれ ない薬物に比べて優れた麻酔活性、同等の投与量でのより長い持続作用および同 じまたは同等の効果を達成するための投与量を減量する可能性をもたらすことに おいて有利である(参考文献18〜20)。前記公報(参考文献8)に記載され ているように、リポソーム調剤中での脂質とブピカインの最大モル比は、約1.5 :1であった。両親媒性化合物の脂溶性種の燐脂質二層膜中への取り込みに関す る前述の如く、リポソームは、荷電されていない疎水性ブピバカインを燐脂質/ コレステロール脂質膜中にもたらすこと、およびpH8.1、薬物のpKaで 水和することによって得られる(参考文献6,8,11)。これらのリポソーム 組成物は、ブピバカインで飽和しており、リポソームを光学および電子顕微鏡で 観察するとリポソーム内部および外部で結晶を形成している(参考文献17〜2 0)。上記組成物は、神経組織病理学的な毒性が無く(参考文献21、22)か つ臨床上の有効性はある(参考文献17〜19)ことは分かっているが、ブピバ カインは現在、酸性pH6.5においてカチオンとして投薬されているが、前記溶 液はアルカリ性pHであるため臨床用ブピバカインとは同一ではない。局部麻酔 の結晶が、小胞内部の懸濁液中および外部に含まれている。これは、前記米国特 許第5244678号公報に記載の上記組成物が、「リポソーム関連ブピバカイン」と 命名されている理由である(参考文献17〜20)。 我々は、懸濁液中にブピバカイン結晶を含まず、リポソーム中にブピバカイン 添加量全部を取り込んで高度にリポソーム封入されたブピバカイン組成物が、脂 溶性の荷電されていないブピバカインを含有する脂質膜から調製できることを見 出した。また、我々は、モルヒネのように、他の両親媒性の荷電されていない薬 物分子をリポソーム中に封入した後、リポソーム懸濁液内部にはモルヒネ結晶を 含ませずに、荷電されていないモルヒネを同様に予備リポソーム脂質膜中へ挿入 できることも見出した。本発明は、水溶性イオン化両親媒性化合物をリポソーム 二層膜中に取り込む方法にも関する。発明の要旨 従って、本発明の第1の観点は、多層ラメラ状リポソームを調製して、親水性 部と疎水性部を含む両親媒性化合物のイオン種を燐脂質二層膜内に取り込む方法 であって、 i)燐脂質を溶解した有機溶媒によって水性媒体から親水性イオン種を抽出する工 程、 ii)前記有機溶媒が乾固するまで蒸発することにより、燐脂質および両親媒性化 合物を含む脂質膜を調製する工程、および iii)両親媒性化合物が脂肪酸C2-C3親水性中間膜の下の燐脂質膜内へ少なくと も部分的に挿入されるようにpH4〜6.5までの酸性pH領域で脂質膜を水和 することにより、多層ラメラ状リポソームの懸濁液を調製する工程 を含む方法を提供することである。 本発明の第2の観点は、多層ラメラ状リポソームを調製して、親水性部と疎水 性部を含む荷電されていない両親媒性化合物を燐脂質二層膜内に取り込む方法で あって、 a)燐脂質二層膜中に両親媒性化合物の無極性疎水性種を、前決定された燐脂質 /前記化合物のモル比を用いて溶解して、該化合物の結晶を有しないリポソーム 内部に専ら取り込まれた、またはリポソーム外結晶を有するリポソーム中に部分 的に取り込まれた該化合物を含むリポソーム調剤を得る工程、 b)前記有機溶媒が乾固するまで蒸発することにより、燐脂質および両親媒性化 合物を含む脂質膜を調製する工程、および c)両親媒性化合物が脂肪酸C2-C3親水性界面の下の燐脂質膜内へ少なくとも 部分的に挿入されるように、両親媒性化合物が荷電されていない形態で残るpH で脂質膜を水和することにより、多層ラメラ状リポソームの懸濁液を調製する工 程 を含む方法を提供する。高スループットスクリーニング(参考文献23):細胞膜を横切る小さな薬剤分 子の透過の予測 薬理学の基本原則では、「薬物の吸収、拡散、生体内変化および排出はすべて 、細胞膜を通して生じるため、薬物が細胞膜を透過する機構および前記変化に影 響を及ぼす分子や細胞膜の物理化学的性質を考慮することが必須である」といわ れている(参考文献4、第3ページ)。「薬物が細胞を透過するとき、薬物は細 胞プラズマ膜を明らかに横切らなければならない」(参考文献4、第3ページ) 。「薬物は、不動態過程により、または細胞膜の成分の活性な分配をもたらす機 構によって細胞膜を横切る。前者において、薬物分子は通常、脂質二層膜中での 薬物分子の溶解性によって、濃度勾配に沿った不動態拡散により侵入する。その ような移動は、細胞膜と脂質を横断する濃度勾配の大きさ(すなわち、薬物に対 する水分配係数)に正比例する。分配係数が大きくなるほど、細胞膜内での薬物 の 濃度は高くなって、その拡散も速くなる。」(参考文献4、第4ページ) 「大抵の薬物は、非イオン化種とイオン化種の両者として溶液中に含まれる弱 酸または塩基であり、前記二層膜を通過する拡散によって細胞膜障壁を通過しな ければならない。非イオン化分子は通常、脂溶性であり、細胞膜を横切って拡散 できる。それに対して、イオン化分子は、低い脂溶性のために、普通、脂質膜に 侵入できない。」(参考文献4、第4ページ)「非イオン化種のみが、細胞膜を 容易に侵入することができる。したがって、非イオン化種は、定常状態において その濃度が区分と同一になるまで、その濃度勾配に沿って拡散する。」(参考文 献4、第4ページ) 上記通則は、しばしば、生理学および薬理学上の条件と矛盾しているように考 えられる。大抵の薬物は、水性賦形剤中に溶解するイオン種として配合されてい る。そのようなものは、モルヒネやオピオイドについての局部麻酔剤全ての場合 である。in vivoで投与する場合、原則的に狭いpH範囲(7.2〜7.4)を保つ体 液中に注入する。上記pHにおいて、局部麻酔剤(モルヒネやオピオイド等)を 含む大抵の分子は、主に、細胞膜を横切ることができないと規定されているイオ ン化形態であることが分かっている。さらに、分子のある留分は、化合物のpK sに依存して、疎水性でかつ無極性形態であるため、結晶として体液中に沈降し た後、ヒドロゾルを形成することがある(表II)。 細胞膜透過に関する明らかに規定された制限のために、総合化学から得られる 新しい可能性を秘めた薬物の現在の高スループットのスクリーニングは、細胞膜 受容体に運ばれる化合物にのみ統合している。このスクリーニングは、単離され た受容体と薬剤を志望する者との拮抗関係を研究することにより、in vitroで行 われる。現行の実施において、前記スクリーニングは、受容体結合を通じて作用 する分子に対する新薬の発見を劇的に制限するが、大抵の薬物は、細胞質作用を 発揮するために細胞膜に侵入する必要がある(参考文献4)。上記スクリーニン グでは、人体各部内に拡散する薬物の生物学的利用能、吸収、特定の細胞(例え ば、肝細胞)内での生体内変化および排出[これらはいずれも、膜受容体を必要 とせずに細胞膜を通過する(参考文献4)]を全く予想できない。表 II:局部麻酔剤(モルヒネおよびオピオイド)のLog PoctおよびpKs 我々は、両親媒性化合物の燐脂質二層膜内への挿入およびそれからの放出速度 が、分配係数には依存しないが、燐脂質二層膜内での安全性には依存することを 証明した。リポソームおよび燐脂質層は、細胞膜モデルであると考えられる。分 子設計/配座解析の数値解析グログラムとリポソームの取り込みおよび放出分析 評価との組み合わせにより、小さな薬剤分子への生物学的膜の透過予測を可能に しようと試みた。すなわち、本発明は、細胞質の製薬効果、生体内変化および排 出をもたらす細胞膜の透過に関する新規化合物のスクリーニングを提供する。 従って、もう一つの観点において、本発明は、荷電されていないまたはイオン 化種としての両親媒性化合物による細胞膜の透過を決定する方法を提供する。こ の方法は、分子設計/配座解析の数値解析による化合物の燐脂質単層膜への挿入 のモードおよび化合物の前記単層中での安定性を予測すること、前記両親媒性化 合物を取り込んだ多層ラメラ状リポソームを上述の方法に従って調製することお よび前記両親媒性化合物の連続除去された緩衝液中へのpH7.4における放出速 度を決定することを含む。分子設計/配座解析の数値解析 分子設計数値解析は、製薬上入手できる新規化合物または新規化合物群の発見 において現在主要な手法である(参考文献23)。分子設計数値解析プログラム である膜分子構造の理論分析(以下、TAMMOと略す。)(参考文献24)は 、以下の事項を予測できるものとして開発されている。 1)両親媒性分子の疎水性/親水性平衡(φ)。これは、無極性状態から極性 状態への疎水性および親水性変換エネルギーの比の対数として表される; 2)特に、前記二層膜の親水性/疎水性界面に関する二層膜内への化合物の挿 入モード、化合物の安定性および局在化;および 3)ある分子とその周囲の脂質の間の平均相互作用エネルギー(化合物の挿入 エネルギーとも呼ばれる。)(参考文献24)。この化合物分子種と燐脂質の脂 肪酸鎖の間の相互作用エネルギーは、各原子の変換エネルギーを考慮して計算し された、疎水性領域と親水性領域で発現する化合物の疎水性電位を定義した後、 得られる。 配座解析手段は、分子を、3次元構造内での分子の捻りや応力を示す体積構造 物として認識するために分子の物理化学情報を最適化するHYPERCHEMプ ログラム(米国オートデスク社製)から始まる。分子の力学的な理論値に従って 計算される幾何学的な最適化は、量子力学に従って分子構造をもたらす情報を予 め提供する。この手段は、最適化プロセスにおける原子価電子を考慮した空間構 造を提供する。ここで、内部電子は原子の比極性核内に含まれている HYPERCHEMのデータから、WinMGMソフトウエア−(参考文献2 5)により、分子の親水性部と疎水性部が認識および区別できる。最後に、TA MMOプログラム(参考文献24)によって、燐脂質単層膜内への化合物の挿入 および化合物のリポソームのコレステロールとの関係を予測する。 モルヒネ、ブピバカイン、錫(II)ジオキシナート、オキシンおよびクロニジ ンに関するTAMMOデータを表IIIにまとめる。表IIIでは、以下の実施例に列 挙したリポソームの取り込みに関する実験上の化学的および形態学的結果および 現在の分類(参考文献1)に従ったLog Poctと比較しでいる。現在のTAMMO プログラムは、単層を構成する燐脂質分子として、ジパルミトイルホスファチジ ルクロリン(DPPC)を使用している。表III中の凡例: PL/X:燐脂質:化合物のモル比 φ:無極性状態から極性状態への疎水性および親水性変換エネルギーとの比の 対数 Δ:分子の疎水性および親水性中心間の距離 AE:封入効率発明の詳細な説明 多層ラメラ状小胞のリポソーム懸濁液は、場合により、ステロール成分との組 み合わせにおける、極性またはイオン化形態で燐脂質に封入された両親媒性薬物 を含む脂質膜の水和によって調製される。ステロール成分に対する燐脂質のモル 比は、好ましくは1.0〜1:1の範囲、特に約4:3である。燐脂質は、好まし いが排他的なものではなく、L-α-またはL-β-ホスファチジルクロリン(CP )またはそれらの混合物(例えば、卵黄ホスファチジルクロリン)である。ステ ロール成分は、好ましくはコレステロールである。 本発明において、予備リポソーム脂質膜の形成は、燐脂質、ステロールおよび 荷電されていないまたはイオン化形態の両親媒性化合物を有機溶媒中に溶解して 、有機溶媒を好ましくは窒素雰囲気下で蒸発することにより行う。 上記により、無極性でかつ疎水性または親水性の両親媒性化合物が、脂質膜中 に挿入される。荷電されていない両親媒性化合物の封入は、燐脂質とコレステロ ールを有機溶媒中に溶解し、荷電されていない化合物を燐脂質/化合物(PL/ 化合物)比が、化合物による燐脂質分子の飽和に相当するモル比より高いかまた は低くなるような量で添加して、化合物の少なくとも50%が荷電されていないこ とを確実にするpH(好ましくはアルカリ性)で水和することにより生じる。脂 質膜中の燐脂質/化合物モル比に依存して、前記形成は、以下のものを包含する 。 −リポソーム中の化合物分子およびリポソーム外懸濁液中の結晶 (PL/化合物比<飽和比); −専らリポソーム内に取り込まれる化合物分子 (PL/化合物比>飽和比) ヒドロゾル系イオン形態の両親媒性化合物の取り込みは、燐脂質中に多く含ま れる有機溶媒を用いた水性媒体からの抽出、有機溶媒の蒸発、燐脂質とイオン化 両親媒性化合物を含む脂質膜を得るための乾燥、およびイオン化形態の両親媒性 化合物を維持するのに選択されたpH、好ましくは4〜6.5までの範囲の酸性p Hでの水和によって生じる。 リポソームは、乾燥した脂質膜から、通常、緩衝液中のMLV懸濁液(例えば 、pH6.5から9までの等浸圧のリン酸緩衝液)として形成される。本発明によ ってリポソーム中に封入され得る両親媒性化合物は、麻酔剤(例えば、ブピバカ イン、ロピバカイン、プリロカイン、メピバカイン、テトラカインまたはエチド カイン)あるいは麻酔性鎮痛剤(例えば、モルヒネ、フェンタニール、アルフェ ンタニールまたはスフェンタニール)およびpH3.5〜10.5(これは、ヒトに注 射する製薬溶液のpH限界である。)で得られる、より一般的な両親媒性化合物 であってよく、それらは、配座解析方法論のTAMMOプログラムに従って、燐 脂質層下にDPPCの親水性/疎水性界面を挿入した分子の少なくとも一部を含 む。 イオン化形態の両親媒性化合物は、本発明に従って封入された場合、工程(ii i)における水和のpHおよび工程(i)における抽出のpHが同じである(す なわち、両者は共に4〜6.5の範囲である。)。 カチオン形態のブピバカインの取り込みにおいて、燐脂質/ブピバカインモル 比は、結晶の形成を避けるために、少なくとも13でなければならない。カチオン 形態のモルヒネの取り込みにおいて、燐脂質/ブピバカインモル比は、結晶の形 成を避けるために、少なくとも20でなければならない。錫(II)ジオキシナート の取り込みにおいて、燐脂質/錫(II)ジオキシナートモル比は、結晶の形成を 避けるために、少なくとも15でなければならない。 荷電されていない形態の両親媒性化合物を本発明に従って封入する場合、前述 の方法の工程(b)から形形成される脂質は、工程(c)において、両親媒性化 合物が荷電されていない形態のまま維持されるpH、好ましくはpH約8.1で水 和されるであろう。本発明のこの観点において、組成物は、両親媒性化合物が専 ら、化合物の結晶を含まずにリポソーム内に取り込まれるとき、あるいはリポソ ーム外結晶を含むがリポソーム内結晶は含まないリポソーム内に部分的に取り込 まれるときに得られる。上記種類の組成物が形成される特定のモル比は、燐脂質 /化合物モル比を徐々に増やし、多層ラメラ状小胞としての前記膜を水和して、 リポソーム外結晶またはリポソーム内結晶の存在の有無を光学および/または電 子顕微鏡によって決定することにより、予め決定することができる。 荷電されていない両親媒性化合物がブピバカインである場合、ブピバカインは 、燐脂質/ブピバカインモル比13以下において、リポソーム外結晶を含む燐脂質 二層膜内に部分的に取り込まれる。リポソーム外結晶の形成は、前記モル比が約 6において回避される。13を超えるモル比では、ブピバカインが、リポソーム外 結晶を含まない燐脂質二層膜中に取り込まれる。 荷電されていない両親媒性化合物がモルヒネである場合、モルヒネは、燐脂質 /モルヒネのモル比20以下において、リポソーム外結晶を含む燐脂質二層膜内に 部分的に取り込まれる。20を超えるモル比では、モルヒネが、リポソーム外モル ヒネ結晶を含まない燐脂質二層膜中に取り込まれる。 本発明は、その範疇に、上述の方法で調製される両親媒性化合物と会合した多 層ラメラ状リポソームを含む製薬上の組成物(特に、注射できる形態の組成物) を包含する。本発明によれば、高スループットのスクリーニングに適用される、 荷電されていない種またはイオン化種としての両親媒性化合物の細胞膜への透過 の予測も可能である。 以下の実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。 実施例1:モルヒネ 1.1. モルヒネの燐脂質単層膜中への挿入についてのTAMMOプログラム予測 モルヒネは、効果の始まりが遅くかつ作用持続性が長い(12時間以上)オピオ イド系鎮痛剤であり、筋内、硬膜外または(脳脊)髄膜の下にある鞘内に容易に投 与される(参考文献26)。モルヒネは、術後の痛みやガンの痛みを抑える処置 において使用される。その副作用は、呼吸機能低下による致死で有り得る。繰り 返しの投与は、薬剤の常用癖を引き起こすことがある。 モルヒネは、2種のpKs(いわゆる、pK1=7.93およびpK2=9.63)を 含む。これは、モルヒネが、カチオン性種、アニオン性種または荷電されていな い種として存在し得ることを意味する。生理学上のpHにおいて、いわゆる無極 性モルヒネ(MP0)およびそのカチオン性種(MP+)の2種の形態が傑出して いる。MP+として水中に荷電されずに溶解する(0.18M)と、水溶性が低下す る(7×10-4M)。荷電されていない形態はクロロホルムへの溶解性も低く( 2.0×10-4M)、カチオン性形態は、総合的に不溶性である。水とオクタノー ル間の分配係数の対数は0.36であるため、両親媒性化合物のリポソームへの封入 については不確かな領域に位置している(参考文献)。 荷電されてないモルヒネMP0の親水性部は、分子内の3個の酸素原子と窒素 原子に限定されている。従って、この分子がそれらと会合すると、分子の親水性 部は、燐脂質単層膜の極性先端部に向かって配向する(図1A)。 TAMMOプログラム(参考文献24)を用いた場合、MP0のDPPC単層 内部でのより優れた安定性が得られるかもしれず、挿入のエネルギーのみを考慮 すると、MP0の安定性は、MP+の安定性よりも高いことがある(表III)。 TAMMOプログラムによって予測されるMP0とMP+の両者のDPPC単層 内への挿入モードを、図1Aおよび1Bに示す。これら2種(図1AのMP0; 図1BのMP+)の疎水性部は、親水性/疎水性層の界面下に位置することが分 かるが、MP+は、疎水性状態中に、より深く挿入される(図1B)。単層内部 での配置は、MP+のリポソーム中への取り込みにおいて、MP0よりも高い安定 性の予測をもたらすが、燐脂質の脂肪酸鎖との結合による挿入エネルギーは、M P+よりもMP0の方がより高い(表IV)。リポソームの取り込み安定性の予測 は、化合物の挿入エネルギーと、上記層の親水性/疎水性界面に本質的に関係し た燐脂質層内部でのその配列の両方を意味すると推断される。表IV モルヒネ:配座解析データ 表IVからは、DPPC単層中でのMP0形態の挿入エネルギー(すなわち、 安定性)が、MP+形態よりも高かったことが分かる。上記エネルギーはいずれ も、燐脂質の分子間、および燐脂質分子とコレステロール分子との間の相互作用 ェネルギーよりも高かった。MP0またはMP+とコレステロールの間の低い相互 作用エネルギー(それぞれ、−25および−41kJ/モル)は、燐脂質リポソーム 層中でのコレステロールの存在が、両モルヒネ種の封入と相互作用すべきでない ことを示していた。1.2. MLV中へのMP0り込み過程 卵ホスファチジルクロリン(EPC)72mgおよびコレステロール(Ch)28 mgを含む脂質100mg、およびEPC/MP0モル比4〜100の荷電されていな いモルヒネMP0を、有機溶媒(すなわち、クロロホルム/メタノール=10/1溶 液)中に溶解した。有機溶媒を窒素雰囲気下で乾燥させた後、真空下に一晩放置 した。封入効率を、以下の表Vに示す。封入効率は、EPC/MP0モル比が高 まるにつれて徐々に低下し、前記モル比20:1では、約80%まで低下した。調剤 の光学顕微鏡観察により、EPC/MP0モル比を4から18まで高めると、結晶 の存在が徐々に減量することが分かった(表V)。EPC/MP0モル比20から は、結晶が観察されなかった。この結果から、所望により、中に取り込まれる薬 物の高い基準と低い基準を含み、リポソーム外結晶を含むまたは含まないリポソ ームのモルヒネ調剤を調製できることが分かるであろう。表 V 脚注: XXX=水和後、数個の結晶が観察されたが、貯蔵時に増加した。 XX=稀に結晶が観察された。 X=極めて稀に結晶が観察された。 0=結晶が観察されなかった。 前記モル比4〜25において、80%のリポソーム−モルヒネ会合効率が維持され た。前記モル比が40以上の場合、会合効率は35%まで劇的に低下し、モル比100 まで、変化しなかった。最適なEPC/MP0モル比は、MP0結晶が臨床上の調 製において要求される場合、18以下であり、前記結晶の存在が要求されない場合 は、20〜30であると考えられる。1.3. MLVからのMP0放出速度 臨床試験のためのモルヒネ配合剤を、PL/MP0比10、26および52で調製し た。表Vに示すように、モル比10では、リポソーム外結晶が生成するが、他の2 種の調剤にでは生成しない。 上述の1.2.に記載の手順に従って、以下の量のMP0を封入する脂質膜100mg (EPC+コレステロール)を調製した。 EPC/MP0比が10の場合、2.614mg、 EPC/MP0比が26の場合、1mg、 EPC/MP0比が52の場合、0.5mg、 pH8.1におけるPBS1mLの封入効率(すなわち、分子のおよそのpK; これは、ヒトに注射可能な配合剤に影響を及ぼさない。)を表Vに示す。 透析バッグにリポソーム懸濁液を遠心分離せずに入れ、生理学的pHである7. 4においてPBS溶液150mL(この量は、ヒトの脳脊髄液容量に相当する。)中 に浸漬した。続いて、ヒトの脳脊髄液の速度(すなわち、23mL/時)で再生し た。2種の調剤を各条件下で試験した。リポソームの放出を概説する3回の実験 において、外部媒体中でモルヒネを検出した。図2に、脂質膜中でのPL/MP0 比26から得られた2種の調剤についての透析バッグ外へのモルヒネの放出を表 す。透析バッグに含まれる遊離モルヒネの漏れに起因すると考えられるモルヒネ 濃度のピークが観察された。このピークは急に観察され、1時間以内に、脂質膜 EPC/MP0モル比52においてもpH7.4で放出が開始した。その後、モル比10 および26では3〜6時間の間にモルヒネ放出が開始した(比26:図2)。3つの 実験条件において放出は持続し、延長された。モル比52の配合剤では、1日まで に限定され、モル比26および10の配合剤ではそれぞれ30〜48時間で終了した。 EPC/MP0モル比が低いほど、燐脂質小胞からの薬物の放出が長かいことが 推断できる。リポソームからのMP0の放出は、EPC/MP0モル比の値に関わ らず、DPPC単層中へのこの荷電されていない種のモルヒネの安定性に関する TAMMOプログラムの予測を確認している。取り込みおよび放出実験から、お よびTAMMO予測からも、MP0が細胞膜を横切ることができると言える。 EPC/MP0モル比10について放出終了後の光学顕微鏡では、透析バッグ内 に結晶が見られなかった。このことは、リポソーム外結晶が、生理学的pH7.4 の媒体中に放出されたことを示している。1.4. MLV−MP0配合剤と臨床上の要求との関係 高い封入効率、30時間放出は、EPC/MP0系(モル比26)の結晶を含まな い配合剤について興味有る臨床上の予想を与える。より長い痛みの軽減を得るた めに、より長い放出時間が要求されるのであれば、結晶を含むリポソーム配合剤 (例えば、モル比10)を調製してよい。神経異常の信号が無いことに依存して、 薬物投与についての結晶の投与およびリポソーム内および結晶として取り込まれ たモルヒネの会合に関する内科医のコーピング機構において、本発明の荷電され ていないMP0種としての両親媒性化合物のリポソーム取り込みの方法(先のリ ポソーム脂質膜中のMP0の挿入およびMP0の挿入に好ましいアルカリ性pHに おける水和)は、痛み軽減の迅速な開始を表す高い(EPC/MP0<25)また は低い(EPC/MP0>40)封入効率、求められる痛み軽減の持続要求に依存 して結晶を含むまたは含まない配合剤を与える。1.5. MLV中へのMP+の取り込み MP+1mgをpH4.5のPBS1mL中に溶解した。(MP+ほぼ100%)クロ ロホルム溶媒1mLを加えた。室温で24時間撹拌した後、有機溶媒中にMP+は 観察されなかった。EPC72mg(54.9μモル;EPC/MP+モル比26に相当 )をクロロホルムに添加すると、0.25±0.04mgMP+が脂質相中に抽出された 。水とEPCを含むクロロホルム間のMP+の分配係数は0.307であったが、EP Cを含まないクロロホルム中では0であった。したがって、有機溶媒中の燐脂質 の存在は、ヒドロゾル系でかつ脂溶性のMP+分子の抽出をもたらし、それ によって、カチオン性モルヒネが燐脂質に結合できるというTAMMO予測が確 認される。EPCを有機相中に添加すると、pH4.5でのクロロホルム/PBS 分配係数は0から0.307に増加した。 溶解された燐脂質を含有する有機溶媒中の薬物の抽出は、両親媒性化合物のよ り優れた標示(これは、リポソーム中または細胞膜中のいずれかの燐脂質層に挿 入され得る可能性をいう。)であると言える。これにより、細胞膜レベルにおけ るカチオン種としての薬物の細胞透過のモードをより正確に知ることができる。 (クロロホルム+EPC)相を単離し、EPC/コレステロールモル比4:3 を得るためにコレステロール25mgを添加した。クロロホルム中のEPC/モル ヒネモル比は、98であった。クロロホルムを蒸発させ、乾燥脂質膜を得て、pH 4.5のPBS1mLで24時間水和した。カチオン性モルヒネの封入は、31.2±2.1 %(n=5)であり、これは、pH4.5で水性媒体中に初めに溶解したMP+1m gを参照すると、リポソーム中に取り込まれたMP+0.31mg±0.02mgに相当 する。有機相(クロロホルム+EPC)中に抽出されたMP+を全て(すなわち 、クロロホルム+EPC中に抽出された0.25mg±0.04から小胞中に取り込まれ た0.31mg±0.02までを)小胞内に取り込んだ。リポソーム懸濁液の水相中にM P+は検出されなかった。1.6. pH7.4におけるMP+リポソーム配合剤からのモルヒネの放出 前述の1.5.欄の記載と同様にしてえられた、EPC720mg中に取り込まれた カチオン性モルヒネ2.8mgおよびコレステロール280mgを含有するMP+リポ ソーム配合剤10mLを、透析バッグに入れ、pH7.4のPBS150mL中に浸漬し た。PBS媒体を、37℃において速度23mL/時で連続的に再生した。PBS15 0mL中のモルヒネの濃度を3日間測定した。PBS媒体中の薬物濃度は、1時間 で6〜8μg/mLまで急上昇し、その後、3日間かけて徐々に低下した。この ことは、MP+として取り込まれたモルヒネが、ゆっくりとかつリポソームから の濃度勾配に従って放出され得ることを明示しており、YAMMOプログラムの 予測が確認された。浄化時間は、EPC72mgおよびコレステロール28mg中に 取り込まれかつpH8.1のPBS1mLで水和された無極性モルヒネ2.6mgと 同等またはいくらか長く、MP0結晶を含む懸濁液をもたらした(1.3.欄参照) 。上記結果から、TAMMO予測とリポソーム封入および放出分析評価の予測が 確認される。これより、MP+は、細胞膜を横断できると推断できる。 実施例2−ブピバカイン 2.1. TAMMOに従ったDPPC単層中へのブピバカイン挿入の予測 ブピバカインは、両親媒性アミノーアミド系長期持続性局部麻酔剤である。麻 酔作用の期間は、硬膜外(外科もしくは産科)または脊髄への投与では平均2〜 4時間であり、末梢神経ブロックでは12時間までである(参考文献27、28) 。副作用は、運動および自律神経系のブロックである。自律神経の中枢神経およ び強心性の毒性が観察されており、心臓発作や強心症を引き起こす。この自律神 経系の毒性は、治療濃度1μg/mLに近いプラスマ基準平均1.6μg/mLで 現れる。リポソームとの会合は、痛み軽減の期間を延長するのに役立つと同時に 、手足の運動阻害を回避して、低いリポソーム放出によって自律神経系の毒性を 低減する。 ブピバカインのpKは8.16である。このpHでは、分子の50%がカチオン性で 、残りの50%は中性である。従って、酸性溶液はカチオン性種を多く含む。ブピ バカインは、2つの疎水性部を有する。一方の疎水性部は、末端部に、2つのメ チル基を有するフェニル環(キシリジン基)で構成され、他方は、もう一方の末 端部の3級窒素原子と結合した末端脂肪族鎖C49で構成されている。疎水性部 は、この3級中心の窒素原子を取り巻いている。水とオクタノール間の分配係数 の対数は、分配係数に基づいて、両親媒性化合物についての範囲内の1.8である (参考文献1)。 TAMMOプログラム(参考文献24)を用い、BP0およびBP+のDPPC 中への挿入エネルギーおよびDPPC2分子間およびDPPC1分子とコレステ ロール1分子の間の相互作用エネルギーを計算した。結果を表VIに示す。 表 VI ブピバカインの配座解析数値:挿入エネルギー(−kJ/モル)は、DPPC /DPPCおよびDPPC/コレステロールと比較した。 挿入エネルギー(すなわち、DPPC中へ挿入されたカチオン性(BP+)お よび荷電されていない(BP0)ブピバカインの安定性)は、同じであって、DP PC/DPPCおよびDPPC/コレステロールの挿入エネルギーよりも高いこ とがこの表から分かる。 TAMMOプログラムの予測から得られたブピバカインのDPPC単層中への 挿入モードを図3Aおよび3Bに示す。 前記2種のブピバカイン種はいずれも、主に、燐脂質層の疎水性層(すなわち 、燐脂質層の疎水性/親水性界面を含む脂肪酸の炭素C2−C3の下)に挿入され る。 TAMMO予測は、2種のブピバカインが、単層の燐脂質膜の脂肪酸鎖との疎 水性結合を与えることを示している。カチオン性形態BP+は、疎水性キシリジ ン基とC49基の両末端に疎水性結合を有する燐脂質層内に直線配列を与える。 全分子は、単層の疎水性層(すなわち、C2−C3界面の間)に横たわっている。 荷電されていない化合物BP0の一部は、C2−C3の下の親水性層内に斜めに横 たわっているが、主に疎水性層内に入り込んでいる。すなわち、前記2種は、脂 肪酸鎖レベルで燐脂質層内部に挿入されている。単層内の部分は、BP+が疎水 性相中に完全に挿入しているため、BP0よりも高いBP+のリポソーム取り込み の安定性の予測をもたらすが、燐脂質脂肪酸鎖との結合によって、挿入エネルギ ーは、ほぼ同等である(表VI)。モルヒネについでの上述の記載のように、D PPC単層を用いたリポソーム封入安定性の予測は、特に、上記層の親水性/疎 水性界面に関する化合物の挿入エネルギーと燐脂質層内部でのその位置の両者を 包含する。2.2. ブピバカイン細胞膜透過についての配座解析予測と現在の仮説との比較 燐脂質層へのブピバカイン挿入の上記モードは、ブピバカインと燐脂質二層膜 との分子関係を考慮した現在の見解とは全く相違する。Covino(参考文献28) によれば、「荷電されてない基本形態が、神経鞘の最適な侵入には重要であ る。」 麻酔作用における局部麻酔の活性形態のみ[すなわち、基本の荷電されていな い形態(BP0)]が、神経膜を通じて軸索漿への拡散に主に応答できると考えら れていた。この仮説は、オクタノール/緩衝液のpH7.4での分配係数で表され る、荷電されていない種の脂溶性からもたらされ、両親媒性薬物の荷電されてい ない種に限定された化合物の細胞膜透過についての概論と一致する(参考文献4 )。両親媒性化合物と燐脂質層との予測された関係を規定している、有機溶媒中 での分配係数に基づく仮説(参考文献1、4)によれば、両親媒性化合物のイオ ン種は、TAMMOプログラムを用いた予測数値と比較すると、燐脂質層中へは 挿入できないと考えられる。2.3. MLV中へのBP0の取り込み過程 現在ヒトに投与されているリポソームと会合したブビバカイン配合剤(参考文 献17〜19)は、脂質膜20mg(EPC14.4mgおよびコレステロール5.6m g)およびBP02.5〜10mgから調製されている。前記膜を、pH8.1において 緩衝液1mLで水和し、フリーズエッチング電子顕微鏡で観察すると燐脂質小胞 内部および外部にブピバカイン結晶を含むMLVとして懸濁していた。 脂質膜中におけるEPC/BP0薬物比13以上(すなわち、燐脂質二層膜の飽 和限界以上)で、結晶を含まない臨床用調剤が得られる(表VII)。この膜は 、pH8.1で緩衝液1mL中にMLVとして懸濁していた。ブピバカイン5mg /mL(0.5%)の臨床用配合剤は、BP05mgと会合したEPC231mgおよ びコレステロール90mgを含有しており、pH8.1の緩衝液1mL中に懸濁して いた。 大量の荷電されていないBP0をEPC18.3μモルを含む脂質膜中に挿入する と、EPC/BP比が16までの配合剤中にブピバカイン結晶の存在が観察された 。前記比17以上の配合剤からは結晶は検出されなかった(表VII)。 荷電されていないBP0としてのこの両親媒性化合物の取り込み過程は、痛み 軽減の持続性および質の要求に応じて、結晶を含むまたは含まない配合剤を提供 する。 表 VII 2.4. pH7.4におけるリポソームBP0配合剤からのブピバカインの放出 第1リポソーム・ブピバカイン配合剤は、結晶を含んでいた。前記配合剤は、 pH8.1でPBS1mLによって水和されたEPCl4.4mg、コレステロール5. 6mgおよび無極性ブピバカインBP05mgから成る脂質膜から調製された。1 mLを透析バッグに入れて、37℃においてpH7.4のPBS150mL中に浸漬し、 23mL/時の速度で連続的に再生した。ブピバカインの放出をHPLCで測定し た。6〜12時間後に最大濃度(7〜8μg/mL)が得られた。2日後に、ブ ピバカイン全量がリポソームから放出された。 上記と同じ実験条件下において、EPC230.56mg、コレステロール84.78m gおよびBP05mgから成る脂質膜をPBS1mLでpH8.1において水和する ことにより得られた結晶を含まない調剤からのブピバカインの放出は、6時間後 に5〜8μg/mLのピークに達し、その後、ゆっくりと放出し続けて、3日後 、浄化が完了した。すなわち、リポソームからのBP0の放出は、リポソーム配 合剤がブピバカイン結晶を含まない場合、より遅かった。2.5. MLV中へのBP+取り込み過程 カチオン性ブピバカイン0.5%(5mg=15.5μモル/mL;pH6.5)を、E PCをEPC/BP+モル比6(すなわち、90μモル=EP70.65mgC)で含む クロロホルム中に抽出した。ブピバカイン濃度は、271.6nmにおいてUV分光 法により測定した。EPCを含むクロロホルム中へのBP+抽出後、そこへコレ ステロール27.5mgを添加した。 有機溶媒を不活性雰囲気下で蒸発し、脂質膜を乾燥し.た後、pH6.5で水和 を行った。封入効率は、271.6nmにおいてUV分光法により測定した。2時間 後、封入効率は、平均60±1%であり、24時間後には、74±0.5%となった。B P+5mgのうち、3.7mgがMLV燐脂質膜70.65mg中に挿入された。2.6. MLVからのBP+放出速度 上述と同様にして調製されたpH6.5におけるリポソームBP+の調剤を、透析 バッグに入れた(EPC353.25mgおよびBP+25mgを含むもの:5mg)。 透析バッグを、pH7.4のPBS145mL中に浸漬紙、23mL/時の速度で再生 した。pH7.4中性の試料を、別に調製し、ブピバカインの濃度をUV分光法で 測定した。透析バッグから未封入のブピバカイン25%を生理学的なpH媒体中に 6時間で素早く移した後、リポソームブピバカインの遅い放出が3日間生じた。 EPCを含むクロロホルム中での親水性BP+の抽出、pH6.5におけるBP+ の高いリポソーム封入効率、生理学的なpHにおける維持され延長された燐脂質 小胞からのブピカイン放出は全て、ヒドロゾルをもたらすが脂溶性のBP+の脂 質膜から燐脂質二層膜の疎水相への挿入を考慮したTAMMOの予測と合致し、 EPCを溶解した有機溶媒中での化合物の抽出によって、脂溶性の概念に従うも のである。pH7.4における延長された3日間のリポソーム・ブピバカインの放 出は、pH6.5でカチオンとして封入されたブピバカインの長い臨床作用を示唆 している。さらに、BP+のpH6.5の酸性配合剤は、正に、現在使用されている ブピバカイン配合剤と同じpHである。 上記と同様の配合剤1mLを透析バッグに入れた場合も、上述の5mLの場合 とほぼ同じように、pH7.4のPBS150mL中での最大濃度が6〜12時間後に現 れた。ゆっくりと持続するリポソームからのBP+の放出が観察されたが、24〜4 8時間が限度であった。 上記2つの実施例より、BP+の放出プロフィールが、BP0配合剤の放出プロ フィールと同様であり、透析バッグに入れるリポソーム薬物の量に依存しないこ とが言える。濃度ピークの後で、持続する遅い放出が続いた。しかし、放出時間 は、透析バッグに入れたリポソーム・ブピバカインによって、透析バッグに入れ たリポソーム配合剤5mLでは3日から、リポソーム配合剤1mLでは24〜48時 間と変化した。2.7. 総括 上記の有望な結果は、カチオン性ブピバカインのリポソーム封入問題における 先行技術とは異なり、鎮痛性の結果が得られた。BP+を予め酸性媒体中に溶解 して、乾燥脂質膜に添加し、リポソーム水相中への第1封入を行った。この条件 下で、感覚ブロック(痛み軽減)が観察された(参考文献13)が、鎮痛作用後 も、運動ブロック(手足の麻痺)が生じた(参考文献29)。薬力学特性は、リ ポソーム水相中へのBP+の封入を導きく前に拒絶反応を生じた。本発明の配座 解析プログラムTAMMOとリポソーム取り込みおよび放出分析評価との組み合 わせは、両親媒性化合物の荷電されていない形態に膜透過を制限する現在の概念 (参考文献4)と対照的に、ブピバカインのカチオン種が細胞膜を横断し得るこ とも証明している。すなわち、本発明のTAMMO−リポソーム分析評価の組み 合わせは、その細胞膜透過についての小さな薬剤分子の性質を予測することに関 連すると考えられ、統合化学を補足する、高スループットのスクリーニングにお けるツールとして取り込まれ得る。 実施例3−オキシン 3.1. TAMMOプログラムに従ったDPPC単層中へのオキシンの挿入モード の予測 オキシン(8-ヒドロキシキノリン)は、1個の窒素原子と1個のOH基を有す る2つの芳香環を含む両親媒性分子である。pKaは7.3である。水への溶解性 は低いが、オクタノール/水の分配係数が67の有機溶媒への溶解性は高い。中性 分子は、生理学的なpH7.4で主に生じる。しかし、それは、酸性pHではカチ オンであり、塩基性pHではアニオンでもある。オキシンの分子量は186である 。オキシンは、殺菌剤として知られている(参考文献30)。 TAMMOプログラムでは、DPPC2分子間の関係、およびDPPCとコレ ステロールとの喚起よりも高い挿入エネルギーが予測された。オキシンのDPP C単層中への挿入モードを図4に示す。オキシン分子は、一方の末端においてそ の芳香環とパルミチン酸との間に疎水性結合をもたらすと同時に、もう一方の末 端では、オキシンの親水性OH基と窒素原子が、第2DPPC分子のアシル鎖と 向き合っている。このことは、オキシンがリポソーム・燐脂質層内に取り込まれ 得るという予測を容認するが、上記層内では不安定である。この予測は、細胞膜 を横断した後(参考文献32)のオキシンの作用の細胞内殺菌モードと合致する (参考文献31)。3.2. MLV中へのオキシン取り込み過程 オキシン0.7mg(3.8μモル)を、クロロホルム中でEPC14.4mg(18.3μ モル)およびコレステロール5.6mgと混合すると、乾燥脂質膜におけるEPC /オキシンのモル比は4.8であることが分かった。pH7.4のPBS1mLで水和 した後、多層ラメラ状小胞中に0.35mg(50%)を取り込んだ。3.3 MLVからのオキシン放出 オキシン−MLV懸濁液を、透析バッグに入れて、pH7.4のPBS10mL中 に浸漬した。透析バッグを漬けた媒体中に見られるオキシンを、332nmにおいて 顕微鏡で滴定した。リポソーム化合物の塊を20分で放出させた。その後、pH7. 4の媒体がきれいな溶液に置き換わるまで放出を止めて、新しい漏れを調べた。 そのような漏れは、濃度勾配に従ったリポソーム二層膜を横切るオキシンの移動 を引き起こす。オキシンは、酵素反応に関連する細胞質の金属イオンを封鎖する ことによって細胞内で作用する殺菌剤として知られている。オキシンは、濃度勾 配に従って細菌の細胞膜を横切って浸透すると考えられている(参考文献30〜32 )。現在のリポソームの放出分析評価は、この仮説を確認し、DPPC単層中の オキシンの不安定性を考慮したTAMMOプログラムの予測と合致する。 実施例4:錫(II)ジオキシナート 4.1. TAMMOプログラムに従ったDPPC単層中への錫(II)ジオキシナー トの挿入モードの予測 錫(II)ジオキシナート(SnOX2)は、錫(II)原子と結合した8-ヒドロ キシキノリン(オキシン)2分子を含む両親媒性化合物である。これは、リポソ ームに挿入して、99mTcラベルした錫コロイドをさらに形成せずに、99mテクネチ ウムを使って識別される(参考文献33、34)。 錫(II)ジオキシナートは、2つのオキシンを含む疎水性部と、錫(II)親水 性部を有する。水への溶解性は低く、エタノール、メタノール、オクタノール、 ヘプタンには不溶で、クロロホルムへの溶解性も低い。ジメチルスルホキシド( DMSO)には、中程度に溶解する。 TAMMOプログラムを用い(参考文献24)、DPPC中への錫(II)ジオ キシナートの挿入エネルギーおよびDPPC2分子間とコレステロール1分子間 の相互作用エネルギーを算出した(表VIII)。 表 VIII 表からは、挿入エネルギー(すなわち、DPPC単層中に挿入された錫(II) ジオキシナートの安定性)が、DPPC/DPPCおよびDPPC/コレステロ ール間の相互作用エネルギーとほぼ同等であることが分かる。 TAMMOプログラムの予測からの錫(II)ジオキシナートの挿入モードを図 5に示す。 このTAMMO予測は、「親水性」錫(II)カチオンを含む全オキシナート分 子が、燐脂質層の疎水性相内の脂肪酸鎖と相互作用することを表している。錫( II)イオンは、懸濁液中に添加される99mTcO4とのオキシド−還元反応の原因 である親水性相中に侵入している(参考文献33、34)。挿入エネルギーは、 DPPC/DPPCと同程度であるが、疎水性相への2つのオキシン基の挿入は 、分子の高い安定性の予測を考慮に入れる。この予測は、殺菌活性の無いジオキ シナート金属(II)とその細胞膜透過可能性との間の相関に合致する(参考文献 31、32)。 この錫(II)ジオキシナートの燐脂質層への挿入モードは、Hwangによって仮 設されたリポソーム燐脂質と3種の金属ジオキシナートとの関係(参考文献35 )とは全く異なる。この文献によれば、オキシナート分子と燐脂質層の不活性 な疎水性脂肪酸鎖の間に深い結合は予測されない。Hwangの文献から、化合物の ジオキシナート基が燐脂質層の疎水性相(すなわち、脂肪酸鎖)へ挿入できない と暗示されている。したがって、燐脂質層に対する金属イオンの関係は、旅湯親 媒性燐脂質の親水性の極性末端基に制限されるべきである。4.2. MLV中への錫(II)ジオキシナートの取り込み過程 EPC18.3μモルをSnOX2の抽出前に有機溶媒に溶解すると、錫(II)ジ オキシナートのクロロホルム/水分配係数(Pch1)が向上した。溶解性の限 界は、4×10-4Mから4.1×10-3Mへ10倍高まった。この結果は、既にブ ピバカインおよびモルヒネについて記載したように、FPCを含む有機溶媒中で の薬物の脂溶性の概念を支援している。 卵黄ホスファチジルクロリン(14.4mg、18.3μモル)およびコレステロール (5.6mg、13.7μモル)を、錫(II)ジオキシナート0.1、0.2、0.3、0.4、0.5 mg(1.2μモル)および0.6mgを含有するクロロホルム中に溶解した。溶媒を 蒸発した後、NaCl150mM 1mLで水和を行った。こうして調製したML Vを、遊離した錫(II)ジオキシナートを廃棄するために、5回洗浄した。 リポソーム中に挿入された錫(II)ジオキシナート分子の数は、先のリポソー ム脂質膜中に含まれていたSnOx2分子の数と共に増加した。リポソーム飽和 は、MLVに対して封入効率30%のEPC18.3μモル中に挿入されたSnOx2 分子の数(平均1.23μモル)(EPC/SnOx2モル比=15)に対して生じた 。 結果は、EPCを含むクロロホルム中への溶解性を考慮した経験的なデータと 合致する。 4.3. 錫(II)ジオキシナートMLVをpH7.4でインキュエートする場合、放 出は、少なくとも1週間測定されなかった。このことは、pHに依存する、リポ ソーム層中への挿入の高い安定性を表している。これは、化合物の燐脂質層内部 の疎水性相への合計侵入量と、TAMMOプログラムで予測される2つのオキシ ン分子とパルミチン酸鎖との間の結合および配位、およびDMSO−d6を用い てNMR測定した錫(II)と疎水性分子との間の配位によって説明できる。挿入 エネルギーは、DPPC2分子と同等でかつブピバカインおよびモルヒネよりも 低いが、全化学構造中および疎水性相内部での化合物の多重結合は、EPC/錫 (II)ジオキシナートモル比が脂質膜中での比の飽和度に達する15以下の場合、 高い封入の安定性を確実にする。このことは、挿入モードおよびエネルギーがい ずれも、両親媒性化合物のリポソーム取り込みの安定性を予測するのに必要であ ることを示している。 MLV中での錫(II)ジオキサナートの安定性および生理学的なpH7.4では 放出しないことは、化合物の「親」分子(すなわち、オキシン)が細菌細胞膜を 横切ることによって殺菌剤として作用することを示した先の結果と合致する。そ れに対照して、全ての金属(II)ジオキシナートは、細菌膜を透過できないため 、殺菌活性を発現しない(参考文献32、33)。 また、TAMMOプログラム予測とリポソーム取り込みおよび放出分析評価と の組み合わせは、細菌についての先の実験を確認するものであって、両親媒性化 合物(すなわち、金属(II)ジオキシナート)が細胞膜を通過できないことを証 明している。これは、高スループットのスクリーニングにおける本発明の使用を 支持している。 実施例5:クロニジン 5.1. TAMMOプログラムに従ったDPPC単層中へのクロニジンの取り込み 予測 クロニジンは、両親媒性の抗高血圧(症)剤である(参考文献36)。クロニ ジンは、1990年代において、微麻酔の質を高めるために使い始められた。残念な ことに、ヒトの硬膜外部に投与されるた場合、鎮痛効果は、1日間、低血圧(症 )作用を伴う(参考文献37)。すなわち、リポソームキャリアーとクロニジン を一緒に使用する意図は、燐脂質小胞からの遅い放出を延長することによって、 低血圧(症)作用の低減および鎮痛作用の維持および向上することである。 クロニジンのpKは8.2である。2つの塩素原子を含むヘキサ環状疎水性部と 、2つの窒素原子を含む親水性ペンタ環状部を有する。クロニジンは,酸性溶液 にカチオンとして高い溶解性を示し、荷電されていないと、オクタノールに溶解 する。分配係数に基づくリポソーム封入の予測に関する両親媒性分子の領域にお い て、pH7.4におけるpoct/緩衝液比の対数は1.59である(参考文献1)。 TAMMOプログラムで予測される、クロニジンの荷電されていない種(CL0 )およびカチオン性種(CL+)とDPPC単層との会合エネルギーを考慮した 数値解析データを表IIIおよびIXに示す。 表 IX DPPC単層中へのクロニジン挿入のTAMMO数値解析データ。DPPC/ DPPCおよびDPPC/コレステロールと比較した2種のクロニジンの相互作 用エネルギー。 CL0およびCL+の両者の挿入エネルギーは、DPPC2分子間またはDPP Cとコレステロール間の値よりも低い。すなわち、2種のクロニジンの燐脂質小 胞内での安定性は、脂肪酸脂質相単相内部での化合物の安定性を確実にできるほ ど低くないと予測できる。 モルヒネ、ブピバカインおよび錫(II)ジオキシナートを考慮したTAMMO の予測に対照して、親水性の極性ホスホクロリン末端基に近く、C2−C3界面下 の親水性相に近い(CL0)かまたは内部(CL+)の、CL0およびCL+の両者 はその疎水性部を介して燐脂質脂肪酸鎖の末端に結合する。CL+プロトンは、 極性末端のリン酸基と相互作用するが、フェニル基は、上記2種中の脂肪酸鎖の 第1炭素と相互作用する。5.2. MLV中へのクロニジンの封入過程 UV分光法により、クロニジンのリポソーム封入を271nmで測定した。EP C14.4mg(18.3μモル)、コレステロール5.6mgおよびCL00.5mg(2.2μ モル)において、pH7.8の等浸透圧の緩衝液(CL+71.5%;CL028.5%)で 脂質膜を水和した。封入効率は、以下の通りである。 14.5%±0.4%(n=6);または 72.5μg/mL±2μg/mL;または 0.315±0.008μモル。 従って、封入効率は、顕著にかつ再現性良く低かった。5.3. MLVからのクロニジンの放出 封入されたクロニジンの放出を、pH7.4において1、3および6時間後に測 定した。ほぼ全てのリポソーム化合物は、1時間後、燐脂質小胞から漏れ出した 。低いクロニジン封入レベルおよびその急速な放出は、TAMMO予測とほぼ合 致していることから、CL0およびCL+はいずれも化合物の有用なキャリアーで あるとは考えられない。評価 両親媒性化合物のリポソーム取り込み。表IIの結果から、燐脂質層の(脂肪酸 鎖の炭素C2−C3の下の)疎水性相中に挿入した両親媒性分子が、燐脂質、コレ ステロールおよび荷電されていない種またはイオン化種としての両親媒性化合物 で構成された脂質膜からリポソーム中に好ましくは封入されることが明らかであ る。この特徴は、両親媒性化合物のリポソーム封入に関する正確な情報を与える 。対照的に、燐脂質小胞中には挿入し難く不安定なクロニジンの分配が、高度に 封入されて生理学的なpHで安定でかつ放出し易いモルヒネよりも高いことから 、Log Poctは不適切である。水中および有機溶媒中での低い安定性、特にオクタ ノール中での不溶性を考慮すると、Log Poctniに基づく錫(II)ジオキサナート のリポソーム封入については予測ができない。経験的なデータで確かめられたT AMMO予測は、リポソーム燐脂質二層膜中への挿入を考慮する場合、錫(II) ジオキサナートを親媒性化合物として定義できる。 従って、本発明は、燐脂質層中への挿入モードおよびそれによる荷電されてい ない種またはイオン化種としての両親媒性化合物の安定性を予測できる。この予 測は、結果として、決定すべき前記2種の両親媒性化合物のリポソーム取り込み の可能性を容易にする。前記予測は、化合物が細胞膜を透過するか否かの予測も 考慮している。高スループットスクリーニング 大抵の製剤用小分子は、細胞膜を横切った後、細胞内で作用または代謝するこ とが知られている(参考文献4)。上記実施例により、有機溶媒(特に、オクタ ノール)の分配が、化合物の細胞膜を含む燐脂質層に挿入するかまたは前記層を 横切る可能性についての確実なデータを与えないことを証明した。対照的に、予 測用TAMMOプログラムによる分子設計解析とリポソーム取り込みおよび放出 分析評価との組み合わせ(いずれも、本発明の核を形成するものである。)が、 細胞膜を横切る可能性の確実な予測を与える。多数の新しい小さな製剤用分子は 、現在、コンピューターで計算された統合化学により精巧に作り上げられたもの である。本発明のTAMMO−リポソーム分析評価の組み合わせは、細胞膜の透 過に関する小さな製剤用化合物の性質を予測するためのコンピューターで計算さ れかつ自動化された経験的なツールである。 参考文献 1.Berageri GV,Jenkins SA.Parsons DL。リポソーム・ドラッグデリバリー システムズ;ランカスター:テクノミック出版社(1993年)。 2.Benameur H,Latour N,Schandene L,Van Vooren JP,Flamin B,Legros F J。リポソームを取り込んだデキサメタソンパルミテートは、有糸分裂促進物質 に対するin vitroリンパ球応答を抑制する。ジャーナル・オブ・ファーマシー・ アンド・ファーマコロジー 47:812〜817頁(1995年)。 ーム中への薬物取り込みに関する設計研究。リポソーム・テクノロジー:薬物、 たんぱく質および遺伝子物質の取り込み。Gregoriadis G編。ボッカ・ラトン: CRCプレス、1〜17頁(1984年)。 4.Benet LZ,Sheriner LB。薬物動力学:薬物吸収、分布および排出の動特性 。「治療学の薬理学基準」内。Gilman AG,Goodman LS,Rall TW,Murad F編。 マクミラン出版社、ニューヨーク、4頁(1995年)。 5.Muntwyler RD。単層ラメラ状リポソームに取り込みされた薬剤による治療処 置。欧州特許出願、チバーガイギー・アクチエン・ゲゼルシャフト、1984年。 6.Legros F,Ruysschaert JM。リポソーム中に封入された局部麻酔剤および/ または自律神経系中枢神経系に作用する鎮痛剤含有薬剤組成物。IRE−セルラ ルグ・エス・エー。デマンデ・ド・ブレヴェート・ウーロピアン、1986年。 7.Schmitt J,Nehne J,Feller Wおよびlerger S。カプセル化用溶液、燐脂質 −リポソーム取り込み後の脂質作用物質およびリポソーム取り込み物質の調合。 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───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S D,SZ,UG),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU ,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH, CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,G B,GE,GH,HU,IL,IS,JP,KE,KG ,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT, LU,LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,N O,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG ,SI,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG, US,UZ,VN,YU (72)発明者 ブラスール,ロベール ベルギー、ベー―5351アイヨ、ヴワ・デ・ ジェロン (72)発明者 レグロ,フランツ ベルギー、ベー―6040ジュメ、ショセ・ド ゥ・ジリ122番 (72)発明者 ブフィオー,オリヴィエ ベルギー、ベー―5170ルスヴェ、リュ・ デ・オージェ14番

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.多層ラメラ状リポソームを調製して、親水性部と疎水性部を含む両親媒性 化合物のイオン種を燐脂質二層膜内に取り込む方法であって、 i)燐脂質を溶解した有機溶媒によって水性媒体から親水性イオン種を抽出する工 程、 ii)前記有機溶媒が乾固するまで蒸発して、燐脂質および両親媒性化合物を含む 脂質膜を調製する工程、および iii)両親媒性化合物が脂肪酸C2-C3親水性中間膜の下の燐脂質膜内へ少なくと も部分的に挿入されるようにpH4〜6.5までの酸性pH領域で脂質膜を水和す ることにより、多層ラメラ状リポソームの懸濁液を調製する工程 を含む方法。 2.リポソーム燐脂質二層膜への両親媒性化合物の挿入のモードおよび該膜内 での前記両親媒性化合物の安定性を分子設計数値解析または配座解析によって予 測する請求項1記載の方法。 3.前記工程(iii)で得られる乾燥した脂質膜が、両親媒性イオンを最初に 溶解した水溶液のpHで水和する請求項1または2記載の方法。 4.前記イオン種がカチオン性ブピバカインである請求項1〜3のいずれかに 記載の方法。 5.燐脂質/ブピバカインのモル比が少なくとも13である請求項4記載の方法 。 6.前記工程(ii)で得られる脂質膜を、pH平均6.5の緩衝剤で水和する請 求項4または5記載の方法。 7.前記イオン種がカチオン性モルヒネである請求項1〜3のいずれかに記載 の方法。 8.燐脂質/モルヒネのモル比が少なくとも20である請求項7記載の方法。 9.前記工程(ii)で得られる脂質を、pH平均6.5の緩衝剤で水和する請求 項7または8記載の方法。 10.前記イオン種が錫(II)ジオキシナートである請求項1〜3のいずれか に記載の方法。 11.燐脂質/錫(II)ジオキシナートのモル比が少なくとも15である請求項 10記載の方法。 12.前記工程(ii)で得られる脂質膜を、pH平均6.5の緩衝剤で水和する ことを特徴とする請求項10または11記載の方法。 13.多層ラメラ状リポソームを調製して、親水性部と疎水性部を含む荷電さ れていない両親媒性化合物を燐脂質二層膜内に取り込む方法であって、 a)燐脂質二層膜中に両親媒性化合物の無極性の疎水性種を、前決定された燐脂 質/前記化合物のモル比を用いて溶解して、該化合物の結晶を有しないリポソー ム内部に専ら取り込まれた、またはリポソーム外結晶を有するリポソーム内部に 部分的に取り込まれた該化合物含有リポソーム調剤を得る工程、 b)前記有機溶媒が乾固するまで蒸発して、燐脂質および両親媒性化合物を含む 脂質膜を調製する工程、および c)両親媒性化合物が脂肪酸C2-C3親水性界面の下の燐脂質膜内へ少なくとも 部分的に挿入されるように、両親媒性化合物が荷電されていない形態で残るpH において脂質膜を水和することにより、多層ラメラ状リポソームの懸濁液を調製 する工程 を含む方法。 14.リポソーム・燐脂質二層膜への両親媒性化合物の挿入のモードおよび該 膜内での前記両親媒性化合物の安定性を分子設計数値解析または配座解析によっ て予測する請求項13記載の方法。 15.燐脂質/前記両親媒性化合物のモル比を徐々に高めて多層ラメラ状小胞 としての前記脂質膜を水和して、リポソーム外結晶またはリポソーム内結晶の存 在の有無を光学顕微鏡および/または電子顕微鏡で決定することによって、前記 両親媒性化合物の結晶を有しないリポソーム内部に専ら該化合物を取り込むか、 またはリポソーム内結晶は有しないがリポソーム外結晶を有するリポソーム内部 に部分的に取り込むときの燐脂質/前記両親媒性化合物のモル比を前決定する請 求項13または14記載の方法。 16.荷電されていない両親媒性化合物がブピバカインであり、脂質膜中での 燐脂質/ブピバカインのモル比が13未満であり、それによってブピカインをリポ ソーム外結晶を有する燐脂質二層膜中に部分的に取り込む請求項13〜15のい ずれかに記載の記載の方法。 17.荷電されていない両親媒性化合物がブピバカインであり、脂質膜中での 燐脂質/ブピバカインのモル比が13以上であり、それによってブピカインをリポ ソーム外結晶を有しない燐脂質二層膜中に取り込むことを特徴とする請求項13 〜15のいずれかに記載の方法。 18.荷電されていない両親媒性化合物がモルヒネであり、脂質膜中での燐脂 質/モルヒネのモル比が20未満であり、それによってモルヒネをリポソーム外結 晶を有する燐脂質二層膜中に部分的に取り込むことを特徴とする請求項13〜1 5のいずれかに記載の方法。 19.荷電されていない両親媒性化合物がモルヒネであり、脂質膜中での燐脂 質/モルヒネのモル比が20以上であり、それによってモルヒネをリポソーム外結 晶を有しない燐脂質二層膜中に取り込むことを特徴とする請求項13〜15のい ずれかに記載の方法。 20.前記モル比が40までである請求項19記載の方法。 21.工程(c)における脂質膜の水和をpH8.1で行う請求項13〜20の いずれかに記載の方法。 22.燐脂質および両親媒性化合物を含む脂質膜を、緩衝液または0.9%Na Cl水溶液を用いて3.5〜10.5の最終pHまで水和する方法であって、特定のp H範囲が、注射可能薬な配合剤に適合し、両親媒性化合物のpKの関数としてお よび所望の両親媒性化合物の治療用組成が荷電されていない種であるかイオン種 であるかに依存して選択される請求項1〜21のいずれかに記載の方法。 23.燐脂質がL−αまたはL−βホスファチジルコリン、あるいはそれらの 混合物である請求項1〜22のいずれかに記載の方法。 24.脂質膜がステロールをさらに含む請求項1〜23のいずれかに記載の方 法。 25.燐脂質:ステロールのモル比が1.0〜1:1の範囲である請求項23記 載の方法。 26.多層ラメラ状リポソームが注射可能な形態で調製される請求項1〜25 のいずれかに記載の方法。 27.請求項1〜26のいずれかに記載の方法で調製された、両親媒性化合物 と会合した多層ラメラ状リポソームを含む薬剤組成物。 28.注射可能な形態である請求項27記載の薬剤組成物。 29.荷電されていない種またはイオン種としての両親媒性化合物による細胞 膜の透過を決定する方法であって、 燐脂質単層中に前記化合物を挿入するモードおよび該層中での前記化合物の安 定性を分子設計数値解析または配座解析によって予測すること、 請求項1〜10のいずれかに記載の方法に従って前記両親媒性化合物を取り込 んだ多層ラメラ状リポソームを調製すること、および 連続的に除去されたpH7.4の緩衝媒体中への前記両親媒性化合物の放出割合を 決定すること を含む方法。 30.細胞膜透過のための親媒性化合物をスクリーニングするのに使用する請 求項29記載の方法。
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