JP2001335889A - 歪時効硬化特性、耐衝撃特性および加工性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法 - Google Patents
歪時効硬化特性、耐衝撃特性および加工性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造方法Info
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Abstract
歪時効硬化特性に優れた高張力冷延鋼板およびその製造
方法を提供する。 【解決手段】 C:0.010 %超0.020 %以下、Nb:0.00
3 〜0.02%、N:0.0020〜0.0250%を含み、Si、Mn、
P、S、Alを調整して含む組成の鋼スラブを、粗圧延
と、最終3パスの圧下率合計を50%以上、FDTを(A
r3変態点−50℃)〜(Ar3変態点+100 ℃)とする仕上
圧延を施し、圧延後、1.0 s以内に冷却を開始し、冷却
速度:20℃/s以上で650 ℃まで急冷し巻取り温度を 650
℃以下として巻き取る。その後、酸洗、冷延を行ったの
ち、再結晶温度以上の温度で連続焼鈍を施し、焼鈍後50
0 ℃以下の温度まで急冷し、固溶C+固溶Nを0.0015%
以上含み、平均粒径10μm 以下のフェライト組織を有す
る鋼板とする。
Description
体用として好適な、板厚が0.5mm 以上の高加工性高張力
冷延鋼板に係り、とくに引張強さ(TS)440 MPa 以上
で、耐衝撃特性および歪時効硬化特性に優れた高張力冷
延鋼板、およびその製造方法に関する。本発明の高張力
冷延鋼板は、軽度の曲げ加工やロールフォーミングによ
りパイプに成形されるような比較的軽加工に供されるも
のから比較的厳しい絞り成形に供されるものまで、広範
囲の用途に適するものである。なお、本発明における鋼
板とは、鋼板に加えて鋼帯をも含むものとする。また、
本発明の高張力冷延鋼板は、溶融亜鉛めっき鋼板、合金
化溶融亜鉛めっき鋼板、電気めっき鋼板として利用でき
るものである。
に優れた」とは、引張歪5%の予変形後、170 ℃の温度
に20min 保持する条件で時効処理したとき、この時効処
理前後の変形応力増加量(BH量と記す;BH量=時効
処理後の降伏応力−時効処理前の予変形応力)が80MPa
以上であり、かつ歪時効処理(前記予変形+前記時効処
理)前後の引張強さ増加量(ΔTSBHと記す;ΔTSBH
=歪時効処理後の引張強さ−予変形前の引張強さ)が40
MPa 以上であることを意味する。
に関連し、自動車における車体重量の軽減は極めて重要
な課題となっている。自動車の車体重量軽減のために
は、多量に使用されている鋼板の強度を増加させ、すな
わち高張力鋼板を適用して、使用する鋼板の薄肉化を図
るのが有効である。
車部品でも、その役割に応じて課されるパフォーマンス
が必要十分に発揮されねばならない。かかるパフォーマ
ンスとしては、例えば曲げ、ねじり変形に対する静的強
度、耐疲労性、耐衝撃特性などがある。したがって、自
動車部品に適用される高張力鋼板は、成形加工後にかか
る特性にも優れることが必要となる。
Pa〜590MPa級までの、Si、Mn、P等の固溶強化元素を添
加した固溶強化型の極低炭素鋼板が知られている。しか
し、これらの鋼板は強度は増加するものの、成形加工後
の特性向上が期待できないという問題があった。さら
に、Pを添加した固溶強化型の極低炭素鋼板では、成形
加工後に延性が低下する二次加工脆化が生じることが知
られている。この二次加工脆化に対しては、例えば、特
開平7-179946号公報には、固溶強化元素量に応じBを添
加することにより防止できることが開示されている。し
かし、この技術では、Bの多量添加を必要とするうえ、
B含有による延性低下、加工性低下等が生じるという問
題があった。
鋼板に対してプレス成形が行われるが、鋼板の強度が高
すぎるとプレス成形した場合には、 形状凍結性が劣化する、 延性が劣化するため成形時に割れやネッキングなどの
不具合を生ずる、 耐デント性(局部的な圧縮荷重負荷により生ずる凹み
に対する耐性)が劣化する、といった問題が生じ、自動
車車体への高張力鋼板の適用拡大を阻んでいた。
外板パネル用の冷延鋼板では、極低炭素鋼を素材とし、
最終的に固溶状態で残存するC量を適正範囲に制御した
鋼板が知られている。この種鋼板は、プレス成形時には
軟質に保たれ、形状凍結性、延性を確保し、プレス成形
後に行われる、170 ℃×20min 程度の塗装焼付工程で起
こる歪時効硬化現象を利用した降伏応力の上昇を得て、
耐デント性を確保しようとするものである。この種鋼板
では、プレス成形時にはCが鋼中に固溶して軟質であ
り、一方、プレス成形後には、塗装焼付工程で、プレス
成形時に導入された転位に固溶Cが固着して、降伏応力
が上昇する。
るストレッチャーストレインの発生を防止する観点か
ら、歪時効硬化による降伏応力上昇量は低く抑えられて
いる。このため、実際に部品の軽量化に寄与するところ
は小さいことになる。すなわち、部品の軽量化には、単
に歪時効により降伏応力のみ上昇するのではなく、さら
に変形が進んだときの強度特性の上昇が必要である。言
い換えれば、歪時効後の引張強さの上昇が望まれてい
た。
対しては、固溶Nを用いて焼付硬化量をさらに増加させ
た鋼板や、組織をフェライトとマルテンサイトからなる
複合組織とすることで焼付硬化性をより一層向上させた
鋼板が提案されている。例えば、特開昭60-52528号公報
には、C:0.02〜0.15%、Mn:0.8 〜3.5 %、P:0.02
〜0.15%、Al:0.10%以下、N:0.005 〜0.025 %を含
む鋼を550 ℃以下の温度で巻き取る熱間圧延と、冷延後
の焼鈍を制御冷却熱処理とする延性およびスポット溶接
性がともに良好な高強度薄鋼板の製造方法が開示されて
いる。特開昭60-52528号公報に記載された技術で製造さ
れた鋼板は、フェライトとマルテンサイトを主体とする
低温変態生成物相からなる混合組織を有し延性に優れる
とともに、積極的に添加されたNによる塗装焼付けの際
の歪時効を利用して、高強度を得ようとするものであ
る。
載された技術では、歪時効硬化による降伏応力YSの増
加量は大きいが引張強さTSの増加量が少なく、また、
降伏応力YSの増加量が大きくばらつくなど機械的性質
の変動も大きいため、現状で要望されている自動車部品
の軽量化に寄与できるほどの鋼板の薄肉化が期待できな
い。
08〜0.20%、Mn:1.5 〜3.5 %を含み残部Feおよび不可
避的不純物からなる成分組成を有し、組織がフェライト
量5%以下の均一なベイナイトもしくは一部マルテンサ
イトを含むベイナイトで構成された焼付硬化性高張力冷
延薄鋼板が開示されている。特公平5-24979 号公報に記
載された冷延鋼板は、連続焼鈍後の冷却過程で400 〜20
0 ℃の温度範囲を急冷とし、その後を徐冷とすることに
より、組織をベイナイト主体の組織として、従来になか
った高い焼付硬化量を得ようとするものである。
載された鋼板では、塗装焼付け後に降伏強さが上昇し従
来になかった高い焼付け硬化量が得られるものの、引張
強さまでは上昇させることができず、強度部材に適用し
た場合、成形後の耐疲労特性、耐衝撃特性の向上が期待
できない。このため、耐疲労特性、耐衝撃性等が強く要
求される使途への適用ができないという問題が残されて
いた。
試験による塗装焼付処理後の強度評価では優れているも
のの、実プレス条件にしたがって、塑性変形させたとき
の強度に大きなばらつきが存在し、信頼性が要求される
部品に適用するには必ずしも十分とはいえなかったので
ある。また、自動車部品用として使用される、TS:44
0MPa級高張力冷延鋼板では、絞り成形を施されることか
ら、上記した耐衝撃特性に加えて、深絞り成形性に優れ
ること、すなわち1.3 以上の高い平均r値を有すること
と、さらに極低炭素鋼板で問題となる耐二次加工脆性に
優れることが要求されている。
来技術の限界を打破し、高い成形性と、高い耐衝撃特性
と、優れた耐二次加工脆性と、安定した品質特性を有す
るうえ、自動車部品に成形したのちに自動車部品として
十分な強度が得られ自動車車体の軽量化に充分に寄与で
きる、歪時効硬化特性に優れた高張力冷延鋼板およびこ
れら鋼板を工業的に安価に、かつ形状を乱さずに製造で
きる製造方法を提供することを目的とする。本発明にお
ける歪時効硬化特性は、引張歪5%の予変形後、170 ℃
の温度に20min 保持する時効条件で、BH量が80MPa 以
上、ΔTSBHが40MPa 以上を目標とする。
を達成するために、組成および製造条件を種々変えて鋼
板を製造し、多くの材質評価実験を行った。その結果、
高加工性が要求される分野では従来あまり積極的に利用
されることがなかったNを強化元素としてCとともに用
い、これらの強化元素の作用により発現する大きな歪時
効硬化現象を有利に活用することにより、成形性の向上
と成形後の高強度化とを容易に両立させることができる
ことを知見した。
効硬化現象を有利に活用するためには、C、Nによる歪
時効硬化現象を自動車の塗装焼付け条件、あるいはさら
に積極的に成形後の熱処理条件と有利に結合させる必要
があり、そのために、熱延条件や冷延、冷延焼鈍条件を
適正化して、鋼板の微視組織と(固溶C+固溶N)量と
をある範囲に制御することが有効であることを見いだし
た。また、C、Nによる歪時効硬化現象を安定して発現
させるためには、Nbを含有する組成とし、結晶粒を微細
化することが重要であることも見いだした。また、本発
明者らは、鋼板の微視組織を、平均粒径10μm 以下のフ
ェライト相とすることにより、従来問題であった室温時
効劣化の問題もなく、C、Nを十分に活用できることを
見い出した。
組織とすることにより、Bや多量の固溶強化元素を必須
含有することなく、粒界が強化され耐二次加工脆性が向
上するうえ、従来の極低炭素鋼板と同等以上の延性、深
絞り成形性を得ることができることを知見した。すなわ
ち、本発明者らは、セミ極低炭素系において、Nbを適正
量含有し、熱延条件や冷延、冷延焼鈍条件を適正化し
て、微視組織と(固溶C+固溶N)量を最適化すること
により、従来の固溶強化型のC−Mn系鋼板、析出強化型
鋼板に比べて格段に優れた成形性と、上記した従来の鋼
板にない歪時効硬化特性と優れた耐二次加工脆性を有
し、部品特性としての優れた耐衝撃特性と、全長にわた
って均質な特性を有する鋼板が得られることを見いだし
たのである。
よる塗装焼付処理後の強度が従来の鋼板よりも高いう
え、さらに実プレス条件にしたがって塑性変形させたと
きの強度のばらつきが小さく、安定した部品強度特性が
得られる。本発明は、上記した知見に基づき、さらに検
討を加え完成されたものである。すなわち、第1の本発
明では、質量%で、C:0.010 %超え0.020 %以下、S
i:2.0 %以下、Mn:3.0 %以下、P:0.15%以下、
S:0.02%以下、Nb:0.003〜0.02%、Al:0.1 %以
下、N:0.0020〜0.0250%を含み、かつ固溶状態のCと
固溶状態のNを合計で0.0015%以上含有し、残部がFeお
よび不可避的不純物からなる組成と、平均結晶粒径10μ
m以下のフェライト相からなる組織とを有することを特
徴とする、歪時効硬化特性、耐衝撃特性、耐二次加工脆
化性および加工性に優れた引張強さ440MPa以上の高張力
冷延鋼板であり、また、第1の本発明では、前記組成に
加えてさらに、質量%で、次a群〜d群 a群:B:0.0003〜0.0050% b群:Ti:0.04%以下、V:0.04%以下の1種または2
種 c群:Cu:1.0 %以下、Ni:1.0 %以下、Mo:1.0 %以
下、Cr:1.0 %以下の1種または2種以上 d群:Ca、REM の1種または2種を合計で0.0010〜0.01
0 % のうちの1群または2群以上を含むことが好ましく、ま
た、第1の本発明では、前記高張力冷延鋼板の板厚が3.
2 mm以下であることが好ましい。
0.010 %超え0.020 %以下、Si:2.0 %以下、Mn:3.0
%以下、P:0.15%以下、S:0.02%以下、Nb:0.003
〜0.02%、Al:0.1 %以下、N:0.0020〜0.0250%を含
む組成を有する鋼スラブを、スラブ加熱温度:1000℃以
上に加熱し、粗圧延してシートバーとしたのち、該シー
トバーに最終3パスの圧下率合計を50%以上、仕上圧延
出側温度を(Ar3変態点−50℃)〜(Ar3変態点+100
℃)とする仕上圧延を施し熱延板とし、該仕上圧延後、
1.0 s以内に冷却を開始し、冷却速度:20℃/s以上で65
0 ℃まで急冷して、巻き取り温度 650℃以下で巻き取る
熱間圧延工程と、該熱間圧延工程を経た熱延板に酸洗を
施したのち、圧下率:50〜90%とする冷間圧延を施し冷
延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に、再結晶温度以
上900 ℃以下の温度で保持時間:10〜60sとする焼鈍を
行い、ついで500 ℃以下の温度まで冷却速度:10〜300
℃/sで冷却する一次冷却と、ついで前記一次冷却の停
止温度以下400 ℃以上の温度域での滞留時間を300 s以
下とする二次冷却とを行う冷延板焼鈍工程とを、順次施
すことを特徴とする歪時効硬化性、耐衝撃特性、耐二次
加工脆化性および加工性に優れ、引張強さ:440MPa以上
を有する高張力冷延鋼板の製造方法であり、また、第2
の本発明では、前記冷延板焼鈍工程に続いてさらに、伸
び率:1.0 〜15%の調質圧延またはレベラー加工を施す
ことが好ましい。
おいて、巻き取り温度を、熱延板の長手方向中央部では
600 ℃以下、かつ該熱延板先端から50mの位置および該
熱延板後端から50mの位置では前記熱延板の長手方向中
央部での温度より50℃以上高くするのが好ましい。ま
た、第2の本発明では、前記粗圧延と前記仕上圧延の間
で、相前後するシートバー同士を接合することが好まし
く、また、第2の本発明では、前記粗圧延と前記仕上圧
延の間で、前記シートバーの幅端部を加熱するシートバ
ーエッジヒータ、前記シートバーの長さ端部を加熱する
シートバーヒータのいずれか一方または両方を使用する
ことが好ましい。
について説明する。なお、質量%は、以下、単に%と記
す。 C:0.010 %超え0.020 %以下 Cは、鋼板の強度を増加するが、加工性(プレス成形
性)を低下する元素であり、成形性の観点からはできる
だけ低減するのが好ましいが、フェライトの平均粒径10
μm 以下を達成するため、およびプレス成形後の熱処理
による強度増加を達成するため、本発明ではCは0.010
%超えて含有する必要がある。プレス成形後の熱処理に
より強度が増加するためには、固溶炭素がプレス成形時
に導入された可動転位付近に拡散し、転位を固着する必
要があり、導入された可動転位を十分に固着しうる程度
の固溶炭素が存在することが肝要となる。
炭化物量が多くなり、再結晶集合組織に影響を与え、深
絞り成形性(r値)が低下する。このため、Cは0.010
%超え0.020 %以下に限定した。なお、より好ましくは
0.012 〜0.018 %である。 Si:2.0 %以下 Siは、鋼の延性、プレス成形性を顕著に低下させること
なく鋼板を高強度化させることができる有用な元素であ
る。このような効果は0.10%以上、好ましくは0.20 %
以上の含有で顕著に認められる。一方、Siは、熱間圧延
時に変態点を大きく上昇させて、圧延性を阻害し形状の
確保を困難にしたり、r値、伸び値を低下させる元素で
あり、あるいはまた表面性状、化成処理性などの鋼板表
面の美麗性に悪影響を与える元素であり、本発明では2.
0 %以下に限定した。また、Siは溶融亜鉛めっき性のな
かでめっき濡れ性を低下させる。このため、溶融亜鉛め
っき鋼板用とする場合にはSiは0.5 %以下とするのが好
ましい。なお、引張強さTS500MPa超級高張力鋼板で、
高延性を確保したい場合には、強度と延性のバランスの
観点から、Siを0.5 %以上含有するのがより好ましい。
含有するS量に応じて添加するのが好ましく、またMnは
本発明の重要な構成要件である結晶粒の微細化に対し大
きな効果があり、本発明では、積極的に添加して材質改
善に利用する。Sを安定して固定する観点からは、Mnは
0.2 %以上含有するのが好ましい。
増加させる元素であり、TS500MPa超の強度要求に対し
ては、1.2 %以上含有するのが好ましい。なお、より好
ましくは1.5 %以上である。さらに、Mn含有量をこのレ
ベルまで高めると、熱延条件を含め製造条件の変動に対
する鋼板の機械的性質、および歪時効硬化特性のばらつ
きが小さくなり、品質安定化に効果的である。
と、鋼板の熱間変形抵抗が増加する傾向となるうえ、ス
ポット溶接性、および溶接部の成形性が劣化する傾向と
なり、さらに、フェライトの生成が抑制されるため、硬
質化し、延性、r値が顕著に低下する傾向となる。この
ため、Mnは3.0 %以下に限定した。なお、より良好な耐
食性と成形性が要求される用途では、Mnは2.0 %以下と
するのが望ましい。
元素であるが、0.15%を超えて含有すると、靱性、耐二
次加工脆性、めっき性、加工性等が低下する。このた
め、Pは0.15%以下に限定する。なお、好ましくは、0.
01〜0.08%である。
らには耐食性の劣化をもたらす元素であり、できるかぎ
り低減するのが好ましく、本発明ではSは0.02%以下に
限定した。なお、特に良好な加工性が要求される用途に
おいては、0.015 %以下とするのが好ましい。さらに伸
びフランジ性の要求レベルが高い場合は、Sは0.008 %
以下とするのが好ましい。
に鋼板の組織を微細化する元素でもあり、本発明では0.
005 %以上の含有が望ましい。一方、過剰のAl含有は、
鋼板表面性状を悪化させる。このため、Alは0.1 %以下
に限定する。なお、Alは固溶状態のNを減少させ、歪時
効硬化現象に寄与する固溶Nの不足を生じさせ、製造条
件がばらついた場合本発明の特徴である歪時効硬化特性
のばらつきを生じやすくする傾向を有する。このような
ことから、歪時効硬化特性のばらつきを少なくするため
には、Alは0.02%以下とするのが好ましい。
強度を増加させる元素である。また、Nには鋼の変態点
を下げる働きもあり、Nの含有は薄物で変態点を大きく
割り込んだ圧延が忌避される状況下での操業安定化にも
有用である。Nが0.0020%未満では、Nによる強度上昇
効果が安定して現れにくい。一方、Nが0.0250%を超え
ると、鋼板の内部欠陥発生率が高くなるとともに、連続
鋳造時のスラブ割れなどが多発するようになる。このた
め、Nは0.0020〜0.0250%の範囲とした。なお、本発明
範囲内のN量であれば、溶接性への悪影響は全くない。
0015%以上 冷延製品で十分な強度が確保され、さらにC、Nによる
歪時効硬化が十分に発揮されるには、鋼中に固溶状態の
C、N(固溶C、固溶Nともいう)が合計で0.0015%以
上存在する必要がある。本発明では、適量のC、Nを含
有して、製造条件を制御することにより、冷延製品で必
要かつ十分な量の固溶状態のC、Nを確保し、歪時効硬
化での強度(YS、TS)上昇効果が十分に発揮され、
かつ結晶粒微細化を合わせ行うことにより、TS440MPa
以上、焼付け硬化量(BH量)80MPa 以上、塗装焼付け
処理前後での引張強さの増加量ΔTS40MPa 以上という
本発明鋼板の機械的性質要件を安定して満足することが
できる。
ムエステルによる溶解処理後の抽出分析によりAlN とな
っているN量を求め(以下NasAlN )、全N量からNas
AlNを引いた値を固溶N量とする。また、固溶C量は、
内部摩擦により、例えば、捩り振子型内部摩擦測定装置
を用いCピークを測定して、求めるものとする。なお、
より高いBH量、ΔTSBHを得るためには、(固溶C+
固溶N)量は0.0025%以上とするのが好ましい。
の結晶粒の微細化・均一化に寄与するとともに、室温時
効劣化を防止する元素である。このような効果は、0.00
3 %以上の含有で認められるが、0.02%を超える含有
は、熱間変形抵抗を増加させるとともに、製品板の延
性、r値を大きく低下させる。このため、Nbは0.003 〜
0.02%に限定した。なお、好ましくは、0.003 〜0.010
%である。
に、a群〜d群のうちの1群または2群以上を含有する
のが好ましい。 a群:B:0.0003〜0.0050% Bは、粒界に偏析し二次加工脆性を改善する効果を有す
る元素であり、さらに延性やr値をも向上させ、本発明
では、必要に応じ含有できる。このような効果は0.0003
%以上の含有で認められが、0.0050%を超えて含有する
と、析出物として析出し加工性を低下させる。このた
め、Bは0.0003〜0.0050%に限定するのが好ましい。
1種または2種 Ti、Vは、いずれもNbと同様に、炭化物を形成し微細分
散して、再結晶焼鈍後の結晶粒の微細化・均一化に寄与
するが、その効果はNbより小さい。このため、本発明で
は、必要に応じ、Nbとともに含有するのが好ましい。こ
のような効果は各々Ti:0.005 %以上、V:0.010 %以
上の含有で認められる。多量の含有はr値を低下させる
ため、Ti、Vは各々0.04%以下とするのが好ましい。
Mo:1.0 %以下、Cr:1.0 %以下の1種または2種以上 Cu、Ni、Mo、Crは、いずれも鋼板の強度上昇に寄与する
元素であり、必要に応じ選択して単独または複合して含
有できる。このような効果は、Cu:0.05%以上、Ni:0.
05%以上、Mo:0.01%以上、Cr:0.05%以上の含有で認
められる。しかし、Cu:1.0 %を超えて含有すると、熱
間圧延時にスケール疵を発生する懸念が増大する。ま
た、Ni:1.0 %、Cr:1.0 %を超えて含有すると、延
性、r値等の加工性を低下させる。また、Mo:1.0 %を
超えて含有すると、延性、r値等の加工性を低下させ、
さらに溶接部を硬化させ溶接部成形性を劣化させるう
え、製造コストが上昇し経済的に不利となる。このた
め、Cu:1.0 %以下、Ni:1.0 %以下、Mo:1.0 %以
下、Cr:1.0 %以下に限定するのが好ましい。
0.0010〜0.010 % Ca、REM は、いずれも介在物の形態制御に役立つ元素で
あり、特に伸びフランジ成形性の要求がある場合には、
単独または複合して含有するのが好ましい。その場合、
d群の元素の合計で、0.0010%未満では介在物の形態制
御効果が不足し、一方、0.010 %を超えると表面欠陥の
発生が目立つようになる。このため、d群の元素は合計
で0.0010〜0.010 %の範囲に限定するのが好ましい。
避的不純物である。不可避不純物としては、O:0.0050
%以下が許容できる。次に、本発明鋼板の組織について
説明する。本発明の冷延鋼板は、フェライト単相組織を
有する。なお、本発明でいうフェライトは、通常の意味
のフェライト(ポリゴナルフェライト)のみならず、炭
化物を含まないベイニティックフェライト、アシキュラ
ーフェライトをも含むものとする。
に規定の求積法により算出した値と、断面組織写真から
ASTMに規定の切断法により求めた公称粒径(例えば
梅本ら:熱処理, 24(1984), 334 参照)のうち、いず
れか大きい方を採用する。
固溶C、固溶Nを確保しているが、本発明者らの実験・
検討結果によれば、固溶C、固溶N量を一定に保っても
フェライト相の平均結晶粒径が10μmを超えると歪時効
硬化特性に大きなばらつきが生じることが判明した。こ
の詳細な機構は現在のところ不明であるが、歪時効硬化
特性のばらつきの原因の一つが結晶粒径にあり、結晶粒
界への合金元素の偏析と析出、さらにはこれらに及ぼす
加工、熱処理の影響に関係するものと推定される。した
がって、歪時効硬化特性の安定化を図るには、フェライ
ト相の平均結晶粒径を10μm以下とする必要がある。な
お、BH量およびΔTS量のさらなる増加を、安定して
得るためには平均結晶粒径は8μm以下とするのが好ま
しい。
鋼板は、引張強さTSが440MPa以上で、加工性、耐衝撃
特性、耐二次加工脆性および歪時効硬化特性に優れた冷
延鋼板である。TSが440MPaを下回る鋼板では、構造部
材的な要素をもつ部材に広く適用することができない。
また、さらに適用範囲を拡げるにはTSは500MPa以上と
するのが望ましい。
た」とは、上記したように、引張歪5%の予変形後、17
0 ℃の温度に20min 保持する条件で時効処理したとき、
BH量が80MPa 以上であり、かつΔTSBHが40MPa 以上
であることを意味する。歪時効硬化特性を規定する場
合、予歪(予変形)量が重要な因子となる。本発明者ら
は、自動車用鋼板に適用される変形様式を想定して、歪
時効硬化特性に及ぼす予歪量の影響について調査し、そ
の結果、前記変形様式における変形応力は、極めて深
い絞り加工の場合を除き、概ね1軸相当歪(引張歪)量
で整理できること、実部品ではこの1軸相当歪量が概
ね5%を上回っていること、部品強度が、予歪5%の
歪時効処理後に得られる強度(YSおよびTS)と良く
対応することを突き止めた。この知見をもとに、本発明
では、歪時効処理の予変形を引張歪5%に定めた。
min が標準として採用されている。しかし、微細なフェ
ライト組織でかつ多量の固溶C、固溶Nを含む本発明鋼
板に5%以上の歪が加わる場合は、より緩やかな(低温
側の)処理でも硬化が達成され、言い換えれば時効条件
をより幅広くとることが可能である。また、一般に、硬
化量を稼ぐには、軟化させない限りにおいて、より高温
で、より長時間保持することが有利である。
形後に硬化が顕著となる加熱温度の下限は概ね100 ℃で
ある。一方、加熱温度が300 ℃を超えると硬化が頭打ち
となり、逆にやや軟化する傾向が現れるほか、熱歪やテ
ンパーカラーの発生が目立つようになる。また、保持時
間については、加熱温度200 ℃程度のとき概ね30s程度
以上とすれば略十分な硬化が達成される。さらに大きな
安定した硬化を得るには保持時間60s以上とするのが好
ましい。しかし、20min を超える保持では、さらなる硬
化を望みえないばかりか、生産効率も著しく低下して実
用面では不利である。
件の加熱温度を170 ℃、保持時間を20min と定めた。な
お、本発明の冷延鋼板では、従来の塗装焼付け型鋼板で
は十分な硬化が達成されない低温加熱・短時間保持の時
効処理条件下でも、大きな硬化が安定的に達成される。
なお、加熱の仕方はとくに制限されず、通常の塗装焼付
けに採用されている炉による雰囲気加熱のほか、たとえ
ば誘導加熱や、無酸化炎、レーザ、プラズマなどによる
加熱などのいずれも好ましく用いうる。
力負荷に抗しうる必要があり、それゆえ素材鋼板では小
さな歪域での強度特性だけでなく大きな歪域での強度特
性も重要となる。本発明者らはこの点に鑑み、自動車部
品の素材となすべき本発明鋼板のBH量を80MPa 以上と
するとともに、ΔTSBH量を40MPa 以上とする。なお、
より好ましくは、BH量100MPa以上、ΔTSBH50MPa 以
上とする。BH量とΔTSBH量をより大きくするには、
時効処理の加熱温度をより高温側に、および/または、
保持時間をより長時間側に、設定すればよい。
態では、室温で1年程度の長時間放置されても時効劣化
(YSが増加しかつElが減少する現象)は起こらない
という、従来にない利点が備わっている。ところで、本
発明の効果は製品板厚が比較的厚い場合でも発揮されう
るが、製品板厚が3.2mm を超える場合には、冷延板焼鈍
工程で必要十分な冷却速度を確保することができず、連
続焼鈍時に歪時効が生じ、製品として目標とする歪時効
硬化特性が得にくくなる。したがって、本発明鋼板の板
厚は3.2 mm以下とするのが好ましい。
する。本発明鋼板は、基本的に、上記した範囲内の組成
を有する鋼スラブを加熱後粗圧延してシートバーとし、
該シートバーに仕上圧延を施し、仕上圧延後冷却して巻
き取り熱延板とする熱間圧延工程と、該熱延板に酸洗お
よび冷間圧延を行い冷延板とする冷間圧延工程と、該冷
延板に連続焼鈍を行い、ついで冷却する冷延板焼鈍工程
とを、順次施すことにより製造される。
分のマクロな偏析を防止すべく連続鋳造法で製造するこ
とが望ましいが、造塊法、薄スラブ連鋳法で製造しても
よい。また、スラブを製造後いったん室温まで冷却して
再度加熱する通常プロセスのほか、冷却せず温片のまま
で加熱炉に挿入したのち圧延する直送圧延、あるいは僅
かの保熱を行った後に直ちに圧延する直接圧延などの省
エネルギープロセスも問題なく適用できる。
て説明する。 スラブ加熱温度:1000℃以上 スラブ加熱温度は、所望の仕上げ圧延出側温度を確保す
るために、1000℃以上とするのが好ましい。なお、酸化
重量の増加に伴うロスの増大を避ける観点から、スラブ
加熱温度は1280℃以下とするのが好ましい。
延によりシートバーとされる。なお、粗圧延の条件はと
くに規定する必要はなく、常法にしたがって行えばよ
い。ついで、シートバーを仕上圧延して熱延板とする。
仕上圧延は、最終3パスの圧下率合計を50%以上とし、
仕上圧延出側温度を(Ar3変態点−50℃)〜(Ar3変態
点+100 ℃)とする熱間圧延とする。
で、相前後するシートバー同士を接合し、連続的に仕上
圧延することが好ましい。接合手段としては、圧接法、
レーザ溶接法、電子ビーム溶接法などを用いるのが好ま
しい。これにより、仕上圧延およびその後の冷却におい
て形状の乱れを生じやすい非定常部(被処理材の先端部
および後端部)の存在割合が減少し、安定圧延長さ(同
一条件で圧延できる連続長さ)および安定冷却長さ(張
力をかけたまま冷却できる連続長さ)が延長して、製品
の形状・寸法精度および歩留りが向上する。
通板性や噛込み性等の問題により実施が難しかった薄物
・広幅に対する潤滑圧延が容易に実施できるようにな
り、圧延荷重およびロール面圧が低減してロールの寿命
が延長する。また、本発明では、粗圧延と仕上圧延の間
で、シートバーの幅端部を加熱するシートバーエッジヒ
ータ、シートバーの長さ端部を加熱するシートバーヒー
タのいずれか一方または両方を使用して、シートバーの
幅方向および長手方向の温度分布を均一化することが好
ましい。これにより、鋼板内の材質ばらつきをさらに小
さくすることができる。シートバーエッジヒータ、シー
トバーヒータは誘導加熱方式のものとするのが好まし
い。
炭素系のスラブを用いているため、熱延板の結晶粒径が
粗大化する傾向がある。このため、仕上圧延の最終3パ
スの圧下率合計を50%以上とする。これにより、その後
の冷却過程で変態の核となるサイトが増加し、変態後の
組織を微細化することができる。仕上圧延の最終3パス
の圧下率合計が50%未満では、変態の核となるサイト数
が不足する。なお、好ましくは、圧延機負荷の観点から
80%以下である。
〜(Ar3変態点+100 ℃) 仕上圧延出側温度FDTは、鋼板の組織を微細化するた
めに、(Ar3変態点−50℃)以上とする。FDTが(A
r3変態点−50℃)を下回ると、急激にフェライト粒が粗
大化し、最終製品板の結晶粒が粗大化するため好ましく
ない。また、熱延板に異常粒が成長し、冷延焼鈍板(最
終製品板)の深絞り性を低下させる。
超えると、鋼板表面にスケール疵が発生したり、結晶粒
が粗大化する。このため、仕上圧延出側温度FDTは、
(Ar3変態点−50℃)〜(Ar3変態点+100 ℃)の範囲
に限定するのが好ましい。なお、細粒化の観点からは、
FDT(Ar3変態点−20℃)〜(Ar3変態点+50℃)と
するのがより好ましい。
め、早急に鋼板を冷却するのが望ましい。 仕上圧延後の冷却:仕上げ圧延終了後1.0 s以内に冷却
を開始、平均冷却速度20℃/s以上で650 ℃まで急冷 本発明では、仕上圧延終了後直ちに(1.0 s以内に、好
ましくは0.5 s以内)冷却を開始し、冷却中の平均冷却
速度を20℃/s以上とするのが望ましい。冷却開始が仕
上圧延終了後1.0 sを超えると、変態が開始し結晶粒の
微細化が達成できない。また、650 ℃までの平均冷却速
度が20℃/s未満では、変態の駆動力が不足し、結晶粒の
微細化が達成できない。なお、材質・形状の均一性を確
保する観点からは、冷却速度は300 ℃/s以下に抑える
のが好ましい。
結晶粒が成長するとともに、NbC が大きく成長する。 巻取温度:650 ℃以下 巻取温度CTは、巻取り後の結晶粒(フェライト粒)の
成長を抑制し、NbC を微細分散させるために、 650℃以
下で巻き取ることが好ましい。さらに好ましくは 600℃
以下である。また、巻き取り温度は低すぎると鋼板形状
が乱れやすくなり、実操業上不具合を生じる危険性が高
く、材質の均一性も低下しやすくなるため 300℃以上と
するのが好ましい。さらに、本発明では、熱延板(コイ
ル)の長手方向中央部温度を 600℃以下とし、熱延板
(コイル)の先端または後端から50mの各位置での鋼板
温度を熱延板の長手方向中央部の温度より50℃以上高く
して巻き取ることが好ましい。熱延板(コイル)の先端
または後端部は巻き取り後の冷却が速いため、巻取温度
を、熱延板(コイル)の先端または後端部を長手方向中
央部にくらべ高くする。このような温度分布とすること
により、炭化物、窒化物の形成を制御でき、固溶C、固
溶Nの熱延板(コイル)内でのばらつきが少なくなり、
熱延板(コイル)全体での材質のばらつきを少なくする
ことができる。
手方向中央部にくらべ高くするには、先端または後端部
で、ライン上に設置した注水設備による注水量を低減す
ることが好ましい。また、本発明では、仕上圧延におい
て、熱間圧延荷重を低減するために、潤滑圧延を行って
もよい。潤滑圧延を行うことにより、熱延板の形状・材
質がより均一化されるという効果がある。なお、潤滑圧
延の際の摩擦係数は0.20〜0.10の範囲とするのが好まし
い。また、潤滑圧延と連続圧延と組み合わせることによ
りさらに、熱間圧延の操業が安定する。
ル)はついで冷間圧延工程により、酸洗および冷間圧延
を施されて冷延板となる。酸洗の条件は通常公知の条件
でよく、とくに限定されない。なお、熱延板のスケール
が極めて薄い場合には、酸洗を施すことなく直ちに冷間
圧延を行ってもよい。
により、深絞り性向上に好適な結晶方位を得るために必
須である。冷間圧延の圧下率は50〜90%とするのが好ま
しい。圧下率が50%未満では所望の冷間圧延集合組織が
得られない。一方、90%を超えると、被圧延材の変形抵
抗が高くなり、圧延性が低下するとともに深絞り成形性
が低下する。
板焼鈍工程を施される。焼鈍は、生産性の観点から連続
焼鈍とするのが好ましい。連続焼鈍処理では、焼鈍温度
を再結晶温度以上で900 ℃以下とするのが好ましい。焼
鈍温度が再結晶温度未満では、再結晶が完了せず、強度
は目標を満足するものの延性が低く、そのため成形性が
低下し自動車用鋼板としては適用できない。なお、成形
性をより一層向上させるためには、焼鈍温度は700 ℃以
上とするのが好ましい。一方、焼鈍温度が900 ℃を超え
ると、結晶粒が粗大化するとともに、γ相が生成し深絞
り成形性が低下する。このため、焼鈍温度は再結晶温度
以上で900 ℃以下とするのが好ましい。なお、より好ま
しくは 840℃以下である。
の観点から、できるだけ短時間とするのが好ましいが、
操業の安定性からは10s以上とするのが望ましい。保持
時間が60sを超えると、組織の微細化が困難となる。こ
のため、連続焼鈍温度における保持時間は10〜60sの範
囲とするのが好ましい。なお、焼鈍の均熱温度までの加
熱は、少なくとも400 ℃〜650 ℃間を10℃/s以上の加
熱速度とするのが好ましい。5℃/s未満では、AlN の
析出という問題がある。より好ましくは 8〜30℃/sで
ある。
微細化、(固溶C+固溶N)量、とくに固溶C量の確保
という観点から重要であり、本発明では一次冷却とし
て、500 ℃以下の温度域まで10〜300 ℃/sの冷却速度
で連続冷却する。冷却速度が10℃/s未満では、均一で
微細な組織と所望量以上の(固溶C+固溶N)量の確保
が困難となる。一方、冷却速度が300 ℃/sを超える
と、鋼板の幅方向での材質の均一性が不足する。10〜30
0 ℃/sの冷却速度で冷却した際の冷却停止温度が、50
0 ℃超えの温度では、組織の微細化が達成できない。
の観点から重要となる。詳細な機構については、現在の
ところ不明であるが、二次冷却の条件によって、固溶
C、N量が変化し歪時効特性に影響しているものと推察
される。本発明では、一次冷却に続いて、冷却を継続
し、一次冷却の停止温度以下400 ℃以上の温度域での滞
留時間を300 s以下とする冷却を行うことが好ましい。
本発明では、連続焼鈍後の、いわゆる過時効処理を行っ
てもよいが、過時効処理を行うと歪時効硬化特性が低下
する。したがって、本発明では、連続焼鈍炉の過時効帯
を通板させる場合には、過時効帯の温度を極めて低い温
度として行うことが望ましい。
いてさらに、伸び率:1.0 〜15%の調質圧延またはレベ
ラー加工を施してもよい。冷延板焼鈍工程後に調質圧延
またはレベラー加工を施すことにより、BH量、ΔTS
量BHといった歪時効硬化特性を安定して向上することが
できる。歪時効硬化特性を向上するためには、調質圧延
またはレベラー加工における伸び率を合計で1.0 %以上
とするのが好ましい。伸び率が1.0 %未満では歪時効硬
化特性の向上が少なく、一方、伸び率が15%を超える
と、鋼板の延性が低下する。なお、調質圧延とレベラー
加工ではその加工様式が相違するが、本発明者らは、鋼
板の歪時効硬化特性に対する効果には大きな相違がない
ことを確認している。
鋳造法でスラブとした。これらスラブを表2に示す条件
で加熱し、粗圧延して表2に示す厚さのシートバーと
し、ついで表2に示す条件の仕上圧延を施す熱間圧延工
程により熱延板とした。なお、一部については、仕上圧
延で潤滑圧延を行った。また一部については、粗圧延後
で仕上圧延入側で相前後するシートバー同士を溶融圧接
法で接合して連続圧延した。また、シートバーの幅端
部、長さ方向端部を誘導加熱方式のシートバーエッジヒ
ータ、シートバーヒータを使用してシートバーの温度を
調節した。
の冷間圧延からなる冷間圧延工程により冷延板とした。
ついで、これら冷延板に表2に示す条件で連続焼鈍炉に
よる連続焼鈍を行った。さらに、冷延板焼鈍工程につづ
いて、調質圧延を施した。なお、連続焼鈍の焼鈍温度は
いずれも再結晶温度以上であった。得られた冷延焼鈍板
について、固溶C量、固溶N量、微視組織、引張特性、
歪時効硬化特性、耐衝撃特性および耐二次加工脆性を調
査した。なお、標準の試験片採取位置は長手方向中央部
の幅方向1/4 部とした。 (1)固溶N、固溶C量の調査 ブロムエステルによる溶解処理後の抽出分析によりAlN
となっているN量、NasAlN を求め、化学分析により求
めた鋼中の全N量からNasAlN を引いた値を固溶N量と
した。また、捩り振子型内部摩擦測定装置を用い、内部
摩擦を求め、C、Nピークを分離して内部摩擦を求め、
Cピークから固溶C量を求めた。 (2)微視組織 各冷延焼鈍板から試験片を採取し、圧延方向に直交する
断面(C断面)について、光学顕微鏡あるいは走査型電
子顕微鏡を用いて微視組織を撮像した。これら組織写真
からASTMに規定の求積法により算出した値またはA
STMに規定の切断法により求めた公称粒径のうち、い
ずれか大きい方を、フェライト相の平均結晶粒径として
採用した。 (3)引張特性 各冷延焼鈍板からJIS 5号試験片を圧延方向に採取し、
JIS Z 2241の規定に準拠して歪速度:3×10-3/sで引
張試験を実施し、降伏強さYS、引張強さTS、伸びE
lを求めた。なお、冷延焼鈍板(コイル)内の引張特性
のばらつきを調査するために、試験片を冷延焼鈍板(コ
イル)の長手方向中央部、先端部から50m、後端部から
50mの各位置からも試験片を採取した。冷延焼鈍板(コ
イル)内各位置の引張強さの標準偏差をもとめ、σ(T
S)とした。 (4)歪時効硬化特性 各冷延焼鈍板からJIS 5号試験片を圧延方向に採取し、
予変形としてここでは5%の引張予歪を与えて、ついで
170 ℃×20min の塗装焼付処理相当の熱処理を施したの
ち、歪速度:3×10-3/sで引張試験を実施し、予変形
−塗装焼付処理後の引張特性(降伏応力YSBH、引張強
さTSBH)を求め、BH量=YSBH−YS5%、ΔTSBH
=TSBH−TSを算出した。なお、YS5%は、製品板を
5%予変形したときの変形応力であり、YSBH、TSBH
は予変形−塗装焼付処理後の降伏応力、引張強さであ
り、TSは製品板の引張強さである。 (5)耐衝撃特性 各冷延焼鈍板から衝撃試験片を圧延方向に採取し、「Jo
urnal of the Societyof Materials Science Japan, 10
(1998), p1058」に記載された高速引張試験方法に準拠
して、歪速度:2×103 /sで高速引張試験を実施し、
応力−歪曲線を測定した。得られた応力−歪曲線を用い
て、応力を歪0〜30%の範囲で積分して吸収エネルギー
Eを求めた。また、予変形として5%の引張予歪を与え
て、ついで170 ℃×20min の塗装焼付処理相当の熱処理
を施したのち、同様の衝撃試験を実施し、吸収エネルギ
ーEBHを求め、予変形−塗装焼付処理による耐衝撃特性
の向上代EBH/Eを評価した。 (6)成形性 成形性の指標としてr値を求めた。
方向に対し45°方向(D方向)、圧延方向に対し90°方
向(C方向)から、JIS 5 号試験片を採取した。これら
試験片に15%の単軸引張予歪を付与した時の各試験片の
幅歪と板厚歪を求め、幅歪と板厚歪の比、 r=ln(w/w0 )/ln(t/t0 ) (ここで、w0 、t0 は試験前の試験片の幅および板厚
であり、w、tは試験後の試験片の幅および板厚であ
る。)から各方向のr値を求め、次式 rmean=(rL +2 rD +rc )/4 により平均r値rmeanを求めた。ここで、rL は、圧延
方向(L方向)のr値であり、rD は、圧延方向(L方
向)に対し45°方向(D方向)のr値であり、r c は、
圧延方向(L方向)に対し90°方向(C方向)のr値で
ある。 (7)耐二次加工脆性 各冷延焼鈍板から50mmφの大きさの試験片をブランキン
グした。これら試験片に、24.4mmφのポンチを用いて、
カップ状に絞り抜ぬく絞り加工を施したのち、21mm高さ
で耳を切断した。これらカップを横置きし、これらカッ
プ上に、重錘(5kg)を80cmの高さから落下させ、カッ
プに発生する割れを検査した。割れの有無で耐二次加工
脆性を評価した。なお、試験は室温(20℃)で行った。
いr値と、優れた歪時効硬化特性を有し、格段に高いB
H量、ΔTSBHを呈し、また、耐二次加工脆性にも優
れ、さらに歪時効処理による耐衝撃特性の向上代も大き
い。また、製品板(コイル)内の引張強さのばらつきΔ
TSも小さい冷延鋼板となっている。これに対し、本発
明の範囲を外れる比較例は、延性、r値、歪時効硬化特
性、耐二次加工脆性、耐衝撃特性のいずれかが低下して
いる。
理により降伏応力が80MPa 以上および引張強さが40MPa
以上と、ともに増加する高い歪時効硬化特性と、優れた
成形性、優れた耐衝撃特性、および優れた耐二次加工脆
性とを兼備する高張力冷延鋼板を、安価にかつ形状を乱
さずに製造でき、産業上格段の効果を奏する。さらに本
発明の高張力冷延鋼板を自動車部品に適用した場合、塗
装焼付け処理により降伏応力とともに引張強さも増加し
て安定した高い部品特性を得ることができ、使用する鋼
板の板厚を、例えば2.0mm 厚から1.6 mm厚と、従来より
1グレード低減することを可能とし、自動車車体の軽量
化に充分に寄与することができるという効果もある。
Claims (8)
- 【請求項1】 質量%で、 C:0.010 %超え0.020 %以下、 Si:2.0 %以下、 Mn:3.0 %以下、 P:0.15%以下、 S:0.02%以下、 Nb:0.003 〜0.02%、 Al:0.1 %以下、 N:0.0020〜0.0250% を含み、かつ固溶状態のCと固溶状態のNを合計で0.00
15%以上含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からな
る組成と、平均結晶粒径10μm以下のフェライト相から
なる組織とを有することを特徴とする、歪時効硬化特
性、耐衝撃特性、耐二次加工脆化性および加工性に優れ
た引張強さ440MPa以上の高張力冷延鋼板。 - 【請求項2】 前記組成に加えてさらに、質量%で、下
記a群〜d群のうちの1群または2群以上を含むことを
特徴とする請求項1に記載の高張力冷延鋼板。 記 a群:B:0.0003〜0.0050% b群:Ti:0.04%以下、V:0.04%以下の1種または2
種 c群:Cu:1.0 %以下、Ni:1.0 %以下、Mo:1.0 %以
下、Cr:1.0 %以下の1種または2種以上 d群:Ca、REM の1種または2種を合計で0.0010〜0.01
0 % - 【請求項3】 前記高張力冷延鋼板の板厚が3.2 mm以下
である請求項1または2に記載の高張力冷延鋼板。 - 【請求項4】 質量%で、 C:0.010 %超え0.020 %以下、 Si:2.0 %以下、 Mn:3.0 %以下、 P:0.15%以下、 S:0.02%以下、 Nb:0.003 〜0.02%、 Al:0.1 %以下、 N:0.0020〜0.0250% を含む組成を有する鋼スラブを、スラブ加熱温度:1000
℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとしたのち、該
シートバーに最終3パスの圧下率合計を50%以上、仕上
圧延出側温度を(Ar3変態点−50℃)〜(Ar3変態点+
100 ℃)とする仕上圧延を施し熱延板とし、該仕上圧延
後、1.0 s以内に冷却を開始し、冷却速度:20℃/s以上
で650 ℃まで急冷して、巻き取り温度 650℃以下として
巻き取る熱間圧延工程と、該熱間圧延工程を経た熱延板
に酸洗を施したのち、圧下率:50〜90%とする冷間圧延
を施し冷延板とする冷間圧延工程と、該冷延板に、再結
晶温度以上900 ℃以下の温度で保持時間:10〜60sとす
る焼鈍を行い、ついで500 ℃以下の温度まで冷却速度:
10〜300 ℃/sで冷却する一次冷却と、ついで前記一次
冷却の停止温度以下400 ℃以上の温度域での滞留時間を
300 s以下とする二次冷却とを行う冷延板焼鈍工程と
を、順次施すことを特徴とする歪時効硬化性、耐衝撃特
性、耐二次加工脆化性および加工性に優れ、引張強さ:
440MPa以上を有する高張力冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項5】 前記冷延板焼鈍工程に続いてさらに、伸
び率:1.0 〜15%の調質圧延またはレベラー加工を施す
ことを特徴とする請求項4に記載の高張力冷延鋼板の製
造方法。 - 【請求項6】 前記熱間圧延工程において、巻き取り温
度を、熱延板の長手方向中央部では600 ℃以下、かつ該
熱延板先端から50mの位置および該熱延板後端から50m
の位置では前記熱延板の長手方向中央部での温度より50
℃以上高くすることを特徴とする請求項4または5に記
載の高張力冷延鋼板の製造方法。 - 【請求項7】 前記粗圧延と前記仕上圧延の間で、相前
後するシートバー同士を接合することを特徴とする請求
項4ないし6のいずれかに記載の高張力冷延鋼板の製造
方法。 - 【請求項8】 前記粗圧延と前記仕上圧延の間で、前記
シートバーの幅端部を加熱するシートバーエッジヒー
タ、前記シートバーの長さ端部を加熱するシートバーヒ
ータのいずれか一方または両方を使用することを特徴と
する請求項4ないし7のいずれかに記載の高張力冷延鋼
板の製造方法。
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