JP2001322972A - エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸又はその塩の製造方法 - Google Patents

エチレンジアミン−n,n’−ジコハク酸又はその塩の製造方法

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JP2001322972A
JP2001322972A JP2000144939A JP2000144939A JP2001322972A JP 2001322972 A JP2001322972 A JP 2001322972A JP 2000144939 A JP2000144939 A JP 2000144939A JP 2000144939 A JP2000144939 A JP 2000144939A JP 2001322972 A JP2001322972 A JP 2001322972A
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Naoki Kato
尚樹 加藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 エチレンジアミンとマレイン酸及び/又はフ
マル酸とを原料とする合成反応により得られた粗エチレ
ンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその塩を含む水
性溶液から、劣化、変性を抑えて高品質のEDDS又は
その塩を高回収率で且つ廃水負荷も少なくして得ること
ができる方法を提供すること。 【解決手段】 エチレンジアミンとマレイン酸及び/又
はフマル酸とを反応させて得られる反応混合物を、エチ
レンジアミンを分離するための第1のクロマトグラフィ
ーと、マレイン酸及び/又はフマル酸を分離するための
第2のクロマトグラフィーで処理することを特徴とす
る、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその
塩の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エチレンジアミン
−N,N’−ジコハク酸(本明細書中、EDDSと略記
する場合もある)又はその塩の製造方法に関する。より
詳細には、本発明は、エチレンジアミンとマレイン酸及
び/又はフマル酸とを原料とする合成反応で得られたE
DDS又はその塩を含む反応混合物をクロマトグラフィ
ーにより分別処理して高純度のEDDS又はその塩を製
造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より知られているキレート化合物と
しては、例えばトリポリリン酸ナトリウムがある。トリ
ポリリン酸ナトリウムは優れたキレート力を有し、洗剤
ビルダーに用いられてきたが、リンを含有するため河川
又は湖沼の富栄養化を招く一因となり現在は使用されて
いない。現在使用されている洗剤ビルダーとしてはゼオ
ライトが多く用いられているが、キレート力が弱く、ま
た無機物であるため生分解性が無く、水にも不溶のため
排水管等への固着といった問題点がある。
【0003】一般に最も知られたキレート化合物として
は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三
酢酸(NTA)がある。これらは極めて安定したキレー
ト力を有するが、例えばEDTAは生分解性に乏しく環
境中に放出されたとき、生体に有害な重金属を可溶化し
てしまうので、重金属が環境中に蓄積されてしまうこと
が懸念される。またNTAは生分解性は有してはいる
が、そのものの毒性が懸念され使用には注意を有する。
【0004】EDDS及びその塩は金属キレート特性を
持ち、毒性もなく、今後の需要増大が期待される。特に
S,S体のEDDS及びその塩は、金属キレート特性及
び生分解性を併せ持ち、毒性もなく、例えば洗剤用ビル
ダーとして使用することができる。(S,S)−EDD
Sの構造式は次の通りである。
【0005】
【化2】
【0006】EDDSには二個の不斉炭素が存在し、三
種の光学異性体が存在する。これらの異性体のうちS,
S体は優れた生分解性を有しているが、R,R体は生分
解性に乏しく、またR,S体はS,S体に比べ生分解の
速度が遅い。EDDS及びその塩を製造する方法につい
ては従来から、いろいろな提案がなされている。例えば
ラセミ体のEDDSの製造方法としては、エチレンジア
ミンにマレイン酸を付加する方法(Zhurnal O
bshchei Khimii.,49,659(19
78))が知られている。またS,S体のEDDSを製
造する方法としては、ジブロモエタンにL−アスパラギ
ン酸を付加する方法(Inorg.Chem.,7.2
405(1968))、ジクロロエタンにL−アスパラ
ギン酸を付加する方法(Chem.Zvesti.,2
0,414(1966))又はジカルボニル化合物(グ
リオキサール)とアミノカルボン酸(L−アスパラギン
酸)からシッフ塩基を生成させた後、還元反応により製
造する方法(WO96/32371号公報)等が知られ
ている。また、微生物及び/又はその処理物の存在下、
フマル酸とエチレンジアミンからEDDSを製造する方
法(EP0731171号明細書)、マレイン酸とエチ
レンジアミンから製造する方法(特開平10−5229
2号公報)も知られている。
【0007】これら既存の合成反応で得られる反応混合
物は、反応生成物であるEDDS又はその塩以外に、反
応原料、触媒、副生物等を含んでおり、EDDS又はそ
の塩を単離するための精製工程が必要である。EDDS
は、酸性条件下での溶解度が小さいため、通常、反応粗
液に塩酸、硫酸等の鉱酸を添加することによってEDD
Sを析出させて、固液分離、洗浄等により回収されてい
る(WO95/12570号、WO96/35662
号、WO96/01803号、WO96/32371
号、特開平8−301824号各公報)。この方法は、
EDDSを比較的高純度で得られる点で優れているもの
の、晶析工程、スラリーの取扱いが必要であり操作が繁
雑で、助剤として無機酸が必要となるばかりか生成する
各種塩を廃水として大量に廃棄しなければならない。一
方、酸性条件下ではEDDS又はその塩の劣化、変性が
あり、EDDS又はその塩の回収率が低いという問題も
ある。
【0008】また、原料としてフマル酸を使用する合成
反応の場合には、未反応のフマル酸が生成するEDDS
と共存する反応混合物が得られ、フマル酸を析出させず
にEDDSを単独で析出させるには、厳密なpHコント
ロールが必要となり操作性がよくない。また、EDDS
を晶析回収した後の濾液から、フマル酸を晶析回収し、
合成反応に再使用するにも、溶解しているフマル酸は廃
棄するしかなく、回収率が小さくなってしまう。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、合成
反応によりEDDS又はその塩を製造する場合、反応混
合物中には、目的とするEDDS又はその塩の他に、未
反応の原料、副生塩、その他の反応副生物等が含まれて
おり、この中から目的とする高純度のEDDS又はその
塩を得るためには、晶析、固液分離等において厳密な操
作を必要とし、また、廃水負荷も大きい。本発明は、工
業原料として安価に入手可能なエチレンジアミンとマレ
イン酸及び/又はフマル酸とを原料とするEDDS又は
その塩の製造方法において、これらの厳密な操作を必要
とせず、品質の劣化、変性を抑えて、高純度のEDDS
又はその塩を高回収率で、且つ廃水負荷も少なくして、
工業的に有利に製造する方法を提供することを目的とす
る。
【0010】
【発明が解決するための手段】本発明者らは、かかる状
況に鑑み鋭意検討した結果、エチレンジアミンとマレイ
ン酸及び/又はフマル酸を原料とする合成反応により得
られたEDDS又はその塩を含む反応混合物を、エチレ
ンジアミンを分別するための第1のクロマトグラフィー
処理と、マレイン酸及び/又はフマル酸を分別するため
の第2のクロマトグラフィー処理とに付してEDDS又
はその塩を回収することによって、EDDS又はその塩
を、未反応の原料、副生塩、その他の反応副生物等の他
の成分から容易に分離し得ることを見出し、本発明を完
成するに至った。
【0011】即ち、本発明によれば、エチレンジアミン
とマレイン酸及び/又はフマル酸とを反応させて得られ
る反応混合物を、エチレンジアミンを分離するための第
1のクロマトグラフィーと、マレイン酸及び/又はフマ
ル酸を分離するための第2のクロマトグラフィーで処理
することを特徴とする、エチレンジアミン−N,N’−
ジコハク酸又はその塩の製造方法が提供される。
【0012】本発明の第1の態様では、エチレンジアミ
ンとマレイン酸及び/又はフマル酸とを反応させて得ら
れる反応混合物を、エチレンジアミンを分離するための
第1のクロマトグラフィーで処理し、次いで、第1のク
ロマトグラフィーで得られたエチレンジアミン−N,
N’−ジコハク酸又はその塩を含む画分をマレイン酸及
び/又はフマル酸を分離するための第2のクロマトグラ
フィーで処理することによって、エチレンジアミン−
N,N’−ジコハク酸又はその塩が回収される。本発明
の第2の態様では、エチレンジアミンとマレイン酸及び
/又はフマル酸とを反応させて得られる反応混合物を、
マレイン酸及び/又はフマル酸を分離するための第2の
クロマトグラフィーで処理し、次いで、第2のクロマト
グラフィーで得られたエチレンジアミン−N,N’−ジ
コハク酸又はその塩を含む画分をエチレンジアミンを分
離するための第1のクロマトグラフィーで処理すること
によって、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又
はその塩が回収される。
【0013】本発明の一態様では、エチレンジアミンと
マレイン酸及び/又はフマル酸とを塩基性水性溶液中で
加熱下で反応させて得られる反応混合物を使用する。本
発明の別の態様では、エチレンジアミンとマレイン酸及
び/又はフマル酸とを微生物及び/又はその処理物の存
在下で反応させて得られる反応混合物を使用する。好ま
しくは、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又は
その塩は(S,S)−エチレンジアミン−N,N’−ジ
コハク酸又はその塩である。
【0014】本発明の一態様では、上記した本発明の方
法において分別されたエチレンジアミン、マレイン酸及
び/又はフマル酸及び/又はそれらの塩を反応に再利用
することを特徴とする、エチレンジアミン−N,N’−
ジコハク酸又はその塩の製造方法が提供される。
【0015】好ましい態様では、第1及び/又は第2の
クロマトグラフィー処理は単塔カラムを用いてバッチ方
式で行う。好ましい別の態様では、第1及び/又は第2
のクロマトグラフィー処理は擬似移動床装置を用いて連
続的に行う。好ましくは、第1のクロマトグラフィーは
陽イオン交換クロマトグラフィーである。好ましくは、
第1のクロマトグラフィーは、陽イオン交換基を有する
イオン交換体が充填されたカラムを用いて行う。
【0016】好ましくは、第2のクロマトグラフィーは
両性イオン交換クロマトグラフィーである。好ましく
は、第2のクロマトグラフィーは、陰イオン交換基及び
/又は陽イオン交換基を有するイオン交換体が充填され
たカラムを用いて行う。
【0017】好ましくは、イオン交換体は陰イオン交換
体と陽イオン交換体とを有し、該両イオン交換体が内部
塩を形成してなる両性イオン交換体である。好ましく
は、両性イオン交換体はスネークケイジ型樹脂である。
好ましくは、両性イオン交換体は架橋共重合体樹脂母体
に下記一般式(1)で示されるイオン交換基を結合した
樹脂である。
【化3】 (式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜3の
アルキル基を表し、m及びnはそれぞれ独立に1〜4の
整数を表す) 好ましくは、架橋共重合体樹脂母体はスチレンとジビニ
ルベンゼンの架橋重合体からなる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施態様及び実施
方法について詳細に説明する。本発明のエチレンジアミ
ン−N,N’−ジコハク酸又はその塩の製造方法は、エ
チレンジアミンとマレイン酸及び/又はフマル酸とを反
応させて得られる反応混合物を、エチレンジアミンを分
離するための第1のクロマトグラフィーと、マレイン酸
及び/又はフマル酸を分離するための第2のクロマトグ
ラフィーで処理することを特徴とする。エチレンジアミ
ンを分離するための第1のクロマトグラフィーと、マレ
イン酸及び/又はフマル酸を分離するための第2のクロ
マトグラフィーの順番は特に限定されず、いずれを先に
行ってもよい。
【0019】なお、本明細書で言うクロマトグラフィー
とは最も広義の意味を有し、カラムに充填剤を充填した
固定層に対象液を供給して成分分離する方法のみなら
ず、充填剤を仕込んだ撹拌槽などの容器に対象液を供給
して接液させる方法をも包含する。
【0020】1.EDDS又はその塩の合成 エチレンジアミンとマレイン酸及び/又はフマル酸とを
原料とするEDDS又はその塩の合成方法については、
特に限定はされず、例えば、従来公知の合成法を用いる
ことができる。代表的な二つのEDDS又はその塩の合
成法について、その概要を以下に述べる。 (1−a)第1のEDDS又はその塩の合成法 第1のEDDS又はその塩の合成法は、エチレンジアミ
ンとマレイン酸及び/又はフマル酸とを原料とし、塩基
性水性溶液中で加熱して反応を行う方法である。この場
合、エチレンジアミン1モルに対してマレイン酸及び/
又はフマル酸を1.5〜2.5モルの範囲で用いること
が好ましい。マレイン酸及び/又はフマル酸の使用量が
エチレンジアミン1モルに対して1.5モルよりも少な
いとEDDS又はその塩の精製に際してエチレンジアミ
ン残存量が多くなる場合があるため、精製効率が著しく
低下して好ましくなく、2.5モルよりも多くても副生
成物の増加やコスト上昇に繋がり好ましくない。
【0021】水性溶媒としては、通常、水が使用される
が、メタノール、エタノール、エチレングリコールのよ
うな水溶性アルコール類を併用することができる。但
し、これらのアルコール類の添加により、反応速度が若
干向上するとしても、反応液量の増大、反応圧力の上
昇、溶媒の回収という問題が残る。水性溶媒の量は原料
であるエチレンジアミン濃度が1〜30質量%になるよ
うに使用することが好ましい。
【0022】反応は通常、中性から塩基性、好ましくは
塩基性条件により行われる。原料のエチレンジアミンは
水性溶媒に容易に溶解し、塩基性を示す物質であるが、
pHを調整するために通常、塩基性金属化合物が添加さ
れる。その塩基性金属化合物としては、アルカリ金属水
酸化物、アルカリ土類金属水酸化物が好ましく、その具
体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水
酸化カルシウム、水酸化マグネシウム又はこれらの混合
物が挙げられる。反応は通常50〜140℃の範囲の反
応温度で行う。50℃よりも低温では反応速度が著しく
低下し、140℃よりも高温では選択性が低下するた
め、好ましくない。反応圧力は温度にもよるが、常圧、
又は加圧で行う。反応時間はその他の条件にもよるが、
通常は0.5〜50時間の範囲である。
【0023】(1−b)第2のEDDS又はその塩の合
成法 第2のEDDS又はその塩の合成法は、エチレンジアミ
ンとマレイン酸及び/又はフマル酸とを原料として、微
生物及び/又はその処理物を用いて反応させる方法であ
る。微生物は、本反応を進行させ得るリアーゼ活性を有
する微生物であれば特に限定はされない。好ましくは、
S,S−EDDS又はその塩を選択的に合成することが
できる微生物を使用する。なお、S,S−EDDS又は
その塩を選択的に合成する場合には、第1の合成法より
微生物及び/又はその処理物を使用する第2の合成法の
方が好ましい。
【0024】微生物の具体例としては、シュードモナス
属、バークホルデリア属、アシドボラックス属、パラコ
ッカス属、スフィンゴモナス属、ブレブンジモナス属、
アースロバクター属、ハフニア属、エシェリヒア属、ブ
レビバクテリウム属、バチルス属等が例示される。より
具体的には、特開平9−140390号公報、特開平9
−289895号公報並びに特開平10−271999
号公報に記載されている微生物を挙げることができる。
これらの特許公報に記載の製造方法で得られる反応混合
物は本発明の方法で使用することができる。
【0025】微生物を利用したEDDS又はその塩の合
成法に関する公知文献としては、特開平9−14039
0号公報、特開平9−289895号公報、特開平10
−52292号公報、特開平10−66590号公報、
特開平10−218846号公報、特開平10−271
999号公報、特開平10−316638号公報、特開
平11−9294号公報、特開平11−196882号
公報、国際公開WO99/25680号公報、国際公開
WO99/32650号公報、国際公開WO99/54
492号公報などが挙げられ、これら文献に記載の内容
は全て本明細書中に引用するものとする。
【0026】生物界に幅広く存在するフマラーゼが混在
すると、フマラーゼは、本反応の基質であるフマル酸を
リンゴ酸に水和し、EDDS又はその塩の収率を低下さ
せる要因となるため、使用する菌株のフマラーゼ活性が
弱いか容易に失活する場合を除いて、除去又は阻害する
のが望ましい。例えば、菌体破砕液から、クロマトグラ
フィー、塩析、電気泳動等の手法で除去する方法、阻害
剤により阻害する方法、菌体のままでフマラーゼを失活
させる方法〔I. Umehara et al., Appl Microbiol Biot
echnol 20, 291(1984)および湯川ら農芸化学 59, 279(1
985)〕などが知られている。
【0027】上記微生物の培養液は特に制限されず、資
化しうる炭素源、窒素源、無機塩、更に微量の有機栄養
物などを適宜含有する任意の培地を使用でき、合成培地
でも天然培地でもよい。また、微生物の培養の際に、培
地へエチレンジアミン−N,N'−ジコハク酸、エチレ
ンジアミン−N−モノコハク酸、アスパラギン酸、グル
タミン酸、ヒスチジンなどのアミノ酸やフマル酸等の添
加は、目的とする活性の高い菌体が得られることがあり
好ましい。培養条件は菌体や培地により異なるが、培地
のpHは4〜10、好ましくは6〜9の範囲、培養温度
は20〜45℃、好ましくは25〜35℃の範囲で1〜
10日間好気的に行い、活性が最大となるまで1〜10
日間培養すればよい。
【0028】一般に、EDDS又はその塩の合成反応
は、エチレンジアミンとマレイン酸及び/又はフマル酸
を含む水溶液中で、上記微生物の菌体(培養液として、
あるいは遠心分離又は精密濾過膜等で回収した菌体とし
て)または該菌体処理物(乾燥菌体、菌体の破砕物、粗
・精製酵素、固定化菌体・酵素など)を接触させること
により行うことができる。あるいは通常の培養操作で微
生物を培養して得られる培養液にエチレンジアミンとマ
レイン酸及び/又はフマル酸を直接添加しても行うこと
ができる。反応は、0〜60℃、好ましくは10〜50
℃の範囲で行う。
【0029】マレイン酸及び/又はフマル酸はエチレン
ジアミン1モルに対して0.8〜2.5モルの範囲で用
いることが好ましく、エチレンジアミンの添加濃度は反
応液の1〜30質量%の範囲が好ましい。菌体添加量
は、乾燥菌体質量換算で、菌体を含む反応液全体に対し
て、0.1〜10質量%の範囲である。
【0030】反応液のpHは4〜12、好ましくは5〜
10の範囲である。反応のpH調整は、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物或いはそ
の水溶液を適宜使用しうる。また、必要に応じて水酸化
マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属
水酸化物を添加してもよい。反応は、回分式、連続式、
半連続式等いずれの方法でもよい。反応終了液から、遠
心分離、精密濾過膜、限外濾過膜等により菌体及び/又
はその処理物を除去し、S,S体のEDDS又はその塩
を含む粗液を回収できる。
【0031】特開平10−52292号公報、特開平1
1−9294号公報、WO9925680号等による
と、エチレンジアミン1モルに対してフマル酸を2モル
用いて、これを原料として微生物により(S,S)−E
DDS又はその塩を製造すると、エチレンジアミンの8
0〜90%が(S,S)−EDDS又はその塩に変換さ
れることが知られている。未反応の原料は反応液中に残
存するか、他の副生物に変換される。
【0032】上記第1の合成法及び第2の合成法に関
し、EDDSの金属錯体を必要とする場合には、所定の
金属のイオンの存在下で反応を行った後、pH調整、濃
縮、その他の操作により目的化合物を直接得ることがで
きる。一方、反応終了液からEDDSを採取するには、
通常、鉱酸による酸析が行われる。しかし、鉄等の重金
属のイオンの存在下に反応を行った場合のように、酸析
のpHで安定な錯体を形成している系においては、酸析
以前に該金属のイオンを除去する操作が必要である。従
って、EDDS又はその塩を必要とする場合には、酸析
に際し上記のような除去操作を省略できるマグネシウ
ム、カルシウム等のアルカリ土類金属のイオンの存在下
に合成反応を行い、EDDS又はその塩の金属錯体が形
成しないようにすることが効率的である。
【0033】本明細書で言うEDDS塩の種類として
は、pH調整のために添加した塩基性金属化合物(例え
ば、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化
物など)における金属とEDDSとの塩が挙げられる。
具体例には、EDDSのナトリウム塩、カリウム塩、カ
ルシウム塩又はマグネシウム塩などが挙げられる。ま
た、本明細書でEDDS又はその塩という場合には、E
DDSの金属錯体又はその塩も包含するものとする。
【0034】2.クロマトグラフィー処理に供される反
応混合物 本発明では、上記した方法で得られた反応混合物を、エ
チレンジアミンを分離するための第1のクロマトグラフ
ィーと、マレイン酸及び/又はフマル酸を分離するため
の第2のクロマトグラフィーで処理する。既に上記した
通り、第1のクロマトグラフィーと第2のクロマトグラ
フィーの順番は限定されないので、反応混合物は第1の
クロマトグラフィー又は第2のクロマトグラフィーの何
れかに供される。第1又は第2のクロマトグラフィーで
処理される反応混合物は水溶液が好ましく、反応混合物
がスラリー状態の場合は、濾過、希釈等の方法で水溶液
とするのが好ましい。この第1又は第2のクロマトグラ
フィー処理に供される反応混合物としては、反応終了後
のEDDS又はその塩を含む反応混合物の水溶液をその
まま使用することができる。
【0035】なお、反応混合物から、必要に応じて、更
に水を除去して濃縮したもの、或いは逆に反応混合物に
水を加えて希釈したものを用いてもよい。また、反応混
合物のクロマト処理前に、必要に応じて、脱塩処理、活
性炭等を用いての脱色処理、イオン交換樹脂、合成吸着
剤等を用いての吸着処理を施してもよい。脱塩はナノフ
ィルター等の有機膜により濃縮脱塩として処理をしても
よいし、クロマトグラフィー処理をして脱塩を行っても
よい。また、イオン交換膜による電気透析操作により脱
塩することもできる。
【0036】反応混合物に含まれる水以外の成分として
は、 (1)目的とするEDDS又はその塩; (2)未反応原料又はその塩[エチレンジアミン、マレ
イン酸及び/又はフマル酸、又はそれらの金属塩(具体
的にはアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩)];及
び (3)反応副生物(例えば、L−リンゴ酸又はその塩、
エチレンジアミン−N−モノコハク酸又はその塩等):
が挙げられる。反応混合物中のEDDS又はその塩の濃
度は、通常1〜50質量%であるが、クロマトグラフィ
ー処理のためのEDDS又はその塩の濃度としては、1
〜30質量%が好ましい。
【0037】EDDS又はその塩の濃度が1質量%より
低いと大量の希薄溶液を扱うことになり、得られる分離
液中のEDDS又はその塩の濃度が低下して効率が悪
く、また30質量%より高いとクロマト分離の効率が低
下し、充填剤の劣化損傷も顕著になるため好ましくな
い。
【0038】処理すべき反応混合物は中性付近からアル
カリ性であることが好ましく、具体的にはpH6〜1
2、好ましくはpH6.5〜11の範囲である。酸性条
件下ではEDDSの溶解度が小さくなり、結晶が析出し
やすくなる。また、酸性条件下では、EDDS又はその
塩の劣化や変性が起こりやすいため、必要に応じて水酸
化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化
物又はその水溶液を添加して、pHを調整する。
【0039】3.第1のクロマトグラフィー処理 本発明における第1のクロマトグラフィー処理は、エチ
レンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその塩からエ
チレンジアミンを分離するためのクロマトグラフィー処
理である。第1のクロマトグラフィーを第2のクロマト
グラフィーに先だって行う場合には、本明細書中上記し
た反応混合物を第1のクロマトグラフィーで処理する。
第2のクロマトグラフィーを第1のクロマトグラフィー
に先だって行う場合には、第2のクロマトグラフィーで
得られる、マレイン酸及び/又はフマル酸を分離したエ
チレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその塩を含
む画分(以下、第2のクロマトグラフィーで分画された
反応混合物とも称する)を第1のクロマトグラフィーで
処理する。
【0040】第1のクロマトグラフィー処理は、各種充
填剤と反応混合物又は第2のクロマトグラフィーで分画
された反応混合物とを接触させ、更に必要に応じて溶離
液を供給し、溶出液を分別回収する操作を広く意味し、
具体的態様は特には限定されない。第1のクロマトグラ
フィーの具体的態様としては、例えば、充填剤を撹拌槽
などの容器に仕込み、反応混合物又は第2のクロマトグ
ラフィーで分画された反応混合物を該容器に添加して接
液させることで特定成分を吸着させる方法(接液処理;
バッチ方式)、あるいはい充填剤を充填したカラムの固
定層に反応混合物又は第2のクロマトグラフィーで分画
された反応混合物を供給して成分を分離する方法(クロ
マト処理;バッチ方式又は疑似移動床装置等による連続
方式)が挙げられる。
【0041】使用する溶離液は特に限定されないが、中
性ないし塩基性水性溶液が好ましい。処理温度は特に限
定されないが、5〜60℃、好ましくは、10〜50℃
の範囲である。通常は室温付近で行うことができる。ク
ロマト処理する場合の、操作方式も特に限定もされず、
バッチ方式でも連続方式でもよい。用いるカラムも一本
(単塔)でも複数本でもよい。
【0042】バッチ方式のクロマト処理は、単塔カラム
を用いる処理方法で、最も簡便な操作方式である点で好
ましいが、大量の溶離液を必要とし、充填剤を断続的に
使用する。連続方式のクロマト処理は、溶離液の使用量
を節約でき、充填剤を常時使用する点で好ましく、特に
擬似移動床装置を用いる連続方式のクロマト処理は、安
定的に連続操作が可能な点で好ましい。擬似移動床装置
は、複数のカラムを配置し、流体の供給、取出し口を所
定の周期で流体流れ方向にカラム一区画ずつ移動するこ
とにより、相対的に充填剤と流体の向流接触を達成した
もので、擬似移動床装置を用いる連続方式のクロマト処
理では処理液の供給、成分の分離を安定的に連続操作す
ることができる。
【0043】分離カラムは特に限定されるものではない
が、単塔カラム(各単塔を一区画とする)を複数本環状
に配置したもの或いは、単塔カラムを高さ方向に分割し
た段塔型式(分割した各部分を一区画とする)にしたも
のが選ばれる。流体の供給、取り出しは、適性な分離が
可能であれば、任意の場所から複数の箇所においても可
能である。
【0044】カラムの空塔速度(SV)は0.1〜10
hr-1、好ましくは0.2〜5hr -1の範囲で運転する
のがよい。SVが小さいと、クロマト装置の充填剤が大
量に必要になり、工業的に不利な条件となり、一方、S
Vが大きすぎると充填剤の性能低下が早期に起き、また
カラム圧力が増大して好ましくない。処理圧力は、加圧
下でも減圧下でも差し支えないが、装置、操作性を考慮
すると常圧、若しくは常圧付近で行うことが好ましい。
流通方向は上向き、下向き、その交互操作等特に限定さ
れない。
【0045】使用する充填剤は、EDDS又はその塩か
ら未反応のエチレンジアミンを分別できるものであれば
特に限定されない。複数本のカラムを用いる場合、各カ
ラムに同一の充填剤を充填してもよいし、また、必要に
応じて、別な或いは数種の充填剤を個々に充填しても差
し支えない。耐アルカリ性の充填剤がより好ましい。親
水性充填剤として、シリカゲル、活性白土、合成ゼオラ
イト、疎水性充填剤として、活性炭、分子篩いカーボン
を、また、各種合成吸着剤、これにイオン交換基を導入
した各種イオン交換樹脂等を例示することができる。必
要に応じて、選択した充填剤の粒径やその分布を調整す
るのが好ましい。
【0046】第1のクロマトグラフィーは、好ましくは
イオン交換クロマトグラフィー、より好ましくは陽イオ
ン交換クロマトグラフィーである。第1のクロマトグラ
フィーで用いる充填剤は、好ましくはイオン交換樹脂、
より好ましくは陽イオン交換樹脂(強酸性イオン交換樹
脂または弱酸性イオン交換樹脂)である。本発明で特に
好ましく使用できる強酸性陽イオン交換樹脂としては三
菱化学(株)社製のSKIB、PK208、UBK53
0などが挙げられ、弱酸性陽イオン交換樹脂としては、
三菱化学(株)社製のWK10、WK20、WK40な
どが挙げられる。
【0047】第1のクロマトグラフィーで使用する陽イ
オン交換体の交換容量は、0.5〜6.0meq/g樹
脂、好ましくは1.0〜4.5meq/g樹脂である。
【0048】4.第2のクロマトグラフィー処理 本発明における第2のクロマトグラフィー処理は、エチ
レンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその塩からマ
レイン酸及び/又はフマル酸を分離するためのクロマト
グラフィー処理である。第1のクロマトグラフィーを第
2のクロマトグラフィーに先だって行う場合には、第1
のクロマトグラフィーで得られる、エチレンジアミンを
分離したエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又は
その塩を含む画分(以下、第1のクロマトグラフィーで
分画された反応混合物とも称する)を第2のクロマトグ
ラフィーで処理する。第2のクロマトグラフィーを第1
のクロマトグラフィーに先だって行う場合には、本明細
書中上記した反応混合物を第2のクロマトグラフィーで
処理する。
【0049】第2のクロマトグラフィー処理は、各種充
填剤と反応混合物又は第1のクロマトグラフィーで分画
された反応混合物とを接触させ、更に必要に応じて溶離
液を供給し、溶出液を分別回収する操作を広く意味し、
具体的態様は特には限定されない。第2のクロマトグラ
フィーの具体的態様としては、カラムに充填した固定層
に反応混合物又は第2のクロマトグラフィーで分画され
た反応混合物を供給して成分を分離する方法(クロマト
処理;バッチ方式又は連続方式)が挙げられる。使用す
る溶離液は特に限定されないが、中性ないし塩基性水性
溶液が好ましい。処理温度は特に限定されないが、5〜
80℃、好ましくは、10〜70℃の範囲である。通常
は室温付近で行うことができる。操作方式も特に限定も
されず、バッチ方式でも連続方式でもよい。用いるカラ
ムも一本(単塔)でも複数本でもよい。
【0050】バッチ方式の単塔カラムを用いたクロマト
分離は、最も簡便な操作方式であるが、大量の溶離液を
必要とし、充填剤が常時使用されない、不連続操作とな
る等の欠点があるため、好ましくは連続操作がよい。連
続方式で処理する方式としては、充填剤を流体流れと反
対方向に適当な流速で移動させる方式があるが、充填剤
の摩耗が生じ、定常流れでの運転が困難である等問題も
多く、安定的に連続操作が可能な、擬似移動床装置によ
り運転をすることが好ましい。擬似移動床分離方式は、
複数の分離カラムを配置し、流体の供給、取出し口を所
定の周期で流体流れ方向にカラム一区画ずつ移動するこ
とにより、相対的に充填剤と流体の向流接触を達成させ
たもので、処理液の供給、成分の分離を連続的に操作し
うる。
【0051】分離カラムは特に限定されるものではない
が、単塔カラム(各単塔を一区画とする)を複数本環状
に配置したもの或いは、単塔カラムを高さ方向に分割し
た段塔型式(分割した各部分を一区画とする)にしたも
のが選ばれる。流体の供給、取り出しは、適性な分離が
可能であれば、任意の場所から複数の箇所においても可
能である。
【0052】カラムの空塔速度(SV)は0.1〜10
hr-1、好ましくは0.2〜5hr -1の範囲で運転する
のがよい。SVが小さいと、クロマト装置の充填剤が大
量に必要になり、工業的に不利な条件となり、一方、S
Vが大きすぎると充填剤の性能低下が早期に起き、また
カラム圧力が増大して好ましくない。処理圧力は、加圧
下でも減圧下でも差し支えないが、装置、操作性を考慮
すると常圧、若しくは常圧付近で行うことが好ましい。
流通方向は上向き、下向き、その交互操作等特に限定さ
れない。
【0053】使用する充填剤は、EDDS又はその塩を
他の成分(特には、マレイン酸及び/又はフマル酸)と
分離しうるものであれば特に限定されない。複数本のカ
ラムを用いる場合、各カラムに同一の充填剤を充填して
もよいし、また、必要に応じて、別な或いは数種の充填
剤を個々に充填しても差し支えない。耐アルカリ性の充
填剤がより好ましい。親水性充填剤として、シリカゲ
ル、活性白土、合成ゼオライト、疎水性充填剤として、
活性炭、分子篩いカーボンを、また、各種合成吸着剤、
これにイオン交換基を導入した各種イオン交換樹脂等を
例示することができる。必要に応じて、選択した充填剤
の粒径やその分布を調整するのが好ましい。
【0054】第2のクロマトグラフィーに供される混合
物には、EDDS又はその塩、未反応のマレイン酸及び
/又はフマル酸又はそれらの塩、その他の反応副生物等
が含まれるから、吸着性の差異を利用して電解質を分離
することが可能な各種イオン交換体が、好ましい充填剤
として選定される。第2のクロマトグラフィーは、好ま
しくは両性イオン交換クロマトグラフィーである。好ま
しくはイオン交換基として、陰イオン交換基及び/又は
陽イオン交換基を有するイオン交換体、更に好ましく
は、陰イオン交換基と陽イオン交換基とを有し、これら
両イオンが内部塩を形成している両性イオン交換体が使
用される。
【0055】内部塩を形成している両性イオン交換体の
一例としては、例えば一般にスネークケイジ型と呼ばれ
ている樹脂が挙げられる。スネークケイジ型樹脂とはス
チレン又はアクリル系の強塩基性イオン交換体にアクリ
ル酸を含浸、重合させた複合体で、ダウケミカル社の
「リターデオン11A−8」、三菱化学社「ダイヤイオ
ン(登録商標)DSR−1」、「ダイヤイオン(登録商
標)AMP−01」等の名称で市販されている。
【0056】内部塩を形成している両性イオン交換体の
別の例としては、アクリル系又はスチレン系の架橋共重
合体からなる樹脂母体に直接結合した式(1)で示され
るイオン交換基を有する樹脂が挙げられる(例えば、特
開平7−3485号公報に記載の両性イオン交換体な
ど)。
【0057】
【化4】
【0058】(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭
素数1〜3のアルキル基を表し、m及びnはそれぞれ独
立に1〜4の整数を表す) 式(1)において、炭素数1〜3のアルキル基について
は、直鎖状、分岐状、環状又はそれらの組み合わせのい
ずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル
基、プロピル基が挙げられる。
【0059】式(1)で示されるイオン交換基を有する
樹脂は、例えば特公昭60−45942号公報に記載さ
れている方法に従い、スチレン系の架橋共重合体にハロ
メチル基を導入し、次いでN,N−ジメチルグリシンの
酸無水物、酸アマイド、酸ハロゲン化物、低級アルキル
エステル等のN−置換−アミノ酸の酸誘導体を反応させ
た後、加水分解する方法及びこれに準ずる方法により製
造される。本発明で使用される両性イオン交換体は、球
状で粒径が100〜1200μm、好ましくは150〜
400μmである。イオン交換体の交換容量は、1.0
〜6.0meq/g樹脂、好ましくは2.0〜4.5m
eq/g樹脂である。また、イオン交換体の水分は20
〜80質量%、好ましくは30〜60質量%である。
【0060】上記したような第1のクロマトグラフィー
処理及び第2のクロマトグラフィーを組み合わせて行う
ことによってEDDS又はその塩を反応混合物から回収
することが本発明の特徴である。以下の操作は本発明に
必須ではないが、EDDS又はその塩の取扱い上の便
宜、使用目的など種々の事情に応じて、適宜行うことが
できる。
【0061】5.EDDS又はその塩を含む分離液 上記した第1のクロマトグラフィー処理と第2のクロマ
トグラフィー処理により分離されたEDDS又はその塩
を主として含む分離液(好ましくは、実質的にEDDS
又はその塩のみを含む分離液)は中性ないし塩基性水溶
液である。この分離液は、必要に応じて濃縮等により濃
度の調整を行い、また塩基性助剤を添加してよりアルカ
リ性の強い液として保存安定性を高めてもよい。必要に
応じて、少量不純物、着色物質等の除去を目的とした、
活性炭、イオン交換樹脂等による処理を行ってもよい。
単塔カラムにこれらの充填剤を充填し、連続的に流通さ
せて処理する、或いは、攪拌槽に充填剤を均一懸濁し、
処理液と接触させる等の簡便な方法が好ましい。
【0062】一方、EDDSを酸として回収したい場合
には、分離液に鉱酸を添加してEDDSを晶析させても
よい。使用する鉱酸としては、塩酸又は硫酸が好まし
く、反応液中に少量ずつ添加していく。酸は水で3〜5
0質量%程度に希釈したものを使用することが、過度の
発熱防止の観点から好ましい。晶析温度は特に限定され
ないが、5〜60℃、通常は室温付近で行えば問題な
い。酸の添加により発熱するが、その場合には酸添加速
度で調節可能であり、また、当然冷却しながら酸を加え
てもよい。酸添加時間は通常0.1〜30時間の範囲で
行い、添加後、熟成させることもできる。晶析はpHを
確認しながら酸を加えていくが、pH3〜5付近で結晶
が析出する。その後pHを保持するため酸を少量添加
し、pHの上昇がなくなるまで行う。析出した結晶は、
必要に応じて、加圧濾過、減圧濾過、遠心分離等、通常
の濾過方法で濾過を行う。得られたケーキは水で数回洗
浄することにより、無機物等の混入をほぼ完全に防ぐこ
とができる。
【0063】6.回収液の再使用 本発明においては、上記した第1のクロマトグラフィー
処理及び第2のクロマトグラフィー処理により回収され
る未反応原料を、EDDSの合成反応に再使用すること
ができる。例えば、以下の実施例1に示す通り、第1の
クロマトグラフィーを弱酸性陽イオン交換クロマトグラ
フィーで行う場合、pH9.0の反応混合物をカラムに
供与し、水で溶出するとエチレンジアミンはカラムに吸
着されて溶出液中には存在しない。EDDS又はその塩
を含む溶出液を回収した後、以下の実施例3に示すよう
に、アルカリ性溶液(例えば、0.5NのNaOH水溶
液など)をカラムに通すとエチレンジアミンが溶出して
くる。このようにして回収されるエチレンジアミンはE
DDSの合成反応の原料として再使用できる。あるい
は、第2のクロマトグラフィー処理により、EDDSは
マレイン酸及び/又はフマル酸と分離される。従って、
第2のクロマトグラフィー処理において、マレイン酸及
び/又はフマル酸を豊富に含む画分を回収してEDDS
の合成反応の原料として再使用することもできる。
【0064】上記したように、第1及び第2のクロマト
グラフィーからの回収液又は溶出液(EDDS又はその
塩を含んでいてもよい)を、プロセスの全体の効率化の
ために、何ら処理することなしにEDDSの合成反応に
再使用することができる。必要に応じて、回収液の原料
濃度が希釈されていて反応濃度が低下するのであれば、
蒸留、膜等により任意濃度に濃縮することができる。ま
た、pHが低ければ、塩基性物質、好ましくは、アルカ
リ金属水酸化物を添加して、pHが高ければ、硫酸、塩
酸等の鉱酸を添加して適宜pHを調整してもよい。塩濃
度が高ければ、必要に応じて上記同様に脱塩処理後に合
成反応に再使用することも可能である。以下の実施例に
より本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら
実施例に限定されることはない。本発明の精神から離れ
ることなく実施例に適宜変更や改良を加えて本発明を実
施できることは当業者には自明である。
【0065】
【実施例】(酵素反応液のメイクアップ)フマル酸2.
3g(0.02モル)、(S,S)−エチレンジアミン
−N,N’−ジコハク酸11.7g(0.04モル)を
発熱に注意しながらNaOH水溶液に混合し、エチレン
ジアミン0.6g(0.01モル)を添加したのち、さ
らにNaOH水溶液でpH9.0に調整し、水を加えて
100gのメイクアップ液を得た。
【0066】実施例1(メイクアップ液のカチオン交換
樹脂による処理) 上記で得られたメイクアップ液を30gを、三菱化学
(株)社製の弱カチオン交換樹脂WK40(300m
l)を充填したカラムに温度50℃にて、SV0.5h
-1でカラム上方より供給し、続けて同じSVで蒸留水
を供給した。下方より抜き出した回収液の成分濃度に関
して、表1の結果を得た。なお、EDDS、エチレンジ
アミン、フマル酸は高速液体クロマトグラフィーにより
定量した。
【0067】
【表1】
【0068】実施例2(回収液のイオン交換樹脂による
処理) 実施例1で得られた画分番号2から7までの計6画分の
回収液を200mlナス型フラスコに入れて、減圧下、
60℃の水浴条件で濃縮した。濃縮液量として、30.
5gであり、各成分の濃度はEDDS11.4%、フマ
ル酸2.23%であった。この濃縮液を、三菱化学
(株)社製のイオン交換樹脂DSR−01(300m
l)を充填したカラムに温度50℃にて、SV0.36
hr-1でカラム上方より供給し、続けて同じSVで蒸留
水を供給した。下方より抜き出した回収液の成分濃度に
関して、表2の結果を得た。なお、EDDS、フマル酸
は高速液体クロマトグラフィーにより定量した。
【0069】
【表2】
【0070】実施例3(エチレンジアミンの回収) 実施例1の操作終了後に、温度50℃にて、SV0.5
hr-1でカラム上方より0.5NのNaOH水溶液を供
給した。供給を開始してから、下方より抜き出した回収
液が計300mlになるまで0.5NのNaOH水溶液
を供給した。得られた回収液中のエチレンジアミンの回
収量は0.175gであり、回収率は約97%であっ
た。
【0071】
【発明の効果】本発明によれば、エチレンジアミンとマ
レイン酸及び/又はフマル酸とを原料とする合成反応に
より得られたエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸
又はその塩を含む反応混合物から、劣化、変性を抑えて
高品質のEDDS又はその塩を高回収率で且つ廃水負荷
も少なくして得ることができる。

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンジアミンとマレイン酸及び/又
    はフマル酸とを反応させて得られる反応混合物を、エチ
    レンジアミンを分離するための第1のクロマトグラフィ
    ーと、マレイン酸及び/又はフマル酸を分離するための
    第2のクロマトグラフィーとで処理することを特徴とす
    る、エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその
    塩の製造方法。
  2. 【請求項2】 エチレンジアミンとマレイン酸及び/又
    はフマル酸とを反応させて得られる反応混合物を、エチ
    レンジアミンを分離するための第1のクロマトグラフィ
    ーで処理し、次いで、第1のクロマトグラフィーで得ら
    れたエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその
    塩を含む画分をマレイン酸及び/又はフマル酸を分離す
    るための第2のクロマトグラフィーで処理して、エチレ
    ンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその塩を回収す
    る、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 エチレンジアミンとマレイン酸及び/又
    はフマル酸とを反応させて得られる反応混合物を、マレ
    イン酸及び/又はフマル酸を分離するための第2のクロ
    マトグラフィーで処理し、次いで、第2のクロマトグラ
    フィーで得られたエチレンジアミン−N,N’−ジコハ
    ク酸又はその塩を含む画分をエチレンジアミンを分離す
    るための第1のクロマトグラフィーで処理して、エチレ
    ンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその塩を回収す
    る、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 エチレンジアミンとマレイン酸及び/又
    はフマル酸とを塩基性水性溶液中で加熱下で反応させて
    得られる反応混合物を使用する、請求項1から3の何れ
    かに記載のエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又
    はその塩の製造方法。
  5. 【請求項5】 エチレンジアミンとマレイン酸及び/又
    はフマル酸とを微生物及び/又はその処理物の存在下で
    反応させて得られる反応混合物を使用する、請求項1か
    ら3の何れかに記載のエチレンジアミン−N,N’−ジ
    コハク酸又はその塩の製造方法。
  6. 【請求項6】 エチレンジアミン−N,N’−ジコハク
    酸又はその塩が(S,S)−エチレンジアミン−N,
    N’−ジコハク酸又はその塩である、請求項1から5の
    何れかに記載のエチレンジアミン−N,N’−ジコハク
    酸又はその塩の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1から6の何れかに記載の方法に
    おいて分別されたエチレンジアミン、マレイン酸及び/
    又はフマル酸及び/又はそれらの塩を反応に再利用する
    ことを特徴とする、エチレンジアミン−N,N’−ジコ
    ハク酸又はその塩の製造方法。
  8. 【請求項8】 第1及び/又は第2のクロマトグラフィ
    ー処理を単塔カラムを用いてバッチ方式で行う、請求項
    1から7のいずれかに記載のエチレンジアミン−N,
    N’−ジコハク酸又はその塩の製造方法。
  9. 【請求項9】 第1及び/又は第2のクロマトグラフィ
    ー処理を擬似移動床装置を用いて連続的に行う、請求項
    1から7のいずれかに記載のエチレンジアミン−N,
    N’−ジコハク酸又はその塩の製造方法。
  10. 【請求項10】 第1のクロマトグラフィーが陽イオン
    交換クロマトグラフィーである、請求項1から9の何れ
    かに記載のエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又
    はその塩の製造方法。
  11. 【請求項11】 第1のクロマトグラフィーを、陽イオ
    ン交換基を有するイオン交換体が充填されたカラムを用
    いて行う、請求項1から10の何れかに記載のエチレン
    ジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその塩の製造方
    法。
  12. 【請求項12】 第2のクロマトグラフィーが両性イオ
    ン交換クロマトグラフィーである、請求項1から11の
    何れかに記載のエチレンジアミン−N,N’−ジコハク
    酸又はその塩の製造方法。
  13. 【請求項13】 第2のクロマトグラフィーを、陰イオ
    ン交換基及び/又は陽イオン交換基を有するイオン交換
    体が充填されたカラムを用いて行う、請求項1から12
    の何れかに記載のエチレンジアミン−N,N’−ジコハ
    ク酸又はその塩の製造方法。
  14. 【請求項14】 イオン交換体が陰イオン交換体と陽イ
    オン交換体とを有し、該両イオン交換体が内部塩を形成
    してなる両性イオン交換体である、請求項13に記載の
    エチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその塩の
    製造方法。
  15. 【請求項15】 両性イオン交換体がスネークケイジ型
    樹脂である、請求項14に記載のエチレンジアミン−
    N,N’−ジコハク酸又はその塩の製造方法。
  16. 【請求項16】 両性イオン交換体が架橋共重合体樹脂
    母体に下記一般式(1)で示されるイオン交換基を結合
    した樹脂である、請求項14に記載のエチレンジアミン
    −N,N’−ジコハク酸又はその塩の製造方法。 【化1】 (式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、炭素数1〜3の
    アルキル基を表し、m及びnはそれぞれ独立に1〜4の
    整数を表す)
  17. 【請求項17】 架橋共重合体樹脂母体がスチレンとジ
    ビニルベンゼンの架橋重合体からなる、請求項16に記
    載のエチレンジアミン−N,N’−ジコハク酸又はその
    塩の製造方法。
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JP2011529508A (ja) * 2008-07-30 2011-12-08 メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング イオン交換クロマトグラフィー用グラフトコポリマー
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