JP2001342383A - インクジエツト用インク及びインク定着方法 - Google Patents

インクジエツト用インク及びインク定着方法

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JP2001342383A
JP2001342383A JP2000050312A JP2000050312A JP2001342383A JP 2001342383 A JP2001342383 A JP 2001342383A JP 2000050312 A JP2000050312 A JP 2000050312A JP 2000050312 A JP2000050312 A JP 2000050312A JP 2001342383 A JP2001342383 A JP 2001342383A
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ink
laser
dye
ink jet
pigment
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Yasusaburo Sakai
泰三郎 酒井
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 インクジエツト方式は電子写真方式よりも多
色印刷に適しており、デジタル印刷の主流になると見ら
れている。 しかしながら、従来のインクジエツト用水
性インクでは色材として水溶性染料が用いられており、
印刷物の堅牢性(耐水性および耐光性)が劣るため商業
印刷には使えない。 インクジエツト用水性インクの堅
牢性を版印刷インクと同じ水準に向上させることによ
り、商業印刷にも使えるようにすることを目的とする。 【構成】 可溶性建染染料を含有する水性インクを用い
てインクジエツト印刷した後、紙面上のインクドツトに
レーザー照射することにより色材を不溶化してインク定
着させるインクジエツト用水性インクおよびそのインク
定着方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はインクジェット用イン
ク及びインク定着方法に関する。 更に詳しくは、イン
クジエツト記録された被記録材上のインクドツトにレー
ザーを照射することによりインク溶媒中に溶解している
可溶性建染染料を不溶化してインクを定着させるインク
ジエツト用インクの定着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット記録法はインクの微小液
滴をノズルから吐出させて、それを紙などの被記録材面
に付着させ印字または画像の記録を行うものである。
いろいろなインクジェット記録法が提案されており、コ
ンティニアス法と呼ばれる方法は例えばアメリカ特許U
SP 3,298,030およびUSP 3,596,
275に開示されている。またドロップオンデマンド法
では、ピエゾ素子の変形をインク吐出の駆動力に応用し
たものが例えばUSP 3,946,398に開示され
ている。また熱エネルギーを利用してインク滴を吐出す
るインクジエツト記録法は例えばUSP 4,251,
824に開示されている。 これらの各特許公報にはイ
ンク滴を吐出させる方法について提案されているけれど
も、インクジエツト記録法に適するインク組成物につい
ては記述されていない。
【0003】しかしながら、いずれのインクジエツト記
録法においても、インクは微細なノズルのオリフイスか
ら微小液滴として高速度で吐出されるため、インク滴の
吐出安定性はインクの粘度および表面張力に大きく左右
される。 即ち、インク粘度は出来るだけ小さく、イン
クの表面張力は出来るだけ大きい値が望ましい。 も
し、インク粘度が大きい場合は、インク室内の高周波駆
動に追随して記録ヘツドに安定したインク供給が困難に
なる。 また、インクの表面張力が小さい場合は、イン
ク滴のノズル開口部に対する濡れが大きくなってインク
滴を正確な方向へ飛ばすことが困難になり、インク滴の
着地点の位置ズレが生ずるなど好ましくない事態を引き
起こす。
【0004】上記の理由により、インクジエツト記録用
インクとして一般には水を主たる溶媒とした水性インク
が用いられている。 又、着色材として水溶性染料、例
えば、酸性染料、直接染料、塩基性染料等が用いられて
いる。 しかしながら、このような水溶性染料を含む水
性インクで記録された印字物は着色材の耐水性が低いこ
とが問題であった。 また、耐光性も弱いために印字物
の保存安定性が不足していた。
【0005】この問題に対処するため、顔料を分散させ
た水性インクを用いることが多数提案されている(例え
ば、特開昭56−147859号)。 この方法によれ
ば、記録されたインクの堅牢性については満足できるも
のの、インクジエツト用インクとして用いた場合、次に
述べる問題が生じてくる。色材として顔料を含む水性イ
ンクでは、顔料粒子がインク溶媒中に分散された状態に
あり本質的に不均一系のインクである。 このため、イ
ンクジエツト記録が長時間にわたっておこなわれた場合
にはノズルの目詰まりを生じることがある。また、顔料
を含む水性インクでは鮮明色が得られない。 これらの
欠点のために顔料を分散させた水性インクはインクジエ
ツト用インクとしては色材の堅牢性が優れていても評価
されないのである。
【0006】顔料を分散させた水性インクでは鮮明色が
得られない理由は次のように説明される。 インクジエ
ツト用インクではインク粘度を出来るだけ低く維持する
ことが要求されるため、版印刷インクのように高粘度の
ビークルをインクに添加することができない。 版印刷
インクには色材として顔料が使用されるが、顔料粒子は
ビークル中に埋没して被覆されているため光の乱反射が
抑えられ、色の鮮明さも維持されている。 これに対し
て、顔料を含む水性インクでは低粘度の溶媒の中に顔料
が分散しているだけであるため、用紙にインクジエツト
記録された後は裸の顔料粒子が紙の上に付着している状
態である。 顔料の粒子径は可視光の波長より少し大き
い。 不規則な形状に粉砕された顔料粒子の表面では光
の乱反射を生じて色がくすんで見える。 それ故、顔料
を含む水性インクでは鮮明色が得られない。顔料粒子を
更に細かく粉砕して粒子径を可視光の波長より小さくす
れば鮮明色や透明色も得られるようになり、この問題は
簡単に解決できそうに思われるが、実際にはそうはなら
ない。 通常の顔料の粒子径は1〜10μmである。
この粒子を更に細かくすると、粒子の表面積が著しく増
大して粒子間の引力が相対的に大きくなり、いわゆる二
次凝集を生ずる。 二次凝集は微細粒子が互いにくっつ
き合って団子状に固まる現象である。 これを防ぐには
界面活性剤を多量に加えるなどの対策はあるが、インク
ジエツト用インクでは表面張力の低下は好ましくない。
また、界面活性剤の添加はインク中に気泡を生じやす
くなり、インク吐出能力に悪影響を及ぼす等の好ましく
ない副作用を生ずる。 これらの欠点のために、顔料を
含む水性インクは堅牢性が優れているけれどもインクジ
エツト用インクとして評価されないのである。
【0007】上記の不都合を回避するため、水溶性染料
を含む水性インクを用いてインクジエツト記録した後、
被記録材の上でインク色素を不溶化する方法が提案さ
れ、そのようなインクを具体化するものとして可溶性建
染染料を含有する水性インクが、例えば、特許公報平成
7年−第29477号に提案されている。
【0008】可溶性建染染料は不溶性色素である(即
ち、顔料である)建染染料を還元してロイコ体とし、こ
れを硫酸によりエステル化したのちナトリウム塩として
水溶性に変性したものである。 上記の特許公報平成7
年−第29477号に記述されているように、この可溶
性建染染料に熱エネルギーまたは光エネルギーを与える
ことにより元の不溶性色素を再生する技術は公知であ
る。 たとえば、イギリス特許BP354,575号及
びBP431,072号にはこの性質を利用して湿式カ
ラー写真を得る方法が提案されている。 また、公開特
許公報昭和50年−第123991号には可溶性建染染
料に光を照射して不溶化させテキスタイルに写真調の図
柄模様をプリントする方法が提案されている。
【0009】可溶性建染染料に熱エネルギーまたは光エ
ネルギーを与えて顔料(不溶性色素)を再生する化学反
応プロセスを化1に示した。化1ではカラーインデツク
ス番号C.I.73360(C.I.Vat Red
1)に相当する4,4’−ジメチル−6,6’−ジクロ
ロチオインジゴのロイコ硫酸エステルナトリウム塩を例
にとり示した。
【0010】
【化1】
【0011】可溶性建染染料は一群の同種染料に付けら
れた冠称名であり、化学物質を正確に表示するものでは
ないが、慣習的に建染染料のロイコ硫酸エステル塩を示
すものとして使われている。 市販の可溶性建染染料は
繊維の染色用に製造されたものであり、増量材として無
機塩類が混入されており、色素化合物が20〜40%
(重量)しか含まれていないが、ここでは可溶性建染染
料の用語を化2に列挙した化学構造式を有する水溶性色
素を示すものとして用いた。
【0012】
【化2】
【0013】
【発明が解決しようとする課題】公開特許公報平成10
年−第305570号には可溶性建染染料を含む水性イ
ンクを用いてインクジエツト記録した後、紙面上のイン
クドツトをUVランプにより紫外線を照射して可溶性建
染染料を不溶化し、即ちインク定着をおこなって耐水性
及び耐光性に優れた記録物(印刷物)を得る方法が提案
されている。 この方法によれば、堅牢性に優れた印刷
物が得られると同時に、顔料インクでは得られなかった
鮮明色や透明色に関しても、水溶性染料と同じレベルの
鮮明さ及び透明性が得られる特長がある。 これは水に
溶解した水溶性染料から再生された顔料であるために粒
子が非常に細かくて光の乱反射などを生じないからであ
る。しかしながら、染料を不溶化するのに必要なUV照
射時間が60秒程度と比較的長いため、その間に用紙上
のインクドツトが滲んでしまう欠点が解決されずに残さ
れていた。 インクジエツトによる印刷ではインクドツ
トが紙面に着地した直後から滲み始めるため、インクド
ツトの滲みを防止するためには出来るだけ短時間内にイ
ンク定着することが望ましい。
【0014】インクジエツト記録方式による印刷ではイ
ンクドツトの滲み防止は非常に重要な問題である。 イ
ンクドツトの滲みが生じると印刷された画像や文字がぼ
やけてしまい印刷物の品位が著しく低下する。 それ
故、インクドツトが用紙に着地したのち、直ちに染料を
不溶化することがドツトの滲み防止に不可決である。
【0015】インクジエツト方式では、記録ヘツドのノ
ズルから吐出されるインクドツトの径は10〜50μm
である。 従って、一個のインク滴の容積は50〜10
0ピコリツトル程度であり、紙面上のインクドツトに含
まれる染料を不溶化するのに必要なエネルギー量は僅か
である。 しかしながら、UVランプから放射される紫
外線のエネルギー密度は低過ぎることが明らかになっ
た。 UVランプの出力を変えずに放射エネルギー密度
を大きくすることは非常に困難である。 これに対し
て、レーザーではエネルギー密度を一万倍に濃縮するこ
とも可能である。
【0016】
【課題を解決するための手段】用紙の表面に付着したイ
ンクドツトに高密度のエネルギーを局所的に付与する手
段としてレーザー照射が効果的であることが見いだされ
た。 即ち、レーザー光は単一波長のコヒーレントな電
磁波の一種であり、収束性が良いため、レンズで絞って
径がμm単位の小さなスポツトに高密度エネルギーを集
中させることができる。 それ故、用紙の表面に着地し
た直後のインクドツトに焦点を当て染料を不溶化するこ
とができる。 UVランプでは微小なピンポイントに高
密度エネルギーを集中させることは不可能であった。特
許願平成10年第301580号の中でインクドツトに
含まれる可溶性建染染料を不溶化するのにレーザー照射
が有用であることを示唆したが(明細書中の段落番号0
014に記載)、その効果を実験により確認していなか
ったため具体的に説明することが出来なかった。インク
ジエツト記録ヘツドがインク滴を吐出する速さは駆動電
圧の周波数にも左右されるが、通常はキロヘルツ単位の
頻度である。 一方、レーザー照射時間はレーザー出力
にも左右されるが、通常実用されている例ではマイクロ
秒(μs)の単位である。 この関係から、インクジエ
ツト印刷において、インク吐出速度に同調してインクド
ツトにレーザーを照射しインク定着させることが十分可
能であることがわかる。 これによって、普通紙の上で
もインクドツトの滲みを生じることなくインクジエツト
印刷することが可能になった。赤外波長域のレーザーを
用いれば局所的に高温を発生させてインクドツトに含ま
れる可溶性建染染料を不溶化することができる。 紫外
波長域のレーザーを用いれば、光化学的に不溶性建染染
料の加水分解を促進させて瞬間的に不溶化させることが
できる。 レーザーを応用するためには、対象物質が吸
収する波長域のレーザーを選択しなければならない。
レーザー照射で色材を不溶化することが出来るインクジ
エツト用水性インクの組成は次のようである。
【0017】 尚、高沸点極性有機溶剤としては、N−メチル−ピロリ
ドン,N,N’−ジメチル−イミダゾリジノン等を使用
できる。
【0018】水は赤外波長域に強い吸収を有し、高沸点
極性有機溶剤は紫外波長域に強い吸収を有する。 可溶
性建染染料は紫外〜可視波長域に強い吸収を有するの
で、本法の目的には紫外、可視、赤外各波長のレーザー
を使用できる。各種のレーザー発振器(レーザー素子)
を利用することができるが、インクジエツト方式の印刷
機構の中に組み入れることが条件となるため、コンパク
トなサイズに製作できる固体レーザーが好ましい。 な
かでも、半導体レーザーは寸法が小さく記録ヘツドの中
に組み込むことも可能となり、本法に応用するレーザー
素子として適している。
【0019】
【発明の実施の形態】インクドツトに吸収されたレーザ
ー光が熱エネルギーに変換され、熱伝導によって被記録
材の温度も上昇する。 用紙の温度上昇に注意して紙が
焦げない程度にレーザー出力を調節する。 図1におい
て被記録材上のインクドツトにレーザーを照射する説明
図を示した。 レーザー素子としては、例えば、出力波
長403nmの窒化ガリウム製半導体レーザー素子を使
用する。
【0020】
【図1】
【0021】
【実施例1】インクジエツト用インクとして次の組成の
水性インクを調製した。 可溶性建染染料として化2に挙げた染料を使用した。
これらの水性インクを市販のインクジエツトプリンタを
用いてインクジエツト記録した後、紙面上のインクドツ
トにレーザー照射した。 レーザー発振器には出力波長
0.694μmのルビーレーザーを使用した。 このル
ビーレーザーは医療用に使用されているもので、皮膚科
においてアザやシミ等を取り除く治療用に使われる。
表皮の下10μmほどの所に在るメラミン色素細胞をレ
ーザーにより破壊または壊死させてメラミン色素を除去
するものである。 化2に挙げたいずれの染料を含むイ
ンクについてもレーザー照射により滲みのないインク定
着が得られた。 レーザーの照射条件は医療用の場合と
同様に設定した。
【0022】
【発明の効果】可溶性建染染料を含む水性インクをイン
クジエツト記録した後、レーザー照射することによりド
ツト滲みのないインク定着が可能になった。 これによ
り、従来のインクジエツト用水性インクでは解決できな
かった色の堅牢性(耐水性及び耐光性)、色の鮮明さ及
びドツト滲み防止に関する全ての問題を同時に解決でき
るようになった。 それ故、用紙として普通紙を用いて
もインクジエツト方式により従来の版印刷と同じ品質の
印刷物が得られるようになった。 即ち、インクジエツ
ト方式による商業印刷が可能になった。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】被記録材上のインクドツトにレーザー照射して
インク定着をおこなう説明図である。
【符号の説明】
1・・・インクジエツト記録ヘツド 2・・・インク滴 3・・・インクドツト 4・・・レーザー発振器(レーザー素子) 5・・・レーザービーム 6・・・用紙(被記録材) 7・・・紙送り方向
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年4月20日(2000.4.2
0)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 インクジエツト用インク及びインク
定着方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明はインクジェット用イン
ク及びインク定着方法に関する。 更に詳しくは、イン
クジエツト印刷された紙面上のインクドツトにレーザー
を照射してインクの滲みを防止しながらインクを定着さ
せるインクジエツト用レーザー定着型インク及びインク
定着方法に関する。
【0002】
【従来の技術】インクジェット印刷法はインクの微小液
滴をノズルから吐出させて、それを紙面に付着させ文字
または画像の印刷を行うものである。 いろいろなイン
クジェット印刷法が提案されており、コンティニアス法
と呼ばれる方法はアメリカ特許USP 3,298.0
30およびUSP 3,596,275に開示されてい
る。 またドロップオンデマンド法では、ピエゾ素子の
変形をインク吐出の駆動力に応用したものがUSP
3,946,398に開示されている。また熱エネルギ
ーを利用してインク滴を吐出するインクジエツト印刷法
はUSP 4,251,824に開示されている。 こ
れらの各特許公報にはインク滴を吐出させる方法につい
て提案されているけれども、インクジエツト印刷法に適
するインク組成物については記述されていない。
【0003】しかしながら、いずれのインクジエツト印
刷法においても、インクは微細なノズルのオリフイスか
ら微小液滴として高速度で吐出されるため、インク滴の
吐出安定性はインクの粘度および表面張力に大きく左右
される。 即ち、インク粘度は出来るだけ小さく、イン
クの表面張力は出来るだけ大きい値が望ましい。 例え
ば、高速度でインクが吐出されるため、また素早くイン
クをノズル内に補充するためにはインク粘度は出来るだ
け小さいことが要求される。 また、インク滴を出来る
だけ真球に近い形で用紙に着地させるためには、インク
の表面張力は大きい方が好ましい。
【0004】上記の理由により、インクジエツト用イン
クとして一般には水を主たる溶媒とした水性インクが用
いられている。 また、色材として塩基性染料、酸性染
料、直接染料等の水溶性染料が用いられている。 しか
しながら、このような水溶性染料を含む水性インクで印
刷された印刷物はインク色材の耐水性が低いことが問題
であった。 また、耐光性も弱いために印刷物の堅牢性
(保存性)が不足していた。
【0005】この問題に対処するため、顔料を分散させ
た水性インクを用いることが多数提案されている(例え
ば、特開昭56−147859号)。 この方法によれ
ば、印刷されたインクの堅牢性については満足できる
が、インクジエツト用インクとして用いた場合、次に述
べる問題が生じてくる。色材として顔料を含む水性イン
クでは、顔料粒子がインク溶媒中に分散された状態にあ
り本質的に不均一系のインクである。 そのため、イン
クジエツト印刷が長時間にわたっておこなわれた場合に
はノズルの目詰まりを生じることがある。また、顔料を
含む水性インクでは鮮明色が得られない。 これらの欠
点のために顔料を分散させた水性インクはインクジエツ
ト用インクとしては色材の堅牢性が優れていても評価さ
れないのである。
【0006】顔料を分散させた水性インクでは鮮明色が
得られない理由は次のように説明される。 インクジエ
ツト用インクではインク粘度を出来るだけ低く維持する
ことが要求されるため、版印刷インクのように高粘度の
ビークルをインクに添加することができない。 版印刷
インクでは色材として顔料が使用されるが、顔料粒子は
ビークルによつて被覆されているため光の乱反射が抑え
られ、色の鮮明さも維持されている。 これに対して、
インクジエツト用水性インクでは水の中に顔料が分散し
ているだけであるため、用紙にインクジエツト印刷され
た後は裸の顔料粒子が紙の上に付着している状態にあ
る。 顔料の粒子径は可視光の波長より少し大きい。
不規則な形状に粉砕された顔料粒子の表面では光の乱反
射を生じて色がくすんで見えるため、顔料を含む水性イ
ンクでは鮮明色が得られない。顔料粒子を更に細かく粉
砕して粒子径を可視光の波長より小さくすれば鮮明色や
透明色も得られるようになり、この問題は簡単に解決で
きそうに思われるが、実際にはそうはならない。 通常
の顔料の粒子径は1〜10μmである。 この粒子を更
に細かくすると、粒子の表面積が著しく増大して粒子間
の引力が相対的に大きくなり、いわゆる二次凝集を生ず
る。 二次凝集は微細粒子が互いにくっつき合って団子
状に固まる現象である。 これを防ぐには界面活性剤を
多量に加えるなどの対策はあるが、インクジエツト用イ
ンクでは表面張力の低下は好ましくない。 また、界面
活性剤の添加はインク中に気泡を生じやすくなり、イン
ク吐出能力に悪影響を及ぼす。 これらの欠点のため
に、顔料を分散させた水性インクはインクジエツト用イ
ンクとして性能が良くないのである。
【0007】上記の不都合を回避するため、水溶性染料
を溶解した水性インクによりインクジエツト印刷した
後、用紙の上で顔料(ピグメント)を再生する方法のひ
とつとして可溶性建染染料を含有する水性インクが提案
されている。
【0008】可溶性建染染料は不溶性色素の建染染料を
還元してロイコ体とし、このロイコ体のOH基を濃硫酸
によりエステル化して安定化したのち残りのもうひとつ
の酸基をナトリウム塩にして(硫酸は二塩基酸であるか
ら)水溶性に変性したものである。 エステル化反応は
可逆反応であるから、エステル化合物の可溶性建染染料
は加水分解して元のロイコ体を再生する。 ロイコ体は
非常に酸化され易いため、空気中の酸素により容易に酸
化されて不溶性色素(建染染料)を再生する。
【0009】特許公報平成7年−第29477号及び公
開特許公報平成10年−第305570号に述べられて
いるように、この可溶性建染染料に熱エネルギーまたは
光エネルギーを与えることにより元の不溶性色素を再生
することができる。
【0010】公開特許公報平成10年−第305570
号には可溶性建染染料を含む水性インクを用いてインク
ジエツト印刷した後、紙面上のインクドツトをUV照射
して可溶性建染染料を不溶化し、即ち、インク定着をお
こなって耐水性及び耐光性に優れた印刷物を得る方法が
提案されている。 この方法によれば、堅牢性に優れた
印刷物が得られると同時に、顔料インクでは得られなか
った鮮明色や透明色も得られる長所がある。
【0011】しかしながら、染料を不溶化するのに必要
なUV照射時間が60秒間と長いため、その間に用紙上
のインクドツトが滲んでしまう欠点が解決されていなか
った。インクジエツト印刷ではインク滴が紙面に着地し
た直後から滲み始める。 それ故、インクドツトの滲み
を防止するためには、インク滴が着地した後できるだけ
短い時間内に、実際には1秒以内にインク定着すること
が必要である。
【0012】特許公報平成7年−第29477号に記載
の熱又は光エネルギーを付与する方法や公開特許公報平
成10年−第305570号に記載のUVランプによる
光エネルギー付与方法ではエネルギー密度が低過ぎるた
め、インク定着するまでに時間を要してインクドツトの
滲みを防止することが出来ないことが明らかになった。
その理由を典型的なUVランプの水銀放電灯を例にとり
説明する。 水銀放電灯の出力を大きくすれぱ、放射エ
ネルギー密度は高くなり、インク定着に要する時間を短
縮することができる。 例えば、40ワット(W)のU
Vランプでインク定着すると約60秒間を要するが、ラ
ンプ出力を3キロワット(KW)に上げれば1秒間でイ
ンク定着することも出来る。 しかし、このとき用紙は
燃えてしまうのである。 UVランプ(水銀放電灯)の
放射エネルギー総量のうち約50%は熱線であり、光源
から紫外線と共に熱線(赤外線)も一緒に放射される。
用紙の全面を加熱するから、UVの放射エネルギー密度
を高くするためにランプ出力を大きくすることは出来な
い。 それ故、インクドツトの滲みを防止できないので
ある。
【0013】インクジエツト印刷においてはインクドツ
トの滲み防止は非常に重要な技術的課題である。 イン
クドツトの滲みが生じると解像度の良い画像を印刷する
ことが出来ないので、良質の印刷物が得られない。 そ
れ故、上記の特許公報に記載の熱又は光エネルギー付与
方法やUVランプによる光エネルギー付与方法では、イ
ンクドツトの滲みを防止することが困難なため、インク
ジエツト印刷のインク定着法として実際には利用価値に
乏しいのである。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】インクジエツト印刷で
は吐出されるインク滴の容積は5〜10ピコリツトルで
あり、インク滴に含まれる染料を不溶化するのに必要な
総エネルギー量は僅かである。 しかしながら、普通紙
の上でインクドツトの滲みを抑えて解像度の良い画像を
印刷するにはインクが滲み始める前に殆んど瞬間的にイ
ンク定着する必要がある。 そのためには、インクドツ
トに焦点を合わせて局所的に高いエネルギー密度が必要
であることが明らかになった。
【0015】
【課題を解決するための手段】このたび、本発明者は、
用紙に付着したインクドツトに高密度のエネルギーを局
所的に与える手段としてレーザー照射が極めて効果的で
あることを見いだした。レーザー光は単一波長のコヒー
レントな電磁波の一種であり、収束性が良いため、レン
ズで絞って径がμm単位のスポツトに高密度エネルギー
を集中させることができる。 レーザーではエネルギー
密度を1万倍に濃縮することも可能である。 それ故、
用紙の表面に着地した後のインクドツトに焦点を当て、
1/10,000〜1/10秒間のレーザー照射により
短時間内に染料を不溶化することができる。レーザーを
照射してインク定着をおこなうことにより、滲みやすい
普通紙の上でもインクドツトの滲みを生じることなくイ
ンクジエツト印刷することが可能になった。
【0016】UVランプによるインク定着と較べて、レ
ーザーによるインク定着の作用機構が明確に異なる点は
次の通りである。 UVランプでは、光源から既に熱線
が放射されるため、用紙の全面が加熱されてランプ出力
を大きくすることが出来ない。そのため、インクドツト
の滲みを防止することが出来ない。これに対して、レー
ザーが放射するエネルギーは単一波長の電磁波のみであ
り、対象物質がレーザーを吸収したのち初めて熱エネル
ギーに変換される。 インクに含まれる染料のみを加熱
して色素の不溶化を促進することができるため、インク
ドツトの滲みを防止しながらインク定着することができ
る。特許願平成10年第301580号において、本発
明者は、インクドツトに含まれる可溶性建染染料を不溶
化するのにレーザー照射が有用であることを示唆したが
(明細書中の段落番号0014に記載)、その効果を実
験により確認していなかったため具体的に説明すること
が出来なかった。
【0017】レーザーのエネルギーを利用するには、対
象物質が吸収する波長のレーザーが必要である。 可溶
性建染染料は建染め染料の還元体(ロイコ体)であり、
分子内の共役二重結合の数がひとつ少なくなっているた
め、染料分子の吸光曲線は短波長側へ移行している。
そのため、極大吸収(ピーク)は近紫外部の300〜4
00nmに在るから、この範囲の波長を有するレーザー
が効果的である。染料の極大吸収と同じ波長(λma
x)のレーザーを用いるとエネルギー効率が良い。 し
かし、実際にはそのようなレーザー発振器(素子)の入
手は困難な場合が多いから、近い波長のレーザーを使用
することになる。 そのため、エネルギー効率はやや低
くなるが、それを補うためレーザー照射時間は長くな
る。レーザー出力の大きさにもよるが、1/10,00
0〜1/10秒間のレーザー照射が好ましい。可溶性建
染染料の吸光曲線は勾配がなだらかであり、ピーク(λ
max)が紫外部に在っても、曲線の裾野はダラダラと
可視部に延びている。 多くの可溶性建染染料の水溶液
が濁った暗色を示すのはそのためである。 不溶性色素
が再生されると吸光曲線は可視部へ移行して曲線の勾配
も急峻になり鮮明な色を呈するようになる。 このよう
に、レーザー照射により色素の吸光は近紫外部から可視
部へ400nmを通過して移動する。 それゆえ、40
0nm付近の波長を有するレーザーはエネルギー効率が
良い。
【0018】レーザーが染料分子に吸収されると光化学
的に染料分子を励起させて可溶性建染染料の加水分解を
促進させる作用が大きいと考えられる。 また、吸収さ
れたレーザーは熱エネルギーに変換されて局所的に高温
を発生させて加水分解を促進させる作用もあると考えら
れ、これらの作用の相乗効果により可溶性建染染料を短
時間内に不溶化すると考えられる。水に溶解した可溶性
建染染料がレーザー照射によって顔料(不溶性色素)を
再生する化学反応プロセスを次の化1に示す:
【0019】
【化1】
【0020】次に本発明のインクジエツト用レーザー定
着型インクの組成を示す: 60〜80 重量部 水 10〜30 重量部 高沸点極性有機溶剤 1〜10 重量部 染料 100 尚、高沸点極性有機溶剤としては、N,N’−ジメチル
−イミダゾリジノン又はN−メチル−ピロリドンを使用
できる。 染料として次に挙げる可溶性建染染料を使用
する。
【0021】
【化2】
【0022】
【発明の実施の形態】本発明をより詳細に説述するため
に、図1に従ってこれを説明する。 図1は被記録材上
のインクドツトにレーザーを照射する様子を示している
が、理解し易くするためにインク滴及びインクドツトが
拡大して示されている。
【0023】
【図1】
【0024】インクジエツト記録ヘツド1から吐出され
たインク滴2a,2b,2cが用紙6に着地した後、レ
ーザー素子4から照射されるレーザービーム5によって
インク中の可溶性建染染料が不溶化してインク定着がお
こなわれる。 用紙6は紙送り方向7へ移動している。
【0025】レーザー照射によりインク溶媒が急激に蒸
発してインクが飛び散るのを防ぐため、インクドツト3
a,3b,3cのうち、インクが紙に吸収された状態の
インクドツト3cにレーザーを照射する。 レーザー素
子として、出力波長403nmの窒化ガリウム半導体レ
ーザー等が好ましい。レーザーの出力及び照射条件につ
いては、用紙の温度上昇に注意して紙を焦がしたり穴を
あけない程度にレーザー出力を慎重に選定する必要があ
り、このレーザー出力の範囲内で照射時間が最も短くて
済む照射条件を設定する。
【0026】
【実施例1】次の組成の水性インクを調製した: 5 重量部 C.I.バツト ブラツク25の可溶性建染染料 25 重量部 N,N’−ジメチル−イミダゾリジノン 75 重量部 水 100 最も滲みやすい紙質の濾紙の上に上記の水性インクをイ
ンクジエツト記録した直後に紙面上のインクドツトにレ
ーザー照射した。 レーザー発振器として出力波長0.
694μmのルビーレーザーを使用した。 このレーザ
ー装置は医療用に使用されているもので、皮膚科におい
てアザやシミ等を取り除く治療用に使われる。 表皮の
下10μmほどの所に在るメラミン色素細胞をレーザー
により破壊または壊死させてメラミン色素を除去するも
のである。 レーザー照射により滲みのないインク定着
が得られた。 レーザーの照射条件は医療用の場合とほ
ぼ同様であった。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のインクジ
エツト印刷用レーザー定着型インク及びインク定着方法
は、可溶性建染染料を含むインクを用いてインクジエツ
ト印刷した後、紙面上のインクドツトをレーザー照射す
ることによりドツト滲みのないインク定着が可能になっ
た。 これにより、従来のインクジエツト用水性インク
では解決できなかった色材の堅牢性(耐水性及び耐光
性),色の鮮明さ及びインクドツト滲みの防止に関する
全ての問題を同時に解決することが出来た。それ故、普
通紙を用いて従来の版印刷と同じ品質及び耐久性の印刷
物が得られるようになる。
【0028】
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジエツト記録ヘツドからインク滴が吐出
された後、被記録材上のインクドツトにレーザーを照射
してインク定着をおこなう説明図である。
【符号の説明】 1・・・・・・・・・・インクジエツト記録ヘツド 2a,2b,2c・・・インク滴 3a,3b,3c・・・インクドツト 4・・・・・・・・・・レーザー発振器(レーザー素
子) 5・・・・・・・・・・レーザービーム 6・・・・・・・・・・用紙(被記録材) 7・・・・・・・・・・紙送り方向 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年1月17日(2001.1.1
7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水を主たる溶媒として可溶性建染染料を
    含むインクを用いてインクジエツト記録した後、被記録
    材上のインクドツトにレーザーを照射して該インクの可
    溶性建染染料を不溶化することを特徴とするインクジエ
    ツト用インク及びインク定着方法。
  2. 【請求項2】 上記の可溶性建染染料が下記の化学構造
    式のいずれかで示される特許請求の範囲第一項に記載の
    インクジエツト用インク及びインク定着方法:
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