JP2001292766A - エキノコックス属条虫由来の抗原に対するモノクローナル抗体 - Google Patents

エキノコックス属条虫由来の抗原に対するモノクローナル抗体

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JP2001292766A JP2000115830A JP2000115830A JP2001292766A JP 2001292766 A JP2001292766 A JP 2001292766A JP 2000115830 A JP2000115830 A JP 2000115830A JP 2000115830 A JP2000115830 A JP 2000115830A JP 2001292766 A JP2001292766 A JP 2001292766A
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Emi Sunaga
絵美 須永
Naruaki Nonaka
成晃 野中
Yuzaburo Oku
祐三郎 奥
Masao Kamiya
正男 神谷
Hiroshi Sakai
博史 酒井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】本発明は、エキノコックス属条虫由来の抗原に
特異的に反応し、他の条虫類由来の抗原とは実質的に反
応しないモノクローナル抗体、およびその用途の提供を
課題とする。 【解決手段】エキノコックス属条虫由来の抗原に特異的
に反応するモノクローナル抗体が提供された。該モノク
ローナル抗体は、胞状条虫由来の抗原に対して交差反応
を示さない。本発明のモノクローナル抗体は、エキノコ
ックス属条虫抗原を特異的に検出できる。またこの抗体
を用いて終宿主の糞便中のエキノコックス属条虫の抗原
を検出することにより、エキノコックス属条虫感染の早
期診断方法が可能となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エキノコックス属
条虫(Echinococcus)に特異的に反応するモノクローナル
抗体とその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】エキノコックス属条虫は、テニア科に属
する条虫で、人獣共通寄生虫症を引き起こす極めて重要
な寄生虫として知られている。現在では、単包条虫、多
包条虫、フォーゲル包条虫、およびヤマネコ包条虫の4
種が独立種として考えられている。これらはすべてヒト
への寄生が報告されており、なかでも単包条虫および多
包条虫の2種は人体寄生例の報告が多く、公衆衛生上重
要視されている。
【0003】多包条虫は、北方圏を中心に分布し、成虫
は終宿主であるイヌ科の動物、特にキツネやイヌの小腸
に寄生し、これらの終宿主と中間宿主である野ネズミの
間で生活環を維持している。終宿主から排泄された虫卵
を含む飲み水、生野菜、埃などの経口摂取により、ヒト
や家畜への感染が成立する。感染後は、体内で孵化した
六鉤幼虫が内臓(主に肝臓)において多包化し、ガン細
胞のように周囲組織へ浸潤していく。これを放置してお
くと手術によって外科的に除去することが困難となり、
しばしば致死的となるため、重要な人獣共通感染症の一
つとなっている。一方単包条虫は、世界各地に分布し、
成虫はイヌ科動物の小腸に寄生している。その生活環
は、主にイヌと中間宿主である有蹄家畜(ヒツジ、ウ
シ、ブタ、ヤギ、ウマ等)の間で維持している。単包条
虫の場合も、ヒトへの感染が問題となっている。
【0004】多包条虫の防除対策確立にあたり、ヒトへ
の感染源を特定することは重要な課題の一つである。実
際、アラスカ州や中国四川省などの多包条虫の流行地に
おいては、イヌが感染源として重要な役割を果たしてい
ることが指摘されている(Rausch R.L. et al.,Annals o
f Tropical Medicine and Parasitology 84,239-250,19
90; Stehr-Green J.K. et al., American Journal of T
ropical Medicine andHygiene, 38,380-385,1988)。わ
が国においても、北海道では1966年から1996年までの調
査で1%のイヌに感染が報告されている。更に1997年に
は飼い犬からも多包条虫が検出されている(奥祐三郎、
臨床獣医,15,26-32,1997)。つまり、ヒトの生活環境に
終宿主であるイヌによって多包条虫が持ちこまれている
と言うことができる。したがって、終宿主であるイヌの
多包条虫感染を特異的に、しかも早期に知ることができ
る診断方法が不可欠である。感染個体を早い時期に特定
し、感染個体が虫卵を排泄し始める前に駆虫や隔離など
の対策を取ることは、防疫上重要な課題である。したが
って、エキノコックス条虫の感染をできるだけ早期に診
断することができれば有用である。
【0005】キツネなど終宿主における多包条虫感染の
診断は、剖検が現在のところ最も確実な方法である。し
かし剖検による診断では、解剖に要する時間や労力は多
大であり、特殊な設備を必要とし、さらに検査者への感
染の危険性があることが指摘されている(Echinococcosi
s /Hydatidosis Surveillanse, Prevention and Contro
l: FAO/UNEP/WHO guidlines.pp.147.Food and Agricult
ure Organization ofthe United Nations,Roma)。ま
た、当然のことながら飼い犬などの生体の診断には用い
ることはできない。
【0006】生体における感染の診断は、一般の腸管内
寄生虫同様に糞便内の片節もしくは虫卵の検出によって
も行われている。しかし片節および虫卵が排泄される時
期は、虫体が感染して宿主腸管内で成熟した後である。
したがって片節もしくは虫卵の検出による診断では、感
染早期に診断を行うことができない。また、虫体が成熟
し片節および虫卵排泄を開始した後もその排泄量は一定
でない等の問題も多い(Nonaka N. et al., Internation
al Journal for Parasitology,26,1271-1278,1996)。さ
らにエキノコックス属条虫が属するテニア科条虫類の虫
卵は形態的に類似(Craig P.S. et al., American Journ
al of Tropical Medicine and Hygiene,35,152-158,198
6)しているため、種の鑑別は困難であることなどから虫
卵や片節の検出によって確実な診断を行うことは容易で
はない。
【0007】この他にも、宿主糞便中の虫卵のDNAをPCR
法により検出する方法が開発された(Deplazes P. and E
ckert J.,Applied Parasitology, 37,245-252,1996; Ma
thisA.et al.,Journal of Helminthology,70,219-222,1
996)。しかし、この方法も虫卵の排泄時期に依存してお
り、早期診断はできない。たとえばイヌの場合、虫卵が
糞便に排泄されるのは、感染成立後26日以降であると報
告されている(Ishige,M. et al.:Egg production and l
ife span of Echinoccus multilocularis indogs. Inte
rnational Workshop on Alveolar Hydatid Disease, An
chorage,USA,1990)。
【0008】血中の多包条虫に対する抗体を指標に感染
を知る方法も報告されている(Gottstein et al., Journ
al of Veterinary Medicine [B],38,161-168,1991)。こ
の方法は、比較的早期の診断が可能で、しかも血清学的
な反応に基づく特異的な手法であるとされている。しか
し、血液を試料としなければならないので、野生動物へ
の適用は現実的でない。また、虫体が排除された後も抗
体は検出されるため、抗体の検出は現在の感染を必ずし
も反映しない。
【0009】早期診断を目的として、多包条虫の抗原を
用いて作製されたポリクローナル抗体を利用した糞便内
抗原検出法が、新しい終宿主診断法として開発された(D
eplazes P.et al.,Parasitology Research,78,303-308,
1992)。しかし、この糞便内抗原検出法は、免疫したウ
サギ等から精製したポリクローナル抗体を使用するもの
がほとんどであり、その品質はウサギの個体差によって
左右されるため、均質な試薬の供給が困難であった。こ
の原理を利用してEchinococcus(Genzyme Virotech Gmb
H)という市販のELISA試薬も販売されたが、広く普及し
なかった。
【0010】そこで本発明者らは、ポリクローナル抗体
に代えてモノクローナル抗体による抗原検出法の構築を
試みた。こうしてモノクローナル抗体EmA9を用いた糞便
内抗原検出法が開発された(Kohno, H. et al., Japanes
e Journal of Parasitology,44, 404-412, 1995)。この
報告で用いられたモノクローナル抗体EmA9は、多包条虫
の虫体抽出抗原を免疫原として得られた抗体である。し
かしEmA9は、エキノコックスに近縁の条虫である胞状条
虫と交差反応するため、エキノコックスと胞状条虫の混
在する地域(本州およびヨーロッパ等)では特異的な診
断が困難であった。現在、本州では青森県のブタからエ
キノコックスの感染例が報告され、エキノコックスの本
州への侵入が懸念されている。前述のように本州では胞
状条虫が常在しており、エキノコックスの侵入の判定に
はエキノコックス特異的診断が必要となっている。ま
た、イヌなどの伴侶動物がエキノコックスに感染してい
た場合、それは周辺地域が虫卵に汚染されていることを
意味し、飼い主はもとより地域住民への感染の機会が増
大する。従って、誤診断による地域住民への危機意識の
煽動を避ける意味からもエキノコックス診断にはより精
度の高い、すなわち、より特異的な方法が望まれる。こ
のように、終宿主におけるエキノコックス条虫の感染を
早期に知ることができる方法の提供が望まれており、こ
のような診断を可能とする、エキノコックス属条虫由来
の抗原の特異的な検出方法の開発が待たれている。その
ためには、エキノコックス条虫由来の抗原を高度に特異
的に認識するモノクローナル抗体が必要である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明はエキノコック
ス(包条虫)属条虫由来の抗原と反応し、他の条虫類由
来の抗原とは実質的に反応しないモノクローナル抗体の
提供を課題とする。本発明はまた、このようなモノクロ
ーナル抗体に基づく、エキノコックス属条虫抗原の検
出、ならびに終宿主におけるエキノコックス属条虫感染
の早期診断が可能な方法の提供を課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の問題点を解決する
ために、本発明者らは、より特異性の高い抗体を生成す
る免疫抗原を探索した。その結果、虫体抗原ではなくエ
キノコックス属条虫の成虫に由来する排泄分泌抗原を免
疫抗原に利用することによって、より特異性に優れるモ
ノクローナル抗体を得られることを見出し、本発明を完
成した。排泄分泌抗原は、エキノコックス属条虫の成虫
によって糞便中に排泄される抗原であることから、糞便
を試料として早期に検出するためのマーカーとして好ま
しい。更に、このようにして得られた本発明のモノクロ
ーナル抗体を用いることにより、エキノコックス属条虫
に由来する抗原を特異的に検出することができることを
確認した。そして、このモノクローナル抗体によって終
宿主の糞便中にエキノコックス属条虫抗原を検出するこ
とにより、早期にその感染を知ることができることを確
認して本発明を完成した。すなわち本発明は、以下のモ
ノクローナル抗体、この抗体を産生するハイブリドー
マ、そしてこの抗体に基づくエキノコックス属条虫抗原
の免疫学的な検出、ならびに感染の診断方法に関する。
【0013】〔1〕エキノコックス属条虫由来の抗原と
反応し、他の属の条虫類由来の抗原とは実質的に反応し
ない、エキノコックス属条虫由来の抗原に対するモノク
ローナル抗体。 〔2〕耐熱性の抗原を認識する、〔1〕記載のモノクロ
ーナル抗体。 〔3〕エキノコックス属条虫の成虫由来の抗原と反応す
る〔1〕記載のモノクローナル抗体。 〔4〕受託番号FERM P-17805として寄託されたハイブリ
ドーマEmi-Hにより産生されるモノクローナル抗体。 〔5〕〔1〕記載のモノクローナル抗体を産生するハイ
ブリドーマ。 〔6〕受託番号FERM P-17805として寄託された〔5〕記
載のハイブリドーマEmi-H。 〔7〕〔1〕記載のモノクローナル抗体を、被検体と反
応させることによる、エキノコックス属条虫由来の抗原
の存在を免疫学的に検出する方法。 〔8〕被検体が、終宿主の糞便である〔7〕記載の方
法。
〔9〕〔1〕記載のモノクローナル抗体を含む、エキノ
コックス属条虫由来の抗原の存在を検出するための試
薬。 〔10〕以下の工程からなる、終宿主動物におけるエキ
ノコックス属条虫の感染を診断する方法。 (i)〔1〕記載のモノクローナル抗体を、終宿主動物
の糞便と反応させることによって、エキノコックス属条
虫由来の抗原の存在を免疫学的に検出する工程、(i
i)前記工程によりエキノコックス属条虫由来の抗原が
検出された場合、該終宿主動物がエキノコックス属条虫
に感染していると診断する工程。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、エキノコックス属条虫
由来の抗原と特異的に反応するモノクローナル抗体に関
する。本発明のモノクローナル抗体は、エキノコックス
属条虫由来の抗原と反応し、胞状条虫のようなエキノコ
ックス属条虫以外の条虫類由来の抗原とは実質的に反応
しない。本発明において、モノクローナル抗体が、エキ
ノコックス属条虫以外の条虫類に由来する抗原と「実質
的に」反応しないとは、次のように定義することができ
る。すなわち、エキノコックス属条虫以外の条虫類に由
来する抗原と反応させたときに、バックグラウンドレベ
ル(条虫類抗原を含まない被検液との反応)に0.200を
加えたELISA OD値以下のとき、実質的に反応しないと言
うことができる。より望ましくは、0.150を加えた値、
更に望ましくは、0.100を加えた値以下のときに、実質
的に反応しないと言うことができる。エキノコックス属
条虫以外の条虫類に由来する抗原に対する反応性がこの
程度であれば、エキノコックス属の感染を特異的に、し
かも高感度に検出することができるカットオフ値の設定
が容易である。なお一般にカットオフ値は、感染の無い
ことが明らかな試料と感染試料とを多数測定し、両者の
測定値を統計学的に比較することにより設定されてい
る。抗体の特異性が劣る場合には、特異性と検出感度と
をいずれも満足するカットオフ値の設定は困難である。
【0015】エキノコックス属条虫としては、次の種が
分類されている。したがって、本発明のモノクローナル
抗体は、これらの種に由来する抗原のいずれかに対して
反応性を示し、他の属の条虫に由来する抗原とは実質的
に反応しない。これらの条虫の中で、特に重要な種は多
包条虫と単包条虫である。これらの包条虫は、広い地域
で感染が確認されており、その検出は防疫上重要な課題
である。 ・多包条虫 Echinococcus multilocularis ・単包条虫 Echinococcus granulosus ・フォーゲル包条虫 Echinococcus vogeli ・ヤマネコ包条虫 Echinococcus oligarthrus
【0016】本発明のモノクローナル抗体は、エキノコ
ックス属条虫由来の抗原の中でも、特に成虫に由来する
抗原との反応性が高いものが望ましい。エキノコックス
属条虫の感染源の特定には、特に終宿主の診断が重要で
あることは既に述べた。終宿主においては、エキノコッ
クス属条虫が成虫として存在することから、この目的の
ためには、成虫の抗原を認識するモノクローナル抗体が
望ましい。
【0017】本発明のモノクローナル抗体は、耐熱性の
抗原を認識するものであることが望ましい。後に述べる
ように本発明のモノクローナル抗体は、特に終宿主の糞
便を試料とする免疫学的な検出方法に有用である。終宿
主の糞便は試料であるとともに、ヒトにとっては危険な
感染源でもある。したがって、試験にあたってはあらか
じめ糞便中の条虫卵を殺滅させておくことができれば、
より安全に試験を行うことができる。最も簡便で確実な
殺滅処理は糞便の過熱であることから、抗体が認識する
抗原は熱に対して安定なものであることが望まれる。一
般にタンパク質抗原は熱変性によって過熱後に抗原性を
失うものが多い。他方、糖鎖抗原は通常加熱に対して安
定である。モノクローナル抗体が糖鎖抗原を認識してい
るかどうかは、過ヨウ素酸処理する前後で抗原の免疫学
的な反応性の変化を比較することによって確認すること
ができる。糖鎖抗原は、過ヨウ素酸処理によって抗原構
造が変化し、しばしば抗原性を失う。
【0018】加えて本発明のモノクローナル抗体は、エ
キノコックス属条虫以外の条虫の中でも、特に胞状条虫
に由来する抗原との反応性を実質的に持たないことが重
要である。胞状条虫は、流行地においてはしばしばエキ
ノコックスとの重感染が観察される。したがって、エキ
ノコックスに特異的な診断を行うためには、特に胞状条
虫との交差反応性が低いモノクローナル抗体が望まれ
る。
【0019】本発明のモノクローナル抗体は、前記反応
特異性を備えるものであれば、どのような動物主に由来
するものであることもできる。したがって、たとえばマ
ウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどの、公知の免疫動物に
由来するものであることができる。あるいは、抗体を構
成する可変領域と定常領域の由来を異にするキメラ抗体
とすることもできる。本発明のモノクローナル抗体のク
ラスは特に限定されない。したがって、IgGのみなら
ず、IgM、IgA、IgE、あるいはIgDであることができる。
【0020】本発明のモノクローナル抗体は、この抗体
を産生するハイブリドーマより得ることができる。抗体
産生ハイブリドーマは、一般に、抗体産生細胞と、ミエ
ローマ細胞との細胞融合によって得ることができる。具
体的には、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイ
ブリドーマは、たとえば以下の方法で作製することがで
きる。
【0021】まず哺乳動物に対し、免疫原となる抗原に
より免疫感作する。使用する哺乳動物としては、例えば
サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒ
ツジ、あるいはヤギ等が挙げられる。一般には、ハイブ
リドーマ作製用の親株が樹立されているマウスやラット
が用いられる。免疫抗原としは、エキノコックス属条虫
由来の抗原を使用する。該抗原としてはエキノコックス
属条虫の排泄分泌抗原(以下、ES抗原と省略する場合も
ある)が望ましい。排泄分泌抗原を得る方法は公知であ
る(Sakashita M., Japanese Journal of Parasitology
44: 413-420, 1995)。具体的には、たとえば実施例に示
すような操作によって得ることができる。該抗原の哺乳
動物への投与は常法に従い、抗体産生が可能な部位に、
公知の担体や希釈剤と共に投与される。投与に際して抗
体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや
不完全フロイントアジュバントを投与することができ
る。免疫感作した動物から抗体産生細胞を取得し、公知
の体細胞ハイブリッド形成手法を使用して該抗体産生細
胞とミエローマ細胞とを融合し、ハイブリドーマを作製
する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細
胞、B-リンパ球等が使用される。一方、ミエローマ細胞
としては、マウスミエローマ細胞NS-1、 P3/X63-AG8.65
3等が公知である。細胞融合は、ポリエチレングリコー
ル存在下で公知の方法に基づいて行われる。
【0022】ハイブリドーマは、限界希釈と培養上清の
抗体の有無、ならびにその反応性を確認し、目的とする
抗体を産生するクローンを選択する。抗体の反応性の確
認には、ELISAを利用するのが有利である。すなわち、
反応性を確認すべき抗原をコートしたプレートに培養上
清を加え、更に抗マウスIgG抗体を反応させることによ
り、その抗原に対する反応性を確認することができる。
このようにして、エキノコックス属条虫に由来する抗原
と反応し、かつそれ以外の属の条虫に由来する抗原との
反応性を実質的に持たないモノクローナル抗体を産生す
るハイブリドーマをクローニングすることができる。
【0023】クローニングされたハイブリドーマから、
通常の細胞培養法または腹水形成法により目的とするモ
ノクローナル抗体を作製することができる。すなわち、
該ハイブリドーマをin vitro、またはin vivoで増殖さ
せ、培養上清または腹水からモノクローナル抗体を精製
すればよい。培養上清または腹水に含まれるモノクロー
ナル抗体は、常法に従って精製することができる。例え
ば、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳
動法、イオン交換体(例えばDEAE)による吸脱着法、超
遠心法、ゲル濾過法、抗原結合固相またはプロテインA
またはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを
採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法のよ
うな手法を示すことができる。
【0024】本発明は、このようにして得ることができ
る本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドー
マに関する。本発明による望ましいハイブリドーマとし
て、マウス−マウスハイブリドーマ Emi-Hを挙げること
ができる。 Emi-Hは、ES抗原で免疫したマウスの脾細胞
と、マウスミエローマ細胞NS-1とのハイブリドーマクロ
ーンである。 Emi-Hが産生するモノクローナル抗体Emi
は、エキノコックス属条虫の成虫に由来する抗原を認識
する一方、胞状条虫などの他の属の条虫由来の抗原と
は、実質的に反応しない。なお本発明のモノクローナル
抗体を産生するハイブリドーマ Emi-Hは、平成12年4
月3日付けで次のように寄託されている。寄託機関の名
称・あて名 名称:通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所 あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便
番号305-0046) 寄託日 平成12年4月3日 受託番号 生命研菌寄第17805号(FERM P-17805)
【0025】本発明は、本発明によるモノクローナル抗
体を用いて、被検体のエキノコックス属条虫由来の抗原
の存在を免疫学的に検出する方法に関する。免疫学的な
検出方法には、公知のあらゆる手法を用いることができ
る。例えば酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、発光免疫
測定法、粒子凝集反応法、イムノクロマトグラフ法等を
挙げることができる。好ましくは、不溶性担体と結合さ
せた抗体と標識化抗体とを、被検体と反応させることに
よって生成するサンドイッチ構造の免疫複合体を検出す
る、サンドイッチ法が挙げられる。また、吸収性の担体
上に固定した抗体と、標識抗体を用いたイムノクロマト
グラフ法も、簡便な検出方法として有用である。イムノ
クロマトグラフ法においては、着色粒子標識などを組み
合わせることによって、試料の滴下のみで試験を実施す
ることができる。あるいは、本発明のモノクローナル抗
体によって剖検組織標本を免疫染色することもできる。
【0026】本発明の検出方法に用いる標識物質は、免
疫学的測定法に使用することができるものであれば特に
限定されない。具体的には、酵素、蛍光物質、発光物
質、放射性物質、金属キレート等を使用することができ
る。好ましい標識酵素としては、例えばペルオキシダー
ゼ、アルカリフォスファターゼ、ルシフェラーゼ、ある
いはβ-D-ガラクトシダーゼ等が挙げられる。また好ま
しい蛍光物質としては、例えばフルオレセインイソチア
ネートやローダミン等が挙げられる。あるいは好ましい
発光物質としてはイソルミノール、ルミノール、芳香族
アクリジニウムエステル、アクリジニウム塩及びその修
飾エステル、およびエクオリン等が挙げられる。そして
好ましい放射性物質としては、125Iや 35S等が挙げられ
る。実際には、標識としては、酵素、蛍光、あるいは発
光などの非放射性標識を用いるのが作業安全上望まし
い。
【0027】前記標識物質を抗体に結合する手法は公知
である。具体的には、直接標識と間接標識が利用でき
る。直接標識としては、架橋剤によって抗体、あるいは
抗体断片と標識とを化学的に共有結合する方法が一般的
である。架橋剤としては4-(N-マレイミドメチル)シク
ロヘキサン酸・N-スクシンイミドエステルや、6-マレイ
ミドヘキサン酸・N-スクシンイミドエステル等の公知の
架橋剤を利用することができる。これらの架橋剤と酵素
および抗体との反応は、用いる架橋剤の性質や組み合わ
せる酵素の構造に応じて既知の方法に従って行うことが
できる。これらの方法はいずれも抗体を直接標識する方
法である。この他に、抗体を間接的に標識することもで
きる。たとえばビオチン化抗体に対して、ストレプトア
ビジンを介してビオチン化酵素を間接的に結合させるこ
とができる。このような間接的な標識方法は、一般にAB
C法(Avidin Biotin Complex)と呼ばれている。
【0028】以下、酵素標識を利用したサンドイッチ法
(サンドイッチELISA法)の概略を記す。まず、抗体
(吸着抗体)を不溶性担体に固定した後、被検体と接触
させる。被検体中に目的の抗原が存在する場合には、抗
原抗体反応(第1反応)が起こる。非反応の被検体を洗
浄除去した後、目的の抗原と特異的に反応する一次抗体
と反応させる(第2反応)。このとき一次抗体は、酵素
で標識しておく。もし、被検体に目的の抗原が存在し、
第1反応が起これば、該抗原を介して一次抗体が不溶性
担体に捕捉される。不溶性担体に捕捉された(または捕
捉されなかった)一次抗体の量は、抗原の量を反映して
いる。一次抗体は標識酵素の活性を測定することによっ
て知ることができる。標識酵素の活性は、その基質を加
えて発色させることにより測定できる。発色反応には必
要により、発色剤を使用することができる。
【0029】前記不溶性担体の素材としては、例えばポ
リスチレン、等の合成樹脂、セルロースやアガロース等
の多糖類、あるいはガラスなどを用いることができる。
不溶性担体は、ビーズ状、粒子状、繊維状、あるいはセ
ルや試験管等の反応容器内壁の種々の形状で用いられて
いる。本発明のモノクローナル抗体を、これらの不溶性
担体に結合させる方法は、公知の化学的方法または物理
的吸着方法により行うことができる。化学的結合法とし
ては例えばグルタルアルデヒドを用いる方法、N-スクシ
ニイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-
1-カルボキシレート及びN-スクシニイミジル-2-マレイ
ミドアセテートなどを用いるマレイミド法、1-エチル-3
-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸な
どを用いるカルボジイミド法が挙げられる。
【0030】前記標識酵素に対する基質、および発色剤
としては、酵素としてペルオキシダーゼを用いる場合に
は、基質溶液としてH2O2を用い、発色剤として2,2'-ア
ジノ-ジ-[3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸]アンモ
ニウム塩(ABTS)、5-アミノサリチル酸、オルトフェニ
レンジアミン、4-アミノアンチピリン、3,3',5,5'-テト
ラメチルベンジジン等を例示することができる。酵素に
アルカリフォスファターゼを用いる場合は、基質として
オルトニトロフェニルフォスフェート、パラニトロフェ
ニルリン酸等を使用することができる。酵素にβ-D-ガ
ラクトシダーゼを用いる場合は基質としてフルオレセイ
ン-ジ-(β-D-ガラクトピラノシド)、4-メチルウンベ
リフェニル-β-D-ガラクトピラノシド等を使用すること
ができる。
【0031】本発明のモノクローナル抗体は、上記のサ
ンドイッチ法において、(1)吸着抗体にだけ該モノク
ローナル抗体を使用する、(2)吸着抗体、および一次
抗体の両方に該モノクローナル抗体を使用する、(3)
一次抗体にだけ該モノクローナル抗体を使用する、の3
通りの方法で使用することができる。なお(1)におけ
る一次抗体、および(3)における吸着抗体は、エキノ
コックス属条虫由来の抗原と反応するものであれば任意
のポリクローナル抗体を用いることができる。あるいは
モノクローナル抗体EmA9であってもよい。これらのいず
れの組み合わせにおいても、本発明のモノクローナル抗
体は、1種類のみを用いることもできるし、本発明によ
る複数種のモノクローナル抗体を混合して用いることも
できる。
【0032】さらに、本発明の検出法では、前記吸着抗
体、および一次抗体に加えて、二次抗体を利用したサン
ドイッチELISA法も使用することができる。二次抗体と
は、一次抗体に対する抗体を意味する。一次抗体1分子
に対して、多数の二次抗体が反応することから、二次抗
体を標識しておくことによって、より高感度な検出が期
待できる。
【0033】本発明のモノクローナル抗体には、完全な
抗体に加えて、該抗体の抗原結合性フラグメントも本発
明に包含される。該フラグメントは、抗原との結合親和
性を有する抗体の一部分の蛋白質であり、例えばFab、F
(ab')2、Fv等が挙げられる。本発明のモノクローナル抗
体、および該抗体の抗原結合性フラグメントは、種々の
目的、例えば結合定数を改善するために、一つ又はそれ
以上のアミノ酸残基が欠失、挿入、および/または他の
アミノ酸残基により置換された、あるいは他のペプチド
又はポリペプチドと融合した抗体であっても、エキノコ
ックス属条虫由来の抗原と特異的に結合するものであれ
ば、本発明の抗体に含まれる。
【0034】本発明に基づいてエキノコックス属条虫抗
原を検出することができる被検体としては、終宿主動物
の糞便、剖検組織標本(中間宿主も含む)、土壌、井戸
水や河川水等の水域試料、食品など、エキノコックス属
条虫の存在が疑われるあらゆる試料に適用することがで
きる。これらの試料は、通常は適当な緩衝液中で均質化
した上で、その上清やろ液について、本発明による免疫
学的な検出方法を実施する。糞便試料については、糞便
の採取、懸濁、およびろ過を1つの容器で簡単に行うこ
とができる市販の糞便採取用の容器を用いると、ろ液の
調製が容易である。糞便試料は、免疫学的な検出方法の
感度に合わせて適宜希釈する。たとえば本発明によるモ
ノクローナル抗体Emiを一次抗体とするELISA法によって
糞便中のエキノコックス属抗原を検出しようとする場
合、糞便は通常等倍〜20倍希釈、より望ましくは3〜
6倍希釈の上清として試料とする。なお本発明における
等倍希釈とは、1gの糞便を1mlの分散媒に希釈するこ
とを意味する。採取された糞便試料を保存する必要があ
る場合には、エキノコックス属条虫の抗原が変性しない
ように、凍結保存することが望ましい。あるいは、アジ
化ナトリウムやホルマリン等の防腐剤を添加することも
有効である。具体的には、熱耐性抗原の場合、ホルマリ
ンや加熱処理により室温保存が可能である。また、非親
水性の抗原に対しては、界面活性剤を添加することが望
ましい。
【0035】また水域試料においては、そのまま、試料
として利用することもできる。あるいは剖検組織標本の
ような固定可能な試料については、免疫組織化学的な試
験を行うこともできる。エキノコックス属条虫は、人獣
共通寄生虫であり、終宿主糞便等の試料中に含まれる虫
卵によって人に感染することが知られている。このた
め、本発明により、エキノコックス属条虫由来の抗原を
検出を行う場合、予め試料中の虫卵を殺滅させる処理を
行うことが好ましい。殺滅処理としては、熱処理や超低
温処理(-80℃で4日間以上)等が挙げられる。特に加熱
処理は、簡便で確実な方法である。このため、本発明の
モノクローナル抗体は、熱耐性を持つ抗原のエピトープ
を認識するものであることが望ましい。熱耐性の抗原と
しては、糖を挙げることできる。また、本発明のモノク
ローナル抗体は、熱耐性タンパク質抗原を認識するもの
であってもよい。
【0036】これらの被検試料の中でも、特に終宿主の
糞便を用いるとき、終宿主におけるエキノコックス属条
虫の感染を早期に診断することが可能となる。すなわち
本発明は、以下の工程からなる、終宿主動物におけるエ
キノコックス属条虫の感染を診断する方法に関する。 (i)本発明によるモノクローナル抗体を、終宿主動物
の糞便と反応させることによって、エキノコックス属条
虫由来の抗原の存在を免疫学的に検出する工程、(i
i)前記工程によりエキノコックス属条虫由来の抗原が
検出された場合、該終宿主動物がエキノコックス属条虫
に感染していると診断する工程。
【0037】エキノコックス属条虫の終宿主とは、イ
ヌ、キツネ、タヌキ、ネコ、あるいはアライグマ等、自
然界で終宿主となる可能性のある食肉目に属する動物で
ある。本発明に基づくエキノコックス属条虫の感染の診
断が可能な糞便試料としては、これらの動物が排泄した
糞便、あるいは腸内容物を用いることができる。本発明
に基づく検出方法により、エキノコックス属条虫由来の
抗原が終宿主の糞便に検出された場合、終宿主動物はエ
キノコックス属条虫に感染しているものと診断される。
本発明の診断方法によれば、感染後1週間以内に診断を
行うことができる。本発明のモノクローナル抗体は、胞
状条虫由来の抗原に対して交差反応を示さないので、エ
キノコックス属条虫と胞状条虫の混在する地域において
も、エキノコックス属条虫の感染を特定することができ
る。
【0038】更に本発明は、前記本発明による検出方法
を実施するための免疫学的検出用試薬に関する。本発明
のモノクローナル抗体を含む、エキノコックス属条虫由
来の抗原の存在を検出するための試薬は、たとえば吸着
抗体が不溶性担体に結合した固定化抗体、および標識化
された一次抗体を主要な成分として構成される。このと
き、吸着抗体、並びに一次抗体の少なくとも一方が本発
明のモノクローナル抗体であればよい。本発明の試薬
は、該試薬を効率よく、かつ簡便に利用するために、こ
れら抗体以外に種々の補助剤を含めてキットとすること
ができる。該補助剤としては、例えば固体状の試薬を溶
解させるための溶解剤、不溶化担体を洗浄するために使
用される洗浄剤を挙げることができる。さらに抗体の標
識物質として酵素を使用した場合、酵素活性を測定する
ための基質、その反応停止剤等を含むことができる。以
下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本
発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【実施例】〔実施例1〕実験材料 (1)実験動物 モノクローナル抗体作製時の免疫用には、BALB/cAnマウ
ス、フィーダー細胞調製用にはSlc:ddYマウスを、三共
ラボサービスより購入し、これを固型試料(CE-2, 日本
クレア)と水を随時摂取できるよう飼育して用いた。CN
系ゴールデンハムスターは固型試料と水を随時摂取でき
るよう飼育して用いた。多包条虫感染に用いたアカギツ
ネの1品種であるギンギツネVulpes vulpes(雄3ヶ月
齢)は、加地ミンク(深川)より購入し、北海道立衛生
研究所内の隔離施設で固型試料(CD-5, オリエンタル酵
母)と水を与えて飼育した。多包条虫および単包条虫に
よる感染実験に用いたビーグル犬(雌3ヶ月齢および2ヶ
月齢)は、ホクドーより購入し、北海道立衛生研究所内
の隔離施設で固型試料と水を与えて飼育した。胞状条虫
感染に用いた雑種犬は札幌市動物管理センターより譲渡
され、固型試料と水を与えて飼育した。フォーゲル包条
虫感染に用いたスナネズミMeriones unguiculatusは、
北海道大学大学院獣医学研究科寄生虫学教室(以下「北
大寄生虫学教室」と表記)で繁殖されているもので、固
型試料と水を随時摂取できるよう飼育した。感染後22日
目以降は、隔離動物実験施設(PIACON: Biohazardous P
arasite-Infected Animal Confinement Facility, ホク
ドー)で飼育した。
【0040】(2)寄生虫 (a)多包条虫Echinococcus multilocularis幼虫、お
よび成虫 マウスへの免疫用の抗原作製には、1986年に北海道根室
で捕獲されたエゾヤチネズミ(Clethrionomys rufocanus
bedfordiae)からの分離株で、北海道立衛生研究所にて
コットンラット(Sigmodon hispidus)とイヌで継代され
ているものを用いた。その他の多包条虫各種抗原作製に
は、1992年に北海道当別町で捕獲されたエゾヤチネズミ
から分離された株で、スナネズミを用いて二次包虫症
(シストホモジネートの腹腔内投与)にて継代したもの
を用いた。多包条虫成虫排泄分泌(ES)抗原の作製に
は、原頭節投与1週間前から1日置きにブチル酢酸プレド
ニゾロン(PTBA, Merck)0.5 mgを皮下接種したCN系ゴ
ールデンハムスター10匹に原頭節50,000を経口投与し、
感染後20日目に小腸より回収した成虫を用いた。多包条
虫成虫虫体抗原の作製には、上記成虫ES抗原作製時と同
様に免疫抑制処置を施したCN系ゴールデンハムスター
に、原頭節20,000を経口投与し、感染後23日目に小腸よ
り回収した成虫を用いた。
【0041】(b)単包条虫E. granulosus成虫 ウルグアイ東方共和国においてウシの肺のシストより原
頭節を分離し、イヌへの実験感染を行い、感染後32およ
び33日目に小腸より成虫を回収した。
【0042】(c)フォーゲル包条虫E. vogeli成虫 コロンビア共和国においてパカよりシストを分離し、ス
ナネズミを用いて二次包虫症にて継代したものをワシン
トン大学のR.L.Rausch教授より分与された。これを北大
寄生虫学教室でスナネズミを用いて多包条虫と同様に継
代、採取した原頭節1,400を、上記、多包条虫成虫ES抗
原と同様に免疫抑制処置したスナネズミに経口投与し、
感染後20日目に小腸より成虫を回収した。
【0043】(d)胞状条虫Taenia hydatigena成虫 1991年にウルグアイ共和国タクアレンボ県における自然
感染犬の剖検により検出された成虫を用いた。また、旭
川食肉検査所においてブタより検出された嚢虫を、イヌ
への実験感染に用いた。
【0044】(e)猫条虫Taenia taeniaeformis幼虫、
および成虫 1987年、Dr. J. de Borchgrane (Prince Leopold Inst
itute of Tropical Medicine, Antwerp, Belgium)より
分与された虫卵を、北大寄生虫学教室においてAKRマウ
スとネコを用いて継代した幼虫、および成虫を用いた。
【0045】(f)Taenia crassiceps成虫 1988年にアラスカ州セントローレンス島で捕獲されたヒ
メヤチネズミ(Clethrionomys rutilus)より分離された
もので、北大寄生虫学教室においてスナネズミの腹腔に
移植、継代し、約1年後の嚢虫を用いた。成虫は嚢虫を
イヌに感染させて得た。
【0046】(g)有鉤条虫Taenia solium幼虫 1996年にホンジュラス・オランチョ県における飼育豚の
剖検調査により検出された嚢虫を用いた。
【0047】(h)豆状条虫Taenia pisiformis幼虫 1993年に岐阜県より採取された嚢虫を用いた。
【0048】(i)Taenia mustelae幼虫 1993年に北海道で捕獲されたイイズナ(Mustela nirali
s)から検出した成虫虫卵を、北大寄生虫学教室にてエゾ
ヤチネズミに実験感染し約50日後の嚢虫を用いた。
【0049】(j)縮小条虫Hymenolepis diminuta成虫 北海道で捕獲されたドブネズミ(Rattus norvegicus)の
腸管より得た成虫を用いた。
【0050】(k)犬条虫Dipylidium caninum成虫 ネコより採取された成虫を用いた(採取地不明)。
【0051】(l)マンソン裂頭条虫Spirometra erina
ceieuropaeiMetagonimus sp.、浅田棘口吸虫Echinost
oma hortenseAlaria alata、犬鉤虫Ancylostoma cani
num、狭頭鉤虫Uncinaria stenocephala、犬回虫Toxocar
a canis 札幌市と近郊市町(北広島市・江別市・南幌町)で、19
97年12月から1998年3月に有害鳥獣駆除、および狩猟で
捕獲されたキタキツネから腸管を摘出した。多包条虫卵
を失活させるためこの腸管を、-80℃で10日間以上の凍
結処理後、寄生虫学的検索を行って得た各種成虫虫体を
用いた。
【0052】〔実施例2〕寄生虫抗原の作製 (1)多包条虫成虫排泄・分泌(ES)抗原 抗原の作製は、Herd et al.(1975)およびThompson an
d Eckert(1982)の方法に準じた。約66,400の成虫をペ
ニシリンGカリウム105 IU/l、硫酸ストレプトマイシン1
g /lを含む滅菌ハンクス液(pH 7.4)で洗浄後、培養
液(pH 7.4)でさらに10回洗浄した。これらの成虫を20
0 mlの培養液とともに、5%CO2インキュベーター(Sany
o Forma Scientific)内で37℃で24時間培養した。回収
培養上清は透析膜(SPECTRAPORR M.W.cutoff 12,000-1
4,000 SPECTRUM MEDICAL INDUSTRIES)に入れ、Polyvin
ylpirrolidone(PVP-360, SIGMA)を用いて濃縮した
後、リン酸緩衝生理食塩水(PBS, pH7.4)で外液を交換
しながら4℃、48時間透析した。これを多包条虫成虫ES
抗原とした。培養液の組成は以下の通りである。 ・培養液: Medium 199(GIBCO) +グルコース 4.5 g/l +塩化カリウム0.2 g/l+ペニシリンGカリウム105 IU/l +硫酸ストレプトマイシン1 g/l +炭酸水素ナトリウム(和光純薬)を適量添加
【0053】(2)多包条虫原頭節ES抗原 多包条虫成虫ES抗原と同様の方法で作製した。
【0054】(3)単包条虫成虫ES抗原 多包条虫成虫ES抗原とほぼ同様の方法で行ったが、ペニ
シリンGカリウム105 IU/l, 硫酸ストレプトマイシン1 g
/lの代わりにゲンタマイシン200 mg/mlを含むハンクス
液および培養液を使用した。約10,000の成虫を125 mlの
培養液で6時間培養して上清を得た。回収培養液はアミ
コン限外濾過ユニットでYM-10膜(Amicon)を用いて濃
縮した。その後PBSに対して外液を交換しながら48時間
以上透析したものをES抗原とした。
【0055】(4)胞状条虫成虫ES抗原 多包条虫成虫ES抗原と同様の方法で作製した。
【0056】(5)多包条虫成虫虫体抗原 約20,000の成虫をPBSで数回洗浄し、1%デオキシコール
酸ナトリウム(DOC)、プロテアーゼインヒビターを含
むPBSを加え、グラスホモジナイザーおよびテフロンホ
モジナイザーで破砕した。さらに、超音波破砕機(UR-2
00P型、トミー精工)を用いて40Wで3分間破砕した。こ
れを4℃、10,000g、30分間遠心し上清を回収した。回収
上清は、PBSで外液を交換しながら24時間以上透析してD
OCを取り除いた。プロテアーゼインヒビターの組成は以
下の通りである。 ・プロテアーゼインヒビター: 5 mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA) 5 mM ヨードアセトアミド 1 mM フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF) 1μM ペプスタチン
【0057】(6)多包条虫原頭節虫体抗原 スナネズミを用いて継代されている包虫シストから分離
した原頭節をPBSで数回洗浄し、-40℃で作製時まで保存
した。その後の作製は多包条虫成虫虫体抗原と同様の方
法で抽出した。
【0058】(7)単包条虫成虫虫体抗原 約4,000の成虫をPBSで数回洗浄後、プロテアーゼインヒ
ビターを含むPBSに入れた。テフロンおよびグラスホモ
ジナイザーで破砕した後、40Wで3分間、超音波破砕器
(Ultrasonic Homogenizer 4710 series Model CP50, C
ole-Palmar)を用いて処理した。次いで4℃、24時間、P
BS中で撹拌し抗原を抽出し、4℃、10,000g、30分間遠心
し上清を得た。この上清を単包条虫成虫虫体抗原とし
た。プロテアーゼインヒビターの組成は以下の通りであ
る。 ・プロテアーゼインヒビター: 3 mM L-trans-エポキシスクシニルロイシルアミド-4-グ
アニジノブタン(E64) 2.5 mM EDTA 1 mM PMSF 1 μM ペプスタチン
【0059】(8)フォーゲル包条虫、マンソン裂頭条
虫、Metagonimus sp.、浅田棘口吸虫、Alaria alata
犬鉤虫、狭頭鉤虫および犬回虫の成虫虫体抗原 約20匹の成虫をPBSで数回洗浄したのち、1%DOC、プロ
テアーゼインヒビターを含むPBSを加え、グラスホモジ
ナイザーおよびテフロンホモジナイザーで破砕した。こ
れを4℃、8,560g、30分間遠心し上清を回収した。回収
上清は、PBSで外液を交換しながら24時間以上透析してD
OCを取り除いた。プロテアーゼインヒビターの組成は以
下の通りである。 ・プロテアーゼインヒビター: 5 mM EDTA 5 mM ヨードアセトアミド 1 mM PMSF 1μM ペプスタチン
【0060】(9)胞状条虫片節虫体抗原 ウルグアイ東方共和国の自然感染犬より得られた胞状条
虫成虫から、未熟片節、未熟片節寄りの成熟片節、老熟
片節寄りの成熟片節および老熟片節を2〜3片節ずつ採取
した。それぞれの片節虫体抗原の作製は、多包条虫成虫
虫体抗原と同様の方法で行った。
【0061】(10)有鉤条虫幼虫虫体抗原 虫体をPBSで数回洗浄した後、プロテアーゼインヒビタ
ーを含むPBSを加え、グラスホモジナイザーおよびテフ
ロン(登録商標)ホモジナイザーで破砕した。さらに、
超音波破砕機を用いて40Wで3分間破砕した。これを4
℃、20,000g、30分間遠心し上清を回収した。プロテア
ーゼインヒビターの組成は以下の通りである。 ・プロテアーゼインヒビター 5 mM EDTA 5 mM ヨードアセトアミド 1 mM PMSF 1μM ペプスタチン
【0062】(11)猫条虫、T. crassicepsの成虫お
よび幼虫、縮小条虫成虫虫体抗原 虫体をトリス(関東科学)-塩酸バッファー(0.05M, pH
7.8)で数回洗浄したのち、グラスホモジナイザーおよ
びテフロンホモジナイザーで破砕した。次に1%DOCを含
むトリス-塩酸バッファー中で4℃、24時間、スタラーで
撹拌しながら抽出した。抽出後4℃、10,000g、30分間遠
心し上清を回収した。回収上清は、トリス-塩酸バッフ
ァーで外液を交換しながら24時間以上透析してDOCを取
り除いた。
【0063】(12)豆状条虫、T. mustelaeの幼虫抗
原、犬条虫成虫虫体抗原 虫体をPBSで数回洗浄した後、0.1%トリオキシエチレン
オクチルフェニルエーテル(Triton, 和光純薬)、プロテ
アーゼインヒビターを含むPBSを加え、グラスホモジナ
イザーおよびテフロンホモジナイザーで破砕した。これ
を4℃、5,600g、10分遠心し上清を回収した。プロテア
ーゼインヒビターの組成は以下の通りである。 ・プロテアーゼインヒビター: 5 mM EDTA 5 mM ヨードアセトアミド 1 mM PMSF 1μM ペプスタチン 5 mM o-フェナントロリン(和光純薬)
【0064】(13)タンパク質濃度の測定 作製した抗原液は、バイオ・ラッドプロテインアッセイ
キット(Bio-Rad)によりタンパク質濃度を測定した。
【0065】〔実施例3〕モノクローナル抗体の作製 モノクローナル抗体の作製はほぼ安東らの方法(単クロ
ーン抗体実験操作入門、講談社サイエンティフィック、
東京, 1991)に従った。 (1)マウスの免疫 PBSで0.1mgタンパク質/ml濃度に調整した多包条虫成虫E
S抗原液1mlを等量のフロイント完全アジュバント(ナカ
ライテスク)とよく混合乳化し、BALB/c CrSlcマウス
(雌、8週齢)の腹腔内に300 μl(15 μgタンパク質/
匹)ずつ接種した。3週間後抗原液1mlとフロイント不完
全アジュバント(ナカライテスク)を同様に混合し、マ
ウスの腹腔内に接種した。最終免疫は細胞融合3日前に2
00 μlの抗原液を尾静脈内に接種して行った。
【0066】(2)細胞融合 細胞融合前日フィーダー細胞としてSlc:ddYマウスの胸
腺細胞浮遊液を使用した。まず、頚椎脱臼により屠殺し
たマウスを100%エタノール下で消毒し無菌的に胸腺を
摘出した。MEM培地(日水製薬)(組成を表1に記載)
を入れたシャーレ内で先平ピンセットを用いて胸腺から
細胞を押し出し、ステンレススチールメッシュで濾過し
た。その後760g、5分、2回遠心洗浄し、上清を除去し
た。HAT培地(ICN)(組成を表2に記載)を加えて5x10
6個/ml細胞濃度に調整し、37℃、5%CO2濃度の条件下で
一晩培養した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】最終免疫の3日後にマウスを放血殺し、脾
臓を無菌的に摘出した。脾細胞は胸腺細胞と同様に採取
し、MEM培地で480g、6分、2回遠心洗浄した。ミエロー
マ細胞NS-1株(財団法人実験動物中央研究所伊藤守博士
より分与)も同様にイーグル培地で遠心洗浄した。脾細
胞とミエローマ細胞が5:1となるように混合し、480g、
5分遠心した後、上清を完全に除去した。ペレットを手
のひらに打ちつけて軽くほぐしてから、ピペットの先端
で撹拌しながら37℃に加温したポリエチレングリコール
(PEG)溶液(組成を表3に記載)1 mlを1分間かけて少
しずつ添加し、添加後1分間撹拌し、細胞融合させた。
次に血清無添加のダルベッコ改変イーグル培地(DMEM,
SIGMA)(組成を表4に記載)1mlを1分間かけて少しず
つ添加、撹拌し、さらに同じ操作をもう1度繰り返し
た。最後に同培地8 mlを3分間かけて少しずつ添加し
た。180g、5分遠心後、上清を除去し、脾細胞が106個/m
lとなるように、前日に調整した胸腺細胞浮遊液(5x106
個/ml細胞濃度)を加えた。その細胞浮遊液を96穴マイ
クロプレート(CORNINGおよびFALCON)の各ウエルに100
μlずつ捲き込み、37℃、5%CO2濃度の条件下で培養し
た。培養後1、3、5、9日目にHAT培地を交換し、7日目以
降細胞増殖を観察した。
【0070】
【表3】
【0071】
【表4】
【0072】(3)スクリーニング 融合後12日目、細胞の発育がみられたマイクロプレート
ウエルの上清は、多包条虫成虫ES抗原を用いたELISA
(後述)により抗体活性を測定し、スクリーニングを行
った。陽性ウエルの細胞は、24穴プレートに移してHT培
地(ICN)(組成を表5に記載)で培養を行った。
【0073】
【表5】
【0074】(4)クローニング 細胞発育後再び各ウエルの上清抗体価を測定し、陽性ウ
エルの細胞は、96穴プレートを用い限界希釈法によるク
ローニングを行った。すなわち、ハイブリドーマの細胞
濃度が5個/mlとなるように前日に調整した胸腺細胞(5x
106個/ml細胞濃度)を含むHT培地で希釈し、200 μl/ウ
エルとした。7日目以降細胞増殖を観察し、発育がよく
多包条虫成虫ES 抗原に対する抗体を産生している細胞
は、胸腺細胞(5x106個/ml細胞濃度)、10%ウシ胎仔血
清(FCS,GIBCO)を含むDMEM培地(組成を表6に記載)
を用いて再クローニングを行った。さらに同様にして再
々クローニングを行った。以降必要と思われる場合にク
ローニングを行った。
【0075】
【表6】
【0076】96穴マイクロプレートから24穴プレートに
移して培養を行い、数日後さらに培養フラスコに移して
培養した。一部細胞を-80℃で予備凍結した後、液体窒
素中に凍結保存し、その時の培養上清は-20℃に保存
し、実験に用いた。なお、凍結保存液は90%FCS、10%
ジメチルスルホキシド(DMSO, 和光純薬)とした。
【0077】(5)モノクローナル抗体の特徴付けのた
めの方法 (a)イムノグロブリンのクラス・サブクラスの決定 各ハイブリドーマ培養上清に産生されたイムノグロブリ
ン・サブクラスは、Mouse monoclonal antibody isotyp
ing kit (Amersham)を用いて決定した。
【0078】(b)ELISA モノクローナル抗体のスクリーニング、および様々な寄
生虫抗原を用いてその特異性を検索するために、以下の
手順でELISAを行った。
【0079】炭酸重炭酸バッファー(0.05M, pH 9.6)
でタンパク濃度を1 μg/mlに希釈した多包条虫成虫ES抗
原、あるいは他種寄生虫抗原をELISA用マイクロプレー
トに50 μl/ウエル加え、4℃で一晩吸着させた。抗原液
を捨て、0.05%Tween20を含むPBS(pH 7.4)(PBS-Twee
n)で3回洗浄後、1%ウシ血清アルブミン(BSA)加PBS
で室温1時間ブロッキングを行った。PBS-Tweenで3回洗
浄後、ハイブリドーマ培養上清、およびPBSで希釈した1
μg/mlの精製EmA9を各ウェル50 μlずつ加え、室温1時
間反応させた。なお、陽性コントロールとして各種寄生
虫抗原に交差反応を示す単包条虫成虫抗原に対して作製
されたモノクローナル抗体EgA7、EgA8、陰性コントロー
ルとして10% FCS加DMEM培地を用いた。反応後、PBS-Twe
enで3回洗浄し、0.5%BSA、0.5%カゼイン加PBS-Tween
で1000倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HR
P)標識ウサギ抗マウスIgGAM(H+L)抗体(ZYMED)を、
各ウェル50 μlずつ加え、室温で1時間反応させた。最
後にPBS-Tweenで3回洗浄したのち、基質液(0.04% O-
フェニレンジアミン(OPD, 和光純薬工業)、0.02%過
酸化水素水(H2O2)加クエン酸リン酸バッファー、pH5.
0)を各ウェル100 μlずつ加え、37℃で15分間反応させ
発色させた。反応は、4N硫酸(関東科学)を各ウェル50
μlずつ加え停止させ、OD490nmの吸光度を測定した(M
odel 450 Microplate Reader, BioRad)。
【0080】(c)組織酵素抗体法 猪野ら(1989)の方法に準じて、以下の手順で行った。
組織標本には多包条虫の成虫が多数寄生しているハムス
ターの小腸部分を摘出し、10%ホルマリンで固定したも
のを用いた。常法に従い、脱水、透徹、パラフィン包埋
および薄切を行った。切片はAPSコート付スライドグラ
ス(SUPERFROST, 松浪硝子工業)にのせ、37℃で一晩乾
燥させた。切片をキシレン、アルコール系列で脱パラフ
ィンし、内因性ペルオキシダーゼ活性を不活化するため
に、1%H2O2加メタノール中に20分間浸し、その後PBSで
5分間3回洗浄した。抗体の非特異的吸着を防ぐために、
2%BSA、1%カゼインPBSを室温で20分間反応させた後、
PBSで5分間3回洗浄した。以後の操作は乾燥を防ぐため
に、湿潤箱中で行った。ハイブリドーマ培養上清原液お
よびPBSで希釈した2 μg/mlの精製EmA9(後述)をそれ
ぞれ切片上にのせ、室温で1時間反応させた。再びPBSで
5分間3回洗浄した後、2%BSA、1%カゼインPBSで200倍
に希釈したHRP標識ウサギ抗マウスIgGAM(H+L)抗体
を、室温で1時間反応させた。その後、PBSで5分3回、30
分1回洗浄した。基質溶液を遮光状態で30分間反応させ
た。水道水で反応を停止させ、ヘマトキシリンで染色
し、アルコール、キシロール系列で脱水、透徹した後、
MGK-S(松浪硝子工業)で封入した。基質溶液の組成は
以下の通りである。 ・基質溶液: 0.02% 3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩DAB 0.02% H2O2加0.05 Mトリス塩酸バッファー(pH 7.6)
【0081】(d)組織酵素抗体法における多包条虫成
虫組織切片の過ヨウ素酸処理 上記組織酵素抗体法と同様に脱パラフィンまで行った
後、以下の操作を行った。0.1M 酢酸バッファー(pH4.
7)で切片を1分間洗浄後、0.1M過ヨウ素酸ナトリウムで
室温2時間遮光状態で処理した。コントロールには0.1M
酢酸バッファーを用いた。その後、PBSで5分3回、一晩
洗浄した。この後の操作は酵素抗体法の手順と同様に行
った。
【0082】(e)ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアク
リルアミド電気泳動(SDS-PAGE)、およびウエスタンブ
ロッティング 各モノクローナル抗体と反応する多包条虫成虫ES抗原の
性状を調べるために、SDS-PAGEおよびウエスタンブロッ
ティングを行った。SDS-PAGEは、ほぼLaemmliの方法(N
ature, London, 227: 680-685, 1970)に準じて行い、
分離ゲルは10%濃度のアクリルアミドゲルを用い、2-メ
ルカプトエタノール(2ME)を用いて還元したのち多包
条虫成虫ES抗原(24 μg/ゲル)を泳動した。泳動装置
はAE-6450(ATTO)を使用し、分子量マーカーはBio-Rad
社の低分子量マーカー(14.4、21.5、31、45、66.2、9
7.4kDa)を用いた。
【0083】SDS-PAGE後、ゲルを転写用バッファーBに
浸し、平衡化した。その後、あらかじめ転写用バッファ
ーA、B、Cに浸しておいたブロッティング用電極濾紙(A
TTO)および転写用バッファーBに浸しておいたPVDF膜
(ATTO)とともにゲルをセミドライ型転写装置AE-6677
(ATTO)に設置し、定電流40mAで4℃、30分通電し泳動
タンパク質を転写した。分子量マーカーを転写したPVDF
膜のレーンはアミドブラックで染色した。残りのPVDF膜
はPBS-Tweenで軽く洗浄後、5%スキムミルクを含むPBSで
室温1時間ブロッキングを行った。PBSで5分3回洗浄後、
ポストブロットAE-6195(ATTO)を用いてPBSで5倍に希
釈した各ハイブリドーマ培養上清および5μg/mlの精製E
mA9を室温で1時間反応させた。陰性コントロールにはPB
Sおよび10%FCS加DMEM培地を用いた。反応後、PBS-Twee
nで5分ずつ4回洗浄し、0.5% BSA、0.5%カゼイン加PBS-T
weenで1000倍に希釈したHRP標識ウサギ抗マウスIgGAM抗
体を室温で1時間反応させた。再び、PBS-Tweenで5分ず
つ5回洗浄した後、基質液(0.06% DAB、0.02% H2O2加ト
リス塩酸バッファー、pH 7.6)中で各レーンを8〜10分
間呈色反応させ、水道水で充分洗浄しD.W.ですすぎ、反
応を停止させた。バッファーA, B, Cの組成は以下の通
りである。 ・バッファーA: 300 mM トリス 5% メタノール ・バッファーB: 25 mM トリス 5% メタノール ・バッファーC: 25 mMトリス 40 mM 6-アミノヘキサン酸 5% メタノール
【0084】(f)ウエスタンブロッティングにおける
多包条虫成虫ES抗原の過ヨウ素酸処理 上記ウエスタンブロッティングの方法と同様にして泳動
タンパク質を転写した。転写膜をPBS-Tweenで軽く洗浄
後、0.1M 過ヨウ素酸ナトリウムを室温2時間、遮光状態
で反応させた。コントロールには0.1M 酢酸バッファー
を用いた。反応後、PBS-Tweenで5分3回洗浄し、これ以
降の操作は上記ウエスタンブロッティングの方法と同様
に行った。
【0085】〔実施例4〕抗体の精製・ビオチン化 (1)モノクローナル抗体の精製 作製したハイブリドーマをプリスタン(2.6.10.14 Tetr
amethyl pnentadecan,関東科学)処置したBALB/c CrSlc
に腹腔内投与し、約2週間後、抗体を含む腹水を採取し
た。この腹水をフィルター(Cellulose Nitrate, pore
size 0.45 μm,ADVANTEC)を用いて濾過し、プロテイン
Aカラムキット(AmpureTM PA KIT, Amersham LIFE SCIE
NCE)により抗体を精製した。Polyvinylpirrolidoneを
用い濃縮した後、透析膜(Seamless Cellulose Turbin
g, size 20/32, VISKASE SALES COPR)に抗体液を入
れ、4℃、24時間以上PBS中にて透析した。作製した精製
抗体は、抗原液と同様にタンパク質濃度を測定した。
【0086】(2)モノクローナル抗体のビオチン化 精製したモノクローナル抗体を、透析膜にそれぞれ入
れ、炭酸-重炭酸バッファー(0.04 M, pH 8.6)中、4℃
で一晩透析した。各抗体を同バッファーで1 mg/mlに希
釈し、抗体1 mgにつき40 μlのbiotinylation reagent
(ECLTM, AmershamLIFE SCIENCE)を加え、ゆっくり振
盪させながら1時間室温で反応させた。Sephadex G25 c
olumn(ECLTM, Amersham LIFE SCIENCE )を5 mlの1%B
SA加PBSで平衡化した後、PBSで洗浄した。このカラムに
2.0-2.5 mlの反応液を入れ、5 mlのPBSで溶出させた。
ビオチン化抗体は、抗原液と同様にタンパク質濃度を測
定した。
【0087】〔実施例5〕モノクローナル抗体EmA9、お
よびウサギ抗多包条虫成虫ES抗体の作製 (1)モノクローナル抗体EmA9 モノクローナル抗体EmA9は、Kohnoら(Japanese Journal
of Parasitology 44:404-412, 1995)によって作製され
たものを用いた。凍結保存ハイブリドーマを融解後、sc
idマウスに腹腔内投与して約2週間後に腹水を得た。こ
れを上記の方法と同様に精製、ビオチン化した。
【0088】(2)多包条虫成虫ES抗原に対するウサギ
抗体(ウサギ抗多包条虫成虫ES抗体)の作製 抗体の作製は、Baumann and Gottstein (Tropical Medi
cine and Parasitology 38: 81-85, 1987)の方法に準じ
た。多包条虫成虫ES抗原15 μgを、等量のフロイント完
全アジュバンドと混合し、ウサギの皮下数カ所に注射し
た。2週間後、同抗原15 μgを倍量のフロイント不完全
アジュバンドと混合し皮下に接種した。さらに2週間
後、同抗原30 μgを耳静脈内に投与した。10日後に全採
血し分離した血清をProteinAで精製した。作製した抗体
液は、抗原液と同様にタンパク質濃度を測定した。
【0089】〔実施例6〕糞便内抗原検出用の糞便上清
の作製 (1)多包条虫感染キツネ糞便 ギンギツネ(雄3ヶ月齢)に原頭節150,000を経口投与
し、経時的に24時間以内に排泄された糞便をすべて回収
し、1%ホルマリンを加え、70℃、12時間処理したもの
を北海道立衛生研究所の八木欣平氏より分与された(八
木・伊東, 1994)。この糞便液の糞便重量を算定し、0.
5 gの糞便量を含む1%ホルマリン-糞便混濁液を試験管
に移し取り、この混濁液が15 mlになるように0.3%Twee
n 20加1%ホルマリン(ホルマリン-Tween)で調整し
た。その後260g、10分間遠心し上清を得た(30倍糞便上
清)。
【0090】(2)多包条虫感染犬糞便 ビーグル(雌3ヶ月齢)に原頭節150,000を経口投与し、
経時的に24時間以内に排泄された糞便を週3回回収し、1
%ホルマリンを加え、70℃、12時間処理した(田中, 19
97)。多包条虫実験感染キツネ糞便と同様に30倍糞便上
清を作製した。また、1 gの糞便量を含む1%ホルマリン
-糞便混濁液を試験管に移し取り、この混濁液が4 mlに
なるようにホルマリン-Tweenで調整した。その後260g、
10分間遠心し上清を得た(4倍糞便上清)。
【0091】(3)単包条虫感染犬糞便 ビーグル(雌2ヶ月齢)に原頭節30,000を経口投与し、
経時的に24時間以内に排泄された糞便を全て回収し、1
%ホルマリンを加え、70℃、12時間処理した。多包条虫
実験感染キツネ糞便と同様に30倍糞便上清を作製した。
【0092】(4)フォーゲル包条虫実験感染スナネズ
ミ糞便 PTBA処置したスナネズミに原頭節1,400を経口投与し、
経時的に24時間以内に排泄された糞便を1日置きに回収
した。70℃12時間処理した後、全量を20 mlのホルマリ
ン-Tweenに溶解した。その後10,000g、5分間遠心し上清
を得た。
【0093】(5)胞状条虫感染犬糞便 ブタから検出された嚢虫をイヌ(シーズー犬, 雄7歳)
に経口投与し、糞便を74日目まで経時的に回収し、多包
条虫感染キツネ糞便と同様に30倍糞便上清を作製した。
なお、虫卵排泄は感染後57日目より観察された。
【0094】(6)野生キツネ糞便 先述の札幌市および近郊市町で捕獲されたキタキツネ腸
管から直腸便を得た。糞便1 gをホルマリン-Tween 3 g
の割合になるように溶解した後、70℃12時間熱処理し
た。これを260g、10分遠心し4倍糞便上清を得た。ま
た、糞便内抗原の処理法の影響には、糞便1 gに対して
蒸留水を1.5 gの割合になるように混合後、メッシュサ
イズ1.65mmの金網で濾過し、夾雑物を除去した。この混
濁液を1,600g、10分遠心後、上清を採取して実験に用い
るまで-40℃に保存した(2.5倍糞便上清)。
【0095】〔実施例7〕糞便内抗原検出法 (1)サンドイッチELISA法 糞便内抗原を検出するためにサンドイッチELISAを以下
の手順で行った。炭酸-重炭酸バッファー(0.05 M, pH
9.6)で1 μg/mlに希釈したウサギ抗多包条虫成虫ES抗
体を、96穴ELISA用平底プレート(Greiner)に各ウェル
50 μlずつ加え、4℃で一晩吸着させた。抗体液を捨
て、各ウェル250 μlのPBS-Tweenで3回洗浄後、未吸着
固相表面のブロッキングのために1%BSA加PBSを各ウェ
ル100μlずつ加え、室温で1時間反応させた。ブロッキ
ング液を捨て、PBS-Tween 250μlで3回洗浄した後、糞
便内抗原を室温で2時間反応させた。抗原液を捨て、PBS
-Tween 250 μlで3回洗浄し、0.5%BSA、0.5%カゼイン
加PBS-Tweenで各濃度に希釈した精製モノクローナル抗
体を、各ウェル50 μlずつ加え、室温で1時間反応させ
た。PBS-Tween 250 μlで4回洗浄した後、HRP標識ウサ
ギ抗マウスIgGAM(H+L)抗体を0.5% BSA、0.5% カゼ
イン加PBS-Tweenで1,000倍に希釈し、各ウェル50 μlず
つ加え、室温で1時間反応させた。PBS-Tween 250 μlで
5回洗浄した後、基質液(0.04%OPD、0.02%H2O2加クエ
ン酸リン酸バッファー、pH5.0)を各ウェル100 μlずつ
加え、37℃で30分間反応させ発色させた。4 N硫酸を各
ウェル50 μlずつ加えて発色を停止させた後、ELISAリ
ーダーで吸光度(OD 490 nm)を測定した。
【0096】(2)ABC法を応用したサンドイッチELISA
法I 炭酸-重炭酸バッファー(0.05 M, pH 9.6)で希釈した
ウサギ抗多包条虫成虫ES抗体、または精製モノクローナ
ル抗体を、96穴ELISA用平底プレートに各ウェル50 μl
ずつ加え、4℃で一晩吸着させた。抗体液を捨て、各ウ
ェル250 μlのPBS-Tweenで3回洗浄した後、ブロッキン
グをするために、1%BSA 加PBSを各ウェル100 μl加
え、室温で1時間反応させた。ブロッキング液を捨て、P
BS-Tween 250 μlで3回洗浄した後、各種糞便内抗原を
各ウェル50 μl加え、室温で2時間反応させた。PBS-Twe
en 250 μlで4回洗浄し、ビオチン化精製抗体を0.5%BS
A、0.5%カゼイン加PBS-Tweenで希釈し、各ウェル50 μ
l加え、室温で1時間反応させた。PBS-Tween 250 μlで4
回洗浄した後、0.5%BSA、0.5%カゼイン加PBS-Tweenで
1,000倍希釈したストレプトアビジン・ビオチン化HRP複
合体(Amersham)を各ウェル50 μl加え、室温で1時間
反応させた。反応液を捨て、PBS-Tween 250 μlで5回洗
浄した後、基質液(pH 5.0)を各ウェル100 μlずつ加
え、37℃で30分間発色させた。4 N硫酸を各ウェル50 μ
l加えて発色を停止させた後、ELISAリーダーで吸光度
(OD 490 nm)を測定した。
【0097】(3)ABC法を応用したサンドイッチELISA
法II 基本的にはABC法を応用したサンドイッチELISA法Iと同
様の方法で行ったが、糞便内抗原液との反応の後、0.5
%BSA、0.5%カゼイン加PBS-Tweenで希釈したモノクロ
ーナル抗体と室温で1時間反応させ、次に0.5%BSA、0.5
%カゼイン加PBS-Tweenで1,000倍に希釈したビオチン化
Horse Anti-mouse IgG(H+L)(フナコシ)と室温で1時
間反応させた。その後、 ABC法を応用したサンドイッチ
ELISA法Iと同様にストレプトアビジン・ビオチン化HRP
複合体、基質液と反応させ発色の停止および測定を行っ
た。
【0098】〔実施例8〕モノクローナル抗体の特徴付
け (1)モノクローナル抗体のクラス・サブクラス 細胞融合後、9種類のモノクローナル抗体が得られた。
それぞれEm a、Em b、Em c、Em d、Em e、Em f、Em g、
Em h、Em iとした。これらのうち、Em a、EmhおよびEm
iの3種はIgG1抗体であり、Em b、Em c、Em d、Em e、Em
fおよびEmgの6種はIgM抗体であった。
【0099】(2)モノクローナル抗体の各種寄生虫抗
原との反応性 モノクローナル抗体の特異性を検討するため、多包条虫
成虫虫体抗原、成虫ES抗原に加えて各種抗原(すべて1
μg/mlタンパク質濃度)に対する反応性を比較した。各
種寄生虫抗原に対するELISAの結果を図1,2,3に示し
た。EgA7およびEgA8の抗体は多種寄生虫抗原と反応し、
ここでは使用した抗原が失活していないことを示すため
の陽性コントロールである。また、陰性コントロールと
してDMEM培地を用いた。作製したモノクローナル抗体
は、多包条虫成虫に対する抗原の他に以下のように交差
反応を示した。Em aは、多包条虫成虫ES抗原に対する反
応と比較するとOD値は低いものの多包条虫原頭節虫体お
よび原頭節ES、単包条虫成虫虫体および成虫ES、フォー
ゲル包条虫成虫虫体と胞状条虫成虫ES抗原と反応を示し
た。胞状条虫成虫虫体抗原を含むTaenia属条虫やその他
の条虫、吸虫、線虫類との反応はみられなかった。Em b
からEm gの6種のIgM抗体は類似した反応を示した。これ
らの抗体は多包条虫原頭節虫体および原頭節ES、単包条
虫成虫虫体および成虫ES、フォーゲル包条虫成虫虫体抗
原と反応を示し、さらに、胞状条虫ES抗原とも強い反応
を示した。Em hおよびEm iも反応性が類似しており、多
包条虫成虫ES抗原と強い反応を示し、多包条虫原頭節虫
体および原頭節ES、単包条虫成虫虫体および成虫ES、フ
ォーゲル包条虫成虫虫体抗原とも反応を示したが、これ
らの抗原に対する反応のOD値は0.1前後と低い値であっ
た。これらのOD値はバックグラウンド(0.014)に0.150を
加えた値(0.164)よりも小さく、実質的に反応しないも
のと言える。また、EmA9は多包条虫原頭節虫体および原
頭節ES、単包条虫成虫虫体および成虫ES、フォーゲル包
条虫成虫虫体抗原と反応を示し、胞状条虫成虫ES抗原と
の交差反応も見られた。
【0100】(3)多包条虫虫体組織切片を用いた組織
酵素抗体法 9種類のモノクローナル抗体の各種寄生虫抗原に対するE
LISAの反応性を調べた結果、IgM抗体であるEmb-Em g、E
m hとEm iの反応パターンは類似しており、Emaの反応と
合わせて3タイプに分類することができたのでEm a、Em
c(Em b-gの代表として)、Em i(Em hとEm iの代表と
して)およびEmA9による組織酵素抗体法を行った。反応
像を図4〜7に示した。Em aは片節部のテグメント、柔
組織、子宮壁、子宮内貯溜物、オンコスフェア膜、排泄
管との反応が見られた(図4)。陰茎壁、膣内壁に対す
る反応は虫体により一定していなかった。IgM抗体であ
るEm cはテグメント全体、柔組織、子宮壁、子宮内貯溜
物、オンコスフェア膜、膣内壁、陰茎壁、排泄管との反
応が見られた(図5)。Em iは片節部テグメントおよび
テグメント下の細胞と反応を示し、その他の組織との反
応は見られなかった(図6)。また、EmA9はテグメント
全体、柔組織、子宮内貯溜物、膣内壁、陰茎壁、排泄管
と反応がみられた(図7)。また、4種のモノクローナ
ル抗体とも虫体周囲の宿主腸管の上皮と反応を示し、卵
巣、精巣との反応はみられなかった。上述の反応部位を
表7にまとめた。染色された部位を+で示した。NDは未
決定を表す。
【0101】
【表7】
【0102】(4)ウエスタンブロッティング ウエスタンブロッティングにおける各モノクローナル抗
体の多包条虫成虫ES抗原認識パターンを図8に示した。
レーン2に示したEm aは、約40kDaから97kDaおよび105kD
aから117kDaにかけて、レーン9、10に示したEm h、Em i
は類似したバンドパターンを示し約30kDaから97kDaおよ
び105kDaから117kDaにかけて濃いスメアが検出された。
さらにEm a、Em h、Em i、EmA9は、約105kDaにバンドが
薄く検出された。レーン3〜8に示したIgM抗体(Em b-Em
g)およびEmA9は全体的に広い範囲にかけてスメアが検
出された。また、各モノクローナル抗体とも高分子量に
濃い帯状の染色がみられた。なお、陰性コントロールと
して用いたPBSおよび培養上清では反応は見られなかっ
た。
【0103】(5)モノクローナル抗体の認識抗原の過
ヨウ素酸処理による解析 (a)組織酵素抗体法における多包条虫成虫組織切片の
過ヨウ素酸処理 各抗体による染色像を図9に示した。過ヨウ素酸処理に
よってモノクローナル抗体Em a、Em c、Em i の反応は
全て消失した。EmA9の反応性は過ヨウ素酸処理によって
ほとんど変化がみられなかった。
【0104】(b)ウエスタンブロッティングにおける
多包条虫成虫ES抗原の過ヨウ素酸処理 ウエスタンブロッティングの検出パターンを図10に示
した。過ヨウ素酸処理によってIgG1抗体であるEm a 、E
m h、Em iの反応は全て消失した。IgM抗体(Emb-Em g)
6種の反応もほとんど消失したが、高分子量のバンドが
薄く残った。EmA9の反応性は過ヨウ素酸処理によってほ
とんど変化がみられなかった。なお、コントロールとし
て酢酸バッファーのみで処理したウエスタンブロット像
にはどの抗体のレーンにも前述の105Kdaのバンドが検出
された。以上の結果から、これらの抗体は糖鎖構造を認
識している可能性が示された。
【0105】〔実施例9〕モノクローナル抗体Em iの糞
便内抗原検出への利用 各種寄生虫抗原との反応性からモノクローナル抗体Em i
が多包条虫成虫虫体抗原、成虫ES抗原に特異的に強く反
応すること、組織酵素抗体法およびウエスタンブロッテ
ィングによりその認識抗原が糖であることを確認した。
そこで、モノクローナル抗体Em iを用いたサンドイッチ
ELISA法による糞便内抗原の検出を試み、終宿主診断法
としての有用性を検討した。
【0106】(1)rAb / Em i検出系による糞便内抗原
検出 (a)抗体濃度の最適化 サンドイッチELISA法において吸着抗体にウサギ抗多包
条虫成虫ESポリクローナル抗体(rAb)、一次抗体にモ
ノクローナル抗体Em iを用いた糞便内抗原検出法の最適
な抗体濃度を決定するためにrAb 4、2、1、0.5 μg/ml
に対して一次抗体Em i を2倍階段希釈した結果を図11
に示した。サンプルは多包条虫感染15日目、60日目の犬
糞便および未感染犬糞便を用いた。各濃度のどの組み合
わせにおいても多包条虫感染後15日目の糞便上清は強く
反応したが、60日目の糞便上清は未感染糞便上清のOD値
と変わらなかった。また、rAbの濃度が4および2 μg/ml
では未感染糞便上清との反応つまりバックグラウンドが
高く、Em iの濃度を0.5 μg/ml以下にすると15日目の糞
便上清との反応が大きく低下した。そこで、15日目糞便
上清と未感染犬糞便上清のOD値の比、すなわちSignal n
oise ratio(S/N比)が最も高くなるように、rAb、Em i
ともに1 μg/mlを用いることにした(以下rAb / Em i検
出系とする)。
【0107】(b)実験感染キツネからの糞便内抗原検
出 糞便内抗原検出法におけるrAb / Em i検出系の有用性を
評価する目的で、原頭節150,000投与した実験感染キツ
ネから経時的に採取した30倍糞便上清を用いて、現法の
EmA9による検出法(吸着抗体にrAb 1 μg/ml、一次抗体
にEmA9 1 μg/mlを用いたサンドイッチELISA法; rAb /
EmA9)を比較した(図12)。精製Em iによる抗原検出
系において、感染後6日目からOD値が上昇し、現法と同
様のOD値のレベルで推移した。しかし、現法に比べ反応
のバックグラウンドが高く、そのため感度が低いことが
予想された。また、rAb / Em i検出系においてコントロ
ールとしてサンプルの代わりにPBS-Tweenを加えて反応
を確かめたところ、バックグラウンドの値と同程度のOD
値が得られ、吸着抗体rAbと一次抗体Em iの一部が直接
反応していることが示唆された。
【0108】(2)Em iを用いたサンドイッチELISA法
の改善を目的とした検出系の検討 ABC法を応用したサンドイッチELISA法を用いて(A)で
は一次および二次抗体のビオチン化による感度の上昇、
(B)ではrAbの代わりにモノクローナル抗体を吸着抗
体に用いたバックグラウンドの抑制を試みた。
【0109】(A)吸着抗体にrAbを用いた検出系につ
いて (i) rAb / ビオチン化Em i検出系の抗体濃度の最適化 吸着抗体にrAb、一次抗体にビオチン化Em i(b-Em i)
を用いて糞便内抗原の検出に最適な抗体濃度を決定する
ためにrAb 4、2、1、0.5 μg/mlに対して一次抗体b-Em
i を2倍階段希釈した結果を図13に示した。サンプル
は多包条虫感染後15日目、60日目の犬糞便および未感染
犬糞便を用いた。15日目糞便上清との反応は強かった
が、60日目の糞便上清は未感染糞便上清のOD値と変わら
なかった。15日目糞便上清と未感染犬糞便上清のOD値の
比、すなわちS/N比が最も高くなるようにrAb、b-Em iと
もに1 μg/mlを用いることとした(以下rAb / b-Em i検
出系とする)。
【0110】(ii) Em iおよびEmA9のビオチン化による
検出感度の比較 多包条虫成虫ES抗原を1 μg/mlから2倍階段希釈し、ビ
オチン化による感度の変化についてOD値を測定した結果
を図14に示した。従来の系と比較のためrAb/ EmA9検
出系および吸着抗体にrAb 1 μg/ml、一次抗体にビオチ
ン化EmA9 1 μg/mlを用いた検出系(rAb / b-EmA9)の
結果も示した。rAb / Em iではOD値が2.5以上であった
のは23倍希釈までであったのに対して、rAb /b-Em iで
は25倍希釈にしてもOD値が2.5以上であった。しかし、
rAb /b-Em iではES抗原の希釈に従って急激にOD値が減
少し、rAb / Em iよりもバックグラウンドの低下が認め
られたものの、ビオチン化による感度の上昇はほとんど
認められなかった。また、rAb / b-EmA9では211倍希釈
までOD値が2.5以上であり、最高の抗原検出感度を示し
た。
【0111】(iii) rAb / Em i / ビオチン化AntiM検
出系の抗体濃度の最適化 rAb / b-Em iの検出系では感度を上昇することができな
かったので、ABC法を応用したサンドイッチELISA II、
すなわち一次抗体に精製Em i、二次抗体にビオチン化 a
nti-mouse IgG抗体(b-AntiM)を用い、これをストレプ
トアビジン・ビオチン化HRP複合体と反応させる系(以
下rAb / Em i / b-AntiM検出系とする)について抗体の
最適条件を調べた。吸着抗体にrAb 4、2、1、0.5、0.2
5、0.125μg/mlを用いて一次抗体Em i を4 μg/mlから2
倍階段希釈した結果を図15に示した。サンプルは多包
条虫感染15日目、60日目の犬糞便および未感染犬糞便を
用いた。吸着抗体および一次抗体Em iの濃度が高くなる
につれて未感染糞便上清のOD値も上昇した。また、Em i
の濃度が上昇するにつれて、多包条虫感染60日目糞便上
清と未感染犬糞便上清のOD値との間に開きが生じた。そ
こで未感染犬糞便上清との反応が比較的抑えられている
rAbの濃度0.25、0.125 μg/mlを用いてEm iの濃度を32
μg/mlから2倍階段希釈した(図16)。S/N比が高くな
ることを考慮に入れて60日目糞便上清が未感染糞便上清
よりも強く反応する濃度、すなわち、rAb 0.25 μg/m
l、精製Em i 8 μg/mlをrAb / Em i /b-AntiM検出系の
最適濃度として用いることとした。
【0112】(iv) 糞便内抗原検出感度の測定 多包条虫感染15日目、60日目犬糞便および未感染犬糞便
の4倍糞便上清を原液として2倍階段希釈し、rAb / Em i
/ b-AntiM、rAb / EmA9、rAb / b-EmA9で検出した結果
を図17に示した。感染15日目の糞便上清では糞便内抗
原の検出感度は3つの検出系の間に著しい差はなかっ
た。 感染60日目の糞便上清ではOD値はrAb / b-EmA9検
出系が最も高く、214倍希釈で最低値に至った。これに
対してrAb /Em i / b-AntiM検出系はOD値も低く、29
希釈で最低値に至った。
【0113】(v) 実験感染キツネからの糞便内抗原の
検出 原頭節150,000投与した実験感染キツネの30倍糞便上清
を用いて抗原の検出を行った結果を図18に示した。 r
Ab / Em i / b-AntiM検出系では感染後3日目からOD値が
上昇し、OD値の推移がみられた。rAb / b-EmA9検出系と
比較すると明らかに反応性は低かったが、rAb / Em i検
出系(図12)に比べて感度の増加がみられた。
【0114】(B)吸着抗体にモノクローナル抗体を用
いた検出系 (i) 吸着抗体と一次抗体の組合せ 吸着抗体にEm i、一次抗体にb-Em i を用いた検出系
(以下Em i /b-Em i検出系とする)、吸着抗体にEm i、
一次抗体にb-EmA9を用いた検出系(Em i / b-EmA9)お
よび吸着抗体にEmA9、一次抗体にb-Em iを用いた検出系
(EmA9 / b-Em i)について反応性を調べた。抗体濃度
は全て1 μg/mlを用い、多包条虫感染15日目および未感
染犬糞便の30倍糞便上清を原液として2倍階段希釈した
(図19)。吸着抗体にrAbを用いた系に比べて、モノ
クローナル抗体を用いた系では15日目糞便上清の反応が
著しく低くなっていたが、未感染糞便上清との反応が抑
制されバックグラウンドが低く抑えられていた。吸着抗
体にモノクローナル抗体を用いる系としては抗原の検出
が可能な2つの系、Em i / b-EmA9 , EmA9 / b-Em iを用
いることにした。
【0115】(ii) EmA9 / b-Em iおよびEm i / b-EmA9
検出系の抗体濃度の最適化 各系の吸着抗体8、4、2、1 μg/mlに対して一次抗体を1
6 μg/mlから2倍階段希釈した結果を図20、21に示
した。サンプルは多包条虫感染15日目、60日目の犬糞便
および未感染犬糞便を用いた。吸着抗体の濃度が2 μg/
ml以下になると15日目糞便上清との反応が弱くなり、一
次抗体を16 μg/mlにすると未感染糞便上清のOD値が上
昇した。最適濃度を詳細に検討するため吸着抗体8、4
μg/mlに対して、一次抗体8、4 μg/mlをそれぞれ反応
させて比較した結果を図22に示した。サンプルは多包
条虫感染犬糞便10種と未感染犬糞便10種を用いた。EmA9
/b-Em i検出系では抗体濃度8 μg/mlを用いると未感染
糞便上清との反応が高くなったので、吸着抗体のEmA9、
一次抗体のb-Em iともに4 μg/mlを用いることとした。
Em i / b-EmA9検出系ではEmA9の濃度を8 μg/mlにする
と未感染糞便上清との反応が高くなる傾向を示したので
吸着抗体 Em iは8 μg/ml、一次抗体b-EmA9は4 μg/ml
を用いることとした。
【0116】(iii) 糞便内抗原検出感度の測定 多包条虫感染15日目、60日目犬糞便および未感染犬糞便
の4倍糞便上清を原液として2倍階段希釈し、Em i /b-Em
A9、EmA9 / Em i、 rAb / EmA9およびrAb / b-EmA9検出
系で測定した結果を図23に示した。感染15日目の糞便
上清ではrAb /EmA9、rAb / b-EmA9の系は216倍希釈で最
低値に達したのに対して、Em i / b-EmA9の系は214倍希
釈で最低値に至った。 感染60日目の糞便上清ではEm i
/ b-EmA9の系は、rAb / EmA9およびrAb / b-EmA9の系に
比べてさらに感度が低かった。また、EmA9 / b-Em iの
系では15日目および60日目糞便上清ともに反応性が極端
に低下し、ほぼ抗原を検出することができなくなってい
た。そこで、これ以降の実験にはEm i / b-EmA9検出系
のみ用いることとした。
【0117】(iv) 実験感染キツネからの糞便内抗原の
検出 原頭節150,000投与した実験感染キツネから経時的に採
取した糞便の30倍上清を用いて抗原価の推移を図24に
示した。Em i / b-EmA9の系では感染前のバックグラウ
ンドの低下が認められ、感染後6日目からOD値が上昇し
た。しかし、OD値は全体的に低く、40日目以降の抗原検
出がほとんどできなかった。
【0118】(3)rAb / Em i / b-AntiM, Em i / b-E
mA9検出系による糞便内抗原検出の改善 (a)糞便内抗原の濃度の検討 rAb / Em i /b-AntiMおよびEm i / b-EmA9は現法のrAb
/ b-EmA9よりも感度が低いことが示されたので検査用の
糞便液の濃度上昇による感度の改善を目的として、抗原
濃度による反応性の変化を調べた(図25)。サンプル
は多包条虫感染60日目以降(感染後期)の犬糞便4種と
未感染犬糞便4種の4倍糞便上清を原液として2倍階段希
釈した。2つの系で糞便上清が濃くなるほどOD値が上昇
し反応が良くなった。特に、rAb / Em i / b-AntiMの系
でOD値の顕著な増加が見られた。なお、糞便上清の濃度
を上昇させても未感染糞便との反応はそれほど上昇しな
かった。
【0119】(b)野生キツネからの糞便内抗原検出 抗原濃度を濃くすることで反応性が上昇したので、野生
キツネの4倍糞便上清を用いて検出法の比較を行った
(図26)。サンプルは腸管から多包条虫虫体が検出さ
れた16検体と検出されなかった14検体を用いた。陽性限
界値は未感染キツネ14検体の糞便の平均OD値に標準偏差
の3倍を加えたものとした。rAb / Em i /b-AntiM検出系
は16検体のうち陽性と判断できたのは13検体、Em i / b
-EmA9検出系では11検体、rAb / b-EmA9検出系では13検
体であった。なお、これらのキツネにおける多包条虫回
収虫体数並びに他の寄生虫感染状況を表8に示した。感
染虫体数は以下の通りである。 + 1〜9 ++ 10〜99 +++ 100〜999 ++++ 1000〜9999 +++++ 10000以上 略号は以下の通りである。 Se: マンソン裂頭条虫 Me: Metagonimus spp. Eh: 浅田棘口吸虫 Aa: Alaria alata Mm: 鎖状鉤頭虫Moniliformis moniliformi Tc: 犬回虫 Tl: 犬小回虫Toxascaris leonina Tv: 犬鞭虫Trichuris vulpis Ca: Capillaria spp. Ac: 犬鉤虫
【0120】
【表8】
【0121】(4)他種エキノコックス属および胞状条
虫感染糞便との交差反応性 糞便内抗原検出法の他種エキノコックス属、および胞状
条虫感染糞便における交差反応の結果を図27に示し
た。rAb / Em i / b-AntiMおよびEm i / b-EmA9の2つの
検出系では単包条虫感染犬16日目、フォーゲル包条虫感
染スナネズミ10日目以降の糞便内抗原と反応が見られた
が、胞状条虫の感染犬ではプレパテントピリオドを経過
した後も交差反応は見られなかった。これらのOD値はバ
ックグラウンド(rAv/Emi/b-AntiM: 0.319, Emi/b-EmA9:
0.019)に0.100を加えた値以下であり、実質的に反応し
ていないものと言える。Em i / b-EmA9の系では多包条
虫感染犬糞便内抗原に対する反応がrAb / Em i / b-Ant
iMの系と比較して低いにも関わらず、単包条虫感染犬の
糞便内抗原に対する反応は高かった。現法のrAb /b-EmA
9の系では、胞状条虫感染犬57日目、単包条虫感染犬16
日目、フォーゲル包条虫感染スナネズミ10日目以降の糞
便において反応が陽性となった。
【0122】
【発明の効果】本発明により、エキノコックス属条虫由
来の抗原に特異的に反応するモノクローナル抗体が提供
された。該モノクローナル抗体は、胞状条虫由来の抗原
に対して交差反応を示さない。よって本発明のモノクロ
ーナル抗体は、エキノコックス属由来の抗原に対する非
常に特異性の高い抗体であると言える。さらに本発明
は、このモノクローナル抗体を使用した、エキノコック
ス条虫に由来する抗原の検出方法を提供する。本発明に
よるモノクローナル抗体の利用によって、エキノコック
ス条虫の抗原を特異的に検出することができる。本発明
の検出方法によれば、胞状条虫などの近縁の条虫類の影
響を受けない検出方法が提供される。エキノコックス属
条虫と胞状条虫の混在する地域でも、エキノコックス属
条虫の抗原を特異的に検出できる。更に本発明によるエ
キノコックス属条虫の抗原検出方法を終宿主の糞便を試
料として実施することにより、終宿主におけるエキノコ
ックス属条虫感染の早期診断方法が提供される。終宿主
の糞便内抗原は、エキノコックス条虫の感染後数日で排
出される。本発明のモノクローナル抗体を用いることに
よって、感染後わずか3日で診断を行うことができる。
虫卵排泄を指標とする公知の診断方法では、感染から3
0日前後は診断が不可能であることと比べると、本発明
がいかに早期の診断を可能としているかが明らかであ
る。しかもこの方法は、寄生虫に関する高度な知識を持
たないものでも、客観性の高い診断を可能とする簡便な
方法である。以上のように、本発明によるモノクローナ
ル抗体、そしてこの抗体に基づく抗原検出と、エキノコ
ックス属条虫感染の診断方法は、エキノコックス属条虫
の防疫上、きわめて有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】作製したモノクローナル抗体 Em a, b, c, d
の各種寄生虫抗原との反応性を示す図である。
【図2】作製したモノクローナル抗体 Em e, f, g, h
の各種寄生虫抗原との反応性を示す図である。
【図3】作製したモノクローナル抗体 Em i, EmA9, EgA
7, EgA8、およびDMEM培地の各種寄生虫抗原との反応性
を示す図である。
【図4】モノクローナル抗体Em aを用いて組織酵素抗体
法を行ったときの多包条虫虫体組織切片における反応像
を示す顕微鏡写真である。 a. 全体像。 片節部のテグメントが染まっている。 b. 成熟片節。 テグメント、柔組織、陰茎壁が染まっ
ている。 c. 老熟片節。 テグメント、子宮内貯留物、子宮壁、
オンコスフェア膜が染まっている。
【図5】モノクローナル抗体Em cを用いて組織酵素抗体
法を行ったときの多包条虫虫体組織切片における反応像
を示す顕微鏡写真である。 a. 全体像。 テグメント全体が強く染まっている。 b. 成熟片節。 テグメント、柔組織、陰茎壁、膣内壁
が染まっている。 c. 老熟片節。 テグメント、柔組織、子宮内貯留物、
子宮壁、オンコスフェア膜が染まっている。
【図6】モノクローナル抗体Em iを用いて組織酵素抗体
法を行ったときの多包条虫虫体組織切片における反応像
を示す顕微鏡写真である。 a. 全体像。 片節部のテグメントが染まっている。 b. 成熟片節。 テグメント、およびテグメント下の細
胞が染まっている。 c. 老熟片節。 テグメント、およびテグメント下の細
胞が染まっている。
【図7】モノクローナル抗体Em A9を用いて組織酵素抗
体法を行ったときの多包条虫虫体組織切片における反応
像を示す顕微鏡写真である。 a. 全体像。 テグメント全体が染まっている。 b. 成熟片節。 テグメント、柔組織、陰茎壁、膣内壁
が染まっている。 c. 老熟片節。 テグメント、柔組織、子宮内貯留物、
子宮壁、オンコスフェア膜が染まっている。
【図8】作製したモノクローナル抗体を用いて多包条虫
排泄分泌抗原に対するウエスタンブロッティングを行っ
たときの反応像を示す図である。
【図9】過ヨウ素酸処理後に、作製したモノクローナル
抗体を用いて組織酵素抗体法を行ったときの多包条虫虫
体組織切片における反応像を示す顕微鏡写真である。 a. モノクローナル抗体Em a、 b. モノクローナル抗体
Em c、 c. モノクローナル抗体Em i、 d. モノクロー
ナル抗体Em A9
【図10】過ヨウ素酸処理後に、作製したモノクローナ
ル抗体を用いて多包条虫排泄分泌抗原に対するウエスタ
ンブロッティングを行ったときの反応像を示す図であ
る。 a. コントロール(酢酸バッファーで処理)、 b. 過ヨ
ウ素酸処理
【図11】サンドイッチELISA(rAb / Em i検出系)に
おけるrAbおよびEm iの抗体濃度の変化が測定結果に与
える影響を示す図。多包条虫感染15日目、60日目のイヌ
糞便をそれぞれ黒四角、黒丸で表す。未感染のイヌ糞便
を三角、ひし形で表す。
【図12】多包条虫原頭節150,000投与した実験感染キ
ツネから経時的に採取された糞便をサンドイッチELISA
(rAb / Em i およびrAb / EmA9検出系)で検査したと
きの糞便内抗原価の推移を示す図である。
【図13】サンドイッチELISA(rAb/ b-Em i検出系)に
おけるrAbおよびb-Em iの抗体濃度の変化が測定結果に
与える影響を示す図。多包条虫感染15日目、60日目のイ
ヌ糞便をそれぞれ黒四角、黒丸で表す。未感染のイヌ糞
便を三角、ひし形で表す。
【図14】サンドイッチELISA(rAb / Em i およびrAb
/ EmA9検出系)とABC法を適用したサンドイッチELISA
(rAb / b-Em i およびrAb / b-EmA9検出系)を用いた
時の検出感度の比較結果を示す図である。rAb / Em i、
rAb / b-Em iをそれぞれ黒四角、黒丸で表す。rAb / Em
A9、rAb / b-Em A9をそれぞれ四角、丸で表す。
【図15】サンドイッチELISA(rAb / Em i / b-AntiM
)におけるrAbおよびEm iの抗体濃度(0.25-4μg/ml)
の変化が測定結果に与える影響を示す図。多包条虫感染
15日目、60日目のイヌ糞便をそれぞれ黒四角、黒丸で表
す。未感染のイヌ糞便を三角、ひし形で表す。
【図16】サンドイッチELISA(rAb / Em i / b-AntiM
)におけるrAbおよびEm iの抗体濃度(2-32μg/ml)の
変化が測定結果に与える影響を示す図。多包条虫感染15
日目、60日目のイヌ糞便をそれぞれ黒四角、黒丸で表
す。未感染のイヌ糞便を三角、ひし形で表す。
【図17】サンドイッチELISA(rAb/b-EmA9、rAb/b-Em
i、rAb/EmA9およびrAb / Em i /b-AntiM検出系)の糞便
内抗原検出感度の比較結果を示す図である。rAb / Em i
/ b-AntiM、rAb / Em A9、rAb / b-Em A9をそれぞれ黒
四角、四角、丸で表す。
【図18】多包条虫原頭節150,000投与した実験感染キ
ツネから経時的に採取された糞便をサンドイッチELISA
(rAb / Em i / b-AntiMおよび rAb / b-EmA9検出系)
で検査したときの糞便内抗原価の推移を示す図である。
【図19】サンドイッチELISA(Em i / b-Em i、Em i /
b-EmA9およびEmA9 / b-Em i検出系)の検出感度を比較
した図である。多包条虫感染15日目のイヌ糞便を黒四
角、未感染のイヌ糞便を丸で表す。
【図20】サンドイッチELISA(EmA9 / b-Em i 検出
系)におけるEmA9およびb-Em iの抗体濃度の変化が測定
結果に与える影響を示す図。多包条虫感染15日目、60日
目のイヌ糞便をそれぞれ黒四角、黒丸で表す。未感染の
イヌ糞便を三角、ひし形で表す。
【図21】サンドイッチELISA(Em i / b-EmA9 検出
系)におけるEm iおよびb-EmA9 の抗体濃度の変化が測
定結果に与える影響を示す図。多包条虫感染15日目、60
日目のイヌ糞便をそれぞれ黒四角、黒丸で表す。未感染
のイヌ糞便を三角、ひし形で表す。
【図22】サンドイッチELISA(EmA9 / b-Em i および
Em i / b-EmA9検出系)における抗体濃度の変化が測定
結果に与える影響を示す図。上10のバーは、多包条虫感
染のイヌ糞便を、下10のバーは、未感染のイヌ糞便を表
す。
【図23】サンドイッチELISA(Em i / b-EmA9およびEm
A9 / b-Em i 検出系)の糞便内抗原検出感度の比較結果
を示す図である。Em i / b-Em A9、Em A9 / b-Em i、rA
b / Em A9、rAb / b-Em A9をそれぞれ黒三角、黒丸、四
角、丸で表す。
【図24】多包条虫原頭節150,000投与した実験感染キ
ツネから経時的に採取された糞便をサンドイッチELISA
(Em i / b-EmA9およびrAb / b-EmA9検出系)で検査し
たときの糞便内抗原価の推移を示す図である。
【図25】サンドイッチELISA(rAb / Em i / b-AntiM
および Em i / b-EmA9検出系)における糞便内抗原の濃
度の変化が測定結果に与える影響を示す図。rAb / Em i
/ b-AntiM、Em i / b-Em A9をそれぞれ黒丸、黒四角で
表す。
【図26】サンドイッチELISA(rAb / Em i / b-AntiM,
Em i / b-EmA9およびrAb / b-EmA9検出系)による感染
および未感染野生キツネ糞便の抗原検出結果を示す図で
ある。左端の数字は回収虫体数を表す。多包条虫未感染
キツネ14検体の糞便を用いたOD値の平均に標準偏差の3
倍を加えた値を陽性限界値とし実線で示す。
【図27】サンドイッチELISA(rAb / Em i / b-AntiM,
Em i / b-EmA9およびrAb / b-EmA9検出系)における他
種エキノコックス属(単包条虫およびフォーゲル包条
虫)および胞状条虫感染動物糞便で認められる交差反応
性を示す図である。数字は感染後の日数を表す。調べた
抗原は以下の通りである。 Em P: 多包条虫感染犬糞便内抗原 Em N: 多包条虫未感染犬糞便内抗原 胞状条虫: 感染犬糞便内抗原 単包条虫: 感染犬糞便内抗原 フォーゲル包条虫: 感染スナネズミ糞便内抗原
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/577 C12R 1:91) //(C12P 21/08 C12N 15/00 C C12R 1:91) 5/00 B (72)発明者 奥 祐三郎 北海道札幌市北区北18条西9丁目 北海道 大学内 (72)発明者 神谷 正男 北海道札幌市北区北18条西9丁目 北海道 大学内 (72)発明者 酒井 博史 北海道札幌市北区北18条西9丁目 北海道 大学内 Fターム(参考) 4B024 AA11 BA43 DA02 GA03 HA15 4B064 AG27 CA10 CA20 CC24 DA15 4B065 AA92X AB05 BA08 CA25 CA46 4H045 AA11 CA40 CA50 DA86 EA52 FA74

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エキノコックス属条虫由来の抗原と反応
    し、他の属の条虫類由来の抗原とは実質的に反応しな
    い、エキノコックス属条虫由来の抗原に対するモノクロ
    ーナル抗体。
  2. 【請求項2】 耐熱性の抗原を認識する、請求項1記載
    のモノクローナル抗体。
  3. 【請求項3】 エキノコックス属条虫の成虫由来の抗原
    と反応する請求項1記載のモノクローナル抗体。
  4. 【請求項4】 受託番号FERM P-17805として寄託された
    ハイブリドーマEmi-Hにより産生されるモノクローナル
    抗体。
  5. 【請求項5】 請求項1記載のモノクローナル抗体を産
    生するハイブリドーマ。
  6. 【請求項6】 受託番号FERM P-17805として寄託された
    請求項5記載のハイブリドーマEmi-H。
  7. 【請求項7】 請求項1記載のモノクローナル抗体を、
    被検体と反応させることによる、エキノコックス属条虫
    由来の抗原の存在を免疫学的に検出する方法。
  8. 【請求項8】 被検体が、終宿主の糞便である請求項7
    記載の方法。
  9. 【請求項9】 請求項1記載のモノクローナル抗体を含
    む、エキノコックス属条虫由来の抗原の存在を検出する
    ための試薬。
  10. 【請求項10】 以下の工程からなる、終宿主動物にお
    けるエキノコックス属条虫の感染を診断する方法。 (i) 請求項1記載のモノクローナル抗体を、終宿主
    動物の糞便と反応させることによって、エキノコックス
    属条虫由来の抗原の存在を免疫学的に検出する工程、
    (ii) 前記工程によりエキノコックス属条虫由来の
    抗原が検出された場合、該終宿主動物がエキノコックス
    属条虫に感染していると診断する工程。
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