JP2001331085A - 計算機ホログラム - Google Patents

計算機ホログラム

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JP2001331085A JP2000146808A JP2000146808A JP2001331085A JP 2001331085 A JP2001331085 A JP 2001331085A JP 2000146808 A JP2000146808 A JP 2000146808A JP 2000146808 A JP2000146808 A JP 2000146808A JP 2001331085 A JP2001331085 A JP 2001331085A
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    • G03H1/00Holographic processes or apparatus using light, infrared or ultraviolet waves for obtaining holograms or for obtaining an image from them; Details peculiar thereto
    • G03H1/22Processes or apparatus for obtaining an optical image from holograms
    • G03H1/2249Holobject properties
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    • GPHYSICS
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    • G03H1/00Holographic processes or apparatus using light, infrared or ultraviolet waves for obtaining holograms or for obtaining an image from them; Details peculiar thereto
    • G03H1/26Processes or apparatus specially adapted to produce multiple sub- holograms or to obtain images from them, e.g. multicolour technique
    • G03H1/30Processes or apparatus specially adapted to produce multiple sub- holograms or to obtain images from them, e.g. multicolour technique discrete holograms only
    • G03H2001/303Interleaved sub-holograms, e.g. three RGB sub-holograms having interleaved pixels for reconstructing coloured holobject

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  • Holo Graphy (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】立体的な多色(フルカラー)のパターンの表示
を目的とする計算機ホログラムで、特に、水平方向にの
み視差を持つ立体像を多色表示する際に、ノイズを低減
し、高画質な明るい像を正確な色で表示する。 【解決手段】所望の波長の光について計算された干渉縞
から成る水平方向に長いスリットを構成単位とし、異な
る波長に対応した複数のスリットを垂直方向に並べてス
リット群とし、スリット群において、複数のスリットを
構成する干渉縞の垂直方向の主な空間周波数と前記波長
との積が一定であるように設定し、そのようなスリット
群が複数形成された構成とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表示される物体上
の各点からの光の波面の情報を、干渉縞の形態で基板上
に形成して得られる計算機ホログラムに関する。特に、
水平方向にのみ視差を持ち、表示像が多色表現されてい
る計算機ホログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】計算機などを用いて、記録する物体上の
各点からの光の複素振幅分布を元に、コヒーレントな参
照光を加えて干渉縞を計算するなどして、得られた計算
結果に基づき、適切に光を回折する機能を有するように
干渉縞を基板上に形成して得られる「計算機ホログラム
(CGH;Computer Generated Hologram )」が公知で
ある。
【0003】計算機ホログラムの基板上への形成方法と
しては、電子ビーム描画装置などの高解像度な描画能力
を持つ装置で干渉縞を直接描画する方法や、低解像度な
画像出力装置を用いて出力した干渉縞の画像を光学的に
縮小記録する方法などが知られている。
【0004】ここで、干渉縞は2次元パターンとして計
算され、基板上に形成される。干渉縞は、形成方法や記
録材料に応じて、基板上での濃度分布(透過率もしくは
反射率の分布)、あるいは位相変調量分布(表面上の微
小な凹凸の分布や屈折率の分布など)、もしくはこれら
の複合した形態となる。
【0005】このような計算機ホログラムに、予め決め
られた光が入射すると、上述の濃度分布や位相変調量分
布が光を回折し、1次回折光により記録した像が再生さ
れる。この1次回折光が観察者の眼に入射すると、記録
された像が立体像などとして観察できる。
【0006】立体像の表示を目的とする計算機ホログラ
ムにおいては、計算量の低減などを目的として、水平方
向にのみ視差を持つようにすることが多い。通常の観察
条件下において、立体像を表示する場合には、水平方向
の視差のみが再現できていれば十分(両眼視差により、
立体的に認識される)なためである。このとき、水平方
向にのみ視差を持つ計算機ホログラムは、光の干渉を利
用して撮影されるレインボーホログラムを計算機により
模倣したものとして考えることができる。
【0007】また、計算機ホログラムにおいて多色表示
を行う場合には、多色表示に適したR,G,Bに対応し
た波長に対する干渉縞を計算し、これらの干渉縞をコヒ
ーレントに重ね合わせる方法と、インコヒーレントに重
ね合わせる方法とがある。これらの何れの方法において
も、上述のように最終的な干渉縞は2次元パターンとし
て基板上に形成される。
【0008】このとき、コヒーレントに重ね合わせた場
合は、各波長の像を生成する光の複素振幅同士の干渉成
分なども記録されることになり、観察時に望ましい像を
再生する光以外のノイズ光が現れることになる。一方、
インコヒーレントに重ね合わせた場合は、インコヒーレ
ントに重ね合わせた干渉縞同士のモアレ成分に起因する
回折光が発生し、やはりノイズとして観察される。さら
に、後者の場合には、インコヒーレントに複数の干渉縞
の濃度パターンを重ねているため、2つの干渉縞同士が
互いに1/2周期程度ずれている領域では適切に干渉縞
が記録できなくなるという問題もある。
【0009】以上の「ノイズ」発生は、単純なS/Nの
低下に影響するだけでなく、像再生に使われるべき光エ
ネルギーの一部がノイズ成分に分配されることになるの
で、観察される像が暗くなるという問題にも繋がる。
【0010】また、計算機ホログラムからの再生像が多
色である場合に、色再現性について十分な考慮がなされ
ておらず、表示像上の高さに依存する色変化を伴った
り、表示像の彩度の低下を招くなどという問題があっ
た。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、立体的な多
色(フルカラー)のパターンの表示を目的とする計算機
ホログラムで、特に、水平方向にのみ視差を持つ立体像
を多色表示する際に、ノイズを低減し、高画質な明るい
像を正確な色で表示することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、水平方向にの
み視差を持つ計算機ホログラムにおいて、所望の波長の
光について計算された干渉縞から成る水平方向に長いス
リットを構成単位とし、異なる波長に対応した複数のス
リットを垂直方向に並べてスリット群とし、スリット群
において、複数のスリットを構成する干渉縞の垂直方向
の主な空間周波数と前記波長との積が一定であり、スリ
ット群が複数形成されていることを主な特徴とする。
【0013】また、複数のスリット群がそれぞれ同一の
波長(R,G,Bなど)に対応した干渉縞から成るスリ
ットを含んでいることなどを特徴としている。
【0014】<作用>計算機ホログラム上において、水
平方向(視差方向)に長いスリット内に所望の光の波長
に対応した干渉縞を他の波長に関する成分を含まずに形
成することにより、前記スリットが受け持つ所望の波長
に関しては、水平方向に連続的な光の波面を再生可能と
なり、ノイズが少なく、視差の飛びがなく、像のぼけも
少ない、水平方向に視差を持つ高品位な立体像を表示可
能である。
【0015】また、スリット群においては、複数のスリ
ットを構成する干渉縞の垂直方向の主な空間周波数と前
記波長との積を一定とすることにより、スリット群を構
成する各スリットが所望の波長の光を所望の観察距離に
いる観察者の眼に確実に入射させることができる。これ
により、スリット群を構成する各スリットからの所望の
波長による加法混色表示が可能であり、広い色域に亘り
正確な色で多色画像を表示することができる。(請求項
1)
【0016】以下に、この理由を詳細に説明すると共
に、他の作用についても言及する。なお、本発明の計算
機ホログラムは、厳密なホログラムの定義に該当するも
のに限らず、計算機を用いて物体からの光の波面などを
計算し、光の回折によって像再生する表示体一般(キノ
フォームなどを含む)を指すものとする。従って、本発
明の計算機ホログラムのスリット内部を構成する「干渉
縞」は、厳密な意味での干渉縞はもちろん、キノフォー
ムの位相変調パターンなども含む光回折パターンを指す
ものとする。
【0017】まず、スリット内を構成する干渉縞につい
て考える。一般的なホログラムの観察では、白色の照明
光が観察者の頭上方向から入射し、ホログラムの正面付
近でホログラムからの再生像を観察するという条件が最
も標準的であり、このとき、ホログラムの干渉縞の垂直
方向の空間周波数(周期の逆数)が観察者に観察される
光の波長に対応している。従って、本発明の計算機ホロ
グラムにおいて、スリット内の干渉縞の垂直方向の空間
周波数を適切に設定することにより、スリット群が観察
される色(複数波長の光による加法混色)を任意に選ぶ
ことができる。
【0018】ここで、計算機ホログラムの干渉縞の垂直
方向の空間周波数と予め設定した光の波長の対応関係
は、単純化すると下記式で表される。
【0019】
【数2】
【0020】ただし、fは空間周波数、λは所望の波
長、θは予め設定した照明光の計算機ホログラム面への
入射角度、hは計算機ホログラムの中心を原点としたス
リットの高さ(上方向を正とする)、Dは予め設定した
観察距離である。(図8参照)
【0021】すなわち、照明光の入射角度と観察位置が
決定している時、計算機ホログラム上の任意の高さにあ
る1つのスリット群において、各スリット内の干渉縞の
(f×λ)が一定値であれば、それぞれのスリットから
各設定された波長の光を観察者の眼に入射させることが
でき、所望の波長の加法混色を実現できる。さらに、計
算機ホログラム上の全てのスリット群でこれが実現され
ると、計算機ホログラム上の全面において、正確な色再
現をしたパターン表示が可能となる。(請求項2)
【0022】予め設定する波長としては、任意の波長を
選択することが可能であり、スリット群内で少なくとも
2つの波長を適切に設定すれば、少なくとも2波長の光
の加法混色により、スリット群において所望の色を表現
可能となる。
【0023】このとき、計算機ホログラム上において、
複数のスリット群がそれぞれ同一の波長に対応した干渉
縞から成るスリットを含んでいるようにすることで、予
め設定した複数波長の組み合わせにより、多色画像を計
算機ホログラム面全体で容易に表現することが可能とな
る。(請求項3) 予め設定する複数波長として、3つ以上の適当な波長を
選択することにより、スリット群内で任意の色の分布を
表現することが可能になり、広い範囲の色域に対応した
フルカラーの像を計算機ホログラム面全体で表示するこ
とが可能となる。
【0024】特に、3つの波長として、R,G,Bに対
応した波長を選択した場合、R,G,Bの加法混色によ
るフルカラー像の表現が可能となり、コンピュータ上で
作成したデジタル画像データなどを容易に表示すること
が可能となる。(請求項4)
【0025】一方、4つ以上の波長を選択すると、通常
のR,G,Bの3原色を使った表示よりも広い色域を正
確に表現することが可能となる。(請求項5)
【0026】ここで、1つのスリット内には垂直方向の
空間周波数として1種類のみとすることにより、干渉縞
パターンの生成が容易になると共に、干渉縞に余計な成
分が存在しないことによりノイズが少なく、回折効率が
高い、明るい計算機ホログラムとすることができる。
(請求項6)
【0027】次に、水平方向のスリットの長さについて
考える。計算機ホログラムで表示する立体像は、微小な
点(以下、「物点」と称する)の集まりとして扱うこと
ができる。このとき、計算機ホログラムから物点までの
距離dp と、計算機ホログラムの視域θ- 〜θ+ を用い
て、計算機ホログラム上で対応する大きさLを表すと、
(図5参照)
【0028】
【数3】
【0029】視域の角度幅θ=θ+ +θ- とすると、θ
が比較的小さい場合、下記式で近似できる。
【0030】
【数4】
【0031】計算機ホログラム上で、水平方向にL以上
の長さのスリットを用いると、スリットの長さの中で、
物点からの光の連続的な波面情報を記録することができ
る。(請求項7) これにより、設定した視域の範囲内では、奥行きdp
物点を、理想的な波面情報を伴って表示することが可能
であり、すなわち、観察者にとって連続的な視差を持
ち、焦点調節、輻輳などの立体視に要求される生理的な
効果も十分に満たした立体像が表示できる。
【0032】スリットの水平方向の長さが、計算機ホロ
グラムの表示面の水平方向の長さと一致している場合、
その大きさの表示面を持った計算機ホログラムが表示可
能な最大の視域および/または最大の奥行きを表示する
ことが可能となる。(請求項8)
【0033】最後に、スリットの垂直方向の幅に起因す
る回折について考える。垂直方向において、矩形スリッ
トの幅bに起因する回折の広がりは、観察距離における
回折パターンの中心の第1暗線間の幅Δyで表すと、次
式のようになる。
【0034】
【数5】
【0035】ここで、観察距離をd0 ,波長をλとし
た。Δyが大きくなり過ぎると、設計された波長に関し
て観察者の眼に入射する光量が減り、また、設計された
波長以外の波長の光も観察者の眼に入射するため、表示
像の彩度も低下する。
【0036】垂直方向のスリット幅を10μm以上とする
と、一般的な観察条件下で、観察位置におけるΔyが数
〜十mm以下となり、彩度の高い色で像が表示できる。
(請求項9)
【0037】一方、スリットの幅が大きくなり過ぎる
と、観察時に水平方向のスジとして認識され、望ましく
ない。特に、垂直方向にR,G,Bなどの3種の空間周
波数を持った干渉縞のスリットを用いて多色表示する場
合、R,G,Bなどの各スリットが認識できない条件が
望ましい。
【0038】具体的には、観察距離が 500mmのとき、
視力 1.0の観察者がスリットを認識できない条件にする
には、およそ 150μm以下の幅となるようにすればよ
い。(請求項10)
【0039】3つのスリットが一組となったスリット群
を用いる場合、スリット群毎の並びを観察者が認識でき
ない条件にするには、スリット群でこの値以下の幅、す
なわち 150μm以下となるようにすればよい。このよう
に設計することで、十分な解像度を持った像を表示でき
る。
【0040】以上のように、スリットの垂直方向の幅に
関して最適な条件を設定するためには、スリットの幅に
よる回折現象による下限と、観察条件に依存した眼の解
像度による上限を考慮した方がよい。例えば、上記の
R,G,Bの3つのスリットをスリット群とした例で
は、最適なスリットの幅は50μm程度ということにな
る。このように垂直方向のスリット幅を設定することに
より、多色の表示像を高品質(十分な解像度と十分な色
表現を伴う)に表示できる。
【0041】
【発明の実施の形態】図1は、本発明による計算機ホロ
グラムの一例を示す説明図である。図2は、R,G,B
の各波長に対応した垂直方向の空間周波数を持つ、本発
明の計算機ホログラムを構成するスリット群を拡大して
示す説明図である。
【0042】本発明では、図1の上部、または図2に拡
大して示すようなスリットおよびスリット群を複数配置
して計算機ホログラムを構成している。スリットは干渉
縞から構成され、各スリット内での干渉縞の垂直方向の
主な空間周波数成分は観察される波長に対応し、水平方
向の空間周波数成分は視差に対応している。
【0043】従って、表示像の滑らかな奥行きと連続的
な視域を確保するために、水平方向には、スリットに十
分な長さを持つようにしている。一方、垂直方向のスリ
ットの幅については、表示像の画素の大きさと考えるこ
とができるので、ある程度以下の幅でないと、十分な解
像度を持った像が表示できない。従って、スリットは図
のように水平方向に長い形状をとる必要がある。
【0044】なお、同図では、二値の濃度変調(透過率
変調、反射率変調などによる)パターンで干渉縞を表現
しているが、干渉縞は階調表現されたものでも良く、ま
た、濃度変調パターンに限らず、位相変調(屈折率変
調、厚み変調などによる)パターン、もしくは濃度・位
相が共に変調されたパターンでも良い。
【0045】ここで、スリット群を構成するスリットが
対応する波長を適切に設定しておくことにより、正確な
色で像を表現することが可能となる。特に、R,G,B
の3つのスリットをスリット群として用いれば、R,
G,Bの加法混色によるフルカラー像の表現が可能とな
り、コンピュータ上で作成したデジタル画像データ等を
容易に表示可能となる。一方、4つ以上の波長を選択す
ると、通常のR,G,Bの3原色を使った表示よりも広
い色域を正確に表現することが可能となる。
【0046】図3は、反射型の計算機ホログラムに、照
明光を入射した場合の0次回折光と1次回折光の出射方
向を示す断面図である。任意の波長に関して、回折格子
による基本的な回折現象は、下式(5) で表される。 d=mλ/(sin α−sin β) (5) ただし、dは着目した方向における格子間隔(空間周波
数の逆数),mは回折次数,λは照明光の波長,αは当
該方向における0次回折光(透過光や正反射光)の出射
角度,βは当該方向におけるm次回折光の出射角度であ
る。通常は、1次回折光(すなわち、m=1)が立体像
を再生するために使われる。0次回折光の出射角度は、
照明光の入射角度と同じ、もしくは符号が反転するだけ
である。
【0047】透過型の計算機ホログラムの場合も、0次
回折光,m次回折光について同様の取り扱いが可能であ
る。
【0048】図4は、垂直方向に複数種類の空間周波数
を持った干渉縞が多重記録された従来の計算機ホログラ
ムを構成する干渉縞の拡大図の例である。このように、
従来のホログラムにおいては、多重露光するとモアレ縞
ができ、このモアレ成分による回折光などが発生し、表
示像を観察した際のノイズなどの原因となる。従って、
従来の計算機ホログラムでは、像を多色表示する場合
に、ノイズなどの発生が避けられなかった。
【0049】図5は、計算機ホログラムの視域と、それ
に対応するホログラム面上での大きさを示す説明図であ
る。本発明の計算機ホログラムの水平方向のスリットの
長さの最小値Lは、計算機ホログラムで表示する立体像
を構成する物点のそれぞれについて、(2) 式や(3)式を
用いて計算できる。この時、計算機ホログラム上で、水
平方向にL以上の長さのスリットを用いると、スリット
の長さの中で、物点からの光の連続的な波面情報を記録
することができる。これにより、設定した視域の範囲内
では、奥行きdp の物点を理想的な波面情報を伴って表
示可能、すなわち、観察者にとって連続的な視差を持
ち、焦点調節などの立体視に要求される生理的な効果も
十分に満たした立体像が表示できる。
【0050】一方、L以下の長さのスリット、もしくは
不連続なスリットでは、十分な視域が得られないか、あ
るいは視域の連続性が失われ、物点の位置が正確に表示
できなくなったり、焦点調節などの眼の機能からの奥行
き情報と表示された物点の奥行きに差異が生じるなどの
問題が発生する。
【0051】スリットの水平方向の長さが、計算機ホロ
グラムの表示面の水平方向の長さと一致している場合、
その大きさの表示面を持った計算機ホログラムが表示可
能な最大の視域および/または最大の奥行きを表示する
ことが可能となる。
【0052】ただし、スリットの水平方向の長さを十分
に長くした場合に、スリットの長さ全体に干渉縞を記録
する必要はない。干渉縞の存在する範囲は上記のスリッ
トの長さの最小値Lだけあれば良く、それ以上の長さに
干渉縞を記録することは1つのスリット内で表現する物
点が多数ある場合にノイズなどを増やす原因となり、好
ましくない。
【0053】ここで、スリットの垂直方向の幅に起因す
る回折について考える。垂直方向において、矩形スリッ
トの幅bに起因する回折の広がりを、観察距離における
回折パターンの中心の第1暗線間の幅Δyで表すと、Δ
yは(3) 式で計算できる。
【0054】Δy が大きくなり過ぎると、設計した波長
に関して観察者の眼に入射する光量が減り、また、設計
された波長以外の波長の光も観察者の眼に入射するた
め、表示像の色の彩度も低下する。従って、一般的に
は、観察位置におけるΔy を十〜数mm以下とした方が
良く、この条件を満たすためには、垂直方向のスリット
幅を10μm以上とする必要がある。
【0055】具体的な例としては、観察距離d0 = 150
mm,観察波長λ= 500nmの時、観察距離における第
1暗線間の幅Δyを10mm以下とするには、スリットの
幅bは15μm以上にする必要がある。なお、回折パター
ンの中心極大に対する半値幅を回折パターンの幅として
取り扱うことも実際的であり、この場合、観察距離にお
ける回折パターンの中心の第1暗線間の幅Δy1/2 は上
記のΔyの約 0.7倍となる。
【0056】 Δy1/2 =0.7×(2λd0 /b) (6) この考え方で(6) 式に基づいてスリット幅を設計するこ
とも有効である。
【0057】一方、スリット群の垂直方向の幅が大きく
なり過ぎると、観察時に水平方向のスジとして認識さ
れ、望ましくない。これを回避するために、例えば観察
距離が500mmの時、視力 1.0の観察者がスリット群内
の構成を認識できない条件にするには、スリット群をお
よそ150 μm以下の幅となるようにすれば良い。これに
より、スリット群の構造が観察者に識別されず、十分な
解像度を持つ像を表示可能となる。
【0058】特に、垂直方向にR,G,Bに対応する空
間周波数を持った干渉縞の3種のスリットをスリット群
として用いて多色表示する場合に、スリット群毎の並び
を観察者が認識できない条件にするには、スリットがこ
の値の1/3以下の幅(すなわち、50μm以下の幅)と
なるようにすれば良い。
【0059】以上のように、スリットの垂直方向の幅に
関して最適な条件を設定するためには、スリットの幅に
よる回折現象による下限と、観察条件に依存した眼の解
像度による上限を考慮した方がよい。例えば、上記の3
つのスリットをスリット群とした例では、最適なスリッ
トの幅は50μm程度ということになる。このように垂直
方向のスリット幅を設定することにより、多色の表示像
を高品質に(十分な解像度と十分な色表現を伴って)表
示できる。
【0060】図6は、本発明による計算機ホログラムの
観察の様子を模式的に示す説明図である。すなわち、本
発明の計算機ホログラムに予め設定した角度で照明光が
入射するように光源を設置すると、計算機ホログラムか
らの1次回折光により設定した視域の範囲内(θ- 〜θ
+ )で像が観察できる。
【0061】図7は、本発明の計算機ホログラム生成時
のスリット内の干渉縞の計算方法を示す説明図である。
まず、ある物点に関して、その物点と設定した観察者の
両眼(もしくは視点位置における水平な線)とが含まれ
る平面と、計算機ホログラム面とが交わる線の位置のス
リット群に着目する。
【0062】このとき、スリット群における光の複素振
幅分布は、同平面内において物点からの視域分の広がり
を持った光のみを考慮すればよい。表示する全ての物点
について、所望の波長に関して、それぞれ対応するスリ
ット群への寄与を計算し、同一スリット群内の複素振幅
分布は足し合わせることによって、計算機ホログラムの
スリットとして実現すべき水平方向の複素振幅分布が得
られる。
【0063】全ての所望の波長について計算すると、本
発明の計算機ホログラム上の全て位置における複素振幅
分布が得られる。例えば、R,G,Bの3つのスリット
をスリット群としてカラー表示する際には、上記の計算
過程において、物点からの光をR,G,Bの3成分に分
解してそれぞれ対応するスリットにおける複素振幅分布
を計算すればよい。
【0064】ここで、上記の平面における物点からの光
の広がりとして、視域に相当する角度範囲に均一に広が
るのではなく、三次元的な隠れ(オクルージョン)や光
強度の角度依存性などを考慮して、物点からの広がりの
角度範囲や光の強弱の分布を個々に設定することによ
り、隠面処理等も行われ、金属面なども表現した、より
多彩で高品位な立体像を表示可能となる。
【0065】また、スリット内の垂直方向の複素振幅分
布については、観察される波長(色)に関して、スリッ
ト内の任意位置において照明光の入射角度と観察者の視
点位置から(1) 式を用いて求められる空間周波数(垂直
方向)の干渉縞が得られるようにすれば良い。
【0066】具体的には、ある波長に関して、上記の平
面に垂直な波面の平面波(もしくは観察位置に集光する
円筒面波)が水平方向には上記で計算した複素振幅分布
を持って計算機ホログラム面に到達し、照明光の入射角
度から別の均一な平面波(上記の平面波もしくは円筒面
波とコヒーレントな)が入射したものとしてスリット内
の干渉縞を求めることができる。より単純な方法として
は、垂直方向の干渉縞の空間周波数を(1) 式により予め
求めておき、上記の水平方向の複素振幅分布で変調する
ことでも、スリット内の干渉縞を求めることが可能であ
る。
【0067】図8は、反射型の計算機ホログラムに照明
光を入射した場合の、垂直方向における計算機ホログラ
ムと観察者の視点位置の関係を示す説明図である。照明
光の入射角度、観察距離とスリットの計算機ホログラム
上での高さに依存して、当該スリットの垂直方向の空間
周波数と観察波長の関係を(1) 式に基づいて設計すれ
ば、観察距離から観察した際に、計算機ホログラム全面
を望ましい表示色で観察させることが可能となる。
【0068】この設計に基づかない場合、計算機ホログ
ラムの上部と下部とで表示色の色調が均一でなくなり、
正確な色再現が困難になる。一方、観察距離と比較して
計算機ホログラムの全高が十分に小さい場合には、(1)
式をF=1/λと近似しても良く、この場合には特定の
波長に関して、計算機ホログラム面全体で一様な垂直方
向の空間周波数を設定すればよいため、計算が簡略化で
き、計算機ホログラムの簡便な作成が可能となる。
【0069】以上では本発明の計算機ホログラムの表示
物体として、立体物に関して計算方法の説明をしたが、
これに限らず、視点位置により像が変化する表示を行う
ことも可能である。この場合は、上記の計算方法におい
て、変化する像毎にそれぞれ狭い視域を設定すればよ
い。なお、本発明の計算機ホログラムは、表面レリーフ
型に代表される位相型ホログラム、濃度表現による振幅
型ホログラムなど、どのような種類のホログラム形態で
も適用される。
【0070】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の如く、計
算機ホログラムが所望の波長の光について計算された干
渉縞から成る水平方向に長いスリットを構成単位とし、
異なる前記波長に対応した複数のスリットを垂直方向に
並べてスリット群とし、スリット群において複数のスリ
ットを構成する干渉縞の垂直方向の主な空間周波数と前
記波長との積が一定であり、複数のスリット群が並んで
いることによって、水平方向に視差を有する多色立体像
を表示する際に、奥行き方向に空間的に滑らかな像の表
示が可能であると共に、ノイズを極小にし、広い色域に
亘り正確な色再現を実現した高品位な多色立体像を表示
することが可能となる。
【0071】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による計算機ホログラム(および、R,
G,B用スリット)の一例を示す説明図。
【図2】本発明による計算機ホログラムのR,G,B用
スリットの干渉縞の一例を拡大して示す説明図。
【図3】反射型の計算機ホログラムに、光源からの照明
光を入射した場合の0次回折光と1次回折光の出射方向
を示す垂直方向における断面図。
【図4】従来の計算機ホログラムのR,G,Bの干渉縞
が多重記録された一例を拡大して示す説明図。
【図5】本発明の計算機ホログラムの視域と計算機ホロ
グラム面上での対応する大きさの説明図。
【図6】本発明の計算機ホログラムの観察の様子を示す
説明図。
【図7】本発明の計算機ホログラム生成時のスリット内
の干渉縞の計算方法を示す説明図であり、表示すべき仮
想三次元物体と視線を結んだ位置のスリットが計算され
る様子を表す。
【図8】反射型の計算機ホログラムに照明光を入射した
場合の、垂直方向における計算機ホログラムと観察者の
視点位置の関係を示す説明図。

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水平方向にのみ視差を持つ計算機ホログラ
    ムにおいて、 所望の波長の光について計算された干渉縞から成る水平
    方向に長いスリットを構成単位とし、 異なる波長に対応した複数のスリットを垂直方向に並べ
    てスリット群とし、 スリット群において、複数のスリットを構成する干渉縞
    の垂直方向の主な空間周波数と前記波長との積が一定で
    あり、 スリット群が複数形成されていることを特徴とする計算
    機ホログラム。
  2. 【請求項2】所望の波長に関して、各スリットを構成す
    る干渉縞の垂直方向の主な空間周波数が下記式のfに相
    当することを特徴とする請求項1記載の計算機ホログラ
    ム。 【数1】 (ただし、fは空間周波数、λは所望の波長、θは予め
    設定した照明光の計算機ホログラム面への入射角度、h
    は計算機ホログラムの中心を原点としたスリットの高さ
    (上方向を正とする)、Dは予め設定した観察距離。)
  3. 【請求項3】複数のスリット群がそれぞれ同一の波長に
    対応した干渉縞から成るスリットを含んでいることを特
    徴とする請求項1または2に記載の計算機ホログラム。
  4. 【請求項4】スリット群が、それぞれR,G,Bに対応
    する波長の光について計算された干渉縞から成る3つの
    スリットを含んでいることを特徴とする請求項1〜3の
    何れかに記載の計算機ホログラム。
  5. 【請求項5】スリット群が、4つ以上の異なる波長に対
    応したスリットを含んでいることを特徴とする請求項1
    〜3の何れかに記載の計算機ホログラム。
  6. 【請求項6】各スリットにおいて、スリットを構成する
    干渉縞の垂直方向の空間周波数が一様であることを特徴
    とする請求項1〜5の何れかに記載の計算機ホログラ
    ム。
  7. 【請求項7】スリットの水平方向の長さが、表示像上の
    最大奥行きと視域の角度の正接との積以上であることを
    特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の計算機ホログ
    ラム。
  8. 【請求項8】スリットの水平方向の長さが計算機ホログ
    ラムの表示面の水平方向の長さと一致していることを特
    徴とする請求項1〜6の何れかに記載の計算機ホログラ
    ム。
  9. 【請求項9】スリットの垂直方向の幅が10μm以上で
    あることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の計
    算機ホログラム。
  10. 【請求項10】スリット群の垂直方向の幅が150μm
    以下であることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記
    載の計算機ホログラム。
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