JP2001295078A - 水廻り機器、機器用部品およびその製造方法 - Google Patents

水廻り機器、機器用部品およびその製造方法

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JP2001295078A
JP2001295078A JP2000110402A JP2000110402A JP2001295078A JP 2001295078 A JP2001295078 A JP 2001295078A JP 2000110402 A JP2000110402 A JP 2000110402A JP 2000110402 A JP2000110402 A JP 2000110402A JP 2001295078 A JP2001295078 A JP 2001295078A
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silicon compound
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Kenta Kuwayama
健太 桑山
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Toto Ltd
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Toto Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 無機物でその表面が構成される水廻り機器
の,外部や内壁を水および水に含まれる各種成分による
損傷,変質,劣化さらには成分の溶出から防ぐ。 【解決手段】 有機けい素化合物を被覆しようとする無
機物表面に一次結合させて被覆層を形成する。この被覆
層は有機けい素化合物を含有した溶液が触れるところで
あれば被覆層を形成し得るのでつきまわりの問題もな
く,一次結合するので極めて強固な密着性を示すととも
に,数十原子分の厚さしかないのでないので薄くつける
ことができる。また下地は無機素材であればすべてに適
用しえる。さらに有機けい素化合物を含有した溶液を被
覆しようとする面に噴霧するあるいは浴びせかける,あ
るいは被覆しようとする水路壁およびまたは滞留容器壁
をもつ機器に有機けい素化合物を含有した溶液を通過か
つまたは滞留させることで被覆しようとするものを収め
る大きさを容器なしで被覆を行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,水廻り機器に関す
る。
【0002】
【従来の技術】無機物でその表面が構成される水廻り機
器においては,水および各種成分を含む水により,その
表面が損傷,変質,劣化されたり無機物の成分が溶出す
ることを防ぐ必要がある場合がある。
【0003】第一の典型的な例としては,水栓や便器付
属金具のように,その露出表面に機器の使用にともなう
水や,清掃のための洗浄剤や酸を含む水がかかったり,
大気中の水分が結露して水滴となるような場合,これら
機器外部の金属または合金の表面が水および各種成分を
含む水により損傷,変質,劣化するのを防ぐ必要があ
る。
【0004】第二の典型的な例としては,腐食性のある
中水道水や井水,さらには温泉水などを流すあるいは滞
留せしめる配管,ポンプ,留滞容器,熱交換器,弁,水
栓,温水洗浄便座などにおいては,これら機器の水と接
する水路壁,容器壁あるいは機器に内蔵される部品の金
属や合金のような無機物の表面を,水および各種成分を
含む水により表面の損傷,変質,劣化から防ぐ必要があ
るとともに,無機物表面から溶出する成分が水および各
種成分を含む水に溶出することを防ぐ必要がある。
【0005】これらの場合に対処すべく用いられてきた
従来の技術はこれら無機物表面を水中で化学的に安定な
膜で覆う方法であった。代表的なものは各種めっき,ホ
ーロー被覆,あるいは樹脂被覆する方法である。化学蒸
着法(以下CVD),物理蒸着法(以下PVD)といった処理
もある。さらには鉄系合金における不働態化処理などを
あげることができる.
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,これら
機器の無機物表面を,水および水に含まれる各種成分に
よる損傷,変質,劣化さらには成分の溶出から防ぐに
は,以上述べた従来技術では対処しえない課題がある。
課題としては,被覆層の厚さ,つきまわり,外観および
被覆層の安定性である。既存技術のこれらに対する評価
は表1のようにまとめられる。
【0007】
【表1】 めっきについては,被覆層の厚さは低めにできるが,つ
きまわりに問題があり,円筒形状や壷形状の内面にはめ
っき安定してつけることそのものが困難である。外観は
金属光沢を保てる.被膜から完全に欠陥を取り除くこと
はできず,微細な孔のような欠陥が存在する。水はこの
微細孔から被膜と基材の界面に浸透する。こうして浸透
した水は被膜と基材の界面に広がり,基材を被膜の剥離
を促進するのみならず,基材を損傷,変質,劣化せし
め,さらには金属または合金の成分の溶出を引き起こ
す。とくに基材が黄銅系の合金の場合には,被膜の微細
孔から浸透した水は,基材表面の微細な欠陥に入り込
み,欠陥先端部をより深く穿ち,応力腐食割れを誘起す
る原因になる。不働態化処理に関しては,何よりも対処
しうる基材が鉄系に限られるという制約条件が大きい.
さらに腐食性が高い水中では腐食や錆の発生を抑制でき
ない場合がある。また,被覆の基材が金属表面に金属酸
化物の層や砂が混入しているような鋳物
【0008】肌のような場合には,めっきや不働態化処
理で形成される被膜は不完全になる。
【0009】樹脂被覆やホーロー被覆する方法では,表
面に10ミクロンメートルを越す厚さの膜が形成されるこ
とになる。このため,外観が樹脂そのものになるととも
に,精緻な寸法が実現できない。ゆえに,外観として金
属光沢を要求する場合や,ミクロンメートルレベルの寸
法精度を要求する場合には採用できない。そのうえ,め
っき同様に,円筒形状や壷形状の内面については膜をつ
けることそのものが困難である。さらに樹脂被覆に関し
ては,樹脂を構成する高分子は,van der Waals力
(ファン デア ワールス力)または水素結合力のよう
な弱い結合力で基材である無機物表面と結合しており,
基材と被膜の界面に着目すると,基材と一次結合するこ
とはない。ゆえにその密着力は弱い。
【0010】CVD,PVDといった処理では,作製される被
覆層の特性は優れているが,つきまわりがひじょうに悪
い。
【0011】水を通すおよびまたは滞留せしめる水廻り
機器の水路壁およびまたは滞留容器壁は多くの場合,筒
状あるいは袋状になっており,これら筒部や袋部の内部
壁への被覆は,各種めっき,ホーロー被覆,CVD,PVDと
いった処理では,困難である。さらにこれら筒部や袋部
の内部壁に被覆を施すことは,各種めっき,ホーロー被
覆,CVD,PVDといった処理では,きわめて困難である。
【0012】またミクロンメートルレベルの寸法精度を
要求する嵌合部やネジ部,さらに隙間管理を要するよう
な,水廻り水廻り機器の内部表面および部品について
は,従来技術ではめっきや代替材料といった対処方法し
かなく,水の腐食性が高い場合,隙間腐食や錆発生によ
る部品相互の噛り付きを防ぐことが難しい。
【0013】表1に示した問題のほかに,被覆層をつけ
る工程上の問題もある。各種めっき,ホーロー被覆,製
造設備は,被膜を付けようとする機器や部品の大きさに
したがって大きくせざるをえない。例えばめっきでは,
少なくともめっきを施そうとする機器や部品を十分に浸
漬しえる槽にめっき液を満たす必要がある。ホーロー被
覆をする場合には機器や部品を十分に収納しえる炉が必
要であり,CVD,PVDの場合でも機器や部品を十分に収納
しえる真空容器が必要となる。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に5つの発明を行った。
【0015】第一の発明では,無機物でその一部あるい
は全面が構成される水廻り機器およびまたは機器用部品
において,機器およびまたは機器用部品の無機物表面が
有機けい素化合物を一次結合せしめた膜で被覆されたこ
とを特徴とする。
【0016】この有機けい素化合物膜は金属面または合
金面の構成金属元素M上に,(基材:M−O−Si:
膜)なる一次結合を構成する。こうして被覆された金属
または合金表面は水および水中に存在する各種イオンに
対し樹脂同様に不活性となる。このため,めっきを施し
たり表面を水中で化学的に安定となるように不働態化処
理しても腐食や錆の発生を抑制できないような,中水道
水や井水,温泉水さらには清掃のための洗浄剤を含む水
や大気中の水分が結露して水滴となるような場合などの
環境下でも耐食性を持つ。
【0017】また,表面をめっきしたり不働態化する場
合には,適用しえる無機物の基材が限られていたが,第
一の発明では,基材が無機物であれば,その種別は問わ
ない。
【0018】第二の発明では,第一の発明の水廻り機器
で,とくにその露出部の一部あるいは全面が無機物で構
成される水廻り機器において,少なくとも水と接する無
機物表面が有機けい素化合物を一次結合せしめた膜で被
覆されたことを特徴とする。
【0019】第二の発明に記載した有機けい素化合物膜
も金属面または合金面の構成金属元素M上に,(基材:
M−O−Si:膜)なる一次結合を構成する。こうして
被覆された金属または合金表面は水および各種成分を溶
解した水に対し樹脂同様に不活性となる。このため,め
っきを施したり表面を水中で化学的に安定となるように
不働態化処理しても腐食や錆の発生を抑制できないよう
な,中水道水や井水,温泉水さらには洗浄剤を含む水や
大気中の水分が結露して水滴となるような場合などの環
境下でも耐食性を持つ。
【0020】有機けい素化合物膜は膜の厚さが1ミクロ
ンメートル以下であり,可視光線の波長範囲では透明に
近い。ゆえに,外観として金属光沢を要求する場合にも
採用できる。むろん,金属表面であるめっき面上にも重
ねて被覆することができる。ゆえに,従来,被覆するこ
とで外観が変わってしまうという弊害があった樹脂被覆
に代えて,本発明を用いることができる。
【0021】第三の発明は,水廻り機器で,とくに水を
通すおよびまたは滞留せしめる水廻り機器において,無
機物で水路壁およびまたは滞留容器壁の一部あるいは全
面が構成される水廻り機器において,少なくとも水と接
する無機物表面が有機けい素化合物を一次結合せしめた
膜で被覆されたことを特徴とする。
【0022】第三の発明の有機けい素化合物膜も第一の
発明と同様に無機物の構成金属元素M上に(基材:M−
O−Si:膜)なる一次結合を構成するが,表面が金属
酸化物(MOx)の場合や,珪砂(SiO2)の場合でも,(M
Ox−Si:膜,SiO2−Si:膜)なる一次結合で膜を形
成し,被覆された金属,合金,金属酸化物さらに珪砂表
面は水および水中に存在する各種イオンに対し樹脂同様
に不活性となる。
【0023】従来の各種被覆法では,基材が均一でない
と被膜が良好に密着しないばかりか,被覆そのものが不
可能な場合もあったが,第三の発明では,基材に金属酸
化物や珪砂が混入していても良好な被覆が可能である。
【0024】とくに水廻り機器のうち水道関係のものは
は往々にして鋳造法で作製される。鋳造品の場合,水廻
り機器の水路壁や滞留部壁は通常,鋳肌そのままであ
り,この鋳肌は金属だけでなく,金属酸化物や珪砂がか
なりの面積を占めて構成される。よって第三の発明によ
り,従来技術で対処しえなかった水路壁や滞留部壁表面
を被覆した鋳物製の水廻り機器を実現する手段を提供し
える。
【0025】第三の発明でも,めっきを施したり表面を
水中で化学的に安定となるように不働態化処理した水廻
り機器では腐食や錆の発生を抑制できないような,中水
道水や井水,温泉水などにたいし,耐食性を持つ。
【0026】また,第三の発明では,水路壁や滞留部壁
からの金属成分の溶出を抑制できる。とくに,本発明を
上水道配管,弁,水栓に適用した場合,通過水,滞留水
への有害な金属成分,とくに黄銅に含まれることが多い
鉛,ビスマス,アンチモン,タリウム,カドミウムの溶
出を抑制できる。
【0027】第三の発明では,有機けい素化合物膜の厚
さは1ミクロンメートル以下であり,ミクロンメートル
レベルの寸法精度を要求する場合にも採用できる。この
ため嵌合部やネジ部,さらに隙間管理を要するような,
水廻り機器の内部表面に適用することができる。金属嵌
合部やネジ部,さらに隙間管理を要するような,水廻り
機器の水路壁や滞留部壁表面およびまたは水と接する部
品表面については従来技術では対処方法がなかったた
め,水の腐食性が高い場合,隙間腐食や錆発生による部
品相互の噛り付きを防ぐことが難しかったが,第三の発
明はこれを解決する。
【0028】第四の発明は請求項1から3記載の水廻り
機器で,とくに水との接触角が90度以上である被膜で
被覆されたこと特徴とする。
【0029】従来の被覆法,なかでもめっき法では,被
膜から完全に欠陥を取り除くことはできず,微細な孔の
ような欠陥が存在する.水はこの微細孔から被膜と基材
の界面に浸透し,被膜と基材の界面に広がり,基材を被
膜の剥離を促進するのみならず,基材を損傷,変質,劣
化せしめ,さらには金属または合金の成分の溶出を引き
起こす。とくに基材が黄銅系の合金の場合には,被膜の
微細孔から浸透した水は,基材表面の微細な欠陥に入り
込み,欠陥先端部をより深く穿ち,応力腐食割れを誘起
する原因になる。
【0030】第四の発明によれば,水の微細な孔からの
浸透を防ぐことができる。水の微細な孔や隙間への侵入
は,水と基材との接触角で制御される。微細な孔や隙間
への溶液の浸透は,界面工学でいう浸漬ぬれであり,溶
液と固体の接触角が90度未満の場合に発生する。しか
るに水との接触角を90度以上に保てば,微細な孔や隙
間への溶液の浸透は生じない。ただし,水に各種成分が
溶解した場合,接触角は小さくなるので,水に各種成分
が溶解した場合でも接触角が90度以上に保てるよう,
各種成分が溶け込んでいない水との接触角が110度以
上であることがより好ましい。
【0031】第五の発明は,第一から第四の発明の水廻
り機器および機器用部品の製造方法において,被覆しよ
うとする面に有機けい素化合物を含有する溶液を噴きか
けるかつまたは浴びせかける工程を含むことを特徴とす
る。
【0032】従来からの各種めっき,ホーロー被覆,CV
D(化学蒸着法),PVD(物理蒸着法)といった処理で
は,製造設備は,被膜をつけようとする機器や部品の大
きさにしたがって大きくせざるをえない。例えばめっき
では,少なくともめっきを施そうとする機器や部品を十
分に浸漬しえる槽にめっき液を満たす必要がある。ホー
ロー被覆をする場合には機器や部品を十分に収納しえる
炉が必要であり,CVD(化学蒸着法),PVD(物理蒸着
法)の場合でも機器や部品を十分に収納しえる真空容器
が必要となる。
【0033】しかしながら,第五の発明によれば,被覆
しようとする面に有機けい素化合物を含有する溶液を噴
きかけるかつまたは浴びせかける作業を行うのに必要な
作業を行える広さがあれば,めっき槽や炉あるいは真空
容器に相当する製造設備は不要となる。
【0034】第六の発明は請求項1,3,4記載の水廻
り機器の製造方法において,被覆しようとする水路壁お
よびまたは滞留容器壁をもつ機器に有機けい素化合物を
含有する溶液を通過かつまたは滞留させる工程を含むこ
とを特徴とする。
【0035】水を通すおよびまたは滞留せしめる水廻り
機器の水路壁およびまたは滞留容器壁は多くの場合,筒
状あるいは袋状になっており,これら筒部や袋部の内部
壁への被覆は,従来からの各種めっき,ホーロー被覆,
CVD,PVDといった処理では,困難である。さらにこれら
筒部や袋部の内部壁のみに被覆を施すことは,きわめて
困難である。
【0036】よく知られている浸漬法(ディップコート
法)では有機けい素化合物を含有する溶液を蓄えた容器
に,被覆しようとする面をもつ部材を浸すことで被膜を
形成する。しかし,この方法では,部材の全面に被膜が
形成されてしまう。これを避けるには,マスキング処理
が必要になる。
【0037】また,浸漬法ではめっき同様に,被膜をつ
けようとする機器や部品を十分に浸漬しえる槽と浸漬に
十分な量の溶液が必要であった。
【0038】しかしながら,第六の発明によれば,特別
なマスキングをすることなく,水を通すおよびまたは滞
留せしめる水廻り機器の水路壁およびまたは滞留容器壁
面に,それが筒状や袋状であっても被膜をつけることが
できる。
【0039】また,第六の発明によれば,被膜をつけよ
うとする機器や部品を十分に浸漬しえる槽は必要ない。
【0040】
【発明の実施の形態】以上説明した本発明の構成,作用
を一層明らかにするため,詳細な説明を行う。
【0041】本発明の,第一,第二および第三の発明
は,無機物表面を有機けい素化合物を一次結合せしめた
膜で被覆された水廻り機器およびまたは機器用部品であ
る。この膜においては有機けい素化合物を構成するけい
素原子Siが酸素原子Oを介して,無機物表面を形成する
金属原子M(合金の場合,Mは2種類以上の金属原子を指
す)に一次結合している。有機けい素化合物が全面に一
次結合した無機物表面には,化学的に不安定な未結合の
原子や酸化物などがなくなると同時に,全面が有機けい
素化合物の膜で覆われる。この状態を図1に示す。
【0042】まず,無機物表面に有機けい素化合物膜を
作製する好適な方法を三例説明する。被覆する有機けい
素被膜の第一の例として有機けい素化合物としてハイド
ロジェンシリコーンを用いた例を示す。ハイドロジェン
シリコーンはその構造が図2に示すとおり,通常のジメ
チルシリコーンではSi原子の側鎖にはメチル基(CH3
―)が2つ配位しているが,この一部がヒドロキシ基
(H−)に代わったものである。このヒドロキシ基の部
分が脱水縮合反応により基材の金属原子と一次結合す
る。
【0043】被覆方法としては,まず,ハイドロジェン
シリコーンの含有される溶液を作製する.溶媒にアセト
ンあるいはトルエンを用意し,この溶媒にハイドロジェ
ンシリコーンの体積分率が2%ないし8%になるように
ハイドロジェンシリコーンを溶解する。濃度が高すぎる
と均一に付着しない場合があり,逆に濃度が低すぎる
と,十分な付着が生じない.溶液温度は5℃以上30℃
以下に保つ。温度が低すぎると反応が進みにくく,高す
ぎると溶媒の蒸発により溶液の濃縮が起きる。
【0044】この溶媒に,予めその被覆を施そうとする
部分をアセトン,トルエン,四塩化炭素,トリクロロエ
チレン,アルコールなどで洗浄した部材を浸漬し,1秒
ないし60秒浸漬の後,これを引き上げ,相対湿度60
%以下,より好ましくは40%以下の大気中で乾燥させ
る.湿度が高すぎると脱水縮合過程の進行に齟齬を来
す。
【0045】さらに,この後100℃から200℃,よ
り望ましくは120℃から170℃で10分以上,2時
間以内,加熱する.加熱温度が低すぎると脱水縮合が不
完全になり,一方,高すぎると,ハイドロジェンシリコ
ーン分子の分解が生じる。加熱時間についても同様であ
る。大気乾燥,加熱の過程で脱水縮合反応が進み,こう
して作製した水廻り機器および機器用部品表面は,基材
に一次結合したハイドロジェンシリコーン分子で被覆さ
れる。
【0046】被覆する有機けい素被膜の第二の例として
フルオロアルキルシランを用いた例を示す。フルオロア
ルキルシランの構造を図3に示す。フルオロアルキルシ
ランはSi原子を仲介として,その片側にCF2―あるいは
CF3―が配置し,反対側に反応性の高いメトキシ基,エ
トキシ基,クロル基などの活性基に配置したものであ
り,これら活性基は加水分解性があり,水や大気中の水
分,さらには被覆しようとする基材表面の吸着水と反応
しシラノール基(Si−OH)を生成する。さらに生成した
シラノール基は,無機物の表面(M−OH)との間で脱水
縮合反応により(Si−O−M)なる一次結合をする。
【0047】被覆方法は,第一の例のハイドロジェンシ
リコーンに代えて,フルオロアルキルシランを用いれば
良い。こうして作製した水廻り機器および機器用部品表
面は,基材に一次結合したフルオロアルキルシラン分子
で被覆される。
【0048】被覆する有機けい素被膜の第三の例として
メチル系シランを用いた例を示す。メチル系シランはそ
の構造が図4に示すとおり,通常のジメチルシリコーン
の末端を反応性の高いメトキシ基,エトキシ基,クロル
基などの活性基に置換したものであり,フルオロアルキ
ルシラン同様にこれら活性基はシラノール基を生成し,
無機物の表面(M−OH)との間で脱水縮合反応により(S
i−O−M)なる一次結合をする。
【0049】被覆方法としては,まず,メチル系シラン
の含有される溶液を作製する。溶媒に脱イオン水あるい
は蒸留水を用意し,この溶媒にメチル系シランの体積分
率が1%ないし5%になるようにハイドロジェンシリコ
ーンを溶解する。濃度が高すぎると均一に付着しない場
合があり,逆に濃度が低すぎると,十分な付着が生じな
い。さらに活性基がクロル基の場合は酢酸を加え,溶液
のpHを2ないし6の範囲に,望ましくは3ないし5の
範囲に調整する。溶液温度は5℃以上45℃以下に保
つ。温度が低すぎると反応が進みにくく,高すぎると溶
媒の蒸発により溶液の濃縮が起きる。
【0050】この溶媒に,予めその被覆を施そうとする
部分をアセトン,トルエン,四塩化炭素,トリクロロエ
チレン,アルコールなどで洗浄した部材を浸漬し,1分
ないし2時間浸漬の後,これを引き上げ,相対湿度60
%以下,より好ましくは40%以下の大気中で乾燥させ
る.湿度が高すぎると脱水縮合過程の進行に齟齬を来
す。
【0051】さらに,この後100℃から200℃,よ
り望ましくは120℃から170℃で10分以上,2時
間以内,加熱する.加熱温度が低すぎると脱水縮合が不
完全になり,一方,高すぎると,被膜分子の分解が生じ
る。加熱時間についても同様である大気乾燥,加熱の過
程で脱水縮合反応が進み,こうして作製した器水廻り機
器および機器用部品表面は,基材に一次結合したメチル
系シラン分子で被覆される。
【0052】以上の三つの例を挙げたが,浸漬,大気乾
燥,加熱の過程は,コンベアラインにて一貫して行って
も差し支えない。
【0053】当該発明の第一,第二および第三のもの
は,以上三つ挙げたいずれ例の方法でも実現できる。三
つ挙げたいずれ例の被覆方法でも基材が無機物であれ
ば,その種別を問わず,被覆できる。さらに基材に金属
酸化物や珪砂が混入していても良好な被覆が可能であ
る。
【0054】いずれの有機けい素化合物膜は膜も厚さが
1ミクロンメートル以下であり,可視光線の波長範囲で
は透明に近い。ゆえに,外観として金属光沢を要求する
場合にも採用できる。むろん,金属表面であるめっき面
上にも重ねて被覆することができる。むろんミクロンメ
ートルレベルの寸法精度を要求する場合にも採用でき
る。
【0055】第四の発明は,前述の三つの例の成膜方法
のいずれでも,実現可能であるが,とくに好ましい接触
角が110度以上とするためには,有機けい素被膜の第
二の例としてあげたフルオロアルキルシランを用いる方
法が好適である。
【0056】第五の発明は第一から第四の発明の水廻り
機器および機器用部品の製造方法において,被覆しよう
とする面に有機けい素化合物を含有する溶液を噴きかけ
るかつまたは浴びせかける工程を含むことを特徴として
おり,前述の三つの例の成膜方法において,有機けい素
を含有する溶液に浸漬する工程を,有機けい素を含有す
る溶液を噴きかけるかつまたは浴びせかけるする工程に
代えることで実現しうる。
【0057】第五の発明では,溶液を噴きかけるかつま
たは浴びせかけるために,溶液を貯留する容器1,容器
1から溶液を所定の圧力で汲み出すポンプ2,ポンプ2
を経て加圧された溶液を被覆しようとする面7に導く管
3,管3から溶液を被覆しようとする面7に噴きかける
かつまたは浴びせかけるノズルあるいはシャワー4,さ
らに被覆しようとする面7から流れ落ちる溶液を受け止
める容器5,さらにその容器5から溶液を貯留する容器
1へと還流する管あるいは樋6が当発明の構成要素とな
る.第五の発明の構成を図5に示す。
【0058】第六の発明は第一から第四の発明の水廻り
機器および機器用部品の製造方法において,被覆しよう
とする水路壁およびまたは滞留容器壁をもつ機器に有機
けい素化合物を含有する溶液を通過かつまたは滞留させ
ることを特徴としており,前述の三つの例の成膜方法に
おいて,有機けい素を含有する溶液に浸漬する工程を,
有機けい素化合物を含有する溶液を通過かつまたは滞留
させる工程に代えることで実現しうる。
【0059】第六の発明では,溶液を通過かつまたは滞
留させるために,溶液を貯留する容器1,容器1から溶
液を所定の圧力で汲み出すポンプ2,ポンプ2を経て加
圧された溶液を被覆しようとする水路壁およびまたは滞
留容器壁をもつ機器8に導く管3,被覆しようとする水
路壁およびまたは滞留容器壁をもつ機器8から流れでる
溶液を受け止める容器5,さらにその容器5から溶液を
貯留する容器1へと還流する管あるいは樋6が当発明の
構成要素となる.第六の発明の構成を図6に示す。
【0060】さらに第六の発明では,有機けい素化合物
を脱水縮合せしめるために,100℃から170℃に加
熱した空気を被覆しようとする水路壁およびまたは滞留
容器壁をもつ機器に吹き込む工程を付加する。
【0061】第一の本発明を,便器付属金具に適用した
場合の事例を説明する.有機けい素被膜として形成した
膜は第一の例に示したメチルハイドロジェンシリコーン
のもので,ニッケルクロームめっきを施した大便器付属
金具の給水管に適用した。比較実験のために通常のニッ
ケルクロームめっきを施しただけのものと,同じ集合ト
イレに採用したところ,通常のニッケルクロームめっき
を施しただけのものは,取り付けて約6ヶ月でくろずみ
が生じ,約1年で明瞭な青錆の発生があったが,第一の
本発明を適用したものは,約1年の経過後も青錆は肉眼
では観測しえなかった。
【0062】第三および第四の本発明を,集合トイレで
小便器に供給する洗浄水をコントロールする電磁弁の筐
体に採用した事例を説明する。同電磁弁の筐体は銅鋳物
で作製されているが,これを中水環境で使用した場合に
は,内面に緑青が発生し,これが水中に剥離したもの
が,ダイアフラム機構を用いる電磁弁の小穴に詰まり,
新品取付半年以内に動作不良が生じることが大半であっ
た。しかしながら,有機けい素被膜として形成した膜は
第二の例に示したフルオロアルキルシランを用いた被覆
を筐体内面にほどこしたところ,中水環境で使用した場
合でも1年以上安定して機能しうることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【図1】有機けい素化合物を一次結合せしめた膜で被覆
された機器およびまたは機器用部品の無機物表面の模式
図。
【図2】ハイドロジェンシリコーンの構造図。
【図3】フルオロアルキルシランの構造図。
【図4】メチル系シランの構造図。(メチルトリメトキ
シシラン)
【図5】溶液を噴きかけるかつまたは浴びせかけること
で有機けい素被膜を被覆する工程の構成図。
【図6】溶液を通過かつまたは滞留させることで有機け
い素被膜を被覆する工程の構成図。
【符号の説明】 1:溶液を貯留容器 2:ポンプ 3:溶液を導く管 4:ノズルあるいはシャワー 5:溶液を受け止める容器 6:溶液を貯留する容器へと還流する管あるいは樋 7:被覆しようとする面 8:被覆しようとする水路壁およびまたは滞留容器壁を
もつ機器
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16L 58/04 F16L 58/04 Fターム(参考) 3H024 EA01 EA02 EB09 EC15 EE01 4D075 AA01 AB01 DA13 DA19 EB42 4J038 DL031 DL041 DL071 KA06 NA03 NA07 PB02 PC02 4K044 AA01 AA11 AB10 BA19 BA21 BB01 BC02 CA53 CA62 4K062 AA01 BB30 BC16 EA02 FA04 FA20

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無機物でその表面の一部あるいは全面が
    構成される水廻り機器および機器用部品において,機器
    の無機物で構成される面の一部あるいは全面が有機けい
    素化合物を一次結合せしめた膜で被覆されたことを特徴
    とする水廻り機器および機器用部品。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の水廻り機器で,とくにそ
    の露出部の一部あるいは全面が無機物で構成される水廻
    り機器において,少なくとも水と接する無機物表面の一
    部あるいは全面が有機けい素化合物を一次結合せしめた
    膜で被覆されたことを特徴とする水廻り機器。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の水廻り機器で,とくに水
    を通すおよびまたは滞留せしめる水廻り機器において,
    無機物で水路壁およびまたは滞留容器壁の一部あるいは
    全面が構成される水廻り機器において,少なくとも水と
    接する無機物表面の一部あるいは全面が有機けい素化合
    物を一次結合せしめた膜で被覆されたことを特徴とする
    水廻り機器。
  4. 【請求項4】 請求項1から請求項3の何れかに記載の
    水廻り機器で,水との接触角が90度以上である被膜で
    被覆されたこと特徴とする水廻り機器。
  5. 【請求項5】 請求項1から請求項4の何れかに記載の
    水廻り機器および機器用部品の製造方法において,被覆
    しようとする面に有機けい素化合物を含有する溶液を噴
    きかけるかつまたは浴びせかける工程を含むことを特徴
    とする製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1から請求項4の何れかに記載の
    水廻り機器の製造方法において,被覆しようとする水路
    壁およびまたは滞留容器壁をもつ機器に有機けい素化合
    物を含有する溶液を通過かつまたは滞留させる工程を含
    むことを特徴とする製造方法。
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